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特許7150717ポリフェニレンスルフィド(PPS)およびポリアミド6(PA6)を含有する充填組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ポリフェニレンスルフィド(PPS)およびポリアミド6(PA6)を含有する充填組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20221003BHJP
   C08L 77/02 20060101ALI20221003BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20221003BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221003BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L77/02
C08L23/26
C08K3/013
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019528881
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017081109
(87)【国際公開番号】W WO2018100127
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】62/429,208
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17154022.2
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】レオ, ヴィート
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-325612(JP,A)
【文献】特表2016-525171(JP,A)
【文献】特開平04-013764(JP,A)
【文献】特開平03-200870(JP,A)
【文献】特開平06-184401(JP,A)
【文献】特表2000-508720(JP,A)
【文献】特開2001-329171(JP,A)
【文献】特表2019-536878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/00-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ポリフェニレンスルフィド(PPS)と、
-少なくとも3重量%のポリアミド6(PA6)と、
-25~60重量%の補強剤と、
-3~8重量%の官能化非芳香族系エラストマーと、を含み、
PPS/PA6の重量比は少なくとも4であり、
重量%は組成物の全重量に基づき、
前記PA6は、少なくとも50モル%の式(N):
-NH-(CH -CO-
の繰り返し単位(R PA6 )を含み、
式中、モル%は前記PA6中の合計モル数に基づく、ポリマー組成物。
【請求項2】
5~8重量%の前記官能化非芳香族系エラストマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記PPSは、少なくとも50モル%の式(L)の繰り返し単位(RPPS):
(式中、互いに等しいかもしくは異なるRおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換または非置換アリーレンスルフィド基からなる群から選択され、このうち前記アリーレン基はまた、それらの2つの末端のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合されて、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それにより分岐または架橋ポリマー鎖をもたらす)
を含み、モル%は前記PPS中の合計モル数に基づく、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
35~60重量%のPPSを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
5~12重量%のPA6を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記エラストマーは無水マレイン酸で官能化されている、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記エラストマーは無水マレイン酸でグラフト化されたEPDM(EPDM-g-MAH)である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
PA6/エラストマー重量比は少なくとも1である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
PPS/PA6の重量比は18未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
PPSと、PA6と、補強剤と、官能化非芳香族系エラストマーと、任意選択的に任意の他の成分または添加剤と、を溶融ブレンドすることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の製造法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項12】
フィルム、積層体、自動車部品、発動機部品、電気部品、または電子部品である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
ポリマー組成物中の熱老化安定剤としてのポリアミド6(PA6)の使用であって、
前記ポリマー組成物が、
-35~70重量%のポリフェニレンスルフィド(PPS)と、
-25~60重量%の補強剤と、を含むが、
但し、前記組成物は、エラストマーを含まないか、あるいは1重量%を超えない量でエラストマーを含むことを条件とし、
重量%は前記組成物の全重量に基づき、
前記PA6は、少なくとも50モル%の式(N):
-NH-(CH -CO-
の繰り返し単位(R PA6 )を含み、
式中、モル%は前記PA6中の合計モル数に基づく、PA6の使用。
【請求項14】
前記組成物中において、前記組成物の全重量を基準にして5~15重量%の範囲の量である、請求項13に記載のPA6の使用。
【請求項15】
PPS/PA6の重量比は少なくとも4である、請求項13又は14に記載のPA6の使用。
【請求項16】
PPS/PA6の重量比は18未満である、請求項13~15のいずれか一項に記載のPA6の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月2日出願の米国特許出願第62/429,208号および2017年1月31日出願の欧州特許出願第17154022号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド6(PA6)、補強剤、および官能化非芳香族系エラストマーを含み、PPS/PA6の重量比が少なくとも4であるポリマー組成物に関する。本発明は、ポリマー組成物を組み込んだ物品にも関する。これらの物品は、作製後に良好な機械的特性を示すだけではなく、高温に長期間曝露した後でこれらの機械的特性の実質的な保持(即ち、長期間の高温安定性)を示す。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、例えばエンジン部品および電子部品としての自動車、電気、および電子産業用物品を製造するために広く用いられている。長期間の高温に供されると、これらの物品は、作製後の良好な機械的特性を示す必要があるだけではなく、経時的にこれらの特性の十分な割合を保持する必要がある。したがって、これらの技術分野で用いられるポリマー組成物は、特に耐衝撃性、引張強度、および熱老化安定性が挙げられる技術的特性の複雑なセットを示す必要がある。
【0004】
本出願人は、特定の量および比で組成物に添加されると、自動車、電気、および電子産業用途のための上記の技術的要件の全てを解決する、ポリマー成分および非ポリマー成分を含有するポリマー組成物を特定した。このポリマー組成物は、少なくとも4つの成分、すなわちポリフェニレンスルフィド(PPS)、少なくとも3重量%のポリアミド6(PA6)、25~60重量%の補強剤、および3~8重量%の特定エラストマーの組み合わせを含み、PPS/PA6の重量比は少なくとも4である。
【0005】
いくつかの先行技術文献が、ポリアリーレンスルフィド(PAS)とポリアミド(PA)とのブレンドを含むポリマー組成物に関する。
【0006】
そのうちの1つである欧州特許出願公開第0443729A2号明細書は、(a)ポリアリーレンスルフィドと、(b)ポリアミドと、(c)好ましくはスチレン系であり、10~50重量%の範囲の量の不飽和カルボン酸変性水添共役ジエン/モノビニル芳香族ブロックコポリマーと、を含む熱可塑性組成物に関する。
【0007】
欧州特許出願公開第0473038A1号明細書は、(1)ポリアリーレンスルフィド樹脂とポリアミド樹脂とのブレンドから本質的になる樹脂マトリックスと、(2)ポリオレフィンエラストマーと少なくとも1つの不飽和カルボン酸無水物との組み合わせから得られる、衝撃強度向上量の衝撃強度向上剤と、を含む組成物に関する。
【0008】
特開2001-329171A2号公報は、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂の混合物を含むポリマー材料であって、ポリマーの1~30重量%はゴムもしくはその誘導体、不飽和カルボン酸または無水物で変性され、ポリマーは0.5~5重量%のエポキシ樹脂(特にフェノール系エポキシ樹脂)と混合される、ポリマー材料に関する。
【0009】
米国特許第8,076,423号明細書は、約99~約60重量%のポリフェニレンスルフィド樹脂(a)と、約1~約40重量%のポリアミド樹脂(b)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(a)およびポリアミド樹脂(b)の合計100重量部あたり約0.1~約10重量部の相溶化剤(c)と、を溶融混練することを含むポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法を説明している。
【0010】
中国特許出願公開第102876040A号明細書は、10~40重量部のポリフェニレンスルフィドと、10~40重量部のポリアミドと、5~25重量部の炭素繊維と、10~50重量部のフィラーと、5~20重量部の相溶化剤(compatilizers)と、0.2~1.5重量部のカップリング剤と、0~1重量部の抗酸化剤と、0~1重量部の光安定剤と、0~1重量部の加工添加剤と、を含む複合材料を開示している。
【0011】
中国特許出願公開第104231607A号明細書は、以下の成分から調製されるポリマーブレンド材料に関する。600~800重量部のナイロン6、200~400重量部のポリフェニレンスルフィド、5~15重量部の界面活性剤、10~100重量部の相溶化剤、10~50重量部の酸化剤、30~200重量部のフィラー。
中国特許出願公開第105062071A号明細書は、以下の成分を含むポリマープラスチックアロイに関する。55~65重量%のPPS樹脂、10~15重量%のPA6樹脂、10~15重量%のガラス短繊維、1~2重量%の表面処理剤、0.5~1重量%の核剤、0.5~1重量%の架橋剤、2~5重量%の強化剤、0.5~1重量%のフィラー、0.5~1重量%のエンハンサー、0.1~0.5重量%の抗老化剤、0.5~1重量%の分散剤、0.5~1重量%の安定化剤、および5~10重量%の難燃剤。
【0012】
Tang W et al.(Journal of Applied Polymer Science,106:2648-2655,2007)の論文は、ポリフェニレンスルフィド/ナイロン66のブレンド(PPS/PA66)に対する相溶化剤としてのスチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレントリブロックコポリマー(SEBS)および無水マレイン酸グラフト化されたSEBS(SEBS-g-MA)の使用について説明している。
【0013】
上記で列挙した文献のいずれも、ポリフェニレンスルフィド(PPS)とポリアミド6(PA6)との特定の重量比、ならびに25~60重量%の補強剤、および3~8重量%の特定エラストマー(すなわち、非芳香族系かつ官能化されている)を含む本発明のポリマー組成物については説明していない。本出願人は、こうした組成物が、成形物品を調製するために使用されると、機械的特性プロファイルおよび熱老化安定性を有利に示し、これが、物品を例えば自動車、電気、または電子産業に適したものにすることを見出した。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、
-ポリフェニレンスルフィド(PPS)と、
-少なくとも3重量%のポリアミド6(PA6)と、
-25~60重量%の補強剤と、
-3~8重量%の官能化非芳香族系エラストマーと、を含むポリマー組成物(C)に関し、
PPS/PA6の重量比は少なくとも4であり、
重量%は組成物の全重量に基づく。
【0015】
本出願人は、本発明の組成物が、自動車、電気、または電子市場で求められる、上記の技術的制約に対する効果的で費用対効果の大きい解決策、すなわち引張強度、耐衝撃性、および熱老化安定性(例えば200℃で1000時間後)を提供することを見出した。
【0016】
ポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)
ポリマー組成物(C)はポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)を含む。PPSは、本発明によれば、組成物(C)に中により多量に存在するポリマー成分である。
【0017】
本発明によれば、「ポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)」は、その繰り返し単位の少なくとも約50モル%が式(L)の繰り返し単位(RPPS):
(式中、互いに等しいかもしくは異なるRおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換または非置換アリーレンスルフィド基からなる群から選択され、このうちアリーレン基はまた、それらの2つの末端のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合されて、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それにより分岐または架橋ポリマー鎖をもたらす)
である任意のポリマーを意味する(本明細書では、モル%はPPSポリマー中の合計モル数に基づく)。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、PPS中の繰り返し単位中の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%が、式(L)の繰り返し単位(RPPS)である。
【0019】
モル%はPPS中の合計モル数に基づく。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ポリフェニレンスルフィドポリマーは、そのうちの繰り返し単位の少なくとも50モル%が式(L)の繰り返し単位(RPPS)であり、式中、RおよびRは水素原子である、任意のポリマーを意味する。例えば、PPSポリマーは、PPS中の繰り返し単位中の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%が、式(L)の繰り返し単位(RPPS)であり、式中、RおよびRが水素原子であるようなものである。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、繰り返し単位の約100モル%が、式(L)の繰り返し単位(RPPS):
(式中、互いに等しいかもしくは異なるRおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換または非置換アリーレンスルフィド基からなる群から選択され、このうちアリーレン基はまた、それらの2つの末端のそれぞれによって2つの硫黄原子に結合されて、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それにより分岐または架橋ポリマー鎖をもたらすか、あるいは、
式中、RおよびRは水素原子である)
であるようなものである。
【0022】
この実施形態によれば、PPSポリマーは、本質的に式(L)の繰り返し単位(RPPS)からなる。
【0023】
PPSは、特にSolvay Specialty Polymers USA,LLC.により製造され、商品名Ryton(登録商標)PPSで販売されている。
【0024】
本発明によれば、PPSの重量平均分子量は、30,000~70,000g/モル、例えば、35,000~60,000g/モルであってもよい。重量平均分子量は、ポリスチレン標準物質を用いてASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定され得る。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として少なくとも30重量%のPPSを含む。例えば、ポリマー組成物は、少なくとも35重量%のPPS、少なくとも38重量%のPPS、少なくとも40重量%のPPS、または少なくとも42重量%のPPSを含む。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として60重量%未満のPPSを含む。例えば、ポリマー組成物は、58重量%未満のPPS、55重量%未満のPPS、52重量%未満のPPS、または50重量%未満のPPSを含む。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として30~60重量%のPPSを含む。例えば、ポリマー組成物は、35~55重量%のPPS、38~52重量%のPPS、40~50重量%のPPS、または42~48重量%のPPSを含む。
【0028】
ポリアミド6(PA6)
ポリマー組成物(C)はポリアミド6(PA6)を含む。
【0029】
「ポリアミド6(PA6)」は、そのうちの繰り返し単位の少なくとも約50モル%が、以下の式(N)の繰り返し単位(RPA6)である任意のポリマーを意味する(本明細書では、モル%はPA6ポリマー中の合計モル数に基づく):
-NH-(CH-CO-(N)。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミドPA6は、繰り返し単位(RPA6)の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%が、式(N)のものであるようなものである。
【0031】
本明細書では、モル%はPPS中の合計モル数に基づく。
【0032】
一実施形態によれば、繰り返し単位(RPA6)は、構造NH-(CH-COOHを有するラクタムまたはアミノ酸から得られる。
【0033】
本発明のポリアミドPA6は、繰り返し単位(RPA6)とは異なる繰り返し単位を含み得る。例えば、これは、
-少なくとも1つの二酸[酸(DA)](またはその誘導体)と、
-少なくとも1つのジアミン[アミン(NN)](またはその誘導体)と、の縮合生成物から得られる繰り返し単位(RPA*)を含み得る。
【0034】
この実施形態によれば、二酸[酸(DA)]は、少なくとも2個の酸部分-COOHを含む様々な脂肪族もしくは芳香族成分の中から選択することができ、またこれは特にはヘテロ原子(例えばO、N、またはS)を含むことができる。この実施形態によれば、ジアミン[アミン(NN)]は、少なくとも2個のアミン部分-NHを含む様々な脂肪族もしくは芳香族成分の中から選択することができ、またこれは特にはヘテロ原子(例えばO、N、またはS)を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、繰り返し単位(RPA*)は式(E):
(式中:
-各炭素原子上の各R、R、R、およびRは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、四級アンモニウム、およびこれらの任意の組み合わせから独立して選択され;
-mは、0~10の整数であり;
-nは、6~12の整数である)
によるものである。
【0036】
別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPA*)は、
-少なくとも1つの脂肪族二酸(DAal)またはその誘導体(酸ハロゲン化物、特に塩化物、酸無水物、酸性塩、酸アミド)、および
-少なくとも1つの芳香族ジアミン(NNar)またはその誘導体の縮合から得られる。
【0037】
別の実施形態によれば、繰り返し単位(RPA*)は、
-少なくとも1つの芳香族二酸(DAar)もしくはその誘導体、または
-少なくとも1つの脂肪族ジアミン(NNal)もしくはその誘導体の縮合から得られる。
【0038】
芳香族ジアミン(NNar)の非限定的な例は、特には、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、
3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
(4,4’-ODA)、p-キシリレンジアミン(PXDA)、およびm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0039】
脂肪族二酸(DAal)の非限定的な例は、特には、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH-(CH-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH)-CH-C(CH-CH-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH10-COOH]、およびトリデカン二酸[HOOC-(CH11-COOH]である。
【0040】
脂肪族ジアミン(NNal)の非限定的な例は、特には1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、およびN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。
【0041】
芳香族二酸(DAar)の非限定的な例は、特には、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0042】
本発明によれば、PA6の重量平均分子量は、5,000~50,000g/モル、例えば、10,000~40,000g/モルであってもよい。重量平均分子量は、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定され得る。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として少なくとも3重量%のPA6を含む。例えば、ポリマー組成物は、少なくとも5重量%のPA6、少なくとも5.5重量%のPA6、少なくとも6重量%のPA6、または少なくとも6.5重量%のPA6を含む。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として20重量%未満のPA6を含む。例えば、ポリマー組成物は、15重量%未満のPA6、12重量%未満のPA6、11重量%未満のPA6、または10重量%未満のPA6を含む。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として3~15重量%のPA6を含む。例えば、ポリマー組成物は、5~12重量%のPA6、5.5~11重量%のPA6、6~10重量%のPA6、または6.5~9重量%のPA6を含む。
【0046】
PPS/PA6重量比
ポリマー組成物は、上記で説明されたPPSおよびPA6の両方を、少なくとも約4のPPS/PA6重量比で含む。これは、PPS/PA6重量比が約4と等しくてもよく、または4を超えてもよいことを意味する。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、PPS/PA6重量比は少なくとも約4.5である。これは、PPS/PA6重量比が約4.5と等しくてもよく、または4.5を超えてもよいことを意味する。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、PPS/PA6重量比は少なくとも約5である。これは、PPS/PA6重量比が約5と等しくてもよく、または5を超えてもよいことを意味する。
【0049】
本発明の更に別の実施形態によれば、PPS/PA6重量比は少なくとも約5.5である。これは、PPS/PA6重量比が約5.5と等しくてもよく、または5.5を超えてもよいことを意味する。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、PPS/PA6重量比は約20未満、例えば約18未満、約16未満、または約14未満である。
【0051】
官能化非芳香族系エラストマー
本発明の組成物(C)は3~8重量%の官能化非芳香族系エラストマーを含む。
【0052】
本発明の内容において、「エラストマー」とは、(1)低いガラス転移温度(T)、つまり、25℃未満、0℃未満、または更には-25℃未満のガラス転移温度と、(2)低い弾性係数(ヤング率)、つまり、200MPa未満、または更には100MPa未満の弾性係数と、を示すポリマー材料として定義される。
【0053】
本発明のエラストマーのポリマー主鎖は非芳香族である。分かりやすくするため、主鎖はアリールおよびアリーレン基(または部分)、例えばスチレン基(または部分)を含まない。エラストマーの主鎖は、例えばオレフィン(コ)ポリマーであってもよく、特に、ポリエチレンコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレンおよびそのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレンプロピレンゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエン-モノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム;エチレン-アクリル酸(EAA);エチレン-ビニルアセテート(EVA);または上記のうちの1つもしくは複数の混合物を含むエラストマー主鎖から選択され得る。
【0054】
本発明のエラストマーは、本発明の内容において同様に官能化エラストマー主鎖とも称されるグラフト化ポリマー主鎖である。主鎖の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合から、あるいはポリマー主鎖と更なる成分とのグラフト化から得ることができる。
【0055】
本発明の官能化非芳香族系エラストマーの特定の例は、特には、エチレン、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸グリシジルのターポリマー;エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー;エチレンとアクリル酸ブチルエステルとメタクリル酸グリシジルとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフト化したEPR;無水マレイン酸でグラフト化したEPDM(EPDM-g-MAH);または上記のうちの1つもしくは複数の混合物である。本発明による市販の官能化脂肪族系エラストマーの例は、Exxon MobilからのExxelor(登録商標)ポリマー樹脂(例えばExxelor(登録商標)VA1801)、およびArkemaからのLotader(登録商標)ポリマー樹脂(Lotader(登録商標)8840)である。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、エラストマーの官能化は、無水マレイン酸の官能化によるものである。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、官能化非芳香族系エラストマーは、無水マレイン酸でグラフト化したEPDM(EPDM-g-MAH)である。
【0058】
官能化脂肪族系エラストマーは、組成物(C)の全重量を基準として約3重量%超、3.5重量%超、または4重量%超の合計量で組成物(C)中に存在してもよい。官能化非芳香族系エラストマーは、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として約8重量%未満、7.5重量%未満、7重量%未満、または6.5重量%未満の合計量で組成物(C)中に存在してもよい。
【0059】
本発明によれば、ポリマー組成物(C)は、芳香族系エラストマーを含まないか、あるいはこうしたポリマーを、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として1重量%を超えない、例えば0.5重量%を超えない、または0.1重量%を超えない量で含む。本実施形態に従って、本発明のポリマー組成物から除外されるこうした芳香族系エラストマーの例は、特には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS);ブロックコポリマー(スチレンエチレンブタジエンスチレン)(SEBS);ブロックコポリマー(スチレンブタジエンスチレン)(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、または上記のうちの1つもしくは複数の混合物である。
【0060】
一実施形態によれば、PA6/エラストマー重量比は少なくとも約1に等しい。これは、本実施形態によれば、上記で説明したPA6およびエラストマーは、PA6/エラストマー重量比が約1に等しいか、または1を超えるような量でポリマー組成物(C)中に存在することを意味する。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、PA6/エラストマー重量比は少なくとも約1.2である。これは、重量比が約1.2と等しくてもよく、または1.2を超えてもよいことを意味する。
【0062】
本発明の更に別の実施形態によれば、PA6/エラストマー重量比は少なくとも約1.3である。これは、重量比が約1.3と等しくてもよく、または1.3を超えてもよいことを意味する。
【0063】
補強剤
組成物(C)は、組成物(C)の全重量を基準として25~60重量%の補強剤を更に含む。
【0064】
補強繊維またはフィラーとも称される補強剤は、繊維状かつ粒子状の補強剤から選択され得る。繊維状補強フィラーは、平均長さが幅と厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅および厚さを有する材料であると本明細書ではみなされる。一般に、そのような材料では、長さと、幅および厚さのうちの最大と、の間の平均比として定義されるアスペクト比が、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、または少なくとも50である。
【0065】
補強フィラーは、鉱物フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、およびウォラストナイトから選択されてもよい。
【0066】
繊維状フィラーの中でもガラス繊維が好ましく、これらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter5.2.3,p.43~48に記載されているチョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-、およびR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、フィラーは繊維状フィラーから選択される。高温用途に耐えることができる補強繊維がより好ましい。
【0067】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として、25重量%超、30重量%超、35重量%超、または40重量%超の合計量で組成物(C)の中に存在していてもよい。補強剤は、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満、または50重量%未満の合計量で組成物(C)中に存在してもよい。
【0068】
補強フィラーは、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として、25~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)の中に存在していてもよい。
【0069】
任意の成分
組成物(C)は、例えば、可塑剤、着色剤、顔料(例えばカーボンブラックおよびニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウムもしくはマグネシウム、またはモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、造核剤、および抗酸化剤からなる群から選択される任意の成分を更に含んでもよい。
【0070】
組成物(C)は、1つまたは2つ以上のその他のポリマーを更に含んでもよい。特に、ポリアリールエーテルケトンまたはその他のポリアミド(例えばポリフタルアミド)を挙げることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は芳香族系エポキシポリマーを含まないか、あるいはこうしたポリマーを、ポリマー組成物(C)の全重量を基準として1重量%を超えない、例えば0.5重量%を超えない、または0.1重量%を超えない量で含む。本実施形態に従って、本発明のポリマー組成物から除外されるこうした芳香族系エポキシポリマーの例は、特には、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、テトラブロモビスフェノール-A、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノフェノール、メチレンジアニリン、イソシアヌル酸、または上記のうちの1つもしくは複数の混合物ベースのエポキシ樹脂である。
【0072】
組成物(C)の調製
本発明は更に、上記で詳細に説明したように、組成物(C)の製造方法に関し、上記の方法は、ポリマーと、補強剤と、エラストマーと、任意選択的に任意の他の成分または添加剤と、を溶融ブレンドすることを含む。
【0073】
本発明の文脈では、ポリマー成分および非ポリマー成分を混合するために、任意の溶融ブレンド方法を用いてもよい。例えば、一軸スクリュー押出機もしくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリューもしくは二軸スクリューニーダー、またはバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーに、ポリマー成分および非ポリマー成分を供給してもよく、添加工程は、全ての成分の同時添加であってもバッチ式の段階的添加であってもよい。ポリマー成分および非ポリマー成分がバッチ式に徐々に添加される場合には、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部が最初に添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分および非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を使用して補強された組成物を調製してもよい。
【0074】
物品
本発明は更に、上記の本発明のポリマー組成物(C)を含む物品に関する。
【0075】
物品の例は、フィルム、積層体、自動車部品、発動機部品、電気部品、および電子部品である。
【0076】
本発明によれば、本発明のポリマー組成物(C)から製造された物品は、製作後に良好な機械的特性を示すだけではなく、高温に長期間曝露した後、例えば200℃で500時間または1000時間の曝露後に、これらの機械的特性の相当な保持を示す。
【0077】
物品の長期熱安定性は、試験試料を試験時間にわたり炉内で試験温度に曝露(エアオーブン老化)することによって評価することができる。試験試料は、エアオーブン老化の前後で破断点引張強度および耐衝撃性に関して試験される。得られた値を比較することによって、破断点引張強度および耐衝撃性の保持率が得られるため、様々な組成物の長期熱安定性能力を評価することができる。
【0078】
高温に長期間曝露した後の機械的特性の保持率(%)は、成形された試験試料を、特定の期間(例えば500時間、1000時間、2000時間、または3000時間)特定の温度(例えば200℃)で曝露し、初期値および最終値を測定し、以下の式に従って比較することによって評価することができる。
100(MPf-MPi)/MPi
式中、
-MPfは、高温に長期間曝露した後で測定される機械的特性値であり、
-MPiは、曝露されていない物品で測定される機械的特性値である。
【0079】
例えば、高温に長期間曝露した後の破断点引張強度の保持率(%)は以下の式に従って評価される。
100(TSi-TSf)/TSi
式中、
-TSfは、高温に長期間曝露した後で測定される引張強度値であり、
-TSiは、曝露されていない物品で測定される引張強度値である。
【0080】
別の例として、高温に長期間曝露した後の耐衝撃性の保持率(%)は以下の式に従って評価される。
100(IRi-IRf)/IRi
式中、
-IRfは、高温に長期間曝露した後で測定される耐衝撃性値であり、
-IRiは、曝露されていない物品の耐衝撃性値である。
【0081】
本発明の物品は、例えば、200℃で500時間または1000時間の曝露後に、50%超の破断点引張強度(例えばISO527-2に準じる)を保持することができる。これらは、200℃で500時間または1000時間の曝露後に、60%超、70%超、または更には80%超の破断点引張強度を保持することができる。
【0082】
本発明の物品は、例えば、200℃で500時間または1000時間の曝露後に50%超の耐衝撃性(例えばISO180に準じるISOノッチなしアイゾッド(Unnotched Izod))を保持することができる。これらは、200℃で500時間または1000時間の曝露後に60%超、70%超、または更には80%超の耐衝撃性を保持することができる。
【0083】
本発明は更に、本発明の組成物(C)を成形することにより物品を製造する方法に関する。物品は、例えば、押出し成形法、射出成形法、熱成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、または溶解フィラメント製法(FFF)もしくは選択的レーザ焼結法(SLS)といった付加製造法などの任意の成形技術に従い製造することができる。本発明の物品は、例えば射出成形法によって成形することができる。
【0084】
ポリマー組成物(C)および物品の使用
本発明のポリマー組成物(C)は、熱老化安定性、具体的には200℃の温度に長期間曝露した後で機械的特性の相当な保持を示す物品の製造に用いることができる。この種類の熱曝露は、特に自動車のボンネット下の部品で発生し得る。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は以下の式の物品の製造に用いられる。
100(TSi-TSf)/TSi≧50
式中、
-TSfは、高温(例えば200℃)に長期間曝露(例えば500時間、1000時間、2000時間、または3000時間)した後で測定される引張強度値であり、
-TSiは、曝露されていない物品で測定される引張強度値である。
【0086】
本発明の別の実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は以下の式の物品の製造に用いられる。
100(TSi-TSf)/TSi≧60、
100(TSi-TSf)/TSi≧70、
100(TSi-TSf)/TSi≧80、または
100(TSi-TSf)/TSi≧85。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は以下の式の物品の製造に用いられる。
100(IRi-IRf)/IRi≧50
式中、
-IRfは、高温(例えば200℃)に長期間曝露(例えば500時間、1000時間、2000時間、または3000時間)した後で測定される耐衝撃性値であり、
-IRiは、曝露されていない物品の耐衝撃性値である。
【0088】
本発明の別の実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は以下の式の物品の製造に用いられる。
100(IRi-IRf)/IRi≧60、
100(IRi-IRf)/IRi≧70、
100(IRi-IRf)/IRi≧80、または
100(IRi-IRf)/IRi≧85。
【0089】
したがって、上記で開示される組成物(C)は、組成物(C)から製造された物品の高温下長期熱安定性を向上させるのに有用である。
【0090】
本発明は更に、上記で開示された組成物(C)の高温用途での使用に関する。
【0091】
ポリアミド6(PA6)の使用
本発明は更に、ポリマー組成物中の熱老化安定剤としてのポリアミド6(PA6)の使用に関する。本発明の文脈では、「熱老化安定剤」とは、これを組み込む組成物に、少なくとも200℃の温度に少なくとも500時間曝露した後で、その初期破断点引張強度の少なくとも50%(ISO527-2に準じて測定して)、またはその初期耐衝撃性の少なくとも50%(ISO180に準じて測定して)を保持する能力を付与する成分として定義され得る。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、熱老化安定剤として使用されるポリアミド6(PA6)は、これを組み込む組成物に、少なくとも200℃(または少なくとも210℃もしくは少なくとも220℃)の温度に少なくとも500時間(または少なくとも1000時間もしくは少なくとも2000時間)曝露した後で、初期破断点引張強度の少なくとも60%、または初期破断点引張強度の少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも85%(ISO527-2に準じて測定して)を保持する能力を付与する。
【0093】
本発明の別の実施形態によれば、熱老化安定剤として使用されるポリアミド6(PA6)は、少なくとも200℃(または少なくとも210℃もしくは少なくとも220℃)の温度に少なくとも500時間(または少なくとも1000時間もしくは少なくとも2000時間)曝露した後で、これを組み込む組成物に、破断点耐衝撃性(impact resistance at break)の少なくとも60%、または耐衝撃性の少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも85%(ISO180に準じて測定して)を保持する能力を付与する。
【0094】
本発明のこの態様によれば、ポリアミド6(PA6)は、特にポリマー組成物(C)における組成、構造および含有量の点に関して上記で説明したとおりである。
【0095】
一実施形態によれば、本発明は更に、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を含む、例えば35~60重量%のポリフェニレンスルフィド(PPS)を含む、ポリマー組成物中の熱老化安定剤としてのポリアミド6(PA6)の使用に関する。
【0096】
別の実施形態によれば、本発明は更に、ポリフェニレンスルフィド(PPS)および補強剤を含む、例えば35~60重量%のポリフェニレンスルフィド(PPS)および25~60重量%の補強剤を含む、ポリマー組成物中の熱老化安定剤としてのポリアミド6(PA6)の使用に関する。
【0097】
別の実施形態によれば、本発明は更に、上述したように、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、補強剤(例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)35~60重量%、補強剤25~60重量%)、および官能化非芳香族系エラストマー3~8重量%を含むポリマー組成物中の熱老化安定剤としてのポリアミド6(PA6)の使用に関する。
【0098】
これらの実施形態によれば、PA6は、ポリマー組成物中に少なくとも2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、または5.5のPPS/PA6比で存在することができる。
【0099】
本発明は更に、有効量のポリアミド6(PA6)を添加することを含む、ポリマー組成物の熱老化を安定させるためのプロセスに関する。本発明の文脈では、「熱老化を安定させる」とは、以下を意味する。
-少なくとも200℃(または少なくとも210℃もしくは少なくとも220℃)の温度に少なくとも500時間(または少なくとも1000時間もしくは少なくとも2000時間)曝露した後で、初期破断点引張強度の少なくとも50%(またはISO527-2に準じて測定して、初期破断点引張強度の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも85%)を保持すること、および/または
-少なくとも200℃(または少なくとも210℃もしくは少なくとも220℃)の温度に少なくとも500時間(または少なくとも1000時間もしくは少なくとも2000時間)曝露した後で初期耐衝撃性の少なくとも50%(またはISO180に準じて測定して、初期耐衝撃性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも85%)を保持すること。
【0100】
この実施形態によれば、
-ポリマー組成物はポリフェニレンスルフィド(PPS)を含んで、例えば35~70重量%のポリフェニレンスルフィド(PPS)を含むことができ、および/もしくは
-ポリマー組成物は補強剤、例えば25~60重量%の補強剤を含むことができ、
-ポリマー組成物は官能化非芳香族系エラストマー、例えば3~8重量%の官能化非芳香族系エラストマーを含むことができ、ならびに/または
-PA6は、ポリマー組成物中に少なくとも2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、または5.5のPPS/PA6比で存在することができる。
【0101】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、および刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本明細書の記載が優先するものとする。
【実施例
【0102】
原材料
PPS Ryton(登録商標)QA281N(Solvay)
PA6 AK270(Shaw Industries)
PA66 Stabamid(登録商標)27AE1(Solvay)
ガラス繊維T779H(Nippon)
Lotader(登録商標)AX8840(Arkema)、エチレンとメタクリル酸グリシジル(エポキシ官能化)とのコポリマー
Exxelor(登録商標)VA1801(Exxon Mobil)、無水マレイン酸で官能化されたエチレンコポリマー(EPDM-g-MAH)
Kraton(登録商標)FG-1901(Kraton)、無水マレイン酸で官能化されたスチレンおよびエチレン/ブチレンベースのトリブロックコポリマー(SEBS-g-MAH)
Irganox(登録商標)1010(BASF)、抗酸化剤
HDPE(High Density Polyethylene)6007G(Chevron Phillips)、潤滑剤
【0103】
コンパウンディング
ガラス繊維の組み込みを伴うコンパウンディングを、Coperion ZSK-26R&D二軸スクリュー押出機(26mm押出機)上で実施した。ニートPPS樹脂をバレル1に供給した。ガラス繊維をバレル7に供給した。任意成分が存在する場合は、場合によりバレル1に供給する前に予混合して、これもバレル1に含めた。
【0104】
バレル条件は、310℃~340℃の溶融温度を達成するように指定された。スクリュー速度は200RPMに設定された。供給速度は、それぞれの処方物の望ましい組成に従って設定した。
【0105】
溶融したストランドを水浴中で冷却して結晶化させてから、更なる処理のためにペレット化した。
【0106】
成形
全ての化合物をISO IA号引張試験片へと成形した。
【0107】
試験
引張特性を、ISO 527-2に準じ、ISO IA号引張試験片を用いて試験した。
【0108】
衝撃特性を、室温で、ISOノッチなしアイゾッド(ISO180)を用い、ISO IA号引張試験片を用いて試験した。
【0109】
試験試料を200℃に調節されたエアオーブン中に曝露してから、指定された期間後に取り出し、続いて室温で引張特性および衝撃特性に関して試験することによって熱老化を実施した。
【0110】
組成物中の成分、およびこれらの対応する量(本発明による、または比較実施例の)、ならびにこれらの機械的特性を以下の表に報告する。
【0111】
実施例1
【0112】
実施例1は、引張強度および耐衝撃性の良好な折り合いをもたらし、これは、エラストマーLotader(登録商標)AX8840の濃度が3重量%未満または8%超である場合は達成され得ない。
【0113】
実施例2
【0114】
実施例2は、PPS/PA6重量比が4超である場合は(実施例2および3)、より良好な耐衝撃性および破断点引張応力が得られることを実証する。PPS/PA6の重量比が4未満である場合は(実施例C3およびC4)、耐衝撃性および破断点引張応力はより低い値を有する。
【0115】
実施例3
【0116】
興味深いことに、最高の耐衝撃性および引張強度を提供する組成物は、ガラス繊維の濃度が25重量%超のものである。
【0117】
実施例4
【0118】
驚くべきことに、エラストマー(Lotader(登録商標)AX8840またはExxelor(登録商標)VA1801)とPA6との組み合わせが、エラストマーとPA66との組み合わせと比較して、耐衝撃性および破断点引張強度の点でより良好な結果を提供する。
【0119】
実施例5
【0120】
芳香族含有エラストマー(Kraton(登録商標)FG-1901)は、PPSガラス充填化合物に良好な耐衝撃性を提供しない(実施例C8)。更にこの配合物にPA6を添加しても(実施例C9)耐衝撃性は向上されない。この実施例は、芳香族含有エラストマーは、PPSガラス充填化合物との組み合わせに、またはPA6を更に添加した場合に適さないことを実証する。
【0121】
実施例6
【0122】
驚くべきことに、PA6をPPS/エラストマー/ガラス繊維含有組成物に添加すると、長期高温耐性の予想外の向上が示される。