(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】掘削深さ測定装置、掘削深さ測定方法、および掘削深さ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2018239626
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大森 琢史
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-291076(JP,A)
【文献】特開平04-106229(JP,A)
【文献】特開2008-106431(JP,A)
【文献】特開2016-160741(JP,A)
【文献】特開平10-317416(JP,A)
【文献】特開2016-014601(JP,A)
【文献】特開2005-121343(JP,A)
【文献】特開2017-227035(JP,A)
【文献】特開2015-087370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機械に着脱自在に取り付けられる掘削深さ測定装置であって、
レーザ光を出力し当該レーザ光の照射距離Lを計測するレーザ距離計と、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射方向をユーザ操作に応じて変更する照射方向変更手段と、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射傾斜角θを検出する傾斜センサと、
地面から前記レーザ光の照射元までの高さである照射地上高H1を入力する照射地上高入力手段と、
前記レーザ距離計により計測されたレーザ光の照射距離Lと前記傾斜センサにより検出された当該レーザ光の照射傾斜角θと前記照射地上高入力手段により入力された当該レーザ光の照射地上高H1とに基づいて掘削深さH3を演算する掘削深さ演算手段と、
表示部と、
前記掘削深さ演算手段により演算された掘削深さH3を前記表示部に表示させる掘削深さ表示制御手段と、
を備えた掘削深さ測定装置。
【請求項2】
前記掘削深さ表示制御手段は、ユーザ操作に応じて入力された目標掘削深さH2と前記掘削深さ演算手段により演算された掘削深さH3とを前記表示部に対比して表示させる目標対比表示制御手段を有する、
請求項1に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項3】
前記目標掘削深さH2に前記掘削深さH3が到達したか否かを判定する目標対比判定手段と、
前記目標対比判定手段により前記目標掘削深さH2に前記掘削深さH3が到達したと判定された場合に当該掘削深さH3が当該目標掘削深さH2に到達した旨をユーザに報知する掘削終了報知手段と、
を備えた請求項2に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項4】
音声出力部を備え、
前記掘削終了報知手段は、前記目標対比判定手段により前記目標掘削深さH2に前記掘削深さH3が到達したと判定された場合に、
前記掘削深さH3が前記目標掘削深さH2に到達した旨のメッセージを前記表示部に表示させるメッセージ表示制御手段と、
前記掘削深さH3が前記目標掘削深さH2に到達した旨のアラーム音を前記音声出力部に出力させるアラーム音出力制御手段とを有する、
請求項3に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項5】
前記照射方向変更手段は、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射方向をユーザ操作に応じて指示する照射方向操作部と、
前記照射方向操作部によるレーザ光の照射方向の指示に応じて、前記レーザ距離計の本体の向きを変更し当該レーザ光の照射方向を変更する照射方向可動部とを有する、
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項6】
前記掘削機械の車体に着脱自在に取り付けられるレーザ照射ユニットと、
前記掘削機械の室内に着脱自在に取り付けられ、前記レーザ照射ユニットとの通信機能を有する制御ユニットとを備え、
前記レーザ照射ユニットは、前記レーザ距離計と、前記傾斜センサと、前記照射方向可動部とを備え、
制御ユニットは、前記照射方向操作部と、前記掘削深さ演算手段と、前記表示部と、前記掘削深さ表示制御手段とを備える、
請求項5に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項7】
前記照射地上高入力手段は、地面から前記レーザ光の照射元までの高さである照射地上高H1をユーザ操作に応じて入力する入力部であり、
前記入力部は、前記制御ユニットに備えられる、
請求項6に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項8】
前記照射地上高入力手段は、前記レーザ照射ユニットに備えられ、地面からの高さを前記照射地上高H1として検出する地上高センサである、
請求項6に記載の掘削深さ測定装置。
【請求項9】
レーザ光を出力し当該レーザ光の照射距離Lを計測するレーザ距離計と、前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射傾斜角θを検出する傾斜センサと、表示部と、プロセッサとを備え、掘削機械に着脱自在に取り付けられる掘削深さ測定装置の前記プロセッサにより、
地面から前記レーザ光の照射元までの高さである照射地上高H1を入力し、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射方向をユーザ操作に応じて変更するように制御し、
前記レーザ距離計により計測されたレーザ光の照射距離Lと前記傾斜センサにより検出された当該レーザ光の照射傾斜角θと前記入力された当該レーザ光の照射地上高H1とに基づいて掘削深さH3を演算し、
前記演算された掘削深さH3を前記表示部に表示させる、
ようにした掘削深さ測定方法。
【請求項10】
レーザ光を出力し当該レーザ光の照射距離Lを計測するレーザ距離計と、前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射傾斜角θを検出する傾斜センサと、表示部と、プロセッサとを備え、掘削機械に着脱自在に取り付けられる掘削深さ測定装置の前記プロセッサを、
地面から前記レーザ光の照射元までの高さである照射地上高H1を入力する照射地上高入力手段、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射方向をユーザ操作に応じて変更するように制御する照射方向変更手段、
前記レーザ距離計により計測されたレーザ光の照射距離Lと前記傾斜センサにより検出された当該レーザ光の照射傾斜角θと前記照射地上高入力手段により入力された当該レーザ光の照射地上高H1とに基づいて掘削深さH3を演算する掘削深さ演算手段、
前記掘削深さ演算手段により演算された掘削深さH3を前記表示部に表示させる掘削深さ表示制御手段、
として機能させるための掘削深さ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、掘削作業を行なう際に使用される掘削深さ測定装置、掘削深さ測定方法、および掘削深さ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建柱、地中電路工事などで比較的大規模な掘削作業を行なう際には、バックホウ(掘削機械)を使用して掘削を行なうことが一般的である。
【0003】
この掘削作業では、目標とする掘削深さになるように、当該掘削作業を行ないながら現在の掘削深さを確認する必要があるが、
バックホウを扱いながら掘削深さを確認することは容易でないため、一旦作業を中断して測定したり、別の作業員(測定員)が標尺等を用いて測定する。
【0004】
従って、一般的な掘削作業の手順としては、地面上の掘削対象地点をバックホウにより適度に掘削する都度、測定員が掘削深さを測定して確認し、目標とする掘削深さに対して確認した掘削深さに過不足があれば、再度掘削したり埋め戻したりして繰り返し掘削深さを測定することが求められる。
【0005】
このため、従来の掘削作業では、掘削と掘削深さの測定とを交互に行なう必要があり、作業効率が悪いばかりでなく、掘削作業員(バックホウのオペレータ)とは別の測定員が必要となれば、作業コストの増加を招くこととなる。
【0006】
また、掘削深さを測定する際に、その測定員は、バックホウによる掘削箇所に近付く必要があるため、動いているバックホウへの接触、掘削箇所への転落など、労働災害が発生する恐れがある。
【0007】
そこで、測定員を要することなく、例えば、掘削機のオペレータが、その掘削作業を行ないながら、目標とする掘削深さや掘削形状を自動で確認することのできる幾つかの装置やシステムが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平04-106229号公報
【文献】特開2017-071914号公報
【文献】特開2010-185280号公報
【文献】特開2006-194823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目標とする掘削形状や掘削深さを自動で確認することのできる従来の装置やシステムは、掘削機械のアームやバケットの刃先など、複数の可動部分に各種のセンサを溶着などにより固定的に取り付ける必要があったり、離れた場所にある管理装置とクラウドを介して通信する必要があったりするため、掘削時の状況によりセンサの破損を招いたり、大掛かりなシステムを要する問題がある。
【0010】
また、従来の装置やシステムは、掘削機械への固定的な据え付けを要するため、リースした掘削機械を使用して掘削作業を行なうことが多い昨今の工事では、当該装置やシステムを容易に利用することができない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、測定員を要さずに、例えば、掘削機のオペレータがその掘削作業を行ないながら掘削深さを確認できるばかりでなく、掘削機械に容易に着脱して利用することが可能になる掘削深さ測定装置、掘削深さ測定方法、および掘削深さ測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の掘削深さ測定装置は、
掘削機械に着脱自在に取り付けられる掘削深さ測定装置であって、
レーザ光を出力し当該レーザ光の照射距離Lを計測するレーザ距離計と、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射方向をユーザ操作に応じて変更する照射方向変更手段と、
前記レーザ距離計により出力されるレーザ光の照射傾斜角θを検出する傾斜センサと、
地面から前記レーザ光の照射元までの高さである照射地上高H1を入力する照射地上高入力手段と、
前記レーザ距離計により計測されたレーザ光の照射距離Lと前記傾斜センサにより検出された当該レーザ光の照射傾斜角θと前記照射地上高入力手段により入力された当該レーザ光の照射地上高H1とに基づいて掘削深さH3を演算する掘削深さ演算手段と、
表示部と、
前記掘削深さ演算手段により演算された掘削深さH3を前記表示部に表示させる掘削深さ表示制御手段と、
を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の掘削深さ測定装置10を取り付けた掘削機械(バックホウなど)1による掘削作業の状態を示す図。
【
図3】掘削深さ測定装置10の電子回路の構成を示すブロック図。
【
図4】掘削深さ測定装置10の掘削深さ測定プログラム36aに従った掘削深さ測定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の掘削深さ測定装置、掘削深さ測定方法、および掘削深さ測定プログラムについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、実施形態の掘削深さ測定装置10を取り付けた掘削機械(バックホウなど)1による掘削作業の状態を示す図である。
【0016】
図2は、掘削深さ測定装置10の外観構成を示す図である。
【0017】
掘削深さ測定装置10は、レーザ照射ユニット20と、制御ユニット30とを備えて構成される。
【0018】
レーザ照射ユニット20は、レーザ距離計21、当該レーザ距離計21の本体(すなわちレーザ光Oの照射方向)を小型モータなどを動力源として水平および垂直方向に回動するための照射方向可動部22(照射方向変更手段)、当該照射方向可動部22の基部となる可動基部23、当該可動基部23を掘削機械1の車体に取り付けるための車体着脱基部24を有する。
【0019】
レーザ照射ユニット20は、車体着脱基部24の底面に設けられた磁石部材20Mの磁力により掘削機械1の車体(例えば、屋根前部)に着脱自在に取り付けられて使用される。
【0020】
レーザ距離計21は、レーザ光Oを出力し、当該レーザ距離計21からレーザ光Oの照射点までの距離(レーザ照射距離)Lを計測する。当該レーザ距離計21には、水平面(地面G)に対するレーザ光Oの照射傾斜角(レーザ照射傾斜角)θを検出するための傾斜センサ21aが内蔵される。
【0021】
また、レーザ照射ユニット20には、制御ユニット30との間でデータ通信Bするための、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いた送受信部25が内蔵される。
【0022】
制御ユニット30は、例えば、その正面のサイズがB5版程度で奥行き3cm程度の筐体を有し、その正面に複数のキーを配列した入力部31(照射地上高入力手段)、上下左右4方向の方向指定キーを配列した照射方向操作部32(照射方向変更手段)、液晶ドットマトリクス式の表示部33を備え、また筐体の側面に音声出力部34を備える。
【0023】
入力部31(照射地上高入力手段)は、地面Gから掘削機械1の車体に取り付けられたレーザ照射ユニット20までの高さ(照射地上高)H1と、地面Gからの目標とする掘削深さ(目標深さ)H2とを、ユーザによるキー操作に応じて入力するためなどに使用される。
【0024】
照射方向操作部32(照射方向変更手段)は、レーザ照射ユニット20における照射方向可動部22のレーザ距離計21に対する水平および垂直方向への回転を、ユーザによる方向指定キーのキー操作に応じて指示するためなどに使用される。
【0025】
表示部33は、レーザ照射ユニット20のレーザ距離計21により計測されたレーザ照射距離L、同レーザ距離計21の傾斜センサ21aにより検出されたレーザ照射傾斜角θ、レーザ照射距離Lとレーザ照射傾斜角θとに基づき演算された掘削面Dからレーザ照射ユニット20までの高さ(掘削地上高)H、入力部31により入力された照射地上高H1、同入力部31により入力された目標深さH2、掘削地上高Hと照射地上高H1とに基づき演算された地面Gからの掘削深さH3の各データを、入力部31のキー操作に応じて選択される表示モードに従ったユーザ任意の組み合わせで表示するため、およびユーザ(例えば、掘削機械1のオペレータ)に対して報知すべきメッセージを表示するためなどに使用される。
【0026】
音声出力部34は、入力部31により入力された目標深さH2に対して、演算された掘削深さH3が同じかそれを超えた場合に、掘削作業の終了を、アラーム音や音声メッセージによってユーザに報知するためなどに使用される。
【0027】
制御ユニット30は、筐体の底面および裏面に設けられた磁石部材30Mの磁力により掘削機械1の車体内(室内)の、例えば、操縦席正面にある任意の金属部分に着脱自在に取り付けられて使用される。
【0028】
また、制御ユニット30には、レーザ照射ユニット20との間でデータ通信Bするための、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いた送受信部37が内蔵される。
【0029】
図3は、掘削深さ測定装置10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0030】
レーザ照射ユニット20は、前述したように、レーザ距離計21(傾斜センサ21a内蔵)、照射方向可動部22(照射方向変更手段)、送受信部25を備え、制御ユニット30から送受信部25に受信されたレーザ光Oの照射を開始させるための照射開始信号はレーザ距離計21に出力され、また、同送受信部25に受信されたレーザ光Oの照射方向を調整するための方向指示信号は照射方向可動部22(照射方向変更手段)に出力される。また、レーザ距離計21により計測されたレーザ照射距離Lと傾斜センサ21aにより検出されたレーザ照射傾斜角θの各データは送受信部25により制御ユニット30へ送信(転送)される。
【0031】
レーザ照射ユニット20における各部(21,22,25)の駆動電圧は、充電池などの電源部26により供給される。
【0032】
制御ユニット30は、CPU(プロセッサ)からなる制御部35、フラッシュメモリなどからなる記憶部36を備える。
【0033】
制御部35は、記憶部36に予め記憶された掘削深さ測定プログラム36a、あるいは図示しないインターネットなどの通信ネットワーク上のWebサーバからアプリケーションプログラムとしてダウンロードされ記憶部36に記憶(インストール)された掘削深さ測定プログラム36aを実行し、当該掘削深さ測定プログラム36aに従ってレーザ照射ユニット20および制御ユニット30を構成する各部の動作を制御する。
【0034】
記憶部36には、掘削深さ測定プログラム36aを含むプログラムデータを記憶するためのプログラムデータ記憶エリアのほか、前述したレーザ照射距離(L)36b、レーザ照射傾斜角(θ)36c、掘削地上高(H)36d、照射地上高(H1)36e、目標深さ(H2)36f、掘削深さ(H3)36gの各データを記憶するための作業データ記憶エリアなどが確保される。
【0035】
制御部35のバスラインBusには、記憶部36のほか、
図2を参照して前述した入力部31(照射地上高入力手段)、照射方向操作部32(照射方向変更手段)、表示部33、音声出力部34、送受信部37が接続される。
【0036】
制御ユニット30における各部(31~37)の駆動電圧は、充電池などの電源部38により供給される。
【0037】
なお、制御ユニット30は、
図2で示したように、本実施形態の掘削深さ測定装置10に専用の機器として構成してもよいし、図示しないタブレット端末などの小型のPDA(Personal Digital Assistant)に前述した掘削深さ測定プログラム36aをアプリケーションプログラムとしてインストールし、当該PDAに制御ユニット30と同じ機能を持たせて構成してもよい。
【0038】
このように構成された掘削深さ測定装置10は、制御部35が掘削深さ測定プログラム36aに記述された命令に従い各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、後述の動作説明で述べるような、掘削深さ測定処理(
図4)を含む各種の機能を実現する。
【0039】
次に、実施形態の掘削深さ測定装置10の動作について説明する。
【0040】
図4は、掘削深さ測定装置10の掘削深さ測定プログラム36aに従った掘削深さ測定処理を示すフローチャートである。
【0041】
例えば、建柱、地中電路工事などにおいて、
図1で示したように、バックホウなどの掘削機械1を使用して掘削作業を行なう場合、掘削深さ測定装置10のレーザ照射ユニット20を、掘削機械1の車体における地面G上の掘削対象地点が見通せる位置(実施形態では屋根前部)に、車体着脱基部24底面の磁石部材20Mの磁力を利用して取り付ける。
【0042】
また、制御ユニット30を、掘削機械1の車体内(室内)のユーザ(オペレータ)から見易く操作し易い位置(実施形態では操縦席正面にある任意の金属部分)に、筐体底面および裏面の磁石部材30Mの磁力を利用して取り付ける。
【0043】
この後、制御ユニット30の入力部31をユーザにより操作して地面Gからレーザ照射ユニット20までの高さ(照射地上高)H1(実施形態では掘削機械1の全高に相当)を入力すると、入力された照射地上高H1のデータが、制御部35により記憶部36の作業データ記憶エリア36dに記憶され設定される(ステップS1)(照射地上高入力手段)。
【0044】
また、入力部31をユーザにより操作して掘削対象地点の目標深さH2を入力すると、入力された目標深さH2のデータが、制御部35により記憶部36の作業データ記憶エリア36fに記憶され設定される(ステップS2)。
【0045】
すると、制御部35により送受信部37を介してレーザ照射を開始させるための照射開始信号がレーザ照射ユニット20へ送信され、レーザ距離計21によりレーザ光Oの照射が開始される(ステップS3)。
【0046】
ここで、レーザ光Oを地面G上におけるユーザ任意の掘削対象地点に照射させるために、ユーザにより照射方向操作部32の方向指定キーが操作されると(ステップS9のYes)、制御部35により送受信部37を介して当該キー操作に応じた方向指示信号がレーザ照射ユニット20へ送信され、照射方向可動部22によりレーザ距離計21本体の向きが変更されてレーザ光Oの照射方向が掘削対象地点に調整される(ステップS10)(照射方向変更手段)。
【0047】
レーザ距離計21によりレーザ光Oの照射が開始されると、当該レーザ距離計21により計測されたレーザ照射距離Lのデータが送受信部25を介して制御ユニット30に送信され、制御部35により記憶部36の作業データ記憶エリア36bに記憶される(ステップS4)。
【0048】
また、これと共に、レーザ距離計21の傾斜センサ21aにより検出されたレーザ照射傾斜角θのデータが送受信部25を介して制御ユニット30に送信され、制御部35により記憶部36の作業データ記憶エリア36cに記憶される(ステップS5)。
【0049】
なお、レーザ距離計21により計測されるレーザ照射距離Lと、傾斜センサ21aにより検出されるレーザ照射傾斜角θとの各データは、レーザ光Oが照射されている状態では、レーザ照射ユニット20から一定時間間隔で常時更新されて制御ユニット30に取得され、当該制御ユニット30における記憶部36の各作業データ記憶エリア36cに上書きされて記憶される(ステップS3~S5)。
【0050】
レーザ照射距離Lとレーザ照射傾斜角θとの各データが取得されると、制御部35により、当該レーザ照射距離Lとレーザ照射傾斜角θとの各データに基づいて次式(1)に従い掘削地上高Hが演算され、当該掘削地上高Hのデータが記憶部36の作業データ記憶エリア36dに記憶される(ステップS6)。
【0051】
H=Lsinθ …式(1)
また、制御部35により、記憶部36の各作業データ記憶エリア36d,36eに記憶されている掘削地上高Hと照射地上高H1との各データに基づいて、次式(2)に従い地面Gの高さからレーザ光Oを照射している掘削面Dまでの掘削深さH3が演算され、当該掘削深さH3のデータが記憶部36の作業データ記憶エリア36gに記憶される(ステップS7)(掘削深さ演算手段)。
【0052】
H3=H-H1 …式(2)
すると、制御部35により、記憶部36の各作業データ記憶エリア36f,36gに記憶されている目標深さH2と掘削深さH3との各データに基づいて、当該目標深さH2に対する掘削深さH3が対比され、例えば、
図2で示したように[目標深さH2:2000mm]と[掘削深さH3:1050mm]とが表示部33に並べられて比較表示される(ステップS8)(掘削深さ表示制御手段)(目標対比表示制御手段)。
【0053】
そして、制御部35により、目標深さH2に対して掘削深さH3が同一かそれ以上に到達したか否か判定される(ステップS11)(目標対比判定手段)。
【0054】
レーザ光Oを照射して掘削作業を行なっている掘削対象地点の掘削深さH3が、目標深さH2まで未だ到達せず、制御部35により、当該目標深さH2に対して掘削深さH3が同一かそれ以上に到達していないと判定されると(ステップS11のNo)、前述したステップS3~S10の処理が繰り返し実行され、再び同目標深さH2に対して掘削深さH3が同一かそれ以上に到達したか否か判定される(ステップS11)(目標対比判定手段)。
【0055】
この後、掘削作業が進行することで、掘削対象地点の掘削深さH3が、目標深さH2まで到達し、制御部35により、当該目標深さH2に対して掘削深さH3が同一かそれ以上に到達したと判定されると(ステップS11のYes)、当該掘削深さH3が目標深さH2まで到達した旨のメッセージが表示部33に表示される(メッセージ表示制御手段)と共に、その旨のアラーム音が音声出力部34から出力され(アラーム音出力制御手段)、今回の掘削作業の終了がユーザに報知される(ステップS12)(掘削終了報知手段)。
【0056】
したがって、実施形態の掘削深さ測定装置10によれば、ユーザすなわち掘削機械1のオペレータは、自らが掘削作業を行なっている掘削対象地点の掘削深さH3と目標深さH2とを、制御ユニット30の表示部33にてリアルタイムに確認しながら効率よく掘削作業を進めることできる。これにより、掘削深さH3を測定するための測定員を別途必要とすることなく、作業コストの増加を抑えることができると共に、当該測定員に対する労働災害の発生の恐れも解消することができる。
【0057】
また、実施形態の掘削深さ測定装置10によれば、掘削対象地点の掘削深さH3が目標深さH2に到達した場合には、ユーザに対して、表示部33によるメッセージの表示および音声出力部34によるアラーム音の出力により、目標とする掘削作業が終了である旨の報知が行われるので、効率よく掘削作業を進めることができるばかりでなく、無駄な掘削や当該無駄な掘削に起因する既設埋設物破損などの発生を未然に防止することができる。
【0058】
また、実施形態の掘削深さ測定装置10によれば、容易に持ち運び可能なサイズで且つ掘削機械1の車体に容易に着脱可能なレーザ照射ユニット20と制御ユニット30とから構成されるので、従来の装置やシステムのように、大掛かりな構成にならないのは勿論、掘削機械1のアーム1Aやバケット1Bの刃先など、複数の可動部分に各種のセンサを固定的に取り付ける必要がなく、当該センサの破損を招く恐れもない。そして、リースした掘削機械1でも簡単に取り付けて容易に利用することができる。
【0059】
さらに、実施形態の掘削深さ測定装置10によれば、レーザ照射ユニット20からのレーザ光Oが照射可能な範囲であれば、掘削機械1のバケット1Bの位置に制約を受けることなく、掘削深さH3を測定できるので、例えば、掘削機械1のバケット1Bが届く範囲内に複数の隣接した掘削対象地点がある場合に、当該複数の掘削対象地点に向けてアーム1Aおよびバケット1Bをいちいち旋回し直す必要なく、各掘削対象地点に向けてレーザ光Oの照射方向を調整するだけで、現在の掘削対象地点に対する掘削作業を維持しつつ、各掘削対象地点それぞれの現在の掘削深さH3を測定して確認することができる。
【0060】
なお、前述した実施形態では、地面Gから掘削機械1の車体に取り付けられたレーザ照射ユニット20までの高さ(照射地上高)H1を、ユーザによる入力部31のキー操作に応じて入力して設定する構成としたが、当該レーザ照射ユニット20に高精度に地上高を検出することが可能な地上高センサ(照射地上高入力手段)を内蔵させることで、ユーザによる照射地上高H1の入力操作を省ける構成としてもよい。
【0061】
また、前述した実施形態では、掘削深さ測定装置10をレーザ照射ユニット20と制御ユニット30との2つのユニットにより構成したが、当該レーザ照射ユニット20と制御ユニット30との両者の機能を有する単体のユニットとして構成し、掘削機械1の、例えば、フロントガラスの内側に着脱自在に取り付けて使用してもよい。
【0062】
また、掘削機械1は、バックホウに限らずブルドーザなどの他の土木機械であってもよいのは勿論である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…掘削機械、1A…アーム、1B…バケット、G…地面、D…掘削面、
10…掘削深さ測定装置、20…レーザ照射ユニット、30…制御ユニット、
B…データ通信、20M、30M…磁石部材、O…レーザ光、21…レーザ距離計、
22…照射方向可動部(照射方向変更手段)、23…可動基部、24…車体着脱基部、
25、37…送受信部、26,38…電源部、31…入力部(照射地上高入力手段)、
32…照射方向操作部(照射方向変更手段)、33…表示部、34…音声出力部、
35…制御部(プロセッサ)、36…記憶部、36a…掘削深さ測定プログラム、
36b…レーザ照射距離L、36c…レーザ照射傾斜角θ、36d…掘削地上高H、
36e…照射地上高H1、36f…目標深さH2、36g…掘削深さH3。