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特許7150750オイラービデオ倍率を使用した陰圧創傷療法システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】オイラービデオ倍率を使用した陰圧創傷療法システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20221003BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61M27/00
A61B5/026 120
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019563151
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018062207
(87)【国際公開番号】W WO2018210693
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】62/506,524
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェスワンス・ガッデ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ケネス・フレイジャー・グルージョン・ハント
(72)【発明者】
【氏名】マーカス・ダミアン・フィリップス
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0327777(US,A1)
【文献】国際公開第2017/079387(WO,A1)
【文献】特表2011-530316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0092958(US,A1)
【文献】中国実用新案第204133473(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61B 5/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷上に配置された創傷被覆材と流体連通するように構成された陰圧源であって、前記創傷被覆材の下に陰圧を提供するように構成された陰圧源と、
前記創傷被覆材に含まれた視覚化センサであって、前記創傷のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、
前記陰圧源と前記視覚化センサの両方と通信するコントローラであって、前記コントローラが、
前記ビデオデータからの治療パラメータであって、当該治療パラメータが前記創傷を囲む組織への血流を示すまたは前記創傷の血流を示す色及び/またはモーションの変化に基づいている、治療パラメータを決定し、
前記陰圧源に、前記治療パラメータが閾値と異なる場合、提供される陰圧のレベルを増加または減少させる、コントローラと、を含む、創傷療法システム。
【請求項2】
前記コントローラが、オイラービデオ倍率によって前記ビデオデータを増幅するようにさらに構成される、請求項1に記載の創傷療法システム。
【請求項3】
前記治療パラメータが、前記ビデオデータにおいて測定された領域値間の差から決定される、請求項1または2のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項4】
前記ビデオデータが、RGB色データを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項5】
前記視覚化センサが、前記コントローラと無線通信するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記陰圧源と無線通信するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項7】
前記コントローラが、前記治療パラメータが所望の値未満である場合、前記陰圧源に信号を送信し、陰圧を増加させるように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記治療パラメータが前記閾値を超える場合、前記陰圧源に、前記提供される陰圧のレベルを減少させるように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記治療パラメータを複数の閾値と比較するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項10】
前記コントローラが、ルックアップテーブルを使用して前記比較を実行するように構成される、請求項9に記載の創傷療法システム。
【請求項11】
前記治療パラメータが前記創傷内の血流を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【請求項12】
前記閾値が、前記創傷内の所望の血流レベルに対応する、請求項1~11のいずれか一項に記載の創傷療法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月15日出願の米国仮特許出願第62/506,524号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、例えば、創傷監視および陰圧創傷療法と組み合わせて被覆材を使用する、創傷を治療する装置、システム、および方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の適用では治癒しない、開放または慢性創傷の治療は、当該技術分野ではよく知られている。現在当該技術分野で知られている陰圧創傷療法(NPWT)システムは、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、さまざまな手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。このような陰圧は、創傷部位における肉芽組織の形成を促進し、かつ人体の通常の炎症プロセスを補助しながら、同時に有害なサイトカインおよび/または細菌を含む可能性がある過剰な流体を除去することにより、創傷の治癒を促進すると考えられている。しかしながら、治療の便益を完全に実現するには、NPWTのさらなる改良が必要とされる。
【0004】
NPWTシステムに役立つ、多くの異なるタイプの創傷被覆材が知られている。さまざまな種類の創傷被覆材には、さまざまな種類の材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、発泡体パッド、または多層創傷被覆材が含まれる。多層創傷被覆材の一例は、NPWTで創傷を治療する、キャニスタなしのシステムを提供するように、裏当て層の下方に創傷接触層および超吸収層を含む、Smith&Nephewから市販されているPICO被覆材である。創傷被覆材は、一本のチューブに接続する吸引ポートに対して封止され得、その吸引ポートは、被覆材から流体を吸い出し、および/または、ポンプから創傷被覆材に陰圧を伝達するのに使用され得る。加えて、Smith&Nephewから市販されているRENASYS-F、RENASYS-G、RENASYS-ABおよびRENASYS-F/ABも、NPWT創傷被覆材およびシステムのさらなる例である。多層創傷被覆材の別の例は、陰圧を使用せずに創傷を治療するのに使用される、湿潤創傷環境被覆材を含む、Smith&Nephewから市販されているALLEVYN Life被覆材である。
【0005】
しかしながら、陰圧創傷療法または他の創傷療法において使用する、従来技術の被覆材によって、被覆材の下方にある創傷部位はほとんど可視化されず、またはその状態に関する情報はほとんど提供されない。このため、臨床医が創傷の治癒および状態を視診することを可能にするために、創傷が所望するレベルまで治癒する前に、または吸収性被覆材の場合は、被覆材の全吸収容量に達する前に、時期を早めて被覆材を交換する必要があり得る。現行の被覆材には、創傷の状態に関する情報を提供する方法または特徴が、限定されているまたは十分でないものがある。
【0006】
さらに、既存の技術は、褥瘡の形成の前など、創傷が存在する前の組織の状態に関する不適切な情報を提供し得る。従って、創傷および組織内の変化を評価/検出するための改善された方法および技術が必要である。
【発明の概要】
【0007】
特定の開示された実施形態は、組織を監視するための装置、方法、およびシステムに関する。本明細書に記載される装置、方法、およびシステムの適用は、特定の組織または特定の負傷に限定されないことを当業者には理解されるであろう。
【0008】
いくつかの実施形態では、創傷療法システムは、創傷の上に配置された創傷被覆材と流体連通するように構成された陰圧源であって、創傷被覆材の下に陰圧を提供するように構成された陰圧源と、傷の上に配置された視覚化センサであって、創傷のビデオデータを収集するように構成された視覚化センサと、陰圧源と視覚化センサの両方と通信するコントローラであって、ビデオデータから治療因子を決定し、治療因子が閾値と異なる場合、陰圧源に、提供された陰圧のレベルを増加または減少させるコントローラとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、コントローラはさらに、オイラービデオ倍率によってビデオデータを増幅するように構成され得る。治療因子は、ビデオデータにおいて測定された領域値の差異から決定されうる。ビデオデータは、RGB色データを含んでもよい。視覚化センサは、コントローラと無線通信するように構成されうる。コントローラは、陰圧源と無線通信するように構成され得る。コントローラは、治療パラメータが所望の値より低い場合、陰圧源に信号を送信して陰圧を増加させるように構成されうる。コントローラは、治療パラメータが閾値を超える場合、陰圧源が提供される陰圧のレベルを減少させるように構成されうる。コントローラは、治療パラメータを複数の閾値と比較するように構成されうる。コントローラは、ルックアップテーブルを使用して比較を実行するように構成され得る。治療パラメータは、創傷内の血流を示し得る。閾値は、創傷における所望の血流レベルに対応し得る。
【0010】
さらなる実施形態を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、いくつかの実施形態による減圧創傷療法システムを示す。
図2A図2Aは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスタを示す。
図2B図2Bは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスタを示す。
図2C図2Cは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリおよびキャニスタを示す。
図3A図3Aは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリの電気的構成要素概略図を示す。
図3B図3Bは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリの構成要素のブロック図を示す。
図4図4は、いくつかの実施形態による陰圧創傷療法を提供するプロセスを示す。
図5A図5Aは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を示す。
図5B図5Bは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を示す。
図6A図6Aは、創傷滲出液を吸収し貯蔵できる、可撓性流体コネクタおよび創傷被覆材を用いた、陰圧創傷治療システムの一実施形態を示す。
図6B図6Bは、創傷被覆材に接続された流体コネクタの一実施形態の断面を示す。
図7図7は、陰圧創傷療法システムの一実施形態を示す。
図8図8は、オイラービデオ倍率として知られるビデオ増幅のプロセスの実施形態を示す。
図9図9は、創傷治療システムの実施形態を示す。
図10A図10Aは、NPWT治療を提供するためのプロセスの実施形態を示す。
図10B図10Bは、ビデオからのサンプリングフレームのサンプリング方法の実施形態を示す。
図11A図11Aは、PICO(商標)ポンプを使用した治療ルックアップテーブルの実施形態である。
図11B図11Bは、RENASYS(商標)ポンプを使用した治療ルックアップテーブルの実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示される実施形態は、センサ有効基材を用いた生物組織のモニタリングおよび治療のための装置および方法に関する。本明細書に開示される実施形態は、特定のタイプの組織または傷害の治療またはモニタリングに限定されず、代わりに本明細書に開示されるセンサ可能な技術は、センサ有効基材から利益を得うる任意のタイプの療法に広く適用可能である。一部の実施は、診断および患者管理の両方の決定を行うために、医療提供者によって依頼されたセンサおよびデータ収集を利用する。
【0013】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、無傷なまたは損傷を受けたヒトまたは動物組織の両方の治療で使用されるように構成された基材上に取り付けられたセンサの使用、またはその中に埋め込まれたセンサの使用に関する。こうしたセンサは、周囲の組織についての情報を収集し、かかる情報をコンピューティング装置または介護者に送信して、さらなる治療で利用することができる。特定の実施形態では、こうしたセンサは、関節炎、温度、または問題を起こしかねないおよびモニタリングを必要とし得るその他の領域を監視するための領域を含む、本体のどこにでも皮膚に取り付けられうる。本明細書に開示されるセンサは、例えば、MRIまたは他の技術を実施する前に、例えば、装置の存在を示すために、X線不透過性マーカーなどのマーカーも組み込むことができる。
【0014】
本明細書で開示したセンサ実施形態は、衣服と組み合わせて使用されうる。本明細書に開示されるセンサの実施形態と併用するための衣服の非限定的な例としては、シャツ、ズボン、パンタロン、ドレス、下着、上着、手袋、靴、帽子、およびその他の適切な衣類が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、特定の衣服に溶着されるか、またはその中へと積層されうる。センサ実施形態は、衣服上に直接印刷されてもよく、および/または織物内に埋め込まれていてもよい。微多孔膜などの通気性および印刷可能な材料も適切でありうる。
【0015】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、病院用ベッド内などの緩衝またはベッドパッディングに組み込まれて、本明細書に開示される任意の特徴などの患者の特徴を監視することができる。特定の実施形態では、こうしたセンサを含む使い捨てフィルムは、病院用寝具の上に配置され、必要に応じて除去/交換されうる。
【0016】
一部の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、センサ実施形態が自立しているように、エネルギー収穫を組み込みうる。例えば、エネルギーは、熱エネルギー源、運動エネルギー源、化学勾配、または任意の適切なエネルギー源から収穫され得る。
【0017】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、スポーツ医薬品を含むリハビリテーション装置および治療で利用されうる。例えば、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、支柱、スリーブ、ラップ、サポート、およびその他の適切な品目で使用されうる。同様に、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ヘルメット、スリーブ、および/またはパッドなどのスポーツ機器に組み込まれうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、診断において有用でありうる加速度などの特性を監視するための保護ヘルメットに組み込まれうる。
【0018】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、外科手術装置、例えば、Smis&Neunic IncによるNAVIO外科手術システムとの協調で使用され得る。実施において、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、外科手術装置の配置を案内するため、外科手術装置と通信し得る。一部の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、可能性のある外科手術部位への血流を監視するか、または外科手術部位への血流がないことを確実にすることができる。さらなる外科手術データは、瘢痕化の防止を補助することおよび影響を受ける領域から遠い領域を監視するために収集されうる。
【0019】
外科手術技術をさらに補助するために、本明細書に開示されたセンサは、外科用ドレープに組み込まれて、裸眼では直接見えないドレープ下の組織に関する情報を提供し得る。例えば、センサ組み込み可撓性ドレープは、改善された面積集中データ収集を提供するために有利に位置付けられたセンサを有し得る。特定の実施では、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ドレープの境界または内部に組み込まれて、フェンスを作り出して外科手術システムを制限/制御することができる。
【0020】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、外科手術の評価にも利用されうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、皮膚および潜在的な切開部位のための下にある組織を監視することによって、可能性のある外科手術部位についての情報を収集するために使用されうる。例えば、灌流レベルまたはその他の適切な特性は、個別の患者が外科手術合併症のリスクにさらされうるかどうかを評価するために、皮膚の表面でおよび、組織内で深くモニターされうる。本明細書に開示されるものなどのセンサ実施形態は、細菌感染の存在を評価し、抗菌剤の使用のための表示を提供するために使用されうる。さらに、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、褥瘡損傷および/または脂肪組織レベルを特定するなど、深部組織におけるさらなる情報を収集し得る。
【0021】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、心血管モニタリングで利用されうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、心血管系の特性を監視し、かかる情報を別の装置および/または介護者に伝達するために、皮膚に載置することができる可撓性の心血管モニターに組み込まれうる。例えば、こうした装置は、パルス速度、血液の酸素化、および/または心臓の電気活性を監視し得る。同様に、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ニューロンの電気活性の監視など、神経生理学的用途に利用されうる。
【0022】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、可撓性の移植を含む、移植可能な整形外科用インプラントなどの移植可能な装置に組み込まれうる。こうしたセンサ実施形態は、インプラント部位に関する情報を収集し、この情報を外部ソースに送信するように構成されうる。いくつかの実施形態では、内部ソースはまた、こうしたインプラントのための電力を提供し得る。
【0023】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、筋肉のラクトース生成または皮膚の表面上の汗の生成など、皮膚の表面上または皮膚の表面下の生化学的活性を監視するためにも利用されうる。いくつかの実施形態では、グルコース濃度、尿濃度、組織圧、皮膚温度、皮膚表面導電率、皮膚表面抵抗率、皮膚の水和性、皮膚の浸軟性、および/または皮膚のリッピングなど、その他の特徴を監視し得る。
【0024】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、耳、鼻、および喉(ENT)用途に組み込まれうる。例えば、こうしたセンサ実施形態は、鼻腔路内の創傷モニタリングなど、ENT関連手術からの回復を監視するために利用されうる。
【0025】
以下でより詳細に説明するように、本明細書に開示されるセンサ実施形態は、ポリマーフィルムでの封入などの封入を伴うセンサ印刷技術を包含し得る。こうしたフィルムは、ポリウレタンなど本明細書で説明した任意のポリマーを使用して構築されうる。センサ実施形態の封入は、局所組織、局所的な液体、およびその他の潜在的な損傷源からの電子機器の防水および保護を提供し得る。
【0026】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるセンサは、以下に開示するように器官保護層に組み込まれうる。このようなセンサ組み込み器官保護層は、対象臓器を保護するとともに、器官保護層が所定位置にあって保護を提供することを確認し得る。さらに、センサ組み込み器官保護層を利用して、血流、酸素化、および器官健康のその他の適切なマーカーを監視することによって、下にある臓器を監視することができる。いくつかの実施形態では、臓器の脂肪および筋肉含有量を監視することによって、移植された臓器を監視するためにセンサ有効な器官保護層を使用し得る。さらに、臓器のリハビリの間など、移植中および移植後の臓器を監視するために、センサ有効な器官保護層を使用し得る。
【0027】
本明細書に開示されるセンサ実施形態は、創傷(以下でより詳細に開示)またはさまざまなその他の用途に対する治療に組み込まれうる。本明細書に開示されるセンサ実施形態の追加的用途の非限定的な例としては、無傷な皮膚のモニタリングおよび治療、血流を監視するための心血管系へ用途、手足の動きおよび骨修復を監視するなどの整形外科用途、電気的衝撃を監視するなどの神経生理学的用途、および改善されたセンサ有効モニタリングから利益を得ることができる任意の他の組織、臓器、システム、または状態が挙げられる。
【0028】
創傷療法
本明細書に開示するいくつかの実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指し得る。開示技術実施形態は、生理学的組織または生体組織への損傷の防止または最小化、または例えば、陰圧源および創傷被覆材構成要素および装置などを含む、減圧を伴うまたは伴わない損傷した組織(例えば、本明細書で説明した創傷など)の治療に関連し得る。創傷オーバーレイおよびパッキング材料、または、存在する場合には内層を備える、装置および構成要素は、時に総称して本明細書では被覆材と呼ばれる。いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、減圧せずに利用されるように提供され得る。
【0029】
本明細書に開示するいくつかの実施形態は、ヒトまたは動物の体に対する創傷療法に関する。そのため、本明細書における創傷へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体上の創傷を指すことができ、本明細書における体へのいかなる言及も、ヒトまたは動物の体を指し得る。開示技術実施形態は、生理学的組織または生体組織への損傷、または損傷した組織の治療(例えば、本明細書に記載される創傷など)の防止または最小化に関連し得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「創傷」という表現は、カット、ブロー、または他の衝撃、一般に皮膚が切断または破壊されることによって生じうる生体組織に対する負傷を含んでもよい。創傷は、慢性または急性の傷害でありうる。急性創傷は、手術または外傷の結果として生じる。これらは、予測される期間内の治癒の段階を通して移動する。慢性創傷は典型的には急性創傷として始まる。急性創傷は、治癒段階に従わない場合に慢性創傷になることがあり、回復が長くなる。急性から慢性創傷への移行は、患者が免疫化されることによるものでありうる。
【0031】
慢性創傷には、例えば、慢性創傷の大部分を占める静脈性潰瘍(脚で発生するもの)が含まれうるが、高齢の糖尿病性潰瘍(例えば、足または足首潰瘍)、周辺動脈疾患、褥瘡、または表皮解析球症(EB)に影響を与える。
【0032】
他の創傷の例としては、腹部創傷、または手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模または切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、ストーマ、手術創傷、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
創傷は深部組織損傷も含みうる。深部組織損傷は、政府褥瘡諮問パネル(NPUAP)によって提案される用語であり、褥瘡の固有の形態を記述するものである。これらの潰瘍は、紫色褥瘡、骨張った骨の突起で悪化し傷つく可能性が高い潰瘍、などの用語で、長年、臨床医によって説明されてきた。
【0034】
創傷はまた、本明細書に記載されるように、創傷になるリスクのある組織を含みうる。例えば、リスクのある組織には、骨の隆起を覆う組織(深部組織損傷/損傷のリスクがある)または(例えば、関節置換/外科的変更/再建のため)切断される可能性のある手術前の組織(膝の組織など)を含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示される技術を、以下の一つまたは複数と組み合わせて、創傷を治療する方法に関する。すなわち、高度な履物、患者を回すオフロード(糖尿病性足潰瘍のオフロードなど)、感染症の治療、システミックス、抗菌剤、抗生物質、手術、組織の除去、血流に影響を与えること、理学療法、運動、入浴、栄養、水分補給、神経刺激、超音波、電気刺激、酸素療法、マイクロ波療法、活性剤オゾン、抗生物質、抗菌剤など。
【0036】
別の方法としてまたは追加的に、創傷は、局所陰圧および/または適用された陰圧の使用によって支援されていない(非陰圧療法とも呼ばれる場合もある)従来の高度な創傷ケアを使用して治療されうる。
【0037】
高度な創傷ケアには、吸収性被覆材、閉塞被覆材の使用、創傷被覆材または付属物における抗菌剤および/または清拭剤の使用、パッド(例えば、ストッキングや包帯などのクッション療法または圧縮療法)の使用などを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、創傷の治癒を容易におよび促進するために、創傷に被覆材を適用できる、従来的創傷ケアを使用してこうした創傷の治療を実施することができる。
【0039】
いくつかの実施形態は、本明細書に開示されるように創傷被覆材を提供することを含む創傷被覆材を製造方法に関する。
【0040】
開示技術と併せて利用されうる創傷被覆材は、当該技術分野において既知の任意の公知の被覆材を含む。本技術は、陰圧療法および非陰圧療法に適用可能である。
【0041】
いくつかの実施形態において、創傷被覆材は、一つまたは複数の吸収層を含む。吸収層は、発泡体または超吸収体であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、多糖類または修飾多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、コラーゲン、またはゼラチンまたはその混合物を含む、被覆材層を含んでもよい。リストされたポリマーを含む被覆材層は、陰圧療法または非陰圧療法のいずれかの創傷被覆材層を形成するために有用であることが当技術分野で公知である。
【0043】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスは、多糖類または修飾多糖類であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスはセルロースであり得る。セルロース材料は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロース(CEC)、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルスルホネートセルロース、セルロースアルキルスルホネート、またはそれらの混合物などの親水性修飾セルロースを含みうる。
【0045】
特定の実施形態では、セルロース材料はセルロースアルキルスルホネートであり得る。硫酸アルキル置換基のアルキル部分は、メチル、エチル、プロピル、またはブチルなどの1~6個の炭素原子を有するアルキル基を有し得る。アルキル部分は、分枝鎖または非枝鎖状であってもよく、従って好適なプロピルスルホネート置換基は、1-または2-メチル-エチルスルホネートであり得る。ブチルスルホネート置換基は、2-エチル-エチルスルホネート、2,2-ジメチル-エチルスルホネート、または1,2-ジメチル-エチルスルホネートであり得る。アルキルスルホネート置換基は、硫酸エチルであり得る。セルロースアルキルスルホネートは、WO10/061225、US2016/114074、US2006/0142560、またはUS5,703,225に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
セルロースアルキルスルホナートは、さまざまな置換、セルロース骨格構造の鎖長およびアルキルスルホナート置換基の構造を有し得る。溶解性および吸収性は置換の程度に依存し、置換の程度が増大するほど、セルロースアルキルスルホナートはますます溶解性になる。溶解性が増加すると、吸収性が増加する。
【0047】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材はまた、上部またはカバー層を含む。
【0048】
本明細書に開示される創傷被覆材の厚さは、1~20、または2~10、または3~7mmでありうる。
【0049】
いくつかの実施形態では、開示技術は、非陰圧被覆材と併せて使用されうる。創傷部位で保護を提供するのに適した非陰圧創傷被覆材は、以下を含みうる:
創傷滲出液を吸収するための吸収層および
使用時に吸収層によって吸収される創傷滲出液の観察を少なくとも部分的に遮断するための遮蔽要素。
【0050】
遮蔽要素は部分的に透光性であり得る。
【0051】
遮蔽要素はマスキング層であり得る。
【0052】
非陰圧創傷被覆材は、吸収層の観察を可能にする遮蔽要素内またはそれに隣接した領域をさらに含みうる。例えば、遮蔽要素層は、吸収層の中央領域の上に提供され、および吸収層の境界領域上には提供されなくてもよい。いくつかの実施形態では、遮蔽要素は親水性材料であるか、または親水性材料で被覆されている。
【0053】
遮蔽要素は、三次元編物スペーサ生地を含みうる。スペーサ生地は当業界で周知であり、編物スペーサ生地層を含みうる。
【0054】
遮蔽要素は、被覆材を変更する必要性を示すためのインジケータをさらに含みうる。
【0055】
いくつかの実施形態では、遮蔽要素は、少なくとも部分的に吸収層の上に層として、使用中吸収層よりも創傷部位からさらに設けられる。
【0056】
非陰圧創傷被覆材は、流体をそれを通して移動させることを可能にするための遮蔽要素に複数の開口部をさらに含みうる。遮蔽要素は、所定のサイズまたは重量の分子の通過を選択的に許容または防止するためのサイズ排除特性を有する材料を含んでもよく、または被覆され得る。
【0057】
遮蔽要素は、600nm以下の波長を持つ光放射を少なくとも部分的にマスクするように構成されうる。
【0058】
遮蔽要素は、50%以上の光吸収を減少させるように構成されうる。
【0059】
遮蔽要素は、CIE L*値50以上、および随意に70以上を生み出すように構成されうる。いくつかの実施形態ではにおいて、遮蔽要素は、CIE L*値70以上を生み出すように構成されうる。
【0060】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷接触層、発泡体層、臭気制御要素、耐圧層およびカバー層のうちの少なくとも一つをさらに含みうる。
【0061】
いくつかの実施形態では、カバー層が存在し、カバー層は半透過性フィルムである。一般に、半透過性フィルムは500g/m/24時間以上の蒸気透過性を持つ。
【0062】
半透過性フィルムは細菌バリアであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態で、本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、創傷接触層を含み、吸収層は創傷接触層の上にある。創傷接触層は、創傷部位の上に実質的に流体密封シールを形成するための接着部分を担持する。
【0064】
本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、遮蔽要素および単一層として設けられる吸収層を含みうる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、発泡体層を含み、遮蔽要素は、遮蔽要素の移動によって変位または破壊されうる構成要素を含む材料である。
【0066】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は臭気制御要素を含み、別の実施形態では被覆材は臭気制御要素を含まない。存在する時、臭気制御要素は、吸収層または遮蔽要素内またはそれに隣接して分散されうる。別の方法として、存在する場合、臭気制御要素は、発泡体層と吸収層との間に挟まれた層として提供され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材に対する開示技術は、創傷滲出液を吸収するための吸収層を提供すること、および使用中、吸収層によって吸収された創傷滲出液の観察を少なくとも部分的に遮断するための遮蔽要素を提供すること含む創傷被覆材を製造する方法を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷滲出液を吸収するための吸収層と、吸収層の上であってさらに吸収層よりも創傷被覆材の創傷に面した側から設けられるシールド層とを含み、創傷部位での保護を提供するのに適し得る。シールド層は、吸収層の上に直接設けられてもよい。いくつかの実施形態では、シールド層は、三次元スペーサ生地層を含む。
【0069】
シールド層は、被覆材に加えられる圧力が伝わる面積を25%以上または適用の初期面積を増加させる。例えば、シールド層は、被覆材に加えられる圧力が伝わる面積を50%以上、随意に100%以上、随意に200%以上増加させる。
【0070】
シールド層は、2つ以上のサブ層を含んでもよく、第一のサブ層は貫通孔を含み、およびさらなるサブ層は貫通孔を含み、第一のサブ層の貫通孔はさらなるサブ層の貫通孔からオフセットされる。
【0071】
本明細書に開示される非陰圧創傷被覆材は、ガスおよび蒸気を通過することを可能にする透過性カバー層をさらに備えてもよく、カバー層はシールド層の上に設けられ、カバー層の貫通孔はシールド層の貫通孔からオフセットされる。
【0072】
非陰圧創傷被覆材は、褥瘡の治療に適していることができる。
【0073】
本明細書に開示される非陰圧被覆材のより詳細な説明は、WO2013/007973号に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷部位から滲出液を吸収するための繊維質吸収層と、創傷被覆材の少なくとも一部分の収縮を低減するよう構成された支持層とを含む、多層創傷被覆材とし得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層創傷被覆材は、液体不透過性フィルム層をさらに備え、支持層は吸収層とフィルム層との間に位置する。
【0076】
本明細書に開示される支持層は、ネットを含みうる。ネットは、それを通って延びる複数の実質的に幾何学的な隙間を持つ幾何学的構造を含みうる。幾何学的構造は、例えば、ポリマー鎖の間に実質的に幾何学的な隙間を形成するために、ポリマー鎖によって実質的に均等に間隔を置いて結合された複数の突起部を含みうる。
【0077】
ネットは、高密度ポリエチレンから形成され得る。
【0078】
隙間は、0.005~0.32mmの面積を有し得る。
【0079】
支持層は0.05~0.06Nmの引張強さを有し得る。
【0080】
支持層は50~150μmの厚さを有し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、支持層は、吸収層に直接隣接して位置する。典型的には、支持層は、吸収層のトップ面の繊維に結合される。支持層は、結合層をさらに備えてもよく、ここで支持層は、結合層を介して吸収層内の繊維に積層される。結合層は、エチレンビニル酢酸塩接着剤などの低融点接着剤を含みうる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層創傷被覆材は、フィルム層を支持層に取り付ける接着層をさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される多層創傷被覆材は、創傷に隣接して位置付けるための吸収層に隣接して位置する創傷接触層をさらに含む。多層創傷被覆材は、創傷から吸収層へと滲出液を移動させるための創傷接触層と吸収層との間に流体輸送層をさらに含みうる。
【0084】
本明細書に開示される多層創傷被覆材のより詳細な説明は、出願番号GB1618298.2を有する2016年10月28日出願のGB特許出願に提供され、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0085】
いくつかの実施形態では、開示技術が、材料の吸収層の第一の層および材料の第二の層から構成される、垂直に封じ込められた材料を含む創傷被覆材に組み込まれてもよく、第一の層は不織布繊維の少なくとも一つの層から構成され、不織布繊維は複数の折り曲げの中に折り畳まれてひだ付き構造を形成する。いくつかの実施形態ではさらに、創傷被覆材は、材料の第一の層に一時的または永久的に接続された材料の第二の層を含む。
【0086】
典型的には、垂直に閉じ込められた材料はスリットされている。
【0087】
いくつかの実施形態では、第一の層は、ひだの深さによって決定された深さ、またはスリッティング幅によって決定された深さを持つひだ付き構造を持つ。材料の第一の層は、成形、軽量、繊維系材料、材料の混合または組成物層であり得る。
【0088】
材料の第一の層は、合成、天然または無機ポリマー、セルロース系の天然繊維、タンパク質のまたは鉱物源からの製造繊維のうち一つまたは複数を含みうる。
【0089】
創傷被覆材は、互いの上に積み重ねられた垂直に封じ込められた材料の吸収層の二つ以上の層を含んでもよく、ここで、二つ以上の層は、同一または異なる密度または組成を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、創傷被覆材は、垂直に封じ込められた材料の吸収層の一つの層のみを含みうる。
【0091】
材料の吸収層は、天然または合成、有機繊維、または無機繊維、および結合剤繊維、または二成分繊維の混合物であり、一般的には低溶融温度PETコーティングを用いた特定温度で軟化し、配合物全体の中で結合剤として作用するPETである。
【0092】
いくつかの実施形態では、材料の吸収層は、5~95%の熱可塑性ポリマー、および5~95重量%のセルロースまたはその誘導体とし得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される創傷被覆材は、発泡体または被覆材固定剤を含む第二の層を含む。
【0094】
発泡体は、ポリウレタン発泡体であり得る。ポリウレタン発泡体は、開放または閉鎖空孔構造を有し得る。
【0095】
被覆材固定剤は、包帯、テープ、ガーゼ、または裏当て層を含みうる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、積層または接着剤によって第二の層に直接接続された材料の吸収層を含み、第二の層は被覆材固定層に接続されている。接着剤は、アクリル接着剤、またはシリコーン接着剤であり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、超吸収性繊維、またはビスコース繊維またはポリエステル繊維の層をさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、創傷被覆材は、裏当て層をさらに含む。裏当て層は、透明または不透明なフィルムであり得る。典型的には、裏当て層は、ポリウレタンフィルム(典型的には透明ポリウレタンフィルム)を含む。
【0099】
本明細書に開示される多層創傷被覆材の詳細な説明は、出願番号GB1621057.7で2016年12月12日出願のおよび出願番号GB1709987.0で2017年6月22日に出願のドイツ特許出願に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、創傷被覆材用の吸収性成分を含んでもよい。構成要素は発泡体層に結合したゲル形成繊維を含む創傷接触層を含み、ここで、発泡体層は、接着剤、ポリマーベースの溶融層、火炎ラミネーションまたは超音波によって創傷接触層に直接結合されている。
【0101】
吸収性構成要素は、シート形態であり得る。
【0102】
創傷接触層は、織布または不織布または編物のゲル形成繊維の層を含みうる。
【0103】
発泡体層は、開放セル発泡体、または閉鎖セル発泡体であってもよく、一般的には開放セル発泡体であり得る。発泡体層は、親水性発泡体である。
【0104】
創傷被覆材は、被覆材を創傷に接着する接着剤の周辺によって囲まれた創傷と直接接触する島を形成する構成要素を含みうる。接着剤は、シリコーンまたはアクリル接着剤であってもよく、一般にシリコーン接着剤であり得る。
【0105】
創傷被覆材は、創傷から最も遠いフィルム層によって被覆材の表面上に覆われうる。
【0106】
本明細書のタイプの創傷被覆材のより詳細な説明は、EP2498829に提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0107】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、高レベルの滲出液を生成する創傷に使用するための多層創傷被覆材を含んでもよい。被覆材が、少なくとも300gm/24時間のMVTRを持つ透過層と、滲出液を吸収および保持できるゲル形成繊維を含む吸収性コアと、滲出液を吸収性コアに伝達するゲル形成繊維含む創傷接触層と、吸収性コア上に位置するキーとなる層とを含み、吸収性コアおよび創傷接触層は、被覆材の滲出液の横方向の広がりを創傷領域に制限する。
【0108】
創傷被覆材は、24時間で、被覆材の10cm当たりの流体を少なくとも6g(または8gおよび15g)の流体を取り扱うことができ得る。
【0109】
創傷被覆材は、布の形態で化学修飾されたセルロース系繊維であるゲル形成繊維を含みうる。繊維は、カルボキシメチルセルロース繊維、一般的にナトリウムカルボキシメチル化セルロース繊維を含みうる。
【0110】
創傷被覆材は、横方向のウィッキング速度が毎分5mm~毎分40mmの創傷接触層を含みうる。創傷接触層は、35gmなど25gm~55gmの繊維密度を有し得る。
【0111】
吸収性コアは、少なくとも10g/gの滲出液の吸収性、および典型的には毎分少なくとも20mmの横方向のウィッキング速度を有し得る。
【0112】
吸収性コアは、重量で最大25%のセルロース系繊維、および重量で75%~100%のゲル形成繊維の範囲の混合物を有し得る。
【0113】
別の方法として、吸収性コアは、重量で最大50%のセルロース系繊維、および重量で50%~100%のゲル形成繊維の範囲の混合物を有し得る。例えば、混合物は、重量で50%のセルロース系繊維および重量で50%のゲル形成繊維の範囲内である。
【0114】
吸収性コアの繊維密度は、150gm~250gm、または約200gmとし得る。
【0115】
濡れた場合創傷被覆材は、その元のサイズ/寸法の25%未満または15%未満の収縮を有し得る。
【0116】
創傷被覆材は、透過層を含んでもよく、層は発泡体である。透過層は、ポリウレタンフィルムに積層されたポリウレタン発泡体であり得る。
【0117】
創傷被覆材は、可溶性薬剤フィルム層、臭気吸収層、拡散層および追加的接着層を含む群から選択される一つまたは複数の層を含みうる。
【0118】
創傷被覆材は、厚さ2mm~厚さ4mmでありうる。
【0119】
創傷被覆材は、キーとなる層が吸収性コアを隣接層に結合するという点で特徴付けられうる。いくつかの実施形態では、キーとなる層は、吸収性コアの創傷面側または吸収性コアの非創傷面側のいずれかに位置付けられうる。いくつかの実施形態では、キーとなる層は、吸収性コアと創傷接触層との間に位置付けられる。キーとなる層はポリアミドウェブである。
【0120】
本明細書のタイプの創傷被覆材のより詳細な説明は、EP1718257号に提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0121】
いくつかの実施形態では、非陰圧創傷被覆材は、圧縮包帯であり得る。圧縮包帯は、浮腫およびその他の静脈障害、ならびに下肢のリンパ障害の治療において使用するために周知である。
【0122】
圧縮包帯システムは典型的に、皮膚と圧縮層または層の間のパッド層を含む複数層を用いる。圧縮包帯は、静脈性脚潰瘍の取り扱いなどの創傷に有用でありうる。
【0123】
いくつかの実施形態では、圧縮包帯は、内側皮膚面層および弾性の外側層を含む包帯システムを備えてもよく、内側層は、第一の層の発泡体および第二の層の吸収性不織布ウェブを含み、内側層および外側層は患者の手足の周りに巻かれることができるように、十分長い。このタイプの圧縮包帯は、WO99/58090号に開示されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0124】
いくつかの実施形態では、圧縮包帯システムは、a)(i)細長い弾性基材および
【0125】
(ii)発泡体の細長い層であって、前述の発泡体の層が前述の基材の表面に固定され、基材の前述の表面を横断方向に33%以上、長手方向で前述の基材の表面を67%以上延在する、発泡体の細長い層を含む、内側皮膚面の細長い弾性絆創膏と、b)外側の細長い自己接着弾性包帯であって、前述の包帯が伸ばされたときに圧縮力を有する包帯と、を含み、使用中、内側包帯の前述の発泡体層は皮膚に面し、外側包帯は内側包帯の上にある。このタイプの圧縮包帯は、WO2006/110527号に開示されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0126】
いくつかの実施形態では、その他の圧縮包帯システムは米国特許第6,759,566号および米国特許第2002/0099318号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
陰圧創傷被覆材
いくつかの実施形態では、そのような創傷の治療は、陰圧創傷療法を使用して実施することができ、減圧または陰圧が、創傷の治癒を容易にして促進するように、創傷に印加され得る。本明細書に開示される創傷被覆材および方法は、身体の他の部分に適用されてもよく、創傷の治療に必ずしも限定されないことも、理解されるであろう。
【0128】
本開示の実施形態は、概して、局所陰圧(「TNP」)療法システムで使用するように適用可能であることは理解されるであろう。手短に言えば、陰圧創傷療法は、組織の浮腫を減少させ、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態を閉鎖および治癒するのを補助し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減し得る。加えて、治療によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNP療法システムはまた、流体を除去し、閉鎖の並列された位置で組織を安定化するのに役立つことで、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援し得る。TNP治療のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片およびフラップにおいて見出すことができる。
【0129】
陰圧療法は、大きすぎて自然には閉じられない、もしくはそうでなければ、創傷の部位への陰圧の適用では治癒しない、開放または慢性創傷の治療に使用することができる。局所陰圧(TNP)療法または、陰圧創傷療法(NPWT)は、創傷の上に流体に対して不透過性または半透過性の被覆を置くことと、創傷を囲む患者の組織に対して被覆を封止する、さまざまな手段を使用することと、陰圧を被覆の真下に作り出し維持するような手法で、陰圧源(真空ポンプなど)を被覆に接続することとを伴う。そのような陰圧は、有害なサイトカインまたは細菌を包含する場合がある、過剰な流体を除去しながら同時に、創傷部位で肉芽組織の形成を容易にし、平常の体内炎症プロセスを支援することによって、創傷の治癒を促進すると考えられる。
【0130】
NPWTに使用される被覆材には、多くの異なる種類の材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、発泡体パッド、または多層創傷被覆材が含まれる。多層創傷被覆材の一例は、NPWTで創傷を治療する、キャニスタなしのシステムを提供するように、裏当て層の下方に創傷接触層および超吸収層を含む、Smith&Nephewから市販されているPICO被覆材である。創傷被覆材は、被覆材から流体を汲み上げるか、またはポンプから創傷被覆材へ陰圧を伝達するように使用され得る、長いチューブへの接続を提供する、吸引ポートに封止され得る。加えて、Smith&Nephewから市販されているRENASYS-F、RENASYS-G、RENASYS-ABおよびRENASYS-F/ABも、NPWT創傷被覆材およびシステムのさらなる例である。多層創傷被覆材の別の例は、陰圧を使用せずに創傷を治療するのに使用される、湿潤創傷環境被覆材を含む、Smith&Nephewから市販されているALLEVYN Life被覆材である。
【0131】
本明細書に使用する通り、-XmmHgなど、減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲大気圧に対する圧力レベルを表す。従って、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い絶対圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの絶対圧力を反映する。加えて、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低い)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、気圧からより離れた圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高い)。いくつかの実施形態では、局所的な周囲大気圧は基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0132】
本開示のいくつかの実施形態に関する陰圧範囲は、約-80mmHg、または約-20mmHgから-200mmHgの間であり得る。これらの圧力は、760mmHgであり得る、平常の周囲大気圧に対して相対的であることには留意されたい。それゆえ、-200mmHgは、実質的には約560mmHgであろう。いくつかの実施形態では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、他の実施形態では、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。代替として、およそ-100mmHgまたはさらに-150mmHgより上の圧力範囲が、陰圧装置により供給され得る。
【0133】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスのいくつかの実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながり得る。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に適用される引張力の増加と連動して、組織に適用される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に適用される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。いくつかの実施形態では、例えば、正弦波、方形波を使用して、または一つまたは複数の患者の生理学的指標(心拍など)と同期して、時間と共に陰圧を変化させてもよい。前述に関するさらなる開示を見つけることができる、そのような適用の例には、2012年8月7日に発行された名称「Wound treatment apparatus and method」の米国特許第8,235,955号、および2010年7月13日に発行された名称「Wound cleansing apparatus with stress」の米国特許第7,753,894号を含む。これら両特許の開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0134】
本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態は、また、2013年5月22日に国際出願番号第PCT/IB2013/001469号で出願され、2013年11月28日に国際公開第2013/175306A2号として公開された、名称「APPARATUSES AND METHODS FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」、2015年1月30日に米国特許出願第14/418,908号で出願され、2015年7月9日に米国特許出願公開第2015/0190286A1号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF TREATMENT」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載する創傷被覆材、創傷被覆材構成要素、創傷治療装置および方法の実施形態は、また、2011年4月21日に米国特許出願第13/092,042号で出願され、米国特許第2011/0282309号として公開された、名称「WOUND DRESSING AND METHOD OF USE」、および2015年5月18日に米国特許出願第14/715,527号で出願され、2016年11月24日に米国特許出願公開第2016/0339158A1号として公開された、名称「FLUIDIC CONNECTOR FOR NEGATIVE PRESSURE WOUND THERAPY」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの各開示は、創傷被覆材、創傷被覆材の構成要素および原理、ならびに創傷被覆材に使用される材料の実施形態に関するさらなる詳細を含め、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0135】
加えて、本明細書に記載する、ポンプまたは関連電子機器と組み合わせて、創傷被覆材を含むTNP創傷治療に関係するいくつかの実施形態は、また、2016年4月26日に国際出願第PCT/EP2016/059329号で出願され、2016年11月3日に国際公開第2016/174048号として公開された、名称「REDUCED PRESSURE APPARATUS AND METHODS」に記載されるものと組み合わせて、またはそれらに加えて使用されてもよく、それらの開示は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0136】
本明細書に記載する創傷閉鎖デバイスのいくつかの実施形態では、創傷収縮の増加が、囲んでいる創傷組織における組織拡張の増加につながり得る。この影響は、場合により、創傷閉鎖デバイスの実施形態によって創傷に適用される引張力の増加と連動して、組織に適用される力を変化させること、例えば、時間と共に創傷に適用される陰圧を変化させることによって増大する場合がある。さらに、フィラーに近接する組織に対して追加的な影響がある場合があり、例えば、組織は、組織を押す弾性フィラーの反応力による圧縮下である。こうした圧縮は、血管の閉塞に起因する局所的な低酸素症をもたらす場合がある。より広い周辺組織では、この拡張は血管拡張につながりうる。さらなる詳細は、2010年5月、Wounds Internationalに公開されたMalmsjo and Borgquistによる「NPWT設定および被覆材の選択容易にする」に提供され、参照によりその全体が本明細書に援用される。例えば、虚血のリスクがない創傷では、創傷被覆材からの圧力によって引き起こされる血流の増加および減少は、創傷治癒に有利である。血流の増加は、組織への酸素および栄養物の供給を改善し、抗生物質の浸透および廃棄物の除去を改善し得る。さらに、血流の減少は血管新生を刺激し、それによって肉芽組織形成を促進し得る。
【0137】
創傷治癒
当業者であれば、特にオイラービデオ倍率(EVM)を参照しながら、本明細書に記載の実施形態が、NPWTが関与する状況には適用されないことを理解するであろう。むしろ、こうした実施形態は、無傷の組織の評価や創傷への追加的な治療の提供など、NPWTを必ずしも必要としない状況に広く適用可能でありうる。
【0138】
創傷は、創傷がどのように起こるかに依存して、一般的に開閉されているとして分類され得る。上述のように、実施形態の詳細に応じて、技術は開放創および閉鎖創傷の両方に適用されうる。開放創傷は、切開、裂傷、擦り傷、穿刺、貫通、切断術およびその他の手段を含む、さまざまな事象によって引き起こされうる。閉鎖創傷は、血腫の形成に起因する血管への損傷および/または粉砕によって生じる内部負傷によって引き起こされうる。さらに、創傷はさまざまな組織の層を含むことができ、例えば、より浅い創傷は皮膚の最上層のみを関与させる場合があり、一方でより深い創傷は下層の結合組織および脂肪層を含む下皮などの下皮組織層が関与し得る。特定の実施形態では、創傷は、皮膚の下に深く、下にある内臓器官を包含し得る。圧力負傷に起因するものなどの特定の創傷は、後々まで皮膚の表面に明らかになることなく、深部組織層内で起こりうる。
【0139】
上述のNPWT治療に加えて、創傷は広範な技術および材料によって治療されうる。例えば、創傷は、死んだおよび/または壊死組織を除去するために、創面切除によって治療されうる。創傷は、乾燥被覆材、湿潤被覆材、化学的に含浸された被覆材、発泡体被覆材、ヒドロゲル被覆材、親水コロイド被覆材、フィルム被覆材、およびその他の適切な被覆材を含む、さまざまな種類の被覆材を用いて治療されうる。創傷は、抗菌剤、成長因子、抗炎症剤、鎮痛薬、およびその他の適切な治療などの生物活性分子でさらに治療されうる。かかる治療は、前述の被覆材に組み込まれてもよい。
【0140】
創傷および創傷治療、特に圧力外傷により引き起こされる創傷に関するさらなる詳細は、2017年3月にMedscapeで発表されたKirmanらによる「圧迫損傷(褥瘡)と創傷ケア」の記事に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、褥瘡の最も一般的な候補は高齢者、慢性疾患のある人(癌、脳卒中、糖尿病など)動けない人(例えば、骨折、関節炎、または痛みの結果として)、弱いまたは衰弱している人、精神状態が変化した患者(例:麻薬、麻酔、または昏睡の影響による)、および/または感覚または麻痺が低下した人を含む。潜在的な二次的因子には、褥瘡形成を増加させる疾患または衰弱、発熱(代謝需要の増加)、虚血、皮膚の浸軟を促進する発汗、皮膚刺激および汚染、浮腫、黄疸、掻痒症、および乾燥症(乾燥肌)を引き起こす失禁がある。加えて、褥瘡負傷の防止には、スケジュールされた身体の回転、適切なベッドの位置決め、骨張りの保護、皮膚のケア、痙攣の制御、拘縮の保護、支持表面/特殊ベッド、栄養支持、および現在のレベルの活動、可動性、およびモーション範囲の維持が含まれうる。
【0141】
陰圧システム
図1は、創傷空洞110であって、創傷カバー120によって封止された創傷空洞の内部に置かれた創傷充填材130を備える、陰圧のまたは低減された圧力創傷治療(またはTNP)システム100の実施形態を示す。創傷カバー120と組み合わされた創傷充填材130は、創傷被覆材として言及され得る。単一または複数の内腔管または導管140は、創傷カバー120と、減圧圧力を供給するように構成されるポンプアセンブリ150とを接続する。創傷カバー120は、創傷空洞110に流体連通することができる。図1に示される実施形態のような本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、ポンプアセンブリは、キャニスタレスポンプアセンブリ(滲出液が、創傷被覆材に集められる、または別の位置に集めるために管140を介して運ばれることを意味する)であることができる。しかし、本明細書で開示されるいくつかのポンプアセンブリの実施形態は、キャニスタを含むまたは支持するように構成され得る。追加的に、本明細書で開示されるいくつかのシステムの実施形態において、いくつかのポンプアセンブリの実施形態は、被覆材に取付けられ、もしくは被覆材によって支持され、または被覆材に隣接することができる。
【0142】
創傷充填材130は、例えば、親水性または疎水性発泡体、ガーゼ、膨張可能なバッグ等の任意の適切なタイプであることができる。創傷充填材130は、それが実質的に空洞を充填するように、創傷空洞110に適合することができる。創傷カバー120は、創傷空洞110を覆う実質的に流体不浸透性の封止を提供することができる。創傷カバー120は、頂側および底側を有することができ、底側は、創傷空洞110を粘着的に(または任意のその他の適切な手法において)封止する。本明細書で開示される導管140もしくは内腔またはいくつかのその他の導管もしくは内腔は、ポリウレタン、PVC、ナイロン、ポリエチレン、シリコーン、または任意のその他の適切な材料から形成され得る。
【0143】
創傷カバー120のいくつかの実施形態は、導管140の端を受けるように構成される、ポート(図示せず)を有し得る。例えば、ポートは、Smith&Nephewから入手可能なRenays Soft Portであることができる。その他の実施形態では、導管140は、別のやり方では、創傷空洞内に所望のレベルの減圧圧力を維持するように、減圧圧力を創傷空洞110に供給するために創傷カバー120を通り抜けるまたはその下にあることができる。導管140は、ポンプアセンブリ150によって提供される減圧圧力を創傷空洞110に供給するように、ポンプアセンブリ150と創傷カバー120との間に少なくとも実質的に密封された流体流路を提供するように構成される、任意の好適な物品であることができる。
【0144】
創傷カバー120および創傷充填材130は、単一な物品または一体型の単一なユニットとして提供され得る。いくつかの実施形態では、創傷充填材が提供されずに、創傷カバーがそれ自体として創傷被覆材とみなされ得る。ついで、創傷被覆材は、導管140を介して、ポンプアセンブリ150といった陰圧源に接続され得る。ポンプアセンブリ150は小形化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来のそのようなポンプがまた使用され得る。
【0145】
創傷カバー120は、治療されることになる創傷部位の上に置かれ得る。創傷カバー120は、創傷部位を覆う実質的に密封された空洞またはエンクロージャを形成することができる。いくつかの実施形態では、創傷カバー120は、過剰流体の蒸発を可能にする高い水蒸気浸透性を持つフィルムを有するように構成されることができ、また創傷滲出液を安全に吸収するためにその中に含まれる超吸収材料を有することができる。本明細書全体を通して、創傷に関して言及することが理解されるであろう。この点において、創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の状態または欠陥、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含することを理解されたい。よって、創傷は、流体が生成されることもされないこともある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、急性創傷、慢性創傷、外科切開およびその他の切開、亜急性および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、外科創傷、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に記載のTNPシステムの構成要素は、少量の創傷滲出液を滲出する切開創傷に特に適し得る。
【0146】
システムのいくつかの実施形態は、滲出液キャニスタを使用することなく動作するように設計される。いくつかの実施形態は、滲出液キャニスタを支持するように構成され得る。いくつかの実施形態では、チューブ140がポンプアセンブリ150から迅速にかつ容易に取り除かれ得るようにポンプアセンブリ150およびチューブ140を構成することは、必要な場合、被覆材またはポンプを交換するプロセスを容易にする、または改善することができる。本明細書で開示されるいくつかのポンプの実施形態は、チューブとポンプとの間の任意の好適な接続を有するように構成され得る。
【0147】
ポンプアセンブリ150は、一部の実施において、およそ-80mmHg、または約-20mmHg~200mmHgの陰圧を供給するように構成され得る。これらの圧力は、正常な周囲大気圧に対する相対値であり、つまり、-200mmHgは、実際に則した用語において、約560mmHgであり得ることに留意されたい。圧力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であり得る。代替として、最高-75mmHg、最高-80mmHgまたは-80mmHgを超える圧力範囲が使用され得る。また、-75mmHgを下回る圧力範囲が使用され得る。別の方法として、およそ-100mmHgまたはさらに150mmHgより上の圧力範囲が、ポンプアセンブリ150により供給され得る。
【0148】
動作時に、創傷充填材130は、創傷空洞110内に挿入され、創傷カバー120は、創傷空洞110を密封するように配置される。ポンプアセンブリ150は、創傷充填材130を介して創傷空洞110に送られる陰圧源を創傷カバー120に提供する。流体(例えば、創傷滲出液)は、導管140を通して引き出され、キャニスタ内に貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、流体は、創傷充填材130または一つまたは複数の吸収層(図示せず)によって吸収される。
【0149】
本出願のポンプアセンブリおよびその他の実施形態とともに利用され得る創傷被覆材は、Smith&Nephewから入手可能なRenasys-F、Renasys-G、Renasys ABおよびPico被覆材を含む。本出願のポンプアセンブリおよびその他の実施形態とともに使用され得る陰圧創傷療法システムのこうした創傷被覆材およびその他の構成要素のさらなる説明は、米国特許公開第2011/0213287号、第2011/0282309号、第2012/0116334号、第2012/0136325号および第2013/0110058号において見出され、それらの全体が参照により援用される。その他の実施形態では、その他の好適な創傷被覆材が利用され得る。
【0150】
ポンプアセンブリおよびキャニスタ
図2Aは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスタ220の前方図を示す。示されるように、ポンプアセンブリ230とキャニスタが接続されて、それにより、陰圧創傷療法デバイスを形成する。ポンプアセンブリ230は、いくつかの実施形態におけるポンプアセンブリ150と類似し、またはそれと同一であり得る。
【0151】
ポンプアセンブリ230は、アラームを示すように構成される視覚的インジケータ202およびTNPシステムの状態を示すように構成される視覚的インジケータ204などの一つまたは複数のインジケータを含む。インジケータ202および204は、通常のまたは適切な動作状態、ポンプ停止、ポンプまたは停電に供給される電力、創傷カバーまたは流路内の漏れの検出、吸引閉塞、またはいくつかのその他の同様のまたは適切な状態またはそれらの組み合わせをユーザに警告することを含む、システムのさまざまな動作または停止状態を患者または医療提供者などのユーザに警告するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、追加的なインジケータを備えることができる。ポンプアセンブリは、単一のインジケータまたは複数のインジケータを使用することができる。任意の好適なインジケータは、例えば、視覚的な、聴覚的な、触覚的なインジケータ等として使用され得る。インジケータ202は、例えば、キャニスタフル、低電力、導管140の接続解除、創傷シール120におけるシール破壊等の警告状態を示すように構成され得る。インジケータ202は、ユーザの注意を引くために赤のせん光を表示するように構成され得る。インジケータ204は、例えば、療法送達は正常である、漏れが検出された、等のTNPシステムの状態を示すように構成され得る。インジケータ204は、例えば、緑、黄などの一つまたは複数の異なる色の光を表示するように構成され得る。例えば、緑色の光は、TNPシステムが適切に動作している時に放出されてもよく、黄色の光は、警告を示すために放出され得る。
【0152】
ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリの場合に形成される凹部208に取り付けられる、ディスプレイまたはスクリーン206を含む。ディスプレイ206は、タッチスクリーンディスプレイであり得る。ディスプレイ206は、取扱い説明ビデオなどの視聴覚(AV)コンテンツの再生を支持することができる。以下で説明されるように、ディスプレイ206は、いくつかのスクリーンまたはグラフィカルユーザインターフェース(GUI)がTNPシステムの動作を構成する、制御する、および監視するように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分210を備える。グリップ部分210は、例えば、キャニスタ220の取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ230を保持することを支持するように構成され得る。キャニスタ220は、例えば、キャニスタ220が流体で充填された時などに、別のキャニスタと取り替えられ得る。
【0153】
ポンプアセンブリ230は、ユーザがTNPシステムの動作を操作し、および監視することを可能にするように構成される、一つまたは複数のキーまたはボタンを含む。示されるように、これには、ボタン212a、212bおよび212c(集合的にボタン212として言及される)が含まれる。ボタン212aは、ポンプアセンブリ230の電源を入れる/切るための電源ボタンとして構成され得る。ボタン212bは、陰圧療法の供給のためのプレイ/ポーズボタンとして構成され得る。例えば、ボタン212bを押すことにより、療法を開始することができ、その後ボタン212bを押すことにより、療法を停止または終了することができる。ボタン212cは、ディスプレイ206またはボタン212をロックするように構成され得る。例えば、ボタン212cは、ユーザが故意でなく療法の供給を変えることがないように押され得る。ボタン212cは、制御をアンロックするために押下され得る。その他の実施形態では、追加的なボタンが、用いられてもよく、または示したボタン212a、212bまたは212cのうち一つまたは複数が、省かれてもよい。複数のキーの押下または連続的なキーの押下は、ポンプアセンブリ230を動作させるために使用され得る。
【0154】
ポンプアセンブリ230は、カバーに形成される一つまたは複数のラッチ凹部222を含む。例示的実施形態では、二つのラッチ凹部222は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。ラッチ凹部222は、一つまたは複数のキャニスタラッチ221を使用してキャニスタ220の取付けおよび分離を可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、創傷空洞110から取り除かれる空気が漏れ出ることを可能にするための空気出口224を備える。ポンプアセンブリに入る空気は、抗菌フィルタなどの一つまたは複数の適切なフィルタを通り抜けることができる。これは、ポンプアセンブリの再利用性を維持することができる。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリ230に携帯ストラップを接続するための、または受け台を取付けるための一つまたは複数のストラップ取付け部226を含む。例示的実施形態では、二つのストラップ取付け部226は、ポンプアセンブリ230の側部に形成され得る。いくつかの実施形態では、種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がポンプアセンブリ230に加えられる。
【0155】
キャニスタ220は、創傷空洞110から取り除かれる流体(例えば、滲出液)を保持するように構成される。キャニスタ220は、キャニスタをポンプアセンブリ230に取付けるための一つまたは複数のラッチ221を含む。例示的実施形態では、キャニスタ220は、キャニスタの側部に二つのラッチ221を備える。キャニスタ220の外部は、キャニスタが実質的に不透明であり、またキャニスタの中身が平面視で実質的に隠されるように、つや消しプラスチックから形成され得る。キャニスタ220は、キャニスタのケースに形成されるグリップ部分214を備える。グリップ部分214は、例えば、装置230からのキャニスタの取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ220を保持することを可能にするように構成され得る。キャニスタ220は、実質的に透明な窓216を含み、それはまた、量の目盛りを含むことができる。例えば、示される300mLのキャニスタ220は、50mL、100mL、150mL、200mL、250mLおよび300mLの目盛りを含む。キャニスタのその他の実施形態は、異なる量の流体を保持することができ、異なる目盛り尺度を含むことができる。例えば、キャニスタは、800mLのキャニスタであることができる。キャニスタ220は、導管140に接続するための管状のチャネル218を備える。いくつかの実施形態では、グリップ部分214などの種々のこれらの特徴は省かれ、または種々の追加的な特徴がキャニスタ220に加えられる。いくつかの開示されるキャニスタは、凝固剤を含んでもよく、または凝固剤を省いてもよい。
【0156】
図2Bは、いくつかの実施形態によるポンプアセンブリ230およびキャニスタ220の背面図を示す。ポンプアセンブリ230は、音を生成するためのスピーカーポート232を備える。ポンプアセンブリ230は、フィルタアクセスドア234を含み、そのドアは、アクセスドア234を取り外し、抗菌または臭気フィルタなどの一つまたは複数のフィルタと連通し、それを取り替えるためのねじを有する。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリのケースに形成されたグリップ部分236を備える。グリップ部分236は、例えば、キャニスタ220の取り外しの間などに、ユーザがポンプアセンブリ230を保持することを可能にするように構成され得る。ポンプアセンブリ230は、表面上にポンプアセンブリ230を配置するためのねじカバーまたは足部またはプロテクターとして構成される、一つまたは複数のカバー238を含む。カバー230は、ゴム、シリコーンまたは任意のその他の適切な材料で形成され得る。ポンプアセンブリ230は、ポンプアセンブリの内部バッテリーを充電および再充電するための電源ジャック239を備える。電源ジャック239は、直流(DC)ジャックであることができる。いくつかの実施形態では、ポンプアセンブリは、電源ジャックが必要ないように、バッテリーなどの使い捨て可能な電源を備え得る。
【0157】
キャニスタ220は、表面上にキャニスタを配置するための一つまたは複数の足部244を含む。足部244は、ゴム、シリコーンまたは任意のその他の適切な材料で形成されてもよく、キャニスタ220が表面上に配置された時に安定した状態を保つように適切な角度に角度付けられてもよい。キャニスタ220は、一つまたは複数の管がデバイスの前部へと抜け出ることを可能にするように構成される、管取付けレリーフ246を備える。キャニスタ220は、キャニスタが表面上に配置された時にキャニスタを支持するためのスタンドまたはキックスタンド248を含む。以下で説明されるように、キックスタンド248は、開位置と閉位置との間で旋回することができる。閉位置において、キックスタンド248は、キャニスタ220にラッチされ得る。いくつかの実施形態では、キックスタンド248は、プラスチックなどの不透明材料から作られ得る。その他の実施形態では、キックスタンド248は、透明材料から作られ得る。キックスタンド248は、キックスタンドに形成されるグリップ部分242を含む。グリップ部分242は、ユーザがキックスタンド248を閉位置に位置付けることを可能にするように構成され得る。キックスタンド248は、孔249を含み、それは、ユーザがキックスタンドを開位置に位置付けることを可能にする。孔249は、ユーザが指を用いてキックスタンドを伸ばすことが可能となるようにサイズ設定され得る。
【0158】
図2Cは、いくつかの実施形態によるキャニスタ220から分離されたポンプアセンブリ230を示す。ポンプアセンブリ230は、真空ポンプがそれを通じてキャニスタ220に陰圧を伝達する、真空アタッチメント、コネクタまたは入口252を含む。ポンプアセンブリは、入口252を介して創傷からのガスなどの流体を吸い出す。ポンプアセンブリ230は、一つまたは複数のUSBポートへのアクセスを可能にするように構成される、USBアクセスドア256を備える。いくつかの実施形態では、USBアクセスドアが省かれ、またUSBポートはドア234を通じてアクセスされる。ポンプアセンブリ230は、例えば、SD、コンパクトディスク(CD)、DVD、ファイアワイア、サンダーボルト、PCIエクスプレスなどの追加的なシリアル、パラレル、またはハイブリッドデータ転送インターフェースへのアクセスを可能にするように構成される、追加的なアクセスドアを含むことができる。その他の実施形態では、これらの追加的なポートのうち一つまたは複数は、ドア234を通じてアクセスされる。
【0159】
ポンプアセンブリ電子部品および構成要素
図3Aは、いくつかの実施形態による、ポンプアセンブリ230などの、ポンプアセンブリの電気的構成要素概略図300Aを示す。電気的構成要素は、ユーザ入力を受け入れ、ユーザに出力を提供し、ポンプアセンブリおよびTNPシステムを操作し、ネットワーク接続を提供するように動作することができる。電気的構成要素は、一つまたは複数のプリント回路基板(PCB)上に取付けることができる。図示されるように、ポンプアセンブリは複数のプロセッサを含み得る。
【0160】
ポンプアセンブリは、ユーザ入力を受け入れ、ユーザに出力を提供するための、ディスプレイ206、ボタン212などの一つまたは複数の構成要素を操作するように構成されたユーザインターフェースプロセッサまたはコントローラ310を備え得る。ポンプアセンブリへの入力およびポンプアセンブリからの出力は、入力/出力(I/O)モジュール320によって制御できる。例えば、I/Oモジュールは、シリアル、パラレル、ハイブリッドポートなどの一つまたは複数のポートからデータを受信し得る。プロセッサ310はまた、データを受信し、一つまたは複数のUSBポート、SDポート、コンパクトディスク(CD)ドライブ、DVDドライブ、FireWireポート、Thunderboltポート、PCI Expressポートなどの一つまたは複数の拡張モジュール360にデータを提供する。プロセッサ310は、他のコントローラまたはプロセッサとともに、プロセッサ310の内部または外部にあり得る、一つまたは複数のメモリモジュール350にデータを保存する。RAM、ROM、磁気メモリ、固体メモリ、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの揮発性または不揮発性メモリを含む任意の適切なタイプのメモリを使用し得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、プロセッサ310は、低電力プロセッサなどの汎用コントローラとすることができる。他の実施形態では、プロセッサ310はアプリケーションに特化したプロセッサであり得る。プロセッサ310は、ポンプアセンブリの電子アーキテクチャ内の「中央」プロセッサとして構成され得、プロセッサ310は、減圧制御プロセッサ370、通信プロセッサ330、および一つまたは複数の追加的プロセッサ380(例えば、ディスプレイ206を制御するためのプロセッサ、ボタン212を制御するためのプロセッサ、など)などの他のプロセッサの動作を連携し得る。プロセッサ310は、Linux(登録商標)、Windows CE、VxWorksなどの適切なオペレーティングシステムを実行し得る。
【0162】
減圧制御プロセッサ370は、ポンプ390などの減圧源およびバルブ392の動作を制御するように構成され得る。ポンプ390は、膜ポンプ、蠕動ポンプ、回転ポンプ、回転ベーンポンプ、スクロールポンプ、ねじポンプ、液封式ポンプ、圧電気変換器によって操作される膜ポンプ、ボイスコイルポンプなどの適切なポンプとし得る。バルブ392は、ソレノイドバルブ、ダイアフラムバルブ、および同種のものなどの適切なバルブであってもよく、例えば、ポンプアセンブリの排気の下流(またはその前)またはポンプアセンブリと創傷被覆材の間の流体流路内に配置される。バルブ392は、単一のバルブであってもよく、または複数の異なるバルブで構成され得る。
【0163】
減圧制御プロセッサ370は、一つまたは複数の圧力センサから受信したデータを使用して、流体流路内の圧力を測定し、流体流量を計算し、ポンプ390およびバルブ392を制御し得る。減圧制御プロセッサ370は、所望のレベルの陰圧が創傷空洞110内で達成されるように、ポンプ390のポンプモータを制御し得る。所望のレベルの陰圧は、圧力設定またはユーザによって選択され得る。さまざまな実施形態で、減圧制御プロセッサ370は、パルス幅変調(PWM)を使用してポンプ(例えば、ポンプモータ)を制御する。ポンプ390を駆動するための制御信号は、0~100%のデューティサイクルPWM信号とし得る。さらに、減圧制御プロセッサ370は、創傷空洞110内で所望のレベルの陰圧が達成されるように、バルブ392の開閉を制御できる。所望のレベルの陰圧は、圧力セットまたはユーザによって選択されるか、または動作モードまたはポンプアセンブリの設定によって自動的に設定されうる。さまざまな実施形態で、減圧制御プロセッサ370は、PWMを使用してバルブ392の開閉を制御する。バルブ392を制御しまたは駆動するための制御信号は、0~100%のデューティサイクルPWM信号とし得る。
【0164】
減圧制御プロセッサ370は、流量計算を実行し、流路内のさまざまな条件を検出し得る。減圧制御プロセッサ370は、プロセッサ310に情報を伝達し得る。減圧制御プロセッサ370は、内部メモリを含むか、または、メモリ350を利用することができる。減圧制御プロセッサ370は、低電力プロセッサであり得る。
【0165】
通信プロセッサ330は、有線または無線接続を提供するように構成され得る。通信プロセッサ330は、データを送受信するために一つまたは複数のアンテナ340を利用し得る。通信プロセッサ330は、以下のタイプの接続のうちの一つまたは複数を提供することができる:全地球測位システム(GPS)技術、セルラー接続(2G、3G、LTE、4G)、Wifi接続、インターネット接続など。接続は、ポンプアセンブリ位置トラッキング、資産管理、コンプライアンス監視、遠隔選択、ログ、アラーム、その他の運転データのアップロード、治療設定の調整、ソフトウェア、またはファームウェアのアップグレードなど、さまざまな活動に使用し得る。通信プロセッサ330は、GPS/セルラー二つの機能を提供できる。セルラー機能は、例えば、3G機能であり得る。ポンプアセンブリはSIMカードを含み得、SIMベースの位置情報を取得し得る。
【0166】
通信プロセッサ330は、プロセッサ310に情報を伝達し得る。通信プロセッサ330は、内部メモリを含むか、または、メモリ350を利用することができる。通信プロセッサ330は、低電力プロセッサであり得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、通信プロセッサ330によって提供される接続を使用して、装置は、ポンプアセンブリによって保存され、維持され、または追跡された任意のデータをアップロードできる。装置はまた、治療法選択およびパラメータ、ファームウェアおよびソフトウェアパッチおよびアップグレードなど、さまざまな運転データをダウンロードし得る。
【0168】
図3Bは、いくつかの実施形態による、ポンプアセンブリ230などのポンプアセンブリの特定の構成要素300Bのブロック図を示す。構成要素300Bは、入口395(入口252と同様)、ポンプ390、バルブ392、排気装置396、圧力センサ397、および減圧制御プロセッサ370を含む。
【0169】
ポンプ390は、陰圧が入口395に供給され、その後創傷被覆材(例えば、キャニスタを通して)に供給されるように、ポンプ390(入口395を介して)を創傷の上に配置される創傷被覆材に接続する流体流路に陰圧を提供することができる。バルブ392は、空気、ガス、またはその他の流体を許容するために(例えば、部分的または完全に)開くことができ、それによって流体流路内の陽圧を提供する。一部の実施では、減圧制御プロセッサ370の制御下のポンプ390は、追加的に、または代替的に、ポンプ390を逆に動作させることによって、流体流路内の陽圧を提供することができる。追加的に、または代替的に、ポンプ390とは異なり、減圧制御プロセッサ370によって制御可能な別のポンプを、流体流路内の陽圧を提供するよう含めることができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、減圧制御プロセッサ370は、圧力センサ397などの一つまたは複数の圧力センサから受信したデータを使用して、入口395(または創傷などの流体流路のその他任意の位置)の近くまたはその場所の流体流路の圧力を測定でき、流体流量を計算し、ポンプ390およびバルブ392を制御することができる。減圧制御プロセッサ370は、所望のレベルの陰圧または陽圧を創傷で達成するように、例えば、ポンプ390のポンプモータなどの一つまたは複数のポンプアクチュエータ、またはバルブ392のソレノイドなどの一つまたは複数のバルブアクチュエータを制御できる。所望のレベルの陰圧(または圧力設定値)は、圧力セットまたはユーザによって選択されるか、または動作モードまたはポンプアセンブリの設定によって自動的に設定されうる。
【0171】
構成要素300Bは、ポンプ390(例えば、ポンプモータ)の活動レベルを検出または決定するように位置付けられた、タコメータなどの、一つまたは複数の追加的センサ(図示せず)をさらに含み、および減圧制御プロセッサ370へのポンプ390の活動レベルに応答した表示を提供することができる。例えば、タコメータは、ポンプ390(例えば、ポンプの外部)から分離し、ポンプ390の近くに位置付けられ、または結合されることができ、タコメータは、ポンプ390のポンプモータの回転(部分回転、完全回転、または複数の部分または完全回転など)を検出できる。
【0172】
一部の実施では、少なくとも二つの圧力センサは、圧力の差異測定を行うことを可能にするよう、流体流路に位置付けられるか、または流体流路に流体接続され得る。例えば、第一の圧力センサは、創傷被覆材の上流に(例えば、ポンプアセンブリの入口に、またはその近くに)位置付けられてもよく、第二の圧力センサは、創傷被覆材におけるもしくはその近くの、またはキャニスタにおけるもしくはそれらの近くの圧力を検知するように位置付けられてもよい。この構成は、ポンプアセンブリを創傷に接続する第一の流体流路を形成する一つまたは複数の内腔に加え、ポンプアセンブリを創傷被覆材に接続する一つまたは複数の内腔を含み、第二の圧力センサがそれを通じて創傷被覆材におけるもしくはその近くの、またはキャニスタにおけるもしくはその近くの圧力を監視することができる、第二の流体流路を組み込むことによって達成され得る。第一および第二の流体流路は、相互に流体的に分離され得る。少なくとも二つの圧力センサが使用される場合、第一および第二の流体流路内の圧力変化のレート(例えば、ピーク-ピーク圧力または最大圧力における)が定められてもよく、第一の圧力センサと第二の圧力センサとの間で検出された圧力差が定められてもよい。これらの値は、例えば、第一の流体流路または第二の流体流路における、漏れ、閉塞、キャニスタ充填状態、血液の存在などの種々の動作状態を検出するために個々に、または一緒に使用され得る。さらに、一部の実施では、複数の冗長圧力センサが、圧力センサのうち一つまたは複数の故障に対して保護するために提供され得る。
【0173】
陰圧創傷療法の供給
いくつかの実施形態では、ポンプアセンブリが真空ポンプを制御して、選択されたまたはプログラムされたプロトコルに従って陰圧療法を創傷に供給する。ポンプ制御は、減圧制御プロセッサ370単独またはプロセッサ310と組み合わせて行うことができる。
【0174】
例えば、ユーザは、所望の圧力(または陰圧設定値)で連続動作を選択することができる。ポンプアセンブリは、(例えば、被覆材の下の)創傷での圧力を低減または引き下げるために真空ポンプを起動させて設定値に達することができる。以下に説明するように、ドローダウンは、設定値(または以下で説明されるように別の選択圧力値)が達成されるまで、圧縮と呼ばれる単位時間当たりの陰圧の最大変化によって制限される創傷での陰圧を増加させることによって実施されうる。創傷の欠失は、創傷がまだ設定値を達成していない間、治療が開始した直後の期間として定義できる。以下に説明するように、設定値が達成された時のこの期間の終了時に、流体流路の流量は、漏れ(または高流量)閾値を下回り、低真空閾値を超えるべきであり、そうでなければ適切な警報が作動する。
【0175】
別の例として、ユーザは、二つの所望の圧力(または高圧設定値および低圧設定値)の間で間欠的な動作を選択できる。ポンプアセンブリは、真空ポンプを起動して、創傷での圧力を低減または引き下げて、高い設定値に達することができる。その後、ポンプアセンブリは、創傷での圧力が低い設定値に達するよう増加させることを可能にすることができる。以下で説明するように、陰圧の減少および増加は、圧縮設定に従って実施されうる。
【0176】
また別の例として、圧力設定値(陰圧の送達を停止することが含まれる場合がある)の変化がある場合、いつでも圧縮を使用できる。いくつかの実施形態では、創傷での圧力の低下または増加をもたらす設定値変化に対して異なる圧縮設定を使用できる。さまざまな実施形態で、圧縮設定は圧力設定値が達成される間に調整されうる。
【0177】
図4は、いくつかの実施形態による陰圧創傷療法を提供するプロセス500示す。プロセス500は、減圧制御プロセッサ370だけで実行されてもよく、またはプロセッサ310と組み合わせて実行されてもよく、また本明細書に記載されている一つまたは複数の他の構成要素(示されていない)を利用し得る。プロセス500は、例えば、100ミリ秒(または毎秒10回)またはその他任意の適切な頻度などで、定期的に実行することができる。代替的または追加的に、プロセス500は連続的に実行されうる。
【0178】
プロセス500は、ブロック502で始まることができ、これは療法が開始された時または療法が送達されている間に設定値が変更されたときに移行できる。ブロック502では、プロセス500は創傷圧力を比較し、これは以下で説明したように設定値に対して決定されうる。例えば、プロセス500は、創傷圧力を設定値から減算するか、またはその逆でもよい。創傷圧力が設定値より低い場合、プロセス500はブロック504に移行できる。逆に、創傷圧力が設定値を超えるか等しい場合、プロセス500はブロック506に移行できる。
【0179】
ブロック504(圧力ランプアップ)では、プロセス500は、以下に説明するように、圧縮設定に依存する量だけポンプランプ設定値を増分できる。その後、真空ポンプは、創傷圧力を引き下げ(またはより負にして)して、ポンプランプ設定値の現在の値に達する。例えば、電圧または電流信号などの適切なポンプ駆動信号を生成し、ポンプモータに供給して、創傷の引き出しを達成するために、ポンプモータの速度を増加させることができる。効率のために、ポンプモータは、PWMまたはその他任意の適切な方法を使用して駆動されうる。プロセス500は、ユーザが選択した設定値に達するまで、ポンプランプ設定値を増加させることができる。プロセス500は、創傷圧力が設定値にほぼ到達した時または達した時にブロック508に移行することができ、これは創傷被覆材下の定常状態の圧力に達することに相当し得る。例えば、プロセス500は、創傷圧力が、設定値の2mmHg以内、またはその他任意の適切な値の範囲内などの設定値のランプアップ閾値圧力内にあるとき、ブロック508に移行できる。いくつかの実施形態では、ポンプランプ設定値は、設定値よりも高い陰圧に設定できる。例えば、以下に説明されるように、装置は、より高いレベルの流れをもたらす一つまたは複数の漏れの存在を検出できる。これは創傷での圧力の損失を引き起こす可能性があるため、装置は、設定値を超えてポンプランプ設定値を増やすことによって圧力の損失を補正できる。例えば、装置は、ポンプランプ設定値を設定値よりも1%、2%、5%などさらに負であるように設定することができる。特定の実施形態では、ポンプランプ設定値は、設定値よりも低い陰圧(またはより正の圧力)に適応可能に設定されうる。
【0180】
ブロック506(圧力ランプダウン)では、プロセス500は、ポンプランプ設定値を、ユーザによって選択される設定値(または上述のように別のセット値へ)に設定できる。プロセス500は、創傷圧力が流体流路内の一つまたは複数の漏れにより、設定値に到達するまたはほぼ到達するように減衰することが許容されるように、ポンプを停止することができる。これは、圧縮設定に従って実施されうるが、例えば、第一の期間、ポンプを停止させ、その後、圧縮設定に従い創傷圧力が増加するように、ポンプを第二の期間活性化する。
【0181】
自己完結式創傷被覆材
特定の実施形態では、NPWTは、Smith&Nephewによって販売される、PICO(商標)創傷被覆材などの自己完結式創傷被覆材を通して、創傷に適用されうる。図5A~Bは、流体コネクタ110と連動して創傷被覆材100を用いる、陰圧創傷治療システム10の実施形態を示す。図中、流体コネクタ110は細長い導管を含んでよく、より好ましくは、近位端130および遠位端140を有するブリッジ120、およびブリッジ120の遠位端140にアプリケータ180を含んでもよい。任意のカップリング160がブリッジ120の近位端130に配置されることが好ましい。キャップ170が、システムに提供され得る(一部の場合、示す通り、カップリング160に取り付けられ得る)。キャップ170は、近位端130から流体が漏出するのを妨げるときに有用であり得る。システム10は、ポンプまたは陰圧を供給できる陰圧ユニット150など、陰圧源を含んでもよい。ポンプは、創傷滲出液、および創傷から除去され得る他の流体を貯蔵する、キャニスタまたは他の容器を備えてもよい。キャニスタまたは容器はまた、ポンプとは別に提供され得る。いくつかの実施形態では、図5A~5Bに示すように、ポンプ150は、Smith&Nephewより販売される、PICO(商標)ポンプなど、キャニスタなしのポンプであり得る。ポンプ150は、管190を介してカップリング160に接続してもよく、またはポンプ150は、カップリング160に直接、もしくはブリッジ120に直接接続し得る。使用中、被覆材100は、一部の場合、発泡体またはガーゼなどの創傷パッキング材料で満たされ得る、好適に準備された創傷の上に置かれる。流体コネクタ110のアプリケータ180は、被覆材100の隙間の上に置かれ、被覆材100の最上表面に封止される、封止面を有する。流体コネクタ110の被覆材100への接続の前、間、または後のいずれかに、ポンプ150は、管190を介してカップリング160へ接続されるか、またはカップリング160もしくはブリッジ120へ直接接続される。その後ポンプが起動され、それによって陰圧を創傷に供給する。陰圧の印加は、所望するレベルの創傷治癒を達成するまで行われてもよい。
【0182】
図6Aに示す通り、流体コネクタ110は、好ましくは、以下にさらに詳細に記載する通り、被覆材100と流体連通する拡大遠位端または頭部140を含む。一実施形態では、拡大遠位端は丸い形または円形を有する。頭部140は、図中、被覆材100の端近くに位置するように示しているが、被覆材上のいずれの場所に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態は、被覆材100の端または角上または近くではない、中心または中心から外れた場所に提供され得る。いくつかの実施形態では、被覆材10は、二つ以上の流体コネクタ110を備えてもよく、各々、それと流体連通する一つまたは複数の頭部140を備える。好ましい実施形態では、頭部140は、最も幅の広い縁に沿って30mmあり得る。頭部140は、上に記載した、創傷被覆材の最上表面に対して封止されるように構成される、アプリケータ180を少なくとも一部形成する。
【0183】
図6Bは、流体コネクタ110と共に、図5Bに示される、創傷被覆材10に類似する創傷被覆材100の断面を示し、それは国際特許出願公開第2013175306号に記載され、参照することによってその全体が援用される。代替として、本明細書に開示するいずれの創傷被覆材の実施形態、または本明細書に開示する創傷被覆材の実施形態のいずれの数の特徴のいかなる組み合わせでもあり得る、創傷被覆材100は、治療されることになる創傷部位の上に置かれ得る。被覆材100は、創傷部位の上に密封された空洞を形成するために設置され得る。好ましい実施形態では、被覆材100は、最上層もしくはカバー層、または任意の創傷接触層222に取り付けられる裏当て層220を備え、それらの両方について以下により詳細に記載する。これら二つの層220、222は、内部空間またはチャンバを画定するために、共に接合または封止されることが好ましい。この内部空間またはチャンバは、陰圧を分配または伝達し、創傷滲出液および創傷から除去された他の流体を貯蔵するように適応し得る追加構造と、以下により詳細に説明するであろう他の機能とを備えてもよい。以下に記載するそのような構造の例は、透過層226および吸収層221を含む。
【0184】
本明細書で使用される通り、上部層、最上層または上方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面から最も遠い層を指す。従って、下面、下部層、最下層または下方の層は、被覆材が使用中で、創傷の上に位置する間、皮膚または創傷の表面に最も近い層を指す。
【0185】
図6Bに示すように、創傷接触層222は、ポリウレタン層、ポリエチレン層、または、例えば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、または超音波プロセスを介すか、またはその他のいくつかの方法で孔加工された、あるいは別の方法で液体およびガスが透過するようにしたその他の可撓性のある層であり得る。創傷接触層222は、下面224と上面223とを有する。パーフォレーション225は、創傷接触層222において貫通孔を含み、それによって流体が層222を通って流れることが可能となるのが好ましい。創傷接触層222は、創傷被覆材の他の材料中への組織内殖を防ぐのに役立つ。パーフォレーションは、その中を通って流体が流れるのを可能にしつつ、この要件を満たすのに十分小さいことが好ましい。例えば、0.025mmから1.2mmの範囲の寸法を有するスリットまたは孔として形成された穿孔は、創傷滲出液が被覆材内に流れるのを可能にしつつ、創傷被覆材内に組織が内部成長するのを防止する一助となるには十分小さいと考えられる。一部の構成では、創傷接触層222は、陰圧を創傷に維持するために、吸収パッドの周りに気密状態をも作り出しながら、被覆材100全体の完全性を維持するのに役立つ場合がある。
【0186】
創傷接触層222のいくつかの実施形態は、また、任意の上部および下部接着層(図示せず)用の担体として働いてもよい。例えば、下部感圧接着剤が、創傷被覆材100の下面224上に提供され得る一方、上部感圧接着層は、創傷接触層の上面223上に提供され得る。シリコーン、ホットメルト、親水コロイドもしくはアクリルをベースとする接着剤、または他のそのような接着剤であり得る感圧接着剤は、創傷接触層の両面上、もしくは任意で選択された片面上に形成されてもよく、または創傷接触層のどちらの面上に形成されなくてもよい。下部感圧接着層を利用することが、創傷被覆材100を創傷部位の周りの皮膚に接着させる助けになってもよい。いくつかの実施形態では、創傷接触層は穿孔ポリウレタンフィルムを備えてもよい。フィルムの下面はシリコーン感圧接着剤を提供されてもよく、上面はアクリル感圧接着剤を提供されてもよく、それによって被覆材がその完全性を維持するの助けてもよい。いくつかの実施形態では、ポリウレタンフィルム層の上面および下面の両面上に接着層を提供してもよく、全3層は共に孔加工されていてもよい。
【0187】
多孔質材料の層226は、創傷接触層222の上方に置かれ得る。この多孔質層または透過層226により、液体およびガスを含む流が、創傷部位から離れて創傷被覆材の上部層中へと透過することが可能になる。特に、透過層226によって、吸収層が相当量の滲出液を吸収しても創傷エリアの上に陰圧を伝えるよう、外気チャネルが確実に維持され得ることが好ましい。層226は、好ましくは、上述の通り、陰圧創傷療法時に適用されることになる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって、創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層226は、三次元構造を有する材料から形成され得る。例えば、編みもしくは織りスペーサ生地(例えば、Baltex 7970の横編ポリエステル)、または不織布が使用され得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、透過層226は、84/144で織られたポリエステルである最上層(すなわち、使用中、創傷床から遠位の層)と、10デニールの平坦なポリエステルである最下層(すなわち、使用中、創傷床に近接して置かれる層)と、編まれたポリエステルビスコース、セルロースまたは類似のモノフィラメント繊維により画定される領域である、これら二つの層の間に挟まれて形成される第三の層とを含む、3Dポリエステルのスペーサ生地層を備える。他の材料、および他の線質量密度の繊維ももちろん使用され得る。
【0189】
本開示を通して、モノフィラメント繊維への言及がなされるものの、多糸の代替物が利用され得ることは理解されるであろう。それゆえ、最上部スペーサ生地は、それを形成するのに使用される一本の糸において、最下部スペーサ生地層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0190】
間隔を置いて配置された層におけるフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御する一助となる。具体的には、最上層のフィラメント数をより多くすることによって、すなわち、最上層が、最下層に使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から作られることによって、液体は、最下層よりも最上層に沿ってより多く吸われる傾向がある。使用中、この差異によって、液体が創傷床から引き離され、被覆材の中央領域中に引き寄せられるようになり、吸収層221が液体を閉じ込めるのに役立つか、または液体を放出させ得るカバー層に向かって、それ自体で液体を前方へ吸い上げる。
【0191】
好ましくは、透過層226を横切る(すなわち、最上部および最下部スペーサ層の間に形成されるチャネル領域と垂直に)液体の流れを改善するために、3D織物は、ドライクリーニング剤(限定するものではないが、パークロロエチレンなど)で処理されて、透過層の親水能力を邪魔する可能性がある、前に使用された鉱油、油脂および/またはワックスなどの、いかなる工業製品をも除去するのに役立ってもよい。いくつかの実施形態では、続いて、3Dスペーサ生地が親水性剤(限定するものではないが、Rudolph Groupから市販されている30g/lのFeran Iceなど)で洗われる、追加の製造ステップに進んでもよい。このプロセスステップは、水などの液体が3D編物に接触するとすぐに織物に進入し得るほど、材料の表面張力が低くなることを保証するのに役立つ。またこのステップは、いかなる滲出液の液状侵襲成分(liquid insult component)の流れを制御するのにも役立つ。
【0192】
吸収性材料の層221は、透過層226の上に設けられる。発泡体もしくは不織の自然または合成材料を含み、任意で超吸収材料を含んでもよい吸収材は、流体、具体的には、創傷部位から除去される液体用の貯留部を形成する。いくつかの実施形態では、層10もまた、流体を裏当て層220の方へ引き寄せるのに役立ってもよい。
【0193】
吸収層221の材料はまた、創傷被覆材100内に収集された液体が被覆材内で自由に流れるのを防止し得、好ましくは、収集されたいかなる液体も被覆材内に含むよう作用する。吸収層221はまた、流体を創傷部位から引き寄せ、吸収層中に渡って貯蔵するように、吸い上げ作用によって層全体に流体を分配するのを助ける。これによって、吸収層のエリアにおける凝集を防止するのを補助する。吸収材の容量は、陰圧を適用するとき、創傷の滲出液が流れる速度を管理するのに充分でなくてはならない。使用中、吸収層は陰圧を経験するため、吸収層の材料は、そのような状況下で液体を吸収するように選ばれる。例えば、超吸収体材料といった、陰圧下にあるとき液体を吸収できる、いくつかの材料が存在する。吸収層221は通常、ALLEVYN(商標)発泡体のFreudenberg 114-224-4および/またはChem-Posite(商標)11C-450より製造され得る。いくつかの実施形態では、吸収層221は、超吸収性粉末、セルロースなどの繊維材料、および結合繊維を含む複合材を含んでもよい。好ましい実施形態では、合成物は、風成(airlaid)の、熱結合合成物である。
【0194】
いくつかの実施形態では、吸収層221は、層中に渡って分散する乾燥粒子の形態である超吸収材料を有する、不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用によって、被覆材により吸収される液体を素早くかつ均等に分配するのに役立つ、高速吸い上げ要素が導入される。多数の撚糸様繊維を並列させることが、液体を分配するのに役立つ繊維パッドの、強い毛細管作用につながる。このように、超吸収材料に液体を効率的に供給する。また、吸い上げ作用によって、被覆材の蒸散率を増加させるのに役立つように、液体を上部カバー層と接触させるように支援する。
【0195】
陰圧を被覆材100に印加することが可能になるように、隙間、孔またはオリフィス227が、好ましくは、裏当て層220に設けられる。流体コネクタ110は、被覆材100の中に作られるオリフィス227の上で、裏当て層220の最上部に取り付けられるか、または封止され、オリフィス227を通って陰圧を伝えることが好ましい。長いチューブが、被覆材から流体を汲み上げることが可能になるように、第一端部で流体コネクタ110に、第2端部でポンプユニット(図示せず)に連結され得る。流体コネクタが創傷被覆材の最上層に接着する場合、長いチューブは、チューブまたは導管が、流体コネクタから離れて平行に、または実質的に被覆材の最上表面へ延在するような、流体コネクタの第一端部で連結され得る。流体コネクタ110は、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化性またはホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、裏当て層220に接着および封止し得る。流体コネクタ110は、ショアAスケールで30から90の硬度を有する、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーンまたはポリウレタンといった柔らかいポリマーから形成され得る。いくつかの実施形態では、流体コネクタ110は、柔らかい材料または適合する材料から作られてもよい。
【0196】
好ましくは、吸収層221は、流体コネクタ110の下にあるように配置される、少なくとも一つの貫通孔228を含み得る。貫通孔228は、いくつかの実施形態では、裏当て層の開口部227と同じサイズであってもよく、またはより大きいもしくは小さくてもよい。図6Bに示す通り、単一の貫通孔は、流体コネクタ110の基礎を成す開口部を生み出すように使用され得る。複数の開口部が、代替として利用され得ることは理解されるであろう。加えて、二つ以上のポートが、本開示の特定の実施形態に従って利用されるべき場合、一つまたは二つ以上の開口部が、各流体コネクタと位置を合わせて、吸収層および不明瞭化層に作られてもよい。本開示の特定の実施形態には必須ではないものの、超吸収層に貫通孔を使用することで、吸収層が飽和に近いとき特に、遮断されないままの流体流路を提供し得る。
【0197】
隙間または貫通孔228は、好ましくは、図6Bに示す通り、オリフィスが透過層226に直接接続するように、オリフィス227の下方の吸収層221に設けられる。これによって、流体コネクタ110に適用される陰圧を、吸収層221を通過することなく、透過層226へ伝えることが可能になる。これで、吸収層が創傷滲出液を吸収するとき、創傷部位に適用される陰圧が、吸収層によって阻害されないことが保証される。他の実施形態では、隙間は吸収層221に提供されなくてもよく、または、代替として、オリフィス227の下にある複数の隙間が提供され得る。さらなる代替の実施形態では、別の透過層などの追加層、または参照することによりその全体が援用される、国際特許出願公開第2014020440号に記載されるような不明瞭化層が、吸収層221の上および裏当て層220の下方に提供され得る。
【0198】
裏当て層220は、ガスを透過させないが、水蒸気を透過させるのが好ましく、創傷被覆材100の幅を横切って延在し得る。例えば、片方の面に感圧接着剤を有するポリウレタンフィルム(例えば、Elastollan SP9109)であり得る、裏当て層220は、ガスに対して不透過性であり、それゆえ、この層は創傷を被覆し、上に創傷被覆材が置かれる創傷空洞を封止するように動作する。このように、効果的なチャンバが、陰圧が確立され得る、裏当て層220と創傷部位との間に作られる。裏当て層220は、被覆材の周囲の境界領域内において、創傷接触層222に対して封止され、例えば接着技術または溶接技術を介して、境界領域に空気が吸い込まれないようにするのが好ましい。裏当て層220によって、創傷が外部の細菌汚染から保護され(細菌バリア)、層を通って創傷滲出液からの液体を移動させ、フィルム外表面から蒸発させることが可能になる。裏当て層220は、二つの層、すなわちポリウレタンフィルムとこのフィルム上に広げられた接着パターンとを含むのが好ましい。ポリウレタンフィルムは透湿性であるのが好ましく、かつ、濡れると水透過速度が高くなる材料から製造され得る。いくつかの実施形態では、裏当て層が濡れると、裏当て層の透湿性が増大する。濡れた裏当て層の透湿性は、乾いた裏当て層の透湿性の最大約10倍であり得る。
【0199】
吸収層221は、吸収層が透過層226の縁と重複するように、透過層226よりも大きい面積から成ってもよく、それによって、透過層が裏当て層220に接触しないことを保証する。これにより、創傷接触層222と直接接触する、吸収層221の外側チャネルが提供され、滲出液の吸収層へのより急速な吸収に役立つ。さらに、この外側チャネルによって、液体が創傷空洞の外周に貯留できないことが保証され、そうでない場合には、被覆材の周囲の封止部から染み出して、漏出の形成につながる場合がある。図6A~6Bに示す通り、吸収層221によって、境界線または境界領域が、吸収層221の縁と裏当て層220の縁との間に画定されるような、裏当て層220の周囲よりも小さい周囲を画定し得る。
【0200】
図6Bに示す通り、創傷被覆材100の一実施形態は、流体コネクタ110の下方に置かれる吸収層221に、隙間228を備える。使用中、例えば、陰圧が被覆材100に適用されるとき、流体コネクタの創傷に面する部分は、透過層226と接触してもよく、それゆえ、吸収層221が創傷流体で満たされているときでさえ、創傷部位に陰圧を伝達するのに役立ち得る。いくつかの実施形態によって、裏当て層220を透過層226に少なくとも一部接着させてもよい。いくつかの実施形態では、隙間228は、流体コネクタ11の創傷に面する部分またはオリフィス227の直径よりも、少なくとも1~2mm大きい。
【0201】
特に、単一流体コネクタ110および貫通孔を伴う実施形態では、図6Aに示す通り、流体コネクタ110および貫通孔が、中心から外れた位置に置かれるのが好ましい場合がある。そのような場所では、流体コネクタ110が被覆材100の残余部と比較して持ち上げられるように、被覆材100を患者の上に配置することが可能になってもよい。そのように配置すると、流体コネクタ110およびフィルタ214は、創傷部位への陰圧の伝達を減じるために、時期を早めてフィルタ214を閉塞させ得る創傷流体と、接触する可能性が低くなる場合がある。
【0202】
ここで流体コネクタ110に目を転じると、好ましい実施形態は、封止面216と、近位端130および遠位端140を伴うブリッジ211(図5A~5Bのブリッジ120に相当)と、フィルタ214とを備える。封止面216は、創傷被覆材の最上表面に封止される、前に記載したアプリケータを形成し得る。いくつかの実施形態では、流体コネクタ110の最下層は、封止面216を備えてもよい。流体コネクタ110はさらに、いくつかの実施形態では、流体コネクタの別個の上部層により画定される、封止面216から垂直に間隔を空ける上面を備えてもよい。他の実施形態では、上面および下面は、材料の同じ一片から形成され得る。いくつかの実施形態では、封止面216は、創傷被覆材と連通するように、その中に少なくとも一つの隙間229を備えてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ214は、封止面の開口部229を横切って配置されてもよく、開口部229全体にわたってもよい。封止面216は、創傷被覆材のカバー層に流体コネクタを封止するように構成されてもよく、接着剤または溶接部を備えてもよい。いくつかの実施形態では、封止面216は、スペーサ要素215がフィルタ214と透過層226との間にギャップを作るよう構成され状態で、カバー層のオリフィスの上に配置されうる。他の実施形態では、封止面216は、カバー層のオリフィスおよび吸収層220の隙間の上に位置してもよく、流体コネクタ110によって透過層226を通る気流を提供することが可能になる。いくつかの実施形態では、ブリッジ211は、陰圧源と連通する第一流体通路212を備えてもよく、第一流体通路212は、3D編み材料など、前に記載した多孔質層226と同じでもよく、または異なってもよい、多孔質材料を備える。ブリッジ211は、近位端および遠位端を有し、第一流体通路212を囲むように構成される、少なくとも一つの可撓性フィルム層208、210によって被包されることが好ましく、可撓性フィルムの遠位端は、封止面216に接続する。フィルタ214は、創傷滲出液がブリッジに入ることを実質的に防止するように構成され、スペーサ要素215は、流体コネクタが透過層226に接触するのを防ぐように構成される。これらの要素については、以下により詳細に記載する。
【0203】
いくつかの実施形態はさらに、第一流体通路212の上方に位置する、任意の第二流体通路を備えてもよい。例えば、いくつかの実施形態によって、第一流体通路212および被覆材100中への空気経路を提供するように構成され、最上層の近位端に配置される可能性がある、空気漏れ部を提供してもよく、これは、参照することによって全体が援用される、米国特許第8,801,685号に記載する吸引アダプタに類似する。
【0204】
好ましくは、流体通路212は、スペーサがねじれるかまたは折り重なる場合でも、流体が通過することを可能にする、可撓性のある、規格に準拠した材料から構築される。流体通路212の好適な材料には、ポリエチレンまたはポリウレタン発泡体など、連続気泡発泡体を含む発泡体、メッシュ、3D編物、不織材料および流体チャネルを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、流体通路212は、透過層226に関して上に記載したものと、類似の材料から構築され得る。有利なことに、流体通路212に使用されるそのような材料によって、患者の快適性をより増すことが可能になるだけでなく、ねじれるか、または曲がっている間でも、依然として流体通路212が流体を創傷から陰圧源の方へと移動できるような、より大きなねじれ抵抗を提供し得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、流体通路212は、例えば、編みもしくは織りスペーサ生地(ポリエステルで編まれた3D織物、Baltex 7970(登録商標)またはGehring 879(登録商標))といったウィッキング生地、または不織布から成ってもよい。選択されたこれらの材料は、好ましくは、創傷滲出液を創傷から離すように導き、陰圧および/または吐出された空気を創傷部位へ伝達するために置くことができ、また、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗を、流体通路212に与えてもよい。いくつかの実施形態では、ウィッキング生地は、いくつかの事例では、流体の吸い上げまたは陰圧の伝達に役立つ場合がある、三次元構造を有し得る。特定の実施形態では、ウィッキング生地を含み、これらの材料は、開放されたままで、例えば、40から150mmHgの間の陰圧療法で使用される通常圧力下において、変わらず陰圧を創傷エリアに伝えることができる。いくつかの実施形態では、ウィッキング生地は、互いの上に積み重なった、または積層された材料のいくつかの層を備えてもよく、一部の場合には、陰圧の印加状況下において、流体通路212が崩れるのを妨げるのに有用であり得る。他の実施形態では、流体通路212に使用されるウィッキング生地は、1.5mmと6mmとの間であってもよく、より好ましくは、ウィッキング生地は、3mmと6mmとの間の厚さであってもよく、一つまたはいくつかの個別のウィッキング生地層から成ってもよい。他の実施形態では、流体通路212は1.2~3mmの間の厚さであってもよく、好ましくは1.5mmよりも厚い。いくつかの実施形態、例えば、創傷滲出液などの液体を保持する被覆材と共に使用される吸引アダプタは、流体通路212に疎水性の層を用いてもよく、ガスのみが流体通路212を通って動いてもよい。さらに、既に記載した通り、システムに使用される材料は、快適で柔らかいものであることが好ましく、それにより患者の皮膚に押し付けられる創傷治療システムに起因する場合がある、圧迫性褥瘡およびその他の合併症を回避するのに役立つ場合がある。
【0206】
フィルタ要素214は、液体に対して不透過性であるが、ガスに対しては透過性があり、液体バリアとして働き、液体が創傷被覆材100から漏れ出ることができないことを保証するように設けられる。フィルタ要素214はまた、細菌バリアとして機能し得る。通常、管孔サイズは0.2μmである。フィルタ要素214のフィルタ材料に好適な材料には、MMT範囲からの0.2ミクロンのGore(商標)拡張PTFE、PALL Versapore(商標)200RおよびDonaldson(商標)TX6628を含む。より大きな管孔サイズも使用され得るが、これらは、二次フィルタ層が、完全な生物汚染の封じ込めを保証することを必要とする場合がある。創傷流体は脂質を含有するため、必須ではないものの、例えば、0.2ミクロンのMMT-323の前に1.0ミクロンのMMT-332といった、撥油性フィルタ膜を使用することが好ましい。これにより、脂質が疎水性フィルタを遮断するのを防げる。フィルタ要素は、オリフィスの上のポートおよび/または被覆フィルムに取り付けられるか、または封止され得る。例えば、フィルタ要素214は、流体コネクタ110に成型されてもよく、または限定するものではないが、UV硬化接着剤などの接着剤を使用して、カバー層の最上部および吸引アダプタ110の最下部の一方または両方に接着し得る。
【0207】
他のタイプの材料がフィルタ要素214に使用され得ることは、理解されるであろう。より広くは、薄く平坦な一枚のポリマー材料である、微多孔膜を使用することができ、これは数十億もの微細な管孔を包含する。選んだ膜に応じて、これらの管孔は、0.01マイクロメートルから10マイクロメートルより大きいサイズの範囲にあり得る。微多孔膜は、親水性(水のフィルタリング)および疎水性(撥水)形態の両方で利用可能である。本開示のいくつかの実施形態では、フィルタ要素214は、支持層と、支持層上に形成されるアクリルコポリマー膜とを含む。好ましくは、本開示の特定の実施形態に従う創傷被覆材100は、疎水性微多孔膜(MHM)を使用する。多数のポリマーを用いて、MHMを形成し得る。例えば、MHMは、PTFE、ポリプロピレン、PVDFおよびアクリルコポリマーの一つまたは複数から形成され得る。これら任意のポリマーの全てが、疎水性および撥油性の両方であり得る、特定の表面特性を得るために処理され得る。これらによって、マルチビタミン注入物、脂質、界面活性剤、油および有機溶媒など、表面張力の低い液体を追い払うであろう。
【0208】
MHMは、空気が膜を通って流れることを可能にしながら、液体を遮断する。MHMはまた、潜在的感染エアロゾルおよび粒子を排除する、非常に効率的なエアフィルタである。MHMの単一片は、機械式バルブまたはベントを交換する選択肢として、よく知られる。それゆえ、MHMの組込みによって製品組立費を削減し、利益、および患者に対する費用/利得の割合を改善し得る。
【0209】
フィルタ要素214はまた、例えば、活性炭、炭素繊維布もしくはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体、または類似のものといった臭気吸収材を含んでもよい。例えば、臭気吸収材は、フィルタ要素214の層を形成してもよく、またはフィルタ要素内の疎水性微多孔膜間に挟まれてもよい。それゆえ、フィルタ要素214によって、オリフィスを通してガスを排出することが可能になる。しかしながら、液体、微粒子および病原体は被覆材に包含される。
【0210】
創傷被覆材100は、流体コネクタ110およびフィルタ214と併せてスペーサ要素215を備えうる。こうしたスペーサ要素215を追加することで、流体コネクタ110およびフィルタ214は、吸収層220および/または透過層226と直接接触しないようサポートされうる。吸収層220はまた、フィルタ214を透過層226に接触させるための追加的なスペーサ要素として作用し得る。従って、こうした構成により、フィルタ214の使用中の透過層226および創傷液体との接触が、最小化されうる。
【0211】
上に記載した創傷被覆材の実施形態に類似して、いくつかの創傷被覆材は、皮膚接触面上にシリコーン接着剤、および裏面上にアクリル接着剤を有する穿孔創傷接触層を備える。この縁取られた層の上方には、透過層または3Dスペーサ生地パッドが存在する。透過層の上方には吸収層が存在する。吸収層は超吸収不織(NW)パッドを含み得る。吸収層は、周囲をおよそ5mm越えて透過層に接し得る。吸収層は、一つの端部の方に向かう隙間または貫通孔を有し得る。隙間は直径約10mmであり得る。透過層および吸収層の上に、裏当て層がある。裏当て層は、アクリル接着剤でコーティングされた模様である、高水蒸気透過率(MVTR)フィルムであり得る。高MVTRフィルムおよび創傷接触層は、透過層および吸収層を被包して、およそ20mmの周囲境界を作り出す。裏当て層は、吸収層の隙間の上に重なる、10mmの隙間を有し得る。流体コネクタは、孔の上方で結合し得る。流体コネクタは、前述した隙間の上に重なる、液体不透過性、ガス透過性の半透過性膜(SPM)またはフィルタを備える。
【0212】
腹部創傷の治療
図7に目を転じると、より大きな腹部創傷など、特定の実施形態で陰圧を用いる他の創傷タイプの治療では、図に概略的に示する通り、陰圧治療システム101を使用する。この実施形態では、腹部創傷部位として図に示す創傷部位106は、陰圧による治療から恩恵を受けることができる。そのような腹部創傷部位は、例えば、事故または外科的介入による結果である場合がある。一部の場合、腹部コンパートメント症候群、腹部高血圧、敗血症または水腫などの病状は、腹膜腔を曝露するように、腹壁を通る外科的切開による腹部の除圧を必要とする場合があり、その後、開口部は状態が回復するまで、開放してアクセス可能な状態の維持が必要とされることがある。他の状態もまた、具体的には腹腔などの開口部は、例えば、複数の外科的手技が必要とされる(場合により外傷に付随して起こる)場合、または腹膜炎または壊死性筋膜炎など、病態のエビデンスがある場合、開いたままにしておくことを必要とする場合がある。
【0213】
具体的には腹部などに創傷がある場合、創傷が開いたままであるべきであってもなくとも、または創傷が閉じられるであろう場合には、器官および腹膜腔の曝露に関係する、可能性のある合併症を管理することが望ましい。好ましくは陰圧の印加を使用する療法は、組織生存を促進し、創傷部位から有害な物質を除去しながら、感染のリスクを最小化することを目的とし得る。創傷部位に減圧または陰圧を加えると、一般的に迅速な治癒、血流の増加、細菌量の減少、肉芽組織の形成速度の増加が促進され、線維芽細胞の増殖を刺激し、内皮細胞の増殖を刺激し、慢性的な開いた創傷を閉じ、やけどの浸透を防ぎ、および/またはとりわけ、フラップと移植片の付着を強化することがわかった。陰圧の印加による治療への好反応を呈していた創傷には、感染開放創、褥瘡性潰瘍、裂開切開、中間層熱傷およびフラップまたは移植片を取り付けられたさまざまな病変を含むことも、報告されている。その結果として、創傷部位106への陰圧の印加は、患者にとって有益であり得る。
【0214】
従って、特定の実施形態では、創傷部位106の上に設置するように、創傷接触層105が設けられる。創傷接触層はまた、器官保護層および/または組織保護層と称され得る。好ましくは、創傷接触層105は、創傷部位または接近した曝露された内臓にそれほど接着しない薄い可撓性材料であることができる。例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはそれらの混合物などのポリマーが、使用され得る。一実施形態では、創傷接触層は透過性がある。例えば、創傷接触層105は、創傷部位106からの流体の除去、または創傷部位106への陰圧の伝達を可能にするように、孔、スリットまたはチャネルなどの開口部を提供され得る。創傷接触層105の追加の実施形態について、以下にさらに詳細に記載する。
【0215】
陰圧治療システム101の特定の実施形態はまた、創傷接触層105の上に配置され得る、多孔質創傷充填材103を使用し得る。このパッド103は、柔らかく弾性的可撓性があり、概して創傷部位106に適合する、例えば、発泡体といった多孔質材料から構築され得る。そのような発泡体には、例えば、ポリマーから作られる連続気泡型の網状発泡体を含みうる。好適な発泡体には、例えば、ポリウレタン、シリコーンおよびポリビニルアルコールから成る発泡体を含む。このパッド103は、陰圧が創傷に印加されるとき、パッドを通って創傷滲出液および他の流体を導きうることが好ましい。一部のパッド103は、そのような目的で事前に形成されるチャネルまたは開口部を含んでもよい。特定の実施形態では、パッド103は、約1インチと約2インチとの間の厚さを有し得る。パッドはまた、約16インチと17インチとの間の長さ、および約11インチと12インチとの間の幅を有し得る。他の実施形態では、厚さ、幅および/または長さは、他の好適な値を有し得る。パッド103の代わりに、またはそれに加えて使用され得る、創傷充填材の他の実施形態について、以下にさらに詳細に議論する。
【0216】
ドレープ107は、創傷部位106を密封するために使用されることが好ましい。ドレープ107は、少なくとも一部の陰圧を創傷部位に維持し得るように、少なくとも部分的に液体不透過性でありうる。ドレープ107に好適な材料は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエステル、および他のコポリマー、ならびにそれらの混合物を含む、それほど液体を吸収しない合成ポリマー材料を含むがこれらに限定されない。ドレープに使用される材料は、疎水性または親水性であり得る。好適な材料の例には、DeRoyalから市販されているTranseal(登録商標)、およびSmith&Nephewから市販されているOpSite(登録商標)を含む。患者の快適性に役立ち、皮膚の浸軟を回避するために、特定の実施形態におけるドレープは、水蒸気が被覆材下に閉じ込められたままにならず通過できるように、少なくとも一部に通気性がある。特定の実施形態では、代わりに別個の接着剤または接着ストリップを使用し得るものの、接着層には少なくとも一部分上に、ドレープを患者の皮膚に固定するように、ドレープ107の底面を提供し得る。任意で、放出層は、使用前、接着層を保護し、かつドレープ107の取り扱いを容易にするように、接着層の上に配置されてもよく、いくつかの実施形態では、放出層は複数セクションから成ってもよい。
【0217】
陰圧システム101は、陰圧源、例えば、ポンプ114に接続し得る。好適なポンプの一例は、Smith&Nephewから市販されているRenasys EZポンプである。ドレープ107は、導管112を介して陰圧源114に接続され得る。導管112は、ドレープ107の隙間109の上に置かれるポート113に接続されてもよく、あるいは、導管112は、ポートを使用せずに隙間109を通って直接接続され得る。さらなる代替物において、導管はドレープの下方を通り、ドレープの側面から延在し得る。米国特許第7,524,315号は、陰圧システムの他の類似する態様について開示し、参照することによって本明細書によりその全体が援用され、本明細書の一部とみなされるべきである。
【0218】
多くの適用では、容器または他の貯蔵ユニット115は、創傷滲出液、および創傷部位から除去された他の流体を、陰圧源に進入させることなく貯蔵することが可能になるために、陰圧源114と導管112とに間置され得る。また、例えば、蠕動ポンプといった、あるタイプの陰圧源によっても、容器115をポンプ114の後に設置することが可能になってもよい。いくつかの実施形態はまた、流体、エアロゾルおよび他の微生物混入物が、容器115を離れ、および/または陰圧源114に進入するのを妨げるように、フィルタを使用し得る。さらなる実施形態はまた、オーバーフローを妨げるように、容器に遮断バルブ、または閉塞疎水性および/もしくは撥油性フィルタを含んでもよく、他の実施形態は、容器の中の流体のレベルが容量に近づく場合、容量センサ、または陰圧源を停止もしくは遮断するように働く、他の流体レベル検出器などの感知手段を含んでもよい。ポンプ排出部に、活性炭キャニスタなどの臭気フィルタを提供し得ることがまた好ましい。
【0219】
オイラービデオ倍率創傷モニタリングおよびNPWT治療
「オイラービデオ倍率」(EVM)と呼ばれる技術を使用して、経時的なピクセルの小さな変化の分析の新しい技術が開発されてきた。EVMは、経時的なこれらの極めて小さな変化を増幅する働きをすることができ、従って以前に検出不能な変化の検出が可能になる。例えば、EVMは光学カメラによって取られたものなどの標準ビデオに適用され得る。ビデオ化されるオブジェクトおよび/または人物の状態における視覚的変化は、EVMによって増幅されて検出されうる。例えば、EVMは、新生児の幼児などの皮膚または呼吸の下で血流を検出できる。EVMに関するさらなる詳細は、Wu等による「世界の若干の微妙な変化を明らかにするオイラービデオ倍率」と題されたマサチューセッツ工科学研究所が発表した記事で提供されているが、ここに、その全体が参照により盛り込まれる。
【0220】
EVMは、経時的なビデオ(画素など)の空間的な位置の微妙な変化を増幅する役目を果たす。そのような微妙な変化は裸眼に見えない場合があるため、EVMは通常の視野およびモニタリングの下で検出不能な微小な現象を検出することができる。こうしたビデオは、任意の適切な手段を介して収集することができ、可視光スペクトル内で収集されたビデオに限定されない。例えば、カメラ、電荷結合装置(CCD)、酸素飽和(spO2)検出器、磁気共鳴画像法、X線撮像、赤外線撮像または経時的な任意の形態のビデオデータ収集を介してビデオを収集し得る。画素値の増幅された変化は、色の変化、モーションによる変化、またはビデオのタイプに応じてその他任意の適切な変化の結果とすることができる。例えば、特定の領域でのspO2測定のビデオは、色などの値として出力され得、そのためこうしたビデオに適用されるEVMはspO2の微妙な変化を検出できる。上述のようにEVMに関するさらなる詳細は、Wu等による「Eulerian Video Magnification for Revealing Subtle Changes in the World」と題されたマサチューセッツ工科学研究所が発表した記事で提供されている。
【0221】
Wu等によって説明されるように、ビデオの微妙な時間的変化を強調するために空間的および時間的処理を使用できる。このプロセスの実施形態を図3に示す。簡潔に述べると、EVMシステム300は最初に、入力ビデオシーケンス302を異なる空間周波数バンド306に分解304、および同じ時間的フィルタを全てのバンド308に適用する。フィルタリングされた空間バンド310は次に、所与の因子α312によって増幅され、元の信号314に戻され、折り畳まれて出力ビデオ316を生成する。
【0222】
Wuによって説明されるように、ビデオシーケンスは異なる空間周波数バンドに分解される。これらのバンドは、(a)異なる信号対ノイズ比を呈する可能性があるため、または(b)モーション倍率について後で説明する線形近似を保持しない空間的周波数を含むかもしれないので、異なって拡大され得る。後者の場合、これらのバンドの増幅を減少させて、アーチファクトを抑制し得る。空間的処理の目的が、複数のピクセルをプールすることによって時間的な信号対ノイズ比を増加させるだけである時、ビデオのフレームは、空間的にローパスフィルタに供され、計算効率のためにサンプル化される。しかしながら、一般的な場合には、フルラプシアンピラミッド[Burt and Adelson 1983]を実施し、それに続いて各空間バンド上の時間的処理を行ってもよい。周波数バンド内のピクセルの値に対応する時系列は、考慮されてもよく、関心対象の周波数バンドを抽出するために、バンドパスフィルタを適用し得る。例えば、我々は、パルスを拡大したい場合、24~240ビット毎分に対応する0.4~4Hz以内の周波数を選択し得る。我々が、パルス速度を抽出できる場合は、その値の周りで狭いバンドを使用できる。時間的処理は、全ての空間的レベルに対して、および各レベル内の全てのピクセルに対して均一である。次に、我々は、抽出されたバンド通過信号にある倍率を乗算する。この率はユーザによって指定でき、下記のガイドラインに従って自動的に減衰されうる。可能性のある時間的フィルタも以下に考察する。次に、我々は、倍率信号を元のものに追加し、空間的な角錐を折り畳み、最終出力を得る。自然なビデオは空間的および仮側的に滑らかであり、我々のフィルタリングがピクセルで一様に実施されているため、我々の方法は結果の空間的な一貫性を間接的に維持している。
【0223】
時間的処理とモーション倍率の間の関係を説明するために、並進モーションを受ける1D信号の単純なケースを考慮する。この分析は、2Dにおける局所的な並進モーションに直接一般化される。I(x;t)は、位置xおよび時間tでの画像強度を示す。画像は並進モーションを受けるため、我々は、I(x;t)=f(x+δ(t))およびI(x;0)=f(x)のように、変位機能δ(t)に関して観察された強度を表現することができる。モーション倍率の目的は、いくつかの増幅係数αに対し、信号
【0224】
【数1】
【0225】
を合成することである。
【0226】
イメージは、一次のテイラーシリーズ展開によって近似させることができると仮定すると、我々は、時間tで画像を描く、xについて、一次のテイラー展開において、f(x+δ(t))である。
【0227】
【数2】
【0228】
B(x;t)は、ブロードバンド時間バンドパスフィルタを、全ての位置x(上記の式でf(x)を除く全てを選択する)で、I(x;t)に適用した結果である。ここでは、モーションシグナル(t)が時間バンドパスフィルタのパスバンド内にあると仮定する(我々は後で仮定を緩める)。そして下記を得る。
【0229】
【数3】
【0230】
我々のプロセスでは、でバンドパス信号を増幅し、それをI(x;t)に戻して追加し、処理された信号を生成する。
【0231】
【数4】
【0232】
以前の方程式を組み合わせることで、我々は以下を得る。
【0233】
【数5】
【0234】
一次のテイラー展開が増幅された大きな撹乱(1+α)δ(t)の有効であると仮定すると、我々は、時間的バンドパス信号の増幅をモーション倍率に関連付けることができる。処理された出力は単純に、
【数6】
【0235】
となる。
【0236】
これは、処理がモーションを増幅させる、時間tにおけるローカル画像f(x)の空間的変位δ(t)の処理が、(1+α)に増幅されることを示す。低周波コサイン波および比較的小さな変位(t)については、一次のテイラーシリーズ拡張は、時間t+1で翻訳信号に対する良好な近似として機能する。時間的信号をI(x;t)に戻して追加する場合、その波によって翻訳された波は(1+α)δになる。画像機能(すなわち、高空間周波数)を迅速に変更するために、f(x)、一次のテイラーシリーズ近似は、より大きな倍率およびモーションδ(t)の両方で増大する、外乱、1+αδ(t)の大きな値については不正確になる。
【0237】
空間的周波数ωの関数として、観測されたモーションδ(t)が与えられると、モーション増幅係数αが、どのように大きくなりえるかについてのガイドを導き出すことができる。真の倍率モーション、I(x,t)とほぼ等しい処理された信号、I(x、t)について、我々は以下のもとで条件を求める。
【0238】
【数7】
【0239】
コサインの追加の法および以下の近似の使用によるさらなる再構成により:
【0240】
【数8】
【0241】
以下のガイドラインがもたらされる。
【0242】
【数9】
【0243】
このガイドラインは、特定のビデオモーションδ(t)の正確なモーション倍率に適合する最大モーション増幅係数αおよび画像構造空間波長λを提供する。一部のビデオでは、近似制限に違反することは知覚的好ましくありえ、我々は、マルチスケール処理においてユーザ修正可能パラメータとしてλをカットオフされたままにする。
【0244】
いくつかの実施形態では、オイラービデオ倍率により入力ビデオを処理するために、ユーザが実行する必要がある四つのステップがある。(1)時間バンドパスフィルタを選択する。(2)増幅係数αを選択する。(3)これを超えると、αの減衰バージョンが使用される空間周波数カットオフ(空間波長、λcで規定)を選択する。(4)全てのλ<λcに対してαを強制的にゼロにするか、αを線形的にゼロにする、αの減衰の形式を選択する。関心対象の周波数バンドは、一部の場合には自動的に選択することができるが、ユーザは、それらのアプリケーションに対応する周波数バンドを制御できることが多くの場合重要である。我々のリアルタイムのアプリケーションでは、増幅係数およびカットオフ周波数は全て、ユーザによってカスタマイズ可能である。
【0245】
当業者であれば、本出願のこのセクション、本明細書全体を通して使用される「色」という用語の使用は、光学スペクトルを表すだけではないことを理解するであろう。「色」という語は、時々、スペクトル周波数範囲(これは可視範囲であってもなくてもよい)を識別するために日常的に使用され得る。当業者であれば、実施形態において、本明細書に記述した技術は、例えば、緑/赤の変化を検出することによって、EVMを使用することなく機能することもできることをさらに理解するであろう。しかしながら、EVMがないこのようなシステムは、感度の著しい低下を有し得る。
【0246】
創傷の評価に関する特定の関心のうち、いくつかの実施形態では、オイラービデオ倍率は、CCDカメラまたはRGBカラー検出器から収集されたビデオを使用して色に関する画素値の微妙な変化を増幅するために使用されうる。実施形態において、カメラまたはRGBカラー検出器は、視覚化のために創傷に光をあてるために、一つまたは複数の標準LEDと組み合わせることができる。例えば、皮膚パッチまたは創傷床の中では、色変化は好ましい血流を示し得る。例えば、色検出を介した赤色スペクトルの値は、血流を示し得るため、色のピーク値とトラフ値の差が小さい場合、それはほとんど血流がないことを示唆している。逆に、ピーク値とトラフ値との間の差が比較的高い場合、これは組織領域への良好な血流を示し得る。
【0247】
さらに、値が赤くない場合、酸素が不十分である可能性が高い。実施形態において、色は、血液酸素(または光源がSP02を直接検出するよう改変され)の表示を生成するため、毛細管への損傷の可能性を最小限に抑えるため、および放血が発生した場合に警告として作用するために使用され、NPWTによって引き起こされ得る潜在的害を潜在的に緩和する。いくつかの実施形態では、そのために隣接する皮膚のモーションを監視するために創傷近くの皮膚上でEVMを使用して、血液パルスが懸念領域たどり着いているかどうかを特定することができる。有利なことに、創傷または組織内の潜在的な問題を特定するために絶対値を監視する必要はなく、値の違いのモニタリングが十分である。
【0248】
図9は、EVMを組み込んだNPWTシステム1000の実施形態を示す。図1および図5A図7に関して前述した被覆材と類似した被覆材1002は、少なくとも一つのセンサ1004を含み得る。実施形態において、被覆材は、一つのセンサ、二つのセンサ、三つのセンサ、四つのセンサ、五つのセンサ、少なくとも約10個のセンサ、少なくとも約20個のセンサ、または20個を超えるセンサを含みうる。センサは、例えば、創傷接触層、吸収層、透過層、またはカバー層などの被覆材の任意の層に置かれてもよい。センサは、創傷接触層および吸収層、創傷接触層およびカバー層などの複数の層の間に分布され得る。センサは、配列の形態であり得る。実施形態において、センサは、空隙によって分離されてもよく、または使用される波長で透過性のバリア層で被覆され得る。ポリウレタン発泡体などの追加的な層は、センサの後ろに使用されて、患者がセンサの上に留まる場合、センサによって発生する圧力焦点を最小限にするようにクッションを提供することができる。センサはさらに、シリコーンまたはポリウレタンに封入されうる。
【0249】
実施形態において、センサは、Ph、温度、光、導電率、インピーダンス、静電容量、または創傷のその他の特性などの情報を収集し得る。いくつかの実施形態では、創傷の血流、湿潤または乾燥、乳酸レベル、または創傷のその他の特徴に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、全てのセンサの方法は、システムに組み込まれてもよく、赤外線および紫外線周波数および蛍光、感染(細菌負荷のレベルおよび細菌の種類)、または創傷環境の他の特徴を含む、温度、Ph、酸素、二酸化炭素、導電率、インダクタンス、乳酸塩、メタロマトリックスプロテアーゼ、成長因子、光吸収および反射率などのパラメータを測定するように構成されうる。特定の実施形態では、変換器を有するまたは無い超音波センサを使用し得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、サーミスタまたは熱電対は、RGBセンサ/CCDおよび上述の光源の代わりに使用されうる。こうしたセンサのグリッドまたはマトリクスは、組織に取り付けられ、密接に結合されうる。これらは、その他のセンサ(例えば、光学またはEEG/ECG)と協調して使用され、環境の温度ノイズから心拍数を分離させることができる(すなわち、心拍数の頻度で発生する温度変化を特定する)。
【0251】
実施形態において、センシングコイルは、CCD/RGBセンサの代わりに、またはCCD/RGBセンサに加えて被覆材内に配置され得る。コイルは、被覆材内にネストあるいはオフセットのいずれかで同軸に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、コイルを収容するために別個のプローブを使用してもよく、このようなプローブは組織に対して保持され、有線または無線接続によって信号を送信し得る。
【0252】
上述のように、光学センサを使用して、照射源を有するRGBセンサを使用して創傷の外観を測定し得る。RGBセンサおよび照射源の両方は、光が組織中に透過し、組織自体のスペクトル特性を呈するように、皮膚に押し付けることができる。組織の中の光伝播は、二つの主要な現象である、散乱および減弱によって支配され得る。減衰に対して、光が組織を通過するとき、組織のさまざまな構成要素による吸収のために、光の強度が損なわれる場合がある。青色光は、大きく減衰する傾向がある一方、スペクトルの赤末端の光は、最も減衰が少ない傾向がある。
【0253】
散乱過程はより複雑であり、考慮しなくてはならないさまざまなレジームを有す。散乱の第一態様は、入射光の波長と比較した、散乱中心のサイズに基づく。散乱中心が光の波長よりもかなり小さい場合、レイリー散乱が想定され得る。散乱中心が光の波長ほどである場合、より詳細なミー散乱の定式化を考慮しなくてはならない。散乱光に関与する別の要素は、散乱媒質の投入と排出との間の距離である。光の平均自由行程(散乱事象間の距離)が、動く距離よりもかなり長い場合、弾道的光子輸送が想定される。組織の場合、スキャット事象はおよそ100ミクロン離れているため、1mmの行程距離により、光子の方向を効果的にランダム化し、システムは拡散性レジームに入るであろう。
【0254】
超明るい発光ダイオード(LED)、RGBセンサ、およびポリエステル光学フィルタを光学センサの構成要素として使用して、組織色分化を測定できる。例えば、表面の色は反射光から測定し得るため、色は、所与の形状に対して最初に組織を通過した光から測定され得る。これは、拡散した散光、すなわち、皮膚と接触するLEDからの色の感知を含み得る。いくつかの実施形態では、LEDは、組織を通って拡散した光を検出するように、すぐ近くのRGBセンサと共に使用され得る。光学センサは、拡散した内部の光または表面反射光で撮像し得る。光学センサを使用して、自家蛍光を測定することもできる。組織は一つの波長で光を吸収し、別の波長で放出しているため、自己蛍光が使用される。加えて、死んだ組織は自己蛍光を発することができないため、これは、組織が健康か否かに関する非常にはっきりとした指標となり得る。そのような浅い侵入深さを有する青色光(または、さらにUV光)によって、例えば、非常に特有の波長で自己蛍光を発するであろう健康な組織に対して、バイナリテストとして働くように、すぐ近くの赤に敏感なフォトダイオード(または、一部の他の波長がシフトされたバンド)によるUV光を有することは、非常に有用である場合がある。
【0255】
図9の実施形態に戻ると、センサ1004を有する被覆材1002を創傷1006に配置し得る。図1、5A~B、および7に図示されたシステムと類似して、被覆材は、陰圧源に接続されてもよく、陰圧源は、陰圧を創傷1006に送達するように構成されている。センサ1004は、任意の適切な有線または無線手段を介して、コントローラ1014と通信1012状態であり得る。特定の実施形態では、センサからコントローラへの通信は、一方向であってもよく、コントローラはセンサからの情報を受信するのみである。しかしながら、別の方法として、センサとコントローラとの間の通信1012は、センサが情報をコントローラに送信するばかりでなく、コントローラから命令および/または情報を受信する双方向であり得る。次いで、コントローラ1014は、有線または無線手段を介して、陰圧源1010と通信し得る。
【0256】
コントローラは、ソフトウェアを実行することができる任意の処理装置とし得る。例えば、処理装置は、プロセッサ、PC、タブレット、スマートフォン、またはホストソフトウェアを実行可能な他のコンピュータであり得る。実施形態において、コントローラは、被覆材および/またはポンプに取り付けられてもよく、または別個であり得る。システム1000が動作している時、センサ1004は、経時的に創傷1006からビデオデータを収集する。このビデオデータは、回収され、定期的な間隔でコントローラ1014に送信されるように保存されてもよく、および/またはビデオデータは連続的にコントローラに伝送され得る。センサ1004によって収集された創傷ビデオデータは、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されている任意のセンサから収集される可能性のある任意のデータであり得るが、可視光データまたはIRデータが適切である。実施形態において、センサ1004は、創傷1006の縁を検出してから、創傷の縁のビデオを回収してもよく、例えば、モーションおよび色情報を含む光学データ収集などを行う。そのような情報はコントローラ1014に送信されてもよく、それによってコントローラはEVMをビデオに適用する。前述のように、EVMは、ビデオ内の個々の場所/ピクセルで非常に微妙な変化を検出するために使用できる。特定の実施形態では、EVMは単一ピクセルに適用されうる。こうした単一ピクセルは、単一のセンサから、または複数のセンサから組み合わせられた/平均され得る。いくつかの実施形態では、単一のセンサから複数のピクセルを描画するか、配列などの複数のセンサを形成する。モーション検出のために(すなわち、その他の場所での血液パルスのための組織移動の特定)、複数の密接に整列したピクセルが必要な場合がある。しかし、実施形態では、単一のセンサから単一ピクセルまたは複数のピクセルを使用し得る。
【0257】
色および/またはモーションの変化は、創傷を取り囲む組織または創傷自体への血流を示す場合がある。以下でより詳細に説明されるように、色、モーション、または別のパラメータの変化は、創傷部位の真空が増加、減少、またはそれを維持することを示し得る。増加または減少が意味がある場合、コントローラは1016を陰圧源1010と通信し、陰圧源1010に指示して、真空を増加または真空を減少させうる。こうした通信は、フィードバックループの形態であってもよく、例えば、望ましい治療パラメータなど、所望のレベルに達するまで、陰圧源が引き続き創傷部位で真空を増加または減少させることを可能にする。実施形態において、陰圧源は、所望の創傷治療に応じて、連続陰圧または断続的陰圧を送達するように構成されうる。
【0258】
いくつかの実施形態では、自動回復統合移動平均(ARIMA)、汎化自動回復条件的ヘテロスケジッシティシティティ性(GARCH)、または累積(または累積和)などの時系列分析アルゴリズムを使用して、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で説明したように、経時的にビデオフレームのピクセル位置の値の変化を決定することができる。例えば、血流またはモーションを示す。累積は、各サンプルと平均との間の差の累積和として定義され得る(例えば、変化がない場合、累積はゼロである)。累積は、赤色、デルタ赤、モーション、または計算された治療パラメータのうち一つまたは複数を含む、下にある変数の変化を追跡するために使用できる。決定された累積値または値は、一つまたは複数の閾値と比較されて、血流および/またはモーションおよび/または本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されている任意の適切な値を決定することができる。
【0259】
特定の実施形態では、比例積分微分アルゴリズム(PID)スタイルループをNPWTポンプによって使用して、統合された血流が組織を許容可能な状態に維持するのに適切であることを確保することができ、適切な圧力を使用して、過度の血流を生成することなく最適な血流を確保できるようにすることができる。プロセス変数変化としてポンプの出力を調整するために、PIDスタイルループは当技術分野で周知である。
【0260】
有利なことに、EVMの使用により、陰圧源が、当技術分野で知られているように、創傷床内での陰圧の検出されたレベル単に反応するよりも、創傷および周囲の組織の変化に反応するのを可能にする。さらに、EVMを活用したNPWTは、公称真空ではなく所望の結果(血流の増加)に合わせることができ、正しい効果を生み出しながら、電力消費量、痛みおよび真空損傷を最小限に抑えることができる。このような反応システムは、従来の検出前に低血流を早期に検出して、治療することができるように、虚血を避けることに積極的である。実施形態において、真空を増加させて血流を増加させ、その後、増加した真空が流れを制限するようなレベルで保持されるようにし得る。さらに、システム1000は、浮腫の領域の特定に伴いNPWTの増加を誘発することによって浮腫の治療を可能にし、それによって有効な圧縮の増加による浮腫を最小化する。特定の実施形態では、高い値が、大きな血管が表面に近いことおよび汚れていることを示し得るため、色変化の最大値は望ましくない場合がある。
【0261】
図10Aは、NPWT1100と組み合わせたEVM処理方法の実施形態を示し、図9で上述したNPWTでのビデオデータの収集から変更へ取られたステップのより詳細を提供する。図10Aは「モジュール」を参照するが、当業者であれば、こうしたモジュールは、図8に関して上述したコントローラなどの一つまたは複数のコンピューティング装置で完了し得るソフトウェアステップであり得ることを理解するであろう。このようなコンピューティング装置は、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されている任意のコンピューティング装置、例えば、コントローラ、スマートフォン、サーバ、またはノートパソコンまたはデスクトップなどの一般的なコンピュータであり得る。第一のステップでは、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されているようなカメラまたは他のセンサ装置などのビデオキャプチャ装置1102は、NPWTで治療される創傷のビデオを収集する。創傷被覆材を通して適用されるNPWTのシナリオでは、ビデオを、被覆材内、被覆材の下、被覆材の上、または任意の適切な位置のセンサからとることができる。
【0262】
次に、所望の長さ1104(例えば10秒間)のビデオクリップが収集され、保存される1104。ビデオクリップは、例えば、約1秒、5秒、10秒、15秒、30秒、60秒、5分、1時間、12時間、24時間、または24時間より長いの任意の適切な長さでありうることが理解される。さらに、特定の実施形態では、ビデオは連続的に送信され、分析のために連続的に処理される。図9に開示した実施形態は、ビデオのクリップまたは連続的に送信されたビデオを用いて実施されうる。いくつかの実施形態では、ビデオは、少なくとも約5フレーム/秒、10フレーム/秒、20フレーム/秒、30フレーム/秒、45フレーム/秒、60フレーム/秒、75フレーム/秒、90フレーム/秒、120フレーム/秒、または120フレームよりもおおき、を含みうる。
【0263】
ビデオが取り込まれると、ビデオ内の各位置/ピクセルの値は、EVM1106で拡大される。こうしたEVMアルゴリズムは、任意の適切なソフトウェア媒体、例えば、MATLABコードの中で実行されうる。可視光スペクトルの標準カメラで撮影されたビデオが関与する実施形態では、EVMアルゴリズムは、画像の色値を増幅する役割を果たし得る。例えば、EVMアルゴリズムは、ビデオ内の赤色値を増幅し得る。上述のように、赤色は特定の組織への血液灌流のインジケータでありうる。ビデオクリップまたは連続的にビデオが処理されると、「治療パラメータ」が決定される。例えば、赤色の変化が関心のある場合、赤色またはデルタ赤の変化は、対象の全ての場所および/または画素に対して決定され、治療パラメータの計算で使用されうる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、以下の手順1110によって計算されうる。まず、対象の領域は、ビデオフレームの特定の領域内で一つまたは複数のピクセルを選択することによって、ビデオフレーム内に設定される。特定の実施形態では、これは、ベースライン色の特定の範囲、および/または組織上の特定の位置の周りで全てのピクセルを選択することによって、ユーザによって設定されうる。実施形態において、領域は、収集される全てのセンサおよび/またはピクセルを使用し得る。
【0264】
次に、領域内のピクセルは、平均化され、フレームあたり領域あたりの平均値を提供する。平均化プロセスは、システムに導入されうる異常値を排除するための洗練された技術を組み込んでもよい。次に、ビデオの各連続フレームで追加データが収集されると、経時的な平均値の配列が生成される。これらの連続フレームから、最も高い値および最も低い値は、例えば、最高および最低の赤値を収集し得る。次に、平均ピーク値は最も高い値に対して計算されてもよく、平均トラフ値は最も低い値から計算され得る。最低平均トラフ値からこの最大平均ピーク値を引くと、単一の値が与えられる。この値は、「治療パラメータ」と呼ばれる単一のパラメータ番号に等しいように、較正1112され得る。以下に記述されるように、「治療パラメータ」は、NPWT装置が陰圧の印加を増加または減少させるべきかどうかを示すために、ルックアップテーブル1116の値と比較することができる。治療パラメータがビデオ内の赤色の変化から決定される場合、より高い治療パラメータは良好な血液灌流を示す傾向があり、一方でより低い治療パラメータは貧弱な血流を示す傾向がある。
【0265】
コントローラによって実施されうる図10Bに図示されるように、特定の実施形態では、高速サンプリングの使用を減少させるために、複数のフレームを組み合わせて、より低いフレームレートで信号を提供することができる。例えば、フレーム1およびフレーム2からの値は、フレーム3およびフレーム4からの値と共に、組み合わせられうる1202。次に、1+2の組み合わせを3+4の値と比較して、治療パラメータの計算における最高と最低の信号の両方を特定し得る。いくつかの実施形態では、組み合わされた値を、例えば、フレーム2および3を組み合わせてフレーム4および5の組み合わせなどと比較するなど、異なる方法1204で計算することができる。各フレーム内の値が組み合わされると、値の変化の振幅は、平均ピーク値から平均トラフ値を減算することによって上述したような類似の方法で計算されうる。治療パラメータは、EVMを経たビデオでの赤値の変化から算出されうる。しかし、さらなる実施形態では、青または緑などの任意の特定の色値を使用し得る。さらに、spO2または赤外線などの、本出願のこのセクション、または本明細書の他の場所で開示されているセンサのいずれかによって生成されるビデオに由来することができる任意の特定の値を使用し得る。
【0266】
図10Aに戻ると、治療パラメータが計算されると、コントローラは治療パラメータ1114をあらかじめ設定された所望の値または範囲と比較し得る。こうした所望の値または範囲は、コントローラまたは臨床医によってあらかじめ設定され得る。こうした所望の値または範囲は、文献から、実験を介して、アルゴリズムを介して、またはその他の適切な手段を介して決定されうる。いずれにしても、所望の値または範囲の使用により、コントローラは、NPWT装置が多少の陰圧を適用するのを指示するために、計算された治療パラメータを所望の値または範囲と比較することができる。実施形態において、治療パラメータが所望の値または範囲より低い場合、コントローラは、創傷での陰圧の量を増やすために、NPWT装置に信号を送信し得る。逆に、治療パラメータが所望の値または範囲よりも高い場合、コントローラは、信号をNPWT装置に送信して、創傷での陰圧の量を減少させうる。計算された治療パラメータが既に所望の値または所望の範囲内である場合、コントローラは信号をNPWT装置に送信しないか、または信号を定常にし得る。特定の実施形態では、ある期間、治療パラメータが望ましくない値または範囲で維持されている場合、警報が生成されうる。
【0267】
特定の実施形態では、治療パラメータ測定値に対する応答は、ソフトウェアが、治療/応答曲線を検証することによって、治療パラメータの変化ごとに、最適な応答を探し得るように、自己最適化されうる。例えば、NPWTの特定の変化が治療パラメータの劇的なシフトをもたらす場合、システムは所望の量にNPWTを変化させるよう調整し得る。例えば、NPWTは、EVM出力の最大差が達成されるまで調整されうる。特定の実施形態では、身体が治療の以前の変化に対して時間がかかることを許容するために、治療の調整の間の遅延を作ることが有利でありうる。
【0268】
いくつかの実施形態では、治療パラメータが所望の値の上またはその値である場合、治療パラメータが、真空を増加させることができるポイントで、所望でないレベルまで減少しないなら、コントローラは、真空設定値を公称-45mmHg(+/-5mmHg)に減少させてもよい。「低い」差異(すなわち、貧弱な血流の場合)では、治療パラメータが所望の値または-125mmHgのいずれか早い方に達するまで、真空は増加し得る。治療パラメータが高すぎる場合は、真空を下げることができる。例えば、(または-45mmHg分)、しかし、治療パラメータが低すぎる場合(すなわち、血流が悪い)場合は、真空を高いレベルまで移動することができ、最大-150mmHgの制限まで増やす。実施形態によっては、真空制限は、特定の生理機能のために調整され得る。実施形態において、真空の下限は、約-600mmHg、-500mmHg、-400mmHg、-300mmHg、-250mmHg、200mmHg、175mmHg、または約-235mmHgで設定されうる。
【0269】
特定の実施形態では、特定のポンプに対して潜在的に調整され、治療パラメータ1114が計算されると、パラメータは、一つまたは複数のコンピューティング装置(コントローラ)内に格納された「ルックアップテーブル」1116内の値と比較されうる。図11Aは、図5A~6Bに関連して本明細書で前述したPico pumpシステムで使用されるルックアップ値の表である。最初のカラムは、ターゲット陰圧または真空の設定値に関連するさまざまな設定を表す。特定の実施形態では、計算された治療パラメータが閾値または所望の値または範囲を下回る場合、ルックアップテーブル内の設定は+1だけ増大される場合があり、そのためコントローラは真空を次の設定によって指示される真空の範囲に増加させる。逆に、治療パラメータが所望の値または範囲を下回る場合、設定は1だけ減少される場合があり、それによってコントローラがNPWT装置を指示して次の低いパラメータ設定に設定を減少させる。このプロセスは、設定1または7に達するまで無期限にサイクルで継続されうる。実施形態において、真空を増加させて治療パラメータを減少させる場合も、このプロセスが起こりうる。
【0270】
実施形態において、装置が既にパラメータ設定7にあり、治療パラメータが範囲未満である場合、NPWT装置は設定7の上にある。逆に、NPWT装置がすでにパラメータ設定1にあり、治療パラメータが所望の範囲またはパラメータを超えている場合、NPWT装置は設定1のままである。特定の実施形態では、ルックアップテーブル設定が増大するときに治療パラメータが減少する場合、設定は前の設定に戻りうる。図11Bは、上記のRENASYS(商標)ポンプのルックアップテーブルの実施形態を提供する。治療パラメータに基づいて真空を調整し、ルックアップテーブルと比較するプロセスは、図11Aのものと実質的に同じでありうる。
【0271】
いくつかの実施形態では、ルックアップテーブルの設定は代わりに式であり得るが、それによって設定値は必須の値だけではなくなるが、代わりに、X値とY軸の公称設定値(および圧力設定値)であり得る。次にパラメータ(X)値は、最適な赤デルタ値に一致するPI、PDまたはPIDループによって設定される。許容可能な赤デルタ値は、(臨床医によって)わずかに修飾されてもよく、有益であるが次善の治療が痛みに対して望まれる、痛み感受性患者に可能である。連続的な高赤値(最小の赤デルタを有する)は、NPWTの最も高いリスクの一つである出血のインジケータであると考えられる。こうした制御システムは、上述のRenasysと関連付けられたソフトウェアシステムなど、ソフトウェアパッケージに統合された痛み管理および出血識別システムに適している場合もある。例えば、出血の特定の場所が拍動性として検出される場合があるが、裂傷から血液が流れ出したら脈拍がなくなるので、色は赤と識別され、パルス速度で変化しない。従って、このようなインジケータは出血として識別され、即時介入の原因としてフラグが立てられるため、npwtのシャットダウンをトリガーして、介入が達成される前の放血を最小限に抑えることができる。
【0272】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンピューティングシステムは、例えば、サーバ、ラップトップコンピュータ、モバイルデバイス(例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント)、キオスク、自動モバイルコンソール、またはメディアプレーヤーなどの一つまたは複数のコンピューティング装置を含みうる。実施形態において、コンピューティング装置は、一つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)を含んでもよく、それぞれが従来型または専有のマイクロプロセッサを含みうる。コンピューティング装置は、情報の一時的な保管のためのランダムアクセスメモリ(RAM)、情報の永久保存のための一つまたは複数の読み取り専用メモリ(ROM)および、ハードドライブ、ディスケット、ソリッドステートドライブ、または光学メディア記憶装置など一つまたは複数のマス記憶装置のなどの一つまたは複数のメモリをさらに含みうる。特定の実施形態では、処理装置、クラウドサーバ、サーバまたはゲートウェイ装置は、コンピューティングシステムとして実装され得る。一実施形態では、コンピューティングシステムのモジュールは、標準ベースのバスシステムを使用してコンピュータに接続される。異なる実施形態において、標準ベースのバスシステムは、例えば、周辺部品相互接続(PCI)、マイクロチャネル、小型コンピュータコンピューティングシステムインターフェース(SCSI)、産業標準アーキテクチャ(ISA)および拡張ISA(EISA)構造で実装されうる。さらに、本明細書に開示されるコンピューティング装置の構成要素およびモジュールで提供される機能は、より少ないコンポーネントおよびモジュールに組み合わせられてもよく、またはさらに追加の構成要素およびモジュールに分離され得る。
【0273】
本明細書に開示されるコンピューティング装置は、オペレーティングシステムソフトウェア、例えば、Ios、Windows XP、Windows Vista、Windows 7、Windows 8、Windows 10、Windowsサーバ、組み込みWindows、Unix、Linux(登録商標)、Ubuntu Linux(登録商標)、SunOS、Solaris、Blackberry OS、Android、またはその他のオペレーティングシステムによって制御および調整され得る。Macintoshシステムでは、オペレーティングシステムは、MAC OS Xなどの任意の利用可能なオペレーティングシステムであり得る。他の実施形態では、コンピューティング装置13000は、専有オペレーティングシステムによって制御され得る。従来のオペレーティングシステムは、実行のためのコンピュータプロセスを制御し、スケジュール化し、メモリ管理を実行し、ファイルシステム、ネットワーク、I/Oサービスを提供し、およびグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などのユーザインターフェースを提供する。
【0274】
本明細書に開示されるコンピューティング装置は、一つまたは複数のI/Oインターフェースおよびデバイス、例えばタッチパッドまたはタッチスクリーンを含むことができるが、キーボード、マウス、およびプリンタも含みうる。一実施形態では、I/Oインターフェース、およびデバイス13110は、ユーザへのデータの視覚的提示を可能にする、一つまたは複数のディスプレイ装置(タッチスクリーンまたはモニタなど)を含む。より具体的には、表示装置は、例えば、GUIS、アプリケーションソフトウェアデータ、およびマルチメディアプレゼンテーションの提示を提供し得る。本明細書に開示されるコンピューティングシステムは、例えば、カメラ、スピーカー、ビデオカード、グラフィックアクセラレーター、およびマイクロフォンなど、一つまたは複数のマルチメディアデバイスも含みうる。
【0275】
一般に、本明細書で使用される場合、「モジュール」という言葉は、ハードウェアまたはファームウェアで具現化されるロジック、または例えば、Python、Java(登録商標)、Lua、Cおよび/またはC++などのプログラミング言語で記述された入り口および出口ポイントを有する、ソフトウェア命令の集合を意味する。ソフトウェアモジュールは、ダイナミックリンクライブラリにインストールされた実行可能プログラムにコンパイルされてリンクされてもよく、または例えば、BASIC、Perl、またはPythonなどの解釈されるプログラミング言語で記述され得る。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールから呼び出すことも、それ自体から呼び出すこともでき、および/または検出されたイベントまたは割込みに応答して呼び出すことができることが理解されよう。コンピューティング装置上で実行するために構成されたソフトウェアモジュールは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュドライブ、または任意の他の有形媒体など、コンピュータ可読媒体上に提供され得る。こうしたソフトウェアコードは、コンピューティング装置によって実行するために、実行コンピューティング装置のメモリデバイス上に、部分的または完全に保存され得る。ソフトウェア命令は、EPROMなどのファームウェアに組み込むことができる。ハードウェアモジュールは、ゲートおよびフリップフロップなどの接続ロジックユニットから成ることができ、および/またはプログラム可能なゲートアレイまたはプロセッサなどのプログラム可能ユニットから成ることがさらに理解されるであろう。本明細書に開示されるブロック図は、モジュールとして実装されうる。本明細書に記述したモジュールは、ソフトウェアモジュールとして実装され得るが、ハードウェアまたはファームウェアで表され得る。一般的に、本明細書に記載されるモジュールは、その他のモジュールと組み合わせられてもよく、または物理的な組織または保存にもかかわらずサブモジュールに分割されうる論理モジュールを意味する。
【0276】
前述のセクションに記載されるプロセス、方法、およびアルゴリズムの各々は、コンピュータハードウェアを含む、一つまたは複数のコンピュータシステムまたはコンピュータプロセッサによって実行されるコードモジュールによって具現化されてもよく、または完全にまたは部分的に自動化され得る。コードモジュールは、ハードドライブ、ソリッドステートメモリ、光ディスク、および/または同種のものなど、任意のタイプの非一時的コンピュータ可読媒体またはコンピュータ記憶装置に保存されうる。システムおよびモジュールは、無線ベースおよび有線/ケーブルベースの媒体を含むさまざまなコンピュータ可読送信媒体上の生成データ信号(例えば、担体波またはその他のアナログまたはデジタル伝播信号の一部として)として送信されてもよく、さまざま形態(例えば、単一または複数のアナログ信号の一部として、または複数のディスクリートデジタルパケットまたはフレームとして)をとってもよい。プロセスおよびアルゴリズムは、アプリケーション固有の回路に部分的または完全に実装され得る。開示されたプロセスおよびプロセスステップの結果は、例えば、揮発性または不揮発性の保存などの任意のタイプの非一時的コンピュータ保存において、持続的に、またはその他の方法で、保存され得る。
【0277】
(あらゆる添付資料、特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示される全ての特徴、および/またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスの全てのステップは、そのような特徴および/またはステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。開示対象は、いかなる前述の実施形態の詳細にも制限されない。開示は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれをも含む)に開示する特徴のいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせ、または同様に開示するいずれの方法もしくは過程のステップのいずれか新規のもの、もしくはいずれか新規の組み合わせに及ぶ。
【0278】
本開示に記載する実装に対するさまざまな変形は、当業者には容易に明らかとなってもよく、本明細書に定義する全体的な原理は、本開示の精神または範囲を逸脱することなく、他の実装に適用され得る。それゆえ、開示は、本明細書に示す実装に限定することは意図していないが、本明細書に記載する原理および特徴と一致する、最も広い範囲が与えられるべきである。開示の特定の実施形態は、以下に列挙する、または後に提示する請求項の組に網羅される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B