(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】電気エンクロージャの環境封止の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20221003BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H05K5/02 L
G06F1/16 312L
(21)【出願番号】P 2019530687
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 US2017064410
(87)【国際公開番号】W WO2018136158
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-09-04
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515151756
【氏名又は名称】ヤスカワ アメリカ インコーポレイティッド
【氏名又は名称原語表記】Yaskawa America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッデイ,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,クリスチャン・エム
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-89530(JP,A)
【文献】登録実用新案第3007723(JP,U)
【文献】特表2015-533924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境汚染に対して電気エンクロージャを封止する方法であって、
電気制御デバイスを収容するための内部空間を有し、多くの部品で製造され、穴、継手、ギャップ、継ぎ
目および締め具のうちの少なくとも一つ以上を有するキャビネットであって、キャビネットの使用に際し、内部空間、および、内部空間に収容された電気制御デバイス、へのアクセスを提供する開口部であり閉鎖体によって選択的に閉じられる当該開口部を有する、
当該キャビネットを提供することと、
閉鎖体が取り外されて、厚膜エラストマーコーティングをキャビネットに適用することであって、コーティングは、少なくとも0.6mmの厚さを有し、侵入保護のために穴、継手、ギャップ、継ぎ
目および締め具のすべての上に、モノリシックな架橋層を提供して、環境汚染がエンクロージャに浸透するのを防止する、ことと
を含む、封止する方法。
【請求項2】
コーティングが塵および液体の侵入を防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティングが100パーセントの固形で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コーティングが、昇温を介し、樹脂および触媒を備える二成分系で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コーティングが、ポリウレタン系、ポリアスパラギン係、またはポリ尿素系のエラストマー材料から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コーティングの厚さが少なくとも0.6mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
穴、継手、ギャップ、または継ぎ目をバックマスキングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コーティングが国際保護等級のIP56に準拠する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ3に準拠する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ6に準拠する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ13に準拠する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コーティングが国際保護等級のIP67に準拠する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
コーティングを適用する前に
、開口部をマスキングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
環境汚染に対して封止された電気エンクロージャであって、
開口部を通してアクセスできる内部空間、および開口部を選択的に閉じるドアまたはカバーを有し、多くの部品で製造され、穴、継手、ギャップ、継ぎ
目および締め具のうちの少なくとも一つ以上を有する、エンクロージャのキャビネットと、
キャビネットの中に取り付けられ
、ドアまたはカバーが開いた位置にあることに付随して開口部を通してアクセス可能な電気制御デバイスと、
キャビネットの外表面上の厚膜エラストマーコーティングであって、
少なくとも0.6mmの厚さを有し、穴、継手、ギャップ、継ぎ
目および締め具のすべての上に、モノリシックな架橋層を提供して、環境汚染がキャビネットに浸透するのを防止する、厚膜エラストマーコーティングと
を備える、電気エンクロージャ。
【請求項15】
コーティングが塵および液体の侵入を防止する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項16】
コーティングが100パーセントの固形で形成される、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項17】
コーティングが、樹脂および触媒を備える二成分系を備える、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項18】
コーティングが、ポリウレタン系、ポリアスパラギン系、またはポリ尿素系のエラストマー材料から構成される、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項19】
コーティングの厚さが少なくとも0.6mmである、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項20】
コーティングが国際保護等級のIP56に準拠する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項21】
コーティングが国際保護等級のIP67に準拠する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項22】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ3に準拠する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項23】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ6に準拠する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項24】
コーティングが保険業者研究所等級のタイプ13に準拠する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項25】
ドアまたはカバーが厚膜エラストマーコーティングを含み、コーティングは、少なくとも0.6mmの厚さを有し、ドアまたはカバーの、穴、継手、ギャップ、継ぎ
目および締め具のすべての上に、モノリシックな架橋層を提供して、環境汚染がエンクロージャに浸透するのを防止する、請求項14に記載の電気エンクロージャ。
【請求項26】
ドアまたはカバーと、キャビネットとの間に封止を提供するガスケットをさらに備える、請求項25に記載の電気エンクロージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は電気エンクロージャに関し、より詳細には、異物の侵入を防止するための、電気エンクロージャの環境封止に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エンクロージャは、電気制御デバイスを収容するために、多くの知られている形態をとる。電気エンクロージャは、このような電気デバイスを取り付け、使用者から分離し、かつ環境から保護するキャビネットである。電気エンクロージャは、電気デバイスを収容するための囲まれた空間を有するキャビネットを形成する金属、または他の材料で一般的に作られる。囲まれた空間は、開口部を通してアクセス可能である。開口部は、ドアまたはカバーによって選択的に閉じられる。エンクロージャは多くの部品から製造され、一般的に穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具を有する。
【0003】
保険業者研究所(Underwriters Laboratory)(UL)、アメリカ電機工業会(「NEMA」)、および国際電気標準会議(「IEC」)は、工業的用途で使用される電気エンクロージャのための様々な標準を規定している。エンクロージャは、環境条件を含む様々な要因に対して保護するために設計されていることを示すため、これらの標準化団体によって等級づけされている。
【0004】
電気エンクロージャは、具体的には異物を囲まれた空間から締め出すことに関する、IECによって確立された国際保護等級すなわちIP等級などの、特定の環境保護レベルで一般的に設計され、封止される。これらのエンクロージャが適切に封止されず、ごみまたは水が、電気が通じている電気構成要素に接触し得る場合に、破局的故障および身体損傷の危険が増加し得る。
【0005】
従来のエンクロージャの設計は、IP56(限定された塵の侵入からの保護、および任意の方向からの水しぶきに対する保護)またはIP67(全ての塵の侵入からの保護、および深さ1mまでの液浸に対する保護)などの、所望の環境保護レベルを実現するために、溶接継手、ガスケット、および/または継ぎ目シーリング材の組み合わせを活用する。
【0006】
溶接は、封止した空間を作り出すための主要な処理であることが多い。溶接されたエンクロージャは、品質の美観を得るために、追加の研削および仕上げ作業を要することが多い。溶接および研削は、ボルト締めおよびリベット締めなどの代替の接合方法と比較すると、労働集約的で、誤りが起こりやすいプロセスである。ボルトもリベットも、それら自体の空隙を封止することができないので、ボルトまたはリベットによる接合よりも溶接が選ばれる。
【0007】
エンクロージャを接合するためにボルトおよび/またはリベットが選択される場合、囲まれた空間を環境保護するために、それらは機械的または化学的シーリング材と共に使用しなければならない。ゴムまたは発泡体のガスケット材料、または液体シーリング材を、空隙の内側もしくは接合パネル間に位置付けて、その領域を封止しなければならない。ガスケットおよび液体シーリング材は、適切な封止を保証するために、制御された様式で圧縮されなければならない。圧縮を制御することは、エンクロージャの材料特性が十分高い剛性を呈さない場合は、しばしば多くの数の締め具を必要とする。
【0008】
これらの従来の設計は、液体エポキシ塗料またはポリエステル粉末コーティングなど、様々な薄膜コーティングを用いてコーティングされることが多い。これらのコーティングの厚さは、一般的に0.25mmを超えない。薄膜コーティングは、耐腐食性、美観、および/または耐摩耗性に対して信頼されていることが多い。これらのコーティングはまた、エンクロージャに電子機器を装着させる前に適用させなければならない。結局、薄膜コーティングは、環境汚染に対してエンクロージャを封止するための、いかなる意義ある手段も提供しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様によると、本明細書では、電気エンクロージャを環境汚染に対して封止する方法であって:電気制御デバイスを収容するために内部空間を有し、多くの部品で製造され、穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具を有するキャビネットを提供することと;厚膜エラストマーコーティングをエンクロージャに適用することであって、コーティングは少なくとも0.6mmの厚さを有し、侵入保護のために穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具の上にモノリシックな架橋層を提供して、環境汚染が電気エンクロージャに浸透するのを防止する、こととを含む方法を開示する。
【0010】
コーティングが塵および液体の侵入を防止することが、特徴である。コーティングは、IP56またはIP67の国際保護等級に準拠し得る。
【0011】
コーティングが100パーセントの固形で形成されることが、別の特徴である。コーティングは、ポリウレタン系、ポリアスパラギン系、またはポリ尿素系のエラストマー材料から構成され得る。
【0012】
コーティングが、昇温を介し、樹脂および触媒を備える二成分系で適用されることが、追加的な特徴である。
【0013】
コーティングの厚さが少なくとも0.6mmであることが、別の特徴である。
【0014】
任意の穴、継手、ギャップ、または継ぎ目を概ね7mmよりも厚いバックマスキングを利用することが、さらなる特徴である。
【0015】
エンクロージャがドアまたはカバーを備えること、および、コーティングを適用する前に、ドアまたはカバーを取り外し、ドアまたはカバーの開口部をマスキングすることをさらに含むことが、さらに別の特徴である。
【0016】
別の態様により、環境汚染に対して封止された電気エンクロージャが開示される。エンクロージャのキャビネットは内部空間を有する。内部空間は、開口部を通してアクセス可能である。ドアまたはカバーは、開口部を選択的に閉じる。キャビネットは多くの部品から製作され、穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具を有する。電気制御デバイスは、キャビネットの中に取り付けられる。厚膜エラストマーコーティングは、キャビネットの外表面にある。コーティングは、少なくとも0.6mmの厚さを有し、穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具の上にモノリシックな架橋層を提供して、環境汚染がエンクロージャに浸透するのを防止する。
【0017】
厚膜コーティングは、環境汚染から電気エンクロージャを封止する手段を提供するために電気エンクロージャに適用されることができる。コーティングはギャップおよび継ぎ目を架橋する能力を有するので、従来の溶接または充填された継手はもはや必要ない。これらの空隙を架橋することは、恒久的に固定された継手にガスケットを適用する必要性も排除する。単純なボルトおよびリベットの設計を、構造強度のために利用することができ、コーティングは、エンクロージャを封止するために完全に信頼されうる。
【0018】
さらなる特徴および利点が、本明細書および図面から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】単純なボルトおよび/またはリベットの設計で構築された、典型的な電気エンクロージャの等角投影図である。
【
図2】電気エンクロージャにおいて典型的な締められた継手構成の、等角投影図であり、その上に厚膜コーティングが適用され得る。
【
図3】ドアの開口部の上および上部通気孔部の上におけるマスキングの使用、および厚膜コーティングの適用を示す、
図1と同様の等角投影図である。
【
図4】厚膜コーティングを適用した、典型的な締められた継手の断面図である。
【
図5】厚膜コーティングを適用した、電気エンクロージャの中への典型的なアクセスポイントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願は、電気エンクロージャの厚膜の環境封止を提供するためのシステムおよび方法に関する。まず
図1を参照すると、例示的な電気エンクロージャ10が示される。電気エンクロージャ10は、単純なボルトおよびリベットの設計で構築される。電気エンクロージャ10は、環境封止を受けることができるエンクロージャの1つの例である。しかし、本出願は、本明細書で示す電気エンクロージャの形態に限定されない。
【0021】
電気エンクロージャ10はキャビネット12を備え、キャビネット12は、ボルトおよび/またはリベットによって接合された、金属および/または他の材料の様々な部品で形成され、穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具を有する。
図3のように、キャビネット12は囲まれた内部空間14を有し、開口部16を通してアクセスできる。ドア18は、
図1のように、開口部16を選択的に閉じる。明白であるように、ドア18が示されているとはいえ、開口部16は用途によってカバーで閉じることができる。様々な電気制御デバイス20が、任意の知られている様式で内部空間に取り付けられる。
【0022】
図2は、エンクロージャ10の正面下部の右角を示し、キャビネット12の製造に使用される例示的な部品を表している。側面パネル22は、締め具26を使用してコーナーピース24に取り付けられる。側面底部のアングルブラケット28は、締め具26を使用してコーナーピース24に取り付けられる。正面底部のブラケット30は、締め具26を使用した取り付け足部32と同様に、コーナーピース24に取り付けられる。ドア18は、任意の知られている様式でキャビネット12にヒンジ式に取り付けられる。締め具26は、所望に応じて、ボルト、リベット、または他の連結機構であってよい。
【0023】
明白であるように、キャビネット12は、継手、ギャップ、または継ぎ目を提供するパネルおよびブラケットなどが当接または重なり合う様々な場所を有し、また、同様に様々な締め具を受け入れるための穴を有するが、それらのうちのいくつかのみが示される。他の穴または開口部が、内部空間14でデバイス20を取り付けるのを容易にするために、キャビネットに提供され得る。
図3で判るように、パネルは、多くの他の開口部および/または締め具を有する。これらの穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具のうちのいずれかは空間を提供し、それを通して塵、水などがキャビネット12の内部空間14の中に入っていける。
【0024】
キャビネットは、侵入に対する保護の能力に基づいて、上述の国際保護等級を有するよう、IECによって定義される。等級は、文字「IP」および2つの数字を含み、2つの数字のうちの1つは固形の異物の侵入に対する保護のレベルを表し、2番目の数字は水の有害な侵入に対する保護のレベルを表す。
【0025】
本明細書で説明するように、キャビネット12および/またはドア18は、環境汚染がエンクロージャに浸透するのを防止するために、エラストマーコーティングの厚膜を外表面上に含む。有利には、コーティングは少なくともIP56の国際保護等級(限定された塵の侵入からの保護、および任意の方向からの水しぶきに対する保護)、またはより有利には、IP67の等級(全ての塵の侵入からの保護、および深さ1mまでの液浸に対する保護)に準拠する。
【0026】
コーティングは、タイプ3のUL等級(落下するごみ、雨、凍雨、雪、および風に吹かれた塵に対する保護の程度を提供する;ならびに、エンクロージャ上で氷の外部形成による損傷がない);タイプ6のUL等級(落下するごみ、雨、凍雨、雪、ホースで向けられた水、および限定された深さにおける不定期な一時的水浸の間の水の侵入保護の程度を提供する;ならびに、エンクロージャ上で氷の外部形成による損傷がない)、またはタイプ13のUL等級(落下するごみ、循環する塵、糸くず、繊維、および飛来物(flyings);ならびに水、オイル、および非腐食性冷却材のしぶき、はねかえり、および滲み出しに対する保護の程度を提供する)、のうちの1つにも準拠し得る。
【0027】
図3のように、コーティングの適用前に、ドア18はキャビネット12から取り外される。示すように、制御デバイス20がキャビネット12に事前設置されている場合、正面開口部16はマスク40によって覆われる。同様に、示されたキャビネット12は通気孔44を含む上部壁42を有する。コーティングを適用する間、通気孔44を覆うためにマスク46が使用される。マスク40および46は、コーティング材料が内部空間14に入るのを防止するため、または通気孔44をコーティングして、そうして封止するのを防止するために、任意の知られている材料で形成され得る。マスクは、機能的に必要とされる、任意の他の箇所にも追加的に適用され得る。
【0028】
明白であるように、通気孔44、ならびに
図1のようなドア18における同様の通気孔48および50には、適切な環境保護を提供するために、必要に応じてフィルタなどが提供される。やはり明白であるように、全てのエンクロージャがこのような通気孔を含むわけではない。
【0029】
エラストマーの厚膜コーティングは、
図3のようにノズル52からエラストマー材料50をスプレイすることによってキャビネット12に適用される。コーティングは、キャビネット12の全体上に適用される。図示しないが、ドア18も必要に応じて同様にコーティングされ得る。
【0030】
図4はキャビネット12の一部を示し、ここで第1のパネル60は第2のパネル62に重なり合い、それらは1つまたは複数のリベット64を使用して共に締められる。この構造は、パネル60と62との間の締め具64および継手68の上にモノリシックな架橋層を提供する、エラストマーコーティング66を含む。コーティング66は、環境汚染がエンクロージャに浸透するのを防止する。
【0031】
図5は、コーナーピース24を示し、それは、側壁部70を有し、コーナー72で前壁部74へ曲げられ、76において外側に曲げられてフランジ78を形成する。コーティング66は、側壁22およびコーナーピース24の外表面を覆う。キャビネット12の内面は、
図3に示すマスク40を使用するので、フランジ78以外はコーティング66で覆われない。従来のガスケット80が、ドア18とフランジ78との間の封止を提供するために、ドア18に固定される。
【0032】
コーティング66などの厚膜コーティングは、ポリウレタン系、ポリアスパラギン系、またはポリ尿素系のエラストマー材料から構成され得る。厚膜コーティングは、少なくとも0.6mmの厚さを有し、侵入保護のために、穴、継手、ギャップ、継ぎ目、および/または締め具の上にモノリシックな架橋層を提供する。このようなコーティングの例は、Line-X LLCのXS-650エラストマーコーティングシステム、およびRhino Linings CorporationのSolarMax(R)11-65エラストマーコーティングを含む。
【0033】
厚膜コーティングは一般的に、昇温を介し、樹脂および触媒を備える二成分系で適用され、いかなる外的刺激もなしで数秒または数分の化学反応を介して硬化される。この迅速な硬化時間によって、コーティングが、任意の向きで、0.6mmを超える厚さで、最小限の落滴またはたるみで適用されることが可能となる。ほぼ無制限の厚さを構築するために、ある期間にわたって、コーティングは多層で適用されることもできる。厚膜コーティングは、低い表面エネルギーの基板上でさえ、エポキシ塗料および粉末コーティングの接着レベルを超えることが多い接着レベルを有する。厚膜コーティングは、最も一般的には100パーセントの固形で構成され、揮発性の有機化合物を排出しない。
【0034】
厚膜コーティング66を適用する方法は、最終製品の機能ならびに美観にとって重要である。コーティングは、限定ではないが、鉄鋼、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、ポリウレタンシーリング材、およびいくつかの裏面粘着テープを含む、いくつかの表面の上に適用され得る。主要な接着基板上に、確実に適切な接着強度を実現するためには、注意を払わなければならない。基板の完全な洗浄は、塗料および粉末ベースのコーティングと同様に、厚膜コーティングの長期間の性能を保証するために極めて重要である。
【0035】
コーティング66は、最小厚さ0.6mmで適用され、多くの工業的グレードのポリマーと同様の構造特性を有する。ポリマーのような強度および可撓性によって、エンクロージャが動き、振動し、膨張し、収縮する際に、コーティング66は、継手にわたって動き、曲がることが可能となる。
【0036】
厚膜コーティングを、光沢のある平滑なゆず肌の外観から、ポップコーン天井と同様の粗いテキスチャまでにわたる、任意の表面仕上げで適用することができる。
【0037】
厚膜コーティングは、それ自体の小さいギャップを架橋できることが多い。コーティングを適用する前に、任意の従来の手段によるバックマスキングが、より大きい任意の開口部に対して一般的に必要である。概ね7mmよりも大きい僅かな寸法のギャップは、バックマスキングが一般に必要であるが、この要件は、エンクロージャのコーティング処理および侵入保護要件によって変化する場合がある。厚膜は、バックマスキングのみによって支持された領域であっても、ポリマーシートの層と同様にモノリシックな層を形成する。
【0038】
封止用途において、厚膜コーティング66は、ギャップ、穴、および他の空隙の上にモノリシックな架橋層を形成するように、適切に層化されなければならない。この層化は、長期的な接着特性も向上させる。厚膜コーティングの厚さは、満たされる空隙の最大寸法に基づいて変化する。
【0039】
従来のガスケット材料は、ドア18など、エンクロージャ10の中へのアクセスを要するどこにでも使用されることができる。例えば、主要なアクセスドア18は、
図5のようにドア18に適用されたガスケット80を有してもよく、ガスケット80は、封止を作り出すために、直立するフランジ78に対して押圧される。フランジ78は、コーティング66によって完全に包まれてもよいが、ドア18とキャビネット12との間の封止に影響を与えない。厚膜コーティング66は恒久的であり、それは、エンクロージャ10の環境保護を損なうかもしれない破壊的な手段でしか、取り外すこと、または変形させることができないという意味である。
【0040】
厚膜コーティングのテキスチャは、従来のガスケットおよびシーリング材の材料が依然として適応することになる表面を維持するために、注意して選択しなければならない。電子機器エンクロージャにおいて、管の付属品は、配線を空間から出し入れするために、エンクロージャの外面からほぼ常時圧縮を受ける。テキスチャは、前記管の付属品の中に組み込まれた封止部に、適応するようでなければならない。
【0041】
厚膜コーティングは100パーセントの固形であり、したがってそれらは、電気エンクロージャに構成要素を装着した後に、それら構成要素内のセンシティブな全ての電子機器に損傷を与える危険なく、電気エンクロージャに適用できる。厚膜コーティングは、上述したような、囲まれた空間の中への侵入を防止する従来のマスキングを用いて、容易に制御され得る。厚膜コーティングを組み立て後に適用することが、比類ない製造の柔軟性、および他のコーティングでは一般的に不可能なサイクル後期の変更を、可能にする。さらに、厚膜コーティングが損傷した場合、前に説明されたものと同様の技術によって、いかなる内部構成要素も損傷させる危険なく、補修され得る。
【0042】
したがって説明のように、電気エンクロージャ10は、塵および水の侵入に対して保護するための環境封止を提供するよう、厚膜エラストマーコーティングを含む。
【0043】
本明細書で開示する主題の趣旨内で、本開示の実施形態の特徴および構成要素の特定の形態に対して、多くの考えられる変更を成し得ることを、当業者は理解するであろう。したがって、本明細書で開示する実施形態の特定の形態に対する限定を、特許請求の範囲で明示的に列挙しない限り、特許請求の範囲の中に読み取るべきではない。いくつかの実施形態を上記で詳細に説明してきたが、他の変更が可能である。他のステップが提供されてもよく、またはステップを説明した方法から削除してもよく、他の構成要素を説明したシステムに加えるか、もしくは取り除いてもよい。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に有り得る。
【0044】
前述の特定の実施形態の開示は、本発明によって含まれる広い概念における例示であることが意図される。