(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】バルブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/53 20060101AFI20221003BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F16K31/53
F16K31/04 A
(21)【出願番号】P 2018104994
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2003/006860(JP,A1)
【文献】特開2006-057763(JP,A)
【文献】特開2011-099554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/53
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口、流体出口及び弁座面を備え、当該弁座面で前記流体入口及び前記流体出口の少なくとも一方が開口する基台と、前記弁座面との間に前記流体入口と前記流体出口とを連通させるバルブ室を区画しているカバーと、前記バルブ室内で前記流体入口及び前記流体出口のいずれか一方の口を開閉する、前記弁座面と摺動する接触面を備えた弁体と、前記弁体を回転駆動させる弁体駆動機構とを有するバルブ駆動装置であって、
前記弁体駆動機構は、
モータと、
前記モータのロータとともに回転する駆動側歯車と、
前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、
前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、
を備え
、
前記従動側歯車は、当該従動側歯車の円周方向に沿って歯が形成された噛合部と、前記円周方向において前記歯が形成されていない非噛合部とを有し、
前記動力伝達切換部は、前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記従動側歯車の前記非噛合部に設けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、を備え、
前記回転規制部は、前記動力非伝達状態において、第1方向に回転した前記駆動側歯車の前記凸部と係合すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させて前記動力非伝達状態から前記動力伝達状態へと切換え、前記第1方向と反対の方向である第2方向に前記駆動側歯車が回転すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させずに前記動力非伝達状態を維持する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のバルブ駆動装置において、前記噛合部は前記円周方向に沿って連続的に形成され、
前記動力伝達状態から前記動力非伝達状態へ切り換わる際、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合いが解除される、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載のバルブ駆動装置において、前記回転規制部は、前記駆動側歯車が前記第1方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を許容し、前記駆動側歯車が前記第2方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を規制するクラッチ機構として構成されている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記回転規制部は、前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢されるレバー部材であって、前記駆動側歯車が前記第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部と、前記駆動側歯車が前記第2方向に回転した際に前記
凸部と接触する第2接触部と、
を有し、
前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、
前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のバルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記回転規制部が当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えている、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項6】
請求項
4又は請求項
5に記載のバルブ駆動装置において、前記回転規制部を前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢する付勢部材を備える、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項7】
請求項
6に記載のバルブ駆動装置において、前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、
前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、
前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢している、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項8】
請求項
1から請求項7のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記駆動側歯車には、前記円周方向において前記凸部に対応する位置にロック回避歯が設けられ、前記ロック回避歯の歯先円直径は、前記ロック回避歯以外の歯の歯先円直径よりも小さい、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項9】
請求項
8に記載のバルブ駆動装置において、前記凸部は前記円周方向に等間隔で前記駆動側歯車に4箇所形成され、
前記駆動側歯車及び前記従動側歯車が前記動力非伝達状態にある際、前記モータを第1方向に回転させて前記駆動側歯車を原点位置にセットすると、前記ロック回避歯は前記従動側歯車における前記非噛合部に最も近い歯と対向する位置に位置する、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項10】
請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載のバルブ駆動装置において、前記駆動側歯車に形成された歯の数は、前記従動側歯車に形成された歯の数よりも少ない、
ことを特徴とするバルブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流量を調節するバルブを駆動するバルブ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫等の庫内を冷却するために、冷媒を供給する冷媒バルブ装置がある。この冷媒バルブ装置には、バルブを駆動させて庫内に供給する冷媒の供給量を調整するバルブ駆動装置を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷媒バルブ装置は、冷媒入口、冷媒出口及び弁座面を備えた基台において、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口に偏った位置を中心に回転可能な弁体と、当該弁体を回転させる弁体駆動機構を備えている。弁体駆動機構は、ステッピングモータ(以下、モータという)と、当該モータの駆動軸と一体に回転するピニオンと、当該ピニオンと噛合し、弁体と一体に回転する出力歯車とを備えている。
【0005】
前記モータが回転すると、当該モータと一体に回転するピニオンを介して出力歯車、ひいては弁体も回転する。これにより、前記弁体は、前記冷媒入口及び前記冷媒出口のいずれか一方の口の開き具合を調整することができ、冷媒の供給量を調節することができる。
【0006】
ところで、この弁体駆動機構では、前記ピニオンを正回転方向に回転させることで、前記出力歯車及び前記弁体を第1の回転規制位置からモータを正回転方向に回転させた位置である第2の回転規制位置まで回転させることができる。
【0007】
また、前記第1の回転規制位置では、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接する構成となっており、前記モータの逆回転方向への駆動による回転が規制される。
【0008】
ここで、冷媒の供給量を調整すべく前記モータを逆回転方向に回転させて第2の回転規制位置から第1の回転規制位置まで回転させると、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接し、ピニオンの前記逆回転方向への回転が規制された状態となる。これにより、前記逆回転方向への前記ピニオンの回転が規制された状態で前記モータが前記逆回転方向への回転を継続しようとするので、前記モータにおいて脱調が生じる。その結果、前記モータの脱調時に、前記腕部と前記被当接部とが衝突して騒音(衝突音)を発生させる虞がある。
【0009】
加えて、この弁体駆動機構では、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接した状態で、前記ピニオンの回転が継続されて、前記第1の回転規制位置における前記出力歯車に対する前記ピニオンの原点位置の位置決めが行われる。これにより、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部とが当接してから、前記モータにおいて脱調が生じるまで、あるいは前記モータにおいて前記脱調が生じた後も、前記ピニオンが原点位置に位置するまで余分に回転することになり、前記出力歯車の腕部と前記ピニオンの被当接部との間で振動及び騒音が発生する。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、騒音を低減させることができるバルブ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明に係るバルブ駆動装置は、流体入口、流体出口及び弁座面を備え、当該弁座面で前記流体入口及び前記流体出口の少なくとも一方が開口する基台と、前記弁座面との間に前記流体入口と前記流体出口とを連通させるバルブ室を区画しているカバーと、前記バルブ室内で前記流体入口及び前記流体出口のいずれか一方の口を開閉する、前記弁座面と摺動する接触面を備えた弁体と、前記弁体を回転駆動させる弁体駆動機構とを有するバルブ駆動装置であって、前記弁体駆動機構は、モータと、前記モータのロータとともに回転する駆動側歯車と、前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記弁体駆動機構は、モータと、前記モータのロータと一体に回転する駆動側歯車と、前記駆動側歯車と噛合した状態において、前記駆動側歯車の回転により前記弁体を回転させる従動側歯車と、前記駆動側歯車が前記従動側歯車と噛合して前記モータの動力を前記従動側歯車に伝達する動力伝達状態と、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除された動力非伝達状態とを切換可能な動力伝達切換部とを備えているので、前記動力伝達切換部により前記動力伝達状態から前記動力非伝達状態へ切り換えることで、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除される。その結果、前記モータにおいて脱調が生じる虞を低減でき、脱調を起因とする騒音、あるいは前記駆動側歯車の原点位置を決めるために前記駆動側歯車を余分に回転させることで生じる騒音を抑制することができる。
【0013】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記従動側歯車は、当該従動側歯車の円周方向に沿って歯が形成された噛合部と、前記円周方向において前記歯が形成されていない非噛合部とを有する、ことを特徴とする。
本態様によれば、上述した作用効果を得ることができる。
【0014】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記噛合部は前記円周方向に沿って連続的に形成され、前記動力伝達状態から前記動力非伝達状態へ切り換わる際、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合いが解除される、ことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記噛合部は前記円周方向に沿って連続的に形成され、前記動力伝達状態から前記動力非伝達状態へ切り換わる際、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合いが解除されるので、前記動力非伝達状態において前記駆動側歯車は、前記従動側歯車の歯が形成されていない非噛合部に位置することとなり、前記モータ、ひいては前記駆動側歯車が回転を継続しても、前記駆動側歯車は前記従動側歯車と接触しないので、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との衝突を防止でき、衝突音の発生を防止できる。
【0016】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記動力伝達切換部は、前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記従動側歯車の前記非噛合部に設けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、を備え、前記回転規制部は、前記動力非伝達状態において、第1方向に回転した前記駆動側歯車の前記凸部と係合すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させて前記動力非伝達状態から前記動力伝達状態へと切換え、前記第1方向と反対の方向である第2方向に前記駆動側歯車が回転すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させずに前記動力非伝達状態を維持する、ことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記動力伝達切換部は、前記駆動側歯車に形成され、当該駆動側歯車の半径方向に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記従動側歯車の前記非噛合部に設けられ、前記凸部と係合可能な回転規制部と、を備え、前記回転規制部は、前記動力非伝達状態において、第1方向に回転した前記駆動側歯車の前記凸部と係合すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させて前記動力非伝達状態から前記動力伝達状態へと切換え、前記第1方向と反対の方向である第2方向に前記駆動側歯車が回転すると、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを噛合させずに前記動力非伝達状態を維持するので、前記モータから前記従動側歯車への動力の伝達及び切断を適切に行うことができ、弁体の駆動を確実にすることができる。
【0018】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記回転規制部は、前記駆動側歯車が前記第1方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を許容し、前記駆動側歯車が前記第2方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を規制するクラッチ機構として構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記回転規制部は、前記駆動側歯車が前記第1方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を許容し、前記駆動側歯車が前記第2方向に回転した際における前記従動側歯車の回転を規制するクラッチ機構として構成されているので、例えば、回転規制部を既知のクラッチ機構等により構成することができ、設計時間の短縮及びコストダウンを図ることができる。
【0020】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記回転規制部は、前記従動側歯車に対して回動可能に前記従動側歯車に取り付けられ、前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢されるレバー部材であって、前記駆動側歯車が前記第1方向に回転した際に前記凸部と接触する第1接触部と、前記駆動側歯車が前記第2方向に回転した際に前記凸部と接触する第2接触部と、を有し、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持する、ことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、レバー部材として構成される前記回転規制部は前記第1接触部及び前記第2接触部を有し、前記凸部が前記第1接触部と接触した際、前記回転規制部が前記凸部に押圧されて前記従動側歯車を回転させ、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とが噛み合い、前記動力伝達状態となり、前記凸部が前記第2接触部と接触した際、前記回転規制部は当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動し、前記駆動側歯車の歯が前記従動側歯車の歯と噛合わずに前記駆動側歯車が空転して、前記動力非伝達状態を維持するので、前記駆動側歯車の回転方向に応じて前記凸部と接触させる部位を切り換えるだけで前記モータから前記従動側歯車への動力の伝達又は切断を行うことができるので、前記回転規制部を簡素な構成とすることができる。
【0022】
本発明に係るバルブ駆動装置において、前記従動側歯車は、前記凸部が前記第2接触部と接触して、前記回転規制部が当該回転規制部を付勢する付勢力に抗して、前記半径方向内側に回動する際、前記第2接触部が前記凸部により当該凸部の回転方向に押されて前記従動側歯車が前記駆動側歯車の回転方向に応じた回転方向に回転することを規制する連れ回り防止部を備えている。
【0023】
本態様によれば、連れ回り防止部により駆動側歯車による従動側歯車の連れ回り回転を規制することができ、前記駆動側歯車の空転状態を維持し、前記動力非伝達状態を確実に維持することができる。
【0024】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記回転規制部を前記従動側歯車の半径方向外側に向けて付勢する付勢部材を備える、ことを特徴とする。
本態様によれば、簡単な構造で、上述した作用効果を得ることができる。
【0025】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢している、ことを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、前記付勢部材は前記従動側歯車の軸部に保持されるねじりばねであり、前記従動側歯車には、前記ねじりばねの一端を保持する保持部が設けられ、前記ねじりばねの他端は、前記回転規制部を付勢しているので、前記従動側歯車における前記付勢部材の保持構成を簡素化することができる。
【0027】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記駆動側歯車には、前記円周方向において前記凸部に対応する位置にロック回避歯が設けられ、前記ロック回避歯の歯先円直径は、前記ロック回避歯以外の歯の歯先円直径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0028】
ここで、例えば、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とは、位相の関係で互いの歯の先端が接触して噛合わなくなるロック状態を起すことがある。本態様によれば、前記駆動側歯車には、前記円周方向において前記凸部に対応する位置にロック回避歯が設けられ、前記ロック回避歯の歯先円直径は、前記ロック回避歯以外の歯の歯先円直径よりも小さいので、前記駆動側歯車の歯と前記従動側歯車の歯とがロック状態を引き起こす位相において、前記駆動側歯車の歯の位置にロック回避歯を位置させることにより、前記ロック状態が引き起こされることを抑制することができ、前記駆動側歯車と前記従動側歯車とを円滑に噛合わせることができ、異常動作(指定ステップ位置のずれ)や動作不良の発生を抑制できる。
【0029】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記凸部は前記円周方向に等間隔で前記駆動側歯車に4箇所形成され、前記駆動側歯車及び前記従動側歯車が前記動力非伝達状態にある際、前記モータを第1方向に回転させて前記駆動側歯車を原点位置にセットすると、前記ロック回避歯は前記従動側歯車における前記非噛合部に最も近い歯と対向する位置に位置する、ことを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、前記凸部は前記円周方向に等間隔で前記駆動側歯車に4箇所形成され、前記駆動側歯車及び前記従動側歯車が前記動力非伝達状態にある際、前記モータを第1方向に回転させて前記駆動側歯車を原点位置にセットすると、前記ロック回避歯は前記従動側歯車における前記非噛合部に最も近い歯と対向する位置に位置するので、前記駆動側歯車において原点位置をセットするまでの回転量を小さくすることができる。その結果、バルブ駆動装置における弁体を駆動させる際の応答性を高めることができる。
【0031】
本発明に係るバルブ駆動装置は、前記駆動側歯車に形成された歯の数は、前記従動側歯車に形成された歯の数よりも少ない、ことを特徴とする。
本態様によれば、前記駆動側歯車に形成された歯の数は、前記従動側歯車に形成された歯の数よりも少ないので、前記モータの回転を前記従動側歯車に減速させて伝達することができる。その結果、小さな動力源でも大きなトルクを得ることができ、前記弁体を確実に駆動させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、前記動力伝達切換部により前記動力伝達状態から前記動力非伝達状態へ切り換えることで、前記駆動側歯車と前記従動側歯車との噛合状態が解除される。その結果、前記モータにおいて脱調が生じる虞を低減でき、脱調を起因とする騒音、あるいは前記駆動側歯車の原点位置を決めるために前記駆動側歯車を余分に回転させることで生じる騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】本実施形態に係るバルブ駆動装置の側断面図。
【
図3】バルブ駆動装置における駆動コイルの斜視図。
【
図4】駆動コイルを構成するコア部材の分解斜視図。
【
図5】バルブ駆動装置においてバルブ室を区画するカバーの斜視図。
【
図6】バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図7】バルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図。
【
図10】弁体駆動機構における従動側部分の分解斜視図。
【
図15】各ステップにおける第1弁及び第2弁の開閉状態を示す図。
【
図16】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図17】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図18】出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図。
【
図19】原点復帰動作におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図20】原点復帰動作におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図21】原点復帰動作におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図22】弁体駆動時におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図23】弁体駆動時におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図。
【
図24】原点位置における出力側歯車と従動側歯車との関係を示す図。
【
図26】駆動側歯車に対する従動側歯車の連れ回り回転を第2回転規制部で規制する状態を示す図。
【
図27】従動側歯車に対する回転規制部の回動軸の中心位置の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
【0035】
図1は本実施形態に係るバルブ駆動装置の斜視図であり、
図2は本実施形態に係るバルブ駆動装置の側断面図であり、
図3はバルブ駆動装置における駆動コイルの斜視図であり、
図4は駆動コイルを構成するコア部材の分解斜視図であり、
図5はバルブ駆動装置においてバルブ室を区画するカバーの斜視図である。
【0036】
図6及び
図7はバルブ駆動装置における弁体駆動機構の斜視図であり、
図8は出力側歯車の斜視図であり、
図9は出力側歯車の平面図であり、
図10は弁体駆動機構における従動側部分の分解斜視図であり、
図11は従動側歯車の斜視図であり、
図12は回転規制部の斜視図である。
【0037】
図13は弁体を弁座面と反対の側から見た斜視図であり、
図14は弁体を弁座面側から見た斜視図であり、
図15は各ステップにおける第1弁及び第2弁の開閉状態を示す図であり、
図16、
図17及び
図18は出力側歯車と従動側歯車との位相状態と弁体の状態を示す図である。
【0038】
図19、
図20及び
図21は原点復帰動作におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図であり、
図22及び
図23は弁体駆動時におけるモータの励磁状態と弁体駆動機構の状態を示す図であり、
図24は原点位置における出力側歯車と従動側歯車との関係を示す図である。
【0039】
図25は従動側歯車の斜視図であり、
図26は駆動側歯車に対する従動側歯車の連れ回り回転を第2回転規制部で規制する状態を示す図であり、
図27は従動側歯車に対する回転規制部の回動軸の中心位置の関係を示す図であり、
図28は従動側歯車の他の実施形態を示す斜視図である。
【0040】
<<<実施形態>>>
<<<バルブ駆動装置の概要>>>
図1ないし
図6を参照して、本実施形態に係るバルブ駆動装置10について説明する。バルブ駆動装置10は、一例として冷蔵庫に搭載されて、庫内冷却用の冷媒(流体)の供給量を調整するものである。バルブ駆動装置10は、バルブ本体12と、バルブ本体12から延びる流入管14と、流入管14に平行に延びる第1流出管16及び第2流出管18と、バルブ本体12の上部を覆うカバー部材20とを備えている。尚、以下の説明では、便宜上、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18の延設方向を上下方向とし、バルブ本体12を上側、流入管14、第1流出管16及び第2流出管18を下側として説明する。
【0041】
図2において、バルブ本体12は、ベース部材22と、モータ24と、「カバー」としての密封カバー26と、基台本体28と、弁体駆動機構30とを備えている。基台本体28は、上面28aを有している。基台本体28には、流入管14、第1流出管16及び
第2流出管18がそれぞれ取り付けられている。基台本体28の上部には、密封カバー26(
図5)が取り付けられている。基台本体28と密封カバー26とは、バルブ室32を形成している。
【0042】
図6に示すように上面28aには、流体入口28bが形成されている。流体入口28bは、基台本体28に取りつけられた流入管14と連通している。バルブ室32内には流入管14から冷媒(流体)が供給される。
【0043】
一方で、基台本体28には、弁座構成部材34(
図2、
図7、
図10及び
図16ないし
図18参照)が取り付けられている。弁座構成部材34には、第1流出管16及び第2流出管18がそれぞれ取り付けられ、第1流出管16と連通する「流体出口」としての第1流体出口34aと、第2流出管18と連通する「流体出口」としての第2流体出口34bとが設けられている。流入管14からバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34aから第1流出管16へ流出し、あるいは第2流体出口34bから第2流出管18へ流出する。尚、本実施形態において、基台本体28及び弁座構成部材34は「基台」を構成している。
【0044】
図2に示すように、モータ24は、ステータ36と、駆動マグネット38が取り付けられたロータ40とを備えている。ステータ36は、密封カバー26を挟んでロータ40の周囲を取り囲むように配置されている。
【0045】
本実施形態において、ステータ36は、
図4に示すように4つのコア部材42を備えている。各コア部材42には、4つの極歯42aが形成されている。したがって、本実施形態において、ステータ36は16極の極歯42aを有している。ステータ36において積層されたコア部材42には、駆動コイル37として巻線が巻かれている。ステータ36に巻かれた駆動コイル37(巻線)の一端は、モータ端子44(
図3)の一端に絡げて繋がれている。モータ端子44は、不図示のコネクタ、あるいは基板等と電気的に接続されることで、ステータ36に電力を供給する。
【0046】
図2及び
図6に示すように、ロータ40は、駆動マグネット38と、駆動側歯車46と、支軸48とを備えている。支軸48には、駆動側歯車46と駆動マグネット38とが支軸48に対して回転可能に取り付けられている。駆動マグネット38は、駆動側歯車46に取り付けられている。支軸48の上端は、密封カバー26に形成された軸受部26aに支持され、支軸48の下端は、基台本体28に形成された軸受部28cに支持されている。本実施形態では、ステータ36(駆動コイル37)が励磁されると、ロータ40は駆動マグネット38により支軸48を回転中心としてバルブ室32内で回転するように構成されている。
【0047】
<<<弁体駆動機構の概要>>>
図6ないし
図14を参照して弁体駆動機構30の構成について説明する。
図6及び
図7に示すように、弁体駆動機構30は、モータ24と、駆動側歯車46と、従動側歯車50と、動力伝達切換部52とを備えている。動力伝達切換部52は後述するが、駆動側歯車46と従動側歯車50との間における動力伝達を、動力を伝達する動力伝達状態と、動力を伝達しない動力非伝達状態とを切換可能に構成されている。
【0048】
図8及び
図9に示すように駆動側歯車46は、下端部に歯車部46aが形成されている。
歯車部46aの上方には複数の凸部46bが形成されている。駆動側歯車46の円周方向において、凸部46bに対応する歯車部46aの歯は、ロック回避歯46cとして構成されている。
【0049】
複数の凸部46bは、駆動側歯車46の本体46dから駆動側歯車46の半径方向外側に突出している。本実施形態において、凸部46bは一例として平板状に形成されている。尚、凸部46bの形状は平板状に限定されるものではなく、後述する回転規制部62と係合可能な形状であればよい。本実施形態において、複数の凸部46bは、駆動側歯車46の円周方向において駆動マグネット38のN極、またはS極に対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0050】
本実施形態において駆動マグネット38の磁極の数は、一例として8極(
図19ないし
図23参照)として構成されている。したがって、本実施形態では、凸部46bは、駆動側歯車46において4箇所設けられている。具体的には凸部46bは、駆動側歯車46において駆動側歯車46の円周方向に等間隔に設けられ、本実施形態において凸部46bは4箇所形成されているので90度ごとに設けられている。本実施形態において凸部46bは、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の歯厚に対応する厚みに形成されている。
【0051】
図9を参照するに、本実施形態においてロック回避歯46cの歯先円直径はd1に設定されている。一方、歯車部46aにおいてロック回避歯以外の歯の歯先円直径はd2に設定されている。本実施形態では、歯先円直径d1は歯先円直径d2よりも小さくなるように設定されている。尚、
図9における一点鎖線の円は、ロック回避歯46cの歯先円直径を図示しており、二点鎖線の円はロック回避歯46c以外の歯の歯先円直径を図示している。
【0052】
次いで、駆動側歯車46に対して従動回転する従動側歯車50の側の構成について説明する。
図2に示すように、従動側歯車50の半径方向中心には、支軸54が挿入されている。従動側歯車50は支軸54に対して回転可能に構成されている。従動側歯車50の下方には弁体56が設けられている。本実施形態において弁体56は、従動側歯車50と一体に支軸54に対して回転可能に構成されている。弁体56の下方には弁座構成部材34が設けられている。弁座構成部材34の上面は弁座面34cとして構成されている。
【0053】
また、弁座構成部材34の中心には貫通孔34dが設けられ、支軸54が挿入されている。尚、
図7において支軸54の図示を省略している。
図7において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46における一方の回転方向である第1方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46における他方の回転方向である第2方向を示している。
【0054】
従動側歯車50の上部には、保持部材58が取り付けられている。保持部材58には、支軸54が通されている。また、保持部材58は、上部にフランジ部58aが形成された円筒状の部材として構成され、筒状部58bに「付勢部材」としてのねじりばね60が通されて保持されている。また、従動側歯車50の上部には、レバー状の回転規制部62が取り付けられている。
【0055】
図7、
図10、
図11及び
図25を参照するに、従動側歯車50には、外周部分に円周方向に沿って連続的に複数の歯が形成された噛合部50aと、歯が形成されていない非噛合部50bとが形成されている。また、従動側歯車50の外周部分において、噛合部50aの第2方向R2側の端部には、従動側歯車50の第1方向R1側への回転を規制する第1回転規制部50cが設けられ、噛合部50aの第1方向R1側の端部には、非噛合部50bが設けられている。さらに、非噛合部50bにおいて第1方向R1側の端部には、「連れ回り防止部」としての第2回転規制部50kが設けられている。尚、
図11において、符号R1が付された矢印は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示し、符号R2が付された矢印は、駆動側歯車46が第2方向に回転した際の従動側歯車50の従動回転方向を示している。尚、
図16ないし
図23において第2回転規制部50kの符号を省略している。
【0056】
尚、本実施形態において、主に
図16のステップS0に示すように、駆動側歯車46の基準円直径と従動側歯車50の基準円直径とを比べると、従動側歯車50の基準円直径の方が大きく形成されている。さらに、駆動側歯車46の歯車部46aの歯の数は、従動側歯車50の噛合部50aに形成された歯の数よりも少なく形成されている。したがって、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとが噛合って回転する動力伝達状態において、モータ24の回転を従動側歯車50に減速させて伝達させることができるので、小さな動力源でも大きなトルクを得ることができ、後述する弁体56を確実に駆動させることができる。
【0057】
また、
図11に示すように、従動側歯車50の中心部には、支軸54が挿入される貫通孔50dが設けられている。さらに、従動側歯車50の上面において貫通孔50dの周囲には、保持部材58の一部を受け入れて、保持部材58と係合する凹部50eが形成されている。凹部50eと係合した保持部材58は、支軸54とともに従動側歯車50の軸部を構成し、ねじりばね60を保持している。
【0058】
加えて、従動側歯車50の上面において凹部50eを取り巻くように円弧状の保持部50fが設けられている。
図7に示すように保持部50fは、ねじりばね60の一端60aと係合し、一端60aを保持するように構成されている。また、従動側歯車50の上面には、貫通孔50gと、レバー回転規制部50hが設けられている。
【0059】
<<<回転規制部について>>>
図12を参照するに、回転規制部62は、回動軸62aと、レバー部62bとを備えている。レバー部62bには、第1接触部62cと、第2接触部62dと、ばね保持部62eとが設けられている。ばね保持部62eは、ばね接触部62fと、ばね脱落防止部62gとを備えている。
【0060】
図7に示すように回転規制部62は従動側歯車50の上部に回動可能に取り付けられている。具体的には、従動側歯車50の貫通孔50g(
図11)に回転規制部62の回動軸62aが挿入されている。回転規制部62は従動側歯車50に対して回動軸62aを回動可能に構成されている。
【0061】
回転規制部62のレバー部62bのばね保持部62eのばね接触部62fには、ねじりばね60の他端60bが接触し、ねじりばね60の他端60bに押圧されている。ばね保持部62eにおいてばね脱落防止部62gは、ねじりばね60の他端60bを挟んで、ばね接触部62fの反対側に設けられている。ばね脱落防止部62gは、ばね接触部62fと接触しているねじりばね60の他端60bが回転規制部62の回動状態によりばね接触部62fから離間した際、ねじりばね60の他端60bがばね保持部62eから脱落することを防止する。
【0062】
本実施形態において、回転規制部62は、レバー部62bの第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回転規制部50hと接触してレバー回転規制部50hを押圧するように、ねじりばね60の付勢力を受けている。つまり、回転規制部62のレバー部62bは、ねじりばね60の付勢力により、従動側歯車50の半径方向外側に向かって付勢され、第2接触部62dとレバー回転規制部50hとが接触する位置で半径方向外側への回動を規制されている。
【0063】
これに対し、第2接触部62dをねじりばね60の付勢力に抗して従動側歯車50の半径方向内側に向かって押圧すると、回転規制部62は回動軸62aを中心として従動側歯車50の半径方向内側に向かって回動する。第2接触部62dに対する半径方向内側への押圧を解除すると、レバー部62bはねじりばね60の付勢力により第2接触部62dとレバー回転規制部50hとが接触する位置まで回動して戻る。
【0064】
本実施形態において従動側歯車50には、半径方向外側及び厚み方向上方側に突出する凸状部50nが形成されている。従動側歯車50の円周方向において凸状部50nの一方側には第1回転規制部50cが形成され、他方側には第2回転規制部50kが形成されている。凸状部50nにおいて従動側歯車50の半径方向内側には、レバー回転規制部50hが形成されている。凸状部50nにおいてレバー回転規制部50hは、レバー状の回転規制部62の回動軸62aの一部及びレバー部62bの一部を受け入れるように半径方向外側に向かって凹状に形成されている。
【0065】
<<<弁体について>>>
図10、
図13及び
図14を参照して弁体56について説明する。
図13及び
図14に示すように、弁体56は円盤状の部材として構成されている。弁体56の中央部には、貫通孔56aが設けられている。貫通孔56aには、支軸54が挿入される。弁体56の下面は、弁座構成部材34の弁座面34cと摺動する摺動面56bとして構成されている。弁体56において摺動面56bの一部が切り取られ、切り欠き部56cとして構成されている。
【0066】
図14に示すように、切り欠き部56cは、弁体56の摺動面56bに対して上方側に凹んだ形状を成している。尚、切り欠き部56cには2箇所の貫通孔56dが設けられている。本実施形態では、一例として貫通孔56dには、従動側歯車50の下面から突出する不図示のボスが挿入され、従動側歯車50と弁体56とを一体に回転可能とするように構成されている。
【0067】
また、弁体56には、上下方向に貫通し、摺動面56bにおいて開口するオリフィス56eが設けられている。本実施形態において、オリフィス56eは、流体の経路において第1流体出口34a及び第2流体出口34bよりも幅が狭い部位を有している。尚、より好ましくは、オリフィス56eは、流体の経路において幅が最も狭い部位を有している。
【0068】
以上が、バルブ駆動装置10及び弁体駆動機構30の主要な構成であり、以下において、弁体駆動機構30による弁体56の流体の制御、及び駆動側歯車46と従動側歯車50との動力伝達状態、動力非伝達状態について順次説明する。
【0069】
<<<弁体による流体制御について>>>
図15ないし
図18を参照して、流体入口28bから第1流体出口34a及び第2流体出口34bの少なくとも一方への流体の流量制御について説明する。
図16のステップS0において、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に位置している。尚、原点位置における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯との関係については後述する。
【0070】
図16に示すようにステップS0(原点位置)において、弁体56の切り欠き部56cは、第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置している。したがって、弁体56が第1流体出口34a及び第2流体出口34bを閉じていない状態であるので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態にある。これにより、流体入口28bからバルブ室32内に供給された流体は、第1流体出口34a及び第2流体出口34bを通して第1流出管16及び第2流出管18へ流出する(
図15の開閉モード参照)。
【0071】
次いで、モータ24を回転駆動させて、ロータ40、ひいては駆動側歯車46を第1方向R1に回転させる。この際、駆動側歯車46と噛み合う従動側歯車50も従動回転(
図16における時計周り方向)し、ステップS1(
図16の中央の図)の状態に移行する。従動側歯車50の従動回転により、弁体56は弁座構成部材34に対して、摺動面56bが弁座面34cに密着状態で
図16における時計回り方向に摺動する。ステップS1においても、切り欠き部56cが第1流体出口34a及び第2流体出口34bの上方に位置しているので、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは開口した状態、すなわち、
図15における開モードとなる。
【0072】
図16の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS1の状態からステップS2の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aの上方にオリフィス56eが位置し、切り欠き部56cは第2流体出口34bの上方に位置している。第1流体出口34aは、オリフィス56eにより第1流体出口34aから流出する流体の流量が制限された状態となる。
【0073】
つまり、ステップS0及びステップS1のように完全に開口した状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量に比べてオリフィス56eにより制限された状態の第1流体出口34aから流出する流体の流量は少なくなる。つまり、
図15のステップS2における微小開モードとなる。第2流体出口34bは、開口した状態であるので、開モードとなる。
【0074】
次いで、
図17の上の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS2の状態からステップS3の状態に移行する。この状態では、オリフィス56eは、第1流体出口34aの上方に位置から外れている。第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは閉モード(
図15)となり、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られる。一方、第2流体出口34bの上方には切り欠き部56cが位置している。したがって、第2流体出口34bは開口しており、開モード(
図15)となる。
【0075】
次いで、
図17の中央の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS3の状態からステップS4の状態に移行する。この状態では、第1流体出口34aは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じられている。したがって、第1流体出口34aは、ステップS3から継続して閉モード(
図15)状態を維持し、バルブ室32から第1流出管16への流体の経路が遮られた状態を維持している。
【0076】
さらに、第2流体出口34bの上方にはオリフィス56eが位置している。したがって、第2流体出口34bは、オリフィス56eにより第2流体出口34bから流出する流体の流量が制限された状態であり、
図15のステップS4における微小開モードとなる。
【0077】
次いで、
図17の下の図に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS4の状態からステップS5の状態に移行する。ステップS5の状態では、第1流体出口34a及び第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態となる。つまり、
図15のステップS5における閉モードとなる。この状態では、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18への流体の経路が遮られた状態となる。
【0078】
次いで、
図18に示すように、駆動側歯車46を第1方向R1にさらに回転させるとステップS5の状態からステップS6の状態に移行する。ステップS6の状態では、再度、切り欠き部56cが第1流体出口34aの上方に位置する。したがって、第1流体出口34aは完全に開いた状態となり、
図15における開モードとなる。一方、第2流体出口34bは、弁体56の摺動面56bに覆われて閉じた状態を維持するので、バルブ室32から第2流出管18への流体の経路が遮られた状態を維持する。つまり、
図15のステップS6において閉モードとなる。
【0079】
本実施形態では、モータ24により弁体56を弁座構成部材34に対して回転させることで、第1流体出口34a及び第2流体出口34bをそれぞれ開いた状態、微小に開いた状態、閉じた状態と切り換えることができ、バルブ室32から第1流出管16及び第2流出管18のそれぞれに流出する流体の流量を調整することができる。
【0080】
<<<駆動コイルの励磁パターンについて>>>
次いで、
図19ないし
図21において弁体駆動機構30の動力伝達切換部52の原点位置復帰動作について説明する。
図19ないし
図21の左側の各図において、左側の図はステータ36の励磁パターンに対応する駆動マグネット38の各磁極の位置を模式的に示しており、右側の図は、左側の図に対応した動力伝達切換部52の状態を模式的に示している。尚、一例としてステータ36及び駆動マグネット38において黒のドットで塗られた部分はS極を示しており、黒色で塗りつぶされた部分はN極を示しており、ステータ36において無色の部分は、励磁されていない状態を示している。
【0081】
本実施形態において、ステータ36の極歯42aは16極設けられており、駆動マグネット38の磁極は8極に設定されている。以下の説明では、ステータ36の各極歯42aを8つの励磁パターンで励磁することで、ロータ40を回転させている。以下、
図19ないし
図21においてステップS9及びステップS17におけるステータ36の励磁パターンを初期励磁パターンつまり第1励磁パターンとし、ステータ36の第1励磁パターンにおける駆動マグネット38の磁極の位置を原点位置とする。
【0082】
図19のステップS7から
図21のステップS17まで、ロータ40は第2方向R2に回転している。初期励磁パターンである第1励磁パターン(ステップS9参照)は、S極及びN極は4極ずつ励磁されており、S極に励磁された極歯42aとN極に励磁された極歯42aとの間には、励磁されていない極歯42aが1つ存在している励磁状態である。
【0083】
次に第2励磁パターン(ステップS10参照)は、S極又はN極に励磁されている極歯42aの第2方向R2側に位置する励磁されていない極歯42aを、S極又はN極に励磁する。具体的には、S極に励磁されている極歯42aの第2方向R2側に位置している極歯42aをS極に励磁し、N極に励磁されている極歯42aの第2方向R2側に位置している極歯42aをN極に励磁する。次いで、第3励磁パターン(
図20のステップS11参照)では、第1励磁パターンで励磁されていた極歯を非励磁状態とする。これにより、第3励磁パターンは第1励磁パターンに対してロータ40の回転方向である第2方向R2において極歯1つ分、極性が進んだ状態となる。
【0084】
以後、ステップS11の第3励磁パターンから、ステップS12の第4励磁パターン、ステップS13の第5励磁パターンへ進むと、ロータ40の回転方向である第2方向R2において極歯1つ分、極性が進んだ状態となる。同様に、ステップS13の第5励磁パターンから、ステップS14の第6励磁パターン、ステップS15の第7励磁パターンへ進むと、ロータ40の回転方向である第2方向R2において極歯1つ分、極性が進み、ステップS15の第7励磁パターンから、ステップS16の第8励磁パターン、ステップS17の第1励磁パターンへ進むと、ロータ40の回転方向である第2方向R2において極歯1つ分、極性が進む。
【0085】
本実施形態では、ステータ36において、第1励磁パターン(ステップS9)から第8励磁パターン(ステップS16)までの励磁を順次行うと励磁パターンが第1励磁パターンに戻る。8つの励磁パターンを行う間に第1励磁パターンでS極又はN極で励磁されている極歯42aは第2方向R2側に極歯4つ分、極性が進んだ状態となる。
【0086】
これに対して、駆動マグネット38は8極で構成されている。ステータ36の第1励磁パターン(ステップS9)において、駆動マグネット38は、ステータ36の励磁された極歯42aの極性(例えば、S極の場合)と反対の極性(N極)を有する部位が極歯42aと対向する位置に位置する。ステップS9では、ステータ36のS極に励磁された極歯42aは、駆動マグネット38のN極の部位と対向し、ステータ36のN極に励磁された極歯42aは、駆動マグネット38のS極の部位と対向している。
【0087】
第1励磁パターンから第2励磁パターンに切り換わると、ステータ36において励磁された極歯42aが第2方向R2側に1つ増えるので、励磁された極歯1つ分、駆動マグネット38も第2方向R2側に移動する。これにより、ステータ36の励磁パターンが切り換わるたびに駆動マグネット38が第2方向R2側に移動する。したがって、ステータ36の第1励磁パターンから第8励磁パターンまでの励磁パターンを順次切り換えることで、駆動マグネット38、ひいてはロータ40が第2方向R2側に回転する。
【0088】
<<<動力伝達状態から動力非伝達状態への切換について>>>
ステップS7において、駆動側歯車46は第2方向R2に回転している。ステップS7の状態では、駆動側歯車46の歯車部46aは従動側歯車50の噛合部50aと噛合っている。尚、ステップS7は、駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させて従動側歯車50を従動回転させた後、回転方向を第2方向側に切り換えて、原点位置に戻る途中の状態である。
【0089】
さらにステップS8を経てステップS9に移行すると、駆動側歯車46は従動側歯車50に対して原点位置に戻る。ここで、原点位置とは、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除され、歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態である。この状態において、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達がなされない動力非伝達状態となる。
【0090】
具体的には、ステップS9、ステップS11、ステップS13、ステップS15及びステップS17の右側の図を参照するに、駆動側歯車46が第2方向R2側に回転すると、4つの凸部46bも第2方向R2に回転する。ステップS9からステップS11に進むにつれ、回転規制部62の第2接触部62dと対向している凸部46bは、第2方向R2側への回転に伴って第2接触部62dに接近し、ステップS11において第2接触部62dと接触する。
【0091】
駆動側歯車46が第2方向R2にさらに回転すると、第2接触部62dと接触した凸部46bも第2方向R2側に回転しようとする。この際、凸部46bは、ステップS13及びステップS15の右の図に示すようにねじりばね60の付勢力に抗して第2接触部62dを押圧する。その結果、回転規制部62は、回動軸62a(
図12)を中心として従動側歯車50の半径方向内側に向けて回動する。
【0092】
その後、ステップS15からステップS17に示すように、駆動側歯車46がさらに第2方向R2に回転すると、第2接触部62dを押圧していた凸部46bが、第2接触部62dから離間する。その結果、回転規制部62は、ねじりばね60の付勢力により半径方向外側に向かって回動し、第2接触部62dが従動側歯車50のレバー回転規制部50h(
図11)と接触する位置まで回動する。
【0093】
本実施形態において、駆動側歯車46の歯車部46aが、従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態で、第2方向R2側に駆動側歯車46を回転させると、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと間欠的に接触と離間とを繰り返す一方で、歯車部46aは非噛合部50b内で空転し続ける。したがって、動力非伝達状態における駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯とが不用意に接触することを防止でき、歯同士が衝突した際の衝突音の発生を防止できる。
【0094】
歯車部46aが非噛合部50b内で空転し続けることにより、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとの噛合状態が解除された状態が継続する。その結果、駆動側歯車46から従動側歯車50へはモータ24の動力が伝達されない動力非伝達状態が維持される。したがって、モータ24において脱調が生じる虞を低減でき、脱調を起因とする騒音を抑制することができる。
【0095】
図26を参照して、第2回転規制部50kについて説明する。
図26の上の図及び下の図は、ステップS13ないしステップS15における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係を示している。
図26の上の図において、凸部46bが回転規制部62の第2接触部62dと接触し、第2接触部62dを押圧する際、凸部46bは、第2方向R2側に回転することから、第2接触部62dを
図26における反時計回り方向へ回転するように押圧する。
【0096】
ここで、凸部46bにより押圧された第2接触部62dは、従動側歯車50とともに
図26における反時計回り方向に回転しようとする。本実施形態において従動側歯車50には、非噛合部50bの第1方向R1方向側に第2回転規制部50kが設けられている。従動側歯車50が第2接触部62dとともに
図26における反時計回り方向に回転すると、非噛合部50b内に位置する駆動側歯車46の歯車部46aの歯車と接触する(
図26の上の図)。
【0097】
第2回転規制部50kが歯車部46aの歯と接触すると、従動側歯車50の
図26における反時計回り方向への回転が規制される。さらに、この状態で駆動側歯車46が第2方向R2側への回転を継続しても、第2回転規制部50kが歯車部46aのいずれかの歯と接触した状態(
図26の下の図)を保つので、従動側歯車50の回転規制状態が維持される。これにより、駆動側歯車46の歯車部46aが、非噛合部50b内において空転することができ、動力非伝達状態を維持できる。
【0098】
<<<動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について>>>
次いで、
図22ないし
図24において動力非伝達状態から動力伝達状態への切換について説明する。本実施形態において、駆動側歯車46の歯車部46aが従動側歯車50の非噛合部50b内に位置している状態、つまり動力非伝達状態において、ステータ36を初期励磁パターンである第1励磁パターンで励磁すると、駆動マグネット38は、ステータ36の第1励磁パターンに対応する磁極位置に移動する。その結果、駆動側歯車46も駆動マグネット38に応じた位置に位置する。
【0099】
具体的に説明すると、本実施形態において、凸部46bは、駆動マグネット38のN極又はS極の磁極に応じて形成されている。本実施形態では、駆動マグネット38は8極であるので、凸部46bは4つ形成され、駆動側歯車46の円周方向において等間隔に配置されている。本実施形態では、凸部46bは、駆動マグネット38のS極に応じて設けられている。
【0100】
ステータ36が第1励磁パターンで励磁すると、ステータ36のN極に磁化された極歯42aと対向する位置に駆動マグネット38のS極が位置する。その結果、駆動マグネット38のS極に対応する位置に配置された凸部46bは、回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に位置する(
図22のステップS18)。この状態では、まだ、駆動側歯車46の歯車部46aと従動側歯車50の噛合部50aとは噛合っていない状態である。尚、本明細書において凸部46bにおける回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置とは、後述するように、励磁パターンを第1励磁パターンから数パターン切り換える間に凸部46bが第1接触部62cに接触して、
動力非伝達状態から動力伝達状態へ切り換えることができる位置を意味している。
【0101】
この状態で、ステータ36の励磁パターンを第1励磁パターンから第8励磁パターンに切り換えると、駆動側歯車46が第1方向R1側に回転し、回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に位置する凸部46bが第1接触部62cに接触する(
図22のステップS19の右の図)。さらに、ステータ36の励磁パターンを第8励磁パターンから第7励磁パターン(
図22のステップS20)、第6励磁パターン(
図23のステップS21)及び第5励磁パターン(
図23のステップS22)の順に切り換えることで、駆動側歯車46は第1方向R1側に回転し、第1接触部62cと接触している凸部46bは第1接触部62cを
図23における時計回り方向に押圧する。
【0102】
ここで、第1接触部62cと接触する凸部46bは、第1接触部62cと交差する方向において回動軸62aの側に向けて第1接触部62cを押圧するので、回転規制部62は回動することができない。その結果、従動側歯車50は、回転規制部62の第1接触部62cを介して凸部46bに押圧されて、
図23における時計回り方向に回転する。これにより、駆動側歯車46の歯車部46aが、従動側歯車50の非噛合部50bを抜け出して、噛合部50aと噛み合う。これにより、駆動側歯車46から従動側歯車50にモータ24の動力が伝達される。つまり、従動側歯車50において動力非伝達状態から動力伝達状態へと切り換えられる。
【0103】
さらにステップS23及びステップS24に示すように駆動側歯車46を第1方向R1側に回転させることで、従動側歯車50を
図23における時計回り方向に回転させることができ、弁体56におけるステップS1からステップS6までの動作を実行することができる。
【0104】
次いで
図24を参照して、原点位置(
図22のステップS18の状態)における駆動側歯車46と従動側歯車50との関係について説明する。本実施形態において、駆動側歯車46が原点位置に位置すると、凸部46bは回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に位置する。ここで、駆動側歯車46の円周方向において凸部46bに対応する位置には、ロック回避歯46cが形成されている。
【0105】
図24において、二点鎖線で示す円弧は、駆動側歯車46の歯車部46aにおけるロック回避歯46c以外の歯の歯先円を図示している。
図24において駆動側歯車46が原点位置に位置した状態では、従動側歯車50の噛合部50aと非噛合部50bとの境目の歯50jは、ロック回避歯46c以外の歯の歯先円と干渉する位置に位置している。
【0106】
この状態において、ロック回避歯46cの位置にロック回避歯46c以外の歯が配置されている場合、駆動側歯車46が第1方向に回転しようとする際、従動側歯車50の歯50jとロック回避歯46cの位置に配置されたロック回避歯46c以外の歯とが接触して駆動側歯車46と従動側歯車50とがロック状態となる場合がある。
【0107】
本実施形態では、駆動側歯車46が原点位置に位置する際、従動側歯車50の歯50jに、駆動側歯車46のロック回避歯46cが近接するように配置している。これにより、ロック回避歯46cの歯先円はロック回避歯46c以外の歯先円よりも小さいので、従動側歯車50の歯50jと駆動側歯車46のロック回避歯46cとの間に隙間64を設けることができる。隙間64が形成されることにより、駆動側歯車46と従動側歯車50とのロック状態を回避できる。その結果、動力伝達切換部52において駆動側歯車46と従動側歯車50との動力非伝達状態から動力伝達状態への切換を円滑に行うことができ、異常動作(励磁パターンに対する駆動側歯車46の歯車部46aの位置のずれ)や動作不良の発生を抑制できる。
【0108】
本実施形態では、駆動マグネット38の磁極の数がコア部材42の極歯42aの数の半分に設定されている。加えて、駆動マグネット38のN極又はS極に応じて凸部46bが形成されているので、ステータ36が第1励磁パターンで励磁されると、複数の凸部46bのうち1つの凸部46bが、回転規制部62の第1接触部62cに対応する位置に必ず位置する。これにより、第1励磁パターンから第1方向に向けて順次励磁パターンを切り換えた際、数パターン以内で駆動側歯車46の歯と従動側歯車50の歯とが噛合い、動力伝達状態とすることができる。その結果、動力伝達切換部52における動力伝達状態の切換の応答性を高めることができる。
【0109】
また、本実施形態においてステータ36は、4つのコア部材42を積層して構成されている。駆動マグネット38の磁極の極数が8極である場合、各コア部材42は4つの極歯42aを備えているので、駆動マグネット38の極数はコア部材42の極歯42aの数の2倍となる。その結果、所定のコア部材42を励磁した際において、動力切換に対応する位置における極歯42a(例えばN極)に対向する位置に位置する駆動マグネット38の磁極は極歯42aの極と反対の極である4つの磁極(例えばS極)のいずれかとなる。つまり、励磁したコア部材42に対して、駆動マグネット38は4通りの位置パターン(
図19のステップS9における駆動マグネット38の磁極の位置を90度おきにずらしたパターン)のいずれかとなる。駆動マグネット38が4通りの位置パターンのいずれをとっても、所定のコア部材42の極歯42aの磁極に対して反対の磁極となる。したがって、ステータ36に対するロータ40の位置決めを容易に行うことができる。
【0110】
上述したように、本実施形態において、動力伝達切換部52における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を許容し、駆動側歯車46が第2方向に回転した場合、従動側歯車50の回転を規制するように構成されている。つまり、クラッチ機構として構成されている。本実施形態における回転規制部62を既知のクラッチ機構の構成を利用することで、設計時間の短縮及びコストダウンを図ることができる。
【0111】
本実施形態における回転規制部62は、駆動側歯車46が第1方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50へ動力を伝達させ、駆動側歯車46が第2方向に回転した際、駆動側歯車46から従動側歯車50への動力伝達を切断するので、駆動側歯車46の回転方向を切り換えるだけで、動力伝達状態を切り換えることができ、回転規制部62の構成を簡素化することができる。
【0112】
<<<実施形態の変更形態>>>
(1)本実施形態において「付勢部材」の一例としてねじりばね60により回転規制部62を付勢する構成としたが、この構成に代えて、付勢部材を板ばね等により構成してもよい。
【0113】
(2)本実施形態において動力伝達切換部52において凸部46bと回転規制部62との係合状態(第1接触部62cまたは第2接触部62dとの接触)の切換により動力伝達を切り換える構成としたが、この構成に代えて、回転規制部62に既知のラチェット機構を設けて駆動側歯車46を空転させる構成としてもよい。
【0114】
(3)本実施形態において、駆動マグネット38の磁極を8極とし、凸部46bをN極及びS極のいずれか一方の極に対応して4箇所設ける構成としたが、駆動マグネット38を4極とした場合、凸部46bを2箇所設け、駆動マグネット38を6極とした場合、凸部46bを3箇所設け、駆動マグネット38を10極とした場合、凸部46bを5箇所設ける構成としてもよい。
【0115】
(4)本実施形態において第2回転規制部50kは、従動側歯車50の円周方向において凸状部50nの他方側に設ける構成としたが、この構成に代えて、
図28に示すように従動側歯車66の非噛合部66aに対応する位置において、従動側歯車66の半径方向に突出する突出部66bの先端に第2回転規制部66cを設けても良い。本実施形態において第2回転規制部66cは、駆動側歯車46の本体部46dと係合可能に構成され、一例として本体部46dの外周と当接可能な曲面として構成されている。従動側歯車66が駆動側歯車46に連れ回りしそうになると、第2回転規制部66cが駆動側歯車46の本体46dと接触し、従動側歯車66の回転を規制し、従動側歯車66の連れ回りを抑制する。
【0116】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0117】
10 バルブ駆動装置、12 バルブ本体、14 流入管、16 第1流出管、
18 第2流出管、20 カバー部材、22 ベース部材、24 モータ、
26 密封カバー、26a 軸受部、28 基台本体、28a 上面、
28b 流体入口、28c 軸受部、30 弁体駆動機構、32 バルブ室、
34 弁座構成部材、34a 第1流体出口、34b 第2流体出口、
34c 弁座面、34d、50d、50g、56a、56d 貫通孔、
36 ステータ、37 駆動コイル、38 駆動マグネット、40 ロータ、
42 コア部材、42a 極歯、44 モータ端子、46 駆動側歯車、46a 歯車部、46b 凸部、46c ロック回避歯、46d 本体、48、54 支軸、
50、66 従動側歯車、50a 噛合部、50b、66a 非噛合部、
50c 第1回転規制部、50e 凹部、50f 保持部、50h レバー回転規制部、50j 歯、50k、66c 第2回転規制部、50m 歯底円直径、50n 凸状部、52 動力伝達切換部、56 弁体、56b 摺動面、56c 切り欠き部、
56e オリフィス、58 保持部材、58a フランジ部、58b 筒状部、
60 ねじりばね、60a 一端、60b 他端、62 回転規制部、62a 回動軸、62b レバー部、62c 第1接触部、62d 第2接触部、62e ばね保持部、
62f ばね接触部、62g ばね脱落防止部、64 隙間、C1 回動中心、
R1 第1方向、R2 第2方向、
S0、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17、S18、S19、S20、S21、S22、S23、S24 ステップ、d1、d2 歯先円直径