(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】コネクティングロッド
(51)【国際特許分類】
F16C 7/04 20060101AFI20221003BHJP
F16C 27/02 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F16C7/04
F16C27/02 Z
(21)【出願番号】P 2019011004
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】門脇 剛
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2908033(EP,A1)
【文献】特開昭53-54609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/00-9/06
F16C 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトが連結される大端部と、
ピストンピンが挿通されるピン孔部を有する小端部と、
前記小端部における前記ピン孔部の内周面に設けられ、前記ピストンピンに対する摺動面を形成する軸受メタルと、
前記大端部と前記小端部とを連結する連接棒と、を備え
るコネクティングロッドであって、
前記小端部または前記連接棒の少なくとも一方の一部には、周囲の部分よりも低い剛性を有することにより、前記軸受メタルの両方の端部側を弾性変形可能に支持する柔支持部が形成され、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記コネクティングロッドの径方向に沿った前記連接棒の断面における重心を含む中芯部よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に設けられ、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、第1部分と、前記第1部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第2部分とを含み、
前記第2部分の剛性は、前記第1部分の剛性よりも低いことを特徴とするコネクティングロッド。
【請求項2】
前記柔支持部は、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線よりも、前記大端部の側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクティングロッド。
【請求項3】
前記小端部および前記連接棒には、前記小端部および前記連接棒の各々の内部に跨って前記コネクティングロッドの軸方向に沿って延在する給油孔が形成されており、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記給油孔よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクティングロッド。
【請求項4】
前記エンジンの駆動時における前記軸受メタルの変形量は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記コネクティングロッドの径方向外側に向かうにつれて大きくなるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のコネクティングロッド。
【請求項5】
エンジンのクランクシャフトが連結される大端部と、
ピストンピンが挿通されるピン孔部を有する小端部と、
前記小端部における前記ピン孔部の内周面に設けられ、前記ピストンピンに対する摺動面を形成する軸受メタルと、
前記大端部と前記小端部とを連結する連接棒と、を備え
るコネクティングロッドであって、
前記小端部または前記連接棒の少なくとも一方の一部には、周囲の部分よりも低い剛性を有することにより、前記軸受メタルの両方の端部側を弾性変形可能に支持する柔支持部が形成され、
前記柔支持部は、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿って視認した正面視において、前記軸受メタルの内周面に沿って延在するように設けられ、
前記柔支持部は、前記ピン孔部の断面中心を通る中心線に沿って視認した正面視において、第3部分と、前記第3部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第4部分とを含み、
前記第4部分の剛性は、前記第3部分の剛性よりも高いことを特徴とするコネクティングロッド。
【請求項6】
エンジンのクランクシャフトが連結される大端部と、
ピストンピンが挿通されるピン孔部を有する小端部と、
前記小端部における前記ピン孔部の内周面に設けられ、前記ピストンピンに対する摺動面を形成する軸受メタルと、
前記大端部と前記小端部とを連結する連接棒と、を備え、
前記小端部または前記連接棒の少なくとも一方の一部には、周囲の部分よりも低い剛性を有することにより、前記軸受メタルの両方の端部側を弾性変形可能に支持する柔支持部が形成され、
前記柔支持部は、ポーラス構造を有することを特徴とするコネクティングロッド。
【請求項7】
前記柔支持部は、前記ピストンピンが曲がることにより受ける荷重の向きに弾性変形することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のコネクティングロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクティングロッド(コンロッド)に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)のコネクティングロッド(コンロッド)の小端部にはピン孔が形成されており、ピストンピンにより、ピン孔の内周面に設けられた軸受(すべり軸受)を介してピストンに取り付けられる。このピストンピンは、昨今のエンジンの軽量化・高出力化の流れの中で曲げ剛性が相対的に低くなっており、エンジンの駆動時に作用する荷重により曲がり易くなることで、上記の軸受(軸受メタル)の端部に軸受荷重が片寄った片当たり状態が発生し易い。そして、この片当たりは、軸受の摩耗や焼き付きの原因となるなど、エンジンの更なる軽量化・高出力化の妨げとなる。
【0003】
例えば特許文献1には、クランクシャフトを軸支するすべり軸受の摺動面(摺接面)の軸方向の端部(両端部)にクラウニングを形成することが開示されている。また、特許文献2には、小端部とピストンピンとが摺動する摺動面に弾性潤滑剤としてのフッ素樹脂をコーティングすることで、シリンダ内でピストンが傾くのを防ぐことが開示されている。特許文献3にはピン孔の内周面のうちの特定の領域に複数の凹部を設けることで、潤滑油の量を多くし、小端部での焼き付きを防止することが開示されている。特許文献4では、小端部の壁面に三次元網目構造(ラティス構造)を形成することにより、表面積の拡大による、放熱性の向上とオイルの保持を行うことが開示されている。なお、特許文献5には、上記のラティス構造を有する部品についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/072548号
【文献】特開2007-40137号公報
【文献】特開2018-9634号公報
【文献】特開2018-168895号公報
【文献】特開2015-93461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ピストンピンの軸受メタル(軸受)への片当たりを防止するために、軸受メタルの端部(両端部)にクラウニングやテーパ加工を施すことが考えられる。しかしながら、その加工した面積の分だけ、軸受メタルにおける平行部分(加工以外の部分)の面積が減るため、軸受面圧が上昇して軸受メタルの疲労破壊の一因となり得る。また、様々な負荷で運転されるエンジンの場合など、ピストンピンの変形量が一定ではない場合には、予めクラウニング等の加工を行う手法では、上記の片当たりを様々なエンジンの負荷に応じて適切に防止することは難しい。また、小端部の軸受メタルの下側を薄肉構造、切り欠き構造にして柔構造化することも考えられるが、薄肉部分や切り欠き部分の応力集中の制約により、目標とする柔構造を達成するのが難しい場合が考えられる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、小端部の軸受メタルの端部へ軸受荷重が片寄るのを防止することが可能なコネクティングロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るコネクティングロッドは、
エンジンのクランクシャフトが連結される大端部と、
ピストンピンが挿通されるピン孔部を有する小端部と、
前記小端部における前記ピン孔部の内周面に設けられ、前記ピストンピンに対する摺動面を形成する軸受メタルと、
前記大端部と前記小端部とを連結する連接棒と、を備え、
前記小端部または前記連接棒の少なくとも一方の一部には、周囲の部分よりも低い剛性を有することにより、前記軸受メタルの両方の端部側を弾性変形可能に支持する柔支持部が形成されている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、コネクティングロッドの小端部および連接棒の少なくとも一方の一部には、小端部に設けられた軸受メタルの両方の端部側を弾性変形可能に支持するための柔支持部が形成されている。これによって、ピストンピンが曲がると、ピストンピンから受ける荷重により軸受メタルの端部側も荷重の向きに曲がることができるので、軸受メタルの端部にピストンピンが片当たりすることにより、軸受荷重が軸受メタルの端部(両端部)に片寄るのを防止することができる。したがって、軸受メタルの摩耗や焼き付きを防止することができ、エンジンのさらなる軽量化や高出力化を行うことができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記柔支持部は、前記ピン孔の断面中心を通る中心線よりも、前記大端部の側に設けられている。
【0010】
上記(2)の構成によれば、柔支持部は、小端部に設けられた軸受メタルにおける、ピストンピンの片当たりによる大きな荷重を受ける領域を支持する小端部等(小端部または連接棒の少なくとも一方)の部分に設けられる。軸受荷重は、小端部における連接棒側の方が、その逆側よりも大きく作用し易い。これによって、軸受メタルの端部にピストンピンが片当たりした状態になるのを防止することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記コネクティングロッドの径方向に沿った前記連接棒の断面における重心を含む中芯部よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に設けられている。
【0012】
上記(3)の構成によれば、柔支持部は、小端部に設けられた軸受メタルにおける、ピストンピンの片当たりによる大きな荷重を受ける領域を支持する小端部等の部分に設けられる。すなわち、軸受荷重は、片当たり状態において軸受メタルの両方の端部に作用するので、上記の断面視(以下、側面断面視。後述する
図2~
図5参照)において、中芯部よりもコネクティングロッドの径方向外側に柔支持部を設けることで、軸受メタルの端部にピストンピンが片当たりした状態になるのを防止することができる。また、コネクティングロッドの径方向に沿った連接棒の断面における重心を含む所定の範囲の部分(中芯部)は上記の軸方向の力を適切に伝達する必要がある。よって、このような中芯部よりもコネクティングロッドの径方向外側に柔支持部を設けることにより、連接棒の中芯部に柔支持部を設けておらず、適切にエンジンの燃焼による荷重をクランクシャフトに伝達することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記小端部および前記連接棒には、前記小端部および前記連接棒の各々の内部に跨って前記コネクティングロッドの軸方向に沿って延在する給油孔が形成されており、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記給油孔よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に設けられている。
【0014】
上記(4)の構成によれば、中芯部に設けられた給油孔よりもコネクティングロッドの径方向外側に柔支持部を設けることにより、上記(3)と同様に、連接棒の中芯部に柔支持部を設けておらず、適切にエンジンの燃焼による荷重をクランクシャフトに伝達することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)~(4)の構成において、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、第1部分と、前記第1部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第2部分とを含み、
前記第2部分の剛性は、前記第1部分の剛性よりも低い。
【0016】
上記(5)の構成によれば、上記の側面断面視において、柔支持部の剛性は、コネクティングロッドの径方向の外側の方が内側(芯側)よりも小さい。これによって、側面断面視におけるコネクティングロッドの軸方向に沿った柔支持部の厚さ(コネクティングロッドの軸方向の長さ(高さ幅))が同じであったとしても、軸受メタルが、コネクティングロッドの径方向の外側にある部分ほど曲がり易くすることができる。よって、軸受荷重が軸受メタルの端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)~(4)の構成において、
前記柔支持部は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、第1部分と、前記第1部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第2部分とを含み、
前記第2部分の剛性は、前記第1部分の剛性と等しい。
【0018】
上記(6)の構成によれば、上記の側面断面視において、柔支持部の剛性は、コネクティングロッドの径方向の外側と内側(芯側)とで等しい。これによって、側面断面視における柔支持部の厚さ(上記の高さ幅)を変えるなどすることにより、軸受メタルが、コネクティングロッドの径方向の外側にある部分ほど曲がり易くすることができる。よって、軸受荷重が軸受メタルの端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)~(6)の構成において、
前記エンジンの駆動時における前記軸受メタルの変形量は、前記コネクティングロッドの軸方向、且つ、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿った断面視において、前記コネクティングロッドの径方向外側に向かうにつれて大きくなるように構成される。
【0020】
上記(7)の構成によれば、軸受メタルにおいて、上記の側面断面視におけるコネクティングロッドの径方向の外側にある部分ほど曲がり易くすることができ、軸受荷重が軸受メタルの端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)~(7)の構成において、
前記柔支持部は、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿って視認した正面視において、前記軸受メタルの内周面に沿って延在するように設けられている。
【0022】
上記(8)の構成によれば、ピストンピンの片当たりによる比較的大きな荷重を受ける部分をカバーするように、柔支持部を設けることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記柔支持部は、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿って視認した正面視において、第3部分と、前記第3部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第4部分とを含み、
前記第4部分の剛性は、前記第3部分の剛性よりも高い。
【0024】
上記(9)の構成によれば、上記の正面視において、柔支持部の剛性は、コネクティングロッドの径方向の外側の方が内側(中芯部側)よりも高い。片当たりにより軸受メタルに作用する荷重は、上記の正面視において上記の径方向の内側であるほど大きい。よって、上記の正面視における柔支持部の厚さ(上記の高さ幅)が同じであったとしても、軸受メタルを支持する小端部の部分が、コネクティングロッドの径方向の内側にある部分ほど曲がり易くすることができ、上記の正面視における柔支持部の剛性を適切に設定することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記柔支持部は、前記ピン孔の断面中心を通る中心線に沿って視認した正面視において、第3部分と、前記第3部分よりも前記コネクティングロッドの径方向外側に位置する第4部分とを含み、
前記第4部分の剛性は、前記第3部分の剛性と等しい。
【0026】
上記(10)の構成によれば、上記の正面視において、柔支持部の剛性は、コネクティングロッドの径方向の外側と内側(芯側)とで等しい。片当たりにより軸受メタルに作用する荷重は、上記の正面視において上記の径方向の内側であるほど大きいが、上記の正面視における柔支持部の厚さ(上記の高さ幅)を上記の径方向の内側であるほど大きくすることにより、上記の正面視における柔支持部の剛性を適切に設定することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)~(10)の構成において、
前記柔支持部は、空洞部を有する。
【0028】
上記(11)の構成によれば、柔支持部における空洞部の粗密を変えることで、柔支持部の剛性を所望の大きさに変えることができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記柔支持部は、ポーラス構造を有する。
【0030】
上記(12)の構成によれば、柔支持部は、例えばラティス構造などのポーラス(多孔質)な構造(ポーラス構造)を有する。3Dプリンタといった三次元造形装置などを用いて造形されるラティス構造により柔支持部を適切に設けることができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)~(12)の構成において、
前記柔支持部は、前記ピストンピンが曲がることにより受ける荷重の向きに弾性変形する。
【0032】
上記(13)の構成によれば、柔支持部は、曲がった状態のピストンピンから受ける荷重の向きに弾性変形する。これによって、軸受メタルの端部側が曲がることができるので、軸受メタルの端部にピストンピンが片当たりすることにより、軸受荷重が軸受メタルの端部(両端部)に片寄るのを防止することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、小端部の軸受メタルの端部へ軸受荷重が片寄るのを防止することが可能なコネクティングロッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクティングロッドの正面視を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコネクティングロッドの側面視における断面を模式的に示す図であり、
図1のAA断面に対応する。
【
図3】本発明の一実施形態に係る小端部の側面視における断面を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の他の一実施形態に係る小端部の側面視における断面を模式的に示す図である。
【
図5】本発明のその他の一実施形態に係る小端部の側面視における断面を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る小端部の正面視を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の他の一実施形態に係る小端部の正面視を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0036】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0037】
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
【0038】
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0039】
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクティングロッド1の正面視を模式的に示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るコネクティングロッド1の側面視における断面を模式的に示す図であり、
図1のAA断面に対応する。
図3~
図5は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る本発明の一実施形態に係る小端部3の側面視における断面を模式的に示す図である。また、
図6~
図7は、本発明の一実施形態に係る小端部3の正面視を模式的に示す図である。
【0041】
コネクティングロッド1は、エンジン(内燃機関)が備えるピストン(不図示)の往復運動をクランクシャフト(不図示)の回転運動に変換させるための部品である。
図1~
図2に示すように、コネクティングロッド1は、エンジンのクランクシャフト(不図示)が連結される大端部2と、ピストン(不図示)に連結(固定)されたピストンピン8が連結される小端部3と、大端部2と小端部3とを連結する連接棒4と、小端部3に設けられる軸受メタル5と、を備える。
【0042】
図1~
図2に示す実施形態では、小端部3と連接棒4とが一体的に製造(造形)されており、連接棒4と大端部2とがボルト1bで締結されるよう構成されているが、大端部2、小端部3、または連接棒4の少なくとも2つが一体的に製造されても良い。また、連接棒4は、周囲との干渉防止などのために部分的に厚さが減少(減肉)された部分を有している(
図2~
図5では、幅dだけ減肉)。なお、本実施形態では、大端部2と連接棒4との境界や、小端部3と連接棒4との境界は、上記の減肉が開始される箇所であるものとする。
【0043】
また、上記の小端部3は、
図1~
図7に示すように、ピストンピン8が挿通されるピン孔を形成するピン孔部31を有している。このピン孔の内周面には上記の軸受メタル5が設けられる(嵌合される)ことで、ピストンピン8(
図3~
図5参照)に対する摺動面5sが形成される。そして、この摺動面5sに給油孔7を通って潤滑油が供給されることで、潤滑油によりピストンピン8が挿通された小端部3が、ピストンピン8に対して滑らかに摺動(回転)することが可能となる。
【0044】
図1~
図7に示す実施形態では、小端部3のピン孔部31は、真円状のピン孔を形成している。また、給油孔7は、連接棒4および小端部3の各々の内部に跨って、コネクティングロッド1の軸方向(連接棒4の延在方向。以下、ロッド軸方向Ds)に沿って延在するように形成されている。より具体的には、連接棒4の内部にロッド軸方向Dsに沿って延在すると共に、ロッド軸方向Dsに直交する方向である径方向に沿ったコネクティングロッド1の厚みの方向(以下、適宜、ロッド径厚方向Dr)に沿って切断した連接棒4の断面における重心を含む所定の範囲を占める中芯部42を有している(
図2~
図5参照)。そして、給油孔7は、連接棒4の内部の中芯部42において、連接棒4の長手方向に沿って直線状に形成されると共に、そのまま直線状に小端部3の内部に連続的に形成されている。そして、軸受メタル5に形成された貫通穴5hを介して、軸受メタル5の摺動面5sに潤滑油が供給されるようになっている。なお、他の幾つかの実施形態では、給油孔7は、連接棒4における中芯部42以外の部分に形成されても良い。
【0045】
上述した構成を有するコネクティングロッド1において、小端部3または連接棒4の少なくとも一方の一部には、周囲の部分より低い剛性を有することにより、軸受メタル5の軸方向(後述する中心線CLの延在方向)における両方の端部側を弾性変形可能に支持する柔支持部6が形成されている。より詳細には、柔支持部6は、ピストンピン8が曲がることにより受ける荷重の向きに弾性変形する。例えば、
図3~
図5に示す断面視においては、図示のように、ピストンピン8の両端がロッド軸方向Dsの大端部2側に向けて曲がった場合には、曲がっていない場合よりも、柔支持部6の断面積が小さくなるように変形する。そして、ピストンピン8の曲がりがなくなり、ピストンピン8が直線状の状態に戻ると、柔支持部6の断面積は、曲がる前の元の大きさに戻る。なお、
図1~
図7に示すように、柔支持部6と軸受メタル5の間には、柔支持部6ではない小端部3の部分を設けても良い。他の幾つかの実施形態では、柔支持部6と軸受メタル5が接するように、柔支持部6を設けても良い。
【0046】
より詳細には、
図1~
図7に示すように、上述した柔支持部6は、小端部3または連接棒4の少なくとも一方における、ピン孔部31により形成されるピン孔の断面中心を通る中心線CLよりも、大端部2の側に設けられても良い。これは、エンジンでの燃料の燃焼により生じる大きな圧力は、中心線CLよりも大端部2の側に作用し易いことによる。
図1~
図7に示す実施形態では、柔支持部6は、上記の中心線CLよりも大端部2の側にのみ設けられており、その反対側には設けられていない。
【0047】
また、
図1、
図6~
図7に示すように、正面視において、柔支持部6は、軸受メタル5の内周面に沿って延在するように設けられても良い。これによって、ピストンピン8の片当たりによる比較的大きな荷重を受ける部分をカバーするように、柔支持部6を設けることを図ることが可能となる。
図1、
図6~
図7に示す柔支持部6は、給油孔7をかわすように、給油孔7のない部分に設けられている。より具体的には、柔支持部6は、側面断面視(
図3~
図5参照)で視認した場合には、連接棒4の中芯部42あるいは給油孔7を挟んだ両側に設けられている。なお、柔支持部6は、軸受メタル5の外周面に沿って延在するように設けられても良い。ただし、本実施形態に本発明は限定されず、他の幾つかの実施形態では、柔支持部6は、正面視において直線状に設けられていても良い。
【0048】
一方、上記の剛性は、単位体積当たりの剛性である。剛性が小さいほど、その分だけ同じ荷重に対する変形量が大きくなり、逆に剛性が大きいほど、その分だけ同じ荷重に対する変形量が小さくなる。
図1~
図7に示す実施形態では、柔支持部6は、ラティス(ポーラス)構造を有することによって軸受メタル5を弾性変形可能に支持するように構成されている。このラティス構造は、格子状(網目状)の構造であり、格子点同士を結ぶ部分(連結部分)の間には空洞部が形成される。この空洞部の体積割合(粗密)によって、柔支持部6の剛性が異なってくる。よって、ラティス構造が、小端部3または連接棒4の少なくとも一方の適切な部分に設けられることで、軸受メタル5の端部側が軸受荷重に応じて弾性的に曲がることを可能にすることができる。なお、柔支持部6は、空洞部を有していれば良く、ラティス構造を有する本実施形態に本発明は限定されない。
【0049】
また、
図1~
図7に示す実施形態では、柔支持部6は、小端部3に設けられている。また、小端部3および連接棒4の両方は、3Dプリンタなどの三次元造形装置などで一体的に造形されている。そして、小端部3および連接棒4における柔支持部6以外の部分は、柔支持部6とは異なる構造を有するように造形されるなど、柔支持部6よりも剛性が高くなるように造形されている。例えば、柔支持部6はラティス構造を有するように造形され、小端部3および連接棒4における柔支持部6以外の部分は造形材の一様の層を単純に順次積層させて造形するなど、ラティス構造よりも剛性が高くなるように造形される。柔支持部6の周囲にある隣接部分(小端部3または連接棒4の少なくとも一方)を一体的に造形することで、両者が適切に接合された状態を容易に形成することが可能となる。
【0050】
なお、他の幾つかの実施形態では、柔支持部6によって、軸受メタル5の上記の両方の端部側を弾性変形可能に支持できれば、柔支持部6は連接棒4に設けられても良いし、小端部3および連接棒4の両方に設けられても良い。また、柔支持部6の構造は、ラティス構造に限定されない。例えば、他の幾つかの実施形態では、柔支持部6は、薄肉構造あるいは切り欠き構造を有していても良い。さらに、柔支持部6を、薄肉構造あるいは切り欠き構造にした上で、他の剛性の低い部材を設置あるいは嵌め込むなどして、柔支持部6の剛性が調整されていても良い。
【0051】
上記の構成によれば、この柔支持部6によって、ピストンピン8が曲がると、ピストンピン8から受ける荷重により軸受メタル5の端部側も荷重の向きに曲がることができるので、軸受メタル5の端部にピストンピン8が片当たりすることにより、軸受荷重が軸受メタル5の端部に片寄るのを防止することができる。したがって、軸受メタル5の摩耗や焼き付きを防止することができ、エンジンのさらなる軽量化や高出力化を行うことができる。
【0052】
次に、上述した柔支持部6が設けられる位置について、主に
図3~
図7を用いてより詳細に説明する。
【0053】
幾つかの実施形態では、
図3~
図5に示すように、上述した柔支持部6は、ロッド軸方向Ds、且つ、上記の中心線CLに沿った断面(
図2~
図5参照。以下、側面断面視。)において、連接棒4の中芯部42または給油孔7よりもロッド径厚方向Drに沿った外側に設けられている。換言すれば、柔支持部6は、連接棒4の中芯部42または給油孔7を挟んだ両側に設けられている。また、柔支持部6は、小端部3の表面から連接棒4の中芯部42または給油孔7に向けて、所定の距離(奥行幅W)の所まで設けられている(
図3参照)。なお、
図3~
図5に示す柔支持部6は、正面視(
図6~
図7参照)で視認した場合には、軸受メタル5の内周面に沿って延在するように設けられている。
【0054】
この柔支持部6の奥行幅Wは、ピストンピン8の想定される曲がり具合に応じて定めても良い。また、ピストンピン8の剛性および小端部3の剛性との兼ね合いで決めても良い。
図3~
図5に示す実施形態では、
図3に示すように、ロッド径厚方向Drに沿った小端部3の表面と給油孔7との間の距離をWaとすると、柔支持部6の奥行幅Wは、W<Waとなっている。また、奥行幅Wは、連接棒4(ロッド軸方向Ds)の周方向に沿った位置において同じであっても良いし、異なっていても良い。例えばピン孔の中心線CLから給油孔7に下した垂線が通る柔支持部6の付近から、軸受メタル5の内周面に沿って離れるに従って奥行幅Wを小さくするなど、周方向に沿って異ならせても良い。奥行幅Wを周方向で変えることで、柔支持部6の剛性の調整を行うことが可能となる。
【0055】
また、
図3~
図5に示すように、柔支持部6の給油孔7側の端部(両端部)にアールRが付けられても良い。このように、側面断面視において、柔支持部6におけるロッド軸方向Dsに沿った長さ(高さ幅H)を給油孔7に向かうに従って短くし、柔支持部6の厚みを給油孔7に近づくに従って小さくすることで、柔支持部6の剛性が給油孔7に向かうに従って高くなるようにしている。
【0056】
上記の構成によれば、柔支持部6は、小端部3に設けられた軸受メタル5における、ピストンピン8の片当たりによる大きな荷重を受ける領域を支持する小端部3等の部分に設けられる。すなわち、軸受荷重は、片当たり状態において軸受メタル5の両方の端部に作用するので、側面断面視において、給油孔7よりもロッド径厚方向Dr外側に柔支持部6を設けることで、軸受メタル5の端部にピストンピン8が片当たりした状態になるのを防止することができる。また、給油孔7が形成されている部分(中芯部42)は上記のロッド軸方向Dsの力を適切に伝達する必要がある。よって、給油孔7よりもロッド径厚方向Dr外側に柔支持部6を設けることにより、連接棒4の芯部分に柔支持部6を設けておらず、適切にエンジンの燃焼による荷重をクランクシャフトに伝達することができる。
【0057】
また、上述した実施形態において、幾つかの実施形態では、柔支持部6は、側面断面視におけるロッド径厚方向Drに沿って、軸受メタル5を支持(下支え)する力が同じではなく、その方向に沿って変化する部分を少なくとも一部に有するように構成されても良い。これにより、エンジンの駆動時における軸受メタル5の変形量は、側面断面視において、ロッド径厚方向Dr外側に向かうにつれて大きくなるように構成される。これによって、軸受メタル5において、側面断面視におけるロッド径厚方向Drの外側にある部分ほど曲がり易くすることができ、軸受荷重が軸受メタル5の端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することが可能となる。
【0058】
具体的には、側面断面視において、柔支持部6の任意の部分を第1部分Paとし、その第1部分Paよりもロッド径厚方向Dr外側に位置する部分を第2部分Pbと呼ぶとする。すなわち、柔支持部6は、側面断面視において、第1部分Paと、第1部分Paよりもロッド径厚方向Dr外側に位置する第2部分Pbとを含む。
【0059】
この際、幾つかの実施形態では、
図3~
図4に示すように、上記の第2部分Pb(相対的にロッド径厚方向Drの外側の部分)の剛性は、上記の第1部分Pa(相対的にロッド径厚方向Drの内側の部分)の剛性よりも低い。すなわち、柔支持部6の各部の剛性をロッド径厚方向Drで調節しており、片当たりによる軸受荷重の大きさに合わせて、片当たりによる軸受荷重の大きい領域から小さい領域に向かって、柔支持部6の各部の剛性が高くなるようにする。これによって、柔支持部6は、相対的にロッド径厚方向Drの外側の部分の方が、相対的に内側の部分よりも弾性変形し易いようになっている。
図3~
図4に示す実施形態では、柔支持部6はラティス構造を有しているが、ラティス構造により形成される空洞部の粗密を変えることにより、剛性の大きさを変えている。
【0060】
より具体的には、ラティス構造を形成する単位格子の構造は第1部分Paおよび第2部分Pbで同じとしつつ、単位格子のサイズを変えても良い。換言すれば、単位格子の対応する連結部分の長さを比較すると、第2部分Pbの方が第1部分Paよりも長い。このように、第2部分Pbサイズを第1部分Paのサイズよりも大きくすれば、ラティス構造の内部に形成される空洞部が占める体積は、単位体積あたりで、第2部分Pbの方が第1部分Paよりも大きくなり、第2部分Pbの空洞部を第1部分の空洞部よりも疎に設けることができる。あるいは、第2部分Pbの単位格子の構造を、第1部分Paの単位格子の構造よりも、空洞部が大きいものにしても良い。そして、空洞部の体積が大きいほど(空洞部が疎であるほど)、その部分の剛性が小さくなる。
【0061】
図3に示す実施形態では、柔支持部6におけるロッド軸方向Dsにおける長さ(高さ幅H)は、アールRが付けられた両端部以外ではロッド径厚方向Drに沿って概ね同じとなっている。他方、
図4に示す実施形態では、柔支持部6の高さ幅Hは、ロッド径厚方向Drを給油孔7に向かうに従って大きくなっている。柔支持部6の高さ幅Hが長いほど、小端部3における軸受メタル5のロッド径厚方向Drに沿った各部を支持する部分(具体的には、ロッド軸方向Dsに沿った、ピン孔部31の内周面から柔支持部6を含む部分)の剛性が小さくなるので、同じ荷重に対して軸受メタル5が弾性変形し易くなる。この
図4に示すように、空洞部の粗密に加えて、高さ幅Hをロッド径厚方向Drに沿って変えることで、ロッド径厚方向Drにおける軸受メタル5を支持する力に変化をつけても良い。すなわち、柔支持部6における空洞部の粗密と、高さ幅H(厚み)とを同時に調整することで、目的とする剛性を設定することが可能となる。
【0062】
上記の構成によれば、側面断面視において、柔支持部6の剛性は、ロッド径厚方向Drの外側の方が内側(中芯部42側)よりも小さい。これによって、側面断面視における柔支持部6の厚さ(高さ幅H)が同じであったとしても、軸受メタル5が、ロッド径厚方向Drの外側にある部分ほど曲がり易くすることができる。よって、軸受荷重が軸受メタル5の端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することができる。
【0063】
他の幾つかの実施形態では、
図5に示すように、上記の第2部分Pb(相対的にロッド径厚方向Drの外側)の剛性は、第1部分Pa(相対的にロッド径厚方向Drの内側)の剛性と等しい。
図5に示す実施形態では、柔支持部6はラティス構造を有しているが、第1部分Paおよび第2部分Pbを形成する単位格子は、同じ構造を有することで、第1部分Paおよび第2部分Pbの剛性が等しいようにしても良い。
【0064】
この実施形態では、ピストンピン8の片当たりによる軸受荷重の小さい領域から大きい領域に向かって、柔支持部6のロッド径厚方向Drに沿った各位置での同一の荷重に対する弾性変形量が大きくなるようにするためには、柔支持部6の高さ幅Hをロッド径厚方向Drに沿って調節する必要がある。ここで、柔支持部6の高さ幅Hが長いほど、上述したように、軸受メタル5を支持する小端部3の部分が同じ荷重に対して弾性変形しやすくなる。このため、
図5に示すように、第2部分Pbの位置における高さ幅Hbは、第1部分Paの位置における高さ幅Haよりも長くする(Hb>Ha)。
【0065】
上記の構成によれば、側面断面視(
図3~
図5参照)において、柔支持部6の剛性は、ロッド径厚方向Drの外側と内側(中芯部42側)とで等しい。これによって、側面断面視における柔支持部6の厚さ(高さ幅H)を変えるなどすることにより、軸受メタル5が、ロッド径厚方向Drの外側にある部分ほど曲がり易くすることができる。よって、軸受荷重が軸受メタル5の端部(両端部)に片寄るのをより適切に防止することができる。
【0066】
同様に、幾つかの実施形態では、柔支持部6は、正面視におけるロッド径厚方向Drに沿って、軸受メタル5を支持(下支え)する力が同じではなく、その方向に沿って変化する部分を少なくとも一部に有するように構成されても良い。これにより、エンジンの駆動時における軸受メタル5の変形量は、正面視において、ロッド径厚方向Dr外側に向かうにつれて小さくなるように構成される。これは、正面視で視認した場合に、軸受メタル5に作用する軸受荷重は、ピン孔の中心線CLから給油孔7に下した垂線が通る軸受メタル5の部分付近が最も高く、そこからロッド径厚方向Drの外側に向かうほど軸受荷重が小さくなることによる。そして、軸受荷重が小さい部分は、大きい部分よりも剛性を高めることで、柔支持部6を設けない場合の剛性に近づけるようにする。
【0067】
具体的には、正面視において、柔支持部6の任意の部分を第3部分Pcとし、その第3部分Pcよりも、ロッド径厚方向Dr外側に位置する部分を第4部分Pdと呼ぶとする。すなわち、柔支持部6は、正面視(
図6~
図7参照)において、第3部分Pcと、第3部分Pcよりもロッド径厚方向Drの外側に位置する第4部分Pdとを含む。なお、
図6~図7に示すように、正面視における柔支持部6の端部(両端部)にはアールRが付けられても良い。
【0068】
この際、幾つかの実施形態では、
図6に示すように、上記の第4部分Pdの剛性は、上記の第3部分Pcの剛性よりも高い。これによって、柔支持部6は、相対的にロッド径厚方向Drの内側の方が弾性変形し易いようになっている。具体的には、
図6に示す実施形態では、柔支持部6はラティス構造を有しているが、上述したのと同様に、ラティス構造により形成される空洞部の粗密を変えることにより、剛性の大きさを変えても良い。これによって、上記の正面視における柔支持部6の剛性を適切に設定することができる。
【0069】
他の幾つかの実施形態では、
図7に示すように、第4部分Pdの剛性は、第3部分Pcの剛性と等しい。この場合、柔支持部6の高さ幅Hが長いほど、軸受メタル5が同じ荷重に対して弾性変形しやすくなる。このため、
図7に示すように、第4部分Pdの位置における高さ幅Hは、第3部分Pcの位置における高さ幅Hよりも
短い。また、
図7に示す実施形態では、柔支持部6はラティス構造を有しているが、第3部分Pcおよび第4部分Pdを形成する単位格子は、同じ構造を有することで、第3部分Pcおよび第4部分Pdの剛性が等しいようにしても良い。これによって、上記の正面視における柔支持部6の剛性を適切に設定することができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0071】
1 コネクティングロッド
1b ボルト
2 大端部
3 小端部
4 連接棒
42 中芯部
5 軸受メタル
5h 貫通穴
5s 摺動面
6 柔支持部
R 柔支持部の端部に付けられたアール
7 給油孔
8 ピストンピン
31 ピン孔部
CL 中心線
Dr ロッド径厚方向
Ds ロッド軸方向
H 柔支持部の高さ幅
W 柔支持部の奥行幅
Wa 小端部の表面から給油孔までの距離
d 減肉幅
Pa 柔支持部の第1部分
Pb 柔支持部の第2部分
Pc 柔支持部の第3部分
Pd 柔支持部の第4部分