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特許7150602情報を備えたオブジェクト、およびオブジェクトへ情報を適用するための、および、オブジェクトにおける情報を読み取るための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】情報を備えたオブジェクト、およびオブジェクトへ情報を適用するための、および、オブジェクトにおける情報を読み取るための方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/378 20140101AFI20221003BHJP
   B42D 25/369 20140101ALI20221003BHJP
   B42D 25/405 20140101ALI20221003BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B42D25/378
B42D25/369
B42D25/405
G06K19/06 009
G06K19/06 196
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018532177
(86)(22)【出願日】2016-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2016081228
(87)【国際公開番号】W WO2017102967
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】102015121822.4
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521524014
【氏名又は名称】ボーゲン マグネティックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、トルステン
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0077485(US,A1)
【文献】特表2010-526683(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010041398(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007052477(DE,A1)
【文献】特開2000-311222(JP,A)
【文献】特表2011-512595(JP,A)
【文献】国際公開第2015/173364(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005042895(DE,A1)
【文献】特開2012-228874(JP,A)
【文献】特開2014-054783(JP,A)
【文献】特開2011-013287(JP,A)
【文献】特開2004-345192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/378
B42D 25/369
B42D 25/405
G06K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷領域(2)を有するオブジェクト(1)であって、
前記印刷領域(2)において光学的に識別可能なパターン(3)が配置されており、
前記パターン(3)は、磁化可能粒子および/または磁気粒子(7)を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、
前記印刷領域(2)は、互いに異なる磁気特性を有し、且つ光学的に識別できない少なくとも2つのサブ領域(4、5)を有し、前記少なくとも2つのサブ領域に書き込まれた情報は、前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶かすことにより削除可能及び/または前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶かすことにより新たな情報によって上書き可能であるが、前記接着剤の溶解は前記光学的に識別可能なパターン(3)によって書き込まれた情報には影響を与えないものである、ことを特徴とする、
オブジェクト。
【請求項2】
請求項1記載のオブジェクトにおいて、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)は、前記サブ領域(4、5)のうちの1つの少なくとも1つの縁部(14)が前記光学的に識別可能なパターン(3)のモノクロパターン領域の縁部と重ならないような態様で、当該パターン(3)と独立して配置されるものである、オブジェクト。
【請求項3】
請求項1または2記載のオブジェクト(1)において、
前記印刷領域(2)は、少なくとも1つの非均質領域(6)を有し、前記非均質領域(6)は、
均等色および不均等な磁化、または、
均等な磁化および不均等色のいずれかを有するものである、
オブジェクト。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のオブジェクトにおいて、
前記印刷媒体は、着色剤および/または顔料を有し、
前記顔料は、前記磁化可能粒子および/または前記磁気粒子を含み、
前記印刷媒体は、前記磁化可能粒子および/または前記磁気粒子の、40体積%~70体積%の充填度を有し、
前記磁化可能粒子(7)は、顔料、セラミック粒子、および/または、希土類金属を有し、
前記磁気粒子は、硬磁気粒子、顔料、微小磁石、セラミック粒子、および/または、希土類金属を有し、および/または、
前記磁化可能粒子(7)のサイズ分布の平均は、2μm未満である、
オブジェクト。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のオブジェクトにおいて、
前記サブ領域のうちの1つは異方性領域であり、前記異方性領域は、特定の磁化方向を有する磁気的異方性を有し、
前記サブ領域のうちの他方は別の異方性領域であり、前記異方性領域の前記特定の磁化方向は、前記別の異方性領域の特定の磁化方向とは異なるものである、
オブジェクト。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のオブジェクトにおいて、
前記サブ領域(4、5)から磁気的に読み取り可能な情報と、
前記光学的に読み取り可能なパターン(3)内に含まれる光学的に読み取り可能な情報とを含む、
グループからの一方の情報は、当該グループに含まれる他方の情報に依存して評価されるものである、
オブジェクト。
【請求項7】
請求項6記載のオブジェクトにおいて、
前記グループの一方の情報は論理鍵(12)を有し、前記論理鍵(12)は、前記グループに含まれる前記他方の情報を復号化および/または、検証するために使用されるものである、
オブジェクト。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のオブジェクトにおいて、
前記オブジェクト(1)は、工業製品、工業的に製造された製品、イベントのためのチケット、地方公共交通機関のためのチケット、料金支払のためのチケット、駐車のためのチケット、注文のためのパッケージ、製品のためのパッケージ、ラベル、および/または、薬剤のためのパッケージを有し、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)から、製品識別情報、製品バッチ番号、製造場所、製造日、有効期限(8)、オブジェクト(1)のための検定機関証明マーク(10)、製品名、シリアル番号、特徴的な製品シンボル、および/または時間を予測することが可能なものであり、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)から、さらに、前記オブジェクト(1)を使用するために提供されたデバイスにおける前記オブジェクト(1)の使用情報(9)を予測することが可能なものである、
オブジェクト。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のオブジェクトにおいて、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)のうちの1つ(4)は、実質的に磁化されておらず、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)のうちの1つは、前記印刷領域の印刷面に対して垂直または平行な磁極方位および/または磁気的異方性を有し、および/または、
前記少なくとも2つのサブ領域(4、5)は、磁気的な読み取り方法を使用して読み取り可能な2進数符号(11)を有するものである、
オブジェクト。
【請求項10】
印刷領域(2)を有するオブジェクト(1)へ情報を適用するための方法であって、
前記印刷領域(2)において光学的に識別可能なパターン(3)が提供され、前記パターン(3)は磁化可能粒子および/または磁気粒子(7)を含むカラー印刷媒体を用いて印刷されるものであり、この方法は、
前記印刷領域(2)において、互いに異なる磁気特性を有し、且つ光学的に識別できない少なくとも2つのサブ領域(4、5)を提供する工程と、
前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶解して前記少なくとも2つのサブ領域によって書き込まれた情報を削除する工程、及び/または、前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶解して前記少なくとも2つのサブ領域によって書き込まれた情報を新たな情報で上書きする工程とを含み、前記接着剤の溶解は、前記光学的に識別可能なパターン(3)によって書き込まれた情報には影響を与えないものである、ことを特徴とする、
方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記印刷領域(2)が、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域(4、5)を有するように、前記印刷領域(2)の前記少なくとも1つのサブ領域(4、5)を磁化する工程を含むものである、
方法。
【請求項12】
請求項10または11記載の方法において、
前記印刷媒体の接着剤の硬化前に、前記印刷媒体の前記磁化可能粒子および/または前記磁気粒子が磁力線に沿って配向する磁場を前記印刷領域の少なくとも1つの部分に形成することにより、磁気的異方性領域を生成する工程と、
前記接着剤を溶解し、前記印刷領域の少なくとも一部に新しい磁場を生成する工程と、
を含むものである、方法。
【請求項13】
印刷領域(2)を有するオブジェクト(1)から情報を読み取るための方法であって、
前記印刷領域(2)において光学的に識別可能なパターン(3)が提供され、
前記パターン(3)は、磁化可能粒子(7)を含むカラー印刷媒体を用いて印刷されるものであり、
前記印刷領域(2)は、互いに異なる磁気特性を有し、且つ光学的に識別できない少なくとも2つのサブ領域(4,5)を有し、この方法は、
前記パターン(3)から予測される光学的に符号化された情報を判定する工程と、
前記磁気サブ領域(4、5)から磁気的に読み取り可能な磁気的に符号化された情報を判定する工程と、
前記少なくとも2つのサブ領域によって書き込まれた情報を前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶解することにより削除する工程と、及び/または、前記少なくとも2つのサブ領域によって書き込まれた情報を前記印刷媒体に含まれた接着剤を溶解することにより新たな情報によって上書きする工程とを、含み、前記接着剤の溶解は、前記光学的に識別可能なパターン(3)によって書き込まれた情報には影響を与えないものである、ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷領域を備えたオブジェクト、オブジェクトへ情報を適用するための方法、および、オブジェクトから情報を読み取るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品は種々の手法で識別される。たとえば、製品は、たとえば製品のためのパッケージに印刷されたバーコードまたはQRコードが提供される。バーコードおよびQRコードは、光学的方法によって読み取られることができ、製品は、データベースとの比較によって識別される。製品はまた、たとえば、製品へ刻印されるシリアル番号を提供される。シリアル番号もまた、光学的方法によって読み取られる。しかしながら、汚れが、光学的方法を、誤り易くさせることが短所である。
【0003】
また、製品を磁気的に識別することも可能である。たとえば、駐車のためのチケットは、磁化によって書き込まれる磁気フィルムを有する。書き込まれたフィルムは、その後、磁気的方法を使用して読み取られる。
【0004】
また、RFID法(英語名:radio-frequency identification)では、たとえば、製品または生物にトランスポンダを備えることも慣例的である。トランスポンダは、読取デバイスによって読み取られる識別コードを有する。しかしながら、RFID法は、特にトランスポンダのために、比較的高コストという短所を有する。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 独国特許出願公開第102010041398号明細書
(特許文献2) 国際公開第2013/139969号
(特許文献3) 米国特許出願公開第2014/077485号明細書
(特許文献4) 独国特許出願公開第102005042895号明細書
(特許文献5) 独国特許出願公開第102007052477号明細書
(特許文献6) 独国特許出願公開第102008033693号明細書
(特許文献7) 独国特許出願公開第102013022028号明細書
(特許文献8) 独国特許出願公開第10314631号明細書
(特許文献9) 米国特許第5,039,559号明細書
(特許文献10) 米国特許第8,236,192号明細書
(特許文献11) 米国特許出願公開第2006/0150854号明細書
(特許文献12) 米国特許出願公開第2014/077485号明細書
(特許文献13) 国際公開第2014/072172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、代替的な手法で情報を用いて識別されるオブジェクトのみならず、情報を適用するための代替方法、および、情報を読み取るための代替方法を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1、12、および15の特徴で達成される。
【0007】
本発明にかかるオブジェクトは、印刷領域を有し、印刷領域では、光学的に識別可能なパターンが配置され、このパターンは、磁化可能粒子および/または磁気粒子を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、印刷領域は、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域を有する。
【0008】
異なる磁気特性は、サブ領域が磁化されているか、または、磁化されていないという事実にあり、サブ領域は、硬磁性または軟磁性であり、サブ領域は、磁気的に異方性であるか、または、磁気的に等方性であり、サブ領域は、空間中の異なる方向において異方性であり、および/または、サブ領域は、強磁性または非強磁性である。カラー印刷媒体は、黒色および/または白色を含む任意の色からなってもよい。印刷媒体は、たとえば、磁気インクである。磁気インクは、たとえば、手作業によって、または、インクジェットプリンタによって、オブジェクトへ適用される。
【0009】
オブジェクトによって、有利なことに、パターンに追加情報を収容するために、異なる磁気特性を使用することが可能である。したがって、省空間的手法で、オブジェクトに情報を収容することが可能であるか、または、パターンのみを用いて可能であるよりも、より多くの情報を、オブジェクトの領域に収容することが可能である。異なる磁気特性を有するサブ領域は、人間の目に感知不能なように、または、光学測定方法に見えないように適用され得、これによって、ある程度、パターン内の情報を隠蔽することが可能となる。
【0010】
好適には、少なくとも2つのサブ領域は、サブ領域のうちの1つの少なくとも縁部が、光学的に識別可能なパターンのモノクロパターン領域の縁部と重ならないような態様で、当該パターンと独立して配置される。
【0011】
好適には、印刷領域は、少なくとも1つの非均質領域を有し、非均質領域は、均等色および不均等な磁化、または、均等な磁化および不均等色のいずれかを有する。したがって、有利なことに、色情報と磁気情報とを組み合わせることが可能である。色情報と磁気情報とが組み合わされた場合にのみ情報が読み取られるように、情報を符号化することが可能である。したがって、色情報および磁気情報が互いに別々に暗号化された場合に可能になるよりも、より安全に情報を暗号化することが可能である。
【0012】
好適には、印刷媒体は、着色剤および/または顔料を有し、顔料は、磁化可能粒子および/または磁気粒子を含み、および/または、印刷媒体は、磁化可能粒子および/または磁気粒子の、40体積%~70体積%の充填度を有する。さらに、印刷媒体は、実質的に接着剤を含み、それに加えて、溶剤を提供してもよい。接着剤は、オブジェクトへの印刷媒体の接着を保証する。溶剤は、着色剤を溶かすために提供される。磁化可能粒子および/または磁気粒子の、40体積%~70体積%のパーセンテージは、パターンの高い磁性化を、同時の強い粘着力とともに、有利に達成する。約50体積%の充填度は、この観点において、特に好適である。コストの理由で、顔料が磁化可能粒子および/または磁気粒子を含んでいるのであれば、磁化可能粒子を着色剤および/または顔料へさらに提供する必要はないので、特に有利である。
【0013】
好適には、磁化可能粒子は、顔料、セラミック粒子、および/または、希土類金属を有し、磁気粒子は、硬磁気粒子、顔料、微小磁石、セラミック粒子、および/または、希土類金属を有し、および/または、磁化可能粒子および/または磁気粒子のサイズ分布の平均は、2μm未満である。硬磁気粒子は、強い磁場強度を有しているので有利である。顔料は、磁石と着色剤との両方として機能するので、有利である。セラミック金属は、その耐化学性により有利である。希土類金属は、高い磁場強度を有する。磁化可能粒子が、たとえば、球状であれば、そのサイズは、粒子直径を示す。磁化可能粒子の形が、球状以外であれば、そのサイズは、磁化可能粒子において生じる最大寸法である。小さな粒子サイズにより、磁化可能粒子および/または磁気粒子は、特に、既に磁化された状態にある硬磁気粒子である場合、外部磁場に向けることは特に容易であるので、サブ領域の特に強い磁化の達成を可能にする。
【0014】
好適には、印刷領域は異方性領域を有し、異方性領域は好適な磁化方向を有する磁気的異方性を有する。また、印刷領域は別の異方性領域を有し、前記異方性領域の好適な磁化方向は、この別の異方性領域の好適な磁化方向とは異なる。それゆえ、1つのサブ領域から別のサブ領域への移行は、有利なことに、磁場強度ベクトルの方向における変化に基づいて、簡単な手法で検出される。このパターンはまた、磁場強度ベクトルの方向によって符号化される追加情報を収容できる。
【0015】
好適には、サブ領域から磁気的に読み取られる1つの情報と、光学的に読み取り可能なパターン内に含まれる光学的に読み取り可能な1つの情報とを含む、グループからの1つの情報が、グループに含まれる別の1つの情報に依存して評価される。これは、情報が、有利に符号化されることを可能にする。情報の復号化は、光学的に読み取り可能なデータと、磁気的に読み取り可能なデータとの両方が読み取られた場合にのみ起こる。好適には、この点について、グループからの1つの情報は、論理鍵を有し、論理鍵は、グループに含まれる他の1つの情報を復号化するために、および/または、グループに含まれる他の1つの情報を検証するために、使用される。それゆえ、暗号化されたデータを復号化するための鍵が、オブジェクトと共に提供される。
【0016】
オブジェクトは、好適には、工業製品、工業的に製造された製品、イベントのためのチケット、地方公共交通機関のためのチケット、料金支払のためのチケット、駐車のためのチケット、注文のためのパッケージ、製品のためのパッケージ、ラベル、および/または、薬剤のためのパッケージを有し、好適には、少なくとも2つのサブ領域から、製品識別情報、製品バッチ番号、製造場所、製造日、有効期限、オブジェクトのための検定機関証明マーク、製品名、シリアル番号、特徴的な製品シンボル、および/または時間を予測することが可能である。
【0017】
好適には、少なくとも2つのサブ領域から、オブジェクトを使用するために提供されたデバイスにおけるオブジェクトの使用法情報を予測することが可能である。したがって、デバイスにおけるオブジェクトの使用における自動化を達成することが可能である。
【0018】
好適には、少なくとも2つのサブ領域のうちの1つは、実質的に磁化されておらず、少なくとも2つのサブ領域のうちの1つは、印刷領域の印刷面に対して垂直または平行な磁極方位および/または磁気的異方性を有し、および/または、少なくとも2つのサブ領域は、磁気的な読み取り方法を使用して読み取られる2進数符号を有する。実質的に磁化されていないサブ領域から、磁化されたサブ領域への移行が生じる場合、または、磁場強度ベクトルの方位が、印刷面に垂直または水平である場合、有利なことに、誤りの無い読取がなされる。2進数符号は、特に、実質的に磁化されていないサブ領域および磁化されたサブ領域によって、または、反対方向に配向された磁場強度ベクトルを有するサブ領域によって、2進数符号化が実行される場合、同様に簡単な方式で読み取られる。
【0019】
印刷領域を有するオブジェクトへ情報を適用するための本発明にかかる方法であって、印刷領域において光学的に識別可能なパターンが提供され、このパターンは、磁化可能粒子および/または磁気粒子を含むカラー印刷媒体を用いて印刷されるものであり、本方法は、
互いに異なる磁気特性を有する印刷領域の少なくとも2つのサブ領域を提供する工程を有する。この提供する工程は、オブジェクトへの印刷領域の適用中に生じるか、または、その後の任意のポイントにおいて行われる。好適には、少なくとも2つのサブ領域によって書き込まれた情報は、削除されるか、および/または、新たな情報で上書きされる。したがって、有利なことに、印刷領域に情報を、可変的な手法で収容することができる。
【0020】
印刷前に、磁化可能粒子および/または磁気粒子の集塊を阻止するために、印刷媒体が攪拌され得、および/または、ふるいが印刷媒体のフローに提供される。ふるいのメッシュ穴は、個々の磁化可能粒子および/または磁気粒子が、ふるいを貫通するが、粒子の集塊が、ふるいによって保持されるような寸法とされる。
【0021】
本方法は、好適には、印刷領域が、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域を有するように、印刷領域の少なくとも1つのサブ領域を磁化する工程を有する。
【0022】
好適には、本方法は、印刷媒体の接着剤の硬化前に、印刷媒体の磁化可能粒子および/または磁気粒子が磁力線に沿って配向する磁場を前記印刷領域の少なくとも1つの部分に形成することにより、磁気的異方性領域を生成する工程を有する。これは、印刷媒体において既に磁化状態にある硬磁気粒子のために特に適切である。磁化可能粒子および/または磁気粒子が磁場によって配向され、この配向が、接着剤の硬化によって適所に固定されるという観点から、異なる磁気特性を有するサブ領域が生成される。少なくとも2つのサブ領域を使用して書き込まれた情報は、削除されるか、および/または、接着剤を溶かし、印刷領域の少なくとも一部に新たな磁場を生成することによって、新たな情報で上書きされる。
【0023】
印刷領域を有するオブジェクトから情報を読み取るための本発明にかかる方法であって、印刷領域では、磁化可能粒子および/または磁気粒子を含むカラー印刷媒体を用いて印刷された光学的に識別可能なパターンが提供され、印刷領域は、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域を有し、本方法は、パターンから予測される光学的に符号化された情報を判定する工程と、磁気サブ領域から磁気的に読み取られる磁気的に符号化された情報を判定する工程とを有する。また、情報を光学的に符号化された情報および、磁気的に符号化された情報に冗長的に収容することも可能である。この場合、汚れが生じている場合、情報は依然として、磁気的に符号化された情報から確実に読み取られる。類似して、磁気的に符号化された情報が、磁場によって上書きされている場合、情報は、依然として、光学的に符号化された情報から確実に読み取られる。
【0024】
好適なことに、本方法は、光学的に符号化された情報と、磁気的に符号化された情報とに依存して、追加の情報を判定する工程を有する。好適には、磁気的に符号化された情報は、パターンのサブ領域の磁気的異方性を有する。
【0025】
本発明は、添付された概念図に基づいて、以下に、より詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1のオブジェクトを図示する。
図2図2は、図1からの詳細を図示する。
図3図3は、第2のオブジェクトを図示する。
図4図4は、第3のオブジェクトを図示する。
図5図5は、第4のオブジェクトを図示する。
図6図6は、第5のオブジェクトを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図3図6から明らかなように、オブジェクト1は、印刷領域2を有する。印刷領域2では、光学的に識別可能なパターン3が提供される。これは、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むカラー印刷媒体を用いて印刷される。印刷領域2は、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を有する。
【0028】
異なる磁気特性は、少なくとも2つのサブ領域4、5が磁化されているか、または磁化されていない、サブ領域4、5が、硬磁性または軟磁性である、サブ領域4、5が、磁気的異方性であるか、または磁気的な等方性である、サブ領域4、5が、空間中の異なる方向において異方性である、および/または、サブ領域4、5が、強磁性または非強磁性である、という事実に依ることができる。
【0029】
印刷媒体は、たとえば、磁気インクである。印刷媒体は、磁化可能粒子および/または磁気粒子7の、40体積%~70体積%の充填度、特に、約50体積%の充填度を有する。残りは、実質的に溶剤および/または接着剤である。印刷媒体またはインクは、着色剤および/または顔料を有する。顔料は、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むことができるが、および/または、顔料は、磁化可能および/または磁気粒子7からなることができる。
【0030】
磁化可能粒子および/または磁気粒子7は、硬磁気粒子、顔料、微小磁石、セラミック粒子、および/または、希土類金属を有することができる。磁化可能粒子および/または磁気粒子はまた、2μm未満である磁化可能粒子および/または磁気粒子7のサイズ分布の平均を有する。たとえば、磁化可能粒子および/または磁気粒子7は、球状であってもよい。この場合、サイズは、粒子直径である。また、磁化可能粒子および/または磁気粒子7の形状は、球状以外であることも考えられる。この場合、サイズは、磁化可能粒子および/または磁気粒子7において生じる最長の直径である。
【0031】
図1にかかる第1のオブジェクト1では、少なくとも2つのサブ領域4、5は、これらサブ領域4、5のうちの1つの少なくとも1つの縁部14が光学的に識別可能なパターン3のモノクロパターン領域の縁部と重ならないような態様で、当該パターン3と独立して配置される。第1のオブジェクト1では、印刷領域2は、モノクロで印刷され、長方形の形状を有する。印刷領域2は、2つのサブ領域4、5を有し、サブ領域5は、特定の読み取り可能な形状を有する。この場合、特定の読み取り可能な形状は文字であるが、他の任意の形状を有することも考えられる。印刷領域2の残りは、サブ領域4から構成される。
【0032】
図2は、図1からの、具体的には、サブ領域4とサブ領域5との両方を含む印刷領域2の一部分の詳細を図示する。図2から明らかであるように、サブ領域4、5の両方が、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含む。図2にかかる磁化可能粒子および/または磁気粒子7は、N極およびS極を有し、これは、磁化されていることを意味する。たとえば、図2にかかる磁化可能粒子および/または磁気粒子7は、硬磁気粒子であってもよい。サブ領域5では、磁化可能粒子および/または磁気粒子7はすべて、同じ方向に配向され、サブ領域5において巨視的磁化が起こる。これは、サブ領域5が磁化されたことを意味する。サブ領域4における磁化可能粒子および磁気粒子7は、統計的に空間において複数の方向に配向されるため巨視的磁化は起こらない。これは、サブ領域4が磁化されていないことを意味する。
【0033】
図1および図2から明らかなように、印刷領域2は、少なくとも1つの非均質領域6を有し、非均質領域6は、均等色および不均等な磁化を有する。代替的に、非均質領域6は、均等な磁化および不均等色を有することが考えられる。また、印刷領域は、均等色および不均等な磁化を有する少なくとも1つの非均質領域6と、不均等色および均等な磁化を有する少なくとも1つの他の非均質領域6との両方を有することも考えられる。
【0034】
図3にかかる第2のオブジェクト1は、サブ領域5が、有効期限8の形態で埋め込まれているという点において、図1および図2にかかる第1のオブジェクト1と異なる。それに加えて、印刷領域2はモノクロではなく、書込みを含む。
【0035】
図4にかかる第3のオブジェクト1は、少なくとも2つのサブ領域4、5を有し、ここから、第3のオブジェクト1の検定機関証明マーク10を予測することが可能である。少なくとも2つのサブ領域4、5から、オブジェクト1の使用のために提供されたデバイスにおいて、オブジェクト1の使用に関する使用法情報9を予測することが可能である。たとえば、この使用法情報は、第3のオブジェクト1がデバイスへ挿入されるべき方向に関する情報である。
【0036】
一方、図4にかかる少なくとも2つのサブ領域4、5は、磁気的な読み取り方法を使用して読み取られる2進数符号11を有する。
【0037】
図5にかかる第4のオブジェクト1は、駐車のためのチケットである。第4のオブジェクト1は、印刷領域2を有し、この上に、光学的に読み取り可能な情報が印刷される。少なくとも2つのサブ領域から磁気的に読み取られる、たとえば時間のような情報が加えられる。
【0038】
図6にかかる第5のオブジェクト1は、サブ領域4、5から磁気的に読み取られる1つの情報と、光学的に読み取り可能なパターン3内に含まれる光学的に読み取り可能な1つの情報とを含むグループからの1つの情報が、グループに含まれる他の1つの情報に依存して評価されるという事実に着目する。グループからの1つの情報は、論理鍵12を有し、そして論理鍵12は、グループに含まれる他の1つの情報を復号化するために、および/または、グループに含まれる他の1つの情報を検証するために使用される。図6にかかる第5のオブジェクト1では、論理鍵12は、少なくとも2つのサブ領域4、5から構成され、暗号化される情報13は、光学的に識別可能なパターン3によって判定される。しかしながら、論理鍵12が、光学的に識別可能なパターン3から構成され、暗号化された情報が、少なくとも2つのサブ領域4、5から構成されることも考えられる。
【0039】
図1図6にかかるオブジェクト1は、工業製品、イベントのためのチケット、地方公共交通機関のためのチケット、料金支払のためのチケット、駐車のためのチケット、注文のためのパッケージ、製品のためのパッケージ、および/または、薬剤のためのパッケージであってもよい。図1図6にかかるオブジェクト1の少なくとも2つのサブ領域4、5から、製品識別情報、製品バッチ番号、製造場所、製造日、有効期限8、オブジェクト1のための検定機関証明マーク10、および/または、時間を予測することが可能である。
【0040】
図1図6にかかるオブジェクト1へ情報を適用するための方法は、印刷領域2において互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を磁化する工程を有する。この方法はまた、印刷領域の接着剤の硬化前に、印刷媒体の磁化可能粒子および/または磁気粒子7が磁力線に沿って配向する磁場を印刷領域の少なくとも1つの部分に形成することにより、磁気的異方性領域を生成する工程を有する。この方法はまた、印刷領域の接着剤の硬化前に、磁化可能粒子および/または磁気粒子7が上記磁力線に沿って配向する印刷領域の上記部分における磁場とは反対の方向に磁力線が配向された別の磁場を形成することにより、別の磁気的異方性領域を生成する工程を有する。
【0041】
図1図6にかかるオブジェクト1から情報を読み取るための方法は、パターン3から予測される光学的に符号化された情報を判定する工程と、磁気サブ領域4、5から磁気的に読み取られる磁気的に符号化された情報を判定する工程とを有する。磁気的に符号化された情報は、たとえば、誘導作用、ホール効果、および/または、磁気抵抗効果を測定することによって判定される。それに加えて、本方法は、光学的に符号化された情報と、磁気的に符号化された情報とに依存して、追加情報を判定する工程を有する。磁気的に符号化された情報は、パターンのサブ領域の磁気的異方性を有する。
【0042】
本発明は、4つの例に基づいて、以下に、より詳細に説明されるであろう。
【0043】
第1の例では、オブジェクト1は、印刷領域2を有し、印刷領域2では、光学的に識別可能なパターン3が提供される。このパターンは、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、印刷領域2は、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を有し、サブ領域4は、磁化可能粒子および/または磁気粒子7として、強磁性体粒子を有し、サブ領域5は、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を有さない。
【0044】
第1の例にかかるオブジェクト1は、サブ領域4のための印刷媒体が、強磁性体粒子を含み、サブ領域5のための印刷媒体が、強磁性体粒子を含まず、おのおの互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5が、2つの異なる印刷媒体を使用することによって、印刷領域2において磁化されるように生成される。2つの印刷媒体は、同じ色であるか、または、異なる色であってもよい。
【0045】
第2の例では、印刷領域2を備えたオブジェクト1へ情報を適用するための方法であって、印刷領域2内に、光学的に識別可能なパターン3が配置され、このパターンは、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、本方法は、-パターン3の印刷前に印刷媒体を攪拌する工程、および/または、パターン3の印刷前に、個々の磁化可能粒子および/または磁気粒子7がふるいを通過できるが、粒子の集塊は、ふるいによって保持されるような寸法とされたメッシュ穴を有するふるいによって、印刷媒体を移す工程と、-印刷領域2において互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を磁化する工程とを有する。印刷媒体がインクである場合、第2の例は特に適切である。
【0046】
第3の例では、オブジェクト1は印刷領域2を有し、印刷領域2では、光学的に識別可能なパターン3が配置され、このパターンは、印刷領域2が光学的に読み取り可能な情報を有するように、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、印刷領域2は、印刷領域2が磁気的に読み取り可能な情報を含むように、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を有し、光学的に識別可能な情報と、磁気的に読み取り可能な情報とは、同じ情報を含む。この場合、パターン3が、サブ領域4、5のうちの少なくとも1つに対して同一であることが可能である。少なくとも1つのサブ領域4、5が、パターン3と異なるようになることもまた同様に可能である。この場合、たとえば、パターン3が書き込んでおり、少なくとも2つのサブ領域4、5が、2進数符号を形成する。
【0047】
第4の例では、オブジェクト1は、印刷領域2を有し、印刷領域2では、光学的に識別可能なパターン3が配置され、このパターンは、磁化可能粒子および/または磁気粒子7を含むカラー印刷媒体を用いて印刷され、印刷領域2は、互いに異なる磁気特性を有する少なくとも2つのサブ領域4、5を有する。サブ領域4、5から磁気的に読み取り可能な情報と、光学的に識別可能なパターン3内に含まれる、光学的に読み取り可能な情報とを含むグループからの情報が、グループに含まれる他の情報に依存して評価される。グループからの情報は、論理鍵12を有し、論理鍵12は、グループに含まれる他の情報を復号化するために、および/または、グループに含まれる他の1つの情報を検証するために使用される。この場合におけるサブ領域4、5のうちの少なくとも1つは、正方形であり、論理鍵12は、正方形のサイズである。あるいは、パターン3は、正方形を有し、論理鍵12は、正方形のサイズである。
【符号の説明】
【0048】
1...オブジェクト
2...印刷領域
3...パターン
4...第1のサブ領域
5...第2のサブ領域
6...非均質領域
7...磁化可能粒子および/または磁気粒子
8...有効期限
9...使用法情報
10...証明マーク
11...2進数符号
12...論理鍵
13...暗号化された情報
14...縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6