(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】留置が補助されたエンドプロテーゼ送達系
(51)【国際特許分類】
A61F 2/962 20130101AFI20221003BHJP
【FI】
A61F2/962
(21)【出願番号】P 2020167497
(22)【出願日】2020-10-02
(62)【分割の表示】P 2018189167の分割
【原出願日】2014-03-06
【審査請求日】2020-10-15
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ アール.アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ビー.ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ラリー ジェイ.コバック
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エフ.パジョット
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン シー.ショート
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジェイ.ウルム
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.ボネシュ
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-519608(JP,A)
【文献】特表2006-515786(JP,A)
【文献】特表2002-518086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257720(US,A1)
【文献】特表2003-500104(JP,A)
【文献】特開平10-57502(JP,A)
【文献】国際公開第02/032496(WO,A1)
【文献】特開2008-155017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/962
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材と、第1のキャップと、第2のキャップと、被覆部材とを有するエンドプロテーゼ送達系であって、
前記エンドプロテーゼは、前記長尺部材の周囲に配置され、
前記第1のキャップは、遠位端及び近位端を有すると共に、前記第1のキャップの近位端が前記エンドプロテーゼの遠位端部に近接するように配置され、
前記第2のキャップは、前記長尺部材の周囲に配置されると共に、前記エンドプロテーゼを留置するための引き紐を収容するように構成された収容部を規定し、
前記被覆部材は、前記エンドプロテーゼを少なくとも部分的に被覆して送達直径に制限すると共に、前記第1のキャップの少なくとも一部分を超えて延在し、且つ、前記制限されたエンドプロテーゼの留置時に除去可能に構成される、エンドプロテーゼ送達系。
【請求項2】
前記収容部が、凹部のくぼみを含む、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項3】
前記第2のキャップが、前記長尺部材にスライド可能に連結される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項4】
前記第1のキャップが、前記被覆部材の除去時に前記被覆部材が前記エンドプロテーゼの遠位端部に引っかかるのを防止するように構成される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項5】
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップの少なくとも一方が筒状である、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項6】
前記第1のキャップが、前記エンドプロテーゼの端部上に前記被覆部材を案内するように構成される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項7】
前記の第1及び第2のキャップが、前記第1の長尺部材と同軸である、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項8】
前記第1のキャップの直径と、前記制限されたエンドプロテーゼの送達直径とが、実質的に同一である、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項9】
前記第1のキャップの遠位端が先細であり、その直径が前記第1のキャップの近位端の直径よりも小さくなるように構成される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項10】
前記第2のキャップが、遠位端及び近位端を有すると共に、前記第2のキャップの遠位端が、前記エンドプロテーゼの近位端部と近接するように配置される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項11】
前記第2のキャップが、 前記第1のキャップに対して相対的に
変位し得るように構成される、請求項9のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項12】
前記第1のキャップが、柔軟性材料から構成される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項13】
前記第1のキャップが、前記第1の末端キャップの放射方向寸法を横切る軸線よりも、前記長尺部材の長手方向軸線に沿った方向において、より高い柔軟性を有する、請求項12のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項14】
前記引き紐を操作すると、前記被覆部材が前記エンドプロテーゼから除去されるように、前記引き紐が前記被覆部材に連結される、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項15】
前記第1のキャップの案内部と、筒状エンドプロテーゼの遠位端部との間の空間が、可撓性要素の直径よりも小さい、請求項1のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項16】
第1の長尺部材と、第2の長尺部材と、第1のキャップと、第2のキャップと、エンドプロテーゼとを含むエンドプロテーゼ送達系であって、
前記第1の長尺部材が前記第2の長尺部材の内部に配置され、
前記第1のキャップが、前記第1の長尺部材の周囲に配置されると共に、遠位端及び近位端を有し、
前記第2のキャップが、前記第1の長尺部材の周囲に配置されると共に、スライド可能に前記第1の長尺部材に連結され、
前記エンドプロテーゼが、長尺部材の周囲に配置されると共に、遠位端部を有し、且つ、前記第1のキャップの近位端が前記エンドプロテーゼの遠位端部に近接するように、前記第1のキャップの案内部が配置される、エンドプロテーゼ送達系。
【請求項17】
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップの少なくとも1つが筒状である、請求項16のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項18】
前記の第1及び第2のキャップの案内部が、前記第1の長尺部材と同軸である、請求項16のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項19】
前記第1のキャップの案内部が、前記第1の長尺部材に連結される、請求項16のエンドプロテーゼ送達系。
【請求項20】
前記第2のキャップの案内部が、引き紐を収容するように構成された収容部を含む、請求項16のエンドプロテーゼ送達系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、血管系及び同様の生体構造の疾患を治療するための体内プロテーゼに関し、より具体的には、斯かる体内プロテーゼと被覆部材とのもつれを防止するエンドプロテーゼ送達系に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントグラフト等の体内プロテーゼ(或いはエンドプロテーゼ装置)の多くは、血管の一部を強化し、置換し、架橋し、或いはその他の方式で治療するように構成されている。即ち、エンドプロテーゼは、斯かる血管の概略筒状の内面によって規定される管腔内の血流を誘導しうる。他の筒状の体内プロテーゼは、他の身体部位、例えば食道、尿管、胃腸管、及び種々の管で使用されるように構成されている。
【0003】
多くの場合、体内プロテーゼは被覆部材又は鞘部の内部に拘束されており、留置時に被覆部材を除去すると、装置が外力下拡張又は自己拡張して、その径が拡大する。しかし、被覆部材を除去する際に時折、当該部材がエンドプロテーゼを妨害し、繋止し、或いはエンドプロテーゼともつれてしまう場合がある。従って、改良されたエンドプロテーゼ送達系が望まれていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、カテーテル等の長尺部材と、エンドプロテーゼと、エンドプロテーゼの周囲に配置された被覆部材と、エンドプロテーゼ及び被覆部材の間に位置する少なくとも1つの可撓性要素とを含むエンドプロテーゼ送達系を含む。被覆部材はエンドプロテーゼの末端の先まで延在していてもよい。操作時には、被覆部材を除去すると、可撓性要素がエンドプロテーゼの末端の先まで被覆部材を案内することで、エンドプロテーゼの末端と被覆部材との間のもつれを防止する。
【0005】
更に、本発明は、滑動耐性部分又は材料を有する長尺部材と、エンドプロテーゼと、被覆部材とを含むエンドプロテーゼ送達系を包含する。滑動耐性材料は、説明するようなゴム状又は弱粘着性の材料或いは圧縮性材料を含んでいてもよく、エンドプロテーゼの遠位及び/又は近位末端の先まで延在していてもよい。操作時には、被覆部材が解れるか、或いは他の方式により除去されてエンドプロテーゼを解放すると、滑動耐性材料が被覆の隆起を防止しうる。これにより、被覆部材とエンドプロテーゼとの間のもつれを防止し、或いは防止に寄与しうる。
【0006】
更に、本発明は、長尺部材と、遠位及び/又は近位端部を有するエンドプロテーゼと、これらの端部の一方に隣接する末端キャップと、被覆部材とを含むエンドプロテーゼ送達系を包含する。被覆部材はエンドプロテーゼの末端を超えて、末端キャップの表面の上まで延在していてもよい。操作時には、被覆部材を除去すると、末端キャップによって、被覆部材とエンドプロテーゼの端部とのもつれが防止される。むしろ、斯かる被覆部材は末端キャップに追従し、エンドプロテーゼの端部を超えて案内してもよい。
【0007】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を図面と併せて考慮することにより、より一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、エンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0009】
【
図2】
図2は、エンドプロテーゼ送達系の拡大透視図を示す。
【0010】
【
図3】
図3は、エンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。断面図の基準線も併せて示す。
【0011】
【
図4】
図4は、
図3に示す線に沿ったエンドプロテーゼ送達系の断面図を示す。
【0012】
【
図5】
図5は、エンドプロテーゼ送達系を、圧縮性材料を除いて示す透視図である。
【0013】
【
図6】
図6は、エンドプロテーゼ送達系を、圧縮性材料と一緒に示す透視図である。
【0014】
【
図7】
図7は、エンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。断面図の基準線も併せて示す。
【0015】
【
図8】
図8は、
図7に示す線に沿ったエンドプロテーゼ送達系の断面図を示す。
【0016】
【
図9】
図9は、
図7に示す線に沿ったエンドプロテーゼ送達系の拡大破断面図を示す。
【0017】
【
図10】
図10は、エンドプロテーゼを留置する過程におけるエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0018】
【
図11】
図11は、エンドプロテーゼを留置する過程におけるエンドプロテーゼ送達系の拡大透視図を示す。
【0019】
【
図12A】
図12Aは、滑動耐性材料を含むエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0020】
【
図12B】
図12Bは、長手方向に圧縮された可撓性ポリマー製部材を含むエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0021】
【
図13A】
図13Aは、マンドレル周囲に柔軟性材料のシートを巻回することを含む、エンドプロテーゼ送達系の製造方法の透視模式図である。
【0022】
【
図13B】
図13Bは、巻回された柔軟性材料のシートを硬化させることを含む、エンドプロテーゼ送達系の製造方法の透視模式図である。
【0023】
【
図13C】
図13Cは、巻回された柔軟性材料のシートを長手方向に圧縮して滑動耐性材料を形成することを含む、エンドプロテーゼ送達系の製造方法の透視模式図である。
【0024】
【
図14】
図14は、末端キャップ及び先細末端キャップを有するエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0025】
【
図15】
図15は、留置後の段階のエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。
【0026】
【0027】
【
図17】
図17は、エンドプロテーゼを長尺部材の内部シャフトの周囲且つ被覆部材の内部に装填するプロセスの模式図である。
【0028】
【
図18A】
図18Aは、エンドプロテーゼを規制する前のエンドプロテーゼ送達系の透視図を示す。可撓性要素は完全に開放状態にある。
【0029】
【0030】
【
図18C】
図18Cは、エンドプロテーゼとエンドプロテーゼ被覆要素との間に可撓性要素が配置された、規制状態にあるエンドプロテーゼを示す。
【0031】
【0032】
【
図20A】
図20Aは、エンドプロテーゼ送達系の一部を形成しうるフィルムチューブを示す。
【0033】
【
図20B】
図20Bは、エンドプロテーゼ送達系の一部を形成するための複数のスリットを含むフィルムチューブを示す。
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
当業者であれば、意図された機能を果たすように構成された任意の数の方法及び装置により、本開示の種々の態様が実現可能であることを容易に認識するであろう。言い換えれば、他の方法及び装置を本明細書に援用して、意図された機能を果たすことができる。なお、本明細書で参照する添付の図面は、必ずしも縮尺通りに作成されたものではなく、本開示の種々の態様を図解するために誇張されている場合があることにも留意すべきであり、この点で、これらの図面を限定的なものと解釈すべきではない。また、本開示は種々の原理及び見解との関連で説明される場合があるが、本開示は理論に拘束されない。
【0036】
本明細書及び請求項全体を通じて、「エンドプロテーゼ装置」「エンドプロテーゼ」「脈管装置」等の用語は、体腔内への埋込み及び/又は留置ができる任意の医療装置を指し得る。種々の実施形態において、エンドプロテーゼには、ステント、ステントグラフト、グラフト、フィルター、オクルーダー、バルーン、リード、エネルギー伝達装置、留置可能パッチ、留置カテーテル等が含まれ得る。
【0037】
加えて、本明細書及び請求項全体を通じて、本文書に記載される送達系には、概して、「被覆部材」又は「鞘部」で制限されるエンドプロテーゼが含まれ得る。種々の実施形態において、被覆部材又は鞘部には、エンドプロテーゼの周囲に装着されるシート材料が含まれ得る。種々の実施形態において、被覆部材又は鞘部には、エンドプロテーゼの周辺に配置される編み加工された複数の繊維が含まれ得る。このような繊維は、例えば、2001年11月13日にArmstrongらに発行された名称「Remotely removable covering and support」の米国特許第6,315,792号明細書に記載の織り加工ワープニット(woven warp knit)又はニットブレード(knit-braid)を含んでよく、この明細書の全体が参照により本明細書に援用される。カテーテルの長さに沿って下方に伸びる引き紐(pull line)に、被覆部材を連結でき、医師がこの引き紐を引くことにより、エンドプロテーゼの露出を促進できる。
【0038】
例えば、複数の繊維を含む被覆部材を引き紐に連結することができ、医師が引き紐を引いて当該複数の繊維をほどくことができる。したがって、引き紐が被覆部材を直線沿いに開く、即ちファスナーを開けるという点で、被覆部材を「ファスナーが開くもの」と特徴付けることができる。加えて、種々の実施形態において、最初に近位ベクトルに沿って被覆部材のファスナーを開け、次に遠位ベクトルに沿って被覆部材のファスナーを開けることができる。種々の実施形態において、長尺部材の長手方向軸線と実質的に平行に走る長手ベクトルに沿って、被覆部材のファスナーを開けることができる。
【0039】
留置時、被覆部材がエンドプロテーゼ上に挟まれることがあり得る。例えば、複数の繊維を含む被覆部材がエンドプロテーゼの末端又は端部を越えて延在してよいため、被覆部材が特定のベクトル(例えば長手ベクトル)に沿って外れ始める(例えばファスナーが開き始める)と、被覆部材がエンドプロテーゼの末端に絡まることがある。例えば、被覆部材は、エンドプロテーゼの末端を構成する1つ以上の頂部と絡まることがある。下記の説明では、複数の繊維を含む被覆部材に言及することが多いが、種々の実施形態において、被覆部材は、エンドプロテーゼを制限できる種々のカバー又は鞘部のいずれを含んでもよい。
【0040】
本明細書及び請求項全体を通じて使用する「長尺部材」という用語は、カテーテル、ガイドワイヤー、イントロデューサーシース等のシャフト様構造物を指し得る。種々の実施形態において、エンドプロテーゼをカテーテル(本明細書では内部シャフトとも称する)に設置又は装填でき、制限された直径内で、エンドプロテーゼをイントロデューサーシース(本明細書では外部シャフトとも称する)の中に嵌め込むことができる。
【0041】
更に、本明細書及び請求項全体を通じて、「遠位」という用語は、医療装置が導入されている体内位置より遠いという相対的位置を指す。同様に、「遠位に」という用語は、医療装置が導入されている体内位置から離れる方向を指す。
【0042】
本明細書及び請求項全体を通じて、「近位」という用語は、医療装置が導入されている体内位置に近いという相対的位置を指す。同様に、「近位に」という用語は、医療装置が導入されている体内位置に向かう方向を指す。
【0043】
引き続き、近位、遠位という用語に関して、本開示はこれらの用語に関して狭義に解釈されないものとする。より正確に言えば、患者の解剖学的組織に対して、本明細書に記載の装置及び方法を変更及び/又は調整してよい。
【0044】
本明細書で使用する「制限する」という用語は、(i)自己拡張若しくは装置による補助を通じて発生する拡張型インプラントの直径の拡張を制限すること、又は(ii)(例えば、保管若しくは生体適合性上の理由で、並びに/又は拡張型インプラント及び/若しくは脈管構造を保護する目的で)拡張型インプラントを覆うか取り囲むこと、但し他の方法では抑制しないこと、を意味し得る。
【0045】
したがって、以下に具体的な実施形態を記載するが、本開示は、概してエンドプロテーゼ送達系及び方法を主たる重点としており、特に、被覆部材で覆われ、被覆部材とエンドプロテーゼの間の引っ掛かり又は絡み合いを防止する機構が組み合わされたエンドプロテーゼを送達するシステム及び方法に焦点を置く。
【0046】
種々の実施形態において、エンドプロテーゼ送達系は、カテーテル等の長尺部材と、エンドプロテーゼと、エンドプロテーゼの周りに設けられた被覆部材と、エンドプロテーゼと被覆部材の間に位置する少なくとも1つの可撓性要素と、を含んでよい。被覆部材は、エンドプロテーゼの末端を越えて延在してよい。エンドプロテーゼ送達系は、ステント末端の少なくとも下に延在する、長尺部材の圧縮性材料部分を更に含んでよい。
【0047】
操作時、被覆部材がほどけ始めると、被覆部材がエンドプロテーゼ末端に被さるように可撓性要素が被覆部材を案内し、これにより、エンドプロテーゼ末端と被覆部材の間の挟み込み、引っ掛かり、絡み合いを防止できる。例えば、被覆部材が複数の繊維を含み、且つ被覆部材が近位方向に除去される実施形態では、可撓性要素がエンドプロテーゼの遠位端を覆うことができ、被覆部材がほどけ始めると、1本以上の繊維が可撓性要素に乗り上がることができる。同様に、被覆部材が遠位方向に除去される別の実施形態では、可撓性要素は、1本以上の繊維がエンドプロテーゼの近位端を覆うように繊維を案内することができる。このように、可撓性要素は、装置の留置時に、被覆部材がエンドプロテーゼ上で挟まれるのを防止し、或いはその可能性を軽減できる。可撓性要素は、随意に、端部により少なくとも部分的に画定される開口部(例えば頂部)、又はグラフト部材に形成される開口を通って延在してもよい。
【0048】
同一又は異なる実施形態において、エンドプロテーゼ送達系は、滑動耐性部分又は滑動耐性材料を有する長尺部材(例えばカテーテル)と、エンドプロテーゼと、被覆部材又は鞘部と、を含んでよい。滑動耐性材料は、ゴム状若しくは粘着性の材料、圧縮性材料、又は長手方向に圧縮した材料(又はこれらの種々の組み合わせ)を含んでよく、この材料は、カテーテルの、エンドプロテーゼの遠位末端及び/又は近位末端の近傍部分に配置される。上記の鞘部は、編み加工された複数の繊維を含んでよく、且つエンドプロテーゼの遠位末端及び/又は近位末端を越えて延在してよく、且つ滑動耐性部分と一緒に配置されてよい。
【0049】
留置時に鞘部がほどけてエンドプロテーゼが解放されると、滑動耐性材料が鞘部繊維の隆起(bunching)を防止することができる。これにより、鞘部とエンドプロテーゼの間の引っ掛かり又は絡み合いを防止でき、或いは防止を促進できる。例えば、エンドプロテーゼの遠位末端及び/又は近位末端を越えて延在する滑動耐性材料部分が、鞘部とカテーテルの間の穏やかな接着剤として機能し得るため、鞘部に連結した引き紐が(例えば留置開始のため)引き込まれた時、鞘部は、単に引き紐の動きを追ってカテーテル面を滑り落ちるのではない。滑動耐性材料がなければ、カテーテルの表面は比較的滑らかであり、鞘部がカテーテル表面を滑り落ちる時に隆起が生じ、最終的に、エンドプロテーゼの端部から垂れ下がるかエンドプロテーゼ端部と絡み合うことになる。より正確に言えば、滑動耐性材料は、解放可能又は穏やかに鞘部とカテーテルを結合できるので、引き紐を引いても、留置失敗を招き得る隆起は発生しない。鞘部が複数の繊維を含む種々の実施形態において、引き紐が引かれた時、繊維が部分的に滑動耐性材料内に包埋されてよい。
【0050】
同一又は異なる実施形態において、エンドプロテーゼ送達系は、長尺部材(例えばカテーテル)と、遠位端及び/又は近位端を有するエンドプロテーゼと、これらの端部の一方の近傍にある末端キャップと、被覆部材(例えば、上記のような編み加工された被覆部材)とを含んでよい。この被覆部材は、エンドプロテーゼの末端を越えて、末端キャップの表面を覆って延在してよい。
【0051】
例として、操作時に、複数の繊維を含む被覆部材がほどけて、エンドプロテーゼが露出されるか又は送達直径及び/若しくは制限された直径からエンドプロテーゼが解放された時、末端キャップにより、繊維が垂れ下がること又はエンドプロテーゼの端部と絡み合うことを防止できる。より正確に言えば、被覆部材が末端キャップ面をたどり、末端キャップは、被覆部材がエンドプロテーゼの両端を越えるように案内することができる。
【0052】
次に、
図1と、より密に表示している
図2を参照すると、種々の実施形態において、エンドプロテーゼ送達系100は、長尺部材102、エンドプロテーゼ104、被覆部材106、及び/又はカテーテル先端部即ち「オリーブ」108を含んでよい。更に、
図1~4に示すように(
図4は最も明瞭であり、
図3に示す送達系100の断面図を示す)、送達系100は1つ以上の可撓性要素110a~110hを含んでよい。種々の実施形態において、被覆部材106の遠位端が可撓性要素110a~110hの末端よりわずかに近位の位置まで延在してよく、例えば、要素202a~202e(後述)の末端と、可撓性要素110a~110hの遠位末端の間に位置してよい。例えば、被覆部材106が複数の織り加工ワープニット繊維又はニットブレード繊維を含む実施形態等の幾つかの実施形態では、被覆部材106の遠位末端領域及び/又は近位末端領域は、エンドプロテーゼ104の一方又は両方の末端に対して長手方向に圧縮されてよい。エンドプロテーゼ送達系100が止血弁を通過した時、及び/又は被覆部材106を引き紐を介して留置した時に、より程度が不規則な圧縮性が発生する可能性があるが、上記のような被覆部材の圧縮は、可変の圧縮性を低減するのに役立つ。
【0053】
次に、主に
図2を参照すると、可撓性要素110a~110hの各々は、エンドプロテーゼ104の遠位端を越えて延在してよく、又は遠位端に重なるか遠位端を覆って延在してよい。例えば、エンドプロテーゼ104はステント又はステンドグラフトを含んでよく、その場合、ステント、ステントグラフトのいずれの場合も、1つ以上のステント要素202a~202e(例えばステントリング、巻線)を含んでよい。要素202a~202eの各々は複数の頂部を含んでよく、エンドプロテーゼ104の遠位末端(又は、幾つかの実施形態では近位末端)に位置するステント要素202a等のステント要素に関しては、可撓性要素110a~110hは、ステント要素202aに形成された頂部に重なってよい。同様に、エンドプロテーゼ104がステントグラフトを含む場合、可撓性要素110a~110hは遠位端(例えば頂部)に重なってよく、更に随意に、グラフト材料に(例えばレーザー切断ツールで)形成された1つ以上の開口部を通ってグラフト材料の中に延在してもよい。
【0054】
図では可撓性要素を8個表示しているが、種々の実施形態において、可撓性要素の数は、エンドプロテーゼ104に関連する頂部の数と対応していてよい。したがって、8個の可撓性要素110a~110hより少なくても多くてもよい。更に、2つ以上の可撓性要素が単一の頂部を覆ってもよい。
【0055】
種々の実施形態において、
図20Aと
図20Bが示すように、フィルムチューブに切り込みを入れてフィルムチューブ内に複数のスリットを作成することにより、可撓性要素110a~110hを形成してよい。
図20Bが複数のスリットを有するフィルムチューブの図であり、図示の通り、各スリット間の領域が、複数の可撓性要素110a~110hの各々を構成してよい。同様に、
図21に示すように、他の実施形態では、
図20Bに示す複数の長手方向スリットを有するフィルムチューブで形成された可撓性要素2110を、エンドプロテーゼ2104の遠位端より遠位の長尺部材2102の遠位領域に固定してよい。例えば、1つ以上の可撓性要素2110をカテーテルオリーブ2108の位置又はカテーテルオリーブより近位の位置に固定して、エンドプロテーゼ2104の端部を覆うように近位に延在させてよく、更に随意に、ステント要素2212の頂部の近傍に形成された開口部を貫いて延在させてもよい。
【0056】
図4に示すように、エンドプロテーゼ送達系100は、Z軸方向に圧縮可能な材料402(例えば、シリコーン、ePTFE、ポリウレタンフォーム等、幾らか反発性の材料又は軟質材料を含む材料)を更に含んでよい。「Z軸」とは、材料の厚みを貫いて伸びる軸を指し得る。圧縮性材料402は、長尺部材102を取り囲んでよい。Z軸圧縮性材料402は、長尺部材の一部分に接して延在し、この部分は、エンドプロテーゼ104の端部位置に配置され、少なくとも短い距離だけ遠位及び/又は近位に延在するので、筒状エンドプロテーゼの端部(近位端か遠位端か、又はその両方であるかを問わない)が、少なくとも部分的に圧縮性材料402に包埋されることが可能となる。このことは、被覆部材がその下側からのエンドプロテーゼと絡み合うことを防止するのに役立つ。
【0057】
このように、圧縮性材料402は、送達構成時にエンドプロテーゼ104が少なくとも部分的に包埋された状態にできる任意の材料を含んでよい。例えば、圧縮性材料402は、上記のように、半径方向に圧縮力が印加されるのに応答して、圧縮及び/又は高密度化する能力を有し得る。種々の実施形態において、圧縮性材料402は、以下の物質のいずれか及び/又は以下の物質の任意の組み合わせを含んでよい。シリコーン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、多孔質ポリマー(例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」))、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、種々の発泡体、任意のポリマー材料、任意のフッ素ポリマー系材料等。圧縮性材料は、柔軟性(compliant)、半柔軟性、又は非柔軟性タイプのバルーンの形であってよい。バルーンが少し膨張した時に柔軟性材料の機能を果たす。加えて、エンドプロテーゼ104より少し長いバルーンが、エンドプロテーゼの一方の端又は両端部にある1つ以上の柔軟性オリーブを形成してよい。更に、種々の実施形態において、被覆部材106を用いてエンドプロテーゼ104端部位置でバルーンの長さを調整してよい。
【0058】
種々の実施形態において、可撓性要素110は柔軟性の部材を含んでよい。柔軟性部材は、エンドプロテーゼの遠位端の輪郭に適合するのに充分な柔軟性を有し得る。可撓性要素110は更に、細い長尺部材であってよい。例えば、可撓性要素110は細い繊維又は糸を含んでよい。可撓性要素は、様々な断面を有してよく、例えば、円形、卵形、正方形、楕円形、長方形、多角形、概ね平坦な断面、又は種々の断面を有してよい。更に、種々の実施形態において、可撓性要素110は、チューブ、チューブ様の構造体、又はソックスを含んでよい。可撓性要素を、繊維等の製造で通常使われる方法と、射出成形、押出し加工、及び/又はカレンダー加工とにより製造してよい。
【0059】
可撓性要素は長尺部材102に固定される。例えば、
図5に示す通り、可撓性要素110は、遠位端より近位の位置で長尺部材102と連結し、開口部を通って延在して遠位端に重なってよい。この例の場合、可撓性要素は、エンドプロテーゼ104の留置時に、ステントリング又は巻線に形成された頂部の開口部から自由端(長尺部材102に固定されない端)が引き出されるような、適切な長さにされる。
【0060】
可撓性要素を固定する目的で、
図6に示すように、可撓性要素110a~110hの各々を随意に圧縮性材料402の中又は下に延在させてよい。このようにして、可撓性要素110a~110hの各々が圧縮性材料の下側で近位に延在して、可撓性要素を長尺部材に固定することができる。この特徴を
図7~9がより詳細に示している。特に
図8と
図9は、
図7のエンドプロテーゼ送達系100の線に沿って得られる断面図である。これらの図では、個々の可撓性要素110a、110dがそれぞれの頂部に重なり、圧縮性材料402の表面より下の近位方向に延在していることを確認できる。
【0061】
図18A~18Cに示すように、他の実施形態では、可撓性要素110を薄い可撓性ディスク1802として形成してもよく、この場合、可撓性ディスクをカテーテルオリーブ108に取り付けるか図示のようにカテーテルオリーブより僅かに近位に取り付けると、エンドプロテーゼ104の方にめくれて、エンドプロテーゼ端部の少なくとも一部分を覆うことができる。
図18Aに示す送達系100は、全て非制限状態(例えば被覆部材106を被せる前の状態)の遠位オリーブ108、長尺部材102、及びエンドプロテーゼ104を有する。
図18Bの正面図が示すように、ディスク1802は長尺部材102を差し込むための中心穴1804を有する。
図18Cでは、ディスク1802がめくれてエンドプロテーゼ104の遠位端を覆い、被覆部材106が被せられてエンドプロテーゼ104とディスク1802の両方を制限している。被覆部材106を除去する時、ディスク1802が存在することにより、被覆部材106がエンドプロテーゼ104の遠位端に挟まるのが防止され、エンドプロテーゼ104が拡張するにつれて、ディスク1802の端部が外向きに回転する。ディスク1802は、容易に回転してエンドプロテーゼ104から離れるような、充分な可撓性を持つ任意の材料で製造されてよい(例えば、シリコーン等のエラストマー、ePTFE等の薄いシート状ポリマー等)。ディスク1802は、様々な形状(例えばシート、断面が円形のチューブ、又は他の不均一断面の形状)の、充分な可撓性を有する材料で製造されてよい。
【0062】
更なる実施形態では、ディスク1802に、エンドプロテーゼ104の拡張時に破断する長手方向の低強度ゾーン又はミシン目が設けられていてよい。他の実施形態では、ディスク1802の特徴として、中心穴1804に向かって半径方向に伸びるが、中心穴には到達しない、ディスクの外周に設けられた一連の長手方向の切断部を有してよい。このような切断部は、ディスク外周の少なくとも一部分の周辺に複数の索(strand)を形成する。すると、これらの索がめくれてエンドプロテーゼ104の遠位末端を覆うことが可能になり、被覆部材106の除去時に、被覆部材がエンドプロテーゼの遠位端と絡み合うのを防止する働きができる。
【0063】
可撓性要素は、取付け点で自身の基部、即ちカテーテル取付け点で容易に枢動又は屈曲できるので、可撓性要素が広い動作範囲を迅速に動くのを促進できる。例えば、可撓性要素は、長手方向軸線沿いの少なくとも90度の円弧、長手方向軸線沿いの少なくとも180度の円弧、少なくとも半球範囲、又はそれ以上を、迅速に動くことができる。
【0064】
次に、
図10、
図11を参照すると、エンドプロテーゼ104を図示のように送達することができる。被覆部材106は、本明細書に記載の通り、縫い目を解く、ファスナーを開ける、ほどく、引き離す等の方法でエンドプロテーゼ104から取り外すことができる。明瞭にするため、被覆部材106が完全に後退した状態を図示しているが、実際には、被覆部材106が徐々に又は段階的に後退しながらエンドプロテーゼ104が連続的に拡張することが理解される。被覆部材106がエンドプロテーゼ104の端部(例えば、図示のようにエンドプロテーゼ104の遠位末端又は遠位領域)から外れると、可撓性要素110a~110hは、後退中の被覆部材106を案内して、エンドプロテーゼ104の遠位側(又は、別の構成では近位側)端部にある遠位端(例えば頂部)を越えるようにする。被覆部材106が筒状エンドプロテーゼを露出させるのに伴い、エンドプロテーゼの拡張で可撓性要素110a~110hが外側へ押し出され、更に随意に開口部から後退する。例えば、上記のように、被覆部材106が編み組又は編み加工された構造体であり、被覆部材106に連結された引き紐が近位に動いて、被覆部材106がファスナーを開けた時、1つ以上の頂部との絡み合い、引っ掛かり、又は挟み込みが発生し得る開口部を有している構造体の場合、上記の特徴は特に有用であり得る。
【0065】
種々の実施形態において、
図12Aに示す通り、エンドプロテーゼ送達系1200は、上記のように、長尺部材と、エンドプロテーゼ104と、被覆部材とを含み、更に、エンドプロテーゼ104近傍のカテーテル部分の周辺に位置する滑動耐性部又は滑動耐性材料1210を含んでよい。
【0066】
種々の実施形態において、滑動耐性材料1210を、エンドプロテーゼの近傍及び/又は真下の部分で、長尺部材1202に接して配置してよい。
図12Aに示すように、滑動耐性材料1210は、オリーブ108より近位に配置され、エンドプロテーゼ104の下に延在し、エンドプロテーゼより近位の位置で終端している。種々の実施形態において、滑動耐性材料は、上記より長い距離又は短い距離に延在してよく、例えば、オリーブ108より近位の、エンドプロテーゼ104の遠位端より少し短い位置まで延在してよく、或いはエンドプロテーゼの遠位端と隣接してもよい。
【0067】
種々の実施形態において、滑動耐性材料1210は、上記のようなZ軸圧縮性材料を含んでよい。同一又は異なる実施形態において、滑動耐性材料1210を図示のように長手方向に圧縮して、表面を平滑でなくシワ又は畝が生じた状態にしてよく、その結果、被覆部材の隆起形成に抵抗する、より粗い表面にすることができる。更に、同一又は異なる実施形態において、滑動耐性材料1210はゴム状又は穏やかな粘着性又は付着性であってよい。滑動耐性材料は、接着剤、接着剤が塗布された材料、反発性を有するスポンジ状材料、発泡体、圧縮性の材料等の種々の材料で製造されてよい。このような材料の一例は、PTFE、ePTFE等のポリマーで製造されたものであり得る。幾つかの実施形態では、滑動耐性材料1210をオリーブ108と組み合わせてもよく、オリーブ108として機能させてもよい。このような実施形態では、エンドプロテーゼ104の遠位末端がオリーブ108の少なくとも一部分を越えて延在する。滑動耐性材料1210がオリーブ108を形成する場合、当該材料は発泡体を含んでよい。
【0068】
留置時、被覆部材(図示せず)を、例えばほどく、ファスナーを開ける等の方法で除去して、エンドプロテーゼ104を制限構成から解放することができる。種々の実施形態において、被覆部材がファスナーを開けると同時に、被覆部材は、滑動耐性材料1210の例えば遠位部分又は滑動耐性材料1210のセグメント1212に張り付き、且つ/又は滑動耐性材料1210内に少なくとも部分的に包埋されるので、被覆部材に連結した引き紐を引いてエンドプロテーゼを留置又は露出させた時、被覆部材に隆起が生じるのが防止される。
図19に、滑動耐性材料又は他の圧縮性材料の中に包埋された被覆部材の断面図を示す。
図19に示すように、鞘部又は被覆部材の1つ以上の繊維106a及び/又は106bを、圧縮性材料402の中に包埋することができる。これにより、被覆部材とエンドプロテーゼ104の間の引っ掛かり又は絡み合いが防止され、或いは防止が促進される。種々の実施形態において、滑動耐性材料1210の特にセグメント1212は、屈曲した時に外半径に沿って伸張する働きができるので、オリーブ108の近位面と、エンドプロテーゼ104の遠位端の間に形成されるギャップが最小化される。被覆部材が近位に延在するかオリーブ108を越えて延在する場合、セグメント1212により、被覆部材が上記ギャップの中に滑り込むことが防止される。この滑り込みが発生すると、被覆部材がエンドプロテーゼ104上で挟まれる可能性が高くなる。
【0069】
エンドプロテーゼ104と被覆部材の間の境界部に特に注目すると、仮に滑動耐性材料がなければ、長尺部材の比較的平滑な表面を含む部分に被覆部材が滑り落ち、工程中に隆起が生じて、最終的にエンドプロテーゼ104の末端と絡み合うことになるが、実際は、被覆部材に連結した引き紐が後退すると、被覆部材が近位方向に除去されるので、被覆部材は、滑動耐性材料1210のセグメント1212との接合により滑り落ちが防止される。このように、滑動耐性材料1210のセグメント1212は、被覆部材がエンドプロテーゼ104の末端と絡み合うのを防止又は低減することができる。
【0070】
加えて、更なる実施形態では、滑動耐性材料1210のセグメントはエンドプロテーゼの端部の下に延在でき、エンドプロテーゼの端部は、滑動耐性材料1210のセグメント1212の中に少なくとも部分的に包埋されることが可能である。例えば、エンドプロテーゼ104の端部位置にある1つ以上の頂部が、滑動耐性材料の折り目に包埋され、或いは滑動耐性材料の折り目の中に入れ子式に入ることが可能である。したがって、被覆部材を除去した時に被覆部材が単にエンドプロテーゼ104の末端に乗り上がることができるので、エンドプロテーゼ104の末端と被覆部材の間の絡み合いを更に低減できる。更に、幾つかの実施形態では、滑動耐性材料1210のセグメント1212は、エンドプロテーゼ104との間で負荷を共有する機能を果たすことができる。例えば、患者の解剖学的組織(特に蛇行性の解剖学的組織)を通してエンドプロテーゼを操作する場合、滑動耐性材料1210のセグメント1212により、エンドプロテーゼ送達系1200は、例えばカーブやコーナーをより緻密且つ/又は穏やかに曲がることにより、解剖学的組織内をより穏やかに進むことができる。
【0071】
図13A~13Cに示すように、種々の実施形態において滑動耐性材料1210を製造できる。特に、
図13Aに示すように、シート状又はテープ状の柔軟性材料1320をマンドレル1304の周りに巻くことができる。種々の実施形態において、柔軟性材料1320は、シート状又はテープ状の薄い可撓性ポリマーシートを含んでよく、随意に、ePTFE膜等の多孔質ポリマーを含んでよい。次に、
図13Bを参照すると、丸めたシート1306を熱処理等により処理して、丸めたシートが広がるのを防止し、且つ/又はシートを一体化して付着させることができる。これに代替又は追加して、丸めたシートを可撓性且つ随意にエラストマー系の接着剤を用いて硬化させてよく、接着剤の例として、「Thermoplastic Fluoropolymer-Coated Medical Devices」という名称の米国特許第8,048,440号明細書、及び「Thermoplastic Copolymer of tetrafluoroethylene and perfluoro methyl vinyl ether and Medical Devices Employing the Copolymer」という名称の米国特許第7,462,675号明細書に記載されているテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの熱可塑性コポリマーが挙げられ、この2つの明細書は、その全体が参照により本明細書に援用される。
図13Cに示すように、最後に、丸めたシート1306の長手方向軸線の周りにシートを縮める、即ち圧縮することにより、滑動耐性材料1210を形成できる。加えて、種々の実施形態において、シート状の柔軟性材料1320をマンドレルにらせん状に巻き付け、且つ/又は当該材料1320を含むチューブを長尺部材に被せてはめ込むことにより、滑動耐性材料1210を製造してもよい。
【0072】
次に
図14を参照すると、エンドプロテーゼ送達系1400が図示されている。種々の実施形態において、送達系1400は、イントロデューサーシース等の同心長尺部材1524内に格納された長尺部材102と、エンドプロテーゼ104と、被覆部材106と、エンドプロテーゼ端部の近傍にある末端キャップ1414とを含んでよく、更に随意に、先細の末端キャップ1416を含んでよい。末端キャップ1414により、被覆部材がエンドプロテーゼから垂れ下がるのが防止される。種々の実施形態において、末端キャップ1414とエンドプロテーゼ端部の間のギャップ即ち空間(存在する場合)は、可撓性要素の直径より小さい。より好ましくは、脈管構造で通常遭遇する半径を有する曲線に沿って延在した時の、末端キャップ1414とエンドプロテーゼ端部の間のギャップは、可撓性要素の直径より小さい。このようにして、末端キャップ1414により、エンドプロテーゼがエンドプロテーゼ端部に引っ掛かるのを防止できる。
【0073】
先細の末端キャップ1416は、近位から遠位の方向に直径が増加する。種々の実施形態において、下記で詳述する通り、先細の末端キャップ1416は、その最大幅又は最大直径部分に1つ以上の隆起面特徴物を含んでよい。これらの隆起面特徴物は、同心長尺部材1524の内側端部と摩擦により係合できるので、長尺部材1524が中をスライドできるが、前進して末端キャップ1416に接触した後は、長尺部材に対する引張りを増加することで、先細の末端キャップ1416が同心長尺部材1524を通過できるようになる。例えば、隆起面特徴物は変形可能な材料であってよく、これにより同心長尺部材1524への通過を促進できる。
【0074】
種々の実施形態において、末端キャップ1414は、脈管構造の湾曲部分に配置された時、随意に外半径に沿って屈曲し伸張することができる。例えば、本明細書に記載の低硬度の筒状部品で作られた末端キャップ1414により、幾らかの屈曲を促進できる。他の実施形態では、末端キャップ1414は、ヒダと折り目を有する長手方向に圧縮されたポリマー材料であって、エンドプロテーゼの端部と当接し、更に随意に、
図12Bに図示されるものと同様に、エンドプロテーゼ端部に向かって部分的に変形するポリマー材料を含んでよい。ヒダと折り目により、湾曲部で伸張できる幾らかの貯留長さが得られる。
【0075】
他の実施形態では、末端キャップ1414は、エンドプロテーゼの端部を圧迫する小さな膨張性部材を含んでよい。他の実施形態では、末端キャップ1414は、エンドプロテーゼの端部を圧迫する開放セル状又は閉鎖セル状のポリマー発泡材料を含んでよく、この発泡体は、事前に製造されるかその場で形成される構成部品を含む。
【0076】
本明細書に記載のように、エンドプロテーゼ104は遠位端の他に近位端も有してよい。図示の通り、遠位端は末端キャップ1414と当接してよく、又は末端キャップ1414の近傍に設けてもよい。同様に、図示の通り、近位端も先細の末端キャップ1416と当接してよく、又は先細の末端キャップ1416の近傍に設けてもよい。更に、図示の通り、制限された状態のエンドプロテーゼ104の直径は、末端キャップ1414の直径及び/又は先細の部材1416の遠位部分の直径と実質的に同じであってよい。
【0077】
特に末端キャップ1414の組成及び随意に先細の末端キャップ1416の組成に関して、これらの構成部品は、任意の種々の材料の全部又は一部を含んでよい。例えば、どちらの構成部品も、軽度又は中程度に変形可能な材料、即ち、少なくともエンドプロテーゼに最も近い部分は低硬度の材料を含んでよい。例えば、低硬度材料とは、タイプA尺度のショア硬さが15~70であり得る。種々の実施形態において、末端キャップ1414を、案内部材の放射方向寸法を横切る軸線よりも、案内部材の長手方向軸線と平行する軸線に沿う柔軟性が高くなるように作製してよい。
【0078】
種々の実施形態において、末端キャップ1414は、エンドプロテーゼ104の端部の輪郭に合わせて少なくとも部分的に変形してよい。この部分的変形を実現するには、適切な工程と、この目的に適した任意の方法とを用いてよい。例えば、末端キャップ1414の近位端をエンドプロテーゼ104の遠位端に押し付けてよく、末端キャップ1414(又は、少なくともその近位末端)の変形特性により、末端キャップ1414が少なくとも部分的にエンドプロテーゼ104の端部に合わせて変形できる。これに追加又は代替して、種々の実施形態において、末端キャップ1414は凹面の近位末端を含んでよく、このため、末端キャップの最も薄い部分が最大直径を有する。より薄い部分を有することにより、端部の輪郭に合わせた変形の改善を促進できる。
【0079】
更に末端キャップ1414に関して、随意に、末端キャップ1414の遠位末端位置でカテーテルオリーブ108と連結してもよい。末端キャップ1414とオリーブ108の連結は、任意の適切な方法で行ってよい。例えば、任意の数の適切な手法を含む任意の適切な方法で、且つ/又は本明細書に記載のいずれかの材料を使用して(例えば、熱接着、高周波接着、圧着、糊又は接着剤等)、末端キャップ1414の遠位端を、オリーブ108の近位末端に形成された受入部に嵌め込み、且つ/又は受入部の中で接着させてよい。
【0080】
被覆部材106は、末端キャップ1414の少なくとも一部分を越えて延在し、更に末端キャップ1414を越えて延在してよい。同様に、種々の実施形態において、被覆部材106は、先細の末端キャップ1416の少なくとも一部分を越えて延在してよい。
【0081】
留置時、被覆部材106を除去して(例えばほどいて)、直径が制限された状態からエンドプロテーゼ104を露出又は解放することができる。このプロセスが発生した時、末端キャップ1414により、エンドプロテーゼ104端部との間で被覆部材106に挟み込み、引っ掛かり、又は絡み合いが生じるのを防止できる。より正確に言えば、末端キャップ1414が被覆部材106を案内して、エンドプロテーゼ104の端部を越えるようにする。エンドプロテーゼ104の近位末端でも同じプロセスが発生し得るが、被覆部材106が先細の末端キャップ1416をたどってエンドプロテーゼ104の近位端を越える点が異なる。(随意に、末端キャップ1414が先細の末端キャップ1416と左右対称であってもよい。即ち、末端キャップ1414の先細末端の直径が遠位から近位の方向に向かって増加してもよい。)
【0082】
種々の実施形態において、エンドプロテーゼ104の留置の後及び/又はそれに応答して、留置後の状態が発生し得る。留置後の状態を
図15に示す。図示の通り、エンドプロテーゼ104が留置され、長尺部材102
(第1の長尺部材)が露出している。末端キャップ1414
(第1のキャップ)、先細の末端キャップ1416
(第2のキャップ)の各構成部品に形成された経路(channel)を介して、長尺部材102を末端キャップ1414と先細の末端キャップ1416に連結できる。先細の末端キャップ1416は、長尺部材102に沿って滑動可能であり、末端キャップ1414の近位面と断面及び形状が実質的に同一の遠位面を有する。
【0083】
患者の体腔から送達系1400を除去するには、医師が長尺部材102を直接引き抜くか、又は引き抜きを発生させればよい。これにより、長尺部材102は、イントロデューサーシース又他の同心長尺部材1524(第2の長尺部材)を通じて近位に後退することができる。長尺部材102が後退し続けても、先細の末端キャップ1416は、長尺部材102に沿って滑動可能であり、イントロデューサーシース1524の内径と実質的に同一か又は少し大きい遠位断面を有するので、イントロデューサーシース1524の開放末端1522に当たる所定位置に残存できる。したがって、長尺部材102を後退させた時、末端キャップ1414の近位面は、先細の末端キャップ1416の遠位末端に接近して最終的に接触する。実際に接触すると、末端キャップ1414は摩擦による係合等により長尺部材102に固定されているので、先細の末端キャップ1416に対する逆行防止装置の働きができ、この接合位置で操作者が追加の引張り力を加えれば、同心長尺部材1524の開放端部1522を通って先細の末端キャップ1416を引くことができる。このように、先細の末端キャップ1416は、末端キャップ1414(実質的に先細でない近位面を有してよい末端キャップ)が、同心長尺部材1524の外部シャフトの開放端部1522へと後退するのを促進できる。先細の末端キャップ1416がなければ、長尺部材102を同軸長尺部材1524を介して後退させようとする時、末端キャップ1414が開放端部1522にぶら下がる可能性がある。特に、開放端部1522が脈管構造の湾曲部に位置し、長尺部材102が開放端部1522の位置の接線軸に対して斜めに開放端部1522に進入している場合は、その可能性がある。
【0084】
引き続き先細の末端キャップ1416に注目すると、
図16の略図が示すように、末端キャップ1416の中に経路1602が形成されている。上記の通り、この経路は内部シャフト102を収容する。加えて、輪郭を縮小するために引き紐を収容できる凹部、即ちへこみ1604も表示されており、システム要求に基づいて複数のへこみ又は他の特徴物が存在してよいことが企図されている。
【0085】
図17に示すように、種々の実施形態において、装填漏斗(loading funnel)1702を用いてエンドプロテーゼ104に末端キャップ1414と被覆部材106とを装填できる。特に、装填漏斗1702を通じてエンドプロテーゼ104を送り込むことにより、エンドプロテーゼ104を非制限時の直径から制限時の直径に縮小することができる。被覆部材106は、制限された状態のエンドプロテーゼ104を、装填漏斗1702の縮小直径部分で受け入れることができる。内部長尺部材102は被覆部材106の中を実質的に同軸上に延在できるので、エンドプロテーゼデバイス104が漏斗1702を通って被覆部材106に供給されると、エンドプロテーゼ104も実質的に同軸上に、内部長尺部材102をまたぐことができる。
【0086】
エンドプロテーゼ104を受け入れた後の被覆部材106は、切断等により特定位置で切り離してよい。切断位置はアウトライン1704に沿っていてよく、このアウトライン1704は、図示の通り、エンドプロテーゼ104の遠位末端に実質的に隣接しているが、エンドプロテーゼの遠位端より少し遠位にあってよい。但し、このプロセス中、内部長尺部材102を切断しないよう注意する必要がある。更に、図には特定のアウトライン1704を示しているが、種々の実施形態において、エンドプロテーゼ104の長さ方向にある任意の位置、並びに/又はエンドプロテーゼ104より遠位及び/若しくは近位の任意の位置で、被覆部材106を切断してよい。アウトライン1704を確定した後は、余分な被覆部材106を除去してよい。
【0087】
被覆部材106の切除部分がなくなった状態で、露出した長尺部材に末端キャップ1414を連結できる。より詳細には、種々の実施形態において、長尺部材に末端キャップ1414を取り付け、末端キャップ1414がエンドプロテーゼ104の遠位端又は近位端(例えば遠位頂部)に当接するか当接して圧縮されるまで、長尺部材に沿って末端キャップ1414を前進させてよい。末端キャップ1414を長尺部材に連結するには、この目的に適した任意の方法を用いてよく、例えば、本明細書に記載の手法及び/又は材料のいずれかを用いて連結してよい。例えば、摩擦により長尺部材と係合させる、或いは接着剤等を用いて接着により長尺部材に固定するなどの方法で、末端キャップ1414を連結してよい。更に、熱接着、高周波接着、加圧による嵌め込み又は接合等の方法で、末端キャップ1414を長尺部材102に連結してもよい。
【0088】
先細の末端キャップ1416も、同様にして長尺部材102に連結できる。例えば、長尺部材102のエンドプロテーゼ104より近位の部分から被覆部材106を除去又は切断し、長尺部材106に形成された経路1602を介して、長尺部材102に先細の末端キャップ1416を取り付けることができる。先細の末端キャップ1416がエンドプロテーゼ104の近位末端に当接するか当接して圧縮されるまで、長尺部材102に沿って先細の末端キャップ1416を前進させることができる。但し、上記のように、先細の末端キャップ1416を滑動可能に長尺部材102と連結できるので、先細の末端キャップ1416を長尺部材102と連結させなくてもよい。
【0089】
種々の実施形態において、上記エンドプロテーゼ送達系100、1200、1400の各々に関連する特徴と利点を、望ましい任意の方法で組み合わせてよい。例えば、送達系100は、先細の末端キャップ1416を含むようには上記で説明されていないが、種々の実施形態において、送達系100が先細の末端キャップ1416を含んでよい。同様に、送達系100の圧縮性材料402は、送達系1200に関して開示されている折り目又は畝を有するようには説明されていないが、圧縮性材料402はそうしたテクスチャー及び/又は高次構造を含んでよい。
【0090】
上記のグラフト及び/又はステントグラフトを含むグラフトは、体腔の選択部位内のグラフトとして使用するのに適した任意の材料で作られてよい。グラフトは一種又は種々の材料を含んでよい。更に、グラフトは複数層からなる材料を含んでよく、その材料は同一であっても異なっていてもよい。グラフトは数層をなす材料を有してよいが、そのグラフトは、チューブの形状にされた層(最内部層)と、チューブの形状にされた最も外側の層(最外部層)を有してもよい。幾つかの実施形態では、窓形成ツールを用いてグラフトを有窓にしてよい。
【0091】
多くのグラフト材料が知られており、種々の実施形態において、これらのグラフト材料を組み合わせ、一体化させてグラフトを構成することができる。更に、これらの材料の押出し加工、コーティング、及び/又はラップフィルムからの成形、及び/又はこれらの組み合わせを行ってよい。個々の用途に応じて、ポリマー材料、生分解性材料、及び/又は天然材料を使用してよい。
【0092】
種々の実施形態において、グラフトは合成ポリマーを含んでよく、合成ポリマーの例として、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリホルムアルデヒド、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、エラストマー系有機ケイ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、これらの混合物、ブレンド、及びコポリマーが挙げられる。種々の実施形態において、グラフトは、DACRON(登録商標)、MYLAR(登録商標)を含むポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの一種、KEVLAR(登録商標)等のポリアラミド、共重合したヘキサフルオロプロピレンを有するか有さないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のポリフルオロカーボン(TEFLON(登録商標)又はGORE-TEX(登録商標))、及び多孔質又は非多孔質のポリウレタンで作られてよい。更に、種々の実施形態において、グラフトは延伸フルオロカーボンポリマー(特にPTFE)材料を含んでよい。
【0093】
種々の実施形態において、本明細書で一般に使用するフッ素ポリマーという呼称には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PEA)のコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のホモポリマー、PCTFEとTFEのコポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)のコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリフッ化ビニル(PVF)が含まれ得る。種々の実施形態において、グラフトは、上に列記されている材料の任意の組み合わせを含んでよい。更に、種々の実施形態において、グラフトは、体液に対して実質的に不浸透性及び/又は浸透性であってよい。実質的に不浸透性のグラフトを製造するには、体液に対して実質的に不浸透性の材料から製造してよく、或いは、浸透性材料を、体液に対して実質的に不浸透性になるように処理又は製造する(例えば、上記又は当技術分野で公知の様々な種類の材料を層状にする)ことにより作製してもよい。種々の実施形態において、上記のようなステントグラフト及び/又は側枝ステントグラフトを、ePTFEを含む上記材料の任意の組み合わせで作製してよい。
【0094】
ステント及び/又はステント部材を含むいかなるステントも、制限時及び/又は非制限時に概ね円筒形であってよく、複数のらせん状の周回部又は巻回部を有するらせん状に配置された波状起伏(undulation)を含んでよい。種々の実施形態において、互いに「同相」となるように波状起伏を整列させてよい。より具体的には、波状起伏は、第1方向と、その反対の第2方向に向く頂部を含んでよい。波状起伏が同相である時、隣接し合うらせん状周回部内の各頂部が、近傍のらせん状周回部にある対応する波状起伏の各頂部へと移動するようにして整列する。幾つかの実施形態では、波状起伏は、正弦波形状、U字形状、V字形状、及び/又は卵形状を有してよい。
【0095】
種々の実施形態において、植込み型医療装置の製造に使われる広く知られた材料(又は材料の組み合わせ)をはじめとする、様々な生体適合性材料でステントを製造してよい。このような材料には、316Lステンレススチール、コバルト-クロム-ニッケル-モリブデン-鉄の合金(「コバルト-クロム」)、他のコバルト合金(L605等)、タンタル、ニチノール、ポリマー、生分解性の合金又はポリマー、その他の生体適合性金属が含まれ得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のいかなるステント及び/又はステントグラフトも、バルーン拡張型のステント及び/若しくはステントグラフト、並びに/又は自己拡張型のステント及び/若しくはステントグラフトを含んでよい。更に、幾つかの実施形態では、ステントは、ワイヤが巻かれたステントを含んでよく、このステントは波状起伏を含んでも含んでいなくてもよい。
【実施例】
【0096】
実施例1-送達系の構築
種々の実施形態において、下記のようにエンドプロテーゼ送達系100を製造及び/又は構築できる。概して、内部シャフト102巻回手順の後にエンドプロテーゼ装填手順を実施できる。内部シャフト102巻回手順は、最初に、フィルム巻回装置に連結した一対の加工チャックに加工マンドレル及び/又は適切な内部シャフト102を挿入することから開始できる。巻回装置はフィルムペイオフヘッドを含み、このフィルムペイオフヘッドは、内部シャフト102の長さに沿って移動して、内部シャフト102の周りに本明細書に記載のテープその他の圧縮性材料又は柔軟性材料を巻き付けるように構成されてよい。このように、巻回装置により内部シャフト102に柔軟性材料を巻き付けることができる。種々の実施形態において、フィルムペイオフヘッドは、1回目にシャフト102の軸方向の長さに沿って通過し、2回目にシャフト102に沿って逆方向にも通過できる。しかしながら、他の実施形態では、フィルムペイオフヘッドは、多数か少数かによらず、所望される回数だけシャフト102上を通過できる。
【0097】
加えて、本明細書に記載の通り、1つ以上の可撓性要素110a~110hを内部シャフト102に連結してよい。より詳細には、種々の実施形態において、1つ以上の可撓性要素110a~110hを、任意の適切な構成でシャフト102に取り付けるか接着でき(例えば、上記のように堆積させた柔軟性材料の層に取り付けるか接着する)、且つ/又は、一続き以上若しくは一層以上のフィルムその他の適切な柔軟性材料を各要素110a~110hに重ねて、要素110a~110hをシャフト102に接合できる。このように、内部シャフト巻回手順の結果として、1つ以上の要素110a~110h及び/又は一層以上の柔軟性材料に連結したシャフトが得られる。
【0098】
エンドプロテーゼ104は、エンドプロテーゼ装填手順の中で後にシャフト102に装填できる。種々の実施形態において、この装填手順より前に、シャフト102を1つ以上の可撓性要素110a~110hに連結してよい。したがって、エンドプロテーゼをシャフト102に装填するには、制限されていない状態のエンドプロテーゼ104を挿入してシャフト102に被せ、この構成で装填漏斗に送り込むことができる。加えて、エンドプロテーゼ104を装填漏斗に入れる時、本明細書に記載のように、可撓性要素1410a~110hをエンドプロテーゼ104の1つ以上の頂部に通すことができる。このように、装填漏斗を使用することにより、エンドプロテーゼ104を制限時直径に縮小してシャフト102の周りに設置できる。更に、本明細書に記載のように、被覆部材106を装填漏斗の直径の小さい方の端に配置して、制限状態のエンドプロテーゼ104を、漏斗出口で被覆部材106に送り込むことができる。
【0099】
実施例2-送達系の構築
引き続き、種々の実施形態において、末端キャップ1414及び/又は先細の末端キャップ1416を用いて、下記のようにエンドプロテーゼ送達系を構築及び/又は製造できる。本明細書に記載の通り、装填漏斗を介してエンドプロテーゼ104を装填できる。装填漏斗を介してエンドプロテーゼを装填するプロセスについては、2004年3月9日にCullyらに発行された名称「Compacted implantable medical devices and method of compacting such devices」の米国特許第6,702,845号明細書にも概説されており、その全体が参照により本明細書に援用される。装填漏斗を介してエンドプロテーゼ104を挿入することにより、エンドプロテーゼ104を内部シャフト102上に装填できる。エンドプロテーゼ104の遠位端が最後に漏斗を通過するので、エンドプロテーゼの近位末端が漏斗の小直径位置に到達してから、上記のように被覆部材106に収容される。
【0100】
エンドプロテーゼ104の遠位末端位置で、末端キャップ1414をシャフト102の遠位端に連結できる。例えば、種々の実施形態において、末端キャップ1414は、柔軟性で圧縮性のエラストマー系材料等(例えばショアA硬さ45のPEBAX)を含んでよく、シャフト102と末端キャップ1414の間の圧縮、干渉、又は陥入によりシャフト遠位端にわずかに嵌まりばめされるサイズの内径を有する。種々の実施形態において、末端キャップ1414の外径は、装填漏斗の直径よりも少し小さい直径であってよい。このように、装填漏斗を介して末端キャップ1414をシャフト102の遠位端に連結できる。末端キャップ1414とシャフト遠位端の間のギャップを最小にするため、末端キャップ1414を遠位端に押し付けてよい。更に、上記のように、装填漏斗を介してエンドプロテーゼ104を前進させて、被覆部材106内に収まる制限構成にすることができる。末端キャップ1414をシャフト102の遠位端に接合するには、接着剤及び/又は融解接着手法を用いるなど、任意の適切な手段を使用してよい。
【0101】
同様に、先細の末端キャップ1416をシャフト202の近位端に連結できる。例えば、先細の末端キャップ1416は、柔軟性で圧縮性のエラストマー系材料等を含む、任意の適切な材料を含んでよい。より詳細には、種々の実施形態において、末端キャップ1416はショアA硬さ40のPEBAXを含んでよい。更に、種々の実施形態において、末端キャップ1416の末端及び/又は端部近くに放射線不透過性マーカーを配置してよい。本明細書で論じているように、末端キャップ1416の内径をシャフト102に滑動可能に連結でき、且つ留置前に、先細の末端キャップ1416をシャフト102の遠位端近くに配置できる。
【0102】
実施例3-送達系の構築
種々の実施形態において、PEBAXの小型筒状押出し加工品が得られる。この押出し加工品は、寸法が約1mmID×約1.2mmODであり、ショアA硬さ55を有し得る。ステンレススチール製マンドレルを押出し加工品の内腔に挿入し、固定具において両端を把持し、押出し加工品を回転させることができる。更に、ePTFE膜(1998年9月29日にBRANCAらに発行された名称「Strong, air permeable membranes of polytetrafluoroethylene」の米国特許第5,814,405号明細書に開示されているようなePTFE膜。この文書の全体が参照により本明細書に援用される)を、押出し加工品チューブに巻き付け、例えばWellerハンダごてを用いた熱処理により、押出し加工品に付着させることができる。細長い膜片(例えば、種々の実施形態において幅約80mmの細長片)を、押出し加工品を回転させながら最小の張力を用いて、押出し加工品の中心軸に対して平行に、押出し加工品の周りに長手方向に巻くことができる。このような80mm幅の細長片を使用した場合、送達する医療移植片(例えばエンドプロテーゼ104)の長さより約20mm長くなり得る。したがって、この圧縮性部材の中心に移植片を装填すると、移植片の両端に約10mmの圧縮性材料が露出することになる。種々の実施形態において、異なる数の膜層を付着させてよい。例えば、幾つかの実施形態では約30層の膜を付着させて、エンドプロテーゼ104を装填する圧縮性領域のかさを厚くすることができる。種々の実施形態において、適切な型材及び成形可能材料(例えば注入可能発泡体)を用いて、圧縮性部材を所定位置に形成できる。
【0103】
次に、細長い膜片を切り取り、再び局所加熱を用いて、付着していない端部を基底層に接着させることができる。この時点で、この圧縮性領域を、ステント、ステントグラフト、又は他のエンドプロテーゼ104を装填する領域として使用できる状態となる。装填工程中、エンドプロテーゼ104を半径方向に圧縮して送達寸法にできる。圧縮中、デバイスが圧縮して厚みのある圧縮性部材となり、カテーテル保持品質の高いデバイスになるので、最終的に臨床環境における留置精度が高くなる。また、圧縮された圧縮性材料が、移植片の両端から約10mm延在できる点でも、この拘束型デバイスには利点がある。このことは、後続の送達時と留置時にデバイスを安定させるのに役立つ。随意に、且つ利点を高める目的で、圧縮性材料にシリコーン層(カリフォルニア州カーピンテリアのNuSil社が製品番号MED1137として提供するシリコーン層)を施してもよい。浸漬、噴霧、ハケ塗り等によりシリコーン層を施すことができる。硬化して粘着性の薄膜になると、複数層のePTFE膜が互いに接着するのに役立ち、また、送達と留置の手順中に、エンドプロテーゼ104と被覆部材106が一時的に把持できる粘着面を提供できるという点で、更なる有用性が得られる。
【0104】
以上、種々の代替手段を含む多数の特徴及び利点について、装置及び/又は方法の構造及び機能と共に説明してきた。斯かる開示は、網羅的な記載を意図するものではなく、あくまでも例示を意図するものである。当業者には明らかなように、本発明の原理の範囲内で、且つ、添付の特許請求の範囲の記載に使用される用語の広範且つ一般的な意味によって示される最大の範囲において、特に構造、材料、要素、成分、形状、サイズ、及び各部の配置、並びにこれらの組合せに対して、種々の改変を加えることが可能である。これら種々の改変は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない限りにおいて、本発明に包含されることが意図される。