(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】バチルス・コアグランス由来の細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/99 20170101AFI20221003BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20221003BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20221003BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221003BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20221003BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221003BHJP
A61K 8/9767 20170101ALI20221003BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221003BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20221003BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20221003BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20221003BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20221003BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221003BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K8/99
A61K35/742
A61Q7/00
A61P17/14
A61P43/00 107
A61P17/08
A61K8/9789
A61K8/9767
A61K8/92
A61K8/23
A61K8/58
A61K8/368
A61K8/49
A61Q5/00
A61Q5/02
(21)【出願番号】P 2019567631
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 US2018035572
(87)【国際公開番号】W WO2018226523
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】MTCC MTCC5856
(73)【特許権者】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム シヴァクマール
(72)【発明者】
【氏名】アリ フルカン
(72)【発明者】
【氏名】マジード シャヒーン
(72)【発明者】
【氏名】ムンドクール ラクシュミ
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-15415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0251511(US,A1)
【文献】特表2016-523104(JP,A)
【文献】特表2003-507437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61K 35/742
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化されたバチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含
み、
バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、ヘアケア組成物。
【請求項2】
ヘアケア成分を含む製剤と組み合わせられる、および/またはこれらに組み込まれることが可能であり、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与されることが可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
哺乳動物における発毛を増加させる
ための、バチルス・コアグランスの菌株由来の細胞外代謝産物調製物を
含む組成物であって、バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、組成物。
【請求項4】
前記発毛の増加が、a)真皮乳頭におけるTGF-β2およびVEGFの発現の増加、およびb)毛包真皮乳頭細胞の増殖の増加によってもたらされる、請求項
3に記載の
組成物。
【請求項5】
前記細胞外代謝産物調製物の
濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、請求項
3に記載の
組成物。
【請求項6】
5α-レダクターゼ活性を阻害する方法であって、毛包真皮乳頭細胞を、バチルス・コアグランスの菌株由来の細胞外代謝産物調製物
を含む組成物と接触させて、前記毛包真皮乳頭細胞において5α-レダクターゼ阻害をもたらすステップを含
み、
バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、方法。
【請求項7】
前記細胞外代謝産物調製物の
濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物におけるアンドロゲン性脱毛症の治療的管理方法
において使用するための、バチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含
む組成物であって、バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、組成物。
【請求項9】
前記組成物が、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され
たものであり、および/またはヘアケア成分を含む製剤に組み込まれ
たものであり、
前記使用が、前記組成物のクリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で
の局所投与
である、請求項
8に記載の
組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記細胞外代謝産物調製物の濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、請求項
8に記載の
組成物。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項
8に記載の
組成物。
【請求項12】
哺乳動物における脂漏性皮膚炎の治療的管理方法
において使用するための、バチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含
む組成物であって、前記使用が、
前記組成物を標準的なフケ防止成分とともに、そのような療法を必要とする哺乳動物
へ投与
することであり、
バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、組成物。
【請求項13】
前記組成物が、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され
たものであり、
前記使用が、前記組成物のクリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で
の局所投与
である、請求項
12に記載の
組成物。
【請求項14】
前記フケ防止成分が、コリウス油、ティーツリー油、チョウジ油、バジル油およびバジル抽出物、ローズマリー油、ニーム抽出物、シダーウッド油、硫化セレン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ケトコナゾール、クリンバゾール、並びにシクロピロックスオラミンからなる群から選択される、請求項
12に記載の
組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記細胞外代謝産物調製物の
濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0%v/vである、請求項
12に記載の
組成物。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項
12に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、2017年6月6日に出願された米国仮特許出願第61516077号から優先権を主張するPCT出願である。
本発明は、一般にヘアケア組成物に関する。より詳細には、本発明は、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、最も急速に成長する人体の組織の1つである。毛包は、成長期(急速な成長、活性期)、退行期(アポトーシス駆動退行、生理学的退縮期)、およびテロゲン(休止期)の3つの段階からなる反復再生サイクルを経る。成長期の短縮により、毛包の矮小化および脱毛がもたらされる可能性がある。したがって、成長期を延長することは、脱毛の予防に効果的な治療である。
【0003】
毛包乳頭細胞の成長および増殖は、毛包の数を増加させ、それによって発毛を促進するために重要である。真皮乳頭細胞は未分化表皮の下に蓄積し、次いで表皮は刺激されて毛「杭」を形成する。毛杭と真皮乳頭細胞との相互作用により、成熟した毛包への分化が促進される。成長期の間、真皮乳頭細胞は、インスリン様成長因子(IGF-1)、毛幹の増殖および伸長を刺激する線維芽細胞成長因子(FGF-7)のようないくつかの成長因子を分泌する。したがって、十分な発毛を確保するには、真皮乳頭が十分な数だけ存在している必要がある。アンドロゲン性脱毛症、脂漏性皮膚炎(フケ)などのある特定の臨床状態は、真皮乳頭の数を減少させ、脱毛を増加させる。TGF-β2は、ヒト真皮乳頭細胞において特異的に発現する。TGF-βは、成人の発毛サイクルにおいて早発性の毛包退縮を誘発することにより、固有の多方向効果を発揮することが示されており、毛包形成(hair folliculogenesis)に必要である。TGF-βの役割は、以下の参考文献に詳しく記載されている:
【0004】
血管内皮成長因子(VEGF)は、血管新生および血管透過性に不可欠であり、成長期成長段階(anagen growth phase)の間、毛包の周りに適切な脈管構造を維持することに関与している。VEGF mRNAは、成長期には真皮乳頭細胞(DPC)において強く発現するが、退行期および休止期の間には、VEGF mRNAは、あまり強く発現しない(Kozlowska et al., Expression of vascular endothelial growth factor (VEGF) in various compartments of the human hair follicle Arch Dermatol Res (1998) 290 :661-668; Yano et al., Control of hair growth and follicle size by VEGF-mediated angiogenesis J Clin Invest. 2001;107(4):409-417)。VEGFとTGF-β2は両方とも、真皮乳頭細胞の増殖を促進し、それにより発毛を増加させる。
【0005】
真皮乳頭は、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換するNADPH依存酵素である5α-レダクターゼ(3-オキソ-5α-ステロイド-デルタ4-デヒドロゲナーゼ)と呼ばれる酵素も生成する。5α-レダクターゼの過剰生成により、毛包でのテストステロンのDHTへの変換が増加し、それにより、自然な毛周期を混乱させ、脱毛およびアンドロゲン性脱毛症の発症をもたらす。
キノコ、緑茶などの天然5α-レダクターゼ阻害剤は、DHTの生成を遅らせ、脱毛を防ぐ。プロバイオティクスが脱毛に関与している皮膚のマイクロバイオームを変えることができるという事実により、ヘアケアにおけるプロバイオティクスの使用が現在注目を集めている。米国特許第7374750号は、ヘアケア用のプロバイオティクス生物を含む組成物を開示している。プロバイオティクスの発毛および毛包真皮乳頭の増加に対する有益な効果は、Levkovich et al. (2013); Probiotic Bacteria Induce a ‘Glow of Health”, PLoS One. 2013; 8(1): e53867によって十分に記載されている。プロバイオティクスおよびそれらの細胞外産物は、優れた抗真菌活性を示し、個別に、またはフケ防止組成物における補助剤として貴重な添加物となっていることも報告されている。
科学技術分野では、プロバイオティクスまたはその製品の生物学的効果が菌株特異的であり、属、種、および菌株間で一般化することができないことは周知である(Probiotics:In Depth/NCCIH、アメリカ合衆国保健福祉省、アメリカ国立衛生研究所)。したがって、5α-レダクターゼを阻害することにより、真皮乳頭細胞の成長を促進し、脱毛を防ぐ優れたプロバイオティクス菌株およびその細胞外産物を見出す必要がある。また、プロバイオティクスから得られた細胞外産物が発毛に及ぼす有益な効果については、まだ検証されていない。本発明は、真皮乳頭増殖に対するバチルス・コアグランスの部分精製細胞外代謝産物調製物の有益な効果を開示することにより、上記の問題を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、発毛を増加させるための、バチルス・コアグランスの部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物を開示することである。
本発明の別の目的は、5α-レダクターゼの活性を阻害するための、バチルス・コアグランスの部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物を開示することである。
本発明のさらに別の目的は、アンドロゲン性脱毛症の治療的管理に使用するための、バチルス・コアグランスの部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物を開示することである。
【0007】
生物材料の寄託
本願において言及されている受託番号MTCC5856の生物材料バチルス・コアグランスの寄託は、2013年9月19日にMicrobial Type Culture Collection & Gene Bank (MTCC)、CSIR-Institute of Microbial Technology、Sector 39-A、 Chandigarh - 160036、Indiaにおいて行われた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バチルス・コアグランスの菌株から単離された部分精製細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア組成物を開示する。より詳細には、本発明は、増殖毛包真皮乳頭細胞の増加および5α-レダクターゼの阻害により発毛を促進するための、バチルス・コアグランスの菌株から単離された細胞外代謝産物を含む組成物の使用を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】対照と比較した、バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物による真皮乳頭細胞増殖の増加百分率のグラフ図である。
【
図1b】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物の存在下での、真皮乳頭細胞の増殖の用量依存的増加を示すグラフ図である。
【
図1c】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物の存在下での、真皮乳頭細胞の増殖の用量依存的増加を示すグラフ図である。
【
図2】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物の存在下での、真皮乳頭細胞におけるTGF-β2の発現の増加百分率のグラフ図である。
【
図3】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物の存在下での、真皮乳頭細胞におけるVEGFの発現の増加百分率のグラフ図である。
【
図4a】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物による5α-レダクターゼの阻害百分率を示すグラフ図である。
【
図4b】バチルス・コアグランスMTCC5856由来の部分精製細胞外代謝産物調製物による5α-レダクターゼ活性の阻害によるジヒドロテストステロン濃度の減少を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最も好ましい実施形態において、本発明は、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化されたバチルス・コアグランス菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア組成物を開示する。関連する実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物は、ヘアケア成分を含む製剤と組み合わせられる、および/またはこれらに組み込まれることが可能である。別の関連する実施形態では、ヘアケア組成物は、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与される。別の実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株は、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される。
【0011】
別の関連する実施形態では、本発明は、哺乳動物における発毛を増加させる方法であって、有効濃度のバチルス・コアグランスの菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を前記哺乳動物に投与して、発毛の増加をもたらすステップを含む、方法に関する。関連する実施形態では、発毛の増加は、a)分泌因子の発現の増加、およびb)毛包真皮乳頭細胞の増殖の増加によってもたらされる。別の関連する実施形態では、分泌因子は、血管内皮成長因子(VEGF)およびトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)からなる群から選択される。別の関連する実施形態では、部分精製細胞外代謝産物調製物の有効濃度は、組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である。別の実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株は、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される。
【0012】
別の好ましい実施形態では、本発明は、5α-レダクターゼ活性を阻害する方法であって、前記毛包真皮乳頭細胞を、有効濃度のバチルス・コアグランスの菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物と接触させて、毛包真皮乳頭細胞において5α-レダクターゼ阻害をもたらすステップを含む、方法に関する。関連する実施形態では、組成物中の部分精製細胞外代謝産物調製物の有効濃度は、組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である。別の実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株は、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される。
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物におけるアンドロゲン性脱毛症の治療的管理方法であって、有効濃度のバチルス・コアグランス菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物を、そのような療法を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法を開示する。関連する実施形態では、組成物は、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され、および/またはヘアケア成分を含む製剤に組み込まれ、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与される。関連する実施形態では、組成物中の部分精製細胞外代謝産物調製物の有効濃度は、組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である。別の実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株は、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される。別の関連する実施形態では、哺乳動物は好ましくはヒトである。
【0013】
別の好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における脂漏性皮膚炎の治療的管理方法であって、有効濃度のバチルス・コアグランス菌株由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含む組成物を、標準的なフケ防止成分とともに、そのような療法を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法を開示する。関連する実施形態では、組成物は、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与される。別の実施形態では、フケ防止成分は、コリウス油、ティーツリー油、チョウジ油、バジル油およびバジル抽出物、ローズマリー油、ニーム抽出物、シダーウッド油、硫化セレン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ケトコナゾール、クリンバゾール、シクロピロックスオラミンからなる群から選択されるが、これらに限定されない。関連する実施形態では、組成物中の部分精製細胞外代謝産物調製物の有効濃度は、組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である。別の実施形態では、バチルス・コアグランスの菌株は、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される。別の関連する実施形態では、哺乳動物は好ましくはヒトである。
【実施例】
【0014】
最も好ましい実施形態を明示する特定の例示的な例は、本明細書において以下に含まれる。
(例1)
真皮乳頭の増殖
細胞外代謝産物の単離
バチルス・コアグランスMTCC5856由来の細胞外代謝産物は、米国特許第9596861号に概説されているステップに従って単離した。この製品は、Sabinsa Corporation、USAからLACTOSPORIN(登録商標)の商標名(INCI:バチルス発酵濾液抽出物)にて市販されている。
【0015】
材料および方法
細胞:真皮乳頭細胞(ヒトHFDPC)はPromocell (Germany)から購入し、加湿5%CO2インキュベーター内で、37℃で線維芽細胞成長培地(Promocell、Germany)にて単層培養物として維持した。真皮乳頭細胞は、10%FBSを補充したDMEMにて培養した。トリプシン処理によりコンフルエントな培養物を採取し、さらに2回継代して増殖させて実験に使用した。培地およびその他の培養成分は48~72時間後に新しくした。すべての細胞培養物を、CO2インキュベーター内で95%空気および5%CO2にて37℃で維持した。
真皮乳頭細胞を、24ウェル透明底マイクロプレートのウェル当たりDMEM中2000細胞の播種密度でアッセイに使用し、CO2インキュベーター内で95%空気および5%CO2にて37℃で24時間インキュベートした。細胞単層を50%(w/v)トリクロロ酢酸で、4℃で1時間固定し、0.4%SRBで30分間染色した。過剰の色素は、1%(v/v)酢酸で繰り返し洗浄することにより除去した。タンパク質結合色素を10mM トリス塩基溶液中に溶解させ、マイクロプレートリーダーを使用して光学密度(OD)を492nmで読み取った。試料の存在下における細胞増殖は、試験試料の非存在下における対照と比較した増殖の百分率として、生存細胞による光学密度の増加に基づいて計算した。
【0016】
結果
結果は、細胞外代謝産物調製物が真皮乳頭細胞の増殖を増加させることを示した(
図1a、
図1bおよび
図1c)。また、細胞外代謝産物調製物は、毛包細胞の成長の成長期を刺激し、ヘアケア化粧品としての可能性を示している。
【0017】
分泌因子の発現
材料および方法
細胞:真皮乳頭細胞(ヒトHFDPC)はPromocell (Germany)から購入し、加湿5%CO2インキュベーター内で、37℃で線維芽細胞成長培地(Promocell、Germany)にて単層培養物として維持した。真皮乳頭細胞は、10%FBSを補充したDMEMにて培養した。トリプシン処理によりコンフルエントな培養物を採取し、さらに2回継代して増殖させて実験に使用した。培地およびその他の培養成分は48~72時間後に新しくした。すべての細胞培養物を、CO2インキュベーター内で95%空気および5%CO2にて37℃で維持した。
真皮乳頭細胞を、96ウェル透明底マイクロプレートのウェル当たりDMEM中5000細胞の播種密度でアッセイに使用し、CO2インキュベーター中で95%空気および5%CO2にて37℃で24時間インキュベートした。培養物上清を収集し、-80℃で保存した後、使用した。TGF-βおよびVEGF-1は、製造元の指示に従って、ELISAキット(ヒトTGF-β2およびヒトVEGFキット用のQuantikine(登録商標)ELISAキット、Krishgen biosystems)を使用して検出した。
【0018】
結果
細胞外代謝産物は、0.5v/v%の濃度でTGF-β2の発現を70.3%増加させたが(
図2)、一方、VEGF発現の30%増加(
図3)が観察され、バチルス・コアグランスMTCC5856由来の細胞外代謝産物は、真皮乳頭の増殖を増加させ、それにより発毛を促進することを示している。
(例2)
5α-レダクターゼ阻害
細胞外代謝産物の単離
バチルス・コアグランスMTCC5856由来の細胞外代謝産物は、米国特許第9596861号に概説されているステップに従って単離した。この製品は、Sabinsa Corporation、USAからLACTOSPORIN(登録商標:バチルス発酵濾液抽出物)の商標名(INCI)にて市販されている。
【0019】
材料および方法
細胞:真皮乳頭細胞(ヒトHFDPC)はPromocell (Germany)から購入し、加湿5%CO2インキュベーター内で、37℃で線維芽細胞成長培地(Promocell、Germany)にて単層培養物として維持した。真皮乳頭細胞(DPC)を、10%FBSを含むDMEM培地にて培養し、96ウェル組織培養プレートに播種した。播種の24時間後、DPCを、テスト試料を加えて/加えずに、50nMのテストステロンで処理し、5%CO2インキュベーター内で、37℃で48時間インキュベートした。48時間後、各ウェルから上清を収集した。処理を施した種々のDPCによって産生された5α-DHTの量を、ELISAを使用して定量し、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで吸光度を測定した。
【0020】
結論
結果は、細胞外代謝産物の調製により、5α-レダクターゼ活性が約16.2%阻害され(
図4a)、インビトロでのジヒドロテストステロンレベル(
図4b)が0.5%であり、アンドロゲン性脱毛症などの臨床状態を治療するための強力な5α-レダクターゼ阻害剤としての可能性を示している。
(例3)
バチルス・コアグランス由来の細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア製剤
表1は、バチルス・コアグランスMTCC5856(バチルス発酵濾液抽出物)由来の部分精製細胞外代謝産物調製物を含むヘアケア製剤の例示的な例を提供する。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
上記の製剤は、単に例示的な例である。前記の目的のために意図された上記の活性成分を含む任意の製剤は、同等とみなされる。
本発明に対する他の改変および変更は、前述の開示および教示から当業者には明らかであろう。したがって、本明細書では本発明のある特定の実施形態のみを具体的に説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書に多数の改変を加えることができることは明らかであろう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化されたバチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含む、ヘアケア組成物。
〔2〕ヘアケア成分を含む製剤と組み合わせられる、および/またはこれらに組み込まれることが可能であり、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与されることが可能である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕哺乳動物における発毛を増加させる方法であって、有効濃度のバチルス・コアグランスの菌株由来の細胞外代謝産物調製物を前記哺乳動物に投与して、発毛の増加をもたらすステップを含む、方法。
〔5〕前記発毛の増加が、a)真皮乳頭におけるTGF-β2およびVEGFの発現の増加、およびb)毛包真皮乳頭細胞の増殖の増加によってもたらされる、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記細胞外代謝産物調製物の有効濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、前記〔4〕に記載の方法。
〔7〕バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される、前記〔4〕に記載の方法。
〔8〕5α-レダクターゼ活性を阻害する方法であって、毛包真皮乳頭細胞を、有効濃度のバチルス・コアグランスの菌株由来の細胞外代謝産物調製物と接触させて、前記毛包真皮乳頭細胞において5α-レダクターゼ阻害をもたらすステップを含む、方法。
〔9〕前記細胞外代謝産物調製物の有効濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される、前記〔8〕に記載の方法。
〔11〕哺乳動物におけるアンドロゲン性脱毛症の治療的管理方法であって、バチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含む有効濃度の組成物を、そのような療法を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
〔12〕前記組成物が、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され、および/またはヘアケア成分を含む製剤に組み込まれ、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与される、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記組成物中の前記細胞外代謝産物調製物の前記有効濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0v/v%である、前記〔11〕に記載の方法。
〔14〕バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される、前記〔11〕に記載の方法。
〔15〕前記哺乳動物が好ましくはヒトである、前記〔11〕に記載の方法。
〔16〕哺乳動物における脂漏性皮膚炎の治療的管理方法であって、有効濃度のバチルス・コアグランス菌株由来の細胞外代謝産物調製物を含む組成物を、標準的なフケ防止成分とともに、そのような療法を必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
〔17〕前記組成物が、薬学的に/機能性化粧品として許容される賦形剤、補助剤、基剤、希釈剤、担体、コンディショニング剤および保存剤と製剤化され、クリーム、ゲル、ローション、シャンプー、美容液、オイル、懸濁液、エマルジョン、およびコンパクトの形態で局所投与される、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記フケ防止成分が、これらに限定されるものではないが、コリウス油、ティーツリー油、チョウジ油、バジル油およびバジル抽出物、ローズマリー油、ニーム抽出物、シダーウッド油、硫化セレン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ケトコナゾール、クリンバゾール、並びにシクロピロックスオラミンからなる群から選択される、前記〔16〕に記載の方法。
〔19〕前記組成物中の前記細胞外代謝産物調製物の前記有効濃度が、前記組成物全体の0.01v/v%~2.0%v/vである、前記〔16〕に記載の方法。
〔20〕バチルス・コアグランスの前記菌株が、バチルス・コアグランスMTCC5856、バチルス・コアグランスATCC31284およびバチルス・コアグランスATCC7050からなる群から選択される、前記〔16〕に記載の方法。
〔21〕前記哺乳動物が好ましくはヒトである、前記〔16〕に記載の方法。