(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】加速度検出装置およびそれを備える軸受装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/00 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G01P15/00 A
(21)【出願番号】P 2018061212
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克義
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-48239(JP,A)
【文献】特開2015-108595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088906(US,A1)
【文献】特開2008-247145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0250257(US,A1)
【文献】特開平11-157415(JP,A)
【文献】特開平4-184263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1加速度センサと、
前記第1加速度センサとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる第2加速度センサとを備え、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置され、
前記第1加速度センサ、前記第2加速度センサの少なくとも一方の出力を受け、前記第1加速度センサ、前記第2加速度センサの出力信号のレベルをそろえるように調整するレベル調整部をさらに備える
、加速度検出装置。
【請求項2】
前記レベル調整部を通過した後の前記第1加速度センサおよび前記第2加速度センサの出力の差動処理を実行する差動処理部をさらに備える、請求項
1に記載の加速度検出装置。
【請求項3】
第1加速度センサと、
前記第1加速度センサとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる第2加速度センサとを備え、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置され、
前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力とを用いた第1処理と、前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力のいずれか一方を用いた第2処理とを実行するように構成された、検出処理部をさらに備え、
前記検出処理部は、前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力の両方が正常である場合には、前記第1処理を実行し、前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力のいずれか一方が正常であり、他方が正常でない場合には、正常である加速度センサの出力を使用して前記第2処理を実行する
、加速度検出装置。
【請求項4】
第1加速度センサと、
前記第1加速度センサとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる第2加速度センサとを備え、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置され、
前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力の差動信号を出力する差動出力部と、
前記第1加速度センサの出力の正転信号と、前記第2加速度センサの反転信号とを出力する処理を実行する信号出力部とをさらに備える
、加速度検出装置。
【請求項5】
第1加速度センサと、
前記第1加速度センサとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる第2加速度センサとを備え、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置され、
前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力とを受け、前記第1加速度センサの出力と前記第2加速度センサの出力の差動信号と、前記第1加速度センサの出力の正転信号と、前記第2加速度センサの出力の反転信号とを出力する処理を実行する入力処理部をさらに備える
、加速度検出装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の加速度検出装置を備える、軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速度検出装置およびそれを備える軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサの検出精度を高める方法として、国際公開第2015/145489号では1枚の検出基板に対して、検出方向を互いに逆向きとして2つの加速度センサを配置し、これらから差動信号を得ることで構造上のアンバランス問題を解決する方法が提案されている。
【0003】
また、類似の方法として、特許第3129120号公報では2組の圧電素子等の各々について伸び方向と縮み方向が互いに逆向きとなるように設置して、これらから出力される差動信号を検出することで、温度変化による変形を相殺する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/145489号
【文献】特許第3129120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサ筐体から出力される信号をケーブルや無線を介して入力側の制御部が受ける場合、伝送経路で外乱ノイズが重畳されると、制御部は信号とノイズを識別することが困難である。このため、一対のセンサから差動信号を制御部に伝送することが行なわれている。
【0006】
従来は差動信号を出力する場合は、対向する1対のセンサや圧電素子は、物理的に同じ特性のものを使用していた。
【0007】
しかし、加速度センサのS/N比を高めるためには、測定対象から発生する加速度値の上限に近い狭帯域のセンサを使用することが望ましい。ただし、加速度センサでは、想定しない外乱等によりオーバーレンジとなってしまうことも多々あり、安全をみて広帯域センサを使わざるを得ないケースが多い。また、圧電素子方式等の加速度センサは衝撃荷重や突発的な流入電流等の外乱による故障率も高く、冗長性の確保が望まれている。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、その目的は、鉄道車両や建設機械、農機等の外乱ノイズが多い環境下での使用に適した、加速度信号を正確に検出し、さらに冗長性の高い加速度検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の加速度検出装置は、第1加速度センサと、第1加速度センサとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる第2加速度センサとを備える。第1加速度センサと第2加速度センサは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置される。
【0010】
好ましくは、加速度検出装置は、第1加速度センサ、第2加速度センサの少なくとも一方の出力を受け、第1加速度センサ、第2加速度センサの出力信号のレベルをそろえるように調整するレベル調整部をさらに備える。
【0011】
より好ましくは、レベル調整部を通過した後の第1加速度センサおよび第2加速度センサの出力の差動処理を実行する差動処理部をさらに備える。
【0012】
好ましくは、加速度検出装置は、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力とを用いた第1処理と、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力のいずれか一方を用いた第2処理とを実行するように構成された、検出処理部をさらに備える。検出処理部は、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力の両方が正常である場合には、第1処理を実行し、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力のいずれか一方が正常であり、他方が正常でない場合には、正常である加速度センサの出力を使用して第2処理を実行する。
【0013】
好ましくは、加速度検出装置は、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力の差動信号を出力する差動出力部と、第1加速度センサの出力の正転信号と、第2加速度センサの反転信号とを出力する処理を実行する信号出力部とをさらに備える。
【0014】
好ましくは、加速度検出装置は、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力とを受け、第1加速度センサの出力と第2加速度センサの出力の差動信号と、第1加速度センサの出力の正転信号と、第2加速度センサの反転信号とを出力する処理を実行する入力処理部をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加速度検出装置によれば、鉄道車両や建設機械、農機等の外乱ノイズが多い環境下でも、加速度信号を正確に検出でき、さらに故障に対する冗長性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に係る加速度検出装置の構成を示す回路図である。
【
図2】レベル調整部の動作を説明するための波形図である。
【
図3】実施の形態2に係る加速度検出装置の構成を示す回路図である。
【
図4】
図3の信号処理部の構成を示した回路図である。
【
図5】制御部がソフトウェアによる処理を行なう場合について説明するためのフローチャートである。
【
図6】加速度検出装置を含む軸受装置と状態監視装置との構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る加速度検出装置の構成を示す回路図である。
図1を参照して、加速度検出装置1は、第1加速度センサSAと、第2加速度センサSBとを備える。第2加速度センサSBは、第1加速度センサSAとは計測周波数の帯域または加速度の検出範囲が異なる。たとえば、第1加速度センサSAの加速度の検出範囲を-m1~+m1(G)とし、第2加速度センサSBの加速度の検出範囲を-m2~+m2(G)とすると、m1>m2である。したがって、第1加速度センサSAのほうが第2加速度センサSBよりも検出範囲が広く、第2加速度センサSBのほうが強い加振力が加わった場合にオーバーレンジしやすい。その代わりに、第2加速度センサSBの感度は第1加速度センサSAの感度よりも高い。したがって、同じ振動が加わった場合に、第2加速度センサSBのほうが第1加速度センサSAよりも大きな振幅の信号を出力する。
【0019】
第1加速度センサSAと第2加速度センサSBは、加速度検出軸の正方向が互いに逆向きになるように配置される。矢印Xに示す方向に対し、第1加速度センサSAは同じ方向が正であり、第2加速度センサSBは逆方向が正である。
【0020】
加速度検出装置1は、第1加速度センサSA、第2加速度センサSBの少なくとも一方の出力を受け、第1加速度センサSA、第2加速度センサSBの出力信号のレベルをそろえるように調整するレベル調整部20をさらに備える。レベル調整部20は、
図1に示すように、第1加速度センサSA、第2加速度センサSBにそれぞれ対応するレベル調整処理部21,22を含んでもよいが、いずれか一方の加速度センサに対応するレベル調整処理部のみを含むものであっても良い。
【0021】
たとえば、第2加速度センサSBが出力する信号の振幅が、第1加速度センサSAが出力する信号の振幅の2倍であるとすると、レベル調整部20は、第1加速度センサSAの出力をそのまま出力しつつ、第2加速度センサSBが出力する信号の振幅を二分の一に減衰させる処理を行ない、2つの信号のレベルをそろえる。
【0022】
加速度検出装置1は、レベル調整部20を通過した後の第1加速度センサSAおよび第2加速度センサSBの出力の差動処理を実行する差動処理部24をさらに備える。
【0023】
加速度検出装置1は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、第2加速度センサSBの反転信号とを出力する処理を実行する信号出力部10とをさらに備える。このように、実施の形態1に係る加速度検出装置1は、出力信号OUTA~OUTCを使用可能とすることにより、ユーザーは必要に応じて使いやすい出力を用いて加速度を監視することができる。
【0024】
図2は、レベル調整部の動作を説明するための波形図である。
図1、
図2を参照して、波形A1は第1加速度センサSAが出力する波形であり、波形B1は第2加速度センサSBが出力する波形である。振動の基本波形は、波形A1と波形B1で逆相となっている。波形B1は、波形A1の2倍の振幅を有している。そして伝送路において、同相で大きさが等しいノイズが信号に重畳している。
【0025】
波形A2,B2は、レベル調整部20を通過した後の波形である。レベル調整部20は、波形A1をそのまま通過させ、波形B1の振幅を二分の一にする。このとき、波形B2におけるノイズの大きさは元の二分の一となる。
【0026】
信号OUTCは、
図1の差動処理部24の出力である。波形A2から波形B2を減算すると、波形A2に対して基本信号の振幅は2倍となり、ノイズは二分の一となる。したがって、信号のS/N比は改善される。
【0027】
ユーザーは、第1加速度センサSAの出力がそのまま出力された信号OUTAと、第2加速度センサSBの出力が反転出力された信号OUTBと、ノイズが低減された信号OUTCのいずれかを適宜選択して使用することができる。
【0028】
ユーザーは、たとえば、振動が微小な場合は、感度が高い信号OUTBを使用し、振動が大きな場合はレンジの広い信号OUTAを使用することができる。信号OUTBにノイズが重畳していてS/N比が低い場合には、ユーザーは信号OUTCを使用することができる。
【0029】
また、第1加速度センサSA、第2加速度センサSBのうち一方が故障しても、他方の信号を使用することができる。
【0030】
このように、実施の形態1の加速度検出装置によれば、鉄道車両や建設機械、農機等の外乱ノイズが多い環境下でも、加速度信号を正確に検出できる。さらに故障に対する冗長性を高めることができる。
【0031】
[実施の形態2]
実施の形態1の加速度検出装置1は、感度帯域、あるいは最大検出加速度が異なる2つの加速度センサを用いる。そして、2つの加速度センサの検出軸方向が反対向きになるように取り付ける。一方の正方向に設置した第1加速度センサSAからは、振動方向通りの正符号の振幅信号が出力される。他方の逆方向に設置した第2加速度センサSBからは、振動方向とは逆符号の振幅信号が出力される。
【0032】
実施の形態2では、2つ加速度センサからの信号出力を制御部に入力することで、制御部内で後に説明するフレキシブルな処理を可能する。
【0033】
図3は、実施の形態2に係る加速度検出装置の構成を示す回路図である。
図3を参照して、加速度検出装置2は、第1加速度センサSAと、第2加速度センサSBと、検出処理部100とを備える。
【0034】
第1加速度センサSA、第2加速度センサSBについては、実施の形態1と同様に、逆向きに設置され、互いに異なる特性を有している。
【0035】
検出処理部100は、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力とを用いた第1処理と、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力のいずれか一方を用いた第2処理とを実行するように構成される。
【0036】
検出処理部100は、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力の両方が正常である場合には、第1処理を実行し、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力のいずれか一方が正常であり、他方が正常でない場合には、正常である加速度センサの出力を使用して第2処理を実行する。
【0037】
検出処理部100は、入力処理部130と、信号処理部105とを含む。入力処理部130は、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力の差動信号と、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、第2加速度センサSBの出力の反転信号とを出力する処理を実行する。入力処理部130は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、第2加速度センサSBの反転信号とを出力する処理を実行する信号出力部110と、第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力とを受け、レベル調整を行なうレベル調整部120と、差動処理部104とを含む。信号出力部110は、第2加速度センサSBの出力の反転信号を出力する反転回路101を含む。レベル調整部120は、第1加速度センサSA、第2加速度センサSBの出力をそれぞれレベル調整するレベル調整処理部102,103を含む。差動処理部104は、レベル調整処理部102,103でレベル調整された第1加速度センサSAの出力と第2加速度センサSBの出力の差動信号を出力する。
【0038】
信号処理部105は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、反転回路101の出力と、差動処理部104の出力とを受けて、信号OUTを出力する。
【0039】
図4は、
図3の信号処理部の構成を示した回路図である。
図4を参照して、信号処理部105は、信号判定部106と、信号選択部107とを含む。
【0040】
信号判定部106は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、反転回路101の出力とを受け、各々の信号が正常か否かを判定する。たとえば、断線などの異常時には、信号が検出できなくなるため異常であることが判定できる。また、各信号のレベルが予め定められたしきい値を超えることを検出すれば、監視している振動の大きさが大きく、オーバーレンジであると判定することができる。
【0041】
信号判定部106は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と、反転回路101の出力信号のうち、一方が正常で他方が異常である場合には、正常な信号を信号選択部107に選択させる。
【0042】
また、信号判定部106は、監視する振動が微小であり、感度を上げたい場合には、第2加速度センサSBによって振動を検出するように、反転回路101の出力信号(入力Bの反転信号)を信号選択部107に選択させる。
【0043】
また、信号判定部106は、監視する振動が第2加速度センサSBの観測レンジを超える場合には、第1加速度センサSAの正転信号(入力A)を信号選択部107に選択させる。
【0044】
信号判定部106は、第1加速度センサSAの出力の正転信号と反転回路101の出力信号のS/N比が悪い場合には、差動処理部104の出力を信号選択部107に選択させる。
【0045】
このように、信号判定部106および信号選択部107によって信号が選択されることによって、故障時には正常なセンサの出力を使用することができ、ノイズが多い環境では、差動信号によってS/N比が改善された信号を得ることができる。
【0046】
なお、
図4では、検出処理部100がハードウェア回路によって実現される例を示したが、制御部内の処理は、ハードウェア回路による方法、あるいはソフトウェアによる方法のいずれで実施しても良い。
【0047】
図5は、制御部がソフトウェアによる処理を行なう場合について説明するためのフローチャートである。この処理が実行される前に、一方の正方向の加速度センサの帯域や最大加速度の出力レンジと、他方の逆方向の加速度センサの出力レンジが合致するように、入力処理部130内で処理が実行されている。
【0048】
このフローチャートの処理は、振動監視処理のメインルーチンから呼び出され、繰り返し実行され、適宜センサの選択を行なう。
【0049】
まずステップS1において、検出処理部100は、第2加速度センサSBの信号の有無を判断する。第2加速度センサSBの信号が無い場合(S1でNO)、ステップS2に処理が進められ、第2加速度センサSBの信号が有る場合(S1でYES)、ステップS3に処理が進められる。
【0050】
ステップS2では、検出処理部100は、第1加速度センサSAの信号の有無を判断する。第1加速度センサSAの信号が無い場合(S2でNO)、ステップS6に処理が進められ検出処理部100は、センサ故障であると判定する。一方、第1加速度センサSAの信号が有る場合(S2でYES)、ステップS7に処理が進められる。
【0051】
また、ステップS3に処理が進められた場合、検出処理部100は、第1加速度センサSAの信号の有無を判断する。第1加速度センサSAの信号が無い場合(S3でNO)、ステップS9に処理が進められる。一方、第1加速度センサSAの信号が有る場合(S3でYES)、ステップS4に処理が進められる。
【0052】
ステップS4では、検出処理部100は、予め定められたしきい値よりも第2加速度センサSBの出力が大きいか否かを判断することによって、第2加速度センサSBがオーバーレンジか否かを判断する。
【0053】
第2加速度センサSBがオーバーレンジであった場合(S4でYES)、ステップS7に処理が進められる。一方、第2加速度センサSBがオーバーレンジで無かった場合(S4でNO)、ステップS5に処理が進められる。
【0054】
ステップS5では、第2加速度センサSBの出力信号のS/N比が判定値よりも低いか否かが判断される。第2加速度センサSBの出力信号のS/N比が判定値よりも低い場合(S5でYES)、ステップS8に処理が進められる。一方、第2加速度センサSBの出力信号のS/N比が判定値以上である場合(S5でNO)、ステップS9に処理が進められる。
【0055】
以上の処理によって、センサの選択が実行される。ステップS7では第1加速度センサSAが選択される。ステップS8では差動出力が選択される。ステップS9では第2加速度センサSBが選択される。
【0056】
ステップS6において故障と判定されるか、ステップS7,S8,S9によって信号の選択が行なわれた後には、ステップS10において処理はメインルーチンに戻される。
【0057】
以上説明したように、実施の形態1,2で説明した加速度検出装置は、2つの加速度センサの出力のレベル調整と差動処理とを行なうことによって、センサ部やケーブル等の経路で重畳したノイズのレベルを低減でき、高精度な加速度検出が可能となる。
【0058】
また、逆方向側の加速度センサが正方向側センサに比べて感度帯域が狭く、あるいは最大検出加速度が小さい場合に、逆方向の許容レンジを超えた振動を検出した際には、正方向の加速度センサであれば信号を検出できる。
【0059】
また、どちらか1つの加速度センサが故障しても、残りの加速度センサによる振動検出は可能であり冗長性を確保できる。
【0060】
[応用例]
以上の実施の形態1,2で説明した加速度検出装置は、さまざまな加速度の検出に使用することができる。その一例として、軸受に加速度検出装置を装着した軸受装置について説明する。
【0061】
図6は、加速度検出装置を含む軸受装置と状態監視装置との構成を示すブロック図である。
図6を参照して、状態監視装置300は、軸受装置200に組み込まれた加速度検出装置2から信号を受けて、軸受装置200の状態を監視し、異常を検出する。軸受装置200は、例えば工場や発電所などに設置された回転機器に使用される。軸受装置200は転がり軸受212と実施の形態2で説明した加速度検出装置2とを含む。実施の形態2の加速度検出装置2の代わりに、実施の形態1の加速度検出装置1を軸受装置200に組み込んでも良い。この場合には、加速度検出装置1の3つの出力のうち、最も良好に振動を観測できる波形を得ることができる出力が使用される。
【0062】
転がり軸受212は、回転軸219に嵌合された内輪216と、軸受装置200に固定された外輪214と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体218とを含む。
【0063】
状態監視装置300は、アンプ310と、フィルタ320と、A/Dコンバータ330と、データ取得部340と、記憶装置350と、データ演算部360と、表示部370とを含む。
【0064】
加速度検出装置2が出力する電圧波形(以下、振動電圧波形)は、アンプ310において増幅され、フィルタ320において分析に不要な帯域の信号を除去し必要な帯域のみ通過させるバンドパスフィルタ処理と、エンベロープ処理とが行なわれる。A/Dコンバータ330は、アンプ310の出力信号を受ける。データ取得部340は、A/Dコンバータ330からデジタル信号を受けて記憶装置350に測定データを記録する。データ演算部360は、記憶装置350から測定しておいた測定データを読み出してFFT解析等を実施し軸受装置200の状態を監視する。
【0065】
データ演算部360は、監視結果に基づいて軸受装置200の異常の有無を判断する。データ演算部360は、異常の有無を判断した場合、表示部370に判断結果を表示させる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態の加速度検出装置は、軸受装置に組み込んで、軸受の状態監視に好適に使用することができる。
【0067】
また、以上説明した実施の形態では、最大検出加速度が異なる場合について、出力振幅を減衰させる場合を説明したが、振幅を増幅させてレベルを合わせても良い。また、周波数帯域が異なる場合の特性あわせとしては、周波数が高い信号を出力するセンサ対して、ローパスフィルタ等のフィルタによって通過帯域を制限しても良い。
【0068】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1,2 加速度検出装置、10,110 信号出力部、20,120 レベル調整部、21,22,102,103 レベル調整処理部、24,104 差動処理部、100 検出処理部、11,101 反転回路、105 信号処理部、106 信号判定部、107 信号選択部、130 入力処理部、200 軸受装置、212 軸受、214 外輪、216 内輪、218 転動体、219 回転軸、300 状態監視装置、310 アンプ、320 フィルタ、330 A/Dコンバータ、340 データ取得部、350 記憶装置、360 データ演算部、370 表示部、SA 第1加速度センサ、SB 第2加速度センサ。