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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】自己減衰型MLCCアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20221003BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20221003BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G2/06 500
H01G4/40 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019539778
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018014696
(87)【国際公開番号】W WO2018140353
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-09-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】62/450,173
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン ランダル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】グラブ アビジット
(72)【発明者】
【氏名】クロスビー グレゴリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュー ブーリー
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】清水 稔
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-258278(JP,A)
【文献】特開2013-26323(JP,A)
【文献】実開昭62-199927(JP,U)
【文献】特開平3-280412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30, H01G 4/40, H01G 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号発生器と;
第1正トレース、第1負トレース、第2正トレース、第2負トレースを備える基板と; 前記基板上にあって、前記第1正トレースと前記第1負トレースとの間に電気接続された第1容量性カップルと、前記第2正トレースと前記第2負トレースとの間に電気接続された第2容量性カップルとを含むMLCCとを備え、
前記パルス信号発生器は第1パルスを前記第1正トレースへ供給し、第2パルスを前記第2正トレースへ供給し、前記第1パルスと前記第2パルスとは位相が一致しておらず、
前記第1容量性カップルは交互の第1内部電極からなり、隣接する第1内部電極は異なる第1外部終端に終端され、前記第2容量性カップルは交互の第2内部電極からなり、隣接する第2内部電極は異なる第2外部終端に終端され、
前記MLCCは前記第1内部電極の数が前記第2内部電極の数より多く、
前記第2内部電極が前記第1内部電極よりも前記基板に近いことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1内部電極及び前記第2内部電極が前記基板に平行であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±60°だけ位相がずれていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±20°だけ位相がずれていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±10°だけ位相がずれていることを特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1パルスと前記第2パルスとは180°位相がずれていることを特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
パルス信号発生器と;
前記パルス信号発生器と第1の電気的接触を持つ第1容量性カップル、及び前記パルス信号発生器と第2の電気的接触を持つ第2容量性カップルを備えるMLCCとを含み、
前記パルス信号発生器は第1パルスを前記第1の電気的接触を介して前記第1容量性カップルへ供給し、第2パルスを前記第2の電気的接触を介して前記第2容量性カップルへ供給し、前記第1パルスと前記第2パルスは位相が一致しておらず、
前記第1容量性カップルは交互の第1内部電極からなり、隣接する第1内部電極は異なる第1外部終端に終端され、前記第2容量性カップルは交互の第2内部電極からなり、隣接する第2内部電極は異なる第2外部終端に終端され、
前記第1内部電極は前記第2内部電極よりも数が多く、
前記第2内部電極が前記第1内部電極よりも前記基板に近いことを特徴とする電子部品。
【請求項8】
前記第1内部電極と前記第2内部電極は前記基板に平行であることを特徴とする請求項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1パルスと前記第2パルスとは180°±60°位相がずれていることを特徴とする請求項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±20°位相がずれていることを特徴とする請求項に記載の電子部品。
【請求項11】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±10°位相がずれていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項12】
前記第1パルスと前記第2パルスとは180°位相がずれていることを特徴とする請求項に記載の電子部品。
【請求項13】
第1位相を有するACパルスによって付勢される第1容量性素子と第2位相を有するACパルスによって付勢される第2容量性素子とを備えたMLCCと、基板とを含み、前記第1位相と前記第2位相は180°±60°位相がずれており、
前記第1容量性カップルは交互の第1内部電極からなり、隣接する第1内部電極は異なる第1外部終端に終端され、前記第2容量性カップルは交互の第2内部電極からなり、隣接する第2内部電極は異なる第2外部終端に終端され、
前記第1内部電極は前記第2内部電極よりも数が多く、
前記第2内部電極が前記第1内部電極よりも前記基板に近いことを特徴とする電子部品。
【請求項14】
前記第1内部電極と前記第2内部電極は前記基板に平行であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項15】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±20°位相がずれていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項16】
前記第1パルスと前記第2パルスとは少なくとも180°±10°位相がずれていることを特徴とする請求項15に記載の電子部品。
【請求項17】
前記第1パルスと前記第2パルスとは180°位相がずれていることを特徴とする請求項16に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板に搭載される、自己減衰特性を有する積層セラミックコンデンサ(MLCC)に関する。より具体的には、本発明は、MLCC素子の電気的位相をずらすことによってマイクロフォニックノイズを減衰させる回路におけるMLCC又はMLCCアレイに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は2017年1月25日に出願された継続中の米国仮特許出願第62/450,173号を参照することにより本願に組み込み、それに基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
チタン酸バリウムのような分極した誘電体により製造されるMLCCは、マイクロフォニックノイズを拾いやすい。マイクロフォニックノイズは、印加された電界が存在する場合に発生するセラミックの動きに関連した電気歪みや圧電効果によって引き起こされると信じられている。該セラミックの動きはコンポーネントが搭載された回路基板へ振動エネルギ-として伝わり、最終的には電界印加時に可聴ノイズを生成する。回路基板に搭載されたリードレスのコンデンサによってマイクロフォニックノイズが大幅に高められるため、それらコンデンサを特に携帯電話等のポータブルデバイスに利用することが制限される。
【0004】
マイクロフォニックノイズはAC信号の例えば60Hzの周波数で発生し易いので、マイクロフォニックノイズは交流(AC)システムにおいて特に問題であり、又別の振動周波数や誘電体の振動が基板や周囲のコンポーネントに伝わることによって可聴ノイズを発生させる。このことは小型のデバイス、特にヘッドホン等のデバイス、音楽を演奏するためのデバイス等にとって特に問題となる。
【0005】
従来技術は主として振動エネルギ-が基板へ伝搬するのを除去したり低減するのに適した方法でMLCCが基板に実装されるように、物理的な構造を改変することによりマイクロフォニックノイズの減少に取り組んできた。このアプローチはある程度は成功したが、振動エネルギ-の伝搬を抑制するための構造的な対策はマイクロフォニックノイズの発生を除去するものではなく、従って、問題が完全に解決されるものではない。複数のデバイスの位相が一致するとマイクロフォニックノイズは合算され、あるいは高調波を発生し、従って伝搬が弱められたとしてもノイズはなお生成される。
【0006】
本発明はマイクロフォニックノイズを内部的に減衰させることによって一般的に従来より実施されている構造的なアプローチに関わる物理的な制約を取り除いたMLCCアレイを提供する。内部的にマイクロフォニックノイズを減衰させることにより、MLCCを表面実装することが可能となり、それによって設計の自由度が大幅に向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はマイクロフォニックノイズが少ない改善された電子機器を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的はマイクロフォニックノイズに対して自己減衰を行うMLCCを提供し、マイクロフォニックノイズの減少のために一般的に使われる物理的な制約を取り除くことである。
【0009】
本発明の顕著な特徴は従来の製造技術やプラクティスを使って自己減衰型MLCCを形成できることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
パルス信号発生器、好ましくはACパルス発生器及び第1トレース、第2トレースを含む基板を備えた電子部品において上記及びその他の目的を実現できる。MLCCは2つの第1外部終端間の第1容量性カップルと2つの第2外部終端間の第2容量性カップルとを備えており、2つの第1外部終端のうちの各第1外部終端は2つの第1トレースのうちの異なる第1トレースと電気的に接触し、2つの第2外部終端のうちの各第2外部終端は2つの第2トレースのうちの異なる第2トレースと電気的に接触する。パルス信号発生器は第1パルス、好ましくはACパルスを第1トレースへ供給し、第2パルス、好ましくはACパルスを第2トレースへ供給する。ここで第1パルスと第2パルスは位相が一致していない。
【0011】
さらに別の実施例は、パルス信号発生器及び第1トレースと第2トレースを含む基板を備えた電子部品において実現される。第1のMLCCは2つの第1外部終端間に第1容量性カップルを備え、2つの第1外部終端のうちの各第1外部終端は2つの第1トレースのうちの異なる第1トレースと電気的に接触する。第2のMLCCは2つの第2外部終端間に第2容量性カップルを備え、2つの第2外部終端のうちの各第2外部終端は2つの第2トレースのうちの異なる第2トレースと電気的に接触する。パルス信号発生器は第1トレースに第1パルスを供給し、第2トレースに第2パルスを供給する。ここで、第1パルスと第2パルスは位相が一致していない。
【0012】
さらに別の実施例は、パルス信号発生器及び第1正トレース、第1負トレース、第2正トレース、第2負トレースを含む基板を備えた電子部品において実現される。MLCCが該基板上にあって、該MLCCは第1正トレースと第1負トレースとの間に電気接続された第1容量性カップルと、第2正トレースと第2負トレースとの間に電気接続された第2容量性カップルとを含む。パルス信号発生器は第1正トレースに第1パルスを供給し、第2正トレースに第2パルスを供給する。ここで、第1パルスと第2パルスは位相が一致していない。
【0013】
さらに別の実施例は、パルス信号発生器及び第1トレースと第2トレースを含む基板を備えた電子部品において実現される。第1MLCCが該基板上にあって、該MLCCは2つの第1外部終端の間に第1容量性カップルを含み、各第1外部終端は異なる第1トレースと電気的に接触される。第2容量性カップルを含む第2MLCCが2つの第2外部終端の間にあり、各第2外部終端は異なる第2トレースと電気的に接触される。パルス信号発生器は第1トレースに第1パルスを供給し、第2トレースに第2パルスを供給する。ここで、第1パルスと第2パルスは位相が一致していない。
【0014】
さらに別の実施例は、パルス信号発生器及び該パルス信号発生器と第1電気的接触を有する第1容量性カップルと該パルス信号発生器と第2電気的接触を有する第2容量性カップルとを備えたMLCCを含む電子部品において実現される。パルス信号発生器は該第1電気的接触を介して該第1容量性カップルに第1パルスを供給し、該第2電気的接触を介して該第2容量性カップルに第2パルスを供給する。ここで、第1パルスと第2パルスは位相が一致していない。
【0015】
さらに別の実施例は第1位相を有するACパルスによって付勢される第1容量性素子と第2位相を有するACパルスによって付勢される第2容量性素子とを備えたMLCCを含む電子回路において実現される。ここで、第1位相と第2位相は180°±60°位相がずれている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例の概略図である。
図2】好ましくは垂直に配置されるアレイである図1の実施例の内部電極または導体の概略図である。
図3図1の実施例で使われるAC信号の概略図である。
図4A】本発明の実施例の概略断面図である。
図4B】本発明の実施例の概略断面図である。
図5】本発明の実施例の概略斜視図である。
図6】好ましくは水平に配置されるアレイである本発明の実施例の概略図である。
図7図6の水平アレイの部分の概略分解図である。
図8A】本発明の実施例の概略上面図である。
図8B図8Aに示す実施例の断面図である。
図8C図8Aに示す実施例の断面図である。
図9】本発明の実施例のグラフである。
図10】本発明の実施例のグラフである。
図11】本発明の実施例の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は改良されたMLCCアレイ及び該アレイを含む電子デバイスに関し、少なくとも1つのMLCCが基板に実装され、該MLCCがマイクロフォニックノイズに対して自己減衰特性を有し、該MLCCは第1電気的位相の第1容量性電極と第2電気的位相の第2容量性電極とを有し、第1位相を第2位相から十分にずらすことでノイズの相殺によってマイクロフォニックノイズを減衰させ、好ましくは除去する。
【0018】
MLCCは従来技術において周知の、誘電体を間に挟んだ複数の導電層を含む容量性カップルからなり、各層は反対極性の外部終端に交互に終端する。本発明の一実施例において自己減衰型MLCCは第1容量性カップル及び第2容量性カップルからなり、第1容量性カップル及び第2容量性カップルはその電気的な位相がずれている。
【0019】
本発明は、本発明の不可欠ではあるがそれに限定されることのない構成要素を表す、多様な図を参照して説明される。説明を通して同じ要素にはそれに応じた参照番号を付ける。
【0020】
図1にMLCC10の概略図を示し、同じMLCC内で外部終端12が第1容量性カップルを表し、外部終端14が第2容量性カップルを表す。図1に示されたMLCCは図2に示される導電層を含み、第1導電性カップルは誘電体を間に挟んで層A及びAを交互に配置し、第2導電性カップルは誘電体を間に挟んで層B及びBを交互に配置する。各タブ100が交互に共通の外部終端に電気的に接続されることが分かる。MLCC10は基板20に実装され、基板は正極及びグランドトレースとして任意に表示されるトレース16、18を含む。2つの容量性カップルに印加されるAC信号が図3に示されており、第1導電性カップル12にトレース16を介して第1位相AのAC信号が印加され、第2導電性カップル14にトレース18を介して第2位相BのAC信号が印加される。2つの容量性カップルに対して位相がずれたAC信号、最も好ましくは逆位相のAC信号を印加することにより、プレートA間の誘電体の収縮/膨張はプレートB間の誘電体の収縮/膨張とは逆になり、従って容量性カップルAにより生成されたマイクロフォニックノイズは容量性カップルBにより生成されたマイクロフォニックノイズによって相殺されるか、又は少なくとも減衰される。
【0021】
本発明の一実施例は、図1のライン4A-4Aに沿って切り取った図4Aの概略断面図、及び図1のライン4B-4Bに沿って切り取った図4Bの概略断面図で表される。図2の概略図で示される内部電極は、例えば、図2の第1セットの導電層Aによって配置されて、外部終端12、12’間に第1容量性カップルを形成する。例えば、図2の第2セットの電極Bは外部終端14、14’間に第2容量性カップルを形成する。図4A、4Bの概略図で示された実施例において、内部電極の第1セットの内部電極の電極数は、第2セットの電極数と概略同じであり、実施例によってはそれが望ましい。
【0022】
第1導電性カップル及び第2導電性カップルの導電層の数は例えば数百のかなり大きな数となり、第1導電性カップル及び第2導電性カップルの導電層の数は同じでも異なっていても良い。第1導電性カップル及び第2導電性カップルの導電層の数が同じ実施例では、MLCCは基本的には物理的、電気的に対称である。別の実施例では、第1容量性カップルの導電層の数と第2容量性カップルの導電層の数が異なり、従ってMLCCは基本的には物理的、電気的に非対称であるが、これについては後述する。一実施例では、内部電極は基板に対して垂直である。別の実施例では、内部電極は基板に対して水平である。
【0023】
本発明の実施例を図5を参照して説明する。ここでMLCCは説明のためにA-Dで示した連続する容量性カップルを含む。各容量性カップルは独立して回路トレースに電気接続されるか、またはそれらは組み合わせて電気接続されても良い。例として、容量性カップルAは第1セットの回路トレースと電気的に接続されており、容量性カップルAは第1位相のACパルスで付勢される。容量性カップルB-Dはアクティブな容量性カップルであり、各アクティブな容量性カップルが共通の回路トレース又は独立する回路トレースに電気接続されて回路にキャパシタンス機能を与え、各アクティブな容量性カップルは第1位相とは異なる第2位相を有する共通のACパルスにより通電される。この実施例では、容量性カップルAは容量性カップルB-Dによって集合的に発生されるノイズを減衰する。例えば容量性カップルA、C等の複数の容量性カップルが第1位相で通電され、この例では第2位相で通電されて回路にキャパシタンス機能を与えるアクティブ容量性カップルである容量性カップルB、Dに対して減衰を行うことが分かる。
【0024】
キャパシタンスは異なるがそれぞれが図5に示すように4つの容量性カップルを有する2つの異なるコンデンサに対して計測したノイズをテーブル1に示す。各MLCCは6V、1kHzで付勢された。テーブル1では、すべての容量性カップルを同一の位相で通電するようコントロールした結果、デシベル(dBA)で表示される高ノイズが発生した。同じMLCCを使って、AとBのような隣接する容量性カップルは反対極性の又は180°位相がずれたパルスを通電し、AとCのような一つおきの容量性カップルは共通のパルスを通電した。その結果、ノイズレベルがほぼ2桁減少した。
【0025】
【表1】
【0026】
図5のコンデンサの電極は水平方向に配置されたアレイであり、図6でその概略上面図が示されている。一例としてスタックAを使った導電層の一部の層が図7の概略部分分解図として表される。一つおきの導電層のタブ100は位置合わせとなり、そして最終的には共通の外部終端に電気的に接続されることが分かる。誘電体102は各導電層に挟まれる。従って、所定のスタックにおいて、隣接する導電層は容量性カップルを形成する。
【0027】
本発明の電子部品の一実施例が図8Aの概略上面図に示されている。図8Aにおいて、MLCCは、外部終端12、12’に終端する第1容量性カップルを含み、外部終端14、14’に終端する第2容量性カップルがそれとは垂直に終端される。図示のように、MLCCは第1容量性カップルと電気的に接続する第1セットのトレース16、16’及び第2容量性カップルと電気的に接続する第2セットのトレース18、18’を含む回路基板20に実装される。図8Bには図8Aのライン8B-8Bに沿って切り取った電子部品の断面図が示され、図8Cには、図8Aのライン8C-8Cに沿って切り取った電子部品の断面図が示されている。第1容量性カップルは第2容量性カップルよりも基板20から離れていることが理解されるであろう。
【0028】
本発明の電子部品の実施例は非対称であることの利点を実証する図9及び10を参照して説明する。図9はマイクロフォニックノイズの発生を電圧の関数としてグラフで示し、一般的にマイクロフォニックノイズは電圧の上昇につれて増加することを示す。図9の結果は、図1さらには図4Aおよび4Bに概略が図示された構造を有する対称型のMLCCに対応しているが、例えば、第1の導電性カップルAの導電層の数が、例えば、第2の導電性カップルBの導電層の数に略同一である。図9において例1は全ての容量性カップルが、100kHz及び1000kHzの同一位相で付勢される場合に発生するノイズを表し、この場合、ノイズの伝搬力が高く電圧上昇と共に増加する。例2では、容量性カップルが逆位相で通電されるが、MLCCの基板から離れた部分で発生されるノイズは基板の近くで発生するノイズを緩和するには不十分であるため、改善は最小限に留まる。換言すると、基板に最も近い容量性カップルによって発生するノイズは発生する全体のノイズの大部分を占めるので、従って基板から離れた容量性カップルは基板に近い容量性カップルのノイズを十分に相殺できない。例3は基板から離れた容量性カップルのみが通電されることにより発生するノイズを示し、例4は基板に最も近い容量性カップルのみが通電されることにより発生するノイズを示す。発生するノイズの大部分が基板に最も近い容量性カップルからのものであることが分かる。
【0029】
非対称のMLCCはいくつかの実施例において利点を示す。図10図1、さらには図4A及び4Bで図示されたMLCCによって発生するノイズをグラフで示す。図には示していないが、全体の導電層数の約80%が第1容量性カップルを形成し、全体の導電層数の約20%が第2容量性カップルを形成している。電圧の関数としてのデシベルが100kHzと1000kHzにおいて示される。図10の例5-7では、MLCCは、導電層の全体数の80%からなる第1容量性カップルを、第2導電性カップルよりも基板から離した状態で実装される。例5では、両方の容量性カップルが共通の周波数によって付勢される。例6では、基板から離れた第1の容量性カップルのみ通電される。例7では、基板に最も近い容量性カップルのみが通電される。例8-10では、導電層の80%からなる第1容量性カップルが基板に最も近い状態でMLCCが実装されている。例8では、容量性カップルの両方が共通周波数で通電されている。例9では、基板に最も近い第1容量性カップルのみが通電される。例10では、基板から離れた第2容量性カップルのみが通電される。
【0030】
図10の例から分かるように、多数の導電層を基板から離れて配置することが可能であり、それによってMLCCボリュームの機能としてより大きなキャパシタンスを提供することができる。より少ない数の導電層を基板近くに配置して上記容量性カップルとの位相をずらして付勢する。従って、基板近くで発生し増大されたノイズにより基板から離れた多数の導電層によって発生されたノイズを十分に減衰することができる。
【0031】
本発明の一実施例の概略を図11に図示する。図11では、同一又は異なる2つのMLCC22及び24がアレイの2つの要素として基板20に実装される。アクティブなMLCC22はカソードトレース34に電気的に接触するカソード外部終端26を有し、アノードトレース36に電気的に接触するアノード外部終端28を有する。ノイズ緩和用のMLCC24は、アクティブにもなることができ、カソードトレース38に電気的に接触するカソード外部終端30を有し、アノードトレース40に電気的に接触するアノード外部終端32を有する。ACジェネネレータ42は第1AC信号を供給してアクティブMLCC22を第1位相で付勢し、ノイズ緩和MLCC24を第2位相で通電する。第1位相と第2位相とは異なる位相であり、好ましくは逆位相である。位相のずれによりノイズが相殺されるため、アクティブなMLCCによって発生するマイクロフォニックノイズはノイズ緩和MLCCによって発生するマイクロフォニックノイズによって緩和される。ノイズ緩和MLCC及びアクティブなMLCCを基板上に接近させて配置するのが好ましいが、異なったセクションに配置してもあるいは基板の異なる面に配置しても良い。
【0032】
本発明の目的のためには、アクティブな容量性カップルの主たる機能は電気回路にキャパシタンスを提供することである。ノイズ緩和容量性カップルの主たる機能は、アクティブな容量性カップルのノイズを緩和することである。容量性カップルはアクティブな機能のみとなることができ、ノイズ緩和機能のみとなることができ、あるいは、アプリケーションによって、容量性カップルがアクティブな容量性カップルとして機能するとともに、第2のアクティブな容量性カップルのノイズの緩和として機能することもできる。
【0033】
ノイズはデシベル又はdBAとして対数目盛で表される。マイクロフォニックノイズを全て除去するのが好ましいが、アプリケーションにおいて検知されるレベル以下にするためにマイクロフォニックノイズは1桁減少すれば一般的には十分である。例えば、高品質のノイズキャンセリングヘッドホンはポータブルミュージックプレーヤーよりも厳しい要件が課される。
【0034】
所定電圧でマイクロフォニックノイズを抑えるために本発明において利用可能ないくつかの主要なコントロールがある。コントロールの最適化は、アプリケーションと必要とするノイズ低減のパーセントで決定される。
【0035】
1つのコントロールはキャパシタンス供給専用の導電層対ノイズキャンセリング専用導電層の相対数である。ここで記載されている通り、ノイズキャンセリング専用の導電層を基板のより近くに配置することでキャパシタンス供給に必要な導電層よりも少ないノイズキャンセリング専用導電層を使用することが好ましい。これによってマイクロフォニックノイズを最小にしつつ単位ボリューム当たり最も高いキャパシタンスを供給できる。
【0036】
別のコントロールは、コンデンサとして使用するための専用の容量性カップルに供給される交流位相とマイクロフォニックノイズを最小化するための専用の容量性カップルに供給される交流位相と間の位相差である。位相差が120°より少ないと最小限度のノイズリダクションとなり、効果が十分に発揮されないので少なくとも120°の位相差があることが望ましい。従ってノイズリダクション専用の容量性カップルに供給される交流位相はキャパシタンス専用の容量性カップルに供給される交流位相に対して180°±60°の位相のずれがあることが好ましい。ノイズリダクション専用の容量性カップルに供給される交流位相がキャパシタンス専用の容量性カップルに供給される交流位相に対して180°±20°の位相のずれがあることが一層好ましい。ノイズリダクション専用の容量性カップルに供給される交流位相がキャパシタンス専用の容量性カップルに供給される交流位相に対して180°±10°の位相のずれがあることがなお一層好ましく、そして最も好ましいのは、図3に示されるように、2つの位相がほぼ反対になることである。
【0037】
本発明は好ましい実施例を参照して説明したが、それに限定されることはない。当業者はここに具体的に述べられなかった追加の実施例や変更を実現するかもしれないが、それらはここに添付された特許請求の範囲に含まれ、本願の不可欠な部分を構成する。
図1
図2
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図4A
図4B
図5
図6
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図8A
図8B
図8C
図9
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図11