(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20221003BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20221003BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B1/94 L
F16L5/04
H02G3/22
(21)【出願番号】P 2020098010
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-23
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀康
(72)【発明者】
【氏名】廣野 明津
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066851(JP,A)
【文献】特開2009-046964(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125838(WO,A1)
【文献】特開2011-052448(JP,A)
【文献】特開2007-312599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
F16L 5/04
H02G 3/22
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の仕切り部である壁面に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
前記仕切り部である壁面に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材と、
前記挿通体に一周以上巻き付けて配置されるテープ状部材とを備え、
前記シート状部材は、前記挿通体及び前記仕切り部の外面に接し、
かつ外部から視認可能なタッカー及びビスのいずれかの固定部材によって前記仕切り部の外面に固定され、
前記テープ状部材は、前記仕切り部に対して、前記シート状部材よりもさらに外側に配置され、前記テープ状部材の少なくとも一部が前記シート状部材と接し、
前記シート状部材と前記挿通体の間の隙間を塞ぎ、
前記シート状部材及び前記テープ状部材の両方が、耐火材層を有し、
前記耐火材層は、熱膨張性黒鉛を含む熱膨張性部材であ
り、
前記テープ状部材が、外周側から巻かれた紐状部材によって前記挿通体に固定され、
前記テープ状部材と前記シート状部材とを備える、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材が前記仕切り部である壁面の両側に設けられ、
前記区画貫通部の内部に、前記区画貫通処理材を構成する部材が設けられていない、区画貫通処理構造。
【請求項2】
前記シート状部材及び前記テープ状部材が、外部から視認可能である請求項1に記載の区画貫通処理構造。
【請求項3】
前記区画貫通部の内部に挿通体以外に、何も設けられない
、請求項1
又は2に記載の区画貫通処理構造。
【請求項4】
前記シート状部材が、前記仕切り部の外側から前記間隙を覆うように配置される請求項1~
3のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項5】
前記シート状部材及びテープ状部材の少なくともいずれかが不燃材料層と前記耐火材層とを有する多層構造を備え、前記不燃材料層がアルミガラスクロスである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
【請求項6】
建築物の仕切り部である壁面に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
前記仕切り部である壁面に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐようにシート状部材を設置する工程と、
前記挿通体に一周以上テープ状部材を巻き付ける工程とを備え、
前記シート状部材は、前記挿通体及び前記仕切り部の外面に接し、
かつ外部から視認可能なタッカー及びビスのいずれかの固定部材によって前記仕切り部の外面に固定され、
前記テープ状部材は、前記仕切り部に対して、前記シート状部材よりもさらに外側に配置され、前記テープ状部材の少なくとも一部が前記シート状部材と接し、
前記シート状部材と前記挿通体の間の隙間を塞ぎ、
前記シート状部材及び前記テープ状部材の両方が、耐火材層を有し、
前記耐火材層は、熱膨張性黒鉛を含む熱膨張性部材であ
り、
前記テープ状部材が、外周側から巻かれた紐状部材によって前記挿通体に固定され、
前記テープ状部材と前記シート状部材とを備える、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材が前記仕切り部である壁面の両側に設けられ、
前記区画貫通部の内部に、前記区画貫通処理材を構成する部材が設けられていない、区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(防火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
【0003】
区画貫通部を防火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と貫通孔の間隙に、耐火パテや、耐火パテを袋体内部に詰めた耐火パックなどを充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の貫通孔内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6150933号公報
【文献】特許第6348320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、区画貫通部の防火処理に不定形充填材を使用した場合、作業者によるバラつきがあり、十分な防火性能が得られないことがある。また、躯体内に耐火材及びその付属品等を設置する場合、それらがどの程度(量や厚み、長さ等)設置されているか明確でなかったり、規定通りに設置されているか判断できなかったりすることがある。そのため、規定通りに耐火材などが設置されているか否かを確認するためには、区画貫通処理構造を破壊して、内部構造を確認する必要がある。
【0006】
また作業者によるバラつきを低減するため、あらかじめ決められた量、及び大きさの部材が一体化されたキットがあったが、部材点数が多い傾向があり、部材紛失や設置し忘れが生じやすく、また、キットごとの梱包のため、発生するゴミが多いという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、防火性能のバラつきを低減し、かつ区画貫通処理材が規定通りに設置されていることを簡単に確認できる、区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材と、
前記挿通体に一周以上巻き付けて配置されるテープ状部材とを備え、
前記シート状部材及びテープ状部材の少なくともいずれかが耐火材を有する、区画貫通処理構造。
[2]前記シート状部材及びテープ状部材が、外部から視認可能である上記[1]に記載の区画貫通処理構造。
[3]前記区画貫通部の内部に、前記テープ状部材及び前記シート状部材の少なくともいずれかに連結した、耐火材及び付属品の少なくともが一方が配置される上記[1]又は[2]に記載の区画貫通処理構造。
[4]前記区画貫通部の内部に挿通体以外に、何も設けられず、また前記シート状部材及び前記テープ状以外の部材が単独で設けられない、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[5]前記テープ状部材が、内周側に配置された粘着剤層又は耐火材層、及び、外周側から巻かれた紐状部材又は粘着テープの少なくともいずれかによって前記挿通体に固定される、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[6]前記テープ状部材と前記シート状部材を備える区画貫通処理材が前記仕切り部の両側に設けられる上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[7]前記シート状部材が、前記挿通体及び仕切り部に接する、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[8]前記シート状部材が、前記仕切り部の外側から前記間隙を覆うように配置される上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[9]前記シート状部材が、スリーブ状にされて前記開口と前記挿通体との間の間隙に挿入される上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
[10]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするために用いる区画貫通処理材であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材と、
前記挿通体に一周以上巻き付けて配置されるテープ状部材とを備え、
前記シート状部材及びテープ状部材の少なくともいずれかが耐火材を有する、区画貫通処理材。
[11]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐようにシート状部材を設置する工程と、
前記挿通体に一周以上テープ状部材を巻き付ける工程とを備え、
前記シート状部材及びテープ状部材の少なくともいずれかが耐火材を有する、区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防火性能のバラつきを低減し、かつ区画貫通処理材が規定通りに設置されていることを簡単に確認できる、区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す斜視図である。
【
図7】第2の実施形態におけるシート状部材の変形例を示す斜視図である。
【
図8】第2の実施形態に係る区画貫通処理構造の変形例を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る区画貫通処理構造の別の変形例を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る区画貫通処理構造の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の管遮蔽構造について実施形態を用いてより詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造10を示す断面図である。区画貫通処理構造10は、建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とするためのものである。挿通体21は、ケーブル類、配管類などであるが、
図1では配管21Aとケーブル21Bの両方が挿通される態様を示す。
【0012】
仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。本実施形態における仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。なお、外面11A、11Bそれぞれにおいて貫通孔13A、13Bは、仕切り部11に設けられた区画貫通部15の開口13C,13Dを構成する。
【0013】
なお、本明細書において、区画貫通部15に施工され、区画貫通処理構造10を形成するための部材(本実施形態では、シート状部材18、テープ状部材19、およびこれらを固定するための固定部材など)を纏めて区画貫通処理材ということがある。
また、以下では、仕切り部13の一方の開口13C側における区画貫通処理構造の構成について説明するが、本実施形態では、他方の開口13D側における区画貫通処理構造の構成も同様であるのでその説明は省略する。
【0014】
区画貫通処理構造10は、区画貫通処理材として、シート状部材18と、テープ状部材19を備え、テープ状部材19及びシート状部材18のいずれか一方が、後述するとおりに耐火材を有する。
【0015】
シート状部材18は、
図2に示すように、挿通体21が内部に挿通されるための孔18Aと、孔18Aからシート状部材18の外縁まで延在するスリット18Bとを有する。スリット18Bは、切込みにより形成される。シート状部材18は、スリット18Bを介して、挿通体21を孔18Aの内部に挿入させることが可能である。
孔18Aの内部に挿通体21が挿入されたシート状部材18は、仕切り部11の外側から、開口13Cと挿通体21の間の間隙13Eを覆うように、外面11A上に配置され、それにより、間隙13Eがシート状部材18により塞がれる。シート状部材18は、仕切り部11の外面11A及び挿通体21の外周の両方に接するように配置される。
【0016】
シート状部材18は、シート状部材18に設けられる粘着剤層又は耐火材層などによって仕切り部11の外面11Aに固定されてもよいし、タッカー、ビスなどのシート状部材18とは別部材である固定部材によって仕切り部11の外面11Aに固定されるとよい。もちろん、これらの2以上の組み合わせにより、シート状部材18は、仕切り部11に固定されてもよい。
【0017】
テープ状部材19は、
図1、3に示すように、仕切り部11に対して、シート状部材18よりもさらに外側に配置される。そして、テープ状部材19は、挿通体21の外周に一周以上巻き付けられている。これにより、テープ状部材19は、その端面19Aによりシート状部材18と挿通体21の間を覆うように配置されることになる。
以上の構成により、シート状部材18と挿通体21の間には、隙間が設けられることがあるが、そのような隙間はテープ状部材19により塞がれる。そのため、区画貫通部15の開口13Cと、挿通体21の間の隙間13Eは、その全体が、シート状部材18及びテープ状部材19により塞がれることになる。
【0018】
シート状部材18は、不燃材料層及び耐火材層の少なくともいずれかを有する。同様に、テープ状部材19は、不燃材料層及び耐火材層の少なくともいずれかを有する。ただし、シート状部材18及びテープ状部材19は、いずれか一方が耐火材層(耐火材)を有する。これにより、区画貫通処理構造10は、防火性能を確保でできる。また、防火性能の確保の観点からは、少なくともシート状部材18が耐火材層を有することが好ましく、より好ましくはシート状部材18及びテープ状部材19の両方が耐火材層を有することが好ましい。
【0019】
シート状部材18又はテープ状部材19に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、後述するように熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材18及びテープ状部材19に柔軟性が付与される。したがって、例えば、テープ状部材19が耐火材層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
【0020】
シート状部材18は、耐火材層単層ならなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材層、粘着剤層などが挙げられる。
同様に、テープ状部材19は、耐火材層単層ならなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材層、粘着剤層などが挙げられる。
【0021】
シート状部材18は、例えば、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。同様に、テープ状部材19は、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、シート状部材18又はテープ状部材19において最外面を構成するとよい。
以上の構成により、シート状部材18又はテープ状部材19とは別部材としての固定部材を使用しなくても、シート状部材18又はテープ状部材19を仕切り部11又は挿通体21に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、シート状部材18、テープ状部材19の構成をより簡素化できる。
なお、シート状部材18及びテープ状部材19は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
【0022】
シート状部材18又はテープ状部材19に使用される不燃材料層は、不燃材料で構成される。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。不燃材料層としては、具体的には、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材18及びテープ状部材19に柔軟性が付与される。したがって、テープ状部材19は、例えば、不燃材料層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
【0023】
基材層を構成する基材としては、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
粘着剤層は、粘着剤により形成されるとよく、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。粘着剤層は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であってもよく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合してもよい。粘着剤層の厚みは、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
【0024】
シート状部材18の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。テープ状部材19の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。
【0025】
シート状部材18及びテープ状部材19は、多層構造の場合、2層構造を有してもよいし、3層又はそれ以上の構造を有してもよい。2層構造としては、例えば、不燃材料層/耐火材層、不燃材料層/粘着剤層、耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層、基材/不燃材料層などの構造を有するものが挙げられる。
また、3層構造は、粘着剤層を有するものとして、不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。また、3層構造としては、不燃材料層/基材/耐火材層、基材/不燃材料層/耐火材層、基材/耐火材層/不燃材料層などの粘着剤層が設けられないものも挙げられる。
また、4層以上の構造としては、上記粘着剤層が設けられない3層構造の最外層としてさらに粘着剤層が設けられたものなどが挙げられる。代表的には、粘着剤層/不燃材料層/基材/耐火材層、不燃材料層/基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。
また、以上の多層構造においては、互いに隣接する、不燃材料層と耐火材層、不燃材料層と基材、耐火材層と基材は、公知の接着剤により接着されてもよく、したがって、上記各積層構造において、上記各層の間には接着剤層が設けられてもよい。
なお、多層構造において、シート状部材18及びテープ状部材19は、その全体において同じ層構成を有していてもよいが、部分的に異なる構造を有してもよい。例えば、粘着剤層が、シート状部材18及びテープ状部材19の一部に設けられ、一部が単層構造で、一部が多層構造でもよい。
【0026】
挿通体21の外周に巻き付けられたテープ状部材19は、挿通体21に密着するとよく、したがって、挿通体21の形状に合わせて適宜変形させるとよい。また、テープ状部材19は、挿通体21の外周面に固定される。ここでテープ状部材19は、テープ状部材19の内周側に配置される粘着剤層又は耐火材層などによって挿通体21の外周面に固定されてもよい。また、テープ状部材19は、テープ状部材19とは別に設けられた固定部材により挿通体21に固定されてよい。そのような固定部材としては、例えば、テープ状部材19の外周側から巻かれた紐状部材、又は粘着テープが挙げられる。また、これらの2以上の組み合わせにより、テープ状部材19は、挿通体21に固定されてもよい。
【0027】
紐状部材は、曲げることができる部材であればよく、ワイヤを含むワイヤ部材であることが好ましい。ワイヤ部材は、金属製のワイヤ単独でもよいし、ねじりっこ(登録商標)などの金属製のワイヤを樹脂で被覆した樹脂被覆ワイヤ、モールなどと呼ばれるワイヤと繊維を絡ませたものなどでもよい。ワイヤ部材を使用すると、ひねったり、ねじったりするだけで、テープ状部材19を挿通体21に固定できる。
また、粘着テープは、基材と基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有するとよい。基材としては、紙、樹脂フィルム、布などが使用できるし、上記した不燃材料を使用してもよい。また、粘着剤層としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。また、粘着剤には、公知の難燃剤などを配合してもよい。
【0028】
(熱膨張性樹脂組成物)
以下、耐火材層などの耐火材に使用される熱膨張性樹脂組成物についてより詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する。熱膨張性部材が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、シート状部材やテープ状部材の湾曲や変形が容易となる。
熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって実質的に膨張せず、熱膨張性樹脂組成物は、耐火材において熱膨張性が維持される。
【0029】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0030】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0031】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
また、熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分としてエラストマーを使用することで粘着性を有しやすくなる。また、粘着性を発現しやすくする観点から、エラストマーは液状エラストマーを含有することが好ましい。なお、液状エラストマーとは、常温、常圧で液体となるエラストマーである。
【0033】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。
可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
【0034】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、スリーブ状に変形可能にしやすくなる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填材などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0035】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0036】
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
【0037】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性、柔軟性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0038】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0039】
熱膨張性樹脂組成物は、公知の粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤を含有することで、熱膨張性部材に粘着性を付与しやすくなる。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0040】
熱膨張性部材は、例えば下記のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、熱膨張性樹脂組成物を得る。熱膨張性樹脂組成物は、適宜溶剤が添加されて、希釈されてもよい。
必要に応じて希釈された熱膨張性樹脂組成物は、基材、不燃材料、剥離シートなどの支持体に塗布し、適宜乾燥、硬化などされて、支持体の一方の面上に耐火材層(熱膨張性部材)が形成されるとよい。また、押出成形など公知の方法により支持体の一方の面上に耐火材層が形成されてもよい。剥離シート上に形成された耐火材層は、剥離シートから剥離することで、耐火材層単層からなるシート状部材、テープ状部材とするとよい。また、剥離シートから剥離した後に別の層上に積層することで、多層構造のシート状部材、テープ状部材を得るとよい。また、剥離シート上、又は他の支持体上に積層された状態のまま、他の層に積層されてもよい。
【0041】
以上の本実施形態の構成によれば、区画貫通部15の開口13C内部の空隙13Eが、シート状部材18、及びテープ状部材19により塞がれ、かつこれらうち少なくともいずれか一方が、耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な防火性能を付与できる。
また、上記で説明した通り、区画貫通処理構造10は、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eを塞ぐようにシート状部材18を設置し、次いで、挿通体21に一周以上テープ状部材19を巻き付けることで施工できる。したがって、その施工が容易である。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材18、及びテープ状部材19により防火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
【0042】
さらに、本実施形態では、シート状部材18、及びテープ状部材19がいずれも露出しており、外部から視認可能である。また、シート状部材18やテープ状部材19を固定するための固定部材が設けられる場合、固定部材も外部から視認可能な位置に配置するとよい。そして、区画貫通部15の内部には、挿通体21以外の部材が何も設けられず、かつ区画貫通処理材を構成する各部材は、外部から視認可能となる。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本実施形態の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、シート状部材及びテープ状部材の構成である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0044】
図4~6に示すとおり、本実施形態に係る区画貫通処理構造30は、区画貫通処理材として、シート状部材38と、テープ状部材39とを備える。なお、シート状部材38、テープ状部材39そのものの構造の詳細は、第1の実施形態と同様であり、シート状部材38及びテープ状部材39は、少なくともいずれか一方が耐火材を有する。
【0045】
シート状部材38は、施工現場でスリーブ状にされて、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eに挿入される。これにより、間隙13Eは、一部がシート状部材38によって塞がれることになる。
ここで、シート状部材38は、区画貫通部15の内部に挿入される。より具体的には、
図4に示すように、シート状部材38の一方の端部38Aが、貫通孔13Aの内部に配置される。ただし、シート状部材38は、さらに奥まで挿入されて、一方の端部38Aが中空部13の内部に配置されてもよい。
一方で、シート状部材38の他方の端部38Bは、仕切り部11の外側に配置される。すなわち、端部38Bは、開口13Cより外側に突出するように配置される。
【0046】
スリーブ状のシート状部材38は、シート状部材38の外周面に配置された耐火材層や、粘着剤層により貫通孔13Aの内面に固定されるとよい。ただし、シート状部材38は、耐火材層や粘着剤層により仕切り部11に固定される必要はなく、タッカー、ビスなどのシート状部材18とは別部材である固定部材によって仕切り部11に固定されてもよい。もちろん、これらの2以上の組み合わせにより、シート状部材38は、仕切り部11に固定してもよい。
【0047】
テープ状部材39は、第1の実施形態と同様に挿通体21の外周に1周以上巻き付けられるが、本実施形態では、
図4、6に示すように、テープ状部材39の一方の端部39A側がスリーブ状にされたシート状部材38の他方の端部38Bの外側に巻き付けられ、かつテープ状部材39の他方の端部39B側が挿通体21の外側に巻き付けられる。このような構成により、本実施形態では、シート状部材38と挿通体21の間の隙間が、テープ状部材39により塞がれることになり、間隙13E全体が、シート状部材38及びテープ状部材39により塞がれることになる。
【0048】
なお、テープ状部材39は、開口13Cから突出するシート状部材38の一部が露出するように、シート状部材38の他方の端部38Bの外周に巻き付けられるとよい。すなわち、開口13Cから突出するシート状部材38の一部には、テープ状部材39が巻かれない。
また、テープ状部材39は、挿通体21の外周に巻かれた端部39B側が、シート状部材38の外周上に巻かれた端部39A側よりも外径が小さくなる。そのため、端部39A側よりも端部39B側のテープ状部材39同士の重なり合う部分を増やしたり、端部39B側をより変形させたりするとよい。
【0049】
テープ状部材39は、その両端部39A,39Bが、
図4、6に示す通り、紐状部材37A,37Bによってシート状部材38及び挿通体21の外周面に固定されるとよい。ただし、テープ状部材39の両端部39A,38Bは、紐状部材以外の部材により固定されてもよく、テープ状部材39の内周側に配置された耐火材層若しくは粘着剤層、又はテープ状部材39とは別部材としての粘着テープなどにより、シート状部材38及び挿通体21の外周面に固定されてもよい。もちろん、これらは2以上組み合わされてもよい。
【0050】
以上のように、本実施形態でも、区画貫通部15の開口13C内部の空隙13Eが、シート状部材38、及びテープ状部材39により塞がれ、かつこれらうち少なくともいずれか一方が、耐火材層を有する。したがって、区画貫通部処理構造30に適切な防火性能を付与できる。そして、シート状部材38が耐火材層を有する場合には、区画貫通部15の内部に耐火材が配置されることになり、より一層防火性能が良好となる。
また、本実施形態の区画貫通部処理構造30は、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間にスリーブ状にしたシート状部材38を挿入し、シート状部材38により間隙13Eの一部を塞ぎ、次いで、テープ状部材39をシート状部材38及び挿通体21の外周に巻き付けることで施工できる。したがって、その施工が容易である。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材38、及びテープ状部材39により防火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
【0051】
さらに、本実施形態では、シート状部材38、及びテープ状部材39がいずれも露出しており、外部から視認可能である。また、シート状部材38を固定するための固定部材は、区画貫通部15の内部に配置されることがあるが、シート状部材38を固定させる部材にすぎず、単独で区画貫通部15の内部に設置されるものではない。すなわち、固定部材は、シート状部材38に対して固定され、一体になった部材ともいえる。
したがって、本実施形態では、区画貫通部15の内部には、挿通体21を除くと、外部から視認可能な部材である、シート状部材38及びテープ状部材39以外の部材が単独で設けられておらず、本実施形態における区画貫通処理材が施工されたか否かは、外部から確認可能となる。そのため区画貫通処理材が、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検でき、施工忘れなども発生にくくなる。
【0052】
[その他の変形例]
本発明は、以上の第1及び第2の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
例えば、上記第2の実施形態では、シート状部材38は、施工現場で丸めてスリーブ状にされたが、シート状部材48は、
図7に示すように、予めスリーブ状に成形されていてもよい。ただし、スリーブ状のシート状部材48は、その軸方向に沿って延在するスリット48Fが設けられる。スリット48Fは、シート状部材の一方の端部48Aから他方の端部48Bにわたって設けられるとよい。本構造を有するシート状部材48は、耐火材(耐火材層)で構成されることが好ましい。シート状部材48が耐火材から構成され、さらに、上記した熱膨張性樹脂組成物より形成されることで成形性が良好となる。ただし、シート状部材48は、第1及び第2の実施形態で説明したとおり、耐火材層に適宜、粘着剤層などが積層されてもよいし、不燃材料層や基材などを適宜含有してもよい。
【0053】
本変形例では、シート状部材48は、スリット48Fを介して、挿通体21をその内部に挿入させることが可能である。そして、スリーブ状のシート状部材48は、開口13Cから仕切り部11の内部に挿入することで、第2の実施形態と同様に、区画貫通部13の内部に設置されることになる(
図4~6参照)。
一方で、テープ状部材39は、第2の実施形態で説明したとおり(
図4~6参照)、一方の端部39A側がスリーブ状のシート状部材48の他方の端部48Bの外側に巻き付けられ、かつテープ状部材39の他方の端部39B側が挿通体21の外側に巻き付けられる。
これにより、本変形例でも、間隙13E全体が、シート状部材48及びテープ状部材39により塞がれることになる。
【0054】
また、区画貫通処理構造には、区画貫通処理材として、さらにカバー材が設けられてもよい。
図8は、カバー材が設けられた第2の実施形態の変形例を示す。
図8に示すように、カバー材50は、例えば、仕切り部11の外面11Aと、シート状部材38の接続部分を被覆するように配置されるとよい。カバー材50は、上記接続部分を目視できないようにして、区画貫通処理構造の外観性を良好にする。カバー材50は、公知の樹脂材料、金属により形成されればよい。カバー材50は、例えば、環状形状を有するが、その構成に限定されない。
また、カバー材50は、シート状部材38の一部を被覆するが、シート状部材38は、一部が露出したままである。そのため、本変形例でも、上記第2の実施形態と同様に、区画貫通処理材を構成するシート状部材、テープ状部材は、外部から視認可能となる。そのため区画貫通処理材が、規定通り施工されたことが目視により簡単に点検できる。
【0055】
また、上記各実施形態において区画貫通処理材は、シート状部材及びテープ状部材の少なくともいずれかに連結し、区画貫通部15の内部に配置される部材を有してもよい。そのような部材として、例えば、耐火材、付属品が挙げられる。
その具体例を
図9に第2の実施形態の変形例として示す。耐火材としては、
図9に示すようなブロック状の耐火材51が例えば使用され、そのブロック状の耐火材51が、シート状部材38に連結するとよい。連結する態様は、特に限定されないが、例えば、シート状部材38の一方の面に積層されてもよいし、シート状部材38の端面に連結されてもよい。耐火材51は、上記の通り、加熱により膨張する熱膨張性部材からなることが好ましく、中でも熱膨張性樹脂組成物より形成されることが好ましい。
【0056】
本変形例の態様により、区画貫通部15の内部に比較的大容量の耐火材を配置できるので、より一層防火性能を向上できる。一方で、耐火材は、外部から目視可能なシート状部材、テープ部材(本変形例では、シート状部材)などとの一体物として配置される。したがって、本変形例でも、区画貫通部15の内部には、上記第2の実施形態と同様に、シート状部材及び前記テープ状以外の部材が単独で設置されないことになる。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検でき、施工忘れなども発生にくくなる。
なお、ここでいう一体物とは、外部から目視可能な部材である、シート状部材又はテープ状部材に対して、固定されたものであり、例えば、自重などによりシート状部材又はテープ状部材から落下しないものである。
【0057】
また、上記した付属品としては、係止部が挙げられる。係止部は、図示しないが、仕切り部11に係止される部材であり、係止部が仕切り部に係止することで、シート状材やテープ状部材をより安定的に設置できる。
また、付属品も上記の耐火材と同様に、外部から目視可能な部材である、シート状部材又はテープ状部材との一体物として配置されればよく、それにより、区画貫通部15の内部には、挿通体以外に、シート状部材、テープ状部材以外の部材が単独で設けられない。そのため区画貫通処理材が、規定通り施工されたことが、目視や写真撮影により簡単に点検でき、施工忘れなども発生にくくなる。
さらに、付属品としては、遮音、防臭、制振などの機能を有する機能部材でもよい。具体的には、発泡体、ゴム材料などの遮音材、防臭剤、脱臭剤そのものや、防臭剤、脱臭剤などが配合された樹脂材料、ゴム材料などでもよい。また、制振材として機能するゴム材料などでよい。
【0058】
さらに、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
【0059】
また、以上の各実施形態では、仕切り部11の両方の開口13C,13D(すなわち、仕切り部11の両側)に、いずれも同じ構造の区画貫通処理材が設けられることを前提に説明したが、各開口13C,13Dには、別の構造の区画貫通処理構造が設けられてもよい。例えば、一方の開口13Cに第1の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられ、他方の開口13Dに第2の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられてもよい。また、開口13Dにおける区画貫通処理材が省略されてもよい。
【0060】
さらに、第2の実施形態に係る区画貫通処理構造では、開口13C、13Dそれぞれに設けられるシート状部材38、38は別部材として設けられるが、一体の部材として設けられてもよい。すなわち、
図10に示すように、スリーブ状にされた1つのシート状部材58が、一方の開口13Cから他方の開口13Dに渡って設けられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、30 区画貫通処理構造
11 仕切り部
13 中空部
13C,13D 開口
13E 間隙
15 区画貫通部
18、38、48、58 シート状部材
18B,48F スリット
19、39 テープ状部材
21 挿通体
37A,37B 紐状部材