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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/808 20210101AFI20221003BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20221003BHJP
   A61M 60/221 20210101ALI20221003BHJP
   A61M 60/232 20210101ALI20221003BHJP
   A61M 60/416 20210101ALI20221003BHJP
【FI】
A61M60/808
A61M60/174
A61M60/221
A61M60/232
A61M60/416
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018563331
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2018000984
(87)【国際公開番号】W WO2018135477
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2017006407
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】森 武寿
(72)【発明者】
【氏名】畑 優
(72)【発明者】
【氏名】野尻 利彦
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-501396(JP,A)
【文献】特表2008-518141(JP,A)
【文献】特開2014-47711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0294727(US,A1)
【文献】特表2012-531975(JP,A)
【文献】特表2008-519624(JP,A)
【文献】特表2002-541986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00 - 60/90
F04D 29/00 - 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるハブ(22)と、前記ハブ(22)の外周部に設けられた羽根構造(23)とを有するインペラ(12)を備えた血液ポンプ(10)であって、
前記インペラ(12)は、弾性体からなり、前記羽根構造(23)が軸方向先端側に倒れつつ捩じれて折り畳み可能であり、
前記羽根構造(23)は、軸方向に複数段の羽根列(25)を有し、
前記複数段の羽根列(25)の各々は、周方向に間隔を置いて配置された複数の羽根(26a、26b)を有し、
前記複数段の羽根列(25)のうち最も先端側に配置された先端側羽根列(25A)を構成する前記複数の羽根(26a)の各々は、当該羽根の根元部である径方向内端部の先端部(26at)が、前記ハブ(22)の先端部(22c)よりも先端方向に突出しており、
前記先端側羽根列(25A)を構成する前記複数の羽根(26a)の前記先端部(26at)間には、空間(30)が形成されており
前記先端側羽根列(25A)を構成する前記複数の羽根(26a)の各々は、前記インペラ(12)の径方向外側に向かって軸方向長さが短くなる三角形状又は台形状であり、且つ前記根元部の前記先端部(26at)が、当該羽根(26a)の径方向外端部の先端部よりも先端側に位置している、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項2】
請求項1記載の血液ポンプ(10)において、
前記複数段の羽根列(25)は、前記先端側羽根列(25A)よりも基端側に配置された基端側羽根列(25B)を有し、
前記基端側羽根列(25B)を構成する前記複数の羽根(26b)の各々の径方向内端部(34)の基端部には、前記ハブ(22)よりも径方向外側で先端方向に向かって凹む切欠部(36)が当該羽根(26b)を厚み方向に貫通して設けられている、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血液ポンプ(10)において、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)は、前記ハブ(22)との軸方向の接続位置が異なる、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(10)において、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)は、前記ハブ(22)との周方向の接続位置が異なる、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項5】
請求項4記載の血液ポンプ(10)において、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)の前記羽根(26)では、先端側の前記羽根(26)が、基端側の前記羽根(26)よりも前記インペラ(12)の回転方向側に位置する、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項6】
回転駆動されるハブ(22)と、前記ハブ(22)の外周部に設けられた羽根構造(23)とを有するインペラ(12)を備えた血液ポンプ(10)であって、
前記インペラ(12)は、弾性体からなり、前記羽根構造(23)が軸方向に倒れつつ捩じれて折り畳み可能であり、
前記羽根構造(23)は、軸方向に複数段の羽根列(25)を有し、
前記羽根列(25)の各々は、周方向に間隔を置いて配置された複数の羽根(26)を有し、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)では、先端側の前記羽根列(25A)の前記羽根(26)間に、基端側の前記羽根列(25B)の前記羽根(26)が折り畳まれるように、前記羽根(26)が配置されている、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項7】
請求項6記載の血液ポンプ(10)において、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)は、前記ハブ(22)との周方向の接続位置が異なる、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【請求項8】
請求項7記載の血液ポンプ(10)において、
軸方向に隣接する前記羽根列(25)間の周方向角度差は、前記羽根列(25)を構成する前記複数の羽根(26)の配置角度間隔よりも小さい、
ことを特徴とする血液ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み可能なインペラを備えた血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全とは、心機能低下のために、全身組織における代謝に必要な血液量を心臓から駆出できない状態をいう。心機能が著しく低下した際には、心拍出を補助することが必要である。近年、経皮的に心臓に挿入する血液ポンプ(補助ポンプ)が開発されている。
【0003】
米国特許第8814933号明細書には、折り畳んで血管内に挿入可能な血液ポンプが開示されている。この血液ポンプは、複数のブレードを設けた回転可能なインペラを備え、インペラによって軸方向の血流を径方向に偏向させる、いわゆる遠心ポンプであって、インペラの形状は水車のような形態を有する。
【発明の概要】
【0004】
血管を経由した心臓への挿入を容易にするためには、折り畳み可能な血液ポンプは、折り畳み状態では出来るだけ細いことが好ましい。しかしながら、米国特許第8814933号明細書の血液ポンプでは、インペラの形状上、拡張状態と折り畳み状態との外径差を大きくすることが難しい(小さく折り畳むことが難しい)。このため、所望の流量を確保するために拡張状態でのインペラ外径を大きく設定すると、折り畳み状態での外径を十分に小さくすることができない。逆に折り畳み状態でのインペラ外径を小さくすると、拡張状態でのインペラ外径を十分に稼ぐことができない。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、所望のポンプ性能を確保しつつ、インペラをより小さく折り畳むことが可能な血液ポンプを提供することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、回転駆動されるハブと、前記ハブの外周部に設けられた羽根構造とを有するインペラを備えた血液ポンプであって、前記インペラは、弾性体からなり、前記羽根構造が軸方向に倒れつつ捩じれて折り畳み可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明の血液ポンプによれば、弾性体からなるインペラの羽根構造が軸方向に倒れつつ捩じれて折り畳み可能に構成されている。このため、インペラは、拡張状態と折り畳み状態との間の外径変化(変形率)を大きくすることができる。従って、所望のポンプ性能を確保しつつ、より小さく折り畳むことが可能となる。
【0008】
前記羽根構造は、軸方向に複数段の羽根を有してもよい。
【0009】
この構成により、羽根構造がより変形しやすくなるため、一層折り畳みやすくなる。
【0010】
軸方向に隣接する前記羽根は、前記ハブとの軸方向の接続位置が異なってもよい。
【0011】
この構成により、軸方向に沿った羽根の長さを設定しやすく、ポンプ性能の向上が図られる。
【0012】
軸方向に隣接する前記羽根は、前記ハブとの周方向の接続位置が異なってもよい。
【0013】
この構成により、折り畳み時に軸方向に隣接する羽根同士の干渉が抑制されるため、複数段の羽根が一層折り畳みやすくなる。
【0014】
軸方向に隣接する前記羽根では、先端側の前記羽根が、基端側の前記羽根よりも前記インペラの回転方向側に位置してもよい。
【0015】
この構成により、回転するインペラにおいて先端側の羽根から基端側の羽根への流体の受け渡しが効率的に行われるため、ポンプ性能の向上が図られる。
【0016】
前記羽根構造は、軸方向に複数段の羽根列を有し、前記羽根列の各々は、周方向に間隔を置いて配置された複数の羽根を有してもよい。
【0017】
この構成により、一層効果的に、インペラの変形率を大きくしつつ所望のポンプ性能が得られやすい。
【0018】
軸方向に隣接する前記羽根列では、先端側の前記羽根列の前記羽根間に、基端側の前記羽根列の前記羽根が折り畳まれるように、前記羽根が配置されてもよい。
【0019】
この構成により、複数段の羽根列が一層折り畳みやすくなる。
【0020】
軸方向に隣接する前記羽根列は、前記ハブとの周方向の接続位置が異なってもよい。
【0021】
この構成により、折り畳み時に軸方向に隣接する羽根列同士の干渉が抑制されるため、複数段の羽根列が一層折り畳みやすくなる。
【0022】
軸方向に隣接する前記羽根列間の周方向角度差は、前記羽根列を構成する前記複数の羽根の配置角度間隔よりも小さくてもよい。
【0023】
この構成により、所望のポンプ性能が得られやすい。
【0024】
前記羽根構造は、前記ハブとの接続箇所に切欠部を有してもよい。もしくは、前記羽根の接続箇所を薄くしてもよい。
【0025】
この構成により、羽根構造の根元部がより変形しやすくなるため、羽根構造を一層容易に折り畳むことが可能となる。
【0026】
本発明の血液ポンプによれば、所望のポンプ性能を確保しつつ、インペラをより小さく折り畳むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る血液ポンプ(インペラ拡張時)の構造説明図である。
図2】上記血液ポンプ(インペラ折り畳み時)の構造説明図である。
図3図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
図4】インペラの斜視図である。
図5】インペラの正面図である。
図6】インペラの側面図である。
図7】上記血液ポンプの使用時の第1説明図である。
図8】上記血液ポンプの使用時の第2説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る血液ポンプの好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示す本実施形態に係る血液ポンプ10は、例えば心不全のように心機能が著しく低下した患者の心臓内に経皮的に挿入され、心臓の心拍出を補助するために使用される。血液ポンプ10は、インペラ12と、インペラ12を囲む中空筒状のハウジング14と、インペラ12を回転駆動する駆動シャフト16と、駆動シャフト16が挿通されたカテーテル18と、カテーテル18が挿通されたシース20とを備える。血液ポンプ10は、全体として可撓性を有する長尺なデバイスである。
【0030】
インペラ12は、該インペラ12の中心部を構成するハブ22と、ハブ22に設けられた羽根構造23とを有し、弾性変形可能に構成されている。インペラ12は、弾性体からなり、羽根構造23を構成する複数の羽根26が軸方向に倒れつつ捩じれて折り畳み可能に構成されている。
【0031】
インペラ12を構成する弾性体としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物、又は熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与されるNi-Ti系、Cu-Al-Ni系、Cu-Zn-Al系の形状記憶合金、ステンレス、チタン、ゴムメタル等の弾性力を有する金属、カーボンファイバー等が挙げられる。インペラ12は、ハブ22と複数の羽根26とが一体成形されていることが望ましいが、ハブ22と羽根26が同一素材で構成されていなくてもよい。
【0032】
本実施形態において、インペラ12は、軸方向の流れを径方向に偏向させるように構成された遠心ポンプ用インペラである。従って、本実施形態に係る血液ポンプ10は遠心ポンプとして構成されている。なお、血液ポンプ10は、インペラ12によって吐き出される流れが軸方向と平行な軸流ポンプ、又はインペラ12によって吐き出される流れが軸方向に対して傾斜した斜流ポンプとして構成されてもよい。
【0033】
ハブ22は、駆動シャフト16の先端部16aに連結及び固定されており、駆動シャフト16によってその軸aを中心に回転駆動される。なお、インペラ12の軸は、ハブ22の軸aと一致するため、以下では「インペラ12の軸a」という場合もある。
【0034】
図4及び図6に示すように、ハブ22は、先端側に向かって細くなる(外径が小さくなる)部分を有する。より具体的には、ハブ22は、軸方向に沿って外径が一定の(ストレート状の)基部22aと、基部22aの先端から先端方向に延出するとともに先端側に向かって細くなる(外形が小さくなる)テーパ部22bとを有する。テーパ部22bの先端部22cは、丸く形成されている。すなわち、テーパ部22bの先端部22cは、先端方向に膨出した湾曲形状を有する。
【0035】
図4及び図5に示すように、羽根構造23は、軸方向に複数段の羽根26を有するとともに、各段において、周方向に間隔を置いて複数の羽根26が配置されている。各段においてハブ22から放射状に延出(突出)した複数の羽根26により羽根列25が構成されている。すなわち、羽根構造23は、軸方向に複数段(本実施形態では、2段)の羽根列25を備える。以下、本実施形態では、相対的に先端側に配置された羽根列25を「先端側羽根列25A」とも称し、相対的に基端側に配置された羽根列25を「基端側羽根列25B」とも称する。
【0036】
図5に示すように、各羽根列25A、25Bにおいて、羽根26は、周方向に等間隔(本実施形態では90°間隔)に配置されている。なお、羽根26は等間隔に配置されていれば良く、羽根列25は2枚以上の羽根26で構成され、羽根列25Aと羽根列25Bがそれぞれ異なる羽根枚数であってもよい。また、羽根構造23は、軸方向に3段以上の羽根列25を有していてもよい。羽根構造23は、軸方向に1段だけ羽根列25を有していてもよい。複数段の羽根列25(羽根26)は、軸方向位置が完全に異なる場合だけでなく、羽根26の軸方向位置が部分的に重複する場合も含む。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、先端側羽根列25Aと基端側羽根列25Bとは軸方向の位置が完全に異なっており、先端側羽根列25Aと基端側羽根列25Bとの間には、軸方向に微小な空間S1が形成されている。すなわち、先端側羽根列25Aと基端側羽根列25Bとは、軸方向に重なる領域を有しない。空間S1は、各羽根26の根元から羽根26の外端まで延在している。
【0038】
複数の羽根列25は、ハブ22との周方向の接続位置が異なる。複数の羽根列25について、周方向の位置が異なるとは、複数の羽根列25のハブ22との周方向の接続位置が完全に異なる場合だけでなく、複数の羽根列25の周方向の接続位置が部分的に重複する場合も含む。本実施形態では、図4に示すように、先端側羽根列25Aと基端側羽根列25Bとはハブ22との周方向の接続位置が完全に異なっている。
【0039】
軸方向に隣接する羽根列25間の周方向角度差は、羽根列25を構成する複数の羽根26の配置角度間隔よりも小さい。図5に示すように、先端側羽根列25Aを構成する各羽根26aと基端側羽根列25Bを構成する各羽根26bとの間には、周方向に微小な空間S2が形成されている。空間S2は、各羽根26の根元から羽根26の外端まで延在している。図4及び図5に示すように、先端側羽根列25Aの羽根26aは、基端側羽根列25Bの羽根26bよりもインペラ12の回転方向(矢印R方向)側に位置する。
【0040】
先端側羽根列25Aは、ハブ22のテーパ部22bに設けられている(テーパ部22bから突出している)。先端側羽根列25Aを構成する各羽根26aは、インペラ12の径方向外側に向かって軸方向長さが短くなる三角形状又は台形状を有する。各羽根26aの先端縁部28は、径方向外側に向かって基端方向に変位する。これにより、羽根列25Aが折り畳まれやすい構成となっているが、軸方向長さL2が十分に短ければ、先端縁部28が径方向外側に向かって基端方向に増大していてもよく、また変位せずともよい。図6において、各羽根26aの基端縁部29は、インペラ12の軸aに対して垂直な方向に延在する。各羽根26aの基端縁部29は、インペラ12の軸aに対して、先端側又は基端側に傾斜していてもよい。
【0041】
図4及び図6に示すように、各羽根26aの先端部26atは、ハブ22の先端部22cよりも先端方向に突出している。各羽根26aの先端部26atは、各羽根26aの径方向内端を構成している。従って、複数の羽根26aの先端部26at間には、空間30が形成されている。当該空間30は、ハブ22の先端部22cよりも先端側に形成されている。ハブ22と羽根列25A(各羽根26a)との接続部27の軸方向長さL1は、羽根列25A(各羽根26a)の軸方向長さL2(最大軸方向長さ)よりも短い。
【0042】
基端側羽根列25Bは、ハブ22の基部22aに設けられている(基部22aから突出している)。図5に示すように、インペラ12の軸方向から見て、複数の基端側羽根列25Bを構成する複数の羽根26bは、複数の先端側羽根列25Aを構成する複数の羽根26a間にそれぞれ配置されている。
【0043】
図6に示すように、各羽根26bは、ハブ22との接続部である径方向内端部34を除き、インペラ12の径方向外側に向かって軸方向長さが略一定の形状を有する。各羽根26bは、径方向に沿う長軸を持つ長方形状を有する。なお、各羽根26bは、インペラ12の径方向外側に向かって軸方向長さが減少又は増大してもよい。
【0044】
基端側羽根列25Bを構成する各羽根26bの先端縁部31及び基端縁部32は、インペラ12の軸aに対して垂直な方向に延在する。各羽根26bをその厚さ方向から見たとき、羽根26bの先端縁部31と、羽根26bの基端縁部32とは略平行である。なお、羽根26bの先端縁部31及び基端縁部32は、インペラ12の軸aに対して、先端側又は基端側に傾斜していてもよい。各羽根26bをその厚さ方向から見たとき、羽根26bの先端縁部31と、羽根26bの基端縁部32とは非平行であってもよい。
【0045】
各羽根26bの径方向内端部34(ハブ22との接続部)には切欠部36が設けられている。このため、各羽根26bの径方向内端部34の軸方向長さL3は、羽根26bの他の部分の軸方向長さL4(最大軸方向長さ)よりも短い。具体的に、切欠部36は、各羽根26bの径方向内端部34の基端部に設けられている。
【0046】
図4に示すように、各羽根26bは、インペラ12の軸aに対して傾斜して設けられている。具体的に、各羽根26の径方向内端部34及び径方向外端部35は、インペラ12の軸aに対して傾斜している。インペラ12の径方向から見て、各羽根26bの径方向内端部34と径方向外端部35とは非平行である。従って、各羽根26bは、径方向外側に向かって捩じれている。なお、インペラ12の径方向から見て、各羽根26bの径方向内端部34と径方向外端部35とは平行であってもよい。
【0047】
図2に示すように、羽根構造23を構成する複数の羽根26は、先端方向に捩じれて折り畳み可能に構成されている。具体的に、先端側羽根列25Aを構成する複数の羽根26aは、先端方向に捩じれて折り畳まれる。基端側羽根列25Bを構成する複数の羽根26bは、先端側羽根列25Aの羽根26a間に捩じれて折り畳まれる。
【0048】
図5において、先端側羽根列25Aの羽根26aの厚さT1と基端側羽根列25Bの羽根26bの厚さT2は、略同じである。なお、羽根26aの厚さT1と羽根26bの厚さT2は、異なっていてもよい。また、厚さT1及びT2は、径方向に向かって厚さが変化していてもよく、径方向内側に向かって厚くなると折り畳まれやすい構成となる。
【0049】
図6において、羽根26aの厚さ方向から見た羽根26aの大きさ(羽根面積)は、羽根26bの厚さ方向から見た羽根26bの大きさ(羽根面積)よりも大きい。なお、羽根26aの厚さ方向から見た羽根26aの大きさ(羽根面積)は、羽根26bの厚さ方向から見た羽根26bの大きさ(羽根面積)と同じか、それより小さくてもよい。
【0050】
図1において、ハウジング14は、弾性変形可能であり、先端開口14a及び基端開口14bを有する中空筒状に形成されている。先端開口14aは血液の流入口であり、基端開口14bは、血液の流出口である。ハウジング14の基端部14c内に、インペラ12が回転可能に配置されている。具体的に、ハウジング14の基端部14cは、インペラ12を囲む環状膨出部14dを有する。
【0051】
ハウジング14は、例えば、インペラ12の構成材料と同様のゴム材(又はエラストマー材)により構成される。ハウジング14は、ステントグラフトのように、形状記憶合金等の形状復元力に優れた金属(又は樹脂材料)からなる骨格と、骨格に取り付けられた軟質な中空筒状の周壁部材とにより構成されていてもよい。
【0052】
図2に示すように、ハウジング14は、シース20内に収納されているとき、径方向外側への拡張が規制されることで、収縮状態となっているとともに、インペラ12の複数の羽根26を径方向内側に押圧する。これにより、複数の羽根26は先端方向に折り畳まれた状態となっている。ハウジング14がシース20の外部へと露出すると、シース20はその弾性復元力によって径方向に拡張し、図1のように所定形状に復元する。シース20の拡張に伴い、インペラ12もその弾性復元力によって、複数の羽根26が放射状に突出した所定形状に復元する。
【0053】
ハウジング14の先端部には、周方向に配列された複数の連結部材40を介して柔軟先端部材42が連結されている。複数の連結部材40は、柔軟先端部材42を支持している。柔軟先端部材42の先端は湾曲している。複数の連結部材40間には空間41が形成され、血液は当該空間41を通って、先端開口14aからハウジング14内へと流入可能である。
【0054】
ハウジング14の基端部14cとカテーテル18の先端部とは、周方向に配列された複数の連結部材44によって連結されている。複数の連結部材44は、ハウジング14を支持している。複数の連結部材44間には空間45が形成され、ハウジング14の基端開口14bから流出した血液は当該空間45を通って、基端方向へと流動可能である。
【0055】
駆動シャフト16は、カテーテル18内に挿通されている。駆動シャフト16の先端部16aは、カテーテル18の先端から突出しており、当該突出した先端部16aにインペラ12のハブ22が連結されている。駆動シャフト16はカテーテル18の先端部に配置された軸受部46により回転可能に支持されている。駆動シャフト16及びカテーテル18は、血液ポンプ10の基端側まで延在しており、いずれも可撓性を有する長尺な部材である。
【0056】
詳細は図示しないが、駆動シャフト16は、血液ポンプ10の基端側(手元側)でアクチュエータ(モータ等)に接続されており、当該アクチュエータによって回転駆動される。
【0057】
シース20は、血液ポンプ10の基端側まで延在した可撓性を有する長尺な管状部材であり、シース20内にカテーテル18が挿通されている。カテーテル18とシース20とは軸方向に相対変位可能である。従って、インペラ12及びハウジング14は、シース20に対して軸方向に相対変位可能であり、図2及び図3のようにシース20内に収納されているときは、径方向内側に押圧されることで縮径状態(折り畳み状態)となっており、図1のようにシース20から露出しているときは、弾性復元力により拡張状態(展開状態)となっている。
【0058】
図1の状態からインペラ12及びハウジング14がシース20に対して基端方向に移動すると、図2のようにインペラ12及びハウジング14はシース20内に収納される。その過程で、インペラ12は、ハウジング14を介してシース20によって径方向内側に押圧されて弾性変形し、先端方向に折り畳まれる。その際、まず、基端側羽根列25Bの羽根26bが先端方向に倒れつつ捩じれて、先端側羽根列25Aの羽根26a間に折り畳まれる。次に、先端側羽根列25Aの羽根26aが先端方向に倒れつつ捩じれて折り畳まれる。
【0059】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る血液ポンプ10の作用を説明する。
【0060】
血液ポンプ10は、例えば、心機能が低下した患者の脚(大腿部)の動脈から挿入される。そして、図7のように、血液ポンプ10の先端部10aが、大動脈50を介して大動脈弁52の近傍まで送達される。この場合、図2のように、インペラ12及びハウジング14は、シース20内に収納されて収縮状態とされており、血液ポンプ10の先端部10aの外径は十分に小さくなっているため、血液ポンプ10の先端部10aを生体内の所定位置まで容易に送達することができる。
【0061】
そして、血液ポンプ10の先端部10aを図7のように配置したら、次に、血液ポンプ10の先端部10aを心臓48内(左心室54内)に挿入する。具体的には、カテーテル18をシース20に対して先端方向に移動させ、図8のように、インペラ12及びハウジング14をシース20よりも先端側に露出させる。これにより、ハウジング14の流入口である先端開口14aを左心室54内に配置し、ハウジング14の流出口である基端開口14bを大動脈50内に配置する。インペラ12及びハウジング14は、シース20からの開放に伴って、図1のように弾性復元力によって拡張状態に復元する。
【0062】
そして、図8において、図示しないアクチュエータの駆動作用下に駆動シャフト16が回転することでインペラ12が回転駆動されると、血液ポンプ10は、ハウジング14の先端開口14aから血液を吸引し、ハウジング14の基端開口14bから血液を排出する。このポンプ作用によって、左心房56の内圧の低下により肺うっ血が解除され、左心室54の内圧の減少により心筋負担が軽減され、冠血流増加により心筋虚血が軽減され、全身血流増加により末梢循環動態が正常化する。
【0063】
この場合、本実施形態に係る血液ポンプ10は、以下の効果を奏する。
【0064】
複数の羽根26を備えた弾性体からなるインペラ12が軸方向に捩じれて折り畳み可能に構成されている。このため、インペラ12は、拡張状態(図1)と折り畳み状態(図2)との間の外径変化(変形率)を大きくすることができる。従って、所望のポンプ性能を確保しつつ、より小さく折り畳むことが可能となる。すなわち、生体への挿入時には血液ポンプ10の先端部10aの外径を十分に小さくして高い送達性を得つつ、ポンプ動作時にはインペラ12の外径を大きくして所望のポンプ性能を確保することができる。
【0065】
本実施形態では、羽根構造23は、軸方向に複数段の羽根26(羽根26a、26b)を有する。この構成により、羽根構造23がより変形しやすくなるため、一層折り畳みやすくなる。
【0066】
軸方向に隣接する羽根26(羽根26a、26b)は、ハブ22との軸方向の接続位置が異なっている。この構成により、軸方向に沿った羽根26の長さを設定しやすく、ポンプ性能の向上が図られる。
【0067】
軸方向に隣接する羽根26(羽根26a、26b)は、ハブ22との周方向の接続位置が異なっている。この構成により、折り畳み時に軸方向に隣接する羽根26同士の干渉が抑制されるため、複数段の羽根26が一層折り畳みやすくなる。
【0068】
軸方向に隣接する羽根26では、相対的に先端側の羽根26(羽根26a)が、相対的に基端側の羽根26(羽根26b)よりもインペラ12の回転方向側に位置している。この構成により、回転するインペラ12において先端側の羽根26から基端側の羽根26への流体の受け渡しが効率的に行われるため、ポンプ性能の向上が図られる。
【0069】
羽根構造23は、軸方向に複数段の羽根列25(先端側羽根列25A、基端側羽根列25B)を有し、羽根列25の各々は、周方向に間隔を置いて配置された複数の羽根26を有する。この構成により、一層効果的に、インペラ12の変形率を大きくしつつ所望のポンプ性能が得られやすい。
【0070】
軸方向に隣接する羽根列25(先端側羽根列25A、基端側羽根列25B)では、相対的に先端側の羽根列25の羽根26(羽根26a)間に、相対的に基端側の羽根列25の羽根26(羽根26b)が折り畳まれるように、羽根26が配置されている。この構成により、複数段の羽根列25が一層折り畳みやすくなる。
【0071】
軸方向に隣接する羽根列25は、ハブ22との周方向の接続位置が異なっている。この構成により、折り畳み時に軸方向に隣接する羽根列25同士の干渉が抑制されるため、複数段の羽根列25が一層折り畳みやすくなる。
【0072】
軸方向に隣接する羽根列25間の周方向角度差は、羽根列25を構成する複数の羽根26の配置角度間隔よりも小さくてもよい。この構成により、所望のポンプ性能が得られやすい。
【0073】
羽根構造23は、ハブ22との接続箇所に切欠部36を有する。この構成により、羽根構造23の根元部がより変形しやすくなるため、羽根構造23を一層容易に折り畳むことが可能となる。
【0074】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。本発明は、医療用以外のポンプにも適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8