(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ドープナノ粒子の製造及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20221003BHJP
B01J 21/00 20060101ALI20221003BHJP
B01J 23/00 20060101ALI20221003BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20221003BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20221003BHJP
C23C 18/14 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C01G23/053
B01J21/00 M
B01J23/00 M
B01J35/02 J
B01J37/10
C23C18/14
(21)【出願番号】P 2019534219
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2017081804
(87)【国際公開番号】W WO2018114351
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】102016125432.0
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500449008
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】ロギン ペーター
(72)【発明者】
【氏名】デ オリベイラ ペーター ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー トーマス
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/061621(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199468(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102101057(CN,A)
【文献】特表2013-545895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/053
C23C 18/14
B01J 21/00
B01J 23/00
B01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープナノ粒子の製造方法であって、
a)少なくとも1種の加水分解性金属化合物と、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する少なくとも1種の化合物と
、窒素原子を少なくとも1つ有する少なくとも1種の鉱酸とを含む組成物を準備する工程と、
b)前記組成物に水熱処理を行う工程と、
c)前記ナノ粒子を分離する工程と、
を有
し、
前記窒素原子を少なくとも1つ有する鉱酸が硝酸であること、及び、
前記組成物が窒素原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含まないこと、を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記加水分解性化合物が、式MX
n
(式中、Mは、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Cu、Ag、Zn、Cd、Ce、及びLaからなる群から選ばれ、nは金属の価数に相当し、Xは加水分解性基である)
の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する少なくとも1種の化合物が200℃未満の沸点を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する少なくとも1種の化合物が、低級脂肪族アルコールであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、光触媒活性を有するナノ粒子であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、400nmを超える波長においても光触媒活性を有する光触媒活性ナノ粒子であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項
5に記載の方法で製造されたナノ粒子の、金属層の成膜のための使用。
【請求項8】
金属構造の製造方法であって、
(a
)請求項
5に記載の方法で製造された光触媒活性を有するナノ粒子を開始剤として含む開始剤組成物を、基板に塗布する工程と、
(b)少なくとも1種の金属層前駆体化合物を含む前駆体組成物を、前記基板に塗布する工程と、
(c)前記開始剤に対する電磁放射線の作用により、前記前駆体化合物を金属へと還元する工程と、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドープナノ粒子、特に、N-ドープナノ粒子又はN/C-ドープナノ粒子の製造方法に関する。また、本発明は、これらナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル-ゲル法によるナノ粒子の製造方法としては、多くの方法が従来技術として知られている(特許文献1)。これらの方法を用いると、良好な品質を有するナノ粒子を得ることができるが、これらの方法は多段であり、例えば、製品において不純物の原因となる触媒を添加することが必要となることが多い。また、金属ドープナノ粒子の製造も知られている。
【0003】
ナノ粒子を、N又はC等の非金属元素でドープする場合、更なる加工工程が必要となることが多い。また、この粒子に対して更なる焼成を行うことが必要となることも多い。
【0004】
特に、光触媒活性を有するナノ粒子の場合、ドープが吸収波長に影響を及ぼし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102004009287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の不利点を回避するドープナノ粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、独立項の特徴を有する発明によって達成される。本発明の有利な実施の形態は、従属項において特徴付けられる。全ての請求項の文言は、引用することにより本明細書の一部をなす。また、本発明は、全ての意図的な組み合わせ、特に、独立項及び/又は従属項に対して言及された全ての組み合わせを包含する。
【0008】
本発明は、ドープナノ粒子の製造方法を提供する。
【0009】
以下、上記方法の個々の工程を詳細に説明する。必ずしも記載の順序に従って工程を行う必要はなく、以下で説明する方法は、言及されていない更なる工程を含むこともできる。
【0010】
第1の工程において、少なくとも1種の加水分解性金属化合物と、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する少なくとも1種の化合物と、窒素原子を少なくとも1つ有する少なくとも1種の有機化合物及び/又は窒素原子を少なくとも1つ有する少なくとも1種の鉱酸とを含む組成物が提供される。
【0011】
本発明の更なる実施の形態においては、上記加水分解性金属化合物は、下記一般式(I):
MXn
(式中、Mは金属であり、Xは、各々、同一又は異なってもよい加水分解性基であり、2つのX基が二座配位加水分解性基若しくはオキソ基で置換されていてもよく、又は、3つのX基が三座配位加水分解性基で置換されていてもよく、nは元素の価数に相当し、3又は4であることが多い)の少なくとも1種の化合物である。
【0012】
Mは、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Cu、Ag、Zn、Cd、Ce、及びLaからなる群から選ばれることが有利であり、好ましくは、Al、B、Si、Pb、Ti、及びZrからなる群、特に好ましくはTi、Zn、及びZrからなる群から選ばれる。Tiは、光触媒活性を有するTiO2粒子を形成するため、特に興味深い。
【0013】
加水分解性基の例は、例えば、ハロゲン(F、Cl、Br又はI、特にCl及びBr)、C1~20-アルコキシ、好ましくはC1~10-アルコキシ、例えばエトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、直鎖状若しくは分岐状ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ若しくはオクトキシ、例えば2-エチルヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、C1~3-アシルオキシ、例えばアセトキシ若しくはプロピオニルオキシ、C1~C20-アルケニルオキシ、好ましくはC1~10-アルケニルオキシ、例えばビニル若しくはアリルオキシ、例えばブテノキシ、ペンテノキシ、ヘキセノキシ、ヘプテノキシ、オクテノキシ及び高級アルケノキシ基(ここでペンテニル及びヘキセニル、例えばCH3CH2CH=CHCH2CH2O-又はCH2=CH(CH2)4O-が好ましい)、C1~C20-アルキニルオキシ、好ましくはC1~C10-アルキニルオキシ、例えばペンチニルオキシ若しくはヘキシニルオキシ、又はC2~3-アルキルカルボニル、例えばアセチル、炭素数6~20の、好ましくは炭素数6~15のアリールオキシ基、アラルキルオキシ基及びアルカリルオキシ(alkaryloxy)基、例えばフェニルオキシ、ナフチルオキシ、トリルオキシ及びベンジルオキシである。
【0014】
アルコキシ基は、分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。有利な分岐状アルコキシ基としては、例えば、2-エチルヘキソキシが挙げられる。アルケニルオキシ基は、分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましく、二重結合はどの位置にあってもよい。また、1つ以上の二重結合が存在してもよい。
【0015】
また、加水分解性基は、例えば、一般式R1(-OR2)xO-(式中、R1はC1~20-アルキル基であり、R2は、エチレン又はプロピレン等の、例えば炭素数1~4のアルキレン基であり、xは1~4の整数、好ましくは1又は2の整数である)のエーテル基であってもよい。R1基は、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、又はオクチル等のC1~C10-アルキル基であることが好ましい。具体例としては、ブトキシエトキシ及びヘキソキシエトキシが挙げられる。
【0016】
加水分解性化合物の例としては、Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(O-n-C3H7)3、Al(O-i-C3H7)3、AlCl3、AlCl(OH)2、Ti(OCH3)4、Ti(OC2N5)4、TiCl4、Ti(OC2H5)4、Ti(O-n-C3H7)4、Ti(O-i-C3H7)4、ZrCl4、Zr(OC2H5)4、Zr(O-n-C3H7)4、Zr(O-i-C3H7)4、ZrOCl2、ホウ酸、BCl3、B(OCH3)3、B(OC2H5)3、SnCl4、Sn(OCH3)4、Sn(OC2H5)4、Zn(OAc)2、Si(OOCCH3)4、VOCl3及びVO(OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(O-n-又はi-C3H7)4、SiCl4、HSiCl3、Al(O-n-C4H9)3、Al(O-sec-C4H9)3、Al(OC2H4OC4H9)3、Ti(OC4H9)4、Ti(ペントキシ)4、Ti(ヘキソキシ)4、Ti(2-エチルヘキソキシ)4、Zr(OC4H9)4、Zr(ペントキシ)4、Zr(ヘキソキシ)4、Zr(2-エチルヘキソキシ)4、及び更には、β-ジケトンラジカル及び(メタ)アクリルラジカル等の錯体ラジカルを有するZr化合物、Si(OC4H9)4が挙げられる。なお、上述のペントキシラジカル及びヘキソキシラジカルは、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0017】
Mは、Ti、Zn、又はZrであることが好ましい。特に好ましいチタン酸としては、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、及びTi(n-又はi-OC3H7)4が挙げられる。
【0018】
上述の加水分解性基を有する加水分解性化合物としては、市販品を用いてもよいし、例えば、交換反応を用いて他の加水分解性化合物から調製することもできる。他の加水分解性化合物がより入手しやすい場合等には、後者が有利である。よって、例えば、金属エトキシド又は金属プロポキシド等の金属アルコキシド又は半金属アルコキシドを、ペンタノール、ヘキサノール、又は2-エチルヘキサノール等の高級アルコールと反応させ、アルコキシドのアルコキシ基を高級アルコールのアルコキシ基と置換することができる。交換反応は、完全に行ってもよいし、一部のみ行ってもよい。
【0019】
また、このような交換反応は、加水分解性を有する望ましい化合物を形成するのに、他の加水分解性化合物からin situで脂溶性基を形成するのに、またこれらを分離することなく反応させ、直接、望ましいナノ粒子を形成するのにも使用することができる。
【0020】
また、加水分解性金属化合物又は加水分解性半金属化合物、例えば、上記式(I)の化合物は、β-ジケトンラジカル及び(メタ)アクリルラジカル等の錯体ラジカルを有することもできる。特に、より反応性の高いアルコキシド(例えば、Al、Ti、Zrのアルコキシド)の場合、錯体化形態で用いるのがよい場合がある。好適な錯化剤の例としては、メタクリル酸、アセチルアセトン、及びエチルアセトアセテート等の不飽和カルボン酸及びβ-ジカルボニル化合物が挙げられる。
【0021】
また、少なくとも1つの非加水分解性基を有する加水分解性化合物を使用することもできる。その例としては、以下の一般式:
RaSiX(4-a) (II)
(式中、ラジカルRは、同一でも異なってもよい非加水分解性基であり、ラジカルXは、同一でも異なってもよい加水分解性基又はヒドロキシ基であり、aは、1、2、又は3である)のシラン、又はこのシラン由来のオリゴマーが挙げられる。aの値は、好ましくは1又は2である。
【0022】
上記一般式(II)中、同一でも異なってもよい加水分解性基Xとしては、例えば、水素又はハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ(好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、及びブトキシ等のC1~6-アルコキシ)、アリールオキシ(好ましくは、フェノキシ等のC6~10-アリールオキシ)、アシルオキシ(好ましくは、アセトキシ及びプロピオニルオキシ等のC1~6-アシルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくは、アセチル等のC2~7-アルキルカルボニル)、アミノ、好ましくは炭素数1~12、特に好ましくは炭素数1~6のモノアルキルアミノ又はジアルキルアミノが挙げられる。好ましい加水分解性ラジカルとしては、ハロゲン、アルコキシ基(特に、エトキシ及びメトキシ)、及びアシルオキシ基が挙げられる。式(II)のシランを用いてナノ粒子中に加水分解性基を導入する場合には、Xは、上述の加水分解性基の1つ、例えば、上記式(I)の化合物の場合に記載した加水分解性基の1つであってもよい。
【0023】
上記組成物は、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する少なくとも1種の化合物を更に含む。この化合物は、上記加水分解性化合物の溶媒であることが有利であり、200℃未満(大気圧下で)の沸点を有する化合物であることが好ましい。かかる化合物は例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、i-プロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール及びペンタノール異性体、特に1-ペンタノール等の低級脂肪族アルコール(C1~C6-アルコール)である。ここで、メタノール、エタノール、nープロパノール、イソプロパノール及びnーブタノールが好ましい。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記組成物は、上記加水分解性金属化合物を加水分解するための水も含む。水は、上記金属化合物の加水分解性基に対して準化学量論的な量で存在する、すなわち、上記金属化合物の加水分解性基1molに対して水が1mol未満の量で存在することが特に好ましい。言い換えると、加水分解性基を4つ有する加水分解性金属化合物(例えば、チタン化合物)の場合には、金属化合物1molに対して水を4mol未満添加する。上記金属化合物の加水分解性基1molに対して、0.7mol以下、より好ましくは0.6mol以下、特に0.5mol以下又は0.4mol以下であり、かつ0.30mol以上、より好ましくは0.35mol以上の水を使用することが好ましい。
【0025】
その結果、加水分解性基、特に、上記金属化合物由来の加水分解性基が、合成後、製造した粒子の表面に残る。これにより、粒子の再分散性が大幅に向上する。また、このようなナノ粒子は、より簡易に表面改質することができる。
【0026】
上記組成物は、窒素原子を少なくとも1つ有する少なくとも1種の有機化合物及び/又は窒素原子を少なくとも1つ有する少なくとも1種の鉱酸を更に含む。
【0027】
本発明の目的からすると、窒素原子を少なくとも1つ有する有機化合物は、金属カチオン又は半金属カチオンを含まない化合物である。そのような化合物の例としては、アミン、ヒドラジン、ニトリル、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、又はこれらの化合物の誘導体若しくは塩が挙げられる。これらの化合物は、例えば、炭素数1~6のアルキルラジカルによってアルキル化してもよい。この化合物は、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸アンモニウム等のアンモニウム化合物であってもよい。これらの化合物も、例えば、テトラブチルアルキルアンモニウムヒドロキシド等のようにアルキル化してもよい。
【0028】
窒素原子を少なくとも1つ有する鉱酸は硝酸であることが好ましい。本発明の目的からすると、硝酸は、水に溶解したNO2である。
【0029】
窒素ドープのため、上記有機化合物及び/又は上記鉱酸を、ドープに十分な量で添加する。例えば、窒素(N)と上記加水分解性金属化合物の金属(Me)とのモル比(N/Me)が、0.0005:1~0.4:1、好ましくは0.001:1~0.3:1、より好ましくは0.005:1~0.3:1となるような比率が一般的に使用される。この比率は、化合物及び/又は鉱酸の組み合わせにも起因し得る。
【0030】
上記加水分解性金属化合物の加水分解を行うために、少なくとも1種の酸性加水分解触媒の添加が必要となる場合がある。この触媒は、塩酸、硫酸、又はリン酸等の鉱酸であることが好ましい。窒素原子を少なくとも1つ有する有機化合物のみ、又は窒素原子を少なくとも1つ有する鉱酸を少量のみドープのために使用する場合、特にそうである。
【0031】
特に好ましい実施の形態においては、窒素原子を少なくとも1つ有する鉱酸は、酸性加水分解触媒としても働く。硝酸の使用には、硝酸が上記加水分解性金属化合物の加水分解触媒としても同時に働くという、特別な利点がある。上記組成物は、上記金属化合物の加水分解のための触媒を更に含まないことが好ましい。また、得られた粒子を汚染する可能性のある、H、N、及びO以外の元素を反応中に更に導入しない。硝酸は、窒素(N)と上記加水分解性金属化合物の金属(Me)とのモル比(N/Me)が、0.05:1~0.7:1、好ましくは0.05:1~0.5:1、より好ましくは0.1:1~0.4:1となるような比率で使用することが好ましい。上記組成物は、加水分解触媒を更に含まないことが好ましい。
【0032】
本発明の更なる実施の形態においては、上記組成物は、窒素原子を少なくとも1つ有する有機化合物を含まない。
【0033】
次いで、得られた混合物を少なくとも60℃の温度で処理して、ナノ粒子の分散液又は析出物を形成する。この熱処理は水熱的に(hydrothermally)行われる。
【0034】
上記熱処理は、0.5時間~30時間、好ましくは0.5時間~12時間行うことが好ましいが、処理時間は、温度及び任意に印加される圧力又は自然発生圧力によって左右される。例えば、Ti化合物の場合、225℃、自然発生圧力下にて水熱処理を1時間の反応時間で行うことにより、結晶性ナノ粒子形態のアナターゼが得られる。
【0035】
一般的に、水熱処理は、水溶液又は懸濁液を、過圧下、例えば、溶媒の沸点を超える温度及び1barを超える圧力下で熱処理することであると理解される。
【0036】
本発明の目的から、過圧下、主に有機溶媒からなる溶媒中での熱処理も、水熱処理とする。
【0037】
上記水熱処理においては、上記混合物を閉鎖容器又は閉鎖オートクレーブ中で熱処理する。この処理は、75℃~300℃、好ましくは200℃超、より好ましくは225℃~275℃の温度範囲、例えば約250℃で行うことが好ましい。特に、溶媒の沸点を超える温度まで加熱することにより、閉鎖容器又は閉鎖オートクレーブ中に圧力(自然発生圧力)が発生する。
【0038】
得られる圧力は、例えば、1bar超、特に、50bar~500bar超、好ましくは100bar~300bar、例えば225barとすることができる。一般的に、上記水熱処理は、少なくとも0.5時間、好ましくは10時間まで、又は、15時間まで行う。
【0039】
工程b)における上記熱処理は、望ましいナノ粒子が形成されるまで行う。
【0040】
上記ナノ粒子を溶媒から分離する。この目的のため、当業者に既知の方法であれば、いずれの方法を用いてもよい。特に、遠心分離が有用である。上記のヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物等の揮発性構成成分は、大気圧より低い圧力下で、例えば、40mbarでロータリーエバポレーターにて、任意に予め留出してもよい。
【0041】
次いで、分離したナノ粒子を乾燥する(例えば、40℃、10mbarで)。この形態であると、ナノ粒子を貯蔵もしやすい。ナノ粒子は、水性懸濁液からフリーズドライしてもよい。
【0042】
得られたナノ粒子は、特に良好な再分散性を示し、容易に完全に再分散することができる。これは、透明分散液を製造するために重要なことである。酸の添加による分散液のpH調節が必要となる場合がある。再分散の際、表面改質を更に行うこともできる。
【0043】
閉鎖容器中での上記水熱処理では、粒子のドープのために揮発性化合物、特に硝酸を使用することが可能となる。還流下又は簡易加熱によって粒子を製造しようとする場合は、ドープを行う前に、加熱により上記組成物から揮発性化合物を除去する。また、大過剰量で行う必要があるため、ドープを精密に制御することはできない。
【0044】
本発明の方法により得られたナノ粒子は、そのまま使用することができ、焼成を行う必要はない。
【0045】
上記組成物は、ドープ用の化合物を更に含んでもよい。ドープに好適な金属化合物であれば、いずれを用いてもよい。例えば、酸化物、塩、又は錯体、例えば、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)、又はアセチルアセトネートが挙げられる。この化合物は、混合物に使用する溶媒に溶解することが有利である。
【0046】
金属としては、いずれの金属を使用してもよく、特に、元素周期表5族~14族、ランタノイド、及びアクチノイドから選ばれる金属を使用する。この金属は、上記化合物中、好適な予備酸化状態であれば、いかなる形態をとることもできる。金属化合物に好適な金属の例は、W、Mo、Cr、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、In、Fe、Co、Ni、Mn、Ru、V、Nb、Ir、Rh、Os、Pd及びPtである。W(VI)、Mo(VI)、Cr(lit)、Zn(II)、Cu(II)、Au(III)、Sn(IV)、In(III)、Fe(III)、Co(II)、V(V)及びPt(IV)の金属化合物を使用することが好ましい。特に、W(VI)、Mo(VI)、Zn(II)、Cu(II)、Sn(IV)、In(III)及びFe(III)を使用すると非常に良い結果が得られる。好ましい金属化合物の具体的な例は、WO3、MoO3、FeCl3、酢酸銀、塩化亜鉛、塩化銅(II)、酸化インジウム(III)及び酢酸スズ(IV)である。
【0047】
上記金属化合物と、上記加水分解性金属化合物との比率は、使用する金属及びその酸化状態によっても左右される。一般的に、例えば、上記金属化合物の金属(Me’)と上記加水分解性金属化合物の金属(Me)とのモル比(Me’/Me)が、0.0005:1~0.2:1、好ましくは0.001:1~0.1:1、より好ましくは0.005:1~0.1:1となるような比率で、使用される。
【0048】
また、金属によるドープの代わりに、炭素、リン、硫黄、ホウ素、ヒ素、アンチモン、セレニウム、テルル、塩素、臭素及び/又はヨウ素等の半金属元素又は非金属元素によるドープを更に行うこともできる。この目的のため、このような元素自体又は好適な元素化合物をドーパントとして使用する。チタン化合物を使用する場合には、光触媒性に影響するため、ドープが特に有利である。
【0049】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記組成物は、粒子を炭素によって更にドープするための炭素含有有機化合物を含む。
【0050】
この化合物は、上記組成物に可溶の、炭素数が少なくとも4の有機化合物であることが好ましい。この有機化合物は、好ましくは、H原子、C原子、及びO原子のみを含む。例えば、エーテル基、エステル基、カルボキシル基、若しくはヒドロキシル基、又はこれらの基の組み合わせを有する化合物とすることができる。この化合物は、上記組成物に可溶であることが好ましい。
【0051】
この化合物は、水熱処理の温度よりも分解温度が低いことが好ましい。
【0052】
好ましい化合物としては、特に、反応条件下で、炭素に還元され得る化合物である。アルドース又はケトース等のケト基又はアルデヒド基を有する有機化合物が好ましく、特に、グルコース等のC5-又はC6-ケトース又はアルドースが好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、水熱処理前、均質な溶液であり、特に、単相からなる溶液である。全ての構成成分は溶解形態で存在する。
【0054】
製造した粒子はナノ粒子である。これは、粒子が、100nm未満、好ましくは50nm未満、特に好ましくは20nm未満の平均径(TEMにより決定)を有することを意味する。
【0055】
特に、製造したナノ粒子は、200nm未満、好ましくは100nm未満、特に好ましくは50nm未満又は30nm未満の最大径(TEMにより決定)を有する。
【0056】
本発明の実施の形態においては、粒子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に少なくとも80%が立方晶形状を有する。
【0057】
光触媒活性を有する粒子を製造することが好ましく、ドープZnOナノ粒子又はドープTiO2ナノ粒子を製造することが特に好ましい。中でも、TiO2が好ましい。
【0058】
分散液、析出物、又は粉末として得られたドープTiO2ナノ粒子は、主に、結晶性アナターゼの形態で存在する。得られたドープTiO2ナノ粒子中、結晶性材料の割合は、90%超、好ましくは95%超、特に97%超であることが好ましい。すなわち、非晶性材料の割合は、特に、3%未満、例えば、2%である。
【0059】
ドープナノ粒子、特にTiO2ナノ粒子は、特に、380nmを超える波長の可視光によって励起されて光触媒活性を示す(「可視光光触媒又は日光光触媒」)という特徴も有する。
【0060】
この光触媒活性は、例えば、本発明による実施例の条件下で、金属層を成膜(deposition)することにより確認することができる。
【0061】
得られたナノ粒子は、例えば、更なる加工の際、溶媒又はマトリックス材料と適合できるように、表面改質することもできる。
【0062】
好ましい実施の形態においては、製造したナノ粒子は官能基を更に有する。この官能基は、ナノ粒子の表面上で、ナノ粒子に望ましい機能を更に付与する基である。このような官能化によって、上記ナノ粒子を、必要に応じて、望ましい性質に適合させることができる。
【0063】
このようにして、上記ナノ粒子は、例えば、混合対象である他の材料との適合性を向上させることができ、或いは、有利であるなら、適合性を低下させることができる。例えば、官能基によって、疎水性、親水性、疎油性、又は親油性といった機能を導入することができる。疎水性性質及び/又は疎油性性質を得るために、例えば、フッ素化炭化水素鎖を有する官能基を導入することができる。
【0064】
更に好ましい官能基としては、ナノ粒子の表面上に1つ以上の官能基を導入するものが挙げられる。これにより、例えば、他の材料との反応又はナノ粒子同士の反応が可能となる。得られた改質ナノ粒子が、好適な官能基を有するマトリックス形成材料と化学反応により結合するか、又は、架橋するように、架橋反応に好適な官能基が特に好ましい。
【0065】
このような官能基は、上記ナノ粒子と表面改質剤との反応により得ることができる。ナノ粒子の表面改質は、例えば、国際公開第93/21127号(独国特許出願公開第4212633号)又は国際公開第96/31572号において本出願人が示したような既知の方法によって行う。表面改質ナノ粒子は、原理的には、2つの異なる方法で製造することができる。すなわち、予め製造したナノサイズのナノ粒子を表面改質する第1の方法と、表面改質剤を使用してこれらのナノ粒子を製造する第2の方法である。後者の方法については、ナノ粒子の形成に際してin situで表面改質剤として作用し得る式(II)のシランのところで、包括的に説明した。
【0066】
完成したナノ粒子の表面改質は、表面改質剤とナノ粒子とを単に混合することにより行うことができる。この反応は、任意で、溶媒中で行うことができ、必要に応じて、機械的エネルギー若しくは熱的エネルギーを導入するか、及び/又は、触媒を添加して行うことができる。
【0067】
好適な表面改質剤としては、まず、ナノ粒子の表面上に存在する活性基(例えば、OH基)と反応又は相互作用し得る1以上の基を有する化合物が挙げられる。表面改質剤は、例えば、ナノ粒子の表面と、共有結合、配位結合(錯体)、及びイオン結合(塩のような)を形成することができる。純粋な相互作用の例としては、双極子-双極子の相互作用、水素結合、及びファンデルワールス相互作用が挙げられる。共有結合、イオン結合、錯体の形成が好ましい。
【0068】
上記表面改質剤は、通常、比較的小さい分子量を有する。例えば、その分子量は、1500未満、特に1000未満、好ましくは700未満、特に好ましくは500未満とすることができるが、例えば、2000以上までの高分子量も可能である。
【0069】
上記ナノ粒子の表面改質のため、無機酸及び有機酸、塩基、キレート化剤、錯化剤、例えば、β-ジケトン、錯体形成構造を有し得るタンパク質、アミノ酸、又はシラン等を使用することができる。好ましい実施の形態においては、上記表面改質剤は、ナノ粒子の表面と錯体形成することにより改質する錯化剤とすることができる。上記表面改質剤の具体例としては、飽和又は不飽和モノカルボン酸及び飽和又は不飽和ポリカルボン酸、その対応する酸無水物、酸塩化物、エステル、及び酸アミド、アミノ酸、タンパク質、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、モノアミン及びポリアミン、β-ジケトン等のβ-ジカルボニル化合物、オキシム、アルコール、ハロゲン化アルキル、粒子の表面基と反応し得る官能基を有する金属化合物、例えば、上記式(II)の加水分解性シラン等の、非加水分解性基を少なくとも1つ有し、加水分解性基を有するシランが挙げられる。表面改質剤の具体的な化合物としては、例えば、上述の国際公開第93/21127号及び国際公開第96/31572号に記載されている。
【0070】
特に好ましい表面改質剤としては、飽和又は不飽和カルボン酸、β-ジカルボニル化合物、アミン、ホスホン酸、スルホン酸、又はシランが挙げられる。上述のように、好ましい実施の形態においては、官能基としては、少なくとも1つの官能基を含む。この目的のため、ナノ粒子の表面に結合する官能基だけではなく、更なる官能基を少なくとも1つ有する表面改質剤を使用する。
【0071】
上記官能基に対する更なる官能基の例としては、ヒドロキシ基、エポキシド基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、イソシアナト基、スルホン酸基、ホスホン酸基、第4級アミノ基、アクリル又はメタクリル等のC-C二重結合基、又はカルボニルが挙げられる。より広い意味では、フッ素化炭化水素基もここに含まれ得る。したがって、二官能、三官能、又はそれ以上の表面改質剤をこの目的に使用し、上述の官能基から選ばれる追加基を少なくとも1つ有する好ましいカルボン酸、β-ジカルボニル化合物、アミン、ホスホン酸、スルホン酸、又はシラン、例えば、不飽和カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、官能化β-ジカルボニル化合物、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、又はイソシアナトシランが好ましい。
【0072】
表面改質に使用する好ましい化合物の例としては、以下のものが挙げられる:
好ましくは炭素数1~24であるカルボン酸の例としては、飽和モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ステアリン酸、フェニル酢酸、安息香酸)、カルボキシル基を2つ以上有する飽和ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、及びフタル酸)、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びオレイン酸)、及びヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸)、並びに、これらカルボン酸の誘導体、例えば、無水物、エステル(好ましくは、メチルメタクリレート等のC1~C4-アルキルエステル)、及びアミドも挙げられる。
【0073】
好ましくは炭素数4~12、より好ましくは炭素数5~8であるβ-ジカルボニル化合物の例としては、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、3,5-ヘプタンジオン、アセト酢酸、及びC1~C4-アルキルアセトアセテートが挙げられ、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、ヘキサフルオロアセチルアセトン、及びアセトアセトアミド等の官能化ジカルボニル化合物も挙げられる。
【0074】
更なる例としては、モノアミン及びポリアミン、特に、一般式R3-nNHn(式中、nは0、1、又は2であり、ラジカルRは、各々独立して、炭素数1~12、特に炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-及びi-プロピル、ブチル、又はヘキシル)である)で表されるもの、及びエチレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等);2-アミノエタンスルホン酸及び3-アミノベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、ホスホン酸、アミノ酸;イミン;並びに、上記一般式(II)で表される、非加水分解性基を有する加水分解性シラン等のシランが挙げられ、中でも、非加水分解性ラジカル上に官能基を有するものが好ましい。
【0075】
更に好適な表面改質剤の例としては、式NR1R2R3R4+X-(式中、R1~R4は、好ましくは炭素数1~12、特に炭素数1~8の、異なってもよい脂肪族基、芳香族基、又は脂環式基であり、例えば、炭素数1~12、特に炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-及びi-プロピル、ブチル、又はヘキシル)であり、X-は、アセテート、OH-、Cl-、Br-、又はI-等の無機アニオン又は有機アニオンである)の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0076】
これらの化合物の炭素鎖中に、O-、S-、又はNH基が介在してもよい。このような表面改質剤としては、例えば、1つ、2つ、又は3つ以上のオキサ基が存在し得るオキサアルカン酸が挙げられる。その例としては、3,6,9-トリオキサデカン酸、3-オキサブタン酸、2,6-ジオキサヘプタン酸、及びこれらの同族体が挙げられる。
【0077】
例えば、架橋に役に立ち得る追加基を有する表面改質剤の好ましい例としては、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、ヘキサフルオロアセチルアセトン、及びアセトアセトアミド等の官能化β-ジカルボニル化合物、2-アミノエタンスルホン酸及び3-アミノベンゼンスルホン酸等のアミノスルホン酸、メタクリル酸及びオレイン酸等の不飽和カルボン酸、及び乳酸等のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【0078】
本発明により製造されたナノ粒子は、他の材料で被覆して、コアーシェル構造の粒子を形成してもよい。使用し得る被覆材料としては、無機改質若しくは有機改質無機高分子材料又は無機改質若しくは有機改質有機高分子材料が挙げられる。無機改質又は有機改質無機被膜又は被覆組成物は、例えば、上述の加水分解性化合物から得ることができる。有機被膜は、従来被覆組成物中でバインダーとして使用されてきた有機ポリマーから形成することができ、又は、天然に存在するポリマー、例えば、デンプン等の種々の糖及びその誘導体、タンパク質、若しくはセルロース若しくはその誘導体を任意で改質したものから形成することができる。
【0079】
本発明のナノ粒子は、そのまま、又はゾルとして、又はそれ以外では、ナノ粒子を含む組成物の形態で用いることができる。この組成物は、特定の用途に好適な添加剤を含むことができる。特に、上記組成物は、従来のマトリックス形成剤を1種以上含むことができる。
【0080】
本発明によるナノ粒子を含む使用し得る組成物としては、例えば、表面被膜、接着剤等の種々の被覆システム、シーリング材及び成形組成物等の組成物、複合材料、スリップ、ペースト、懸濁液、全ての種類のゾル、溶融ガラス、及びガラス形成ゾル等のセラミック原料、溶液、溶解モノマー、溶解ポリマー、並びに、溶融ポリマー等が挙げられる。これらは、他の成分、例えば、上述のマトリックス形成剤、可塑剤、熱誘導及び放射線誘導の重合触媒及び重縮合触媒、並びに、他のナノ粒子を含む更なる既知の添加剤等を含み得る。また、マトリックス形成剤は、金属であってもよいし、又は、ハイブリッド材料としてポリマー、ガラス系、金属又はセラミックのマトリックス前駆体の組み合わせであってもよい。
【0081】
任意で、あらゆる種類の有機モノマー、有機オリゴマー、又は有機ポリマーを、有機マトリックス形成材料として存在させることができる。これらの材料は、軟化剤として働き、従来の有機バインダーとなり得る。これらの材料は、被覆性を向上させるために使用することができる。一般的に、これらの材料は、層の形成後には、光触媒的に分解される。上記オリゴマー及びポリマーは、架橋を可能とする官能基を有し得る。この架橋の機会は、上述の有機改質無機マトリックス形成材の場合にも存在し得る。無機改質若しくは有機改質無機マトリックス形成材及び/又は無機改質若しくは有機改質有機マトリックス形成材の混合物も使用することができる。
【0082】
また、本発明は、本発明の方法によって製造されるナノ粒子も提供する。このナノ粒子は、酸化物ドープナノ粒子であることが好ましく、光触媒活性を有するナノ粒子、特に、二酸化チタンを含むドープナノ粒子であることが好ましい。
【0083】
上記ナノ粒子は、100nm未満、好ましくは50nm未満、特に好ましくは20nm未満の平均径(TEMにより決定)を有する。
【0084】
特に、上記ナノ粒子は、200nm未満、好ましくは100nm未満、特に好ましくは50nm未満又は30nm未満の最大径(TEMにより決定)を有する。
【0085】
本発明の実施の形態においては、上記粒子(カウント)の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に少なくとも80%が立方晶形状を有する。
【0086】
本発明による粒子は、例えば、欧州特許第1525338号に記載されたような、あらゆる種類の被膜に導入することができる。
【0087】
得られた光触媒層は、例えば、自浄表面(任意で、光照射の助力により)として、又は、空気清浄に使用することができる。上記光触媒層は抗菌目的及び/又は自浄のために、様々な用途、例えば機械、塗料、ワニス、家具、屋外の壁、屋根、繊維製品、乗り物、信号装置、フィルム、防護及び仕切り壁、運輸業、自動車、飛行機及び鉄道、窓、ドア、温室、組積造壁、タイル、床、テント、ターポリン、屋外設備、フェンス、自然石、コンクリート、下塗り、敷石、床スラブ、記念碑、木材、スラブ、裏地、窓枠、カバー、あらゆる種類のポリマー表面、ポリマーの艶出し、ヘルメット、バイザー、ハウジング、あらゆる種類の器具、例えば医療器具、家電製品、交通信号、鉄骨構造及び屋外の鋼鉄壁、曇り止め被膜、例えばガラス、鏡、裏地、又は間仕切り上の曇り止め被膜のための使用に好適である。
【0088】
特定の使用分野としては、あらゆる種類の機器、特に、獣医機器及び器具並びに歯科機器及び器具を含む、衛生設備における医療機器及び器具を、殺菌及び汚れから保護することが挙げられる。更なる重要な適用分野としては、食品技術及び乳業が挙げられる。
【0089】
光触媒活性を有するナノ粒子の場合、得られた粒子は、対応被覆表面上に金属層を成膜するのにも適している。特に、可視光域において光触媒活性が向上することにより、成膜効率が著しく高まる。さらに、可視光域の波長を使用できることにより、より安価な光源、より安価なガラスからなる光学系及びマスクを使用することができる。また、紫外域における活性もより高いため、紫外域で従来採用されてきた光源及び光学系を用いた場合にも、成膜の向上を達成することができる。
【0090】
この目的のため、まず、本発明による光触媒活性を有するドープナノ粒子、好ましくはZnO2又はTiO2を含む開始剤層を基板に設ける。
【0091】
上記光触媒開始剤層で被覆される上記基板は、この目的に好適な材料であればどの材料であってもよい。好適な材料の例としては、金属若しくは金属合金、ガラス、酸化物セラミック、ガラスセラミックを含むセラミック、又はポリマーが挙げられ、また、紙及び他のセルロース含有材料も挙げられる。当然、上述の材料からなる表層を有する基板を使用することもできる。この表層は、例えば、メタライゼーション、エナメル、ガラス層若しくはセラミック層、又は塗膜若しくはワニス塗膜とすることができる。
【0092】
金属又は金属合金の例としては、ステンレス鋼を含む鋼、クロム、銅、チタン、錫、亜鉛、真鍮、及びアルミニウムが挙げられる。ガラスの例としては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛クリスタル、及び石英ガラスが挙げられる。これらは、例えば、ガラスシート、ガラス容器等の中空ガラス、又は実験器具ガラスであってもよい。セラミックは、例えば、酸化物SiO2、Al2O3、ZrO2、若しくはMgO、又は対応する混合酸化物に基づくセラミックである。金属のように薄いシートにすることができるポリマーの例は、HDPE若しくはLDPE等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、再生セルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、三酢酸セルロース(TAC)、酢酸酪酸セルロース、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンコポリマー(COC)又は塩酸ゴムである。塗装面又はワニス塗装面は、従来のプライマー又は表面被覆剤から形成することができる。好ましい実施の形態においては、上記基板は、薄いシートであり、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリイミドフィルムである。
【0093】
この目的のため、通常、上記ナノ粒子の分散液(開始剤組成物)を上記基板に塗布する(apply)。
【0094】
上記開始剤組成物は、通常、上記ナノ粒子を少なくとも1種の溶媒に分散してなる分散液である。この場合、ナノ粒子の割合は、20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満である。好ましい範囲は、0.5重量%~3重量%である。上記割合の例としては、1重量%、1.5重量%、2重量%、及び2.5重量%が挙げられる。ここで、上記割合は、上記開始剤組成物に基づく割合である。
【0095】
好適な溶媒としては、当業者に既知のナノ粒子用溶媒が挙げられる。150℃未満の沸点を有する溶媒が好ましい。その例としては、脱イオン化H2O、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、又はブタノールが挙げられる。これらの混合物を使用することもできる。
【0096】
上述のカルボン酸等の表面改質剤、及び酸又は塩基を更に添加することができる。
【0097】
上記開始剤組成物は、従来の方法、例えば、ティップ法、ロール法、ドクターブレート被覆法、フラッディング法、ドロー法、スプレー法、スピンコーティング法、又はペイント法を用いて塗布することができる。塗布した分散液は、任意で、乾燥及び熱処理し、例えば、硬化又は緻密化する。この目的のために用いられる熱処理は、当然、基板によって左右される。通常バリア層を有するポリマー基板又はポリマー表面の場合、必然的に、超高温は使用することができない。そのため、ポリカーボネート(PC)基板は、例えば、約130℃で1時間熱処理を行う。一般的に、熱処理は、100℃~200℃の温度で行い、ポリマーが存在しない場合には、500℃以上までの温度で行う。熱処理は、例えば、2分~2時間行う。
【0098】
次工程では、少なくとも1種の金属層前駆体化合物(precursor compound for a metal layer)を含む前駆体組成物を上記基板に塗布する。上記前駆体組成物を塗布するのに、慣用の方法、例えば、ティップ法、ロール法、ドクターブレート被覆法、フラッディング法、ドロー法、スプレー法、スピンコーティング法、又はペイント法を用いることができる。上記前駆体組成物は、通常、少なくとも1種の前駆体化合物を含む溶液又は懸濁液である。この溶液は、複数の前駆体化合物の混合物を含むこともできる。還元剤又は湿潤剤等の更なる助剤を溶液中に存在させてもよい。
【0099】
上記前駆体化合物は、金属錯体であることが好ましい。これは、少なくとも1種の金属イオン又は金属原子と、少なくとも1種の配位子とを有する。この金属としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、タングステン、白金、又はパラジウムが挙げられる。好ましい実施の形態においては、上記前駆体化合物は、銀錯体、金錯体、又は銅錯体であり、特に好ましくは銀錯体である。上記前駆体化合物は、多種の金属又は多種の金属錯体の混合物を含んでもよい。
【0100】
通常、キレート配位子を配位子として使用する。キレート配位子は、特に安定な錯体を形成することができ、複数のヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する化合物である。200g/mol未満の分子量を有する化合物であることが好ましく、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのアミノ基を有する化合物であることが特に好ましい。使用し得る化合物の例としては、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1-ブタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、NH3、ニコチンアミド、又は6-アミノヘキサン酸が挙げられる。これらの配位子の混合物を使用することもできる。好ましい銀錯体の場合、配位子としてはTRISが好ましい。
【0101】
上記前駆体組成物は、上記前駆体化合物の溶液であることが好ましい。使用し得る溶媒としては、全ての好適な溶媒が挙げられる。この溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、又はi-プロパノール等のアルコールが挙げられる。これらの溶媒の混合物、好ましくは、水とエタノールとの混合物を用いることもできる。
【0102】
上記前駆体組成物は、界面活性剤又は還元助剤等の更なる助剤を更に含むことができる。
【0103】
上記前駆体組成物を上記基板に塗布する方法は問わないが、金属イオンから金属への還元が、ここでは、上記開始剤層の光触媒活性によって直接的又は間接的に引き起こされ得るような方法で、上記前駆体組成物を塗布する。これは、通常、上記開始剤層に直接上記前駆体組成物を塗布することにより達成される。
【0104】
上記前駆体組成物は、従来の方法、例えば、ティップ法、スプレー法、ロール法、ドクターブレードコーティング法、フラッディング法、ドロー法、スプレー法、スピンコーティング法、又はペイント法を用いて塗布することができる。
【0105】
次工程においては、上記開始剤に対する電磁放射線の作用により、上記前駆体化合物の金属イオンを金属へと還元する。これにより、金属層が形成される。電磁放射線とは、上記開始剤を励起する波長を少なくとも1つ有する放射線である。ここで、ランプ等の面放射源又はレーザーを用いて照射を行うことができる。電磁スペクトルの可視光域又は紫外(UV)域の波長を有する放射線を用いることが好ましく、600nm未満の波長、例えば、200nm~450nm又は250nm~450nmの範囲の波長を有する放射線を用いることが好ましい。
【0106】
特に、本発明のナノ粒子は、400nmを超える波長、特に、400nmを超え450nm未満の波長で光触媒活性を示すという特徴と有する。よって、この波長を使用して金属層を成膜することもできる。よって、市販のガラスを介しての成膜も可能となる。また、非ドープ粒子の場合より、総活性は高くなる。
【0107】
光源としては、好適な光源であればいずれの光源を用いてもよい。光源の例としては、レーザー、LED、水銀灯、又はキセノンランプが挙げられる。
【0108】
上記光源は、照射対象の上記基板から好適な距離に配置する。この距離は、例えば、2.5cm~50cmとすることができる。250nm~410nmのスペクトル領域における放射線の強度は、1mW/cm2~10W/cm2とすることができる。
【0109】
照射対象の表面に対して垂直に照射を行うことが好ましい。
【0110】
照射は、金属層の形成に十分な時間で行う。照射時間は、塗膜、開始剤の種類、ランプの種類、使用する波長域、及び放射線の強度によって左右される。導電性構造を製造する場合は、より長い照射時間が必要となり得る。照射継続時間は、5秒~10分の範囲であることが好ましく、20秒~4分の範囲であることが好ましい。
【0111】
レーザーを照射に使用する場合は、レーザービームを上記基板に対して動かして、例えば、構造を製造することができる。
【0112】
本発明の更なる実施の形態においては、照射及び上記前駆体化合物の還元の更に後に、上記基板に対して処理を行う。よって、例えば、脱イオン化水又は他の好適な物質で表面をリンスすることにより、未還元の過剰前駆体組成物を除去することができる。次いで、被覆基板を、例えば、オーブン内で加熱し、圧縮空気を用い、及び/又は、室温で乾燥することにより、乾燥することができる。
【0113】
また、更なる層を追加で塗布し、例えば、被覆表面を酸化、水分、又は紫外線から保護することもできる。
【0114】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記前駆体組成物の塗布及び/又は還元の際に、構造形成を行う。本発明の目的からすると、これは、金属構造を空間的に限定して製造することを意味する。これは、様々な方法によって達成することができる。まず、基板の特定の領域のみを開始剤組成物で被覆することができる。また、前駆体組成物を特定の領域のみに塗布することができる。さらに、当然、電磁放射線の作用を特定の領域のみに制限することもできる。これらの方法は、当然、組み合せて用いることもできる。よって、例えば、まず前駆体組成物を全域に塗布し、次いで、マスクを介して照射することができる。同様に、対象を絞って前駆体組成物を塗布し、次いで、全域に照射することも当然できる。
【0115】
得られる構造の品質に関しては、開始剤の光触媒活性だけではなく、前駆体組成物に対する開始剤層の品質、例えば、湿潤性又は粗さも影響する。特に、本発明の開始剤組成物は、開始剤組成物上に対象を絞って前駆体組成物を塗布すること、及び/又は、開始剤組成物上で対象をかなり絞って前駆体化合物の還元を行うことが可能であることに特徴がある。
【0116】
本発明の好ましい実施の形態においては、構造形成は、500μm未満の最小横寸法を有する構造を含む。これは、基板上に製造される構造が、500μmの最小幅を有することを意味する。100μm未満、50μm未満、20μm未満、特に好ましくは10μm未満、特に5μm未満又は1μm未満の寸法であることが好ましい。
【0117】
金属構造の望ましい精細度、すなわち、金属層の形成のため、形成される光触媒層の構造が重要である。本発明のナノ粒子を使用するだけでなく、基板に前処理を行うことにより、望ましい精細度を達成することができる。このような前処理において、更なる層の塗布を行ってもよい。
【0118】
本発明の好ましい実施の形態においては、前処理は、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、及び/又は、有機-無機被膜の塗布及び硬化を含む。プラズマ処理、コロナ処理、及び/又は、火炎処理は、薄いシート基板の場合、特に、ポリマーフィルムの場合に、特に有用である。ここで、このような処理によって、得られる光触媒層の品質が向上することが分かった。
【0119】
真空条件下でプラズマを得る可能な方法は、度々、文献に記載されてきた。電気エネルギーを、誘導的又は容量的な方法で導入することができ、電気エネルギーは、直流であっても、交流であってもよい。交流の周波数は、数kHzからMHz域までの範囲とすることができる。マイクロ波域(GHz)のエネルギーの導入も可能である。
【0120】
主なプラズマガスとしては、例えば、He、アルゴン、キセノン、N2、O2、H2、蒸気、又は空気、同様に、これらの化合物の混合物を使用することができるが、酸素プラズマが好ましい。
【0121】
上記基板は、通常、前もって清浄する。溶媒による単なるリンスによって、清浄は行うことができる。次いで、上記基板を、任意で乾燥し、引き続き、5分未満プラズマ処理する。処理時間は、上記基板の感度によって左右され得るが、通常、1分~4分の範囲である。
【0122】
光触媒層の品質を向上する更なる可能な方法としては、表面に対して予め火炎処理を行うことが挙げられる。このような処理は当業者に既知である。選択するパラメータは、処理対象の特定基板によって規定される。例えば、火炎温度、火炎強度、滞留時間、基板と炉との距離、燃焼ガスの有無、空気圧力、水分をその基板に合わせる。火炎ガスとしては、例えば、メタン、プロパン、ブタン、又は、ブタン70%とプロパン30%との混合物を使用することができる。この処理は、薄いシート、特に好ましくはポリマーフィルムの場合にも、採用することが好ましい。
【0123】
本発明の方法の特に有利な点としては、使用する組成物を簡易な方法で基板に塗布することがある。ここで、ナノ粒子を含む上記開始剤層によって、特に微細な構造をたった数工程で製造することができる。インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、又は凸版印刷及びフレキソ印刷等のあらゆる既知の印刷方法を、この目的のために使用する。上述の印刷方法を組み合わせて、電気機能の印刷に用いることも多い。使用する印刷版、ローラー、及びスタンプを、例えば、表面エネルギーを変化させることにより、上記組成物の性質に合わせることが必要となる場合がある。
【0124】
構造形成により適用された構造は、実際上何ら制限がない。よって、導体トラック等の接合構造を適用することができ、また、ドット状構造を適用することもできる。精細度が良好であるため、上記方法によると、人間の目には見えない導電性ドット又はラインを、フィルムに付けることが可能となる。これは、タッチスクリーンの表面製造において、重要な役割を果たす。
【0125】
本発明の特に有利な点は、導電性構造の製造にある。導電性構造は、電子分野における導体トラックとして好適であり、特に、タッチスクリーンディスプレイ、ソーラーコレクター、ディスプレイ、RFIDアンテナ、又はトランジスタに好適である。そのため、導電性構造は、以前はITO(インジウム錫酸化物)に基づいて製造されてきた製品、例えば、TCO(透明導電酸化物)被膜の代替物として好適である。
【0126】
また、上記構造は、トランジスタの分野においても使用することができる。
【0127】
従属項と組み合わせた以下の好ましい実施例の説明から、更なる詳細及び特徴点が分かる。ここで、各特徴点は、単独でも、複数の組み合わせでも実現することができる。上記目的を達成する可能な方法は、実施例のものに限定されるものではない。よって、例えば、示された範囲は、言及されない中間値及び考え得る部分的な範囲を常に全て包含するものである。
【0128】
実施例を図面に模式的に示す。個々の図面における同一参照符号は、同一の要素、又は同一の機能を有する要素、又は機能の点において互いに対応する要素を示す。詳細には、以下の図面を示す。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】本発明によるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図2】本発明によるナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0130】
1.N-ドープTiO
2の合成
N-ドープTiO
2ナノ粒子をソルボサーマル法により製造した。24.26gのチタンイソプロポキシドを、26.36gの1-プロパノールに溶解した。1.58gのHNO
3(68%)を、5gの1-プロパノールに添加し、撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド溶液に添加した。2.56gの水を、10gの1-プロパノールに溶解し、ゆっくりとチタンテトライソプロポキシド溶液に滴加した。得られた溶液を20分間撹拌し、オートクレーブ用のテフロン製容器へと移し、225℃で1時間加熱した。加熱速度は、5K/分とした。冷却後、上澄み液を静かに移し、残渣からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。収量:7.5gの褐色の固体、粒子径:11.8nm。
図1及び
図2に、得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0131】
2.C/N-ドープTiO2の合成
C/N-ドープTiO2ナノ粒子をソルボサーマル法により製造した。24.26gのチタンイソプロポキシドを、26.36gの1-プロパノールに溶解した。1.58gのHNO3(68%)を、5gの1-プロパノールに添加し、撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド溶液に添加した。2.56gの水及び0.3gのグルコースを、10gの1-プロパノールに溶解し、ゆっくりとチタンテトライソプロポキシド溶液に滴加した。得られた溶液を20分間撹拌し、オートクレーブ用のテフロン製容器へと移し、225℃で1時間加熱した。加熱速度は、5K/分とした。冷却後、上澄み液を静かに移し、残渣からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。収量:7.89gの褐色の固体、粒子径:13.5nm。
【0132】
3.ディップコート用ゾルの製造
0.3g~0.9gの粒子(No.1又はNo.2による)を、4gの0.1MのHNO3に分散させた。粒子1g当たり0.67mlの3,6,9-トリオキサデカン酸を添加した。10分撹拌した後、46gの2-イソプロポキシエタノールを添加した。
【0133】
4.ディップコートによる被覆
ディップコートによりガラス基板を被覆した。清浄したガラス基板を、No.3によるゾルに浸漬した。引上げ速度は、1mm/秒~5mm/秒とした。光学的に透明な層が得られた。
【0134】
5.波長依存光金属化
硝酸銀溶液(0.845gのAgNO3を10gの蒸留水に溶解したもの)とTRIS溶液(1.284gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを10gの蒸留水に溶解したもの)の混合物0.5mlを、被覆顕微鏡スライド(No.4による)に塗布した。得られた溶液を、モノクロメーターを用いて分離した1000WのHg/Xeランプからの光に5分間露光した。435nmの波長まで、銀の成膜が確認された。
【0135】
6.405nmにおける光金属化
硝酸銀溶液(0.845gのAgNO3を10gの蒸留水に溶解したもの)とTRIS溶液(1.284gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを10gの蒸留水に溶解したもの)の混合物0.5mlを、被覆顕微鏡スライド(No.4による)に塗布した。得られた溶液を、405nmのLEDからの光に露光した。たった3分で導電層が得られた。
【0136】
7.ガラス板を介しての光金属化
硝酸銀溶液(0.845gのAgNO3を10gの蒸留水に溶解したもの)とTRIS溶液(1.284gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを10gの蒸留水に溶解したもの)の混合物0.5mlを、被覆顕微鏡スライド(No.4による、粒子はNo.1による)に塗布した。これを、第2の顕微鏡スライドでカバーし、1000WのHg/Xeランプからの光に10秒露光した。導電層が得られた。
【0137】
8.レーザー直接書刻
硝酸銀溶液(0.845gのAgNO3を10gの蒸留水に溶解したもの)とTRIS溶液(1.284gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを10gの蒸留水に溶解したもの)の混合物0.5mlを、被覆顕微鏡スライド(No.4による、粒子はNo.1による)に塗布した。この上に、レーザー(376nm)を用いてグリッド構造を刻んだ。得られた銀構造は導電性である。
【0138】
9.マスク露光
銀錯体溶液を、被覆基板(No.4による、粒子はNo.1による)と、石英ガラスからなるマスクとの間に導入した。この溶液を、マスクを介して1000WのHg/Xeランプに露光した。導電性構造(5μm線幅)が得られるまでの露光時間は、1分である(非ドープTiO2:3分)。
【0139】
1分露光後に得られた金属構造の光学顕微鏡写真を
図3に示す。この構造は、4.79μmの幅を有している。
【0140】
非ドープ粒子を、独国特許出願公開第102010052032号に記載されたとおりに製造した。
【0141】
48.53のTi(O-i-Pr)4を52.73gの1-PrOH(n-プロパノール)に添加した。得られた溶液に、塩酸(37%、3.34g)と10.00gの1-PrOHとからなる溶液をゆっくりと滴加した。次いで、得られた溶液に、4.02gのH2Oと20.00gの1-PrOHとの混合物を滴加した。得られた溶液は、わずかに黄変している可能性があり、耐圧消化容器(約130g)へと導入した。この溶液を容器中210℃で2.5時間処理した。
【0142】
得られた混合物を静かに移し、得られた粒子をフラスコに移した。溶媒を減圧下40℃でロータリーエバポレーターにより除去した。
【0143】
次いで、同様にして、粒子を基板に塗布した。