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特許7150477被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/00 20060101AFI20221003BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20221003BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B62D53/00 E
B01D46/00 E
B60T17/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102196
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206245
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社シー・エム出版社,月刊コマーシャルモーター5月号,第49巻,第5号,通巻646号,第10頁,平成30年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】596148478
【氏名又は名称】クノールブレムゼ商用車システムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】流田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19931162(DE,A1)
【文献】特表2019-512426(JP,A)
【文献】国際公開第2017/167702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/00
B01D 46/00
B60T 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気に含まれる不純物を除去する不純物除去装置と、前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置を経由して、前記圧縮空気を利用する利用装置に流出する圧縮空気流通装置とを備える被牽引車両用の不純物除去システムであって、
前記圧縮空気流通装置は、
前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置に流出する入口部と、
前記不純物除去装置から前記圧縮空気を流入し、前記利用装置に流出する出口部と、
前記入口部と出口部との間を連通する連通部と、
前記入口部と前記出口部との間の前記圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で前記連通部に設けられる弁部と、を備え、
前記弁部は、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記入口部から前記出口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第2の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記出口部から前記入口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する、
ことを特徴とする被牽引車両用の不純物除去システム。
【請求項2】
前記弁部は、
前記連通部を閉塞することで前記弁部を閉弁状態とする弾性部材と、
貫通孔を有し、前記貫通孔を前記弾性部材により閉塞した状態で前記弾性部材を押さえる押さえ部材と、
前記弾性部材が前記連通部を閉塞する閉塞位置を維持するように、前記圧縮空気の空気圧に逆らう方向に前記押さえ部材を付勢する第1の付勢部材と、を備え、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が前記第1の所定値よりも高い場合、前記第1の付勢部材が圧縮して前記弾性部材が前記閉塞位置から前記連通部を開放する開放位置に移動することで、前記弁部は前記第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第2の所定値よりも高い場合、前記弾性部材が変形して前記貫通孔を開放することで、前記弁部は前記第2の開弁状態に移行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の被牽引車両用の不純物除去システム。
【請求項3】
前記不純物除去装置は、
前記入口部から前記圧縮空気を流入する流入部と、
前記出口部に前記圧縮空気を流出する流出部と、
前記流入部から前記圧縮空気を流入し、前記圧縮空気に含まれる前記不純物を除去し、前記不純物を除去した前記圧縮空気を前記流出部に流出するフィルタ部と、
前記流出部に対する前記流入部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第3の所定値よりも高い場合、前記フィルタ部を経由せずに前記流入部から前記流出部への前記圧縮空気の流通を可能にするバイパス機構と、を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被牽引車両用の不純物除去システム。
【請求項4】
前記バイパス機構は、
前記流入部と前記流出部との間を連通するバイパス部と、
前記フィルタ部が前記バイパス部を閉塞する閉塞位置を維持するように、前記圧縮空気の空気圧に逆らう方向に前記フィルタ部を付勢する第2の付勢部材と、を備え、
前記流出部に対する前記流入部の圧力差が前記第3の所定値よりも高い場合、前記第2の付勢部材が圧縮して前記フィルタ部が前記閉塞位置から前記バイパス部を開放する開放位置に移動することで、前記フィルタ部を経由せずに前記流入部から前記流出部への前記圧縮空気の流通を可能にする、
ことを特徴とする請求項3に記載の被牽引車両用の不純物除去システム。
【請求項5】
牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気を流入し、前記圧縮空気に含まれる不純物を除去する不純物除去装置を経由して、前記圧縮空気を利用する利用装置に流出する被牽引車両用の圧縮空気流通装置であって、
前記圧縮空気流通装置は、
前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置に流出する入口部と、
前記不純物除去装置から前記圧縮空気を流入し、前記利用装置に流出する出口部と、
前記入口部と出口部との間を連通する連通部と、
前記入口部と前記出口部との間の前記圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で前記連通部に設けられる弁部と、を備え、
前記弁部は、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記入口部から前記出口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第2の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記出口部から前記入口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する、
ことを特徴とする被牽引車両用の圧縮空気流通装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気に含まれる不純物を除去する被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牽引車両と被牽引車両とを連結し、牽引車両が被牽引車両を牽引して走行する際に、牽引車両では、油分や水分等の不純物を除去した圧縮空気を被牽引車両に供給し、被牽引車両では、牽引車両から供給される圧縮空気を、ブレーキ装置やサスペンション装置等の利用装置に利用することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、牽引車両に搭載されたエアドライヤでコンプレッサから送られる圧縮空気中の油分や水分を除去する圧縮空気乾燥システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、牽引車両からエマージェンシライン及びサービスラインを介して被牽引車両に供給される圧縮空気を利用する被牽引車両のブレーキ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-49870号公報
【文献】特開2002-211370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された圧縮空気乾燥システムでは、牽引車両に搭載されたエアドライヤのフィルタで動作不良が発生し、不純物が十分に除去されていない状態の圧縮空気が被牽引車両に供給された場合、被牽引車両において圧縮空気を利用する利用装置の故障や凍結が発生し、例えば、ブレーキの引き摺り等の重大事故の原因になり得る。そのため、被牽引車両にフィルタを搭載することが考えられるが、被牽引車両に搭載されたフィルタで動作不良が発生した場合には、利用装置に対する圧縮空気の供給が停止することになるため、被牽引車両の安全性を確保することができない。
【0007】
また、特許文献2に記載された被牽引車両のブレーキ装置では、圧縮空気が、牽引車両からエマージェンシライン及びサービスラインを介して被牽引車両に供給されるが、牽引車両と被牽引車両とが切り離された場合には、利用装置側の残圧を抜くことにより、駐車ブレーキを確実に作動させて、被牽引車両の安全性を確保する必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、牽引車両から被牽引車両に供給される圧縮空気に含まれる不純物を除去するとともに、動作不良が発生した場合であっても圧縮空気の流通を可能とすることで、被牽引車両の安全性を向上することができる被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システムは、
牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気に含まれる不純物を除去する不純物除去装置と、前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置を経由して、前記圧縮空気を利用する利用装置に流出する圧縮空気流通装置とを備える被牽引車両用の不純物除去システムであって、
前記圧縮空気流通装置は、
前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置に流出する入口部と、
前記不純物除去装置から前記圧縮空気を流入し、前記利用装置に流出する出口部と、
前記入口部と出口部との間を連通する連通部と、
前記入口部と前記出口部との間の圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で前記連通部に設けられる弁部と、を備え、
前記弁部は、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記入口部から前記出口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第2の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記出口部から前記入口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システムは、
前記弁部は、
前記連通部を閉塞することで前記弁部を閉弁状態とする弾性部材と、
貫通孔を有し、前記貫通孔を前記弾性部材により閉塞した状態で前記弾性部材を押さえる押さえ部材と、
前記弾性部材が前記連通部を閉塞する閉塞位置を維持するように、前記圧縮空気の空気圧に逆らう方向に前記押さえ部材を付勢する第1の付勢部材と、を備え、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が前記第1の所定値よりも高い場合、前記第1の付勢部材が圧縮して前記弾性部材が前記閉塞位置から前記連通部を開放する開放位置に移動することで、前記弁部は前記第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第2の所定値よりも高い場合、前記弾性部材が変形して前記貫通孔を開放することで、前記弁部は前記第2の開弁状態に移行する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システムは、
前記不純物除去装置は、
前記入口部から前記圧縮空気を流入する流入部と、
前記出口部に前記圧縮空気を流出する流出部と、
前記流入部から前記圧縮空気を流入し、前記圧縮空気に含まれる前記不純物を除去し、前記不純物を除去した前記圧縮空気を前記流出部に流出するフィルタ部と、
前記流出部に対する前記流入部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第3の所定値よりも高い場合、前記フィルタ部を経由せずに前記流入部から前記流出部への前記圧縮空気の流通を可能にするバイパス機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システムは、
前記バイパス機構は、
前記流入部と前記流出部との間を連通するバイパス部と、
前記フィルタ部が前記バイパス部を閉塞する閉塞位置を維持するように、前記圧縮空気の空気圧に逆らう方向に前記フィルタ部を付勢する第2の付勢部材と、を備え、
前記流出部に対する前記流入部の圧力差が前記第3の所定値よりも高い場合、前記第2の付勢部材が圧縮して前記フィルタ部が前記閉塞位置から前記バイパス部を開放する開放位置に移動することで、前記フィルタ部を経由せずに前記流入部から前記流出部への前記圧縮空気の流通を可能にする、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る被牽引車両用の圧縮空気流通装置は、
牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気を流入し、前記圧縮空気に含まれる不純物を除去する不純物除去装置を経由して、前記圧縮空気を利用する利用装置に流出する被牽引車両用の圧縮空気流通装置であって、
前記圧縮空気流通装置は、
前記圧縮空気を流入し、前記不純物除去装置に流出する入口部と、
前記不純物除去装置から前記圧縮空気を流入し、前記利用装置に流出する出口部と、
前記入口部と出口部との間を連通する連通部と、
前記入口部と前記出口部との間の前記圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で前記連通部に設けられる弁部と、を備え、
前記弁部は、
前記出口部に対する前記入口部の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記入口部から前記出口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行し、
前記入口部に対する前記出口部の圧力差が前記第1の所定値よりも低く設定された第2の所定値よりも高い場合、前記不純物除去装置を経由せずに前記出口部から前記入口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置によれば、弁部が、入口部と出口部との間の前記圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で連通部に設けられているため、牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気を、不純物除去装置を経由して利用装置に送ることで、不純物除去装置により圧縮空気に含まれる不純物が除去されるので、圧縮空気に含まれる不純物により利用装置の故障や凍結が発生することを抑制することができ、被牽引車両の安全性を向上することができる。
【0015】
また、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置によれば、不純物除去装置で動作不良が発生し、出口部に対する入口部の圧力差が第1の所定値よりも高い場合には、弁部が、不純物除去装置を経由せずに入口部から出口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行するため、牽引車両から牽引車両に供給される圧縮空気を、不純物除去装置を経由せずに利用装置に送ることで、不純物除去装置で動作不良が発生した場合であっても利用装置に対する圧縮空気の供給が停止することがないので、被牽引車両の安全性を向上することができる。
【0016】
また、本発明に係る被牽引車両用の不純物除去システム及び圧縮空気流通装置によれば、牽引車両と被牽引車両とが切り離された際に、入口部に対する出口部の圧力差が第2の所定値よりも高い場合には、弁部が、出口部から入口部への前記圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行するため、利用装置側の残空気を、不純物除去装置を経由せずに排出することで、不純物除去装置で動作不良が発生した場合であっても利用装置側の残圧を抜くことできるので、被牽引車両の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステム1の全体構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るオイルセパレータ2の斜視図を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るオイルセパレータ2の断面図を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る弾性部材330及び押さえ部材331を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)はA-A線断面図を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るばね受け部材333を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る弁部33の動作状態を示すB部の拡大断面図であり、(a)は閉弁状態、(b)は第1の開弁状態、(c)は第2の開弁状態を示す図である。
図7】オイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示し、(a)はハウジング3の弁部33が閉弁状態である場合、(b)はフィルタカートリッジ4のバイパス機構43がフィルタバイパス状態に移行する場合を示す図である。
図8】オイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示し、(a)はハウジング3の弁部33が第1の開弁状態に移行する場合、(b)はハウジング3の弁部33が第2の開弁状態に移行する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステム1の全体構成の一例を示す図である。ブレーキシステム1は、トラクタ10と、トラクタ10に牽引されて走行するトレーラ20とに対して、ブレーキを作動させるためのシステムである。
【0020】
トラクタ10は、エンジン(図示省略)により駆動されるコンプレッサ11と、コンプレッサ11から送られる圧縮空気に含まれる油分、水分、微粒子等の不純物を除去するエアドライヤ12と、エアドライヤ12で除去されたオイル等の不純物を回収するオイルキャッチタンク13と、エアドライヤ12を通過し、不純物が除去された圧縮空気を蓄えるエアタンク14と、ブレーキペダルの操作量に連動して開閉されるリレーバルブ15と、リレーバルブ15に接続されてトラクタ10の車輪に対して制動力を付与するブレーキチャンバ16と、ブレーキペダルの操作量に連動して開閉されて、ブレーキペダルの操作量に応じた制御圧の圧縮空気を出力するトレーラコントロールバルブ17と、トレーラ20に圧縮空気を供給するサプライカップリング100及びコントロールカップリング101とを備える。
【0021】
トレーラ20は、サプライカップリング200及びコントロールカップリング201を備え、トラクタ10側のサプライカップリング100及びコントロールカップリング101にそれぞれ接続されることで、サプライライン210及びコントロールライン211という2つの系統を介して圧縮空気が供給される。また、トレーラ20は、連結機構(図示省略)を介して切り離し可能な状態で機械的及び電気的にトラクタ10に接続されている。
【0022】
また、トレーラ20は、サプライライン210の途中に設けられたオイルセパレータ2(不純物除去システム)と、サプライライン210及びコントロールライン211に接続されたリレーエマージェンシーバルブ21と、サプライライン210を介して供給される圧縮空気を蓄えるエアタンク22と、リレーエマージェンシーバルブ21に接続されてトレーラ20の車輪に対して制動力を付与するスプリングブレーキチャンバ23とを備える。
【0023】
リレーエマージェンシーバルブ21は、サプライライン210を介して供給される圧縮空気をエアタンク22に供給するとともに、トレーラコントロールバルブ17からコントロールライン211を介して供給される圧縮空気の制御圧に応じて、スプリングブレーキチャンバ23に圧縮空気を供給する。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係るオイルセパレータ2の斜視図を示す図である。図3は、本発明の実施の形態に係るオイルセパレータ2の断面図を示す図である。オイルセパレータ2は、トラクタ10からサプライライン210を介してトレーラ20に供給される圧縮空気から油分、水分、微粒子等の不純物を除去するフィルタカートリッジ4(不純物除去装置)と、トラクタ10からサプライライン210を介してトレーラ20に供給される圧縮空気を流入し、フィルタカートリッジ4を経由して、圧縮空気を利用する利用装置に流出するハウジング3(圧縮空気流通装置)とを備える。フィルタカートリッジ4は、ハウジング3の下側に脱着可能な状態で装着されている。
【0025】
本実施の形態では、圧縮空気を利用する利用装置は、ハウジング3の下流側に設けられた装置であり、リレーエマージェンシーバルブ21、エアタンク22及びスプリングブレーキチャンバ23が含まれる。なお、利用装置は、圧縮空気を利用する装置であればよく、例えば、サスペンション装置でもよい。
【0026】
ハウジング3は、サプライライン210を介して供給される圧縮空気を流入し、フィルタカートリッジ4に流出する入口部30と、フィルタカートリッジ4から圧縮空気を流入し、リレーエマージェンシーバルブ21に流出する出口部31と、入口部30と出口部31との間を連通する連通部32と、連通部32に設けられる弁部33と、トレーラ20の車体にボルト等により取り付けられる取付部34とを備える。
【0027】
入口部30、出口部31及び連通部32は、ハウジング3の外壁内部に中空円筒状に形成されることで圧縮空気が流れる流路として機能し、入口部30、連通部32及び出口部31の順で水平方向に隣接した位置に配置されている。
【0028】
入口部30は、サプライライン210に接続されて、サプライライン210を介して供給される圧縮空気を流入する上流接続口300と、フィルタカートリッジ4が装着されて、圧縮空気をフィルタカートリッジ4に流出するフィルタ取付口301と、上流接続口300の内側に形成された第1の入口部流路302と、フィルタ取付口301の内側に形成された第2の入口部流路303とを備える。
【0029】
第1の入口部流路302は、上流接続口300と連通部32との間を水平方向に連通する流路である。第2の入口部流路303は、第1の入口部流路302と直角をなすように第1の入口部流路302に接続され、第1の入口部流路302における連通部32側の位置とフィルタ取付口301との間を鉛直方向に連通する流路である。フィルタ取付口301の外周面には、雄ネジが形成されており、フィルタカートリッジ4に形成された雌ネジと螺合することで、フィルタカートリッジ4がハウジング3に装着される。
【0030】
出口部31は、フィルタカートリッジ4から圧縮空気を流入するフィルタ連通口310と、リレーエマージェンシーバルブ21に連通する配管に接続されて、圧縮空気をリレーエマージェンシーバルブ21に流出する下流接続口311と、下流接続口311の内側に形成された第1の出口部流路312と、フィルタ連通口310の内側に形成された第2の出口部流路313とを備える。
【0031】
第1の出口部流路312は、下流接続口311と連通部32との間を水平方向に連通する流路である。第2の出口部流路313は、第1の出口部流路312と直角をなすように第1の出口部流路312に接続され、第1の出口部流路312における連通部32側の位置とフィルタ連通口310との間を鉛直方向に連通する流路である。
【0032】
連通部32は、入口部30側に設けられた第1の連通口320と、第1の連通口320の直径より大きな直径を有し、出口部31側に設けられた第2の連通口321と、第1の連通口320と第2の連通口321との間に形成される段差面322とを備える。
【0033】
弁部33は、入口部30と出口部31との間の圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で連通部32に設けられており、出口部31に対する入口部30の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、フィルタカートリッジ4を経由せずに入口部30から出口部31への圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行し、入口部30に対する出口部31の圧力差が第1の所定値よりも低く設定された第2の所定値よりも高い場合、フィルタカートリッジ4を経由せずに出口部31から入口部30への圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する。なお、閉弁状態は、入口部30から出口部31への圧縮空気の流通と、出口部31から入口部30への圧縮空気の流通との両方を制限する。
【0034】
弁部33は、連通部32の第2の連通口321に配置され、第2の連通口321を閉塞することで弁部33を閉弁状態とする弾性部材330と、貫通孔331aを有し、貫通孔331aを弾性部材330により閉塞した状態で弾性部材330を押さえる押さえ部材331と、弾性部材330が第2の連通口321を閉塞する閉塞位置を維持するように、圧縮空気の空気圧に逆らう方向に押さえ部材331を付勢する第1のコイルばね332と、押さえ部材331を付勢する側の第1のコイルばね332の可動端部332aとは反対側の第1のコイルばね332の固定端部332bに当接するばね受け部材333とを備える。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態に係る弾性部材330及び押さえ部材331を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)はA-A線断面図を示す図である。弾性部材330は、キャップ状の形状を有するゴム製の部材であり、円形状の円形壁部330aと、円形壁部330aの外周部分から直軸方向に延びる円周壁部330bとを備える。
【0036】
円形壁部330aは、中央部に円形状に形成された開口部330cと、開口部330cに沿って円形状に形成された変形部330dと、変形部330dの系方向外側に円形状に形成された円形状凸部330eとを有する。円周壁部330bは、円周壁部330bの内周に向かって突設した突設部330fと、軸方向に沿って筋状に形成された複数の筋状凸部330gとを有し、複数の筋状凸部330gは、円周方向に所定の間隔で配置されている。
【0037】
押さえ部材331は、薄い円盤状の金属製の部材であり、円弧状に所定の弧長で形成された3つの貫通孔331aと、第1のコイルばね332の可動端部332aに当接するばね受け面331bとを有し、3つの貫通孔331aは、円周方向に所定の間隔で配置されている。
【0038】
円盤状の押さえ部材331の外径は、キャップ状の弾性部材330の内径よりも小さく、押さえ部材331の軸方向は、弾性部材330の円形壁部330aの軸方向と同心軸となるように、弾性部材330の内側に嵌め込まれた状態で突設部330fにより抜け止めされている。その際、押さえ部材331の貫通孔331aが配置される位置は、弾性部材330の開口部330cよりも径方向外側にあるため、貫通孔331aは、弾性部材330の変形部330dにより閉塞された状態になっている。また、円盤状の押さえ部材331の直径、及び、突設部330fの内径は、第1のコイルばね332の外径よりも大きくなっている。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態に係るばね受け部材333を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図を示す図である。ばね受け部材333は、軸方向に段差が付いたリング状の金属製の部材であり、中心部に形成された貫通孔333aと、第1のコイルばね332の外径よりも直径が大きな太径部333bと、第1のコイルばね332の内径よりも直径が小さな細径部333cと、第1のコイルばね332の固定端部332bに当接するばね受け面333dとを有する。
【0040】
図6(a)は、本発明の実施の形態に係る弁部33の閉弁状態を示すB部の拡大断面図である。上記の構成を有する弁部33の各部材は、入口部30と出口部31との間の圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で連通部32に設けられている。押さえ部材331が内側に嵌め込まれた状態の弾性部材330(図4参照)は、連通部32の第2の連通口321に摺動可能に挿入され、ばね受け部材333は、出口部31の第1の出口部流路312における第2の出口部流路313が接続された部分よりも下流接続口311側の位置に固定されている。その際、押さえ部材331が内側に嵌め込まれた状態の弾性部材330の軸方向は、ばね受け部材333の軸方向と同心軸となるように、第2の連通口321の内部に配置されている。
【0041】
また、第1のコイルばね332は、押さえ部材331のばね受け面331bと、ばね受け部材333のばね受け面333dとの間に圧縮状態で配置されており、第1のコイルばね332の可動端部332aは、ばね受け面331bに当接し、第1のコイルばね332の固定端部332bは、ばね受け部材333のばね受け面333dに当接している。
【0042】
これにより、第1のコイルばね332は、押さえ部材331が内側に嵌め込まれた状態の弾性部材330を入口部30側に付勢するとともに、第1のコイルばね332の伸縮に応じて弾性部材330の軸方向に移動可能な状態で弾性部材330を支持している。
【0043】
そのため、第1のコイルばね332の可動端部332aは、ばね受け面331bを介して押さえ部材331を弾性部材330に押し付けることで貫通孔331aを変形部330dにより閉塞するとともに、押さえ部材331を介して弾性部材330を段差面322に押し付けることで円形状凸部330eと段差面322とが密着する位置(閉塞位置)に弾性部材330が移動することにより、弾性部材330が連通部32を閉塞することで弁部33が閉弁状態となる。このようにして、弾性部材330が連通部32を閉塞する閉塞位置を維持するように、第1のコイルばね332は、圧縮空気の空気圧に逆らう方向に押さえ部材331を付勢するものである。
【0044】
図6(b)は、本発明の実施の形態に係る弁部33の第1の開弁状態を示すB部の拡大断面図である。弁部33が、図6(a)に示す閉弁状態となっている場合において、出口部31に対する入口部30の圧力差が第1の所定値よりも高い場合、第1のコイルばね332が圧縮して円形状凸部330eと段差面322とが密着する位置(閉塞位置)から円形状凸部330eと段差面322とが離間する位置(開放位置)に弾性部材330が移動することで、円形状凸部330eと段差面322との間の空間と、円周壁部330bと第2の連通口321との間の空間とが圧縮空気の流路である順方向バイパス流路323になるため、弁部33は、フィルタカートリッジ4を経由せずに順方向バイパス流路323を介して入口部30から出口部31への圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行する。
【0045】
第1の所定圧は、フィルタカートリッジ4においてフィルタの目詰まりが発生したときにフィルタカートリッジ4のバイパス機構(詳細は後述する)が動作する第3の所定圧(例えば、1.4bar)よりも高く設定されており、例えば、2barに設定されている。すなわち、フィルタカートリッジ4においてフィルタの目詰まりが発生するとともに、フィルタカートリッジ4のバイパス機構で動作不良が発生した場合、リレーエマージェンシーバルブ21に対する圧縮空気の供給が停止することになるが、そのような場合であっても、リレーエマージェンシーバルブ21に対する圧縮空気の供給を停止させないために、第1の所定圧は、第3の所定圧よりも高く設定されている。したがって、第1のコイルばね332は、出口部31に対する入口部30の圧力差が第1の所定圧よりも高い場合に圧縮するように、ばね係数等のばね特性が決められている。
【0046】
図6(c)は、本発明の実施の形態に係る弁部33の第2の開弁状態を示すB部の拡大断面図である。弁部33が、図6(a)に示す閉弁状態となっている場合において、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも高い場合、弾性部材330の変形部330dが第1の連通口320の側に広がるように変形して押さえ部材331の貫通孔331aを開放することで、貫通孔331aが圧縮空気の流路である逆方向バイパス流路324になるため、弁部33は、フィルタカートリッジ4を経由せずに逆方向バイパス流路324を介して出口部31にから入口部30への圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行する。
【0047】
第2の所定値は、トレーラ20がトラクタ10から切り離された際に、リレーエマージェンシーバルブ21側の残空気による残圧を迅速に低下させる際の目標圧力として、例えば、0.5barに設定されている。すなわち、トレーラ20がトラクタ10から切り離された際に、フィルタカートリッジ4においてフィルタの目詰まりが発生した場合、リレーエマージェンシーバルブ21側の残空気が、フィルタカートリッジ4を経由して排出されないことになるが、そのような場合であっても、リレーエマージェンシーバルブ21側の残空気を排出することで駐車ブレーキを作動させるために、第2の所定値は、第1の所定値よりも低く設定されている。したがって、変形部330dは、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも高い場合に変形するように、弾性部材330の硬度や、変形部330dの形状やサイズ等が決められている。
【0048】
フィルタカートリッジ4は、図3に示すように、中空状の本体円筒部440と、上蓋441と、下蓋442とからなる本体部44を備え、上蓋441側に、入口部30に接続されて、入口部30から圧縮空気を流入する流入部40と、出口部31に接続されて、圧縮空気を出口部31に流出する流出部41とを備える。
【0049】
また、フィルタカートリッジ4は、本体部44の内部に、流入部40から圧縮空気を流入し、圧縮空気に含まれる不純物を除去し、不純物を除去した圧縮空気を流出部41に流出する円筒状のフィルタ部42と、フィルタ部42を経由せずに流入部40から流出部41への圧縮空気の流通を可能にするバイパス機構43とを備えるとともに、下蓋442側の中央部分に、フィルタ部42により圧縮空気から除去された不純物を外部に排出する際に開かれるドレンポート45を備える。円筒状のフィルタ部42の軸方向は、本体円筒部440の軸方向と同心軸となるように、本体円筒部440の内部に配置されている。
【0050】
流入部40は、上蓋441の中心部に形成された円形状の開口であって、ハウジング3のフィルタ取付口301が挿入される挿入口400と、挿入口400を本体円筒部440の軸方向内側に延長する延長部401と、挿入口400にフィルタ取付口301が挿入されたときに、フィルタ取付口301とフィルタ部42の上流側との間を連通する流入部流路402とを備える。
【0051】
挿入口400の内周面には、雌ネジが形成されており、フィルタ取付口301に形成された雄ネジと螺合することで、本体円筒部440の軸方向が鉛直方向となるように、フィルタカートリッジ4がハウジング3に装着される。延長部401の外周面には、フィルタ部42が摺動可能に摺接する摺接面401aが形成されている。
【0052】
流出部41は、挿入口400よりも本体円筒部440の系方向外側の上蓋441に形成された複数の貫通孔410と、複数の貫通孔410よりも本体円筒部440の系方向外側の上蓋441の外面から突設して円形状に形成されたシール部411と、挿入口400にフィルタ取付口301が挿入されたときに、フィルタ部42の下流側とフィルタ連通口310との間を連通する流出部流路412とを備える。
【0053】
シール部411は、挿入口400にフィルタ取付口301が挿入されたときに、ハウジング3の下面部をシール部411でシールすることで、シール部411の内側に流出部流路412の一部を形成する。流出部流路412は、フィルタ部42の下流側に流出した圧縮空気、すなわち、フィルタ部42により不純物が除去された圧縮空気が、本体円筒部440の内側とフィルタ部42の外側との間を通過し、本体円筒部440の内側と周壁部421bの外側との間を通過し、複数の貫通孔410を通過し、シール部411の内側を通過することで、フィルタ連通口310に到達する流路である。
【0054】
フィルタ部42は、円筒状のフィルタ420と、フィルタ420の円筒上部を支持する上部支持部421と、フィルタ420の円筒下部を支持する下部支持部422と、を備える。
【0055】
上部支持部421は、フィルタ部42の円筒上部を支持するドーナツ状に形成された上部支持壁部421aと、上部支持壁部421aの内周部分から直角にフィルタ部42の軸方向外側に立設した周壁部421bと、周壁部421bにおけるフィルタ部42の軸方向外側部分から直角に屈曲してフィルタ部42の径方向内側に延びる摺接部421cとを備える。摺接部421cの内周面は、流入部40の摺接面401aと摺動可能に摺接する。
【0056】
下部支持部422は、フィルタ部42の円筒下部を支持するドーナツ状に形成された下部支持壁部422aと、フィルタ部42の軸方向内側に凹んだ凹部422bとを備える。
【0057】
バイパス機構43は、流入部40と流出部41との間を連通するフィルタバイパス流路430(図3では不図示、後述する図7(b)では図示)と、フィルタ部42がフィルタバイパス流路430を閉塞する閉塞位置を維持するように、流入部40から流入する圧縮空気の空気圧に逆らう方向にフィルタ部42を付勢する第2のコイルばね431とを備える。
【0058】
フィルタバイパス流路430は、流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが離間することにより、延長部401と摺接部421cとの間に生じる空間である。なお、図3は、フィルタバイパス流路430が形成されていない状態を示し、後述する図7(b)は、フィルタバイパス流路430が形成されている状態を示す。
【0059】
第2のコイルばね431は、下部支持部422と下蓋442との間に圧縮状態で配置されており、第2のコイルばね431の可動端部431aは、下部支持部422の下部支持壁部422aに当接し、第2のコイルばね431の固定端部431bは下蓋442に当接している。これにより、第2のコイルばね431は、フィルタ部42を流入部40側に付勢するとともに、第2のコイルばね431の伸縮に応じてフィルタ部42の軸方向に移動可能な状態でフィルタ部42を支持する。
【0060】
そのため、第2のコイルばね431の可動端部431aは、フィルタ部42を流入部40側に押し付けることで、流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが密着する位置(閉塞位置)にフィルタ部42が移動することにより、フィルタバイパス流路430を閉塞することになる。このようにして、フィルタ部42がフィルタバイパス流路430を閉塞する閉塞位置を維持するように、第2のコイルばね431は、圧縮空気の空気圧に逆らう方向にフィルタ部42を付勢するものである。
【0061】
そして、流出部41に対する流入部40の圧力差が第3の所定値よりも高い場合、第2のコイルばね431が圧縮して流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが密着する位置(閉塞位置)から流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが離間する位置(開放位置)にフィルタ部42が移動することで、流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとの間に生じる空間、すなわち、フィルタバイパス流路430が圧縮空気の流路になるため、バイパス機構43は、フィルタ部42を経由せずに流入部40から流出部41への圧縮空気の流通を可能にするフィルタバイパス状態に移行する。なお、流入部40は入口部30に接続され、流出部41は出口部31に接続されているため、流出部41に対する流入部40の圧力差は、出口部31に対する入口部30の圧力差と等しくなっている。
【0062】
第3の所定値は、弁部33が第1の開弁状態に移行する第1の設定値(例えば、2bar)よりも低く設定されており、例えば、1.4barに設定されている。すなわち、フィルタ420の目詰まりが発生した場合、リレーエマージェンシーバルブ21に対する圧縮空気の供給が停止することになるが、そのような場合であっても、リレーエマージェンシーバルブ21に対する圧縮空気の供給を停止させないために、第3の所定圧は、弁部33が第1の開弁状態に移行する前に、フィルタ420の目詰まりが発生したことに応じてフィルタバイパス流路430を開放するように設定されている。したがって、第2のコイルばね431は、流出部41に対する流入部40の圧力差が第3の所定圧よりも高い場合に圧縮するように、ばね係数等のばね特性が決められている。
【0063】
次に、図7及び図8を参照して、オイルセパレータ2の各状態に応じた動作を、圧縮空気の流れとともに説明する。
【0064】
(1)ハウジング3の弁部33が閉弁状態である場合
図7(a)は、ハウジング3の弁部33が閉弁状態である場合のオイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示す図である。トレーラ20がトラクタ10に連結された場合、トレーラ20側のサプライカップリング200及びコントロールカップリング201が、トラクタ10側のサプライカップリング100及びコントロールカップリング101にそれぞれ接続されることで、トラクタ10からサプライライン210を介してトレーラ20のオイルセパレータ2に圧縮空気が供給され、トラクタ10からコントロールライン211を介してトレーラ20のリレーエマージェンシーバルブ21に圧縮空気が供給される。
【0065】
トラクタ10からサプライライン210を介してトレーラ20のオイルセパレータ2に供給される圧縮空気は、ハウジング3の上流接続口300に流入する。このとき、第1のコイルばね332が、圧縮空気の空気圧に逆らう方向に押さえ部材331を付勢することで、弾性部材330が連通部32を閉塞する閉塞位置を維持することにより、弁部33は、入口部30と出口部31との間の圧縮空気の流通を制限する閉弁状態(図6(a)参照)となっている。
【0066】
したがって、ハウジング3の上流接続口300に流入した圧縮空気は、第1の入口部流路302及び第2の入口部流路303の順に流れ、フィルタ取付口301からフィルタカートリッジ4の流入部40に流入する。
【0067】
次に、フィルタカートリッジ4の流入部40に流入した圧縮空気は、流入部流路402を流れ、フィルタ部42のフィルタ420を通過することで不純物が除去された後、流出部流路412を流れ、流出部41からハウジング3のフィルタ連通口310に流入する。
【0068】
次に、ハウジング3のフィルタ連通口310に流入した圧縮空気は、第2の出口部流路313及び第1の出口部流路312の順に流れ、下流接続口311からリレーエマージェンシーバルブ21に流出する。
【0069】
このように、弁部33は、入口部30と出口部31との間の圧縮空気の流通を制限する閉弁状態で連通部32に設けられているため、トラクタ10からトレーラ20に供給される圧縮空気を、フィルタカートリッジ4を経由してリレーエマージェンシーバルブ21等の利用装置に送ることで、フィルタカートリッジ4により圧縮空気に含まれる不純物が除去されるので、圧縮空気に含まれる不純物により利用装置の故障や凍結が発生することを抑制することができ、トレーラ20の安全性を向上することができる。
【0070】
(2)フィルタカートリッジ4のバイパス機構43がフィルタバイパス状態に移行する場合
図7(b)は、フィルタカートリッジ4のバイパス機構43がフィルタバイパス状態に移行する場合のオイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示す図である。トレーラ20がトラクタ10に連結され、トラクタ10からトレーラ20に圧縮空気が供給される場合に、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生すると、フィルタ420の目詰まりの度合いが悪化するのに応じて、流出部41に対する流入部40の圧力差が高くなっていく。
【0071】
そして、流出部41に対する流入部40の圧力差が、第3の所定値よりも高くなると、バイパス機構43の第2のコイルばね431が圧縮して流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが離間する位置(開放位置)にフィルタ部42が移動することで、バイパス機構43は、フィルタ部42を経由せずにフィルタバイパス流路430を介して流入部40から流出部41への圧縮空気の流通を可能にするフィルタバイパス状態に移行する。
【0072】
したがって、ハウジング3の上流接続口300に流入した圧縮空気は、第1の入口部流路302及び第2の入口部流路303の順に流れ、フィルタ取付口301からフィルタカートリッジ4の流入部40に流入する。
【0073】
次に、フィルタカートリッジ4の流入部40に流入した圧縮空気は、流入部流路402、フィルタバイパス流路430及び流出部流路412の順に流れ、流出部41からハウジング3のフィルタ連通口310に流入する。
【0074】
次に、ハウジング3のフィルタ連通口310に流入した圧縮空気は、第2の出口部流路313及び第1の出口部流路312の順に流れ、下流接続口311からリレーエマージェンシーバルブ21に流出する。
【0075】
このように、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生したことにより、流出部41に対する流入部40の圧力差が第3の所定値よりも高くなった場合には、第2のコイルばね431が圧縮して流入部40の摺接面401aとフィルタ部42の摺接部421cとが離間する位置(開放位置)にフィルタ部42が移動することで、バイパス機構43が、フィルタ部42を経由せずにフィルタバイパス流路430を介して流入部40から流出部41への圧縮空気の流通を可能にするフィルタバイパス状態に移行するため、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生した場合であっても利用装置に対する圧縮空気の供給が停止することがないので、トレーラ20の安全性を向上することができる。
【0076】
(3)ハウジング3の弁部33が第1の開弁状態に移行する場合
図8(a)は、ハウジング3の弁部33が第1の開弁状態に移行する場合のオイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示す図である。トレーラ20がトラクタ10に連結され、トラクタ10からトレーラ20に圧縮空気が供給される場合に、上記(2)と同様に、フィルタ420の目詰まりが発生すると、フィルタ420の目詰まりの度合いが悪化するのに応じて、出口部31に対する入口部30の圧力差が高くなっていく。
【0077】
そして、出口部31に対する入口部30の圧力差、すなわち、流出部41に対する流入部40の圧力差が、第3の所定値よりも高くなると、上記(2)のように、バイパス機構43の第2のコイルばね431が圧縮することによりバイパス機構43がフィルタバイパス状態に移行することになるが、第2のコイルばね431が、例えば、凍結等が原因で圧縮不能な状態にある場合には、バイパス機構43がフィルタバイパス状態に移行することができないため、流出部41に対する流入部40の圧力差が、さらに高くなっていく。
【0078】
そして、流出部41に対する流入部40の圧力差、すなわち、出口部31に対する入口部30の圧力差が、第3の所定値よりも高く設定された第1の所定値よりも高くなると、弁部33の第1のコイルばね332が圧縮して弾性部材330の円形状凸部330eと連通部32の段差面322とが離間する位置(開放位置)に弾性部材330が移動することで、弁部33は、フィルタカートリッジ4を経由せずに順方向バイパス流路323を介して入口部30から出口部31への圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態(図6(b)参照)に移行する。
【0079】
したがって、ハウジング3の上流接続口300に流入した圧縮空気は、第1の入口部流路302、順方向バイパス流路323及び第1の出口部流路312の順に流れ、下流接続口311からリレーエマージェンシーバルブ21に流出する。
【0080】
このように、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生し、かつ、バイパス機構43でフィルタバイパス状態に移行することができないような動作不良が発生したことにより、出口部31に対する入口部30の圧力差が第1の所定値よりも高くなった場合には、第1のコイルばね332が圧縮して弾性部材330の円形状凸部330eと連通部32の段差面322とが離間する位置(開放位置)に弾性部材330が移動することで、弁部33が、フィルタカートリッジ4を経由せずに入口部30から出口部31への圧縮空気の流通を可能にする第1の開弁状態に移行するため、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生し、かつ、バイパス機構43で動作不良が発生した場合であっても利用装置に対する圧縮空気の供給が停止することがないので、トレーラ20の安全性を向上することができる。
【0081】
(4)ハウジング3の弁部33が第2の開弁状態に移行する場合
図8(b)は、ハウジング3の弁部33が第2の開弁状態に移行する場合のオイルセパレータ2の動作と、圧縮空気の流れを示す図である。トレーラ20がトラクタ10から切り離された場合、トレーラ20側のサプライカップリング200及びコントロールカップリング201が、トラクタ10側のサプライカップリング100及びコントロールカップリング101からそれぞれ取り外されることで、サプライライン210及びコントロールライン211は大気開放される。
【0082】
サプライライン210が大気開放された場合、リレーエマージェンシーバルブ21側の残空気を出口部31から入口部30に流し、サプライライン210を介して排出することで駐車ブレーキを作動させる必要がある。そのため、リレーエマージェンシーバルブ21側の残空気は、ハウジング3の下流接続口311に流入すると、上記(1)の図7(a)とは逆方向の流路、すなわち、第1の出口部流路312、第2の出口部流路313、流出部流路412、流入部流路402、第2の入口部流路303及び第1の入口部流路302の順に流れることにより、上流接続口300からサプライライン210に流出する。
【0083】
このとき、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生すると、残空気は、出口部31からフィルタカートリッジ4を経由して入口部30に流れないため、残空気による残圧が低下しない。
【0084】
そのため、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも高い場合、すなわち、残空気による残圧が低下して、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも低くなるまでの間、弾性部材330の変形部330dが第1の連通口320の側に広がるように変形して押さえ部材331の貫通孔331aを開放することで、弁部33は、フィルタカートリッジ4を経由せずに逆方向バイパス流路324を介して出口部31から入口部30への圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態(図6(c)参照)に移行する。
【0085】
したがって、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生している場合には、ハウジング3の下流接続口311に流入した残空気は、第1の出口部流路312、逆方向バイパス流路324及び第1の入口部流路302の順に流れ、上流接続口300からサプライライン210に流出する。
【0086】
なお、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生していない場合でも、サプライライン210が大気開放された直後は、残空気による残圧により、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも高くなるため、弁部33は第2の開弁状態に移行する。そのため、ハウジング3の下流接続口311に流入した残空気は、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも低くなるまでの間、出口部31からフィルタカートリッジ4を経由して入口部30に流れるとともに、フィルタカートリッジ4を経由せずに逆方向バイパス流路324を介して出口部31から入口部30に流れる。そして、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値より低くなると、弁部33は第2の開弁状態から閉弁状態に戻るため、出口部31からフィルタカートリッジ4を経由して入口部30に流れる。
【0087】
このように、トラクタ10とトレーラ20とが切り離された際に、入口部30に対する出口部31の圧力差が第2の所定値よりも高い場合には、弁部33が、出口部31から入口部30への圧縮空気の流通を可能にする第2の開弁状態に移行するため、利用装置側の残空気を、フィルタカートリッジ4を経由せずに排出することで、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生した場合であっても利用装置側の残圧を抜くことできるので、トレーラ20の安全性を向上することができる。
【0088】
また、フィルタカートリッジ4においてフィルタ420の目詰まりが発生していない場合であっても、利用装置側の残空気を、フィルタカートリッジ4を経由して排出する流路と、フィルタカートリッジ4を経由せずに排出する流路とを併用して排出することで、利用装置側の残圧を迅速に抜くことできるので、トレーラ20の安全性を向上することができる。
【0089】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、オイルセパレータ2は、サプライライン210の途中に設けられているが、コントロールライン211の途中に設けられるようにしてもよい。また、上記実施の形態では、ハウジング3には、バイパス機構43を備えるフィルタカートリッジ4が取り付けられたが、バイパス機構43を備えていないフィルタカートリッジ4が取り付けられてもよい。
【0090】
上記実施の形態では、オイルセパレータ2は、ハウジング3にフィルタカートリッジ4を取り付けて構成したが、ハウジング3とフィルタカートリッジ4とを一体的に構成してもよいし、ハウジング3及びフィルタカートリッジ4のそれぞれを複数の部材を組み合わせて構成するようにしてもよい。また、ハウジング3及びフィルタカートリッジ4が備える各部の形状、寸法及び材質等は、適宜変更してもよい。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…ブレーキシステム、2…オイルセパレータ(不純物除去システム)、3…ハウジング(圧縮空気流通装置)、4…フィルタカートリッジ(不純物除去装置)、10…トラクタ(牽引車両)、11…コンプレッサ、12…エアドライヤ、13…オイルキャッチタンク、14…エアタンク、15…リレーバルブ、16…ブレーキチャンバ、17…トレーラコントロールバルブ、20…トレーラ(被牽引車両)、21…リレーエマージェンシーバルブ、22…エアタンク、23…スプリングブレーキチャンバ、30…入口部、31…出口部、32…連通部、33…弁部、34…取付部、40…流入部、41…流出部、42…フィルタ部、43…バイパス機構、44…本体部、45…ドレンポート、100…サプライカップリング、101…コントロールカップリング、200…サプライカップリング、201…コントロールカップリング、210…コントロールライン、211…サプライライン、300…上流接続口、301…フィルタ取付口、302…第1の入口部流路、303…第2の入口部流路、310…フィルタ連通口、311…下流接続口、312…第1の出口部流路、313…第2の出口部流路、320…第1の連通口、321…第2の連通口、322…段差面、323…順方向バイパス流路、324…逆方向バイパス流路、330…弾性部材、330a…円形壁部、330b…円周壁部、330c…開口部、330d…変形部、330e…円形状凸部、330f…突設部、330g…筋状凸部、331…押さえ部材、331a…貫通孔、331b…ばね受け面、332…第1のコイルばね(第1の付勢部材)、332a…可動端部、332b…固定端部、333…ばね受け部材、333a…貫通孔、333b…太径部、333c…細径部、333d…ばね受け面、400…挿入口、401…延長部、401a…摺接面、402…流入部流路、410…貫通孔、411…シール部、412…流出部流路、420…フィルタ、421…上部支持部、421a…上部支持壁部、421b…周壁部、421c…摺接部、422…下部支持部、422a…下部支持壁部、422b…凹部、430…フィルタバイパス流路、431…第2のコイルばね(第2の付勢部材)、431a…可動端部、431b…固定端部、440…本体円筒部、441…上蓋、442…下蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8