(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】エアブラスト用治具、研掃材の回収装置、及びエアブラスト方法
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20221003BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20221003BHJP
B08B 9/38 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B24C9/00 G
B24C9/00 D
B24C5/04 B
B08B9/38
(21)【出願番号】P 2020014002
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2021-08-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成31年1月31日 刊行物(刊行物名、巻数、号数、該当ページ、発行所/発行元等) 第15回 石油・石油ガス備蓄業務改善活動発表会 プログラム(該当ページ:p.57、発行元:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構) 〔刊行物等〕 開催日 平成31年1月31日 集会名、開催場所 第15回石油・石油ガス備蓄業務改善活動発表会(虎ノ門ニッショーホール(日本消防会館2階))
(73)【特許権者】
【識別番号】520037245
【氏名又は名称】沖縄石油基地株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】喜友名 朝茂
(72)【発明者】
【氏名】城間 太一
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-263671(JP,A)
【文献】特開2000-075095(JP,A)
【文献】特開平05-104442(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1640564(KR,B1)
【文献】特開2003-001563(JP,A)
【文献】特開2016-083651(JP,A)
【文献】特開2007-138561(JP,A)
【文献】実開昭50-021196(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00-11/00
B08B1/00-1/04
B08B5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に固定されるノズル内面のエアブラスト用治具であって、
筒状部、前記筒状部の一端に前記ノズルの一端側と連結される連結部、及び前記筒状部の他端にエアブラスト装置からの研掃材の吐出管が挿入される挿入口、を有する第1治具
と、
前記ノズルの他端側と連結され、第1貫通孔及び第2貫通孔を有する連結部と、通気性を有する素材で構成される第1回収部が接続される第1接続部と、研掃材を吸引して回収する第2回収部が接続される第2接続部と、を有する第2治具と、を備え
、
前記第1貫通孔が前記第1接続部の流路と連通し、前記第2貫通孔が前記第2接続部の流路と連通する、エアブラスト用治具。
【請求項2】
前記挿入口に挿入される前記吐出管からは前記研掃材を含む圧縮空気が吐出される、請求項1に記載のエアブラスト用治具。
【請求項3】
前記第1回収部は、通気性を有する素材で構成され、
前記研掃材を回収する回収袋である、請求項
1又は2に記載のエアブラスト用治具。
【請求項4】
前記第2治具は、前記第1回収部における前記研掃材の回収を抑制する邪魔板を有する、請求項
1~3
のいずれか一項に記載のエアブラスト用治具。
【請求項5】
前記構造物は、タンクの側板又は天板である、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアブラスト用治具。
【請求項6】
前記挿入口はポリマー部材で形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアブラスト用治具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエアブラスト用治具と、前記研掃材を回収する回収部と、を備える、研掃材の回収装置。
【請求項8】
請求項7に記載の研掃材の回収装置を用いて前記ノズル内面をエアブラストするエアブラスト方法であって、
前記挿入口に前記吐出管を挿入してエアブラストを行う工程と、
前記吐出管から吐出された研掃材を前記回収部で回収する工程と、を有する、エアブラスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアブラスト用治具、研掃材の回収装置、及びエアブラスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場では、種々の流体を搬送する流路が管体等で構成される。例えば、浮き屋根式タンクの屋根板上の雨水はルーフドレン等の管体で搬送され排水される(例えば、特許文献1参照)。このような管体の内部には、経時的に汚れの付着及び腐食が進行する。このため、定期的に開放し、メンテナンスの要否を確認する必要がある。このような確認作業では、エアブラストが用いられる場合がある。例えば、特許文献2では、傾斜する水圧鉄管内に、サンドブラスト機のノズルを持ち込んで、内壁に砂を噴射させて汚れなどの付着物を研掃する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-136399号公報
【文献】特開2007-30082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物に固定されているノズルは、通常取り外しが困難である。このようなノズル内を腐食物質が流通する場合、定期的に開放して検査を行う必要がある。この検査の際には、ノズルの内面に付着する付着物を除去するため、エアブラストで研掃する作業が必要となる。ここで、取り外し又は分解が容易なノズルであれば、密閉空間に持ち込んでサンドブラストを行うことが可能であるが、構造物に固定されているノズルの内部を研掃する場合、ノズルが構造物に固定されている状態でエアブラストを行う必要がある。このようなエアブラスト作業では、作業現場に大量の研掃材(例えば、珪砂)が放出され、作業環境が悪化する。このため、他の作業を並行して行うことができず、工期が長くなることが懸念される。
【0005】
そこで、本開示では、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置を提供する。また、本開示では、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るエアブラスト用治具は、構造物に固定されるノズル内面のエアブラスト用治具であって、筒状部、筒状部の一端にノズルの一端側と連結される連結部、及び筒状部の他端にエアブラスト装置からの研掃材の吐出管が挿入される挿入口、を有する第1治具を備える。
【0007】
上記エアブラスト用治具は、構造物に固定されているノズルのエアブラストに用いられるものである。上記エアブラスト用治具は、筒状部と、研掃材の吐出管が挿入される挿入口と、ノズルの一端側と連結される連結部とを有することから、エアブラスト用治具及びこれとノズルの間から研掃材が外部に流出することを抑制することができる。したがって、上記エアブラスト用治具を用いることによって、構造物に固定された状態のままでエアブラストを行っても、作業現場に研掃材が流出することが抑制され、作業環境を改善することができる。
【0008】
上記エアブラスト用治具は、上記第1治具と、ノズルの他端側と連結される連結部、及び研掃材を回収する回収部が接続される接続部、を有する第2治具と、を備えていてよい。
【0009】
上記エアブラスト用治具は、ノズルの一端側に第1治具が連結され、ノズルの他端側に第2治具が連結されることから、ノズルの内部空間を閉鎖空間にすることができる。第1治具は研掃材の吐出管が挿入される挿入口を有し、第2治具は研掃材を回収する回収部が接続される接続部を有することから、研掃材が閉鎖空間の外部に流出することが抑制される。したがって、上記エアブラスト用治具を用いることによって、構造物に固定された状態のままでエアブラストを行っても、作業現場に研掃材が流出することが抑制され、作業環境を改善することができる。
【0010】
回収部は、通気性を有する素材で構成される第1回収部と、研掃材を吸引して回収する第2回収部と、を有することが好ましい。第1回収部は通気性を有する素材で構成されることから、第2吸収部による圧縮空気の吸引量よりもエアブラスト装置からの研掃材を含む圧縮空気の吐出量の方が多くても、第1回収部から余剰の圧縮空気を放出できるため、閉鎖空間の圧力が上昇することを抑制できる。第2回収部は研掃材を吸引して回収することから、ノズル内部に研掃材が滞留することを抑制できる。したがって、ノズル内面のエアブラストを円滑に行うことができる。
【0011】
第2治具は、第1回収部における研掃材の回収を抑制する邪魔板を有することが好ましい。これによって、第1回収部を構成する通気性を有する素材の通気量を維持するとともに、第2回収部において研掃材を効率よく回収することができる。
【0012】
ノズルが固定される上記構造物は、タンクの側板又は天板であってよい。タンクの側板又は天板に固定されたノズルの一端は、タンクの内部に設けられる。このため、上述のエアブラスト用治具を用いることによって、ノズル内面のエアブラストを行う際に、タンクの内部に研掃材が流出することが抑制される。これによって、タンク内の作業環境が改善され、エアブラストとは別の作業を並行して行うことが可能となる。したがって、タンクの開放期間を短くして機会損失及びメンテナンス費用を低減することができる。
【0013】
第1治具における挿入口はポリマー部材で形成されることが好ましい。これによって、挿入口に挿入される、エアブラスト装置からの研掃材の吐出管との密着性を向上し、研掃材が吐出管と挿入口との隙間から流出することを十分に抑制できる。
【0014】
本開示の一側面に係る研掃材の回収装置は、上述のいずれかのエアブラスト用治具と、研掃材を回収する回収部と、を備える。このような研掃材の回収装置は、上述のエアブラスト用治具を備えることから、作業現場に研掃材が流出することが抑制され、作業環境を改善することができる。
【0015】
研掃材の回収装置は、構造物に固定されるノズル内面をエアブラストする際の研掃材の回収装置であって、ノズルの一端側に接続され、筒状部、筒状部の一端にノズルの一端側と連結される連結部、及び筒状部の他端にエアブラスト装置からの研掃材の吐出管が挿入される挿入口、を有する第1治具と、ノズルの他端側に接続され、研掃材を回収する回収部と、を備えるものであってよい。
【0016】
上記回収装置は、ノズルの一端側に第1治具が連結され、ノズルの他端側に回収部が連結されることから、ノズルの内部空間を閉鎖空間にすることができる。このため、ノズルの一端側の治具の挿入口から挿入されたエアブラスト装置からの研掃材は、ノズルの他端側に接続された回収部で回収することができる。このため、研掃材が閉鎖空間の外部に流出することが抑制される。このような研掃材の回収装置は、作業現場に研掃材を流出することを抑制し、作業環境を改善することができる。
【0017】
本開示の一側面に係るエアブラスト方法は、上述のいずれかの研掃材の回収装置を用いてノズル内面をエアブラストする方法であって、挿入口に吐出管を挿入してエアブラストを行う工程と、吐出管から吐出された砂を回収部で回収する工程と、を有する。このエアブラスト方法は、上述のいずれかの研掃材の回収装置を用いることから、エアブラストの作業中に、作業現場に研掃材が流出することが抑制され、作業環境を改善することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置を提供することができる。また、本開示では、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、エアブラスト用治具の第1治具の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、エアブラスト用治具の第2治具の一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、研掃材の回収装置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、エアブラスト方法によって内面が研掃されるノズルを備えるタンクの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
一実施形態に係るエアブラスト用治具は、構造物に固定され、両端にフランジを有するノズル内面のエアブラストに用いられる。このエアブラスト用治具は、ノズルの一端側に連結される第1治具と、ノズルの他端側に連結される第2治具と、を備える。第1治具は、筒状部と、筒状部の一端側にノズルの一方のフランジと連結される連結部と、筒状部の他端側にエアブラスト装置からの研掃材の吐出管が挿入される挿入口と、を有する。第2治具は、ノズルの他方のフランジと連結される連結部と、研掃材を回収する回収部が接続される接続部と、を有する。
【0022】
図1は、エアブラスト用治具の第1治具の一例を示す斜視図である。
図1の第1治具10は、筒状部14と、筒状部14の一端側に連結部12と、筒状部14の他端側にリング形状を有するカバー部13と、を有する。連結部12は、筒状部14の一端と溶接等によって接合されていてよい。カバー部13は、筒状部14の他端と溶接等によって接合されていてもよい。連結部12は例えばフランジで構成されていてよい。すなわち、第1治具10とエアブラストで内面が研掃されるノズルは連結部12によってフランジ結合されてよい。このようにして外部への研掃材の流出を抑制することができる。
【0023】
カバー部13の中央部には、挿入口18を構成する円形の貫通孔を有するポリマー部材16が取り付けられている。ポリマー部材16の貫通孔は、カバー部13の貫通孔17よりも一回り小さく且つ貫通孔17と同心円状に設けられている。これによって、挿入口18の内縁はポリマー部材16で構成されている。ポリマー部材16によって形成される挿入口18には、エアブラスト装置から研掃材が吐出される吐出管が挿入される。挿入口18がポリマー部材で形成されることによって、挿入口18に挿入される吐出管と挿入口18との密着性を向上し、研掃材が吐出管と挿入口18との隙間から流出することを十分に抑制できる。挿入口18の内径は、例えば10~50mmであってよい。貫通孔17の内径は、挿入口18の内径の1.2~3倍であってよく、1.5~2倍であってもよい。ポリマー部材16は、吐出管との密着性向上の観点から、ゴム等の弾性材料で構成されることが好ましい。
【0024】
筒状部14の内径は、エアブラストで研掃されるノズルの内径の0.7~1.5倍であってよく、0.8~1.3倍であってもよい。これによって、吐出口から吐出される研掃材をノズルの内面に高い精度で衝突させることができる。筒状部14の内径は、例えば、50~800mmであってよく、60~500mmであってもよい。筒状部14の長さは、例えば50~500mmであってよく、100~400mmであってもよい。筒状部14の内径及び長さは、ノズルの内径及びエアブラスト装置の吐出能力に応じて調整してよい。筒状部14は、例えば2つ以上の管体を溶接等で連結して長さを調整することができる。第1治具10の筒状部14は、内径が異なる2つの管体を溶接したものであるが、一つの管体で構成されてよく、3つ以上の管体を溶接して構成されてもよい。第1治具10は、管体及びフランジ等の廃材等を用いて作製してもよい。
【0025】
図2は、エアブラスト用治具の第2治具の一例を示す側面図であり、
図3は、
図2の第2治具の内面側を示す図である。第2治具20は、ノズルの他方のフランジと連結される連結部22と、通気性を有する素材で構成される第1回収部が接続される第1接続部24aと、研掃材を吸引して回収する第2回収部が接続される第2接続部26aと、を有する。連結部22は例えばフランジで構成されていてよい。すなわち、第2治具20とノズルは連結部22によってフランジ結合されてよい。これによって、外部への研掃材の流出を抑制することができる。
【0026】
第1接続部24aは、直管状の継ぎ手部とその先端に開閉可能なバルブ24vとを有する。第2接続部26aは、継ぎ手部とその先端にエルボ型の継ぎ手とを有する。連結部22と第1接続部24a及び第2接続部26aは溶接等で接合されていてよい。第1接続部24a及び第2接続部26aの構造は、図示の形状に限定されず、第1回収部及び第2回収部が接続可能な構造であればよい。例えば、第1接合部24a及び第2接続部26aは、直管状の継ぎ手部のみで構成されていてもよい。
【0027】
第2治具20の連結部22には2つの貫通孔24b,26bが形成されている。貫通孔24bは第1接続部24aの流路と連通し、貫通孔26bは第2接続部26aの流路と連通している。貫通孔24bは邪魔板27で覆われている。ただし、邪魔板27は、連結部22とは一対の支持部材25a,25bを介して接続されているため、貫通孔24bを塞いでいない。第2治具20は邪魔板27を有することによって、研掃材の第1回収部24への回収を抑制し、第2回収部26による回収を促進する機能を有する。邪魔板27を支持する支持部材25aと25bの間には間隙Sがあるため、圧縮空気は間隙Sを流通可能である。したがって、ノズル30内の圧縮空気は、間隙S及び第1接続部24aを経由して第1回収部に流入可能である。
【0028】
本実施形態のエアブラスト用治具は、一例として、
図1に示す第1治具10と、
図2及び
図3に示す第2治具20とを備える。第1治具10は、連結部12によって、エアブラストで研掃されるノズルの一端とフランジ結合される。第2治具20は、連結部22によって、当該ノズルの他端とフランジ結合される。第1治具10と第2治具20をノズルの両端にそれぞれ取り付けた状態で、ノズル内面のエアブラストを行えば、外部に研掃材が流出することが抑制される。これによって、作業環境を改善することができる。
【0029】
図4は、研掃材の回収装置の一例を示す図である。研掃材の回収装置100は、内面34がエアブラストで研掃されるノズル30の両端にそれぞれ連結される第1治具10及び第2治具20を有するエアブラスト用治具70と、第2治具20に取り付けられる、第1回収部24及び第2回収部26を備える。第1治具10は、ノズル30の一端側のフランジ31と連結され、第2治具20は、ノズル30の他端側のフランジ32と連結される。
【0030】
ノズル30は、構造物50に溶接によって固定されている。このため、構造物50に固定された状態で内面34のエアブラストを行う必要がある。構造物50は、例えばタンク又は容器等の側板、天板又は底板等であってよい。ノズル30の内径は、例えば、50~800mmであってよく、60~500mmであってもよい。ノズル30の長さは、例えば200~1000mmであってよく、300~800mmであってもよい。なお、内面が研掃されるノズルは、直管状のものに限定されず、例えばエルボ型のものであってもよい。
【0031】
第1治具10の連結部12はノズル30のフランジ31とフランジ結合されている。第1治具10の挿入口18には、エアブラスト装置の吐出管40が挿入される。エアブラスト装置は、通常の市販品を用いることができる。研掃材としては、エアブラストに用いられる種々のメディアを用いることが可能である。例えば、金属系及び非金属系のものが挙げられ、アルミナ粒子、スチールショット、スチール、ステンレスビーズ、ガラスビーズ、及び珪砂等が挙げられる。エアブラスト装置は、サンドブラスト装置と称されるものであってもよい。
【0032】
挿入口18から挿入された吐出管40から吐出される研掃材42は、ノズル30の内面に衝突する。
図4では、説明のため、吐出管40の吐出口付近のみに研掃材42が描かれているが、実際は、研掃材42は、ノズル30の内部全体に拡散する。これによって、ノズル30の内面34に付着する汚れ及び錆等の付着物が除去される。ノズル30の内面34の全体に対して研掃材が衝突するようにするため、第1治具10の筒状部14の長さを調節してもよいし、吐出管40の挿入長さを調節してもよい。
【0033】
研掃材の吐出する際の吐出角度の調整の自由度を確保する観点から、吐出管40の挿入長さは、第1治具10の筒状部14の長さの80%未満であることが好ましく、70%未満であることがより好ましい。一方、エアブラストの作業中に、吐出管40が挿入口18から外れることを十分に抑制する観点から、吐出管40の挿入長さは、第1治具10の筒状部14の長さの30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。なお、筒状部14の内径及び長さが異なる複数の第1治具10を準備しておき、ノズル30の内径及び長さに応じて、最適な第1治具10を選択してもよい。
【0034】
第2治具20の第1接続部24aには、第1回収部24として通気性を有する回収袋が接続される。回収袋は、通気性を確保しつつ研掃材を回収することができる。第2治具20の第2接続部26aには、第2回収部26として、第2接続部26a側から、集塵機23及び吸引機28がこの順で接続される。第2接続部26aと集塵機23、及び、集塵機23と吸引機28は、それぞれ、ホース29a及びホース29bを介して接続される。これによって、吸引機28が圧縮空気を吸引すれば、ノズル30の内部から吸引された圧縮空気は第2接続部26a、ホース29a、集塵機23及びホース29bをこの順で流通して吸引機28内に流入する。
【0035】
第1回収部24である回収袋は、例えば、市販のポリエチレン製又は麻製の袋(土嚢袋)等であってよい。集塵機23は、例えば、市販のサイクロン等であってよい。集塵機23で例えば遠心力によって圧縮空気から分離された研掃材44は、収容容器21に回収される。収容容器21に回収された研掃材は再利用してもよい。吸引機28は、例えば、市販の掃除機であってもよい。
【0036】
吐出管40から吐出された研掃材の大部分は、ノズル30の内面に衝突した後、吸引機28による吸引力によって、第2回収部26の収容容器21に回収される。このように第2回収部26を備えることによって、ノズル30の内部に研掃材が滞留することを抑制できる。一方、第1回収部24では、圧縮空気を通過させつつも、圧縮空気に同伴する少量の研掃材が回収される。第1回収部24として用いられる回収袋が研掃材で満たされたら、回収袋を交換するためにエアブラスト作業を中断する必要がある。しかしながら、本例では、研掃材の大部分が第2回収部26で回収されるため、回収袋の交換頻度を低減することができる。したがって、長時間連続してエアブラスト作業を行うことできる。
【0037】
研掃材の回収装置100は、通気性を有する第1回収部24を備えるため、エアブラスト装置の吐出管40からの圧縮空気の供給量が、吸引機28による圧縮空気の吸引量より大きくても、円滑に研掃材を回収することができる。邪魔板27は、第1回収部24に回収される研掃材の量を低減し、研掃材の第2回収部26への回収を促進する作用を有する。
【0038】
研掃材の回収装置100によれば、ノズル30の内面のエアブラストを行う際に、研掃材が外部に流出すること抑制できる。例えば構造物50がタンクである場合、ノズル30の内面のエアブラストを行うと、従来はタンクの内部(
図4中の構造物50の右側)に研掃材が充満し、その間にタンクの内部で他の作業を並行して行うことができなかった。このため、ノズル30の内面のエアブラスト作業が、タンクのメンテナンスの工期が長期化する要因となっていた。一方、第1治具10、第2治具20、第1回収部24及び第2回収部26を備える研掃材の回収装置100を用いることによって、タンクの内部に研掃材が流出することを抑制できる。これによって、タンクの内部の作業環境が改善されるため、タンクの内部で他の作業を並行して行うことができる。また、研掃材の回収及び清掃の効率化を図ることができる。したがって、タンクのメンテナンスの工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0039】
一実施形態に係るエアブラスト方法は、例えば、
図4の研掃材の回収装置100を用いて行うことができる。このエアブラスト方法を行う場合、必要に応じて、構造物50の開放作業を行う。続いて、以下の準備工程を行う。まず、ノズル30の両端のフランジ31,32に連結されている配管等を取り外す。その後、第1治具10の連結部12と、ノズル30のフランジ31とを接続する。これと同様にして、第2治具20の連結部22とノズル30のフランジ32とを接続する。第2治具20の第1接続部24aの先端に第1回収部24(例えば、土嚢袋)を取り付け、第2接続部26aの先端に第2回収部26を取り付ける。第2回収部26は、ホース29a、集塵機23、ホース29b及び吸引機28を、この順に連結して作製される。集塵機23の下方には、研掃材44を回収する収容容器21を配置する。
【0040】
上述の準備工程後、挿入口18に吐出管40を挿入してエアブラストを行う工程と、吐出管から吐出された研掃材を第1回収部24及び第2回収部26で回収する工程と、を行う。このエアブラスト方法によれば、研掃材の流出を抑制し、作業環境を改善することができる。回収する工程の際に、第1回収部24の回収袋が満量となった場合は、バルブ24vを閉止して回収袋を交換してもよい。このように第1回収部24がバルブ24vを備えることによって、回収袋を交換する際にもエアブラストを継続して行うことができる。
【0041】
エアブラストを行う工程及び研掃材を回収する工程の終了後、第1治具10及び第2治具20を、ノズル30から取り外して、補修及び防蝕作業を行う。
【0042】
図5は、本実施形態のエアブラスト方法によって内面が研掃されるノズルを備えるタンクの一例を示す図である。
図5に示されるタンク200は、浮き屋根式屋外貯蔵タンク(フローティングルーフタンク)であり、側板51、底板55及び浮き屋根60(天板)で区画される領域内に、原油、燃料油、又は化学品等の流体を貯蔵する。浮き屋根60の外周部にはポンツーンと称される浮き室61が設けられている。流体を貯蔵している際には、浮き屋根60は、流体上に浮いているため、流体の蒸発によるロスを低減することができる。
【0043】
浮き屋根60は、雨水が集められるドレーンボックス62(センターサンプであってもよい)を有する。ドレーンボックス62に集められた雨水は、流入管64から流入してルーフドレン65を流通し、導出管68より外部に排出される。このような浮き屋根60から雨水を排出する流路の一部は、構造物である側板51及び浮き屋根60(ドレーンボックス62)に固定されるノズル30,30Aで構成される。このようなノズル30,30Aは、溶接等で構造物である側板51及び浮き屋根60に固定されているため取り外しが容易ではない一方で、雨水が流通するため内面が腐食しやすい。
【0044】
このため、タンク200の定期開放の際に、ノズル30,30A内面に、本実施形態に係るエアブラスト用治具を用いてエアブラストを行えば、ノズル30,30Aの補修及び防蝕作業を簡便に行うことができる。また、タンク200の内部に研掃材が充満して作業環境が悪化することを抑制することができる。したがって、ノズル30,30Aのエアブラストと、タンク200の内部検査を並行して行うことが可能となり、タンク200の開放期間を短縮することができる。
【0045】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。すなわち、エアブラスト用治具、研掃材の回収装置及びエアブラスト方法は上述の実施形態に限定されない。例えば、研掃材の回収装置100及び第2治具20は、複数の回収部を有していたが、別の実施形態では、回収部、及び回収部に接続される接続部は一つであってよい。この場合、回収部は、上述の第1回収部24のみであってもよいし、第2回収部26のみであってもよい。このように、第1回収部24又は第2回収部26のみであっても、吐出管から吐出される研掃材を回収することによって作業環境を改善することができる。また、邪魔板27は、図示の構造に限定されず適宜変更してよい。また、邪魔板27を備えていなくてもよい。
【0046】
別の実施形態に係るエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置は、ノズル30の一端側に接続される第1治具10と、ノズル30の他端側に接続され、研掃材を回収する回収部24とを備える。すなわち、この研掃材の回収装置は、第2治具20を介さずに、回収部24がノズル30の他端に直接接続されている点で、上述の研掃材の回収装置100と異なる。回収部24は、上記実施形態において第1回収部24と同様であり、例えば通気性を有する回収袋等を用いることができる。このようなエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置でも、構造物50に固定されているノズル30のエアブラストを行う際の作業環境を改善することができる。上記実施形態の説明内容は、この実施形態にも適宜適用できる。また、このエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置を用いて、挿入口18に吐出管40を挿入してエアブラストを行う工程と、吐出管40から吐出された研掃材42を回収部24で回収する工程と、を有するエアブラスト方法を行ってもよい。
【0047】
いずれの実施形態においても、ノズルが固定される構造物は、タンクの側板及び浮き屋根60に限定されず、その他の各種装置及び貯留槽であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示によれば、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト用治具及び研掃材の回収装置を提供することができる。また、本開示では、構造物に固定されているノズルのエアブラストを行う際の作業環境を改善することが可能なエアブラスト方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…第1治具、12…連結部、13…カバー部、14…筒状部、16…ポリマー部材、17…貫通孔、18…挿入口、20…第2治具、21…収容容器、22…連結部、23…集塵機、24…第1回収部(回収部)、24a…第1接続部(接続部)、24v…バルブ、26…第2回収部(回収部)、26a…第2接続部(接続部)、24b,26b…貫通孔、25a,25b…支持部材、27…邪魔板、28…吸引機、29a,29b…ホース、30,30A…ノズル、31,32…フランジ、34…内面、40…吐出管、42,44…研掃材、50…構造物、51…側板、55…底板、60…浮き屋根、61…浮き室、62…ドレーンボックス、64…流入管、65…ルーフドレン、68…導出管、70…エアブラスト用治具、100…回収装置、200…タンク。