(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】液状硬化性シリコーン接着剤組成物、その硬化物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20221003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221003BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221003BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221003BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J11/06
C09J11/04
C09J7/30
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2019511131
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2018010860
(87)【国際公開番号】W WO2018186165
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017075788
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小玉 春美
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】潮 嘉人
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219197(JP,A)
【文献】特開2004-075918(JP,A)
【文献】特開2007-231195(JP,A)
【文献】特開2012-219113(JP,A)
【文献】特表2011-526648(JP,A)
【文献】特開平01-132664(JP,A)
【文献】特開平10-324860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/07
C09J 7/30
C09J 11/04
C09J 11/06
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(Y)、または以下の成分(A)、成分(B)および成分(Y)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物であって、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有する硬化反応性オルガノポリシロキサン
であって、以下の成分(A1-1)および成分(B1-1)の5:95~95:5混合物を少なくとも含む硬化反応性オルガノポリシロキサン 100質量部
(A):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(B):一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(Y):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基および少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(A1-1):分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジメチルポリシロキサン、
(B1-1):分子鎖両末端に、ケイ素原子に結合した下記構造式:
【化1】
(式中、R
1
は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R
2
はアルキル基であり、R
3
は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0~2の整数であり、pは1~50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン
(C)縮合反応触媒 0.1~10質量部、
(D)有機過酸化物 0.1~10質量部、
(E)
エポキシ基含有アルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物;エポキシ基含有アルコキシシランと縮合反応性オルガノポリシロキサンとの縮合反応物;アクリル基含有アルコキシシラン;アミノ基含有アルコキシシラン;エポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物;一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着付与剤を少なくとも含む接着付与剤 0.1~10質量部、および
(F)分子内に少なくとも2つの縮合反応性基を有する架橋性シラン(ただし、成分(E)に該当するものを除く) 0.5~10質量部
を含有してなる
一液型液状硬化性シリコーン接着剤組成物であって、
ヒドロシリル化反応触媒を含まず、当該組成物を湿気の存在下かつ室温(25℃)~50℃の温度範囲において硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’
1)、当該組成物を100℃以上の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’
2)について、G’
1対するG’
2の増加率(Δ)が少なくとも50%であることを特徴とするもの。
【請求項2】
硬化反応性オルガノポリシロキサンの分子構造が、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状またはこれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【請求項3】
硬化反応性オルガノポリシロキサン中のラジカル反応性基が、アルケニル基、アクリル含有有機基またはメタクリル含有有機基であり、縮合反応性基の少なくとも一部がアルコキシシリル含有基またはシラノール基である、請求項1または請求項2に記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【請求項4】
硬化反応性オルガノポリシロキサンが、以下の成分(Y1)、または以下の成分(A1)、成分(B1)および成分(Y1)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物から選ばれる、請求項1~請求項3のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
(A1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基を有するメチルポリシロキサン、
(B1):一分子中に、少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン、
(Y1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基および少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン
【請求項5】
(F)架橋性シランが、下記構造式:
R
4
b
SiR
5
(4-b)
(式中、R
4
は同じかまたは異なる炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基または炭素数6~20のアリール基であり、R
5
は同じかまたは異なる、水酸基、炭素数1~5のアルコキシ基、-ONC(CH
3
)C
2
H
5
、-OCOCH
3
、または-OC(=CH
2
)CH
3
であり、bは0、1又は2である。)
で表される架橋性シランである、請求項1~請求項4のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【請求項6】
さらに、(G)補強性充填剤を含有する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【請求項7】
硬化反応前の室温(25℃)における組成物全体の粘度が10~500Pa・sの範囲である、請求項1~請求項6のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を、湿気の存在下、60℃以下の温度範囲において一次硬化させてなる高温硬化性の一次硬化物。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または請求項8の高温硬化性の一次硬化物を90℃以上に加熱して得られる硬化物。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を用いる、電子機器用部材の接着方法。
【請求項11】
以下の工程(I)および工程(II)を有する、電子機器用部材の接着方法。
工程(I):請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または請求項8に記載の高温硬化性の一次硬化物を基材と電子機器用部材に配置する工程、および
工程(II):工程(I)で配置した液状硬化性シリコーン接着剤組成物または一次硬化物を90℃以上に加熱する工程
【請求項12】
以下の工程(I’)~工程(III’)を有する、液状硬化性シリコーン接着剤組成物の段階的な硬化を含む電子機器用部材の接着方法。
工程(I’):基材上に請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を塗布する工程、
工程(II’):工程(I’)の塗布層を湿気の存在下、室温~60℃以下の温度範囲において一次硬化させる工程、
工程(III’):工程(II’)の一次硬化物上に電子機器用部材を配置し、90℃以上に加熱する工程。
【請求項13】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を、湿気の存在下、60℃以下の温度範囲において一次硬化させてなる高温硬化性の一次硬化物を備える、電子部品、電子機器またはその前駆体。
【請求項14】
前記の高温硬化性の一次硬化物の一部または全部が、離型層を備えたシート状部材により被覆されている、請求項13に記載の電子部品、電子機器またはその前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型の組成物を室温で安定保管可能であり、湿気の存在下、60℃以下、好適には室温~50℃程度の低温下で一次硬化可能であり、かつ、90℃以上、好適には100℃以上の高温下で二次硬化して、接触させた基材乃至部材に対して強固な接着層を形成可能な液状硬化性シリコーン接着剤組成物に関する。また、本発明は、当該液状硬化性シリコーン接着剤組成物を低温下で一次硬化させて得られる高温硬化性の一次硬化物、当該液状硬化性シリコーン接着剤組成物または前記の一次硬化物を90℃以上、好適には100℃以上の高温下で硬化させて得られる硬化物に関し、かつ、当該液状硬化性シリコーン接着剤組成物の硬化物を供えた電子機器等または電子機器用部材の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着性フィルムや半導体封止剤の分野では、異なる硬化反応条件を想定し、多段階で硬化反応が進行する硬化性組成物が提案されている。例えば、特許文献1では、2段階の硬化反応により、第1段階の硬化によりダイシング工程で要求される粘着性を、第2段階の硬化により強固な接着性を示し、ダイシング・ダイボンド接着シートに好適に使用される熱硬化性組成物が開示されている。また、本出願人らは、特許文献2において、初期硬化性に優れ、かつ、250℃以上の高温に暴露した場合にも高い物理的強度を維持する、硬化性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、これらの従来公知の多段階硬化を想定した硬化性組成物は、一次硬化反応に主としてヒドロシリル化反応を利用しているため、室温で長期間保管可能な1液型の液状硬化性シリコーン製品の設計が困難であり、ヒドロシリル化触媒を分離した二液型としないと輸送中に系全体がゲル化する等の取扱作業上の制約があり、二液型等の多液型のパッケージとして用いるか、仮に1液型の製品とした場合には、ヒドロシリル化反応を抑制するために冷蔵乃至冷凍保管が不可欠で、その取扱作業性および工業的な適用範囲が大きく制限されてしまうという問題がある。加えて、一次硬化反応に主としてヒドロシリル化反応を利用する場合、一次硬化反応を進行させる時点で、高温による加熱硬化が不可欠であり、二次硬化反応にはさらに高温での硬化反応を行う必要があることから、特に室温や低温硬化に対応することが困難であり、工業的に適用される場面が限定されていた。
【0003】
一方、特許文献3には、縮合反応触媒とエステル系有機過酸化物を含み、紫外線照射により硬化可能な硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている。しかしながら、当該特許文献3には、湿気の存在下、当該組成物を低温で一次硬化させた高温反応性の一次硬化物の利用や、当該組成物を低温で一次硬化させることにより得られた高温反応性の一次硬化物が、高温で硬化させた場合に急激な貯蔵弾性率の変化を生じる等の多段階における硬化特性について、何ら記載も示唆もなされておらず、そのような潜在的性質を有するに足りる硬化性オルガノポリシロキサン組成物も開示されていない。すなわち、特許文献3に開示された硬化性オルガノポリシロキサン組成物によっては、上記課題を解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-191629号公報(特許登録4628270号)
【文献】特開2016-124967号公報
【文献】特開平01-132664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、室温で長期間保管可能な1液型の液状硬化性シリコーン製品であって、初期粘度が十分に低いため塗布性、流れ性が良好で、所望により湿気の存在下で室温で硬化して表面タックのない非流動体(一次硬化物)を形成可能な液状組成物であり、かつ、液状組成物または前記の一次硬化物を100℃以上の高温で加熱することにより種々の基材に対して強固かつ良好な接着層を形成可能な液状硬化性シリコーン接着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を湿気の存在下で室温で硬化させることで、表面タックのない非流動体であり、そのまま輸送することが可能である高温硬化性の一次硬化物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記の液状硬化性シリコーン接着剤組成物またはその高温硬化性の一次硬化物を用いた電子機器用部材の接着方法、それらの硬化物を備えた電子機器またはその前駆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意検討の結果、本発明者らは、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有する硬化反応性オルガノポリシロキサン、縮合反応触媒、有機過酸化物、接着付与剤および架橋性シランを含有してなる液状硬化性シリコーン接着剤組成物であって、当該組成物を湿気の存在下かつ室温(25℃)~50℃の温度範囲において硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’1)、当該組成物を100℃以上の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’2)について、G’1対するG’2の増加率(Δ)が少なくとも50%であることを特徴とするものを用いることで、上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、以下の液状硬化性シリコーン接着剤組成物により達成される。
[1] 以下の成分(Y)、または以下の成分(A)、成分(B)および成分(Y)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物であって、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有する硬化反応性オルガノポリシロキサン 100質量部
(A):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(B):一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(Y):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基および少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(C)縮合反応触媒 0.1~10質量部、
(D)有機過酸化物 0.1~10質量部、
(E)接着付与剤 0.1~10質量部、および
(F)分子内に少なくとも2つの縮合反応性基を有する架橋性シラン(ただし、成分(E)に該当するものを除く) 0.5~10質量部
を含有してなる液状硬化性シリコーン接着剤組成物であって、当該組成物を湿気の存在下かつ室温(25℃)~50℃の温度範囲において硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’
1)、当該組成物を100℃以上の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’
2)について、G’
1対するG’
2の増加率(Δ)が少なくとも50%であることを特徴とするもの。
[2]硬化反応性オルガノポリシロキサンの分子構造が、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状またはこれらの混合物から選ばれる、[1]に記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
[3]硬化反応性オルガノポリシロキサン中のラジカル反応性基が、アルケニル基、アクリル含有有機基またはメタクリル含有有機基であり、縮合反応性基の少なくとも一部がアルコキシシリル含有基またはシラノール基である、[1]または[2]に記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
[4]硬化反応性オルガノポリシロキサンが、以下の成分(Y1)、または以下の成分(A1)、成分(B1)および成分(Y1)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物から選ばれる、[1]~[3]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
(A1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基を有するメチルポリシロキサン、
(B1):一分子中に、少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン、
(Y1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基および少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン
[5]硬化反応性オルガノポリシロキサンが、以下の成分(A1-1)および成分(B1-1)の5:95~95:5混合物を少なくとも含む、[1]~[4]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
(A1-1):分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジメチルポリシロキサン、
(B1-1):分子鎖両末端に、ケイ素原子に結合した下記構造式:
【化1】
(式中、R
1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R
2はアルキル基であり、R
3は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0~2の整数であり、pは1~50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン
[6](E)接着付与剤が、エポキシ基含有アルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物;エポキシ基含有アルコキシシランと縮合反応性オルガノポリシロキサンとの縮合反応物;アクリル基含有アルコキシシラン;アミノ基含有アルコキシシラン;イソシアヌレート類;エポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物;一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着付与剤を少なくとも含む、[1]~[5]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
[7](F)架橋性シランが、下記構造式:
R
4
bSiR
5
(4-b)
(式中、R
4は同じかまたは異なる炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基または炭素数6~20のアリール基であり、R
5は同じかまたは異なる、水酸基、炭素数1~5のアルコキシ基、-ONC(CH
3)C
2H
5、-OCOCH
3、または-OC(=CH
2)CH
3であり、bは0、1又は2である。)
で表される架橋性シランである、[1]~[6]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
[8]さらに、(G)補強性充填剤を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
[9]硬化反応前の室温(25℃)における組成物全体の粘度が10~500Pa・sの範囲である、[1]~[8]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物。
【0008】
また、本発明の目的は、以下の高温硬化性の一次硬化物または硬化物によって達成される。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を、湿気の存在下、60℃以下の温度範囲において一次硬化させてなる高温硬化性の一次硬化物。
[11][1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または請求項10の高温硬化性の一次硬化物を90℃以上に加熱して得られる硬化物。
【0009】
同様に、本発明の目的は、以下の電子機器用部材の接着方法によって達成される。
[12] [1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を用いる、電子機器用部材の接着方法。
[13] 以下の工程(I)および工程(II)を有する、電子機器用部材の接着方法。
工程(I):[1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または[10]の高温硬化性の一次硬化物を基材と電子機器用部材に配置する工程、および
工程(II):工程(I)で配置した液状硬化性シリコーン接着剤組成物または一次硬化物を90℃以上に加熱する工程
[14] 以下の工程(I’)~工程(III’)を有する、液状硬化性シリコーン接着剤組成物の段階的な硬化を含む電子機器用部材の接着方法。
工程(I’):基材上に[1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を塗布する工程、
工程(II’):工程(I’)の塗布層を湿気の存在下、室温~60℃以下の温度範囲において一次硬化させる工程、
工程(III’):工程(II’)の一次硬化物上に電子機器用部材を配置し、90℃以上に加熱する工程。
【0010】
同様に、本発明の目的は、以下の電子機器またはその前駆体によって達成される。
[15][1]~[9]のいずれかに記載の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を、湿気の存在下、60℃以下の温度範囲において一次硬化させてなる高温硬化性の一次硬化物を備える、電子部品、電子機器またはその前駆体
[16][15]の電子部品、電子機器またはその前駆体であって、高温硬化性の一次硬化物の一部または全部が、離型層を備えたシート状部材により被覆されているもの
【発明の効果】
【0011】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物により、室温で長期間保管可能な1液型の液状硬化性シリコーン製品であって、初期粘度が十分に低いため塗布性、流れ性が良好で、所望により湿気の存在下で室温で硬化して表面タックのない非流動体(一次硬化物)を形成可能であり、かつ、液状組成物または前記の一次硬化物を100℃以上の高温で加熱することにより種々の基材に対して強固かつ良好な接着層を形成可能な液状硬化性シリコーン接着剤組成物を提供することができる。さらに、当該一次硬化物は、表面タックのない非流動体であり、そのまま、あるいは、当該一時硬化物を備えた電子部品等として輸送することが可能である。また、本発明に係る上記の液状硬化性シリコーン接着剤組成物またはその高温硬化性の一次硬化物を用いることで、電子機器用部材の接着方法、それらの硬化物を備えた電子機器またはその前駆体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[液状硬化性シリコーン接着剤組成物]
[硬化挙動に基づく特徴]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は室温で液状であり、かつ、湿気の存在下で室温(25℃)程度の低温で表面タックのない非流動性の一次硬化物を形成することができる。さらに、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または前記の一次硬化物は、高温硬化性を備えており、100℃以上の加熱により完全に硬化した接着層を形成することができる。このような物性(硬化挙動)は、湿気から組成物を遮蔽することで、室温で安定に保管可能な一液型の製品設計が可能であり、湿気硬化時に室温~低温域では表面タックがなく、比較的柔軟な非流動体(一次硬化物)を形成する一方、100℃以上の高温下では、液状からまたは前記の柔軟な一次硬化物から、比較的硬質でゴム弾性の高い高温硬化物(以下、液状/一次硬化物からの高温硬化物をまとめて、「高温下での二次硬化物」または単に「高温硬化物」と表現する場合がある)を形成することを意味しており、詳細には、当該組成物を湿気の存在下かつ室温(25℃)~50℃の温度範囲において硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’1)、当該組成物を100℃以上の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’2)について、G’1対するG’2の増加率(Δ)が少なくとも50%であり、好適には増加率(Δ)が100%以上であり、より好適には125%以上であるという低温下での一次硬化物と高温下での二次硬化物の貯蔵弾性率の差によって客観的に表現することが可能である。なお、上記の規定は本発明の組成物の硬化挙動を表現したものであり、本発明の組成物を25℃未満または50~60℃の範囲で一次硬化させたり、100℃以下、例えば90℃~100℃の範囲で二次硬化させることを妨げるものではない。
【0013】
ここで、かかる硬化挙動は、当該液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、湿気の存在下で、室温~低温域と100℃以上の高温域の二段階で硬化反応性を有していることを意味する。さらに、かかる硬化挙動は、湿気の存在下かつ室温~低温下で得られる一次硬化物が、柔軟な硬化物から、より保型性が高く、ハードな硬化物に変化することを特徴とする。より具体的には、G’1対するG’2の増加率(Δ)が大きな値を示すほど、ソフトで柔軟な一次硬化物が、高温硬化により、保型性の高いハードな硬化物に変化する傾向を有することを意味している。
【0014】
なお、増加率(Δ)の上限は特に制限されるものではないが、50,000%以下、20,000%以下、または10,000%以下であるものが好適に例示される。一次硬化物と高温下での二次硬化物の貯蔵弾性率の差が50%未満であるものは、一次硬化物がゲル状や半液状など、硬化が不十分であったり、表面タックの問題を生じたり、十分な柔軟性を有しないものであるか、二次硬化物の硬化が不十分である場合があり、本発明の目的を達成できない場合がある。
【0015】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を、湿気の存在下かつ室温(25℃)~50℃の温度範囲において硬化させた硬化物、すなわち、一次硬化物の貯蔵弾性率(G’1)の範囲は特に制限されないが、1.0×103~1.0×106(Pa)の範囲であることが好ましく、1.0×103~5.0×105(Pa)の範囲であることがより好ましい。また、一次硬化物は表面タックがないことが好ましい。
【0016】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を100℃以上の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’2)は、上記の(G’1)に比べて増加率(Δ)が少なくとも50%あれば特に制限されるものではないが、実用上および接着強度の見地から、1.0×104~1.0×107(Pa)の範囲であることが好ましく、1.0×105~5.0×106(Pa)の範囲であることがより好ましい。
【0017】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、硬化反応前においては、初期粘度が十分に低いため塗布性、流れ性が良好である。具体的には、当該組成物は、室温(25℃)における組成物全体の粘度が10~500Pa・sの範囲にあることが好ましく、粘度が10~300Pa・sの範囲にあることが特に好ましい。
【0018】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、上記のような物性および温度に依存した段階的な硬化挙動が可能な組成物であり、
以下の成分(Y)、または以下の成分(A)、成分(B)および成分(Y)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物であって、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有する硬化反応性オルガノポリシロキサン 100質量部
(A):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基 を有するオルガノポリシロキサン、
(B):一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(Y):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基および少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(C)縮合反応触媒 0.1~10質量部、
(D)有機過酸化物 0.1~10質量部、
(E)接着付与剤 0.1~10質量部、および
(F)分子内に少なくとも2つの縮合反応性基を有する架橋性シラン(ただし、成分(E)に該当するものを除く) 0.5~10質量部
を含有してなる。さらに、(G)補強性充填剤を含有することが好ましく、本発明の技術的効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでもよい。以下、各成分を詳細に説明する。
【0019】
[硬化反応性オルガノポリシロキサン]
硬化反応性オルガノポリシロキサンは、本組成物の主剤であり、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有することを特徴とする。当該オルガノポリシロキサンは、ラジカル反応性基および縮合反応性基を有するため、室温~50℃では湿気および縮合反応触媒の存在下、表面タックのない非流動性の一次硬化物を形成し、当該一次硬化物はそのまま輸送することも可能である。さらに、一次硬化物中には、当該オルガノポリシロキサンに由来するラジカル反応性基がほぼ未反応で残存しているため、100℃以上の加熱により、有機過酸化物により硬化して強固な接着層を形成するものである。なお、本組成物は、湿気を遮断した包装/パッケージにおいては室温程度では上記のいずれの硬化反応も進行しないため、室温で安定に保管可能な一液型の製品として利用することができる。
【0020】
具体的には、このような硬化反応性オルガノポリシロキサンは、成分(Y)、または以下の成分(A)、成分(B)および成分(Y)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物である。成分(Y)単独、または以下の3種類のオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物は、同一分子内または混合物全体としてラジカル反応性基および縮合反応性基を有する。これらのオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に制限されるものではなく、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状、環状またはこれらの混合物であってもよい。また、これらのオルガノポリシロキサンは、接点障害等の原因となる低分子または揮発性のシロキサン成分が予め低減ないし除去されていてもよく、かつ好ましい。
(A):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基 を有するオルガノポリシロキサン、
(B):一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン、
(Y):一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基および少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサン
【0021】
[成分(A)]
成分(A)は、一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基を有するオルガノポリシロキサンであり、過酸化物の存在下、特に100℃以上で本組成物に高温硬化性を付与する成分である。このようなラジカル反応性基は特に制限されるものではないが、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等の炭素原子数2~10のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基等のアクリル含有有機基;3-メタクリロキシプロピル基等のメタクリル含有有機基が好適に例示され、特に、アルケニル基であることが好ましい。また、成分(A)の分子構造は特に制限されるものではなく、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状、環状またはこれらの混合物であってもよい。
【0022】
本組成物は、縮合反応性の成分(B)または成分(Y)、および成分(F)を含有するため、成分(A)は、一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基すればよい。ただし、高温硬化性の見地から、成分(A)は、一分子中に、2個以上のラジカル反応性基を有することが好ましく、分子末端(鎖状分子の場合には、分子鎖末端)に2個以上のラジカル反応性基を有することが特に好ましい。
【0023】
成分(A)は、上記のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3-クロロプロピル基、および3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基、またはフェニル基が例示されるが、成分(B)または成分(Y)と重複しない範囲かつ本発明の技術的効果を損なわない範囲で特に制限されるものではなく、分子内にアルキレン基を介して結合されたカルボシロキサンデンドリマー構造またはシロキサンマクロモノマー構造を含むものであってもよい。工業的には、上記のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する官能基として、メチル基、フェニル基、トリフルオロアルキル基等のフルオロアルキル基が好適に例示される。
【0024】
成分(A)の分子構造、分子量、シロキサン単位の重合度、粘度は特に制限されるものではないが、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状、環状またはこれらの混合物から選ばれるオルガノポリシロキサンであって、その25℃における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、粘度が5mPa・s以上、10mPa・s以上または20mPa・s以上であるものが例示される。その粘度の上限は特に制限されるものではなく、25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、可塑度を有する生ゴム状であってもよいが、25℃における粘度が100,000mPa・s以下、50,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0025】
成分(A)が直鎖状のオルガノポリシロキサンである場合、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルビニルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンが例示される。また、これらのビニル基の一部または全部はヘキセニル基等の他のアルケニル基または前記のアクリル含有有機基またはメタクリル含有有機基で置換されていてもよい。
【0026】
成分(A)が樹脂状のオルガノポリシロキサンである場合、例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立して、一価有機基であり、好適には炭素数1~10のアルキル基、フェニル基または炭素原子数2~10のアルケニル基)からなり、分子中に少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン、T単位単独からなり、分子中に少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジンなどを挙げることができる。特に、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。
【0027】
[成分(B)]
成分(B)は、一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサンであり、湿気および縮合反応触媒の存在下、60℃以下、好適には50℃以下、より好適には室温(25℃)から50℃以下の温度範囲で本組成物に一次硬化性を付与する成分である。このような縮合反応性基は特に制限されるものではないが、水酸基、炭素原子数1~10のアルコキシ基またはカルボキシル基を有する官能基であり、珪素原子に結合した水酸基(シラノール基)または1個以上のアルコキシ基を有するアルコキシシリル基であることが好ましい。室温(25℃)~50℃における一次硬化性の見地から、成分(B)は、分子内に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有することが好ましい。また、成分(B)の分子構造は特に制限されるものではなく、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状またはこれらの混合物であってもよい。また、これらのオルガノポリシロキサンは、接点障害等の原因となる低分子または揮発性のシロキサン成分が予め低減ないし除去されていてもよく、かつ好ましい。
【0028】
成分(B)において、好適な縮合反応性基は、シラノール基または炭素原子数1~5のアルコキシ基であり、特に、一般式:
【化2】
(式中、R
1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R
2はアルキル基であり、R
3は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0~2の整数であり、pは1~50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を有することが好ましい。
【0029】
上式中、R1は同じか、または異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、上式中、R2はアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示され、好ましくは、メチル基である。R3は同じか、または異なる二価有機基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等のアルキレン基;エチレンオキシエチレン基、プロピレンオキシエチレン基、プロピレンオキシプロピレン基等のアルキレンオキシアルキレン基が例示され、好ましくは、アルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基である。また、上式中、pは1~50の整数であり、好ましくは、1~10の整数であり、特に好ましくは、1~5の整数である。また、上式中、aは0~2の整数であり、好ましくは、0である。
【0030】
このようなアルコキシシリル含有基としては、例えば、式:
前記の一般式で表されるアルコキシシリル含有基としては、例えば、式:
【化3】
で表される基、式:
【化4】
で表される基、式:
【化5】
で表される基、式:
【化6】
で表される基、式:
【化7】
で表される基、式:
【化8】
で表される基、式:
【化9】
で表される基が例示される。
【0031】
本組成物は、縮合反応性の成分(F)を含有するため、成分(B)は、一分子中に、少なくとも1個の縮合反応性基を有すればよい。ただし、一次硬化性の見地から、成分(B)は、一分子中に、2個以上の縮合反応性基を有することが好ましく、特に分子末端(鎖状分子の場合には、分子鎖末端)に2個以上の縮合反応性基、より好適には上記のシラノール基、トリメトキシシリル基等の炭素原子数1~5のアルコキシシリル基、および上記の一般式で表されるアルコキシシリル含有基から選ばれる1種類以上の末端基を有することが特に好ましい。
【0032】
成分(B)は、上記の縮合反応性基以外のケイ素原子に結合する官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3-クロロプロピル基、および3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基またはフェニル基が例示されるが、成分(A)または成分(Y)と重複しない範囲かつ本発明の技術的効果を損なわない範囲で特に制限されるものではなく、分子内にアルキレン基を介して結合されたカルボシロキサンデンドリマー構造またはシロキサンマクロモノマー構造を含むものであってもよい。工業的には、上記の縮合反応性基以外のケイ素原子に結合する官能基として、メチル基、フェニル基、トリフルオロアルキル基等のパーフルオロアルキル基が好適に例示される。
【0033】
成分(B)の分子構造、分子量、シロキサン単位の重合度、粘度は特に制限されるものではないが、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状、環状またはこれらの混合物から選ばれるオルガノポリシロキサンであって、その25℃における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、粘度が5mPa・s以上、10mPa・s以上または20mPa・s以上であるものが例示される。その粘度の上限は特に制限されるものではなく、25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、可塑度を有する生ゴム状であってもよいが、25℃における粘度が100,000mPa・s以下、50,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0034】
成分(B)の分子構造が直鎖状である場合、分子鎖の少なくとも一方の末端のケイ素原子にシラノール基、トリメトキシシリル基等の炭素原子数1~5のアルコキシシリル基、および上記の一般式で表されるアルコキシシリル含有基から選ばれる1種類以上の末端基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0035】
成分(B)が樹脂状のオルガノポリシロキサンである場合、例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立して、一価有機基または水酸基)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基を有するレジン、T単位単独からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基を有するレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基を有するレジンなどを挙げることができる。特に、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基を有するレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。なお、縮合反応性基は、水酸基または炭素原子数1~5のアルコキシ基等であってよく、これらは、レジン中のT単位またはQ単位などのケイ素に直接結合しており、原料となるシラン由来またはシランが加水分解した結果、生じた基である。
【0036】
[成分(Y)]
成分(Y)は、一分子中に、少なくとも1個のラジカル反応性基および少なくとも1個の縮合反応性基を有するオルガノポリシロキサンであり、湿気および縮合反応触媒の存在下、60℃以下、好適には50℃以下、より好適には室温(25℃)から50℃以下の温度範囲で本組成物に一次硬化性を付与する成分であり、過酸化物の存在下、90℃以上、好適には100℃以上で本組成物に高温硬化性を付与する成分でもある。ここで、ラジカル反応性基および縮合反応性基の種類及び好適な範囲は、前記の成分(A)または成分(B)に例示したとおりである。また、成分(Y)におけるラジカル反応性基および縮合反応性基以外の他の官能基も、前記の成分(A)または成分(B)に例示したとおりである。
【0037】
成分(Y)の分子構造、分子量、シロキサン単位の重合度、粘度は特に制限されるものではないが、直鎖状、樹脂状、分岐鎖状、環状またはこれらの混合物から選ばれるオルガノポリシロキサンであって、その25℃における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、粘度が5mPa・s以上、10mPa・s以上または20mPa・s以上であるものが例示される。その粘度の上限は特に制限されるものではなく、25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、可塑度を有する生ゴム状であってもよいが、25℃における粘度が100,000mPa・s以下、50,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0038】
成分(Y)が直鎖状のオルガノポリシロキサンである場合、25℃における粘度は特に限定されないが、20mPa・s以上であることが好ましく、特に、100~1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、粘度が低くなると、得られる硬化物の物理的性質、特に、柔軟性と伸びが著しく低下するためである。
【0039】
このような成分(Y)としては、平均式:
【化10】
で表されるオルガノポリシロキサン、平均式:
【化11】
で表されるオルガノポリシロキサン、平均式:
【化12】
で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。なお、式中、Xは前記例示の縮合反応性基であり、上記のシラノール基、トリメトキシシリル基等の炭素原子数1~5のアルコキシシリル基、および上記の一般式で表されるアルコキシシリル含有基から選ばれる1種類以上の官能基であることが好ましい。また、上記のビニル基の一部または全部はヘキセニル基等の他のアルケニル基または前記のアクリル含有有機基またはメタクリル含有有機基で置換されていてもよい。ここで、n'、n''、およびn'''はそれぞれ1以上の整数であり、上記の粘度範囲を充足する値であることが好ましい。
【0040】
成分(Y)が樹脂状のオルガノポリシロキサンである場合、例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立して、一価有機基または水酸基)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基および少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン、T単位単独からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基および少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基および少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジンなどを挙げることができる。特に、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子中に少なくとも1個の縮合反応性基および少なくとも1個のラジカル反応性基を有するレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。なお、縮合反応性基は、少なくとも1個の水酸基または炭素原子数1~5のアルコキシ基等から選ばれる基であってよく、少なくとも1個のラジカル反応性基は、ビニル基等のアルケニル基であることが好ましい。
【0041】
このような樹脂状の成分(Y)は、分子内に水酸基または炭素原子数1~5のアルコキシ基を有し、トリオルガノシロキシ単位(M単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)(オルガノ基はメチル基、ビニル基、またはフェニル基である。)及びシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、TDQ樹脂が例示される。
【0042】
一方、特に好適には、樹脂状の成分(Y)は、下記構造式で表されるMQ樹脂型のオルガノポリシロキサンが例示される。
構造式:
[(CH3)3SiO1/2]b[(CH3)2(CH2=CH)SiO1/2]c[(CH3)2XSiO1/2]d(SiO4/2)e
なお、式中、Xは前記例示の縮合反応性基であり、上記のシラノール基、トリメトキシシリル基等の炭素原子数1~5のアルコキシシリル基、および上記の一般式で表されるアルコキシシリル含有基から選ばれる1種類以上の官能基であることが好ましい。また、上記のビニル基の一部または全部はヘキセニル基等の他のアルケニル基または前記のアクリル含有有機基またはメタクリル含有有機基で置換されていてもよい。ここで、b、c、d、およびeは正数である。
【0043】
本発明の硬化反応性オルガノポリシロキサンは、以下の成分(Y1)、または以下の成分(A1)、成分(B1)および成分(Y1)からなる群から選ばれる2種類以上の混合物から選ばれることが好ましい。それらの具体例は上記の成分(A)、成分(B)および成分(Y)に例示したとおりである。なお、成分(A)、成分(B)および成分(Y)の混合比は任意である。
(A1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基を有するメチルポリシロキサン、
(B1):一分子中に、少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン、
(Y1):一分子中に、少なくとも1個のアルケニル基および少なくとも1個のアルコキシシリル含有基を有するメチルポリシロキサン
【0044】
本発明の硬化反応性オルガノポリシロキサンは、成分(A)および成分(B)を含むことが好ましく、特に、以下の成分(A1-1)および成分(B1-1)の5:95~95:5混合物を少なくとも含むことが好ましい。成分(A1-1)および成分(B1-1)の好適な例は、上記の成分(A)または成分(B)に記載のとおりである。
(A1-1):分子鎖両末端がジメチルアルケニルシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジメチルポリシロキサン、
(B1-1):分子鎖両末端に、ケイ素原子に結合した下記構造式:
【化13】
(式中、R
1は同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R
2はアルキル基であり、R
3は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0~2の整数であり、pは1~50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン
なお、これらの成分に加えて、さらに、任意の部数で成分(Y)を含んでもよい。
【0045】
[成分(C)]
成分(C)は縮合反応触媒であり、本発明に係る組成物の成分(B)、成分(Y)および成分(F)の縮合反応を促進することにより、湿気の存在下、60℃以下、好適には50℃以下、より好適には室温(25℃)から50℃以下の温度範囲において、本発明の組成物に一次硬化性を付与する成分である。このような成分(C)は、例えば、、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫、ジメチル錫ジネオデカノエートおよびスタナスオクトエート等の有機錫化合物;テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタン、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、およびジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示される。その使用量は触媒量であり、所望の硬化条件に合わせて適宜選択可能であるが、組成物全体中の硬化反応性オルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して0.1~10質量部の範囲が一般的であり、0.1~5質量部の範囲が好ましい。
【0046】
[成分(D)]
成分(D)は有機過酸化物であり、本発明に係る組成物の成分(A)または成分(Y)、乃至前記の本組成物の一次硬化物について、100℃以上での高温硬化性を付与する成分である。このような有機過酸化物としては、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。特に、高温選択的に本組成物または本組成物の一次硬化物の硬化を進行させる場合、当該有機過酸化物の10時間半減期温度が70℃以上であることが好ましく、90℃以上であってよい。
【0047】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0048】
過酸化ジアシル類としては、p-メチルベンゾニルパーオキサイド等のベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0049】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0050】
過酸化カーボネート類としては、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0051】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が70℃以上であるものが好ましく、90℃以上あるいは95℃以上であってもよい。このような有機過酸化物としては、p-メチルベンゾニルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0052】
有機過酸化物の含有量は限定されないが、組成物全体中の硬化反応性オルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して0.1~10質量部の範囲が一般的であり、0.1~5質量部の範囲が好ましい。
【0053】
[成分(E)]
成分(E)は、接着付与剤であり、本発明に係る組成物またはその一次硬化物について100℃以上での高温硬化の後に得られる硬化物にすぐれた接着性(接着耐久性と接着強度の改善を含む)を与える成分である。特に、本発明組成物を電気電子部品の保護剤または接着剤として利用する場合、アルミダイキャストや樹脂材料等の各種基材への初期接着性に優れ、接着耐久性と接着強度がさらに改善され、電気・電子部品の信頼性・耐久性を長期間に渡って維持することを可能とするものである。
【0054】
このような成分(E)は特に制限されるものではないが、エポキシ基含有アルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物;エポキシ基含有アルコキシシランと縮合反応性オルガノポリシロキサンとの縮合反応物;アクリル基含有アルコキシシラン;アミノ基含有アルコキシシラン;アルケニルイソシアヌレート類;エポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物;一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着付与剤が好適に例示される。なお、その他の成分(E)として、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケート等のアルキルシリケートを用いてもよい。
【0055】
これらの接着付与剤は1種類以上であってよいが、90℃以上、好適には100℃以上での高温硬化の後に得られる硬化物が接触させた基材乃至部材に対して強固な接着層を形成できることから、2種類以上の接着付与剤を用いることが好ましく、3種類以上の接着付与剤を併用することが特に好ましい。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は硬化性シリコーン組成物の合計100質量部に対して0.1~10質量部の範囲が一般的であり、0.1~5質量部の範囲が好ましい。
【0056】
特に、好適な接着付与剤の組み合わせは、
(e1) エポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物、
(e2) エポキシ基含有アルコキシシランと縮合反応性オルガノポリシロキサンとの縮合反応物、および
(e3) イソシアヌレート類
を、各々の質量比が(e1):(e2):(e3)=1:0.1~5:0.1~5となる範囲、より好適には(e1):(e2):(e3)=1:1~5:1~5となる範囲で混合した接着付与剤が挙げられるが、これに限定されるものではなく、1種類の接着付与剤でも十分な接着性および接着強度を実現可能である。
【0057】
エポキシ基含有アルコキシシランは、一般式:
Ra
nSi(ORb)4-n
(式中、Raは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rbは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物であり、単独でも初期接着性を改善するほか、他の接着付与剤と併用することにより特に苛酷な条件下での接着耐久性を向上させる働きをする。なお、エポキシ基含有アルコキシシランは、他の接着付与剤の構成成分(原料)の一つであるが、技術的効果の見地から、別個の成分として添加する事が好ましい場合がある。
【0058】
このようなエポキシ基含有シランとしては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが例示される。
【0059】
エポキシ基含有アルコキシシランと縮合反応性オルガノポリシロキサンとの縮合反応物は、上記のエポキシ基含有アルコキシシランと、分子内に前記のような縮合反応性基(例えばシラノール基、アルコキシ基、アルコキシシリル含有基)を有する鎖状又は樹脂状のオルガノポリシロキサンの縮合反応物であり、縮合反応比は質量比で1:9~9:1の範囲であってよく、質量比で2:8~8:2の範囲がより好ましい。また、縮合反応性オルガノポリシロキサンは、接着付与剤の粘度コントロールの見地から、25℃において5~100mPa・sの範囲が特に好ましい。縮合反応触媒や反応条件は、所望により設計可能である。
【0060】
アクリル基含有アルコキシシランとして、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0061】
アミノ基含有アルコキシシランとして、アミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0062】
イソシアヌレート類は、イソシアヌレートまたはその変性物であり、トリアリルイソシアヌレート、トリブテニルイソシアヌレート、トリピニルイソシアヌレート、トリシクロヘキセ二ルイソシアヌレート、トリメトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリメトキシシリルプロビル)アリルイソシアヌレート、トリエトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、同一分子内に(i)エポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基から選ばれる1種以上の官能基と、アルケニル基を有するイソシアヌル酸誘導体(例えば、特開2010-065161号公報に開示されたもの)等が例示される。
【0063】
エポキシ基含有オルガノアルコキシシランとアミノ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物は、硬化途上で接触している各種基材に対する初期接着性、特に未洗浄被着体に対する接着性を付与するための成分である。また、本接着促進剤を配合した硬化性組成物の硬化系によっては、架橋剤としても作用する場合もある。このような反応混合物は、特公昭52-8854号公報や特開平10-195085号公報に開示されている。
【0064】
原料である、エポキシ基含有オルガノアルコキシシランとアミノ基含有オルガノアルコキシシランは上記同様であり、その比率は、(アミノ基含有オルガノアルコキシシラン:エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン)のモル比で、(1:1.5)~(1:5)の範囲内にあることが好ましく、(1:2)~(1:4)の範囲内にあることが特に好ましい。この成分(e1)は、上記のようなアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを混合して、室温下あるいは加熱下で反応させることによって容易に合成することができる。
【0065】
特に、本発明においては、特開平10-195085号公報に記載の方法により、アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを反応させる際、特に、アルコール交換反応により環化させてなる、一般式:
【化14】
{式中、R
1はアルキル基またはアルコキシ基であり、R
2は同じかまたは異なる一般式:
【化15】
(式中、R
4はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R
5は一価炭化水素基であり、R
6はアルキル基であり、R
7はアルキレン基であり、R
8はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R
3は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体を含有することが特に好ましい。このようなカルバシラトラン誘導体として、以下の構造で表される1分子中にアルケニル基およびケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラトラン誘導体が例示される。
【化16】
【0066】
一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し、かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物であり、単独でも初期接着性を改善するほか、特に他の接着付与剤と併用することにより本組成物の高温硬化物に苛酷な条件下での接着耐久性を向上させる場合がある
【0067】
このような有機化合物は、下記の一般式:
【化17】
(式中、R
Cは置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキレン基であり、R
Dは各々独立にアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、R
Eは各々独立に一価炭化水素基であり、bは各々独立に0または1である。)で示されるジシラアルカン化合物が好適である。かかる成分は各種化合物が試薬や製品として市販されており,また必要ならグリニャール反応やヒドロシリル化反応等,公知の方法を用いて合成することができる。例えば、ジエンとトリアルコキシシランまたはオルガノジアルコキシシランとをヒドロシリル化反応させるという周知の方法により合成することができる。
【0068】
式中、REはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基で例示される一価炭化水素基であり、低級アルキル基が好ましい。RDはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基であり、その炭素原子数が4以下のものが好ましい。RCは置換または非置換のアルキレン基であり、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が制限なく用いられ、これらの混合物であっても良い。接着性改善の見地から、炭素数は2~20の直鎖および/または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数5~10の直鎖および/または分岐鎖状のアルキレン、特に炭素原子数6のヘキシレンが好ましい。非置換アルキレン基はブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基またはこれらの分岐鎖状体であり、その水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基によって置換されていても構わない。
【0069】
上記の有機化合物の具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,1-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1-メチルジメトキシシリル-4-トリメトキシシリルブタン、1-メチルジエトキシシリル-4-トリエトキシシリルブタン、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1-メチルジメトキシシリル-5-トリメトキシシリルペンタン、1-メチルジエトキシシリル-5-トリエトキシシリルペンタン、1,5-ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(メチルジエトキシシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10-ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8-ビス(トリメトキシシリル)デカンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を混合しても良い。本発明において、好適には、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサンが例示できる。
【0070】
[成分(F)]
成分(F)は、本組成物の架橋剤成分の一つであり、上記の成分(E)に該当しない架橋性シランである。このような架橋性シランは、分子間の架橋構造(架橋点)となるため、分子内に少なくとも2個の縮合反応性基を有するものであるが、特に、下記構造式:
R4
bSiR5
(4-b)
(式中、R4は同じかまたは異なる炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基または炭素数6~20のアリール基であり、R5は同じかまたは異なる、水酸基、炭素数1~5のアルコキシ基、-ONC(CH3)C2H5、-OCOCH3、または-OC(=CH2)CH3であり、bは0、1又は2である。)
で表される架橋性シランであることが好ましい。また、この架橋性シランの含有量は硬化反応性オルガノポリシロキサンの合計100質量部に対して0.1~10質量部の範囲が一般的であり、0.1~5質量部の範囲が好ましい。
【0071】
より具体的には、成分(F)は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(ジイソプロピルケトオキシムシラン)、及びフェニルトリス(ジイソプロピルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシランが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0072】
[成分(G)]
本発明の組成物には、任意で(G)補強性充填剤を配合することが好ましい。補強性充填剤は、本発明の組成物を湿気の存在下室温等で硬化させてなる一次硬化物および高温で硬化させてなる硬化物に機械的強度を付与し、チクソ性を改善する成分であり、特に、上記の一次硬化物が90℃以上、好適には100℃以上の高温下で硬化反応する際の加熱等に対して当該一次硬化物が軟化して保型性の低下あるいは変形することを抑制することができる場合がある。これにより、当該一次硬化物上に配置された電子部品等が硬化物に埋没したり、硬化層上から電子部品等を分離しにくくなる事態が効率よく抑止される点で有効である。さらに、補強性充填剤の配合により、100℃以上の高温下における硬化反応後の硬化物の機械的強度、保型性および表面離型性がさらに改善される場合がある。
【0073】
このような補強性充填剤としては、例えば、ヒュームド(煙霧)シリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、石英微粉末、炭酸カルシウム微粉末、ケイ藻土微粉末、酸化アルミニウム微粉末、水酸化アルミニウム微粉末、酸化亜鉛微粉末、炭酸亜鉛微粉末等の無機質充填剤を挙げることができ、これらの無機質充填剤をメチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン、α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等の処理剤により表面疎水化処理した無機質充填剤を含有してもよい。特に、分子鎖両末端にシラノール基を有する低重合度のオルガノポリシロキサン、好適には、分子中に当該末端シラノール基以外の反応性官能基を有しないα,ω-シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンにより成分(G)の表面を予め処理することにより、室温で優れた初期接着性、接着耐久性および接着強度を実現でき、さらに十分な使用可能時間(保存期間および取り扱い作業時間、ポットライフ)を確保できる場合がある。
【0074】
補強性充填剤の微粉末の粒子径は、特に限定されないが、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径(以下、単に「メジアン径」)で0.01μm~1000μmの範囲内であり得る。
【0075】
補強性充填剤の含有量は、限定されないが、前記の硬化反応性オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~200質量部の範囲内であることが好ましい。
【0076】
[その他の成分]
本発明の技術的効果を損なわない範囲において、上記の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、上記成分以外の成分を含むことができる。例えば、硬化遅延剤;ポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、またはチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系またはベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、またはアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;酸化鉄等の耐熱剤;染料;顔料;熱伝導性フィラー;誘電性フィラー;電気伝導性フィラー;離型性成分;チクソ性付与剤;防カビ剤などを含むことができる。
【0077】
熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、所望により、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物に熱伝導性または電気伝導性を付与する成分であり、金、銀、ニッケル、銅等の金属微粉末;窒化ホウ素、セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属化合物、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。特に好適には、銀粉末、アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、またはグラファイトである。また、本組成物に、電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末であることが好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、窒化ホウ素粉末、または窒化アルミニウム粉末であることが好ましい。また、これらの熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、減圧下、100~200℃の温度で、前記の(B)成分等と加熱混合することが好ましい。特に、(B)成分がアルコキシシリル含有基を有するシロキサンである場合、熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーの表面処理により、高充填しても低粘度で取扱作業性に優れる組成物を得られる場合がある。
【0078】
このような熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーの平均粒子径としては、メジアン径で0.1~100μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.1~50μmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
また、当該液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶剤;α,ω-トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、α,ω-トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン等の非架橋性のジオルガノポリシロキサンを、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有してもよい。
【0080】
本発明の技術的効果を損なわない範囲において、上記の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応触媒または光重合開始剤を含有してもよい。これらの硬化剤はカプセル化されていてもよく、高温融解性のワックス壁剤等でカプセル化されたヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。また、紫外線等の高エネルギー線照射によりヒドロシリル化反応を促進する光活性型白金錯体硬化触媒等のヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。ただし、室温で保管可能な1液型製品を設計する見地からは、ヒドロシリル化反応触媒を含有しないか、カプセル化等により、少なくとも室温下で不活性化されていることが好ましい。
【0081】
[組成物の製造方法]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、前記の硬化反応性オルガノポリシロキサン、2種類の異なる硬化触媒、本発明に係る接着促進剤、架橋性シランおよびその他の任意成分を、湿気遮断下で均一に混合することにより、製造することができる。オルガノポリシロキサン組成物の各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機質充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、およびヘンシェルミキサー等が例示される。
【0082】
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、多成分型(例えば、2液型)の組成物とすることもできるが、後述する一次硬化物の形成の見地から、1液型の液状硬化性シリコーン接着剤組成物として使用し、使用前は大気中の湿気や水分を遮断できる気密性の高いパッケージまたは容器(例えば、アルミ箔等の防湿層を備えたカートリッジ等)に充填された形態で保存されていることが好ましい。容器への充填方法は従来公知の方法を特に制限なく使用できる。特に、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、湿気を遮断したパッケージまたは容器においては、室温でいずれの硬化反応が抑制されており、安定かつ長期間製品を保管できる1液型の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を提供可能な点で実益がある。
【0083】
[用途]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、上記の組成上の特徴および、所望により湿気の存在下で60℃以下、好適には室温(25℃)~50℃の範囲で硬化して一次硬化物を形成可能であり、かつ、液状組成物または前記の一次硬化物を、過酸化物硬化反応が促進される高温、具体的には90℃以上、好適には100℃以上の高温で加熱することにより高温硬化物(接着層)を形成することから、電子部品の製造に用いる接着剤、封止剤または保護剤として好適に使用することができる。特に、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、上記のような硬化挙動を示し、湿気硬化時に室温~低温域では表面タックがなく、比較的柔軟な非流動体(一次硬化物)を形成する一方、90℃以上、好適には100℃以上の高温下では、液状または当該一次硬化物から比較的硬質でゴム弾性の高い高温硬化物を形成することから、液状硬化性シリコーン接着剤組成物を直接電子部品または電子機器用途の部材の接着等に用いるだけでなく、液状硬化性シリコーン接着剤組成物の一次硬化物を電子機器用途の部材の一部に予め配置して流通させ、一次硬化物を配置した場所とは異なる場所で当該一次硬化物上に他の部材を配置して高温で接着させる等の製造プロセスに、容易に対応することができる。その際、当該一次硬化物は、表面タックがなく、比較的柔軟な非流動体(一次硬化物)であって、低温ではそれ以上硬化が進行しないことから、基材や電子機器用途の部材に配置した状態で輸送が容易であり、かつ、意図しない場面での接着や硬化不良の問題を起こしにくく、安定かつ平坦で、応力緩和性に優れるという利点を有する。また、一次硬化時点では接着力が弱く、柔軟性に富むことから、基材や電子機器部材の仮止めや仮配置にも適する。
【0084】
[高温硬化性の一次硬化物]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、湿気の存在下、60℃以下、好適には50℃以下、より好適には室温(25℃)~50℃の温度範囲において加水分解反応を伴う縮合反応(特に脱水縮合、脱オキシム縮合または脱アルコール縮合)を主とする硬化反応により、一次硬化物を形成する。当該一次硬化物は90℃以上、好適には100℃以上の高温下で、硬化物中に残存するラジカル反応性官能基および有機過酸化物により高温での二次硬化性を有するが、当該反応は室温下では実質的に進行しないため、表面タックがなく、比較的柔軟な非流動体の形態を保つという特徴を有する。なお、一次硬化に必要とする条件は、温度および湿度に依存するが、25℃-RH(相対湿度)50%程度の場合、12時間から48時間の範囲が一般的である。なお、湿気の存在下で一次硬化物は徐々に深部硬化が継続する場合があるが、少なくとも非流動体の形態を形成していれば、一次硬化物として取り扱うことが可能である。
【0085】
当該一次硬化物は、単独で用いてもよいが、基材または電子機器用部材上で本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を室温等で一次硬化させることにより、これらの基材または電子機器用部材上に一次硬化物を配置した形態で用いてもよく、かつ、好ましい。
【0086】
当該一次硬化物を形成する基材は、特に限定されるものではなく、所望の基材を適宜選択してよい。例えば、ガラス、陶磁器、モルタル、コンクリート、木、アルミニウム、銅、黄銅、亜鉛、銀、ステンレススチール、鉄、トタン、ブリキ、ニッケルメッキ表面、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などからなる被着体または基体が例示される。また、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(特にポリブチレンテレフタレート樹脂を含む)、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂からなる被着体または基体が例示される。これらは剛直な板状であっても、柔軟なシート状であってもよい。
【0087】
一方、上記の一次硬化物を電子部品の製造に用いる場合、基材はガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、セラミック等の基材上に、銀、銅、アルミニウム、または金等の金属電極;ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化膜電極が形成された電気回路または電極等を含む電子機器が例示される。
【0088】
特に、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または上記の一次硬化物は、90℃以上、好適には100℃以上の高温下で、各種基材に対する強固な接着層(硬化層)を形成するため、基材と電子機器用部材を強固に接着できる利点を有する。また、上記の一次硬化物は、表面タックがなく、柔軟であるので、所望により、引き剥がしてリワークしたり、基材又は電子機器用部材上の配置を適宜変更したりすることができる点で、工業生産上の歩留まりの向上に資する場合がある。
【0089】
上記の一次硬化物は、表面タックがないので、輸送中の汚染や汚損を防止する目的でその表面の一部または全部(基材又は電子機器用部材を含む全体であってもよい)が離型層を備えたシート状部材によって被覆されていても、使用時には容易に剥離することができる。
【0090】
離型層を備えたシート状基材は、実質的に平坦であり、テープ、フィルム等の用途に応じて適度な幅と厚みを持った基材を特に制限なく使用することができるが、具体的には、紙,合成樹脂フィルム,布,合成繊維,金属箔(アルミニウム箔、銅箔など),ガラス繊維およびこれらのうちの複数のシート状基材を積層してなる複合型のシート状基材が挙げられる。特に、合成樹脂フィルムであることが好ましく、その厚さは特に制限されないが、通常5~300μm程度である。
【0091】
離型層を形成させるために用いる剥離剤としては、例えばオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが用いられる。
【0092】
基材又は電子機器用部材上に当該一次硬化物が配置された部材、前記部材であって当該一次硬化物の一部または全部が離型層を備えたシート状部材によって被覆されたものは、電子部品、電子機器またはその前駆体として好適に用いることができ、特に、長距離輸送に適する。
【0093】
[高温硬化]
加熱により、液状硬化性シリコーン接着剤組成物または上記の一次硬化物を硬化させる場合、90℃以上、好適には100℃以上の温度、より好ましくは120℃を超える温度、必要に応じて150℃以上での加熱による硬化反応により、全体を硬化させる工程を少なくとも含むことが好ましい。特に、有機過酸化物およびラジカル反応性基による硬化反応であることから、90℃~200℃、100℃~180℃または100~150℃の範囲が好適に選択される。本発明においては、高温硬化反応(過酸化物硬化反応)が主たる硬化反応であり、たとえば、ヒドロシリル化反応等と比較して、ヒドロシリル化反応に用いる白金触媒等に対して被毒、硬化阻害の原因となる成分の影響を受けにくく、組成物の硬化不良の問題を抑制して、良好かつ安定した硬化反応を実現できる利点がある。
【0094】
上記の高温硬化に伴い、液状硬化性シリコーン接着剤組成物または上記の一次硬化物は、各種基材に対する良好な接着性を有し、硬質かつゴム弾性に優れた接着層(硬化層)を形成する。これにより、基材又は電子機器用部材上に配置された部材は強固に接着され、電子部品または電子機器として利用することができる。
【0095】
[硬化系の併用]
上記の一次硬化乃至高温硬化においては、各々、湿気の存在下での60℃以下、好適には室温~50℃での縮合硬化反応、90℃以上、好適には100℃以上の加熱により高温硬化反応(過酸化物硬化反応)が主となることは前記のとおりであるが、本発明の技術的効果を妨げない範囲において、所望により、高エネルギー線照射による光硬化反応やヒドロシリル化反応などを併用してもよい。
【0096】
[接着剤としての使用]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、湿気を遮断したパッケージまたは容器中で、一液型製品を室温で長期間保管可能であり、かつ、当該組成物または上記の一次硬化物は、接触乃至配置した他の部材に対して、特に高温硬化時に半永久的な接着性を有する硬化物を形成することが可能である。このとき、接着対象である他の部材と、当該高温硬化により得られる接着層の接着モードは、接着破壊時の破壊モードが凝集モードとなる接着状態が可能であり、半永久的な接着剤として使用することができる。したがって、本発明の本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または上記の一次硬化物は、電子部品の製造に用いる接着剤として有用である。
【0097】
[保護材等としての使用]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、湿気を遮断したパッケージまたは容器中で、一液型製品を室温で長期間保管可能であり、かつ、当該組成物または上記の一次硬化物は、特に高温硬化により強固な接着層(硬化物)を形成することにより、各種部材の保護剤として利用可能である。また、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または上記の一次硬化物は、シーリング材、ポッティング材、シール材としても用いることができ、封止材としての利用にも適する。このような用途は、建築用部材や、電気・電子部品や車両用部品などを含むものであるが、電気・電子機器の周辺部品や車載用部品ケース、端子箱、照明部品、太陽電池用モジュールのような金属および/または樹脂からなる構造体の製造に用いることができる。例えば、輸送機中のエンジン制御やパワー・トレーン系、エアコン制御などのパワー半導体用途の回路基板およびその収納ケースに適用した場合にも、初期接着性および接着耐久性に優れるものである。電子制御ユニット(ECU)など車載電子部品に組み込まれて過酷な環境下で使用された場合にも、優れた初期接着性を実現し、これらのパワー半導体や車載用部品等の信頼性および耐久性を改善できる利点がある。
【0098】
[電子部品の製造用途]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物の一次硬化物は、特に、電子部品の製造に有用であり、各種基材上に当該一次硬化物を形成して、安定かつ平坦で、応力緩和性に優れた電子部品の配置面を形成することにより、輸送時、電子部品の製造時における基材の表面凹凸や電子部品の位置ずれ、振動変位(ダンピング)に伴う電子部品の加工不良が発生しにくいという利益を実現しうる。また、当該一次硬化物は表面タックがないので、電子部品を当該硬化物から容易に剥離することができ、かつ、残留物(糊残り)に由来する不良品が発生しにくいという利点を有する。
【0099】
[電子機器用部材の製造方法]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物は、保存安定性および取扱作業性に優れ、かつ、当該組成物または上記の一次硬化物は、電子機器用部材の製造に好適に用いることができ、上記の基材と電子機器用部材を強固に接着しうる。
【0100】
具体的には、このような製造方法は、以下の工程を有する電子機器用部材の接着方法を含む。
工程(I):本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または前記の高温硬化性の一次硬化物を基材と電子機器用部材に配置する工程、および
工程(II):工程(I)で配置した液状硬化性シリコーン接着剤組成物または一次硬化物を100℃以上に加熱する工程
【0101】
このような製造方法は、高温硬化性の一次硬化物を形成させる工程を含むことが好適であり、詳細には、以下の工程を有する電子機器用部材の接着方法を含む。
工程(I’):基材上に本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物を塗布する工程、
工程(II’):工程(I’)の塗布層を湿気の存在下、60℃以下、好適には室温~50℃の温度範囲において一次硬化させる工程、
工程(III’):工程(II’)の一次硬化物上に電子機器用部材を配置し、90℃以上、好適には100℃以上に加熱する工程。
【0102】
[電子部品、電子機器またはその前駆体]
ここで、上記工程は同一の場所・地域・国内において行われる必要は必ずしもなく、例えば、上記の工程(II’)により得られた高温硬化性の一次硬化物を備える基材を、任意で汚染・破損防止のための被覆を行った上で他の製造場所に輸送(国外からの輸入または外国へ輸出を含む)し、その場所で工程(III’)を行ってもよい。すなわち、高温硬化性の一次硬化物を備える基材は、電子部品、電子機器またはその前駆体として好適に使用可能であり、かつ有用である。また、前記のとおり、そのような一次硬化物は、一部または全部が、離型層を備えたシート状部材により被覆されていることが特に好ましい。
【0103】
[その他任意の加工]
本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または前記の高温硬化性の一次硬化物を用いて接着される電子部品は、少なくとも部分的に電子回路または電極パターン、絶縁膜等の構成を有した状態で配置ないし接着されてもよく、接着のために配置ないし接着された後にこれらの電子回路、電極パターン、絶縁膜等を形成するものであっても良い。電極パターン等の形成の際には、従来公知の手段を特に制限なく用いることができ、真空蒸着法、スパッタ法、電気めっき法、化学めっき法、エッチング法、印刷工法またはリフトオフ法に形成されていてもよい。さらに、本発明の液状硬化性シリコーン接着剤組成物または前記の高温硬化性の一次硬化物を用いて接着された電子部品は、電子回路、電極パターン、絶縁膜等を形成した上で、任意で当該積層体を個片化(ダイシング)してもよい。
【実施例】
【0104】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。以下に示す実施例では下記の化合物ないし組成物を原料に用いた。
【0105】
成分(A):
A-1:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン (粘度 40,000mPa・s,Vi含有量 0.08質量%)
A-2:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン (粘度 10,000mPa・s,Vi含有量 0.12質量%)
A-3:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン (粘度 2,000mPa・s,Vi含有量 0.23質量%)
A-4:(CH2=CH(CH3)2SiO0.5)4((CH3)3SiO0.5)40(SiO2.0)56 で示されるシロキサンレジン(Vi含有量0.68質量%、重量平均分子量20,000)
【0106】
成分(B):
【化18】
B-1:分子鎖の両末端に上記構造式で表されるアルコキシシリル含有基を有するジメチルポリシロキサン(粘度40,000mPa・s)
B-2:分子鎖の両末端に上記構造式で表されるアルコキシシリル含有基を有するジメチルポリシロキサン(粘度10,000mPa・s)
B-3:分子鎖の両末端に上記構造式で表されるアルコキシシリル含有基を有するジメチルポリシロキサン(粘度2,000mPa・s)
B-4:分子鎖の両末端にトリメトキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン(粘度2,000mPa・s)
B-5:分子鎖の両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサン(粘度4,000mPa・s)
B-6:分子鎖の両末端の水酸基を有するジメチルポリシロキサン(粘度17,000mPa・s)
Y:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(粘度8,000mPa・s,Vi含有量 0.29質量%)のビニル基の50モル%を上式のアルコキシ基含有官能基で置換したシロキサン
【0107】
成分(C):
C-1:ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン
C-2:ジメチルスズ ジ-ネオデシルエステル
成分(D):
D-1: ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド
(日油株式会社製有機過酸化物 ナイパーPMB 10時間半減期温度 70.6℃)
D-2:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート
(化薬アクゾ社製の有機過酸化物 トリゴノックス117 10時間半減期温度98℃)
成分(E):
E-1:下式で示されるシラトラン誘導体(アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとの環化縮合反応物)
E-2:粘度30mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの質量比1:1の縮合反応物
E-3:トリアリルイソシアヌレート
E-4:メタクロキシプロピルトリメトキシシラン
E-5:エチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン
【0108】
成分(F):
F-1:メチルトリメトキシシラン
F-2:ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン
成分(G): 表面疎水化処理された比表面積150m2/gの煙霧シリカ
【0109】
<組成物の調整方法、評価方法>
下記表に示される組成物を作製した。具体的には、上記の(A)、(B)、(G)成分を予め混合させ、その後、(D)、(E)、(F)成分を添加して十分に攪拌した後、湿気を遮断した密閉条件下で(C)を加えて減圧撹拌し、そのまま湿気を遮蔽する密閉容器に入れた。これらの組成物は、当該密閉容器内で室温において安定に保管可能である。
【0110】
ステップ硬化型1液シリコーン接着剤組成物の粘度、1次硬化後の貯蔵弾性率、表面タック、2次硬化後の貯蔵弾性率、2次硬化後の接着強度(MPa)および破壊モードを以下の方法で評価し、その結果を各表に示した。
【0111】
[初期粘度]
組成物の硬化前の25℃における初期粘度(Pa・s)を、アントンパール社製レオメーター(MCR102)を用いて、シェアレート1.0(1/s)の条件で測定した。
[一次硬化物の表面タック]
組成物をテフロン(登録商標)シート上に厚さが約3mmになるように塗布して、25℃/50%RHの環境下で24時間養生し、一次硬化物の試験体を得た。得られた試験体の表面タックの有無を、JIS K 6249「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法記載の方法」に規定の方法に準じて表面指触により評価した。
[硬化物の貯蔵弾性率 (25℃/100℃)]
上記表面タックと同様の方法で、湿気の存在下、室温硬化させることにより厚さが約3mmのシート状の一次硬化物の試験体を作製し、25℃における貯蔵弾性率(G’1)を、アントンパール社製レオメーター(MCR102)を用いて測定した。なお、周波数は1Hzとした。
同様に、当該一次硬化物の試験体を、100℃で60分間加熱することで硬化させた二次硬化物の試験体を作製し、25℃における貯蔵弾性率(G’2)を、アントンパール社製レオメーター(MCR102)を用いて測定した。なお、周波数は1Hzとした。
ここで、各組成物を一次硬化させることなく、100℃で60分間加熱して硬化させた場合も、同様な貯蔵弾性率(G’2)となることを確認した。
また、貯蔵弾性率の増加率(%)は上記の方法で測定した室温(25℃)における硬化物の貯蔵弾性率(G’1)、100℃の加熱硬化により硬化させた硬化物の貯蔵弾性率(G’2)について、
Δ:貯蔵弾性率の増加率 =(G’2-G’1)/G’1×100 (%)
として計算し、結果を各表中に示した。
[接着性]
被着体として、アルマイト板、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂板をそれぞれ用意し、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を厚さ1mmとなるように塗布し、25℃/50%RHの環境下で24時間養生した。さらにアルマイト板、PBT樹脂板それぞれ被せて各組成物の一次硬化物を挟み込み、100℃で60分間加熱することで硬化させた。
得られた接着試験体の引張りせん断接着強さをJIS K 6850:1999「接着剤-剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法」に規定の方法に準じて測定し記録した。引張り速度は50mm/minとした。なお、表1の接着強度の単位はすべてMPaである。
また、破断後の接着剤の破壊状態を観察し、凝集破壊の場合に○、界面剥離の場合に×として記した。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
実施例1~10に示すとおり、本発明にかかる各組成物は、湿気の存在下、室温(25℃)で硬化させてなる一次硬化物は表面タックが殆どなく、かつ、100℃における二次硬化が可能である。さらに、これらの組成物は、室温(25℃)で硬化させた一次硬化物と100℃で硬化させた二次硬化物を対比した場合、その貯蔵弾性率の増加率が50%以上であり、高温下で、硬化物のドラスティックな物性変化を伴う二次硬化反応が進行するものであり、かつ、組成を調整することで実施例6(160%)~実施例8(8520%)まで広い範囲で一次/二次硬化物の貯蔵弾性率の変化を設計可能である。これに加えて、本発明にかかる各組成物は、いずれも、高温下での二次硬化反応後において、被着体と強固な接着を形成可能であることが分かった。
【0116】
一方、本発明の構成成分(B)または(C)を欠いた比較例1、2においては一次硬化物の表面タックがあり、本発明の目的である使用には適さないものであった。また、成分(D)を欠いた比較例3にあっては、二次硬化性が実現できず、被着体と十分な接着強度を実現できなかった。同様に、成分(E)を欠いた比較例4にあっては、被着体と十分な接着強度を実現できないものであった。