IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鍵盤装置 図1
  • 特許-鍵盤装置 図2
  • 特許-鍵盤装置 図3
  • 特許-鍵盤装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
G10H1/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018191059
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020060652
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山村 建樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 良樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】高田 征英
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-046370(JP,A)
【文献】特開2010-160413(JP,A)
【文献】特開昭53-131020(JP,A)
【文献】特開平02-118598(JP,A)
【文献】実開昭53-160933(JP,U)
【文献】特開2008-083507(JP,A)
【文献】特開2016-057404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10B 1/00-3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール方向に並べて設けられる複数の鍵と、それら複数の鍵を支持するベース部材と、そのベース部材よりも剛性が高く形成され、前記スケール方向における複数の前記鍵の配置領域にわたって前記ベース部材に当接される振動伝達部材と、その振動伝達部材に固定され、前記鍵が押鍵されたことに基づいて振動する振動体と、を備えることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記ベース部材を支持するシャーシを備え、
前記振動伝達部材および前記振動体は、前記シャーシと非接触とされることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、前後方向で所定間隔を隔てた第1位置および第2位置の少なくとも2個所で前記シャーシに固定され、前記第1位置および前記第2位置の間の領域において前記ベース部材と前記シャーシとが非接触とされ、
前記振動伝達部材は、前記第1位置および前記第2位置の間の領域で前記ベース部材に固定されることを特徴とする請求項2記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記振動伝達部材は、前記第1位置および前記第2位置の間の略中間位置で前記ベース部材に固定されることを特徴とする請求項3記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記振動伝達部材は、その上下方向寸法および前後方向法寸法のそれぞれが前記ベース部材よりも小さく設定されることで前記スケール方向に長い長尺状に形成されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記振動伝達部材に片持ち状態で固定されるプレートを備え、
前記振動体は、前記プレートと前記振動伝達部材との固定位置から離れた位置で前記プレートに固定されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記ベース部材に軸支されつつ前記鍵に当接され、前記鍵の押鍵に伴って回転するハンマーを備え、
前記ベース部材と、前記ベース部材および前記鍵の後端側の接続位置とを通る前記振動伝達部材から前記鍵の前端側までの振動伝達経路よりも、前記ベース部材と、前記ベース部材に対する前記ハンマーの軸支位置と、前記ハンマーと、前記ハンマー及び前記鍵の当接位置とを通る前記振動伝達部材から前記鍵の前端側までの振動伝達経路が短く設定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項8】
前記振動伝達部材と、前記ベース部材に対する前記ハンマーの軸支位置と、前記ハンマー及び前記鍵の当接位置とのそれぞれは、前記ベース部材および前記鍵の後端側の接続位置よりも前記鍵の前端側に設けられることを特徴とする請求項7記載の鍵盤装置。
【請求項9】
前記ベース部材を支持するシャーシを備え、
前記ベース部材は、前後方向で所定間隔を隔てた第1位置および第2位置の少なくとも2個所で前記シャーシに固定され、前記第1位置および前記第2位置の間の領域において前記ベース部材と前記シャーシとが非接触とされ、
前記振動伝達部材と、前記ベース部材に対する前記ハンマーの軸支位置と、前記ハンマー及び前記鍵の当接位置とのそれぞれは、前記第1位置および前記第2位置の間の領域に配置されることを特徴とする請求項8記載の鍵盤装置。
【請求項10】
前記振動伝達部材は、前記ベース部材および前記鍵の後端側の接続位置よりも、前記ベース部材に対する前記ハンマーの軸支位置の近傍に設けられることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項11】
前記ベース部材は、前記スケール方向に複数並べて設けられ、
前記振動伝達部材は、複数の前記ベース部材どうしを連結することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項12】
押鍵された前記鍵の音域に応じた基本周波数の信号を出力する音源装置と、その音源装置から出力される前記信号のうちの所定以上の周波数の信号を減衰させて前記振動体に出力する減衰手段と、を備え、
前記振動伝達部材は、基本周波数が32Hz未満の音域に対応する前記鍵の配置領域から1000Hz以上の音域に対応する前記鍵の配置領域にわたって前記ベース部材に当接され、
前記振動体は、基本周波数が165Hz未満の音域に対応する前記鍵の配置領域において前記振動伝達部材に固定されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項13】
前記振動体は、基本周波数が32Hz以上の音域に対応する前記鍵の配置領域において前記振動伝達部材に1個が固定されることを特徴とする請求項12記載の鍵盤装置。
【請求項14】
前記振動伝達部材は、基本周波数が440Hz未満の音域に対応する前記鍵の配置領域のみにおいて前記ベース部材に当接されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤装置に関し、特に、スケール方向に並ぶ各鍵に振動体の振動を効率よく伝達できる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノの演奏時には、押鍵による弦の振動が鍵を介して演奏者に伝達される。この演奏感を模擬することを目的として、押鍵時に鍵を振動させるための振動体を鍵盤装置に設ける技術が知られている。例えば、特許文献1には、鍵を支持するフレーム(ベース部材)に振動発生器(振動体)が固定される鍵盤装置が記載されている。この鍵盤装置によれば、押鍵時に振動発生器が振動することにより、その振動がフレームを介して鍵に伝達されるので、演奏者にアコースティックピアノのような演奏感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-046370号公報(例えば、段落0013、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、剛性が比較的低い材料(例えば、樹脂材料)を用いてベース部材が形成される場合、スケール方向(鍵の並び方向)で振動体から離れた位置に配置される鍵に対し、振動体の振動が伝達され難くなる。即ち、スケール方向に並ぶ各鍵に振動体の振動を効率よく伝達することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スケール方向に並ぶ各鍵に振動体の振動を効率よく伝達できる鍵盤装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鍵盤装置は、スケール方向に並べて設けられる複数の鍵と、それら複数の鍵を支持するベース部材と、そのベース部材よりも剛性が高く形成され、前記スケール方向における複数の前記鍵の配置領域にわたって前記ベース部材に当接される振動伝達部材と、その振動伝達部材に固定され、前記鍵が押鍵されたことに基づいて振動する振動体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における鍵盤装置の正面斜視図である。
図2】鍵盤ユニットの底面斜視図である。
図3図1のIII-III線における鍵盤装置の断面図である。
図4】(a)は、鍵盤装置の電気的構成を概略的に示すブロック図であり、(b)は、アコースティックピアノや鍵盤装置の押鍵時に演奏者が感じる鍵振動の大きさを概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、鍵盤装置1の全体構成について説明する。図1は、一実施形態における鍵盤装置1の正面斜視図であり、図2は、鍵盤ユニット4の底面斜視図である。なお、図1では、鍵盤ユニット4を鍵盤テーブル3から取り外した状態が図示され、鍵盤テーブル3に鍵盤ユニット4を配置した際に鍵盤ユニット4の上面側を覆うための鍵盤蓋の図示を省略している。また、図1及び図2の矢印U方向、矢印D方向、矢印F方向、矢印B方向、矢印L方向、矢印R方向は、それぞれ鍵盤装置1の上方向、下方向、前方向、後方向、左方向、右方向を示しており、図3においても同様とする。
【0009】
図1に示すように、鍵盤装置1は、本体部2と、その本体部2の上下方向(矢印U-D方向)中央の前面から前方に突出する鍵盤テーブル3と、その鍵盤テーブル3に支持される鍵盤ユニット4と、を備える鍵盤楽器(電子ピアノ)として構成される。
【0010】
本体部2は、直方体状の筐体であり、本体部2の前面にはスピーカ20が設けられる。スピーカ20は、左右方向(矢印L-R方向)に所定間隔を隔てて一対に設けられ、それら一対のスピーカ20の上方側に鍵盤テーブル3が配置される。
【0011】
鍵盤テーブル3には、鍵盤ユニット4を収容するための下方に凹む凹状空間が形成され、その凹状空間の底面にシャーシ30が設けられる。シャーシ30は、左右方向に長い金属製の板状体であり、シャーシ30の上面に鍵盤ユニット4が固定される。
【0012】
鍵盤ユニット4は、シャーシ30に鍵盤ユニット4を固定するための一対の支持部材40と、それら一対の支持部材40に支持される樹脂製のベース部材50と、そのベース部材50に支持される複数(本実施形態では、88個)の鍵60と、それら複数の鍵60に後述する振動体72(図2参照)の振動を伝達するための振動伝達部材70と、を備える。
【0013】
支持部材40は、金属製の軽溝形鋼(断面コ字状のC形鋼)であり、各鍵60が並ぶ左右方向(スケール方向)に長い長尺状に形成される。なお、「長尺状」とは、前後方向(矢印F-B方向)寸法および上下方向寸法(物体の太さ)に比べて左右方向寸法(長さ)が十分に(例えば、20倍以上)長い棒状や筒状のものであり、以下の説明においても同様とする。一対の支持部材40には、ベース部材50の前端および後端部分がそれぞれ固定され、ベース部材50の上面に複数の鍵60が支持される。
【0014】
鍵60は、幹音を演奏するための複数(本実施形態では、52個)の白鍵61と、派生音を演奏するための複数(本実施形態では、36個)の黒鍵62と、から構成され、それら複数の白鍵61及び黒鍵62が左右方向に並べて設けられる。
【0015】
図2に示すように、ベース部材50は、左右方向(矢印L-R方向)に複数(本実施形態では、8個)並べて設けられる。それら複数のベース部材50のうち、最も高音側に位置するベース部材50(白鍵61を3鍵、黒鍵62を1鍵支持するもの)を除く他の7個のベース部材50は1オクターブ分の鍵60を支持している。
【0016】
複数のベース部材50は、一対の支持部材40及び振動伝達部材70によってそれぞれ連結されており、振動伝達部材70は、最も低音側(矢印L側)に位置するベース部材50の低音側の端部から最も高音側(矢印R側)に位置するベース部材50の高音側の端部にわたって(左右方向に沿って)ベース部材50に固定されている。即ち、振動伝達部材70は、複数のベース部材50の全てに当接した状態で設けられる。
【0017】
振動伝達部材70は、金属製の軽溝形鋼であり、左右方向に長い長尺状に形成される。振動伝達部材70には、プレート71を介して1個の振動体72が固定される。振動体72は、磁気回路やボイスコイル等を備え、例えば、スピーカの振動板を振動させるための駆動装置であり、公知の構成が採用可能であるのでその詳細な説明を省略する。
【0018】
プレート71は、その左右方向寸法が振動伝達部材70よりも短く、前後方向(矢印F-B方向)寸法がベース部材50よりも短い金属製の板状体である。プレート71は、その後端部分が振動伝達部材70の下面に固定され、プレート71の上面に振動体72が固定される。
【0019】
振動体72は、鍵60の押鍵に基づいて振動し、その振動体72の振動がプレート71を介して振動伝達部材70に伝達されることで振動伝達部材70も振動する。振動伝達部材70は、左右に並ぶ複数のベース部材50どうしを連結しており、そのベース部材50に各鍵60が支持されているので、左右に並ぶ各鍵60(各ベース部材50)に振動体72の振動が振動伝達部材70を介して伝達される。
【0020】
金属製の振動伝達部材70は、樹脂製のベース部材50に比べて剛性が高いため、振動体72の振動が振動伝達部材70を通じて左右方向に伝達されやすい。よって、振動体72をベース部材50に直接固定する場合に比べ、左右方向に並ぶ各鍵60に振動体72の振動を効率よく伝達することができる。即ち、振動体72から左右方向で離れた位置に配置される鍵60が押鍵された場合でも、その押鍵された鍵60に振動体72の振動を伝達させやすくすることができる。これにより、振動伝達部材70に固定される1個の振動体72の振動により、左右に並ぶ各鍵60を押鍵時に振動させることができる。
【0021】
また、プレート71の後端部分が振動伝達部材70に固定され、そのプレート71の前端側に振動体72が固定されることにより、振動伝達部材70とプレート71との固定部分から離れた位置で振動体72がプレート71に固定される。即ち、振動体72が固定されるプレート71は、振動伝達部材70に片持ち状態で支持されているため、振動体72の振動によってプレート71自体が振動しやすくなる。これにより、振動体72の振動をプレート71によって増幅させて振動伝達部材70に伝達することができるので、左右方向に並ぶ各鍵60に振動体72の振動を効率よく伝達することができる。
【0022】
また、振動伝達部材70は、左右に並ぶ各ベース部材50を連結しているので、各ベース部材50がそれぞれ別体に構成される場合であっても、各ベース部材50に支持される各鍵60に一挙に(ほぼ同時に)振動体72の振動を伝達させることができる。即ち、1本の振動伝達部材70及び1個の振動体72によって全ての鍵60に振動を伝達させることができるので、部品点数を低減できる。更に、各ベース部材50(各鍵60)に振動を伝達させる機能に加え、複数のベース部材50どうしを連結する機能を振動伝達部材70に兼用させることができるので、この点からも、部品点数を低減させることができる。
【0023】
ここで、単にベース部材50よりも剛性の高い部材によって振動を伝達させやすくすることを目的とするのであれば、振動伝達部材70を板状(例えば、ベース部材50よりも前後方向寸法が短く、ベース部材50に固定可能な程度の寸法の板状)に形成することも可能である。しかしながら、そのような構成では、振動体72の振動によって板状の振動伝達部材70がスピーカの振動板のように振動して可聴音が生じ、演奏時のノイズとなるおそれがある。
【0024】
これに対して本実施形態では、振動伝達部材70の上下方向寸法および前後方向法寸法のそれぞれがベース部材50よりも小さく設定され、振動伝達部材70が左右方向に長い長尺状(断面コ字形(C形)の棒状)に形成される。これにより、振動体72の振動で振動伝達部材70が振動板のように振動して可聴音が生じることを抑制できるので、演奏時にノイズが生じることを抑制できる。
【0025】
次いで、図3を参照して、鍵盤装置1の詳細構成について説明する。図3は、図1のIII-III線における鍵盤装置1の断面図である。なお、図3では、左右方向に直交する平面に沿って切断した断面を図示している。また、図3では、図面を簡素化するために、鍵盤装置1の一部の図示を省略している。
【0026】
図3に示すように、鍵盤装置1は、ベース部材50の回転軸51回りに回転可能に軸支されるハンマー80と、そのハンマー80の回転状態から鍵60の押鍵情報を検出するための押鍵センサ90と、を備える。
【0027】
なお、白鍵61及び黒鍵62に対し、それらをベース部材50により回転可能に軸支(支持)する構造、それらの回転をガイドする構造、及び、それらの押鍵または離鍵に連動してハンマー80を回転させる構造は、白鍵61及び黒鍵62の両者で実質的に同一である。よって、以下においては、白鍵61における構造についてのみ説明し、黒鍵62における構造の説明は省略するが、以下に説明する白鍵61の構成による作用・効果は、黒鍵62においても奏するものである。
【0028】
ベース部材50の後端(矢印B側の端部)側の上面に、白鍵61の後端部分が回転軸52回りに回転可能に軸支され、白鍵61の前後方向(矢印F-B方向)略中央部分の下面からは下方(矢印D側)に突出する突出部61aが形成される。突出部61aは、白鍵61の回転に伴う回転力をハンマー80に伝達するための部位であり、突出部61aの突出先端部分がハンマー80に当接される。
【0029】
ハンマー80は、白鍵61の押鍵時に押鍵の感触を付与するための質量体(押鍵の感触を付与できる程度の重量を有するもの)であり、ハンマー80と突出部61aとの当接部分よりも後方側に位置する回転軸51にハンマー80が軸支される。白鍵61が押鍵されると、白鍵61の突出部61aがハンマー80の上面に沿って摺動することでハンマー80が回転軸51回りに回転し(ハンマー80の前端側の部位が下方に変位し)、そのハンマー80の回転に伴う反力により、白鍵61を押鍵した際の感触(押鍵感触)が演奏者に付与される。
【0030】
押鍵センサ90は、ベース部材50の下面に板状体91を介して固定され、ハンマー80の前端側の下面に押鍵センサ90が対向配置される。白鍵61の押鍵または離鍵に伴ってハンマー80が回転軸51回りに回転する(ハンマー80の後端側の部位が下方や上方に変位する)ことにより、ハンマー80の後端側の部位によって押鍵センサ90がオン/オフされる。このスイッチのオン/オフ動作によって白鍵61の押鍵情報(ノート情報)が検出され、その検出結果に基づく楽音信号が外部に出力される。
【0031】
押鍵センサ90で白鍵61の押鍵情報が検出されると、その押鍵情報に基づいて振動体72が振動する。その振動体72の振動は、上述した通り、左右に並ぶ各ベース部材50に振動伝達部材70を介して伝達されるが、本実施形態では、そのベース部材50に伝達された振動を鍵60(白鍵61や黒鍵62)に効率良く伝達できる構成となっている。この構成について、以下に説明する。
【0032】
ベース部材50は、前後で所定間隔を隔てる一対の支持部材40の間に架け渡される態様で固定される。即ち、ベース部材50の前端側および後端側のそれぞれが支持部材40を介してシャーシ30に固定されており、前後方向における一対の支持部材40の間の領域においては、シャーシ30とベース部材50とが非接触の状態で(上下に所定間隔を隔てて)配置される。よって、ベース部材50に振動が伝達されると、ベース部材50の前後方向略中央部分が振動の腹となり、ベース部材50の前後方向略中央部分で振動の振幅が最大となりやすい。
【0033】
本実施形態では、ベース部材50の前後方向略中央の下面に振動伝達部材70が固定され、振動伝達部材70及び振動体72(プレート71)はシャーシ30と非接触の状態で配置される。これにより、ベース部材50の振動の腹となる部分に振動体72からの振動を伝達できるので、その振動によってベース部材50自体が振動しやすくなる(振動体72の振動をベース部材50の腹の部分で増幅させることができる)。よって、振動伝達部材70を介してベース部材50に伝達される振動体72の振動を白鍵61に効率良く伝達することができる。
【0034】
なお、ベース部材50の「前後方向略中央」とは、ベース部材50の前後方向中央から前後の所定領域内(例えば、ベース部材50の前後方向寸法の25%の領域内)である。その領域内、即ち、少なくともシャーシ30に対するベース部材50の前後の固定位置の間(一対の支持部材40の間)の領域に振動伝達部材70を配設する構成であれば、振動体72の振動によってベース部材50自体を振動させやすくできる。
【0035】
また、振動伝達部材70及び振動体72(プレート71)はシャーシ30と非接触の状態で配置されるので、振動体72の振動が板状のシャーシ30に伝達されることを抑制できる。これにより、振動体72の振動がシャーシ30側に分散されることや、振動体72の振動で板状のシャーシ30がスピーカの振動板のように振動することを抑制できる。よって、例えば、振動伝達部材70や振動体72(プレート71)がシャーシ30に接触して設けられる場合に比べ、振動体72の振動を振動伝達部材70を介して白鍵61に効率よく伝達できると共に、板状のシャーシ30の振動に起因するノイズの発生を抑制できる。
【0036】
また、ベース部材50は、防振部材(例えば、ゴム状弾性体)を介することなくシャーシ30(支持部材40)に固定されている。これにより、ベース部材50の振動の節となる前後の両端側の部位をシャーシ30に強固に固定できる。よって、シャーシ30に強固に固定される前後の両端側の部位よりも比較的剛性が低いベース部材50の前後方向中央部分(振動の腹となる部位)に振動伝達部材70を設けることにより、ベース部材50自体をより効果的に振動させることができる。よって、振動伝達部材70を介してベース部材50に伝達される振動体72の振動を白鍵61に効率良く伝達することができる。
【0037】
この一方で、ベース部材50の後端部分がシャーシ30に強固に固定されているため、ベース部材50の後端側で軸支される白鍵61の後端部分は振動し難い構造となっている。また、ベース部材50に伝達される振動が回転軸52を介して白鍵61の前端側の押鍵可能面(押鍵時に演奏者が振動を感じる面)に伝達される構成であると、その振動伝達経路が長くなり、白鍵61の押鍵時に振動体72の振動を感じ難くなる。なお、押鍵可能面とは、演奏者が押すことで鍵60の回転が可能となる面であり、白鍵61においては黒鍵62(白鍵61の上面から突出する部位)の後端よりも前方側に位置する上面が押鍵可能面に相当し、黒鍵62においては白鍵61の上面から突出する部位の上面が押鍵可能面に相当する。
【0038】
これに対して本実施形態では、ベース部材50に軸支されつつ白鍵61に当接されるハンマー80を備えるので、振動伝達部材70からの振動がハンマー80を介して白鍵61の押鍵可能面(前端側)に伝達されやすくなっている。
【0039】
即ち、ベース部材50と、白鍵61の回転軸52とを通る振動伝達部材70から白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路よりも、ベース部材50と、ハンマー80の回転軸51と、ハンマー80と、ハンマー80及び突出部61aの当接位置とを通る振動伝達部材70から白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路が短く形成される。
【0040】
より具体的には、振動伝達部材70と、ハンマー80の回転軸51と、ハンマー80及び突出部61aの当接位置とのそれぞれは、白鍵61の回転軸52よりも前方側に位置しているので、振動伝達部材70から白鍵61の回転軸52を介した白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路に比べ、ハンマー80を介した場合の方が振動伝達部材70から白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路を短く形成しやすい。
【0041】
また、振動伝達部材70は、白鍵61の回転軸52よりもハンマー80の回転軸51の近傍に設けられ、振動伝達部材70から白鍵61の回転軸52までの振動伝達経路よりも、振動伝達部材70からハンマー80の回転軸51までの振動伝達経路が短く形成される。これにより、ベース部材50及びハンマー80を介した白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路を短くできる。
【0042】
ここで、ハンマー80の回転に伴う押鍵感触は、ハンマー80と白鍵61(突出部61a)との当接位置から回転軸51までの長さ、回転軸51からハンマー80の後端までの長さ、若しくは、ハンマー80の重量で調節が可能であるため、回転軸51の配置に応じてハンマー80の重量を調節すれば所望の押鍵感触を得ることができる。即ち、本実施形態では、振動伝達部材70よりも前方側で白鍵61(突出部61a)とハンマー80とが当接する構成を採用しているが、例えば、ハンマー80の回転軸51を振動伝達部材70よりも後方側に配置した場合であっても、ハンマー80の重量を増加させることで所望の押鍵感触を付与することは可能である。
【0043】
しかしながら、ハンマー80の回転軸51を振動伝達部材70よりも後方側に配置すると、振動伝達部材70からハンマー80の回転軸51までの振動伝達経路が白鍵61の後端側に迂回するため、その分、白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路が長くなる。
【0044】
これに対して本実施形態では、前後方向において、ハンマー80及び白鍵61(突出部61a)の当接位置と、振動伝達部材70との間の領域にハンマー80の回転軸51が配置されている。これにより、振動伝達部材70からハンマー80を介した白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路が白鍵61の後端側に迂回しないので、かかる振動伝達経路をより短く形成することができる。
【0045】
このように、ハンマー80を介した白鍵61の押鍵可能面までの振動伝達経路を短くすることにより、振動体72からベース部材50に伝達される振動を、ベース部材50及びハンマー80を介して白鍵61の押鍵可能面に効率よく伝達できる。
【0046】
また、上述した通り、ベース部材50の前後の両端部分がシャーシ30に固定され(その固定部分の間の領域においてベース部材50とシャーシ30とが非接触とされ)、ベース部材50の前後方向略中央部分で振動の振幅が最大となりやすくなっているが、本実施形態では、その振幅が最大となりやすい位置に振動伝達部材70及びハンマー80がそれぞれ配置される。
【0047】
即ち、振動伝達部材70と、ハンマー80の回転軸51と、ハンマー80及び白鍵61(突出部61a)の当接位置とのそれぞれは、白鍵61の回転軸52よりも前方側であって、シャーシ30に対するベース部材50の前後の固定部分(一対の支持部材40)の間の領域に配置されている。
【0048】
これにより、ベース部材50の振動の腹となる部分に振動体72からの振動を伝達し、その振動をベース部材50の腹の部分で増幅させると共に、その増幅された振動を回転軸51を介してハンマー80に伝達させることができる。ハンマー80はベース部材50の腹(比較的剛性の低い部位)に軸支されるので、ベース部材50から伝達された振動によってハンマー80自体も振動しやすい。そのハンマー80の振動は、白鍵61の回転軸52よりも前方側に位置する突出部61aを介して白鍵61の押鍵可能面に伝達されるので、振動体72からベース部材50に伝達された振動を、ベース部材50及びハンマー80を介して白鍵61の押鍵可能面に効率よく伝達できる。
【0049】
このように、振動伝達部材70からベース部材50に伝達された振動体72の振動を白鍵61の押鍵可能面に効率よく伝達できれば、振動体72から左右方向で離れた位置に配置される白鍵61が押鍵された場合でも、その白鍵61を振動させやすくすることができる。よって、振動伝達部材70に固定される1個の振動体72の振動により、左右に並ぶ各鍵60を振動させることができる。
【0050】
次いで、図4(a)を参照して、鍵盤装置1の電気的構成について説明する。図4(a)は、鍵盤装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0051】
図4(a)に示すように、鍵盤装置1は、鍵盤ユニット4の押鍵センサ90で検出された押鍵情報に基づいて楽音信号を生成する音源装置100を備えている。押鍵センサ90で検出された押鍵情報には、鍵60(図3参照)が押鍵された際の速度(加速度)の情報が含まれており、その速度が速いほど音源装置100で生成される楽音信号のレベルが大きくなるように構成されている。
【0052】
音源装置100から出力される楽音信号は、アンプ110を介してスピーカ20に出力される一方、音源装置100から出力される楽音信号は信号加工部120及びアンプ130を介して振動体72にも出力される。
【0053】
即ち、振動体72は、音源装置100から出力される楽音信号に基づいて振動するように構成されている。音源装置100が出力する楽音信号は、押鍵された鍵60の音名に対応した基本周波数の信号であるため、押鍵された鍵60が低音側のものであるほど低周波の信号となり、押鍵された鍵60が高音側のものであるほど高周波の信号となる。なお、基本周波数とは、鍵60の音名に対応する基音の周波数である。
【0054】
信号加工部120は、音源装置100から出力される楽音信号を加工するための電子回路あるいはDSPなどの信号処理装置であり、音源装置100から出力される楽音信号を減衰するローパスフィルタを備えている。
【0055】
信号加工部120は、音源装置100から出力される楽音信号の基本周波数が所定未満(本実施形態では、440Hz未満)である場合には、その楽音信号のレベルを減衰することなくアンプ130(振動体72)に出力する一方、音源装置100から出力される楽音信号の基本周波数が所定以上(本実施形態では、440Hz以上)である場合には、その楽音信号のレベルを減衰してアンプ130(振動体72)に出力する。
【0056】
よって、押鍵された鍵60が所定より低音(440Hz未満の音名に対応するもの)である場合には、音源装置100から出力される楽音信号に基づいて振動体72を振動させる一方、押鍵された鍵60が所定以上高音である(440Hz以上の音名に対応するものである)場合には、振動体72が振動することを抑制できる。これにより、アコースティックピアノの演奏感に近づけることができるという効果が得られるが、この効果について図4(b)を参照して説明する。
【0057】
図4(b)は、アコースティックピアノや鍵盤装置1の押鍵時に演奏者が感じる鍵振動の大きさを概略的に示すグラフである。なお、図4(b)は、押鍵時に感じる鍵振動の大きさを各鍵毎にプロットしたものであり、縦軸は演奏者が感じる鍵振動の大きさを示し、横軸は押鍵された鍵60の音名に対応する基本周波数(Hz)を示している。また、図4(b)の破線で示すグラフがアコースティックピアノの鍵を押鍵した際に演奏者が感じる鍵振動の大きさを示したものであり、実線で示すグラフが鍵盤装置1の鍵60を押鍵した際に演奏者が感じる鍵振動の大きさを示したものである。
【0058】
図4(b)に示すように、アコースティックピアノの鍵を単独で押鍵した場合、低音側の鍵が押鍵されると押鍵時に感じる振動が大きくなり、高音側の鍵が押鍵されると押鍵時に感じる振動が小さくなる(ほぼ無くなる)。
【0059】
より具体的には、32Hz以上165Hz未満の音名(C1~E3)に対応する鍵が押鍵された場合には、比較的強い振動が感じられ、165Hz以上350Hz未満の音名(F3~F4)に対応する鍵が押鍵された場合には、基本周波数が32Hz以上165Hz未満の音名に対応する鍵が押鍵された場合に比べ、若干弱い中程度の振動が感じられる。
【0060】
即ち、アコースティックピアノの鍵を押鍵した場合に演奏者が感じる振動は、基本周波数が32Hz以上165Hz未満の音域においてピークを有しており、その音域よりも高音側の鍵が押鍵されるほど感じる振動が小さくなる。この一方で、押鍵された鍵が高音側になるにつれて徐々に(比例的に)感じる振動が小さくなるのではなく、基本周波数が350Hz以上440Hz未満の音名(F#4~G#4)に対応する鍵では押鍵時に感じる振動が急激に小さくなり、基本周波数が440Hz以上の音名(A4以上)に対応する鍵になると押鍵時に感じる振動がほぼゼロになる。
【0061】
これに対して本実施形態では、基本周波数が55以上66Hz未満の音名(A1~C2)に対応する鍵60が配置される領域において振動伝達部材70に振動体72(プレート71)が固定され(図2参照)、音源装置100から出力される楽音信号の基本周波数が440Hz以上である場合、即ち、基本周波数が440Hz以上の音名(A4以上)に対応する鍵60が押鍵された場合には、振動体72の振動を抑制するように構成されている。
【0062】
これにより、基本周波数が440Hz未満の音名に対応する鍵60が押鍵された場合には、その押鍵された鍵60を比較的大きく振動させることができる一方、基本周波数が440Hz以上の音名に対応する鍵60が押鍵された場合には、演奏者が感じる振動をほぼゼロにすることができる。よって、アコースティックピアノの演奏感に近づけることができる。
【0063】
また、440Hz未満の音名に対応する鍵60と、440Hz以上の音名に対応する鍵60とが同時に押鍵された場合には、440Hz未満の音名に対応する鍵60の押鍵に基づく楽音信号で(即ち、440Hz未満の基本周波数で)振動体72が振動する。この場合、振動伝達部材70に沿って左右に伝達される振動は、基本周波数が低いほど減衰され難いため、440Hz未満の基本周波数での振動体72の振動は、440Hz以上の高音域の鍵60に振動伝達部材70を介して伝達される。
【0064】
即ち、振動伝達部材70は、低音側の音域(例えば、32Hz未満の音名(B0以下)に対応する鍵60の配置領域)から高音側の音域(例えば、1000Hz以上の音名(C6以上)に対応する鍵60の配置領域)にわたってベース部材50に固定(当接)されているので、低音側の鍵60と高音側の鍵60とが同時に押鍵された場合には、低音側の鍵60の押鍵に基づく振動体72の振動を、振動伝達部材70を介して高音側の鍵60にも伝達させることができる。よって、演奏者の両手に振動を感じさせることができるので、アコースティックピアノの演奏感により近づけることができる。
【0065】
また、基本周波数が55以上66Hz未満の音名に対応する鍵60の配置領域内で、振動伝達部材70に1個の振動体72(プレート71)が固定される(振動伝達部材70とプレート71とが当接される)ので、アコースティックピアノで最も振動が感じられすい低音側の領域に振動体72を配置し、その領域内に配置される鍵60を効率よく振動させることができる。即ち、1個の振動体72の振動によってアコースティックピアノの押鍵時の振動を模擬することができるので、製品コストを低減できる。
【0066】
ここで、高音側の(例えば、440Hz以上の音名に対応する)鍵60が単独で押鍵された場合に振動を感じ難くしつつ、低音側の(例えば、440Hz未満の音名に対応する)鍵60と高音側の鍵60とが同時に押鍵された場合に高音側の鍵60でも振動を感じさせる方法として、音源装置100とは別の信号生成部を振動体72用に設け、低音側の鍵60の押鍵時のみ(高音側の鍵60の押鍵を無視して)、かかる信号生成部から振動体72に信号を出力させることも可能である。しかしながら、そのような構成では、低音側または高音側のいずれの鍵60が押鍵されたのかを判定する手段を設ける必要があると共に、振動体72用の信号生成部を音源装置100とは別に設ける必要があり、鍵盤装置1の製品コストが増大する。
【0067】
これに対して、本実施形態では、音源装置100(スピーカ20で放音するための楽音信号を出力するもの)を利用して振動体72を振動させているので、音源装置100とは別の信号生成部を振動体72用に設けることを不要にできる。更に、音源装置100から出力される信号の基本周波数が鍵60の音名毎に相違している点を利用することにより、信号加工部120にローパスフィルタを設けるだけで、高音側の鍵60の押鍵時に振動体72を振動させないようにすることができる。即ち、低音側または高音側のいずれの鍵60が押鍵されたのかを判定する手段を不要にできる。よって、鍵盤装置1の製品コストを低減できる。
【0068】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0069】
上記実施形態では、鍵盤装置1が電子ピアノとして構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、他の電子楽器(例えば、電子オルガン)においても上記実施形態の技術思想を適用できる。
【0070】
上記実施形態では、複数のベース部材50が左右方向に並べて設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、1部材からなるベース部材50に各鍵60(88鍵)を支持させる構成でも良い。
【0071】
上記実施形態では、ベース部材50が1オクターブ分の鍵60を支持する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベース部材50が1個の鍵60を支持する(鍵60毎にベース部材50を設ける)構成でも良い。
【0072】
上記実施形態では、ベース部材50に対して鍵60(白鍵61)が回転軸(回転軸52)回りに回転可能に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベース部材50に対して鍵60がヒンジ(板状の部材)を介して連結され、そのヒンジの弾性変形によって鍵60が変位(回転)する構成でも良い。
【0073】
上記実施形態では、ベース部材50に対して鍵60(白鍵61)の後端側が軸支される場合を説明したが、鍵(白鍵61)の突出部(突出部61a)よりも後方側であれば、鍵の軸支位置は適宜設定できる。よって、例えば、鍵60の前後方向略中央部分をベース部材50に軸支する構成でも良い。
【0074】
上記実施形態では、ベース部材50の前後の両端側(2点)がシャーシ30に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベース部材50のシャーシ30に対する固定位置は、1個所(ベース部材50の全体がシャーシ30に接触する構成)でも良く、3個所以上でも良い。シャーシ30に対するベース部材50の固定位置が少なくとも2個所以上ある構成であれば、その固定個所の間の領域(ベース部材50の振動の腹となる部位)に振動伝達部材70を固定することが好ましい。これにより、振動体72の振動をベース部材50で増幅させることができる。
【0075】
上記実施形態では、ベース部材50が支持部材40を介してシャーシ30に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一対の支持部材40を省略し、ベース部材50をシャーシ30に直接固定しても良い。
【0076】
上記実施形態では、最も低音側に位置するベース部材50の低音側の端部から最も高音側に位置するベース部材50の高音側の端部にわたって振動伝達部材70が固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、振動伝達部材70を高音側の一部の領域で非形成とし、低音側の領域のみに振動伝達部材70を設ける構成でも良い。この場合には、基本周波数が440Hz未満の音域に対応する鍵60の配置領域のみにおいて、ベース部材50に振動伝達部材70が当接されるように配置することが好ましい。これにより、振動体72の振動が振動伝達部材70を介して高音側の(基本周波数が440Hz以上の音域に対応する)鍵60に伝達されることをより効果的に抑制できる。
【0077】
上記実施形態では、ベース部材50に対する振動伝達部材70の固定方法(当接位置)の詳細な説明を省略したが、少なくとも複数のベース部材50のそれぞれに振動伝達部材70が当接している(ベース部材50に支持される鍵60に振動を伝達できる)構成であれば、ベース部材50に対する振動伝達部材70の固定はねじによる締結や接着剤による接着等、適宜設定できる。また、その固定によるベース部材50と振動伝達部材70との当接位置は左右方向で連続していても断続的であっても良い。
【0078】
上記実施形態では、振動伝達部材70がベース部材50の下面に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、振動伝達部材70(プレート71や振動体72)がシャーシ30と非接触とされる位置であれば、ベース部材50に対する振動伝達部材70の固定位置は適宜設定できる。よって、例えば、ベース部材50の後面、前面、若しくは、上面(ベース部材50と鍵60との間の領域)に振動伝達部材70を固定しても良い。
【0079】
上記実施形態では、振動伝達部材70がベース部材50の前後方向略中央部分に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベース部材50の前後方向中央よりも前方側や後方側に振動伝達部材70を固定する構成でも良い。
【0080】
上記実施形態では、振動伝達部材70が金属製である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、少なくともベース部材50よりも剛性の高いものであれば金属以外の材料(例えば、ベース部材50よりも剛性の高い樹脂材料や、樹脂材料に金属材料をインサート成形したもの)を用いてベース部材50を形成しても良い。
【0081】
上記実施形態では、振動伝達部材70が左右方向に長い棒状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シャーシ30のような左右方向に長い板状に振動伝達部材70を形成しても良い。この場合には、少なくともシャーシ30(ベース部材50)よりも前後方向寸法が短い板状に振動伝達部材70を形成することにより、シャーシ30に振動体72を固定する場合に比べ、振動体72の振動で振動伝達部材70が振動板のように振動することを抑制できる。
【0082】
上記実施形態では、振動伝達部材70が左右方向に沿った直線状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、複数の鍵60の配設領域にわたって振動伝達部材70がベース部材50に当接される構成であれば、振動伝達部材70の形状は限定されない。よって、例えば、左右に延びる振動伝達部材70の一部が前後に屈曲(湾曲)する構成でも良い。
【0083】
上記実施形態では、振動伝達部材70が断面コ字状(C形)に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、角柱や円柱状に振動伝達部材70を形成しても良く、中実や中空状に振動伝達部材70を形成しても良い。
【0084】
上記実施形態では、振動伝達部材70に1個の振動体72が固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、振動伝達部材70に複数の振動体72を固定する構成でも良い。
【0085】
上記実施形態では、振動体72がプレート71を介して振動伝達部材70に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、振動体72を振動伝達部材70に直接固定する構成でも良い。
【0086】
上記実施形態では、基本周波数が55以上66Hz未満の音名に対応する鍵60が配置される領域において振動伝達部材70に振動体72(プレート71)が固定される場合を説明した。かかる範囲に限られるものではないが、基本周波数が32Hz以上165Hz未満の音名に対応する鍵60が配置される領域において、振動伝達部材70に振動体72(プレート71)を固定することが好ましい。
【0087】
即ち、基本周波数が32Hz未満や165Hz以上の音名に対応する鍵60の配置領域で振動伝達部材70に振動体72(プレート71)が固定される構成であると、振動体72(プレート71)の固定位置がアコースティックピアノにおいて最も振動が感じられる領域(振動のピーク)から遠ざかるため、1個の振動体72でアコースティックピアノの演奏感(図4(b)に示す押鍵時に感じる振動の分布)を模擬することが困難となる。これに対して、基本周波数が32Hz以上165Hz未満の音名に対応する鍵60が配置される領域内で振動伝達部材70に振動体72(プレート71)を固定する(振動伝達部材70とプレート71とを当接させる)ことにより、1個の振動体72でアコースティックピアノの演奏感に近づけることができる。
【0088】
上記実施形態では、音源装置100の楽音信号に基づいて振動体72を振動させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、音源装置100とは別の信号生成部を振動体72用に設け、基本周波数が440Hz未満の音域に対応する鍵60の押鍵時のみ(440Hz以上の音域に対応する鍵60の押鍵は無視して)信号生成部から振動体72に信号を出力することで振動体72を振動させる構成でも良い。
【0089】
上記実施形態では、押鍵された鍵60毎に異なる基本周波数で振動体72を振動させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、押鍵された鍵60の音域に関わらず、常に一定の基本周波数で振動体72を振動させる構成でも良い。
【0090】
上記実施形態では、ハンマー80の回転軸51よりも前方側でハンマー80と鍵60(白鍵61の突出部61a)とが当接される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ハンマー80の回転軸51よりも後方側でハンマー80と鍵60とが当接される構成、即ち、上記実施形態におけるハンマー80の向きを前後逆向きにしても良い。
【0091】
上記実施形態では、ベース部材50に鍵60及びハンマー80が軸支され、そのハンマー80に鍵60が当接されることで押鍵感触が付与される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ハンマー80を省略しても良い。ハンマー80を省略する場合には、ハンマー80に替えて弾性部材(例えば、コイルスプリングや板バネ)によって鍵60に押鍵感触を付与する(鍵60を初期位置に復帰させる)構成でも良い。この場合には、かかる弾性部材を鍵60の回転軸よりも前方側(振動伝達部材70の近傍)に配置することにより、振動伝達部材70からの振動を弾性部材を介して鍵60の押鍵可能面に効率よく伝達できる。
【符号の説明】
【0092】
1 鍵盤装置
30 シャーシ
50 ベース部材
60 鍵
70 振動伝達部材
71 プレート
72 振動体
80 ハンマー
100 音源装置
120 信号加工部(減衰手段)
図1
図2
図3
図4