(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】家畜用センサモジュール取付具
(51)【国際特許分類】
A01K 11/00 20060101AFI20221003BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A01K11/00 A
A01K29/00 D
(21)【出願番号】P 2019004236
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503086961
【氏名又は名称】株式会社ジオ
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】大木 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】白方 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 諭
(72)【発明者】
【氏名】井澤 正
(72)【発明者】
【氏名】山本 綾子
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06113539(US,A)
【文献】特開平09-103212(JP,A)
【文献】特開2017-169648(JP,A)
【文献】特表2017-510390(JP,A)
【文献】国際公開第2013/186232(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164807(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105167754(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036277(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0055496(US,A1)
【文献】特表2013-502940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 11/00
A01K 29/00
A41D 13/00-13/12
A41D 20/00
A61F 13/06-13/14
A63B 71/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜に、生体データ計測用のセンサモジュールを取り付けるための家畜用センサモジュール取付具であって、
家畜である牛の尻尾
の尾根部及び勾配部付近に巻き付けられる伸縮性の弾性被覆帯を有し、この弾性被覆帯が
熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーのいずれかにより複数の網目を有する略網目構造の帯形に形成されており、弾性被覆帯の牛の
尻尾の尾根部及び勾配部付近に対向する対向面に、
尻尾の尾根部の腹側に密接して牛の体表温を測定する無線タイプのセンサモジュールが装着されることを特徴とする家畜用センサモジュール取付具。
【請求項2】
センサモジュール用の被覆部材を
含み、この被覆部材が防水性のゲルシートにより形成されており、このゲルシートの両面のうち、少なくとも片面に粘着性が付与される請求項1記載の家畜用センサモジュール取付具。
【請求項3】
弾性被覆帯の複数の網目のうち、少なくとも一部の網目の斜線が弾性被覆帯の巻き付け方向に交わる方向に傾斜して指向する
請求項1又は2記載の家畜用センサモジュール取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の健康管理や受胎適正期の判別等に使用される家畜用センサモジュール取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産業においては、牛、豚、鶏等が飼育されるが、これらの中では、牛は、飼養頭数が少ないものの、単価が高く、長期の健康を維持させる必要があること、及び人工授精をしているため、畜産のターゲットとしては最適である。
【0003】
近年、牛の健康管理や受胎適正期を判別したい場合には、図示しないが、牛の尻尾に、生体データ検出用のウェアラブルセンサを固定具を介して取り付け、ウェアラブルセンサが検出した生体データをホストシステムに集約して解析し、少人数で牛群管理を可能とするようにしている。固定具は、例えば着脱自在の帯形の粘着テープ、包帯、使い捨てテープ、ベルト、ロープ等からなり、牛の尻尾に緊締されることにより、尻尾にウェアラブルセンサを圧接する(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】W02016/174840号公報
【文献】特開平11‐32609号公報
【文献】特開平11‐234668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、牛の尻尾は、臀端に近い尾根部から先端部にかけて細くなる略円錐形なので、固定具が緊締されても、固定具が脱落し易いという問題がある。この問題を踏まえ、牛の尻尾に固定具をきつく緊締すると、尻尾にウェアラブルセンサが強く圧接されるので、尻尾の皮膚に炎症が発生し易くなるという大きな問題が新たに生じる。この問題を解消するには、牛の尻尾に固定具を緩く巻けば良いが、そうすると、皮膚の炎症を防ぐことはできるものの、牛が尻尾を振った場合に、ウェアラブルセンサが固定具内で動き、ウェアラブルセンサが簡単に位置ずれしたり、固定具から抜けて脱落することとなる。
【0006】
また、牛の尻尾にウェアラブルセンサを取り付ける場合、牛の健康等を長期に亘って管理する観点から、子牛の段階でウェアラブルセンサを取り付けることが好ましいが、子牛の尻尾の太さは3cm前後であるのに対し、成牛の尻尾の太さは7cm前後である。したがって、牛の成長に伴い、尻尾からウェアラブルセンサを取り外した後、再度取り付ける必要があるが、牛を多頭飼育する場合には、作業が実に面倒で煩雑となる。この作業の煩雑化は、将来、畜産農家の作業従事者の減少が予想されるので、深刻な問題となる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、牛の尻尾の炎症等を防ぐことができ、センサが位置ずれしたり、脱落するのを防止し、牛の尻尾に対するセンサの取り外し、取り付け作業を容易にすることが可能な家畜用センサモジュール取付具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、家畜に、生体データ計測用のセンサモジュールを取り付けるためのものであって、
家畜である牛の尻尾の尾根部及び勾配部付近に巻き付けられる伸縮性の弾性被覆帯を有し、この弾性被覆帯が熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーのいずれかにより複数の網目を有する略網目構造の帯形に形成されており、弾性被覆帯の牛の尻尾の尾根部及び勾配部付近に対向する対向面に、尻尾の尾根部の腹側に密接して牛の体表温を測定する無線タイプのセンサモジュールが装着されることを特徴としている。
【0009】
なお、センサモジュール用の被覆部材を含み、この被覆部材が防水性のゲルシートにより形成されており、このゲルシートの両面のうち、少なくとも片面に粘着性が付与されるようにすることができる。
また、弾性被覆帯の牛の臀端に近接する前部を横方向に伸長して後部を短縮し、弾性被覆帯の両側部をそれぞれ後部に向けて傾斜させることにより、弾性被覆帯を平面略台形に形成することができる。
また、弾性被覆帯の複数の網目のうち、少なくとも一部の網目の斜線が弾性被覆帯の巻き付け方向に交わる方向に傾斜して指向することが好ましい。
【0010】
また、弾性被覆帯の両側部に締結具がそれぞれ取り付けられ、弾性被覆帯の一側部側の締結具に孔が穿孔されるとともに、弾性被覆帯の他側部側の締結具に係合ピンが形成されており、この係合ピンが対向する孔に着脱自在に嵌め合わせ可能であるようにすることができる。
【0011】
本発明によれば、牛の尻尾にセンサモジュールを取り付けたい場合には、尻尾にセンサモジュールを接触させて位置合わせし、尻尾に伸縮性の弾性被覆帯を巻き付け、この弾性被覆帯を締結すれば、牛の尻尾にセンサモジュールを密接させ、牛の健康状態を管理等することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性被覆帯が伸縮性を有するので、例え牛の尻尾が徐々に細くなる円錐形でも、弾性被覆帯が尻尾の径に応じ、伸縮して密接するので、弾性被覆帯が簡単に脱落することがないという効果がある。また、尻尾にセンサモジュールが密接しても、センサモジュールが強く圧接されることがないので、尻尾の皮膚に炎症が発生するおそれを排除することができる。また、弾性被覆帯を緩く巻く必要がないので、例え牛が尻尾を振ったり、成長しても、センサモジュールが弾性被覆帯から抜け、センサモジュールが簡単に位置ずれしたり、脱落するのを防止することができる。また、弾性被覆帯が網目構造なので、優れた伸縮性や変形性、自由度を得ることができる。したがって、牛の成長に伴い、尻尾を被覆する弾性被覆帯が伸びて順応するので、牛の尻尾からセンサモジュールを取り外した後、再度取り付ける作業を減少させることが可能である。また、弾性被覆帯が両端部のみ開口した筒形構造ではなく、中空部分の多い網目構造なので、弾性被覆帯の通気性が向上し、尻尾の尾根部及び勾配部付近が蒸れて疾病の原因となるのを有効に防止することが可能となる。さらに、弾性被覆帯を熱可塑性エラストマーにより成形すれば、安全性や製造の自由度を向上させることができる。加えて、安価な製造が期待でき、再生可能となる。これに対し、弾性被覆帯を熱硬化性エラストマーにより成形すれば、優れた耐溶剤性、耐熱性、機械的強度等を得ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、牛の尻尾とセンサモジュールとの間に介在する被覆部材により、牛の尻尾に対する圧迫を軽減することができ、血流の低下や尻尾の損傷を防止することができる。また、牛の糞尿や雨等からセンサモジュールを保護し、牛の生体データを安定して取得することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、弾性被覆帯が張力の発生方向にバイアス構造を有するので、弾性被覆帯に圧縮力や伸長力が作用した場合、弾性被覆帯が伸縮して歪等を分散し、弾性被覆帯やセンサモジュールの位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の実施形態における牛を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の実施形態における牛の尻尾を模式的に示す説明図である。
【
図3】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の実施形態における弾性被覆帯とセンサモジュールとを模式的に示す平面説明図である。
【
図4】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第2の実施形態における弾性被覆帯とセンサモジュールとを模式的に示す平面説明図である。
【
図5】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第3の実施形態における弾性被覆帯とセンサモジュールとを模式的に示す平面説明図である。
【
図6】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第4の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図7】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第5の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図8】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第6の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図9】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第7の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図10】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第8の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図11】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第9の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【
図12】本発明に係る家畜用センサモジュール取付具の第10の実施形態における弾性被覆帯を模式的に示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における家畜用センサモジュール取付具は、
図1ないし
図3に示すように、家畜に、生体データ計測用の無線タイプのセンサモジュール10を取り付けるための取付具であり、家畜である牛1の尻尾2に巻き付けられる伸縮性の弾性被覆帯20を備え、この弾性被覆帯20を略網目構造に形成し、弾性被覆帯20の牛1の尻尾2に対向する対向内面に、尻尾2に密接するセンサモジュール10を装着するようにしている。
【0017】
牛1は、
図1に示すように、子牛でも成牛でも良いが、健康状態等を長期に亘って管理したい場合には、子牛が良い。この牛1は、細長い尻尾2の腹側(
図1の下側、裏側)、具体的には、尻尾2の臀端に近い尾根部3の毛の生えていない腹側(裏側)に、センサモジュール10が所定の圧力で密接される。尻尾2は、
図1や
図2に示すように、例えば牛1が標準形の和牛の場合、牛1の臀端に近接する尾根部3と、この尾根部3に隣接する勾配部4と、この勾配部4から細長く伸びる中間部5と、この中間部5の先端に形成される先端部6とを備え、勾配部4が急激に細くなる。
【0018】
尾根部3から勾配部4に亘る領域は、毛の生えていない腹側(
図2の左側)の伸縮が小さく、毛で覆われた外側が大きく伸縮するという特徴を有する。尾根部3の腹側は、センサモジュール10の密接に選択されるが、これは毛が生えていないので、牛1の体表温を高精度、かつ安定して測定することができるからである。さらに、牛1の尻尾2は、馬の尻尾ほど丈夫ではないので、毛で覆われた先端部6が雑に扱われると、千切れるおそれがあるからである。また、勾配部4の周長は、例えば尾根部3の周長が240mm前後の場合には、140mm前後が一般的である。また、中間部5の周長は、例えば尾根部3の周長が240mm前後の場合には、一般的には120mm前後である。
【0019】
センサモジュール10は、
図3に示すように、光透過性を有する薄い小型の収納ボックス11を備え、この収納ボックス11に、牛1の生体データである体表温を連続して測定して検出する体温センサ、この体温センサの検出した検出信号を受信装置や中継装置を介してインターネットのクラウドシステムに送信する通信回路、これら体温センサと通信回路とを制御する制御回路、及び体温センサ,通信回路,制御回路に所定の期間電力を給電する電源が少なくとも内蔵される。
【0020】
体温センサが選択されるのは、牛1の健康状態の管理や病変を発見するには、牛1の生体データのうち、体表温が最も重要となるからである。また、電源の容量は、センサモジュール10の交換期間やメンテナンス期間に応じて選択される。
このようなセンサモジュール10で牛1の体表温がインターネットのクラウドシステムに常時送信されれば、専用のコンピュータ機器や携帯端末により、牛1の健康管理、受胎適正期の判別、分娩時期の予知精度の向上、子牛の病変の早期発見等が大いに期待できる。
【0021】
弾性被覆帯20は、
図3に示すように、例えば熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーのいずれか一方により、20cm×32cm程度の大きさを有する横長の帯形に発泡成形され、中空の多数の網目23をXY方向に有する網目構造に形成されており、牛1の尻尾2の尾根部3及び勾配部4付近に着脱自在に巻着される。
【0022】
弾性被覆帯20の材料は、熱可塑性エラストマーの場合には、柔軟な軟質のポリウレタン樹脂等が使用される。これに対し、材料が熱硬化性エラストマーの場合には、撥水性,耐候性,耐寒性等に優れるシリコーンゴム等が選択される。また、弾性被覆帯20の厚さは、特に限定されるものではないが、長期に亘る耐久性等を考慮すると、1mm以上6mm以下、好ましくは2mm以上5mm以下が良い。
【0023】
弾性被覆帯20は、周縁部の大部分が連続した山形に形成され、牛1の臀端寄りに位置する前部の中央付近が狭い取付領域21に形成されるとともに、残部が広い網目領域22に形成されており、非網目の取付領域21に、センサモジュール10が接着剤で接着されたり、あるいは粘着剤で粘着される。
【0024】
弾性被覆帯20の取付領域21には、必要に応じ、センサモジュール10の収納ボックス11に嵌合する平面矩形の凹み穴が形成される。また、弾性被覆帯20の多数の網目23は、大きな横長の菱形、複数の平行四辺形、及びセンサモジュール10の左右両側に隣接する一対の小さな略三角形に形成され、これら菱形の網目23、平行四辺形の網目23、略三角形の網目23が異なる大きさとされており、菱形の網目23と複数の平行四辺形の網目23とが隣接する。
【0025】
弾性被覆帯20の多数の網目23のうち、少なくとも大部分の網目23の斜線olは、弾性被覆帯20の巻き付け方向に交わる方向、換言すれば、弾性被覆帯20の前後斜め方向に傾斜して指向する。また、菱形の網目23と複数の平行四辺形の網目23の横方向の対角線dは、弾性被覆帯20の巻き付け方向にそれぞれ指向する。菱形の網目23の縦方向の対角線は、弾性被覆帯20の前後方向に指向する。
【0026】
弾性被覆帯20の左右両側部には、複数(本実施形態では合計6個)の固定孔24がそれぞれ前後方向に並べて穿孔され、各固定孔24が平面円形の丸孔に形成される。左右両側部の複数の固定孔24には、図示しない締結具(例えば、糸やバンド、紐、細長い凹凸付きの樹脂片等)が取り付けられ、この締結具が着脱自在に緊縛されたり、緊締等されることにより、尻尾2の尾根部3及び勾配部4付近に湾曲して巻き付けられた弾性被覆帯20が脱落しないよう略円筒形に固定される。
【0027】
このような弾性被覆帯20は、主たる張力の発生方向にバイアス構造を有するので、圧縮力や伸長力が作用した場合、伸縮して歪を分散し、位置ずれを有効に防止する。具体的には、圧縮力や伸長力が作用した場合、前後方向に伸びて左右横方向に縮むことにより歪を分散したり、左右横方向に伸びて前後方向に縮むことにより歪を分散する。
【0028】
上記構成において、牛1の尻尾2にセンサモジュール10を取り付けたい場合には、尻尾2の尾根部3の腹側にセンサモジュール10を接触させて位置合わせし、尻尾2の尾根部3及び勾配部4付近に可撓性の弾性被覆帯20を曲げながら巻き付け、この弾性被覆帯20の左右両側部の複数の固定孔24を締結具で締結し、その後、尾根部3の腹側にセンサモジュール10を再度位置合わせして最終的に位置決めすれば、尻尾2にセンサモジュール10を押し付けて密接し、牛1の健康状態を管理することができる。
【0029】
牛1を管理する場合、牛1が頻繁に尻尾2を振っても、エラストマー製で軽量の弾性被覆帯20が尻尾2に追従するので、弾性被覆帯20やセンサモジュール10の位置ずれが少なく、牛1の体表温を安定して得ることができ、牛1の発熱等を早期に発見することができる。また、センサモジュール10が尻尾2の尾根部3と弾性被覆帯20との間に介在され、弾性被覆帯20から外部に露出しないので、牛1の糞尿による汚染が減少する。
【0030】
上記構成によれば、弾性被覆帯20が伸縮性や弾性を有するので、例え牛1の尻尾2が徐々に細くなる円錐形でも、弾性被覆帯20が尻尾2の径に応じ、伸縮して密接するので、弾性被覆帯20が容易に脱落することがない。また、尻尾2にセンサモジュール10の収納ボックス11が密接しても、センサモジュール10の収納ボックス11が強く圧接されることがないので、尻尾2の皮膚に炎症が発生するおそれを有効に排除することができる。また、弾性被覆帯20を緩く巻く必要がないので、例え牛1が尻尾2を振ったり、成長しても、センサモジュール10が弾性被覆帯20から抜け、センサモジュール10が簡単に位置ずれしたり、脱落するのを有効に防止することができる。
【0031】
また、弾性被覆帯20が網目構造なので、優れた伸縮性や変形性、自由度を得ることができる。したがって、牛1の成長に伴い、尻尾2を被覆する弾性被覆帯20が伸びて順応するので、牛1の尻尾2からセンサモジュール10を取り外した後、再度取り付ける作業を大幅に減少させることが可能である。この効果は、将来、畜産農家の作業従事者の減少が予想されるので、非常に有意義である。
【0032】
また、弾性被覆帯20が両端部のみ開口した筒形構造ではなく、中空部分の多い網目構造なので、弾性被覆帯20の通気性が向上し、尻尾2の尾根部3及び勾配部4付近が蒸れて疾病の原因となるのを有効に防止することが可能となる。また、牛1の受胎率の低下と分娩間隔の延長は、生産性を阻害するため、従来より大きな問題となっているが、本実施形態によれば、発情が見つけられない牛1でも、授精の適期を判定することができる。さらに、事前に分娩を予知することができ、人工授精実施率や受胎率が向上したり、事故のない安全な分娩の増加が期待できる。
【0033】
次に、
図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の多数の網目23をそれぞれ大きく拡大してその数を減少させ、弾性被覆帯20の左右両側部の固定孔24に細長い締結具25・25Aをそれぞれ取り付けるようにしている。
【0034】
弾性被覆帯20の多数の網目23は、変形した複数の平行四辺形、及びセンサモジュール10の後部に隣接する五角形に形成され、これら変形した平行四辺形の網目23と五角形の網目23とが異なる大きさとされる。また、弾性被覆帯20の一側部側の締結具25は、複数の丸孔26が長手方向に一列に並べて穿孔される。これに対し、弾性被覆帯20の他側部側の締結具25Aは、複数の係合ピン27が長手方向に一列に並べて突出形成され、この係合ピン27が相対向する丸孔26に着脱自在に嵌挿される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0035】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、弾性被覆帯20の構成の簡素化を通じ、弾性被覆帯20の小型化や製造コストの削減を図ることができるのは明らかである。
【0036】
次に、
図5は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、センサモジュール10を防水性の被覆部材30により被覆し、牛1の糞尿や風雨等からセンサモジュール10を保護して牛1の生体データを安定して取得するようにしている。
【0037】
センサモジュール10は、弾性被覆帯20の取付領域21の凹んだ凹み穴に接着して収納されたり、あるいは粘着して収納される。また、被覆部材30は、例えば防水性の厚さ2mm程度の柔軟なゲルシート31により形成され、このゲルシート31の表裏両面のうち、少なくとも片面に粘着性が付与されており、この粘着性の片面が尻尾2の尾根部3の腹側、あるいはセンサモジュール10の収納ボックス11に粘着される。ゲルシート31は、特に限定されるものではなく、防水性や防塵性を有する医療用のシリコーン製でも良いし、医療用のウレタン製でも良い。
【0038】
このようなゲルシート31は、弾性被覆帯20の牛1の尻尾2に対向する対向内面に粘着され、弾性被覆帯20の取付領域21に積層されてセンサモジュール10の収納ボックス11を隙間なく被覆・封止する。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0039】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、尻尾2の尾根部3とセンサモジュール10の収納ボックス11との間に介在する軟質のゲルシート31により、尾根部3の腹側に対する圧迫を緩和することができ、血流の低下や尾根部3腹側の損傷を防止することができるのは明らかである。また、センサモジュール10に防水加工処理を何ら施す必要がないので、汎用のセンサモジュール10を選択することができる。
【0040】
次に、
図6は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の前部を左右横方向に伸長して後部を短縮するとともに、弾性被覆帯20の両側部をそれぞれ後部に向けて傾斜させることにより、弾性被覆帯20を位置ずれしにくい平面略台形に形成し、弾性被覆帯20の左右両側部の固定孔24をそれぞれ増加(本実施形態では合計10個)させ、この増えた複数の固定孔24に細長い締結具をそれぞれ取り付けるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0041】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、固定孔24と締結具の数を増やすので、固定箇所の細分化が期待でき、尻尾2の周長の異なる勾配部4と中間部5とに締結具をそれぞれ巻き付けて緊締すれば、尻尾2から家畜用センサモジュール取付具が位置ずれしたり、脱落するのを確実に防止することができる。
【0042】
次に、
図7は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20を前後方向に短縮し、弾性被覆帯20の前部を左右横方向に伸長して後部を短縮するとともに、弾性被覆帯20の両側部をそれぞれ後部に向けて傾斜させることにより、弾性被覆帯20を位置ずれしにくい幅広の平面略台形に形成し、この弾性被覆帯20の多数の網目23を変形した横長に形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、網目23を変形した横長に形成して弾性被覆帯20の伸縮率を向上させるので、弾性被覆帯20の尻尾2に対する接触面積を減少させ、滑り性を改善することができる。
【0044】
次に、
図8は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の前部を左右横方向に伸長して後部を短縮するとともに、弾性被覆帯20の両側部をそれぞれ後部に向けて傾斜させることにより、弾性被覆帯20を位置ずれしにくい平面略台形に形成し、弾性被覆帯20の左右両側部の固定孔24を所定の適当数(本実施形態では合計8個)とし、この適当数の固定孔24に、細長い締結具をそれぞれ取り付けるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0045】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、固定孔24と締結具の数を少なくもなく、多くもない適当な数とするので、弾性被覆帯20の尻尾2に対する滑り性を改善することが可能となる。
【0046】
次に、
図9は本発明の第7の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の前後部をそれぞれ連続した山形に形成して凹凸を増やし、この弾性被覆帯20の多数の網目23をそれぞれ縦長に形成し、弾性被覆帯20の固定孔24と細長い締結具の数をそれぞれ減少させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、網目23が縦長に形成されるので、牛1の尻尾2の曲がる動きに弾性被覆帯20を伸ばして容易に対応させることが可能となる。また、固定孔24と締結具の減少により、締結具の自由な動きを確保して操作性を向上させることも可能となる。
【0048】
次に、
図10は本発明の第8の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の後部を連続した山形に形成してその凹凸を増やし、この弾性被覆帯20の多数の網目23をそれぞれ縦長に形成し、弾性被覆帯20の固定孔24と細長い締結具の数をそれぞれ減少させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、尻尾2の周長の長い尾根部3と勾配部4に対する締結具の自由な動きを確保して操作性を向上させることが可能となる。
【0049】
次に、
図11は本発明の第9の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の前部を左右方向に伸長して後部を短縮するとともに、弾性被覆帯20の両側部をそれぞれ後部に向けて傾斜させることにより、弾性被覆帯20を平面略台形に形成し、この弾性被覆帯20の網目23の数を減少させて各網目23を拡大形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、弾性被覆帯20の網目23を拡大するので、牛1の尻尾2に対する弾性被覆帯20の自由な動きの確保が期待できる。
【0050】
次に、
図12は本発明の第10の実施形態を示すもので、この場合には、弾性被覆帯20の前後部をそれぞれ連続した山形に形成して凹凸を増やし、この弾性被覆帯20の多数の網目23をそれぞれ縦長に形成し、弾性被覆帯20の一側部前後方向には、複数の締結具25を並べて一体形成するとともに、弾性被覆帯20の他側部前後方向には、締結具用の複数の固定孔24を並べて穿孔するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、弾性被覆帯20の一側部に複数の締結具25が並べて一体形成されているので、尻尾2の尾根部3及び勾配部4付近の腹側にセンサモジュール10を片手で接触させて位置合わせしたり、弾性被覆帯20を片手で簡易に締結することができ、操作性の向上が大いに期待できる。
【0052】
なお、上記実施形態では子牛や成牛を示したが、何らこれに限定されるものではなく、乳牛や肉牛でも良い。また、センサモジュール10の収納ボックス11に防水性や防塵性を付与しても良い。また、弾性被覆帯20を、熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーのいずれか一方により成形しても良いが、何らこれに限定されるものではなく、例えば伸縮性の布体(例えば、ニット製の布等)等により形成しても良い。また、ゲルシート31の表裏両面にそれぞれ粘着性を付与しても良いし、強粘着性ではなく、弱粘着性を付与して着脱自在とすることもできる。さらに、ゲルシート31を洗浄し、繰り返し使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る家畜用センサモジュール取付具は、少なくとも畜産業や酪農業の分野で使用される。
【符号の説明】
【0054】
1 牛
2 尻尾
3 尾根部
4 勾配部
5 中間部
6 先端部
10 センサモジュール
20 弾性被覆帯
22 網目領域
23 網目
24 固定孔
25 締結具
25A 締結具
30 被覆部材
31 ゲルシート
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