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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20221003BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20221003BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H04B1/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018175920
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020048106
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 武
(72)【発明者】
【氏名】福島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雄介
(72)【発明者】
【氏名】村山 友巳
(72)【発明者】
【氏名】前島 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】宮本 智史
(72)【発明者】
【氏名】小出 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】平田 光
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/237848(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/361932(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0042705(KR,A)
【文献】特開2015-018524(JP,A)
【文献】特開2011-004263(JP,A)
【文献】特開2006-229364(JP,A)
【文献】特開2011-015209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
H04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算を行う演算ユニットと、
前記演算ユニットと接続され電波を送受信可能なアンテナエレメントを備えたアンテナと、
前記アンテナエレメントを収容し、前記アンテナエレメントと対向する部分の少なくとも一部が電波を透過させる材質からなるカバーと、
前記演算ユニットと前記アンテナと前記カバーとを保持する第1筐体と、
前記演算ユニットによって情報を表示させる表示ユニットと、
前記表示ユニットを保持する第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを回転自在に連結する連結部材と、を有し、
前記第1筐体には、一辺の両端の部分を窪ませてなる一対の窪部が形成され、
前記一対の窪部の少なくとも一方には、前記アンテナエレメントが収容され、
前記第1筐体において前記一辺に沿って前記一対の窪部と各々隣接する一対の端部には、前記連結部材が回転自在に連結されている、電子機器。
【請求項2】
前記第1筐体が、金属からなる、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記アンテナエレメントが、板状に形成され、両面の少なくとも一方の面から電波を送受信可能であり、
前記カバーが、前記アンテナエレメントの電波を送受信可能な面と対向する部分から電波を透過させる、請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記アンテナエレメントの共振周波数が、2.4GHz帯以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項5】
前記アンテナエレメントが、板状に形成され、前記第1筐体の前記一辺に沿って延伸し、
前記アンテナエレメントと直交する方向において、前記アンテナエレメントから前記第1筐体の最端部までの第1距離が、2.1mm以上であって20mm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1距離の下限値が、5.0mm以上である、請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記アンテナエレメントが、板状に形成され、前記第1筐体の前記一辺に沿って延伸し、
前記第2筐体が、金属からなる部材を含み、
前記第1筐体と前記第2筐体とが360度開かれた状態で、前記アンテナエレメントと直交する方向において、前記アンテナエレメントと対面する前記部材までの第2距離が、2.1mm以上であって20mm以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2距離の下限値が、5.0mm以上である、請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
前記アンテナエレメントが、板状に形成され、前記第1筐体の前記一辺に沿って延伸し、
前記第2筐体が、金属からなる部材を含み、
前記第1筐体と前記第2筐体とが閉じられた状態で、前記アンテナエレメントと直交する方向において、前記アンテナエレメントと対面する前記部材までの第3距離が、2.1mm以上であって20mm以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の電子機器。
【請求項10】
前記第3距離の下限値が、5.0mm以上である、請求項9記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に通信用のアンテナを設ける技術が知られている。上記の技術に関連して、特許文献1には、アンテナエレメントを機器本体の端部から外側に突出させて設ける構成が開示されている。特許文献2には、アンテナをノートパソコンのヒンジ部付近等に収容して設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-11405号公報
【文献】特開2004-88360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡便に構成すると共に小型化することができ、かつ、良好な通信状態を得ることができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る電子機器は、演算ユニットと、アンテナと、カバーと、第1筐体と、表示ユニットと、第2筐体と、連結部材と、を有する。前記演算ユニットは、演算を行う。前記アンテナは、前記演算ユニットと接続され電波を送受信可能なアンテナエレメントを備えている。前記カバーは、前記アンテナエレメントを収容し、前記アンテナエレメントと対向する部分の少なくとも一部が電波を透過させる材質からなる。前記第1筐体は、前記演算ユニットと前記アンテナと前記カバーとを保持する。前記表示ユニットは、前記演算ユニットによって情報を表示させる。前記第2筐体は、前記表示ユニットを保持する。前記連結部材は、前記第1筐体と前記第2筐体とを回転自在に連結する。前記第1筐体には、一辺の両端の部分を窪ませてなる一対の窪部が形成されている。前記一対の窪部の少なくとも一方には、前記アンテナエレメントが収容されている。前記第1筐体において前記一辺に沿って前記一対の窪部と各々隣接する一対の端部には、前記連結部材が回転自在に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態のノートパソコン100を示す斜視図である。
図2図1の領域2を拡大して示す斜視図である。
図3図1の領域3において、ノートパソコン100が閉じられた状態と、90度、180度及び360度開かれた状態を拡大して示す端面図である。
図4A】ノートパソコン100の使用形態1であって、ノートパソコン100が100度開かれた状態で金属テーブル200に置かれ、使用者によってインターネットの閲覧が行われている状態を示す斜視図である。
図4B図4Aの領域4Bを拡大して示す端面図である。
図5A】ノートパソコン100の使用形態2であって、ノートパソコン100が360度開かれた状態で使用者に保持され、使用者によってインターネットの閲覧が行われている状態を示す斜視図である。
図5B図5Aの領域5Bを拡大して示す端面図である。
図6A】ノートパソコン100の使用形態3であって、ノートパソコン100が180度開かれた状態で金属テーブル200に置かれ、使用者によってインターネットを閲覧しながらプレゼンテーションが行われている状態を示す斜視図である。
図6B図6Aの領域6Bを拡大して示す端面図である。
図7A】ノートパソコン100の使用形態4であって、ノートパソコン100が閉じられた状態で使用者によって持ち運ばれつつ、インターネットへの接続が継続されている状態を示す斜視図である。
図7B図7Aの領域7Bを示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。図面において、ノートパソコン100の横幅方向X、奥行方向Y及び高さ方向Zを矢印で示している。
【0008】
図1から図3を参照して、ノートパソコン100の構成を説明する。
【0009】
ノートパソコン100(請求項では電子機器と称する)において、ベース筐体110(請求項では第1筐体と称する)とLCD筐体120(請求項では第2筐体と称する)が、ヒンジ130(請求項では連結部材と称する)によって回転自在に連結されている。ベース筐体110には、演算ユニット140、入力ユニット150、アンテナ160及びカバー170が保持されている。LCD筐体120には、LCD180(請求項では表示部材と称する)が保持されている。ノートパソコン100を構成しているベース筐体110からLCD180について順に説明する。
【0010】
ベース筐体110は、図1に示すように、演算ユニット140とアンテナ160とカバー170とを保持している。ベース筐体110には、図1及び図2に示すように、一辺110Hの両端の部分を窪ませてなる一対の窪部110dが形成されている。一対の窪部110dには、アンテナエレメント161が収容されている。ベース筐体110において一辺110Hに沿って一対の窪部110dと隣り合う各々の端部110eには、ヒンジ130が回転自在に連結されている。
【0011】
ベース筐体110は、表面部110aと裏面部110bが側面部110cを介して対向した箱状に形成されている。表面部110aの側には、入力ユニット150が設けられている。裏面部110bの側の四隅には、脚部110fが形成されている。ベース筐体110は、金属からなる。
【0012】
LCD筐体120は、図1から図3に示すように、LCD180を保持する。LCD筐体120は、LCDカバー121によってLCD180を裏面側から支持し、LCDマスク122によってLCDの外縁を表面側から支持している。
【0013】
ヒンジ130は、図1及び図2に示すように、ベース筐体110とLCD筐体120とを回転自在に連結する。ヒンジ130は、図2に示すように、回動部130aと、ベース筐体110の端部110eに固定される第1金具130bと、LCD筐体120の外縁部分に固定される第2金具130cから構成されている。ヒンジ130によって、ベース筐体110を基準として、LCD筐体120を回転させる場合、その角度はベース筐体110に対するLCD筐体120の相対的な角度を称する。
【0014】
演算ユニット140は、図1に示し、演算を行う。演算ユニット140は、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等を実装した基板等を備えている。
【0015】
入力ユニット150は、図1に示すように、キーボード150Mとタッチパッド150Nから構成されている。キーボード150Mとタッチパッド150Nは、それぞれベース筐体110に設けられ、演算ユニット140と接続されている。
【0016】
アンテナ160は、図1から図3に示すように、演算ユニット140と接続され電波を送受信可能なアンテナエレメント161と、アンテナグラウンド162を備えている。アンテナエレメント161は、板状に形成され、ベース筐体110の一辺110Hに沿って延伸している。アンテナエレメント161は、ベース筐体110の窪部110dに設けられている。アンテナエレメント161は、両面(一面161a及び他面161b)から電波を送受信可能に構成している。なお、アンテナエレメント161は、一般的なアンテナエレメントと同様に、片面(一面161a又は他面161b)から電波を送受信可能に構成してもよい。アンテナエレメント161の共振周波数は、2.4GHz帯以上である。アンテナグラウンド162は、ベース筐体110に支持されている。アンテナグラウンド162は、十分なグラウンド面積を確保するため、ネジや両面テープによって、高周波的に導通されている。
【0017】
アンテナ160は、図2に示すように、ベース筐体110に設けられたアンテナエレメント161が、ベース筐体110に設けられたヒンジ130の第1金具130bと、ベース筐体110の一辺110Hに沿って隣り合うように構成されている。このような構成によって、アンテナエレメント161とヒンジ130が対向して干渉するようなことを防止して、アンテナエレメント161の通信障害を十分に軽減可能にしている。
【0018】
アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161からベース筐体110の最端部までの第1距離L1は、2.1mm以上であって20mm以下である。ここで、図3に示すように、第1距離L1は、アンテナエレメント161からベース筐体110の他方(裏面側)の脚部110fまでの距離である。第1距離L1は、ノートパソコン100のベース筐体110の裏面側に金属部材が接触している場合に、アンテナエレメント161による通信が阻害されない距離を考慮して設定している。ベース筐体110とLCD筐体120とが360度開かれた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの第2距離L2が、2.1mm以上であって20mm以下である。ベース筐体110とLCD筐体120とが閉じられた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの第3距離L3が、2.1mm以上であって20mm以下である。
【0019】
アンテナエレメント161と金属製の部材との距離Lを様々に変化させて、2.4GHz帯及び5.0GHz帯におけるアンテナ160の通信特性を実験によって検証した結果を表1に示す。この検証の結果は、一例である。金属製の部材には、実験において、銅板を用いた。アンテナエレメント161と金属製の部材との距離Lが2.1mm未満の場合、通信特性が悪い(×)となった。アンテナエレメント161と金属製の部材との距離Lが2.1mm以上であって4.2未満の場合、通信特性は可(△)となった。アンテナエレメント161と金属製の部材との距離Lが4.2mm以上であって5.0未満の場合、通信特性は良好(○)となった。アンテナエレメント161と金属製の部材との距離Lが5.0mm以上の場合、通信特性は非常に良好(◎)となった。
【0020】
【表1】
【0021】
カバー170は、図1から図3に示すように、アンテナエレメント161を収容し、電波を透過させる例えばプラスチックからなる。カバー170は、アンテナエレメント161の両面(一面161a及び他面161b)と対向する両側(一側面部170a及び他側面部170b)から電波を透過させる。カバー170は、インサート成型されておらず、ベース筐体110と一体化するようなデザイン性を重視した塗装が施されている。カバー170は、ベース筐体110の窪部110dを覆うように設けられている。
【0022】
LCD180は、図1から図3に示すように、演算ユニット140によって情報を表示させる。LCD(liquid crystal display)180は、表示ユニットの一例であって、液晶ディスプレイである。表示ユニットには、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを用いてもよい。LCD180は、LCD筐体120に保持されている。
【0023】
図4A及び図4Bを参照して、ノートパソコン100の使用形態1を説明する。
【0024】
図4Aに示すように、使用形態1では、ノートパソコン100が100度開かれた状態で金属テーブル200に置かれている。ここで、ノートパソコン100は、使用者によってインターネットの閲覧が行われている。
【0025】
図4Bに示すように、アンテナエレメント161の下方には、金属テーブル200が存在する。アンテナエレメント161の一面161a側は、カバー170の一側面部170aを介して、金属テーブル200の天板201と対向している。ここで、天板201は、金属によって形成されていることから、電波による通信を阻害する要因となる。天板201は、例えば木材からなる支持部材202によって支持されている。しかしながら、ベース筐体110におけるアンテナエレメント161の位置は、ベース筐体110の脚部110fが天板201に接触した状態で、アンテナエレメント161と天板201の第1距離L1が通信障害を生じない程度に離れるように設定されている。すなわち、図4Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の下方に位置する天板201による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0026】
図4Bに示すように、アンテナエレメント161の上方の少なくとも近傍には、通信障害を生じる構造物が見当たらない。アンテナエレメント161の他面161b側は、カバー170の他側面部170bを介して、ノートパソコン100の上方の空間と対向している。すなわち、図4Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の上方における遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0027】
図5A及び図5Bを参照して、ノートパソコン100の使用形態2を説明する。
【0028】
図5Aに示すように、使用形態2では、ノートパソコン100が360度開かれた状態で使用者に保持されている。ここで、ノートパソコン100は、使用者によってインターネットの閲覧が行われている。
【0029】
図5Bに示すように、アンテナエレメント161の下方の少なくとも近傍には、通信障害を生じる構造物が見当たらない。アンテナエレメント161の他面161b側は、カバー170の他側面部170bを介して、ノートパソコン100の下方の空間と対向している。すなわち、図5Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の下方における遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0030】
図5Bに示すように、アンテナエレメント161の上方には、LCD筐体120が存在する。アンテナエレメント161の一面161a側は、カバー170の一側面部170aを介して、LCD筐体120のLCDカバー121と対向している。ここで、LCDカバー121は、金属によって形成されていることから、電波による通信を阻害する要因となる。しかしながら、ベース筐体110におけるアンテナエレメント161の位置は、ベース筐体110の脚部110fがLCDカバー121に接触した状態で、アンテナエレメント161とLCDカバー121との第2距離L2が通信障害を生じない程度に離れるように設定されている。すなわち、図5Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の上方に位置するLCDカバー121による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0031】
図6A及び図6Bを参照して、ノートパソコン100の使用形態3を説明する。
【0032】
図6Aに示すように、使用形態3では、ノートパソコン100が180度開かれた状態で金属テーブル200に置かれている。ここで、ノートパソコン100は、使用者(図6A中の左側)とクライアント(図6A中の右側)よってインターネットの閲覧が行われている。更に、使用者からクライアントに対してプレゼンテーションが行われている。
【0033】
図6Bに示すように、アンテナエレメント161の下方には、金属テーブル200が存在する。アンテナエレメント161の下方における通信状態は、図4Bを参照しながら説明した状態と同様である。すなわち、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0034】
図6Bに示すように、アンテナエレメント161の上方の少なくとも近傍には、通信障害を生じる構造物が見当たらない。アンテナエレメント161の上方における通信状態は、図4Bを参照しながら説明した状態と同様である。すなわち、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0035】
図7A及び図7Bを参照して、ノートパソコン100の使用形態4を説明する。
【0036】
図7Aに示すように、使用形態4では、ノートパソコン100が閉じられた状態で使用者によって持ち運ばれている。ここで、ノートパソコン100は、インターネットへの接続が継続されている。
【0037】
図7Bに示すように、アンテナエレメント161の右方(一方)の近傍には、LCD筐体120が存在する。アンテナエレメント161の他面161b側は、カバー170の他側面部170b及びLCD筐体120のLCDマスク122を介して、LCD筐体120のLCDカバー121と対向している。ここで、LCDマスク122は、プラスチックによって形成されていることから、電波による通信を阻害する要因とならない。一方、LCDカバー121は、金属によって形成されていることから、電波による通信を阻害する要因となる。しかしながら、ベース筐体110におけるアンテナエレメント161の位置は、ベース筐体110の表面部110a(最端部)がLCD180に近接した状態で、アンテナエレメント161とLCDカバー121との第3距離L3が通信障害を生じない程度に離れるように設定されている。すなわち、図7Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の右方に位置するLCDカバー121による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0038】
図7Bに示すように、アンテナエレメント161の左方(他方)の少なくとも近傍には、通信障害を生じる構造物が見当たらない。アンテナエレメント161の一面161a側は、カバー170の一側面部170aを介して、ノートパソコン100の左方の空間と対向している。すなわち、図7Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の左方における遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。
【0039】
図1から図7Bを参照して、ノートパソコン100の効果を説明する。
【0040】
実施形態によれば、ベース筐体110がアンテナ160と共に演算ユニット140を保持していることから、ヒンジ130の回転動作に影響を受けることなく、アンテナエレメント161と演算ユニット140の接続を維持することができる。したがって、アンテナエレメント161と演算ユニット140を接続する配線等を、ヒンジ130と連動させたり補強したりすることが不要となる。この結果、ノートパソコン100を簡便に構成することができる。
【0041】
更に、ベース筐体110の一辺110Hの両端に形成された一対の窪部110dにアンテナエレメント161が収容され、かつ、一対の窪部110dと各々隣接する一対の端部110eにヒンジ130が連結されている。この構成では、ベース筐体110において、アンテナエレメント161が一対のヒンジ130の外側に位置している。すなわち、ベース筐体110において、アンテナエレメント161を既存のスペースに設けることによって、新たなスペースを必要としていない。したがって、アンテナ160をベース筐体110の空きスペースに設けることができる。この結果、ノートパソコン100を小型化することができる。
【0042】
更に、電波を透過させるカバー170にアンテナエレメント161が収容されていることから、通信を阻害するような金属製の構造物からアンテナエレメント161を物理的に離すことができる。特に、この構成では、アンテナエレメント161がノートパソコン100から露出していない。したがって、金属製の構造物に起因する通信障害を避けることができる。この結果、ノートパソコン100の通信状態を良好に保つことができる。
【0043】
上述した通り、実施形態のノートパソコン100は、簡便に構成すると共に小型化することができ、かつ、良好な通信状態を得ることができる。
【0044】
実施形態によれば、ベース筐体110が、金属からなる。このような構成にすることによって、ベース筐体110の剛性を維持しつつ、より小型化することができる。ベース筐体110は、アンテナエレメント161と対面していないことから、通信障害の発生を抑制することができる。
【0045】
実施形態によれば、アンテナエレメント161が、板状に形成され、両面(一面161a及び他面161b)の少なくとも一方の面から電波を送受信可能である。特に、実施形態では、一例として、アンテナエレメント161が、両面から電波を送受信可能に構成している。このような構成の場合、カバー170が、アンテナエレメント161の電波を送受信可能な両面と対向する部分(一側面部170a及び他側面部170b)から電波を透過させる。このような構成にすることによって、通信可能な空間領域を増やして、通信障害を生じる金属製の構造物等が存在しても、通信障害を発生させ難くすることができる。ここで、アンテナエレメント161の片側(一面161a又は他面161b)のみから電波を送受信可能に構成する場合は、ノートパソコン100の想定される使用形態に応じて、より通信障害を発生させ難くすることができる一面161a又は他面161bの一方の面のみから電波を輻射させる構成とする。
【0046】
実施形態によれば、アンテナエレメント161の共振周波数が、2.4GHz帯以上である。このような構成にすることによって、アンテナエレメント161の横幅方向Xの幅を短くして、一対のヒンジ130間の距離を長くすることができる。なお、アンテナエレメント161の共振周波数と、アンテナエレメント161の横幅方向Xの幅は、反比例する。したがって、一対のヒンジ130間に、ノートパソコンを構成する部材を十分に設けることができる。すなわち、左右のヒンジ130間を広く保つために、各々のヒンジ130の外側の寸法は小さい方が好ましい。左右のヒンジ130間には、ノートパソコンを構成する部材として、例えば、基板、冷却ファン、その冷却ファン用の通気口、バッテリー等を設けることができる。ここで、アンテナ160の性能について、2.4GHz帯以上の周波数において、-8dB以上のアンテナ効率を確保できることを実験によって確認した。
【0047】
実施形態によれば、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161からベース筐体110の最端部までの第1距離L1が、2.1mm以上であって20mm以下である。更に、好ましくは、第1距離L1の下限値が、5.0mm以上である。このような構成(2.1mm以上、好ましくは、5.0mm以上)にすることによって、例えば、ベース筐体110とLCD筐体120とが100度開かれた図4Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の近傍に位置する天板201による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。又、このような構成(20mm以下)にすることによって、ベース筐体110の厚みを十分に薄くすることができる。
【0048】
同様に、例えば、ベース筐体110とLCD筐体120とが180度開かれた図6Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の近傍に位置する天板201による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。又、このような構成(20mm以下)にすることによって、ベース筐体110の厚みを十分に薄くすることができる。
【0049】
実施形態によれば、ベース筐体110とLCD筐体120とが360度開かれた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの第2距離L2が、2.1mm以上であって20mm以下である。更に、好ましくは、第2距離L2の下限値が、5.0mm以上である。このような構成(2.1mm以上、好ましくは、5.0mm以上)にすることによって、例えば、図5Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波が、そのアンテナエレメント161の近傍に位置するLCDカバー121による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。又、このような構成(20mm以下)にすることによって、ベース筐体110の厚みを十分に薄くすることができる。
【0050】
実施形態によれば、ベース筐体110とLCD筐体120とが閉じられた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの第3距離L3が、2.1mm以上であって20mm以下である。更に、好ましくは、第3距離L3の下限値が、5.0mm以上である。このような構成(2.1mm以上、好ましくは、5.0mm以上)にすることによって、例えば、図7Bに示す状態において、アンテナエレメント161によって送受信される電波は、そのアンテナエレメント161の近傍に位置するLCDカバー121による遮蔽や吸収の影響が十分に軽減される。又、このような構成(20mm以下)にすることによって、ベース筐体110の厚みを十分に薄くすることができる。
【0051】
又、アンテナエレメント161を覆うカバー170を、ヒンジ130の外側に設けることによって、ベース筐体110のインサート成型を不要とした。この結果、ベース筐体110を廉価かつ短時間で製造することが可能になった。ここで、5G搭載のノートパソコンでは、WWANアンテナを4本搭載することが予想されている。この場合、WLANアンテナをヒンジ130の外側に実装することがスタンダードになる可能性が高い。
【0052】
又、アンテナ160を、ベース筐体110のヒンジ130の外側に実装した。ヒンジ130の外側への実装は、ヒンジ130にケーブルを通す必要がなく、LCD180の角度が0°や360°でも通信性能を確保できるため非常に好ましい。更に、ノートパソコン100の製造作業性が向上し、かつ、ノートパソコン100の使用時にアンテナケーブルの断線のリスクを無くすことができた。又、ノートパソコン100は、優れたデザインを保ちながら、インサート成型を不要とすることができたことから、製造コストとタクトを削減することができた。更に、ノートパソコン100を狭額縁化することができた。仮に、LCD筐体側にWiFi(登録商標)アンテナを実装する場合、アンテナ部のみプラスチック筐体とするためにインサート成型が必須となることから、製造コストとタクトが上昇し、かつ、アンテナの設置による広額縁化してしまう。
【0053】
又、アンテナ160の実装位置をベース筐体110のヒンジ130の外側に制限していることから、LCD180を閉じた場合(LCD角度0°)や、LCD180を360度開いた場合(LCD角度360°)のようなタブレットとしての使用する場合にも、アンテナ性能を維持することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。又、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0055】
アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161からベース筐体110の最端部までの第1距離L1は、アンテナエレメント161からベース筐体110の裏面側の脚部110fまでの距離であるが、アンテナエレメント161からベース筐体110の裏面側の表面部110aまでの距離にも相当する。
【符号の説明】
【0056】
100…ノートパソコン(電子機器)、110…ベース筐体(第1筐体)、110a…表面部(第1筐体の一方に相当する表面側の最端部)、110d…窪部、110e…端部、110f…脚部(第1筐体の他方に相当する裏面側の最端部)、110H…一辺、120…LCD筐体(第2筐体)、121…LCDカバー(金属からなる部材)、122…LCDマスク、130…ヒンジ(連結部材)、140…演算ユニット、150…入力ユニット、160…アンテナ、161…アンテナエレメント、161a…一面、161b…他面、170…カバー、170a…一側面部、170b…他側面部、180…LCD(表示ユニット)、200…金属テーブル、201…天板、202…支持部材、L1…第1距離(アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161からベース筐体110の他方に相当する裏面側の最端部までの距離)、L2…第2距離(ベース筐体110とLCD筐体120とが360度開かれた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの距離)、L3…第3距離(ベース筐体110とLCD筐体120とが閉じられた状態で、アンテナエレメント161と直交する方向において、アンテナエレメント161と対面するLCDカバー121までの距離)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B