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特許7150496排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20221003BHJP
   B01J 29/78 20060101ALI20221003BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221003BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20221003BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221003BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221003BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221003BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J29/78 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 400
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/24 C
F01N3/24 E
F01N3/28 J
F01N3/28 301P
F01N3/035 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018121886
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020000982
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山下 嘉典
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0087541(US,A1)
【文献】特表2017-522170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0367975(US,A1)
【文献】国際公開第2018/025244(WO,A1)
【文献】特開2001-205051(JP,A)
【文献】特開2005-334801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73 - 53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた最表面層としてのNOx選択還元触媒を含む第1触媒層と、前記基材と前記第1触媒層との間に介在し、NH酸化触媒を含む第2触媒層とを具備し、前記第2触媒層は前記第1触媒層に覆われていない露出領域を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が第1選択還元触媒層と第2選択還元触媒層を含み、前記第1選択還元触媒層は、前記基材の排ガス入口側の端部である入口端から、前記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第1の終点まで延び、前記第2選択還元触媒層は、前記基材の排ガス出口側の端部である出口端から、前記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第2の終点まで延び、前記第2触媒層の前記露出領域が前記第1の終点と前記第2の終点によって画定され、前記基材の全長Lに対する前記露出領域の幅Gが10%以上40%未満であり、L、L及びGは、L+L+G=100%の関係を満たし、且つ、 は50%以上である排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
Gは15%以上30%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
は5%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記第2触媒層は、前記基材の出口端から、前記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第3の終点まで延び、Lは40%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記第1選択還元触媒層は、前記NOx選択還元触媒として、Cuを担持したチャバサイト型ゼオライトを少なくとも含んでいる、請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第2選択還元触媒層は、Niを更に含有している、請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記第2触媒層は、白金及び/又はパラジウムを含有している、請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記第2触媒層は、NOx選択還元触媒を更に含んでいる、請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
尿素水溶液又はアンモニア水溶液供給部と第1触媒とを備えた排ガス浄化システムであって、前記第1触媒は請求項1~のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒であり、前記尿素水溶液又はアンモニア水溶液供給部は前記排ガス浄化システムを通る排ガスの流れに対して前記第1触媒の上流側に配置されている排ガス浄化システム。
【請求項10】
第2触媒を更に備え、前記第2触媒は前記排ガス浄化システムを通る排ガスの流れに対して前記第1触媒の上流側に配置されている、請求項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項11】
前記第2触媒は、NOx選択還元触媒及び/又は希薄NOxトラップ触媒を含む、請求項10に記載の排ガス浄化システム。
【請求項12】
前記第2触媒は、ディーゼルパーティキュレートフィルターと、前記ディーゼルパーティキュレートフィルター上にNOx選択還元触媒及び/又は希薄NOxトラップ触媒を含む触媒層を備える、請求項10又は11に記載の排ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関の排ガスに含まれる有害成分である窒素酸化物(以下、「NOx」と記す。)を低減する技術として、NOxを選択的に還元する尿素選択還元(Selective Catalytic Reduction;SCR)触媒を用いるシステムが使用されている。SCRシステムは、排気通路内に尿素水溶液を噴射してアンモニア(NH)を生成し、それを用いて排ガス中のNOxを除去するものであり、産業用ディーゼルエンジンの多くが、SCRシステムを搭載することで排ガス中のNOxを浄化している。
【0003】
SCRシステムにおけるNOx浄化のメカニズムにおいては、尿素水溶液供給部から噴射された尿素水溶液の液滴が壁面に衝突して微細化、もしくは壁面に付着して蒸発した後に、熱分解(下記反応式(1))、及び加水分解(下記反応式(2))によりNHへと変化しながら排ガス中に拡散されてSCR触媒に供給される。そして、NHとNOxがSCR触媒の作用により反応し、窒素(N)と水(HO)に分解されることで(下記反応式(3))、NOxの排出濃度を低減している。
【0004】
(NHCO → NH+HNCO (1)
HNCO+HO → NH+CO (2)
2HN+NO+NO → 2N+3HO (3)
【0005】
排ガス中のNOxに対して供給されるNHが不足する場合は、NOxがSCR触媒をスリップし、NOx排出量が増加する。SCRシステムにおいては、NOxの変換率を最大にするために、化学量論超過のNHを利用することが多い。このため、余剰の未反応のNHがSCR触媒をスリップ(以下、「アンモニアスリップ」ということがある。)し、新たな環境汚染などの二次公害を引き起こす危険性が指摘されてきた。
【0006】
このようなアンモニアスリップの問題を踏まえて、SCR触媒からスリップしたNHを浄化するために、SCRシステムにおけるSCR触媒の下流側に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)又はロジウム(Rh)等の貴金属をアルミナなどの母材に担持したアンモニア酸化(Ammonia Oxidation;AMOX)触媒を設置して、スリップしたNHを下記反応式(4)のように酸化することで浄化する技術が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
2NH+3/2O → N+3HO (4)
【0007】
しかしながら、上述したアンモニア酸化触媒は、触媒活性種として酸化性能が高い白金などの貴金属成分を用いることから、下記反応式(5)~(7)のように、NHの酸化と同時に新たにNO、NO、NOなどのNOx成分(以下、二次NOxともいう。)の発生を引き起こす問題があった。
2NH+5/2O → 2NO+3HO (5)
2NH+7/2O → 2NO+3HO (6)
2NH+2O → NO+3HO (7)
【0008】
このような二次NOxの発生を抑制するため、例えば特許文献2及び3には、同一の基材上に、白金、パラジウム等の貴金属成分を含まないSCR触媒層(上層)と、白金又はパラジウム等の貴金属担持担体及びSCR触媒組成物を含む触媒層(下層)を具備するアンモニアスリップ触媒(Ammonia Slip Catalyst;ASC)が、SCR触媒の下流に設置された排ガス浄化システムが提案されている。
【0009】
また、同一基材上にSCR触媒層(上層)とNH酸化触媒層(下層)を具備するASCは、特許文献4及び5にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5761917号公報(請求項3、17、段落0023)
【文献】特許第5110954号公報
【文献】特許第5769708号公報
【文献】特表2017-531118号公報(図5図6A図7B
【文献】特表2017-518874号公報(図1I図1J
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来技術は、NOx浄化性能には優れるがアンモニアスリップの抑制能が不十分であったり、逆にアンモニアスリップの抑制能には優れるが、二次NOxを含むNOxの浄化性能が不十分であり、NOxの浄化性能とアンモニアスリップの抑制能をバランスよく効果的に改善できていないのが実情である。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み開発されたものであり、排ガス中のNOx浄化性能とアンモニアスリップ抑制能の双方に優れる排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特許文献2~5に開示されたASCと同一又は類似のASCとして、図6図8を示す。これらはいずれもASCの一部を示す断面図であり、同一基材10上に、NH酸化触媒層300(下層)とSCR触媒層200(上層)を具備する。
【0014】
本発明者等による鋭意研究の結果、図6及び図7に示されたASC101、102の場合、特にアンモニアスリップの抑制能が不十分であることがわかった。その理由として、下層のNH酸化触媒層300は上層のSCR触媒層200によって完全に覆われていることが主たる要因と推測される。すなわち、NHの拡散が表面層にて抑制され、NHとNH酸化触媒との接触が阻害されるため、NH酸化触媒層300におけるNH酸化機能が低下することが推測される。
【0015】
一方、図8に示されたASC103の場合、下層のNH酸化触媒層300は、上層のSCR触媒層200により覆われていない露出領域201を有しているため、NHの酸化反応が促進され、アンモニアスリップの抑制能に優れる。しかしながら、NOxの浄化性能が不十分であることがわかった。その主たる理由として、NH酸化触媒層300の露出領域201の位置に問題があると推測される。すなわち、NH酸化触媒層300の露出領域201が、基材10の出口端120から延びた末端部であるため、NHの酸化反応が促進されることにより生成する二次NOxが、SCR触媒により浄化されることなく排出されることが主たる理由と推測される。
本発明はこのような鋭意研究に基づき開発されたものであり、以下の側面を有する。
【0016】
すなわち、本発明の第1側面によると、基材と、上記基材上に設けられた最表面層としてのNOx選択還元触媒を含む第1触媒層と、上記基材と上記第1触媒層との間に介在し、NH酸化触媒を含む第2触媒層とを具備し、上記第2触媒層は上記第1触媒層に覆われていない露出領域を有する排ガス浄化用触媒であって、上記第1触媒層が第1選択還元触媒層と第2選択還元触媒層を含み、上記第1選択還元触媒層は、上記基材の排ガス入口側の端部である入口端から、上記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第1の終点まで延び、上記第2選択還元触媒層は、上記基材の排ガス出口側の端部である出口端から、上記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第2の終点まで延び、上記第2触媒層の上記露出領域が上記第1の終点と上記第2の終点によって画定され、上記基材の全長Lに対する上記露出領域の幅Gが10%以上40%未満であり、L、L及びGは、L+L+G=100%の関係を満たし、且つ、30%<Lである排ガス浄化用触媒が提供される。
【0017】
上記排ガス浄化用触媒は、一実施形態において、Gが15%≦G≦35%であることが好ましく、15%≦G≦30%であることがより好ましく、20%≦G≦30%であることが特に好ましい。
【0018】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、Lが30%<L≦80%であることが好ましく、40%≦L≦75%であることがより好ましく、50%≦L≦70%であることが更に好ましく、60%≦L≦70%であることが特に好ましい。
【0019】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、Lが5%≦Lであることが好ましく、5%≦L≦40%であることがより好ましく、10%≦L≦35%であることが更に好ましく、10%≦L≦20%であることが特に好ましい。
【0020】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、上記第2触媒層が上記基材の出口端から、上記基材の全長Lに対しL(%)の位置にある第3の終点まで延び、Lは好ましくは40%≦L≦100%であり、より好ましくは40%≦L≦90%であり、更に好ましくは45%≦L≦90%であり、更に好ましくは50%≦L≦85%であり、特に好ましくは50%≦L≦80%である。
【0021】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、上記第1選択還元触媒層が、上記NOx選択還元触媒として、Cuを担持したチャバサイト型ゼオライトを少なくとも含んでいる。
【0022】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、上記第2選択還元触媒層がNiを更に含有している。
【0023】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、上記第2触媒層が、白金及び/又はパラジウムを含有する触媒を少なくとも含んでいる。
【0024】
また、上記排ガス浄化用触媒は、他の実施形態において、上記第2触媒層がNOx選択還元触媒を更に含んでいる。
【0025】
本発明の第2側面によると、尿素水溶液又はアンモニア水溶液供給部と第1触媒とを備えた排ガス浄化システムであって、上記第1触媒は上述したいずれかの排ガス浄化用触媒であり、上記尿素水溶液又はアンモニア水溶液供給部は上記排ガス浄化システムを通る排ガスの流れに対して上記第1触媒の上流側に配置されている排ガス浄化システムが提供される。
【0026】
上記排ガス浄化システムは、一実施形態において、第2触媒を更に備え、上記第2触媒は上記排ガス浄化システムを通る排ガスの流れに対して上記第1触媒の上流側に配置されている。
【0027】
また、上記排ガス浄化システムは、他の実施形態において、上記第2触媒がNOx選択還元触媒及び/又は希薄NOxトラップ触媒を含む。
【0028】
また、上記排ガス浄化システムは、他の実施形態において、上記第2触媒が、ディーゼルパーティキュレートフィルターと、上記ディーゼルパーティキュレートフィルター上にNOx選択還元触媒及び/又は希薄NOxトラップ触媒を含む触媒層とを備える。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、排ガス中のNOx浄化性能とアンモニアスリップ抑制能の双方に優れる排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の一部を示す断面図であって、図1に示す排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図。
図3】本発明の他の実施形態に係る排ガス浄化用触媒の一部を示す断面図であって、図1に示す排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図。
図4】本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用システムを概略的に示す図。
図5A】実施例1で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5B】実施例2~4で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5C】実施例5で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5D】比較例1で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5E】比較例2で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5F】比較例3で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5G】比較例4で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5H】比較例5で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5I】比較例6で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5J】比較例7で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図5K】比較例8で製造したASCを説明するための模式的断面図。
図6】従来技術の一実施形態に係るASCの一部を示す断面図。
図7】従来技術の他の実施形態であるASCの一部を示す断面図。
図8】従来技術の他の実施形態であるASCの一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、用語「上流」及び「下流」は、排ガスの流れを基準として使用することとする。また、用語「アンモニアスリップ触媒(Ammonia Slip Catalyst;ASC)」は、NH酸化触媒としての機能を有する排ガス浄化用触媒について使用され、NH酸化触媒としての機能を有する限り、例えば選択還元(SCR)触媒としての機能を併せ持つ排ガス浄化用触媒についても使用される。
【0032】
<排ガス浄化用触媒>
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す排ガス浄化用触媒の一部を拡大して示す断面図である。図3は、図2に示される実施形態に対する他の実施形態を示す断面図である。図1乃至3において、矢印11は、排ガスの流れる向きを表している。
【0033】
図1乃至図3に示す排ガス浄化用触媒1は、モノリス触媒である。この排ガス浄化用触媒1は、モノリスハニカム基材などの基材10を含んでいる。基材10は、典型的には、コーディエライトなどのセラミックス製である。
【0034】
基材10の隔壁上には、最表面層として、NOxを還元するNOx選択還元(SCR)触媒を含む第1触媒層が形成されており、第1触媒層は、第1選択還元触媒層(以下において、「第1SCR触媒層」という。)20aと、第2選択還元触媒層(以下において、「第2SCR触媒層」という。)20bを含む。基材10と第1触媒層(20a及び20b)との間には、NH酸化触媒を含む第2触媒層30が介在している。
【0035】
尚、図2及び図3に示される層構成に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲において、排ガス浄化用触媒は任意の層を含んでいてもよい。例えば、第1触媒層と第2触媒層との間、基材と第2触媒層との間、第1触媒層の表面等に、任意の層を含んでいてもよい。
【0036】
以下に詳述するギャップ22は、第2触媒層30の露出領域である。第1SCR触媒層20aは、ギャップ22を基準として、排ガスの流れ11に対して上流側に配置され、第2SCR触媒層20bは、下流側に配置されている。以下において、ギャップ22を基準として基材10の上流側を「基材の前段」といい、基材の下流側を「基材の後段」という。
【0037】
基材10の前段に配置される第1SCR触媒層20aは、基材10の排ガス入口側の端部である入口端110から、基材10の全長Lに対しL(%)の位置にある第1の終点21aまで延びている。以下において、L(%)を「第1SCR触媒層のコート幅」などもいう。
【0038】
基材10の後段に配置される第2SCR触媒層20bは、基材10の排ガス出口側の端部である出口端120から、基材10の全長Lに対しL(%)の位置にある第2の終点21bまで延びている。以下において、L(%)を「第2SCR触媒層のコート幅」などもいう。
【0039】
第1SCR触媒層20aと第2SCR触媒層20bは接触しておらず(L+L<100%)、第1の終点21aと第2の終点21bによって画定されるギャップ22が存在する。ギャップ22の領域は、第2触媒層30が第1触媒層によって覆われておらず、第2触媒層30が露出した領域となっている。ここで、基材10の全長Lに対するギャップ22の幅の割合をG(%)としたとき、L、L及びGは、L+L+G=100%の関係を満たす。
【0040】
上述した通り、下層のNH酸化触媒層が上層のSCR触媒層により完全に覆われている場合(例えば、図6及び図7を参照)、NHの拡散が表面層にて抑制される。その結果、NHとNH酸化触媒との接触が阻害され、NH酸化触媒層におけるNH酸化機能が低下するため、所望とするアンモニアスリップの抑制能が得られない。本発明の実施形態に係る排ガス浄化用触媒においては、NHの酸化機能を有する第2触媒層が露出したギャップ22を有するため、NH酸化機能を向上させることができ、アンモニアスリップの抑制能を改善することができる。
【0041】
一方、本発明の実施形態に係る排ガス浄化用触媒は、例えば図8に示される従来のASCと異なり、ギャップ22の下流側である基材の後段に第2SCR触媒層20bが存在する。このため、第2触媒層30の露出領域であるギャップ22においてNHの酸化反応が促進されることにより生成する二次NOxを含め、排ガス中のNOxが第2SCR触媒層20bにより効果的に浄化され、NOxの浄化性能を改善することができる。
【0042】
排ガス中のNOx浄化性能とアンモニアスリップ抑制能の双方に優れる排ガス浄化用触媒を提供するためには、NOxの浄化性能とアンモニアスリップの抑制能をバランスよく効果的に改善することが重要である。そのためには、ギャップの幅G(%)と位置が重要なファクターとなる。ギャップの幅G(%)と位置は、第1SCR触媒層のコート幅Lと第2SCR触媒層のコート幅Lによって特定することができる。
【0043】
本発明の実施形態において、第1SCR触媒層の第1の終点21aと第2SCR触媒層の第2の終点21bによって画定されるギャップ22の幅G(%)は、基材の全長Lに対し、10%≦G<40%であり、好ましくは15%≦G≦35%であり、より好ましくは15%≦G≦30%であり、特に好ましくは20≦G≦30%である。
【0044】
また、本発明の実施形態において、第1SCR触媒層20aのコート幅L(%)は、30%<Lであり、好ましくは30%<L≦80%であり、より好ましくは40%≦L≦75%であり、更に好ましくは50%≦L≦70%であり、特に好ましくは60%≦L≦70%である。
【0045】
また、本発明の実施形態において、第2SCR触媒層20bのコート幅L(%)は、好ましくは5%≦Lであり、より好ましくは5≦L≦40%であり、更に好ましくは10≦L≦35%であり、特に好ましくは10%≦L≦20%である。
【0046】
ギャップの幅G(%)とギャップの位置を上記とすることにより、基板の前段部においてSCR触媒によるNOx還元反応に使用されなかったNHを、ギャップ部分において効率よくNに変換し、生成した二次NOxは後段の第2SCR触媒層にて効率よくNに変換することができる。
【0047】
基材10と第1触媒層(20a、20b)との間に介在し、NH酸化触媒を含む第2触媒層30は、基材10の排ガス出口側の端部である出口端120から、基材10の全長Lに対しL(%)の位置にある第3の終点31まで延びている。以下において、L(%)を「第2触媒層のコート幅」などともいう。
【0048】
第2触媒層30は、図3に示すように、基材10の全長Lにわたり延びていてもよいし(L=100%)、図2に示すように、基材10の出口端120から基材10の全長L未満の長さまで延びていてもよい(L<100%)。一形態において、第2触媒層のコート幅L(%)は、基材10の全長Lに対し、40%≦L≦100%であることが好ましい。
【0049】
NOx浄化機能の観点からは、第2触媒層30は、図2に示すように、基材10の出口端120から、基材10の全長L未満の位置にある第3の終点31まで延びていることが好ましい(L<100%)。一形態において、第2触媒層のコート幅L(%)は、好ましくは40%≦L≦90%であり、より好ましくは45%≦L≦90%であり、更に好ましくは50%≦L≦85%であり、特に好ましくは50%≦L≦80%である。
【0050】
第1触媒層及び第2触媒層のコート量は、特に限定されるものではない。一例において、第1触媒層(第1SCR触媒層及び第2選択触媒層Bの合計)のコート量は、60~200g/Lであることが好ましく、80~180g/Lであることがより好ましい。また、第2触媒層のコート量は、一例において、85~170g/Lであることが好ましく、80~155g/Lであることがより好ましい。
【0051】
本明細書において「コート量」とは、触媒層を形成するために使用されるスラリーから溶媒等の揮発成分が除かれた後の量を意味する。すなわち、コート量は基材上に塗布するスラリーの量ではなく、製造された排ガス浄化用触媒に含まれる触媒層の量である。
【0052】
[材料]
・第1触媒層
第1触媒層としての第1SCR触媒層及び第2SCR触媒層は、NHの存在下でNOxを還元する機能を有するNOx選択還元触媒(以下において、「NOx還元触媒」ともいう)を含む。このような触媒としては、例えば、ゼオライト触媒、複合金属酸化物等を挙げることができる。
【0053】
ゼオライト触媒としては、例えば、チャバサイト型(CHA型)ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、β型(BEA型)ゼオライト、Y型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、SAPO型ゼオライト等を挙げることができる。また、Fe及び/又はCuでイオン交換したゼオライトを挙げることもできる。複合金属酸化物としては、例えば、Ce、Zr、W、Y、Ti、Fe、Cu及びVの少なくとも1種を含む複合金属酸化物等、より具体的には、Fe、Ti,Wからなる酸化物、Ce-Zr複合酸化物等を挙げることができる。その他のNOx還元触媒として、Rh等を挙げることもできる。これらのNOx還元触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
第1触媒層に用い得るNOx還元触媒として、具体的には、例えばCu-CHA型ゼオライト、Fe-BEA型ゼオライト、Fe-ZSM5型ゼオライト、Fe-TiW複合酸化物等を挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。NOx浄化性能の観点からは、NOx還元触媒としてCu-CHA型ゼオライトを使用することが好ましい。
【0055】
また、基材の前段又は後段という第1SCR触媒層と第2SCR触媒層における配置の相違の観点からは、前段の第1SCR触媒層で使用するNOx還元触媒は、後段の第2SCR触媒層で使用するNOx還元触媒よりもNH吸着量のより多い触媒を使用することが好ましい。NH吸着量の多いSCR触媒層はNOx浄化機能が高いが、加速時にNHを後段に排出する可能性が高い。そこでNH酸化力の強いNH酸化触媒が露出しているギャップ部分より前にNH吸着量の多いSCR触媒層を配置することで、加速時に脱離するNHをギャップ部分で酸化しNHの排出を抑制することができる。このように、NOx浄化とNH酸化の観点より第1SCR触媒層にNH吸着量の多いNOx還元触媒を配置することが好ましい。NH吸着量の多いNOx還元触媒としては、例えば、SAR(Silica Alumina ratios)が15以下のCHA型ゼオライトが一例として挙げられる。
【0056】
また、第1SCR触媒層及び第2SCR触媒層は、上述したNOx還元触媒に加え、他の成分を更に含有していてもよい。
【0057】
一形態において、第1SCR触媒層及び第2SCR触媒層は、上述したNOx還元触媒に加え、NOの生成を抑制する機能を有する触媒を更に含有していてもよい。このような触媒は、以下に示す理由から、特に後段の第2SCR触媒層が含有することが好ましい。すなわち、NOはNHの酸化反応の副生成物かつNH-SCR反応の副生成物として生成する。そのため、ギャップ部分に対し下流領域にある第2SCR触媒層中にNO抑制能を有する触媒を使用することがより効果的である。
【0058】
Oを抑制する機能を有する触媒としては、例えば、Ni、Co、Fe、Rh、Ru、Ce、Mn、スピネル等を挙げることができる。
【0059】
第1触媒層は、上述した通り、NHの存在下でNOxを還元する。そのため、第1触媒層にNHを酸化する機能を有するNH酸化触媒が含まれていると、NHが酸化されてしまい、NOxを還元することが困難となる。従って、第1触媒層は、NH酸化触媒を実質的に含有しないことが好ましい。
【0060】
・第2触媒層
第2触媒層は、アンモニアスリップ抑制能を有する触媒層であり、NHを酸化する機能を有するNH酸化触媒を含有する。このような触媒としては、例えば、Pt、Pd、Ru、Ir等の白金族金属(Platinum Group Metal;PGM)を挙げることができる。また、Pt/Pd合金を使用することも耐熱性の観点から好ましい。NH酸化触媒は、金属酸化物(例えば、Al、ZrO、CeO、Ce-Zr複合酸化物等)、ゼオライト、Feイオン交換ゼオライト、Cuイオン交換ゼオライト等に担持されていてもよい。これらのNH酸化触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
第2触媒層は、上述したNH酸化触媒に加え、他の成分を更に含有していてもよい。一形態において、第2触媒層は、NOx還元触媒を更に含有していてもよい。含有し得るNOx還元触媒としては、上述したNOx還元触媒と同様の触媒が挙げられる。
【0062】
<排ガス浄化システム>
本発明は更に、上述した排ガス浄化用触媒を備えた排ガス浄化システムに関する。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムは、一形態において、尿素水溶液又はアンモニア水溶液供給部(以下において、「尿素水溶液供給部」という。)と、上述した排ガス浄化用触媒(以下において、第1触媒ともいう。)を備えている。尿素水溶液供給部は、第1触媒にNHを供給するために、内燃機関の排気通路において第1触媒よりも上流側に配置されている。
【0063】
本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムは、他の形態において、第2触媒を更に備えている。第2触媒は、一形態において、内燃機関の排気通路において第1触媒よりも上流側に配置されている。
【0064】
図4は、本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムを概略的に示す図である。図4において排ガス浄化システム2は、上流側から順に、尿素水溶液供給部としてのインジェクタ80、触媒コンバータ60に収容される第2触媒62、及び、触媒コンバータ70に収容される第1触媒72を備える。
【0065】
図4において、触媒コンバータ60は、コンバータボディ61と第2触媒62とを含んでいる。コンバータボディ61は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ61は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ61の吸気口は、パイプ40bに接続されている。コンバータボディ61の排気口は、パイプ40cの一端に接続されている。パイプ40bには、その中を流れる排ガスに尿素水溶液又はアンモニア水溶液を注入するインジェクタ80が設けられている。
【0066】
第2触媒62は、パイプ40bから触媒コンバータ60へと供給された排ガスが、第2触媒62の隔壁を透過し、その後、パイプ40cへと排出されるように、コンバータボディ61内に収容されている。
【0067】
触媒コンバータ70は、コンバータボディ71と第1触媒72とを含んでいる。コンバータボディ71は、例えば、金属又は合金からなる。コンバータボディ71は、吸気口と排気口とが設けられた中空構造を有している。コンバータボディ71の吸気口は、パイプ40cを介してコンバータボディ61の排気口に接続されている。コンバータボディ71の排気口は、パイプ40dの一端に接続されている。
【0068】
第2触媒62は、一形態においてNOx選択還元触媒を含む。一例によれば、第2触媒62は、モノリスハニカム基材と、その隔壁上に設けられたNOx選択還元触媒を含む触媒層を備えている。NOx選択還元触媒としては、上述した排ガス浄化用触媒が含むNOx還元触媒と同様の触媒を使用することができる。
【0069】
第2触媒62は、他の形態において、希薄NOxトラップ(Lean Nox Trap;LNT)触媒を含んでいてもよい。LNT触媒としては、例えば、Pt、Pd、Rh、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、希土類、Al、Ti及びSiから選択される1つもしくは複数を含む酸化物担体等を使用することができる。
【0070】
第2触媒62は、他の形態において、ディーゼルパーティキュレートフィルター(DPF)としての機能を備えたNOx選択還元触媒であってもよい。ディーゼルパーティキュレートフィルターは、排ガスから粒子状物質を除去する。第2触媒62がディーゼルパーティキュレートフィルターを備えた触媒である場合、第2触媒は、ウォールフロータイプのモノリス触媒である。一例によれば、第2触媒は、ディーパーティキュレートフィルターと、このフィルター上にNOx選択還元触媒及び/又は希薄NOxトラップ触媒を含む触媒層を備えている。第2触媒62にディーゼルパーティキュレートフィルターとしての機能を付与することにより、コンパクトな排ガス処理システムを提供することができる。
【実施例
【0071】
<調製例1:酸化触媒スラリー1の調製>
硝酸PtをPt換算で0.1g含んだ水溶液1.2gと純水300gを混合し、この水溶液に市販のアルミナ75gを加え、1時間撹拌した。得られた混合物を120℃で6時間加熱して水分を蒸発させた。次いで、500℃で1時間の熱処理を施すことにより、Pt/アルミナ粉末1を得た。Pt/アルミナ粉末1の75.1g、ベーマイト5g及び純水500gを混合し、酸化触媒スラリー1を得た。
【0072】
<調製例2:酸化触媒スラリー2の調製>
硝酸PtをPt換算で0.05g含んだ水溶液0.6gと純水300gを混合し、この水溶液に市販のアルミナ75gを加え、1時間撹拌した。得られた混合物を120℃で6時間加熱して水分を蒸発させた。次いで、500℃で1時間の熱処理を施すことにより、Pt/アルミナ粉末1を得た。Pt/アルミナ粉末1の75.05g、ベーマイト5g及び純水500gを混合し、酸化触媒スラリー2を得た。
【0073】
<調製例3:SCR触媒スラリー1の調製>
Cu-CHA材料95gとバインダーとしてSi5gと純水250gとを混合し、SCR触媒スラリー1を得た。
【0074】
<調製例4:SCR触媒スラリー2の調製>
Fe-BEA材料95gとバインダーとしてSi5gと純水250gとを混合し、SCR触媒スラリー2を得た。
【0075】
<調製例5:SCR触媒スラリー3の調製>
V/Ti材料95gとバインダーとしてSi5gと純水250gとを混合し、SCR触媒スラリー3を得た。
【0076】
<触媒の製造>
基材としてコーディエライトハニカム基材(1L)と、上記で得られた酸化触媒スラリー1及び2のいずれかと、SCR触媒スラリー1乃至SCR触媒スラリー3のいずれかを用い、以下に示す方法で触媒ASC1~13を製造した。
【0077】
<実施例1:触媒ASC1の製造>
図5Aを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの60%までの領域にかけて、コート量が100gになるように前段SCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの20%までの領域にかけて、コート量が50gになるように後段SCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Aに示される構造を有する触媒ASC1を得た。
【0078】
<実施例2:触媒ASC2の製造>
図5Bを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの50%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を、基材10の出口端120から基材10の全長Lの20%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Bに示される構造を有する触媒ASC2を得た。
【0079】
<実施例3:触媒ASC3の製造>
図5BにおけるAMOX1(酸化触媒層)の形成に用いる酸化触媒スラリーを、酸化触媒スラリー2から酸化触媒スラリー1に変更し、更に、SCR2の形成に用いるSCR触媒スラリーを、SCR触媒スラリー1からSCR触媒スラリー2に変更した以外は実施例2と同様の条件で製造することにより、図5Bに示される構造を有する触媒ASC3を得た。
【0080】
<実施例4:触媒ASC4の製造>
図5BにおけるAMOX1(酸化触媒層)の形成に用いる酸化触媒スラリーを、酸化触媒スラリー2から酸化触媒スラリー1に変更し、更に、SCR2の形成に用いるSCR触媒スラリーを、SCR触媒スラリー1からSCR触媒スラリー3に変更した以外は、実施例2と同様の条件で製造することにより、図5Bに示される構造を有する触媒ASC4を得た。
【0081】
<実施例5:触媒ASC5の製造>
図5Cを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの70%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの10%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Cに示される構造を有する触媒ASC5を得た。
【0082】
<比較例1:触媒ASC6の製造>
図5Dを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から出口端120までの基材10の全長Lの領域にかけて、コート量が150gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成することにより、図5Dに示される構造を有する触媒ASC6を得た。
【0083】
<比較例2:触媒ASC7の製造>
図5Eを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から出口端120までの基材10の全長Lの領域にかけて、コート量が150gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成することにより、図5Eに示される構造を有する触媒ASC7を得た。
【0084】
<比較例3:触媒ASC8の製造>
図5Fを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が150gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成することにより、図5Fに示される構造を有する触媒ASC8を得た。
【0085】
<比較例4:触媒ASC9の製造>
図5Gを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を、基材10の出口端120から基材10の全長Lの20%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Gに示される構造を有する触媒ASC9を得た。
【0086】
<比較例5:触媒ASC10の製造>
図5Hを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの50%までの領域にかけて、コート量が150gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成することにより、図5Hに示される構造を有する触媒ASC10を得た。
【0087】
<比較例6:触媒ASC11の製造>
図5Iを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの80%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの30%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を、基材10の出口端120から基材10の全長Lの50%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Iに示される構造を有する触媒ASC11を得た。
【0088】
<比較例7:触媒ASC12の製造>
図5Jを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの50%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を、基材10の出口端120から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Jに示される構造を有する触媒ASC12を得た。
【0089】
<比較例8:触媒ASC13の製造>
図5Kを参照しながら説明する。酸化触媒スラリー2を用い、基材10の出口端120から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が80gになるように酸化触媒層であるAMOX1を形成した。次に、SCR触媒スラリー1を用い、基材10の入口端110から基材10の全長Lの40%までの領域にかけて、コート量が100gになるようにSCR触媒層であるSCR1を形成した。更に、SCR触媒スラリー1を、基材10の出口端120から基材10の全長Lの50%までの領域にかけて、コート量が50gになるようにSCR触媒層であるSCR2を形成することにより、図5Kに示される構造を有する触媒ASC13を得た。
【0090】
<評価>
触媒ASC1~13の性能を以下の方法により調べた。
[NH排出量の測定]
模擬ガス評価装置(モデルガス)を用いてNH排出量について評価した。模擬ガス組成としてNO=70ppm、NH=140ppm、O=10%、HO=5%;Nをバランスガス(SV=60,000/hr)となるように触媒ガス濃度を調整する。この混合ガスを赤外炉等で加熱し、触媒流入温度を200℃になるように調節する。NOxとNHの濃度が安定した時点のNH濃度を測定し、これをNH排出量とした。
【0091】
[NOx排出量の測定]
模擬ガス評価装置(モデルガス)を用いてNOx排出量について評価した。模擬ガス組成としてNO=70ppm、NH=140ppm、O=10%、HO=5%;Nをバランスガス(SV=60,000/hr)となるように触媒ガス濃度を調整する。この混合ガスを赤外炉等で加熱し、触媒流入温度を200℃になるように調節する。NOxとNH3の濃度が安定した時点のNOx濃度を測定し、これをNOx排出量とした。
結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示された結果から、本発明の実施例は、排ガス中のNOx浄化性能とアンモニアスリップ抑制能の双方に優れることがわかる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0095】
1 排ガス浄化用触媒
2 排ガス浄化システム
10 基材
11 排ガスの流れ
20a 第1SCR触媒層
20b 第2SCR触媒層
21a 第1の終点
21b 第2の終点
22 ギャップ
30 第2触媒層
31 第3の終点
80 インジェクタ
40a、40b、40c、40d パイプ
60、70 触媒コンバータ
61、71 コンバータボディ
62 第2触媒
72 第1触媒
110 入口端
120 出口端
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図6
図7
図8