(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】シート構造体およびこれを備えた廃水処理装置、シート構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/20 20060101AFI20221003BHJP
C02F 3/06 20060101ALI20221003BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C02F3/20 D
C02F3/06
B32B3/24 Z
(21)【出願番号】P 2018154522
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2017160453
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】松坂 勝雄
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087191(JP,A)
【文献】特開2015-033681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079692(US,A1)
【文献】特開2007-117871(JP,A)
【文献】特開2015-110195(JP,A)
【文献】特開2011-177694(JP,A)
【文献】特開昭57-190697(JP,A)
【文献】特表2005-511303(JP,A)
【文献】特表平01-501437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/12
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に浸漬された状態で、気体供給源から供給された気体を前記液体中に供給するシート構造体であって、
第1端側から供給された前記気体を第1方向に送出するとともに、第1面を有する気体送出層と、
前記第1面に形成された気体通過孔と、
前記気体を外側へ透過させ外側の液体を内側へ透過させない特性を有し、前記第1面を覆う気体透過性不透水性層と、
を備え
、
前記気体送出層は、一方の前記第1面に複数の第1気体通過孔を有し、他方の前記第1面に複数の第2気体通過孔を有し、前記第1気体通過孔に対して前記第1方向にずれた位置に前記複数の第2気体通過孔が位置する、
シート構造体。
【請求項2】
前記気体送出層は、気体流路を形成する支持部を有しており、
前記第1面は、前記支持部を挟持して互いに対向配置されている、
請求項1に記載のシート構造体。
【請求項3】
前記気体透過性不透水性層は、その表面に、前記液体中に含まれる微生物が付着する微生物付着部を有している、
請求項1または2に記載のシート構造体。
【請求項4】
前記気体透過性不透水性層は、前記第1端側に開口が形成された袋形状を有している、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシート構造体。
【請求項5】
前記気体送出層は、前記第1方向に沿って形成された複数の前記気体流路を有する中空板状部材によって構成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシート構造体。
【請求項6】
前記中空板状部材の素材は、紙、樹脂、金属のいずれか1つである、
請求項5に記載のシート構造体。
【請求項7】
前記気体送出層と前記気体透過性不透水性層との間に布帛が積層配置されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート構造体。
【請求項8】
前記布帛の素材は、織布、メッシュシート、不織布、細孔膜のいずれか1つである、
請求項7に記載のシート構造体。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載のシート構造体を含む浄化ユニットと、
廃水を貯留しており、前記浄化ユニットに含まれる前記シート構造体の少なくとも一部が浸漬される廃水処理槽と、
を備えている廃水処理装置。
【請求項10】
前記シート構造体の前記気体送出層内に気体を送り込む動力部を、さらに備えている、
請求項
9に記載の廃水処理装置。
【請求項11】
液体中に浸漬された状態で、気体供給源から供給された気体を前記液体中に供給するシート構造体であって、
第1端側から供給された前記気体を第1方向に送出するとともに、第1面を有する気体送出層と、
前記第1面に形成された気体通過孔と、
前記気体を外側へ透過させ外側の液体を内側へ透過させない特性を有し、前記第1面を覆う気体透過性不透水性層と、
を備えたシート構造体の製造方法であって、
前記気体送出層を配置する配置ステップと、
表面に針が配置された針材を用いて、前記気体送出層における前記気体透過性不透水性層に面する第1面に、前記気体通過孔を形成する孔形成ステップと、
前記第1面に前記気体通過孔が形成された前記気体送出層を、前記気体透過性不透水性層によって覆う被覆ステップと、
を備えているシート構造体の製造方法。
【請求項12】
前記針材は、ロール状の本体部と、前記本体部の表面に配置された複数の針と、を有している、
請求項1
1に記載のシート構造体の製造方法。
【請求項13】
前記被覆ステップでは、前記第1端側に開口を有する袋状の前記気体透過性不透水性層の前記開口から、前記気体送出層を挿入する、
請求項1
1または1
2に記載のシート構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、微生物の働きを活用する廃水処理装置に用いられるシート構造体およびこれを備えた廃水処理装置、シート構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、好気性微生物の働きを活用して有機汚泥物質を分解して廃水を浄化する廃水処理装置が開発されている。例えば、当該廃水処理装置には、廃水中に含まれる好気性微生物に対して低コストで継続的に酸素を供給するために、気体を透過し液体を透過しないシートを含むシート構造体が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、a)少なくとも1つの多孔性気体透過性不透水性層と、b)気体を部分a)の層に運ぶことができる複数のフローチャネルがある、部分a)の層に付着された気体送出層とを含む層状シート構造体と、気体入口とを含み、気体が気体透過層a)を通って送出され、水性媒体から有機物質および/または窒素源を除去する装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシート構造体では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたシート構造体では、気体送出層を形成する複数の主壁の頂部において気体透過性層が固定されている。
【0006】
このため、このような構成のシート構造体が液体中に浸漬されると、シート構造体の外側の水圧によって気体透過性層が押される。そして、空気がシート構造体の外側へ排出される圧力よりも水圧の方が大きくなるため、気体送出層に形成された櫛葉状のフローチャネルに気体透過性層が密着し、フローチャネルの断面積が小さくなる。そして、排出される空気の圧力が水圧より小さいため、気体送出層内に十分な量の気体を供給することが困難になるおそれがある。
【0007】
特に、シート構造体が、例えば、微生物の働きを活用して廃水を浄化する廃水処理装置に使用される場合には、微生物に対して継続的に酸素を供給する必要がある。このため、気体送出層内に対する十分な空気の供給が妨げられることは、微生物の活動を低下させてしまうため好ましくない。
【0008】
本発明の課題は、気体送出層における気体送出量を十分に確保することが可能なシート構造体およびこれを備えた廃水処理装置、シート構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るシート構造体は、液体中に浸漬された状態で、気体供給源から供給された気体を液体中に供給するシート構造体であって、気体送出層と、気体通過孔と、気体透過性不透水性層と、を備えている。気体送出層は、第1端側から供給された気体を第1方向に送出するとともに、第1面を有する。気体通過孔は、第1面に形成されている。気体透過性不透水性層は、気体を外側へ透過させ外側の液体を内側へ透過させない特性を有し、第1面を覆う。
【0010】
当該構成により、気体通過孔は、気体送出層の気体流路と気体透過性不透水性層とを連通させ、気体送出層に供給された気体を、気体透過性不透水性層を介して液体中に供給する。
【0011】
なお、気体送出層とは、第1端側から供給された気体を第1方向に送出する気体流路を有する層のことである。気体透過性不透水性層とは、気体送出層へ供給された気体を外側へ透過させ外側の液体を内側へ透過させない特性を有している層のことである。気体通過孔とは、気体送出層の第1面に形成された気体流路と気体透過性不透水性層とを連通させて、液体中に気体を供給する部位のことである。
【0012】
ここでは、例えば、微生物の働きを活用した廃水処理装置に用いられるシート構造体において、内部に気体流路を形成する気体送出層の第1面を気体透過性不透水性層によって覆った状態で液体中に浸漬される。そして、液体中に浸漬された状態で、気体流路の断面が水圧によって小さくならないようにするために、気体流路の空間を保持する支持部が、気体送出層に設けられている。
【0013】
ここで、気体送出層は、例えば、第1方向に気体流路が形成されるように配置された段ボール材等の中空板状部材、あるいは円形、多角形の断面を有する中空体等を用いることができる。なお、気体送出層へ供給される気体は、例えば、廃水処理装置に用いられる場合には、微生物へ供給される酸素を含む空気等が考えられる。
【0014】
また、気体透過性不透水性層は、気体送出層の第1面を覆うように配置された気体を透過して水を透過しないシートであって、例えば、袋形状を有している。なお、気体透過性不透水性層によって覆われる気体送出層の面は、第1方向に略平行な1つの面であってもよいし、複数の面であってもよい。また、気体送出層における第1端とは反対側の第2端は、気体透過性不透水性層によって覆われていてもよいし、他の部材によって覆われていてもよい。
【0015】
さらに、気体通過孔は、例えば、気体送出層に形成された貫通孔である。この貫通孔は、気体送出層の成形時に形成されていてもよいし、気体送出層の成形後に、加工によって形成されてもよい。
【0016】
これにより、液体中に浸漬された状態で、気体送出層における第1端側から供給される気体を、気体通過孔を介して気体透過性不透水性層の表面から液体中へ供給することができる。そして、液体の水圧によって気体送出層内の気体流路が小さくならないように、支持部によって保持することができる。
【0017】
この結果、気体送出層(気体流路)における気体送出量を十分に確保することができる。
【0018】
第2の発明に係るシート構造体は、第1の発明に係るシート構造体であって、気体送出層は、気体流路を構成する支持部を有しており、第1面は、支持部を挟持して互いに対向配置されている。
【0019】
ここでは、例えば、第1方向に気体流路が形成されるように配置された段ボール材等の中空板状部材を支持部として用いて気体送出層内に気体流路を構成するとともに、第1面は、支持部を挟み込むようにして対向配置されている。
【0020】
これにより、例えば、中空板状部材を用いて気体送出層を構成することで、安価な材料を用いて、気体送出層を構成することができる。
【0021】
第3の発明に係るシート構造体は、第1または第2の発明に係るシート構造体であって、気体透過性不透水性層は、その表面に、液体中に含まれる微生物が付着する微生物付着部を有している。
【0022】
なお、気体透過性不透水性層は、その表面に、液体中に含まれる微生物が付着する層である。
【0023】
ここでは、例えば、シート構造体が廃水処理装置に用いられる場合において、液体中に浸漬された状態で液体に接する気体透過性不透水性層の表面に、微生物が付着する。
【0024】
ここで、廃水中に含まれる微生物は、好気性の微生物であれば空気(酸素)が供給される側へ集まる習性がある。
【0025】
これにより、本発明のシート構造体では、液体に接する気体透過性不透水性層の表面に、微生物が集まった状態で付着する。
【0026】
この結果、廃水処理装置に用いられる場合には、廃水中に含まれる微生物に対して十分な量の酸素を供給して、好気性の微生物の働きを活性化させ、廃水の浄化処理能力を向上させることができる。
【0027】
第4の発明に係るシート構造体は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るシート構造体であって、気体透過性不透水性層は、第1端側に開口が形成された袋形状を有している。
【0028】
ここでは、気体送出層の第1面を覆う気体透過性不透水性層として、例えば、気体を透過させ液体を透過させない特性を持つシート材料を貼り合せて構成される袋形状の部材を用いている。
【0029】
これにより、気体送出層を袋形状の開口側から挿入するだけで、気体送出層の第1面を気体透過性不透水性層によって覆った状態を形成することができる。
【0030】
この結果、液体中に浸漬された状態において、気体送出層側へ液体が透過してくることなく、気体送出層側から気体透過性不透水性層を介して、液体中に気体を透過させて供給することができる。
【0031】
第5の発明に係るシート構造体は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るシート構造体であって、気体送出層は、第1方向に沿って形成された複数の気体流路を有する中空板状部材によって構成される。
【0032】
ここでは、第1方向に沿って形成された複数の気体流路(通気孔)が配置された中空板状部材を用いて気体送出層を構成する。
【0033】
ここで、中空板状部材とは、例えば、リブ状あるいは波形等の芯材を、表シート(ライナ)と裏シート(ライナ)との間に挟み込むように重ね合わせて構成されるシート状の部材であって、例えば、段ボール材等の構造が挙げられる。そして、中空板状部材は、例えば、紙、プラスチック等によって形成される。
【0034】
これにより、中空板状部材の芯材によって形成される通気孔の部分を気体流路として用いることで、安価な材料を用いて、気体送出層を構成することができる。そして、中空板状部材の表シート(ライナ)を一方の第1面とすると、例えば、表シートの表面に加工等によって開孔を形成することで、気体通過孔とすることができる。
【0035】
この結果、中空板状部材を用いて、気体流路と気体通過孔とを有する気体送出層を構成することができる。
【0036】
第6の発明に係るシート構造体は、第5の発明に係るシート構造体であって、中空板状部材の素材は、紙、樹脂、金属のいずれか1つである。
【0037】
ここでは、好ましい中空板状部材の素材として、例えば、紙、ポリオレフィン、ポリスチレン、塩ビ、ポリエステル等の樹脂、アルミニウム等の金属等を用いることができる。
【0038】
これにより、安価な材料を用いて、気体流路を含む気体送出層を構成することができる。
【0039】
第7の発明に係るシート構造体は、第1から第6の発明のいずれか1つに係るシート構造体であって、気体送出層と気体透過性不透水性層との間に布帛が積層配置されている。
【0040】
ここでは、気体送出層と気体透過性不透水性層との間に、布帛を配置している。
ここで、布帛には、木綿、麻等の織物、不織布等の気体透過性の高い材料が含まれる。
【0041】
これにより、気体送出層の気体流路と気体透過性不透水性層とを連通させる気体通過孔から気体が供給される際に、布帛の層を介して、気体透過性不透水性層に気体が移動することで、気体透過性不透水性層から液体中へ供給される気体が気体通過孔に対応する局所的な範囲ではなく、ある程度の広がりを持った範囲から供給される。
【0042】
この結果、気体透過性不透水性層の表面における気体の供給面積を拡大して、より効率的に液体中へ気体を供給することができる。
【0043】
第8の発明に係るシート構造体は、第7の発明に係るシート構造体であって、布帛の素材は、織布、メッシュシート、不織布、細孔膜のいずれか1つである。
【0044】
ここでは、好ましい布帛の素材として、例えば、織布、メッシュシート、不織布、細孔膜のいずれか1つを用いることができる。
これにより、安価な材料を用いて、気体透過性の高い布帛を構成することができる。
【0045】
第9の発明に係るシート構造体は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るシート構造体であって、気体送出層は、一方の第1面に複数の第1気体通過孔を有し、他方の第1面に複数の第2気体通過孔を有し、第1気体通過孔に対して第1方向にずれた位置に複数の第2気体通過孔が位置する。
【0046】
ここでは、気体送出層として、例えば、ハニカム構造を用いた構成において、第1方向における気体流路を確保するために、気体通過孔が第1方向にずれた位置に配置されるように2つのハニカム構造体(一方の第1面、他方の第1面)を重ね合わせている。
【0047】
これにより、気体通過孔の位置がずれた2つ以上のハニカム構造を重ね合わせて用いることで、第1方向における気体流路を形成することができる。
【0048】
なお、ハニカム以外にも、丸、矩形、多角、異形など他の形状で気体通過孔を形成することは可能である。
【0049】
第10の発明に係る廃水処理装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係るシート構造体を含む浄化ユニットと、廃水を貯留しており浄化ユニットに含まれるシート構造体の少なくとも一部が浸漬される廃水処理槽とを備えている。
【0050】
ここでは、上述したシート構造体を含む浄化ユニットと、この浄化ユニットに含まれるシート構造体の少なくとも一部が浸漬される廃水処理槽とを含む廃水処理装置を構成する。
【0051】
ここで、気体供給源からシート構造体に対して供給される気体には、例えば、廃水中に含まれる好気性の微生物を活性化させる空気(酸素)が含まれる。
【0052】
また、浄化ユニットに含まれるシート構造体は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0053】
これにより、廃水処理槽中に貯留された廃水中に浄化ユニット(シート構造体)が浸漬された状態で、気体供給源からシート構造体に対して空気(酸素)が供給されることで、廃水中に浸漬されたシート構造体の気体透過性不透水性層の表面から空気を供給することができる。
【0054】
この結果、酸素を供給するポンプを配置することなく、低コストで廃水中の好気性の微生物に対して空気を供給して活性化させ、廃水中に含まれる少なくとも1つの有機物質または窒素源の分解を促進することで、廃水処理能力を向上させることができる。
【0055】
第11の発明に係る廃水処理装置は、第10の発明に係る廃水処理装置であって、シート構造体の気体送出層内に気体を送り込む動力部を、さらに備えている。
【0056】
ここでは、例えば、シート構造体の高さが100cm以上になった場合でも、十分な廃水処理性能を備えるための構成として、動力部を設けている。
【0057】
ここで、動力部には、空気等の気体を気体送出層へ送り込むファン等が考えられる。
これにより、100cm以上の高さを有するシート構造体を用いた場合でも、ファン等の動力部を利用して気体送出層内へ気体を送ることができるため、廃水中に浸漬されるシート構造体の面積を増加させ、かつ十分な量の気体を廃水中へ供給することができる。
この結果、廃水中の酸素濃度を高めて、より高い廃水処理性能を得ることができる。
【0058】
第12の発明に係るシート構造体の製造方法は、第1から第8の発明のいずれか1つに記載のシート構造体の製造方法であって、配置ステップと、孔形成ステップと、被覆ステップと、を備えている。配置ステップは、気体送出層を配置する。孔形成ステップは、表面に針が配置された針材を用いて、気体送出層における気体透過性不透水性層に面する第1面に、気体通過孔を形成する。被覆ステップは、第1面に気体通過孔が形成された気体送出層を、気体透過性不透水性層によって覆う。
【0059】
ここでは、上述したシート構造体の製造時において、針材を用いて気体送出層の第1面に気体通過孔を形成した後、気体通過孔が形成された第1面を気体透過性不透水性層によって覆う。
【0060】
ここで、孔形成ステップにおいて用いられる針材としては、例えば、ロール状の表面に複数の針が取り付けられた部材、あるいは針1本が取り付けられ手動で気体通過孔を形成するための部材等を用いることができる。
【0061】
これにより、気体送出層の第1面が板材等によって覆われている場合でも、孔形成ステップにおいて針材を用いて加工することで、容易に必要な気体通過孔を形成することができる。
この結果、安価な方法によって、上述したシート構造体を製造することができる。
【0062】
第13の発明に係るシート構造体の製造方法は、第12の発明に係るシート構造体の製造方法であって、針材は、ロール状の本体部と、本体部の表面に配置された複数の針と、を有している。
【0063】
ここでは、針材として、ロール状の本体部の表面に複数の針が取り付けられた部材を用いる。
【0064】
これにより、例えば、表面に針のない別のロール状の部材と組み合わせて用いることで、平板とロールとの間に段ボール材等の中空板状部材を通過させるだけで、第1面における所望の位置へ気体通過孔として機能する孔を形成することができる。
【0065】
また、2つのロールを用いる場合でも、ロール間に中空板状部材を通過させることで、中空板状部材の第1面における所望の位置へ気体通過孔として機能する孔を形成することができる。
【0066】
第14の発明に係るシート構造体の製造方法は、第12または第13の発明に係るシート構造体の製造方法であって、被覆ステップでは、第1端側に開口を有する袋状の気体透過性不透水性層の開口から、気体送出層を構成する気体送出層を挿入する。
【0067】
ここでは、上記被覆ステップにおいて、袋状に形成された気体透過性不透水性層の開口から気体送出層を挿入する。
【0068】
これにより、気体送出層の外周(第1面)が気体透過性不透水性層によって覆われた状態を、容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明に係るシート構造体によれば、気体送出層(気体流路)における気体送出量を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート構造体を備えた廃水処理装置の構成示す正面図。
【
図4】
図1の廃水処理装置に含まれる浄化ユニットを構成するシート構造体を示す断面図。
【
図5】
図4のシート構造体を構成する気体送出層を示す斜視図。
【
図6】
図1の廃水処理装置の廃水処理槽内の廃水中に浸漬されたシート構造体の気体透過性不透水性層の表面に形成される微生物集合体、および微生物による少なくとも1つの有機物質または窒素源の分解について説明する模式図。
【
図7】
図4のシート構造体の製造方法の流れを示すフローチャート。
【
図8】
図4のシート構造体を構成する気体透湿性不透水性層を袋状に形成する工程を示す模式図。
【
図9】
図8の袋状の気体透湿性不透水性層の開口から中空板状部材(段ボール材)を挿入する工程を示す模式図。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るシート構造体の構成示す断面図。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態に係るシート構造体に含まれる気体送出層の構成を示す分解斜視図。
【
図13】(a)は、
図10の気体送出層を構成するハニカム構造を示す正面図。(b)はその側面図。(c)は(a)のA-A線断面図。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態に係るシート構造体に含まれる気体送出層の構成を示す分解斜視図。
【
図16】(a)は、
図12の気体送出層を構成するハニカム構造を示す正面図。(b)はその側面図。(c)は(a)のB-B線断面図。
【
図18】本発明のさらに他の実施形態に係るシート構造体に含まれる気体送出層を示す斜視図。
【
図19】本発明の実施例に係るシート構造体と比較例とを比較した図。
【
図20】(a)は、円形または多角形の断面を有する中空体を気体送出層として用いた構成を示す図。(b)は、(a)のA-A線断面図。(c)は、(a)が多角形の断面を有している場合のA-A線断面図。
【
図21】(a)は、
図20(a)等に示す気体送出層を廃水処理槽内へ設置した状態を示す平面図。(b)は、その側面図。
【
図22】シート構造体の高さを変化させた場合の第1端部からの距離と気体送出層内の酸素濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明の一実施形態に係るシート構造体10およびこれを備えた廃水処理装置50、シート構造体10の製造方法について、
図1~
図9を用いて説明すれば以下の通りである。
【0072】
(廃水処理装置50)
本実施形態の廃水処理装置50は、廃水Wに含まれる好気性微生物の働きを利用して、廃水W中の少なくとも1つの有機物質または窒素源を分解して廃水Wの浄化処理を行う。そして、廃水処理装置50は、
図1に示すように、廃水処理槽51と、浄化ユニット52と、気体供給源53と、を備えている。
【0073】
なお、好気性微生物を保持させる方法は上記に限定されず、廃水Wにシート構造体10を浸漬させる前に気体透過性不透水性層21の表面21aに例えば塗布等の工程を用いて担持させてもよい。
【0074】
(廃水処理槽51)
廃水処理槽51は、
図2および
図3に示すように、廃水Wが貯留される有底の容器であって、互いに対向する側面に流入口51aと流出口51bとが設けられている。
【0075】
本実施形態では、流入口51aと流出口51bとが常時開放されている。そして、廃水Wは、
図3に示すように、流入口51aから、流入口51aに対向する位置に配置された流出口51bに向かって、連続的に供給される。
【0076】
なお、廃水処理槽51の容積については、特に限定されないが、例えば、1m3以上10,000m3以下の容積であればよい。
【0077】
(浄化ユニット52)
浄化ユニット52は、
図1に示すように、廃水処理槽51の内部に配置されており、複数(本実施形態では5つ)のシート構造体10を含むように構成されている。そして、浄化ユニット52は、使用時において、シート構造体10の上端部分を除いた部分が廃水W中に浸漬されるように配置される。
【0078】
また、浄化ユニット52は、
図2および
図3に示すように、流入口51aと流出口51bとを結ぶ直線に対して、各シート構造体10の面が平行になるように配置されている。これにより、流入口51aから廃水処理槽51内に供給される廃水Wは、シート構造体10によって遮られることなく、流出口51bの方向へ移動する。
【0079】
(シート構造体10)
シート構造体10は、平板状の部材であって、廃水W中の好気性の微生物に対して、低コストで気体(空気、酸素等)を供給するために、廃水処理槽51に浸漬された状態で使用される。
【0080】
また、平板状のシート構造体10は、
図2および
図3に示すように、図中における上下方向(深さ方向)と横方向(水平方向)とに沿って面が展開されるように配置されている。これにより、廃水Wとの接触面積が効率的に確保される。本実施形態では、互いに並列に配置された複数のシート構造体10によって浄化ユニット52が構成される。
【0081】
なお、気体供給源53からシート構造体10を介して廃水W中に供給される気体としては、好気性の微生物の活性化を促すために、酸素を含む気体であることが好ましい。具体的には、空気であってもよいし、純酸素であってもよい。
【0082】
また、シート構造体10に対して気体を供給する気体供給源としては、送気装置等を用いることができる。
【0083】
そして、シート構造体10は、
図4に示すように、気体送出層11と、気体透過性不透水性層21とを備えている。
【0084】
(気体送出層11)
気体送出層11は、後述する気体透過性不透水性層21によって上端部分を除く外周部分が覆われる。そして、気体送出層11は、気体供給源53から上端部に気体が供給され、内部に気体流路Sが形成される。より具体的には、気体送出層11は、
図5に示すように、中空板状部材12と、気体通過孔13とを有している。
【0085】
なお、気体流路Sを構成する気体送出層は、
図20(a)~
図20(c)に示すように、円形または多角形の断面を有する中空体によって構成された気体送出層511を用いてもよい。
【0086】
この場合には、
図20(a)および
図20(b)に示すように、円形の断面を有する中空体としての気体送出層511の外周面(第1面)に、気体透過性不透水性層521を配置すればよい。
【0087】
また、多角形の断面を有する中空体を用いた構成では、
図20(c)に示すように、多角形(四角形)の断面を有する中空体の4つの側面(第1面)に、気体透過性不透水性層521を配置すればよい。
【0088】
このような中空体を用いた気体送出層11を含むシート構造体10を構成した場合には、
図21(a)および
図21(b)に示すように、所定本数のシート構造体10を1セットとした複数セットを、廃水処理槽551内へ設置すればよい。
【0089】
また、中空体としては、メッシュ状の多角形断面柱などを用いることができる。
例えば、大日本プラスチック社製、高密度ポリエチレン製トリカルパイプP-489、P-222、P-273、P-239、あるいは、大日本プラスチック社製、ポリエチレン製ネトロンパイプGK-50、HK-100、ポリプロピレン製ネトロンパイプP-N1、P-506などが好適に用いられる。もしくは、ゼビオプラスト社製、高密度ポリエチレン製ネットリング状接触材XE-55R、XE-65R、XE-90R、あるいは、高密度ポリエチレン製網状接触材XE-55P、XE-65P、XE-90P、あるいは、高密度ポリエチレン製流動床用担体BIO-14、BIO-33R、XE-55Zなどが好適に用いられる。
【0090】
円形、もしくは多角形断面の外径は、気体の供給性能を高める観点からは5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、廃水処理装置50の容積を小さくする観点から、100mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
【0091】
また、気体送出層11は、円形または多角形の断面を有する中空体の内部に支持部が配置された構成であってもよい。
【0092】
中空板状部材12は、気体送出層11のベース部分を構成する部材であって、内部に気体流路Sを形成し、第1方向(
図5中の2点差線参照)に気体を移動させるとともに、その側面(表ライナ12b、裏ライナ12c)から気体を放出する。そして、中空板状部材12は、
図5に示すように、芯材(支持部)12aと、表ライナ(一方の第1面、支持部)12bと、裏ライナ(他方の第1面、支持部)12cと、を有している。中空板状部材12としては、例えば、段ボールを用いることができる。
【0093】
芯材12aは、
図5に示すように、リブ状の形状を有しており、板状の表ライナ12bと裏ライナ12cとの間に挟み込まれた状態で配置されている。これにより、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間に、リブ状の芯材12aによって複数の区画に分断された気体流路Sが形成される。
【0094】
また、芯材12aは、表ライナ12bおよび裏ライナ12cとともに、表ライナ12bおよび裏ライナ12c側から押圧された際に、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の隙間が縮小しないように支持する支持部として機能する。つまり、芯材12aは、
図1等に示すように、表ライナ12bおよび裏ライナ12cとともに、シート構造体10が廃水W中に浸漬された状態で気体流路Sの断面積が縮小しないように空間を保持する。
【0095】
これにより、気体送出層11(気体流路S)における気体送出量を十分に確保することができる。
【0096】
互いに対向配置された表ライナ(一方の第1面)12bおよび裏ライナ(他方の第1面)12cは、
図5に示すように、気体送出層11の表裏面を構成する板状の部材であって、それぞれ複数の貫通孔(気体通過孔13)が形成されている。
【0097】
なお、
図5では、裏ライナ12cに複数の貫通孔(気体通過孔13)が形成されているが、表ライナ12bにも同様に、複数の貫通孔(気体通過孔13)が形成されているものとする。
【0098】
気体通過孔13は、表ライナ12bおよび裏ライナ12cにそれぞれ複数形成された貫通孔であって、芯材12aと表ライナ12bと裏ライナ12cとの間に形成される気体流路Sと連通する。
【0099】
つまり、気体通過孔13は、気体供給源53から気体透過性不透水性層21までを連通させるために形成されている。
【0100】
なお、気体通過孔13は、例えば、表ライナ12bおよび裏ライナ12cに対する加工によって形成されている。
【0101】
ここで、好気性微生物は、継続的に酸素が供給されないと活動が低下してしまうため、廃水処理能力を維持するためには、効率よく酸素を供給し続けることが重要である。
【0102】
そこで、本実施形態のシート構造体10では、気体送出層11の上端部から気体が供給されると、気体送出層11の表ライナ(一方の第1面)12bおよび裏ライナ(他方の第1面)12cに形成された複数の気体通過孔13から、気体透過性不透水性層21側へ気体が流出する。
【0103】
この結果、気体透過性不透水性層21の表面に付着している好気性微生物に対して継続的に空気を供給することで、微生物の働きを活性化させて、汚水中の少なくとも1つの有機物質または窒素源を効率よく分解して廃水を浄化することができる。
【0104】
気体送出層11を構成する各部材の素材としては、紙、セラミック、アルミニウム、鉄、プラスチック(ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂)等が挙げられる。
【0105】
そして、気体送出層11を構成する中空板状部材12の素材としては、強度面が優れていることから、紙、アルミニウム、鉄、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0106】
また、気体通過孔13の面積は、3*10-8~2000mm2の範囲であることが好ましく、7*10-7~350mm2の範囲であることが特に好ましい。
【0107】
なお、気体通過孔13の面積が上記範囲の下限値を下回った場合には、気体通過孔13における通気量が低下して、廃水Wの処理性能が低下するおそれがある。反対に、気体通過孔13の面積が上記範囲の上限値を上回った場合には、水圧によって押される気体透過性不透水性層21の変形量が大きくなり、気体送出層11内における気体の移動が阻害され、廃水Wの処理性能が低下するおそれがある。
【0108】
よって、気体通過孔13の面積は、上記範囲内に設定されていることが好ましい。
さらに、気体通過孔13は、気体送出層11の一方の面(表ライナ12bまたは裏ライナ12c)の面積に対する気体通過孔13の開孔率が、1%~90%の範囲内に設定されていることが好ましく、1%~80%の範囲内であることが特に好ましい。
【0109】
なお、上記開孔率が下限値を下回った場合には、廃水W中の微生物への酸素供給が困難となり、廃水Wの廃水処理能力が低下するおそれがある。反対に、上記開孔率が上限値を上回った場合には、気体透過性不透水性層21を支持する部分が少なくなり、水圧によって押される気体透過性不透水性層21の変形量が大きくなるため、気体送出層11内における気体の移動が阻害され、廃水Wの処理性能が低下するおそれがある。
【0110】
ここで、シート構造体10の廃水Wに接する部分において、気体送出層11の外形面積S1(m2)、気体通過孔13の総面積S2(m2)とすると、気体通過孔13の開孔率P(%)は、以下の関係式(1)によって求められる。
【0111】
P=S2/S1×100 (1)
また、好気性微生物の活性を維持するという観点から、気体送出層11の内部において、酸素濃度が最も低い部分で5%以上の酸素濃度が確保されていることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【0112】
酸素濃度を上記数値範囲内で維持する方法としては、純酸素を所定量供給することで、酸素濃度を一定に維持することができる。純酸素を供給する方法としては、例えば、動力を用いた送気等が考えられる。
【0113】
シート構造体10の高さが100cmより小さい場合、動力を用いなくても気体が十分に供給されるため、エネルギー消費を低減し、装置のコストを抑制する観点から、動力を用いないことが好適である。
【0114】
しかし、シート構造体10の高さが100cmより大きくなると、より高い廃水処理性能を得るために、動力部を用いて気体を送ることが好適である。
【0115】
図22は、高さ200cmと高さ100cmの2種類のシート構造体を準備し、それぞれ製作された廃水処理装置における第1端からの距離と気体送出層11内の酸素濃度との関係を示すグラフである。
【0116】
図22に示す実施例では、槽内に模擬排水を流し、水温を24℃から27℃に維持した状態で30日経過後の気体送出層内部の気体の酸素濃度を測定した。
【0117】
図22に示すように、シート構造体10の高さが100cmの場合には、廃水処理に十分な酸素濃度であり、良好な廃水処理性能が得られた。
【0118】
一方、シート構造体10の高さが200cmの場合には、酸素濃度が低かった。この条件でも廃水処理は可能であったが、シート構造体10の高さが100cmの場合と比較すると、良好な処理性能が得られなかった。
【0119】
次に、シート構造体10の高さが200cmの場合であっても、気体送出層11の第1端から配管を挿入し、気体送出層11の第1端からの距離が190cmの位置まで配管を挿入し、配管の他端に動力部を配置して空気を送った場合には、気体送出層11の内部は、空気と同等の酸素濃度となり、良好な廃水処理性能が得られた。
【0120】
動力を用いて気体を送る方法としては、例えば、廃水処理装置50にファンを設置し、ファンで生じた気体の流れが気体送出層11へ入るようにしてもよい。
【0121】
例えば、シート構造体10の上部にシーリングファンを設置し、シーリングファンによって生じた風が、気体送出層11に入るようにしてもよい。また、任意の場所に設置したファンの空気出口に配管を設け、気体送出層11の内部に配管からの気体出口を設置してもよい。
【0122】
また、気体の供給量を向上する他の方法として、シート構造体10の気体透過性不透水性層21における気体送出層11の第1面に接する面積に対する、気体送出層11の断面積の比率を大きくする方法がある。
【0123】
具体的には、気体送出層11の第1面で構成される断面の内径を大きくしたり、気体送出層11の対向配置された第1面の間隔を大きくしたりすることなどが好適である。
【0124】
ここで、気体送出層11内に形成される気体流路Sの上下方向(浸漬時の深さ方向)における長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.8m以上であってよいし、3.7m以上であってもよい。また、当該長さは、例えば、6m以下、好ましくは4m以下であってよい。気体流路Sの上下方向に直交する横方向の長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.6m以上であってよく、例えば、3.6m以下、好ましくは1.8m以下であってよい。
【0125】
ここで、気体流路Sの上下方向の長さが上記下限値以上であることは、気体流路Sの維持を容易かつ気体流路Sの換気を容易にして廃水処理能を向上させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、気体流路Sの換気による廃水処理能向上効果をより良好に得る点、および設置容易性の点などで好ましい。
【0126】
また、気体流路Sの横方向の長さが上記下限値以上であることは、廃水Wとの接触面積を効率的に確保して廃水処理効率を向上させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、シート構造体10全体の強度維持容易性および浄化ユニット52の設置容易性の点などで好ましい。
【0127】
気体流路Sの長さに対する廃水Wへの接水長さは、例えば、80%以上、95%以下であればよい。接水長さが上記下限値以上であることは、気体流路Sから供給される酸素量を良好に確保し廃水処理効率を向上させる点で好ましく、接水長さが上記上限値以下であることは、気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点で好ましい。
【0128】
あるいは、気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点では、廃水Wの水面がシート構造体10(気体透過性不透水性層21)の開口21bから2cm以上離間するように接水長さが設定されてもよい。
【0129】
気体透過性不透水性層21の厚みは、例えば、15μm以上、1mm以下であればよい。当該厚みが上記下限値以上であることは、破損を防止し気体流路Sを安定的に確保する点で好ましく、上記上限値以下であることは、酸素透過性を良好に確保し廃水処理効率を向上させる点で好ましい。
【0130】
(気体透過性不透水性層21)
気体透過性不透水性層21は、
図4に示すように、気体送出層11の上端部を除く外周部分を覆うように、配置されている。
【0131】
そして、気体透過性不透水性層21は、シート構造体10が廃水処理槽51内に浸漬された状態において、内側(気体送出層11)から外側(廃水W)へ空気を透過させ、かつ外側(廃水W)から内側(気体送出層11)へ廃水を透過させない特性を有するフィルムによって構成されている。そして、気体透過性不透水性層21は、その表面21aから廃水W中に空気(酸素)を供給する。
【0132】
これにより、廃水W中の好気性微生物は、
図6に示すように、継続的に空気(酸素)が供給される気体透過性不透水性層21の表面21aに集まってくる。よって、気体透過性不透水性層21の表面21aは、微生物が付着する。
【0133】
また、気体透過性不透水性層21は、例えば、2枚のフィルムを重ね合わせて3方の端部を接着させて、上端部(気体送出層11に対して気体が供給される側の端部)に開口21b(
図4参照)を有する袋形状に形成されている。開口部21bの位置あるいは形状は限定されず、また、各端部(袋の上辺、底辺、横辺(縦のライン)も含む)の一部が開口となっていてもよい。
【0134】
そして、開口21bには、上述した気体送出層11が挿入されることで、気体送出層11の外周が気体透過性不透水性層21によって覆われたシート構造体10が構成される。
【0135】
ここで、気体透過性不透水性層21とは、気体を透過させるとともに、液体(水や溶液等)を透過させない層を意味している。
【0136】
気体透過性不透水性層21としては、細孔膜、布帛等を用いることができる。また、気体透過性不透水性層21は、表面に樹脂が塗布されてもよいし、細孔が形成されていないシートを用いてもよい。さらに、気体透過性不透水性層21は、単一の材料から構成されてもよいし、複数の材料を組み合わせて構成されていてもよい。
【0137】
気体透過性不透水性層21の素材は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデンを含めたフッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリ(ジメチルシロキサン)を含めたシリコーンベースのポリマー、およびこれらの材料のコポリマーから選ばれるポリマー材料を含む等を含んでもよい。
【0138】
<シート構造体10の製造方法>
本実施形態のシート構造体10の製造方法は、
図7に示すフローチャートに従って行われる。
【0139】
ここで、シート構造体10は、例えば、袋状に成形された気体透過性不透水性層21の内部に気体送出層11を挿入することによって得られる。
【0140】
具体的には、
図7に示すステップS11において、気体送出層11を構成する中空板状部材12が所定の位置へ配置される(配置ステップ)。
【0141】
次に、ステップS12では、中空板状部材12の表ライナ12bの表面(一方の第1面)と裏ライナ12cの表面(他方の第1面)とに、それぞれ針材を用いて貫通孔(気体通過孔13)を複数形成する(孔形成ステップ)。
【0142】
ここで、孔加工を行う針材は、例えば、気体送出層11の全躯体の表面に針が並べられたロール状の構成を用いてもよい。
【0143】
この場合には、表面に針が配置されたロールを回転させ、ロールと平面との間に中空板状部材12を通すことで、中空板状部材12の表面に貫通孔(気体通過孔13)を形成することができる。
【0144】
なお、気体通過孔13を形成する針材としては、例えば、ロール状の構成以外に、表面に針が並べられた板を中空板状部材12の表面に押し付けることで、気体通過孔13を形成してもよい。
【0145】
さらに、例えば、カッターナイフ等の刃物を用いて、気体通過孔13を形成してもよい。
【0146】
次に、ステップS13では、略四角形の気体透過性不透水性のフィルムを重ね合わせて3方の端部を貼り合せて、袋状の気体透過性不透水性層21を形成する。
【0147】
具体的には、
図8に示すように、2つのロールR1,R2から繰り出されるフィルムF1,F2を重ね合わせた状態で、3方の端部が熱溶着されて熱溶着部21cが形成される。そして、熱溶着部21cによって3方が封止された状態で、開口21bとなる部分においてフィルムF1,F2が切断される。
【0148】
なお、気体透過性不透水性層21を袋状に成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、2枚の気体透過性不透水性を有する略四角形のフィルムを重ね合わせて、3方の外周端部を接着することによって成形してもよい。あるいは、筒状に成形された気体透過性不透水性のフィルムの一方の開口部のみを接着することで袋状に成形してもよい。あるいは、1枚のフィルムを半分に折りたたんで、左右の端部を熱溶着して袋状に形成してもよい。もしくは、インフレーション成型などで、袋状の気体透過性不透水性層21を成形してもよい。
【0149】
また、フィルムを接着する方法についても特に限定されるものではなく、例えば、熱融着、両面テープ、接着剤等を用いることができる。
【0150】
熱融着の温度としては、気体透過性不透水性層の融点以上、熱分解温度以下が好ましい。接着剤の材料としては、耐水性、防水性、耐薬品性、耐微生物分解性のうち少なくともひとつを有するものが好ましい。
【0151】
次に、ステップS14では、
図9に示すように、袋形状の気体透過性不透水性層21の開口21bから、気体通過孔13が形成された中空板状部材12を挿入する(被覆ステップ)。
【0152】
なお、中空板状部材12を気体透過性不透水性層21の開口21bから挿入する方向としては、芯材12a等によって形成される気体流路Sの向きに沿って挿入される。
【0153】
これにより、上端部から気体供給源と接続可能な状態で、シート構造体10を構成することができる。
【0154】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係るシート構造体110について、
図10および
図11を用いて説明すれば以下の通りである。
【0155】
本実施形態のシート構造体110は、気体送出層111と気体透過性不透水性層121との間に、布帛131が配置されている点において、上記実施形態1の構成とは異なっている。
【0156】
すなわち、本実施形態のシート構造体110は、
図10に示すように、気体透過性不透水性層121と気体送出層111との間に布帛131が配置されていてもよい。
【0157】
ここで、布帛131は、例えば、メッシュシート、織布、不織布または細孔膜等を用いることができる。
【0158】
また、布帛131の素材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0159】
特に、布帛131は、気体透過性の観点から、紙、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂によって成形されていることが特に好ましい。
【0160】
布帛131が積層された際の接着箇所については、外周部のみでもよいし、気体透過性不透水性層121へ気体の供給が可能であれば、気体透過性不透水性層121と気体送出層111とに対して布帛131の全面が接着されていてもよい。
【0161】
これにより、気体透過性不透水性層121と気体送出層111との間に布帛131を介在させることで、
図11に示すように、気体が、布帛131内において、気体送出層111の面方向に移動することができる。よって、布帛131が介在しない構成と比較して、気体送出層111の気体通過孔13から送出される気体を、中空板状部材12の裏ライナ12cの平面方向に範囲を広げて気体透過性不透水性層121へと供給することができる。
【0162】
この結果、廃水Wに接する気体透過性不透水性層121からは、布帛131が介在しない構成と比較して、局所的に気体が供給されるのではなく、より広い範囲から気体を廃水W中へ供給することができる。
【0163】
また、布帛131が気体送出層111と気体透過性不透水性層121との間に挟み込まれるように配置されていることで、気体通過孔113が気体透過性不透水性層121への密着によって気体の移動が塞き止められることを防ぐことができる。
【0164】
さらに、布帛131を構成する不織布には、細かい空気孔が多数存在しているため、密閉状態にならないという効果も期待できる。
【0165】
なお、例えば、気体透過性不透水性層121における廃水Wと接する面とは反対側の面に凹凸が形成されていてもよい。当該構成でも、布帛を配置したときと同様の効果を奏することができる。
【0166】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係るシート構造体について、
図12~
図14を用いて説明すれば以下の通りである。
【0167】
なお、本実施形態のシート構造体は、気体送出層211を構成する部材として、中空板状部材の代わりに、ハニカム構造を採用している点において、上記実施形態1の構成とは異なっている。
【0168】
すなわち、本実施形態のシート構造体を構成する気体送出層211は、
図12に示すように、ハニカム構造を有する第1構造体212と、第1構造体212のセル(気体通過孔212a)とは大きさが異なるセル(気体通過孔213a)が配置されるハニカム構造を有する第2構造体213と、を組み合わせて構成される。
【0169】
これにより、
図13(a)および
図13(b)に示すように、第1構造体212と第2構造体213とを重ねて配置すると、第1構造体212の気体通過孔212aと第2構造体213の気体通過孔213aとは、
図13(c)に示すように、上下方向においてずれた位置に配置される。
【0170】
この結果、気体送出層211の上端部から空気が供給されると、
図14に示すように、互いの気体通過孔212a,213aのずれた部分を介して、気体流路Sが形成される第1方向に気体を移動させることができる。
【0171】
すなわち、本実施形態では、ハニカム構造を形成する大きさが異なる気体通過孔212a,213aを有する第1構造体212と第2構造体213とを組み合わせて、気体送出層211を構成することで、気体通過孔212a,213aをそのまま気体通過孔として用いることができる。
【0172】
さらに、互いに大きさが異なる気体通過孔212a,213aを有する第1構造体212と第2構造体213とを組み合わせて気体送出層211を構成することで、その気体通過孔212a,213aがずれた空間を介して気体流路Sを形成することができる。
【0173】
これにより、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、気体送出層211は、第1構造体212と第2構造体213のハニカム構造を部分的に接着し、多重に積層された面材を面の法線方向において展張すること、気体流路および気体通過孔を形成することができる。
【0174】
ただし、展張する前の段階で、面材に孔開け加工を施すことで、気体流路および気体通過孔を形成してもよい。その場合、第1構造体のみで空気を供給することが可能である。
【0175】
また、気体送出層211を構成する第1構造体212および第2構造体213としては、上記実施形態1で説明した中空板状部材と同様の素材を用いて形成されていればよい。
【0176】
(実施形態4)
本発明の実施形態4に係るシート構造体について、
図15~
図17を用いて説明すれば以下の通りである。
【0177】
なお、本実施形態のシート構造体は、上記実施形態3と同様に、気体送出層311を構成する部材として、中空板状部材は、
図5の芯材(支持部)12aの配置が一直線の形状の段ボール材の代わりに、
図5の芯材(支持部)12aの位置関係がハニカム構造になっている構成を採用している点において、上記実施形態1の構成とは異なっている。
【0178】
そして、本実施形態のシート構造体は、気体送出層311を構成する第1構造体312と第2構造体313とが略同じ大きさの気体通過孔312a,313aを有している点で、上記実施形態3とは異なっている。
【0179】
すなわち、本実施形態のシート構造体は、
図15に示すように、ハニカム構造を有する第1構造体312と、第1構造体312のセル(気体通過孔312a)とは第1方向(図中上下方向)にずれ位置に配置されたセル(気体通過孔313a)を有するハニカム構造を有する第2構造体313と、を組み合わせて構成される。
【0180】
これにより、
図16(a)および
図16(b)に示すように、第1構造体312と第2構造体313とを上下方向においてずらした状態で重ねて配置すると、第1構造体312の気体通過孔312aと第2構造体313の気体通過孔313aとは、
図16(c)に示すように、上下方向においてずれた位置に配置される。
【0181】
この結果、気体送出層311の上端部から空気が供給されると、
図17に示すように、互いの気体通過孔312a,313aのずれた部分を介して、気体流路Sが形成される第1方向に気体を移動させることができる。
【0182】
すなわち、本実施形態では、ハニカム構造を形成する略同じ大きさの気体通過孔312a,313aを有する第1構造体312および第2構造体313を組み合わせて、気体送出層311を構成することで、気体通過孔312a,313aをそのまま気体通過孔として用いることができる。
【0183】
さらに、互いに大きさが異なる気体通過孔312a,313aを有する第1構造体312と第2構造体313とを組み合わせて気体送出層311を構成することで、その気体通過孔312a,313aがずれた空間を介して気体流路Sを形成することができる。
【0184】
これにより、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、気体送出層311は、第1構造体312と第2構造体313のハニカム構造を部分的に接着し、多重に積層された面材を面の法線方向において展張すること、気体流路および気体通過孔を形成することができる。
【0185】
ただし、展張する前の段階で、面材に孔開け加工を施すことで、気体流路および気体通過孔を形成してもよい。その場合、第1構造体のみで空気を供給することが可能である。
【0186】
また、気体送出層311を構成する第1構造体312および第2構造体313としては、上記実施形態1で説明した中空板状部材と同様の素材を用いて形成されていればよい。
【0187】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0188】
(A)
上記実施形態のシート構造体10は、廃水中の微生物によって廃水を浄化するための廃水処理装置50に用いられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0189】
例えば、液体中に酸素を供給することで液体中の金属イオンや金属化合物イオン等を酸化させ析出もしくは沈殿物形成させることで、上記金属イオンや金属化合物イオン等を液体から分離する装置に、本発明のシート構造体を適用してもよい。もしくは、液体中に還元性の気体を供給することで液体中の金属イオンや金属化合物イオン等を還元させ析出もしくは沈殿物形成させることで、上記金属イオンや金属化合物イオン等を液体から分離する装置に本発明のシート構造体を適用してもよい。
【0190】
また、例えば、液体中に安定的な酸素供給が必要な廃水処理装置以外の各種装置に対して本発明のシート構造体を適用してもよい。
【0191】
例えば、液体中に溶解している気体を分離する装置に、本発明のシート構造体を適用してもよい。具体的には、液体中に溶解している低分子量の炭化水素系化合物の分離等が挙げられる。この場合、気体の移動方向は上記に示した実施形態とは逆になる。
【0192】
(B)
上記実施形態では、平面状のシート構造体10を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0193】
例えば、平面状のシート構造体が巻回された構造を用いてもよいし、筒状に成型されたシート構造体を用いてもよい。
【0194】
(C)
上記実施形態では、袋形状に成形された気体透過性不透水性層21の開口21bから、気体送出層11を挿入して、シート構造体10を構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0195】
例えば、気体送出層の表面に気体透過性不透水性層が積層接着された構成であってもよい。
【0196】
接着する部位としては、気体透過性不透水性層の外周部のみを接着していてもよいし、気体透過性不透水性層への気体の供給が可能であれば、気体透過性不透水性層と気体送出層とが全面において接着されていてもよい。
【0197】
(D)
上記実施形態では、リブ状の芯材12aと表ライナ12bと裏ライナ12cとを含む気体送出層11を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0198】
例えば、
図18に示すように、気体流路Sに沿って配置された断面視において波形の芯材(支持部)412aを有し、気体通過孔413が複数形成された表ライナ(一方の第1面)412bと裏ライナ412cとの間に配置した中空板状部材412を気体送出層411として用いてもよい。
【0199】
(E)
上記実施形態3,4では、第1構造体212,312と第2構造体213,313という2枚のハニカム構造の部材を組み合わせて、気体送出層211,311をそれぞれ構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0200】
例えば、3枚以上のハニカム構造の部材を組み合わせて、気体送出層を構成してもよい。
【実施例】
【0201】
ここでは、上述した本発明のシート構造体10を用いて、廃水W中に含まれる少なくとも1つの有機物質または窒素源を浄化する処理能力について比較例と比較した上で検証した結果を、
図19に示す。
【0202】
(有機物除去率の評価)
下記組成の模擬排水を溜めることが可能な評価槽内に高さ90cm、幅60cmのシート構造体10を設置し、評価槽を模擬排水で満たし、有機物の分解を担う微生物として土壌微生物を5g添加した。模擬排水を連続的に流入、流出させることで、排水処理性能を評価した。有機物面積負荷が13gCOD/m2・d、有機物容積負荷が、0.3kgCOD/m3・dとなるように、評価槽の大きさと模擬排水の流量を調整した。評価槽は、槽内にヒータを設置することで評価槽内の水温を27±3℃に維持した。
【0203】
<有機物含有水の組成>
溶性でんぷん:0.8g/L、ペプトン:0.084g/L、イーストエキス:0.4g/L、尿素:0.052g/L、CaCl2:0.055g/L、KH2PO4:0.017g/L、MgSO4・7H2O:0.001g/L、KCl:0.07g/L、NaHCO3:0.029g/L。
【0204】
また、溶媒として、積水化学工業株式会社京都研究所における水道水を用いた。
28日、29日、30日経過後時点で流入水のCODCr濃度A(mg/L)、流出水のCODCr濃度B(mg/L)を測定し、下記関係式にて算出されるrの前記3点の平均値を有機物除去率R(%)とした。
【0205】
r=(A-B)/A×100
CODCr濃度は、WTW社製吸光度式水質測定器photoLab7600UV-VISとVARIO COD測定試薬LRを用い、製品にて規定されているプロトコルに従い測定を行った。CODCr濃度が前記測定試薬の測定範囲を上回る場合は、測定範囲に入るように測定するサンプルをイオン交換水にて希釈し、測定値に希釈倍率を乗じてCODCr濃度の測定値とした。
【実施例1】
【0206】
本実施例では、気体送出層11としては、リブ状の芯材の配置が一直線の形状で、リブ状の芯材を、板状の表シート(ライナ)と板状の裏シート(ライナ)との間に挟み込むように重ね合わせた構成の中空板状部材である(株)ヤマコー社製プラスチック段ボール(厚み5mm、目付量800g/m2)を用いた。
【0207】
このプラスチック段ボール上において、表面に複数の針が配置されたロールを回転させ、ロールと平面との間にプラスチック段ボールを通過させることで、プラスチック段ボールの表面に複数の気体通過孔13を形成した。
【0208】
気体通過孔13の寸法は、幅約2mm、長さ約1mmであって、表面に占める気体通過孔の面積の総和の比(開孔率)は約2%であった。
【0209】
表ライナ12bには、気体透過性不透水性層21として、透気性防水性フィルムに不織布が積層されたシート(積水化学工業社製、セルポアNW07H、両面に不織布を保持している)を、不織布の部分が廃水Wに接するように積層した。このとき、シート構造体の気体流路Sの長さに対する廃水Wへの接水長さは、90%であった。
【0210】
気体送出層11、布帛131、気体透過性不透水性層21の積層体であるシート構造体10を、気体送出層11に廃水Wが侵入しないように、廃水処理槽51内に設置した。
【0211】
この結果、有機物除去率は、72%であった。
【実施例2】
【0212】
本実施例では、気体送出層11の気体通過孔13の総和の比(開孔率)を、約2%から10%に変更した以外は、上記実施例1と同様のシート構造体を用いた。
【0213】
この結果、シート構造体を用いた場合、有機物除去率は85%であった。
【実施例3】
【0214】
本実施例では、気体送出層11の気体通過孔13の総和の比(開孔率)を、約2%から約55%に変更した以外は、上記実施例1と同様のシート構造体を用いた。
【0215】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は87%であった。
【実施例4】
【0216】
本実施例では、気体送出層11の気体通過孔13の総和の比(開孔率)を、約2%から約78%に変更した以外は、上記実施例1と同様のシート構造体を用いた。
【0217】
この結果、シート構造体を用いた場合、有機物除去率は89%であった。
【実施例5】
【0218】
本実施例では、透気性防水性フィルムNW07Hにおいて、気体送出層側の不織布を除去した以外は、上記実施例2と同様のシート構造体を用いた。
【0219】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は67%であった。
【実施例6】
【0220】
本実施例では、透気性防水性フィルムと気体送出層との間に布帛(東洋紡社製の不織布、ボランス7217P、目付量220g/m2、厚み0.9mm)を積層した以外は、上記実施例5と同様のシート構造体を用いた。
【0221】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は85%であった。
【実施例7】
【0222】
本実施例では、透気性防水性フィルムと気体送出層との間に布帛(ユニチカ社製の不織布、82607WSO、目付量260g/m2、厚み0.7mm)を積層した以外は、上記実施例5と同様のシート構造体を用いた。
【0223】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は78%であった。
【実施例8】
【0224】
本実施例では、透気性防水性フィルムと気体送出層との間に布帛(ユニチカ社製の不織布、エルベスII、目付量30g/m2、厚み0.1mm)を積層した以外は、上記実施例5と同様のシート構造体を用いた。
【0225】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は72%であった。
【実施例9】
【0226】
本実施例では、気体送出層11として(株)ヤマコー社製プラスチック段ボール(厚み12mm、目付量1800g/m2)を用い、気体送出層11の気体通過孔13の総和の比(開孔率)を、約2%から約5%に変更した以外は、上記実施例1と同様のシート構造体を用いた。
【0227】
このシート構造体を用いた場合、有機物除去率は86%であった。
【実施例10】
【0228】
本実施例では、気体送出層11としてゼビオプラスト社製流動床用担体XE-55Z(高密度ポリエチレン製、外径55mm、内径47mm、開孔率44%、目付量990g/m2)を用いた。
【0229】
流動床用担体は、円筒状であるが、高さが900mmになるように円筒の高さ方向に流動床担体が接続されており、円筒状の気体送出層11として使用された。
【0230】
円筒状の気体送出層11には、気体透過性不透水性層21として、透気性防水性フィルムに不織布が積層されたシート(セルポアNW07H)が不織布の部分が廃水Wに接するように積層されたシート構造体10を用いた。このとき、シート構造体10の気体流路Sの長さに対する廃水への接水長さは、90%であった。
【0231】
気体送出層11および気体透過性不透水性層21の積層体を、気体送出層11に廃水Wが侵入しないように、廃水処理槽51内に設置した。本実施例では、実施例1~9までとは異なり、上述した高さ900mmの積層体7個を気体送出層の円筒の円の直径方向に直線状に配列させ、廃水処理槽51内に設置した。
【0232】
この結果、有機物除去率は、70%であった。
【実施例11】
【0233】
気体送出層11として、大日本プラスチックス社製ネトロンパイプP-N1.5(ポリプロピレン製、外径35mm、内径28mm、開孔率28%、目付量1130g/m2)を用いた以外は、実施例10と同様のシート構造体10を用いた。本実施例では、積層体12個を気体送出層の円筒の円の直径方向に直線状に配列させ、廃水処理槽51内に設置した。
【0234】
この結果、有機物除去率は、77%であった。
【比較例1】
【0235】
本比較例では、気体送出層11に気体透過孔13を設けなかったこと以外は、上記実施例1と同様のシート構造体を用いた。
【0236】
この結果、有機物除去率は22%であり、有機物は嫌気的に処理されていた。
【比較例2】
【0237】
上記実施例1,2の比較例として、気体送出層がタキロンシーアイ社製塩ビ樹脂製の波板(硬質塩ビナミイタ、スレート小波、ピッチ約63mm、谷深さ18mm)を用いるとともに、布帛を用いなかった点を除いて、上記実施例1,2と同様のシート構造体を作成した。
【0238】
本比較例では、気体送出層、気体透過性不透水性層の積層体であるシート構造体を、気体送出層に廃水が侵入しないように、廃水処理槽内へ設置した。
【0239】
この結果、有機物除去率は、60%まで低下した。
このように、実施例1~9と比較例1との結果を比較すると、気体送出層11に気体透過孔13を用いていないため、布帛を用いても良好に酸素供給が出来ず、好気性微生物の活性化に寄与できなかった。そのため有機物除去率の効率が悪かった。
【0240】
また、実施例1~9と比較例1との結果を比較すると、気体送出層として、段ボール材の代わりに波板を用いたことにより、水圧により波板に気体透過性不透水性層が追従してしまい、気体流路が狭くなってしまった。その結果、気体供給源の酸素が好気性微生物に送りこまれず、有機物除去率が低下することが分かった。
【0241】
さらに、実施例1~4および6~9では気体送出層と気体透過性不透水性層の間に布帛を介在させていることで、法線方向の空間が広くなるため酸素の供給が滞りなく進み、効率よく有機物除去ができていることが分かった。
【0242】
また、実施例5では布帛を用いていないが、比較例2と比べると中空板状部材の段ボールをシート構造体に用いていることから、気体透過性不透水性層が追従しにくく、比較的効率よく有機物除去が出来ていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明のシート構造体は、気体送出層(気体流路)における気体送出量を十分に確保することができるという効果を奏することから、液体中に浸漬された状態で気体を液体中に供給する各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0244】
10 シート構造体
11 気体送出層
12 段ボール材(中空板状部材)
12a 芯材(支持部)
12b 表ライナ(一方の第1面、支持部)
12c 裏ライナ(他方の第1面、支持部)
13 気体通過孔
21 気体透過性不透水性層
21a 表面
21b 開口
21c 熱溶着部
50 廃水処理装置
51 廃水処理槽
51a 流入口
51b 流出口
52 浄化ユニット
53 気体供給源
110 シート構造体
111 気体送出層
113 気体通過孔
121 気体透過性不透水性層
131 布帛
211 気体送出層
212 第1構造体(ハニカム構造)
212a 気体通過孔
213 第2構造体(ハニカム構造)
213a 気体通過孔
311 気体送出層
312 第1構造体(ハニカム構造)
312a 気体通過孔
313 第2構造体(ハニカム構造)
313a 気体通過孔
411 気体送出層
412 段ボール材(中空板状部材)
412a 芯材(支持部)
412b 表ライナ(一方の第1面、支持部)
412c 裏ライナ(他方の第1面、支持部)
413 気体通過孔
F1,F2 フィルム
R1,R2 ロール
S 気体流路
W 廃水