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特許7150731シングルプライマーからデュアルプライマーのアンプリコンへのスイッチング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】シングルプライマーからデュアルプライマーのアンプリコンへのスイッチング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20221003BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20221003BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20221003BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20221003BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12N9/24
C12N9/16 Z
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2019537053
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017052885
(87)【国際公開番号】W WO2018057846
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/398,251
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】311016949
【氏名又は名称】シグマ-アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Sigma-Aldrich Co. LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ウォード
(72)【発明者】
【氏名】キャロル・クリーダー
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ホイアーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・ケイ・ロバート
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/117040(WO,A1)
【文献】国際公開第1992/018521(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0228620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルプライマーPCRアンプリコンをデュアルプライマーPCRアンプリコンに変換するための方法であって、
DNA/cDNAを、シングル増幅プライマーを用いて増幅し、シングルプライマーPCRアンプリコンを生成すること、ここで、前記シングルプライマーPCRアンプリコンは、グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼの存在下で消化不可能な3’部分および消化可能な5’部分を含み、
前記シングルプライマーPCRアンプリコンを、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’部分を消化できる酵素であるグリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼで処理して、消化されたアンプリコンを形成すること;および
消化されたアンプリコンを一対のプライマーで増幅することにより、デュアルプライマーPCRアンプリコンを形成すること、ここで、前記一対のプライマーはそれぞれ、5’部分に互いに異なる配列を含み、3’部分にシングル増幅プライマーの消化不可能な3’部分に相同な配列を含み、
を含む、方法。
【請求項2】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンが、増幅条件下で、核酸とシングルPCRプライマーとを接触させることにより生成され、かつ、前記シングルPCRプライマーが消化可能な5’部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンが、RNAまたはDNAに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酵素がグリコシラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グリコシラーゼが、ウラシルDNAグリコシラーゼ、チミンDNAグリコシラーゼ、チミングリコールDNAグリコシラーゼ、8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ、3-メチルプリンDNAグリコシラーゼ、NthDNAグリコシラーゼ、NeiDNAグリコシラーゼ、MutY/MigDNAグリコシラーゼ、またはアルキルアデニンDNAグリコシラーゼである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンの5’部分が、少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基が、ウラシル、カルボキシルシトシン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyG)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyA)、ホルミルウラシル、ヒドロキシウラシル、ヒドロキシシトシン、ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、3-メチルアデニン、8-オキソグアニン、8-オキソアデニン、チミングリコール、ウレア、またはキサンチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酵素がウラシルDNAグリコシラーゼであり、かつ、少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基がウラシルである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
酵素が、5’-3’エキソヌクレアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記5’-3’エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージT7エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージT5エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼ、バクテリアエキソヌクレアーゼVIII、またはバクテリアDNAポリメラーゼIである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンが、その5’末端から5ヌクレオチド~25ヌクレオチドの範囲内に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、3’-5’ホスホロチオエート結合、3’-5’ホスホロボラン結合、2’-5’ホスホジエステル結合、2’O-メチル部分、2’フルオロ部分、プロピン塩基アナログ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンの消化可能な5’部分が、ウラシル、カルボキシルシトシン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyG)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyA)、ホルミルウラシル、ヒドロキシウラシル、ヒドロキシシトシン、ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、3-メチルアデニン、8-オキソグアニン、8-オキソアデニン、チミングリコール、ウレア、またはキサンチンから選択される少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シングルPCRプライマーが、前記消化不可能な3’部分に、または、前記消化可能な5’部分と前記消化不可能な3’部分との境界に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含み、かつ、前記少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、3’-5’ホスホロチオエート結合、3’-5’ホスホロボラン結合、2’-5’ホスホジエステル結合、2’O-メチル部分、2’フルオロ部分、プロピン塩基アナログ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンが、RNAで開始して調製される請求項1に記載の方法であって:
複数の合成プライマーの存在下で、少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、相補DNA(cDNA)の複数の第1鎖および第2鎖を生成すること、ここで、各合成プライマーは、(5’から3’に)グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼの存在下で消化可能な5’配列、アダプター配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する第1タグ配列を含む内部タグ配列、および前記RNA分子の一部に相補性を有する3’配列を含み、前記入れ子配列は前記消化不可能な3’部分に対応し
1つの増幅プライマーの存在下で、複数の2本鎖cDNA産物を増幅して、cDNA産物の増幅ライブラリーを生成すること、ここで、前記1つの増幅プライマーは、前記合成プライマーの5’配列および入れ子配列を含む;
cDNA産物の前記増幅ライブラリーを、グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼで消化すること;および
アダプター配列を、消化したcDNA産物のライブラリーの各5’末端に付与して、前記デュアルプライマーPCRアンプリコンとしての増幅DNAのライブラリーを生成すること、
を含み、ここで、前記増幅2本鎖DNA産物は各5’末端に付与された前記アダプター配列において互いに異なる配列を含む方法。
【請求項16】
逆転写が、逆転写酵素、デオキシリボヌクレオチド、および場合によりDNAポリメラーゼの存在下で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シングルプライマーPCRアンプリコンが、ディレクショナルなアンプリコンとなるように調製される、請求項1に記載の方法であって:
複数の第1合成プライマーの存在下で、少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、相補DNA(cDNA)の複数の第1鎖を生成すること、ここで、第1合成プライマーのそれぞれは、(5’から3’に)グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼの存在下で消化可能な5’配列、アダプター配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する第1タグ配列を含む内部タグ配列、および前記RNA分子の一部に相補性を有する3’配列を含む;
前記複数のcDNAの第1鎖を、複数の第2合成プライマーと接触させることにより、複数の2本鎖cDNA産物を合成すること、ここで、前記第2合成プライマーのそれぞれは、(5’から3’に)グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼの存在下で消化可能な5’配列、アダプター配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびcDNAの第1鎖の一部に相補性を有する3’配列を含み、前記入れ子配列は前記消化不可能な3’部分に対応し、ただし、各2本鎖cDNA産物の2本鎖領域と第1タグ配列または第2タグ配列の少なくとも1つとが隣接するように、前記複数の第1および第2合成プライマーのいずれか一方または両方が、前記第1および/または第2タグ配列を含む;
1つの増幅プライマーの存在下で前記複数の2本鎖cDNA産物を増幅してcDNA産物の増幅ライブラリーを生成すること、ここで、前記1つの増幅プライマーは、前記複数の第1および第2合成プライマーの5’配列と入れ子配列とを含む;
前記cDNA産物の増幅ライブラリーを、グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼで消化すること;および
アダプター配列を、消化したcDNA産物のライブラリーの各5’末端に付与して、前記デュアルプライマーPCRアンプリコンとしてのディレクショナルに増幅したDNAのライブラリーを生成すること、
を含み、ここで、前記ディレクショナルに増幅した2本鎖DNA産物は各5’末端に付与された前記アダプター配列において互いに異なる配列を含む、方法。
【請求項18】
逆転写が、逆転写酵素、デオキシリボヌクレオチド、および場合によりアクチノマイシンDの存在下で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
合成が、前記複数の第2合成プライマーの存在下での前記複数のcDNAの第1鎖の熱変性で始まり、合成が、非鎖置換型DNAポリメラーゼおよびデオキシリボヌクレオチドの存在下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
逆転写の後に、1本鎖特異的デオキシリボヌクレアーゼと接触させて、ハイブリダイズしていない合成プライマーを分解させる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
場合により、合成の後に1本鎖特異的デオキシリボヌクレアーゼと接触させて、ハイブリダイズしていない第2成プライマーを分解させる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の合成プライマーの3’配列が、ランダムプライマー、半ランダムプライマー、または2対以上のプールされた特異的プライマーを含む、縮重ヌクレオチドを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
逆転写で、複数の第1合成プライマーが、異なる内部タグを有する1つ以上のプライマーを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項24】
合成で、複数の第2合成プライマーが、異なる内部タグを有する1つ以上のプライマーを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項25】
増幅が、前記少なくとも1つの増幅プライマーの存在下での前記複数の2本鎖DNA産物の熱変性で始まり、耐熱性DNAポリメラーゼおよびデオキシリボヌクレオチドの存在下で行われる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
1つ以上の精製ステップがない、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記合成プライマーの5’部分が、少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基が、ウラシル、カルボキシルシトシン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyG)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyA)、ホルミルウラシル、ヒドロキシウラシル、ヒドロキシシトシン、ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、3-メチルアデニン、8-オキソグアニン、8-オキソアデニン、チミングリコール、ウレア、またはキサンチンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の合成プライマーの5’配列が、デオキシウリジンヌクレオチドを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
合成プライマーが、その5’末端から5ヌクレオチド~25ヌクレオチドの範囲内に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、3’-5’ホスホロチオエート結合、3’-5’ホスホロボラン結合、2’-5’ホスホジエステル結合、2’O-メチル部分、2’フルオロ部分、プロピン塩基アナログ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記タグ配列が、少なくとも6ヌクレオチド長である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記シングルプライマーPCRの増幅プライマーが、少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基が、ウラシル、カルボキシルシトシン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyG)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyA)、ホルミルウラシル、ヒドロキシウラシル、ヒドロキシシトシン、ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチン、3-メチルアデニン、8-オキソグアニン、8-オキソアデニン、チミングリコール、ウレア、またはキサンチンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記増幅プライマーが、少なくとも1つのデオキシウリジンヌクレオチドを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記シングルプライマーPCRの増幅プライマーが、その5’末端から5ヌクレオチド~25ヌクレオチドの範囲内に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドが、3’-5’ホスホロチオエート結合、3’-5’ホスホロボラン結合、2’-5’ホスホジエステル結合、2’O-メチル部分、2’フルオロ部分、プロピン塩基アナログ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記タグ配列が、少なくとも6ヌクレオチド長である、請求項19~37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本開示は、増幅反応中に、アンプリコン末端をスイッチングする方法に関する。特に、シングルプライマーPCRアンプリコンをデュアルプライマーPCRアンプリコンに変換することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応は、多くの用途において広く使用されている。例えば、DNAシーケンシング(例えば、次世代シーケンシング)用のライブラリーを調製するためにDNAまたはRNAが増幅され得る。全ゲノム増幅(WGA)または全トランスクリプトーム増幅(WTA)は、シングルプライマーPCRを含み、これはデュアルプライマー生成アンプリコンを必要とする用途には直接適合しない可能性がある。これは、アダプターをWGAまたはWTAアンプリコンに直接連結することによって、またはWGA/WTAプライマー配列を切除した後に、通常達成される。PCR中のプライマーをスイッチングするための迅速かつ効率的な手段が必要とされている。
【0003】
次世代シーケンシング用のライブラリー調製の一般的なワークフローには、鋳型断片化、末端修復、アダプターライゲーションおよびPCR増幅が含まれる。増幅を成功させるために不可欠なのは、アダプターをDNA断片の両末端に連結することである。ライゲーションは一般的に非定量的であるため、ほとんど無いに等しい少量の核酸がシーケンシングされる場合、このワークフローは困難になる。これらの方法は一般的に、(増幅前に)アダプター除去のために2つ以上の精製ステップを必要とし、増幅後のライブラリー表現に影響を与える可能性がある。
【0004】
アダプター配列を導入するための別の一般的に高収率の選択肢は、プライマー伸長によるものである。WGA/WTAの場合、これは、一部のRNA種の場合には、鋳型にハイブリダイズした、テイル縮重(tailed degenerate)プライマーまたはポリAプライマーを伸長することを包含する。プライマーダイマー増幅物(primer dimer amplification)は一般的に、縮重末端の5’側に異なるフォワードテイルとリバーステイルを使用する場合に、最も一般的な産物である。縮重塩基の5’側に、単一の共通プライミング配列を使用すると、プライマーダイマーは効果的に最小化される。これは、増幅が非常に非効率的である、短いプライマーダイマーヘアピンの形成によるものである。より長いアンプリコンもまたヘアピンを形成するが、小さいプライマーよりもはるかに安定性が低い。プライマー「ロリポップ(lollipop)」プライマーダイマー構造(ステムに対して非常に小さいループ)は、より効率的な増幅を可能にする。
【0005】
核酸ライブラリーでは、鋳型に対する、ライブラリー・アンプリコンの「ディレクショナリティ(directionality)」、すなわち方向性を知ることが、しばしば重要である。少量のRNAをディレクショナルに増幅するように設計された1つのプライマー伸長ベースのWTA法は、「鋳型スイッチング」の使用を包含するものであり、本明細書中に記載される「プライマースイッチング」の概念と混同されるべきではない。別のディレクショナルRNA増幅方法は、ライゲーション(および複数の精製ステップ)を使用する。このアプローチは、第2鎖cDNA合成の間のdUTP取り込み、続くシーケンスアダプター(sequencing adapter)のライゲーションおよび第2鎖のウラシルDNAグリコシラーゼ消化、さらに続く得られたアンチセンスcDNAライブラリーのデュアルプライマーPCR増幅に依存する。
【0006】
それゆえ、低いインプット量および/または低い品質(FFPE)に適用可能な、精製ステップが無い、かつ増幅産物の撚り(strandedness)を示すことができる、核酸増幅方法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の様々な局面のうちの1つは、シングルプライマーPCRアンプリコンをデュアルプライマーPCRアンプリコンに変換するための方法の提供である。本方法は、シングルプライマーPCRアンプリコンを、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’部分を消化できる酵素で処理して、消化されたアンプリコンを形成すること、および、消化されたアンプリコンを、消化されたアンプリコンの未消化部分に相同性を有する一対のプライマーで増幅することにより、デュアルプライマーPCRアンプリコンを形成することを含む。
【0008】
本開示の他の局面および反復(iteration)は、DNAまたはRNAからの増幅を含む。RNAには、ディレクショナルおよび非ディレクショナルな増幅の選択肢がある。本方法はまた、マルチプレックス増幅にも適用することができ、ここでは、第1プライマーの3’縮重度が、完全に、または部分的に縮重した混合物ではなく、標的アンプリコンの予め決められたセットを含むように、減少している。すべての場合において、プライマーダイマー増幅物は、最初の増幅にシングルPCRプライマーを使用することによって、抑制される。
【0009】
DNAの増幅には、シングルPCRプライマー配列を5’末端に付加した鋳型ターゲティングプライマーを用いた、複製ライブラリーの合成と、それに続くPCRが必要である。鋳型ターゲティングプライマーをアニーリングし、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いて伸長させ、次いでシングルプライマーを用いてPCR増幅する。非ディレクショナルRNA増幅は、同様に行う。鋳型ターゲティングプライマーをアニーリングし、鎖置換型逆転写酵素/DNAポリメラーゼを用いて伸長させ、次いでシングルPCRプライマーを用いてPCR増幅する(図4および図5参照)。ディレクショナルRNA増幅は、非鎖置換条件下で、第1鎖合成と第2鎖合成を順次行うことにより達成される。ディレクショナリティは、第1および/または第2鎖鋳型ターゲティングプライマー中に設計されたディレクショナルタグを用いてモニターする(図21、22、および23参照)。分子同一性は、合成プライマー中に設計されたタグによって同様にモニターすることができる。
【0010】
シングルプライマーアンプリコンからデュアルプライマーアンプリコンへの変換は、デュアルプライマーの、シングルプライマーアンプリコンへのハイブリダイゼーションを必要とする。デュアルプライマーが、シングルプライマーの全部ではないがいくつかと相同である場合、分子間および分子内アンプリコンハイブリッドの安定性は、デュアルプライマーハイブリダイゼーションと効果的に競合する(図6参照)。この効果は、消化可能な残基、または、エキソヌクレアーゼ耐性残基を、シングル増幅プライマー中に設計することによって、場合により鋳型ターゲティングプライマーの配列中に設計することによって、軽減される。消化は、分子間および分子内アンプリコンハイブリッドの安定性を低下させ、デュアルプライマーによる効率的なプライミングを可能にする。消化可能残基には、当業界で周知の、グリコシラーゼ感受性(glycolase sensitive)部分およびヌクレアーゼ耐性部分が含まれる。好ましい実施形態は、鎖間/鎖内ハイブリダイゼーションを不安定化するために、ウラシル残基とウラシルDNAグリコシラーゼとを組み合わせる(図4および図5参照)。
【0011】
ワークフローは、一般的にまとめることができる:プライマーは、ハイブリダイズした第1プライマーを伸長させ、その後(該当する場合)第2プライマーを伸長させ、シングルプライマーで増幅し、5’アンプリコン末端を消化し、その後、デュアルプライマーで増幅する。デュアルプライマーアンプリコンは、(限定されないが)次世代シーケンシングなどの下流の用途に好適である。第1および第2プライマーは、一般的に、3’ランダムプライマーから定方向プライマー対のプールにわたる、複数のプライマーであり得、数個から数百万の特有のアンプリコンを生産する(図14、15および16参照)。
【0012】
本開示のさらなる局面は、(a)それぞれが(5’から3’に)、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を場合により含む5’配列;アダプタープライマー(adapter primer)配列に相同性を有する入れ子配列(nested sequence)、ディレクショナルな、および/または分子同一性の(molecular ID)増幅のためのタグ配列を含む、場合により存在する内部タグ配列、ランダム配列、半ランダム(semi-random)配列、またはプールされた標的特異的配列を含む3‘配列を含む、複数のオリゴヌクレオチドを含む、複数の人工オリゴヌクレオチドを提供する(図3A参照)。ディレクショナルな増幅については、それぞれが(5’から3’に)、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を場合により含む5’配列;第2タグ配列アダプタープライマー配列に相同性を有する入れ子配列;場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、またはプールされた標的特異的配列を含む3’配列を含む、複数の第2オリゴヌクレオチドが提供され、だたし、ディレクショナルな増幅については、複数の第1および第2オリゴヌクレオチドの一方または両方が、第1および/または第2タグ配列を含む。DNAまたはRNAから出発するかどうかにかかわらず、かつ、ディレクショナルまたは非ディレクショナルにかかわらず、さらなる局面は、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を含む人工オリゴヌクレオチドである(図3B参照)。
【0013】
本開示のさらに別の局面は、DNAまたはRNAを増幅するためのキットを包含する。キットは、(a)それぞれの合成プライマーが、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を場合により含む5’配列、アダプタープライマー配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する内部タグ配列、およびランダムまたは半ランダムの3’配列を含む、複数の合成プライマーを場合により含み;および(b)それぞれの第2合成プライマーが、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を場合により含む5’配列、アダプター配列に相補性を有する入れ子配列、場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダムまたは半ランダムの3’配列を含む、複数の第2合成プライマーを場合により含む。ディレクショナルな増幅については、複数の第1および第2合成プライマーのいずれか一方または両方が、第1および/または第2タグ配列を含む。さらに、キットは、合成プライマーの5’配列、および、少なくとも1つの消化可能残基またはヌクレアーゼ耐性残基を含む、少なくとも1つの増幅プライマーを含む。消化可能残基は、好ましい実施形態において、ウラシルである。
【0014】
本開示の他の局面および反復を、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴う本特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な料金の支払いにより、官庁により提供されるであろう。
【0016】
図1図1は、シングルおよびデュアルプライマーPCRの、プライマーおよび鋳型配列を図示している。
【0017】
図2図2は、シングルプライマーPCR中の、ヘアピン鋳型形成とプライマー伸長の優位性に影響を与える変数を図示している。
【0018】
図3図3は、プライマーデザインを図示している。A.合成プライマー。タグは、ディレクショナリティ、分子バーコーディング、または両方のためであり得る。B.本明細書で開示されるシングルプライマーPCRプライマー。C.デュアルプライマーPCRプライマーを図示している。同じ色で示されているように、デュアルプライマーの3’領域は、合成プライマーと、場合により増幅プライマーと、配列相同性を有する。
【0019】
図4図4は、5’消化可能部分が、グリコシラーゼ感受性塩基(例えば、ウラシル残基)を含む、シングルプライマーPCRアンプリコンの例を表す。ここでは、アンプリコンをグリコシラーゼで消化した後、アダプタープライマーでアニーリング/伸長して、デュアルプライマーPCRを行う。アダプタープライマー配列を含む低Tmステム構造は、場合により存在する。つまり、赤いアダプター部分は、相補的である必要はない。
【0020】
図5図5は、5’消化可能部分がヌクレアーゼ耐性塩基を含む、シングルプライマーPCRアンプリコンの例を図示している。ここでは、アンプリコンを5’-3’エキソヌクレアーゼで消化した後、アダプタープライマーでアニーリング/伸長して、デュアルプライマーPCRを行う。アダプタープライマー配列を含むステム構造は、場合により存在する。
【0021】
図6図6は、未消化のシングルプライマーPCRアンプリコンの、デュアルプライマーPCRプライマーによる非効率的なプライミングを示す。
【0022】
図7図7は、例示的なウラシル含有シングルおよびデュアルプライマーPCR増幅のプライマーを図示している(記載の順に、それぞれ配列番号:2~6)
【0023】
図8図8は、例示的なエキソヌクレアーゼ耐性シングルおよびデュアルプライマーPCR増幅のプライマーを図示している(記載の順に、それぞれ配列番号:21および3~6)
【0024】
図9図9は、5’末端付近にウラシル塩基を含むシングルプライマーPCRアンプリコンのUDGによる処理あり/なし後の、デュアルプライマーPCRのバイオアナライザーのトレースが、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’末端消化がない場合に、アニーリング(およびPCR)が非常に非効率的であることを示すことを、表す(記載の順に、それぞれ配列番号:2および2~4)
【0025】
図10図10は、デュアルプライマー選択を図示する。一対のフォワードおよびリバースPCRプライマーによる増幅は、単一のフォワードまたはリバースプライマーとは対照的に、より効率的である。
【0026】
図11図11は、示したような、シングルプライマーまたはデュアルプライマーの組み合わせの存在下でPCRを行った、シングルプライマーPCRアンプリコンのUDG消化後のデュアルプライマーPCRのバイオアナライザーのトレースを示す。様々な組み合わせのサイクル閾値(threshold cycle)(Ct)もまた示す。
【0027】
図12図12は、短鎖または長鎖デュアルプライマーPCRプライマーの存在下でPCRが行われた、シングルプライマーPCRアンプリコンのUDG消化後の、デュアルプライマーPCRのバイオアナライザーのトレースを、表す(記載の順に、それぞれ配列番号:3~6)
【0028】
図13図13は、本明細書に開示される、シングルプライマーからデュアルプライマーへのスイッチング法を用いた、単一細胞由来の全ゲノム増幅を示す。
【0029】
図14図14は、典型的なDNA増幅ワークフローを図示している。
【0030】
図15図15は、典型的なRNA増幅ワークフローを図示している。
【0031】
図16図16は、典型的なディレクショナルRNA増幅ワークフローを図示している。
【0032】
図17図17は、Yアダプターシステムに用いられる例示的なプライマーデザインを示している。図3に記載されるようなプライマーセグメントの合成。
【0033】
図18図18は、ペアードアダプターシステムに用いられる例示的なプライマーデザインを示している。図3に記載されるようなプライマーセグメントの合成。
【0034】
図19図19は、1本鎖核酸における、プライミングおよび鎖置換型プライマー伸長を示す。
【0035】
図20図20は、図19由来のプライマー伸長産物における、プライミングおよびプライマー伸長を示す。
【0036】
図21図21は、1本鎖核酸における、ディレクショナルな、第1鎖プライミングおよびプライマー伸長を示す。
【0037】
図22図22は、図21由来のプライマー伸長産物における、ディレクショナルな、鎖プライミングおよびプライマー伸長を示す。
【0038】
図23図23は、プライマー伸長および増幅した鋳型における、シングルおよびデュアルプライマー増幅のプライマーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本開示は、プライマースイッチングのための方法を提供する。さらに具体的には、シングルプライマーPCRアンプリコンをデュアルプライマーPCRアンプリコンに変換するための方法が、本明細書で提供される。定義によると、シングルプライマーPCRは、5’-3’相補的なアンプリコンを作製する(図1参照)。これらのアンプリコンの変性および冷却により、3’-5’融解温度(Tm)がプライマー配列によって決定される、分子間および分子内5’-3’ハイブリッドの混合物が作製される。これらのシングルプライマーアンプリコンを、デュアルプライマーアンプリコンに変換すること(ここでは、デュアルプライマーの3’部分が、シングルプライマーPCRアンプリコンの3’部分に相補的である)は、デュアルプライマーの1本鎖(すなわち、変性)シングルプライマーアンプリコンへのアニーリングを必要とする。しかしながら、デュアルプライマーのTmは、シングルプライマーのTmよりも、必ず低いものである。このように、シングルプライマーPCRアンプリコン分子間/分子内ハイブリッドは、デュアルプライマーハイブリダイゼーションに必要とされるよりも高い温度でアニールし、それ故、デュアルプライマーのアニーリングおよびプライマー伸長を、阻害するか、または、それらと不利に競合するであろう。本明細書で開示される方法は、アンプリコンの5’末端の消化を可能にするシングルプライマーPCR用のプライマーを使用することにより、この問題を解決する。従って、5’消化末端と3’相補的末端との間の相互作用は安定性が低く、それによって異なるプライマーへのアニーリングが可能になる。
【0040】
本明細書ではまた、シングルプライマーからデュアルプライマーへのスイッチングの改変法もまた提供される。例えば、異なるシングルPCRプライマー間のスイッチには、同様の方法を用いることができる。別の例として、アダプター配列をPCRアンプリコンに付けるために同様の方法を用いることができる。
【0041】
(I)シングルプライマーアンプリコンからデュアルプライマーアンプリコンへのスイッチング
本開示の一局面は、シングルプライマーPCRアンプリコンをデュアルプライマーPCRアンプリコンに変換するための方法を包含する。本方法は、以下を含む:標的核酸を、場合により消化可能な5’末端と、完全にまたは部分的に縮重した3’末端とを含み、その間を、デュアルプライマーPCRプライマー配列に相同な一連の塩基と、場合により任意のタグ配列とによって区切られた複数の合成プライマーと接触させることにより、シングルプライマーPCR鋳型を形成すること;シングルプライマーPCR鋳型を、増幅をサポートする条件下で、消化可能な5’部分と、場合により消化不可能な3’部分とを含むプライマーと、接触させること(以下に記載のステップI、II、およびIII);
シングルプライマーPCRアンプリコンを、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’部分を消化できる酵素で処理して、消化されたアンプリコンを形成すること(以下に詳述のステップIV);および、消化されたアンプリコンの未消化部分に相同性を有する一対のPCRプライマーで、消化されたアンプリコンを増幅し(以下に詳述のステップV)、それにより、デュアルプライマーPCRアンプリコンを形成すること。
【0042】
ステップI:シングルプライマーPCRアンプリコンの形成
本方法の第1のステップは、プライマー伸長条件下で、標的核酸を合成プライマーと接触させることにより、シングルプライマーPCRアンプリコンを形成することを含む。
【0043】
(a)合成プライマーおよびシングルプライマーPCRプライマー
本明細書で用いられる合成プライマーは、少なくとも3つの部分を含む:シングルプライマーPCRプライマーと相同な5’部分、デュアルプライマーPCRプライマーの3’末端に場合により相同な入れ子部分、および3’鋳型ターゲティング配列である。5’部分は、場合により消化可能である。3’部分は、完全にランダムな配列、準ランダム(quasi random)な配列、またはプールされたターゲティングプライマー配列の合計であり得る。いくつかの実施形態において、合成プライマーは、合成方向および/または分子同一性をモニターするのに有用な、タグ配列(本明細書では、バーコードまたはインデックス配列とも呼ばれる)を含み得る。シングルプライマーPCRプライマーは、少なくとも合成プライマーの第1の5’部分を含み、消化可能である。いくつかの実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、2つの異なる部分である、消化可能な5’部分および消化不可能な3’部分を含む(図3B参照)。いくつかの実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーの消化可能な5’部分は、少なくとも1つのグリコシラーゼ感受性塩基を含む。他の実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、シングルプライマーPCRプライマーの消化可能な5’部分と消化不可能な3’部分との境界に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む。消化可能部分の配列は、場合により、以下に詳述したデュアルプライマーPCRプライマーの3’部分に相同である。
【0044】
いくつかの実施形態において、合成プライマーは、増幅条件で用いてよい。
【0045】
ある実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーの5’部分は、1つ以上のグリコシラーゼ感受性塩基を含む(図3B参照)。好適なグリコシラーゼ感受性塩基の非限定的な例には、ウラシル、5-カルボキシルシトシン(5-caC)、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyG)、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン(FapyA)、5-ホルミルシトシン(fC)、5-ホルミルウラシル(fU)、5-ヒドロキシシトシン(hoC)、5-ヒドロキシウラシル(hoU)、6-ヒドロキシウラシル、5,6-ジヒドロキシウラシル、5-ジヒドロキシメチルシトシン(hmC)、5-ヒドロキシメチルウラシル(hmU)、ヒポキサンチン、3-メチルアデニン(3-mA)、3-メチルシトシン(3-mC)、5-メチルシトシン(5-mC)、8-オキソアデニン(8-oxoA)、8-オキソグアニン(8-oxoG)、チミングリコール(Tg)、ウレア、またはキサンチンが含まれる。特定の実施形態において、グリコシラーゼ感受性塩基はウラシルである。
【0046】
一般に、シングルプライマーPCRプライマーの消化可能な5’部分に存在する塩基の少なくとも40%が、グリコシラーゼ感受性塩基である。いくつかの実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーの消化可能な5’部分に存在する塩基の、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または少なくとも約100%が、グリコシラーゼ感受性塩基である。別の実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、または少なくとも15個のグリコシラーゼ感受性塩基を含有し得る。
【0047】
他の実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、PCRプライマーの3’部分内に、または、消化可能な5’部分とPCRプライマーの3’部分との境界に、少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む(図3B参照)。例えば、シングルプライマーPCRプライマーは、その5’末端から約5ヌクレオチド~約15ヌクレオチドの間に少なくとも1つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含み得る。好適なヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドの例には、3’-5’ホスホロチオエート結合,3’-5’ホスホロボラン(phosphoroborane)結合、2’-5’ホスホジエステル結合、2’O-メチル部分、2’フルオロ部分、プロピン塩基アナログ、またはこれらの組み合わせを含むものが含まれるが、これらに限定されない。例えば、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドは、3’-5’ホスホロチオエート結合、3’-5’ホスホロボラン結合、または2’-5’ホスホジエステル結合ヌクレアーゼ、並びに、2’フルオロ部分、および/またはプロピン塩基アナログを含み得る。いくつかの実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーの消化不可能な3’部分、または消化可能な5’部分と消化不可能な3’部分との境界は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または少なくとも12個のヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む。
【0048】
シングルプライマーPCRプライマーの長さは、変化し得る。一般に、シングルプライマーPCRプライマーは、約14ヌクレオチド~約40ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。様々な実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、約14、15、16、17、18、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態において、消化可能な5’部分は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド長であり得、消化不可能な3’部分は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態において、消化可能な5’部分は、約8~約14ヌクレオチドの長さの範囲であり得、消化可能な3’部分は、約10~約14ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、合成プライマーは、さらに、3’末端に縮重領域を含む。縮重ヌクレオチドは、2倍の縮重度を有し得(すなわち、2つのヌクレオチドのうちの1つであり得)、3倍の縮重度を有し得(すなわち、3つのヌクレオチドのうちの1つであり得)、または4倍の縮重度を有し得る(すなわち、4つのヌクレオチドの1つ、AまたはCまたはGまたはTであり得る)。3倍の縮重度を有するヌクレオチドには、「B」(CまたはGまたはTであり得る)、「D」(AまたはGまたはTであり得る)、および「V」(AまたはCまたはGであり得る)が含まれる。2倍の縮重度を有するヌクレオチドには、「K」(GまたはTであり得る)、「M」(AまたはCであり得る)、「R」(AまたはGであり得る)、「Y」(CまたはTであり得る)、「S」(CまたはGであり得る)、および「W」(AまたはTであり得る)が含まれる。縮重領域は、約4~約18ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。ある実施形態において、縮重領域は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18ヌクレオチド長であり得る。これらの縮重度は、混合塩基合成法(mixed base synthetic method)または個々に合成されたオリゴヌクレオチドをプールすることにより、生じることができる。
【0050】
一般に、合成プライマーおよびシングルプライマーPCRプライマーは、DNA合成をプライミングするために、1本鎖であり、3’末端にヒドロキシル基を有する。増幅プライマーは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン/ウリジン)またはヌクレオチドアナログであり得る。ヌクレオチドアナログは、修飾されたプリンまたはピリミジン塩基および/または修飾されたリボソーム部分を有するヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログは、天然のヌクレオチド(例えば、イノシン)、または非天然のヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、並びに、該塩基の炭素および窒素原子の他の原子との置換(例えば、7-デアザプリン)が含まれる。ヌクレオチドアナログにはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルフォリノも含まれる。
【0051】
合成プライマーおよび増幅プライマーのデザインは、意図される用途およびアダプタープライマーデザインに依存するだろう。
【0052】
一般に、シングルプライマーPCRプライマーは、約40~60%の平均GC含有量と、約50℃~約80℃の平均融解温度(Tm)を有するであろう。ある実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、または約75℃のTmを有し得る。
【0053】
合成プライマーおよび増幅プライマーのデザインは、下流のアダプターシステムに依存する。全ての場合において、合成プライマーは、増幅プライマーの全部または一部に相同な消化可能なセグメント、アダプタープライマー配列の全部または一部に相同な入れ子の消化不可能なセグメント、ディレクショナルなおよび/または分子バーコーディングに用いられる場合により存在するタグ配列、および3’鋳型プライミングセクションを含むであろう(図3Aおよび図3B参照)。鋳型プライミングセグメントは、完全な縮重か(全てN)、または、特異的プライミング配列と、その間の任意の構成のプールであり得る。Yアダプター用途については、1つの消化可能なセグメント+1つの入れ子の消化不可能なセグメントが存在し得る(図17参照)。入れ子の消化不可能なセグメントは、Yアダプターステムの配列と相同であろう。ペアードアダプター用途については、2つの合成プライマー:1つの消化可能な増幅プライマー+2つの入れ子のアダプタープライマーセグメント、が存在するだろう。増幅プライマーは、Yアダプター用途については、消化可能なおよび消化不可能なセグメントを含み、一方で、ペアードアダプター用途については、消化可能なセグメントのみ含むであろう(図18参照)。
【0054】
シングルプライマーPCRプライマーは、市販のプライマーデザインソフトウェア(例えば、Primer3、PrimerQuest Tool、NPprimer、Multiplex primer designなど)を使ってデザインすることができ、標準的なオリゴヌクレオチド化学合成法を用いて合成することができる。
【0055】
(b)オリゴヌクレオチド
本開示の一局面は、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプール、固定の5’配列、場合により存在する内部タグ配列、並びに5’配列と内部タグおよび/または3’鋳型ターゲティング配列との間の入れ子配列を含む、人工オリゴヌクレオチドを包含する(図3A参照)。さらなる局面は、RNAのディレクショナルな増幅に用いられ得る、複数の第1オリゴヌクレオチドおよび複数の第2オリゴヌクレオチドを含む、複数の人工オリゴヌクレオチドを提供する。複数の第1オリゴヌクレオチドの各オリゴヌクレオチドは、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプール、少なくとも1つの消化可能残基を場合により含む固定の5’配列、アダプター配列に相同な入れ子配列、および場合により、第1タグ配列を含む内部タグ配列を含む。複数の第2オリゴヌクレオチドの各オリゴヌクレオチドは、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプール、少なくとも1つのデオキシウリジン残基を含む固定の5’配列、アダプター配列に対応する入れ子配列、および場合により、第2タグ配列を含む内部タグ配列を含むが、ただし、複数の第1および第2オリゴヌクレオチドの一方または両方は、第1および/または第2タグ配列を含む(図21および図22参照)。
【0056】
一般に、オリゴヌクレオチドは1本鎖である。該ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、A、C、G、T、U、dU、など)並びにヌクレオチドアナログを含み得る。ヌクレオチドアナログは、修飾されたプリンまたはピリミジン塩基および/または修飾されたリボソーム部分を有するヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログは、天然のヌクレオチド(例えば、イノシン)、または非天然のヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、並びに、該塩基の炭素および窒素原子の他の原子との置換(例えば、7-デアザプリン)が含まれる。ヌクレオチドアナログにはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルフォリノも含まれる。オリゴヌクレオチドの主鎖は、ホスホジエステル結合、並びに、ホスホチオエート、ホスホラミダイト、またはホスホロジアミデート結合を含むことができる。
【0057】
(i)3’配列
【0058】
複数のオリゴヌクレオチドにおける各オリゴヌクレオチドは、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプールを含む(図3A参照)。ランダムまたは半ランダム配列は、一般的に、オリゴヌクレオチドの3’配列が標的RNA(またはcDNA産物)とハイブリダイズするように、標的核酸に十分な相補性を有する。いくつかの実施形態において、3’配列は、ランダムであり得、4倍縮重ヌクレオチド(すなわち、N)から成り得る。例えば、3’配列はポリNであり得る。他の実施形態において、3’配列は、半ランダムであり得、少なくとも1つの2倍、3倍、または4倍縮重ヌクレオチドを含み得る。ある実施形態において、3’配列は、2倍縮重ヌクレオチド(すなわち、K、M、R、Y、および/またはS)、3倍縮重ヌクレオチド(すなわち、B、D、H、および/またはV)、4倍縮重ヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、3’配列は、NおよびK(すなわち、GおよびT)縮重ヌクレオチドの組み合わせを含み得る。例えば、3’配列は、任意の順序で並んだ約同数のNおよびKヌクレオチドを含み得る。好適な「NK」配列の例には、5’-KNNNKNKNK-3’,5’-NNNKNKKNK-3’、および5’-NKNNKNNKK-3’が含まれる。さらなる実施形態において、3’配列は、非縮重および縮重ヌクレオチドの組み合わせを含み得る。例えば、3’配列は、3’末端に、ポリdT 配列および縮重ヌクレオチドを含み得る。これらの配列の例には、ポリdT-NN、ポリdT-VNなどが含まれる。よりさらなる実施形態において、3’配列は、前述の配列のいずれかの組み合わせを含み得る。例として、5’-KNNNKNKNK-3’、5’-NNNKNKKNK-3’、5’-NKNNKNNKK-3’、およびポリdT14-VN(配列番号:20)の組み合わせが、Complete Whole Transcriptome Amplification Kit(WTA2);Sigma-Aldrichにおいて利用可能である。
【0059】
3’配列の長さは変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、3’配列は約5ヌクレオチド長から約30ヌクレオチド長の範囲であり得る。ある実施形態において、3’配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態において、3’配列は、約6から約20ヌクレオチド長さの範囲であり得る。
【0060】
(ii)5’配列
【0061】
各オリゴヌクレオチドは、固定の5’配列を含む(図3Aおよび3B参照)。いくつかの実施形態において、5’配列は、非相補的ヌクレオチドを含み、それにより、各オリゴヌクレオチド内の分子内相互作用、および/または、複数のオリゴヌクレオチドにおけるオリゴヌクレオチドの5’配列間の分子内相互作用を低減させる。非相補的ヌクレオチドの例には、K(すなわち、GおよびT)、M(すなわち、AおよびC)、R(すなわち、AおよびG)、またはY(すなわち、CおよびT)が含まれる。さらに、非相補的ヌクレオチドは、少なくとも1つのチミジン残基が、デオキシウリジン残基で置換され得るように、選ばれる。従って、5’配列は、K(すなわち、GおよびT)またはY(すなわち、CおよびT)ヌクレオチドを含み得、1つ以上のチミジン残基が、デオキシウリジン(dU)で置換されている。特定の実施形態において、5’配列は、GおよびdU残基を含み得る。いくつかの実施形態において、5’配列は、1、2、3、4、5、6、7、8個、またはそれを超えるdU残基を含有し得る。
【0062】
固定の5’配列の長さは、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、固定の5’配列は、約5ヌクレオチド長から約40ヌクレオチド長の範囲であり得る。ある実施形態において、固定の5’配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチド長で有り得る。特定の実施形態において、固定の5’配列は、約6から約18ヌクレオチド長の範囲であり得る。
【0063】
(iii)入れ子配列
【0064】
各オリゴヌクレオチドさらに、固定の5’配列の3’末端に、入れ子配列を含む(図3A参照)。入れ子配列は、アダプター配列のある領域に相同性を有する。例えば、入れ子配列は、アダプター配列の2本鎖領域に相同性を有し得る(例えば、Illumina(登録商標) (San Diego, CA)由来)。入れ子配列は、当業界で知られる他のアダプターのある領域に、相同性を有し得る。
【0065】
入れ子配列の長さは、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、入れ子配列は、約5ヌクレオチド長から約25ヌクレオチド長の範囲であり得る。ある実施形態において、5’配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態において、入れ子配列は、約8から約15ヌクレオチド長の範囲であり得る。
【0066】
(iv)内部タグ配列
【0067】
各オリゴヌクレオチドはまた、場合により存在する内部タグ(またはバーコード)
配列を含み得る(図3A参照)。一般に、タグ配列は、(固定の5’配列の3’末端の)入れ子配列と、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプールとの間に存在する。タグ配列は、出発RNA分子の方向および/または分子同一性に関してcDNA産物をタグ付けするのに役立つ。オリゴヌクレオチドが、場合により存在するタグ配列を含有する場合、タグ配列は、RNAの3’末端の方向性を示す働きをする第1タグ配列、または、RNAの5’末端の方向性を示す働きをする第2タグ配列であり得る。
【0068】
タグ配列のヌクレオチド配列は、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、タグ配列は、標的RNA分子には存在しない、人工配列である。人工タグ配列中のヌクレオチドの含有量は、G/TおよびC/Aの多様性を提供するためにバランスをとることができる。さらに、第1および第2オリゴヌクレオチドは、標的核酸へのプライマーアニーリング中に生じる偏りに対処するために、ワトソン-クリック塩基対ごとにバランスをとることができる。
【0069】
一般に、タグ配列は、約4ヌクレオチドから約20ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。様々な実施形態において、タグ配列は、約5ヌクレオチド長から約15ヌクレオチド長、約6ヌクレオチド長から約12ヌクレオチド長、または約7ヌクレオチド長から約10ヌクレオチド長の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、タグ配列は、少なくとも6ヌクレオチド長である。他の実施形態において、タグ配列は、7ヌクレオチド長、8ヌクレオチド長、または9ヌクレオチド長である。
【0070】
(c)標的核酸
本方法は、プライマー伸長条件下で標的核酸を合成プライマーと接触させ、その後増幅条件下でシングルプライマーPCRプライマーと接触させることにより、シングルプライマーPCRアンプリコンを形成することを含む。様々な標的核酸を、シングルプライマーPCRで増幅することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸はゲノムDNAであり得る。ゲノムDNAは、核、ミトコンドリア、または色素体DNAであり得る。いくつかの実施形態において、標的核酸は、ゲノムライブラリー、すなわち、細胞または細胞集団の全ゲノムを含み得る。他の実施形態において、標的核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)または非コードRNA(例えば、マイクロRNA(miRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、長鎖遺伝子間非コードRNA(lincRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、Piwi結合RNA(piRNA)、トランス作動性RNA(rasiRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ミトコンドリアtRNA(MT-tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、SmY RNA、Y RNA、スプライスリーダーRNA(SL RNA)、および/またはテロメラーゼRNA要素)から転写された、相補DNA(cDNA)であり得る。ある実施形態において、標的核酸は、細胞または細胞集団のトランスクリプトームに由来する、cDNAのライブラリーであり得る。当業者は、ゲノムDNAの単離、RNAの単離、および/またはRNAからのcDNAの調製のための手段(例、標準的プロトコール、市販のキットなど)に精通している。
【0071】
標的核酸は、野生型であり得、一塩基多型(SNP)を含み得、複数のヌクレオチド置換を含み得、挿入および/または欠失(インデル)を含み得、および/またはエピジェネティック修飾(例えば、メチル化シトシン、他の修飾されたヌクレオチドなど)を含み得る。
【0072】
標的核酸は、真核生物細胞、古細菌細胞、または細菌細胞に由来し得る。好適な真核生物細胞には、哺乳動物細胞(例えば、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、家畜、動物園の動物、げっ歯類、研究動物など)、非哺乳動物脊椎動物細胞(例えば、家禽、魚、カエルなど)、植物細胞(例えば、トウモロコシ、マメ科植物、草、アブラナなど)、無脊椎動物細胞(例えば、昆虫、虫(worm)など)、真菌細胞、単細胞生物などが、含まれる。
【0073】
増幅反応に含まれる標的核酸の量は、約1アトグラム(ag)~約100ナノグラム(ng)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、単一(哺乳動物)細胞が、標的核酸を提供する。
【0074】
(d)増幅条件
上記に詳述したように、合成プライマーの後に、シングルプライマーPCRプライマーを、増幅条件下で、上記に詳述したように、標的核酸と接触させて、シングルプライマーPCRアンプリコンを形成する。増幅条件は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を含む(図14、15および16参照)。
【0075】
PCRは、好適なバッファーの存在下での、DNAポリメラーゼおよびデオキシリボヌクレオチド(例えば、dNTP)との接触を含む。一般的に、PCR増幅に用いられるDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性を有し、場合により、3’から5’のプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。一般に、DNAポリメラーゼは、好熱性(例えば、TaqDNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、TliDNAポリメラーゼ、TflDNAポリメラーゼ、TthDNAポリメラーゼ、BstDNAポリメラーゼ、PwoDNAポリメラーゼ、KODDNAポリメラーゼ、これらの変異体、またはこれらの組み合わせ)であろう。あるいは、DNAポリメラーゼは中温性(例えば、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIのKlenow断片、phi29DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、これらの変異体、またはこれらの組み合わせ)であり得る。
【0076】
PCR増幅反応は、通例のPCR、リアルタイムPCR、定量的PCR、高速PCR、ホットスタートPCR、タッチダウンPCR、マルチプレックスPCR、ロングレンジPCRなどであり得る。
あるいは、増幅反応は、多置換増幅(MDA)、転写増幅(TMA)、核酸配列ベースの(nucleic acid sequence-based)増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、ヘリカーゼ依存増幅(HAD)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、ローリングサークル増幅(RCA)、またはライゲーション媒介(ligation mediated)増幅であり得る。
【0077】
PCR増幅反応は、変性ステップとアニーリング/伸長ステップとの間のサイクルを含む。全サイクル数は、約10~約60の範囲であり得る。アニーリング/伸長は、単一ステップの間に起こり得るか、または、アニーリング/伸長は、別々のアニーリングおよび伸長ステップの間に起こり得る。一般に、変性ステップの温度は、約90℃~約100℃の範囲であり得、変性ステップの時間は、約10秒~約10分の範囲であり得る。単一のアニーリング/伸長ステップは、約50℃~約75℃の範囲であり得、単一のアニーリング/伸長ステップの時間は、約1分~約12分の範囲であり得る。あるいは、アニーリングステップの温度は、約50℃~約75℃の範囲であり得、アニーリングステップの時間は、約20秒~約12分の範囲であり得、伸長ステップの温度は、約68℃~約75℃の範囲であり得、および伸長ステップの時間は、約20秒~約5秒の範囲で変化し得る。最終の伸長ステップの後に、約5分、10分、またはそれ以上の間続く、伸長温度での最終エロンゲーション(terminal elongation)ステップを行うことができる。
【0078】
それゆえ、本明細書で開示される方法の第1のステップは、消化可能な5’部分を含むシングルプライマーPCRアンプリコンを生成する。いくつかの実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンは、該アンプリコンの5’末端付近に、1つ以上のグリコシラーゼ感受性塩基を含む。他の実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンは、該アンプリコンの5’末端付近に、1つ以上のヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む。2本鎖アンプリコンの変性の際に、シングルプライマーPCR反応の間に作製されたアンプリコンの5’および3’末端は相補的であるため、1本鎖アンプリコンは分子内(ヘアピン)および/または分子間構造を形成することができる(図1図2図4および図5参照)。
【0079】
ステップII:DNAまたはRNAの、非ディレクショナルまたはディレクショナルな増幅
【0080】
ステップIIにおいて、DNAまたはRNAを、以下のステップII非ディレクショナルおよびステップIIディレクショナルのセクションに、それぞれ記載したように、非ディレクショナルに、またはディレクショナルに、増幅する。
【0081】
ステップII非ディレクショナル:DNAまたはRNAの非ディレクショナルな増幅
DNAについては、非ディレクショナルな増幅ステップは、複数の合成プライマーの存在下で少なくとも1つのDNA分子を複製して、複数の2本鎖鋳型を生成することを含み、ここで、複数の合成プライマーのそれぞれが、(5’から3’に)固定の、場合により消化可能な5’配列、アダプター配列に相補性を有する入れ子配列、場合により存在するタグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または目的のDNA分子に相補性を有する特異的3’配列のプールを含む(図14参照)。
【0082】
RNAについては、非ディレクショナルなプロセスは、複数の合成プライマーの存在下で少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、複数の2本鎖cDNA鋳型を生成することを含み、ここで、複数の合成プライマーのそれぞれが、(5’から3’に)固定の、場合により消化可能な5’配列、アダプター配列に相補的な入れ子配列、場合により存在するタグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または目的のDNA分子に相補性を有する特異的3’配列のプールを含む(図15参照)。
【0083】
非ディレクショナルなサブステップA-ライブラリー合成
【0084】
非ディレクショナルな増幅プロセスの単独のステップ(lone step)は、複数の第1合成プライマーの存在下で、少なくとも1つのDNAを複製して、または少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、複数の2本鎖鋳型を生成することを含む(図14図15図19および図20参照)。
【0085】
(i)核酸
【0086】
本明細書に開示されるプロセスを用いて、様々な異なるタイプのRNA分子を増幅することができる。いくつかの実施形態において、RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)またはその断片であり得る。mRNAはポリアデニル化されていてもよく、またはmRNAはポリアデニル化されていなくてもよい。ある実施形態において、RNAは異なるmRNAの集団であり得る。他の実施形態において、RNAは非コードRNA(ncRNA)であり得る。例として、ncRNAは、長鎖非コードRNA(lncRNA)、長鎖遺伝子間非コードRNA(lincRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、Piwi結合RNA(piRNA)、トランス作動性RNA(rasiRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ミトコンドリアtRNA(MT-tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、SmY RNA、Y RNA、スプライスリーダーRNA(SL RNA)、テロメラーゼRNA要素(TERC)、これらの断片、またはこれからの組み合わせであり得る。よりさらなる実施形態において、RNAは、細胞または細胞集団のトランスクリプトームであり得る。RNAは真核細胞、古細菌細胞、または細菌細胞に由来し得る。
【0087】
様々なタイプのDNA分子を増幅することができる。これには、例えば、真核生物、原核生物、古細菌、プラスミド、ファージ、合成のDNA分子が含まれ得る。
【0088】
インプット(input)核酸の量は、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、本明細書に開示されるプロセスは、少量または単一細胞のインプット量の核酸を増幅し得る。いくつかの実施形態において、インプット核酸の量は、少なくとも約10フェムトグラム(femptogram)(fg)、100fg、5ピコグラム(pg)、少なくとも約10pg、少なくとも約20pg、少なくとも約50pg、少なくとも約100pg、少なくとも約200pg、少なくとも約500pg、または約500pgを超える核酸であり得る。特定の実施形態において、インプット核酸の量は、約10pg~約100pgの範囲であり得る。
【0089】
核酸の品質または完全性も、変化し得る。例えば、インプットRNAの品質は、低品質(すなわち、分解または断片化された)から高品質(すなわち、インタクトな)の範囲であり得る。当業者は、目的のRNAの品質を推定する手段に精通している。例えば、全RNAの品質は、18SrRNAに対する28SrRNAの割合に基づいて、推定することができる。いくつかの実施形態において、RNAは、少なくとも約2:1の28S:18S比、少なくとも約1:1の28S:18S比、約1:1未満の28S:18S比、または検出不可能な28S:18S比を有し得る。
【0090】
(ii)2本鎖鋳型合成
【0091】
RNA分子を、複数の合成プライマーと接触させる(図3Aおよび図19参照)。合成プライマーは上記に詳述している。それぞれの合成プライマーは、(5’から3’に)場合により消化可能な固定の5’配列、アダプター配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する内部タグ配列、および、ランダム3’配列、半ランダム3’配列、またはRNA分子に相補性を有する3’配列のプールを含む。
【0092】
標的核酸との接触に際し、合成プライマーの3’配列は、該核酸の相補的領域とハイブリダイズする。RNAについては、cDNAの第1鎖の合成は、デオキシリボヌクレオチド(すなわち、dCTP、dGTP、dATP、およびdTTP)および好適なRTバッファーの存在下で、鎖置換型逆転写酵素(RT)により触媒される。第2鎖合成は、鎖置換型DNAポリメラーゼにより触媒される。ポリメラーゼ活性は、単一または複数の酵素に由来し得る。DNAについては、DNAの第1鎖および第2鎖の合成は、デオキシリボヌクレオチド(すなわち、dCTP、dGTP、dATP、およびdTTP)および好適なバッファーの存在下で、鎖置換型DNAポリメラーゼにより触媒される。当業者は、逆転写dnDNA複製のための、反応物の適切な濃度および好適な反応条件に精通している。
【0093】
逆転写酵素は、中温性または好熱性で有り得、逆転写酵素は、RNAaseHまたはRNAaseHであり得る。好適な逆転写酵素の例には、M-MLV RT(モロニーマウス白血病ウイルス由来)、HIV-1 RT(ヒト免疫不全ウイルスタイプ1由来)、AMV RT(トリ骨髄芽球症ウイルス由来)、これらの変異体、およびこれらの改変バージョンが含まれる。DNAポリメラーゼは、中温性または好熱性であってよい。例には、pol I、Klenowポリメラーゼ、Klenowエキソマイナスポリメラーゼ、T4DNAポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、phi29ポリメラーゼ、T7ポリメラーゼなどが含まれる。
【0094】
2本鎖鋳型が完成すると、逆転写酵素および/またはDNAポリメラーゼは、熱処理によって不活性化され得る。熱不活性化は、約3分間、約5分間、約10分間、または約15分間の間、約70℃、約80℃、または約90℃の温度であり得る。一般に、不活性化温度が低いほど、加温ステップの時間は長い。
【0095】
ステップIIディレクショナル:RNAのディレクショナルな増幅
あるいは、ステップIIは、RNAをディレクショナルに増幅すること、およびシーケンシングのために増幅産物を調製することを含み得る。ディレクショナルな増幅プロセスは、以下に記載される、2つのサブステップAおよびBを含む。
【0096】
一般に、サブステップAは、複数の第1合成プライマーの存在下で少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、複数のcDNAの第1鎖を生成することを含み(図21参照)、ここで、複数の第1合成プライマーのそれぞれは、(5’から3’に)固定の、場合により消化可能な5’配列、アダプター配列に相補性を有する入れ子配列、場合により存在する第1タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または目的のRNA分子に相補性を有する特異的3’配列のプールを含む。好ましくはサブステップAにおいて、逆転写は、アクチノマイシンDの存在下で行われる。というのも、これが、レトロウイルス逆転写酵素によるcDNAの再コピーによるアンチセンスアーチファクト低減する傾向があるからである。Ruprecht et al., Biochim Biophys Acta. 1973 Jan 19; 294(2):192-203; Perocchi et al., Nucleic Acids Res. 2007; 35(19):e128参照。サブステップB(図22参照)は、複数の第2合成プライマーと、好ましくは非鎖置換型DNAポリメラーゼの存在下で、複数のcDNAの第1鎖を複製して、複数の2本鎖cDNA産物を生成することを含み、ここで、複数の第2合成プライマーのそれぞれは、(5’から3’に) 場合により消化可能な固定の5’配列、アダプター配列に相補的な入れ子配列、場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、またはcDNAの第1鎖に相補性を有する3’配列のプールを含む。
【0097】
ディレクショナルなサブステップA-第1鎖cDNA合成
【0098】
ディレクショナルな増幅ステップのサブステップAは、複数の第1合成プライマーの存在下で少なくとも1つのRNA分子を逆転写して、複数のcDNAの第1鎖を生成することを含む(図21参照)。
【0099】
(i)RNA
【0100】
本明細書に開示されるプロセスを用いて、様々な異なるタイプのRNA分子を増幅することができる。いくつかの実施形態において、RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)またはその断片であり得る。MRNAはポリアデニル化されていてもよく、またはmRNAはポリアデニル化されていなくてもよい。ある実施形態において、RNAは異なるmRNAの集団であり得る。他の実施形態において、RNAは非コードRNA(ncRNA)であり得る。例として、ncRNAは、長鎖非コードRNA(lncRNA)、長鎖遺伝子間非コードRNA(lincRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、Piwi結合RNA(piRNA)、トランス作動性RNA(rasiRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ミトコンドリアtRNA(MT-tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、SmY RNA、Y RNA、スプライスリーダーRNA(SL RNA)、テロメラーゼRNA要素(TERC)、これらの断片、またはこれからの組み合わせであり得る。よりさらなる実施形態において、RNAは、細胞または細胞集団のトランスクリプトームであり得る。RNAは真核細胞、古細菌細胞、または細菌細胞に由来し得る。
【0101】
インプットRNAの量は、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、本明細書に開示されるプロセスは、少量または単一細胞のインプット量のRNAを増幅し得る。いくつかの実施形態において、インプットRNAの量は、少なくとも約5ピコグラム(pg)、少なくとも約10pg、少なくとも約20pg、少なくとも約50pg、少なくとも約100pg、少なくとも約200pg、少なくとも約500pg、または約500pgを超えるRNAであり得る。特定の実施形態において、インプットRNAの量は、約10pgから約100pgの範囲であり得る。
【0102】
RNAの品質または完全性も、変化し得る。例えば、インプットRNAの品質は、低品質(すなわち、分解または断片化された)から高品質(すなわち、インタクトな)の範囲であり得る。当業者は、目的のRNAの品質を推定する手段に精通している。例えば、全RNAの品質は、18SrRNAに対する28SrRNAの割合に基づいて、推定することができる。いくつかの実施形態において、RNAは、少なくとも約2:1の28S:18S比、少なくとも約1:1の28S:18S比、約1:1未満の28S:18S比、または検出不可能な28S:18S比を有し得る。
【0103】
(ii)第1鎖合成
【0104】
RNA分子は、複数の第1合成プライマーと接触させる(図21参照)。第1合成プライマーは、上記に詳述している。それぞれの第1合成プライマーは、(5’から3’に)場合により消化可能な固定の5’配列、アダプター配列に相同性を有する入れ子配列、場合により存在する第1タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、またはRNA分子に相補性を有する3’配列のプールを含む。
【0105】
標的RNAとの接触の際に、第1合成プライマーの3’配列は、該RNAの相補的領域とハイブリダイズする。cDNAの第1鎖の合成は、デオキシリボヌクレオチド(すなわち、dCTP、dGTP、dATP、およびdTTP)および好適なRTバッファーの存在下で、逆転写酵素(RT)により触媒される(図21参照)。当業者は、第1鎖cDNA合成のための、反応物の適切な濃度および好適な反応条件に精通している。
【0106】
逆転写酵素は中温性または好熱性で有り得、逆転写酵素はRNAaseHまたはRNAaseHであり得る。好適な逆転写酵素の例には、M-MLV RT(モロニーマウス白血病ウイルス由来)、HIV-1 RT(ヒト免疫不全ウイルスタイプ1由来)、AMV RT(トリ骨髄芽球症ウイルス由来)、これらの変異体、およびこれらの改変バージョンが含まれる。
【0107】
上述のように、いくつかの実施形態において、第1鎖cDNA合成は、アクチノマイシンDの存在下で行われ、鎖置換されたcDNAの第1鎖からの望ましくないプライミングを減少させることができる。しかしながら、いくらかの鎖置換および第2鎖伸長が起こり得、下流のバーコードに隣接するバックグラウンド産物を生成する。アクチノマイシンDの使用は、同じバーコード配列に隣接する産物のレベルを減少させることができる。
【0108】
第1鎖合成反応の完了の際に、逆転写酵素を熱処理により不活性化することができる。熱不活性化は、約3分間、約5分間、約10分間、または約15分間の間、約70℃、約80℃、または約90℃の温度であり得る。一般に、不活性化温度が低いほど、加温ステップの時間は長い。
【0109】
iii)1本鎖第1合成プライマーの除去
【0110】
本プロセスは、さらに、複数のcDNAの第1鎖を、1本鎖特異的3’-5’デオキシリボヌクレアーゼ(すなわち、エキソヌクレアーゼ)と接触させて、1本鎖(すなわち、ハイブリダイズしていない)第1合成プライマーを分解すること含む。2本鎖cDNA-RNAハイブリッドは、好ましい3’-5’デオキシリボヌクレアーゼとの接触により、分解されない。いくつかの実施形態において、3’-5’デオキシリボヌクレアーゼは、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼI、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼX、または哺乳動物Trex1(DNaseIII)であり得る。特定の実施形態において、3’-5’デオキシリボヌクレアーゼは、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIであり得る。過剰な第1合成プライマーを分解するのに用いられるエキソヌクレアーゼの量は、サブステップAで用いられる第1合成プライマーの開始量を含む、様々な因子に応じて、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、エキソヌクレアーゼとの接触は、約35℃~約40℃の範囲の温度で、約5分~約60分の間、行われる。エキソヌクレアーゼは、本明細書に記載される熱により(例えば、約3分間、約5分間、約10分間、または約15分間の間、約70℃、約80℃、または約90℃の温度で)、不活性化され得る。
【0111】
ディレクショナルなサブステップB-第2鎖cDNA合成
【0112】
ディレクショナルな増幅ステップのサブステップBは、複数の第2合成プライマーの存在下で、複数のcDNAの第1鎖を複製して、複数の2本鎖cDNA産物を生成することを含む(図22参照)。
【0113】
(i)第2鎖合成
【0114】
それぞれの第2合成プライマーは、(5’から3’に)場合により消化可能残基を含む固定の5’配列、アダプター配列に相補的な入れ子配列、場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、またはcDNAの第1鎖に相補性を有する特異的ターゲティング3’配列のプールを含む。第1および第2合成プライマーは、いずれか一方または両方が、第1および/または第2タグ配列を含むように、選ばれる。
【0115】
本プロセスのこのステップは、複数の第2合成プライマーの存在下で、ステップAの間に生成されたcDNA/RNA2本鎖を熱変性することから始まる。熱処理は、1本鎖cDNA鋳型を生成して、また、1本鎖第1合成プライマーを分解するのに用いられる3’-5’エキソヌクレアーゼを不活性化する。熱処理は、約90°C、約92°C、約94°C、約96°C、または約100°Cの温度で、約1分、約2分、約5分、約10分の時間であり得る。熱処理後、温度を反応温度まで下げ、温度が下がるにつれて、第2合成プライマーの3’配列はcDNAの第1鎖の相補的領域とハイブリダイズする(図22参照)。
【0116】
cDNAの第2鎖の合成は、デオキシリボヌクレオチドおよび好適なバッファーの存在下で、非鎖置換型DNAポリメラーゼにより触媒される(図22参照)。非鎖置換型DNAポリメラーゼは、中温性または好熱性で有り得る。好適な非鎖置換型DNAポリメラーゼの例には、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、T4DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、これらの変異体、およびこれらの改変バージョンが含まれる。当業者は、第2鎖cDNA合成のための、反応物の適切な濃度および好適な反応条件に精通している。それぞれの2本鎖cDNA産物は、第1および第2のタグ配列の少なくとも1つに隣接しており、これはインプットRNA分子に対するcDNA産物の方向性を示す(図22参照)。
【0117】
第2鎖合成は非鎖置換型DNAポリメラーゼによって促進されるが、いくらかのバックグラウンド産物もまた生成され得る。
【0118】
(ii)1本鎖第2オリゴヌクレオチドの場合による除去
【0119】
本プロセスは、場合により、本質的に上述のように第1鎖合成プライマーを除去するために、3’-5’デオキシリボヌクレアーゼ(すなわち、エキソヌクレアーゼ)と接触して、1本鎖(すなわち、ハイブリダイズしていない)第2合成プライマーを分解することをさらに含み得る。
【0120】
(iii)「シングルチューブ」プロセス
【0121】
本明細書に開示されるディレクショナルな増幅のサブステップAおよびBは、精製ステップを介さずに順次進行する。精製ステップがないことは、シングルチューブフォーマットを可能にし、材料の損失を避ける。シングルチューブフォーマットはまた、ハイスループットに適している。精製ステップの欠如は、第1および第2オリゴヌクレオチドの段階的なエキソヌクレアーゼ除去、および酵素の熱不活性化によって達成される。
【0122】
ステップIII:増幅
ステップII非ディレクショナルまたはステップIIディレクショナルにおいて、DNA、非ディレクショナルRNA、またはディレクショナルRNA増幅プロセスが、用いられるかに関わらず、本明細書に記載される方法の次のステップは、1つ以上の増幅プライマー存在下で、複数の2本鎖DNA産物を増幅して、DNA産物の増幅ライブラリーを生成することを含む。
【0123】
(i)増幅プライマー
【0124】
増幅プライマーは、固定の消化可能な5’配列と、適切な場合に、合成プライマーの入れ子部分に相同な3’配列とを含む。一般に、増幅プライマーは1本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドを含む。デオキシリボヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、A、C、G、T、U、dU、など)、並びにヌクレオチドアナログを含み得る。ヌクレオチドアナログは、修飾されたプリンまたはピリミジン塩基および/または修飾されたリボソーム部分を有するヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログは、天然のヌクレオチド(例えば、イノシン)、または非天然のヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、並びに、該塩基の炭素および窒素原子の他の原子との置換(例えば、7-デアザプリン)が含まれる ヌクレオチドアナログはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸、ペプチド核酸、およびモルフォリノを含み得る。増幅プライマーの主鎖は、ホスホジエステル結合、並びに、ホスホチオエート、ホスホラミダイト、またはホスホロジアミデート結合を含むことができる(図3B参照)。
【0125】
(ii)増幅反応
【0126】
増幅は、増幅プライマーの存在下で、上述のように生成した複数の2本鎖DNA産物を、熱変性させるステップから始まる。熱処理は、1本鎖鋳型を生成する。熱処理は、約90°C、約92°C、約94°C、約96°C、または約100°Cの温度で、約15秒、30秒、45秒、1分、約2分、約5分、または約10分の時間であり得る。
【0127】
熱処理後、増幅プライマーのDNA鋳型鎖へのアニーリングを可能にするために、アニーリングまたはアニーリング/伸長温度まで温度を下げる。温度が下がるにつれて、短い産物の末端にある、5’-3’の相補的配列の分子内ハイブリダイゼーションが、これらの産物への増幅プライマーのアニーリングを妨げる。ディレクショナルなRNA増幅については、鎖置換配列のプライミングから生成されたバックグラウンド産物は、第1鎖および第2鎖プライミング産物よりも5’-3’相補性が高いため、仮説的な増幅効率は低くなるであろう。同じ論理で、鎖置換プライミングに由来する、上流または下流の異なるバーコードを有する産物はいずれも、より効率的に増幅するであろう。
【0128】
DNA産物の増幅は、耐熱性DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチド、および好適なバッファーの存在下で行われる。耐熱性DNAポリメラーゼは、TaqDNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、Tli(Ventとしても知られる)DNAポリメラーゼ、TflDNAポリメラーゼ、TthDNAポリメラーゼ、これらの変異体、およびこれらの組み合わせであり得る。サーモサイクリング反応に好適なバッファー(マグネシウムの有無にかかわらず)は、当業界で周知である。
【0129】
シングル増幅プライマーが用いられる実施形態において、本プロセスは、3ステップ(すなわち、変性、アニーリング、および伸長)または2ステップ(すなわち、変性およびアニーリング/伸長)を含み得る。例えば、増幅プライマーの融解温度が70℃より低い実施形態において、増幅プロセスは3ステップを含み得る。あるいは、増幅プライマーの融解温度が、70℃と等しいかそれより高い実施形態において、増幅プロセスは2ステップを含み得る。2つ以上の増幅プライマーが用いられる実施形態において、本プロセスは、一般的に、3ステップ(すなわち、変性、アニーリング、および伸長)を含む。アニーリングまたはアニーリング/伸長ステップの温度は、変化し得るものであり、実際に変化する(例えば、約50℃~約75℃)。伸長またはアニーリング/伸長の温度は、約70℃~約75℃の範囲、または約72℃であり得る。増幅ステップの時間は、数秒から数分まで変化し得る。一般に、伸長またはアニーリング/伸長ステップの時間は、1~5分の範囲であり得る(図14図15および図16のPCR1ステップ参照)。
【0130】
STEPIV:消化
ステップIIIの増幅の次は、消化である(図14図15および図16の消化ステップ参照)。このステップIVは、DNA産物の増幅ライブラリーを消化酵素と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、消化酵素は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)である。UDGによる処理は、増幅cDNA産物の5’末端でウラシル塩基を加水分解し、各アンプリコンの末端塩基対形成を効果的に弱める。UDGは、細菌、酵母、または哺乳動物起源のものであり得る。いくつかの実施形態において、UDGは、大腸菌(E.coli)由来である。cDNA産物の増幅ライブラリーと接触するUDGの量は、変化し得るものであり、実際に変化する。当業者は、適切な量および好適な反応条件 (例えば、温度、時間など)を、容易に決定することができる。プライマースイッチングの別の実施形態において、エキソヌクレアーゼによる処理は、ヌクレアーゼ耐性塩基に遭遇するまでアンプリコンから5’塩基を除去し、各アンプリコンの末端塩基対形成を効果的に排除する。いくつかの実施形態において、エキソヌクレアーゼはT7エキソヌクレアーゼである。DNA産物の増幅ライブラリーと接触するエキソヌクレアーゼの量は、変化し得るものであり、実際に変化する。当業者は、適切な量および好適な反応条件 (例えば、温度、時間など)を、容易に決定することができる。
【0131】
(i)グリコシラーゼ
【0132】
シングルプライマーPCRアンプリコンが、該アンプリコンの5’末端付近に、1つ以上のグリコシラーゼ感受性塩基を含む、実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンは、少なくとも1つのグリコシラーゼと接触させる。グリコシラーゼは、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’末端からグリコシラーゼ感受性塩基を加水分解または切除し、それによってアンプリコンの5’末端と3’末端との間の塩基対形成を弱める(図4参照)。
【0133】
シングルプライマーPCRアンプリコンのグリコシラーゼ感受性塩基の同一性に応じて、グリコシラーゼは、ウラシルDNAグリコシラーゼ、チミンDNAグリコシラーゼ、チミングリコールDNAグリコシラーゼ、8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ、3-メチルプリンDNAグリコシラーゼ、NthDNAグリコシラーゼ、NeiDNAグリコシラーゼ、MutY/MigDNAグリコシラーゼ、またはアルキルアデニンDNAグリコシラーゼであり得る。例えば、ウラシルDNAグリコシラーゼはウラシル塩基を切除し;チミンDNAグリコシラーゼは5-カルボキシルシトシン塩基を切除し;チミングリコールDNAグリコシラーゼはチミングリコール塩基を切除する、などである。
【0134】
グリコシラーゼは、細菌、古細菌、酵母、または哺乳動物起源のものであり得る。
グリコシラーゼは、中温性または好熱性で有り得る。シングルプライマーPCRアンプリコンと接触させるグリコシラーゼの量は、例えば、グリコシラーゼ酵素の同一性、アンプリコンにおけるグリコシラーゼ感受性塩基の数などに応じて、変化し得るものであり、実際に変化する。当業者は容易に、適切な量を決定することができる。グリコシラーゼ反応ステップの温度は、約20℃~約80℃の範囲であり得、グリコシラーゼ反応ステップの時間は、約5分~約2時間の範囲であり得る。
【0135】
特定の実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンにおけるグリコシラーゼ感受性塩基は、ウラシル塩基であり、グリコシラーゼは、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)である。UDGは、例えば、大腸菌(E.coli)または海洋細菌BMTU3346由来であり得る。シングルプライマーPCRアンプリコンにおけるウラシル塩基を消化するのに用いられるUDGの量は、約0.001ユニット~約20酵素ユニットの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、1ユニット/μLのUDG溶液の、約10%v/vを、シングルプライマーPCRアンプリコンと接触させる。消化ステップの温度は、約25°C~約45°C、または約35°C~約40°Cの範囲であり得る。消化ステップの時間は、約10分~約60分の範囲であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、消化ステップの完了時に、グリコシラーゼを、約85℃~約105℃の温度で、約1分~約30分の間、熱処理することにより、不活性化することができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、グリコシラーゼは、デュアルプライマーPCR試薬と主に製剤化され得る。
【0138】
(ii) 5’-3’エキソヌクレアーゼ
【0139】
シングルプライマーPCRアンプリコンが、5’末端付近に、1つ以上のヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンは、5’-3’エキソヌクレアーゼと接触させる。5’-3’エキソヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドに遭遇するまで、該アンプリコンの5’末端から、ヌクレオチドを加水分解または除去する。このように、シングルプライマーPCRアンプリコンの5’末端は除去され、その結果、アンプリコンの5’および3’末端の間の塩基対形成が弱まる(図5参照)。ヌクレアーゼ耐性プライマーの非限定的な特定の例は、図8に示している。
【0140】
好適な5’-3’エキソヌクレアーゼの非限定的な例には、バクテリオファージT7エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージT5エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼ、バクテリアエキソヌクレアーゼVIII、またはバクテリアDNAポリメラーゼIが含まれる。5’-3’エキソヌクレアーゼは野生型であり得、または酵素の性質(例、安定性、特異性、動態)が変わるように修飾され得る。
【0141】
シングルプライマーPCRアンプリコンと接触させる5’-3’エキソヌクレアーゼの量は、例えば、エキソヌクレアーゼの同一性、アンプリコンの数などに応じて、変化し得るものであり、実際に変化する。一般に、シングルプライマーPCRアンプリコンと接触させる5’-3’エキソヌクレアーゼの量は、約0.01~約20の酵素ユニットの範囲で変化し得る。エキソヌクレアーゼ消化ステップの温度は、約25℃~約45℃、または約35℃~約40℃の範囲であり得る。消化ステップの時間は、約10分~約60分の範囲であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、消化ステップの完了時に、約75℃~約100℃の温度で、約1分~約30分間の間、熱処理することにより、不活性化することができる。
【0143】
ステップV:アダプター配列の付与
消化の次のステップは、DNA産物の増幅ライブラリーの5’末端に、アダプターを付与することを含む。増幅されたcDNA産物の末端の塩基対形成は、消化のために弱められ、各産物の3’末端は、アダプターに相補的な配列を含有する。このように、アダプタープライマーは、貫入することができ、効果的に、DNA産物にアニーリングすることができる。アダプターは、ポリメラーゼ連鎖反応の間に、DNA産物に付与することができる。それぞれの末端にペアードアダプター配列を持つ構造のみが、効率的に増幅されるであろう。
【0144】
該プロセスの終わりに、過剰な増幅プライマーおよびアダプターを電気泳動、クロマトグラフィー、ビーズベースの精製(bead-based cleanup)、または他の標準的な核酸精製法によって除去することができる。
【0145】
アダプターを含む増幅cDNAライブラリーは、次世代シーケンシング、ディレクショナルディープシーケンシング、Illumina(登録商標)シーケンシング、454シーケンシング、イオントレント(ion torrent)シーケンシング、SOLiDシーケンシング、ナノポアシーケンシング、単一分子リードタイムシーケンシング(single molecule read time sequencing)などを含む、ハイスループットのシーケンシング手順を含む、様々な用途に使用され得る。増幅DNAライブラリーはまた、他の周知のPCRおよびマイクロアレイに基づく用途においても使用され得る(図14図15および図16における、PCR2ステップ参照)。
【0146】
(i)デュアルプライマーPCRプライマー
【0147】
上記のステップIVに詳述した、消化されたアンプリコンは、増幅条件下でデュアルプライマーPCRプライマーと接触させることにより、デュアルプライマーPCRアンプリコンに変換される。デュアルプライマーPCRプライマーは、フォワードまたはセンスプライマー、およびリバースまたはアンチセンスプライマーを含む。一般に、デュアルプライマーPCRプライマーの3’部分は、合成プライマーの入れ子部分と相同である。合成プライマーの入れ子部分およびデュアルプライマーPCRプライマーにおける相同な3’部分は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。特定の実施形態において、入れ子およびデュアルプライマーPCRプライマーにおける相同な3’部分は、約10~約16ヌクレオチドの長さの範囲であり得る。
【0148】
デュアルプライマーの全長は、約14ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、デュアルプライマーは、約18~約100ヌクレオチド長の範囲であり得る。他の実施形態において、デュアルプライマー全体は、約60~約80ヌクレオチド長の範囲であり得る。
【0149】
一般に、デュアルプライマーPCRプライマーは、DNA合成をプライミングするために、1本鎖であり、3’末端にヒドロキシル基を有する。増幅プライマーは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはこれらの組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン/ウリジン)またはヌクレオチドアナログであり得る。ヌクレオチドアナログは、修飾されたプリンまたはピリミジン塩基および/または修飾されたリボソーム部分を有するヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログは、天然のヌクレオチド(例えば、イノシン)、または非天然のヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、並びに、該塩基の炭素および窒素原子の他の原子との置換(例えば、7-デアザプリン)が含まれる。ヌクレオチドアナログにはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルフォリノも含まれる。
【0150】
一般に、デュアルプライマーPCRプライマーは、約40~60%の平均GC含有量と、約50℃~約80℃の平均融解温度(Tm)を有するであろう。ある実施形態において、シングルプライマーPCRプライマーは、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、または約75℃のTmを有し得る。
【0151】
(ii)増幅条件
【0152】
消化されたシングルプライマーPCRアンプリコンを、デュアルプライマーPCRを介して増幅し、デュアルプライマーPCRアンプリコンを形成する。増幅条件は、デュアルプライマープライミングを可能にするためのアニーリング温度および時間で、少なくとも2サイクルを提供する。アニーリングが必要とするその後のサイクルは、デュアルプライマーのプライミングに十分であるだけでよい。長鎖デュアルプライマーを用いた非限定的な例には、変性(94℃/15秒)、アニーリング(60℃/5分)、伸長(70℃/1分)の2サイクルと、その後の変性(94℃/15秒)、アニーリング/伸長(70℃/1分)の6~10サイクルが含まれる。
【0153】
消化されたアンプリコンの5’消化末端と3’末端との間の弱くなった、または存在しない塩基対形成は、デュアルプライマーの、消化されたアンプリコンへのアニーリングを指示する。このように、デュアルプライマーは伸長され、アンプリコンは5’消化末端を除いて複製される。指数関数的に増幅可能な鋳型は、2回の増幅サイクル後に得られる。ある実施形態において、これらのサイクルは、指数関数的増幅サイクルよりも低いアニーリング温度を有するであろう。増幅のさらなるラウンドは、デュアルプライマーPCRアンプリコンの形成をもたらす。
【0154】
デュアルプライマーPCRアンプリコンは、精製ステップを介さずに、後続の反応や下流の用途に直接用いられ得る。あるいは、デュアルプライマーPCRアンプリコンは、周知の核酸精製方法(例えば、PCR精製キットなど)を用いてヌクレオチド、増幅プライマー、酵素、および塩から精製することができる。
【0155】
デュアルプライマーPCRアンプリコンは、シングルからデュアルプライマーアンプリコンプライミングの間に形成される、シングルプライマー付加物(single primer aduct)の非効率的な増幅のために、デュアルプライマーである(図10および11参照)。
【0156】
(II)シングルプライマーPCRプライマー間のスイッチング
本開示の別の局面は、少なくとも2つの異なるシングルプライマーPCRプライマー間のスイッチングのための方法を提供する。本方法は、本質的に、図4および図5における繰り返しステップを含み、ここでは、異なるシングルプライマーPCRプライマーが、デュアルPCRプライマーに取って代わる。特に、本方法は、増幅条件下で、標的核酸を、消化可能な5’部分を含む第1シングルプライマーPCRプライマーと接触させることにより、シングルプライマーPCRアンプリコンの第1セットを調製すること、および、シングルプライマーPCRアンプリコンの第1セットを、シングルプライマーPCRアンプリコンの第1セットの5’部分を消化できる酵素で処理して、消化されたアンプリコンを形成することを含む。本方法はさらに、増幅条件下で、消化されたアンプリコンの第1セットを、場合により消化可能な5’部分を含む第2シングルプライマーPCRプライマーと接触させて、シングルプライマーPCRアンプリコンの第2セットを形成すること含む。ある実施形態において、シングルプライマーPCRアンプリコンの第2セットを、第2シングルプライマーPCRアンプリコンの5’部分を消化することができる酵素で処理して、消化されたアンプリコンの第2セットを形成し得る。いくつかの実施形態において、消化されたアンプリコンの第2セットは、上記に詳述したように、デュアルプライマーPCRプライマーと接触させることができる。
【0157】
(III)用途
本明細書に開示される方法は、DNA増幅中に用いられ得、ここで、DNAは、染色体、ミトコンドリア、プラスミド、または細胞質のDNAであり得る。本方法はまた、RNA増幅中にも用いられ得、ここで、増幅は、ディレクショナルまたは非ディレクショナルであり得、RNAは、コードまたは非コードであり得る。
【0158】
シングルプライマーPCRアンプリコンおよび/またはデュアルプライマーPCRアンプリコンは、様々な下流の用途で用いられ得る。いくつかの実施形態において、シングルまたはデュアルプライマーPCRアンプリコンは、次世代シーケンス(NGS)プラットフォームを使用して、シーケンシングすることができる。NGSプラットフォームの非限定的な例には、イオントレントシーケンシング、SOLiDシーケンシング、Illumina(登録商標)シーケンシング,ゲノムアナライザーシーケンシング、454シーケンシング、ディレクショナルディープシーケンシング、ナノポアシーケンシング、単一分子リードタイムシーケンシングなどが含まれる。NGS技術には、臨床診断、癌診断、分子診断テスト、癌治療、創薬、ミクロバイオーム技術、食品および農業技術、並びに基礎研究が含まれる。
【0159】
他の実施形態において、シングルまたはデュアルプライマーPCRアンプリコンは、診断、治療、製薬、工業、法医学、農業、および研究の目的のための、PCRベースのスクリーニング/検出方法、qPCR、マルチプレックスPCR、ハイスループットアッセイ、マイクロアレイベースの技術、CHIPベースのアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、SNPジェノタイピング、RFLP分析などに、付すことができる。
【0160】
(IV)キット
本開示のさらに別の局面は、上述の方法を実施するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、シングルプライマーPCRプライマーと、得られたシングルプライマーPCRアンプリコンを消化するための対応する酵素(すなわち、グリコシラーゼまたは5’-3’エキソヌクレアーゼ)を含む。いくつかの実施形態において、キットはさらに、デュアルプライマーPCRプライマーを含む。他の実施形態において、キットは、デュアルプライマーPCR、対応する酵素、および場合によりアダプター配列を含む。キットは、さらに、PCRに好適な、好適な反応バッファーおよび/またはDNAポリメラーゼ、およびデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0161】
本開示のさらに別の局面は、上述のオリゴヌクレオチドを含むキット、または、上記に詳述したプロセスを用いてRNAを増幅するためのキットを提供する。
【0162】
いくつかの実施形態において、キットは、(a)それぞれの第1合成プライマーが、(5’から3’に) 少なくとも1つのdU残基を場合により含む固定の5’配列、アダプター配列に相補的な入れ子配列、場合により存在する内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプールを含む、複数の合成プライマー、および(b)少なくとも1つのdU残基を含む固定の5’配列と、場合により、アダプター配列に相補的な入れ子配列とを含む、少なくとも1つの増幅プライマーを、含み得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、キットは、(a)それぞれの第1合成プライマーが、(5’から3’に)少なくとも1つのdU残基を含む固定の5’配列、アダプター配列に相補的な入れ子配列、場合により存在する第1タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプールを含む、複数の第1合成プライマー、(b)それぞれの第2合成プライマーが、(5’から3’に)少なくとも1つのdU残基を含む固定の5’配列、アダプター配列に相補性を有する入れ子配列、場合により存在する第2タグ配列を含む内部タグ配列、およびランダム3’配列、半ランダム3’配列、または特異的3’配列のプールを含む、複数の第2合成プライマー(ただし、複数の第1および第2合成プライマーのいずれか一方または両方が、第1および/または第2タグ配列を含む)、および(c)少なくとも1つのdU残基を含む固定の5’配列と、場合により、アダプター配列に相補的な入れ子配列とを含む、少なくとも1つの増幅プライマー、とを含み得る。
【0164】
キットはさらに、鎖置換型ポリメラーゼ、3’-5’デオキシリボヌクレアーゼ、非鎖置換型DNAポリメラーゼ、好熱性DNAポリメラーゼ、ウラシルDNAグリコシラーゼ、および/またはアクチノマイシンDを含むことができる。いくつかの実施形態において、キットはさらに、シーケンスアダプターを含むことができる。
【0165】
キットはさらに、逆転写酵素、3’-5’、非鎖置換型DNAポリメラーゼ、好熱性DNAポリメラーゼ、ウラシルDNAグリコシラーゼ、および/またはアクチノマイシンDを含むことができる。いくつかの実施形態において、キットはさらに、シーケンスアダプターを含むことができる。
【0166】
いずれのキットも、デオキシリボヌクレオチドおよび1つ以上の好適なバッファー(例えば、逆転写酵素バッファー、第2鎖合成バッファー、サーモサイクリングバッファーなど)をさらに含むことができる。
【0167】
本明細書で提供されるキットは、一般的に、上記に詳述したプロセスを実施するための説明書を含む。キットに含まれる説明書は、包装材に貼られてもよく、添付文書として含まれてもよく、またはダウンロード可能なファイルとして含まれてもよい。説明書は、一般的に書面や印刷物であるが、それらに限定されない。これらの説明書を格納し、それらをエンドユーザに伝達することができる任意の媒体が、本開示によって企図される。これらの媒体は、電子記憶媒体(例、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例、CD ROM)などを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「説明書」は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0168】
本発明の範囲から逸脱することなく上記のプロセスおよびキットに様々な変更を加えることができるので、上記の説明および以下に示す実施例に含まれるすべての事項は例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0169】
定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多くの用語の一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991); およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、他に特定されない限り、それらに帰する意味を有する。
【0170】
本開示またはその好ましい局面の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つまたは複数の要素があることを意味することを意図している。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素があり得ることを意味することを、意図している。
【0171】
縮重ヌクレオチドは、2倍の縮重度を有し得(すなわち、2つのヌクレオチドのうちの1つであり得)、3倍の縮重度を有し得(すなわち、3つのヌクレオチドのうちの1つであり得)、または4倍の縮重度を有し得る(すなわち、4つのヌクレオチドのうちの1つ、AまたはCまたはGまたはTであり得る)。3倍の縮重度を有するヌクレオチドには、「B」(CまたはGまたはTであり得る)、「D」(AまたはGまたはTであり得る)、および「V」(AまたはCまたはGであり得る)が含まれる。 2倍の縮重度を有するヌクレオチドには、「K」(GまたはTであり得る)、「M」(AまたはCであり得る)、「R」(AまたはGであり得る)、「Y」(CまたはTであり得る)、「S」(CまたはGであり得る)、および「W」(AまたはTであり得る)が含まれる。
【0172】
本明細書で使用される場合、「相補的な」または「相補性」という用語は、特定の水素結合を介した塩基対形成による2本鎖核酸の対合を指す。塩基対形成は、標準的なワトソン-クリック塩基対形成であり得る(例えば、5’-AGTC-3’は、相補的な配列3’-TCAG-5’と対合する)。塩基対形成はまた、フーグスティーンまたはリバースフーグスティーン水素結合であってもよい。相補性は、2本鎖領域に関して一般的に測定され、したがって、例えば、オーバーハングを除外する。いくつかの塩基性対のみが相補的である場合、2本鎖領域の2つの鎖の間の相補性は部分的であり得、パーセンテージ(例えば、70%)として表され得る。相補的ではない塩基は「ミスマッチ(mismatched)」である。2本鎖領域の塩基対がすべて相補的な場合、相補性も完全であり得る(すなわち、100%)。
【0173】
本明細書で使用される場合、「相同な」という用語は、2つ以上の配列が同一である程度を指す。2つの配列が、定義された一連の条件の下で、同じ配列にハイブリダイズするであろう場合、2つの配列は相同であると見なす。定義された条件には、バッファー処方、温度および配列濃度が含まれるがこれらに限定されない。
【0174】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状または環状の立体構造、および1本鎖または2本鎖のいずれかの形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語はポリマーの長さに関して限定するものとして解釈されるべきではない。本用語は、天然ヌクレオチドの既知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)が修飾されているヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対形成特異性を有する;すなわち、AのアナログはTと塩基対を形成するであろう。
【0175】
「ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを指す。ヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、およびウリジン)またはヌクレオチドアナログであり得る。ヌクレオチドアナログは、修飾されたプリンまたはピリミジン塩基または修飾されたリボソーム部分を有するヌクレオチドを指す。ヌクレオチドアナログは、天然のヌクレオチド(例えば、イノシン)、または非天然のヌクレオチドであり得る。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、並びに、該塩基の炭素および窒素原子の他の原子との置換(例えば、7-デアザプリン)が含まれる。ヌクレオチドアナログにはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’-O-メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルフォリノも含まれる。
【0176】
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための技術は当業界において知られている。一般的に、これらの技術は、ある遺伝子についてmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、およびこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列もまた、この様式で決定および比較され得る。一般に、同一性とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較され得る。核酸配列であれアミノ酸配列であれ、2つの配列の同一性パーセントは、2つのアライメントされた配列間の正確な一致数を、より短い配列の長さで割って100を掛けた値である。核酸配列についてのおおよそのアラインメントは、SmithおよびWaterman(Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981))の局地的相同性アルゴリズム(local homology algorithm)によって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure, M. O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C., USA)によって開発され、Gribskov(Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986))によって正規化されたスコアリングマトリックス(scoring matrix)を使用することによって、アミノ酸配列に適用することができる。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実行は、Genetics Computer Group(Madison、WI)によって、「BestFit」実用新案出願において、提供されている。配列間の同一性パーセントまたは類似性を計算するための、他の好適なプログラムは、一般的に、当業界で知られており、例えば、別のアライメントプログラムは、デフォルトのパラメーターと共に使用されるBLASTである。例えば、BLASTNおよび BLASTPは、以下のデフォルトのパラメーターを用いて使用され得る:genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non-redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、GenBankのウェブサイトに掲載されている。
【実施例
【0177】
以下の実施例は、本発明のある局面を例示するものである。
【0178】
実施例1:全ゲノム増幅-シングルプライマーからデュアルプライマーへのスイッチング
ヒトゲノムDNA(10ng)を、改良されたDNA増幅キット(SeqPlex(商標);Sigma-Aldrich)を用いて、半縮重ライブラリープライマー(5’-UGGUUGUGUUUGCTCTTCCGATCTKNNNKNKNK-3’;配列番号:)およびWGAプライマー(5’-UGGUUGUGUUUGCTCTTCCGATCT-3’(配列番号:)を用いて、増幅した。シングルプライマーアンプリコンを、10%v/vのウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)の非存在下または存在下で、30分間、37℃でインキュベートした。消化/未消化アンプリコンを、フォワードプライマー(5’-TCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT-3’;配列番号:)およびリバースプライマー(5’CCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’;配列番号:)を用いて、94°C/30秒、50°C/10分で2サイクル、その後、94°C/30秒でxサイクル(xは、SYBRGreenがプラトーになるまでのサイクル数)、リアルタイムで(すなわち、蛍光色素SYBR Greenでモニターして)増幅した。デュアルプライマーPCR増幅のバイオアナライザーのトレースを、図9に表す。約150~250bpの平均サイズを有するデュアルプライマーPCRアンプリコンが、UDGで処理されたシングルプライマーアンプリコンの後に検出された。UDG処理をしないと、はるかに大きい産物が低い収量で、検出された。
【0179】
実施例2: 全ゲノム増幅-プライマーの組み合わせ
実施例1で上述したように、ゲノムDNAを増幅して、得られたアンプリコンをUDGで処理した。消化されたアンプリコンを、実施例1由来の、シングルWGA、フォワード、および/またはリバースプライマーの、1つまたは2つの組み合わせを用いて、リアルタイムで(すなわち、蛍光色素でモニターして)増幅した。各組み合わせについてのバイオアナライザーのトレースおよびサイクル閾値(Ct)の値を、図11に示す。フォワード/リバースの2つの組み合わせのCt値は、これらのプライマー単独のいずれかよりも、約8~9サイクル低く、これは、増幅産物の1%未満が、相補的な5’-3’末端を有することを示していた(すなわち、2-(8~9)<0.01)。(図8もまた参照)。また、プライマーの、1つの組み合わせと2つの組み合わせとでは、増幅サンプルのサイズ分布に違いがあった。
【0180】
実施例3: 全ゲノム増幅-短鎖デュアルプライマーおよび長鎖デュアルプライマー
実施例1で上述したように、ゲノムDNAを増幅して、得られたアンプリコンを、UDGで処理した。消化されたアンプリコンを、実施例1で上述したフォワードおよびリバースの(短鎖)PCRプライマーを用いて、または、上述のフォワード(5’-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTATAGCCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’;配列番号:5)およびリバース(5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATATTACTCGGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT-3’;配列番号:)(長鎖)PCRプライマーを用いて、リアルタイムで(すなわち、蛍光色素でモニターして)増幅した(図7参照)。結果を図12に表す。短鎖デュアルプライマーを用いて生成したアンプリコンの平均の長さは、約200bpであり、長鎖デュアルプライマーを用いて生成したアンプリコンの平均の長さは、約275bpであった。
【0181】
実施例3:全ゲノム増幅-単一細胞
実施例1で上述したように、ゲノムを、単一ヒト細胞から、WGAの22サイクルにより増幅して、その後UDGで消化した。消化されたアンプリコンを、実施例1で記載したデュアルプライマーを用いて、9サイクルで増幅した。図13に示したように、本明細書に開示されるシングルプライマーからデュアルプライマーへの方法は、ごく少量の核酸を増幅するために使用することができる。
【0182】
実施例4:RNAのディレクショナルな増幅
ユニバーサルヒト標準(Universal human reference)(UHR)RNAを、本質的に上記に詳述した(および図16に概説した)プロセスを用いて、増幅した。本プロセスで用いた複数の第1および第2合成プライマーを、以下の表1に示す(入れ子配列はイタリック体で示し、内部タグ配列は下線を引いた)。
【表1】

【0183】
増幅は、(1)バーコード配列を有さないシングルプライマー、および(2)2つ以上のヌクレオチドである上流または下流のタグ配列(バーコード)を含むマルチプルプライマー(multiple primer)タイプを用いて、リアルタイムPCRにより、3連で行った。増幅プライマーの例は、表2に示す(バーコードまたはタグ配列は下線を引いた)。
【表2】

【0184】
増幅をモニターし、プラトーなサイクルにて手動で停止させた。2つの増幅プライマータイプの間で、有意な違いは見られなかった。結果を表3に示す。4つのバーコード特異的プライマーで行った増幅は、第1鎖合成バックグラウンドについては約6.5~6.9のΔC(t)を示し、第2鎖合成バックグラウンドについては約9.6~10のΔC(t)を示す。定量的バックグラウンドパーセントは、ペアードエンドシーケンシングにより、識別することができる。
【表3】
【0185】
GenElute PCR Cleanupの後、増幅産物は、プライマー、プライマーダイマー、アダプター、およびアダプターダイマーを実質的に含まないようであった。増幅産物(マイナス122 bp Illumina(登録商標) アダプター配列)は、約80~180塩基対の範囲であり、1反応当たり10~12マイクログラムの収量である。
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【配列表】
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