(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】プラミノーゲンを含む医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20221003BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221003BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20221003BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221003BHJP
A61K 9/19 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/12
A61P7/02
A61P17/02
A61K9/19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020201221
(22)【出願日】2020-12-03
(62)【分割の表示】P 2017550965の分割
【原出願日】2015-12-18
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517214127
【氏名又は名称】プロメティック・バイオセラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ProMetic BioTherapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ロビタイユ
(72)【発明者】
【氏名】ダビダ・ブラックマン
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー・プラム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ガルソン-ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ベティ・ユー
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544762(JP,A)
【文献】特開昭57-193418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/48
A61K 9/08
A61K 47/18
A61K 47/02
A61K 47/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 2mg/ml~60mg/mlの濃度の、天然ヒトGlu-プラスミノーゲン、または天然ヒトGlu-プラスミノーゲンとのアミノ酸配列同一性が少なくとも90%である、その生物学的に活性な変異体;
- 30mM~100mMの濃度の
塩化ナトリウム
である張性調整剤;そして
- 10mM~100mMの濃度の、アルギニン、アルギニン塩、グリシンまたはグリシン塩である安定化剤
を含み、
180mOsm~350mOsmのオスモル濃度を有し、
5.0~6.0のpHを有し、
アプロチニンを含まない、
対象に皮下または皮内投与するための液体医薬組成物。
【請求項2】
安定化剤がアルギニンまたはアルギニン塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
安定化剤がグリシンまたはグリシン塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
pHが5.0~5.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
天然ヒトGlu-プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、5mg/ml~30mg/mlである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
天然ヒトGlu-プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、30、20、10または5mg/mlである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
安定化剤の濃度が25mM~75mMである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
張性調整剤の濃度が35mM~75mMである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
天然ヒトGlu-プラスミノーゲンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
当該組成物が、(i)100mlあたり、または(ii)100ml以下の名目上の含量を有する容器あたり、2000個未満の10μm以上の粒子量を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
当該組成物が、(i)100mlあたり、または(ii)100ml以下の名目上の含量を有する容器あたり、1000個未満の10μm以上の粒子量を含む、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
皮下投与に適している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
再構成組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
対象においてプラスミノーゲン欠乏症を治療するために対象に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
プロテアーゼ阻害剤を含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
酢酸緩衝剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
pH5.0~5.5の酢酸緩衝剤を含み、
- 5mg/ml~20mg/mlの天然ヒトGlu-プラスミノーゲン;
- 35mM~75mMの塩化ナトリウム;そして
- 25mM~75mMのアルギニンまたはアルギニン塩
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、プラスミノーゲンを含む医薬組成物、及びその治療のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プラスミノーゲンは、
図1Aに示すプラスミンの酵素前駆体(チモーゲン)である。ヒトプラスミノーゲン前駆体のアミノ酸配列を
図1Bに示す。ヒトプラスミノーゲンは、約90kDaの分子量及び約7.0のpIを有する791個のアミノ酸(前駆体=810個のアミノ酸)を含むが、N末端活性化ペプチドの異なるグリコシル化及び/または除去は、6.2~8.0の範囲のpIをもたらし得る。それは、24の鎖内ジスルフィド架橋、5つのクリングル・ドメイン(フィブリンとインヒビターα2-アンチプラスミンとの結合に関与する)、セリンプロテアーゼドメイン(P)、及び最初の77個のアミノ酸から構成される活性化ペプチド(AP)を含む一本鎖タンパク質である。第2のO-結合部位が同定されているが(Goldberg,2006)、1つのN結合グリコシル化部位及び1つのO-結合部位が存在する。循環中のプラスミノーゲンの約70%はO-結合グリコシル化のみを含み、残りはN-及びO-結合糖の両方を含む。
【0003】
天然のプラスミノーゲンは、2つの主要な形態のGlu-プラスミノーゲン(Glu-Pg)及びLys-プラスミノーゲン(Lys-Pg)で産生され、これらはグルタミン酸またはリシンのN末端アミノ酸にちなんで命名された。Glu-Pgは、遺伝子配列(活性化ペプチドを除く)によって指定される全アミノ酸配列から構成され、一方、Lys-Pgは、Lys-77とLys-78の間(
図1B中の下線部)のGlu-Pgの切断の結果である。Lys-Pgの循環半減期は、Glu-Pgよりもかなり短い(Glu-Pgについては2-2.5日、Lys-Pgについては0.8日)。Glu-Pgは、血漿中に存在するPgの優性型であり、循環中に検出されるLys-Pgはごくわずかである(Violand、B.N.,Byrne、R.,Castellino F.J (1978)The effect of α-,ω-Amino Acids on Human Plasminogen Structure and Activation(ヒトプラスミノーゲン構造及び活性化に及ぼすα-、ω-アミノ酸の影響).J Biol Chem.253(15):5395-5401; Collen D,Ong EB,Johnson AJ.(1975)Human Plasminogen: In Vitro and In Vivo Evidence for the Biological Integrity of NH2-Terminal Glutamic Acid Plasminogen(血栓症研究ヒトプラスミノーゲン:NH2-末端グルタミン酸プラスミノーゲンの生物学的健全性のインビトロ及びインビボの証拠).Thrombosis Research.7(4):515-529)。
【0004】
プラスミノーゲンは肝臓で合成され、血漿に分泌される。プラスミノーゲンは身体全体に分布し、活性化のための条件が存在する時、プラスミノーゲンプロ酵素は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(u-PA)によって活性酵素プラスミンに変換される。プラスミンはフィブリンを分解し、潜在性マトリックスメタロプロテイナーゼ(pro-MMP)を活性MMPに変換し、それは組織治癒/リモデリングプロセスの一部として細胞外マトリックス(ECM)をさらに分解する。t-PAによるプラスミノーゲン活性化は主としてフィブリン恒常性に関与するが、その受容体u-PARと複合体を形成するu-PAによるプラスミン生成は組織リモデリングで役割を果たす。
【0005】
プラスミンは、人工デバイス及び血液透析グラフトにおける血栓性閉塞のクリアランス、及び後部硝子体剥離(PVD)の治療のために、その使用可能性について研究されている(US6,969,515;US2010/0104551)。
【0006】
プラスミノーゲンは、創傷治癒、鼓膜穿孔の治癒、歯周創傷の治癒、感染症、口腔健康、糖尿病性潰瘍、血栓溶解徴候(冠動脈血栓症等)、組織への再灌流傷害、虚血、梗塞、脳浮腫、微小循環の改善、及び補体経路の調節等の治療適応症において、その使用が研究されている(US8,637,010; US 8,679,482;US8,318,661;WO95/12407;EP0,631,786)。現在のところ、プラスミノーゲンは薬として医薬品市場にはない。
【0007】
歴史的には、Lys-Pgは、血液学的目的のために一定期間薬学的には商品化されたが、2000年以来科学的または医学的に使用されていない。Lys-Pgの製剤は、Schottら,1998,The New England Journalof Medicine,Vol.339,No.23,pp.1679-1686)に記載されている。利用可能なLys-Pgは臨床的に使用され、基礎疾患のハイポプラスミノゲニミア(hypoplasminogenimia)(プラスミノーゲン欠乏症I型)の臨床症状である、木質性結膜炎の治療について研究された。従って、Lys-Pg濃縮物の全身投与が試験されている。Kraftら(Kraft J、Lieb W,Zeitler P,Schuster V.(2000)Ligneous conjunctivitis in a girl with severe type I plasminogen deficiency(重度のI型プラスミノーゲン欠乏症の少女の木質結膜炎).Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol.238(9):797-800)は、重度の低倍増分泌原性血症を有する小児におけるLys-Pgの毎日の点滴が、結膜偽膜の部分分解をもたらしたことを報告した。Schottら(1998)は、6ヵ月齢の小児において、Lys-Pg製剤を連続点滴として用い、その後に毎日ボーラス注射として用いて処置すると、4週間以内に木質結膜炎の完全な退行をもたらし、気道における高粘膜分泌の正常化並びに皮膚の創傷治癒ももたらした。Schusterら(Schuster V,Hugle B,Tefs K(2007)Plasminogen deficiency.J Thromb Haemost 5(12):2315-2322)は、ホモ接合体または化合物ヘテロ接合体(特定の遺伝子座での2つの異なる突然変異対立遺伝子の存在、1対の各染色体上の1つ)のハイポプラスミノゲニミア(hypoplasminogenimia)における患者のプラスミノーゲンレベルは、プラスミノーゲン抗原血漿レベルが<1~9mg/dL、機能性プラスミノーゲン活性が<1%~51%の範囲であった。これらの患者の大部分はいくらかの残留プラスミノーゲン活性レベルを有することに注目することが重要である。従って、プラスミノーゲンの置換は、それが内因性タンパク質であり、免疫原性または線維素溶解活性の懸念を有するとは予想されないので、有効であると期待される。全身性または局所性のプラスミノーゲン濃縮物は、病変の分解及び再形成の停止をもたらす有効な治療として明確に文書化されているが(Watts P,Suresh P,Mezer E,Ells A,Albisetti M,Bajzar L,Marzinotto V,Andrew M,Massicotle P,Rootman D(2002)Effective treatment of ligneous conjunctivitis with topical plasminogen(局所プラスミノーゲンによる木質結膜炎の効果的な治療).Am J Ophthalmol 133(4):451-455,Heidemann DG,Williams GA,Hartzer M,Ohanian A,Citron ME(2003)Treatment of ligneous conjunctivitis with topical plasmin and topical plasminogen (木質結膜炎の局所プラスミン及び局所プラスミノーゲンによる治療).Cornea 22(8):760-762; 及びSchott,1998)、局所用または全身療法用の精製プラスミノーゲンの製品は市販されていない。
【0008】
ごく最近になって、I型プラスミノーゲン欠損(Clinical Trials.gov Identifier:NCT02312180)の治療及びGlu-Pg(Clinicaltrials.GovI dentifier:NCT01554956)の局所的点眼を利用する木質結膜炎の臨床症状の1つの治療にGlu-Pgを利用する臨床試験がおこなわれた。
【0009】
タンパク質は、その構造的特徴を変化させること(内部的に)及び/またはそれらと接触する成分を制御する(外部的に)ことによって、安定化され得る。いくつかのタンパク質は、しばしば残念なことに構造的不安定性をもたらすその物理化学的特性のために、医薬製剤における取り扱い及び挙動に関して特定の課題を提起している。それらは実際に例えば次のような:1)加水分解、酸化反応、脱アミノ化、またはイソASPまたは分子内短縮等の構造再編成を含む、関連する不純物の形成につながる化学プロセス、または2)凝集/重合を生じさせ、従って生物学的活性に影響を及ぼし、潜在的に免疫原性を増強し得る構造的変化を生じる物理的プロセス、等の様々なタイプの分解を受けることがある。
【0010】
製剤開発は、一般に、活性医薬成分(API)が、それが薬学的に許容される薬物物質に変換され得る十分な程度に特徴づけられるプロセスに言及する。正確に折りたたまれ生物学的に活性な構造が存在することを確認するために、薬物物質の生物物理学的特性化を実施しなければならない。溶液中のタンパク質の三次構造を調査し、タンパク質構造に対する異なる製剤条件の安定性及び効果を評価するために、いくつかの分光技術(蛍光、CD、DSC、DLS等)を使用することができる。(Volkin,DBら、“Preformulation studies as an essential guide to formulation development and manufacture of protein pharmaceutical”(タンパク質医薬品の製剤開発と製造の必須ガイドとしての前製剤研究). Steve L.NailとMichael J.Akers編,Kluwer Academic 2002,Chapter 1,page 1-39; Cheng,W.ら“Comparison of High-Throughput Biophysical Methods to Identify Stabilizing Excipients for a Model IgG2 Monoclonal Antibody: Conformational Stability and Kinetic Aggregation Measurements“(モデルIgG2モノクローナル抗体の安定化用賦形剤を同定するためのハイスループット生物物理学的方法の比較:配座安定性及び凝集速度測定).Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.101,No.5,page 1701-1720,2012)。さらに、しばしば製薬業界は、薬剤物質の放出のための生物学的アッセイを実施することによって、APIの構造的完全性を確認する。これらをもとに、好ましい製剤が、その処方によって不注意に修飾されていないことを確認される。プラスミノーゲンは、冠動脈血栓症、人工デバイス及び血液透析グラフトにおける血栓閉塞のクリアランスなどの血栓溶解徴候のため、及び組織再灌流損傷のため、虚血、不完全骨折、脳浮腫の治療のため、或いは微小循環を改善するために、プラスミンの調製に主に使用されるタンパク質である(WO95/12407;US6,969,515;EP0,631,786)。
【0011】
プラスミノーゲンの投与は、冠動脈血栓症のような血栓症の徴候、組織への再灌流傷害の治療、虚血、梗塞、脳浮腫の治療において、或いは微小循環、創傷治癒、鼓膜穿孔の治癒、歯周創傷の治癒、感染症、口腔健康、糖尿病性潰瘍、プラスミノーゲン欠乏症及び補体経路の調節を改善するため、有用であることも分かっている(WO95/12407;EP0,631,786;US8,637,010;US8,679,482;US8,318,661)。
【0012】
プラスミノーゲンを処方する際に遭遇するいくつかの課題がある。いくつかの問題は、プラスミノーゲンを分解するプラスミノーゲン製剤のプラスミン汚染に起因する。アプロチニン、リジン、フッ化フェニルメタンスルホニル、大豆トリプシンインヒビターまたはセリンプロテアーゼインヒビターの添加等のプラスミノーゲンの分解を回避するために、様々なアプローチが使用されている(US4,177,262、US4,361,653、US5,304,383)。
【0013】
他の困難さは、プラスミノーゲンが水性溶媒中に可溶化された場合の糸状物質の混濁または存在によって代表される。この欠点を克服するために、プラスミノーゲンと、例えば非イオン性界面活性剤またはスクロース、アミノ酸及びアルブミンの混合物との組み合わせが提案されている(WO94/15631)。
【0014】
ヒトの治療的使用のためのGlu-Pgの製剤商品は知られていない。知られているGlu-Pgの唯一の製剤は、研究のためのもののみである。
【0015】
プラスミノーゲンの医薬組成物の開発が必要である。
【0016】
本明細書は、多くの文献を参照し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、プラスミノーゲンを含む医薬組成物、及びその使用(用途)に関する。
【0018】
本発明は下記項目1~61に関する:
1.
-プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体;
-張性調整剤;及び
-安定化剤;
を含み、且つ
約3.0~約10.0のpHを有する医薬組成物。
【0019】
2.pHが5.0~8.0;または6.0~8.0;または6.5~7.5である項目1に記載の医薬組成物。
【0020】
3.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、約0.01mg/ml~約80mg/ml、または約5mg/ml~約60mg/mlである項目1に記載の医薬組成物。
【0021】
4.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、約40、30、20,10または5mg/mlである項目3に記載の医薬組成物。
【0022】
5.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、当該組成物の全タンパク質含量の少なくとも80%であるか、または当該組成物の総タンパク質含量の90%を超過する項目1~4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0023】
6.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、組成物の全タンパク質含量の95%または98%を超過する項目5に記載の医薬組成物。
【0024】
7.安定化剤が、(i)アミノ酸、(ii)アミノ酸塩、(ii)アミノ酸類似体、または(iv)(i)、(ii)及び/または(iii)の任意の混合物を含む項目1~6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0025】
8.アミノ酸、アミノ酸塩またはアミノ酸類似体が、アルギニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、システイン、リジン、リジン類似体またはイプシロン-アミノカプロン酸である項目7に記載の医薬組成物。
【0026】
9.前記安定化剤がアルギニンである項目8に記載の医薬組成物。
【0027】
10.安定化剤が約20mM~約200mMの濃度を有する項目1~9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0028】
11.安定化剤が約25mM~約75mMの濃度を有する項目10に記載の医薬組成物。
【0029】
12.張性調整剤が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、シクロデキストリン、ラフィノース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、グリシングルタミン酸、アラニン、デキストラン、PVP(ポリビニルピロリドン)、またはこれらの任意の組み合わせである項目1~11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0030】
13.張性調整剤が、塩化ナトリウムである項目12に記載の医薬組成物。
【0031】
14.張性調整剤が、約30mM~約250mMの濃度で存在する請求項1~13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0032】
15.張性調整剤が、約25mM~約50mMまたは約25mM~約35mMの間の濃度で存在する項目14に記載の医薬組成物。
【0033】
16.さらに増量剤(bulking agent)を含む項目1~15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0034】
17.増量剤が、グリシン、グルタミン酸、アラニン、マンニトール、ソルビトール、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、PVP(ポリビニルピロリドン)、マンニトール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、キシリトールまたはこれらの任意の組み合わせである項目16に記載の医薬組成物。
【0035】
18.増量剤が、マンニトールまたはソルビトールである項目17に記載の医薬組成物。
【0036】
19.増量剤が、約50mM~約300mMの濃度にある項目16~18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0037】
20.増量剤が、約50mM~約125mMの濃度にある項目19に記載の医薬組成物。
【0038】
21.さらに還元糖を含む項目1~20のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0039】
22.還元糖が、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、スクロースまたはこれらの任意の組み合わせである項目21に記載の医薬組成物。
【0040】
23.さらに非還元糖を含む項目1~22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0041】
24.非還元糖が、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ラフィノース、またはこれらの任意の組み合わせである項目23に記載の医薬組成物。
【0042】
25.当該医薬組成物は、約180mOsm~約350mOsmの間のオスモル濃度を有する項目1~24のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0043】
26.さらに防腐剤を含む項目1~25のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0044】
27.防腐剤が、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、グリセロール、キシリトール、レゾルシノール、カテコール、2,6-ジメチルシクロヘキサノール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、2-クロロフェノール、塩化ベンゼトニウム、メルチオレート(チメロサール)、安息香酸(プロピルパラベン)MW180.2、安息香酸MW122.12、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、またはこれらの任意の組合せである項目26に記載の医薬組成物。
【0045】
28.防腐剤の濃度は約0.005~約10%(w/v)であり項目26または27に記載の医薬組成物。
【0046】
29.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、ヒトプラスミノーゲンである項目1~28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0047】
30.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、約80%を超えるGlu-プラスミノーゲンから構成されている項目1~29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0048】
31.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体がGlu-プラスミノーゲンである項目1~29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0049】
32.当該組成物が、100mlあたり6000個未満の10μm以上の粒子数を含む項目1~31のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0050】
33.粒子数が、100mlあたり2000または1000粒子未満である項目32に記載の医薬組成物。
【0051】
34.静脈内、皮下、局所、皮内、眼科及び/または筋肉内投与に適している項目1~33のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0052】
35.液体組成物、凍結乾燥に適した液体組成物、凍結に適した液体組成物、凍結乾燥組成物、凍結組成物または再構成組成物である項目1~34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0053】
36.液体、ゲル、クリーム、または軟膏である項目1~34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0054】
37.薬剤として使用される項目1~36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0055】
38.100mlあたり6000粒子未満の10μm以上の粒子数を含むプラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体を含む医薬組成物。
【0056】
39.粒子数が、100mlあたり2000または1000粒子未満である項目38に記載の医薬組成物。
【0057】
40.さらに安定化剤を含む項目38または39に記載の医薬組成物。
【0058】
41.安定化剤が、(i)アミノ酸、(ii)アミノ酸塩、(ii)アミノ酸類似体、または(iv)(i)、(ii)及び/または(iii)の任意の混合物を含む項目40に記載の医薬組成物。
【0059】
42.アミノ酸、アミノ酸塩またはアミノ酸類似体が、アルギニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、システイン、リジン、リジン類似体またはイプシロン-アミノカプロン酸である項目41に記載の医薬組成物。
【0060】
43.安定化剤がアルギニンである項目42に記載の医薬組成物。
【0061】
44.安定化剤が約25mM~約75mMの濃度を有する項目40~43のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0062】
45.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、約0.01mg/ml~約80mg/mlである項目38~44のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0063】
46.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体の濃度が、約5mg/ml~約60mg/mlである項目45に記載の医薬組成物。
【0064】
47.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、当該組成物の全タンパク質含量の約95%を超過しているか、または当該組成物の総タンパク質含量の約98%を超過している項目38~46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0065】
48.さらに張性調整剤を含む項目38~47のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0066】
49.張性調整剤が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、ラフィノース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、グリシングルタミン酸、アラニン、デキストラン、PVP(ポリビニルピロリドン)、またはこれらの任意の組み合わせである項目48に記載の医薬組成物。
【0067】
50.張性調整剤が、塩化ナトリウムである項目49に記載の医薬組成物。
【0068】
51.張性調整剤が、約30mM~約250mMの濃度で存在する項目48、49または50に記載の医薬組成物。
【0069】
52.さらに増量剤を含む項目38~51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0070】
53.増量剤が、グリシン、グルタミン酸、アラニン、マンニトール、ソルビトール、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、PVP(ポリビニルピロリドン)、マンニトール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、キシリトールまたはこれらの任意の組み合わせである項目52に記載の医薬組成物。
【0071】
54.増量剤が、マンニトールまたはソルビトールである項目53に記載の医薬組成物。
【0072】
55.増量剤が、約50mM~約300mMの濃度にある項目52、53または54に記載の医薬組成物。
【0073】
56.医薬組成物は、約180mOsm~約350mOsmの間のオスモル濃度を有する項目38~55のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0074】
57.組成物が約6.5~約8.0のpHを有する項目38~61のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0075】
58.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、ヒトプラスミノーゲンである項目38~57のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0076】
59.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体が、80%を超えるGlu-プラスミノーゲンから構成されている項目38~58のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0077】
60.プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体がGlu-プラスミノーゲンである項目38~58のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0078】
61.薬剤として使用される項目38~60のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0079】
本発明のさらなる態様は、本明細書の以下の説明、請求項、及び一般化から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1A】そのクリングル・ドメイン、プラスミン切断部位及びストレプトキナーゼ結合部位を示すプラスミノーゲンの一次構造の概略図である。
【
図1B】ヒトプラスミノーゲン前駆体のアミノ酸配列を示す。成熟形態の配列はボールド体であり、その間にLys-Pgを生成するための切断が存在する2つのリジン残基に下線が引かれている。
【
図2】凍結乾燥後の製剤1のプラセボ(Pgなし)を含有するバイアルの写真である。
【
図3】凍結乾燥後の製剤1(表1Aに記載)を含有するバイアルの写真である。
【
図4】凍結乾燥後の製剤2のプラセボ(Pgなし)を含有するバイアルの写真である。
【
図5】凍結乾燥後の製剤2(表1Aに記載)を含有するバイアルの写真である。
【
図6】凍結乾燥後の製剤3のプラセボ(Pgなし)を含有するバイアルの写真である。
【
図7】凍結乾燥後の製剤3(表1Aに記載)を含有するバイアルの写真である。
【
図8】凍結乾燥後の製剤4のプラセボ(Pgなし)を含有するバイアルの写真である。
【
図9】凍結乾燥後の製剤4(表1Aに記載)を含有するバイアルの写真である。
【
図10】凍結乾燥後の製剤5のプラセボ(Pgなし)を含有するバイアルの写真である。
【
図11】凍結乾燥後の製剤5(表1Aに記載)を含有するバイアルの写真である。
【
図12】10mM Tris-HCl、35mM NaCl、pH8.0、及び28.5mM(0.5%)のアルギニン中にプラスミノーゲン20mg/mlを含有する凍結乾燥組成物no.F0498のバイアルの写真である。
【
図13】10mM リン酸Na、35mM NaCl、pH7.2、28.5mM(0.5%)のアルギニン及び54mM(1%)マンニトール中にプラスミノーゲン10mg/mlを含有する凍結乾燥組成物no.F0499のバイアルの写真である。
【
図14】10mM リン酸Na、35mM NaCl、pH7.2、28.5mM(0.5%)のアルギニン及び54mM(1%)マンニトール中にプラスミノーゲン20mg/mlを含有する凍結乾燥組成物no.F0459のバイアルの写真である。
【
図15】水(サンプル0)、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5(サンプル1)、10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2(サンプル2)及び10mMのトリス-HCl緩衝液pH8.0(サンプル3)中に、5mg/mlのプラスミノーゲン(それぞれ、順に0.02、20、100、800NTUの濁度標準近くである)を含むバイアルの写真である。
【
図16】35mM NaCl及び28.5mM(0.5%)Argがサンプル1、2及び3に添加されたことを除いて、
図12に示されたものと同じバイアルの写真である。
【
図17】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図17)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図18)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図19)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaClを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【
図18】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図17)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図18)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図19)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaClを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【
図19】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図17)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図18)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図19)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaClを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【
図20】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図20)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図21)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図22)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaCl及び0.5%マンニトールを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【
図21】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図20)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図21)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図22)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaCl及び0.5%マンニトールを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【
図22】クエン酸ナトリウム緩衝液中pH6.5(
図20)、リン酸ナトリウム緩衝液中pH7.2(
図21)、及びトリス緩衝液中pH8.0(
図22)における、0.5%のグリシン、アルギニン、アラニンを含み、アミノ酸を含まない10mgのプラスミノーゲン、35mMのNaCl及び0.5%マンニトールを含有する組成物について、4時間にわたる濁度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
[発明の詳細な説明]
本明細書中には、プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体を含む医薬組成物が開示される。
【0082】
本明細書においてまた、
- プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体;
- 張性調整剤;及び
- 安定化剤;
を含み、且つ
約3.0~約10.0、好ましくは約5.0~約8.0;より好ましくは約6.0~約8.0;さらに好ましくは約6.5~約7.5のpHを有する医薬組成物が記載される。
【0083】
本発明は、増大した堅牢性を有するプラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体を含む医薬組成物に関する。本発明は、プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体を含む医薬組成物であって、組成物100mL当たり6000粒子未満または組成物100mLあたり5000粒子未満、または組成物100mLあたり4000粒子未満、または組成物100mL当たり3000粒子未満、または組成物100mL当たり2000粒子未満または組成物100mL当たり1000粒子未満の10μm以上の粒子数を有する。本発明の一実施形態では、凍結乾燥及び再構成の後、粒子の数は低いままである。本発明の一実施形態では、同じ組成の繰り返し調製は、粒子数の変動をもたらさない。
【0084】
本明細書で使用される「プラスミノーゲン」という用語は、任意の動物、例えば哺乳動物(例えばヒト)由来の任意の形態の天然プラスミノーゲンポリペプチド(例えば、Glu-プラスミノーゲンまたはLys-プラスミノーゲン)を指す。プラスミノーゲンはプロ酵素であり、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(u-PA)によって活性酵素プラスミンに変換される。プラスミンはフィブリンを分解し、潜在性マトリックスメタロプロテイナーゼ(pro-MMP)を活性MMPに変換し、それは組織治癒/リモデリングプロセスの一部として細胞外マトリックス(ECM)をさらに分解する。本明細書で使用される用語「生物学的に活性な変異体」は、天然のプラスミノーゲンの生物学的活性、即ち、フィブリンを分解し、潜在マトリックスメタロプロテイナーゼ(pro-MMP)を活性なMMPに変換し得るプラスミンポリペプチドに、(t-PA及び/またはu-PAにより)変換され得る能力、を保持する突然変異プラスミノーゲンポリペプチドを指す。変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失/切断(短縮)(N末端、C末端及び/または内部アミノ酸欠失/切断)、付加(N末端、C末端及び/または内部アミノ酸付加)を含み得る。生物学的に活性な変異体は、天然のプラスミノーゲンポリペプチドのものより低い、高い、または類似の生物学的活性(例えば、得られるプラスミンの酵素活性)を示し得る。実施形態において、変異体は、天然のプラスミノーゲンポリペプチドと少なくとも60、70、75、80、85、90、または95%のアミノ酸配列同一性を有する。生物学的に活性なプラスミノーゲン変異体は、例えば、WO2012/093132、WO2013/024074及びWangら(1995、Protein Science 4,1758-1767)に記載されており、1つ以上のクリングル・ドメイン及び/またはその一部を欠く、「ミッドプラスミノーゲン」、「ミニプラスミノゲン」、「マイクロプラスミノゲン」及び「デルタプラスミノーゲン」と一般に呼ばれるプラスミノーゲンの切断(短縮)変異体を含む。一実施形態では、プラスミノーゲンはヒトプラスミノーゲンである。さらなる実施形態では、組成物は天然のヒトプラスミノーゲンを含む。プラスミノーゲンは、いくつかの供給源から得ることができる。それは、組換え合成によって得ることができ、或いは血液、血漿または血液由来の溶液から抽出/精製することができる。プラスミノーゲンは、コーン(Cohn)分画または沈殿によって血液または血漿から抽出することができる。プラスミノーゲンは、WO2006/120423に記載の方法等の結合アフィニティークロマトグラフィーにより、血漿または血液由来の溶液から精製することができ、或いは組換えによって産生することができる。
【0085】
一実施形態において、プラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体は、約0.01mg/ml~約80mg/mlの濃度で存在し;好ましくは約1mg/ml~約60mg/ml;好ましくは約5mg/ml~約60mg/ml;好ましくは約5mg/ml~約40mg/ml;好ましくは約2mg/ml~約30mg/ml、より好ましくは約2mg/ml~約20mg/ml、さらに好ましくは約80、70、60、50、40、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05または0.01mg/mlの濃度で存在する。
【0086】
本発明の一実施形態では、医薬組成物中に含まれるプラスミノーゲンまたはその生物学的に活性な変異体は、約80%を超える、または約90%を超えるか、または約95%を超えるか、または 約98%を超える純度を有する。「約」という用語は、おおよそ10%の値の変動を意味する
【0087】
本組成物のpHは、約3.0~約10.0であり得る; 約5.0~約8.0;.6.0~約8.0;または約6.5~約7.5である。実施形態において、本組成物のpHは、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、8.0、8.5、9.0または10.0である。このようなpHで組成物を維持するために、本発明の組成物は緩衝剤を含むことが好ましい。所望のpHに応じて以下の緩衝液を含む多数の緩衝液を本発明の範囲内で用いることができる:
【0088】
一実施形態では、緩衝液は、2つの緩衝液の組み合わせを含む;例えばクエン酸塩/リン酸塩、クエン酸塩/ヒスチジン、酢酸塩/ヒスチジンまたはコハク酸塩/ヒスチジンである。本発明の一実施形態では、緩衝液はクエン酸緩衝液を含まない。別の実施形態において、緩衝液はクエン酸塩、リン酸塩(K2HPO4/NaHPO4)、ヒスチジンまたはコハク酸塩である。別の実施形態では、緩衝液はリン酸塩(K2HPO4/NaHPO4)、ヒスチジンまたはコハク酸塩である。
【0089】
一実施形態では、緩衝液の濃度は、約10mM~約50mM、または約10mM~約30mM、例えば約2mMまたは約10mMである。
【0090】
本明細書で使用される場合、「張性調整剤」は、医薬組成物の張性(tonicity)を調節するために使用される化合物を指す。一実施形態では、張性調整剤は、組成物を等張にする量で存在する。別の実施形態では、張性調整剤は、組成物を高張または低張にする量で存在する。一実施形態において、張性調整剤は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、Na2SO4、ZnCl2、ホウ酸塩、薬学的に許容される一価塩、薬学的に許容される二価塩、薬学的に許容される三価塩、薬学的に許容される四価塩、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ラクトース、ソルビトール、デキストロース、シクロデキストリン、ラフィノース、糖アルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、グリシングルタミン酸、アラニン、デキストランPVP(ポリビニルピロリドン)、またはそれらの任意の組み合わせである。「等張性」は、本発明の組成物が、ヒトの血液の浸透圧と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。張性調整剤は、一般に、約250~約330mOsmのオスモル濃度(浸透圧)を有する。オスモル濃度は、例えば、蒸気圧または氷凍結型オスモル濃度計(osmometer)を使用して測定することができる。一実施形態では、医薬組成物は、2つの張性調整剤の混合物を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、3つの張性調整剤の混合物を含む。一実施形態では、張性調整剤は糖であるか、または糖もしくは糖の混合物を含む。一実施形態では、張性調整剤は塩化ナトリウムである。一実施形態では、張性調整剤濃度の濃度は、約30mM~約250mM、または約20mM~約150mM、または約30mM~約100mMである。一実施形態では、張性調整剤濃度の濃度は、約34mM、約35mM、または約68mM、または約75mMである。一実施形態では、組成物の得られる重量オスモル濃度が所望の範囲内に入るように張性調整剤の濃度を調節する。
【0091】
一実施形態では、組成物は増量剤をさらに含む。本明細書で使用される「増量剤」は、組成物のバルク質量を増加させる化合物/薬剤を指す。増量剤の例としては、グリシン、グルタミン酸、アラニン、マンニトール、ヒドロエチルデンプン、デキストラン、PVP(ポリビニルピロリドン)、マンニトール、ソルビトール、オリゴ糖由来の糖アルコール、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、キシリトール、ポリエチレングリコール 、スクロース、グルコース、マルトース、キシリトール、NaCl、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、張性調整剤としても役立つ。実施形態において、増量剤の濃度は、約50mM~約300mMであり;または約100mM~約200mM、または約150mM、または約50mM~約150mM、または約108mM、または約54mMである。
【0092】
一実施形態では、張性調整剤及び増量剤は、張性調整剤/増量剤比が約1.0~約15.0(重量/重量)であるような濃度である。約1.0~約10.0、約3.0~約10.0、約5.0~約10.0、例えば、約5.0、約8.0、または約10.0である。一実施形態では、増量剤の濃度は、張性調整剤/増量剤比が所望の範囲内になるように張性調整剤の濃度に基づいて調節される
【0093】
実施形態では、組成物は、担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、緩衝剤等の1つ以上の追加の薬学的に許容される成分をさらに含む。
【0094】
一実施形態では、医薬組成物は、さらに糖、例えば還元糖及び/または非還元糖を含む。本明細書で使用される場合、「還元糖」は、金属イオンを還元することができるか、或いはタンパク質中のリシン及び他のアミノ基と共有結合的に反応することができるヘミアセタール基を含有するものであり、「非還元糖」は、還元糖のこれらの性質を有しないものである。一実施形態では、還元糖は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコースまたはそれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、非還元糖は、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、ラフィノースまたはこれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、還元糖の存在下で凍結乾燥される。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、非還元糖の存在下で凍結乾燥される。
【0095】
実施形態において、本発明の医薬組成物は、約180mOsm~約350mOsmのオスモル濃度;または約250mOsm~約350mOsm、または約200mOsm~約300mOsmのオスモル濃度を有する。特定の実施形態では、例えば、本組成物が凍結乾燥で調製される場合、それは350mOsmより大きいオスモル濃度を有し得る。このような場合、再構成された溶液は、成分を希釈しオスモル濃度を低下させるために、組成物の容量よりも大きい容量を有し得る。また、組成物を小容量の投与のために設計する場合、組成物の重量オスモル濃度は350mOsmよりも高くなり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「安定化剤」は、溶液中のプラスミノーゲンを安定化させる薬剤を指す。一実施形態では、安定化剤は、アミノ酸、アミノ酸塩、アミノ酸類似体、またはこれらの任意の混合物を含む。さらなる実施形態において、アミノ酸、アミノ酸塩、アミノ酸類似体またはそれらの混合物は、アルギニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、システイン、リジン、イプシロン-アミノカプロン酸等のリジン類似体、またはこれらの任意の組み合わせである。好ましい実施形態では、前記アミノ酸は、アルギニン塩酸塩及びリジン塩酸塩等のアミノ酸塩基の形態であり得る。一実施形態では、医薬組成物は、2つのアミノ酸、アミノ酸塩及び/またはアミノ酸類似体を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、3つのアミノ酸、アミノ酸塩及び/またはアミノ酸類似体を含む。ある実施形態では、アミノ酸の濃度は、約10mM~約300mM、約20mM~約200mM、または約10mM~約100mM、または約25mM~約75mM、または約10mM~約25mM、または約50mM、または約75mM、または約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、または約300mMである。
【0097】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、酸化防止剤をさらに含む。一実施形態において、酸化防止剤は、メチオニン、酸化型グルタチオン(Glu-Cys-Gly)2(613kDa)、アスコルビン酸、N-アセチル-L-システイン/ホモシステイン、グルタチオン、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox(登録商標))、リポ酸、チオ硫酸ナトリウム、白金、グリシン-グリシン-ヒスチジン(トリペプチド)、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)、またはこれらの任意の組み合わせである。実施形態において、酸化防止剤の濃度は、約10mM~約200mM、例えば、約10mM、約50mM、約100mM、約150mM、または約200mMである。
【0098】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、さらに界面活性剤を含む。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、溶液中に溶解されたときに液体と固体との間の界面張力を低下させる化合物/薬剤を指す。一実施形態では、界面活性剤は、Polysorbate(登録商標)80、Polysorbate(登録商標)20、Pluronic(登録商標)F-68、またはBrij(登録商標)35;ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188またはPluronic(登録商標)F-68);Triton(登録商標);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスチルアミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアリルアミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスチルアミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアルアミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、またはメチルオレイル-タウリン酸ジナトリウム;MONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries、Inc.,Paterson、NJ)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、またはエチレンとプロピレングリコールのコポリマー、またはこれらの任意の組み合わせである。一実施形態では、界面活性剤の濃度は、プラスミノーゲン、生物学的に活性な変異体またはそのフラグメントの凝集を低減し、及び/または組成物中の微粒子の形成を最小限にし、及び/または吸着を低減するように調節される。一実施形態では、界面活性剤は、約0.001~1%(w/v)、約0.002~約0.02%(w/v)または約0.002%~約0.006%(w/v)の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、組成物は、ポロキサマーである界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、Pluronic(登録商標)F68を含む。特定の実施形態では、組成物は約0.01%(w/v)~約1%(w/v)のPluronic(登録商標)F68、例えば約0.1%(w/v)のPluronic(登録商標)F68を含む。一実施形態では、組成物は、非イオン性界面活性剤を実質的に含まないか、または含まない。例えば、組成物は、約0.02%、0.01%、0.006%または0.004%(w/v)未満の非イオン性界面活性剤を含む。
【0099】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、ポリマー安定剤をさらに含む。一実施形態では、ポリマー安定剤は、ヘパリン(6~30kDa);Poly(Glu)、Poly(Asp)、及びPoly(Glu,Phe)等のポリアミノ酸(2~100kDa);カルボキシメチルセルロース(10-800cps);シクロデキストリン;デキストラン硫酸、またはこれらの任意の組み合わせである。実施形態において、ポリマー安定剤の濃度は、約0.001%~約0.50%、または約0.001%~約0.25%である。
【0100】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ポリエチレングリコール、例えばPEG200、PEG400、PEG1000、PEG4000、PEG8000、PEG10000またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む。一実施形態では、ポリエチレングリコールの濃度は約0.5%~約10%(w/w)である。
【0101】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、防腐剤をさらに含む。本明細書中で使用される場合、「防腐剤」は、その中の細菌活性を実質的に低下させるために医薬組成物に添加され得る化合物/薬剤を指し、これにより、例えば多剤医薬組成物の製造を容易にする。防腐剤の例としては、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、グリセロール、キシリトール、レゾルシノール、カテコール、2,6-ジメチルシクロヘキサノール、2-メチル-2,4-ペンタジオール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、2-クロロフェノール、塩化ベンゼトニウム、メルチオレート(チメルサール)、安息香酸(プロピルパラベン)MW180.2、安息香酸MW122.12、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、または塩化セチルピリジニウムが挙げられる。防腐剤は、緩衝液及び医薬組成物の他の成分と適合するように選択される(即ち、溶液は透明である)。例えば、緩衝液が酢酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムである場合、親和性のある防腐剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、レゾルシノール、2-メチル-2,4-ペンタジオール、メルチオレート(チメロサール)、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ナトリウム、または塩化セチルピリジニウムが挙げられる。本組成物で使用される防腐剤の濃度は、当業者の判断に従って決定することができる。いくつかの実施形態において、防腐剤の濃度は、約0.005~約10%(w/v)、約0.1~約1.0%(w/v)または約0.3~約0.7%(w/v)である。いくつかの実施形態において、防腐剤の濃度は、約0.005、0.1、0.3、0.5、0.7または1.0%(w/v)である。
【0102】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、防腐剤を含まない
【0103】
Remington‘s Pharmaceutical Sciences第19版、Genarro,A.編集(1995)に記載されているもの等の1つ以上の追加の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤は、本発明の医薬組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさないという条件で、本組成物に含めることができる。本発明の組成物の他の構成要素としては、水(例えば注射用の水)、植物油、メチルセルロース等の増粘剤、抗吸着剤、湿潤剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、EDTA等のキレート剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ポリエステル等の生分解性ポリマー、及び/またはナトリウム等の塩形成対イオンを挙げることができる。許容される担体、賦形剤または安定剤は、被験体に対して使用される用量及び濃度で無毒であるような量で存在する。
【0104】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、凍結乾燥されたときに約3.5%~約8%、好ましくは約3.5%~約6%、より好ましくは約3.8%~約5.5%の固形分の総量を有する。本発明の医薬組成物中の成分の濃度を増加させることにより、凍結乾燥組成物中の固形分の総量%が増加し、凍結乾燥組成物の固形物外観が改善される。
【0105】
ある実施形態では、プラスミノーゲンまたはその変異体は、Lys-プラスミノーゲンまたはGlu-プラスミノーゲンである。別の実施形態において、プラスミノーゲンまたはその変異体は、Glu-プラスミノーゲンである。一実施形態では、プラスミノーゲンまたはその変異体は、様々なタイプのプラスミノーゲン及び/または変異体からなる。好ましくは、Glu-プラスミノーゲン含量は、プラスミノーゲンまたはその変異体の全含量の50%超過、または60%超過、70%超過、または80%超過、または90%超過である。
【0106】
本発明の一実施形態は、プラスミノーゲンまたはその変異体を含む医薬組成物であって、組成物中のプラスミノーゲンまたはその変異体以外のタンパク質の総量が、組成物の約10%未満、約5%未満、または約2%未満である。本発明の実施形態は、プラスミノーゲンまたはその変異体を含む医薬組成物であって、組成物が追加のタンパク質(即ち、プラスミノーゲンまたはその変異体に加えて)を含まないかまたは実質的に含まない。本発明の一実施形態では、組成物はアルブミンを含まないか、または実質的に含まない。本発明の一実施形態では、組成物はアプロチニンを含まないか、または実質的にアプロチニンを含まない。本発明の一実施形態では、組成物はトリプシン阻害剤を含まないか、または実質的に含まない。本発明の一実施形態では、組成物は、セリンプロテアーゼ阻害剤を含まないか、または実質的に含まない。本発明の一実施形態では、組成物はプラスミンを含まないか、または実質的にプラスミンを含まない。本発明の一実施形態では、組成物は界面活性剤を実質的に含まないか、または含まない、即ち界面活性剤の濃度は0.01mM未満である。
【0107】
一実施形態では、本発明のプラスミノーゲンを含む医薬組成物は、室温で少なくとも2時間、24時間、1週間または1ヶ月間安定である。
【0108】
一実施形態では、本発明のプラスミノーゲンを含む医薬組成物は、0℃未満の温度で少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間または少なくとも24ヶ月間安定である。0℃未満の前記温度は約-20℃、約-30℃、約-60℃、約-70℃または約-80℃である。
【0109】
実施形態において、プラスミノーゲンを含む医薬組成物は、液体組成物、凍結乾燥に適した液体組成物、凍結に適した液体組成物、凍結乾燥組成物、凍結組成物または再構成組成物である。
【0110】
用語「医薬組成物」は、医薬的、医学的または治療的目的のための組成物を示す。
【0111】
本明細書に記載される成分(pH、緩衝液、張性調整剤、増量剤、安定化剤等)の全ての組み合わせ、及び本発明の医薬組成物のこれらの各濃度が、本開示によって具体的に描かれる。本発明によるプラスミノーゲン(Pg)の医薬組成物の代表的な例を表1Aに示す。
【0112】
【0113】
本発明による医薬組成物の他の代表的な例は、約0.01mg/ml~約80mg/ml、好ましくは5~60mg/mlのプラスミノーゲンまたはその変異体、及び6.5~8.0のpHを有する組成物として、以下の表1Bに示される。これらの全ての例において、プラスミノーゲンの含量は、好ましくは主にGlu-プラスミノーゲンから成り、プラスミノーゲンまたは変異体の総含量は5mg/mL~60mg/mLである。
【0114】
【0115】
一実施形態では、本発明のプラスミノーゲンを含む医薬組成物は、静脈内、皮下、局所、皮内、眼科及び/または筋肉内投与に適している。
【0116】
一実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、ヒト被験体に投与するためのものである。好ましくは、本発明の医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、局所投与、筋肉内投与または眼科投与用である。一実施形態では、本発明の組成物は、液体、ゲル、クリームまたは軟膏の形態である。
【0117】
本発明の組成物中に処方されるプラスミノーゲンは、いくつかの供給源から得ることができる。それは、組換え合成によって得ることができるか、または血液、血漿または血液由来溶液から抽出/精製することができる。プラスミノーゲンは、コーン分画または沈殿によって血液または血漿から抽出することができる。プラスミノーゲンは、血漿または血液由来の溶液から、WO2006/120423に記載された方法のような結合親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。プラスミノーゲンの変異体には、アミノ酸配列の任意の修飾、またはそれへの基の任意の付加、またはそれへのアミノ酸またはアミノ酸配列の任意の付加が含まれるが、これらに限定されない。プラスミノーゲンの断片には、限定されないが、アミノ酸またはアミノ酸配列の欠失が含まれる。
【0118】
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、対応する値の+10%または-10%をカバーすることを意図する。
【0119】
用語「被験体」は、プラスミノーゲン、その変異体またはその断片の投与から利益を得ることができる生物を含む。用語「被験体」には、哺乳類または鳥類などの動物が含まれる。好ましくは、対象は哺乳動物である。より好ましくは、被験体はヒトである。より好ましくは、被験体は治療を必要とするヒト患者である。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「予防する」または「予防」とは、疾患または障害を獲得するリスク(または感受性)の可能性の低下(即ち、疾患に曝露されているか、または疾患の素因がある可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、または示していない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つが発症しないようにすること)を指す。このような患者を同定するための生物学的及び生理学的パラメータは、本明細書で提供され、医師によっても周知である。
【0121】
被験体の「治療」または「治療する」という用語は、疾患または状態、疾患または状態の症状、或いは疾患または状態のリスク(または感受性)を、遅延、安定化、治療、治癒、緩和、軽減、改変、改善、悪化の軽減、改善、向上、または影響することを目的として、被験体への本発明の組成物の適用または投与(または被験体の組織または器官への本発明の組成物の適用または投与)を含む。「治療する」という用語は、傷害、病理または状態の治療または改善における成功の任意の指標を指し、軽減;寛解;悪化の速度の低下;病気の重症度の軽減;症状の安定化、症状の減少、または傷害、病理または状態を被験者に対してより許容しやすくすること;退化または衰退の速度を遅くすること;変性の終着点を衰弱させないこと;または被験者の身体的または精神的健康を改善すること;等の客観的または主観的パラメータを含む。いくつかの実施形態では、用語「治療する」は、被験者の平均余命及び/または追加の治療が必要とされる前の遅延を増加させることを含み得る。
【0122】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、特定の障害、疾患または状態を治療または予防するために被験体に投与される際、その障害、病気または状態のそのような治療または予防を行うのに十分である化合物の量を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、さらに、創傷を治癒する、鼓膜穿孔を治癒する、歯周創傷を治癒する、感染性疾患を治療する、口腔の健康を増強または維持する、後部硝子体剥離(PVD)、糖尿病性潰瘍、及び、冠動脈血栓症等のプラスミノーゲン欠損被験体を治療する、組織への再灌流障害の治療、微小循環改善のための虚血、梗塞、脳浮腫の治療、プラスミノーゲン欠乏症の被験者を治療する、及び被験体中の補体経路を調節する、ための有効なプラスミノーゲン、その変異体またはその断片の量を意味する。投薬量(用量)及び治療上有効な量は、例えば、被験体の、年齢、体重、全般的な健康状態、性別及び食事のアクティビティ、投与時間、投与経路、排せつ速度、及び薬剤の組み合わせ、適用可能であれば、施術者が化合物が被験体に対して有することを望む効果、及び被験体が罹患している特定の障害(複数可)等の様々なファクターに依存して変わり得る。さらに、治療有効量は、被験体の血液パラメータ(例えば、脂質プロファイル、インスリンレベル、血糖)、疾患状態の重篤度、臓器機能、または基礎疾患または合併症に依存し得る。このような適切な用量は、本明細書に記載されるアッセイ等の任意の利用可能なアッセイを用いて決定され得る。本発明の医薬組成物がヒトに投与される場合、医師は、例えば、最初に比較的低用量を処方し、引き続き適切な反応が得られるまで用量を増加させることができる。投与される用量は、最終的には医師の裁量に委ねられる。
【0123】
キット
本発明の化合物(複数可)は、キットの一部として容器(例えば、包装、箱、バイアル等)を任意に含んで包装することができる。キットは、本明細書に記載される方法に従って市販のものを使用してもよく、本発明の方法で使用するための説明書を含み得る。
【0124】
本発明の組成物は、別の有効成分と同時に、前または後に、及び同じ投与経路によって、または別の投与経路によって、患者に投与してもよいし、投与しなくてもよい。従って、本発明は、医師が使用する場合、本組成物の適切な量を、単独で、または別の有効成分と組み合わせて患者に投与するように単純化し得るキットも包含する。
【0125】
本発明のキットは、凍結乾燥組成物を再構成するための薬学的に許容される液体をさらに含むことができる。例えば、有効成分が、非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、キットは、非経口投与に適した微粒子非含有無菌溶液を形成するために活性成分を溶解することができる適切な薬学的に許容される液体のシール容器を含むことができる。
【0126】
特定の実施形態では、本組成物は、単回または複数回の投与のために、バイアル、ボトル、チューブ、シリンジまたは他の容器に収容される。このような容器は、例えば、ガラス、或いはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリオレフィン等のポリマー材料で作製することができる。いくつかの実施形態では、容器は、単回用量を抜き取り、次いで、針の除去の際に再シールするために、針によって貫通され得るゴム栓のようなシールまたは他の閉鎖システムを含み得る。当技術分野で知られている、注入可能な液体、凍結乾燥組成物、再構成凍結乾燥組成物、または再構成及び注射用粉末、のためのこのような容器はすべて、本開示の組成物及び方法における使用において意図されている。特定の実施形態では、容器は、単回投与または複数回投与を含むペン型送達装置である。このようなペン型送達装置は、永久的、例えば、単一用量または複数用量を含む使い捨てカートリッジを収容する永久的ペンであってもよく、或いは装置全体が使い捨て、例えば、単回用量または複数回用量を含む使い捨てペンであってもよい。ペン型送達装置が複数の投与量を含む特定の実施形態では、投与量は予め設定することができ、即ち固定することができる。他の実施形態では、投与量は、柔軟な投与量、即ち、ユーザによってダイヤルインされ得る。いくつかの実施形態では、ペン型送達装置は、ルアーロック、ルアーコーン、または使い捨て針の取り付けを容易にする他のニードル嵌合コネクタを備える。他の実施形態では、ペン型送達装置は、結び付け(ステーク)された、即ち永久的な針を含む。別の特定の実施形態では、容器はシリンジである。いくつかの実施形態では、注射器は、ルアーロック、ルアーコーン、または使い捨て針の取り付けを容易にする他の針嵌合コネクタを備える。他の実施形態では、シリンジは、ステークされた、即ち永久的な針を含む。いくつかの実施形態では、シリンジは、単回投与または複数回投与で事前充填される。
【0127】
安定性の分析
「安定な」組成物としては、その中のタンパク質(プラスミノーゲンまたはその変異体)が、保存時の、その物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的活性を実質的に保持する組成物が挙げられる。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が利用可能であり、例えば、Lee、V.,1991,Peptide and Protein Drug Delivery,247-301(Marcel Dekker,Inc.,New York,NY)及びJones,A. 1993,Adv.Drug Delivery Rev. 10:29-90に記載されている。選択された期間、選択された温度で安定性を測定することができる。一実施形態では、組成物は、室温(約25℃)または40℃で、少なくとも1、2、3、4、5または6ヶ月間安定であり、及び/または約2-8℃で少なくとも1、2、3、4、5または6ヶ月安定である。さらに、特定の実施形態では、組成物は凍結(例えば、-30℃)後に安定である。特定の実施形態において、安定性の基準は、以下の通りである:(1)組成物は、視覚的分析によって透明にとどまっている;(2)組成物の濃度、pH及び重量オスモル濃度が約±10%以下の変動しかない;(3)SEC-HPLCで測定した凝集体形態が約10%以下、約5%以下、または約1%以下である;(4)当技術分野で公知の方法及び十分に確立された分析方法によって測定される、プラスミノーゲンの分解が10%以下、約5%以下、または3%以下である。
【0128】
熱変性:プラスミノーゲンまたはその変異体またはその断片の熱変性実験HTS製剤スクリーニングは、PallのOptim 2(商標)を用いて実施することができる;或いは、タンパク質のアンフォールディング(標準的なPCR(加熱ブロック付き)、蛍光計またはCD分光光度計(温度制御あり))をモニターするための他の代替的な生物物理学的技術(複数可)を挙げることができる。例えば、Optim 2システムは、アンフォールディング転移温度(Tm)、凝集開始温度(Tagg)及び凝集速度を含むタンパク質安定性指示パラメータの範囲を同時に測定する。
【0129】
賦形剤の熱安定性に対する影響:狭いpHは、より高い融点(Tm)及び凝集開始温度(Tagg)を有する最適pH範囲で決定される。より高いTmが6.5-7.5の生理的範囲で得られるならば;次の試験(複数可)は、少なくとも3つの緩衝系(複数可)を用いてスクリーニングすることである。
【0130】
さらに、IEF(等電点電気泳動法)またはcIEF(毛細管等電点電気泳動法)を、溶液中のプラスミノーゲンの物理的構造(コンフォメーション)の評価のために試験することができる。
【0131】
60℃で1~8時間のインキュベーション後の、各緩衝液/賦形剤について、及びプラスミノーゲンのみを含有する参照溶液についての、プラスミノーゲン酵素活性測定に基づく安定化のパーセンテージ。別の試験では、安定化を37℃で1~8時間評価することができる。安定化のパーセンテージは次のように計算される:
安定化百分率=100×[S-T]/[T]
【0132】
上式で、Sは、35℃で10日間後に試験される賦形剤を含む酵素溶液の残留酵素活性であり;Tは同じ条件で保存された賦形剤を含まない対照の活性である。
【0133】
凝集及び粒子測定数(PMC):PMCは、光遮蔽粒子数試験(Light Obscuration Particle Count Test)によって計算される。分析者は、遮光の原則に基づいて、粒子サイズと個数を自動的に決定できる適当な機器を使用する必要がある。選択されたセンサは、意図された粒度範囲及び予想される粒子数に適してなければならない。標準粒子サイズの範囲は、一般に2~100mmである。分析者は、適当な体積で粒子を含まない水に分散されたUSP Particle Count RSを使用して、装置の性能を確認する必要がある。較正プロセスでの分散中に粒子が凝集するのを避けるように注意する必要がある。
【0134】
方法:製品サンプルは、送達(例えば、排出されたシリンジ内容物)を最も適切に表す方法で試験される。十分な容量(即ち、試験を容易にするのに十分な容量)を有する非経口用の場合、個々のユニットの試験はしばしば診断的である。十分な容量の無い非経口用製品については、注意深く徹底的に各ユニットを混合してから、適当な数のユニットの内容物を合わせて別の容器に入れ、1回の試験に必要な容量(一般に0.2~5.0mL)を得る。希釈を行う場合は、空の容器に製品と希釈剤のための十分な容量があることを確認し、もしあればわずかな粒子がプロセスに導入されていることを確認する。慎重に各ユニットを開け、シールクロージャー(sealing closure)を取り外し、サンプリング、希釈、または必要に応じてプールする前に内容物の汚染を避ける。製品溶媒が、例えば非経口使用のための凍結乾燥された固体または粉末用に、特定されている場合、再構成または希釈は、適当な量の特定溶媒で行われなければならない。この場合、溶媒自体を試験して、それが重要な粒子源でないことを確認することができる。合計数から溶媒粒子数を減算することはできない。気泡を排除することは、特にガスを容易に巻き込むタンパク質製品の場合、重要なステップである。2つの方法が推奨される:製品流体を環境圧力下に放置するか、または穏やかな(例えば、75Torr)真空を適用する。適当であることが立証された場合、他の方法を使用することができる。超音波処理は避けるべきである。サンプルを脱気したら、サンプルの内容物を、適切な手段、例えば容器を手でゆっくりと旋回させることにより、静かにしかし完全に混合することによって、それらを穏やかに再混合して全ての粒子を懸濁させなければならない。製品の液体の混合を反転することは、いつでも推奨されない。混合直後に、NLTの4つのアリコート(一定分量)を採取する。各アリコートは、それぞれの器具容量(通常0.2~5.0mL)に適した容量である。選択されたサイズ範囲にわたる粒子(10及び25mmに等しいか、それを超える粒子を含む)の数を数える。最初のアリコートについて得られた結果を無視し、試験される調製物の残りのアリコートについて各サイズ範囲での平均粒子数を計算する。センサのダイナミックレンジ及び針の体積を表すはずのサンプリングを制御するために、風袋用量も適用することができる。
【0135】
評価:粒子状物質に関する、FDA(米国食品医薬品局)及びUSP/EP/JP(米国薬局方)章(787、788及び789)、EPヨーロッパ薬局方(2.9.20粒子状物質汚染)及びJP日本薬局方JP(16:6.06.6.07外国不溶性物質試験)のような規制当局の規制は、以下のように、ヒトの使用のための液体調製物中の許容されるレベルの粒子を定義する。100mL以下の名目上の含量で容器に供給される点滴または注射用の治療用タンパク質注射剤である非経口製品の場合:試験された単位中に存在する平均粒子数は、10μm以上で容器あたり6000を超えるべきではなく、25μm以上で容器当たり600を超えるべきではない。100mLを超える名目上の含量を有する容器に供給される治療用タンパク質注射剤及び100mLを超える名目上の含量を有する非経口注入剤または注射液:試験される単位中に存在する粒子の平均数は、10μm以上で1mL当たり25個を超えるべきではなく、または25μm以上で1mL当たり3を超えるべきでない。また、総粒子荷重は、10μm以上で容器あたり6000を超えるべきではなく、25μm以上で容器当たり600を超えるべきではない。投与中(インライン)に最終フィルタと共に使用される製品は、免除を正当化する科学的データが利用可能であることを条件として、これらの要件から免除される。ただし、ろ液はガイドラインに準拠することが期待される。<100mLで供給または最初に再構成した後、>100mLの容量で注入するために希釈した製品について、粒子の含量は希釈前と希釈後の両方で評価し、そして最終用量に基づいて評価する必要がある。従って、USP/EP/JP法は本明細書中に含まれる。ここで、用語「粒子」は「粒子状物質」を指し、逆もまた同様である;これらの用語は同義語として使用することができる。
【0136】
Optim-2(商標)を用いて476nm/600nmでの光散乱により、または350nmのUVでの標準UV分光光度計により測定される動力学的研究:高温(65℃)及び酸性溶液pH(4.5)または塩基性溶液pH(9.5)等の加速条件は、異なる安定化賦形剤を迅速にスクリーニングするために選択される。組成物の成分は、少なくとも1~4時間、固定温度(55~60℃)で時間の関数としてのTaggを増加させるために評価される。プラスミノーゲン溶液の凝集動態挙動は、温度制御(開始Tmが決定される)を装備して、55~60℃において4時間以下で測定される。賦形剤は、267nm、467nmまたは350nmでの光散乱により測定されるプラスミノーゲン凝集の阻害に対するそれらの効果についてスクリーニングされる(Cheng,W.ら、“Comparison of High-Throughput Biophysical Methods to Identify Stabilizing Excipients for a Model IgG2 Monoclonal Antibody:Conformational Stability and Kinetic Aggregation Measurements”(モデルIgG2モノクローナル抗体のための安定化賦形剤を同定するためのハイスループット生物物理学的方法の比較:配座安定性及び動力学的凝集測定)、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol. 101, No 5, page 1701-1720, 2012)。
【0137】
熱安定性のタンパク質濃度の影響:Optim 2(商標)またはDual Scanning Fluorimeter(Sypro Dyeを有するDSF)の利点の1つは、高濃度タンパク質溶液中のTm及びTaggの測定を行う能力にある。 相対安定性の潜在的な候補を調査するか、或いはタンパク質の安定化のための異なる製剤条件をスクリーニングするかにかかわらず、利用可能な特性評価方法の数が限られている高濃度でタンパク質溶液について、その特性を同定することが重要であり得る。
【0138】
最終のオスモル濃度に対する製剤組成物の影響:最終医薬組成物において、緩衝液、賦形剤及び塩濃度は、親注射を実際に制限するので、非常に高いことは好ましくない。むしろ、240~400mOsmの範囲のオスモル濃度を得るためには、より生理学的等のより中程度の濃度が好ましい。従って、この範囲を最初に決定するためにオスモル濃度が計算されるが;しかしながら、IV注射の場合、再構成後にプラスミノーゲンまたはその変異体または断片が、再構成のために溶液によって希釈されるのであれば、凍結乾燥プロセスの開発中に、より高いオスモル濃度を使用することもできる。
【0139】
用語「製剤」及び「組成物」は、本明細書中では交換可能に使用され得、そして同じ意味を示すことが意図されている。
【0140】
見出しは、参照のため、及び特定のセクションを位置づけるのを助けるために本明細書に含まれる。これらの見出しは、明細書に記載の概念の範囲限定することを意図するものではなく、これらの概念は、全明細書にわたる他のセクションにも適用できる。従って、本発明は、本明細書に示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0141】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、対応する複数の意味を含む。
【0142】
特段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件、濃度、特性等を表す全ての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効数字の数と、通常の四捨五入法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。従って、それとは反対に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、得ようとする特性に応じて変化し得る近似値である。実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、どの数値も、本質的に、実験の変動、試験測定、統計分析等から生じる特定の誤差を含む。
【0143】
本明細書に記載されている実施例及び実施形態は、説明のみを目的するものであり、その観点から様々な修正または変更は当業者に示唆され、本発明及び添付の請求の範囲に含まれることが理解される。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、本発明の実施をさらに説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0145】
実施例1:凍結製剤中のプラスミノーゲンの安定性
以下の医薬組成物の安定性試験結果を、WO2006/120423に記載の結合親和性技術に従って、血漿から抽出した5mg/mlのヒトプラスミノーゲン、10mMクエン酸塩、150mM NaCl、pH6.5(Lot:2002.pc02_Pg140210.01)を含む医薬組成物を-20℃、-30℃、-80℃で6ヶ月間保存して、得た。安定性データは、これらの凍結条件下でプラスミノーゲンが安定であることを示した。プラスミノーゲンlot:2002.pc02_Pg140210.01は、-20℃、-30℃及び-80℃で試験した。凝集レベルをSEC-HPLCにより、純度レベルを還元条件下及び非還元条件下でのSDS-PAGEにより、活性レベルをBCS活性により、そしてタンパク質濃度を280nmにおける吸光度(ABS280)により、調査した。6ヶ月後の安定性データの結果は、全ての安定性指示アッセイが、所望の仕様を達成したことを示した。
【0146】
実施例2:オスモル濃度分析及び固体の全パーセンテージ分析
製剤1~6のオスモル濃度及び製剤1~9についての凍結乾燥後の固体の全パーセンテージを表2に報告する。製剤1~9の含量を表1Aに定義する。
【0147】
【0148】
オスモル濃度は240~400mOsmの生理学的範囲にある。 試験された組成物の得られたオスモル濃度は、オスモル濃度の生理学的範囲内にあるかまたは非常に近いところにあり、有利である。固体ケーキ(凍結乾燥前の液体組成物100ml当たりの凍結乾燥後の固体組成物のg)の全%は、全ての組成物及びプラシーボに対して約4%であり、これは3.5~8%の好ましい範囲内にある。
【0149】
実施例3:プラスミノーゲンの分子量
本発明の医薬組成物中で精製され製剤化されたプラスミノーゲンの分子量は、プラスミノーゲンのアミノ酸の一次配列の計算によって決定され、質量分析によって確認された分子量87,000(MW)である。
【0150】
実施例4:凍結乾燥後のケーキの外観の研究
製剤1~5は、表5に詳述されたサイクルプロセスの後に凍結乾燥された。製剤1~5の含量は表1Aに規定されている。
【0151】
【0152】
図2~
図11は、各々12.5mlの製剤1~5またはそれらの対応するプラセボ(プラスミノーゲンを含まない)を含有するバイアルの写真である。従って、組成物の安定性に対するプラスミノーゲンの存在の影響が調査されている。凍結乾燥プロセスによって形成されたケーキの外観の物理的検査。すべてのケーキは変色することなく均一な密度を維持した。製剤2、3及び5のプラセボについて試験したバイアルの10%未満がメルトバックを示した。製剤1のプラセボの試験されたバイアルの10%未満は崩壊した。 製剤1~5及び製剤4のプラセボの、試験したバイアルの10%未満が、基礎退縮を示した。全体的にケーキの外観は満足される。
【0153】
組成物の含量は崩壊温度を決定する。純粋な無定形賦形剤は、それぞれ特徴的なTg’及び崩壊温度を有する;製剤の崩壊温度は、アモルファス相中における全ての組成物の質量平均温度である。乾燥速度は凍結乾燥中のサンプル温度に正比例するため、最大崩壊温度を有する製剤を設計することが重要である。
【0154】
最後に、塩(NaCl)及び賦形剤が最大限に結晶化されなければ、崩壊温度は低下する。例えば、グリシンは-45℃のTg’を有し、アモルファス相へのその寄与は崩壊温度を非現実的に低い値に低下させることができる。
【0155】
実施例5:溶液中のプラスミノーゲン凝集に対するアミノ酸の効果
プラスミノーゲン単独では水中では、FDAによって許容されない、即ち100mLの組成物当たり10μm以上の粒子6000個超の、多数のプラスミノーゲン凝集体が生成する(表6のサンプルF0406参照)。プラスミノーゲンを製剤化するために、種々のスクロースに基づく製剤が開発されている。これらの製剤の大部分は、100mL当たり10μm以上の6000粒子の閾値を満たすことに成功したが、より低い粒子含量を含む製剤が開発され、本明細書ではプラスミノーゲンを安定化するアミノ酸の効果が研究されている。これらのさらなる製剤は、10mgのプラスミノーゲン及び35mMのNaClを含有しており、3つの緩衝液/pH、即ち10mMクエン酸ナトリウム(pH6.5)、10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)及び10mMトリスHCl(pH8.0)が試験された。アルギニン、アラニン及びグリシンから選択されるアミノ酸の存在及び非存在を0.5%の濃度で比較した。試験された製剤は新鮮なもの、即ち凍結乾燥の前である。表6は、10μm以上及び25μm以上の粒子のPMC数を報告している。アミノ酸の存在は、安定化効果が凝集レベルの低下に寄与していることを示している。
【0156】
【0157】
実施例6:プラスミノーゲン凝集に対するアミノ酸と組み合わせたマンニトールの効果
10mMのクエン酸ナトリウム(pH6.5)、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)または10mMのトリスHCl(pH8.0)のいずれかを含む10mgのプラスミノーゲン及び35mMのNaClを含有し、且つアミノ酸(0.5%アルギニン塩酸塩、アラニンまたはグリシン)を含有または含有しない製剤に対して、増量剤の0.5%マンニトールの存在(の効果)について試験し、表7に報告した。この研究では新鮮な製剤(lyo前)を試験した。一般に、マンニトールの存在は、粒子数を低下させた。一般に、マンニトールとアミノ酸の組み合わせは、粒子数を減少させ、特にアルギニンとマンニトールとの組み合わせにおいてそうである。
【0158】
【0159】
実施例7:プラスミノーゲン凝集に対する防腐剤の効果
0.1%フェノール等の防腐剤の存在は、10mMのクエン酸ナトリウム(pH6.5)、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)または10mMトリスHCl(pH8.0)のいずれかを含み、且つ0.5%アルギニン塩酸塩または0.5%アルギニン塩酸塩と0.5%マンニトールとの組み合わせを含む、9または10mgのプラスミノーゲン及び35mMのNaClを含有する製剤において試験した。この研究では、新鮮な製剤(lyo前)を試験した。粒子数(PMC)は表8に報告されている。有利なことに、フェノールの存在は粒子数に有意に影響しなかった。
【0160】
【0161】
いくつかの防腐剤を比較した。表9は、10mMのクエン酸ナトリウム(pH6.5)、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)または10mMトリスHCl(pH8.0)のいずれか、及び0.5%アルギニン塩酸塩を含む、10mgのプラスミノーゲン及び35mMのNaClを含む製剤中における、0.5%CMCと0.1%フェノールと0.5%デキストランとの比較を報告している。この研究では、新鮮な製剤(lyo前)を試験した。デキストランまたはフェノールの存在は、凝集に有意な影響はしなかった。しかしながら、CMCは凝集を有意に増加させた。これは驚くべきことではない。なぜなら、CMCは溶液の粘度を増加させることが知られており、しばしば点眼剤の調製に使用されるからである。
【0162】
【0163】
実施例8:プラスミノーゲン凝集に対するアミノ酸及びその濃度の影響
凍結乾燥及び再構成の後、プラスミノーゲン10mg/mL、35mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム(NaPi)、pH7.2の製剤で、0.5%及び1%のアルギニンを試験した。粒子数(PMC)を表10に報告されており、アルギニンの両方の濃度が低いPMC値を維持するのに非常に良好であることを示している。
【0164】
【0165】
凍結乾燥及び再構成の後、プラスミノーゲン10mg/mL、35mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム(NaPi)、pH7.2の製剤において、1%のアルギニン、グリシン及びアラニンを比較した。粒子数(PMC)は表11に報告されており、試験された条件においてアルギニンがアラニン及びグリシンよりも良好であることを示しているが、これらの3つのアミノ酸はすべて許容できるPMC値である、即ち100mLあたり10μm以上粒子6000未満である。
【0166】
【0167】
実施例9:固体の全パーセンテージ及びオスモル濃度
10mg/mLのプラスミノーゲンのいくつかの製剤のオスモル濃度、及びこの製剤を調製するために使用される固形分のパーセンテージが、表12に報告されている。20mg/mLのプラスミノーゲンのいくつかの製剤のオスモル濃度、及びこの製剤を調製するために使用される固形分のパーセンテージが、表13に報告されている。試験された製剤の結果として得られるオスモル濃度は、有利にも、オスモル濃度の生理学的範囲内にあるか、または非常に近い。固形分の全(合計)パーセンテージは、その中のプラスミノーゲン、張性調整剤及び増量剤の含量から計算され、凍結乾燥した後、得られたケーキの大きさの良好な指標である。
【0168】
【0169】
【0170】
実施例10:粒子数(PMC)
表12に記載の製剤の10μm以上の粒子についての粒子数(PMC)を表14に報告する;及び表13に記載の製剤の10μm以上の粒子についての粒子数(PMC)を表15に報告する。
【0171】
【0172】
【0173】
表12~15に報告される凍結乾燥製剤の外観の代表例として、製剤F0498、F0449及びF0459をそれぞれ含むバイアルの写真を
図12、
図13及び
図14に示す。
【0174】
実施例10:可逆的プラスミノーゲン凝集
この研究によって示されるように、プラスミノーゲン凝集は可逆的である。dH2O中で透析され、大量に沈殿した凍結プラスミノーゲンサンプル(Pgバルク)5mg/mlを融解し、1.2μmシリンジフィルタで濾過し、対照(Pg対照)のための出発物質として使用した。2mlのPg対照のアリコートを、1Mのクエン酸ナトリウムpH6.5(サンプル1)、0.5Mリン酸NapH 7.2(サンプル2)または1Mのトリス-HCl pH8.0(サンプル3)の緩衝液ストックを予めスパイク(混合)したガラスバイアルに加え、各pHの最終10mM緩衝液濃度をそれぞれ得る。サンプル1、2及び3を
図15に示す、ここで非スパイクPg対照はサンプル0である。サンプル1、2及び3をさらに5M NaCl及び0.8Mアルギニンのストック溶液でスパイクして、各サンプルにおいて35mM NaCl及び28.5mM(0.5%)のArgの最終濃度を得、そして
図16に示されている。各々0.02、20、100、800NTUの濁度標準が、参照として
図15及び16で使用された。
図15から、pH調節がかなりの量の凝集物を溶解したことが分かる。
図16において、サンプル1、2及び3は、アルギニン及びNaClの添加によって透明にされ、凝集物は視覚的に検出され得ない。
【0175】
図16のサンプル0、1、2及び3の濁度は、
図15及び16に示す濁度参照標準を用いた標準較正を用いて550nmでの光学濃度(OD)を読み取ることによって測定した。濁度は、表16のNephelometric Turbidity Units(NTU)に報告されている。0.1時間、17時間、21時間及び24時間で、緩衝液、NaCl及びアルギニンを有するサンプル1、2及び3をスパイクする前に(T=0)、各サンプル1mlのアリコートを測定した。脱凝集は、スパイク後わずか0.1時間で現れ、迅速であり、24時間超維持される。
【0176】
【0177】
実施例11:組成物の濁度に対する経時的なアミノ酸の影響
濁度は、0.5%グリシン、アルギニン、アラニンを含み、及びアミノ酸を含まない10mgプラスミノーゲン及び35mM NaClを含有する組成物において、クエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5(
図17)で、リン酸ナトリウム緩衝液pH7.2(
図18)で、及びトリス緩衝液pH8.0(
図19)で測定した。
【0178】
図17、18及び19において試験した組成物を、増量剤としての0.5%マンニトールの存在下で再現し、それぞれ
図20、21及び22に報告した。
【0179】
全ての場合において、アミノ酸の存在は安定化効果をもたらし、濁度を維持または低下させる。アミノ酸のタイプを比較すると、アルギニンは、最高の安定化効果を示し、試験されたすべてのpHで、及び増量剤、即ち0.5%マンニトール、の存在及び非存在下において、濁度を低下させる。
【0180】
実施例12:上昇した濃度のプラスミノーゲン組成物
高濃度のプラスミノーゲンを含有する組成物を研究した。10mMまたは100mMのクエン酸ナトリウム、35mMのNaCl、pH6.5(アルギニン1%を含む及び含まない)中の20mg/mlのプラスミノーゲンの組成物、及びアルギニン1%を含む100mMクエン酸ナトリウム、35mM NaCl、pH6.5中の37及び56mg/mlのプラスミノーゲンの組成物について、10μm以上、及び25μm以上の粒子のPMC数が表17に報告されている。
表17は、本発明の製剤が、許容できない粒子レベルを引き起こさずにプラスミノーゲンを高濃度(37及び56mg/ml)で含む組成物の調製を有利に行うことができることを示している。
【0181】
【0182】
実施例13:プラスミノーゲン活性
本明細書に例示した各製剤のプラスミノーゲン活性を試験し、初期製剤またはバルク製剤のプラスミノーゲン活性(Pgバルク)と比較した。 プラスミノーゲン活性は、これらのいずれの製剤によっても影響されないことが示された。