(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原リガンドの組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/404 20060101AFI20221003BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20221003BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K31/404
A61K49/00
A61K9/19
A61K47/54
(21)【出願番号】P 2018554455
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017027015
(87)【国際公開番号】W WO2017184383
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-30
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ソージャー,ジョナサン エム.
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536790(JP,A)
【文献】国際公開第2010/108125(WO,A1)
【文献】Bioconjug Chem.,2012年,23(12),pp.2377-2385
【文献】Chem. Mater.,2009年,21,pp.3979-3986
【文献】Journal of Investigative Dermatology,2011年,131,pp.1061-1066
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織近赤外光放射による照明下でPSMAを発現する組織を可視化するための組成物であって、以下の式(I):
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は各々、独立して、水素又は非置換C
1-4アルキルであり、
Xは、単結合、-O-又は-S-であり、
下付きのa、b、c、d、e、f、g及びhは各々、独立して、1~6の整数であり、
Tは各々、独立して、金属イオン、H又は負電荷であり、かつ
Zは各々、独立して、水素又は非置換C
1-6アルキルである)、
で表される化合物を含む、組成物。
【請求項2】
化合物が、以下の式(II):
【化2】
で表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化合物が、以下の式(III):
【化3】
で表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物は、式(I)で表される化合物の単位剤形を含む医薬組成物であり、かつ
前記単位剤形は、前記式(I)で表される化合物の0.01~8mg/kgを患者に送達する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
単位剤形は、式(I)で表される化合物の0.01、0.05、0.10、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.90、1、2、4、6又は8mg/kgを患者に送達する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物は、
(a)乾燥した単回投与形態であり、
(b)滅菌容器内で凍結乾燥され、
(c)滅菌容器内に包含され、前記容器には、医療機器によって読み取り可能な機械検出可能識別子があり、
(d)経口剤形の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み、
(e)注入剤形の薬学的に許容される担体をさらに含み、及び/又は、
(f)手術部位へ直接送達するため剤形である薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、
請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
組成物は、近赤外光放射による照明下でPSMAを発現する組織を可視化するために、患者へ投与するのに適する、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
患者はヒト患者であり、PSMAを発現する組織はヒト組織である、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データの相互参照
本出願は、その開示全体を全目的のために参照によって本明細書に援用する2016年9月9日に出願した“COMPOSITIONS OF NEAR IR CLOSED CHAIN,SULFO-CYANINE DYES AND PROSTATE SPECIFIC MEMBRANE ANTIGEN LIGANDS”と題された米国特許非仮出願第15/261,357号明細書、及び、2016年4月18日に出願した“COMPOSITIONS OF NEAR IR CLOSED CHAIN,SULFO-CYANINE DYES AND PROSTATE SPECIFIC MEMBRANE ANTIGEN LIGANDS”と題された米国特許仮出願第62/324,097号明細書の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
低侵襲医療技術は、診断又は外科的処置の間に傷つけられる外側にある組織の量を少なくし、その結果、患者の回復時間、不快感及び有害な副作用を少なくすることを意図している。何百万もの「直視下」手術又は伝統的な手術が毎年米国において行われているけれども、これらの手術の多くは、おそらく、低侵襲の様式で行うことができる。例えば、低侵襲手術の1つの効果は、手術後の回復時間及び関連する入院期間の減少である。標準的な手術に対する平均入院期間は、典型的には、類似の低侵襲手術に対する平均入院期間よりも有意に長いため、低侵襲技術の使用が増加すると、毎年何百万ドルという病院コストが節約され得る。米国において行われる手術の多くは、おそらく、低侵襲の様式で行うことができるけれども、一部のみが、現時点では、これらの技術を利用しており、それは、器具の制限、方法の制限、及び、技術の習得に関与する追加の外科的訓練によるものである。
【0003】
低侵襲の遠隔手術システムが開発されて、外科医の機敏さを向上させると共に、外科医が遠隔地から患者に手術することを可能にしている。遠隔手術は、直接手で器具を持って動かすのではなく、手術器具の動きを操作するために、外科医が何らかの形態の遠隔制御、例えばサーボ機構等を使用する手術システムに対する一般用語である。そのような遠隔手術システムでは、外科医には、遠隔地にて手術部位の画像が提供される。適したビューア又はディスプレイ上で手術部位を見ながら、外科医は、主幹制御入力装置を操作し、それによって次に、器具の動きを制御することによって患者に外科的処置を行う。これらの入力装置は、非常に複雑な手術作業を行うのに十分な機敏さで手術器具の作業端を動かすことができる。
【0004】
遠隔手術システムを含む低侵襲医療技術は、処置が施されることになる組織の可視化を改善することによってさらに寄与され得る。組織の可視化を改善する1つの方法は、目標とする組織の可視化を可能にする色素の使用を介しており、外科医が上記の組織を除去又は温存するのを可能にする。従って、近赤外光(IR)閉鎖(closed chain)sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)リガンドの新規の融合組成物、並びに、近赤外光放射による照明下で組織を可視化する新規の方法が必要とされる。驚くべきことに、本発明は、これら及び他の必要性を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】PCT application WO2010/108125
【文献】U.S.Pat.No.6,887,854
【文献】U.S.Pat.No.6,159,657
【文献】U.S.Pat.No.6,392,036
【文献】WO02/41925
【文献】U.S.8,169,468
【非特許文献】
【0006】
【文献】Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985
【文献】Berge et al,“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1-19
【文献】Banerjee et al.,J.Med.Chern.vol.51,pp.4504-4517,2008
【文献】Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187-1193,1995
【文献】Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107-111,1995
【文献】the latest edition of Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA
【文献】Minto,J. Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102,1997
【文献】Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995
【文献】Gao Pharm.Res.12:857-863,1995
【文献】Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997
【文献】Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996
【文献】Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995
【文献】Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587,1989
【文献】Illum and Moeller in Arch.Pharm.Chemi.Sci.,Ed.2,1974,pp.167-174
【文献】Ames,B.N.,et al.,(1975)Mutation Res.31:347-363
【文献】Su et al.J.Biomol Screen 2011,16,101-111
【文献】Chang et al.,Cancer Res.,vol.59,pp.3192-3198,1999
【文献】Chang et al.,Clin.Cancer Res.,vol.5,pp.2674-2681,1999
【文献】Gong et al.,Cancer Metastasis Rev.,vol.18,pp.483-490,1999
【文献】Chang et al.,Mol.Urol.,vol.3,pp.313-320,1999
【文献】Baccala et al.,Urology,vol.70,pp.385-390,2007
【文献】Chang et al.,Urology,vol.57,pp.801-805,2001
【文献】Milowsky et al.,J.Clin.Oncol.,vol.25,pp.540-547,2007
【文献】Murphy et al.,Urology,vol.51,pp.89-97,1998
【文献】Gal sky et al.,J Clin Oneal,vol.26,pp.2147-2154,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一般に、近赤外光放射を使用する近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原リガンドを含む融合化合物を用いた照明下で組織を可視化するための新規の組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の実施形態において、本発明は、以下の式
【0009】
【化1】
を有する化合物を含む組成物を提供し、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素、C
1-4アルキル、置換C
1-4アルキル又は-CO
2Tであり、
Xは、一重結合、-O-又は-S-であり、
下付きのa、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、1から6の整数であり、
Tは、それぞれ独立して、金属イオン、H又は負電荷であり、
Zは、それぞれ独立して、H、C
1-6置換又は非置換アルキル、C
6-12置換又は非置換アリール、又は、C
6-12置換又は非置換ヘテロアリールであり、
当該組成物は、近赤外光放射による照明下での組織の可視化に適応している。
【0010】
場合によっては、当該組成物は、以下の式
【0011】
【0012】
場合によっては、当該組成物は、以下の式
【0013】
【0014】
場合によっては、当該組成物は、患者への投与に適応した、式I、II又はIIIの化合物の単位剤形を含む医薬組成物であり;この化合物の単位剤形は、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。場合によっては、当該組成物の単位剤形は、0.01、0.05、0.10、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.90、1、2、4、6又は8mg/kgの量を患者に送達する。場合によっては、当該組成物は、乾燥した単回投与形態である。
【0015】
一部の実施形態において、当該組成物は、滅菌容器内で凍結乾燥される。場合によっては、当該組成物は、滅菌容器内に含まれ、この容器は、医療機器によって読み取り可能な機械検出可能識別子を有する。
【0016】
一部の実施形態において、当該組成物は、経口剤形の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせをさらに含む。一部の実施形態において、当該組成物は、注入剤形の薬学的に許容される担体との組み合わせをさらに含む。一部の実施形態において、当該組成物は、手術部位への直接的な送達のための剤形の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせをさらに含む。
【0017】
一部の実施形態において、本発明は、近赤外光放射による照明下でPSMAを発現する組織の可視化を得るために患者への投与に適応した、単位剤形が、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する組成物の使用を提供する。場合によっては、当該使用は、近赤外光放射による照明下でヒト組織の可視化を得るためにヒト患者への投与に適応し、単位剤形は、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。
【0018】
一部の実施形態において、本発明は、PSMAを発現する組織を可視化する方法を提供し、当該方法は、式I、II又はIIIの化合物の本明細書において記載される組成物を患者に投与するステップを含む。一部の実施形態において、当該方法は、以下の式:
【0019】
【化4】
を有する化合物の組成物を患者に投与するステップであり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素、C
1-4アルキル、置換C
1-4アルキル又は-CO
2Tであり;
Xは、一重結合、-O-又は-S-であり;
下付きのa、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、1から6の整数であり;
Tは、それぞれ独立して、金属イオン、H又は負電荷であり;
Zは、それぞれ独立して、H、C
1-6置換又は非置換アルキル、C
6-12置換又は非置換アリール、又は、C
6-12置換又は非置換ヘテロアリールであり;
化合物は、近赤外光放射による照明下で組織を画像化するのに十分な量で投与される、ステップ;
近赤外光放射による照明下で組織を画像化するステップ;及び
上記の組成物を使用して患者由来の組織の画像を少なくとも1つ得るステップ;
を含む。
【0020】
一部の実施形態において、当該方法は、式Iの化合物の単位剤形を含む医薬組成物を患者に投与し、この組成物は、無菌で無毒であり、且つ、患者への投与に適応しており;化合物の単位剤形は、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。場合によっては、当該方法は、組成物の投与中、投与後、又は、投与中にも投与後にも画像を得るステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、患者に式Iの組成物を静脈内注入するステップをさらに含む。場合によっては、組成物は、循環器系に注入される。
【0021】
一部の実施形態において、当該方法は、手術が行われている又は行われることになる患者領域を可視化する、又さもなければ、医療専門家によって検査されている患者領域を見るために可視化するステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、手術領域の可視化に基づき、患者領域に対して外科的処置を行うステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、眼科的、関節鏡検査的、腹腔鏡検査的、心胸郭的、筋肉的、又は神経学的処置が行われている又は行われることになる患者領域を見るステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、患者の少なくとも一部の画像をex vivoで得るステップをさらに含む。
【0022】
一部の実施形態において、可視化されている組織は腫瘍組織である。場合によっては、可視化されている組織は形成異常又はがん性組織である。場合によっては、可視化されている組織は前立腺組織である。場合によっては、可視化されている組織は前立腺腫瘍組織である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】4つの蛍光画像を示した図である。4つの蛍光画像のそれぞれは、異なる色素及び標的リガンドを含む異なる融合化合物で処理した類似の腫瘍組織を示している。4つの画像のそれぞれにおける処理された腫瘍組織は、狭帯域の近赤外励起光に曝露した。狭帯域の近赤外励起光は、融合化合物のそれぞれに関連するフルオロフォアのそれぞれについて励起最大波長に相当すると予想される光の波長を含んだ。-
図1Aは、DyLight800+PSMA標的リガンドの組成物を有する融合化合物で処理した腫瘍組織を示している。-
図1Bは、ZW800+PSMA標的リガンドの組成物を有する融合化合物で処理した腫瘍組織を示している。ZW800は、FLARE Foundation又はCuradelによって製造されているZW800-1である。-
図1Cは、IRDye800CW+PSMA標的リガンドの組成物を有する融合化合物で処理した腫瘍組織を示している。IRDye800CWは、Li-Corによって製造されている。-
図1Dは、インドシアニングリーン(ICG)+PSMA標的リガンドの組成物を有する融合化合物で処理した腫瘍組織を示している。
【
図2】画像のそれぞれがキャプチャされたときに画像センサによって検出した平均信号強度をプロットした棒グラフを示した図である。それぞれの棒グラフの上部の「I」形状のバーは、画像センサを構成するピクセルのアレイにわたる信号強度の標準偏差に対応する。- Dylightとラベルされたバーは、DyLight800CW+PSMA標的リガンドに対応する。- IRDye800とラベルされたバーは、IRDye800+PSMA標的リガンドに対応する。- ZW800とラベルされたバーは、ZW800+PSMA標的リガンドに対応する。- ICGとラベルされたバーは、ICG+PSMA標的リガンドに対応する。- 「対照」とラベルされたバーは、いかなるタイプのフルオロフォア含有融合化合物でも処理しなかった腫瘍組織に対応する。対照に対応する平均信号強度は、使用した蛍光イメージング装置の固有のノイズにより、ZW800及びICGに対応する平均信号強度よりも高い。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.概略
本発明は、近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)リガンドを含む融合化合物を使用した、近赤外光放射による照明下で組織を可視化するための新規の組成物及び方法を提供する。驚くべきことに、本発明の融合化合物は、PSMAリガンドに対する色素の他の組み合わせと比較して有意に増加した蛍光を実証した。
II.定義
本明細書において使用される略語は、化学分野及び生物分野におけるその従来の意味を有する。
【0025】
本明細書において使用される場合「金属イオン」という用語は、金属であり、中性の金属元素に対して存在するよりも原子価殻内の電子数がより少ない結果として正電荷を持つ周期表の元素を指す。本発明において有用な金属は、薬学的に許容される組成物を形成する能力を持つ金属を含む。有用な金属には、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr及びBaが含まれる。当業者は、上記の金属がそれぞれいくつか異なる酸化状態をとることができるということを正しく理解することになる。場合によっては、最も安定した酸化状態が形成されるが、他の酸化状態が本発明において有用である。
【0026】
本明細書において使用される場合「アルキル」という用語は、示された炭素原子の数を有する直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族ラジカルを指す。例えば、C1-C6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。他のアルキル基は、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等を含むが、これらに限定されない。アルキルは、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、2~3、2~4、2~5、2~6、3~4、3~5、3~6、4~5、4~6及び5~6等、いかなる数の炭素も含み得る。アルキル基は、典型的には一価であるが、アルキル基が2つの部分を共に連結する場合等、二価であり得る。
【0027】
本明細書において使用される場合「シクロアルキル」という用語は、3から12の環原子又は示された数の原子を有する飽和又は部分的に不飽和の単環式、縮合二環式又は架橋多環式環アセンブリを指し、単環式の環は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルを含む。二環式及び多環式の環には、例えば、ノルボルナン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが含まれる。例えば、C3-8シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル及びノルボルナンが含まれる。
【0028】
本明細書において使用される場合「ハロアルキル」という用語は、水素原子の一部又は全てがハロゲン原子によって置換されている上記のアルキルを指す。ハロゲン(ハロ)は、好ましくは、クロロ又はフルオロを表すが、ブロモ又はヨードであってもよい。例えば、ハロアルキルには、トリフルオロメチル、フルオロメチル、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニル等が含まれる。「パーフルオロ」という用語は、フッ素によって置換される少なくとも2つの利用可能な水素を有する化合物又はラジカルを定義する。例えば、パーフルオロフェニルは、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニルを指し、パーフルオロメタンは1,1,1-トリフルオロメチルを指し、パーフルオロメトキシは1,1,1-トリフルオロメトキシを指す。
【0029】
本明細書において使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0030】
本明細書において使用される場合「アリール」という用語は、6から16の環炭素原子を有する単環式又は縮合二環式、三環式又はそれ以上の芳香環アセンブリを指す。例えば、アリールは、フェニル、ベンジル又はナフチル、好ましくはフェニルであってもよい。「アリレン」は、アリール基から得られる二価ラジカルを意味する。アリール基は、アルキル、アルコキシ、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アミノ-アルキル、トリフルオロメチル、アルキレンジオキシ及びオキシ-C2-C3-アルキレンから選択される1、2又は3つのラジカルにより一置換、二置換又は三置換することができ;これらの全てが、任意的に、例えば本明細書において先に記載したようにさらに置換され;又は、1-又は2-ナフチルであり;又は、1-又は2-フェナントレニルである。アルキレンジオキシは、例えばメチレンジオキシ又はエチレンジオキシ等、フェニルの2つの隣接する炭素原子に結合する二価の置換基である。オキシ-C2-C3-アルキレンも、例えばオキシエチレン又はオキシプロピレン等、フェニルの2つの隣接する炭素原子に結合する二価の置換基である。オキシ-C2-C3-アルキレン-フェニルの例は、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルである。
【0031】
本明細書において使用される場合「ヘテロアリール」という用語は、環原子のうち1から4の環原子がそれぞれN、O又はSのヘテロ原子である5から16の環原子を有する単環式又は縮合二環式又は三環式の芳香環アセンブリを指す。例えば、ヘテロアリールには、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、フラニル、ピロリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、又は、例えばアルキル、ニトロ又はハロゲンにより置換される、特に一置換又は二置換されるいかなる他のラジカルも含まれる。ピリジルは、2-、3-又は4-ピリジル、有利には2-又は3-ピリジルを表す。チエニルは2-又は3-チエニルを表す。キノリニルは、好ましくは、2-、3-又は4-キノリニルを表す。イソキノリニルは、好ましくは、1-、3-又は4-イソキノリニルを表す。ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニルはそれぞれ、好ましくは、3-ベンゾピラニル又は3-ベンゾチオピラニルを表す。チアゾリルは、好ましくは、2-又は4-チアゾリルを表し、最も好ましくは4-チアゾリルを表す。トリアゾリルは、好ましくは、1-、2-又は5-(1,2,4-トリアゾリル)である。テトラゾリルは、好ましくは5-テトラゾリルである。
【0032】
好ましくは、ヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、キノリニル、ピロリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、インダゾリル、又は、置換される、特に一置換又は二置換されるラジカルのいずれかである。
【0033】
同様に、アリール基及びヘテロアリール基に対する置換基は変化し:芳香環系におけるゼロから開殻原子価(open valences)の総数に及ぶ数の-ハロゲン、-OR’、-OC(O)R’、-NR’R’’、-SR’、-R’、-CN、-NO2、CO2R’、-CONR’R’’、-C(O)R’、-OC(O)NR’R’’、-NR’’C(O)R’、-NR’’C(O)2R’、-NR’-C(O)NR’’R’’’、-NH-C(NH2)=NH、-NR’C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R’’、-N3、-CH(Ph)2、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシ、及びパーフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され;R’、R’’及びR’’’は、独立して、水素、(C1-C8)アルキル及びヘテロアルキル、非置換アリール及びヘテロアリール、(非置換アリール)-(C1-C4)アルキル及び(非置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルから選択される。
【0034】
本明細書において使用される場合、「可視化」という用語は、近赤外光放射による照明を含む、任意の手段によって組織のグラフィック画像を得る方法を指す。
【0035】
「近赤外光放射」又は「近IR放射」という用語は、約700nmから1400nmの範囲の波長を有する光放射を指す。本明細書における任意的に複数の「波長」という用語への参照は、放射が単一の波長又は異なる波長を有する放射スペクトルであり得るということを示す。
【0036】
本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類等の哺乳動物を表し;最も好ましくは、上記の患者はヒトである。
【0037】
本明細書において使用される場合「組織」という用語は、同種異系間の又は異種間の骨、神経組織、腱及び靱帯を含む線維性結合組織、軟骨、硬膜、筋膜、心膜、筋肉、心臓弁、静脈及び動脈及び他の血管、真皮、脂肪組織、腺組織、前立腺組織、腎臓組織、脳組織、腎組織、膀胱組織、肺組織、乳房組織、膵臓組織、血管組織、腫瘍組織、がん性組織又は前立腺腫瘍組織を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において使用される場合、「滅菌/無菌」という用語は、細菌、ウイルス、及び生理活性RNA又はDNAを含む感染因子が無い系又は系の構成要素を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「無毒」という用語は、近赤外光放射による照明下での組織の可視化に効果的なレベル(治療レベル)で医薬組成物を使用した結果としての、脊椎動物に投与された場合の有害な影響の非発生を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合「単位剤形」という用語は、患者に医薬組成物を投与するために適切に使用することができるいかなる一定量も包含する。好ましくは、単位剤形は、0.01から8mg/kg、又は0.01から5mg/kg、又は0.01から1mg/kgである。適した用量範囲は、0.01、0.05、0.10、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.90、1、2、4、6又は8mg/kgも含む。当業者によって認識されるように、別の形態(例えば、医薬組成物の別の塩)が製剤中に使用される場合、その重量を調整して同等量の医薬組成物を提供することができる。
【0041】
本明細書において使用される場合「経口剤形」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味(すなわち、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、ゲルタブ及びピル等の形態の医薬組成物)を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合「注入剤形」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を指す(すなわち、例えば水、又は水/プロピレングリコール溶液等の溶液、懸濁液及び乳剤の形態の医薬組成物を指す)。
【0043】
「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」は、患者への活性薬剤の投与及び患者による吸収に寄与する物質を指し、患者に重大且つ有害な毒性学的作用を引き起こすことなく本発明の組成物に含めることができる。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、水、NaCl、生理食塩水、乳酸リンゲル液、正常なショ糖、正常なブドウ糖、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香料及び色料等が含まれる。当業者は、他の医薬賦形剤が本発明において有用であるこということを認識することになる。薬学的に許容される担体には、いかなるアジュバント、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、保存料、染料/着色料、香味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張剤、溶剤又は乳剤(emulsors)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書において使用される場合、「機械検出可能識別子」という用語は、医療機器を含む機械によって可視の又は検出可能な識別子を含む。場合によっては、医療機器は遠隔手術システムである。機械検出可能識別子は、機械検出可能識別子において直接コードされるか又は他の場所に格納される情報のアクセス又は利用を促進することができる。機械検出可能識別子の例として、マイクロチップ、無線周波数認識(RFID)タグ、バーコード(例えば、1次元又は2次元バーコード)、データ行列、クイックレスポンス(QR)コード及びホログラムが挙げられる。当業者は、他の機械検出可能識別子も本発明において有用であるということを認識することになる。
【0045】
III.組成物
A.化合物
本発明の化合物は、電磁スペクトルの近赤外領域の波長の光を吸収する式I、II及びIIIの融合化合物を含む。一部の実施形態において、本発明は、以下の式:
【0046】
【化5】
を有する化合物を含む組成物を提供し、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素、C
1-4アルキル、置換C
1-4アルキル又は-CO
2Tであり;
Xは、一重結合、-O-又は-S-であり;
下付きのa、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、1から6の整数であり、
Tは、それぞれ独立して、金属イオン、H又は負電荷であり;
Zは、それぞれ独立して、H、C
1-6置換又は非置換アルキル、C
6-12置換又は非置換アリール、又は、C
6-12置換又は非置換ヘテロアリールであり;
当該組成物は、近赤外光放射による照明下での組織の可視化に適応している。
【0047】
一部の他の実施形態において、当該組成物は、以下の式
【0048】
【0049】
一部の他の実施形態において、当該組成物は、以下の式
【0050】
【0051】
本発明の化合物は、塩として存在してもよい。本発明は、そのような塩を含む。適用可能な塩の形態の例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩、又は、ラセミ混合物を含むその混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩及びグルタミン酸等のアミノ酸を有する塩が挙げられる。これらの塩は、当業者には既知の方法によって調製することができる。ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ又はマグネシウムの塩等の塩基付加塩又は類似の塩も含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を有する場合、きちんとした又は適した不活性溶媒においてそのような化合物の中性の形態を十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等のような無機酸由来のもの、並びに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸及びメタンスルホン酸等のような有機酸由来の塩が挙げられる。アルギニン酸等のアミノ酸の塩、及び、グルクロン酸又はガラクツロン酸等のような有機酸の塩も含まれる。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性官能性も酸性官能性も有する。
【0052】
他の塩は、本発明の方法において使用される化合物の酸性塩又は塩基性塩を含む。薬学的に許容される塩の実例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸等の)塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸等の)塩、及び、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等の)塩である。薬学的に許容される塩は無毒であるということが理解される。適した薬学的に許容される塩に関するさらなる情報は、参照により本明細書に援用する非特許文献1において見ることができる。
【0053】
薬学的に許容される塩は、本明細書において記載される化合物に見られる特定の置換基に応じて比較的無毒の酸又は塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能性を有する場合、きちんとした又は適した不活性溶媒においてそのような化合物の中性の形態を十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ又はマグネシウムの塩、又は類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能性を有する場合、きちんとした又は適した不活性溶媒においてそのような化合物の中性の形態を十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等のような無機酸由来のもの、並びに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸及びメタンスルホン酸等のような比較的無毒の有機酸由来の塩が挙げられる。アルギニン酸等のアミノ酸の塩、及び、グルクロン酸又はガラクツロン酸等のような有機酸の塩も含まれる(例えば、非特許文献2を参照)。本発明のある特定の化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性官能性も酸性官能性も有する。
【0054】
化合物の中性の形態は、好ましくは、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の様式で単離することによって再生される。親の化合物の形態は、極性溶媒における溶解性等、特定の物理的性質の様々な塩の形態とは異なる。
【0055】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和の形態並びに水和物の形態を含む溶媒和の形態で存在し得る。一般に、溶媒和の形態は、非溶媒和の形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、多数の結晶又は非晶質の形態で存在してもよい。一般に、全ての物理的形態が、本発明によって熟考される用途に対して等価であり、本発明の範囲内にあるように意図される。
【0056】
一部の実施形態において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0057】
B.合成
上記の実施形態において記載された化合物は、当技術分野において既知の手順を使用して作製することができる。一般に、本発明の融合化合物は、結合を介して前立腺特異的膜抗原リガンドに近IR閉鎖sulfo-cyanine色素を結合させることによって合成することができる。使用される材料は、所望の構造及び使用される結合のタイプによって決定することができる。
【0058】
例えば、本発明の組成物において使用される前立腺特異的膜抗原リガンドは、本明細書において全てを援用する特許文献1において記載されているように合成することができる。化合物は、尿素(-NRC(O)NR-)、チオ尿素(-NRC(S)NR-)、アミド(-C(O)NR-又はNRC(O)-)、又は、エステル(-C(O)O-又はOC(O)-)等の結合を形成するために、異なる成分間の反応によって構築することができる。尿素結合は、アミンとイソシアネートとの間、又は、アミンと活性化カルボンアミド(-NRC(O)-)との間の反応によって容易に調製することができる。チオ尿素は、アミンとイソチオシアネートとの反応から容易に調製することができる。アミド(-C(O)NR-又はNRC(O)-)は、ハロゲン化アシル又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル等、活性化カルボン酸又はエステルとアミンとの間の反応によって容易に調製することができる。カルボン酸は、例えば、カルボジイミド又はカルボニルジイミダゾール(CDI)等のカップリング試薬を用いてin situで活性化することもできる。エステルは、アルコールと活性化カルボン酸との間の反応によって形成され得る。トリアゾールは、任意的に銅(Cu)触媒の存在下で、アジドとアルキンとの間の反応によって容易に調製される。
【0059】
前立腺特異的膜抗原リガンドは、非特許文献3において記載されるリジン-尿素-グルタメート化合物等、予め形成された尿素に成分を順次添加することによって調製することもできる。他の尿素ベースの化合物もビルディングブロックとして使用することができる。
【0060】
本発明の組成物において使用される近IR閉鎖sulfo-cyanine色素の例証的な合成は、本明細書において全てが援用される特許文献2及び特許文献3に記載されている(Figure 1)。加えて、DyLight 800(ThermoFisher)を含む本発明の一部のIR閉鎖sulfo-cyanine色素が市販されている。
【0061】
【化8】
上記のように、本発明の融合組成物は、前立腺特異的膜抗原リガンドに対する近IR閉鎖sulfo-cyanine色素の結合を介して、リガンド上の反応性アミンを近赤外光色素と反応させることによって合成することができる(Figure 2)。アミンとの反応のために活性化された官能基を有する多種多様の近赤外光色素が当技術分野において既知である。
【0062】
【化9】
C.製剤
本発明の組成物は、多種多様の経口的、非経口的及び局所的な剤形で調製することができる。経口剤には、患者による摂取に適した錠剤、丸剤、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等が含まれる。本発明の組成物は、注入によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内又は腹腔内に投与することもできる。また、本明細書において記載される組成物は、吸入によって、例えば鼻腔内に投与することができる。加えて、本発明の組成物は、経皮的に投与することができる。本発明の組成物は、眼内、吹送、粉末及びエアロゾル製剤(例えば、ステロイド吸入剤については、非特許文献4;非特許文献5;を参照)によって投与することもできる。従って、本発明は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物も提供する。
【0063】
本発明由来の医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態の製剤には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ、坐剤及び分散性顆粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味料、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又は被包材料としても作用し得る1つ又は複数の物質であり得る。製剤及び投与のための技術に対する詳細は、科学文献及び特許文献に十分に記載されており、例えば、非特許文献6(「Remington’s」)を参照されたい。
【0064】
粉末では、担体は微粉固体であり、微粉活性成分と混合されている。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適した割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。粉末及び錠剤は、好ましくは、本発明の化合物を5%又は10%から70%有する。
【0065】
適した固体賦形剤として、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカント;低融点ワックス;ココアバター;炭水化物;ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトール、トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ又は他の植物由来のデンプンを含むがこれらに限定されない糖質;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はナトリウムカルボキシメチルセルロース等のセルロース;及び、アラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;並びに、ゼラチン及びコラーゲンを含むがこれらに限定されないタンパク質;が含まれるが、これらに限定されない。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム等のその塩等、崩壊剤又は可溶化剤を添加することができる。
【0066】
糖衣錠のコアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適した有機溶媒又は溶媒混合物も含有し得る濃縮糖溶液等の適したコーティングが提供される。製品の識別のため、又は、活性化合物の量(すなわち用量)を特徴付けるために、色素又はピグメントが錠剤又は糖衣錠のコーティングに添加されてもよい。本発明の医薬組成物は、例えば、ゼラチンで作製される押し込み式カプセル、並びに、グリセロール又はソルビトール等のコーティング及びゼラチンで作製される軟質密封カプセルを使用して経口的に使用することもできる。押し込み式カプセルは、本発明の組成物を、ラクトース又はデンプン等の結合剤又は充填剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、及び、任意的に安定剤と混合して含有することができる。軟質カプセルでは、本発明の組成物は、安定剤の有無に関わらず脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコール等の適した液体に溶解又は懸濁され得る。
【0067】
液体形態の製剤には、例えば水又は水/プロピレングリコール溶液等、溶液、懸濁液、及び乳剤が含まれる。非経口注入のために、液体製剤を水性ポリエチレングリコール溶液の溶液中で製剤化することができる。
【0068】
経口使用に適した水溶液は、本発明の組成物を水に溶解し、所望により適した着色料、香料、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム等の粘性材料、自然発生の(例えばレシチン等の)ホスファチド等の湿潤剤又は分散剤、アルキレンオキシドと脂肪酸(例えば、ポリオキシエチレンステアラート)との縮合物、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)との縮合物、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)との縮合物、又は、エチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)との縮合物と共に微粉活性成分を水に分散させることによって作製することができる。水性の懸濁液は、p-ヒドロキシ安息香酸エチル又はn-プロピル等の1つ又は複数の保存料、1つ又は複数の着色料、1つ又は複数の香味料及びスクロース、アスパルテーム又はサッカリン等の1つ又は複数の甘味料を含有することもできる。製剤は、モル浸透圧濃度に対して調整することができる。
【0069】
経口投与のために液体形態の製剤に使用直前に変換されることを意図した固体形態の製剤も含まれる。そのような液体の形態には、溶液、懸濁液及び乳剤が含まれる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色料、香料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤及び可溶化剤等を含有し得る。
【0070】
油懸濁液を、落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はヤシ油等の植物油において、又は、液体パラフィン等の鉱油において、又は、これらの油の混合物において本発明の組成物を懸濁させることによって製剤化することができる。油懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコール等の増粘剤を含有することができる。グリセロール、ソルビトール又はスクロース等、口当たりのよい経口製剤を提供するために甘味料を添加することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸等の酸化防止剤の添加によって保存することができる。注入可能な油溶媒の一例として、非特許文献7が参照されたい。本発明の医薬製剤は、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、上記の植物油又は鉱油、又は、これらの油の混合物であり得る。適した乳化剤には、アラビアゴム及びトラガカントゴム等の自然発生のゴム、大豆レシチン等の自然発生のリン脂質、ソルビタンモノオレエート等の脂肪酸及びヘキシトール無水物から得られるエステル又は部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等、これらの部分エステルのエチレンオキシドとの縮合物が含まれる。乳剤は、シロップ及びエリキシルの製剤におけるように、甘味料及び香味料を含有することもできる。そのような製剤は、粘滑剤、保存料又は着色料を含有することもできる。
【0071】
本発明の組成物は、体内で徐放するためのミクロスフェアとして送達することもできる。例えば、ミクロスフェアは、皮下に徐々に放出する薬物含有ミクロスフェアの皮内注射を介した投与のために(非特許文献8を参照されたい);生分解性及び注入可能ゲル製剤として(例えば非特許文献9を参照されたい);又は、経口投与のためのミクロスフェアとして(例えば非特許文献10を参照されたい);製剤化することができる。経皮ルートも皮内ルートも、何週間又は何ヶ月にもわたって一定の送達をもたらす。
【0072】
別の実施形態では、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与、又は、器官の管腔又は体腔への投与等、非経口投与のために製剤化することができる。投与のための製剤は、一般的に、薬学的に許容される担体中に溶解される本発明の組成物の溶液を含むことになる。許容される溶媒及び溶剤の中でも、利用することができるものは、水及びリンゲル液、等張食塩水である。加えて、滅菌不揮発性油を、従来の方式で、溶媒又は懸濁媒体として利用することができる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むいかなる無刺激の不揮発性油も利用することができる。加えて、オレイン酸等の脂肪酸も注入剤の調製において同様に使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般的に、望ましくない物質を含まない。これらの製剤は、放射線、化学物質、熱/圧力及び濾過による滅菌技術を含む従来の周知の技術によって滅菌することができる。製剤は、pH調整剤及び緩衝剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウム等の毒性調整剤等、生理学的条件に近似するのに要求される薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。これらの製剤における本発明の組成物の濃度は、広範囲に変化し得るものであり、選択される特定の投与モード及び患者のニーズに応じて、主に流体量、粘度及び体重等に基づいて選択されることになる。IV投与に対して、製剤は、滅菌注入水性又は油性懸濁液等の滅菌注入製剤であってもよい。この懸濁液は、それらの適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注入製剤は、1,3-ブタンジオールの溶液等、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注入溶液又は懸濁液であってもよい。
【0073】
別の実施形態では、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するリポソームの使用によって送達することができるか、又は、エンドサイトーシスが行われ、すなわち、リポソームに結合したか又はオリゴヌクレオチドに直接結合したリガンドであり、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合してエンドサイトーシスをもたらすリガンドを利用することによって送達することができる。リポソームを使用することによって、特にリポソームの表面が標的細胞に特異的なリガンドを保有する、又さもなければ、特定の器官に優先的に向けられる場合に、本発明の組成物の送達をin vivoで標的細胞に集中させることができる(例えば、非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;を参照されたい)。
【0074】
脂質ベースの薬物送達システムには、脂質溶液、脂質乳剤、脂質分散剤、自己乳化薬物送達システム(SEDDS)及び自己微小乳化薬物送達システム(SMEDDS)が含まれる。特に、SEDDS及びSMEDDSは、水性媒体中に自発的に分散し、微細な乳剤(SEDDS)又は微小乳剤(SMEDDS)を形成することができる脂質、界面活性剤及び補助界面活性剤の等方性混合物である。本発明の製剤に有用な脂質には、ゴマ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、脂肪酸エステル、グリセロールエステル、Labrafil(登録商標)、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)、Solutol(登録商標)、Tween(登録商標)、Capryol(登録商標)、Capmul(登録商標)、Captex(登録商標)及びPeceol(登録商標)を含むがこれらに限定されないいかなる天然又は合成の脂質も含まれる。
【0075】
一部の実施形態において、本発明の組成物は無菌であり、一般的に、望ましくない物質を含まない。化合物及び組成物は、熱/圧力、ガスプラズマ、蒸気、放射線、化学物質及び濾過による滅菌技術を含む従来の周知の技術によって滅菌することができる。
【0076】
例えば、最終熱滅菌を使用して、最終製剤内の全ての生存微生物を破壊することができる。オートクレーブが、一般的に、最終パッケージング内の製剤の最終熱滅菌を成し遂げるために使用される。最終製品の最終滅菌を達成するための医薬品産業における典型的なオートクレーブサイクルは、121℃で15分間である。本発明の組成物は、許容される安定性をもって、5から40分に及ぶ時間、115から130℃に及ぶ温度でオートクレーブ処理することができる。オートクレーブ処理は、好ましくは、119から122℃の温度範囲で10から36分に及ぶ期間実行される。
【0077】
上記の組成物は、製剤に対して使用することができる乾熱滅菌の方法を開示している特許文献4においてKarlsson等によって記載されているように、乾熱によって滅菌することもできる。組成物は、組成物の滅菌のための低温殺菌と同様の迅速な方法を開示しているBreath Limitedの特許文献5において記載されているように滅菌することもできる。この方法は、滅菌することになる組成物をステンレス鋼のパイプに通してポンプで送り込み、組成物の温度を約2~20秒間約130~145℃に急速に上昇させ、続いて周囲条件まで数秒で急速冷却することを伴う。
【0078】
組成物は、非特許文献14によって記載されているような照射によって滅菌することもできる。組成物は、UV、X線、ガンマ線、eビーム放射、火炎、ベーキング及び化学的な滅菌によって滅菌することもできる。
【0079】
或いは、本発明による滅菌の医薬組成物は、無菌処理技術を使用して調製されてもよい。熱滅菌には耐えないが、成分の全てが無菌である医薬品を調製するために、無菌充填が通常使用される。滅菌材料及び制御された作業環境を使用することによって、無菌性が維持される。全ての容器及び装置は、好ましくは、充填に先立ち熱滅菌によって滅菌される。容器(例えば、バイアル、アンプル、注入バッグ、ボトル又は注射器)は、次に、無菌条件下で充填される。
【0080】
一部の実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、近赤外光放射による照明下で組織を可視化するのに効果的なレベルで脊椎動物に投与された場合、無毒であり、一般的に有害な影響を含まない。本発明の化合物及び組成物の毒性は、標的(生物、器官、組織又は細胞)に対するその効果を測定することによって評価することができる。個々の標的は、典型的には、同じ用量の化合物に対して異なるレベルの応答を有するため、集団における所与の個体の結果の確率を関連付ける毒性の集団レベルの測定値がしばしば使用される。化合物の毒性学を、in vitro(生体外)及びin vivo(生体内)研究を含む従来の周知の技術によって決定することができる。
【0081】
例えば、化合物の毒性を評価する場合に、代謝安定性の決定が、化合物の経口バイオアベイラビリティ及び全身クリアランスを定めることにおけるいくつかの主要な決定要因の1つであるため、一般的に検査される。化合物は経口投与された後で、第一に消化管内腔内、並びに、腸管上皮内の代謝酵素に遭遇する。化合物は腸管上皮を通って血流内に吸収された後で、第一に門脈を介して肝臓に送達される。化合物は、初回通過代謝として知られるプロセスである体循環に達する前に、腸管代謝又は肝代謝によって効果的に除去することができる。肝臓並びに肝外組織内の代謝に対する化合物の安定性は、最終的に体循環内に存在する化合物の濃度を決定し、その体内での滞留時間及び半減期に影響を及ぼすことになる。チトクロムP450(CYP)酵素は、主に肝臓内に存在するが、腸壁、肺、腎臓及び他の肝外器官内にも存在し、化合物代謝に関与する主要な酵素である。多くの化合物は、直接又は促進された身体からの排泄によって、CYPによる非活性化を受ける。また、多くの化合物は、CYPによって生理活性化されて、その活性化合物を形成する。従って、CYP酵素に対する化合物の反応性を決定することは、化合物の代謝安定性を評価するために一般的に使用される。
【0082】
Ames復帰突然変異試験は、化合物の毒性を評価するための別の一般的な毒性学試験である。Ames試験は、いくつか異なる試験株を利用し、各試験株は、ヒスチジン(his)生合成オペロンを含む遺伝子の1つにおいて異なる突然変異を有する(非特許文献15)。ヒスチジンの非存在下で増殖する能力を持つ試験試料における復帰突然変異体(すなわち変異体)細菌の検出は、評価段階にある化合物が遺伝毒性(すなわち変異原性)活性によって特徴付けられるということを示す。Ames試験は、試験株のうち1つ又は複数の試験株において発生し得るいくつか異なるタイプの突然変異(遺伝子損傷)を検出する能力を有する。薬物候補の遺伝毒性活性を評価するためのin vitroでの細菌アッセイの使用の実施は、細菌において変異原性である物質が実験動物において発がん性である可能性があり、延長線上で考えると、ヒトに対して発がん性又は変異原性であり得るという予測に基づいている。
【0083】
加えて、ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)アッセイを使用して、化合物の潜在的な心臓毒性を評価することができる。心臓毒性は、QT間隔が延長され、生命を危うくする不整脈のリスクが上昇する場合に生じ得る。QT間隔は、心臓の電気サイクルにおけるQ波の開始とT波の終了との間の時間の尺度である。QT間隔は、心室の電気的脱分極及び再分極を表している。延長されたQT間隔は、最も一般的に、薬物による又はチャネルタンパク質の細胞膜発現の阻害によるイオンチャネルの直接的な遮断によるhERGカリウムイオンチャネルを通る電流の損失に関連している(非特許文献16)。従って、in vitroでのhERGスクリーニングアッセイを使用して、hERG膜輸送機能の破壊又は阻害を検出し、化合物の潜在的な心臓毒性を評価することができる。
【0084】
化合物の毒性を評価する他の方法には、ある割合の集団に対して致命的であるレベル(平均致死量LD50又は平均致死濃度LC50)を決定するために、動物の群に比較的大量の試験化合物を投与するin vivo研究が含まれる。化合物の毒性は、化合物が動物において心臓、血圧、中枢神経系(CNS)、体重、食物摂取量、肉眼的病理又は顕微鏡的病理、臨床病理又は呼吸尺度に対して統計学的に有意な負の効果をもたらすかどうかを検査することによってもin vivoで評価することができる。
【0085】
例えば、式IIIの組成物の代謝安定性を評価するin vitro研究のセットにおいて、化合物は、ネズミ、イヌ及びヒトの血漿中で安定であるようであり、代謝産物には分解されないようであり、さらに、9つの主要なCYP肝臓酵素に対していかなる有意な反応性も示さないということが示された。加えて、DNAにおいて突然変異を引き起こす化学物質の能力を決定する広く使用されているin vitroでの方法であるAmes復帰突然変異試験において、式IIIの組成物は、試験された用量のいずれにおいてもいかなる変異原性も示さない。あり得る心臓毒性作用を決定するためのヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)アッセイを使用して、さらなる安全性薬理をin vitroで評価した。このアッセイを利用した研究は、式IIIの組成物が最も高い試験濃度(可視化に効果的なレベルより30倍高い)にてhERG機能のわずかな(11%の)阻害しか示さないということを決定し、この濃度でさえも式IIIの組成物はいかなる臨床的に脅かされる生理学的な心臓の変化にも翻訳される可能性は低いと示している。
【0086】
さらに、式IIIの組成物の毒性学は、非臨床的なin vivo研究においてもネズミ及びイヌの両方において調査した。ラジオテレメトリ監視されたイヌにおける式IIIの組成物の心臓及び呼吸の安全性に対する影響を評価する研究は、可視化に要求されるものよりも80倍高い用量での心臓、血圧又は呼吸の測定に対して統計的に有意な負の効果を示さなかった。ネズミにおいて28日間にわたって行ったさらなる安全性薬理は、1日当たり可視化レベルの160倍の用量が、中枢神経系(CNS)に対する生物学的に意味ある影響を示さなかったということを示した。最後に、イヌにおける一連の毒性学的研究が、可視化レベルの100倍の用量を示し、体重、食物摂取量、肉眼的病理又は顕微鏡的病理並びに臨床病理(臨床的な血清化学、血液学、凝固及び尿検査)に対する有意な影響を示さなかった。ネズミ、イヌ又はブタの動物モデルにおいて、式IIIの組成物のいかなるの試験用量でも死亡は観察されなかった。
【0087】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、簡便な乾燥保存及び輸送のために滅菌容器内で凍結乾燥することができる。その後、凍結乾燥した組成物を滅菌水で元に戻すことによって、すぐに使用できる製剤を作製することができる。「凍結乾燥」、「凍結乾燥した」及び「フリーズドライの」という用語は、乾燥されることになる材料が最初に凍結され、次に氷又は凍結された溶媒が真空環境での昇華によって除去されるプロセスを指す。保存時の凍結乾燥された製品の安定性を高めるために、賦形剤が凍結乾燥前の製剤に含まれてもよい。
【0088】
一部の実施形態において、組成物は、滅菌容器内に有することができ、容器は、医療機器によって読み取り可能な機械検出可能識別子を有する。機械検出可能識別子の例として、マイクロチップ、無線周波数認識(RFID)タグ、バーコード(例えば、1次元又は2次元バーコード等)、データ行列、クイックレスポンス(QR)コード及びホログラムが挙げられる。当業者は、他の機械検出可能識別子も本発明において有用であるということを認識することになる。
【0089】
場合によっては、機械検出可能識別子は、医療機器と通信しているコンピュータシステムによって検出可能及び/又は読み取り可能なマイクロチップ、集積回路(IC)チップ、又は、マイクロチップからの電気信号を含み得る。場合によっては、機械検出可能識別子は、無線周波数認識(RFID)タグを含む。RFIDタグは、トランスポンダと呼ばれることもある。RFIDタグは、一般的に、ICチップ、アンテナ、接着材で形成された装置であり、外部のリーダ又はインテロゲータとの間で所定のデータを送受信するために使用される。RFIDタグは、非接触方法を使用することによってリーダとの間でデータを送受信することができる。使用される周波数の振幅に従って、誘導結合、後方散乱及び表面弾性波(SAW)を使用することができる。電磁波を使用して、全二重通信方法、半二重通信(HDX)方法又はシーケンシャル(SEQ)方法を使用することによって、リーダへ又はリーダからデータを送受信することができる。
【0090】
場合によっては、機械検出可能識別子はバーコードを含み得る。バーコードは、一次元フォーマット及び二次元フォーマットを含む、いかなる機械読み取り可能フォーマットも含む。一次元フォーマットには、例えば、ユニバーサルプロダクトコード(UPC)及び省スペースシンボル(RSS)が含まれる。二次元フォーマット又は機械読み取り可能マトリックスには、例えば、クイックレスポンス(QR)コード及びデータ行列が含まれる。
【0091】
場合によっては、医療機器は、機械検出可能識別子を検出するように構成することができる。一例では、医療機器は、本開示において記載されているもの等の色素と共に使用するための特別な画像モード(例えば、蛍光画像モード等)を含む遠隔手術システムである。蛍光画像モードを含む遠隔手術システムの一例が、本明細書においてその全体が援用される“Augmented Stereoscopic Visualization for a Surgical Robot”と題された特許文献6に記載されている。場合によっては、医療機器は、画像装置に表示される機械検出可能識別子を走査、読み取り、一見、又さもなければ、検出することができる画像装置を組み込むことができる。一態様では、医療機器は、医療機器との使用に適合性があると同定された色素に対応する既知の機械検出可能識別子の存在を医療機器が検出した場合にのみ、ユーザが医療機器の蛍光画像モードにアクセスすることを可能にする。対照的に、医療機器が既知の機械検出可能識別子を検出しない場合、医療機器は、ユーザが蛍光画像モード及び関連する機能性にアクセスすることを可能にしない。画像装置は、光学スキャナ、バーコードリーダ、カメラ、及び内視鏡等の遠隔手術システム内に含まれる画像装置を含み得る。次に、機械検出可能識別子に関連する情報は、画像装置を使用して医療機器によって検索することができる。識別子が検出されると、自動プロセスが開始されて、所定のアクションを発生させるか、又は、特定のデータが検索されるか又は特定のデータにアクセスされるようにしてもよい。機械検出可能識別子上にコードされた情報は、患者に本発明の組成物を投与する等のアクションをトリガするための指示を含んでもよい。一部の実施形態において、機械検出可能識別子は、暗号化されていないe-pedigree情報を所望のフォーマットで含む。e-pedigree情報は、例えば、ロット、効力、有効期限、全米医薬品コード、電子製品コード、製造業者、販売業者、卸売業者、薬局及び/又は販売可能ユニットの独特の識別子を含み得る。
【0092】
一部の実施形態において、機械検出可能識別子を有する滅菌容器は、医療機器と結合するように構成された流体出口を含む。場合によっては、機械検出可能識別子の流体出口が医療機器に機械的に固定される。
D.投与
本発明の化合物及び組成物は、経口的、非経口的及び局所的な方法を含むいかなる適した手段によっても送達することができる。
【0093】
本発明の化合物及び組成物は、経口的、非経口的及び局所的な方法を含むいかなる適した手段によっても送達することができる。局所的なルートによる経皮投与方法は、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末及びエアロゾルとして製剤化され得る。
【0094】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。そのような形態では、製剤は、適切な量の本発明の化合物及び組成物を含有する単位服用量に細分される。単位剤形は、包装された製剤であってもよく、そのパッケージは、バイアル又はアンプルにおいて小包にされた錠剤、カプセル及び粉末等、別々の量の製剤を含有する。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ又はロゼンジ自体であってもよく、又は、適切な数の包装された形態の上記の単位剤形のうちいずれかであってもよい。
【0095】
一部の実施形態において、同時製剤、すなわち、本発明の化合物及び組成物及び任意の他の薬剤を含む単一の医薬組成物の調製によって同時投与を成し遂げることができる。或いは、様々な成分を別々に製剤化することができる。
【0096】
本発明の組成物及び任意の他の薬剤は、いかなる適した量でも存在することができ、患者の体重及び年齢、疾患の状態等を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存し得る。適した用量範囲は、約0.01から8mg/kg、又は約0.01から5mg/kg、又は約0.01から1mg/kgを含む。適した用量範囲は、0.01、0.05、0.10、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.90、1、2、4、6又は8mg/kgも含む。
【0097】
当該組成物は、他の適合性組成物を含有することもできる。本明細書において記載される組成物は、互いに、近赤外光放射による照明下での組織の可視化に有用であると既知の他の活性組成物と、又は、単独では効果的ではないかもしれないが、活性組成物の有効性に寄与し得る組成物と組み合わせて使用することができる。
【0098】
本明細書において利用されてきた用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、示され説明された特徴又はその一部の等価物を排除するようなそのような用語及び表現の使用は意図されていない。様々な修正が、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で可能であることを認識されたい。さらに、本発明のいかなる実施形態のいかなる1つ又は複数の特徴も、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のいかなる他の実施形態のいかなる1つ又は複数の他の特徴とも組み合わせることができる。本明細書において引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書において援用される。
【0099】
IV.組織を可視化する方法
本発明は、一般に、近赤外光放射を使用する近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原リガンドを含む融合化合物を用いた照明下で組織を可視化するための新規の組成物及び方法を提供する。
【0100】
一部の実施形態において、本発明は、PSMAを発現する組織を可視化する方法を提供し、当該方法は、以下の式:
【0101】
【化10】
を有する化合物の組成物を患者に投与するステップであり、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素、C
1-4アルキル、置換C
1-4アルキル又は-CO
2Tであり;
Xは、一重結合、-O-又は-S-であり;
下付きのa、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、1から6の整数であり;
Tは、それぞれ独立して、金属イオン、H又は負電荷であり;
Zは、それぞれ独立して、H、C
1-6置換又は非置換アルキル、C
6-12置換又は非置換アリール、又は、C
6-12置換又は非置換ヘテロアリールであり;
化合物は、近赤外光放射による照明下で組織を画像化するのに十分な量で投与される、ステップ;
近赤外光放射による照明下で組織を画像化するステップ;及び
上記の組成物を使用して患者由来の組織の画像を少なくとも1つ得るステップ;
を含む。
【0102】
一部の実施形態において、当該方法は、式Iの化合物の単位剤形を含む医薬組成物を患者に投与し、組成物は、無菌で無毒であり、患者への投与に適応し;化合物の単位剤形は、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。場合によっては、当該方法は、組成物の投与中、投与後、又は、投与中にも投与後にも画像を得るステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、患者に式Iの組成物を静脈内注入するステップをさらに含む。場合によっては、組成物は循環器系に注入される。
【0103】
一部の実施形態において、本発明は、近赤外光放射による照明下でのPSMAを発現する組織の可視化を得るために患者への投与に適応した組成物の使用を提供し、その単位剤形が、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。場合によっては、当該使用は、近赤外光放射による照明下でのヒト組織の可視化を得るためにヒト患者への投与に適応し、その単位剤形は、0.01から8mg/kgの量を患者に送達する。
【0104】
一部の実施形態において、当該方法は、手術が行われている又は行われることになる患者領域を可視化する、又さもなければ、医療専門家によって検査されている患者領域を見るために可視化するステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、手術領域の可視化に基づき、患者領域に対して外科的処置を行うステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、眼科的、関節鏡検査的、腹腔鏡検査的、心胸郭的、筋肉的、又は神経学的処置が行われている又は行われることになる患者領域を見るステップをさらに含む。場合によっては、当該方法は、患者の少なくとも一部の画像をex vivoで得るステップをさらに含む。
【0105】
一部の実施形態において、組織の可視化における改善は、標的にされた組織の可視化を可能にする色素の使用を介して達成することができ、近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)リガンドの融合組成物によることを含む。PSMAは、前立腺腫瘍上皮において発現されるけれども、多くの固形腫瘍の血管新生においても発現される(非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23)。結果として、PSMAリガンドは、腎腫瘍、膀胱腫瘍、肺腫瘍、乳腺腫瘍、直腸結腸腫瘍及び膵腫瘍を同定するために使用されてきた(非特許文献23)。PSMAリガンドは、ヒト対象において効果的な血管標的剤であることが判明している。他のレポートは、特定の腫瘍タイプにおけるPSMA発現をさらに研究した。例えば、腎明細胞癌は、乳頭変種よりも血管新生において有意に多くのPSMAを発現するということをBaccala等は記述している(非特許文献21)。さらに、良性の腎病変である血管筋脂肪腫は、PSMAを発現しないことがわかってきている。細胞外活性部位を有する酵素として、PSMAは、前立腺癌自体に加えて固形腫瘍の血管新生を画像化する及びそれに向けられた治療のための優れた標的となる。PSMAベースの薬剤は、このマーカーの存在を報告することができ、これはPCaにおける重要な予後決定因子としてますます認識されており(非特許文献24)、種々の新しいPCa療法に対する標的でもある(非特許文献25)。
【0106】
従って、近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及びPSMAリガンドの融合化合物を含む本発明の組成物を使用して、種々の腫瘍組織を可視化することができる。場合によっては、可視化されている腫瘍組織は、前立腺組織、腎臓組織、脳組織、腎組織、膀胱組織、肺組織、乳房組織、膵臓組織、血管組織、腫瘍組織、がん組織又は前立腺腫瘍組織である。場合によっては、可視化されている組織はがん組織である。場合によっては、可視化されている組織は前立腺組織である。場合によっては、可視化されている組織は前立腺腫瘍組織である。
【0107】
場合によっては、当該方法は、da Vinci Surgical SystemのFirefly蛍光と組み合わせた本発明の組成物の使用をさらに含み、増強された視野を提供して、可視化が困難な組織を改良して外科的有効性を高め、損傷率を低下させ、全ての対象とする組織を除去しているという自信及び保証を外科医に提供することによって、おそらく手術をスピードアップする。例えば、前立腺癌手術中の断端陽性率は30%と高くある恐れがあり、癌組織は、それを全て除去しようと試みているにもかかわらず男性の体内に残されていることを意味する。そのような患者は、外部照射療法、近接照射療法、切除及びホルモン療法を含むがこれらに限定されない後の治療を必要とすることが頻繁にある。加えて、前立腺手術中の神経損傷から生じる勃起不全及び失禁の率は、それぞれ50%及び20%に達し得る。近IR閉鎖sulfo-cyanine色素及びPSMAリガンドの融合化合物を含む本発明の組成物は、前立腺組織と神経組織との間のコントラストを増加させるために使用することもでき、神経組織及び括約筋組織に対する結果として生じる損傷を回避するのに寄与している。従って、da Vinci Surgical SystemのFirefly蛍光と組み合わせた本発明の組成物の使用は、増強された視野を提供して、可視化が困難な組織を改良して切除断端陽性率を低くし、有害な副作用を少なくし、おそらく手術をスピードアップする。
【0108】
V.実施例
【実施例1】
【0109】
照明下での腫瘍組織の可視化
4つの類似の腫瘍組織を、異なる色素及び標的リガンドを含む4つの異なる融合化合物で処理した。4つの融合化合物は、DyLight800及びPSMA標的リガンド、IRDye800CW及びPSMA標的リガンド、ZW800及びPSMA標的リガンド、及び、ICG及びPSMA標的リガンドを含む。次に、
図1A~1Dを生成するために、4つの画像のそれぞれにおける処理した腫瘍組織を狭帯域の近IR励起光に曝露した。狭帯域の近IR励起光は、異なる化合物のそれぞれに関連するフルオロフォアのそれぞれについて励起最大波長に相当すると予想される光の波長を含んだ。
【0110】
図2において示されているように、DyLight800及びPSMA標的リガンドを含む融合化合物は、有意により多くの蛍光を示した。蛍光の有意差は、以下の理由の少なくとも1つによるものであり得る:(1)ZW800、IRDye800CW又はICGをPSMA標的リガンドに結合させることは、腫瘍組織上のPSMA結合部位へのPSMA標的リガンドの結合親和性に悪影響を与えた;(2)ZW800、IRDye800CW又はICGをPSMA標的リガンドに結合させることは、ZW800、IRDye800CW又はICGの蛍光部分の蛍光特性に悪影響を及ぼした。対照的に、DyLight800をPSMA標的リガンドに結合させることは、これらの副作用のいずれも有さなかった。
【実施例2】
【0111】
照明下での前立腺組織の可視化
10mlの滅菌水中20mgの式IIIの化合物を患者に静脈内投与することができる。次に、腹腔鏡のポートを配置し、ポートにda Vinci Surgical Systemを接続することができる。次に、システムの内視鏡を患者の前立腺に向けることができ、約800nmのレーザー励起を使用して、前立腺内の式IIIの組成物を励起することができる。少量の青色光及び緑色光を放出させて、背景の解剖学的構造の可視化を可能にすることもできる。投与の約2~24時間後、式IIIの組成物がPSMAに結合するに従い、前立腺及び前立腺腫瘍組織の可視化を達成することができる。