(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤としての非晶質及び結晶型のGENZ112638ヘミ酒石酸塩
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4025 20060101AFI20221003BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221003BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221003BHJP
C07D 405/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K31/4025
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/44
A61P3/00
A61P43/00 111
C07D405/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018167432
(22)【出願日】2018-09-07
(62)【分割の表示】P 2016041843の分割
【原出願日】2010-11-24
【審査請求日】2018-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-14
(32)【優先日】2009-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ハンラン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,クリス
(72)【発明者】
【氏名】バルトワジ,レヌー
(72)【発明者】
【氏名】コープランド,ダイアン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ハリアナワラ,アビザー
(72)【発明者】
【氏名】スケル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コクリング,ジャンメイ
(72)【発明者】
【氏名】パレス,ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ピーターシュミット,ジュディス
(72)【発明者】
【氏名】シーゲル,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,セン
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】渕野 留香
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-519840(JP,A)
【文献】国際公開第2009/117150(WO,A2)
【文献】特開2003-335776(JP,A)
【文献】Molecular Genetics and Metabolism,2007, Vol.91,p.259-267
【文献】有機化合物結晶作製ハンドブック-原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008,p.85-87
【文献】DIABETES,2007,Vol.56,No.5 p.1210-1218
【文献】C.G.Wermuth 編著、長瀬博 監訳,最新創薬化学 下巻,2006,株式会社 テクノミック,改訂第2版,p.394-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
A61P1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】
によって表される化合物のヘミ酒石酸塩;
少なくとも一つの水溶性充填剤;
少なくとも一つの水不溶性充填剤;
少なくとも一つの結合剤;及び
少なくとも一つの潤滑剤;
を含んでなる、医薬組成物であって、
30重量%から45重量%の前記ヘミ酒石酸塩;
26重量%から50重量%の水溶性充填剤;
8重量%から32重量%の水不溶性充填剤;
2重量%から6重量%の結合剤;及び
0.1重量%から2重量%の潤滑剤
を全て乾燥固体基準で含んでなり、
ここで、前記水溶性充填剤はラクトース一水和物であり、前記水不溶性充填剤は微結晶セルロースであり、
前記ヘミ酒石酸塩の少なくとも70重量%が結晶質である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記結合剤が、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ゼラチン、天然ゴム、デンプンペースト、スクロース、コーンシロップ、ポリエチレングリコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤が、水素化植物油、ステアリン酸カルシウム、及びベヘン酸グリセリルからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記結合剤が、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ゼラチン、天然ゴム、デンプンペースト、スクロース、コーンシロップ、ポリエチレングリコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択され;そして前記潤滑剤が、水素化植物油、ステアリン酸カルシウム、及びベヘン酸グリセリルからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ファブリ病の患者を治療する方法において使用される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ゴーシェ病の患者を治療する方法において使用される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、その全ての教示が本明細書中に援用される、2009年11月27日に出願された米国特許仮出願61/264,748の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、医薬用途において使用可能な化合物のヘミ酒石酸塩に関する。
【背景技術】
【0003】
スフィンゴ糖脂質(GSL)は、細胞増殖、細胞分化、細胞間又は細胞及び基質タンパク質間の接着、微生物及びウイルスの細胞への結合、並びに腫瘍細胞の転移を促進する能力を含む、多数の生物学的機能を有する天然に存在する化合物の群である。GSLは、グルコシルセラミド(GlcCer)から誘導され、これは、セラミド及びUDP-グルコースから酵素UDP-グルコース:N-アシルスフィンゴシングルコシルトランスフェラーゼ(GlcCerシンターゼ)によって製造される。セラミドの構造を、以下に示す:
【0004】
【0005】
GSLの蓄積は多くの疾病に関連し、テイサックス、ゴーシェ、及びファブリ病が挙げられる(例えば、米国特許第6,051,598号を参照されたい)。GSLは、更に、ある種の癌に関連する。例えば、ある種のGSLが、腫瘍中のみに、又は腫瘍中に異常に高い濃度で、存在すること;培養培地中の腫瘍細胞に加えた場合、腫瘍成長に顕著な刺激性又は阻害性作用を発揮すること;及び腫瘍によって周囲の細胞外液中に流された場合、身体の正常な免疫防御系を阻害することが見いだされている。腫瘍が次第に悪性になり、そしてある種のGSLに対する抗体が腫瘍の成長を阻害するのにしたがって、腫瘍のGSLの組成は変化する。
【0006】
GlcCerシンターゼを阻害する化合物は、GSL濃度を低下することができ、そして前述の疾病の一つを持つ患者を治療するために有用であることが報告されている。本明細書中で“アミノセラミド様化合物”と呼ばれる、GlcCerの多くの強力な阻害剤が、米国特許第6,051,598号、5,952,370号、5,945,442号、5,916,911号及び6,030,995号中に開示されている。以下に示した式(I)の化合物は、ゴーシェ病の治療のために、現時点で臨床試験中のGlcCerシンターゼ阻害剤である:
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,051,598号、
【文献】米国特許第6,051,598号、
【文献】米国特許第5,952,370号、
【文献】米国特許第5,945,442号、
【文献】米国特許第5,916,911号、
【文献】米国特許第6,030,995号。
【発明の概要】
【0009】
結晶質および他の状態で大規模な製造に受け入れられる物理的特性を有する、この薬物候補の塩の形態に対する必要性が存在する。更にこの薬物候補が安定で且つ患者に有効に供給される医薬製剤、並びにこの化合物を使用する改良された治療方法に対する必要性が存在する。
【0010】
発明の概要
式(I)の化合物のヘミ酒石酸塩(本明細書中で、以下“式(I)・ヘミ酒石酸塩”)を、明確に定義された条件下で結晶化して、ある種の非吸湿性の結晶質形態を提供することができることが見いだされている。式(I)・ヘミ酒石酸塩は、式(I)の他の塩と比較して、幾つかの有利な特性を有する。実施例1で更に記載されるように、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メチルスルホン酸塩、及び酢酸塩を含む多くの式(I)塩は、固体の形態で得ることができなかった。式(I)の塩酸及び1:1の酒石酸塩は、固体の形態で得られたが、どちらも結晶質でなく、そして両方とも処方のためには吸湿性過ぎた。式(I)・ヘミ酒石酸塩は、遊離塩基及び他の塩より処方及び合成しやすい。式(I)・ヘミ酒石酸塩は、更に結晶質で、非吸湿性で、水溶性であり、そして対応する遊離塩基(本明細書中で、以下“式(I)遊離塩基”)及び他の塩より良好に流動する。従って、これらの好ましい特性により、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、薬物候補としての大規模製造に適する。
【0011】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のカプセル製剤のための安定な顆粒を、規定された比の水不溶性充填剤、水溶性充填剤、及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を使用して調製することができることも更に見出されている。この発見に基づいて、式(I)・ヘミ酒石酸塩の安定な医薬製剤が開示される。
【0012】
式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)は、肝臓によって、主としてシトクロムP450酵素によって代謝されることも更に見出されている。この発見に基づいて、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)による、薬物/薬物の相互作用に対する潜在性を減少する治療の方法が開示される。
【0013】
組換えグルコセレブロシダーゼを、そして次いで式(I)・ヘミ酒石酸塩を投与されたゴーシェ病のマウスが、単独のグリコセレブロシダーゼ又は単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩による治療と比較して、内臓器官中の低いレベルのGL1及び肝臓中の減少したゴーシェ細胞の数を示したことも更に見出されている。この発見に基づいて、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)による組合せ治療も更に開示される。
【0014】
本出願の一つの態様は、式(I)によって表される化合物のヘミ酒石酸塩である。先に記述したように、式(I)によって表される化合物のヘミ酒石酸塩は、本明細書中で“式(I)・ヘミ酒石酸塩”と呼ばれる。式(I)によって表される化合物は、本明細書中で“式(I)遊離塩基”と呼ばれる。
【0015】
本出願のもう一つの態様は、医薬的に受容可能な担体又は希釈剤及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
もう一つの態様は、そのような阻害や低下を必要とする患者において、グルコシルセラミドシンターゼを阻害する、又はスフィンゴ糖脂質濃度を低下する、有効な量の式(I)・ヘミ酒石酸塩を患者に投与することによる方法を提供する。
【0016】
もう一つの態様は、そのような阻害や低下を必要とする患者において、グルコシルセラミドシンターゼを阻害する、又はスフィンゴ糖脂質濃度を低下するための医薬の製造のための式(I)・ヘミ酒石酸塩の使用を提供する。
【0017】
もう一つの態様は、そのような阻害や低下を必要とする患者において、グルコシルセラミドシンターゼを阻害する、又はスフィンゴ糖脂質濃度を低下するための式(I)・ヘミ酒石酸塩の使用を提供する。
【0018】
もう一つの態様は、ゴーシェ病に罹患する者を治療する方法である。この方法は、有効な量の第1の治療剤を有効な量の第2の治療剤との組み合わせで患者に投与することを含んでなる。第1の治療剤は、式(I)又は医薬的に受容可能なその塩によって表され;そして第2の治療剤は、ゴーシェ病の治療のために有効である。
【0019】
もう一つの態様は、ファブリ病に罹患する者を治療する方法である。この方法は、有効な量の第1の治療剤を有効な量の第2の治療剤との組み合わせで患者に投与することを含んでなる。第1の治療剤は、式(I)又は医薬的に受容可能なその塩によって表され;そして第2の治療剤は、ファブリ病の治療のために有効である。
【0020】
もう一つの態様は:式(I)によって表される化合物のヘミ酒石酸塩;少なくとも一つの水溶性充填剤;少なくとも一つの非水溶性充填剤;少なくとも一つの結合剤;及び少なくとも一つの潤滑剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、ファブリ病の患者を治療する方法である。この方法は以下の工程を含んでなる:
a)有効な量の式(I)の化合物、又は医薬的に受容可能なその塩を患者に投与し;
b)患者を試験して、患者が低、中また高/迅速P450代謝群のいずれであるかを決定し;
c)患者が中又は高/迅速P450代謝群である場合、化合物の調節された有効な量を決定し;そして
d)患者が中又は高/迅速P450代謝群である場合、調節された有効な量の式(I)の化合物を患者に投与し、そして患者が低P450代謝群である場合、有効な量の式(I)の化合物を患者に投与すること。
【0022】
本発明のもう一つの態様は、ゴーシェ病の患者を治療する方法である。この方法は以下の工程を含んでなる:
a)有効な量の式(I)の化合物、又は医薬的に受容可能なその塩を患者に投与し;
b)患者を試験して、患者が低、中また高/迅速P450代謝群のいずれであるかを決定し;
c)患者が中又は高/迅速P450代謝群である場合、化合物の調節された有効な量を決定し;そして
d)患者が中又は高/迅速P450代謝群である場合、調節された有効な量の式(I)の化合物を患者に投与し、そして患者が低P450代謝群である場合、有効な量の式(I)の化合物を患者に投与すること。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、ファブリ病の患者を治療する方法である。この方法は以下の工程を含んでなる:
a)有効な量の以下の構造式:
【0024】
【0025】
によって表される化合物;又は医薬的に受容可能なその塩を患者に投与し;
b)患者中の化合物のトラフ血漿レベルを評価し;そして
c)患者に投与される化合物の量を、化合物のトラフ血漿レベルが少なくとも5ng/mlであるように調節する。別の方法として、患者中の化合物のトラフ血漿レベル及びCmaxを工程b)で評価し、そしてc)において、患者に投与される化合物の量を、患者中の化合物のトラフ血漿レベルが少なくとも5ng/mlであり、そして患者中の化合物のCmaxが100ng/mlより低いように調節する。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、ゴーシェ病の患者を治療する方法である。この方法は以下の工程を含んでなる:
a)有効な量の以下の構造式:
【0027】
【0028】
によって表される化合物;又は医薬的に受容可能なその塩を患者に投与し;
b)患者中の化合物のトラフ血漿レベルを評価し;そして
c)患者に投与される化合物の量を、化合物のトラフ血漿レベルが少なくとも5ng/mlであるように調節する。別の方法として、患者中の化合物のトラフ血漿レベル及びCmaxを工程b)で評価し、そしてc)において、患者に投与される化合物の量を、患者中の化合物のトラフ血漿レベルが少なくとも5ng/mlであり、そして患者中の化合物のCmaxが100ng/mlより低いように調節する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、式(I)・ヘミ酒石酸塩の実験的XRPDパターン(室温)を示す。
【
図2】
図2は、ゴーシェ病のマウスの肝臓のグルコシルセラミドレベルを低下する酵素及び基質減少治療の効力のグラフである。肝臓のGL1レベルを、未治療の生後3か月の(A)、そして組換えグルコセレブロシダーゼによる2週間の治療後に(B)ゴーシェ病のマウスで測定した。組換えグルコセレブロシダーゼで治療されたマウスを、更なる治療を行わず(C)又は150mg/kg食物の式(I)・ヘミ酒石酸塩による療法後(D)の10週間後に分析した。研究の全期間中、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩を投与された(E)及び未治療の年齢を合わせた対照(F)マウスの肝臓中のGL1レベルも更に示す。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表示する(n=5)。統計的有意性は、独立t検定を使用して決定した。
【
図3】
図3は、ゴーシェ病のマウスの脾臓のグルコシルセラミドレベルを低下する酵素及び基質減少治療の効力のグラフである。脾臓のGL1レベルを、未治療の生後3か月の(A)、そして組換えグルコセレブロシダーゼによる2週間の治療後に(B)ゴーシェ病のマウスで測定した。組換えグルコセレブロシダーゼで治療されたマウスを、更なる治療を行わず(C)又は式(I)・ヘミ酒石酸塩による療法後(D)の10週間後に分析した。研究の全期間中、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩を投与されたマウス(E)及び未治療の年齢を合わせた対照(F)の脾臓中のGL1レベルも更に示す。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表示する(n=5)。統計的有意性は、独立t検定を使用して決定した。
【
図4】
図4は、ゴーシェ病のマウスの肺のグルコシルセラミドレベルを低下する酵素及び基質減少治療の効力のグラフである。肺のGL1レベルを、未治療の生後3か月の(A)、そして組換えグルコセレブロシダーゼによる2週間の治療後に(B)ゴーシェ病のマウスで測定した。組換えグルコセレブロシダーゼで治療されたマウスを、更なる治療を行わず(C)又は式(I)・ヘミ酒石酸塩による療法後(D)の10週間後に分析した。研究の全期間中、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩を投与されたマウス(E)及び未治療の年齢を合わせた対照(F)の肺中のGL1レベルも更に示す。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表示する(n=5)。統計的有意性は、独立t検定を使用して決定した。
【
図5】
図5は、肝臓のCD68染色の程度の定量化を示すグラフである。肝臓切片のCD68陽性染色の程度を、MetaMorphソフトウェアを使用して定量した。示したものは、未治療の生後3か月のゴーシェ病の肝臓(A)又はグルコセレブロシダーゼによる治療後のレベルである。酵素で治療され、そして次いで更なる治療的介入を行わない(C)又は式(I)・ヘミ酒石酸塩による治療後(D)のマウスも更に示してある。単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩を投与されたゴーシェ病のマウス(E)及び未治療の年齢を合わせた対照マウス(F)の肝臓の染色の程度も更に示してある。データは、それぞれのマウスからの切片当たり10枚の×400の画像の解析から収集した。統計的有意性は、独立t検定を使用して決定した。
【
図6】
図6は、若いD409V/ヌルマウス中の式(I)・ヘミ酒石酸塩の効力を示すグラフである。式(I)・ヘミ酒石酸塩を、生後10週目のD409Vヌルマウスに、75又は150mg/kgの投与量で10週間経口強制飼養によって毎日投与した。肝臓、肺、血管及び脾臓のグルコシルセラミドのレベルを、研究の終りにHP-TLCによって評価した。データを、未治療の年齢を合わせた対照マウス中のGL-1のパーセントとして表示する。点線は、正常な野生型マウスにおいて観察されたグルコシルセラミドレベルを示す。
*p<0.05;
**p<0.01は、未治療の対照に対する(両側、独立t検定)。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として示す。75mg/kgに対してn=5;150mg/kgに対してn=6である。
【
図7】
図7は、ファブリ病のマウスの肝臓、心臓、腎臓、脾臓、脳、及び血液中のGL-3の蓄積に対する式(I)・ヘミ酒石酸塩治療の効果を示す。
【
図8】
図8は、ファブリ病のマウスにおける末梢神経障害の発症及び進行に対する式(I)・ヘミ酒石酸塩治療の効果のグラフを示す。
【
図9】
図9は、式(I)・ヘミ酒石酸塩で治療されたファブリ病のマウスにおける腎機能の幾つかのマーカーの測定値のグラフを示す。
【
図10】
図10は、異なった薬物治療:A)ファブラザイムを隔月、式(I)・ヘミ酒石酸塩無し;B)ファブラザイムを隔月及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を食物中;C)ファブラザイムを研究の始まり及び研究の4ヶ月目に投与並びに食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;D)ファブラザイム無し、食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;並びにE)薬物治療無し;を受けているマウスの集団のERT及びSRT研究のための時系列を示す。
【
図11】マウスの六つ(n=?)の集団(A-Eファブリ-Rag;及びF野生型)の血液の血液GL-3レベルのng/mLのグラフを示す;マウスの集団は、次の治療を受けた:A)ファブラザイムを隔月、式(I)・ヘミ酒石酸塩無し;B)ファブラザイムを隔月及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を食物中;C)ファブラザイムを研究の始まり及び研究の4ヶ月目に投与並びに食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;D)ファブラザイム無し、食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;E)薬物治療無し;並びにF)薬物治療無し。
【
図12】
図12は、ファブリ-Ragマウスの肝臓及び腎臓中のGL-3のレベルのグラフを示す;マウスの集団(n=?)は、次の治療を受けた:A)ファブラザイムを隔月、式(I)・ヘミ酒石酸塩無し;B)ファブラザイムを隔月及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を食物中;C)ファブラザイムを研究の始まり及び研究の4ヶ月目に投与並びに食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;D)ファブラザイム無し、食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;並びにE)薬物治療無し。
【
図13】
図13は、ファブリ-Ragマウス中の尿のGL-3レベルのグラフを示す;マウスの集団(n=?)は、次の治療:A)ファブラザイムを隔月、式(I)・ヘミ酒石酸塩無し;B)ファブラザイムを隔月及び食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;C)ファブラザイムを研究の始まり及び研究の4ヶ月目に投与並びに食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;D)ファブラザイム無し、食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;並びにE)薬物治療無し;を受けた。
【
図14】
図14は、次の治療:ファブラザイムを隔月、式(I)・ヘミ酒石酸塩無し;ファブラザイムを隔月及び食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;ファブラザイムを研究の始まり及び研究の4ヶ月目に投与並びに食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;ファブラザイム無し、食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩;並びに薬物治療無し;を受けたファブリ-Ragマウスの野生型マウス;及び生後3か月の未治療のマウスの熱感受性の潜時を秒で示すグラフである。
【
図15】
図15は、85℃に3日間暴露した後の、式(I)・ヘミ酒石酸塩、カプセル級ラクトース一水和物及びアビセルPH301(微結晶セルロース)を含んでなる各種のブレンドのHPLCによる追跡の分解物の面積の全量を示すグラフである。HPLC追跡の分解物の面積は、式(I)・ヘミ酒石酸塩及び分解産物に対応するピークの全面積に対する分解物に対応するピークの全面積の比である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願は、式(I)・ヘミ酒石酸塩の独特な結晶型、及び本明細書中に記載される当該式(I)・ヘミ酒石酸塩の結晶型を含んでなる式(I)・ヘミ酒石酸塩の新しい医薬組成物を提供する。本出願は、更にそれを必要とする患者においてグルコシルセラミドシンターゼを阻害するか、又はスフィンゴ糖脂質を低下する方法を提供する。更に、本出願は、式(I)・ヘミ酒石酸塩の特異的な結晶型を調製するための方法を提供する。本出願は、更に式(I)・ヘミ酒石酸塩の安定な医薬製剤、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)による組合せ治療、及び式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)による、薬物/薬物相互作用の危険度を最小にする治療の方法を提供する。
【0031】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の結晶型
特別な態様において、式(I)・ヘミ酒石酸塩の少なくともある特定の重量パーセントは、結晶質である。特定の重量パーセントは、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は70%と100%の間のあるパーセントを含む。
【0032】
別の特別な態様において、式(I)・ヘミ酒石酸塩の少なくともある特定の重量パーセントは、式(I)・ヘミ酒石酸塩の単一の結晶型である。特定の重量パーセントは、70%、72%、75%、77%、80%、82%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は70%と100%の間のあるパーセントを含む。
【0033】
本明細書中で使用する場合、“結晶質”は、個々の分子が、高度に均一で規則的な固定された化学的立体構造を有する結晶構造を有する固体を指す。結晶質の式(I)・ヘミ酒石酸塩は、式(I)・ヘミ酒石酸塩の単一の結晶型の結晶、又は異なった単一の結晶型の結晶の混合物であることができる。単一の結晶型は、単一の結晶又はそれぞれの結晶が同一結晶形を有する複数の結晶としての式(I)・ヘミ酒石酸塩を意味する。
【0034】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の特定の重量パーセントが単一の結晶型である場合、式(I)・ヘミ酒石酸塩の残りは、非晶質の式(I)・ヘミ酒石酸塩の幾つかの組合せ、及び/又は前記の単一の結晶型を除く、一つ又はそれより多い他の結晶型の式(I)・ヘミ酒石酸塩である。結晶質の式(I)・ヘミ酒石酸塩が、式(I)・ヘミ酒石酸塩の一つの特定な結晶型の規定されたパーセントと定義された場合、残りは、非晶質の形態及び/又は規定された一つ又はそれより多い特定の形態以外の結晶型で構成される。単一の結晶型の例は、本明細書中で考察されるような一つ又はそれより多い特性によって特徴づけられる式(I)・ヘミ酒石酸塩のA型を含む。
【0035】
酒石酸は、二つのカルボン酸基を有するので、式(I)によって表される化合物と塩を形成するのに、酒石酸に対する複数の異なったモル比の化合物の塩(酒石酸の共役塩基)を形成することができる。例えば、約1対1のモル比の酒石酸と式(I)が存在する塩は、式(I)・ヘミ酒石酸塩(酒石酸1:式(I)1)である;そして約1対2のモル比の酒石酸と式(I)が存在する塩は、式(I)・ヘミ酒石酸塩(酒石酸1:式(I)2)である。
【0036】
ヘミ酒石酸塩は、各種の立体異性体の形態で存在することができる。立体異性体は、その空間的配置のみが異なる化合物である。鏡像異性体は、最も普通には、これらが、キラル中心として作用する不斉的に置換された炭素原子を含有するために、その鏡像が重ね合わせられない立体異性体の対である。ジアステレオ異性体は、最も普通には、これらが、二つ又はそれより多い不斉的に置換された炭素原子を含有するために、鏡像と関係のない立体異性体である。
【0037】
立体構造が命名され(例えば、L-(+)酒石酸のように)又は構造によって示された(例えば、式(I)のように)場合、命名された又は示された立体異性体は、他の立体異性体に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、99%又は99.9重量%の純度である。単一の鏡像異性体が命名され(例えば、L-(+)酒石酸のように)又は構造によって示された(例えば、式(I)のように)場合、示された又は命名された鏡像異性体は、少なくとも80%、90%、99%又は99.9重量%光学的に純粋である。光学的純度の重量パーセントは、その鏡像異性体の重量及びその光学異性体の重量に対するその鏡像異性体の重量の比である。
【0038】
“ラセミ体”又は“ラセミ混合物”は、等モル量の二つの鏡像異性体の化合物を意味し、ここにおいて、このような混合物は、光学活性を示さない;即ち、これらは、偏光面を回転しない。
【0039】
酒石酸は、三つの立体異性体:L-(+)-酒石酸又は右旋性酒石酸、及びその鏡像異性体即ち左旋性酒石酸又はD-(-)-酒石酸、並びにアキラルな形態即ちメソ酒石酸を有する。L又はD表示は、偏光面を回転する酸の能力は示さない。
【0040】
いずれの酒石酸の立体異性体も、式(I)・ヘミ酒石酸塩を調製するために使用することができる。例えば、ヘミ酒石酸塩は、ただ一つのその立体異性体、又はそのこれらの組み合わせから形成することができる。ヘミ酒石酸塩は、D-ヘミ酒石酸塩、L-ヘミ酒石酸塩、ヘミメソ酒石酸又はラセミのD,L-ヘミ酒石酸塩から選択される。具体的な態様において、ヘミ酒石酸塩は、L-ヘミ酒石酸塩である。“L-ヘミ酒石酸塩”は、ヘミ酒石酸塩が、L-酒石酸から形成されたことを意味する。ラセミのD,L-ヘミ酒石酸塩は、D-酒石酸及びL-酒石酸の両方が、式(I)・ヘミ酒石酸塩の調製において使用されたことを意味する。ラセミのD,L-ヘミ酒石酸塩中のD-酒石酸の量は、存在するL-酒石酸塩の量より多い、それに等しい、又はそれより少ないことができる。
【0041】
“左旋性”は、偏光が、不斉化合物を通過した場合、左に回転されることを意味する。左旋性を示す接頭辞は、“L”である。
“右旋性”は、偏光が、不斉化合物を通過した場合、右に回転されることを意味する。右旋性を示す接頭辞は、“D”である。
【0042】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の調製
式(I)・ヘミ酒石酸塩は、式(I)を、L-酒石酸と適した溶媒中で混合することによって調製することができる。式(I)・ヘミ酒石酸塩の沈殿は、種結晶の添加によって補助することができる。使用することができる溶媒は、メタノール、水、エタノール、アセトン、酢酸エチル、又はこれらの混合物である。
【0043】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の特定の固体の形態は、例えば、緩慢蒸発、緩慢冷却、及び逆溶媒沈殿によって調製することができる。これらの方法で使用することができる溶媒は、水、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、アセトン、メチルターシャリーブチルエーテル(本明細書中で以下“TBME”と呼ぶ)、p-ジオキサン、及びテトラヒドロフラン(本明細書中で以下“THF”と呼ぶ)を含む。
【0044】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の固体の形態は、溶媒又は溶媒混合物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩の溶液から溶媒の蒸発によって調製することができる。適した溶媒混合物は、メタノール、エタノール、アセトン、水、酢酸エチル及びジクロロメタンを含む。好ましい溶媒混合物は、エタノール、メタノール、水及びアセトンを含む。
【0045】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の固体の形態は、溶媒中の式(I)・ヘミ酒石酸塩の加熱された溶液の緩慢冷却によって調製することができる。適した溶媒は、エタノール、メタノール、水、アセトン、及び酢酸エチルを含む。
【0046】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の固体の形態は、溶媒中の式(I)・ヘミ酒石酸塩の加熱された溶液の、溶液を冷却浴中に置くことによる急速な冷却によって調製することができる。適した溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、水、酢酸エチル又はこれらの溶媒の混合物を含む。
【0047】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の固体の形態は、先に記載したような溶媒中の式(I)・ヘミ酒石酸塩の溶液を、所定の温度で逆溶媒に加えることによって調製することができる。更に特に、逆溶媒は、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、トルエン、THF、TBME、p-ジオキサン、イソプロパノール、又はヘプタンである。特別な溶媒/逆溶媒混合物は、メタノール/酢酸エチル、メタノール/アセトン、メタノール/ヘキサン、メタノール/ヘプタン、メタノール/アセトニトリル、メタノール/トルエン、メタノール/THF、メタノール/TBME、メタノール/p-ジオキサン、エタノール/酢酸エチル、エタノール/ヘキサン、エタノール/ヘプタン、エタノール、アセトン、エタノール/アセトニトリル、エタノール/トルエン、エタノール/TBME、エタノール/THF、水/THF、水/イソプロパノール、水/アセトニトリル、水/アセトン、ジクロロメタン/ヘプタン、ジクロロメタン/アセトン、ジクロロメタン/酢酸エチル、ジクロロメタン/アセトニトリル、ジクロロメタン/トルエン、ジクロロメタン/THF、ジクロロメタン/TBME、ジクロロメタン/p-ジオキサン、及びジクロロメタン/イソプロパノールを含む。
【0048】
好ましい溶媒/逆溶媒混合物は、メタノール/酢酸エチル、メタノール/アセトン、メタノール/TBME、及び水/アセトンを含む。
本明細書中で使用する場合、“逆溶媒”は、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、低い溶解度を有し、そしてヘミ酒石酸塩が、微小な粉末又は結晶の形態で溶液から沈殿することを起こす溶媒を指す。
【0049】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の固体の形態を発生する更なる方法は、酢酸エチル/アセトンから固体を沈殿させ、そして形成された固体を所望により室温で乾燥することを含む。もう一つの方法において、固体は、次いで種結晶の添加を伴って、又は伴わずにアセトンから再結晶することができる。別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、酢酸エチル/アセトン溶媒から沈殿させ、そして酢酸エチルから再結晶させることができる。別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、次いでイソプロパノールから再結晶することができる。別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、アセトンのみを使用して更なる再結晶化を伴わず調製することができる。別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、アセトンから短時間の還流後、更なる再結晶化を伴わず、沈殿させることができる。
【0050】
別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、次いでメタノール/アセトンから種結晶の添加を伴って、又は伴わず再結晶することができる。別の方法として、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、次いで水/アセトンから、種結晶の添加を伴って、又は伴わず、再結晶することができる。
【0051】
結晶型の式(I)・ヘミ酒石酸塩の特徴付け
特別な態様において、結晶型の式(I)・ヘミ酒石酸塩の結晶型Aは、5.1°、6.6°、10.7°、11.0°、15.9°、及び21.7°の2θ角における、1、2、3、4又は5個の主要XRPDピークによって特徴づけられる。一つのなお更に特別な態様において、結晶型は、5.1°、6.6°、10.7°、11.0°、13.3°、15.1°、15.9°、16.5°、17.6°、18.6°、18.7°、19.0°、20.2°、21.7°及び23.5°の2θ角におけるXRPDピークによって特徴づけられる。規定された2θ角が、規定された値±0.2°を意味することは理解されることである。
【0052】
本明細書中で使用する場合、“主要なXRPDピーク”は、25%より大きい相対強度を持つXRPDピークを指す。相対強度は、最大のピークのピーク強度に対する興味あるピークのピーク強度の比として計算される。
【0053】
式(I)・ヘミ酒石酸塩を使用する治療の方法
本明細書中で使用する場合、被験者は、哺乳動物、好ましくはヒトの患者であるが、しかし伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、等)又は実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、等)のような獣医学の治療を必要とする動物であることもできる。被験者及び患者は、互換的に使用される。
【0054】
本出願の一つの態様は、グルコシルセラミドシンターゼの活性を緩徐化する、例えば、グルコシルセラミドシンターゼの活性を阻害するか低下させる、又はスフィンゴ脂質活性を減少する方法であって、そのような治療を必要とする患者において、有効な量の、先に記載したような結晶型を含む、式(I)・ヘミ酒石酸塩を患者に投与することによる方法である。
【0055】
治療を必要とする患者は、グルコシルセラミドシンターゼを阻害する又は細胞、特にリソソーム又は細胞の膜中のスフィンゴ糖脂質濃度を低下することからの利益を得る症状又は疾病を持つ患者である。グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤は、テイサックス、ゴーシェ又はファブリ病のようなリソソーム蓄積症を治療するために有用であることが示されている(例えば、その全ての教示が、本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第6,569,889号;6,255,336号;5,916,911号;5,302,609号;6,660,749号;6,610,703号;5,472,969号;5,525,616号を参照されたい)。
【0056】
症状及び疾病の例としては、多発性嚢胞腎疾患及び膜性糸球体症(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、米国特許仮出願61/130,401及び61/102,541を参照されたい)、糸球体腎炎及び糸球体硬化症(米国特許仮出願61/137,214を参照されたい)狼瘡(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、PCT/US2009/001773を参照されたい)2型糖尿病を含む糖尿病(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、WO2006/053043を参照されたい);癌、膠原病性脈管疾患、アテローム性動脈硬化症、及び糖尿病患者の腎肥大を含む細胞増殖及び分裂に関係する疾患を治療すること(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第6,916,802号及び5,849,326号を参照されたい);動脈上皮細胞の成長を阻害すること(米国特許第6,916,802号及び5,849,326号を参照されたい);感染に罹った患者を治療すること(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、Svensson,M.et al.,“Epithelial Glucosphingolipid Expression as a Determinant of Bacterial Adherence and Cytokine Production,”Infect.and Immun.,62:4404-4410(1994)を参照されたい);腫瘍に対する抗体を発生することから宿主、即ち患者を予防すること(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、Inokuchi,J.et al.,“Antitumor Activity in Mice of an Inhibitor of Glycosphingolipid Biosynthesis,”Cancer Lett.,38:23-30(1987)を参照されたい);及び腫瘍を治療すること(これらの全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、Hakomori,S.“New Directions in Cancer Therapy Based on Aberrant Expression of Glycosphingolipids: Anti-adhesion and Ortho-Signaling Therapy,”Cancer Cells 3:461-470(1991),Inokuchi,J.et al.,“Inhibition of Experimental Metastasis of Murine Lewis Long Carcinoma by an Inhibitor of Glucosylceramide Synthase and its Possible Mechanism of Action,”Cancer Res.,50:6731-6737(1990)及びZiche,M.et al.,“Angiogenesis Can Be Stimulated or Repressed in In Vivo by a Change in GM3 :GD3 Ganglioside Ratio,”Lab.Invest.,67:711-715(1992)を参照されたい)が挙げられる。
【0057】
式(I)・ヘミ酒石酸塩は、更に癌ワクチン様製剤として使用することもできる(例えば、米国特許第6,569,889号;6,255,336号;5,916,911号;5,302,609号;6,660,749号;6,610,703号;5,472,969号;5,525,616号を参照されたい)。
【0058】
式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(そのヘミ酒石酸塩を含む)は、単剤治療として、即ち、徴候を治療するために投与される唯一の医薬的に活性な成分として、開示された方法において使用することができる。
【0059】
あるいは、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(そのヘミ酒石酸塩を含む)は、所望の疾病又は徴候を治療するための当技術において既知の他の治療的に活性な薬物との組合せ治療として、開示された方法において使用することができる。“同時治療”又は“組合せ”又は“組合せ治療”又は“同時投与”は、損明細書中で互換的に使用され、そして式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(ヘミ酒石酸塩を含む)が、一つ又はそれより多い他の治療剤の前に、その後に、又はそれと同時に投与されることを意味する。一つの態様において、組合せ治療は、ゴーシェ病又はファブリ病のようなリソソーマル疾患を治療するために使用される。別の方法として、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(ヘミ酒石酸塩を含む)は、別個の製剤又は連合製剤のいずれかとして同時に(例えば、同時発生的に)同時投与される。別の方法として、薬剤は、別個の組成物として熟練した臨床医によって決定されるような適当な時間枠(例えば、治療剤の医薬的効果の重複を可能にするために十分な時間)内に連続して投与することができる。式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(ヘミ酒石酸塩を含む)及び一つ又はそれより多い他の治療剤は、所望の治療効果を達成するために適した順序で、そしてその計画によって一回投与又は多数回投与で投与することができる。
【0060】
ゴーシェ病の治療のために有効な治療剤は、グルコセレブロシダーゼ、グルコセレブロシダーゼの類似体、グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤、及びグルコセレブロシダーゼに結合し、そしてその正しい立体構造を回復する分子シャペロンを含む。グルコセレブロシダーゼ及びその類似体は、ヒト又は哺乳動物由来であることができる。別の方法として、グルコセレブロシダーゼ及びその類似体は、組換えで得ることができる。グルコセレブロシダーゼの類似体は、酵素の切断型及び/又は天然の酵素の天然のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換を伴う酵素を含み、但し、生物学的活性が保持されていることを条件とする。グルコセレブロシダーゼの類似体の例は、イミグルセラーゼ(セレザイム(登録商標)の商標でGenzyme Corporationによって市販)、タリグルセラーゼアルファ(Uplyso(登録商標)の商標で市販、そしてProtalix Biotherapeutics,Inc.によって開発)及びヒトβ-グルコセレブロシダーゼの組換えDNA生産性類似体であるベラグルセラーゼアルファ(Shire PLCによって開発)を含む。分子シャペロンの例は、イソファゴミン(PliceraTMの商標名でAmicus Therapeutics,Cranbury,NJによって開発中)を含む。イソファゴミンは、更にアフェゴスタット(afegostat)・酒石酸塩としても知られ、そしてイソファゴミンの酒石酸塩の形態をその活性成分として含有する。グルコセレブロシダーゼ阻害剤の例は、ミグルスタット(ザベスカTMの商標でスイス国のActelion Pharmaceuticals Ltd.Allschwilによって開発)を含む。
【0061】
ファブリ病の治療のために有効な治療剤は、αガラクトシダーゼA、αガラクトシダーゼAの類似体及びαガラクトシダーゼAに結合し、そしてその正しい立体構造を回復する分子シャペロンを含む。αガラクトシダーゼA又はその類似体は、ヒト又は哺乳動物由来であることができる。別の方法として、αガラクトシダーゼA及びその類似体は、組換えで得ることができる。αガラクトシダーゼAの類似体は、酵素の切断型及び/又は天然の酵素の天然のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換を伴う酵素を含み、但し、生物学的活性が保持されていることを条件とする。αガラクトシダーゼAの類似体の例は、アガルシダーゼベータ(Genzyme Corporationによって、冷凍乾燥医薬としてファブラザイム(登録商標)の商標で市販されている組換えヒトα-ガラクトシダーゼ)及びアガルシダーゼアルファ(Shire PLCによって、リプレガル(登録商標)の商標で市販されている組換えタンパク質)を含む。分子シャペロンの例は、ミガラスタット(migalastat)(AmigalTMの商標名でAmicus Therapeutics,Cranbury,NJによって、その活性成分としてミガラスタット塩酸塩を含有する薬物として開発)を含む。
【0062】
一つの態様において、ゴーシェ又はファブリ病の治療のための組合わせ治療は、二段階で行われる。第1の段階において、ゴーシェ病又はファブリ病の治療のために有効な薬物(典型的には、ゴーシェ病に対してグルコセレブロシダーゼのその類似体、そしてファブリ病に対してガラクトシダーゼA又はその類似体)が、患者を安定させるために使用される。例えば、ゴーシェ病(又はファブリ病)において、これらの薬物の一つが、肝臓、脾臓、肺及び/又は腎臓中のような内臓器官中のGL-1蓄積の負担を減少するために使用される。これが達成された後、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(ヘミ酒石酸塩を含む)が、第2段階において好都合な維持治療として使用される。第1の段階は、典型的には1、2、3又は4週間まで、或いは1、2、3、4、6、9又は12か月間まで、或いは患者の血小板の数が100,000mm3に等しいか、又はそれより多くなるまで続けられる;ヘモグロビン濃度は、11g/dl(女性)又は12g/dl(男性)に等しいか又はそれより多い;及び/又は患者の脾臓の体積は、正常の10倍より少ないか又はそれに等しく、そして肝臓の体積は、正常の1.5倍より少ないか、又はそれに等しい。第1段階の投与は、典型的には式(I)の化合物による治療が開始された後終了される。
【0063】
本明細書中で使用される場合、“有効な量”は、患者において最小の受容不可能な副作用を伴って、治療される患者の既存の症状を緩和するために有効な量を指す。正確な処方、投与の経路、及び投与量は、患者の症状の観点から個々の医師によって選択される。投与量及び間隔は、所望の治療効果を維持するために十分である活性化合物の血漿レベルを得るために、個々に調節することができる。患者の症状及び投与の様式に加えて、投与される投与量は、患者の症状の重篤度並びに患者の年齢及び体重に依存するものである。有効な量は、典型的には少なくとも約5ng/mlより上の化合物の血漿トラフレベルをもたらすものである。有効な量の化合物の投与後、血漿トラフレベルが5ng/mlより下の場合、その患者に投与される投与量は、化合物のトラフレベルが少なくとも5ng/mlであるように“調節された有効な量”に変更される。別の方法として、化合物のトラフレベルが5ng/mlより下で、及び/又は有効な量の化合物の投与後、Cmaxが100ng/mlより上の場合、患者に投与される投与量は、化合物のトラフ血漿レベルが少なくとも5ng/mlであり、そしてCmaxが100ng/mlより下であるような“調節された有効な量”に変更される。有効な量は、0.1から500mg/日当たりの範囲であることができる。別の方法として、有効な量は、50-300mg/日の範囲である。もう一つの別の方法において、有効な量は、100-300mg/日の範囲である。本出願の化合物は、連続的に又は特定の時間間隔で投与することができる。例えば、本出願の化合物は、例えば一日一回又は一日二回の処方のように一日当たり1、2、3、又は4回投与することができる。商業的に入手可能なアッセイを、最適な投与量範囲及び/又は投与のための計画を決定するために使用することができる。
【0064】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(先に記載したヘミ酒石酸塩を含む)に対する有効な量は(単剤治療又は同時治療としてであるかに関わらず)、一日当たり、25、50、100、200又は300ミリグラムのような、25ミリグラムから300ミリグラム(別の方法において25ミリグラムから150ミリグラム;もう一つの別の方法において50ミリグラムから300ミリグラム;そしてもう一つの別の方法において100ミリグラムから300ミリグラム)の日量である。具体的な態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(先に記載したヘミ酒石酸塩を含む)は(単剤治療又は同時治療としてであるかに関わらず)、一日二回投与の50ミリグラム(合計一日当たり100ミリグラム)、100ミリグラム(合計一日当たり200ミリグラム)又は150ミリグラム(合計一日当たり300ミリグラム)である。別の態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)の有効な量は(単剤治療又は同時治療としてであるかに関わらず)、100ミリグラム/日、200ミリグラム/日又は300ミリグラム/日の一日一回投与として投与される。
【0065】
もう一つの態様において、有効な量は、患者が“低P450代謝群”であると仮定し、そして次いでトラフ血漿レベル及びCmaxを評価することによって決定される。次いで患者に投与される量は、トラフ血漿レベルが5ng/mlより下の場合;又は化合物のトラフレベルが5ng/mlより下及び/又はCmaxが100ng/mlより上の場合;或いは患者が中又は高/迅速P450代謝群であると決定された場合、以下に記載するような調節された有効な量に変更される。低P450代謝群に対する有効な量は(単剤治療又は同時治療としてであるかに関わらず)、普通一日一回投与又は一日二回投与として、一日当たり100-200ミリグラム間、例えば100又は200ミリグラムである。
【0066】
典型的には、本出願の医薬組成物は、食事の前又は後、或いは食事と共に投与することができる。本明細書中で使用する場合、食事の“前”又は“後”は、典型的にはそれぞれ、食事が始まる又は終わる、2時間以内、好ましくは1時間以内、更に好ましくは30分以内、最も好ましくは10分以内である。
【0067】
式(I)の化合物及び医薬的に受容可能なその塩(式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む)が、肝臓によって、主としてシトクロムP450酵素によって代謝されることが今や見出されている。シトクロムP450(“CYP”)は、主要な肝臓の異物代謝性酵素である。典型的なヒトの肝臓中に発現する11種の異物代謝性シトクロムP450(即ち、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8/9/18/19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4/5)が存在する。CYP2D6及びCYP3A4が、式(I)の化合物及び式(I)・ヘミ酒石酸塩のようなその医薬的に活性な塩を解毒することに責任のある、主要なシトクロムP450アイソフォームであることも今や更に見出されている。P450酵素の活性のレベルは、個体によって異なる。例えば、個体は、低、中及び高/迅速P450代謝群に分類することができる。個体のP450活性の低いレベルは、薬物/薬物相互作用(“DDI”)を生じさせることができるために、本発明のもう一つの態様は、患者が、低、中及び高/迅速P450代謝群のいずれであるかを決定することである。患者が、中又は高/迅速代謝群である場合、この患者に投与する投与量は、“調節された有効な投与量”、即ち、少なくとも5ng/mlの化合物のトラフ血漿レベルをもたらす量;又は少なくとも5ng/mlの化合物のトラフレベル及び100ng/mlより下の化合物のCmaxをもたらす量に上げなければならない。投与量は、漸増的に上げることができ、そして患者は、一回、二回、三回、四回又は調節された有効な投与量を達成するために必要な回数試験される。
【0068】
CYP2D4遺伝子に対して、四つの予測される表現型が存在する:
“低P450代謝群”は、酵素活性の完全な喪失をもたらす二つの対立遺伝子を保有する。
【0069】
“中P450代謝群”は、一つの減少した活性の対立遺伝子及び一つのヌル対立遺伝子を保有する。
“高P450代謝群”は、少なくとも一つの、そして二つより多くない正常な機能的対立遺伝子を保有する。
【0070】
“迅速P450代謝群”は、機能的対立遺伝子の多数のコピー(3-13)を保有し、そして過剰の酵素的活性を産生する。
患者は、典型的には、遺伝子型判定によるか、或いはCYP2D6又はCYP3A4のようなP450酵素によって代謝される薬物のトラフ血漿レベルをモニターすることによるかのいずれかによって、低、中又は高//迅速P450代謝群として評価される。普通には、式(I)の化合物又は式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む医薬的に受容可能なその塩のトラフ血漿レベル及び/又はCmaxは、化合物による治療の開始後、1、2、3又は4週間まで、又は1、2、3、6、9又は12か月或いはそれより多くまで、患者中でモニターされる。投与量の調節が必要に応じて行われて、レベルを記載された限度、即ち、5ng/mlの又はそれより上のトラフ血漿レベルに維持する。
【0071】
患者は、P450酵素阻害剤であるある種の薬物で治療された結果として、低P450代謝群となることができる。このような薬物の例は、パロキセチン、フルオキセチン、キニジン、又はケトコナゾールを含む。別の方法として、患者は、P450の低い発現の結果として、低P450代謝群となる。このような場合、低い発現は、患者中のP450酵素の発現を決定すること、即ちP450酵素に対して患者を遺伝子型判定することによって評価することができる。例えば、CYP2D6の発現は、普通PCRによって(McElroy et.al.“CYP2D6 Genotyping as an Alternative to Phenotyping for Determination of Metabolic Status in a Clinical Trial Setting”,AAPS Pharmsi(2000)2(4):article
33(http://www.pharmsci.org/))又はマイクロアレーベースの薬理ゲノム学試験によって(Background Information,Roche Diagnostics“The CYP450 Gene Family and Drug Metabolism”,Hoffmann La Roche Ltd.)評価され、これらの全ての教示は、本明細書中に参考文献として援用される。このように、患者は、治療の開始に先立って、P450発現(例えば、CYP2D6)に対して好都合に遺伝子型判定をし、そして必要な場合、調節された有効な量を投与することができる。治療の開始に先立つ遺伝子型判定の場合、化合物のトラフ血漿レベル及びCmaxをモニターし、そして必要に応じて投与量を調節することは、なお望ましいことである。
【0072】
ミガラスタット、アガルシダーゼβ、イミグルセラーゼ、イソファゴミン及びミグルスタットの有効な量は、薬物のラベルに記載してあるとおりであるか、又はそれぞれの薬物の臨床試験において行われるとおりである。
【0073】
式(I)の化合物は、医薬的に受容可能な酸と反応して、医薬的に受容可能な塩を形成することができる。医薬的に受容可能な酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、等のような無機酸、及びp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニル-スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、等のような有機酸を含む。このような塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、等を含む。
【0074】
式(I)・ヘミ酒石酸塩を含む医薬組成物
式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩(そのヘミ酒石酸塩を含む)のための適した製剤及び投与の様式は、その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される米国特許第7,253,185号中に記載されているものを含む。式(I)・ヘミ酒石酸塩のための好ましい製剤は、以下の項に記載される。
【0075】
本発明の一つの態様は、式(I)・ヘミ酒石酸塩、少なくとも一つの水溶性充填剤、少なくとも一つの水不溶性充填剤、少なくとも一つの結合剤、及び少なくとも一つの潤滑剤を含んでなる医薬組成物である。適した水溶性充填剤は、例えば、無水のラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、塩化ナトリウム、粉末糖、ソルビトール、スクロース、イノシトール及びアルファ化デンプンを含むことができる。適した水不溶性充填剤は、例えば、微結晶セルロース、リン酸カルシウム及びデンプンを含むことができる。適した結合剤は、例えば、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン(copolyvidone)、ゼラチン、天然ゴム、デンプンペースト、スクロース、コーンシロップ、ポリエチレングリコール及びアルギン酸ナトリウムを含むことができる。適した潤滑剤は、例えば、水素化植物油、ステアリン酸カルシウム、及びベヘン酸グリセリルを含むことができる。医薬組成物の一つの態様において、水溶性充填剤は、無水のラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、塩化ナトリウム、粉末糖、ソルビトール、スクロース、イノシトール及びアルファ化デンプンからなる群から選択される;水不溶性充填剤は、微結晶セルロース、リン酸カルシウム及びデンプンからなる群から選択され、結合剤は、アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ゼラチン、天然ゴム、デンプンペースト、スクロース、コーンシロップ、ポリエチレングリコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される;そして潤滑剤は、水素化植物油、ステアリン酸カルシウム、及びベヘン酸グリセリルからなる群から選択される。
【0076】
医薬製剤は、8重量%から32重量%間、8重量%から24重量%間、12重量%から20重量%間又は14重量%から18重量%間の水不溶性充填剤を、乾燥固体基準で含んでなる。
【0077】
医薬製剤は、26重量%から50重量%間、30重量%から46重量%間、34重量%から46重量%間又は38重量%から44重量%間の水溶性充填剤を、乾燥固体基準で含んでなる。
【0078】
医薬製剤は、30重量%から45重量%間、35重量%から40重量%間及び36重量%から39重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩を、乾燥固体基準で含んでなる。
医薬製剤は、典型的には、2重量%から6重量%間の結合剤を、乾燥固体基準で含んでなる。
【0079】
医薬製剤は、典型的には、0.1重量%から2重量%間の結合剤を、乾燥固体基準で含んでなる。
具体的な態様において、医薬製剤は、8重量%から32重量%間の水不溶性充填剤、、26重量%から50重量%間の水溶性充填剤、30重量%から45重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0080】
具体的な態様において、医薬製剤は、8重量%から32重量%間の水不溶性充填剤、26重量%から50重量%間の水溶性充填剤、35重量%から40重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0081】
もう一つの具体的な態様において、医薬製剤は、8重量%から24重量%間の水不溶性充填剤、30重量%から46重量%間の水溶性充填剤、35重量%から40重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0082】
もう一つの具体的な態様において、医薬製剤は、12重量%から20重量%間の水不溶性充填剤、34重量%から46重量%間の水溶性充填剤、35重量%から40重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0083】
もう一つの具体的な態様において、医薬製剤は、14重量%から18重量%間の水不溶性充填剤、38重量%から44重量%間の水溶性充填剤、35重量%から40重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0084】
もう一つの具体的な態様において、医薬製剤は、14重量%から18重量%間の水不溶性充填剤、38重量%から44重量%間の水溶性充填剤、36重量%から39重量%間の式(I)・ヘミ酒石酸塩、2重量%から6重量%間の結合剤及び0.1重量%から2重量%間の結合剤を、全て乾燥固体基準で含んでなる。更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;そして水不溶性充填剤は、微結晶セルロースである。なお更に具体的には、水溶性充填剤は、ラクトース一水和物であり;水不溶性充填剤は、微結晶セルロースであり;結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり;そして潤滑剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0085】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、これらは、何らの方法でも制約することを意図するものではない。
【実施例】
【0086】
実験
実施例1:式(I)の塩の調製
式Iのヘミ酒石酸塩は、容易に結晶化され、そして他の塩と比較して、多くの有益な特性を示す。例えば、式(I)によって表される化合物の塩の調製において、次の酸:クエン酸(1:1、1:2、及び1:3(塩:式I)の塩を産生);L-リンゴ酸(1:1及び1:2);メタンスルホン酸(1:1);フマル酸(1:1及び1:2);塩酸(1:1);酢酸(1:1)及び酒石酸(1:1及び1:2)が使用される。塩酸(1:1);酒石酸(1:1)及び酒石酸(1:2)によって産生される塩のみが固体の形態である。これらの三つの塩の塩酸(1:1)及び酒石酸(1:1)は、吸湿性であり、そして非結晶質であることが見いだされ、そして従って、医薬産物中に使用するために、受容不可能である。式Iによって表される化合物のヘミ酒石酸塩(1塩:2式I)は、結晶質であり、そして非吸湿性であることが見いだされた。
【0087】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のアセトン中の調製
L-酒石酸(6.02g、40.11mmol、0.497当量)を、アセトン(175mL)中に溶液を還流させることによって溶解し、そして次いで室温に冷却した。式(I)遊離塩基(32.67g、80.76mmol)を、アセトン(300mL)中に室温で溶解した。L-酒石酸溶液を、式(I)遊離塩基の溶液に室温で15分かけて加えた。添加の途中から白色の沈殿物が形成した。混合物を室温で0.5時間撹拌し、そして次いで短時間還流し、そして室温に冷却した。室温で0.5時間撹拌した後、白色の沈殿物を濾過した。白色の固体をアセトン(2×130mL)で二回洗浄した。固体を空気乾燥し、そして次いで55-60℃で真空乾燥した。収量は、36.66g(95%)であった。
【0088】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のアセトン中の5%メタノール中の調製
式(I)遊離塩基、10g/24.7molを、120mL又は240mLの5%メタノール/アセトン中に溶解した。L-酒石酸、1.85g/12.3mmolを、60mL又は120mLの5%メタノール/アセトン(N又は2N)中に40-45℃に温めることによって溶解し、そしてこの溶液を第1の溶液に加えた。沈殿物がないままの1時間後、1mgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を種結晶として加えた。5分後に沈殿物が生じ、そして反応物を30分間更に撹拌し続けた。次いで反応物を還流で5分間加熱(沈殿物は完全に可溶化)し、そして次いで20-22℃の水浴中で室温に冷却した。沈殿物が形成し、そして反応物を3時間撹拌し続けた。最終生成物を濾過によって収集し、そして2×40mLのアセトンで洗浄し、そして次いで55-60℃の真空オーブン中で16時間乾燥した。生成物の重量は、8.72g/74%収率であった。
【0089】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のアセトン中の1%水中の調製。
式(I)遊離塩基(10g/24.7mmol)を、120mL又は240mLの1%水/アセトン中に室温で溶解した。L-酒石酸、1.85g/12.3mmolを、60mL又は120mLの1%水/アセトン中(N又は2N)に、40-45℃に温めることによって溶解し、そしてこの溶液を第1の溶液の加えた。沈殿物のないままの1時間後、1mgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を種結晶として加えた。5分後に沈殿物が生じ、そして反応物を30分間更に撹拌し続けた。次いで反応物を還流で5分間加熱(沈殿物は完全に可溶化)し、そして次いで20-22℃の水浴中で室温に冷却した。沈殿物が形成し、そして反応物を3時間撹拌し続けた。最終生成物を濾過によって収集し、そして2×40mLのアセトンで洗浄し、そして次いで55-60℃の真空オーブン中で16時間乾燥した。生成物の重量は、8.62g、73%収率であった。
【0090】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のアセトン中の5%メタノール中の再結晶化。
式(I)・ヘミ酒石酸塩(3.06g)を、116mLのアセトン中の5%メタノール中に還流で溶解した。溶液を室温に冷却し、そして室温で2時間撹拌した。白色の沈殿物を濾過し、そして10mLのアセトン中の5%メタノールで、そして次いでアセトン(15mL)で洗浄した。55-60℃で18時間真空乾燥した後、2.38gの式(I)・ヘミ酒石酸塩(78%回収)を得た。
【0091】
式(I)・ヘミ酒石酸塩のアセトン中の1%H2O中の再結晶化。
式(I)・ヘミ酒石酸塩(3.05g)を、125mLのアセトン中の1%H2O中に還流で溶解した。溶液を室温に冷却し、そして室温で2時間撹拌した。白色の沈殿物を濾過し、そして10mLのアセトン中の1%H2Oで、そして次いでアセトン(15mL)で洗浄した。55-60℃で一晩真空乾燥した後、2.35gの式(I)・ヘミ酒石酸塩(77%回収)を得た。
【0092】
実施例2:結晶質の式(I)・ヘミ酒石酸塩の調製
式(I)・ヘミ酒石酸塩を、幾つかの方法で再結晶した。バッチ1は、酢酸エチル/アセトン溶媒を使用し、そして室温で乾燥して調製した。バッチ3は、酢酸エチル/アセトン溶媒を使用し、そして酢酸エチルから再結晶して調製した。バッチ4は、バッチ1の物質を使用して、アセトンから再結晶した。バッチ5は、イソプロパノールから再結晶した。バッチ7は、バッチ1と同様に酢酸エチル/アセトン溶媒を使用して、しかし大規模で調製し、バッチ8は、アセトンのみを使用し、更なる再結晶化を伴わずに調製した。バッチ9は、アセトンのみを使用し、短時間の還流を伴い、再び更なる再結晶化を伴わずに調製した。
【0093】
【0094】
式(I)・ヘミ酒石酸塩の結晶の形態は、更に各種の溶媒中の緩慢蒸発、緩慢冷却、急速冷却及び逆溶媒沈殿を使用して調製した。
緩慢蒸発法。 秤量した試料(通常20mg)を、試験溶媒のアリコートで処理した。アリコートは、典型的には100-200μLであった。溶媒の添加の間、混合物を振盪又は超音波処理した。目視検査によって判断したように、固体が溶解した時点で、溶液を周囲条件で、ピンホールを穿孔したアルミニウムフォイルで覆われた開放バイアル中で蒸発させた。溶解度を、透明な溶液を得るために加えた全溶媒に基づいたこれらの実験から推定した。
【0095】
【0096】
【0097】
緩慢/急速冷却法。 式(I)・ヘミ酒石酸塩を、試験溶媒中に50-60℃で溶解した。次いで得られた溶液を、周囲温度まで冷却させた(緩慢冷却)。一日後固体が形成されない場合、バイアルを冷蔵庫に入れた。急速冷却実験において、次いで得られた溶液は冷蔵庫中で冷却した。固体を濾過によって収集し、空気乾燥した。
【0098】
【0099】
【0100】
逆溶媒法。 式(I)・ヘミ酒石酸塩を溶媒中に溶解した。逆溶媒を溶液に加えた。形成した固体を濾過によって収集し、空気乾燥した。
【0101】
【0102】
実施例3: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の物理的特性
視差走査熱量測定法(DSC)。 DSCデータを、TAQ100装置で、置換ガスとして窒素を使用して収集した。概略2-5mgの試料をアルミニウムのDSCパン上に正確に秤量した。パンを蓋で覆い、そしてピンセットで穿孔した。試料セルを30℃で平衡させ、そして毎分10℃の速度で、220℃の最終温度まで加熱した。
【0103】
ホットステージ顕微鏡観察法。 ホットステージ顕微鏡観察を、画像収集のためのSonyのDXC-970MD3CCDカメラを備えたLeicaのDM LP顕微鏡上に設置したLinkamのホットステージ(モデルFTR600)を使用して行った。試料を見るために、40×の対物レンズを偏光と共に使用した。それぞれの試料を二枚のカバーガラス間に置いた。それぞれの試料をステージが加熱された時点で視覚的に観察した。画像をLinksバージョン2.27(Linkam)を使用して獲得した。ホットステージをUSP融点標準を使用して較正した。
【0104】
DSC特性で観察された吸熱性転移は、ホットステージ顕微鏡観察によって160-163℃間の温度における溶融転移であることが確認された。
実施例4: 式(I)・ヘミ酒石酸塩のX線粉末回折
全てのX線粉末回折(XRPD)分析を、SSCI,Inc(West Lafayette,IN 47906)で行った。XRPD分析を、ShimadzuのXRD-6000X線粉末回折計を使用し、CuKα照射を使用して行った。装置は高精度焦点X線真空管を備えている。真空管電圧及びアンペア数は、それぞれ40kV及び40mAに設定した。発散及び散乱スリットを1°に設定し、そして受光スリットを0.15mmに設定した。回折された照射を、NaIシンチレーション検出器で検出した。2.5から40°までの2θの3°/分(0.4秒/0.02°の段階)でシータ-2シータの連続スキャンを使用した。ケイ素の標準を、装置のアラインメントを検討するために分析した。データを収集し、そしてXRD-6000v4.1を使用して分析した。
【0105】
実施例5: 式(I)・ヘミ酒石酸塩と式(I)遊離塩基の比較
遊離塩基及びヘミ酒石酸塩の固体の特徴を表7に要約する。式I・酒石酸塩は、式I遊離塩基と比較して優れた特性を有する。例えば、式I・酒石酸塩は、式I遊離塩基と比較して、より高い融点(>150℃)、より高い充填エネルギー(より大きい吸熱エンタルピー)、より低い粒子の大きさの分散、より高い水溶解度(水中で300mg/mLを超える)、適した結晶形状、及びより高い容積密度を有する。
【0106】
【0107】
実施例6: In vitroの活性及び特異性
In vitroのスフィンゴ糖脂質合成を阻害する式(I)・ヘミ酒石酸塩の活性。
二つのアッセイを、グルコシルセラミド合成に対する式(I)・ヘミ酒石酸塩の阻害活性を定量するために使用した。グルコシルセラミドは、スフィンゴ糖脂質の生合成における第1の、そして律速段階であるために、GM1及びGM3の細胞表面レベルを測定する流動細胞計測アッセイを、インタクトな細胞中の阻害剤の活性を間接的に評価するために使用した。K562又はB16/F10細胞を、増加する量の式(I)・ヘミ酒石酸塩(0.6-1000nM)と共に72時間インキュベートすることは、GM1及びGM3の両方の細胞表面レベルの用量依存性の減少をもたらした。K562細胞中のGM1の細胞表面提示を阻害するための平均IC50値は、24nM(14-34nMの範囲)(表8)であり、そしてB16/F10細胞中のGM3に対するそれは、29nM(12-48nMの範囲)であった。顕性の細胞毒性は、最高の投与量で試験された場合でさえいずれの細胞系でも注目されなかった。
【0108】
活性に対する別のアッセイで、ヒト細胞由来のミクロソームにおけるグルコシルセラミド合成の阻害を測定した。このアッセイにおいて、ミクロソームを、ヒトメラノーマA375細胞から、超音波処理及び遠心によって調製した。ミクロソーム標品を、蛍光性セラミド基質(NBD-C6-セラミド)、UDP-グルコース、及び増加する量の式(I)・ヘミ酒石酸塩(0-1000nM)と共に1時間室温でインキュベートした。インキュベーション後、蛍光的に標識されたグルコシルセラミド及び未反応のセラミドを分離し、そして逆相HPLC及び蛍光検出によって定量した。このアッセイにおいて、グルコシルセラミド合成を阻害するためのIC50値は、20から40nMの範囲であった。この値は、上記でGM1及びGM3に対して得られたものと同様であり、そしてこれらの細胞表面の糖脂質の測定値は、グルコシルセラミド合成に対する式(I)・ヘミ酒石酸塩の活性の良好な代替物であることを示唆している。
【0109】
式(I)・ヘミ酒石酸塩による基質合成阻害の特異性。
式(I)・ヘミ酒石酸塩の特異性を、一連のin vitroの細胞ベース及び無細胞アッセイで評価した。腸管内のグルコシダーゼ酵素を、ラットの組織ホモジネートで分析し(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、U.Andersson,et al.,Biochem.Pharm.59(2000)821-829を参照されたい)、そしてグリコーゲン脱分枝酵素を、記載されているような無細胞アッセイで分析した(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、U.Andersson,et al.,Biochem.Pharm. 67(2004)697-705を参照されたい)。腸管内グリコシダーゼ(ラクターゼ、マルターゼ、スクラーゼ)、α-グルコシダーゼI及びII、並びに細胞質ゾル脱分枝酵素(α-1,6-グルコシダーゼ)の検出可能な阻害は、2500μMまでの濃度において見いだされなかった(表8)。
【0110】
非リソソームのグルコシルセラミダーゼ及びリソソームのグルコセレブロシダーゼを、インタクトなヒト細胞中で、C6-NBD-グルコシルセラミドを基質として使用して分析した(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、H.S.Overkleeft,et al.J.Biol.Chem.273(1998)26522-26527を参照されたい)。
【0111】
コンズリトールβエポキシド(リソソームのグルコセレブロシダーゼの特異的阻害剤)を、リソソーム対非リソソーム活性を区別するために使用した。
グルコセレブロシダーゼ活性も、更に蛍光表示式細胞分取(FACS)によって測定した。K562細胞を、増加する量の式(I)・ヘミ酒石酸塩と共に、1μMの5-(ペンタフルオロベンゾイルアミノ)-フルオレセンジ-β-D-グルコピラノシド(PFB-FDGlu,Molecular Probes/Invitrogen.Carlsbad,CA)の存在中で30-60分間培養した。細胞を直ちに氷上で冷却し、そして蛍光を上記で定量した。非リソソームのグルコシルセラミダーゼは、1600μMのIC50で弱く阻害された。ゴーシェ病において欠損している酵素であるリソソームのグルコセレブロシダーゼの阻害は、2500μMの最高濃度まで無かった(表8)。従って、試験されたいずれもの他の酵素と比較して、概略40,000倍の濃度における差が、グルコシルセラミドシンターゼを阻害するために必要であった。
【0112】
【0113】
実施例7: マウスモデルにおけるリソソームのグルコシルセラミドレベルの改良された管理
A.ファブリ病。
【0114】
酵素置換治療(ERT)及び基質減少治療(SRT)の両方の組合せた使用が、酵素の減量を維持するか、又は更なる利益を提供することができるか否かを決定するために、ファブリ病のマウスのモデル(ファブリ-Rag)における別個及び組合せ治療の相対的効力を比較した。親のファブリ病のマウスは、Wang,AM et al.Am.J.Hum.Genet.59:A208(1996)中に記載されている。ファブリ-Ragを、RAG-1マウスと雑交させ、そして成熟したリンパ球又はT細胞は、発生しない(免疫力低下)。
【0115】
動物研究
単剤治療の研究のために、ファブリ病のマウスを生後1か月で研究に加えた(予防モデル)。治療群は、式(I)・ヘミ酒石酸塩(Genzyme Corp.,Cambridge,MA)を、ペレット食品の食餌の成分として受けた。薬物を、0.15%(重量/重量)で標準的な5053マウス固形飼料(TestDiet,Richmond,IN)中に処方し、そして自由に提供した。この処方は、25gのマウスに一日当たり300mg/kgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を提供した。
【0116】
組合せ治療の研究のために、ファブリ-Ragマウスを、生後3か月で研究に加えた(治療モデル)。A群のマウスは、2ヶ月毎(即ち、生後3、5、7及び9か月目)に、1mg/kgの投与量で、組換えヒトアルファ-ガラクトシダーゼA(Genzyme Corp.)の静脈注射を受けた。B群は、同じ静脈内の酵素の投与量を受け、そしてこれは、式(I)・ヘミ酒石酸塩(Genzyme Corp.,Cambridge,MA)をペレット食品の食餌の成分として受けた。薬物を、0.15%(重量/重量)で、標準的な5053マウス固形飼料(TestDiet,Richmond,IN)中に処方し、そして自由に提供した。処方は、25gのマウスに一日当たり300mg/kgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を提供した。C群は、酵素の注射を4ヶ月毎(即ち、生後3及び7ヶ月)に受け、そしてB群と同じ食品中の薬物の食餌であった。D群は、食品中の薬物の食餌(B及びC群と同じ)のみを受けた。E群は、非治療のファブリ-Ragマウスであり、そしてF群は、野生型の対照であった。
図10を参照されたい。
【0117】
組織のグロボトリアオシルセラミド(GL-3、Gb3)レベルの定量化
GL-3の定量化は、本質的にGL-1のためのようなタンデム質量分析法によった。
ホットプレートアッセイは、先に記載したように行った(Ziegler,RJ et al.Molec.Ther.15(3),492-500(2007)。
【0118】
結果
式(I)・ヘミ酒石酸塩によるファブリ病のマウスの単剤治療
SRTを、α-ガラクトシダーゼA活性の欠損によって起こったファブリ病のマウスモデルで評価した。式(I)・ヘミ酒石酸塩による治療を、生後1か月のファブリ病のマウスで始め、そしてマウスが生後1年に達するまで続けた。マウスに300mg/kgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を、その毎日の食餌で投与した。マウスの行動試験(即ち、ホットプレートアッセイ)及び生化学的試験(即ち、尿検査及び組織/血液/尿のGL-3レベル分析)を二ヶ月毎に行った。
【0119】
図7に示すように、式(I)・ヘミ酒石酸塩の11か月にわたるファブリ-Ragのマウスへの投与は、体細胞性器官(肝臓、腎臓、肺及び脾臓)中のグロボトリアオシルセラミド(GL-3)のリソソームの蓄積の速度を概略50%減少する。これは、その後の非感受性の提示によって示されるような疾病の進行を、有害な熱刺激に対するの遅延(
図8参照)及び尿分析因子、例えば、尿体積、クレアチニン及びナトリウムレベルの悪化の予防(
図9参照)に翻訳した。従って、スフィンゴ糖脂質の合成の第1段階を触媒するグルコシルセラミドシンターゼの、式(I)・ヘミ酒石酸塩仲介による阻害は、ゴーシェ病の動物モデルにおける利点だけではなく、更にファブリ病も同様であり、そして更に他のスフィンゴ糖脂質代謝異常において正の効果を有することができる。
【0120】
α-ガラクトシダーゼA及び式(I)・ヘミ酒石酸塩によるファブリ病のマウスの組合せ治療
単独のERT及び式(I)・ヘミ酒石酸塩を使用するSRTとの組合せの効力を、五つの集団のファブリ-Ragマウスで評価した(n=12/群)。生後3か月で始め、
図10に示すように、マウスを行動試験(即ち、ホットプレートアッセイ)及び生化学試験(即ち、組織/血液/尿中のGL-3レベル分析)の計画にかけた。ERTにかけたマウスにおいて、1mg/kgの投与量のα-ガラクトシダーゼAを、
図10に示すような計画で投与した。SRTにかけたマウスにおいて、300mg/kgの投与量の式(I)・ヘミ酒石酸塩を、マウスの食餌中で毎日投与した。
【0121】
図11に示すように、ERTは、ファブリ-Ragマウスの血液GL-3レベルを減少し、一方SRTは、そうではない。
図12に示すように、組合せのERT/SRTは、ファブリ-Ragマウスの肝臓及び腎臓のGL-3レベルを減少することにおいて最も有効である。
【0122】
図13に示すように、SRTは、ファブリ-Ragマウスの尿のGL-3レベルを減少し、一方ERTは、そうではない。
図14に示すように、SRTは、ファブリ-Ragマウスの熱非感受性の開始を遅らせるが、しかしERTは、そうではない。
【0123】
要約として、組合せのファブラザイム及び式(I)・ヘミ酒石酸塩で治療されたファブリ-Ragマウスは、治療モデルにおける単独のERT又はSRTに対して、次のように疾病マーカーの改良を示した:組合せ治療により、肝臓及び腎臓のGL-3蓄積を有意に減少した;SRT群の尿のGL-3を改良した;ERT群の血液のGL-3を改良した;そしてSRT群の末梢神経障害を遅延した。
【0124】
B.ゴーシェ病。 酵素置換治療(ERT)及び基質減少治療(SRT)の両方の連続使用が、更なる利益を提供するか否かを決定するために、ゴーシェ病のマウスモデル(D409V/ヌル)における別個及び連続治療の相対的強度を比較した。
【0125】
方法
動物研究。 動物に関係する方法は、Genzyme Corporationにおいて、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)によって発行された指針に従って、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって精査及び認可された。ゴーシェ病のマウス(D409V/ヌル)は、肝臓、脾臓及び肺にグルコシルセラミドの蓄積を示すが、しかし骨又は脳の病態に欠く1型ゴーシェ病のモデルである(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、Y-H.Xu,et al.,Am.J.Pathol.163,2003,2093-2101を参照されたい)。先の実験が、組換えグルコセレブロシダーゼ又は式(I)・ヘミ酒石酸塩に対してオス及びメス間で反応の差を示さなかったために、生後3ヶ月の両方の性別のマウスを実験に加えた。研究は、六つの群のマウスを有し、A群は、組織のグルコシルセラミドの基線レベルを提供するために2週間後に犠牲にされた。B、C、及びD群は、全て組換えヒトグルコセレブロシダーゼ(Genzyme Corp.,Cambridge,MA)(100mg/kg)を、尾の静脈を経由して2日毎に合計8回の注射(100μL)を静脈内に受けた。B群は、この投与計画の終りに(A群と同時に)、組織のグルコシルセラミドの酵素減少レベルを提供するために犠牲にされた。D及びE群は、両方共、式(I)・ヘミ酒石酸塩(Genzyme Corp.,Cambridge,MA)を、ペレット食品の食餌の成分として給餌された。薬物を、0.075%(重量/重量)で標準的な5053マウス固形飼料(TestDiet,Richmond,IN)中に処方し、そして自由に提供した。この処方は、25gのマウスに一日当たり150mg/kgの式(I)・ヘミ酒石酸塩を提供した。F群は、治療を受けず、そしてC、D及びE群と共に研究の開始後12週目に犠牲にされた。食物の消費量及びマウスの体重を、毎週三回モニターして、薬物摂取及び全身的健康状態に対する薬物の潜在的影響を決定した。マウスを二酸化炭素吸入によって殺し、そしてその組織を直ちに回収した。それぞれの組織の半分をドライアイス上で急速冷凍し、そして-80℃で更なる加工の準備ができるまで保存した。他の半分は、組織学的分析のために加工した。
【0126】
組織のグルコシルセラミドレベルの定量化 グルコシルセラミドレベルを、以前に記載されているように質量分析によって定量した(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、K.McEachern,et al.,J.Gene.Med.8(2006)719-729;T.Doering,J.Biol.Chem.274(1999)11038-11045を参照されたい)。既知の質量の組織を、2:1(容量/容量)のクロロフォルム:メタノール中でホモジナイズし、そして37℃で15分間インキュベートした。試料を遠心し、そして上清を、0.2体積の水で一晩4℃で抽出した。試料を遠心し、水相を捨て、そして有機相を窒素下でフィルム状まで乾燥した。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI/MS)分析のために、組織試料を、1mlのクロロフォルム:メタノール(2:1、容量/容量)中で50ngの本来の組織重量の当量に再構成し、そして5分間撹拌した。それぞれの試料のアリコート(40μL)を、Watersの全量回収バイアルに送り、そして50μLの10μg/mLのd3-C16-GL-1内部標準(Matreya,Inc.,Pleasant Gap,PA)を加えた。試料を窒素下で乾燥し、そして200μLの1:4(容量/容量)のDMSO:メタノールで再構成した。異なった炭素鎖の長さのグルコシルセラミドのESI/MS分析を、エレクトロスプレーイオン供給源を備えたMicromass Quattro Micro装置に接続されたWaters allianceのHPLC(分離モジュール2695)で行った。脂質抽出物試料(20μL)を、C8カラム(4mL×3mm内径;Phenomenex,Torrance,CA)に45℃で注入し、そして50から100%のアセトニトリル(2mMの酢酸アンモニウム、0.1%のギ酸)の勾配で、0.5mL/分で溶出した。最初の0.5分を50%の有機物で保ち、そして次いで最後の3.5分間のために、急速に100%に切り換えた。供給源温度を150℃で一定に保ち、そして窒素を脱溶媒和ガスとして、670L/時の流速で使用した。キャピラリー電圧を3.80KVに、コーン電圧を23Vに維持し、それぞれのイオン種に対する滞留時間は100msであった。スペクトルを、MRMモードによって獲得して、8種の主要なアイソフォーム(C16:0、C18:0、C20:0、C22:1、C22:0、C22:1-OH、C24:1、及びC24:0)をモニターした。グルコシルセラミドの定量化は、0.1から10μg/mLの範囲の補正曲線による、内部標準に対するこれらの8種のアイソフォームの合計に基づいた。
【0127】
組織診断。 組織学的分析のために、組織を、亜鉛ホルマリン(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)で室温で24時間固定し、次いでPBS中で4℃で、更なる加工の準備ができるまで保存した。全ての試料を、エタノール中で脱水し、キシレン中で浄化し、Surgipath Rパラフィン(Surgipath,Richmond,IL)中に浸潤し、そして包埋した。5ミクロンの切片を、回転式ミクロトームを使用して切断し、そして60℃のオーブン中で乾燥してから、染色した。切片を、Hemo-De(Scientific Safety Solvents,Keller,TX)中で脱パラフィンし、そして下降する濃度のエタノール中で再水和し、続いてPBSで洗浄した。切片を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、そしてラット抗-マウスCD68モノクローナル抗体(Serotec,Raleigh,NC)を使用して標識して、マクロファージを確認した。PBS中で5分間洗浄した後、スライドをエタノール中で脱水和し、そしてHemo-De中で浄化してから、SHUR/MountTMカバーガラスマウント媒体(TBS,Durham,NC)でマウントした。肝臓中のCD68免疫陽性の面積のパーセントを、組織切片当たり10枚の400×の画像のMetaMorph(MDS Analytical Technologies,Toronto,Canada)分析を使用して定量した。群の名称を隠された有資格の獣医学の病理学者が、全ての切片を検査した。
【0128】
結果
生後3ヶ月のゴーシェ病のマウスの肝臓、脾臓及び肺中に蓄積したGL1を減量させるためのグルコセレブロシダーゼの投与計画。 酵素又は基質減少治療のいずれかによる組合せ及び単剤治療の相対的利点を調査するために、ゴーシェ病のマウスの内臓器官中のGL1レベルを最大に激減させる酵素の投与計画を最初に決定した。生後3ヶ月のゴーシェ病のマウス(D409V/ヌル)に、10mg/kgの組換えヒトグルコセレブロシダーゼの2、4又は8回投与を静脈注射で投与した。2又は4回投与の酵素で治療されたマウスは、薬物注入を3日毎に受け、一方8回投与で治療されたものは、酵素を2日毎に受けた。8回治療を受けたマウスの注入間の短い時間間隔の使用は、投与されたヒトの酵素に対するいずれもの免疫反応の潜在的影響を最小にするために設計された。マウスは、最後の酵素注入後7日目に殺され、そしてその肝臓、脾臓、及び肺中に残ったGL1の量を測定した。
【0129】
2回投与のグルコセレブロシダーゼによる治療は、肝臓中のGL1のレベルを、50%減少した。酵素注入の4又は8回への回数の増加は、予想されるように、肝臓のGL1レベルをより大きい程度(概略75%)減少した。8回の投与でさえ、GL1レベルの完全ではない低下は、ゴーシェ病の患者における経験と一致し、肝脾腫は長期の治療後にのみ減少されることを示す(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、G.A.Grabowski,et al.,Ann.Int.Med.122(1995)33-39を参照されたい)。ゴーシェ病のマウスの脾臓の基質レベルは、酵素治療に対して更に耐性である。2回投与のグルコセレブロシダーゼの投与は、非治療の対照で注目されるもののGL1レベルを有意に変更しなかった。4又は8回への酵素注入の回数の増加は、脾臓のGL1レベルを約50%減少した。肺において、非治療の対照の概略60%への減少が、8回の投与後観察された。肺の僅かに低い程度の基質の減少は、恐らく注入された酵素の、脂質を持った肺胞のマクロファージへの不良な到達性のためである。脾臓及び肺と比較した場合、肝臓中のより大きいGL1のクリアランスの観察は、全身的注入後の酵素の体内分布を反映している可能性がある(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、S.M.Van Patten,et al.Glycobiology 17(2007)467-478を参照されたい)。これらの結果に基づき、2日間隔で投与される、10mg/kgのグルコセレブロシダーゼの8回の連続投与からなる投与計画を、その後の研究で使用した。
【0130】
ゴーシェ病のマウスの肝臓中のGL1レベルを低下するための酵素及び基質減少治療の相対的能力。 生後3ヶ月のゴーシェ病のマウスのコホートを、組換えグルコセレブロシダーゼ又は式(I)・ヘミ酒石酸塩のいずれかで、別個に又は連続して治療した。B、C及びD群のマウスに、先に記載したように(2週間の時間をかけて)8回投与の酵素を与えて、蓄積したGL1を浄化した。次いで異なった群に、普通の固形飼料又は式(I)・ヘミ酒石酸塩(150mg/kg/日)を含有する固形飼料のいずれかを、更に10週間給餌し、F群は治療を受けず、そして無処置の対照として貢献した。固形飼料の処方に関わらず、マウスは同程度の量の食物を食し、そして体重の増加には識別可能な差はなかった。概略80%の蓄積されたGL1レベルが、2週間の単独の酵素治療後に、肝臓から除去された。これらのマウスが更なる治療なしに10週間進行させられた場合、その肝臓のGL1レベルは増加し、基質の再蓄積がこの介在期間中に起こったことを示した(
図2、カラムC)。これらのレベルは、無治療の対照のそれと有意に異なっていない(
図2、カラムF)。然しながら、マウスが酵素で、そして次いでその食物中の式(I)・ヘミ酒石酸塩で10週間かけて治療された場合、その肝臓のGL1レベルは、無治療の対照より有意に低い(
図2、カラムD及びF)。この結果は、式(I)・ヘミ酒石酸塩による更なる治療が、基質の再蓄積を緩慢化したことを示唆する。興味あることに、全体の研究期間中(12週間)、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩で治療されたマウスが、無治療の年齢を合わせた対照と比較した場合、差は有意ではないが、更により低いGL-1レベルを示した(
図2、カラムE)。この動物モデルにおいてGL1レベルを減少する単独のSRTの能力は、本出願人等の以前の報告と一致し(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、K.A.McEachern,et al.,Mol.Genet.Metab.91(2007)259-267を参照されたい)、そしてゴーシェ病のマウス(D409V/ヌル)が、残留酵素活性を保持している事実を反映する可能性がある(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、Y-H.Xu,et al.,Am.J.Pathol.163,2003,2093-2101を参照されたい)。
【0131】
ゴーシェ病のマウスの脾臓中のGL1レベルを低下するための酵素及び基質減少治療の相対的能力。 生後3ヶ月のゴーシェ病のマウスを、単独の組換えグルコセレブロシダーゼで2週間治療することにより、脾臓のGL1を概略60%減少した(
図3、カラムB)。これらのマウスを更に10週間更なる介入なしに加齢させた場合、基質レベルは、研究の開始時に観察されたものに戻り(
図3、カラムC)、そして無治療の対照と有意に異なっていなかった(
図3、カラムF)。これは、脾臓中のGL1の再蓄積の速度が、肝臓におけるより高いことを示唆する。この仮定は、更に脾臓中の基質の、肝臓中(約500mg/g組織、
図3、カラムA)より高い基底レベル(約1500mg/g組織;
図2、カラムA)の観察によって支持された。酵素で、そして次いで式(I)・ヘミ酒石酸塩で次の10週間治療されたマウスは、脾臓のGL1レベルの最大の減少を示し(
図3、カラムD)、そしてこれらは、無治療の対照の脾臓中のものより有意に低かった(
図3、カラムF)。これは、SRTの展開が、基質の再蓄積を遅延するだけでなく、しかし更にこの器官における蓄積の負荷の更に減少するために作用することを示した。少なくとこの場合、残存内因性酵素の正味の効果及び基質の減少が、全体の基質レベルの更なる低下に導くことは明白である。単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩で12週間治療されたマウス(
図3、カラムE)の、無治療の対照(
図3、カラムF)より低い脾臓のGL1レベルの観察は、差は有意ではないが、この考えと一致する。従って、高い残留酵素活性を持つ軽度の1型ゴーシェ病の患者において、ERT、それに続くSRTによる治療は、原因基質の除去の速度及び恐らく程度さえ潜在的に促進することができる。
【0132】
ゴーシェ病のマウスの肺中のGL1レベルを低下するための酵素及び基質減少治療の相対的能力。 先に記述したように、肺のGL1レベルは、組換えグルコセレブロシダーゼの静脈投与によって最も効果的でなく除去される。生後3ヶ月のマウスの2週間の酵素による治療は、肺中の基質レベルの30%のみの減少をもたらした(
図4、カラムB)。後に続く次の10週間、普通の固形飼料を給餌されたマウスのコホートは、予測されたように、GL1の再蓄積を示し、そして無治療のレベルと有意異なっていなかった(
図4、カラムC及びD)。対照的に、式(I)・ヘミ酒石酸塩を含有する固形飼料を、同じ介入期間給餌されたマウスは、単独の酵素を投与されたものより下への基質レベルの減少を示し(
図4、カラムD)、そして無治療の対照中のものより有意に低かった(
図4、カラムF)。再び、これは、肺において、脾臓のように、式(I)・ヘミ酒石酸塩(残留内因性酵素活性の存在中で)の正味の効果は、GL1の再蓄積を遅延させるだけでなく、更にこれを開始時のレベルより下に、更に減少するために作用することを示唆する。他の内臓器官と同様に、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩による治療は、肺のGL1レベルを低下することにおいて(
図4、カラムE)、無治療の対照(
図4、カラムF)と比較した場合有効であった。
【0133】
酵素及び基質減少治療後のゴーシェ病のマウスの肝臓の組織学的分析。 肝臓における異なった治療計画の効果を可視化するために、組織の切片をマクロファージマーカーのCD68のために染色した。無治療の生後3ヶ月のゴーシェ病のマウスからの肝臓の切片の分析は、多数の脂質で充溢したCD68陽性ゴーシェ細胞の存在を示し、これは、12週間後に分析した場合、殆ど不変のまま残っていた。上記の生化学的データと一致して、2週間の期間をかけて組換えグルコセレブロシダーゼを投与されたマウスの肝臓は、これらの異常なマクロファージ中の脂質の実質的な除去を示した。これらのマウスが更なる治療なしに更に10週間加齢させられた場合、ゴーシェ細胞の出現によって示されるようにGL1の再蓄積の証拠が存在した。然しながら、このゴーシェ細胞の増加は、マウスに式(I)・ヘミ酒石酸塩による基質減少治療を同じ介入期間にわたって与えた場合、無効にされる。先に記述したように、単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩を受けたゴーシェ病のマウスは、ERT及びSRTの組合せを受けたものと同じ程度ではないが、更に基質の減少した蓄積を示した。各種の切片に対するCD68陽性の染色の程度は、更にMetaMorphソフトウェアを使用して定量された(
図18)。これらの切片における染色の程度は、生化学的に決定された肝臓のGL1レベルの量を反映し(
図15)、異なった治療計画の相対的利点に対する示唆を更に支持した。
【0134】
実施例8: ゴーシェ病のマウスモデルにおける式(I)・ヘミ酒石酸塩の効力
動物研究。 動物に関係する方法は、Association for assessment and accreditation of laboratory animal Care(AAALAC)の州及び連邦の指針に従って、Institutional animal care and use committee(IACUC)によって精査及び認可された。ゴーシェ病のgbaD409V/nullマウス(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用されるY.-H.Xu.et al.,Am.J.Pathol.163(2003)2093-2101を参照されたい)を、研究
の必要性によって成熟させた。オス及びメス間で、表現型及び式(I)・ヘミ酒石酸塩に対する反応に差が見いだせず、従って両方の性別を研究に使用した。式(I)・ヘミ酒石酸塩の供給は、10mL/kgの体積で一日一回の経口強制飼養によった。マウスを治療の開始に一週間先立って、同様な体積の水で経口強制飼養に慣れさせた。式(I)・ヘミ酒石酸塩を注射用水(WFI;VWR,West Chester,PA)中に溶解し、そして九日の経過をかけて、75mg/kg/日から150mg/kg/日への、それぞれの投与量で三日間、そして25mg/kg/日の増加による投与量増大で投与した。マウスを週三回秤量して、その全体的健康状態に対する薬物の潜在的影響をモニターした。
【0135】
マウスを二酸化炭素吸入によって殺し、そしてその組織を直ちに回収した。それぞれの組織の半分をドライアイス上で急速冷凍し、そして-80℃で更なる加工の準備ができるまで保存した。他の半分は、組織学的分析のために収集した。
【0136】
高性能薄層クロマトグラフィーによる組織のグルコシルセラミドレベルの定量化。 高性能薄層クロマトグラフィー(HP-TLC)分析は、記載されているとおりであった(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、A.Abe,et al.,J.Clin.Inv.105(2000)1563-1571;H.Zhao,et al.Diabetes 56(2007)1341-1349;及びS.P.F.Miller,et al.J.Lab.Clin.Med.127(1996)353-358)。簡単には、全脂質画分を、冷PBS中で組織をホモジナイズし、2:1(容量/容量)のクロロホルム:メタノールで抽出し、そして水浴式超音波処理器中で超音波処理することによって得た。試料を遠心して、相を分離し、そして上清を回収した。ペレットを、クロロホルム:メタノール:生理食塩水中で再度超音波処理し、遠心し、そして得られた第2の上清を収集し、そして最初のものと混合した。1:1(容量/容量)のクロロホルム:生理食塩水混合物を、混合した上清に補助し、撹拌し、そして遠心した。上部の水層を捨てた後、メタノール:生理食塩水を加え、撹拌し、そして再度遠心した。有機相を採取し、そして窒素下で乾燥し、2:1(容量/容量)のクロロホルム:メタノール中に0.1gの本来の組織重量当たり1mLで溶解し、そして-20℃で保存した。
【0137】
脂質抽出物の一部を、全リン酸塩、即ち、内部標準として使用するリン脂質含有量を測定する(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、B.N.Ames,Methods Enzymol.8(1966)115-118を参照されたい)ために使用した。残りは、HP-TLCプレート上でグルコシルセラミドと共に移動したリン脂質を除去するために、アルカリ性の加メタノール分解を受けた。当量の全リン酸塩を含有する抽出物のアリコートを、HP-TLC上に、既知のグルコシルセラミドの標準(Matreya inc.Pleasant Gap,PA)と共に斑点として付けた。脂質を溶解し、そして3%の酢酸銅一水和物(重量/容量)15%のリン酸(容積/容積)、それに続き10分間150℃で焼くことによって可視化した。脂質のバンドを、デンシトメーター(GS-700,Bio-Rad,Hercules,CA)でスキャンし、そしてQuantity Oneソフトウェア(Bio-Rad)で解析した。
【0138】
質量分析法による組織のグルコシルセラミドレベルの定量化。 グルコシルセラミドを、記載されているように質量分析法によって定量した(その全ての教示が本明細書中に参考文献として援用される、K.McEachern,et al.J.Gene Med.8(2006)719-729;T.Doering,et al.,J.Biol.Chem.274(1999)11038-11045を参照されたい)。組織を、2:1(容量/容量)のクロロホルム:メタノール中でホモジナイズし、そして37℃でインキュベートした。試料を遠心し、そして上清を0.2体積の水で一晩抽出した。試料を再び遠心し、水相を捨て、そして有機相を窒素下でフィルム状物まで乾燥した。
【0139】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI/MS)分析のために、組織の試料を、1mLのクロロホルム/メタノール(2:1、容量/容量)中に50ngの本来の組織重量当量に再構成し、そして5分間撹拌した。それぞれの試料のアリコート(40μL)を、Watersの全量回収バイアルに移し、そして50μLの10μg/mLのd3-C16-GL-1内部標準(Matreya,Inc.,Pleasant Gap,PA)を加えた。試料を窒素下で乾燥し、そして200μLの1:4のDMSO:メタノールで再構成した。異なった炭素鎖の長さのグルコシルセラミドのESI/MS分析を、エレクトロスプレーイオン供給源を備えたMicromass Quattro Micro装置に接続されたWaters allianceのHPLC(分離モジュール2695)で行った。20マイクロリットルの脂質抽出物の試料を、C8カラム(4ml×3mm内径;Phenomenex,Torrance,CA)に45℃で注入し、そして50から100%のアセトニトリル(2mMの酢酸アンモニウム、0.1%のギ酸)の勾配で、0.5mL/分で溶出した。最初の0.5分を50%の有機物で保ち、そして次いで最後の3.5分間のために、急速に100%に切り換えた。供給源温度を150℃で一定に保ち、そして窒素を脱溶媒和ガスとして、670L/時の流速で使用した。キャピラリー電圧を3.80KVに、コーン電圧を23Vに維持し、一方それぞれのイオン種に対する滞留時間は100msであった。スペクトルを、MRMモードによって獲得して、8種の主要なアイソフォーム(C16:0、C18:0、C20:0、C22:1、C22:0、C22:1-OH、C24:1、及びC24:0)をモニターした。グルコシルセラミドの定量化は、0.1から10μg/mLの範囲の補正曲線による、内部標準に対するこれらの8種のアイソフォームの合計に基づいた。
【0140】
組織診断。 組織学的分析のために、組織を、亜鉛ホルマリン(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)で室温で24時間固定し、次いでPBS中で4℃で、更なる加工の準備ができるまで保存した。全ての試料を、上昇する濃度のエタノール中で脱水し、キシレン中で浄化し、そしてSurgipath Rパラフィン(Surgipath,Richmond,IL)中に浸潤し、そして包埋した。5ミクロンの切片を、回転式ミクロトームを使用して切断し、そして60℃のオーブン中で乾燥してから、染色した。切片を、キシレン中で脱パラフィンし、そして下降する濃度のエタノール中で再水和し、続いて水で洗浄した。3%の酢酸で1分間洗浄した後、スライドを、pH2の3%の酢酸中の1%のアルシアンブルー8GX(Electron Microscopy Sciences)中で40分間染色した。水中で洗浄し、そして1%の過ヨウ素酸で1分間酸化した後、スライドをシッフ試薬(Surgipath)で12分間染色した。5分間熱水で洗浄した後、スライドをアルコールで脱水し、そしてキシレンで浄化してから、SHUR/MountTMカバーガラスマウント媒体(TBS,Durham,NC)でマウントした。形態学的に確認された肝臓中のゴーシェ細胞を、10枚の高倍率視野(HPF、400×)当たりの細胞数手集計を使用して定量した。
【0141】
結果
D409V/ヌルマウスに対する式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与の影響。 D409V/ヌルマウスに対する式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与の影響を評価した。生後概略7ヶ月のマウスに、150mg/kg/日の式(I)・ヘミ酒石酸塩(グルコシルセラミドシンターゼを阻害することにおいて有効であることが初期の研究において示された投与量)を、経口強制飼養によって10週間投与した。この治療は、マウスの健康な状態及び食餌の習慣に注目すべき効果を有しなかった。研究を通してのその体重の測定は、無治療のマウスのものと有意な逸脱を示さず、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、このシンターゼを阻害することにおいて有効であることを示す投与量において十分に耐性であることを示唆した。
【0142】
若い前駆症状のゴーシェ病のマウスを治療することにおける式(I)・ヘミ酒石酸塩の効力。 式(I)・ヘミ酒石酸塩を、若い(生後10週間)のD409V/ヌルマウスにおけるグルコシルセラミドのリソソームの蓄積の寛解及びゴーシェ細胞の出現に対して評価した。これらの若いゴーシェ病のマウスは、影響された組織中の低いGL1レベルを示す。生後10週間のマウスに、75又は150mg/kg/日のいずれかの式(I)・ヘミ酒石酸塩を、経口強制飼養によって10週間投与した。グルコシルセラミドレベルの測定は、年齢を合わせたベヒクルで治療した対照と比較した場合、用量依存性の減少を示した。150mg/kg/日で治療されたコホートにおいて、グルコシルセラミドレベルは、肝臓、肺及び脾臓において、それぞれ対照におけるものの60、40及び75%であった(
図6)。治療されたD409V/ヌルマウスの肝臓及び肺で観察された統計的に有意に低いグルコシルセラミドのレベルは、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、これらの組織中のこのスフィンゴ糖脂質の蓄積を減少することにおいて有効であったことを示した。
【0143】
研究の終了(生後20週)における無治療のD409V/ヌルマウスの肝臓の組織学的評価は、肝臓中全体のゴーシェ細胞の存在を示した。150mg/kg/日の式(I)・ヘミ酒石酸塩で10週間治療されたマウスは、更に一定のより小さい大きさであるゴーシェ細胞の稀な存在のみを示した。多くの異なった切片におけるこれらの細胞の定量化は、ゴーシェ細胞の出現頻度が、式(I)・ヘミ酒石酸塩で治療したマウスにおいて有意に低かったことを確認した。まとめれば、これらの生化学的及び組織学的発見は、前駆症状のゴーシェ病のマウスに対する式(I)・ヘミ酒石酸塩の毎日の経口投与が、影響された組織中のグルコシルセラミドの蓄積、及びその後の肝臓におけるゴーシェ細胞の形成を減少することにおいて有効であることを示唆した。
【0144】
既往の病態を持つ年長のゴーシェ病のマウスに治療における式(I)・ヘミ酒石酸塩の効力。 年長の症候性ゴーシェ病のマウスにおける疾病の進行を停止又は逆転における式(I)・ヘミ酒石酸塩の効力を、更に評価した。生後7ヶ月のD409V/ヌルマウスに、150mg/kg/日の式(I)・ヘミ酒石酸塩を、経口強制飼養によって10週間投与した。治療後5及び10週目における治療されたマウスの肝臓、肺及び脾臓中のグルコシルセラミドレベルの分析は、これらが、研究の開始時に観察したものを超えて増加していないことを示した。10週間の治療後、グルコシルセラミドレベルは、ベヒクルで治療された対照より、肝臓で60%低く、肺で50%低く、そして脾臓で40%低いことが決定された。これらの結果は、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、既存の貯蔵の病態の負荷を持つマウスにおけるグルコシルセラミドの更なる蓄積を阻害することにおいて有効であることを示した。
【0145】
組織切片の組織学的分析は、無治療の対照と比較した場合、治療されたD409V/ヌルマウスに肝臓中の減少した数のゴーシェ細胞を示した。ゴーシェ細胞の数の定量化は、生化学的発見を実証した;治療されたD409V/ヌルマウスは、5及び10週目の両方の時点で、治療の開始時のものと有意に異ならないゴーシェ細胞の計数を示した。これらの両方の時点のゴーシェ細胞の数は、無治療のD409V/ヌルマウスのものより有意に低かった。まとめれば、これらのデータは、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、既往の病態を持つマウスにおける更なるグルコシルセラミドの蓄積及びゴーシェ細胞の発生を有効に阻害することを示す。
【0146】
考察
式(I)・ヘミ酒石酸塩は、酵素グルコシルセラミドシンターゼに対する高度の特異性を示した。更に有効な投与量においてグルコセレブロシダーゼ活性の測定可能な阻害はなく、これは、その殆どが残留グルコセレブロシダーゼ活性を保持するゴーシェ病の1型の患者を治療する場合、重要な特徴である。150mg/kg/日の有効な投与量において、観察可能な胃腸管の問題がなく、そして治療された及び対照の治療されていない群間に体重の差はない。IC50(24-40nM)の及びそれより上の血清濃度は、最大許容レベルより下である経口投与量により、容易に達成可能である。式(I)・ヘミ酒石酸塩は、更に容易に代謝され、そして除去される:親化合物及び代謝産物の両方は、ラット及びイヌにおける14Cで放射線標識した化合物による一回及び繰返し経口投与のADME研究において示すように、24時間内に効率よく除去される。
【0147】
非最適化投与量を使用して、毎日一回の経口強制飼養計画は、若い前駆症状のマウス及びすでに貯蔵の病態を示している年長のゴーシェ病のマウスに両方のグルコシルセラミドの蓄積を好結果で防止する。若い生後10週間のマウスは、野生型の対照に対して高いグルコシルセラミドレベルを抱えるが、ゴーシェ細胞と呼ばれる特徴的な充溢した組織のマクロファージをいまだ発生していない。150mg/kg/日の式(I)・ヘミ酒石酸塩による治療は、全ての測定可能な疾病の進行を停止し、そしてゴーシェ細胞の発生を阻害した。高いレベルのリソソームのグルコシルセラミド及び多くのゴーシェ細胞を示す年長のマウスにおいて、5週間又は10週間のいずれかの治療後、スフィンゴ糖脂質のレベル又は貯蔵細胞の数の更なる増加はなかった。ゴーシェ細胞中のグルコシルセラミドの主要な供給源は、起源が細胞外であることが報告され、これらの結果は、グルコシルセラミドシンターゼの式(I)・ヘミ酒石酸塩の阻害が全身的であることを暗示している。
【0148】
式(I)・ヘミ酒石酸塩がグルコシルセラミドの更なる蓄積を防止することにおいて有効であるという観察は、ゴーシェ病の治療を、更に向上することができる治療戦略を示唆する。
【0149】
要約として、本明細書中に提示したデータは、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、ゴーシェ病のマウスモデルにおいて顕性の不都合な影響を示さないグルコシルセラミドシンターゼの活性な、そして特異的阻害剤であることを示す。これは、前駆症状及び年長のゴーシェ病に罹ったマウスの両方において、グルコシルセラミドの蓄積及びゴーシェ細胞の形成を阻害することによって、疾病の進行を好結果で防止する。これらの発見は、式(I)・ヘミ酒石酸塩が、小児及び成人の両方の1型ゴーシェ病に対する、そして潜在的に他のスフィンゴ糖脂質の貯蔵疾患の、なおもう一つの治療の選択肢であることができることを示唆する。
【0150】
実施例9: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の第2相臨床試験
方法。 この50又は100mgを一日二回経口で与えられる式(I)・ヘミ酒石酸塩の臨床試験により、五か国の七つの場所で、1型ゴーシェ病(GD1)を持つ26人の成人(女性16人:男性10人;平均年齢34歳、範囲18-60歳;全てコーカサス人種)を治療した。患者は、脾腫(正常の10倍の体積)及び血小板減少症(血小板45,000-100,00個/mm3)又は貧血(ヘモグロビン女性8-10g/dl;男性8-11g/dl)のいずれかを有することである。これに先立つ12ヶ月、誰も酵素置換又は基質減少治療を受けていなかった。複合主要有効性の終点は、52週間の治療後のグロブリンレベル(+0.5g/dl)又は血小板の数(+15%)である。肝臓の体積、キトトリオシダーゼ、グルコシルセラミドも、更に評価される。患者は、長期に治療され、そしてモニターされる。
【0151】
結果。 52週目のデータは、20人の患者から入手可能であった;他の4人は早期に取り止め、そして二人は継続中であった。複合主要終点は、20人の患者中19人によって合致された。基線に対する52週目の平均(1SD)変化は:それぞれ、ヘモグロビン+1.6(11.35)g/dL;血小板数+43.6%(137.59%);脾臓及び肝臓体積(正常の倍数)40.2%(110.44%)及び15.8%(110.39%);そしてキトトリオシダーゼ49.9%(120.75%)であった。血漿グルコシルセラミドレベルは、全ての患者において4週間後に正常化し、式(I)・ヘミ酒石酸塩は、受容可能な安全特性を伴って十分に耐性であった。6人の患者における七つの関連する
不都合な事象が、関連するとして報告され;全て軽度で、そして一時的な性質であった。
【0152】
実施例10: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の医薬組成物、100mgカプセル
100mgカプセルの調製の方法: 式(I)・ヘミ酒石酸塩、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、及びヒプロメロース、E15を、20メッシュの篩を別個に通した。表9に示した篩い分けした成分の量を、高剪断粒造機中で、9から12分間混合した。
【0153】
【0154】
次いで成分を、造粒機のボウルへの視覚的に確認されるように完了までの、純水(2.2kg;乾燥成分重量の11.7%)の添加によって湿式造粒した。湿潤な造粒物を、ボウルから出し、そして回転する羽根車の選別ミルを通した。次いで湿潤な造粒物を、直接加熱の、静的な固定床式トレイ乾燥オーブン中で50±5℃で、製造過程中の検査によって確認されるように3.5%より多くないよう水分含有率迄乾燥した。次いで乾燥した顆粒を選別ミルを通し、そして選別された顆粒をV型混合機に移した。ベヘン酸グリセリル(0.2kg)をV型混合機に加え、そして最終混合物を、混合物がインライン又はオフラインの均一性試験によって決定されるように均一になるまで、典型的には10から20分間混合した。次いで最終混合物を#2の大きさのカプセルに、半自動カプセル充填機を使用して適当な充填重量(平均270mg)までカプセル化し、そして充填したカプセルを除塵してから、包装した。
【0155】
実施例11A: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の医薬組成物、10mgカプセル
10mgカプセルの調製の方法: 実施例10の方法をカプセル化工程まで追随した。10mgのカプセルを製造するために、最終混合物を#4又は#5の大きさのカプセルに、カプセル充填機を使用して適当な充填重量(平均27mg)までカプセル化し、そして充填したカプセルを除塵してから、包装した。
【0156】
実施例11B: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の医薬組成物、50mgカプセル
50mgカプセルの調製の方法: 実施例10の方法をカプセル化工程まで追随した。50mgのカプセルを製造するために、最終混合物を#3の大きさのカプセルに、カプセル充填機を使用して適当な充填重量(平均135mg)までカプセル化し、そして充填したカプセルを除塵してから、包装した。
【0157】
実施例11C: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の医薬組成物、150mgカプセル
150mgカプセルの調製の方法: 実施例10の方法をカプセル化工程まで追随した。150mgのカプセルを製造するために、最終混合物を#0の大きさのカプセルに、カプセル充填機を使用して適当な充填重量(平均405mg)までカプセル化し、そして充填したカプセルを除塵してから、包装した。
【0158】
実施例12: 式(I)・ヘミ酒石酸塩の医薬組成物、25mgカプセル
25mgカプセルの調製の方法: 実施例10の方法をカプセル化工程まで追随した。25mgのカプセルを製造するために、最終混合物を#4の大きさのカプセルに、カプセル充填機を使用して適当な充填重量(平均67.5mg)までカプセル化し、そして充填したカプセルを除塵してから、包装した。
【0159】
実施例13: 式(I)・ヘミ酒石酸塩薬物の相互作用-CYP2D6阻害剤
CYP2D6の強力な阻害剤であるパロキセチン(一日一回30mg)を伴って及び伴わずに投与された多数回経口投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩(一日二回100mg)の薬物動力学、安全性及び耐性を評価するための研究を行った。これは、36人の被験者(男性17人及び女性19人)における非盲検の固定順序の研究であった。第2の目的は、健康な被験者における多数回投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩(一日二回100mg)と組合せたパロキセチンのPKを評価し、そして更に一回投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与と比較した多数回投与後の式(I)・ヘミ酒石酸塩のPKを評価することであった。
【0160】
血漿中に存在するような式(I)・ヘミ酒石酸塩の遊離塩基の平均PKパラメーターは、非線形であり、そして一回投与の投与と比較した場合、繰返し投与(一日二回100mg)によるAUCの2倍の蓄積及びCmaxを示した。式(I)・ヘミ酒石酸塩及びパロキセチンの同時投与は、多数回投与の単独の式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与と比較して、Cmaxの7倍の増加及びAUCの9倍の増加をもたらした。これらの結果は、パロキセチンが、式(I)・ヘミ酒石酸塩の代謝を阻害し、そして薬物の血液血漿濃度を増加することを示す。同様な効果は、他の強力なCYP2D6阻害剤(例えばフルオキセチン及びキニジン)に伴って予測され、そして式(I)・ヘミ酒石酸塩が強力なCYP2D6阻害剤であるとして知られた薬物と同時投与される場合、薬物の血漿レベルの注意深いモニター及び潜在的な投与量の調節が必要である。パロキセチン濃度は、予測より約1.5から2倍高く、これは、式(I)・ヘミ酒石酸塩又はその代謝産物の一つが、CYP2D6の温和な阻害剤であることができることを示唆する。
【0161】
実施例14: 式(I)・ヘミ酒石酸塩薬物の相互作用-CYP3A4阻害剤及びp-糖タンパク質(PGP)阻害剤
多数回投与のケトコナゾール(一日一回400mg)を伴って及び伴わない多数回投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩(一日二回100mg)の薬物動力学、安全性及び耐性を評価するための研究を、健康な男性及び女性の被験者で行った。これは、100mgの一回投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与、多数回投与の式(I)・ヘミ酒石酸塩の投与、及び400mgのケトコナゾール(一日一回)を伴う100mgの式(I)・ヘミ酒石酸塩(一日二回)の同時投与を含む三つの期間からなる、36人の健康な被験者(男性及び女性18人)における非盲検の固定順序の研究であった。式(I)・ヘミ酒石酸塩及びシトクロムp4503A4(“CYP3A4”)及びp-糖タンパク質の強力な阻害剤であるケトコナゾールの繰返し投与は、定常状態で血漿中に存在するような式(I)・ヘミ酒石酸塩の遊離塩基の暴露の4倍の増加をもたらした。従って、式(I)・ヘミ酒石酸塩を既に受けている患者は、CYP3A4又はp-糖タンパク質の強力な阻害剤との同時治療の場合、一次的な投与量の減少を必要とすることができる。
【0162】
実施例15: 式(I)・ヘミ酒石酸塩製剤の安定性の研究
混合物を、約2グラムの大きさのシンチレーションバイアル中の、式(I)・ヘミ酒石酸塩及び賦形剤(カプセル級のラクトース一水和物、アビセルPH301(微結晶セルロース)及びメトセルE-15 Prem LV(ヒドロキシプロピルメチルセルロース))を混合し、15.6%の水を混合物に加え、そして湿潤な顆粒が形成するまで混合することによって調製した。湿潤な顆粒を、#10の篩(2000ミクロンの開口)を使用して選別した。次いで選別した顆粒を50℃のオーブンで2時間乾燥した。乾燥した顆粒を#18の篩(1000ミクロンの開口)を使用して選別した。潤滑剤のベヘン酸グリセリルを混合物に加え、そして混合して、最終混合物を形成した。調製した混合物を、以下の表に示す:
【0163】
【0164】
先に列挙した異なったAPI(活性医薬成分):ラクトース:アビセル比を有する七つの製剤の混合物を、それぞれの製剤の分解速度及び安定性を理解するために、85℃の高温に3日間暴露した(強制分解研究条件)。この促進条件は、24ヶ月における50mgの薬物産物の分解産物の程度が、85℃で3日間で得られたのものと同様であったという研究結果に基づいて選択された。
【0165】
強制分解研究を、C18カラム(Waters T3、3μm、100×4.6mm)、0.1%のトリフルオロ酢酸(THF)を伴う水及びアセトニトリルからなる移動相、280nmにおけるUV検出、40℃のカラム温度、及び2mL/分の流速を使用する逆相勾配HPLC法を使用して行った。勾配は、5%のB(アセトニトリル及び0.1%のTFA)を0.5分間保持して開始し、そして次いで毎分当たり4.83%のBで15分まで有機成分を増加させた。
【0166】
それぞれの製剤混合物の全分解物を、合計し、そしてAPI:ラクトース:アビセル比に対してプロットし、そして結果を
図15に示す。この研究の結果は、API及びラクトースの比を一定にした場合、アビセルの量を減少することは、製剤の安定性を改良することを示唆する。アビセルが除去された場合、製剤は、1:2.1:0のAPI:ラクトース:アビセル比を有し、これは最も安定した製剤である。ラクトースが除去された場合、製剤は、1:0:2.1のAPI:ラクトース:アビセル比を有し、そしてこの製剤は、他の比と比較して、最も不安定ではない。この組合せた情報は、ラクトースは製剤を安定化し、一方アビセルは、製剤を不安定化することを示唆する。然しながら、両方の賦形剤が存在する場合、これらは互いに相互作用する。安定した製剤を得るために、その比を調節しなければならない。
【0167】
水溶性である式(I)・ヘミ酒石酸塩のような活性な医薬的成分に対して、微結晶セルロースは、これが水不溶性であるために、湿潤顆粒化中に顆粒を形成することを援助する。微結晶セルロースが使用されない場合、顆粒の段階からペーストの形態への急な変化が起こる。ペーストの形態は、取扱いが困難であり、そして乾燥後に得られる粒子は、適した機械的強度及び粒子の大きさの分布を有しない。37重量%の式(I)・ヘミ酒石酸塩、41.0重量%の水溶性充填剤;16.7重量%の不溶性充填剤、2重量%から約6重量%の結合剤;及び約0.1重量%から約2重量%の潤滑剤を、全て乾燥固体基準で有する医薬組成物は、形成される分解物の量に関して、最良の安定性の特性を有する。
【0168】
本明細書中に引用される全ての特許、公開された出願及び参考文献の教示は、その全てが参考文献として援用される。
本発明は、その実施例の態様を参照して特別に示され、そして記載されているが、形態及び詳細における各種の変更が、特許請求の範囲によって包含される範囲から逸脱することなくその中で行うことができることは当業者にとって理解されるものである。