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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】遅延ゲル化抑制澱粉およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/12 20060101AFI20221003BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20221003BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20221003BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20221003BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221003BHJP
   A23L 3/10 20060101ALI20221003BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20221003BHJP
【FI】
C08B30/12
A23L29/212
A23L9/10
A23C9/13
A23L5/00 N
A23L3/10
A23K20/163
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019501989
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017041966
(87)【国際公開番号】W WO2018013831
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】62/362,534
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522149980
【氏名又は名称】テイト アンド ライル ソリューションズ ユー・エス・エー エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】Tate & Lyle Solutions USA LLC
【住所又は居所原語表記】5450 Prairie Stone Parkway, Hoffman Estates, IL 60192, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペネロープ アシュビー パットン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517595(JP,A)
【文献】特開昭59-098661(JP,A)
【文献】特開昭52-038307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
A23L
JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉であって、
15~25%範囲のアミロース含量;ならびに
沈降体積および可溶分%値を有し、
可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(19.1mL/g、14.1%)、ポイント(18.1mL/g、17.3%)、ポイント(33.2mL/g、26.9%)およびポイント(35.7mL/g、21.1%)のセットによって定義される多角形内に含まれ、
前ゼラチン化されず、
ヒドロキシプロピル化されず、アセチル化されず、カルボキシメチル化されず、ヒドロキシエチル化されず、リン酸化されず、コハク化されず、リン酸塩と架橋結合されず、かつアクロレインと架橋結合されず、
5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で95℃で20分間調理された後、25℃で静置された後に少なくとも4時間で24時間以下のゲル時間を有する、遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項2】
17~25%範囲のアミロース含量を有する、請求項1に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項3】
22mL/g以下の沈降体積を有する、請求項1または2に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項4】
22~27mL/g範囲の沈降体積を有する、請求項1または2に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項5】
27~32mL/g範囲の沈降体積を有する、請求項1または2に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項6】
可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(20mL/g、14.5%)、ポイント(20mL/g、20.0%)、ポイント(30mL/g、25.5%)およびポイント(30mL/g、17.4%)のセットによって定義される多角形内に含まれる、請求項1または2に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項7】
可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(25mL/g、16.1%)、ポイント(25mL/g、22.8%)、ポイント(35mL/g、28.2%)およびポイント(35mL/g、19.1%)のセットによって定義される多角形内に含まれる、請求項1または2に記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項8】
3~10の黄色度指数を有する、請求項1~7のいずれかに記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項9】
前記遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉は、過酸化水素または次亜塩素酸塩によって漂白または酸化されない、請求項1~のいずれかに記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項10】
前記遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉は、RVA検査で50~1500mPa・s範囲の粘度を有する、請求項1~のいずれかに記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉。
【請求項11】
冷水膨潤遅延ゲル化澱粉の製造方法であって、
請求項1~10のいずれかに記載の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉を提供する段階、
前記遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉を水性C2-C3アルカノール中でスラリー化されてスラリーを形成する段階、および
前記スラリーを、高い温度および圧力の条件で適用する段階を含む、冷水膨潤遅延ゲル化澱粉の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の澱粉、または請求項11に記載の製造方法により得られた澱粉を水の存在下で調理する段階、調理された澱粉を1つ以上の他の食品成分と組み合わせて提供する段階、および澱粉をゲル形成させる段階を含む、食品の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の澱粉を調理されたゲル化形態で含む、食品。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の澱粉、または請求項13に記載の食品に含まれる澱粉を1つ以上の追加の乾燥食品成分との混合物として含む、乾燥ミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月14日付で出願された米国仮特許出願第62/362,534号に対する優先権の利益を主張し、同文献全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、例えば、食材の食感剤(texturant)として有用な澱粉材料に関する。特に、本発明は、遅延ゲル化抑制澱粉およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タピオカ澱粉は、様々な食品に多数の望ましい特性を提供することができる。タピオカ澱粉は、プディング、ヨーグルト、フルーツフィリング、および柔らかい食感のゲルが望ましい他の食品において増粘剤として一般的に使用されている。しかしながら、タピオカ澱粉は、約19%のアミロースを含有するため、調理および冷却後は、かなり速やかにゲル化される。これは、タピオカ-増粘された製品が、しばしば高温加工される必要があり、容器に入れられるまで冷却が許容されないということを意味する。これは大幅なコストを追加し、工程柔軟性を望ましくなく減少させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当業界においては、従来のタピオカ澱粉よりも著しく長い間、非ゲル化状態で維持され得る澱粉、特に、高アミロース澱粉が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、15~30%範囲のアミロース含量;10~50mL/g範囲の沈降体積;および10%~40%範囲の可溶分%を有し、前ゼラチン化されない遅延ゲル化抑制澱粉である。
【0006】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉を用いて製造される冷水膨潤遅延ゲル化澱粉である。
【0007】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の澱粉を水の存在下で調理する段階、および調理された澱粉を1つ以上の他の食品成分と組み合わせて提供する段階を含む、食品の製造方法である。
【0008】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の澱粉を調理されたゲル化形態で含む食品である。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の澱粉を1つ以上の追加の乾燥食品成分との混合物として含む、乾燥ミックスである。
【0010】
本発明の別の態様は、乳製品の供給物および本明細書に記載の澱粉を含む乳製品の混合物を提供する段階;乳製品混合物を培養し、培養された乳製品を提供する段階;培養された乳製品を非-ゲル化状態で容器に移す段階;培養された乳製品を容器内でゲル化されるようにする段階を含む、培養乳製品の製造方法である。
【0011】
他の態様は、本明細書で提供される開示内容から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の澱粉の調理された澱粉ペーストの顕微鏡写真である。
図2】本発明の様々な実施形態の澱粉のRVA調理曲線セットのグラフである。
図3】本発明の様々な実施形態の澱粉および様々な通常的に架橋結合された澱粉に対する沈降体積および可溶分%のプロットである。
図4】本発明の様々な澱粉および様々な比較澱粉に対する調理当日の硬度および不透明度等級の棒グラフである。
図5】本発明の様々な澱粉および様々な比較澱粉に対する調理当日のペーストの濃厚さおよび曳糸性(stringiness)等級の棒グラフである。
図6】調理後、翌日に本発明の様々な澱粉および様々な比較澱粉の硬度等級の棒グラフである。
図7】本発明の様々な澱粉および比較澱粉で製造された検査ヨーグルトの顕微鏡写真のセットである。
図8】本発明の様々な澱粉および比較澱粉で製造された検査プディングの粘弾性測定セットである。
図9】本発明の様々な澱粉および比較澱粉で製造された検査プディングの顕微鏡写真のセットである。
図10】本発明の様々な澱粉および比較澱粉で製造された検査乳製品デザートの顕微鏡写真のセットである。
図11】本発明の様々な澱粉および比較澱粉で製造された検査フルーツフィリングの顕微鏡写真のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様は、15~30%範囲のアミロース含量;10~50mL/g範囲の沈降体積;および10~40%範囲の可溶分%を有し、前ゼラチン化されない遅延ゲル化抑制澱粉である。本発明者は、このような特性(およびいくつかの実施形態において、本明細書に記載の他の特性)を有する澱粉が抑制され、遅延されたゲル化特性を有することによって、これらの澱粉が、調理および冷却後に比較的長時間にわたって実質的に非ゲル化状態で維持されるという点で特に有用であり得ると判断した。これは、本発明の調理された澱粉を含む製品が、室温で従来のタピオカ澱粉よりはるかに長い加工ウィンドウ(例えば、ポンピング、分配、包装)を有することができるということを意味する。本発明の澱粉はまた、例えば、従来の架橋結合されたタピオカ澱粉のせん断安定性と類似した、望ましいせん断安定性を有することができる。
【0014】
特定の実施形態において、本明細書に別途記載の遅延ゲル化抑制澱粉は、15~28%、または15~25%、または15~23%、または15~20%、または17~30%、または17~28%、または17~25%、または17~23%、または17~20%、または20~30%、または20~28%、または20~25%、または20~23%、または23~30%、または23~28%、または23~28%、または25~30%、または25~28%範囲のアミロース含量を有する。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、15~25%、または15~17%範囲のアミロース含量を有する。
【0015】
本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、タピオカ澱粉である。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の別の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、米澱粉である。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の別の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、デントコーン澱粉である。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の別の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、小麦澱粉である。当業者は、例えば、顕微鏡検査および標準との比較によって、異なる澱粉供給源を区別することができる。当業者は、例えば、任意にヨウ化物で染色して顕微鏡で澱粉材料を観察し、観察された顆粒の大きさおよび形状を使用して澱粉の類型を決定することができる。
【0016】
本発明の遅延ゲル化抑制澱粉は、10~50mL/g範囲の様々な沈降体積を有することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、18~22mL/g範囲の沈降体積を有する。他の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、22~27mL/g範囲の沈降体積を有する。さらに、他の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、27~32mL/g範囲の沈降体積を有する。様々な追加の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、10~45mL/g、10~40mL/g、または10~35mL/g、または10~30mL/g、または10~25mL/g、または10~20mL/g、または15~50mL/g、または15~45mL/g、または15~40mL/g、または15~35mL/g、または15~30mL/g、または15~25mL/g、または15~20mL/g、または20~50mL/g、または20~45mL/g、または20~40mL/g、または20~35mL/g、または20~30mL/g、または20~25mL/g、または25~50mL/g、または25~45mL/g、または25~40mL/g、または25~35mL/g、または25~30mL/g、または30~50mL/g、または30~45mL/g、または30~40mL/g、または30~35mL/g、または35~50mL/g、または35~45mL/g、または35~40mL/g、または40~50mL/g範囲の沈降体積を有する。当業者であれば、沈降体積は、澱粉の抑制程度の尺度であることを理解するであろうし、本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉の特定の最終用途のための望ましい沈降体積の範囲を選択するであろう。
【0017】
本明細書で使用される場合、沈降体積は、加塩緩衝液(pH6.5リン酸塩緩衝液中の1%塩化ナトリウム)100g(すなわち、澱粉を含む総量)中で調理された澱粉1gが占める体積である。この値は、当業者では、「膨潤体積」としても知られている。本明細書に記載の沈降体積は、最初にスラリーを含有する容器を95℃の水浴内に浮遊させ、ガラス棒または金属へらで6分間攪拌した後、容器を覆い、ペーストを95℃で20分間維持させることによって、澱粉を加塩緩衝液中の5%固形分で調理して測定する。容器を浴槽から取り出し、実験室のベンチで冷却させる。生成されたペーストは、水を添加し(すなわち、任意の蒸発された水を置換するために)よく混合して初期重量になるようにする。ペースト(澱粉1.0gを含む)20.0gを1%NaClを含有するpH6.5緩衝液を含有する100mLメスシリンダー内に重み付けし、シリンダー内の混合物の総重量を緩衝液を用いて100gとする。シリンダーを24時間放置する。澱粉沈降物の占める体積(すなわち、シリンダーで読み取られる)は、澱粉1gに対する沈降体積、すなわち、mL/g単位である。
【0018】
本発明の遅延ゲル化抑制澱粉は、10~40%範囲の様々な可溶分%値を有することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に開示される遅延ゲル化抑制澱粉は、14~17%範囲の可溶分値%を有する。他の実施形態において、本明細書に特に開示される遅延ゲル化抑制澱粉は、17~21%範囲の可溶分%値を有する。他の実施形態において、本明細書に特に開示される遅延ゲル化抑制澱粉は、19~24%範囲の可溶分%値を有する。様々な追加の実施形態において、本明細書に特に開示される遅延ゲル化抑制澱粉は、10~37%、または10~34%、または10~31%、または10~28%、または10~25%、または10~23%、または10~20%、または10~18%、または13~40%、または13~37%、または13~34%、または13~31%、または13~28%、または13~25%、または13~23%、または13~20%、または13~18%、または15~40%、または15~37%、または15~34%、または15~31%、または15~28%、または15~25%、または15~23%、または15~20%、または15~18%、または18~40%、または18~37%、または18~34%、または18~31%、または18~28%、または18~25%、または18~23%、または20~40%、または20~37%、または20~34%また20~31%、または20~28%、または20~25%、または20~23%、または25~40%、または25~37%、または25~34%、または25~31または25~28%、または30~40%、または30~37%、または30~34%、または34~40%範囲の可溶分%値を有する。
【0019】
上で記載の沈降体積検査において、粒状沈降物上の上澄液は、可溶性澱粉、すなわち、沈降物の抑制された顆粒によって維持されない澱粉の一部分を含有する。可溶性澱粉の量は、上澄液の一部分を回収し、酸または酵素を用いて澱粉をデキストロースで定量的に加水分解した後、例えば、YSIインコーポレーテツド(YSI Incorporated)から入手可能なグルコース分析器のような機器分析器を用いてデキストロースの濃度を測定して定量することができる。上澄液中のデキストロースの濃度を澱粉の可溶分%に代数的に転換させることができる。
【0020】
本発明者は、沈降体積と可溶分%値の特定の組み合わせが特に望ましい性能を提供すると判断した。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(16.9mL/g、13.0%)、(15.8mL/g、16.3%)、ポイント(32.3mL/g、29.8%)およびポイント(37.7mL/g、21.1%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(19.1mL/g、14.1%)、ポイント(18.1mL/g、17.3%)、ポイント(33.2mL/g、26.9%)およびポイント(35.7mL/g、21.1%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(10mL/g、11.4%)、ポイント(10mL/g、14.8%)、ポイント(50mL/g、36.5%)およびポイント(50mL/g、23.6%)によって定義される多角形内に含まれる。
【0021】
本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、沈降体積は、18~22mL/g範囲内にあって、可溶分%値は、14~17%範囲(例えば、15~17%、または16%~17%)内にある。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、沈降体積は、22~27mL/g範囲内にあって、可溶分%値は、17~21%(例えば、18~21%、19~21%、17~20%、または18~20%)範囲内にある。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、沈降体積は、22~27mL/g範囲内にあって、可溶分%値は、17~21%(例えば、18~21%、19~21%、17~20%、または18~20%)範囲内にある。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、沈降体積は、27~32mL/g範囲内にあって、可溶分%値は、19~24%(例えば、20~24%、21~24%、19~23%、20~23%、または21~24%)範囲内にある。
【0022】
本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(10mL/g、11.4%)、ポイント(10mL/g、14.8%)、ポイント(20mL/g、20.0%)およびポイント(20mL/g、14.5%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(15mL/g、13.0%)、ポイント(15mL/g、17.4%)、ポイント(25mL/g、22.8%)およびポイント(25mL/g、16.1%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(20mL/g、14.5%)、ポイント(20mL/g、20.0%)、ポイント(30mL/g、25.5%)およびポイント(30mL/g、17.4%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(25mL/g、16.1%)、ポイント(25mL/g、22.8%)、ポイント(35mL/g、28.2%)およびポイント(35mL/g、19.1%)によって定義される多角形に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(30mL/g、17.4%)、ポイント(30mL/g、25.5%)、ポイント(40mL/g、30.8%)およびポイント(40mL/g、20.5%)によって定義される多角形内に含まれる。本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の他の特定の実施形態において、可溶分%対沈降体積のプロットで(沈降体積、可溶分%)に対応するポイントは、ポイント(35mL/g、19.1%)、ポイント(35mL/g、28.2%)、ポイント(50mL/g、36.5%)およびポイント(50mL/g、23.6%)によって定義される多角形内に含まれる。
【0023】
上で説明したように、本明細書に記載の抑制澱粉は、遅延ゲル化特性を有する。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態は、5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で95℃で20分間調理された後、25℃で静置された後に少なくとも4時間のゲル時間を有する。このような特定の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、少なくとも4時間、少なくとも6時間または少なくとも10時間のゲル時間を有する。
【0024】
本明細書に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、遅延されたゲル時間を有するが、特定の望ましい実施形態においてはゲルを形成する。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態は、5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で95℃で20分間調理された後、25℃で静置された後に24時間以下のゲル時間を有する。例えば、このような特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で95℃で20分間調理された後、25℃で静置された後に20時間以下、18時間以下または16時間以下のゲル時間を有する。
【0025】
ゲル時間は、貯蔵弾性率(G′)が損失弾性率(G″)と同一になる時点、すなわち、tan(δ)値が1になる時点によって定義される、物質がゲルになる時点である。弾性率は、当業界において通常的であるように、1Hzで振動レオメトリーによって測定することができる。
【0026】
本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉は、比較的少ない色相で製造することができる。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態は、10以下、例えば3~10または5~10範囲の黄色度指数を有する。特定の望ましい実施形態において、黄色度指数は、8未満(例えば、3~8または5~8)である。黄色度指数は、ASTM E313によって測定される。
【0027】
特に、本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉は、従来の改質澱粉および/または抑制澱粉を製造するのに使用される多くの従来の化学的改質剤なしで製造することができる。したがって、特定の望ましい実施形態において、本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉は、いわゆる、「クリーンラベル」澱粉として表示することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、ヒドロキシプロピル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、アセチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、アセチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、カルボキシメチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、ヒドロキシエチル化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、リン酸化されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、コハク化されない(例えば、オクテニルコハク化されない)。特定の実施形態において、澱粉は、陽イオン性または両性イオン性ではない。
【0028】
同様に、特定の実施形態において、本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉は、澱粉の抑制で一般に使用される架橋結合剤を使用せずに製造することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、リン酸塩(例えば、オキシ塩化リンまたはメタリン酸塩を用いて)と架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、アジペートと架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、エピクロロヒドリンと架橋結合されない。特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、アクロレインと架橋結合されない。
【0029】
そして、本発明の遅延ゲル化抑制澱粉は、特定の実施形態において、当業界で一般的な他の過酷な化学的処理を使用せずに製造することができる。例えば、特定の実施形態において、遅延ゲル化抑制澱粉は、過酸化水素または次亜塩素酸塩によって漂白または酸化されない。
【0030】
同様に、特定の実施形態において(以下に説明するように、しかしすべての実施形態ではない)、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、70%超過の水(例えば、20%超過の水またはさらには10%超過の水)である媒体を用いて澱粉を中性または塩基性pHにpH調整して澱粉を乾燥させ、乾燥された澱粉を熱処理して製造しない。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の遅延ゲル化抑制澱粉は、デキストリン化せずに製造することができ、このようにデキストリンの典型的な相当な量の再重合された分岐鎖を含有しない。したがって、このような実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、実質的に1,2-および1,3-分岐化がない。このような分岐化は、当業者に知られている核磁気共鳴技術を用いて判定することができる。
【0032】
本発明の遅延ゲル化澱粉は、ラピッドビスコ分析器(Rapid Visco Analyzer)によって測定されるように様々な粘度を有することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉は、RVAによって測定される粘度が50~1500cP範囲内にあり得る。このような特定の実施形態において、RVAによって測定される粘度は、50~1000cP、50~850cP、50~700cP、50~500cP、50~400cP、50~300cP、50~200cP、100~1100cP、100~1000cP、100~850cP、100~700cP、100~500cP、100~400cP、100~300cP、200~1100cP、200~1000cP、200~850cP、200~700cP、200~500cP、400~1100cP、400~1000cP、400~850cP、400~700cP、600~1100cPまたは600~850cP、700~1500CPまたは700~1300cP範囲内にある。粘度は、1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で5%固形分で160rpmの攪拌速度でRVAによって測定する。分析の初期温度は、50℃である;温度を3分にわたって90℃まで直線的に上昇させた後、95℃で20分間維持させ、次いで3分間にわたって50℃まで直線的に低下させ、次いで50℃で9分間維持させ、以後粘度を測定する。特に、ペースト化(pasting)ピークが、約2~5分の時間で表示される場合、測定された最終粘度は、ペースト化ピーク粘度よりも高い。ペースト化ピークが存在しない場合、95℃維持中の粘度は、平坦であるか、増加する。
【0033】
上で言及したように、本発明の第1態様の遅延ゲル化抑制澱粉は、前ゼラチン化されない。
【0034】
特定の実施形態において、本発明の一態様の遅延ゲル化抑制澱粉は、調理時に実質的に粒状を維持する。本明細書で使用される粒度は、スラリーを含有する容器を95℃水浴内に浮遊させ、ガラス棒または金属へらで6分間攪拌した後、容器を覆い、ペーストを95℃でさらに20分間維持させ、次いでペーストを室温まで冷却させることによって、澱粉を可塩緩衝液中の5%固形分で調理して測定する。このように調理した後、膨潤されているが、完全な顆粒を顕微鏡で観察することができる。当業者は、粒度からの僅かな逸脱が許容されることを理解するであろう。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態において、澱粉顆粒の30%以下が、調理時に(すなわち、粒度に対して上で説明したように)損傷される。このような特定の実施形態において、澱粉顆粒の20%以下、さらには10%以下が、調理時に(すなわち、粒度に対して上で説明したように)損傷される。当業者は、当業界において通常的であるように、澱粉顆粒を顕微鏡(例えば、染色された)下で観察し、澱粉顆粒が完全な状態を維持しているか否かを判定することができる。
【0035】
本発明の特定の実施形態による遅延ゲル化抑制澱粉は、せん断安定性であり、したがって様々な工程条件に適合することができる。
【0036】
本明細書に記載の遅延ゲル化抑制澱粉の特定の望ましい実施形態は、実質的に消化可能である。例えば、本明細書に特に記載される遅延ゲル化抑制澱粉の特定の実施形態において、繊維の量は、AOAC 2001.03によって決定されるところにしたがえば、10%未満である。このような特定の実施形態において、繊維の量は、5%未満、さらには2%未満である。
【0037】
上で言及したように、本発明の第1態様の遅延ゲル化澱粉は、抑制される。本明細書で使用される「抑制」は、澱粉のゼラチン化が抑制されること(すなわち、従来の架橋結合された澱粉と類似に)を意味する。抑制澱粉は、本明細書に記載のRVA分析調理条件下で観察されたその粘度および他の特性を特徴とするその抑制程度に対して変化する可能性がある。実質的に完全に抑制された澱粉は。ゼラチン化に抵抗するであろう。高度に抑制された澱粉は、制限された範囲まで膨潤し、粘度の持続的な上昇を示すが、ピーク粘度は、達成されないであろう。適度に抑制された澱粉は、抑制されていない同一の澱粉と比較し、低いピーク粘度および低いパーセンテージの粘度崩壊を示すであろう。軽微に抑制された澱粉は、対照(阻害されない)澱粉と比較し、ピーク粘度の僅かな上昇および低いパーセンテージの粘度崩壊を示すであろう。
【0038】
本発明の遅延ゲル化抑制澱粉は、様々な方法論を用いて製造することができる。様々な澱粉供給原料(例えば、タピオカ澱粉、デントコーン澱粉、小麦澱粉または米澱粉などの天然澱粉)を使用することができる。澱粉供給原料は、例えば、当業界において通常的であるように、澱粉中に存在する脂質および/またはタンパク質の量を減少させるために前処理することができる。
【0039】
特定の実施形態において、澱粉は、その全文が本明細書で参照に引用される国際特許出願公開第2013/173161号に記載の方法を使用して製造する。したがって、本明細書に記載の澱粉の製造方法は、
a)非-前ゼラチン化顆粒澱粉をアルコール媒体中で塩基の存在下で少なくとも35℃の温度で加熱する段階;
b)上記塩基を酸を用いて中和する段階;
c)抑制された非-前ゼラチン化顆粒澱粉をアルコール媒体から分離する段階;および
d)例えば、加熱または蒸気によって、抑制された非-前ゼラチン化顆粒澱粉からアルコール溶媒を除去する段階を含む。
【0040】
アルコール媒体は、一般に少なくとも1種のアルコール、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコールなどのC1-C4モノアルコールを含む。1つ以上の他の物質が非アルコール性有機溶媒(特に、アルコールと混和性であるもの)などのアルコール媒体および/または水中に存在することもあり得る。しかしながら、上記方法の一実施形態において、アルコール媒体は、アルコール以外の任意の溶媒および水を含有しない。例えば、有利にするために水性アルコールを使用することができる。アルコール媒体は、例えば、30重量%~100重量%のアルコール(例えば、エタノール)および0重量%~70重量%の水を含むことができる。一実施形態において、アルコール媒体は、80重量%~96重量%のアルコール(例えば、エタノール)および4重量%~20重量%の水を含み、アルコールと水の総量は、100%と同一である。別の実施形態において、アルコール媒体は、90重量%~100重量%のアルコール(例えば、エタノール)および0重量%~10重量%の水を含み、アルコールおよび水の総量は、100%と同一である。他の実施形態において、10重量%以下または15重量%以下の水がアルコール媒体中に存在する。澱粉に相対的なアルコール媒体の量は、極めて重要なものと見なされないが、一般に便宜および加工の容易さのために、攪拌可能なおよび/またはポンピング可能なスラリーを提供するに十分なアルコール媒体が存在する。例えば、澱粉:アルコール媒体の重量比は、約1:2~約1:6であり得る。
【0041】
特定の方法において、澱粉供給原料がアルコール媒体中で加熱されるときに、少なくともある程度の量の処理剤(塩基および/または塩)が存在する。しかしながら、以前から知られている澱粉改質工程とは対照的に、澱粉の効果的な抑制を達成するために多量の処理剤(澱粉に対して)を使用する必要がないことが有利である。これは、抑制された澱粉の後続加工を単純化し、潜在的な生産コストを減少させる。一般に、(使用される澱粉の乾燥重量を基準で)少なくとも0.5重量%の処理剤が使用されるが、他の実施形態においては、少なくとも1重量%以上2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも5重量%の処理剤が存在する。経済的な理由から、一般に10重量%または15重量%以下の処理剤が存在する。
【0042】
一般に、澱粉、アルコール媒体および処理剤の混合物は、スラリーの形態である。特定の実施形態において、スラリーのpHを特定の値に調整することが望まれ得る。このようなスラリーのpHを測定することは、アルコールの存在のため、困難であり得る。塩基を添加してスラリーを塩基性にする一実施形態において、スラリーが単独の脱イオン水中の澱粉スラリーであるかのように適切な量の塩基を決定し、次いで塩基と澱粉の同一の比率を維持しながら実際量でスケールアップ(scale up)することができる。
【0043】
スラリーは、例えば、中性(pH6~8)または塩基性(pH8超過)であり得る。一実施形態において、スラリーのpHは、少なくとも6である。別の実施形態において、スラリーのpHは、少なくとも7である。別の実施形態において、スラリーのpHは、12以下である。他の実施形態において、スラリーのpHは、6~10、7.5~10.5または8~10である。さらに他の実施形態において、スラリーのpHは、5~8または6~7である。
【0044】
澱粉のアルコール処理剤による処理は、最初に澱粉をアルコール媒体に入れ、次いで処理剤(例えば、塩基および/または塩)を添加して行うことができる。代替的に、処理剤を最初にアルコール媒体と混合し、次いで澱粉と接触させることができる。処理剤は、反応して処理剤として機能する塩を形成する塩基と酸を別々に添加するなどによって、元の位置(in situ)で形成させることができる。
【0045】
本工程で使用するのに適した塩基には、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩、ピロリン酸四ナトリウム、オルトリン酸アンモニウム、オルトリン酸二ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムなどのリン含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩および適用される規制法規下で使用が承認されている任意の他の塩基が含まれるが、これらの限定されない。強塩基準のみならず、弱塩基を利用することができる。
【0046】
これらの方法で使用するのに適した塩は、水溶液でイオン化し、実質的に中性溶液(すなわち、pHが6~8である溶液)を提供する水溶性物質を含む。酢酸などの有機カルボン酸、アジピン酸、イタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキサロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、脂肪酸およびこれらの組み合わせの塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)と同様にアルカリ金属含有塩が特に有用である。
【0047】
異なる処理剤の混合物を使用することができる。例えば、澱粉は、少なくとも1つの塩基と少なくとも1つの塩の両方の存在下でアルコール媒体中で加熱することができる。
【0048】
澱粉、アルコール媒体および処理剤は、澱粉を所望の程度まで抑制するのに效果的な時間および温度で加熱される。一般に、室温以上の温度(すなわち、35℃以上)が必要であろう。同時に、極めて高い温度は、避けるべきである。加熱温度は、例えば、35℃~200℃であり得る。一般に、100℃~190℃、120℃~180℃または130℃~160℃または140℃~150℃の温度が十分であろう。加熱時間は、一般に少なくとも5分であるが、20時間以下であり、通常40分~2時間である。一般に所望のレベルの澱粉抑制は、加熱温度が上昇すると、より迅速に達成することができる。
【0049】
処理時間、処理温度、および澱粉、アルコール媒体と処理剤の混合物の成分比率の具体的条件は、一般に澱粉が相当な程度までゼラチン化しないように選択される。すなわち、澱粉は、上で説明したように、非-前ゼラチン化された状態を維持する。
【0050】
加熱段階のために選択された温度がアルコール媒体の1つ以上の成分の沸騰点を超過する場合、加圧され得る容器または他の装置で加熱段階を行うことが有利であろう。アルコール媒体を液体状態に維持するために、処理を制限された領域で実施することができる。追加の陽圧を用いることもできるが、一般的には必要ではない。澱粉は、高温高圧の条件下で処理剤とともにアルコール媒体中でスラリー化し、澱粉の粘度特性を変化させるのに十分な時間処理することができる。他の適切な加工技術が当業者に明らかであり得るが、このような処理は、バッチ(batch)式攪拌タンク反応器または連続式管状反応器で行うことができる。別の実施形態において、澱粉は、管状反応器内の床(bed)の形態であってもよく、アルコール媒体と処理剤の混合物は、このような床を通過し(任意に連続的に)、床は、所望の温度で維持され、澱粉の抑制をもたらす。
【0051】
塩基が処理剤として用いられる実施形態において、澱粉、アルコール媒体および塩基の混合物は、一旦加熱段階が完了されると、塩基を中和させる目的で1つ以上の酸と混合することができる。このような中和段階で使用するのに適した酸には、リン酸などのリン含有酸、酢酸などの有機カルボン酸、アジピン酸、イタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキサロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、脂肪酸およびこれらの組み合わせの塩および尿酸などの他の類型の酸が含まれるが、これらに限定されない。抑制された澱粉が食品成分としての使用が意図される場合、酸は一般に、適用される規定下でこのような使用が許容されるものになるように選択されるべきである。一般に、混合物のpHをほぼ中性から弱酸性、例えば、約5~約7または約6~約6.5のpHに低下させるのに十分な酸を添加する。
【0052】
酸による中和は、任意の適切な温度で実施することができる。一実施形態において、澱粉、塩基およびアルコール媒体のスラリーは、中和に使用される酸と混合する前に、使用される加熱温度からほぼ室温(例えば、約15℃~30℃)まで冷却させる。以後、中和された混合物を以下に記載されるように、さらに加工して抑制された澱粉をアルコール媒体から分離することができる。しかしながら、別の実施形態において、塩基の中和に続いて澱粉スラリーをさらに加熱する。このようなさらなる加熱は、塩基の中和後に加熱されていない類似に製造された澱粉の粘度特性と比較し、獲得された抑制澱粉のレオロジー特性を変形させ得ることが見出された。
【0053】
一般に、このようなさらなる加熱段階は、常温以上の温度(すなわち、35℃以上)で実施することが有利である。同時に、極めて高い温度は、避けるべきである。加熱温度は、例えば、35℃~200℃であり得る。一般に、100℃~190℃、120℃~180℃、または130℃~160℃または140℃~150℃の温度が十分であろう。加熱時間は、一般に少なくとも5分であるが、20時間以下であり、通常40分~2時間である。
【0054】
澱粉とアルコール媒体の混合物は、澱粉をアルコール媒体から分離するように加工することができる。濾過、傾斜分離、沈降または遠心分離などの液体から微粒子固体を回収するための従来の方法がこのような目的に適合することができる。任意の望ましくない水溶性不純物を除去するために分離された澱粉を追加のアルコール媒体および/またはアルコールおよび/または水で洗浄することができる。一実施形態において、残留塩基の中和は、回収された澱粉を酸性化した液体媒体で洗浄することによって達成される。分離された澱粉の乾燥は、本発明による抑制された非-前ゼラチン化顆粒澱粉を提供するであろう。例えば、オーブンまたは流動床反応器または乾燥機またはミキサなどの適切な装置内で比較的高い温度(例えば、30℃~60℃)で行うことができる。澱粉から揮発性物質(例えば、水、アルコール)の除去を容易にするため、真空および/またはガスパージ(例えば、窒素スイープ(nitrogen sweep))を適用することができる。得られた乾燥された抑制非-前ゼラチン化顆粒澱粉は、破砕、粉砕、ミリング、スクリーニングまたは篩掛けすることができるか、特定の所望の粒径を達成する任意のこのような他の技術に適用することができる。一実施形態において、抑制澱粉は、自由流動性の顆粒物質の形態である。
【0055】
しかしながら、一実施形態において、澱粉は、著しく高い温度(例えば、80℃超過または100℃超過または120℃超過)で脱溶媒化段階に適用される。しかしながら、過度に高い温度は、澱粉の分解または変色を引き起こし得るため、避けるべきである。このような段階は、生成物中の残留溶媒(アルコール)の量を減少させるのみならず、澱粉によって示される抑制程度を増進させるという予想外のさらなる利点を提供する。脱溶媒化温度は、例えば、約100℃~約200℃であり得る。典型的な温度は、120℃~180℃または150℃~170℃である。脱溶媒化は、蒸気の存在または不在下で実施することができる。蒸気処理は、このような高温で起こり得る澱粉の変色程度を最小化するのに役立つという点で有利であることが明らかになった。一実施形態において、蒸気は、抑制された澱粉の床またはケーキを通過する。あらゆる目的上、その全文が本明細書で参照に引用される米国特許第3,578,498号の澱粉脱溶媒化方法が使用に適合することができる。蒸気処理後、抑制澱粉を(例えば、約30℃~70℃の温度のオーブンでまたは流動床反応器で加熱して)乾燥させて残留水分含量を減少させることができる。
【0056】
一実施形態において、アルコール媒体から回収された処理澱粉は、最初に約35重量%以下または約15重量%以下の総揮発性物質含量となるようにする。これは、例えば、回収された澱粉を最初に適度な温度(例えば、20℃~70℃)で所望の初期揮発性物質含量まで空気乾燥またはオーブン乾燥させることによって達成することができる。次いで、生蒸気を乾燥された澱粉に通過させ、システムを蒸気の凝縮点より高い温度で維持させる。このような蒸気脱溶媒化の段階を実施するために流動床装置を使用することができる。
【0057】
一般に、抑制澱粉中の残留アルコール含量が1重量%未満または0.5重量%未満または0.1重量%未満となるのに効果的な条件下で脱溶媒化を行うことが望ましいであろう。
【0058】
脱溶媒化された後、抑制された澱粉を水で洗浄した後に再乾燥して色相および/または香味をさらに向上させおよび/または、水分含量を減少させることができる。
【0059】
当然、当業者であれば、本明細書に記載の澱粉に到達するために他の方法論を使うことができる。澱粉供給原料は、例えば、pH調整されて加熱され得る。pH調整は、pH調整剤を澱粉と接触させて行うことができる;pH調整制の例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、酒石酸および炭酸のみならず、これらのアルカリ金属塩(例えば、カリウムおよび/ナトリウム塩)が含まれる。pH調整剤は、任意の便利な方式で、例えば、液体(例えば、水、水性エタノールなどの水性アルコールを含むアルコール(例えば、エタノールまたはイソプロパノールを含む上で説明したような)または別の溶媒)中のスラリーであって;乾燥形態;湿った形態(例えば、溶媒(例えば、水、水性エタノールまたは別の溶媒)の中のミスト);または澱粉の湿ったドウ形態(例えば、水、水性エタノールまたは別の溶媒によって)の澱粉供給原料と接触することができる。また、酸のアルカリ金属塩を使用する場合、例えば、酸およびアルカリ金属水酸化物または炭酸塩を別途の段階で添加し、それを元の位置で形成させることができる。
【0060】
pH調整を実施し、様々なpH値を算出することができる。例えば、特定の実施形態において、そして国際公開第2013/173161号に記載されているように、pH調整を実施し、7~10範囲のpHを算出することができる。他の代替的な実施形態において、pH調整を実施し、3~7範囲、例えば、3~6または3~5または3~4または4~7または4~6または5~7または5~6、または約3または約3.5または約4または4.5または約5または約5.5または約6または約6.5または約7の範囲のpHを算出することができる。pH調整がスラリーで行われる場合、スラリーのpHは、関連pHである。pH調整が実質的に非-液体形態(例えば、ドウまたは湿った固体)で行われる場合、水中の38%の固体物質のpHは、関連pHである。澱粉に相対的なpH調整剤の量は、例えば、乾燥固体を基準で0.05~30重量、例えば、0.05~20重量%、0.05~10重量%、0.05~5重量%、0.05~2重量%、0.05~1重量%、0.05~0.5重量%、2~30重量%、0.2~20重量%、0.2~10重量%、0.2~5重量%、0.2~2重量%、0.2~1重量%、1~30重量%、1~20重量%、1~10重量%、1~5重量%、5~30重量%、または5~20重量%に変えることができる。望ましくは、pH調整剤は、澱粉供給原料と完全に混合される。これは、pH調整が行われる形態に応じて異なる工程条件を必要とするであろう。pH調整がスラリーで行われる場合、単にスラリーを数分間攪拌するだけで十分である。pH調整がより乾燥した形態(例えば、湿った固体またはドウ)で行われる場合、より実質的な接触手順が望まれ得る。例えば、pH調整剤溶液を乾燥澱粉供給原料に噴霧する場合、約30分間混合した後、少なくとも数時間貯蔵することが望まれ得る。
【0061】
pH調節剤を澱粉と接触させた後、澱粉を加熱させることができる(すなわち、依然としてpH調整剤と接触させた状態で)。澱粉は、例えば、120~200℃、例えば、120~180℃、または120~160℃、または120~140℃、または140~200℃、または140~180℃、または140~160℃、または160~200℃、または160~180℃、または180~200℃範囲の温度で加熱することができる。澱粉は、例えば、最大8時間加熱することができる。澱粉は、様々な形態で加熱することができる。例えば、澱粉は、アルコールまたは非水性溶媒スラリー中で(例えば、溶媒の沸騰点が加熱温度より十分に高くない場合には加圧下で);(例えば、国際公開第2013/173161号に開示されているように)顆粒膨潤を抑制するための澱粉、水および非水溶媒のドウとして,または乾燥状態で(溶媒は、例えば、WO2013/173161に対して上で説明したような濾過、遠心分離および/または熱-乾燥などの従来の技術を用いて除去することができる)加熱することができる。澱粉は、加熱工程の結果として乾燥され得る;別途の乾燥段階は必要ではない。
【0062】
当業者が理解できるように、澱粉供給原料は、例えば、澱粉固有のものであるか、他に存在する望ましくない香味、匂いおよび色相を減少させるために、例えば、従来の方法によって精製することができる。例えば、洗浄(例えば、アルカリ洗浄)、蒸気ストリッピング、イオン交換工程、透析、濾過、例えば、亜塩素酸塩などによる漂白、酵素改質(例えば、タンパク質を除去するために)および/または遠心分離などの方法を用いて不純物を減少させることができる。当業者は、このような精製作業が工程中の様々な適切な時点で実施され得ることを理解できるであろう。
【0063】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の非-前ゼラチン化澱粉を提供する段階および上記澱粉をその全文が本明細書で参照に引用される米国特許第4465702号に(具体的にまたは一般的に)記載の工程中、1つに適用させる段階を含む工程によって製造された冷水膨潤遅延ゲル化澱粉である。例えば、上記工程は、水性C2-C3アルカノール中でスラリー化された本発明の非-前ゼラチン化澱粉を高い温度(例えば、300~360°F)および圧力(例えば、自発的圧力以上、例えば、400~600psigで)の条件に適用させることを含むことができる。このような処理は、例えば、1~30分間実施することができる。
【0064】
いかなる場合でも、本工程を実施するに当たり、第1段階は、エタノール、変性エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールから選択されるアルコール約50重量部~約75重量部、水約13重量部~約30重量部で構成される液体媒体中で乾燥物質を基準(dsb)で非ゼラチン化コーン澱粉約10重量部~約25重量部で構成されるスラリーを製造することであり、但し、スラリーのための液体媒体は、澱粉中の水を含み、水約15~約35重量%を含有する(すなわち、アルコール対水の重量比は、約5.7:1~1.9:1である)。望ましくでは、スラリーは、約12~20重量%澱粉(dsb)および約17~約30重量%水で構成される。
【0065】
エタノールが工程スラリーのアルコール成分として使用される場合、食品許容澱粉製品の加工時にプロパノールおよび/またはイソプロパノールの使用に関連し得る香味および毒性の問題は回避される。しかしながら、機能的観点において、すなわち、冷水溶解度およびゲル化特性を示す顆粒状澱粉製品の製造側面において、イソプロパノールのみならず、エタノールおよび変性エタノールが機能をすることを留意する。
【0066】
前述の水性アルコール媒体中の非ゼラチン化コーン澱粉のスラリーは、約1分~約30分間、自発的圧力下で約300~約360°Fの温度まで加熱される。加熱工程は、スラリーに対して加熱領域における約1分~約30分の滞留時間を提供するように計算された速度でスラリーを加熱された制限領域を通過させることによって密閉容器内でのバッチ工程として、または連続的または半連続的な工程として行うことができる。好ましくは、澱粉スラリーを約315~約350°Fの温度で約1~約10分間加熱し、非ゼラチン化コーン澱粉を高い冷水溶解度を有する本発明の冷水膨潤澱粉に転換させる。本発明の工程の最も好ましい実施形態において、非ゼラチン化コーン澱粉スラリーは、約12~約20重量%の澱粉(dsb)を含有し、スラリーのための液体媒体は、約18~約26重量%水を含有する(すなわち、アルコール対水重量比は、約4.6:1~2.8:1);非ゼラチン化澱粉で本発明の冷水膨潤/可溶性澱粉への転換は、スラリーを約2~約5分間、約325°F~約340°Fの温度で加熱することによって達成される。
【0067】
加熱段階後、スラリーを好ましくは、約120°F以下に冷却させ、生成物冷水膨潤顆粒澱粉を濾過または遠心分離によってスラリー液体媒体成分から分離する。反応スラリーから澱粉生成物の回収後、澱粉を一般に本工程で使用される1体積以上のアルコールで洗浄し、従来の方法によって乾燥および/または脱溶媒化する。例えば、澱粉を澱粉のアルコール含量を食品許容レベルまで低下させるのに十分な時間、約140°F~250°Fの温度で維持させながら、澱粉をオーブンで特定の揮発性物質レベルまで乾燥させた後、高温の湿りガス、好ましくは、湿潤な空気または蒸気と接触させることができる。
【0068】
このようにして製造された冷水膨潤遅延ゲル化澱粉は、例えば、15~30%範囲のアミロース含量(または上で記載された任意の他のアミロース含量);13~30%範囲の可溶分%(または上で記載した任意の他の可溶分%);および5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で20分間95℃で調理された後、25℃で静置された後に少なくとも4時間のゲル時間(または上で記載した任意の他のゲル時間)を有する。
【0069】
本発明の別の態様は、15~30%範囲のアミロース含量(または上で記載した任意の他のアミロース含量);13~30%範囲の可溶分%(または上で記載した任意の他の可溶分%);および5%澱粉固形分で1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中で20分間95℃で調理した後、25℃で静置された後に少なくとも4時間のゲル時間(または上記で記載した任意の他のゲル時間)を有する冷水膨潤遅延ゲル化澱粉である。このような冷水膨潤遅延ゲル化澱粉は、様々な従来の工程のいずれかによって製造することができる。
【0070】
様々な実施形態において、本発明の冷水膨潤遅延ゲル化澱粉は、遅延ゲル化抑制澱粉に対して上で記載した特性(例えば、澱粉の同一性;可溶分%;ゲル時間;黄色度指数;化学的処理および改質;デキストリン化および分岐化;粘度;消化率)を有することができる。
【0071】
本発明の別の態様は、食品の製造方法である。上記方法は、本明細書に記載の澱粉を、水の存在下で調理する段階、および調理された澱粉を1つ以上の他の食成分と組み合わせて提供する段階を含む。例えば、本明細書に記載の澱粉を水を含む1つ以上の他の食品成分と組み合わせて上記の澱粉と食品成分の組み合わせを調理することができる。特定の実施形態において、本方法は、低温殺菌、レトルト処理、ケトル調理(kettle cooking)またはバッチ調理(batch cooking)、または超高温加工を含む。有利に、食品を調理するとき、ゲル化により長い時間がかかる可能性があり、したがって、調理された製品を維持し、調理された製品を(例えば、ポンピングによって)輸送し、調理された製品がゲル化を始める前に、調理された製品を容器に充填させるのにより長い時間が許容され得る。
【0072】
したがって、本発明の別の態様は、例えば、調理されたゲル化形態の、本明細書に記載の澱粉を含む食品である。
【0073】
食品、例えば、トマトベース製品、グレービー、ソース、スープ、プディング、サラダドレッシング、ヨーグルト、サワークリーム、チーズまたはフルーツフィリングまたはトッピングであり得る。様々な調理法、例えば、低温殺菌、レトルト処理、ケトル調理、バッチ調理および超高温加工を使用することができる。調理は、望ましくは、澱粉をゲル形態に実質的に転換させるのに十分である。有利に、本明細書に記載の澱粉は、ゲル化により長い時間がかかる可能性があり、したがって、調理された製品を維持し、調理された製品を(例えば、ポンピングによって)運送し、調理された製品がゲル化を始める前に、調理された製品を容器に充填させるのにより長い時間が許容され得る。特に、本明細書に記載の澱粉は、ゲル化食品でゼラチンの代替品として使用することができる。
【0074】
ヨーグルトおよび他の培養乳製品に対し、有利に、本明細書に記載の澱粉は、生成物が培養され、容器にポンピングされた後、ゲル化してもよい程度に十分にゆっくりとゲル化させることができる。したがって、培養された乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリーム、生クリーム)の製造方法は、乳製品供給物および本明細書に記載の澱粉を含む乳製品混合物を提供する段階;上記乳製品混合物を(例えば、少なくとも2時間、少なくとも4時間、または少なくとも6時間)培養し、培養された乳製品を提供する段階;上記培養された乳製品を非ゲル化状態で容器に移す段階;および培養された乳製品が容器内でゲル化されるようにする段階を含むことができる。
【0075】
他の実施形態において、食品は、製菓製パン類、例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカーまたはマフィンである。このような実施形態において、調理は、ベーキングを含むことができる。いくつかの実施形態において、製菓製パン類(すなわち、そのドウまたは生地)における本明細書に記載の澱粉の使用は、老化(staling)を減少させるのに役立つことができる。他の実施形態において、澱粉は、例えば、製菓製パン類内部のフィリングに含むことができる。
【0076】
本明細書に記載の澱粉は、極めて様々な他の食品に使用することができる。例えば、本発明の澱粉および方法の特定の実施形態において、澱粉は、ベーキングされた食品、朝食用シリアル、無水コーティング(例えば、アイスクリーム配合コーティング、チョコレート)、乳製品、菓子、ジャムおよびゼリー、飲料、フィリング、押出型およびシート型スナック、ゼラチンデザート、スナックバー、チーズおよびチーズソース、食用および水溶性フィルム、スープ、シロップ、ソース、ドレッシング、クリーマー、アイシング、フロスティング、グレーズ、トルティーヤ、肉類および魚、ドライフルーツ、乳幼児食品および生地と衣から選択される食品で使用される。本明細書に記載の澱粉は、様々な医療用食品にも使用することができる。本明細書に記載の澱粉は、ペットフードにも使用することができる。
【0077】
本発明の澱粉を使用し、様々な他の食品を有利に製造することができる。例えば、本発明の澱粉が有用である食品には、熱加工食品、酸性食品、乾燥ミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押出食品、オーブン調理食品、ストーブ調理食品、電子レンジ対応食品、全脂肪または低脂肪食品および水分活性の低い食品が含まれる。本発明の澱粉が特に有用である食品は、低温殺菌、レトルト処理または超高温(UHT)加工などの熱加工段階を必要とする食品である。本発明の澱粉は、冷却、冷凍および加熱を含むすべての加工温度にわたって安定性が要求される食品用途において特に有用である。
【0078】
加工された食品調剤物に基づき、実施者は、完成食品で必須的な濃厚さおよびゲル化粘度のみならず、所望の食感を提供するのに必要な本発明の澱粉の量および種類を容易に選択することができる。一般に、澱粉は、食品の0.1~35重量、例えば、2~6重量%の量で使用される。
【0079】
本発明の澱粉の使用によって向上され得る食品中には、フルーツベースのパイフィリング、離乳食などの高酸性食品(pH<3.7);トマトベースの製品などの酸性食品(pH3.7~4.5);グレービー、ソースおよびスープなどの弱酸性食品(pH>4.5);ソース、グレービーおよびプディングなどのストーブ調理食品;プディングなどのインスタント食品;注入可能でスプーンを利用し得るサラダドレッシング;乳製品または類似乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリームおよびチーズ)などの冷蔵食品;冷凍デザートおよび冷凍ディナーなどの冷凍食品;冷凍ディナーなどの電子レンジ対応食品;ダイエット製品および病院食品などの液状製品;製菓製パン類、グレービー、ソース、プディング、離乳食、ホットシリアルなどの製造用乾燥ミックス;および生地調理および揚げ物の前に食品をプレダスティング(predusting)するための乾燥ミックスがある。本発明の澱粉はまた、カプセル化香味料およびクラウド(clouds)などの食品成分を製造するのにも有用である。
【0080】
他の実施形態において、食品は、菓子である。
【0081】
本発明の澱粉はまた、化粧品およびパーソナルケア製品、紙、包装、医薬製剤、接着剤などの化学的に改質された(架橋結合された)抑制澱粉が従来から利用されている様々な非食品最終用途でも使用することができる。
【0082】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の澱粉を1つ以上の食品成分との混合物として含む乾燥ミックスである。乾燥ミックスが調理されるとき(すなわち、水の存在下で)、ゲル化により長い時間がかかる可能性があり、したがって、調理された製品を維持し、調理された製品を(例えば、ポンピングによって)運送し、調理された製品がゲル化を始める前に、調理された製品を容器に充填させるのにより長い時間が許容され得る。乾燥ミックスは、例えば、製菓製パン類、例えば、パン、ペストリー、パイクラスト、ドーナツ、ケーキ、ビスケット、クッキー、クラッカーまたはマフィン用乾燥ミックスであり得る。
【0083】
実施例
本発明による遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉(沈降体積25mL/g、20%可溶分)をRVA分析に対して上で説明したように調理し、ヨウ素(チンキ2%)で染色した。得られた調理された澱粉ペーストの顕微鏡写真は、図1に示す。当業者は、図1で明らかな個々の澱粉顆粒が澱粉の抑制に符合するということを理解するであろう。
【0084】
様々なタピオカ澱粉のRVA調理曲線は、図2に提供する。温度上昇および低下プログラムは、右側の温度スケールを意味し、RVA曲線は、左側の粘度スケールを意味する。トレースは、35、25、22、20および16mL/g沈降体積の澱粉に対し、グラフの右側で上から下に向かっている。粘度は、1%NaClを含有するpH6.5リン酸塩緩衝液中、5%固形分で160rpmの攪拌速度でRVAによって測定する。分析の初期温度は、50℃である;温度は、図2のグラフに示したように、3分にわたって90℃まで直線的に上昇した後、95℃で20分間維持され、次いで3分にわたって50℃まで直線的に下降した後、50℃で9分間維持される。粘度は、加熱および冷却サイクル間ずっと測定し、図2のグラフにプロットされている。
【0085】
本発明の様々なタピオカ澱粉に対する沈降体積および可溶分%を測定した;沈降体積のプロットは、図3として提供される。本発明の澱粉は、「遅いゲル化」澱粉として表示されている反面、従来の架橋結合されたタピオカ澱粉(以下、比較例Aおよび比較例C)は「従来の架橋結合」澱粉として表示されている。特に、澱粉に対する可溶分%値は、図3のプロットに示されているように、沈降体積の減少とともに減少する。
【0086】
食感特性を評価するために、本発明の様々な澱粉および市販タピオカ澱粉を1%NaCl水溶液中、6%固形分で調理した。上記澱粉は、調理当日および一晩冷蔵した後、次の日に両方パネリストによって評価された。サンプルセットは、様々な沈降体積の、本発明の7種の遅延ゲル化抑制タピオカ澱粉を含む。上記のサンプルは、表1に記載する。6種の市販タピオカ澱粉は、表2に記載したように、非改質タピオカ、2種の化学的に架橋結合されたタピオカ澱粉およびヒドロキシプロピル置換基の添加によって架橋結合され、粘度安定化されたタピオカ澱粉を含む。
【0087】
表1は、減少されたゲル化率澱粉の特性を示す。食品用途で最も大きな関心対象になる沈降体積の範囲は、一般に20~35mL/gであるものと考えられる。生成物の色相が含まれる。
【表1】
【表2】
【0088】
比較例Aは、タピオカ澱粉をアルカリ条件下で85℃で水中にスラリー化し、;0.025%のPOClを添加して60分間反応させた後、スラリーを中和し、生成された架橋結合澱粉を濾過、洗浄および乾燥させることによって製造されたリン酸塩架橋結合されたタピオカ澱粉である。
【0089】
比較例Bは、タピオカ澱粉をアルカリ条件下で85℃で水中にスラリー化し、プロピレンオキシドを添加して2%ヒドロキシプロピル置換基と反応させた後、0.01%POClを添加して45分間反応させ、次いでスラリーを中和し、生成された架橋結合された澱粉を濾過、洗浄および乾燥させることによって製造されたヒドロキシプロピル-改質された、リン酸塩架橋結合されたタピオカ澱粉である。
【0090】
比較例Cは、タピオカ澱粉をアルカリ性条件下で85℃で水中にスラリー化し、;0.005%POClを添加して60分間反応させ、次いでスラリーを中和し、生成された架橋結合澱粉を濾過、洗浄および乾燥させることによって製造されたリン酸塩架橋結合されたタピオカ澱粉である。
【0091】
食感分析:
6名の初心者パネリストを2つのグループに分けた。各グループは、調理当日の午後に新鮮な澱粉ペーストを評価した。パネリストは、翌日にも澱粉ペーストを評価した。新鮮な調理された澱粉ペーストに対し、パネリストは、次を評価した。
● 不透明度
● 表面光沢
● 硬度
● プレス弾性
● シネレシス(syneresis)
● 内表面光沢
● 粒状性
● ジグル弾性(jiggle elasticity)
● 濃厚さ
● 曳糸性
前日の澱粉ペースト(大部分ゲル化)に対してパネリストは、次を評価した。
● 不透明度
● 表面光沢
● 硬度
● プレス弾性
● シネレシス
● 内表面光沢
● 粒状性
● ジグル弾性
【0092】
各属性は、15ポイント線スケールで等級化した。異なる等級に対する参照物が各グループに提供された。各属性に対する参照物は、次の通りである:
不透明度参照物:不透明度等級0、3、8、12、15を有する写真
光沢参照物:異なる光沢2、7.5、10を有する写真印画紙
硬度参照物:
● 軽度4- 80グラムの1%NaCl水中で一晩水和された15グラムのスクロースと混合された5グラムの冷水膨潤顆粒澱粉。
● 軽度8- 72グラムの1%NaCl水中で一晩水和された21グラムのスクロースと混合された7グラムの冷水膨潤顆粒澱粉。
● 軽度12- 64グラムの1%NaCl水中で一晩水和された27グラムのスクロースと混合された12~9グラムの冷水膨潤顆粒澱粉。
ジグル弾性参照物:4、8、12でジグル弾性等級を有するビデオクリップ
粒状性参照物:ゲル化澱粉の粒状性参照物は、異なる粒状性レベル1、5、10、15におけるゲル化澱粉の写真である。増粘澱粉に対する粒状性参照物は、異なる粒状性レベル4、8、12における増粘澱粉のビデオクリップである。
濃厚さ参照物:3、5、8、12における濃厚さ等級を有するビデオクリップ
曳糸性:3、6、9における曳糸性等級を有するビデオクリップ
【0093】
結果:
タピオカ食品澱粉の典型的な特性は、それらが軟質ゲルを形成するということである。これは、ヨーグルト、乳製品デザートおよびフルーツフィリングなどの用途に望ましい。このような用途のための澱粉のいくつかは、フィプロセス耐性を提供するために通常的に架橋結合されるが(抑制されるが)、他の方式で改質されない。ゲル形成が望ましくない用途のために、および凍結-解凍または貯蔵安定性を向上させるために、タピオカ澱粉は、ヒドロキシプロピルのような側基添加によって通常的にさらに改質される。嵩高い側基は、澱粉分子が会合し、ゲルネットワークを形成することを防止する。非改質タピオカは、架橋結合されていないため、せん断安定性がない。顆粒は、調理時に破裂され、一般に望ましくないと見なされる紐状(stringy)の食感を付与する。タピオカは、約80%アミロペクチンであるため、ペーストは、ゆっくり復帰する。(架橋結合されたタピオカペースト中、余分の-顆粒澱粉の大部分は、ゲル形成の原因となるアミロースであるものと考えられる。)
【0094】
図4は、調理当日の硬度および不透明度等級を示す棒グラフであり、硬度は、各対の左側に、不透明度は、各対の右側に示す。ヒドロキシプロピル-安定化された比較例Bを除いた比較タピオカは、6~7の硬度等級を有する。比較例Bの等級は、3である。このような場合に、不透明度は、硬度と趨勢をともにする。硬い食感の原因となる構造はまた、光を散乱させると予想するのは妥当である。半面、本発明の澱粉は、より硬い市販サンプルと類似した不透明度値を有するが、3~5の点数範囲の、ヒドロキシプロピル-安定化された澱粉に近い硬度等級を有する。
【0095】
図5は、調理当日のペーストの濃厚さ(左側)および曳糸性(右側)等級を示す棒グラフである。市販の架橋結合された非安定化された澱粉は、極めて濃厚な食感を有し、曳糸性がほとんどない。比較例Dおよび比較例Bは、薄い食感と相当の曳糸性を有する。本発明のサンプルは、調理当日にペースト濃厚さおよび曳糸性において比較例Dおよび比較例Bと類似している。
【0096】
比較タピオカの場合に、濃厚さおよび曳糸性は、反比例すると見られる。濃厚さが最も高い澱粉は、曳糸性がほとんどない;濃厚さが最も少ない澱粉は、最も高い曳糸性を有する。本発明の澱粉の場合に、濃厚さおよび曳糸性は、趨勢をともにする。濃厚さが最も高い澱粉は、最も高い曳糸性を有し、反対の場合も同様である。濃厚さおよび曳糸性は、抑制レベルと趨勢をともにする-サンプル1、2および3は、セット中、最も抑制され、SVが20および21であり、最も低い濃厚さおよび曳糸性の点数を有する。
【0097】
一晩冷蔵した後、市販澱粉は、ほとんど変化していない反面、実験澱粉は、劇的に変化した。図6は、冷蔵した後、翌日、特定の澱粉の硬度等級を示す棒グラフである。(評価前にサンプルを室温まで加温した)。このチャートの硬度値は、図4の値と比較することができる。架橋結合された市販澱粉の硬度等級は、6~7の間で維持された反面、ヒドロキシプロピル-安定化された比較例Bは、3で維持された。(比較的にDは、6から3.5に下落した。)しかしながら、本発明の澱粉は、2~5から6~8まで増加し、セットで最も硬いサンプルとなった。
【0098】
類似した傾向は、ゲル形成を反映する別の食感属性で現れた。本発明の澱粉ペーストの表面は、調理当日に架橋結合された市販サンプルよりも反射性である反面、架橋結合された市販サンプルは、調理当日に実験サンプルより粗い食感を有するものとみなされた。一晩冷蔵した後、粒状性は、劇的に増加し、市販サンプルを上回り、ペースト表面の反射性は減少した。
【0099】
主成分分析(PCA)および因子負荷分散分析(factorloaded variance analysis)をデータに対して行った。PCAを使用してデータセットを分析することは、共通用語の混乱を減らし、製品領域で製品を定義するとき、重複および不要な属性を除去しようとすることである。これは、データの基本構造を探し、その主成分の観点でサンプルが比較され得るようにする。
【0100】
表3は、調理当日の製品に対するPCAデータを示す。最初の3つの成分は、生成物偏差(累積)の87%を占める。主成分(PC)1は、生成物偏差の55%を占める。PC2およびPC3は、各々生成物偏差の19%および13%を占める。
【表3】
【0101】
表4は、調理当日の各PCに対する属性負荷を示す。大きな絶対数は、属性がそのPCに過重に負荷されることを意味する。表4に示すように、PC1は、硬度、濃厚さ、ジグル弾性、光沢および不透明度によって駆動する。PC2は、粒状性によって駆動され、はるかに少ない程度でシネレシスによって駆動される。
【表4】
【0102】
本データは、本発明のすべての澱粉が、すべての非安定化の市販タピオカよりも硬さが少なく、濃厚さが少なく、揺れが少なく(jiggly)、および不透明度が低いことを示す。サンプル1、2、3および7は、調理当日にヒドロキシプロピル-安定化された比較例Bと類似に挙動するものと見られる。サンプル4および5-本発明の中間抑制澱粉は、互いに類似に挙動するものと考えられる。
【0103】
表5は、調理後、翌日、生成物に対するPCAデータを示す。最初の3つの成分は、生成物偏差(累計)の78%を占める。主成分(PC)1は、生成物偏差の47%を占める。PC2およびPC3は、各々生成物偏差の18%および13%を占める。
【表5】
【0104】
表6は、調理後、翌日、各PCに対する属性負荷を示す。調理後、翌日、PC1は、硬度、光沢、プレス弾性、ジグル弾性および不透明度によって駆動される。PC2は、シネレシスによって駆動する。
【表6】
【0105】
上記比較例Aおよび比較例C澱粉、ならびに本発明の4つの澱粉(沈降体積が各々20、25、30および35mL/gの8、9、10および11)を含む様々な澱粉を使用し、一連の実験食品を製造した。
【0106】
ヨーグルトにおける用途選別検査:
サンプル8およびサンプル9(各々沈降体積20および25mL/g)を比較例Aとともにヨーグルトモデルシステムで検査した。ヨーグルト組成調理法(compositional formula)およびバッチ調理法(batch formula)を各々表7および8に示す。
【表7】
【表8】
【0107】
製造:
1. 流体乳製品および乾燥成分を別途に称量する。
2. 適切な水和を確実にするために乾燥成分を攪拌下で流体乳製品に添加する。
3. ミクロサーミックス(Microthermics)EHVH間接管状熱交換器システムによって加工する。
a. 最大150°Fまで予熱する。
b. 1000psi(単一段階)で均質化する(上流)。
c. 30秒維持時間で195°Fまで最終加熱する。
d. 低温殺菌された生成物を43℃の接種温度に近く冷却させる。
4. Chr Hansen YoFlex LF706培養液を0.015重量%(6000gバッチ当たり、1個バイアル)で接種する。
5. pH4.6(約3~4時間)まで43℃(109.4°F)でインキュベートする。
6. カードを破り、生成物を<30℃(<85°F)以下に冷却させる。
7. スムージングバルブまたはスクリーンを介してポンピングする。
8. 8oz.容器に包装する。
9. 冷蔵する。
【0108】
ヨーグルト中、澱粉の完全性は、視野からタンパク質を消散させるのに役立つようにヨウ素で染色し、石鹸でチッピング(tipping)した後、顕微鏡検査によって定性的に評価した。
【0109】
製造24時間後、ヘリパス(Helipath)付着物および適切なT-バースピンドルを用いてブルックフィールド(Brookfield)粘度を測定した。データを三重に収集した。
【0110】
冷蔵庫から取り出した直後、TAXTとともにTA-55 5-mmの穿刺用プローブを備えた食感分析器を使用して硬度/ゲル強度を測定した。5gfのトリガー力後、1.0mm/secの検査前速度、1.0mm/secの検査速度および10.0mm/sの検査後速度を使用した圧縮で検査を行った。3つのサンプルにわたってサンプル当たり、3回分析を行った(総9つの測定ポイント)。
【0111】
製造されたすべてのヨーグルトの粘度は、類似しており、正常なバッチ間偏差内であったが、下記の表9に示すように、サンプル8を用いて製造されたヨーグルトの粘度が最も高かった。ヨーグルトサンプルの機器食感分析も類似した。粘度および食感値の近接は、特定のカゼインネットワーク形成がこのような用途において粘度に対する主な寄与因子であることを示唆している。
【0112】
図7は、200×倍率で得られた検査ヨーグルトの顕微鏡写真セットである。顕微鏡によると、サンプル8ヨーグルトは、依然として多少過小膨潤(underswollen)されているが、サンプル8ヨーグルトおよび比較例Aヨーグルトは、加工後、完全な澱粉顆粒を含有した。サンプル9ヨーグルトは、部分的に分裂された。
【表9】
【0113】
RTEケトル調理プディング(冷蔵される)における用途選別検査:
澱粉10および澱粉11(各々、沈降体積30および35mL/g)を比較例Cとともにプディングモデルシステムで検査した。検査調剤物は、表10に提供する。
【表10】
【0114】
製造:
1. スクロースを称量し、ホバートボウル(Hobart bowl)に入れた。
2. オイルを称量し、スクロースおよび/またはフルクトースに入れて速度1で5分間混合した。
3. 澱粉、香味、塩、SSLおよび色素を糖/オイル混合物に添加し、速度1でさらに5分間、または徹底的にブレンディングされるまで混合する。
4. 乾燥ブレンドを水に添加し、混合されるまで攪拌する。
5. スラリーをホットミックス(Hotmix)(サイドスウェプト攪拌機付き)内の牛乳に添加し、分散されるまで混合する。
6. 混合物が濃厚になるまで(約195°F[90℃])、よく攪拌しながら(サイドスウェブト攪拌機を使用)調理し、5分間維持させる。
7. 高温状態で容器に充填させる。
8. 冷蔵する。
【0115】
プディング中、澱粉の完全性は、視野からタンパク質を消散させるのに役立つようにヨウ素で染色し、石鹸でチッピングした後、顕微鏡検査によって定性的に評価した。
【0116】
製造24時間後、ヘリパス付着物および適切なT-バースピンドルを用いてブルックフィールド粘度を測定した。サンプルを冷蔵庫から取り出した直後に検査した。サンプルが24時間以内に沈降したため、サンプルを粘度およびレオロジー測定の前に攪拌した。サンプル当たり、3回分析を行った。プディングスの粘弾性特性を、1Hzの周波数および25℃の温度で0.1~1000%の歪みスイープ(strain sweep)にわたって、40mmクロスハッチ平行プレートおよびペルチェ(Peltier)ボトムプレートを備えたDH-3高級レオメータを用いて測定した。分析を二重に実施した
【0117】
図8は、プディングの粘弾性測定セットである。ケトル-調理されたプディングにおいて、サンプル11(沈降体積35mL/g)は、比較例Cと類似した粘度を示す反面、サンプル10は、(沈降体積30mL/g)であった(表11)。サンプル11プディングおよび比較例Cプディングの粘弾性特性はまた、貯蔵弾性率G′およびtanδ側点において極めて類似している反面、サンプル10プディングは、その液体とより類似した性質および低い粘度のために、損失弾性率G″がはるかに高かった。
【0118】
図9は、200×倍率で得られた検査プディングの顕微鏡写真セットである。すべての澱粉は、顕微鏡下で観察したとき、過小膨潤されるものと現れた。特に、比較例Cは、高い粘度を示したにもかかわらず、最も過小膨潤されるものと現れた。すべてのプディング中の澱粉は、製造24時間以内に沈降または沈殿された。
【0119】
一般に、サンプル11(沈降体積35mL/g)は、比較例C参照物と類似した性能を示した。
【表11】
【0120】
UHT乳製品デザートにおける用途選別検査:
サンプル8およびサンプル9(各々沈降体積は、20および25mL/g)を比較例Aとともに超高温(UHT)バニラプディングモデルシステムで検査した。検査調剤物は、表12に記載する。
【表12】
【0121】
製造:
1. 流体乳製品および乾燥成分を別途に称量する。
2. 適切な水和を確実にするために乾燥成分を攪拌下で流体乳製品に添加する。
3. ミクロサーミックスEHVH間接管状熱交換器システムによって加工する。
a. 最大150°Fまで予熱する。
b. 2000 1500psi(単一段階)で均質化する(上流)。
c. 3秒維持時間で285°Fまで最終加熱する。
d. 低温殺菌された生成物を冷却させる。
e. 希望の包装材に充填させ、検査後、冷蔵条件下で保管する。
【0122】
デザート中、澱粉完全性は、視野からタンパク質を消散させるのに役立つようにヨウ素で染色し、石鹸でチッピングした後、顕微鏡検査によって定性的に評価した。
【0123】
製造24時間後、ヘリパス付着物および適切なT-バースピンドルを用いてブルックフィールド粘度を測定した。サンプルを冷蔵庫から取り出した直後に検査した。サンプル当たり、3回分析を行った。
【0124】
冷蔵庫から取り出した直後、TAXTとともにTA-55 5-mmの穿刺用プローブを備えた食感分析器を使用して硬度を測定した。5gfのトリガー力後、1.0mm/secの検査前速度、1.0mm/secの検査速度および10.0mm/sの検査後速度を使用した圧縮で検査を行った。3つのサンプルにわたってサンプル当たり、3回分析を行った(総9つの測定ポイント)。
【0125】
表13は、検査デザートの分析的特性究明を提供する。UHT乳製品デザートにおいて、比較例Aは、最も高い粘度を示した。サンプル8(沈降体積20mL/g)およびサンプル9(沈降体積25mL/g)は、比較例Aより低い極めて類似した粘度を示した。
【0126】
図10は、200×倍率で得られた検査デザートの顕微鏡写真セットである。比較例Aおよびサンプル8に対する澱粉顆粒は、過小膨潤された反面、サンプル9に対する顆粒は、最適に膨潤された。サンプル8は、過小膨潤されたが、比較例Aと最も類似した性能を示した。
【表13】
【0127】
製パン用フルーツフィリングにおける用途選別検査:
澱粉9および澱粉10(各々沈降体積25および30mL/g)を比較例Aおよび比較例Cとともに製パン用フルーツフィリングモデルシステムで検査した。検査調剤物は、表14に記載する。
【表14】
【0128】
製造:
1. ブラベンダー(Brabender)を使用してすべての成分を混合する。
2. 85℃で加熱し、10分間維持する。60℃まで冷却させる。
3. 包装して冷蔵する。
4. ブリックス(約50)およびpH(約3.4)を確認する。
【0129】
フィリング中、澱粉完全性は、ヨウ素で染色した後、顕微鏡検査によって定性的に評価した。
【0130】
製造24時間後、ヘリパス付着物および適切なT-バースピンドルを用いてブルックフィールド粘度を測定した。サンプルを冷蔵庫から取り出した直後に検査した。サンプル当たり、3回分析を行った。
【0131】
ハンターカラーフレックス(Hunter ColorFlex)非色系を用いて色相および半透明性を測定した。10mm黒色リングをサンプルカップに挿入した後、カップにサンプルを充填させる。次いで、白色セラミックディスクを黒色ディスクの上段に置かれるまでサンプルを通して下に加圧する。これによって、一定の光路と白色背景が生成されるであろう。次いで、サンプル入りカップをL、a、b属性(白色タイルおよび黒色タイルで標準化した後)の測定のために機器ポートに置く。サンプルを三重に検査した
【0132】
表15は、検査フィリングの分析的特性究明を提供する。フルーツフィリングにおいて、比較例Aおよび比較例Cの両方は、このような澱粉が大きく異なる沈降体積を有するにもかかわらず、高い粘度を示した。サンプル10は、類似した高い粘度を示す反面、サンプル9は、若干低かった。
【0133】
図11は、200×倍率で得られた検査フィリングの顕微鏡写真セットである。サンプル10は、顕微鏡で観察したとき、最適の膨潤を示す反面、すべての他の澱粉は、過小膨潤された。すべての検査フィリングを冷蔵庫に保管し、その後、すべての検査フィリングは、冷蔵保管後24時間以内にゲル化してシネレシスされた。
【0134】
フルーツフィリングの色相はまた、半透明であると評価されており、色相寄与の不足は、特にこのような種類の用途においてしばしばタピオカ澱粉の長所である。ΔE94は、選択された基準との色相差の相対的程度の機器測定値であり、比較例Cフルーツフィリングがその基準で選択されるとき、すべての検査フルーツフィリングは、表16に示すように類似した色相を示した。経験的に、ΔE94<1は、視覚的に色相が異なるものと見なされない。
【表15】
【表16】
【0135】
本明細書に示した詳細な内容は、例示であり、本発明の材料および方法の様々な態様および実施形態の例証する考察の目的のためのものであり、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解される技術であると考えられるものを提供するために提示される。この点において、本発明の基礎的な理解に必要なもの以上に詳細に本明細書に記載の澱粉および方法の詳細な内容を示す意図ではなく、説明は、本発明の様々な形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者に明白になるようにする図および/または実施例とともに示した。したがって、開示された材料および方法を説明する前に、本明細書に記載の実施形態が特定の実施形態、装置または構成に限定されず、当然様々であり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明しようとする目的のためのものであり、本明細書で特に定義しない限り、限定しようとする意図ではないということが理解されるべきである。
【0136】
本明細書に開示された材料および方法を説明する脈絡において(特に添付の特許請求の範囲の脈絡において)、使用される用語「1つ(a、an)」、「上記(the)」および類似した指示対象は、本明細書で別途に指摘されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数および複数対象の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書で値範囲の列挙は、単にその範囲に含まれる各々の個別値を個別に言及する短縮方法として機能するものと意図される。本明細書で別途に指摘されない限り、各々の個別値は、あたかも本明細書で個別に列挙されているように本明細書に統合される。範囲は、本明細書で1つの特定値からおよび/または別の特定値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定値からおよび/または他の特定値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を使用し、近似値として表現される場合、特定値は、別の態様を形成するものと理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点に関連しても有意味であり、他の終点と独立的にも有意味であることがさらに理解されるであろう。
【0137】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別途に指摘されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適切な段階の手順で実施することができる。本明細書で提供される任意のおよびすべての例または例示的な言語(例えば、「~などの」)の使用は、本発明の材料および方法をよりよく明確にするためのことのみを意図し、他に開示されている材料および方法の範囲に対して制限を提起しない。本明細書のいかなる言語も、本発明の実施に必須である任意の請求されない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0138】
文脈が明らかに別途に要求されない限り、詳細な説明および特許請求の範囲全般にわたって「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの用語は、排他的または徹底的な意味ではなく、包括的な意味に解釈されるであろう;すなわち、「を含むが、これに限定されない」の意味である。単数または複数を使用する用語は、各々複数と単数を含む。さらに、「本明細書で」、「上」および「以下」という用語および類似の用語は、本出願で使用される場合、本出願全体を指すものであって本出願の任意の特定部分を指すものではない。
【0139】
当業者が理解できるように、本明細書に開示された各々の実施形態は、その特定の記述された要素、段階、成分または構成要素を含み得るか、これらから本質的になり得るか、これらからなり得る。本明細書で使用される場合、移行用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」は、これらに限定されないが、含む(includes)を意味し、また過半量であっても、明示されない要素、段階、成分または構成要素を含むことを許容する。移行句「からなる」は、明示されない任意の要素、段階、成分または構成要素を除外する。移行句「から本質的になる」は、実施形態の範囲を、明示されている要素、段階、成分または構成要素および実施形態で実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0140】
別途の指示がない限り、材料の量、本明細書および特許請求の範囲で使用される分子量、反応条件などの特性を表すすべての数値は、「約」という用語によってすべての実例において修飾されると理解される。したがって、それとは反対の指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記述された数字によるパラメータは、本発明の材料および方法によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値であるせめて、また特許請求の範囲と均等の原則の適用を限定しようとする意図ではなく、各々の数字によるパラメータは、少なくとも報告された有効桁数の数字に照らし、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0141】
広範囲に及ぶ本発明を説明している数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例で記述している数値は、可能な限り、正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、これら各々の試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0142】
本明細書に開示されている材料および方法の代替的要素または実施形態の分類は、限定としては解釈されない。各々の群のメンバーは、個々にまたは群の他のメンバーまたは本明細書で見出される他の要素との任意の組み合わせで言及および特許請求され得る。1つまたは複数の群のメンバーは、便宜性および/または特許性の理由によって群に含まれ得るか、または群から除去され得ることが予想される。任意のこのような包含または除去が発生した場合、本明細書は、修正されたものとしてその群を含むものと見なされる。
【0143】
方法および材料のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される。当然ながら、これらの記述された実施形態の変形形態は、前述した説明を読むと当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者が必要に応じ、このような変形形態を採用することを期待し、また本発明の材料および方法が本明細書に具体的に記載されること以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明には、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される準拠法によって許可されるような主題のすべての変形形態および均等物が含まれる。さらに、そのすべての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書に別途の指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本発明によって包含される。
【0144】
さらに、多数の参照が本明細書全体を通して特許および刊行物に対してなされている。上記引用された参照および刊行物の各々は、その全体が個別的に参照によって本明細書に組み込まれる。
【0145】
最後に、本明細書に開示された方法及び物質の実施形態は、本開示の原理を例示するものであることを理解されたい。採用され得る他の変形形態は、本発明の範囲内にある。したがって、例として、これに限定されないが、本発明の材料および方法の代替構成は、本明細書における教示にしたがって利用することができる。したがって、本発明は、本明細書で示されて記述されたように、正確には限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11