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特許7150742スルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】スルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/06 20060101AFI20221003BHJP
   C04B 14/26 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 14/30 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 14/32 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20221003BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20221003BHJP
   E04B 1/78 20060101ALI20221003BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20221003BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B14/26
C04B14/30
C04B14/32
C04B20/00 B
C04B24/04
C04B24/12 Z
C04B38/00 301Z
C04B38/00 302Z
E04B1/78 Z
E04B1/80 A
E04B1/82 C
E04B1/82 M
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019548392
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018055292
(87)【国際公開番号】W WO2018162381
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17159443.5
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Strasse 32, D-83308 Trostberg, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518072841
【氏名又は名称】デーエー カフィス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サルナス トゥルツィンスカス
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ファイヒテンシュラーガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハルト アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ポリーヌ プティ
(72)【発明者】
【氏名】ウアス トーマス ゴンツェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ノア シュトゥアツェネッガー
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105645887(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312193(US,A1)
【文献】特表2013-512848(JP,A)
【文献】特開2003-171162(JP,A)
【文献】特開2008-120612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
E04B 1/78 - 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 以下のもの:
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子であって、無機粒子(i)は無機バインダー(iiia)および/または(iiib)と同一ではない無機粒子(i);
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物;
(iv) 水;および任意で
(v) 少なくとも1種の添加剤;
を混合する工程、ならびに
(2) 得られた発泡体調製物を化学的、物理的または機械的な発泡により発泡させる工程
を含
前記少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物が、a)イーリマイト(4CaO×3Al ×SO )および任意でベライト(2CaO×SiO )、ならびにb)硬石膏(CaSO )、硫酸カルシウム半水和物(CaSO ×0.5H O)および/または石膏(CaSO ×2H O)を、90:10~60:40のa):b)の重量比で含有する、無機発泡体を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの群の無機粒子が、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩およびこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの群の無機粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子およびCaCO粒子、ならびにこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの群の無機粒子が、30nm~300μmの範囲にある中央粒径D50を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の両親媒性化合物が、少なくとも1つの極性頭部基と少なくとも1つの非極性尾部基とを有する両親媒性化合物を含み、
ここで、前記少なくとも1つの頭部基が、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、アルコール、アミン、アミド、ピロリジン、ガレートおよびカルボン酸から成る群より選択され、
かつここで、前記少なくとも1つの尾部基が、2~8個の炭素原子を有する脂肪族基または芳香族基または環式基より選択され、ここで前記炭素原子が、C~Cアルキル、第二級OHおよび第二級NHより選択される1つ以上の同じまたは異なる置換基で任意に置換されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の両親媒性化合物が、カルボン酸、ガレートおよびアミンから成る群より選択される少なくとも1つの頭部基と、2~8個の炭素原子を有する脂肪族基より選択される少なくとも1つの尾部基とを有する両親媒性化合物を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物が、5~35重量%のSO、30~60重量%のCaO、0~30重量%のSiOおよび5~35重量%のAlの分析酸化物組成を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のさらなる無機バインダーが、高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノシリケート、フライアッシュおよびこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のさらなる無機バインダーが、メタカオリンとフライアッシュとの混合物である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の無機バインダー混合物(iii)が、
(iiic) DIN EN197-1(11/2011)に準拠したCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV、CEM Vセメント、またはアルミン酸カルシウムセメントより選択される少なくとも1種のセメント、好ましくはCEM Iセメント
を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の添加剤が、pH改質剤、フィラー、促進剤、遅延剤、レオロジー調整剤、超可塑剤、界面活性剤、繊維、水ガラス、さらなる疎水化剤、触媒およびこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量が、0.5~160μmol/mであり;かつ/または
前記無機粒子が、前記少なくとも1種の無機バインダー混合物の量に対して0.1~25重量%の量で用意され;かつ/または
前記無機バインダー混合物に対する水の重量比が0.1~2.0である、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(1)が、
(1a) 前記少なくとも1つの群の無機粒子、前記少なくとも1種の両親媒性化合物、および任意で前記少なくとも1種の添加剤を水に分散させて、水性分散液を得る工程、ならびに
(1b) 前記水性分散液を前記少なくとも1種の無機バインダー混合物と混合する工程
を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法により得られる無機発泡体。
【請求項15】
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子であって、無機粒子(i)は無機バインダー(iiia)および/または(iiib)と同一ではない無機粒子(i);
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物;
(iv) 水;および任意で
(v) 少なくとも1種の添加剤
を含み、
前記少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物が、a)イーリマイト(4CaO×3Al ×SO )および任意でベライト(2CaO×SiO )、ならびにb)硬石膏(CaSO )、硫酸カルシウム半水和物(CaSO ×0.5H O)および/または石膏(CaSO ×2H O)を、90:10~60:40のa):b)の重量比で含有する、無機発泡体。
【請求項16】
請求項14または15記載の無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる気泡材料。
【請求項17】
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子であって、無機粒子(i)は無機バインダー(iiia)および/または(iiib)と同一ではない無機粒子(i);
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物
を成分として含み、ここで
前記成分(i)、(ii)および(iii)が個別に存在するか、または
前記成分(i)および(ii)が混合物として存在し、成分(iii)が個別に存在するか、または
前記成分(i)、(ii)および(iii)が混合物として存在
前記少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物が、a)イーリマイト(4CaO×3Al ×SO )および任意でベライト(2CaO×SiO )、ならびにb)硬石膏(CaSO )、硫酸カルシウム半水和物(CaSO ×0.5H O)および/または石膏(CaSO ×2H O)を、90:10~60:40のa):b)の重量比で含有する、
無機発泡体調製物を製造するための組成物。
【請求項18】
断熱材、防音材または吸音材としての、防火のための、および/または低密度の建材としての、請求項14または15記載の無機発泡体、請求項16記載の気泡材料、および/または請求項17記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子で安定化されたスルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体を製造する方法、粒子で安定化されたスルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体、粒子で安定化されたスルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる気泡材料、ならびに粒子で安定化されたスルホアルミン酸カルシウムベースの無機発泡体を提供するための無機発泡体調製物を製造するための組成物に関する。
【0002】
無機発泡体は、絶縁材として、例えば、断熱材、防音材または吸音材として、および低密度の建材として使用可能である。有機ポリマーベースの発泡体とは対照的に、この材料は、環境に優しく、頑丈で、不燃性である。後者は、防火の分野における適用も可能にし得る。一般的に発泡体は、界面活性剤または粒子を使用することで安定化させることができる。界面活性剤で安定化された無機発泡体は、連続気泡発泡体構造を有することが一般的である。しかしながら、独立気泡発泡体が特に興味深いといえる。なぜならこれらは、改善された機械的安定性に伴って断熱特性が改善されているからである。
【0003】
独立気泡発泡体構造を有する安定した無機発泡体は、無機粒子を泡安定化剤として使用することにより得ることが可能であると分かった。一般的に、両親媒性分子が存在すると、使用される粒子の表面活性を発現させることが必要とされる。国際公開第2007/068127号(WO 2007/068127 A1)には、例えばプロピルガレートとの組み合わせにおける、コロイド粒子による湿潤した発泡体の安定化が開示されている。Juillerat等(F. K. Juillerat, U. T. Gonzenbach, P. Elser, A. R. Studart, L. J. Gauckler, J. Am. Ceram. Soc. 2011, 94, 77-83)には、プロピルガレート分子を吸着させることで部分的に疎水化されたコロイド状Al粒子によるセラミック発泡体の安定化が開示されている。米国特許第9,540,287号明細書(US9,540,287B2)には、発泡したセメント質スラリーを安定化させるために、セメント質粒子と組み合わせて、プロピルガレート分子を使用することが開示されている。独国特許出願公開第102014103258号明細書(DE102014103258A1)によると、両親媒性分子、例えばヘプチルアミンと組み合わせて、無機粒子により石膏無機発泡体を安定化させることができる。
【0004】
不燃性絶縁材としての活性化したアルミノシリケート(ジオポリマー)ベースの無機発泡体が特に興味深い。粒子で安定化された独立気泡ジオポリマー発泡体は、界面活性剤で安定化された独立気泡ジオポリマー発泡体に比べて、特に乾燥密度、圧縮強度および空気流れ抵抗に関して有利な特性を有することが分かった。同時に、同等の熱伝導率をもたらすことができる。しかしながら、粒子で安定化された独立気泡ジオポリマー発泡体は、硬化するのに約14の高いpH値を必要とし、このことが、安全性および取扱性の点で問題をもたらす。さらに、ジオポリマー発泡体の原材料費はかなり高い。
【0005】
よって、ジオポリマー発泡体と比較して同等または改善された特性を有する独立気泡無機発泡体を提供することのみならず、同じものを製造する方法にそのような高いpH値を必要としないことを同時に保証することが本発明の課題であった。
【0006】
さらに、そのような無機発泡体をより低い原材料費で提供することが本発明の課題であった。特に、低い乾燥密度で高い圧縮強度が組み合わさった満足のいく熱伝導率を示す無機発泡体、およびそのような無機発泡体を製造する安全な方法を提供することが課題であった。さらに、ジオポリマー発泡体に比べて無機発泡体の空気流れ抵抗を上昇させることも課題であった。
【0007】
驚くべきことに、上記の課題を本発明により達成することができると分かり、これを本明細書で以下に説明する。特に、(i)少なくとも1つの群の無機粒子、(ii)少なくとも1種の両親媒性化合物、ならびに(iii)少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーとを含む少なくとも1種の無機バインダー混合物を組み合わせることで、高いpH値を有する無機発泡体調製物を中間体として形成することなく、無機発泡体を得ることができると発見された。その代わりに、無機発泡体調製物のpH値を12未満に保つことができ、このことは、安全および規制の障害の点で、また無機発泡体調製物に対する添加剤の適合性(例えば可塑剤)の点で有利である。結果として、微細かつ均質な独立気泡構造を有する安定した無機発泡体が得られる。さらに、本発明の無機発泡体は、低い乾燥密度で高い圧縮強度が組み合わさった満足のいく熱伝導率、および非常に高い空気流れ抵抗を示す。
【0008】
一実施形態において、本発明は、
(1) 以下のもの:
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子;
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物;
(iv) 水;および任意で
(v) 少なくとも1種の添加剤;
を混合する工程、ならびに
(2) 得られた発泡体調製物を化学的、物理的または機械的な発泡により発泡させる工程
を含む、無機発泡体を製造する方法に関する。
【0009】
中国特許出願公開第105645887号明細書(CN105645887A)には、7~13重量部の難燃性相乗剤である酸化アンチモン、4~8重量部のカオリン、0.7~1.6重量部の防腐剤、10~14重量部のフライアッシュ、4~7重量部の麦わらパルプ、10~20重量部のラミー繊維、3~5重量部のわら炭、8~13重量部の第二級アルコールエトキシレート、0.5~1.2重量部のセチルトリメチルアンモニウムブロミド、2~4重量部の酸化防止剤、0.8~1.4重量部の軟化剤、4~7重量部のエポキシプロピルメタクリレート、0.3~0.6重量部のプロピルガレート、2~4重量部の酸化カルシウム、0.5~1.4重量部のパラフィン、18~26重量部の発泡したスルホアルミン酸塩セメント、3~5重量部のリチウム系硬化剤、4~6重量部の複合材安定剤、および7~13重量部の炭酸カルシウムから製造された高効率の建設用難燃性繊維材料が開示されている。それとは対照的に、本発明は、発泡したスルホアルミン酸塩セメントを使用しない。むしろ後から、本発明のすべての発泡体調製物を、化学的、物理的または機械的な発泡により発泡させる。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0272376号明細書(US2014/0272376A1)には、製品を形成するためのスラリーであって、(a)水;(b)セメント質粒子;(c)水により形成された壁を有する気泡;および(d)少なくとも幾つかのセメント質粒子の表面を変性して、それにより、変性された粒子が気泡を十分に安定化させて製品中に空気の間隙を形成するのに効果的な表面変性剤を含むスラリーが開示されている。セメント質粒子は、スタッコ、硫酸カルシウム二水和物、ポルトランドセメント、フライアッシュ、またはこれらの組み合わせを含むといわれている。それとは対照的に、本発明は、米国特許出願公開第2014/0272376号明細書(US2014/0272376A1)に規定されているセメント質系を使用しない。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、本発明の方法により得られる無機発泡体に関する。
【0012】
さらなる別の実施形態において、本発明は、
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子;
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物;
(iv) 水;および任意で
(v) 少なくとも1種の添加剤
を含む無機発泡体に関する。
【0013】
さらなる別の実施形態において、本発明は、本明細書に規定されている無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる気泡材料に関する。
【0014】
さらなる別の実施形態において、本発明は、
(i) 少なくとも1つの群の無機粒子;
(ii) 少なくとも1種の両親媒性化合物;
(iii) 以下のもの:
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物と、任意で
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーと
を含む少なくとも1種の無機バインダー混合物
を成分として含み、ここで
成分(i)、(ii)および(iii)が個別に存在するか、または
成分(i)および(ii)が混合物として存在し、成分(iii)が個別に存在するか、または
成分(i)、(ii)および(iii)が混合物として存在する、
無機発泡体調製物を製造するための組成物に関する。
【0015】
本発明を図1、2、3および4によりさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、比較目的のために用意されたものであり、連続気泡構造を有する、界面活性剤で安定化されたジオポリマー発泡体の写真を示す。
図2図2も、比較目的のために用意されたものであり、大部分が独立気泡構造を有する、粒子で安定化されたジオポリマー発泡体の写真を示す。
図3図3は、本発明による、粒子で安定化された無機発泡体の写真を示し、ここで無機バインダー混合物は、スルホアルミン酸カルシウム混合物のみを含み、さらなる無機バインダーは含まない。
図4図4は、本発明による、粒子で安定化された無機発泡体の写真を示し、ここで無機バインダー混合物は、スルホアルミン酸カルシウム混合物を含み、かつメタカオリンとフライアッシュとの混合物をさらなる無機バインダーとして含む。
【0017】
すべての図において、左下側のスケールバーは2mmである。
【0018】
以下の定義は、本発明の実施形態に関連する。
【0019】
測定可能な単位に関する「約」という用語は、上記の測定可能な単位の通常の偏差を意味する。そのような偏差は、測定装置の精度に依存するか、または当業者により予期される統計的偏差に依存する。「約」という用語は、±15%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の偏差を意味すると理解されるべきである。
【0020】
「重量%」という用語は、特に記載のない限り、水を除く全成分の質量の合計に対する各成分の質量のパーセントでの比率を意味する。体積%という用語は、全成分の体積の合計に対する各成分の体積のパーセントでの比率を意味する。
【0021】
「を含む」という用語の意味が、具体的に述べられる特徴、ならびに任意の、さらなる、明示されていない特徴をすべて包含すると解釈されるべき一方で、「から成る」という用語は、それらの明示された特徴のみを含む。さらに、各実例において、本発明の調製物の明示されたおよび明示されていない構成要素のパーセンテージすべての合計は、常に100%になると意図されている。
【0022】
無機発泡体を製造する方法、無機発泡体、無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる気泡材料、ならびに本発明による無機発泡体調製物を製造するための組成物の文脈において、以下の定義が関連する。
【0023】
一般的に、「無機発泡体調製物」という用語と、「無機発泡体」という用語とでは区別がなされている。無機発泡体調製物は、水および任意で少なくとも1種の添加剤を添加することにより、本明細書に規定されている無機発泡体調製物を製造するのに適切な組成物から得ることができる。その後、この無機発泡体調製物を使用して、機械的、物理的または化学的な発泡により無機発泡体を製造することができる。製造されたばかりの無機発泡体は、硬化させた無機発泡体、すなわち、製造されたばかりの無機発泡体から硬化および任意の乾燥により得られる気泡材料とは区別すべきである。特に定めのない限り、本明細書で使用されている「無機発泡体」という用語は、製造されたばかりの無機発泡体を意味し、「気泡材料」という用語は、硬化および任意で乾燥させた無機発泡体を意味する。
【0024】
無機発泡体は三相系であり、ここで、1つの相は気体状であり、1つの相は液体状であり、1つの相は固体状である。したがって、無機発泡体は気体を含むと理解されるべきである。気相は、液相および固相から得られる気泡壁により分離された微細な気泡として存在する。気泡壁は、ノードで互いに交わるエッジで互いに交わって、それにより骨格が形成される。無機発泡体中の気相の含量は、20~99体積%、好ましくは50~98体積%の範囲で変化してもよい。液相は水相であることが好ましく、そのため、無機発泡体は水も含むことが一般的である。しかしながら、乾燥させて水を部分的に除去してもよい。無機発泡体の固相は無機バインダーを含む。無機発泡体は連続気泡発泡体または独立気泡発泡体であってもよい。独立気泡発泡体において、気体は、気泡壁により完全に囲まれている。一般的には、密度が同じである場合、独立気泡発泡体が連続気泡発泡体よりも頑丈である。よって、独立気泡発泡体が、その改善された機械的安定性の点で好ましい。
【0025】
気泡材料は、無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより無機発泡体から得ることができる。
【0026】
本明細書に示されているように、水は、純粋な脱イオン化させたHOを意味していても、0.1重量%までの不純物および/または塩、例えば通常の水道水を含有する水を意味していてもよい。
【0027】
発泡体中に存在する気相は、機械的、物理的または化学的な発泡により導入されてもよい。気体の非限定的な例は、空気、窒素、希ガス、二酸化炭素、炭化水素、水素、酸素およびこれらの混合物を含む。
【0028】
発泡体中に存在する気相は、各気体の存在下で機械的な発泡により導入されてもよい。機械的な発泡は、例えばミキサーを使用することにより、または振動法により、またはステータ・ロータ法(stator-rotor process)により実施可能である。
【0029】
また気相は、物理的または化学的な発泡により発泡体に導入されてもよく、ここで物理的または化学的な発泡プロセスが、気体を放出するのに適している。蒸発するか、分解するか、または水および/または酸と反応して気体を放出する発泡剤を使用することが好ましい。発泡剤の非限定的な例は、過酸化物、例えば、過酸化水素、ジベンジルペルオキシド、ペルオキソ安息香酸、ペルオキソ酢酸、アルカリ金属過酸化物、過塩素酸、ペルオキソ一硫酸、ジクミルペルオキシドまたはクミルヒドロペルオキシド;イソシアネート、炭酸塩および重炭酸塩、例えば、CaCO、NaCOおよびNaHCOであって、酸、例えば無機酸と組み合わせて使用することが好ましいもの;金属粉末、例えばアルミニウム粉末;アジド、例えばメチルアジド;ヒドラジド、例えばp-トルエンスルホニルヒドラジド;ヒドラジンである。
【0030】
化学的な発泡は、触媒を使用することにより促進されてもよい。適切な触媒は、Mn2+、Mn4+、Mn7+またはFe3+カチオンを含むことが好ましい。あるいは、酵素カタラーゼを触媒として使用してもよい。適切な触媒の非限定的な例は、MnOおよびKMnOである。そのような触媒は、ペルオキシド発泡剤と組み合わせて使用されることが好ましい。
【0031】
無機発泡体を製造する方法、無機発泡体、無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる気泡材料、ならびに本発明による無機発泡体調製物を製造するための組成物において使用される成分に関するさらなる詳細については、以下に記載する。
【0032】
本明細書で使用されている「無機粒子」という用語は、以下のものから成る群より選択される無機粒子を意味することが好ましい:
・ 純粋および混合金属酸化物を含む酸化物(特に、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、スピネル、セリウム-ガドリニウム酸化物、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化セリウム);
・ 水酸化物(特に、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、非常に具体的には水酸化アルミニウム);
・ 炭化物(特に、炭化ケイ素、炭化ホウ素);
・ 窒化物(特に、窒化ケイ素、窒化ホウ素);
・ リン酸塩(特に、リン酸カルシウム、例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト);
・ 炭酸塩(特に、炭酸ニッケル、炭酸カルシウム(破砕石灰石または沈降炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム);
・ ケイ酸塩(特に、二酸化ケイ素、シリカフューム、フライアッシュ、石英、すりガラス、スラグ、ケイ酸カルシウム、ムライト、コーディエライト、粘土鉱物、例えばカオリンまたはベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、珪藻土、非常に具体的には、シリカフューム、粘土鉱物、ケイ酸ジルコニウム;具体的には、粘土鉱物);
・ 硫酸塩(特に硫酸カルシウム)。
【0033】
本明細書で先に例示した無機粒子(i)は、無機バインダーiiiaおよび/またはiiibと同一ではないと理解される必要がある。
【0034】
無機粒子を炭酸塩および/または酸化物から得ることが好ましい。好ましい酸化物としては、酸化アルミニウム(Al-Mgスピネルを含む)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛、特に、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素および二酸化ジルコニウムから成る群より選択される純粋および混合金属酸化物が挙げられる。好ましい炭酸塩は炭酸カルシウムである。
【0035】
本明細書で使用されている「群の無機粒子」という用語は、1種の無機粒子の場合は複数個として理解されるべきである。また、少なくとも1つの、すなわち1つ以上の群の無機粒子を本発明により使用してもよいと理解されるべきでもあり、このことは、先に規定されている無機粒子の様々な混合物も可能であることを意味する。
【0036】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの群の無機粒子は、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩およびこれらの混合物から成る群より選択される。
【0037】
より好ましい実施形態において、少なくとも1つの群の無機粒子は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子およびCaCO粒子、ならびにこれらの混合物から成る群より選択される。
【0038】
少なくとも1つの群の無機粒子の粒径は、広範囲に変化してもよい。粉末(一次粒子)について、適切な中央粒径D50は、30nm~300μm、好ましくは100nm~250μm、より好ましくは100nm~150μm、さらにより好ましくは100nm~100μmの範囲にある。さらなる実施形態において、適切な粒径は、100nm~10μm、好ましくは100nm~2μmの範囲にある。粒径分布はあまり重要ではないことが分かった。狭いおよび広い粒径分布を有する良好な発泡体を得ることができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの群の無機粒子は、動的光散乱により測定した中央粒径D50が30nm~300μmの範囲にある。
【0040】
「粒径(D)」という用語は、粒子分布の直径を意味し、ここで粒子のx%が、より小さな直径を有する。したがって、D50粒径は中央粒径である。D粒径は、例えばレーザー回折または動的光散乱(DLS)法で測定可能である。本発明によると、ISO22412:2008に準拠した動的光散乱(DLS)を使用することが好ましい。時に準弾性光散乱(QELS)とも称される動的光散乱(DLS)は、サブミクロン領域にあることが一般的な分子および粒子のサイズおよびサイズ分布を測定するための非侵襲性の確立した技術である。本発明において、液体、好ましくは水またはエタノール中に分散した粒子が特徴的であった。懸濁液中での粒子または分子のブラウン運動により、レーザー光が異なる強度で散乱する。これらの強度変動を分析することで、ブラウン運動の速度が分かり、したがって、ストークス・アインシュタイン関係を使用して粒径が分かる。この分布は、体積分布(D)、表面分布(D)または数分布(D)であってもよい。本願の文脈において、D値は数分布を意味し、ここで粒子のx(数)%は、より小さな直径を有する。
【0041】
「両親媒性化合物」という用語は、当技術分野において公知であり、非極性部(尾部または基Rともいわれる)と極性部(頭部基ともいわれる)とを有する有機化合物に関する。よって、適切な両親媒性分子は、一般的に共有結合で頭部基に結合された尾部を含む。そのような両親媒性分子は、1つの尾部および1つの頭部基を含むことが一般的であるが、1つ以上の頭部基を含んでいてもよい。
【0042】
尾部は、脂肪族(直鎖状または分枝鎖状)または環式(脂環式または芳香族)であってもよく、置換基を有していてもよい。そのような置換基は、例えば、-C2n+1(ただし、nは8以下)、第二級OH、第二級NHなどである。好ましい尾部は、任意で置換された2~8個の炭素原子を有する直鎖状の炭素鎖、より好ましくは3~8個、4~8個または5~8個の炭素原子を有する直鎖状の炭素鎖である。本明細書を通して、「第二級OH」および「第二級NH」は、得られる置換された尾部基が第二級アルコールまたは第二級アミンを構成することを意味するものとする。
【0043】
尾部に結合された頭部基は、イオン基、イオン性基および/または極性基であることが好ましい。可能な頭部基および相応する塩の例は、以下の表1に詳述されている(ここで、尾部はRと指定されている)。
【0044】
【表1-1】
【0045】
【表1-2】
【0046】
好ましい頭部基は、カルボン酸基、ガレート(gallates)、アミンおよびスルホネートより選択される。特に好ましい頭部基は、カルボン酸基(すなわち-C(O)OH基)、ガレートおよびアミン基より選択され、ここでXは、Hまたはメチルを表すことが好ましい。好ましいカルボン酸はエナント酸(ヘプタン酸)である。好ましいガレートはブチルガレートである。好ましいアミンはヘプチルアミンである。カルボン酸基が最も好ましい。
【0047】
濃度が0.5mol/l以下である場合、両親媒性分子により、空気と水の界面の表面張力が65mN/m以下の値に低減されることが好ましい。
【0048】
両親媒性分子は、臨界ミセル濃度(CMC)が10μmol/lより高いこと、および/または溶解度が1μmol/lより高いことが好ましい。
【0049】
両親媒性化合物のうちの少なくとも1種、すなわち1種以上の要素を本発明により使用してもよいと理解されるべきであり、このことは、先に規定されている両親媒性化合物の様々な混合物も可能であることを意味する。
【0050】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の両親媒性化合物は、少なくとも1つの極性頭部基と少なくとも1つの非極性尾部基とを有する両親媒性化合物を含み、
ここで、少なくとも1つの頭部基が、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、アルコール、アミン、アミド、ピロリジン、ガレートおよびカルボン酸から成る群より選択され、
かつここで、少なくとも1つの尾部基が、2~8個の炭素原子を有する脂肪族基または芳香族基または環式基より選択され、ここで炭素原子が、C~Cアルキル、第二級OHおよび第二級NHより選択される1つ以上の同じまたは異なる置換基で任意に置換されている。
【0051】
本発明のより好ましい実施形態において、少なくとも1種の両親媒性化合物は、カルボン酸、ガレートおよびアミンから成る群より選択される少なくとも1つの頭部基と、2~8個の炭素原子を有する脂肪族基より選択される少なくとも1つの尾部基とを有する両親媒性化合物を含む。
【0052】
本明細書に規定されている無機粒子を本明細書に規定されている両親媒性化合物と組み合わせると、疎水化された無機粒子が形成されると理解されるべきである。「疎水化された無機粒子」という用語は、無機粒子の親水性の特性を低減するように粒子の表面が両親媒性分子により変性されている無機粒子に関する。本文脈における表面変性は、両親媒性化合物を粒子の表面に吸着させることを意味する。
【0053】
好ましい実施形態において、無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、0.5~160μmol/m、好ましくは10~140μmol/m、より好ましくは20~120μmol/m、特に40~100μmol/mである。別の好ましい実施形態において、無機粒子は、少なくとも1種の無機バインダー混合物の量に対して、0.1~25重量%、好ましくは0.25~15重量%、より好ましくは0.5~15重量%、特に1~15重量%の量で用意される。
【0054】
疎水化された無機粒子は、本明細書に規定されている無機バインダー混合物ベースの無機発泡体を安定化させるのに適している。好ましい実施形態において、発泡体調製物中の無機バインダー混合物に対する水の重量比は、0.1~2.0、好ましくは0.2~1.5、より好ましくは0.3~1.2、特に0.3~1である。
【0055】
無機バインダーは、水性環境で硬化する(水硬性)または空気の存在下で硬化する(非水硬性)無機化合物である。例えば、ポルトランドセメントが水硬性無機バインダーである一方で、石膏は非水硬性バインダーである。潜在水硬性バインダーは、アルカリ活性化剤に曝された際にのみ水硬性になるバインダーを意味する。
【0056】
本発明の文脈において、少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物(iiia)と、任意で水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダー(iiib)とを含む無機バインダー混合物(iii)が使用される。
【0057】
本発明による少なくとも1種の無機バインダー混合物は、少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物(iiia)を含む。「スルホアルミン酸カルシウム混合物」という用語は、水と接触するとスルホアルミン酸カルシウム相、例えばエトリンガイト((CaO)(Al)(CaSO・30~32HO)を形成することができる混合物を意味する。
【0058】
そのようなスルホアルミン酸カルシウム混合物は、例えば:
a) イーリマイト(ye’elimite)(4CaO×3Al×SO)および任意でベライト(belite)(2CaO×SiO)、ならびに
b) 硬石膏(CaSO)および/または硫酸カルシウム半水和物(CaSO×0.5HO)および/または石膏(CaSO×2HO)、
を、90:10~60:40、好ましくは80:20~65:35のa):b)の重量比で含有していてもよい。
【0059】
スルホアルミン酸カルシウム混合物は、およそ、
5~35重量%のSO
30~60重量%のCaO
0~30重量%のSiO
5~35重量%のAl
好ましくは
10~30重量%のSO
30~50重量%のCaO
0~20重量%のSiO
15~35重量%のAl
より好ましくは
17~27重量%のSO
37~47重量%のCaO
5~15重量%のSiO
20~30重量%のAl
の一般的な分析酸化物組成を有する。
【0060】
本発明による少なくとも1種の無機バインダー混合物は、水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダー(iiib)を任意でさらに含む。
【0061】
「潜在水硬性バインダー」および「ポゾランバインダー」という用語は、とりわけ「ジオポリマー」と呼ばれる無機バインダー系を意味する。ジオポリマーは、例示的には、米国特許第4,349,386号明細書(US4,349,386)、国際公開第85/03699号(WO85/03699)および米国特許第4,472,199号明細書(US 4,472,199)に記載されている。
【0062】
ジオポリマーは、主にSiOおよび/またはAl、例えば、ポリ(シアレート)、ポリ(シロキソ)、ポリ(シアレート-シロキソ)またはポリ(シアレート-ジシロキソ)をベースとする、アルカリ性の水性環境で硬化するバインダーである。シアレートは、ケイ素-オキソ-アルミニウムの略語である。ジオポリマー材料はゼオライトに類似しているが、微細構造が非晶質であり、結晶質ではない。また、これらのバインダーは、Fe、TiO、CaO、MgO、NaOまたはKOをベースとする化合物を含有していてもよい。純粋なジオポリマーは通常、カルシウム含量が低い。国際公開第2011/064005号(WO2011/064005A1)には、12~25重量%のCaOを含み、かつ薬品侵食に耐性のある建設用化学品の製造を可能にする無機バインダー系が記載されている。ジオポリマーのさらなる非限定的な例は、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノシリケート、フライアッシュ、活性粘土、ポゾランまたはこれらの混合物を含む。ポゾランは、シリカを含む、またはシリカおよびアルミナを含む化合物である。
【0063】
本発明の目的に関して、「潜在水硬性バインダー」は、(CaO+MgO):SiOのモル比が、0.8~2.5、特に1.0~2.0であるバインダーであることが好ましい。一般的に、先に述べた潜在水硬性バインダーは、工業および/または合成スラグから、特に、高炉スラグ、電熱リンスラグ、鉄鋼スラグおよびこれらの混合物から選択することができ、「ポゾランバインダー」は通常、非晶質シリカ、好ましくは、沈降シリカ、フュームドシリカおよびマイクロシリカ、すりガラス、メタカオリン、アルミノシリケート、フライアッシュから、好ましくは褐炭フライアッシュおよび無煙炭フライアッシュ、天然ポゾラン、例えば、凝灰石、トラス、火山灰、天然および合成ゼオライト、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0064】
本明細書で使用されているように、「スラグ」という用語は、製錬法の副生成物または合成スラグを意味する。製錬法の主な用途は、鉱石、廃品、または異種金属含有材料混合物を、所望の金属を金属層としてすくい取ることができ、かつ不所望の金属酸化物、例えば、ケイ酸塩、アルミナなどがスラグとして残留した形態にすることである。
【0065】
高炉スラグ(BFS)は、高炉内で鉄鉱石の製錬をする間に副生成物として形成される。その他の材料は、高炉水砕スラグ(GBFS)、および微細に粉末化された高炉水砕スラグである破砕高炉水砕スラグ(GGBFS)である。破砕高炉水砕スラグは、粉砕度および粒径分布に関して様々であり、これらは由来物および処理方法に依存し、ここで粉砕度は、反応性に影響を与える。ブレイン値は、粉砕度に関するパラメーターとして使用され、一般的に、200~1000mkg-1、好ましくは300~500mkg-1の桁を有する。より微細に摩砕することで、より高い反応性が生み出される。しかしながら、本発明の目的に関して、「高炉スラグ」という表現は、述べられた処理、摩砕および品質(すなわち、BFS、GBFSおよびGGBFS)のすべての段階から得られる材料を含むことが意図されている。高炉スラグは通常、30~45重量%のCaO、約4~17重量%のMgO、約30~45重量%のSiOおよび約5~15重量%のAlを含み、一般的には、約40重量%のCaO、約10重量%のMgO、約35重量%のSiOおよび約12重量%のAlを含む。
【0066】
非晶質シリカは、X線非晶質シリカ、すなわち、粉末回折法により結晶化度が判別されないシリカであることが好ましい。本発明の非晶質シリカ中のSiOの含量は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%であることが有利である。
【0067】
沈降シリカは、水ガラスから出発する沈殿法により工業規模で得られる。幾つかの製造法からの沈降シリカは、シリカゲルとも呼ばれる。
【0068】
マイクロシリカは、主に非晶質SiO粉末を含む微細な粉末であり、ケイ素またはケイ素鉄の製造の副生成物である。これらの粒子は、約100nmの直径および約15~約30m-1の比表面積を有する。
【0069】
フュームドシリカは、水素/酸素炎中でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応を介して生成される。フュームドシリカは、50~600m-1の比表面積を有する5~50nmの粒径の非晶質SiO粉末である。
【0070】
メタカオリンは、カオリンを脱水させると生成される。カオリンが、物理的に結合した水を100~200℃で放出する一方で、500~800℃で脱ヒドロキシル化が起こり、格子構造が崩壊し、メタカオリン(AlSi)が形成される。よって、純粋なメタカオリンは、約54重量%のSiOおよび約46重量%のAlを含む。
【0071】
アルミノシリケートは、アルミニウム、ケイ素および酸素を含む鉱物であり、これは、SiOおよびAl含量を参照することで表すことができる。これらは、カオリンおよびその他の粘土鉱物の主要な成分である。アンダルサイト、カイヤナイトおよびシリマナイトは、AlSiOの組成を有する天然に存在するアルミノシリケート鉱物である。
【0072】
フライアッシュは、とりわけ発電所内で炭を燃焼させる間に生成され、様々な組成の微細な粒子を含む。フライアッシュの主原料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化カルシウムである。国際公開第08/012438号(WO08/012438)によると、クラスCフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)が約10重量%のCaOを含む一方で、クラスFフライアッシュ(無煙炭フライアッシュ)は、8重量%未満、好ましくは4重量%未満、一般的に約2重量%のCaOを含む。
【0073】
燃焼したシェール、特に燃焼したオイルシェールは、約800℃の温度で天然シェールを燃焼させ、引き続き摩砕することにより得られる。
【0074】
ジオポリマーに適した原材料の概観は、例示的には、Caijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pp. 6-63に見られる。
【0075】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなる無機バインダーは、高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノシリケート、フライアッシュおよびこれらの混合物から成る群より選択される。特に好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなる無機バインダーは、メタカオリン、フライアッシュおよびこれらの混合物から成る群より選択される。
【0076】
本発明による組成物、無機発泡体調製物、無機発泡体および気泡材料が、さらなるアルカリ活性化剤を含まないことが好ましい。アルカリ活性化剤がそれでも添加剤として添加されている場合、アルカリ活性化剤を、式MOHのアルカリ金属水酸化物および式mSiO×nMOのアルカリ金属ケイ酸塩(式中、Mは、アルカリ金属、好ましくはLi、NaもしくはKまたはこれらの混合物であり、m:nのモル比は、4.0以下、好ましくは3.0以下であり、2.0以下がさらに好ましく、特に1.70以下である)から選択することが好ましい。
【0077】
アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは水ガラス、特に好ましくは水性水ガラス、特にナトリウム水ガラスまたはカリウム水ガラスである。しかしながら、リチウム水ガラスもしくはアンモニウム水ガラス、または述べられた水ガラスの混合物を使用することも可能である。好ましくは、先に記載したm:nの比(「係数」とも呼ばれる)を超過すべきではない。というのも、そうでなければ、成分の反応が不完全になり得るからである。非常により小さな係数、例えば約0.2を使用することも可能である。係数がより高い水ガラスは、使用前に、適切な水性アルカリ金属水酸化物を使用することにより本発明の範囲内の係数に調整すべきである。
【0078】
「水ガラス」という用語は、水溶性であるアルカリ金属ケイ酸塩を意味する。水ガラスは、アルカリ金属炭酸塩と石英砂(二酸化ケイ素)との反応により得ることができる。しかしながら、反応性シリカと適切な水性アルカリ金属水酸化物との混合物から水ガラスを製造することもできる。水ガラスの非限定的な例は、NaSiO、KSiOおよびLiSiOを含む。無水形態に加えて、水ガラスの様々な水和物も同様に存在する。一般的な痕跡量の不純物は、Al、Ca、Cr、Cu、Fe、MgおよびTiの元素をベースとする。シリケートに対するアルカリ金属の比は様々であってもよい。この比は、先に述べたnMOに対するSiOのモル比の観点で規定される。m:nの比に関する一般的な値は、4よりも小さな値、3よりも小さな値、2よりも小さな値であるか、または1.7の近くである。
【0079】
有利な係数範囲にあるカリウム水ガラスは、非常に吸湿性があるため、水溶液として主に販売されている;また、有利な係数範囲にあるナトリウム水ガラスは、固体として市販で入手可能である。水ガラス水溶液の固体含量は、通常20重量%~60重量%、好ましくは40~60重量%である。
【0080】
アルカリ活性化剤を使用する場合、アルカリ活性化剤の好ましい量は、1~55重量%、特に5~25重量%である。
【0081】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の無機バインダー混合物(iii)は、DIN EN197-1(11/2011)に準拠したCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV、CEM Vセメント、またはアルミン酸カルシウムセメントより選択される少なくとも1種のセメント(iiic)、好ましくはCEM Iセメントを含む。少なくとも1種のセメントは、成分(iiia)、(iiib)中に存在していても、または個別に添加されてもよい。
【0082】
セメントは、無機の微細に摩砕された水硬性バインダーである。様々なタイプのセメントが、DIN EN197-1(11/2011)に準拠して、CEM I~Vのカテゴリーに分類される。これらの様々なセメントは、様々な腐食物質に対するその安定性において互いに異なり、よって、これらのセメントには、様々な適用がある。
【0083】
ポルトランドセメントとも呼ばれるCEM Iセメントは、約70重量%のCaOおよびMgO、約20重量%のSiO、約10重量%のAlおよびFeを含有する。このセメントは、石灰石、白亜および粘土を摩砕および焼付けすることにより得られる。CEM IIセメントは、低い(約6~約20重量%)または中程度(約20~約35重量%)の量のさらなる成分を有するポルトランドセメントである。このセメントは、高炉スラグ、フュームドシリカ(最大10重量%)、天然ポゾラン、天然焼成ポゾラン、フライアッシュ、燃焼したシェールまたはこれらの混合物をさらに含有していてもよい。高炉セメントとも呼ばれるCEM IIIセメントは、36~85重量%のスラグを含有するポルトランドセメントから成る。ポゾランセメントとも呼ばれるCEM IVセメントは、ポルトランドセメントに次いで、ポゾランと、シリカフュームと、フライアッシュとの混合物を11~65重量%含有する。複合材セメントとも呼ばれるCEM Vセメントは、ポルトランドセメントに次いで、18~50重量%のスラグ、または天然ポゾランと、焼成ポゾランと、フライアッシュとの混合物を含有する。さらに、様々なタイプのセメントが、5重量%のさらなる無機の微細に摩砕された鉱物の化合物を含有していてもよい。
【0084】
さらに、様々な添加剤を本発明により使用してもよい。好ましい実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、pH改質剤、フィラー、促進剤、遅延剤、レオロジー調整剤、超可塑剤、界面活性剤、繊維、水ガラス、さらなる疎水化剤、触媒およびこれらの混合物から成る群より選択される。
【0085】
レオロジー調整剤は、粘度を調整し、したがって流動挙動を調整し、粘稠性、耐久性および塗布性の間で良好なバランスを保証する。これらの改質剤は、合成ポリマー(例えばアクリルポリマー)、セルロース、シリカ、デンプンまたは粘土をベースとしていてもよい。
【0086】
超可塑剤は、粒子分離を回避し、かつレオロジーを改善し、したがって懸濁液の加工性を改善する分散剤としての機能を果たすポリマーである。超可塑剤は通常、4つのカテゴリーに分けることができる:リグノスルホネート、メラミンスルホネート、ナフタレンスルホネートおよび櫛形ポリマー(例えば、ポリカルボキシレートエーテル、ポリ芳香族エーテル、カチオン性コポリマーおよびこれらの混合物)。
【0087】
無機発泡体の硬化時間は、遅延剤/促進剤と呼ばれる特定の化合物を添加することにより延長/短縮することが可能である。遅延剤は、リグノスルホネート、セルロース誘導体、ヒドロキシルカルボン酸、オルガノホスフェート、合成遅延剤および無機化合物の群に分けることができる。遅延剤の非限定的な例は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトネート、無水マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー、ホウ砂、ホウ酸およびZnOである。促進剤の非限定的な例は、CaCl、KCl、NaSiO、NaOH、Ca(OH)およびCaO×Al、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムおよびアルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムである。
【0088】
繊維(または安定化繊維)を発泡プロセスの間に添加して、発泡体の安定性をさらに上昇させることができる。そのような繊維は、様々な材料、例えば、岩石(例えば玄武岩)、ガラス、炭素、有機ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドおよびポリビニルアルコール)、セルロース、リグノセルロース、金属(例えば鉄または鋼鉄)およびこれらの混合物から製造されていてもよい。有機繊維が好ましい。繊維の量は、少なくとも1種の無機バインダー混合物を基準として、3重量%まで、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.1~1.5重量%、特に0.2~1重量%であってもよい。繊維は、長さが、200mmまで、または120mmまで、好ましくは100mmまで、より好ましくは50mmまで、最も好ましくは25mmまで、特に20mmまでであり、直径が100μmまでであることが好ましい。
【0089】
「フィラー」という用語は主に、発泡体の特性を減じることなく体積を増加させるために添加可能な材料を意味する。前述のフィラーは、石英砂または粉末石英、炭酸カルシウム、岩粉、低密度フィラー(例えば、バーミキュライト、パーライト、珪藻土、マイカ、タルク粉末、酸化マグネシウム、発泡ガラス、中空球、泡砂(foam sand)、粘土、ポリマー粒子)、顔料(例えば二酸化チタン)、高密度フィラー(例えば硫酸バリウム)、金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩など)、ならびにこれらの混合物から成る群より選択することができる。ここで適切な粒径は、特に500μmまでである。平均粒径が、300μmまで、好ましくは150μmまでであることが特に好ましい。
【0090】
本明細書に規定されている両親媒性化合物に加えて使用可能な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤およびタンパク質または合成ポリマーが挙げられる。しかしながら、界面活性剤は、連続気泡発泡体を生成する傾向があるため、好ましくない。
【0091】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびセトステアリルアルコール(主にセチルおよびステアリルアルコールを含む)、ならびにオレイルアルコールが挙げられる。さらなる例としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij)CH-(CH10~16-(O-C1~25-OH、例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルまたはペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリプロピレングリコールアルキルエーテルCH-(CH10~16-(O-C1~25-OH;グルコシドアルキルエーテルCH-(CH10~16-(O-グルコシド)1~3-OH、例えば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルC17-(C)-(O-C1~25-OH、例えばTriton X-100;ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルC19-(C)-(O-C1~25-OH、例えば、ノノキシノール-9;グリセロールアルキルエステル、例えばグリセリルラウレート;ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、例えばポリソルベート;ソルビタンアルキルエステル、例えばスパン;コカミドMEA、コカミドDEA;ドデシルジメチルアミンオキシド;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー、例えばポロキサマー;ポリエトキシル化タローアミン(POEA)が挙げられる。好ましい非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリグルコシドも挙げられる。アルキルポリグルコシドは通常、式H-(C10-O-Rを有し、式中、(C10)はグルコース単位であり、Rは、C~C22-アルキル基、好ましくはC~C16-アルキル基、特にC~C12-アルキル基であり、m=1~5である。
【0092】
アニオン性界面活性剤は、その頭部に、アニオン性官能基、例えば、スルフェート、スルホネート、ホスフェートおよびカルボキシレートを含む。主要なアルキルスルフェートとしては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLSまたはSDS)、ならびに関連するアルキルエーテルスルフェート、すなわちラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウムまたはSLES)およびミレス硫酸ナトリウムが挙げられる。その他のものとしては、ドクセート(ジオクチルナトリウムスルホサクシネート)、ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホネート、アルキルアリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェートが挙げられる。好ましいカルボキシレートとしては、アルキルカルボキシレート、例えばステアリン酸ナトリウムが挙げられる。より具体的な種としては、ナトリウムラウロイルサルコシネートおよびカルボキシレートベースのフッ素系界面活性剤、例えば、ペルフルオロノナノエート、ペルフルオロオクタノエート(PFOAまたはPFO)が挙げられる。
【0093】
カチオン性界面活性剤としては、pHに応じて、第一級、第二級または第三級アミンが挙げられ、第一級および第二級アミンは、10未満のpHで正電荷になる。一例としては、オクテニジンジヒドロクロリドがある。さらに、カチオン性界面活性剤としては、永久電荷の第四級アンモニウム塩、例えば、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ジメチルジオクタデシル塩化アンモニウム、ジオクタデシルジメチル臭化アンモニウム(DODAB)が挙げられる。
【0094】
双性イオン性(両性)界面活性剤は、同じ分子に結合したカチオン性およびアニオン性の中心部をどちらも有する。カチオン性の部分は、第一級、第二級もしくは第三級アミンまたは第四級アンモニウムカチオンをベースとする。アニオン性の部分は、より様々であってもよく、スルタイン、すなわちCHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)およびコカミドプロピルヒドロキシスルタインにあるように、スルホネートを含んでいてもよい。ベタイン、例えばコカミドプロピルベタインは、アンモニウムを有するカルボキシレートを有する。最も一般的な生体双性イオン性界面活性剤は、アミンまたはアンモニウムを有するホスフェートアニオン、例えばリン脂質ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリンおよびスフィンゴミエリンを有する。タンパク質の非限定的な例は、ウシ血清アルブミン、卵オボアルブミン、ミルクカゼインまたはβ-ラクトグロブリンである。
【0095】
界面活性剤の割合は、広範囲で変化してもよい。界面活性剤は、2.5重量%まで、好ましくは1.5重量%までの量で存在し得る。
【0096】
水ガラスは、先に説明したように、アルカリ活性化剤としての機能を果たすことができる。「水ガラス」という用語についても先に記載した。
【0097】
添加剤として使用可能な触媒は、発泡のための発泡剤と組み合わせて使用可能な触媒である。適切な触媒は、発泡剤の文脈において、先および以下に述べられている。
【0098】
本発明により使用される成分の量に関するさらなる詳細は、以下に規定されている。
【0099】
先に述べたように、本発明による成分の量は、以下のようであることが好ましい。特に、無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、0.5~160μmol/mであり;かつ/または無機粒子は、少なくとも1種の無機バインダー混合物の量に対して0.1~25重量%の量で用意され;かつ/または乾燥した無機バインダー混合物に対する水の重量比は、0.1~2.0である。
【0100】
例示的な一実施形態において、無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、10~140μmol/m、好ましくは20~120μmol/mであり;かつ/または無機粒子は、少なくとも1種の無機バインダー混合物の量に対して0.25~15重量%の量で用意され;かつ/または無機バインダー混合物に対する水の重量比は、0.2~1.5である。
【0101】
先に説明したように、少なくとも1つの群、すなわち1つ以上の群の無機粒子、および両親媒性化合物のうちの少なくとも1種の要素、すなわち1種以上の要素を使用することができると理解されるべきである。上記の量は、それぞれ本発明の方法で使用される、または本発明の組成物、無機発泡体もしくは気泡材料中に存在する両親媒性化合物および無機粒子の総量を意味する。さらに、無機バインダー混合物に対する上記の量は、本発明の方法で使用される、または本発明の組成物、無機発泡体もしくは気泡材料中に存在する無機バインダーの総量を意味する。
【0102】
少なくとも1種の無機バインダー混合物が、
(iiia) 少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物、ならびに
(iiib) 水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダー
を含む場合、成分(iiib)および(iiia)は、0.1~3.4、好ましくは0.1~2.0、より好ましくは0.3~1.5の相対重量比で存在していてもよい。
【0103】
添加剤の適切な量は、広範囲で変化してもよく、また、添加剤のタイプにも応じる。一般的に、少なくとも1種の添加剤は、少なくとも1種の無機バインダーの量を基準として、0.0003~30重量%、または0.03~25重量%の重量比で用意される。しかしながら、フィラーは、より多い量で使用されてもよい。特に、フィラーは、無機バインダーと類似した量で存在していてもよい。好ましくは、少なくとも1種の無機バインダー混合物に対するフィラーの重量比は、2:1~1:100、好ましくは1:1~1:10であってもよい。
【0104】
本発明の方法に関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0105】
本発明の方法の好ましい実施形態において、工程(1)は、
(1a) 少なくとも1つの群の無機粒子、少なくとも1種の両親媒性化合物、および任意で少なくとも1種の添加剤を水に分散させて、水性分散液を得る工程、ならびに
(1b) 水性分散液を少なくとも1種の無機バインダー混合物と混合する工程
を含む。
【0106】
工程(1a)で、少なくとも1つの群の無機粒子、少なくとも1種の両親媒性化合物、および任意で少なくとも1種の添加剤を、まず互いに組み合わせて、その後、得られた混合物を水に分散させることが好ましいと理解されるべきである。
【0107】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程(1)で得られる無機発泡体調製物は、pH値が12未満であり、このことは、安全性、取扱性および一般的に使用される添加剤との適合性の観点で、本発明の重要な利点である。
【0108】
本発明の方法の好ましい実施形態において、工程(2)は、得られた発泡体調製物を化学的な発泡により発泡させることを含む。本発明の方法の別の好ましい実施形態において、工程(2)は、得られた発泡体調製物を物理的な発泡により発泡させることを含む。本発明の方法のさらなる別の好ましい実施形態において、工程(2)は、得られた発泡体調製物を機械的な発泡により発泡させることを含む。
【0109】
好ましい実施形態において、無機発泡体を製造する方法の工程(2)は、得られた発泡体調製物を、発泡剤により、好ましくは、工程(1)で得られた発泡体調製物を、炭酸塩または重炭酸塩、例えば、CaCO、NaCOおよびNaHCO、アルミニウム粉末、p-トルエンスルホニルヒドラジド、過酸化水素、ジベンジルペルオキシド、過塩素酸、ペルオキソ一硫酸、ジクミルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシドまたはこれらの混合物、より好ましくは過酸化水素と混合することにより発泡させることを含む。より好ましい実施形態において、工程(2)における発泡体調製物の発泡は、発泡剤により、好ましくは、工程(1)で得られた発泡体調製物を、酸の存在下でアルミニウム粉末または炭酸塩と混合することにより、または任意で触媒の存在下で過酸化水素の水溶液と混合することにより実施される。
【0110】
より好ましい実施形態において、無機発泡体を製造する方法の工程(2)は、得られた発泡体調製物を、発泡剤により、好ましくは、先に規定されている発泡剤により発泡させることを含み、ここで発泡剤は、発泡体調製物の合計量を基準として0.1~10重量%の量で添加される。
【0111】
発泡プロセス、特に発泡剤としての過酸化物を用いた発泡を適切な触媒の添加により促進することが可能である。よって、好ましい実施形態において、無機発泡体を製造する方法の工程(2)は、得られた発泡体調製物を、触媒の存在下で化学的な発泡剤により発泡させることを含み、ここで、触媒が、Mn2+、Mn4+、Mn7+またはFe3+カチオンを含むか、または触媒が酵素カタラーゼであることが好ましい。触媒が、MnSO、ΜnO、KMnOおよびこれらの混合物から成る群より選択されることがより好ましい。触媒は、発泡体調製物の合計量を基準として、0.01~5重量%、好ましくは0.01~2重量%、より好ましくは0.05~1.0重量%、特に0.1~0.6重量%の量で使用することができる。
【0112】
好ましい実施形態において、化学的な発泡剤は、10~60重量%、好ましくは20~60重量%、特に40~60重量%の過酸化水素を含む過酸化水素水溶液として用意された過酸化水素であり、ここで過酸化水素水溶液は、約50重量%の過酸化水素溶液を想定して、発泡体調製物の総重量を基準として、0.1~6重量%、好ましくは0.5~5.0重量%、特に1~4重量%の量で添加される。
【0113】
別の好ましい実施形態において、機械的な発泡は、ミキサーを使用することにより、または振動法により、またはステータ・ロータ法により実施されることが好ましい。
【0114】
発泡工程(2)の後に、本発明による無機発泡体が得られる。
【0115】
好ましい実施形態において、製造されたばかりの無機発泡体を、工程2)の後に密閉容器内で硬化させることができる。より好ましい実施形態において、製造されたばかりの無機発泡体を、工程2)の後に密閉容器内で少なくとも12時間にわたり硬化させることができる。硬化は、0℃~100℃、好ましくは20℃~80℃の範囲にある温度で実施可能である。
【0116】
気泡材料は、先に述べた無機発泡体を硬化および任意で乾燥させることにより得られる。本発明による気泡材料は、断熱要素、吸音要素または防火要素の形態にあってもよく、ここで要素は、いずれの場合にも、例えばシートまたは板材であってもよい。
【0117】
本発明による無機発泡体および気泡材料は、大部分が独立気泡の構造および以下の有利な特徴を有する。
【0118】
乾燥密度は、一般的に300kg/m未満、適切には200kg/m未満、好ましくは150kg/m未満、より好ましくは100kg/m未満である。特に、少なくとも1種の無機バインダー混合物が、少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物のみならず、水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーも含む場合、乾燥密度をさらに低減させて、100kg/m未満、好ましくは90kg/m未満にしてもよい。乾燥密度が、界面活性剤で安定化されたジオポリマー発泡体およびこれをベースとする気泡材料の乾燥密度よりも低いことが有利である。
【0119】
熱伝導率(DIN EN12667)は、好ましくは50mW/mK未満、より好ましくは45mW/mK未満、特に40mW/mK未満である。熱伝導率は、界面活性剤で安定化されたジオポリマー発泡体およびこれをベースとする気泡材料の熱伝導率よりもはるかに良好であることが一般的である。
【0120】
圧縮強度(DIN EN826)は、少なくとも30kPaであることが好ましい。圧縮強度は、界面活性剤で安定化されたジオポリマー発泡体およびこれをベースとする気泡材料の圧縮強度と同等であることが一般的である。実際に、乾燥密度がより低くなることで、乾燥密度に対する圧縮強度の比が改善されている。
【0121】
空気流れ抵抗(DIN EN29053)は、好ましくは少なくとも1000kPa・s/m、より好ましくは少なくとも1500kPa・s/m、最も好ましくは少なくとも1800kPa・s/mである。特に、少なくとも1種の無機バインダー混合物が、少なくとも1種のスルホアルミン酸カルシウム混合物のみならず、水硬性バインダー、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダーおよびこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1種のさらなる無機バインダーも含む場合、空気流れ抵抗をさらに増加させて、少なくとも2000kPa・s/mにしてもよい。空気流れ抵抗は、200kPa・s/m未満または50kPa・s/m未満でさえある空気流れ抵抗を有することが一般的な、界面活性剤で安定化されたジオポリマー発泡体およびこれをベースとする気泡材料の空気流れ抵抗よりも著しく高いことが有利である。
【0122】
本発明を以下の例によってさらに説明する。
【0123】

比較例1
ジオポリマー発泡体を、以下の組成の原材料から製造した:
20.5重量%のメタカオリン(Argical(商標)M1200S、Imerys)
20.5重量%のフライアッシュ(Microsit(登録商標)M10、BauMineral)
7.8重量%のアルミン酸カルシウムセメント(Ciment Fondu(登録商標)、Kerneos)
1.2重量%の界面活性剤(アルキルポリグルコシド、Glucopon(登録商標)225DK、BASF)
0.2重量%のPAN繊維(6mm、6.7dtex)
19.5重量%の水
27.4重量%の水ガラス(’’Kaliwasserglass K58’’、BASF)
2.9重量%のNaOH。
【0124】
液体原材料をまずNaOHと混合した。固体原材料を液体成分に添加し、均質なスラリーが生成されるまで撹拌した。その後、キッチンミキサーにより発泡体を作製した。このようにして得られた発泡体を型に注いだ。硬化反応が起こり、発泡体が凝固し始めた。適切な硬化を可能にするために、ジオポリマー発泡体を湿った雰囲気で3日にわたり貯蔵した。その後、これを離型して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0125】
得られたジオポリマー発泡体の部分は、寸法が300mm×300mm×40mmであった。その乾燥密度は144kg/mであり、その熱伝導率は42.1mW/mKであった。圧縮強度は48kPaであり、曲げ強度は28kPaであった。この試料は、4.2kPa・s/mの空気流れ抵抗(DIN EN29053)を特徴としていた。この発泡体は、図1に示されるように、主に連続した気泡を示した。
【0126】
比較例2
79.8重量%の炭酸カルシウム(Socal31)、15.1重量%のブチルガレートおよび5.1重量%の酸化マンガン(IV)を含む混合物を「発泡体形成用粉末」として予め混合した。
【0127】
ジオポリマー発泡体を、以下の組成の原材料から製造した:
19.2重量%のメタカオリン(Argical(商標)M1200S、Imerys)
19.2重量%のフライアッシュ(Microsit(登録商標)M10、BauMineral)
7.3重量%のアルミン酸カルシウムセメント(Ciment Fondu(登録商標)、Kerneos)
2.3重量%の発泡体形成用粉末
0.2重量%のPAN繊維(6mm、6.7dtex)
23.4重量%の水
26.3重量%の水ガラス(’’Kaliwasserglass K58’’、BASF)
2.8重量%の過酸化水素(50%溶液)。
【0128】
発泡体形成用粉末をまず水に分散させた。その後、この懸濁液を水ガラスに添加した。メタカオリンとフライアッシュとの混合物を添加し、この懸濁液を10分にわたり撹拌した。次に、アルミン酸カルシウムセメントを混ぜた。撹拌15分後に、過酸化水素を添加することにより、懸濁液の発泡を開始した。このようにして得られたスラリーを型に注ぎ、ここで過酸化水素の分解が完了するまで発泡体の膨張を展開させる。製造された湿潤した発泡体は、約30分後に硬化反応が起こって発泡体が凝固し始めるまで安定していた。適切な硬化を可能にするために、ジオポリマー発泡体を湿った雰囲気で3日にわたり貯蔵した。その後、これを離型して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0129】
得られたジオポリマー発泡体の部分は、寸法が200mm×200mm×50mmであった。その乾燥密度は127kg/mであり、その熱伝導率は39.6mW/mKであった。この試料は、233kPa・s/mの空気流れ抵抗を特徴としていた。この発泡体は、主に独立した気泡を示した。この発泡体の写真を図2に示す。
【0130】
実施例1
88.5重量%の炭酸カルシウム(Schaefer Precarb100)、5.8重量%のエナント酸および5.7重量%の酸化マンガン(IV)を含む混合物を「発泡体形成用粉末」として予め混合した。
【0131】
スルホアルミン酸カルシウム発泡体を以下の組成の原材料から製造した:
39.4重量%のスルホアルミン酸カルシウム(Alipre(登録商標)、Italcementi)
12.2重量%の硫酸カルシウム二水和物
6.5重量%の発泡体形成用粉末
0.3重量%のPAN繊維(6mm、6.7dtex)
38.7重量%の水
2.9重量%の過酸化水素(50%溶液)。
【0132】
発泡体形成用粉末をまず水に分散させた。その後、スルホアルミン酸カルシウムと硫酸カルシウム二水和物との混合物を混ぜた。撹拌15分後に、過酸化水素を添加することにより、懸濁液の発泡を開始した。このようにして得られたスラリーを型に注ぎ、ここで過酸化水素の分解が完了するまで発泡体の膨張を展開させた。製造された湿潤した発泡体は、約15分後に硬化反応が起こって発泡体が凝固し始めるまで安定していた。適切な硬化を可能にするために、このスルホアルミン酸カルシウム発泡体を湿った雰囲気で一晩にわたり貯蔵した。その後、これを離型して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0133】
得られたスルホアルミン酸カルシウム発泡体の部分は、寸法が240mm×480mm×100mmであった。その乾燥密度は111kg/mであり、その熱伝導率は42.1mW/mKであった。圧縮強度は48kPaであった。この試料は、1990kPa・s/mの空気流れ抵抗を特徴としていた。この発泡体は、図3に示されるように、独立した気泡を示した。
【0134】
実施例2
83.7重量%の炭酸カルシウム(Schaefer Precarb100)、5.5重量%のエナント酸および10.8重量%の酸化マンガン(IV)を含む混合物を「発泡体形成用粉末」として予め混合した。
【0135】
スルホアルミン酸カルシウム発泡体を以下の組成の原材料から製造した:
18.7重量%のスルホアルミン酸カルシウム(Alipre(登録商標)、Italcementi)
5.8重量%の硫酸カルシウム二水和物
12.2重量%のメタカオリン(Argical(商標)M1200S、Imerys)
12.2重量%のフライアッシュ(Microsit(登録商標)M10、BauMineral)
3.7重量%の発泡体形成用粉末
0.2重量%のPAN繊維(6mm、6.7dtex)
43.9重量%の水
3.2重量%の過酸化水素(50%溶液)。
【0136】
発泡体形成用粉末をまず水に分散させた。その後、スルホアルミン酸カルシウムと、硫酸カルシウム二水和物と、メタカオリンと、フライアッシュとの混合物を混ぜた。撹拌15分後に、過酸化水素を添加することにより、懸濁液の発泡を開始した。このようにして得られたスラリーを型に注ぎ、ここで過酸化水素の分解が完了するまで発泡体の膨張を展開させた。製造された湿潤した発泡体は、約15分後に硬化反応が起こって発泡体が凝固し始めるまで安定していた。適切な硬化を可能にするために、このスルホアルミン酸カルシウム発泡体を湿った雰囲気で3日にわたり貯蔵した。その後、これを離型して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0137】
得られたスルホアルミン酸カルシウム発泡体の部分は、寸法が240mm×480mm×100mmであった。その乾燥密度は83kg/mであり、その熱伝導率は36.4mW/mKであった。圧縮強度は43kPaであり、曲げ強度は28kPaであった。この試料は、2220kPa・s/mの空気流れ抵抗を特徴としていた。この発泡体は、図4に示されるように、独立した気泡を示した。
図1
図2
図3
図4