(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】高分子化合物を含有する電荷制御剤及びトナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20221003BHJP
C08F 246/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
G03G9/097 346
C08F246/00
(21)【出願番号】P 2018098899
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017102622
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】尾森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】島 大和
(72)【発明者】
【氏名】大塚 英之
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-095305(JP,A)
【文献】特開2008-039941(JP,A)
【文献】特開平11-218965(JP,A)
【文献】特開2002-304023(JP,A)
【文献】特開2013-167848(JP,A)
【文献】特開平09-171271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
C08F 246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物と、少なくとも1種のアルケニル基含有化合物との共重合反応生成物である高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【化1】
(式中
、R
1及びR
2は水素原子を表し、R
3がハロゲン原子であり、R
4が置換もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表すものとする。m1およびm2は1である。xは0である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、0.1ないし80モル%であることを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【請求項3】
前記高分子化合物の重量平均分子量(Mw)が、1000ないし100000の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【請求項4】
前記アルケニル基含有化合物が、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~請求項3に記載の高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【請求項5】
請求項1~
4に記載の高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤と着色剤および結着樹脂を含有することを特徴とするトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用のトナーや静電印刷用の粉体塗料の電荷制御に用いられる電荷制御剤に関する。さらには、電子写真用トナー用樹脂組成物及び電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した複写機は、広く普及している。また、近年パソコン等の発展に伴い、電子写真プロセスはレーザープリンターやファクシミリ等にも応用されている。一方、これまでモノクロが主流であった複写機は、カラーへと展開している。
【0003】
一般に電子写真用トナーは、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂等の結着樹脂に、染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤及び帯電性を制御するための電荷制御剤が添加されている。
【0004】
現在電荷制御剤として、アゾ染料系、サリチル酸金属錯体系等が用いられているが、これらの電荷制御剤には、クロム、亜鉛等の金属が含有されており、近年、人や環境に対する安全性の面から問題が提起されている。また、金属による着色の問題からもカラー化へ対応した無色(白色)の電荷制御剤の開発が望まれている。さらには、多くの場合電荷制御剤は低分子の結晶で、凝集などによりトナー中への均一な分散が困難なため、トナーへ添加した場合、帯電量分布が広くなる等の問題が生じる。
【0005】
そこで、カラー化へ対応した無色(白色)の電荷制御剤として、金属元素を含まない電荷制御剤が開発されている。例えば、特許文献1には、チアカリックスアレーン化合物を用いる電荷制御剤が、特許文献2には、ヒダントイン化合物を用いる電荷制御剤が提案されている。このように、金属元素を含有しない電荷制御剤が開発されているが、いずれも分子量が1000以下の低分子であり、溶解や揮発による環境への影響リスクを抑えきれていない。
【0006】
電荷制御剤とトナー樹脂との分散性や相溶性を改善する取り組みとして、電荷制御の効果を有する樹脂をトナー原料に用い、帯電性を制御しようという試みが提案されている。さらに、樹脂のような高分子化合物を用いることにより、人や環境に対する安全性へのリスクを低減することも可能になる。例えば、特許文献3~4には、アクリルアミドスルホン酸又は塩と、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル等とを共重合した高分子化合物を用いることが提案されている。特許文献5には、スルホニルウレア構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体を用いることが提案されている。特許文献6~7には、スルホン酸またはスルホン酸エステルを有するユニットと、サリチル酸誘導体を有するユニットとの重合体を用いることが提案されている。特許文献8~9には、ヒドロキシ安息香酸構造を有するスチレン誘導体とビニル基を含有するモノマーとが共重合した電荷制御樹脂が提案されている。特許文献10には、スルホン酸またはスルホン酸エステルを有するユニットと、安息香酸誘導体を有するユニットとの重合体を用いることが提案されている。
【0007】
このように、トナー樹脂との相溶性改善や環境負荷低減を目的とした高分子化合物を用いる電荷制御の提案が近年多く提案されているが、既存の低分子化合物に比べると改善の余地が残っており、実用化には至らないケースが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-060444号公報
【文献】WO2012-102137号公報
【文献】特開2003-270862号公報
【文献】特開2004-191691号公報
【文献】特開2001-188386号公報
【文献】特開2011-128611号公報
【文献】特開2012-256042号公報
【文献】WO2012-157713号公報
【文献】特開2014-222356号公報
【文献】特開2014-098857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑み、金属元素を含まず、人や環境に対する安全性に優れ、着色自在であり、かつ、帯電量、帯電量分布、帯電の立ち上がり等の帯電特性、特に環境安定性に優れた電荷制御剤、電子写真用トナー用樹脂組成物及びそれらを用いた電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤により前記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下のような電荷制御剤及びトナーである。
【0011】
[1]少なくとも1種の下記一般式(1)で表される化合物と、少なくとも1種のアルケニル基含有化合物との共重合反応生成物である高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【0012】
【0013】
(式中、R1ないしR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、置換カルボニル基、硫黄置換基、アルコキシ基、アルキルウレイド基、置換もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すものとする。C1ないしC2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の基を有する炭素原子を表す。さらに、R1とR2、R3とR4、C1とC2とは互いに結合して環構造を形成していても良い。m1およびm2は0ないし4の整数である。xは0ないし2の整数である。)
【0014】
[2]前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、0.1ないし80モル%であることを特徴とする高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【0015】
[3]前記高分子化合物の重量平均分子量(Mw)が、1000ないし100000の範囲にあることを特徴とする高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【0016】
[4]前記アルケニル基含有化合物が、スチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【0017】
[5]前記高分子化合物は下記一般式(2)で表されるユニットを1ユニット以上含む高分子化合物であることを特徴とする高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤。
【0018】
【0019】
(式中R5は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、置換カルボニル基、硫黄置換基、アルコキシ基、アルキルウレイド基、置換もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すものとする。nは整数である。)
【0020】
[6]前記高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤と着色剤および結着樹脂を含有することを特徴とするトナー。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電荷制御剤は、トナー樹脂への相溶性が高く、均一に分散させることができるため、帯電量、帯電量分布、帯電の立ち上がり等の帯電特性に優れたトナーを得ることができる。また、ほぼ白色の外観をしており、カラートナーに用いる際に色彩的な影響を与えない。さらに、金属元素を含んでいないことや、高分子であるため溶解や揮発の可能性が抑えられており、環境への影響が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明に使用する一般式(1)で表される化合物は、既知の方法によって製造することができる。例えば、マレイン酸無水物と相当する芳香族アミンとを、縮合することによって、本発明に使用する化合物を合成することができる。
【0024】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤は、少なくとも1種の一般式(1)で表される化合物と、少なくとも1種のアルケニル基含有化合物との共重合反応生成物である高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤である。
【0025】
一般式(1)中、R1ないしR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、置換カルボニル基、硫黄置換基、アルコキシ基、アルキルウレイド基、置換もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すものとする。C1ないしC2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の基を有する炭素原子を表す。さらに、R1とR2、R3とR4、C1とC2とは互いに結合して環構造を形成していても良い。m1およびm2は0ないし4の整数である。xは0ないし2の整数である。
【0026】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換カルボニル基、硫黄置換基」としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルウレイドスルホニル基などが挙げられる。
【0027】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換基もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表すもの」における「炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基である。
【0028】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換基もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表すもの」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1ないし8のエポキシアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0029】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換基もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基を表すもの」における「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基又はシクロデシレン基である。
【0030】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換基もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0031】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表すもの」における「芳香族炭化水素基」として、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基のような基をあげることができる。
【0032】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0033】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すもの」における「複素環基」または「縮合多環芳香族基」として、例えば、ピリジル基、トリアジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピラニル基、チオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基のような基をあげることができる。
【0034】
一般式(1)中、R1ないしR4の「置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基、テノイル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0035】
一般式(1)中、C1ないしC2はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の基を有する炭素原子を表す。その「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基、テノイル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0036】
さらに、前記R1とR2、R3とR4、C1とC2とは互いに結合して環構造を形成していても良い。
【0037】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤を生成する共重合反応の有効成分として、前記一般式(1)で表される化合物を単独に使用しても良い、または2種以上併用しても良い。
【0038】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤は、前記一般式(1)で表される化合物がアルケニル基含有化合物(モノマー)と共重合した高分子化合物である。共重合体高分子化合物の中の一般式(1)で表される化合物の含有量は0.1ないし80モル%である。好ましくは、1ないし70モル%である。ただし、これらは一般的な使用方法を説明するものであり、所望する帯電効果が得られるように共重合体を形成するモノマーの用量を適宜変更することができる。
【0039】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤の共重合反応に使用されるアルケニル基含有するモノマーの種類としては公知のものであればいずれも使用できる。前記一般式(1)で表される化合物と共重合して高分子化合物を形成するアルケニル基含有するモノマーとするスチレン系単量体、アクリレート系単量体、メタクリレート系単量体について、以下に例示するがこれらに限定されるものではない。
【0040】
スチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-アミルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-へキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロロスチレン、m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレンなどのスチレンまたはその誘導体などがあげられる。
【0041】
アクリレート系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ドデシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはそのエステル類などがあげられる。
【0042】
メタクリレート系単量体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸またはそのエステル類などがあげられる。
【0043】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤に使用される他のモノマーの例としては、以下の(1)~(18)があげられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレンなどのポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;(7)N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなどのN-ビニル化合物;(8)ビニルナフタレン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体など;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β-不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β-不飽和酸無水物;(16)該α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物およびこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0044】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤は一般式(2)で表されるユニットを1ユニット以上含む高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤である。
【0045】
一般式(2)のR5は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ、シアノ基、置換カルボニル基、硫黄置換基、アルコキシ基、アルキルウレイド基、置換もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すものとする。nは整数である。
【0046】
一般式(2)中、R5の「置換カルボニル基、硫黄置換基」としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルウレイドスルホニル基などが挙げられる。
【0047】
一般式(2)中、R5の「置換基もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表すもの」における「炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,4-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-エチル-2-メチル-プロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基である。
【0048】
一般式(2)中、R5の「置換基もしくは無置換の炭素原子数1ないし18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表すもの」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1ないし8のエポキシアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0049】
一般式(2)中、R5の「置換基もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基を表すもの」における「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基又はシクロデシレン基である。
【0050】
一般式(2)中、R5の「置換基もしくは無置換の炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0051】
一般式(2)中、R5の「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表すもの」における「芳香族炭化水素基」として、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基のような基をあげることができる。
【0052】
一般式(2)中、R5の「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0053】
一般式(2)中、R5の「置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すもの」における「複素環基」または「縮合多環芳香族基」として、例えば、ピリジル基、トリアジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピラニル基、チオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基のような基をあげることができる。
【0054】
一般式(2)中、R5の「置換もしくは無置換の複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表すもの」における「置換基」として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、炭素原子数1ないし8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、スチリル基、ピリジル基、ピリドインドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基、テノイル基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0055】
本発明に使用する一般式(1)で表される化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0056】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有化合物とは共重合して得た高分子化合物の例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0057】
尚、下記構造式では、水素原子は一部省略して記載している。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤において、アルケニル基含有化合物と共重合した高分子化合物は、アルケニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンがあげられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートまたは前記の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものがあげられる。
【0094】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤が共重合体であり、その重合形態としては特に限定されず、ランダム、ブロック、グラフト等の重合形態を採ることができる。また、本発明の電荷制御剤の重合方法としては特に限定されず、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等が挙げられる。
【0095】
本発明の電荷制御剤の重合反応には、重合開始剤が用いられる。本発明の重合に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロル過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過硫酸カリウム等の過硫化物系開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
共重合させるために選択するモノマーの種類によっては、カチオン重合やアニオン重合による重合開始剤を用いることができる。例えば、カチオン重合であれば、硫酸、塩酸、硝酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができる。アニオン重合であれば、リチウム、ナトリウム、カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキサイド、t-ブトキシカリウム、リチウムアルミニウムテトラヒドロキサイド、ピリジン、トリエチルアミンなどを用いることができる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0097】
重合開始剤はモノマー100質量部に対し、0.05~30質量部の濃度で用いられ、好ましくは0.1~15質量部の濃度である。反応温度としては、特に限定するものではなく、使用する溶媒、開始剤、モノマーに応じて設定することができるが、40℃~150℃で重合反応するのが好ましい。
【0098】
本発明の電性制御剤の有効成分とする高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は1000ないし100000であればよいが、好ましくは5000ないし80000である。その重量平均分子量(Mw)は1000より低い場合、トナー樹脂との良好な親和性が期待できなくなり、分散性の向上が得られなくなる。一方、100000より大きい重量平均分子量(Mw)を持つ場合、粘度が高くなりすぎて、トナーとして用いた時に定着性が悪くなる。
【0099】
本発明の電荷制御剤は体積平均粒径(レーザー回折/散乱式粒度測定法)を0.1~20μmの範囲内に調整して用いるのが好ましく、0.1~10μmの範囲内に調整して用いるのが特に好ましい。前記体積平均粒径が0.1μmより小さいと、トナー表面に出現する該電荷制御剤が極めて少なくなり目的の電荷制御効果が得られなくなり、また20μmより大きいと、トナーから欠落する電荷制御剤が増加し、機内汚染などの悪影響が出るため好ましくない。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。
【0100】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤を摩擦帯電性トナーとして使用する際は、電荷制御剤以外に結着樹脂、着色剤、ワックス、その他必要に応じて各種添加剤等を含有する。
【0101】
本発明に使用する電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、結着樹脂に着色剤などとともに添加し、混練し、粉砕する方法(粉砕トナー)、または、重合性の単量体モノマーに一般式(1)で表される化合物を添加し、重合せしめてトナーを得る方法や、重合性の単量体モノマーに一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有モノマーの共重合体(高分子化合物)を分散し、重合せしめてトナーを得る方法がある(重合トナー)。さらに、電荷制御剤を添加する方法として、予めトナー粒子の内部に添加する方法(内添)と、予めトナー粒子を製造し、トナー粒子の表面に添加(外添)する方法がある。
【0102】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤をトナー粒子に内添する場合の好ましい添加量としては結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは、1~10質量部で用いられる。
【0103】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤をトナー粒子に外添する場合は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。また、メカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0104】
また本発明において、一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有化合物との共重合反応生成物である高分子化合物を有効成分とする電荷制御剤は、既知の他の負帯電性の電荷制御剤と併用することができる。併用する好ましい電荷制御剤としては、アゾ系鉄錯体または錯塩、アゾ系クロム錯体または錯塩、アゾ系マンガン錯体または錯塩、アゾ系コバルト錯体または錯塩、アゾ系ジルコニウム錯体または錯塩、カルボン酸誘導体のクロム錯体または錯塩、カルボン酸誘導体の亜鉛錯体または錯塩、カルボン酸誘導体のアルミ錯体または錯塩、カルボン酸誘導体のジルコニウム錯体または錯塩があげられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、更に好ましくは、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸がよい。更にホウ素錯体または錯塩、負帯電性樹脂型電荷制御剤などがあげられる。
【0105】
本発明の高分子化合物である電荷制御剤と他の電荷制御剤を併用する場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して高分子化合物である電荷制御剤以外の電荷制御剤は0.1~10質量部が好ましい。
【0106】
本発明のトナーに使用される結着樹脂の種類として、結着樹脂としては、公知のものであればいずれも使用できる。スチレン系単量体、アクリレート系単量体、メタクリレート系単量体などのビニル重合体、またはこれらの単量体2種類以上からなる共重合体など、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂などがあげられる。
【0107】
前記ビニル重合体、または共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)~(18)があげられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレンなどのポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;(7)N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなどのN-ビニル化合物;(8)ビニルナフタレン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体など;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β-不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β-不飽和酸無水物;(16)該α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物およびこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0108】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、または共重合体は、アルケニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンがあげられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートまたは前記の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものがあげられる。
【0109】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部用いることができ、特に0.03~5質量部用いることが好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼンが好ましい。)、芳香族基およびエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類があげられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン-アクリレート系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0110】
結着樹脂がスチレン-アクリレート系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(以後、THFと略称する)に可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以後、GPCと略称する)による分子量分布で、分子量3千~5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。またTHF可溶分は、分子量分布10万以下の成分が50~90%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千~3万の領域に、最も好ましくは5千~2万の領域にメインピークを有するのがよい。
【0111】
結着樹脂がスチレン-アクリレート系樹脂などのビニル重合体の酸価は、0.1mgKOH/g~100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g~70mgKOH/gが更によく、更に好ましくは0.1mgKOH/g~50mgKOH/gがよい。
【0112】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものがあげられる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、またはビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどの環状エーテルが重合して得られるジオールなどがあげられる。
【0113】
ポリエステル樹脂を架橋させるために3価以上のアルコールを併用することが好ましい。3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタトリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼンなどがあげられる。
【0114】
前記ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのべンゼンジカルボン酸類またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類またはその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸などの不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物などの不飽和二塩基酸無水物などがあげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリト酸、ピロメリト酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシ-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、またはこれらの無水物、部分低級アルキルエステルなどがあげられる。
【0115】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千~5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがトナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分は、分子量10万以下の成分が60~100%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千~2万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがよい。本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたGPCによって測定される。
【0116】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K-0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂および架橋された結着樹脂以外の成分の酸価および含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5~2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤または磁性体などの酸価および含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(1)で算出する。ただしfはKOH濃度のファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S-B)×f×5.61]/W (1)
【0117】
トナーの結着樹脂および結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは35~80℃、特に好ましくは40~75℃である。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。またTgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。本発明の重合トナーにおいて、軟化点が80から140℃の範囲内である結着樹脂が好適に用いられる。結着樹脂の軟化点が80℃未満であると、定着後及び保管時のトナー及びトナーの画像安定性が悪化する恐れがある。一方、軟化点が140℃を超えると、低温定着性が悪化してしまう恐れがある。
【0118】
本発明で使用できる着色剤としては黒色トナーの場合、黒色または青色の染料または顔料粒子があげられる。黒色または青色の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーなどがある。黒色または青色の染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料などもあげられる。
【0119】
カラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として、特に限定することがない、公知のものであればいずれも使用できる。マゼンダ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基性染料、レーキ染料、ナフトール染料、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。前記顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0120】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン、塩基染料レーキ化合物が利用できる。
【0121】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。
【0122】
本発明のトナーは更に、ワックスを含有していてもよい。本発明に用いられるワックスは特に限定しないが、次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス。酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物。またはそれらのブロック共重合体。キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス。みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス。オゾケライト、セレシン、ペテロラタムの如き鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものがあげられる。
【0123】
本発明に使用するワックスは、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために融点が50~140℃であることが好ましく、更には70~120℃であることが好ましい。50℃未満では耐ブロッキング性が低下する傾向があり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなる。
【0124】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現されることができる。
使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃~100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせなどがあげられる。
【0125】
2種のワックスを選択する場合は、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10~100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくく、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくい。この場合、少なくとも一方のワックスの融点が好ましくは70~120℃がよく、更に好ましくは、70~100℃であり、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向がある。
【0126】
本発明のトナーにおいては、これらのワックスの総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、好ましくは0.2~20質量部が用いられ、更に好ましくは0.5~10質量部で用いられるのが効果的である。
【0127】
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。流動性向上剤として、特に限定することがない、公知のものであればいずれも使用できる。微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。流動性向上剤の粒径は、平均一次粒径として0.001~2μmであることが好ましく、特に好ましくは0.002~0.2μmである。
【0128】
本発明のトナーには、他の添加剤として、感光体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上などを目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモンなどや、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナなどの無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。また、これらの無機微粉体は必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンなどの滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムなどの研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子および黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる
【0129】
これらの添加剤は、帯電量コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤、または種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0130】
本発明において、電荷制御剤を前記の如き添加剤およびトナーと一緒に、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ナウターミキサー、V型ミキサー、W型ミキサー、スーパーミキサーなどの混合機により充分に混合攪拌し、トナー粒子表面に均一に外添処理することにより目的とする静電荷現像用トナーを得ることもできる。
【0131】
本発明のトナーは熱的にも安定であり電子写真プロセス時に熱的変化を受けることがなく、安定した帯電特性を保持することが可能である。また、どのような結着樹脂にも均一に分散することから、フレッシュトナーの帯電分布が非常に均一である。そのため、本発明のトナーは未転写、回収トナー(廃トナー)においても、フレッシュトナーと較べて飽和摩擦帯電量、帯電分布とも変化はほとんど認められない。
【0132】
本発明のトナーを製造する方法としては、既知の製造法によって製造することができる。製造方法について例示すると、結着樹脂、電荷制御剤、着色剤などの上述したトナー構成材料をボールミルなどの混合機により十分混合する。その混合物を熱ロールニーダの如き加熱混練装置により良く混練し、冷却固化し、粉砕後、分級して得る方法(粉砕法)が好ましい。
【0133】
また前記混合物を溶媒に溶解させ噴霧により微粒化、乾燥、分級して得る方法でも製造できる。更に、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化または懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法によるトナー製造法、コア材およびシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法によっても製造できる。更に必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合することにより、本発明のトナーを製造することができる。
【0134】
更に本発明に使用する電荷制御剤は、静電粉体塗装用塗料における電荷制御剤(電荷増強剤)としても好適である。すなわち、この電荷増強剤を用いた静電塗装用塗料は、耐環境性、保存安定性、特に熱安定性と耐久性に優れ、塗着効率が100%に達し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。実施例において、「部」は全て「質量部」を表す。
【0136】
合成例1(例示化合物1の合成)
500mlコルベンに無水マレイン酸 23.06g(0.235mol)を量りとり、アセトンを100ml加え、室温・窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた。50mlのアセトンで溶解させた4-クロロアニリン 25.00g( 0.196mol)を滴下ロートよりゆっくり滴下した。室温で2.5時間反応させた後、反応液を氷水1Lに注加し、黄色の析出物を確認後、氷が解けるまで撹拌した。吸引濾過を行い、濾物を終夜60℃で減圧乾燥を行い、中間体43.69gを98.8%の収率で得た。
【0137】
中間体 43.69g(0.194mol)を300mlコルベンに仕込み、酢酸ナトリウムを10.00g、無水酢酸を100ml加え、50℃に昇温し2時間反応させた。反応終了後、反応液を1000ml分液ロートに移液し、トルエン300mlと水300mlを用いて、抽出操作を3回行った。トルエン層を濃縮し、濃縮液に市水を加え、黄色析出物を得た。析出した黄色固体を吸引濾過し、濾物を終夜60℃で減圧乾燥を行った。粗結晶を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、エバポレータにて濃縮乾固することで、黄色固体の目的物 33.82gを83.1%の収率で得た。
【0138】
得られた黄色固体についてNMRを使用して構造を同定し、例示化合物1を得た。1H-NMR(DMSO-d6)の測定結果は、以下であった。7.57ppm(d,2H)、7.39ppm(d、2H)、7.21ppm(s、2H)。また融点は、98.3℃であった。
【0139】
合成例2(例示化合物2の合成)
500mlコルベンに無水マレイン酸 11.34g(0.116mol)を量りとり、アセトンを200ml加え、室温・窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた。o-トルイジン(オルトートルイジン) 10.30g( 0.0962mol)を滴下ロートよりゆっくり滴下した。室温で4時間反応させた後、反応液を氷水500mLに注加し、淡黄色の析出物を確認後、氷が解けるまで撹拌した。吸引濾過を行い、濾物を終夜70℃で減圧乾燥を行い、中間体14.51gを73.5%の収率で得た。
【0140】
中間体 14.51g(0.0707mol)を500mlコルベンに仕込み、p-トルエンスルホン酸を0.5g、トルエンを250ml 、ジメチルアセトアミド(DMA)を25ml加え110℃に昇温し6時間反応させた。反応終了後、反応液をナスフラスコに移液し、エバポレータにてオイルバス80℃、減圧の条件で溶媒(トルエン)が留去しなくなるまで濃縮した。濃縮液を、展開溶媒をトルエンとして用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。フラクションを1000mlナスフラスコに回収し、エバポレータにてオイルバス80℃、減圧の条件で溶媒(トルエン)が留去しなくなるまで濃縮した。終夜60℃で減圧乾燥を行い、12.1g黄色固体、91.0%の収率で得た。
【0141】
得られた黄色固体についてNMRを使用して構造を同定し、例示化合物2を得た。1H-NMR(DMSO-d6)の測定結果は、以下であった。7.37ppm(m,2H)、7.30ppm(m、1H)、7.22ppm(m、3H)、2.07ppm(m、3H)。
【0142】
合成例3(例示化合物3の合成)
合成例2のo-トルイジンをo-メチル-p-クロロアニリンに変えた以外は同様の操作を行い、11.85g淡黄色固体、収率85.4%で得た。
【0143】
得られた淡黄色固体についてNMRを使用して構造を同定し、例示化合物3を得た。1H-NMR(DMSO-d6)の測定結果は、以下であった。7.49ppm(d,1H)、7.39ppm(dd、1H)、7.28ppm(d、1H)、7.22ppm(s、2H)、2.08ppm(s、3H)。
【0144】
合成例4(例示化合物4の合成)
500mlコルベンにトルエンを200ml入れ、脱気及び窒素置換を2時間行った。合成例1で得た例示化合物1を32.35g( 0.156mol)、スチレンを16.23g( 0.156mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.42g( 1.93mmol)を入れ撹拌、窒素下で80℃に加温し、4時間反応を行った。反応終了後、反応液をメタノール3Lに少しずつ注加し、白色固体を析出させた。吸引濾過を行い、濾物を終夜60℃で減圧乾燥を行い、46.11g白色固体、収率94.6%で得た。
【0145】
得られた白色固体の構造同定に関して、1H-NMR(DMSO-d6)を測定し、無水マレイン酸の二重結合部位由来のプロトンの消失と、高分子化されたことによるピークのブロード化により例示化合物1とスチレンとの共重合体である例示化合物4を確認した。観測されたピークは、7.50ppm、7.18ppmであった。
【0146】
得られた例示化合物4についてGPCを使用して分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が51353であった。
【0147】
合成例5(例示化合物5の合成)
300mlコルベンにトルエンを100ml入れ、脱気及び窒素置換を2時間行った。合成例2で得た例示化合物2を12.00g( 0.0641mol)、スチレンを6.68g( 0.0641mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.11g( 0.641mmol)を入れ撹拌、窒素下で80℃に加温し、4時間反応を行った。反応終了後、反応液をメタノール2Lに少しずつ注加し、白色固体を析出させた。吸引濾過を行い、濾物を終夜70℃で減圧乾燥を行い、15.92g白色固体、収率85.2%で得た。
【0148】
得られた白色固体の構造同定に関して、1H-NMR(DMSO-d6)を測定し、無水マレイン酸の二重結合部位由来のプロトンの消失と、高分子化されたことによるピークのブロード化により例示化合物2とスチレンとの共重合体である例示化合物5を確認した。観測されたピークは、7.29ppm、2.03ppmであった。
【0149】
得られた例示化合物5についてGPCを使用して分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が66148であった。
【0150】
合成例6(例示化合物6の合成)
300mlコルベンにトルエンを80ml入れ、脱気及び窒素置換を2時間行った。合成例3で得た例示化合物3を11.85g( 0.0535mol)、スチレンを6.68g( 0.0535mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.16g( 0.932)mmol)を入れ撹拌、窒素下で80℃に加温し、4時間反応を行った。反応終了後、反応液をメタノール1Lに少しずつ注加し、白色固体を析出させた。吸引濾過を行い、濾物を終夜60℃で減圧乾燥を行い、14.47g白色固体、収率82.6%で得た。
【0151】
得られた白色固体の構造同定に関して、1H-NMR(DMSO-d6)を測定し、無水マレイン酸の二重結合部位由来のプロトンの消失と、高分子化されたことによるピークのブロード化により例示化合物3とスチレンとの共重合体である例示化合物6を確認した。観測されたピークは、7.34ppmであった。
【0152】
得られた例示化合物6についてGPCを使用して分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が78043であった。
【0153】
[帯電量の測定方法]
ブローオフ帯電量測定機(TB-200型、東芝ケミカル社製)を用いて、上記合成した高分子化合物である電荷制御剤またはトナーを帯電させた後、各環境における初期帯電量及び飽和帯電量(帯電時間30分)の測定を行った。 ブローオフ帯電量測定条件は以下である。
現像剤量:0.2000g±0.005g、
ブロー時間:60秒、
N2ブロー圧:0.2kgf/cm2(シリコンコートF96-150)、
T/C=4%、
ボールミル回転数:110rpm。
【0154】
[実施例1]
[電荷制御剤である化合物単独での帯電量測定]
合成例4で得られた高分子化合物(例示化合物No.4)を、シリコンコート系のフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製、F96-150)100部に対して0.5部の割合で混合して振とうし、合成例4で得られた化合物を帯電させる。帯電させた後、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル社製、TB-200型)を用いて、温度25℃、湿度50%の雰囲気下(NN環境下)における飽和帯電量の測定を行った。また、ノンコートキャリア((パウダーテック株式会社製、F-150)についても同様の測定を行った。帯電量測定結果を表1に示す。
【0155】
[疑似トナーの帯電量測定]
ポリエステル系樹脂(三菱レイヨン株式会社製、商品名FC-316、酸価9mgKOH/g)91部、合成例4で合成した高分子化合物(例示化合物No.4)1部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名MA-100)5部および低分子量ポリプロピレン(三洋化成株式会社製、商品名ビスコール550P)3部を130℃の加熱混合装置(2軸押出混練機)によって溶融混合した。冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕し、分級して体積平均粒径9±0.5μmの非磁性トナーを得た。
【0156】
得られた非磁性トナーをシリコンコート系のフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製F96-150)と4対100質量部(トナー:キャリア)の割合で混合振とうしてトナーを負に帯電させた後、ブローオフ粉体帯電量測定機(東芝ケミカル社製、TB-200型)を用いて、温度25℃、湿度50%の雰囲気下(NN環境下)で飽和帯電量を測定した。結果を表1に示す。また、ノンコートキャリア((パウダーテック株式会社製、F-150)についても同様の測定を行った。帯電量測定結果を表1に示す。
【0157】
[実施例2~3]
実施例1と同じ方法で、合成例5または合成例6で得られた高分子化合物(例示化合物No.5または例示化合物No.6)単独での飽和帯電量測定を行った、結果を表1に示す。
【0158】
実施例1と同じ方法で、合成例5または合成例6で得られた高分子化合物を用いて疑似トナーを作成し、得られた非磁性トナーの飽和帯電量測定を行った、結果を表1に示す。
【0159】
[比較例1]
比較するため、下記構造式の高分子化合物である比較化合物1を合成した。
【0160】
【0161】
比較化合物1を共重合する原料である中間化合物の合成は以下のように行った。300mlコルベンに4-アミノ安息香酸10.0g(0.073mol)を量りとり、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml加え、室温・窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた。30mlのDMFに溶解させた無水マレイン酸7.85g(0.080mol)を滴下ロートよりゆっくり滴下した。室温で4時間反応させた後、反応液を氷水1Lに注加し、黄色の析出物を確認後、氷が解けるまで撹拌した。吸引濾過を行い、濾物を終夜70℃で減圧乾燥を行い、中間体17.1gを99.5%の収率で得た。
【0162】
中間体10.0g(0.043mol)を1000mlコルベンに仕込み、p-トルエンスルホン酸を2g、トルエンを500ml、N-メチルピロリドンを100ml、ジメチルアセトアミドを50ml加え、110℃に昇温し7時間反応させた。反応終了後、反応液をナスフラスコに移液し、エバポレータにてオイルバス100℃、減圧の条件で溶媒が留去しなくなるまで濃縮した。濃縮液を500mlの氷水中に注加した。析出した黄色固体を吸引濾過し、濾物を終夜70℃で減圧乾燥を行い、8.8g淡黄色固体、95.3%の収率で得た。
【0163】
得られた淡黄色固体についてNMRを使用して構造を同定し、比較化合物1を共重合する原料である中間化合物を得た。1H-NMR(DMSO-d6)の測定結果は、以下であった。8.05ppm(d,2H)、7.50ppm(d、2H)、7.22ppm(s、2H)。また、融点は、233℃であった。
【0164】
100mlコルベンにジメチルホルムアミド(DMF)を50ml入れ、脱気及び窒素置換を2時間行った。得られた比較化合物1の中間化合物を5.0g(0.023mol)、スチレンを2.4g(0.023mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.1g(0.460mmol)を入れ撹拌、窒素下で80℃に加温し、4時間反応を行った。反応終了後、反応液をメタノール1Lに少しずつ注加し、白色固体を析出させた。吸引濾過を行い、濾物を終夜70℃で減圧乾燥を行い、5.17g白色固体、収率69.9%で得た。
【0165】
得られた白色固体の構造同定に関して、1H-NMR(DMSO-d6)を測定し、無水マレイン酸の二重結合部位由来のプロトンの消失と、高分子化されたことによるピークのブロード化によりマレイミド-スチレン共重合体である比較化合物1が確認できた。観測されたピークは、7.99ppm、7.15ppmであった。プロトン比より比較化合物1の中間化合物:スチレンの組成は、55:45であった。
【0166】
得られた比較化合物1についてGPCを使用して分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)が66300であった。
【0167】
実施例1と同様な方法で電荷制御剤とする比較化合物1単独での飽和帯電性及び比較化合物1を用いて作った疑似トナーの飽和帯電性を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0168】
[比較例2]
比較のために、市販の電荷制御剤(T-77:有色アゾ錯体、保土谷化学工業株式会社製)を比較化合物として、実施例1と同様な方法で電荷制御剤である化合物単独での飽和帯電性及び疑似トナーの飽和帯電性を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0169】
[比較例3]
比較のために、市販の電荷制御剤(TN-105:白色サリチル酸錯体、保土谷化学工業株式会社製)を比較化合物として、実施例1と同様な方法で電荷制御剤である化合物単独での飽和帯電性及び疑似トナーの飽和帯電性を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0170】
【0171】
表1の摩擦帯電評価の結果から、合成した一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有化合物との共重合体は、負の帯電性を示した。その飽和帯電量の値は市販の電荷制御剤と比べて優れた帯電性能であった。本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有化合物との共重合体は、金属を含まない化合物であり、人や環境に対する安全性に優れる。また、ほぼ白色であることから、自在に着色して用いることができる。さらに、分子量が1000より大きい高分子からなるため、電子写真におけるトナー樹脂との分散性や相溶性を改善することができる。よって、本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物とアルケニル基含有化合物との共重合体は高分子化合物電荷制御剤として確実に有用である。
【0172】
表1の疑似トナー帯電結果から、本発明の高分子化合物である電荷制御剤を用いて作ったトナーは市販した有色トナーまたは白色トナーと比べても、遜色ない帯電性能を有することであった、本発明の高分子化合物である電荷制御剤は優れた帯電付与効果があることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物を用いてアルケニル基含有化合物との共重合体である高分子化合物は、優れた帯電性能を有している。また、環境問題で懸念されるクロム化合物などの重金属も含まれず人や環境に対する安全性に優れている。さらに、カラートナー用の電荷制御剤として適しており、粉砕トナー用としても重合トナー用としても極めて有用なトナーを提供することができる。