(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】複合型血管用フローダイバータ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
A61B17/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018011325
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スラザス
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ロレンツォ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-509412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0249620(US,A1)
【文献】国際公開第2009/019664(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/179377(WO,A1)
【文献】特表2008-536586(JP,A)
【文献】特開2012-187325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/12
A61F 2/00 ― 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管用フローダイバータであって、
管状メッシュフレーム構造と、
開口部を備えるメッシュ
状カバーと、を備え、
前記管状メッシュフレーム構造は、折り畳み可能であり、かつ、前記血管用フローダイバータが配備されると折り畳まれた形状から管状の形状へ展開するように構成されており、
前記管状メッシュフレーム構造が前記メッシュ
状カバーよりも多孔質であり、
前記メッシュ
状カバーは、円形の外周、丸みを帯びた外周、又は長円形状の外周を有し、前記管状メッシュフレーム構造の中央セクション
のみの上に設置され、
前記メッシュ
状カバーは、前記管状メッシュフレーム構造によって囲まれ、かつ、前記管状メッシュフレーム構造の前記形状と適合するように、前記管状メッシュフレーム構造の円周の周りに部分的に延在し、
前記開口部は前記外周内に位置し、
前記開口部は、ガイド装置が、前記管状メッシュフレーム構造の前記中央セクションを通り抜けることができ、かつ、前記メッシュ
状カバーを通り抜けることができるように構成されている、血管用フローダイバータ。
【請求項2】
前記管状メッシュフレーム構造が円形断面を有する、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項3】
前記メッシュ
状カバーが、丸みを帯びた外周を有する、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項4】
前記メッシュ
状カバーが円形の外周を有する、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項5】
前記メッシュ
状カバーが前記管状メッシュフレーム構造と一体化されている、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項6】
前記メッシュ
状カバーが、前記管状メッシュフレーム構造と別個であり、かつ、前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項7】
前記メッシュ
状カバーが溶接によって前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、請求項6に記載の血管用フローダイバータ。
【請求項8】
前記メッシュ
状カバーが、前記メッシュ
状カバーのメッシュストランドを前記管状メッシュフレーム構造のメッシュストランドと織り交ぜることによって前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、請求項1に記載の血管用フローダイバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には血管内医療装置に関する。本開示は、より具体的には血管の外傷及び変形部を処置するための医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の血管用フローダイバータは低孔隙率の編組体からなっており、編組体は、動脈瘤の頸部を超えて配備され、かつ、動脈瘤の頸部を横切る血管の周囲だけでなく、動脈瘤の頸部より近位に及び遠位にある、他の点では健康な血管のセグメントもまた覆っている。血栓塞栓性の合併症は、一般にこの種の装置に起因する。このような装置を有する患者には、装置血栓症のリスクを軽減するために長期の薬物適用が処方される。
【0003】
理想的な管腔内フローダイバータならば、動脈瘤の頸部のみを処置し、それにより、血管内腔中の金属量が最小化され、かつ、血栓塞栓性合併症の可能性が最小限に抑えられるであろう。しかしながら、三次元空間における蛍光透視ガイダンス下での動脈瘤の頸部に対する頸部カバーの位置決めは、現在利用可能な撮像技術では困難である。
【0004】
動脈瘤の頸部のみを標的にすることによって血管中の金属量を最小化する市販の血管内用装置は存在しない。さまざまな動脈瘤塞栓形成(emobolization)システム(例えば、塞栓コイル)など、嚢状動脈瘤の頸部の処置を試みる市販の装置が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、動脈瘤の頸部のみを標的にすることによって血管中の金属量を最小化するように設計されている血管内用フローダイバーティング装置、血管内用フローダイバーティング装置を配備するための装置、並びに動脈瘤の頸部を覆うようにフローダイバーティング装置をガイドする及び配備するための方法のさまざまな実施例を説明する。
【0006】
本開示の一実施例では、血管用フローダイバータは、メッシュカバー及び開口部を含む管状メッシュフレーム構造を含んでいる。管状メッシュフレーム構造は折り畳み可能であり、血管用フローダイバータが配備されると折り畳まれた形状から管形状へ展開するように構成されている。メッシュカバーは管状メッシュの形状と適合し、管状メッシュフレーム構造によって囲まれており、管状メッシュフレーム構造よりも多孔性が低い。開口部はメッシュカバーの内部に位置する。
【0007】
一実施例では、管状メッシュフレーム構造は円形断面を有する。一実施例では、メッシュカバーは丸みを帯びた外周を有する。別の実施例では、メッシュカバーは円形の外周を有する。いくつかの実施例では、メッシュカバーは管状メッシュフレーム構造と一体化されている。他の実施例では、メッシュカバーは管状メッシュフレーム構造と別個であり、それに取り付けられている。一実施例では、メッシュカバーは、溶接によって管状メッシュフレーム構造に取り付けられている。別の実施例では、メッシュカバーは、メッシュカバーのメッシュストランドを管状メッシュフレーム構造のメッシュストランドと織り交ぜることによって管状メッシュフレーム構造に取り付けられている。
【0008】
本開示の一実施例では、血管用フローダイバータを配備するための装置は、管状外壁、遠位端、及び近位端を含む中空状のマイクロカテーテルを含んでいる。一実施例では、マイクロカテーテルの遠位端は、マイクロカテーテルの長手方向軸に実質的に垂直である横断方向開口部を含んでおり、また長手方向軸に実質的に平行である長手方向開口部も含んでいる。長手方向開口部は横断方向開口部と交差している。装置はまた、遠位セクション、近位セクション、及び遠位セクションと近位セクションとの間の接合部を含むデリバリワイヤも含んでいる。デリバリワイヤの遠位セクションの少なくとも一部分は、曲線構造をとるように構成されている。遠位セクションは、近位セクションよりも小さい断面を有する。
【0009】
一実施例では、曲線構造をとるように構成されているデリバリワイヤの遠位セクションの一部分は、曲線構造に予備形成されており、デリバリワイヤの遠位セクションがマイクロカテーテルから配備されると真っ直ぐな構造から曲線構造に戻るように構成されている。
【0010】
別の実施例では、デリバリワイヤはプルワイヤを含んでいる。プルワイヤはデリバリワイヤの内腔内に位置付けられ、遠位セクションの先端で終端する。プルワイヤの近位端は、プルワイヤに張力を付与するように引っ張られ得、これにより、デリバリワイヤの遠位セクションの少なくとも一部分が引っ張られて曲線構造になる。
【0011】
一実施例では、放射線不透過性マーカーが、デリバリワイヤの遠位セクションと近位セクションとの間の接合部に固定され得る。別の実施例では、放射線不透過性マーカーが、デリバリワイヤの遠位セクションの先端に固定され得る。別の実施例では、デリバリワイヤの遠位セクションの遠位先端は、放射線不透過性材料から形成されたコイルであり得る。別の実施例では、放射線不透過性マーカーが、マイクロカテーテルの遠位端に固定され得る。一実施例では、マイクロカテーテルの遠位端に固定されている放射線不透過性マーカーは、横断方向開口部と長手方向開口部の近位端との間に位置し得る。更なる実施例では、マイクロカテーテルの遠位端に固定されている放射線不透過性マーカーは、スプリットリング形状を含んでいる。別の更なる実施例では、スプリットリング形状のスプリット部は、マイクロカテーテルの長手方向開口部にまたがって位置する。
【0012】
本開示の一実施例では、血管用フローダイバータを配備するための方法は、血管内で動脈瘤の頸部を超えて遠位方向にマイクロカテーテルを前進させることと、デリバリワイヤの遠位先端をマイクロカテーテルから出して前進させることと、曲線状のデリバリワイヤ先端がマイクロカテーテルの長手方向スロットを通って抜け出すようにマイクロカテーテルを回転させ、これにより、動脈瘤入口に対してメッシュカバーを径方向に整列させることと、デリバリワイヤの遠位先端を動脈瘤内へガイドすることと、を含む。方法はまた、血管用フローダイバータの自己展開式フレームが血管の内壁に対して開き、かつ、デリバリワイヤの遠位先端が動脈瘤の頸部を超えて血管用フローダイバータのメッシュカバーをガイドするように、デリバリワイヤの位置を維持しながらマイクロカテーテルを近位方向に引き戻すことも含む。
【0013】
別の実施例では、方法はまた、放射線画像撮影装置によって、デリバリワイヤの遠位先端が動脈瘤の内部に位置することを確認することも含む。別の実施例では、方法は、デリバリワイヤをマイクロカテーテル内に引き戻すことと、デリバリワイヤ及びマイクロカテーテルを患者から引き出すことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示による、フローダイバータの図面であり、その主要な構成要素及びそれら相互の関係を示している。
【
図2】本開示による、フローダイバータを送達するためのマイクロカテーテルの図面であり、その主要な構成要素及びそれら相互の関係を示している。
【
図3】本開示による、フローダイバータを送達するためのデリバリワイヤの一実施例の図面であり、その主要な構成要素及びそれら相互の関係を示している。
【
図4】本開示による、血管内での設置に備えてデリバリワイヤ及びフローダイバータが取り付けられているマイクロカテーテルの一実施例の断面図である。
【
図5a】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図5b】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図5c】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図5d】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図5e】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図5f】本開示による、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示している、一連の血管内の動脈瘤の図面である。
【
図6】フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序の例を示しているフロー図である。
【
図7】本開示による、折り畳まれた構造のフローダイバータの図面である。
【
図8】本開示による、
図7の折り畳まれたフローダイバータの断面の図面である。
【
図9】本開示による、
図7の折り畳まれたフローダイバータの別の断面の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで図面を参照すると、類似の部分には類似の符号が付されており、外科用装置のさまざまな実施例が詳細に開示されている。
【0016】
図1は、フローダイバータ100の図面である。フローダイバータ100は自己展開式管状メッシュフレーム102を含んでおり、管状メッシュフレーム102は高孔隙率を有する。「高孔隙率」は、構成要素のメッシュが、血管被覆率を超える解放空間を含むことを意味する。したがって、高孔隙率の構成要素は低い金属対動脈比を有する。金属対動脈比は、動脈中で装置が覆っている円筒面積を、装置を含んでいる動脈セグメントの総円筒面積で割ることによって算出される。管状メッシュフレーム102は展開(自由)状態及び折り畳み状態を有する。展開状態が図示されている。管状メッシュフレーム102は、外部から圧縮されて折り畳み状態になる必要があり、適当な条件下で展開状態に復帰する。いくつかの実施例では、管状メッシュフレーム102は、外部拘束が除去されるとすぐに、内部張力の作用によって自動的に展開状態に復帰することができる。他の実施例では、管状メッシュフレーム102は、熱入力又は電気信号に応じて展開状態に復帰し得る。このような実施例においては、管状メッシュフレーム102は、ニッケル-チタン合金(ニチノール)などの形状記憶合金から製造することができる。
【0017】
低孔隙率(高い金属対動脈比)のメッシュカバー104が、管状メッシュフレーム102と共に組み込まれている。メッシュカバー104は、管状メッシュフレーム102の中央セクションの上に設置されている。メッシュカバー104は一般に円形形状、丸みを帯びた形状、又は長円形状110を有し得る。開口部106が、メッシュカバー104の中央に形成されている。開口部106は、操縦可能な放射線不透過性ガイドワイヤ(又はマイクロカテーテル)などのガイド装置が通り抜けることができるほどに十分に大きい。
【0018】
いくつかの実施例では、メッシュカバー104は、管状メッシュフレーム102の一部として一体化され得る。一実施例では、メッシュカバー104は、管状メッシュフレーム102と同じフィラメントから、ただし、より目の詰まったパターンで、編まれ得る。他の実施例では、メッシュカバー104は、管状メッシュフレーム102に取り付けられた別個の要素であり得る。1つのこのような実施例では、メッシュカバー104は、溶接によって管状メッシュフレーム102に取り付けられ得る。別のこのような実施例では、メッシュカバー104は、接着剤によって管状メッシュフレーム102に取り付けられ得る。別の実施例では、メッシュカバー104のフィラメントは、管状メッシュフレーム102のフィラメントと織り交ぜられ得る。別のこのような実施例では、メッシュカバー104は、メッシュカバー104又は管状メッシュフレームのいずれかを一時的にかつ局所的に溶かして2つを一体に融合させることによって(両方を一時的に溶かして結合部が作製されることになる、溶接とは対立するものとして)、管状メッシュフレーム102に取り付けられ得る。別のこのような実施例では、メッシュカバー104は、管状メッシュフレーム104の層間にメッシュカバー104を挟むことによって、又はその逆を行うことによって、管状メッシュフレーム102に取り付けられ得る。
【0019】
図7は、折り畳み状態のフローダイバータ100を示している。フローダイバータが動脈瘤の上に設置されるためにマイクロカテーテル200の中を通して前進させられている間、デリバリワイヤ300の遠位端302を収容することができるように、折り畳まれた部分700が管状メッシュフレーム102及びメッシュカバー104に形成されている(フローダイバータ100を送達及び設置するための器具及び技術に関してより詳しくは以下を参照されたい)。
図8は、管状メッシュフレーム102のみを通過した、折り畳まれたフローダイバータ100の断面を示している。折り畳まれた部分100は、この断面図においてより一層明確に見ることができる。
図9は、開口部106の中心を通過した、折り畳まれたフローダイバータ100の断面を示している。このように、折り畳まれた部分700と、開口部106と、管状メッシュフレーム102と、メッシュカバー104との間の関係を見ることができる。
【0020】
図2は、フローダイバータ100を送達するためのマイクロカテーテル200を示している。マイクロカテーテル200は、管状外壁202、遠位端204、近位端206、及び管状外壁202の中心とその長さに沿ってほぼ一致する長手方向軸210を有する。遠位端は、横断方向開口部208及び長手方向開口部212を含んでいる。いくつかの実施例では、横断方向開口部208は長手方向軸210に実質的に垂直であってよい。いくつかの実施例では、横断方向開口部208は長手方向軸210に対して角度をなしてよい。
【0021】
長手方向開口部212は、マイクロカテーテル200の長さ部分に従う長径とマイクロカテーテル200の円周(又は他の非円形の外周)上の短径とを有するスロット形状又はそれに類似の形状であり得る。長手方向開口部212の一端は、マイクロカテーテル200の遠位端204にて横断方向開口部208と交差部214を形成している。長手方向開口部の他端は、直角(即ち、半径の有無に関係なく直角を有する)、半円形、又は楕円形であってよい。
【0022】
マイクロカテーテル200の遠位端24はまた、放射線不透過性マーカー218も含み得る。放射線不透過性マーカー218は、臨床医が放射線機器を使用して患者の血管系内でのマイクロカテーテル200の遠位端204の位置を観測することを可能にする。例えば、臨床医は、蛍光透視検査、デジタル血管撮影、回転血管造影、コンピュータ断層撮影(CT)、又はコーンビームCTなどを使用して、放射線不透過性マーカー218の位置を観測し得る。いくつかの実施例では、放射線不透過性マーカー218は環状帯形状又はリング形状であり得る。いくつかの更なる実施例では、環状帯はスプリットリング形状であり得、リングのスプリット部は長手方向開口部212に揃えられている。
【0023】
図3は、フローダイバータ100を送達するための操縦可能なデリバリワイヤ300を示している。デリバリワイヤ300は、マイクロカテーテル200の内部に配備されている。デリバリワイヤ300は、遠位セクション302、近位セクション304、及び遠位セクション302と近位セクション304との間又はいずれか一方の間の接合部306を含んでいる。デリバリワイヤ300の遠位セクション302の少なくとも一部分は、曲線構造をとるように構成されている。遠位セクション302は、近位セクション304よりも小さい断面を有する。いくつかの実施例では、遠位セクション302は、近位セクション304に対して滑動することができる。これにより、フローダイバータが動脈瘤の頸部を超えて設置された後、デリバリワイヤの先端を後退させることができる。いくつかの実施例では、遠位セクション302及び近位セクション304はいずれも円形断面を有する。他の実施例では、遠位セクション302及び近位セクション304は非円形断面を有してよい。例えば、遠位セクション302又は近位セクション304のいずれかは、楕円形、長円形、卵形、三角形、又は四辺形の断面を有してよい。加えて、いくつかの実施例では、遠位セクション302又は近位セクション304のいずれの非円形断面も、デリバリワイヤ300の長さに沿って一貫した角度方向を有しなくてもよい。遠位セクション302は先端部310を含んでいる。いくつかの実施例では、先端部310は放射線不透過性マーカー314を含み得る。
【0024】
一実施例では、曲線構造をとるように構成されているデリバリワイヤ300の遠位セクション302の一部分は、曲線構造にプリセットされており、マイクロカテーテルから配備されると真っ直ぐな構造から曲線構造に戻る。したがって、デリバリワイヤが自由状態であるとき、このセクションは曲線構造である。デリバリワイヤがマイクロカテーテルに挿入されると、マイクロカテーテル(microcather)の内径がデリバリワイヤを拘束し、曲線部分を真っ直ぐな構造に強制する。デリバリワイヤがマイクロカテーテルから配備されると、このセクションは、プリセットされた曲線構造に戻る。曲線セクションは可撓性弾力的材料から形成され得る。例えば、曲線セクションはばね鋼から形成されてもよく、又は熱処理されてその自由状態で曲線セクションを形成してもよい。
【0025】
別の実施例では、少なくとも1本のプルワイヤ308が、デリバリワイヤ300の内腔316の内部に位置付けられている。プルワイヤ308がデリバリワイヤ300の近位セクション304の近位端318から引っ張られると、先端部310に近い遠位セクション302の少なくとも一部分が曲がるように、プルワイヤ308は遠位セクション302の先端部310に取り付けられている。これにより、臨床医はデリバリワイヤ300の遠位セクション302の先端部310を動脈瘤内へガイドすることが可能である。いくつかの実施例では、プルワイヤ308が引っ張られると、遠位セクション302の全体が曲がり得る。他の実施例では、プルワイヤ308が引っ張られると、近位セクション304の一部分もまた曲がり得る。
【0026】
遠位セクション302と近位セクション304との間の接合部306は、近位セクション304と少なくとも同じ大きさの断面を有する。接合部306は、以下により詳細に説明するように、動脈瘤の頸部を超えた設置のためにフローダイバータ100をマイクロカテーテル200から押し出す際に使用される。いくつかの実施例では、接合部306はまた、放射線不透過性マーカー312も含み得る。
【0027】
図4は、血管内での設置に備えてデリバリワイヤ300及びフローダイバータ100が取り付けられているマイクロカテーテル200を示している断面図である。フローダイバータ100は、管状メッシュフレーム構造102がデリバリワイヤ300の遠位セクション302と近位セクション304との間の接合部306と接触するまで開口部106を遠位セクション302の上でガイドすることにより、ガイドワイヤ300の遠位セクション302の上に搭載される。次いで、フローダイバータ100の管状メッシュフレーム構造102は、折り畳み状態に押し縮められ、イントロデューサ(図示せず)に予め装填され、マイクロカテーテルの内腔220内へ導入される。
【0028】
図5a~
図5fは、フローダイバータ100を血管514内に設置して動脈瘤512を閉塞するための工程の順序の一例を示している、一連の図面である。
図5aでは、マイクロカテーテル200が、動脈瘤512の頸部516を超えて前進させられる。
図5bでは、マイクロカテーテル200の長手方向開口部212が動脈瘤と径方向に整列していることが確認され、必要ならば、調整される。次いで、デリバリワイヤ300の遠位セクション302の先端部310が、マイクロカテーテル200から外へ前進させられ、動脈瘤512の頸部516を通ってガイドされる。デリバリワイヤは、上述のように、プリセットされた曲率を有してもよく、又はプルワイヤ308を使用してガイドされてもよい。デリバリワイヤは、穴106を通ることによってインプラントに係合されているが、これに取り付けられてはいない。
図5cでは、遠位セクション302の先端部310が動脈瘤512内に位置していることを確認した後、フローダイバータ100が配備され得る。フローダイバータ100は、デリバリワイヤ300の位置を維持しながらマイクロカテーテル200を後退させることによって配備される。
【0029】
図5dでは、フローダイバータ100が開口部106によりデリバリワイヤ300の遠位セクション302に沿ってガイドされながら、自己展開式管状フレーム102が血管514の内側に対して開く。
図5eでは、フローダイバータ100がマイクロカテーテル200から完全に配備され、かつ、展開される。
図5fでは、デリバリワイヤ300がマイクロカテーテル200内へ引き戻され、これらは両方とも患者から引き出されることができる。
【0030】
図6は、フローダイバータを血管内に設置して動脈瘤を閉塞するための工程の順序を示しているフロー図である。600では、臨床医は、マイクロカテーテルを血管内で動脈瘤の頸部を超えて遠位方向に前進させる。602では、臨床医は、デリバリワイヤの遠位先端をマイクロカテーテルから外へ前進させ、デリバリワイヤの遠位先端を動脈瘤内へガイドする。604では、臨床医は、放射線画像撮影装置によって、デリバリワイヤの遠位先端が動脈瘤の内部に位置することを確認する。放射線画像撮影装置には、例えば、蛍光透視検査、デジタル血管撮影、回転血管造影、コンピュータ断層撮影(CT)、又はコーンビームCTなどが挙げられ得る。606では、臨床医は、マイクロカテーテルからフローダイバータを配備する。608では、デリバリワイヤの遠位先端が動脈瘤の頸部を超えて血管用フローダイバータのメッシュカバーをガイドすると同時に、血管用フローダイバータの自己展開式フレームが血管の内壁に対して開くように、臨床医は、デリバリワイヤの位置を維持しながらマイクロカテーテルを近位方向に引き戻す。610では、臨床医は、デリバリワイヤをマイクロカテーテル内に引き戻す。612では、臨床医は、デリバリワイヤ及びマイクロカテーテルを患者から引き出す。
【0031】
開示される技術の原理と特徴とを理解するのを容易にするために、例示的な実施例を既に説明してきた。開示される技術のさまざまな要素を構成するものとして説明される構成要素は、例示的なものであって、制限的なものではないと意図されている。本明細書に説明された構成要素と同じか又は類似の機能を果たす多くの好適な構成要素は、開示される電子装置及び方法の範囲内に含まれることを意図されている。本明細書において説明されていない他の構成要素には、例えば、開示される技術の開発後に開発された構成要素が挙げられ得るが、それに限られない。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象をも含むことにもまた、留意しなければならない。
【0033】
「含む(comprising)」又は「含有する(containing)」又は「含む(including)」は、少なくとも言及された構成要素、要素、又は方法工程が物品又は方法において存在することを意味するが、他の構成要素、材料、要素、方法工程の存在を、これらの他の構成要素、材料、要素、方法工程が言及されたものと同じ機能を有する場合であっても、除外するものではない。
【0034】
また、1つ又は2つ以上の方法工程への言及が、明示的に特定されたそれらの工程間の追加の方法工程又は介在する方法工程の存在を除外しないことも理解されたい。同様に、装置又はシステムの1つ又は2つ以上の構成要素への言及が、明示的に特定された構成要素間の追加の構成要素又は介在する構成要素の存在を排除しないことも理解されたい。
【0035】
本出願書において説明される設計及び機能性は、本質的に例示的なものであることを意図され、本開示をいかなる方法でも制限することを意図されない。当事者であれば、本開示の教示するところのものは、本明細書において開示される形態及び当業者に知られている追加的形態を含む、さまざまな好適な形態で実施し得るということを理解するであろう。
【0036】
本開示のある実施例が現段階で最も実用的な形態と考えられるもの、及びさまざまな実施例と関連させてここまで説明されてきたが、ということが理解されるべきである。本開示は、開示された実施例に制限されず、むしろ、添付の特許請求の範囲に含まれるさまざまな修正例、均等変形例を含むよう意図される。本明細書において特定の用語が用いられるが、それらは、限定の目的のためではなく、一般的かつ説明的な意味で使用される。
【0037】
この説明書類は例を用いて、本技術のある特定の実施例を開示し、当業者が、例えば、任意の装置又はシステムを作製し使用すること、及び任意の組み込まれた方法を実行することを含む、本技術のある特定の実施例を実践することを可能にするものである。本技術のある特定の実施例の特許請求可能な範囲は、請求項に定義されるが、当業者が考えつくその他の実施例を含み得る。そのような他の例は、それらが、特許請求の範囲の字義通りの言語と異ならない構造的要素を有する場合、又はそれらが、特許請求の範囲の字義通りの言語とごくわずかに異なる均等の構造的要素を含む場合、請求項の範囲内であることが意図される。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 血管用フローダイバータであって、
メッシュカバー及び開口部を備える管状メッシュフレーム構造を備え、
前記管状メッシュフレーム構造は、折り畳み可能であり、かつ、前記血管用フローダイバータが配備されると折り畳まれた形状から管形状へ展開するように構成されており、
前記メッシュカバーが、前記管状メッシュの前記形状と適合し、かつ、前記管状メッシュフレーム構造によって囲まれており、
前記開口部が前記メッシュカバーの内部に位置しており、
前記管状メッシュフレーム構造が前記メッシュカバーよりも多孔性が高い、血管用フローダイバータ。
(2) 前記管状メッシュフレーム構造が円形断面を有する、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
(3) 前記メッシュカバーが、丸みを帯びた外周を有する、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
(4) 前記メッシュカバーが円形の外周を有する、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
(5) 前記メッシュカバーが前記管状メッシュフレーム構造と一体化されている、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
【0039】
(6) 前記メッシュカバーが、前記管状メッシュフレーム構造と別個であり、かつ、前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
(7) 前記メッシュカバーが溶接によって前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、実施態様6に記載の血管用フローダイバータ。
(8) 前記メッシュカバーが、前記メッシュカバーのメッシュストランドを前記管状メッシュフレーム構造のメッシュストランドと織り交ぜることによって前記管状メッシュフレーム構造に取り付けられている、実施態様1に記載の血管用フローダイバータ。
(9) 血管用フローダイバータを配備するための装置であって、
管状外壁、遠位端、及び近位端を備えるマイクロカテーテルであって、前記遠位端は横断方向開口部及び長手方向開口部を備えており、前記長手方向開口部が前記横断方向開口部と交差している、マイクロカテーテルと、
遠位セクション、近位セクション、及び前記遠位セクションと前記近位セクションとの間の接合部を備えるデリバリワイヤであって、
前記遠位セクションが前記近位セクションよりも小さい断面を有し、
前記遠位セクションが、最も近いセクションの最も近い端部から操縦可能であり、前記デリバリワイヤの前記遠位セクションの少なくとも一部分が曲線構造をとるように構成されている、デリバリワイヤと、を備える、装置。
(10) 前記横断方向開口部が前記マイクロカテーテルの長手方向軸に実質的に垂直であり、前記長手方向開口部が前記マイクロカテーテルの前記長手方向軸に実質的に平行である、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
【0040】
(11) 曲線構造をとるように構成されている前記デリバリワイヤの前記遠位セクションの前記一部分は、前記曲線構造に予備形成され、かつ、前記デリバリワイヤの前記遠位セクションが前記マイクロカテーテルから配備されると真っ直ぐな構造から前記曲線構造に戻るように構成されている、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(12) 前記デリバリワイヤの内腔内に位置付けられ、かつ、前記遠位セクションの先端で終端している、プルワイヤを更に備え、
前記プルワイヤの近位端が、前記遠位セクションの少なくとも一部分に前記曲線構造を形成するように引っ張られ得る、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(13) 前記遠位セクションと前記近位セクションとの間の前記接合部に固定されている放射線不透過性マーカーを更に備える、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(14) 前記遠位セクションの先端に固定されている放射線不透過性マーカーを更に備える、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(15) 前記マイクロカテーテルの前記遠位端に固定されている放射線不透過性マーカーを更に備える、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
【0041】
(16) 前記マイクロカテーテルの前記遠位端に固定されている前記放射線不透過性マーカーが、前記横断方向開口部と前記長手方向開口部の近位端との間に位置している、実施態様15に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(17) 前記マイクロカテーテルの前記遠位端に固定されている前記放射線不透過性マーカーがスプリットリング形状を備える、実施態様16に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(18) 管状メッシュ型血管用フローダイバータの配備時に前記管状メッシュ型血管用フローダイバータを動脈瘤の頸部を覆う位置にガイドするために、前記デリバリワイヤの前記遠位セクションの前記曲線部分が、前記管状メッシュ型血管用フローダイバータに形成されている開口部を通り抜ける、実施態様9に記載の血管用フローダイバータを配備するための装置。
(19) 血管用フローダイバータを配備するための方法であって、
マイクロカテーテルを血管内で動脈瘤の頸部を超えて遠位方向に前進させることと、
デリバリワイヤの遠位先端を前記マイクロカテーテルから外へ前進させることと、
前記デリバリワイヤの前記遠位先端を前記動脈瘤内へガイドすることと、
前記デリバリワイヤの前記遠位先端が前記動脈瘤の前記頸部を超えて前記血管用フローダイバータのメッシュカバーをガイドすると同時に、前記血管用フローダイバータの自己展開式フレームが前記血管の内壁に対して開くように、前記デリバリワイヤの位置を維持しながら前記マイクロカテーテルを近位方向に引き戻すことと、を含む、方法。
(20) 放射線画像撮影装置によって、前記デリバリワイヤの前記遠位先端が前記動脈瘤の内部に位置することを確認することを更に含む、実施態様18に記載の方法。