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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】制御された内部人工器官バルーン膨張
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/958 20130101AFI20221003BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221003BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/10
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020204432
(22)【出願日】2020-12-09
(62)【分割の表示】P 2018561667の分割
【原出願日】2016-06-27
(65)【公開番号】P2021045605
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】15/164,657
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ラリー ジェイ.コバック
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ビー.コイナ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530045(JP,A)
【文献】特表2002-501404(JP,A)
【文献】特表2015-534883(JP,A)
【文献】特表2014-520632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/958
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未展開直径を有する圧縮された構成から展開直径を有する膨張された構成へ膨張可能な内部人工器官と、
その上に前記内部人工器官が集成されるカテーテル集成体と、
を含む医療集成体であって、
前記内部人工器官は第1の終端、第2の終端、および前記第1の終端と前記第2の終端との間の中間部分を有し、前記内部人工器官はグラフト部材と前記グラフト部材のみによって相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素とを含み、前記複数の環状のステント要素は前記内部人工器官の第1の終端に第1の終端要素と前記内部人工器官の前記第2の終端に第2の終端要素とを含み、前記内部人工器官が圧縮された構成の場合に前記第1の終端要素および前記第2の終端要素のそれぞれの膨張がいずれの隣接する環状ステント要素によって非拘束であり、
前記カテーテル集成体はバルーンと前記バルーンに結合したカバーとを含み、前記内部人工器官は前記バルーンおよび前記カバーにわたって受けられており、前記カバーは前記圧縮された構成から前記膨張された構成への前記内部人工器官の膨張の間に前記内部人工器官の縦軸に対する前記第1の終端要素および前記第2の終端要素の傾き角度を35°以下に制限するように構成されるように、前記カバーの半径方向強度は前記バルーンの中央部分においてより前記バルーンの片方の終端または両方の終端においてより大きい、医療集成体。
【請求項2】
前記カバーは前記バルーンの膨張に抵抗を与え、前記バルーンが前記圧縮された構成から前記膨張された構成に前記内部人工器官を膨張させるにつれて前記内部人工器官の縦方向の圧縮を減少させるように、前記内部人工器官の前記中間部分における前記バルーンの膨張率に対する前記内部人工器官の前記第1の終端と前記第2の終端における前記バルーンの膨張率の差を低減する、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項3】
前記カバーは、前記圧縮された構成から前記膨張された構成への前記内部人工器官の膨張の間に20°以下の角度に傾きを制限するように構成されている、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項4】
前記カバーは、前記圧縮された構成から前記膨張された構成への前記内部人工器官の膨張の間に10°以下の角度に傾きを制限するように構成されている、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項5】
前記バルーン内の膨張圧力が増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記カバーは、前記内部人工器官の前記中間部分を前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径において維持する、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項6】
前記カバーは、前記展開直径から中間直径に向かって弾性応答を示すように構成されている、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項7】
未展開状態における前記内部人工器官の周りで測定して前記医療集成体のプロファイルは5~10フレンチの値である、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項8】
前記内部人工器官が圧縮構成にある場合に前記カバーの厚さは0.025~0.051ミリメーターである、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項9】
前記展開直径は少なくとも11ミリメーターである、請求項1記載の医療集成体。
【請求項10】
前記グラフト部材は複数の層を含む、請求項1記載の医療集成体。
【請求項11】
前記グラフト部材は、その周りに前記複数の環状のステント要素が配置されている内部グラフト要素と、前記複数の環状のステント要素および内部グラフト要素の周りに配置されている外部グラフト要素と、を含む、請求項1に記載の医療集成体。
【請求項12】
前記カバーの第1の終端における前記カバーの第1のセグメントは軸方向に圧縮されており、前記カバーの第2の終端における前記カバーの第2のセグメントは軸方向に圧縮されている。請求項1に記載の医療集成体。
【請求項13】
前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントは押しつぶされた構成を有する、請求項12に記載の医療集成体。
【請求項14】
前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントは、前記カバーの他の部分と比較してより増加した厚さおよび密度を示し、前記カバーの前記第1のセグメントおよび第2のセグメントにおける前記バルーンへの軸方向の圧縮を制限しながら前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントにおける前記バルーンの半径方向の膨張を可能にする、請求項13に記載の医療集成体。
【請求項15】
前記バルーン内の膨張圧力が増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝って前記カバーを塑性変形させて前記内部人工器官の縦方向の圧縮を低減させるまで、前記カバーは前記内部人工器官の前記中間部分を前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径に留まらせるように構成されている、請求項1に記載の医療集成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に内部人工器官送達システムに関し、より詳細にはバルーン膨張送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内部人工器官は生活を改善し守るための貴重なツールである。多くの場合、内部人工器官は「展開されていない」状態で血管内に挿入され、膨張されて「展開された」状態にしなければならない。これらの2つの状態の間で内部人工器官を移行させるために、バルーンは、未展開状態の内部人工器官内に配置され、バルーンの膨張により内部人工器官を展開された状態にすることができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、一般的にバルーンで膨張可能な内部人工器官を含む医療集成体に関する。様々な例において、内部人工器官送達システムは、展開中のバルーンの膨張に対する内部人工器官の可変抵抗に逆らうように構成されたバルーン内の、バルーン上の、またはバルーンに沿った層を含むことができる。いくつかの例は、バルーン内の圧力がカバーの膨張に対する抵抗(例えばカバーの降伏強度)に打ち勝つまで、バルーンまたはステントの部分的に展開されたかまたは中間直径においてバルーンの膨張を止めるかまたは遅くするように構成されたバルーンにわたるカバーを含む。そのような例は、ステントの展開の間のステントの長さの周りのステントの一様でない膨張を緩和することができる。
【0004】
1つの変形態様において医療集成体は、第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官を含み、環状のステント要素は第1の終端および第2の終端の近傍にあり、内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能である。医療集成体は、その上に内部人工器官が集成されるカテーテル集成体をさらに含み、カテーテル集成体は、バルーンとバルーンに沿ったカバーとを含む。内部人工器官はバルーンおよびカバーの周りで同軸上に配置されている。バルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分は未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーのこれらの部分がバルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨らませられおよびほぼ中間直径においてほぼ維持される。
【0005】
いくつかの例において、膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、中間直径に到達するバルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分はバルーンおよびカバーの終端部分を含み、膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーの中央部分は中間直径より小さいままである。
【0006】
いくつかの例において、膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、中間直径に到達するバルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分は、内部人工器官に隣接したバルーンおよびカバーの実質的にすべての部分を含み、膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、それぞれの複数の環状のステント要素は中間直径にほぼ到達するようになっている。
【0007】
いくつかの例において、内部人工器官はステントグラフトを含み、柔軟なコネクターはグラフト材料を含み、複数の環状のステント要素は柔軟なコネクターを含む非金属性材料を介してのみ相互に接続されている。
【0008】
いくつかの例において、柔軟なコネクターは柔軟な縦方向のコネクターを含む。
【0009】
いくつかの例において、未展開状態における内部人工器官の周りで測定して医療集成体のプロファイルは約5~約10フレンチ(French)である。
【0010】
いくつかの例において、未展開状態における医療集成体上のカバーの厚さは約0.025~約0.051ミリメーターである。
【0011】
いくつかの例において、カバーの半径方向の強度は、バルーンの膨張に対して抵抗を提供し、およびバルーンの膨張への内部人工器官の可変抵抗に逆らって未展開直径から展開直径への膨張の間の内部人工器官の一様でない膨張を緩和するように構成されている。
【0012】
いくつかの例において、カバーはバルーンの全長の周りでバルーンを同心円状に取り囲む。
【0013】
いくつかの例において、カバーはバルーンの中央部分における半径方向の強度と比較してバルーンの片方の終端または両方の終端においてより大きな半径方向の強度を提供する。
【0014】
いくつかの例において、カバーはカバーの降伏強度に寄与するフランジブル層の究極強度で中間直径において破裂して中間直径を超える膨張に抵抗するように設計されたフランジブル層を含む。
【0015】
いくつかの実施例において、カバーはカバーの降伏強度による膨張に増加した抵抗を提供して中間直径を超える膨張に抵抗するように構成された予め伸ばされた層を含む。
【0016】
いくつかの例において、バルーンは、コンプライアント材料と、半コンプライアント材料と、非コンプライアント材料と、からなる群から選択された材料を含む。
【0017】
いくつかの例において、展開直径は少なくとも11ミリメーターである。
【0018】
いくつかの例において、カバーは展開の間の隣接した環状のステント要素の一様でない膨張を制限して隣接した環状のステント要素の一様でない膨張による縮小力がカバーと内部人工器官との間の摩擦力を超えることを防止するように構成されており、および、隣接した環状のステント要素の制限された一様でない膨張により、内部人工器官は未展開直径から展開直径への膨張の間に縮小しない。
【0019】
別の変形態様において、内部人工器官を移植する方法は、患者の血管の中に医療集成体の遠位末端を挿入することを含む。医療集成体は、第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官と、その上に内部人工器官が集成されるカテーテル集成体とを含み、環状のステント要素は第1の終端および第2の終端の近傍にあり、内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、カテーテル集成体はバルーンおよびバルーンの周りに沿ったカバーを含む。内部人工器官はバルーンおよびカバーの周りに同軸上に位置する。バルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分は未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーのこれらの部分がバルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨らませられおよびほぼ中間直径においてほぼ維持される。方法は、医療集成体と伴に、患者の血管または患者の別の血管内の治療部位にバルーンにわたって乗せられた内部人工器官を送達し、およびバルーンを遠隔的に膨張させて内部人工器官を非展開直径から展開直径に膨張させることをさらに含む。
【0020】
別の変形態様において、展開システムの製造方法は、第1の終端および第2の終端を有するバルーンで膨張可能な内部人工器官を膨張可能なバルーンおよびカバーを含むカテーテル集成体に集成し、内部人工器官はバルーンおよびカバーにわたって乗せられており内部人工器官はバルーンの膨張を介して展開可能であり、内部人工器官は未展開直径、および展開直径を提供するようになっている。内部人工器官は少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含み、環状のステント要素は第1の終端および第2の終端の近傍にあり、内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能である。バルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分は未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーのこれらの部分がバルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨らませられおよびほぼ中間直径においてほぼ維持される。
【0021】
いくつかの例において、上記方法は、カテーテル集成体への内部人工器官の組み立ての前に、中間直径にバルーンおよびカバーを膨らませることによりカバーを予め伸ばすことをさらに含む。
【0022】
別の変形態様において、医療集成体は、第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官と、その上に内部人工器官が集成されるカテーテル集成体と、を含み、環状のステント要素は第1の終端および第2の終端の近傍にあり、内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、カテーテル集成体は、バルーンと、バルーンに連結されたカバーと、を含み、内部人工器官はバルーンおよびカバーの周りに同軸上に位置する。展開直径は少なくとも11ミリメーターである。カバーは展開の間の隣接した環状のステント要素の一様でない膨張を制限して、隣接した環状のステント要素の一様でない膨張による縮小力がカバーと内部人工器官との間の摩擦力を超えることを防止するように構成されている。隣接した環状のステント要素の制限された一様でない膨張により、内部人工器官は未展開直径から展開直径への膨張の間に縮小しない。
【0023】
いくつかの例において、隣接した環状のステント要素の制限された一様でない膨張は内部人工器官の縦軸に対して35°以下の角度となる。
【0024】
いくつかの例において、バルーンおよびカバーの1つまたは2つ以上の部分は未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力は少なくとも1気圧増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまでバルーンおよびカバーのこれらの部分がバルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨らませられおよびほぼ中間直径においてほぼ維持される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の特徴および利点は、図面と併せて以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0026】
図1A図1Aは、バルーンで膨張可能なステントグラフトの側面図を示す。
図1B図1Bは、バルーンで膨張可能なステントグラフトの側面図を示す。
【0027】
図2図2Aおよび図2Bは、内部人工器官送達システムの側面図および部分断面図を示す。
【0028】
図3図3は、医療器具送達システムの切り欠き斜視図を示す。
【0029】
図4図4Aおよび図4Bは、展開されていないバルーンおよびカバーの断面図および展開されたバルーン、カバー、および内部人工器官の断面図をそれぞれ示す。
【0030】
図5図5A図5Eは、展開の様々な段階における内部人工器官送達システムの側面図を示す。
【0031】
図6図6は、膨張の様々な段階におけるバルーンおよびバルーン上のカバーの断面図を示す。
【0032】
図7図7A図7Gは、展開の様々な段階の、バルーンの膨張に対する内部人工器官の可変抵抗に逆らうように構成されたバルーン上のカバーを含む内部人工器官送達システムの側面図を示す。
【0033】
図8図8は、展開の様々な段階の、バルーンの膨張に対する内部人工器官の可変抵抗に逆らうように構成されたバルーン上のカバーを含む内部人工器官送達システムを使用した、内部人工器官の膨張中の直径および長さ対圧力を示すチャートである。
【0034】
図9図9A~9Cは、ステントの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
内部人工器官は、「未展開」状態で血管中に挿入され、「展開された」状態に膨張され得る。これらの2つの状態の間で内部人工器官を移行させるために、未展開状態の内部人工器官内にバルーンを配置し膨張させてもよく、バルーンの膨張は内部人工器官を展開状態にする。しかし、バルーンは、内部人工器官の縦方向の長さを超えて伸長することができる。その結果、内部人工器官により拘束されていないバルーンの部分は、内部人工器官内のバルーンの部分に比べて急速に膨張し、このためバルーンは内部人工器官に縦方向の力を加え、内部人工器官の縦方向の長さを小さくする。本開示の態様は、以下でより詳細に考察される他の可能性のある特徴および利点の中でも、この影響を低減することができる。
【0036】
「内部人工器具」、「内部人工器官」、「血管装置」などの用語は、本明細書および特許請求の範囲を通して、体内管腔内に埋め込みおよび/または展開することができる任意の医療器具をいうことができる。内部人工器官は、ステント、ステントグラフト、グラフト、フィルター、オクルーダー、バルーン、リード、およびエネルギー伝達器具、展開可能なパッチ、留置カテーテルなどを含むことができる。
【0037】
さらに、本明細書および特許請求の範囲を通して、本明細書に記載の送達システムは、一般に「カバー」または「シース」により拘束された内部人工器官を含むことができる。カバーまたはシースは、内部人工器官の周囲に取り付けられる材料のシートを含むことができる。本明細書および特許請求の範囲を通して使用される用語「細長い部材」は、カテーテル、ガイドワイヤ、導入器シースなどのシャフト状構造物をいうことができる。内部人工器官は、本明細書では内側シャフトとも呼ばれるカテーテルに取り付けまたは装填され、および拘束された直径で、本明細書では外側シャフトとも呼ばれる導入器シース内に取り付けることができる。
【0038】
さらに「遠位の」という用語は、医療器具が導入された体内の位置からより遠い相対的な位置をいう。同様に「遠位に」という用語は、医療器具が導入された体内の位置から離れる方向をいう。
【0039】
「近位の」という用語は、医療器具が導入された体内の位置により近い相対的な位置をいう。同様に「近位に」という用語は、医療器具が導入された体内の位置に向かう方向をいう。
【0040】
近位および遠位の用語に関して引き続き、本開示はこれらの用語に関して狭義に解釈されるべきではない。むしろ本明細書に記載の器具および方法は、患者の解剖学的構造に対して変更および/または調整することができる。
【0041】
本明細書で使用される用語「拘束」は、(i)自己膨張または器具により補助される膨張のいずれかを介して生じる、膨張可能なインプラントの直径の膨張を制限すること、または(ii)拡張可能なインプラントを覆うかまたは取り囲むが、(例えば、貯蔵または生体適合性の理由により、および/または膨張可能なインプラントおよび/または血管への保護を提供するため)他の方法で拘束しないことを意味することができる。
【0042】
本明細書で使用される用語「脈管」は、これらの構築物が利用され得る体内の管腔状構造または管状構造をいう。これには、特に限定されるものではないが、血管、動静脈奇形、動脈瘤などの血管障害、リンパ系の血管、食道、腸の解剖学的構造、屈曲性腔、泌尿生殖器系、または他のそのような系または解剖学的特徴が含まれる。本明細書に開示された技術はまた、血管内または血管に関連する悪性疾患(例えば、癌)の治療に適し得る。
【0043】
図1Aおよび図1Bは、バルーンで膨張可能なステントグラフト100を示す。ステントグラフト100は内部人工器官の一例であり、環状のステント要素104を備えたグラフト部材114およびステント部材102を含む。
【0044】
以下でさらに詳細に説明するように、ステントグラフト100のようなステントはバルーン上で展開することができる。環状のステント要素104の終端要素は、隣接要素により拘束されず、環状のステント要素104の残りの部分よりも小さい膨張力で展開する。一貫したプロファイルを有する単純な展開バルーンでは、展開中、環状のステント要素104の終端要素は環状のステント要素104の他の要素よりも大きくなる。これにより軸方向の圧縮力が発生し、環状のステント要素104が、終端でバルーンの最も高い膨張部分からバルーンの膨張されていない部分まで中央に向かって押される。軸方向の縮小力は、環状のステント要素104の終端要素における一様でない膨張によるバルーンの角度の関数である。角度が増加するにつれて、軸方向の圧縮力が増加し、軸方向の圧縮力が増加すると、縮小される可能性が増加する。バルーンからの軸方向の力は、ステントまたはステントグラフトとバルーンとの間の摩擦と、内部人工器官の最も弱い縦方向部分の剛性との組み合わせにより抵抗される。バルーンからの軸方向の力が摩擦力を超えると、軸方向の縮小が起こり得る。
【0045】
角度は、環状のステント要素104の終端要素の幅を横切る直径の差の関数である。より大きい直径の差はより大きな角度をもたらし、したがってより大きな縮小力をもたらすことができる。より大きな直径のステントは、展開中により大きな直径の差が可能である。縮小力は展開されるステントのサイズの関数であり得、より大きなステントの展開中に縮小力はより大きくなる。より大きなステント、例えば11ミリメーター以上、約12~約16ミリメーター、またはさらには16ミリメーター以上のステントの場合、角度は環状のステント要素104の終端要素とバルーンとの間の摩擦力に打ち勝つのに十分であり、軸方向の縮小をもたらすことができる。しかし、11ミリメーター未満のステントの場合、展開中の望ましくない縮小が起こり得る。
【0046】
望ましくない縮小力に加えて、環状のステント要素104の終端要素の滑りは隣接する要素の膨張を妨げる場合がある。例えば環状のステント要素104の終端要素は、展開中に、隣接要素と重なるまで滑ることがある。環状のステント要素104の終端要素と隣接要素との重なりは、隣接要素の完全な膨張を妨害し得る。さらに隣接要素と環状のステント要素104の終端要素との間の間隔が短くなるため、ステントグラフト100の小さい力による曲げ半径は、隣接する環状のステント要素104がカーブの内側で互いに接触して、ほとんどまたは全く曲がらなくなることで打ち消され得る。
【0047】
本明細書で開示されるように、一様でない膨張によるバルーンの角度の減少は、展開中のステントグラフト100の軸方向の縮小を緩和する。いくつかの例において、バルーン上のカバーはステントグラフト100の全長または一部(例えば終端)について中間的な部分展開直径を生みだして、展開中の最大バルーン角度を35°以下、例えば20°以下、または10°以下に減少させることができる。いくつかの例において、バルーンおよびカバーまたはそれらの一部は、未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達するまで、バルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨張させられ、膨張圧力が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径でほぼ維持される。
【0048】
高い曲げ柔軟性を有する内部人工器官は、縮小の影響を受けやすい。内部人工器官の曲げ柔軟性は、一部は環状のステント要素間のコネクターにより決定される。環状のステント要素間のコネクターは、剛性であってもよく、圧縮、折り畳み、または曲げられてもよい。一般に内部人工器官の曲げ柔軟性では、カーブの内側のコネクターが短くなり、および/またはカーブの外側のコネクターが長くなる必要がある。内部人工器官におけるこれらのコネクターの剛性は、曲げ柔軟性ならびに縮小柔軟性および伸長柔軟性に影響を与える。
【0049】
本明細書で使用される「縦方向のステント要素」という用語は、環状のステント要素を相互接続するステントの一部を表すステント要素含むが、ステント要素は縦軸に平行に延びる必要はない(例えば、傾斜している、波打っている経路、または縦方向の構成要素を含む他の経路が考えられる)。一般に縦方向のステント要素は、環状のステント要素よりも小さい縦方向の剛性を提供する。したがって縦方向のステント要素の剛性は、ステントの曲げ、縮小、および伸長に対する抵抗性の第1の要因であり得る。
【0050】
いくつかの例において、コネクターは、縦方向のステント要素(一般的には金属)などの縦方向の要素、またはグラフト材料などのコンプライアント材料から形成された縦方向の要素を含む。金属の縦方向ステント要素は、一般的によりコンプライアントな材料から形成される縦方向の要素よりも剛性であり得るが、縦方向のステント要素の設計(例えば、そのプロファイルおよび厚さ)は縦方向ステント要素の剛性に影響を与え、内部人工器官の設計における広範囲の曲げ柔軟性を提供するために縦方向のステント要素が選択されることができる。
【0051】
ステントグラフト100は、隣接する環状のステント要素104がカーブの内側で互いに接触するまで、グラフト部材114の剛性によってのみ決定される曲げ柔軟性を有し、これは一般に最小である。例えばステントグラフト100は、隣接する環状のステント要素104がカーブの内側で互いに接触するまで5ニュートン以下の曲げ力を必要とすることがある。さらに、ステントグラフト100の低力の曲げ半径は、隣接する環状のステント要素104が曲線の内側で互いに接触しているときのステントグラフト100のカーブの半径であるため、隣接する環状のステント要素104の縦方向の幅に対する隣接する環状のステント要素104の間の間隔は、ステントグラフト100の低力の曲げ半径に影響を与える。
【0052】
曲げ柔軟性に影響を及ぼすことに加えて、縦方向のステント要素またはその欠如は、軸方向の縮小に必要なカラム強度および力にさらに影響する。縦方向のステント要素は一般に、展開中に加えられる軸方向の力に抵抗して縮小を減少させること助ける。対照的に、独立した環状のステント要素104の間に縦方向のステント要素を含まないステントグラフト100はグラフト部材114のみによってのみ接続される。したがって、ステントグラフト100の縮小力は、軸方向の比較的低い圧縮力に応答して発生することができる。このような軸方向の圧縮力は、展開中の一様でないバルーン膨張から生じることがある。例えばバルーンの終端が最初に膨張する場合、バルーンのさらなる膨張は、環状のステント要素を互いにより近づけるように圧縮する傾向がある。この作用は、より大きい直径で悪化する場合がある。
【0053】
ステントの設計はしばしば、高い曲げ柔軟性により展開される大きい半径方向の力と小さい軸方向の縮小力とのトレードオフを含む。例えば比較的剛性のある縦方向のステント要素を有するステントは、一般に軸方向の小さい縮小力を提供しより大きい曲げ剛性を提供する。対照的に、独立した環状のステント要素104の間に縦方向のステント要素を含まないステントグラフト100は、一般に小さい曲げ剛性を提供するが、展開中に容易に縮小力を受けやすい。より柔軟な縦方向のステント要素を有する内部人工器官は、より高い剛性の縦方向のステント要素を有する内部人工器官よりも、展開中により容易に縮小力を受けやすい。
【0054】
ステントグラフト100の具体例において、ステントグラフト100は、隣接するステント要素を接続する縦方向要素のない独立した環状のステント要素104を含む。代わりにグラフト部材114は、隣接する独立した環状のステント要素104を接続する柔軟なコネクターを表す。このように環状のステント要素104は、グラフト部材114などの非金属材料を介してのみ互いに接続される。グラフト部材114は、縮小または曲げに対する抵抗が制限された完全に伸長された長さのステントグラフト100のみを制限する傾向がある。
【0055】
ステントグラフト100は縦方向の要素を含まないと記載されているが、代替的にステントグラフト100は、PTFE材料、ナイロン材料、または他の柔軟性材料、または低曲げ剛性の縦方向の要素から形成された縦方向の要素などの柔軟性のあるコネクターを含むことができる。このような柔軟な縦方向要素は、環状のステント要素104にグラフト部材114を取り付ける際に、環状のステント要素104を互いに対して所定の位置に保持することにより、ステントグラフト100の製造を助けることができる。グラフト14はまた、隣接する環状のステント要素104を柔軟に接続する柔軟なコネクターを表す。柔軟なコネクターが、低曲げ剛性の別個の縦方向ステント要素を含んでも、柔軟性材料および/またはグラフト14から形成される縦方向要素を含んでも、隣接する環状のステント要素104を柔軟に接続する柔軟なコネクターを有するステントグラフト100の機械的特性は同様である。
【0056】
図1Aのステントグラフト100について、環状のステント要素104は、例えば環状パターンで整列された相互接続ワイヤーフレーム106を含むことができる。例えば環状のステント要素104は、1列の相互接続ワイヤーフレーム106を含むことができる。ワイヤーフレーム106の1つまたは2つ以上の点118は、隣接するワイヤーフレーム106の点118と接触および接続されてもよい。いくつかの例において、環状のステント要素104は、互いに独立して形成され、直接または環状のステント要素104の間の(ステントグラフト100に含まれない)縦のステント要素により1つまたは2つ以上の点118で互いに接続された、多数の個々のワイヤーフレーム106を含むことができる。他の例において、ワイヤーフレーム106は単一の相互接続されたステント要素104として一緒に形成される。
【0057】
ワイヤーフレーム106は、例えば平行四辺形などの多角形を含むことができる。いくつかの例において、ワイヤーフレーム106は菱形を含む。他の例において、ワイヤーフレーム106は正方形または長方形の形状を含むことができる。多角形ではない形状(卵形または丸い形状など)または起伏もしくは曲がりを含む形状を含むワイヤーフレーム106のいかなる形状も本開示の範囲内である。
【0058】
いくつかの例において、ワイヤーフレーム106は金属材料を含む。例えばワイヤーフレーム106はステンレス鋼または他の合金などの鋼を含むことができる。他の例においてワイヤーフレーム106は、例えばNitinolなどの形状記憶合金を含むことができる。さらに他の例においてワイヤーフレーム106は、ポリマー材料のような非金属材料を含む。さらにワイヤーフレーム106の材料は、永続的(すなわち非生体吸収性)または生体吸収性であってもよい。十分な強度を有するワイヤーフレーム106のいかなる材料も本開示の範囲内である。
【0059】
例えば環状のステント要素104は、1つの金属管から切断することができる。いくつかの例において、環状のステント要素104はステンレス鋼管からレーザーカットされる。しかし環状のステント要素104および/またはワイヤーフレーム106を形成するいかなる方法も本開示の範囲内である。
【0060】
先に述べたように、ステントグラフト100はグラフト部材114をさらに含む。グラフト部材114は、例えば血液が一方の側から他方の側に流れることができる管腔を提供することができ、一緒に固定されて単一のグラフト部材114を形成する多数の層または要素を含むことができる。
【0061】
グラフト部材114は、例えば内部グラフト要素108を含むことができる。いくつかの例において、ステント部材102は内部グラフト要素108の周りに同心円状に配置される。例えば内部グラフト要素108は、血管内の血流と接触する管腔表面110を有するポリマー材料の層を含むことができる。ステント部材102は、内部グラフト要素108を取り囲み、接触し、これに支持を提供することができる。
【0062】
グラフト部材114は、例えば外部グラフト要素112をさらに含むことができる。いくつかの例において、外部グラフト要素112はステント部材102の少なくとも一部を同心円状に取り囲む。例えば外部グラフト要素112はステント部材102と内部グラフト要素108とを取り囲み、基本的に2つのグラフト要素108と112との間にステント部材102の環状のステント要素104を挟んでいる。
【0063】
内部グラフト要素108および外部グラフト要素112は、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、パーフルオロエラストマーなどのフルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ウレタン、超高分子量ポリエチレン、アラミド繊維、およびそれらの組み合わせの1つまたは2つ以上を含むことができる。外部グラフト要素112は、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば、Spectra(商標)、Dyneema Purity(商標)など)またはアラミド繊維(例えばTechnora(商標)など)などの高強度ポリマー繊維を含むことができる。さらに外部グラフト要素112は、ポリマー材料の1つまたは2つ以上の層を含むことができ、内部グラフト要素108に関連して説明したような管または巻き付けられた要素であってもよい。いくつかの例において、内部グラフト要素108および外部グラフト要素112は同じポリマー材料を含む。他の例において、内部グラフト要素108および外部グラフト要素112は異なるポリマー材料を含む。
【0064】
このような例において、内部グラフト要素108および外部グラフト要素112は、多数の環状のステント要素104のそれぞれの位置を配向させ維持することができるため、グラフト14はステントグラフト100の柔軟なコネクターとして機能する。例えばステント部材102のそれぞれの環状のステント要素104は、内部グラフト要素108に沿った所望の位置に配置され、次に外部グラフト要素112により取り囲まれ得る。環状のステント要素104が内部グラフト要素108に沿って正しく配置された後、内部グラフト要素108および外側グラフト要素112は互いに接合される。例えば熱を加えて内部グラフト要素108と外部グラフト要素112を一緒に結合させることができ、これによりグラフト部材114に対する環状のステント要素104の位置を維持することができる。
【0065】
第1の環状のステント要素106aは第1の頂点120aを含み、第2の環状のステント要素106bは第2の頂点120bを含む。第1の頂点120aと第2の頂点120bは互いに隣接していてもよい。例えば第1の環状のステント要素106aおよび第2の環状のステント要素106bは、第1の頂点120aと第2の頂点120bが縦軸192に直交する共通平面190にあるように、互いに対して配向されてもよい。別の言い方をすると、第1の頂点120aと第2の頂点120bは互いに同位相である。他の例において、第1の頂点120aと第2の頂点120bは、縦軸192に直交する共通平面にはない(すなわち、頂点120aおよび120bは、位相がずれているか、または互いに同一平面上にない)。特定の例について説明されているが、同じ医療器具(すなわち、ステントグラフト)による複数の異なる配向を含む環状のステント要素104のいかなる配向も本開示の範囲内である。
【0066】
ステントグラフト100は、患者の治療部位内に送達され、その中で展開されてもよい。例えば図2Aおよび2Bを最初に参照すると、ステントグラフト100が準備され、連続管腔264を有するカテーテル管262を含むカテーテル集成体260に取り付けられてもよい。カバー266はバルーン268を同軸的に取り囲むことができ、これはカテーテル管262(図2Bに示される)および連続管腔264にカテーテル管262の遠位末端またはその近傍で連結され得る。カテーテル管262へのカバー266の取り付けは、例えばシアノアクリレート接着剤などの接着剤を使用して、カバー266の近位末端および遠位末端をカテーテル管262に接着することを含む様々な方法で達成することができる。さらにポリマーテープおよび/またはフィルムを使用して、カバー266の近位末端および遠位末端をカテーテル管262に固定することができる。
【0067】
バルーン268は、例えば加圧時に患者の血管構造内で膨張することができるほぼ管状のバルーンを含むことができる。例えば生体適合性流体(例えば、水または生理食塩水)をカテーテル管262に導入し、連続管腔264を通過させ、バルーン268の内部に位置するカテーテル管262内の膨張ポート(図示せず)を通過させて、バルーン268を加圧してもよい。バルーン268への圧力が増加すると、バルーン268の直径も増加する。
【0068】
バルーン268は、例えば非コンプライアントな一般に非弾性のバルーンを含むことができる。そのような例ではバルーン268が、十分な加圧時にバルーン268が選択された直径まで膨張し、破裂圧力に到達するまでさらなる加圧下で選択された直径またはその近くに留まることを可能にするように構成された材料(例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクタム、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ABSコポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックコポリマー、イオノマー樹脂、液晶ポリマー、および剛直棒状ポリマー)を含むことができる。
【0069】
いくつかの例において、バルーン268はコンプライアントな比較的弾性のあるバルーンを含むことができる。このような例において、バルーン268は、バルーン268への圧力が増加するにつれてバルーン268の直径が連続的に増加することを可能にするように構成された材料(例えばポリウレタン、ラテックス、およびポリシロキサンのようなエラストマーオルガノシリコーンポリマー)を含むことができる。コンプライアントな比較的弾性のバルーンは、展開中の望ましくない真っ直ぐにする力を緩和することができるため、患者の血管構造内のようなカーブの周りで展開するのに適している。しかし、非コンプライアントな全体に弾力性のないバルーンと比較して、コンプライアントで比較的弾性のバルーンは、内部人工器官の要素間に角度を生じさせて軸方向の圧縮力を発生させる一様でない展開の影響をより受けやすい。特に、真っ直ぐにする力が比較的小さい構成を有する独立した環状のステント要素を用いた内部人工器官を有するコンプライアントなバルーンの使用は、展開中の縮小を特に受けやすい場合がある。
【0070】
さらに他の例において、バルーン268は半コンプライアントなバルーンを含む。そのような例においてバルーン268は、コンプライアントな属性と非コンプライアントな属性の組み合わせで挙動する。コンプライアントなおよび非コンプライアントな例に関連して説明されているが、コンプライアントな挙動と非コンプライアントな挙動の組合せでバルーン268が患者の身体内で予測可能に膨張することを可能にするいかなる材料または構成も本開示の範囲内である。真っ直ぐにする力が小さいバルーンの例は、米国特許出願公開第2014/0276406号(名称「Conformable balloon devices and methods」)に開示されており、その全内容は参照により本明細書中に取り込まれる。
【0071】
図3について、バルーン268およびカバー266はステントグラフト100の長さにわたる部分展開中間直径を生成して、展開中の最大バルーン角度を35°以下、例えば20°以下、さらには10°以下に低下させることができる。いくつかの例において、バルーン268およびカバー266は、バルーン268およびカバー266上に取り付けられた内部人工器官の未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達するまで、バルーン268内の膨張圧力を増加させることにより膨張される。中間直径は、膨張圧力が増加してカバー266の降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径でほぼ維持され得る。このような例は、コンプライアントな比較的弾性のあるバルーン、独立した環状のステント要素を有する内部人工器官、および/または比較的大きな直径の内部人工器官で特に有用であり得る。
【0072】
1つの変形態様においてカバー266は、カバー266の降伏強度に寄与するフランジブル層の究極強度で中間直径において破裂して、降伏前に中間直径を超える膨張に抵抗するように設計されたフランジブル層を含むことができる。フランジブル層が膨張圧力の増加のために破損すると、バルーン268およびカバー266の膨張が展開された直径まで継続することができる。
【0073】
別の変形態様においてカバー266は、中間直径を越える膨張に抵抗するカバーの降伏強度により膨張に増加した抵抗を提供するように構成された予め伸ばされた層を含むことができる。例えば、内部人工器官を取り付ける前に、バルーン268およびカバー266の集成体を中間直径まで部分的に膨張させることができる。このような部分的な膨張は、内部人工器官の展開前に、バルーン268およびカバー266の1つまたは2つ以上の層に降伏および塑性変形を生じさせ、こうして内部人工器官の中間直径展開までバルーン268およびカバー266の膨張に対する抵抗を低減する。中間直径に到達すると、バルーン268およびカバー266の1つまたは2つ以上の層は、再び降伏してさらなる膨張を可能にする必要があり、こうして中間直径での膨張に対する増加した抵抗が提供される。
【0074】
別の変形態様において、らせん状ラップを含むカバー、および1つの実施態様においてらせん状に巻き付けられたカバーは、直径が縮小またはネックダウンされて、カバー内のフィブリルまたは強度部材を縦方向に配向し、次に内部人工器官を取り付ける前に、中間直径まで部分的に膨張させることができる。このような部分的な膨張は、カバー内のフィブリルまたは強度部材のらせん状の巻き付け角度および配向をより円周方向に変化させ、さらに膨張するのに必要な膨張圧力の量を実質的に変化させることができる。このようにして、膨張曲線の「ステップ」またはポーズが中間直径で達成される。
【0075】
いくつかの例において、バルーン268は複数のプリーツ370を含むことができる。プリーツ370は、例えば縦軸192の少なくとも一部に沿って全体に延びるバルーン268の材料の折り目または屈曲点を含むことができる。そのような例においてバルーン268は、1つまたは2つ以上のプリーツ370を有するほぼ管状の形態を含む。
【0076】
いくつかの例において、バルーン268はカバー266により同軸的に取り囲まれてもよい。カバー266は、バルーン268の外面に実質的に一致し得る内面を含むことができ、従ってバルーン268とカバー266の両方は、バルーン268が収縮した場合も含めて、実質的に同じ形状を含む。しかし他の例において、カバー266はバルーン268とは異なる形状または構成を含むことができる。
【0077】
いくつかの例において、カバー266は複数のプリーツ372を含むことができる。バルーン268と同様にプリーツ372は、カバー266の材料内に例えば全体に縦軸の少なくとも一部に沿って延びる折り目または屈曲点を含むことができる。そのような例においてカバー266は、2つまたはそれ以上のプリーツ372を有する全体に管形状を含む。いくつかの例において、カバー266はバルーン268と同じ数のプリーツ372を含む。バルーンカバー266の全作用長さの少なくとも一部分に沿って、バルーンカバー266の内面は、プリーツされ折り畳まれた構成およびプリーツのない膨張した構成の両方で、バルーン268の外面と接触する。すなわち図3に示されるように、カバー266のプリーツ部分は、その構成がバルーン268の対応するプリーツ部分に実質的に対応し、カバー266の非プリーツ部分はその構成がバルーン268の対応する非プリーツ部分に実質的に対応する。
【0078】
プリーツ370および372は、カバー266およびバルーン268内に同時に形成することができる。例えばバルーン268はカバー266によって同軸的に取り囲まれてもよく、プリーツ370および372はバルーン268およびカバー266の両方の中にそれぞれ形成されてもよい。
【0079】
他の例において、プリーツ372は、プリーツ370がバルーン268内に形成された後にカバー266内に形成されてもよい。例えば、あらかじめプリーツされたバルーン268がカバー266により同軸的に取り囲まれてもよい。そのような例において、カバー266とあらかじめプリーツされたバルーン268は使用圧力まで一緒に膨張され、その後カバー266およびバルーン268は機械的プリーツ形成プロセスを受けて、あらかじめプリーツされたバルーン268内と同じ数および構成のプリーツをカバー266内に形成することができる。カバー266内にプリーツ372を形成している間に、カバー266とバルーン268の両方を収縮させて、患者の体内に送達するように圧縮することができる。特定の例で説明されているが、カバー266内にプリーツを形成するいかなる方法も本開示の範囲内である。
【0080】
さらに他の例において、バルーン268は複数のプリーツ370を含むことができ、カバー266はプリーツ372を含まなくてもよい。そのような例において、プリーツ370はバルーン268内に形成され、その後カバー266がバルーン268の外面の周りに同軸的に配置される。
【0081】
さらに、プリーツ370およびプリーツ372は規則的な間隔で一致しているように図示されているが、他の例において、プリーツ370およびプリーツ372のいずれかまたは両方をマイクロプリーツで置換することができ、材料は所定の折り目またはプリーツ位置なしで単に押しつぶされる。
【0082】
いくつかの例において、バルーンカバー266とバルーン268は別々に形成され、一旦カバー266およびバルーン268で組み立てられると、異なる折り目またはプリーツを有することができる。特定の例(すなわち、バルーン268とカバー266の両方がプリーツを有するか、またはバルーン268もしくはカバー266のみがプリーツを有する)に関連して記載されているが、バルーン268および/またはカバー266が複数のプリーツを含むかまたはプリーツを含まないいかなる構成も本開示の範囲内である。
【0083】
カバー266は、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、改質(例えば緻密化)ePTFE、PTFEの発泡コポリマーなどの発泡フルオロポリマー、発泡ポリエチレン、織布および不織布、またはフィルムなどのポリマーを含むことができる。発泡フルオロポリマーの非限定例としては、特に限定されるものではないが、延伸PTFE、延伸改質PTFE、およびPTFEの発泡コポリマーが挙げられる。PTFEの発泡ブレンド、発泡改質PTFE、およびPTFEの発泡コポリマーについては、例えばBrancaの米国特許第5,708,044号;Baillieの米国特許第6,541,589号;Sabolらの米国特許第7,531,611号;Fordの米国特許第8,637,144号;およびXuらの米国特許第9,139,669号などの特許が出願されている。これらの前述の各特許の全内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0084】
いくつかの例において、ポリマーは節およびフィブリル微細構造を含むことができ、ポリマーは高度にフィブリル化されてもよい(すなわち、溶融フィブリルの不織布)。特定のポリマーに関連して記載されているが、カバー266が患者の体内で予測可能な方法で膨張することを可能にするいかなる材料または構成も本開示の範囲内である。
【0085】
いくつかの例において、カバー266は複数の層のポリマー材料を含むことができる。例えばカバー266は、基材またはマンドレルの上に連続的に包まれて全体に管状の部材を形成するポリマー材料を含むことができる。いくつかの例において、カバー266は、ポリマー材料の円周方向、らせん状、または軸方向の配向で構成することができる。そのような例においてポリマー材料は、マンドレルまたは基材の縦軸に概して垂直に、すなわち円周方向に巻き付けることができる。他の例において材料は、マンドレルまたは基材の縦軸に対して0°より大きく90°未満の間の角度で、すなわち、らせん状に巻き付けられてもよい。さらに他の例においてポリマー材料は、マンドレルまたは基材の縦軸にほぼ平行に、すなわち軸方向(または縦方向)に巻き付けられてもよい。
【0086】
図2Bについてカバー266は、例えばバルーン268の長さ280よりも長い長さ282を有することができる。いくつかの例において、カバー266はバルーン268の周りに配置されて、第1のカバー終端270および第2のカバー終端272が第1のバルーン終端274および第2のバルーン終端276を超えて伸びる。そのような例において、第1のカバー終端270または第2のカバー終端272に配置されるカバー266の材料のセグメント284は縦軸192に沿って(すなわち軸方向に)圧縮され得る。例えば図4Aおよび図4Bについて、カバー266の材料のセグメント284は、第1のカバー終端270において軸方向に圧縮され(例えば、押しつぶされ)、セグメント286は第2のカバー終端272においてが軸方向に圧縮され得る。
【0087】
図4Aおよび図4Bに示されるように、セグメント284および/またはセグメント286は、第1のバルーンショルダー290および/または第2のバルーンショルダー292と整列している。他の例において、セグメント284および/または286は、バルーン268の異なる部分と整列している。図4Aおよび図4Bにおいて、第1のバルーンショルダー290および/または第2のバルーンショルダー292は、円錐形のショルダーである。特定の例について説明されているが、バルーンショルダーのいかなる形状も本開示の範囲内である。
【0088】
セグメント284は、例えば第1のバルーンショルダー290の少なくとも一部を囲むように配置することができ、セグメント284は第2のバルーンショルダー292の少なくとも一部を取り囲むように配置することができる。バルーンショルダー(例えばバルーンショルダー290および292)の周りに追加の軸方向に圧縮された(例えば押しつぶされた)材料を提供することは、バルーンショルダーの全体的部位においてカバー266の厚さおよび/または密度を増加させることができる。さらに、バルーンショルダーの上にカバー266の軸方向に圧縮された追加の材料を有することにより、膨張中のバルーンへの軸方向の圧縮を制限しながら、バルーン268の半径方向の膨張を可能にする。例えばこれらの圧縮部分を有さない場合、バルーンのショルダーはバルーン本体より先に膨張し、バルーンおよび内部人工器官の軸方向圧縮を引き起こす。しかし軸方向に圧縮された材料を有する場合、バルーンのショルダーは、全体としてバルーン内の圧力がバルーンの本体を取り囲むカバーおよび内部人工器官をより完全に膨張させるのに十分になるまで、内部人工器官の軸方向圧縮が(例えば、バルーンの膨張部分とバルーンの未膨張またはあまり膨張されていない部分との間の角度の変化により)より少なくなるような様式で、膨張することができる。さらに、バルーンショルダー290および292の全体的部位における厚さおよび/または密度の増加は、バルーンショルダーに追加の半径方向の強度を提供して同様の効果を達成することができる。
【0089】
前述のように、バルーン268はバルーン268内に加圧流体を供給することにより膨張させることができる。図5A図5Eは、バルーン268が膨張したときにバルーン268の膨張を所定の中間直径に制限するカバー266の一例を示す。ステントグラフト100の中間部分200は、ステントグラフト100の中間部分20において、ならびに自由終端196、198またはその近傍において、バルーン268の膨張に対して抵抗を与える。カバー266もまたバルーンの膨張に抵抗性を与えて、ステントグラフト100の中間部分200におけるバルーン268の膨張率に対するステントグラフト100の自由終端196、198におけるバルーン268の膨張率の差を減少させ、こうして、バルーン268がステントグラフト100をその非展開状態(図5A)から展開された状態(図5E)に膨張させるときに、ステントグラフト100の縦方向の圧縮を低減する。いくつかの例においてカバー266は、ステントの中間部分200におけるバルーン268の膨張率を、自由終端196、198またはその近傍(例えば、ショルダーの近傍またはショルダー)におけるバルーンの膨張率と等しくするように作用する。
【0090】
いくつかの例において、軸方向に圧縮されたセグメント284および/または286は、バルーンショルダー290および292の膨張に対して追加の抵抗を提供するように構成され、バルーン268の中央部分294をそのようなセグメント284および286が無い場合より容易に膨張するようにして、これがバルーンショルダーの膨張を、制限してバルーン268の中央部分294の膨張により密接に一致させる。軸方向に圧縮されたセグメント290および/または282はまた、バルーンショルダー290および/または292の膨張を実質的に妨げることもできる。いくつかの例において、これは、これらの部位におけるバルーン膨張の程度を制御する効果を有し、これが次に、バルーン268および/またはステントグラフト100の膨張プロファイルを制御する。
【0091】
いくつかの例においてバルーン268の膨張は、ステントグラフト100の望ましくない膨張特性を低減できるような様式で、被覆されたセグメント284および/または286により制御され得る。例えば、被覆されたセグメント284および/または286は、膨張中のステントグラフト100の縮小度を低減することができる。特にセグメント284および/または286は、例えばバルーンのショルダー部分とバルーンまたはステントグラフトの中央部分の間の角度が小さくなるために、膨張するバルーンショルダーから生じる軸方向の力が著しく低減される特定の膨張プロファイルにバルーンを押し込むように構成することができる。さらに、被覆されたセグメント284および/または286は、ステントグラフト100の積み重ね(例えば、膨張中の環状のステント要素104間の間隔の縮小)を低減または防止することができる。
【0092】
図2Aおよび図2Bについて、バルーン268がカバー266に囲まれた後、ステントグラフト100はバルーン268およびカバー266上に搭載されていてもよい。例えばステントグラフト100は、バルーン268およびカバー266の一部を同心円状に取り囲むように配置されてもよい。いくつかの例において、いったんステントグラフト100がバルーン268およびカバー266の周りに適切に配置されると、ステントグラフト100は半径方向に圧縮されて非展開直径242になる。例えばステントグラフト100は非展開直径242に圧縮されて、治療部位内に移植する際にステントグラフト100のプロファイルを低下させる。さらにステントグラフト100は、展開前にバルーン268上のステントグラフトの動きに抵抗するように、バルーン268およびカバー266上に圧縮されてもよい。圧迫後、未展開状態のステントグラフト100の周りで測定された医療集成体のプロファイルは、約5~約10フレンチであり、カバー266の厚さは約0.025~約0.051ミリメーターであってもよい。
【0093】
いくつかの例において、圧縮後ステントグラフト100はそれ自体がカバー266内に埋め込まれることができる。例えばそれ自体をカバー266に埋め込むことにより、ステントグラフト100は改善されたステント保持を示すことができる。このような改善されたステント保持は、例えば患者の治療部位への展開中に、カバー266および/またはバルーン268に対するステントグラフト100の適切な配置を維持するのを助けることができる。
【0094】
その圧縮された構成と膨張された構成との間の内部人工器官の(例えば、一方の自由終端196と反対側の自由終端198との間で測定される)長さの減少を制限する別の方法は、ステント部材102の環状のステント要素104の位置および/または向きを変更することによる。特に、いくつかの例においてステント部材102の1つまたは2つ以上の環状のステント要素104の位置および/または向きは、ステントグラフト100の圧縮前に変更されてもよい。例えば、ステントグラフト100の圧縮前に、2つまたはそれ以上の隣接する環状のステント要素104の間の距離を減少させることができる。より具体的な例について、1つまたは2つ以上の環状のステント要素104は、互いに約1ミリメーター未満離れているように、または互いに接触しているように(すなわち、互いに0ミリメーター離れている)ように、移動させることもできる。
【0095】
他の例において、環状のステント要素104の位置および/または向きは、ステントグラフト100の圧縮後に変更することができる。例えば図2Aについて、ステントグラフト100は、2つまたはそれ以上の環状のステント要素104の縦方向間隔を縮小することにより変更され得る長さを有する。例えば、隣接する環状のステント要素104の間の縦方向の間隔を縮小することは、ステント要素104が展開された状態に膨張される場合に回復される格納された縦方向の長さを作り出す。例えば格納される縦方向の長さは、ステントグラフト100の膨張および展開の際に回復される(すなわち、軸方向に膨張される)隣接する環状のステント要素104の間の軸方向に圧縮された環内グラフトセグメント122のグラフト材料の長さまたはセグメントとして定義され得る。ステントグラフト100の「展開されていない長さ」は、一般に送達前の圧縮状態のステントグラフト100をいい、ステントグラフト100の「展開された長さ」は、一般に膨張された状態のステントグラフト100をいう。いくつかの例において、環状のステント要素104の間隔を変更することにより、未展開長さ(例えば、図2A中の長さ240)と呼ばれ得る新しい長さを作り出す。
【0096】
言い換えると、隣接するステント要素104の間の間隔を低減することにより、環内グラフトセグメント122を軸方向に圧縮または押しつぶすことができる。軸方向圧縮により格納された長さを作り出しても、ステントグラフト100の外径は増加しない。格納された長さを作り出しながら器具の直径を増加させないことにより、器具の横断面は最小のままであり、したがって血管系を通るステントグラフトの送達に悪影響を及ぼさない。同時に、格納された長さの回復は、例えばバルーンを膨張させることに起因する軸方向の圧縮力による長さの損失を低減または相殺するステントグラフトの能力を高める。
【0097】
患者の治療部位にステントグラフト100を送達すると、ステントグラフト100を展開することができる。いくつかの例においてステントグラフト100は、バルーン268を所望の直径まで膨らませることにより展開され、それによりステントグラフト100の直径が未展開直径242から展開直径146まで増加する。バルーン268が十分に膨張した後、展開直径146が達成され、バルーン268は収縮されることができ、カテーテル集成体260を患者の体から取り出すことができる。
【0098】
展開された長さ148は、例えば展開されていない長さ240よりも短くてもよい。例えば展開された長さ148は展開されていない長さ240の約60%~約100%、さらに約80%~約100%、さらに約95%~約100%であり得る。試験により、特定の実施例では未展開長さの99%を超える展開長さ148が達成され、したがって縮小長さが1%未満であることを証明している。ステントグラフトが高率の未展開長さを達成する能力は、本明細書では縦方向の効率とも称される。
【0099】
またステントグラフト100を未展開の構成から展開された構成に膨張することにより、例えば環状のステント要素104の1つまたは2つ以上のワイヤーフレーム106の内角を増加させることもできる。例えばステントグラフト100が展開された構成である場合、環状のステント要素104のワイヤーフレーム106の内角188は約70°~110°、さらには約80°~100°とすることができる。
【0100】
上述のように、ステントグラフト100の膨張はバルーン268を所望の直径に膨張させることを含むことができ、それによりステントグラフト100の直径を未展開直径242から展開直径146まで増加させることができる。図5A図5Eに示されるように、ステントグラフト100の外面に沿った角度は、ステントグラフト100の部分的に膨張した部分とステントグラフト100の完全に膨張した部分との間のステントグラフト100の中央の縦軸に対して存在する。比較的大きな直径のステントグラフトについて、この角度は、バルーン268の膨張力に抵抗しながら、ステントグラフト100の中心に向かって縦方向にスライドする個々の環状のステント要素104による膨張中に、環状のステント要素104の間の間隔の低下をもたらすことができる。例えば、約10ミリメーターまたはそれ以上の直径を有するステントグラフトは、膨張中の環状のステント要素104の間の間隔の減少を経験することがある。
【0101】
いくつかの例においてバルーン膨張プロファイルは、バルーン上のカバーの使用により制御され得る。このようなカバーが膨張時にステントグラフトの縦方向寸法にわたってバルーン直径の差を減少させるように、膨張プロファイルを変えることができるいくつかの方法がある。バルーンにカバーを追加することは、ある範囲の膨張圧力にわたって一定の直径を達成する能力を提供する。展開中のステントグラフトの曲げ柔軟性を維持するために、カバーは屈曲の一方の側で伸長しおよび/または他方の側で縮小することができる。弾力性バルーンのようなバルーン上に位置する屈曲部に配置されたときに伸長および/または縮小する能力を有するカバーは、制御された膨張プロファイルを提供することができ、それにより展開中にバルーン角度を制限して、曲げ柔軟性を維持しながらステントグラフトの軸方向の圧縮を緩和することができる。
【0102】
いくつかの例において、ステントグラフトの外面に沿った角度は、バルーンの膨張を制御して展開中のステントグラフトの縦方向寸法にわたって膨張をバランスさせることにより制限され得る。例えば、バルーン内またはバルーン上の層、例えばバルーン上のカバーは、バルーンの膨張に対するステントの可変抵抗に逆らって、未展開直径から展開直径への移行の間のステントグラフトの一様でない膨張を緩和することができる。そのような層は、バルーンの軸方向に圧縮された部分と一緒になって、バルーンの膨張に対するステントの可変抵抗に逆らってステントの一様でない膨張を緩和することができる。例えばバルーンのそのような軸方向に圧縮された部分は図4Aおよび4Bについて上述されており、カバー266の材料のセグメント284は第1のカバー終端270において軸方向に圧縮され(例えば押しつぶされ)、セグメント286は第2のカバー終端272において軸方向に圧縮され得る。
【0103】
バルーン内またはバルーン上の層は、バルーンの膨張に対するステントの可変抵抗に逆らって、ステントのより弱い部分におけるバルーンの展開に対する増大した抵抗力を提供することにより、ステントグラフトの一様でない膨張を緩和することができる。このようにして、このような層がバルーンの縦方向寸法全体にわたってまたはステントグラフトの縦方向寸法全体にわたって伸長する必要はない。代わりに、ステントの一様でない膨張を緩和するためにバルーンの膨張に対するステントの可変抵抗に逆らうように構成されたバルーン内またはバルーン上の層は、ステントグラフトの膨張がステントグラフトの他の縦方向のセクションより多くの抵抗を提供する1つまたは2つ以上の縦方向のセクションに沿って、存在しないかまたは最小であることができる。例えば層は、バルーンの覆われていない終端に、および任意にステントグラフトの終端および/または個々の環状のステント要素の間のスペースを含むステントグラフトのより弱い部分に存在し得る。
【0104】
同じかまたは異なる実施例において、バルーンの膨張に対するステントの可変抵抗に逆らって未展開直径から展開直径への移行中のステントの一様でない膨張を緩和するように構成されたバルーン内またはバルーン上の層は、部分的に展開されたバルーン直径で膨張に対して増加した抵抗を提供し得る。例えばそのような層は、バルーン内の圧力がフランジブル層の強度に打ち勝つのに十分になるまで、バルーンの膨張を一時停止させるように設計された拘束層を提供することができる。このような圧力は、バルーンの縦方向部分間の角度を制限することができ、バルーンの任意の縦方向部分が完全膨張された状態に到達する前に、バルーンのすべての縦方向の部分が部分膨張状態に到達することを確実にすることができる。
【0105】
いくつかの例において、バルーンおよびカバーまたはその一部は、未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達するまでバルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨張され、膨張圧力が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径においてほぼ維持される。1つの変形態様において、カバーは中間直径で破裂するように設計されたフランジブル層を含むことができ、フランジブル層の究極強度はカバーの降伏強度に寄与して、降伏前に中間直径を超える膨張に抵抗する。いったん増加した膨張圧力によりフランジブル層が破損すると、バルーンおよびカバーの膨張は展開直径まで継続することができる。別の変形態様においてカバーは、カバーの降伏強度による膨張に対して増大した抵抗を提供して中間直径を超える膨張に抵抗するように構成された予め伸ばされた層を含むことができる。いずれの例においても、環状のステント要素の角度は展開中の縮小力を緩和するように制限されてもよい。いくつかの例において環状のステント要素の角度は、35°以下、例えば20°以下、またはさらには10°以下に制限されてもよい。
【0106】
一般に、ナイロン性(または他のポリマー性)バルーンは曲げの柔軟性がほとんどないが、膨張中のステントグラフトの縦方向寸法にわたるバルーン直径の差異の間に、広範囲の膨張圧力にわたってほぼ一定の直径を達成することができる。一方弾力性バルーンは高度の曲げ柔軟性を有するが、膨張時に拘束されなければ、ある範囲の膨張圧力にわたって大きいバルーン角度をもたらすことがある。弾力性バルーンを有するカバーを含めることは、ある範囲の膨張圧力にわたって直径の差異を緩和し、広範囲の膨張圧力にわたって膨張中のステントグラフトの縦方向寸法にわたるバルーン直径の差を緩和することができる。
【0107】
図5Aに示されるように、バルーン268およびステントグラフト100は未展開状態にある。図5Bにおいて、ステントグラフト100の自由終端196、198は部分的に膨張している。図5Cに示されるように、ステントグラフト100の中間部分200は膨張し始めるが、ステントグラフト100の自由終端196、198はカバー266により中間直径に保持される。こうして、図5Dに示されるように、膨張が継続する。例えば図8のチャートは、集成体260を使用する展開中のステントグラフト100の寸法を表すことができる。図8に示されるように集成体260はステップ412を有する圧力直径曲線410(ここで圧力が増加しても直径は比較的平坦なままである)、およびその膨張範囲を通して伸長曲線420を提供する。ステップ412はカバー266の塑性変形に先立って発生し、これは次に、展開中の中間直径を超えて連続的な膨張を可能にする。
【0108】
このようにして、図5Eに示されるように、バルーン268内の圧力がカバー266の降伏強度に打ち勝つまで、カバー266はバルーン268のこれらの部分についてバルーン268の膨張を一時停止させて、カバー266の予め決められた直径に到達する。こうして、カバー266および266のバルーン268のこれらの部分およびバルーン268は、カバー266およびバルーン268の予め伸ばされた直径に対応する中間直径に到達するまで、バルーン268内の膨張圧力を増加させることにより、膨張される。
【0109】
図5D図5Eとの間の移行は、図8のチャート400のステップ412に対応する。例えばバルーンおよびカバーは、バルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨張することができ、膨張圧力が少なくとも1気圧、例えば約1気圧~12気圧、約1気圧~4気圧の間、またはさらには約1気圧~2気圧増加して、少なくともバルーンとカバーの終端部分でカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径においてほぼ維持される。いくつかの例において、カバーおよびバルーンおよび任意に内部人工器官は、比較的低圧力(例えば、1、2、3、または4気圧)で中間直径まで膨張し、次に中間直径を超えて膨張するために追加の圧力(例えば、1、2、3、または4気圧)が必要とされ、次に展開直径までまたは目的の最大直径までまたは完全に膨張した直径まで膨張するのに追加の圧力(例えば、3気圧~18気圧)を必要とする(一例として図8を参照)。
【0110】
カバー266およびバルーン268内の層の塑性変形を引き起こすのに必要な圧力の増加は、バルーン268とステントグラフト100の異なる部分間の角度を35°以下、例えば20°以下、またはさらには10°以下に制限することができる。いくつかの例において、膨張圧力が増大してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーのこれらの部分のみ、例えば終端部分または小さいままである中央部分を除いた部分のみが中間直径に到達する。他の例において、膨張圧力が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、各複数の環状のステント要素などの内部人工器官に隣接するバルーンおよびカバーの実質的にすべての部分はほぼ中間直径に到達する。
【0111】
いったんバルーン内の圧力が降伏強度に打ち勝つのに十分になると、バルーン268およびステントグラフト100の完全な膨張が再開され、ステントグラフト100がその展開された状態に到達するまで継続する(図5E)。
【0112】
ある例において、フィルム管を予め延伸することにより、中間直径(すなわち、バルーンの公称直径未満)で停止するバルーンカバーが作製された。20psiの泡立ち点、0.0003インチの厚さ、2.66グラム/平方メートルの質量、94,933psiのマトリックス引張強度、および2,407psiの直交マトリックス引張強度を有するフィルムが、およその外径が約11.6mm(公称バルーンよりも約16%大きい)を有するマンドレルにらせん状に巻かれ、380℃で15分間焼成された。次に、らせん状に巻かれた管はマンドレルから取り出され、ネックダウンされて、らせん状に巻かれた管の内径が約1.7mmになるようにした。次にらせん状に巻かれた管は軸方向に約28%圧縮され(「押しつぶされ」)、次に10mmのバルーンカテーテルに装填された。らせん状に巻かれた管の終端はバルーンカテーテルに密閉され、次にバルーンカテーテルは6mm(所望の所定の直径)まで膨張された。予め膨張されたらせん状に巻かれた管を有するバルーンカテーテルは収縮され、送達直径に折り畳まれた。次にバルーンカテーテルは膨張され、バルーンカテーテルは、例えば図8の例に示されるように、6mmの予備膨張直径またはその近傍において圧力対直径曲線の「ステップ」または休止を有した。
【0113】
中間直径で休止するバルーンカバーの別の例は、図6で示されるような拘束層を有するバルーンカバーである。図6は、集成体300の縦方向の断面図を示し、これは、展開されたバルーン368とフランジブル層328を有するカバー320を含む。フランジブル層328は、バルーン368をその全長に沿って部分的に膨張させるのに必要な圧力より大きな圧力で塑性変形することにより、バルーン368の膨張に対する内部人工器官の可変抵抗に逆らうように構成される。こうしてフランジブル層328は、フランジブル層328の直径に到達するバルーン368のこれらの部分についてバルーン368の膨張を一時停止させ、その時点で、バルーン内の圧力がフランジブル層328の強度に打ち勝つのに十分になるまで圧力が増加し、フランジブル層328の塑性変形(降伏)をもたらす。すべてではなくいくつかの例ではそのような圧力は、バルーン368の任意の縦方向のすべての部分が完全に膨張した状態に到達する前に部分的に膨張した状態に到達することを確実にし得る。このような部分的に膨張した状態は、バルーン368のすべての部分が同じ直径にあることを意味するわけではなく、代わりに直径の差が小さくなり、それによってバルーン368の異なる縦方向部分間の角度を35°以下、例えば20°以下、またはさらには10°以下に低下させ、それによってバルーン368と共に展開されるステントまたはステントグラフト上の軸方向の圧縮力を減少させる。
【0114】
カバー320は任意に、フランジブル層328に加えてさらなる層を含む。図6に示されるように、カバー320は3つの追加の層322、324、326をさらに含む。ある例において、層322はフィルムの縦方向のラップを表し、層322は縦方向の強度を提供することができ、これは、膨張中のバルーン368の伸長を制限するのに役立ち得る。層322はさらに、接着剤(例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP))のコーティング(例えば、吸収層または追加層)を含み得る。層322のFEP側は、巻き付けられたバルーンの反管腔側にまたは外側に面していてもよい。ある例において層322は、Bacinoの米国特許第5,476,589号(このすべての内容を参照により本明細書中に取り込む)に開示されたベース膜から、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレット(このすべての内容を参照により本明細書中に取り込む)に開示されているように教示されたその上のFEPの追加の不連続層とともに作製される。
【0115】
同じかまたは異なる例において、層324はカバー320に加えられて、層322の上のフィルムの1つまたは2つ以上の半径方向のラップ、例えば2層~16層、例えば8層のらせん状ラップ層を表すことができ、これはカバー320に追加の破裂強度を提供することができる。いくつかの例において層324はまた、Bacinoの米国特許第5,476,589号に開示されているようなベース膜からFEPなしで作製することもできる。
【0116】
同じかまたは異なる例において、層326はカバー320内に存在してもよい。層326は、層324上のフィルムの少なくとも1つのらせん状ラップ、例えば層324上にFEPでコーティングされた1つまたは2つ以上のらせん状ラップを表すことができる。1つの例において層326は、Bacinoの米国特許第5,476,589号に記載されたベース膜から作製され、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに開示されているようにFEPの追加の不連続層がその上に追加されている。
【0117】
1つの具体例において層322は、26psiの泡立ち点、約2.75g/mの質量/面積(その約0.5g/mがFEPである)、一方向で1.92kgf/inの破壊力、直交方向で0.06kgf/inの破壊力、0.00013インチの厚さを有する不連続FEPを用いてベース膜から作製された。層322は9mmのマンドレル(バルーン上のカバー上に押しつけられた8mmの内部人工器官を有することが意図される)上に巻き付けられた。他の例において、層322はバルーン上に直接巻き付けてもよい。いくつかの例においてバルーンは、対応するバルーンカバーまたは意図された内部人工器官よりもわずかに大きい(例えば、1mmまたは2mm)膨張直径を有する。この具体例において層324は、20psiの泡立ち点、0.0003インチの厚さ、2.66グラム/平方メートルの質量、94,933psiのマトリックス引張強度、および2,407psiの直交マトリックス引張強度を有するフィルムを層322上に巻き付けることにより作製された。この具体例において層326は、26psiの泡立ち点、約2.75g/mの質量/面積(その約0.5g/mがFEPである)、一方向で1.92kgf/inの破壊力、直交方向で0.06kgf/inの破壊力、0.00013インチの厚さを有する不連続FEPを用いてベース膜から、層324(層326は層324の上に巻き付けられた)の上に巻き付けて作製された。当業者であれば、異なる積層シナリオを企図することができ、プロファイルまたは製造上の利点などの様々な動機により、個々の層の特性をより少ない層に組み合わせることができるであろうが、それらもなお本開示の範囲内である。
【0118】
バルーン368上への層322、324、326の適用に続いて、バルーン368および層322、324、326の集成体を焼成することができる。1つの例において、バルーン368および層322、324、326の集成体は、320℃で約15分間焼成することができる。この最初の焼成後、バルーン368および層322、324、326の集成体は、250℃で中間直径に圧縮することができる。
【0119】
次に、フランジブル層328を、バルーン368および層322、324、326の集成体に中間直径で追加することができる。いくつかの例においてフランジブル層328は、層326上にFEPがコーティングされた1つまたは2つ以上のらせん状ラップのような層326上のフィルムの少なくとも1つのらせん状ラップを表してもよい。
【0120】
1つの例において層326は、Bacinoの米国特許第5,476,589号に開示されたベース膜から、Bacinoの国際公開第94/13469号パンフレットに開示されているようなその上の追加のFEPの不連続層を用いて作製される。1つの具体例においてフランジブル層328は、36psiの泡立ち点、0.00014インチの厚さ、1.591g/mの質量(その0.14g/mはFEPに由来する)、1つの方向で1.13kg/inの破壊力、直交方向で0.12Kgf/inの破壊力を有した。
【0121】
別の例において層328は、ベースフィルムに吸収されたエラストマー(Tecothane)を有するBacinoの米国特許第5,476,589号に開示されたベース膜(全重量の約70%はエラストマーに来する)から作製される。エラストマーは、展開後に内部人工器官からカバーを取り出すのを補助した。エラストマーを含まないフィルムは、約35psiの泡立ち点、0.0001インチの厚さ、1.46g/mの質量、および1つの方向で101,321psiのマトリックス引張強度、直交方向で9,288psiのマトリックス引張強度を有した。
【0122】
同じかまたは異なる例において、フランジブル層328は焼成されて中間直径でフランジブル層のフランジブルな(壊れやすい)性質を提供することができる。1つの例において、バルーン368および層322、324、326、328の集成体は280℃で約5分間焼成されることができる。このプロセスは、バルーン368内の圧力が約4気圧に到達すると塑性変形を受けるフランジブル層328を生成することができる。最もよく理解されるように、焼成はフランジブル層328を中間直径で溶融、癒着させ、フランジブル層328の弾性を低下させ、中間直径を超えるさらなる膨張に対する抵抗を提供する。焼成されたフランジブル層328は薄くかつ不連続であり得る。増加する膨張圧力による膨張の間、例えば約4気圧でフランジブル層328の引張歪みがなくなると、引張歪みのないフランジブル層328は中間直径を超えて膨張の再開を引き起こすことができる。バルーン368は、フランジブル層328の破断点未満の圧力でその長さ全体にわたって膨張することができるため、フランジブル層328は、フランジブル層328がバルーン368の長さに沿っていずれかの点で塑性変形を経験する前に、バルーン368の長さの大部分またはすべてが部分的に膨張されることを確実にする。
【0123】
焼成工程に続いて、カバー320およびバルーン368は半径方向に圧縮されて、図2Aおよび図2Bに関して上述したように内部人工器官の装填を容易にすることができる。圧縮後、装填されたステントまたはステントグラフトのような内部人工器官を含む医療集成体のプロファイルは、未展開状態のステントグラフト100の周りで測定して約5~約10フレンチの間であり、カバー320の厚さは約0.025から約0.051ミリメーターの間にあり得る。
【0124】
フランジブル層328の追加を除いて、カバー320はカバー266と実質的に類似していてもよく、ステントグラフトは、バルーン268とカバー266について前に記載されたものと同じかまたは実質的に同様の方法で、バルーン368およびカバー320上に装填することができる。例えばカバー320の構築は、例えばバルーン368の長さ380より長い長さ382を有することができる。いくつかの例においてカバー320はバルーン368の周りに配置され、第1カバー終端370および第2のカバー終端372は、第1のバルーン終端374および第2のバルーン終端376を超えて伸長する。このような例において、第1のカバー終端370または第2のカバー終端372に配置されたカバー320の材料のセグメント384は、縦軸192に沿って圧縮することができる(すなわち、軸方向に圧縮)。例えば図6について、カバー320の材料のセグメント384は第1のカバー終端370において軸方向に圧縮され(例えば、押しつぶされ)、セグメント386は第2のカバー終端372において軸方向に圧縮され得る。同じかまたは異なる例においてカバー320は、他の部分、例えば中央部分または環状のステント要素104の間のスペース内で縦方向に圧縮されてもよい。他の例においてカバー320はその長さのほとんどまたはすべてに沿って縦に圧縮することができる。さらに別の代替態様において、カバーはその長さに沿って全く圧縮されていなくてもよい。
【0125】
図6に示されるようにセグメント384および/またはセグメント386は、第1のバルーンショルダー390および/または第2のバルーンショルダー392と整列している。他の例においてセグメント384および/または386は、バルーン368の異なる部分と整列している。図6に示されるように、第1のバルーンショルダー390および/または第2のバルーンショルダー392は円錐形のショルダーである。特定の例について説明されているが、バルーンショルダーの任意の形状も本開示の範囲内である。
【0126】
セグメント384は、例えば、それが第1のバルーンショルダー390の少なくとも一部を囲むように配置することができ、セグメント384は、それが第2のバルーンショルダー392の少なくとも一部を取り囲むように配置することができる。バルーンショルダー(例えばバルーンショルダー390および392)の周りの軸方向に圧縮された(例えば押しつぶされた)追加の材料の提供は、バルーンショルダーの一般的な部位においてカバー320の厚さおよび/または密度を増加させることができる。さらに、バルーンショルダー上のカバー320の軸方向に圧縮された材料を追加することにより、膨張中にバルーンへの軸方向圧縮が制限しながら、バルーン368の半径方向の膨張が可能となる。例えばそれらの圧縮部分が無い場合、バルーンのショルダーはバルーン本体より前により容易に膨張することができ、バルーンおよび内部人工器官の軸方向圧縮を引き起こす。しかし軸方向に圧縮された材料がある場合、バルーン全体内の圧力が、バルーンの本体を取り囲むカバーおよび内部人工器官をより十分に膨張させるのに十分になるまで、内部人工器官の軸方向の圧縮(例えば、バルーンの膨張部分とバルーンの膨張していないかあまり膨張していない部分との角度の変化による)を少なくするような様式で、バルーンのショルダーは膨張することができる。さらに、バルーンショルダー390および392の一般領域における厚さおよび/または密度の増加は、バルーンショルダーに追加の半径方向強度を提供して同様の効果を達成することができる。
【0127】
前述のように、バルーン368は加圧流体をバルーン368に供給することにより膨張させることができる。図7A図7Gは、バルーン368が膨張したときに、バルーン368の膨張を1つの所望の膨張プロファイルに制限するカバー320の一例を示す。簡単のために図7A図7Gに関して、参照番号は図7Aにのみ示されているが、同じ要素が参照番号なしで図7B図7Gにも示されている。図8は、展開の種々の段階に従うバルーンの膨張に対する内部人工器官の可変抵抗に逆らうように構成された、バルーン内またはその上の層を含む内部人工器官送達システムを使用した内部人工器官の膨張中の、バルーン圧力に対する直径および変化長さを示すチャートである。
【0128】
ステントグラフト100の中間部分200は、ステントグラフト100の中間部分30ならびに自由終端196、198、またはその近傍において、バルーン368の膨張に対する抵抗を与える。またカバー320は、バルーンの膨張に対する抵抗を与えて、ステントグラフト100の中間部分200におけるバルーン368の膨張率に対して、ステントグラフト100の自由終端196、198におけるバルーン368の膨張率の差を低減し、こうしてバルーン368がステントグラフト100を未展開状態(図7A)から展開された状態(図7G)に膨張するときに、ステントグラフト100の縦方向の圧縮を低減する。カバー320はまた、ステントグラフト100の中間部分200におけるバルーン368の膨張率を、自由終端196、198、または近傍(例えば、ショルダーまたはその近傍)におけるバルーンの膨張率と等しくするように作用する。
【0129】
図7Aに示されるように、バルーン368およびステントグラフト100は未展開状態にある。図7Bにおいて、ステントグラフト100の自由終端196、198は部分的に膨張している。図7Cに示されるように、ステントグラフト100の中間部分200は膨張し始めるが、ステントグラフト100の自由終端196、198はフランジブル層328により中間直径に保持される。図7Dに示されるように、膨張はこうして続き、バルーンおよびステントの大部分は中間直径である。例えば図8のチャートは、集成体300を使用した展開中のステントグラフト100の寸法を表すことができる。図8に示されるように集成体300は、ステップ412を有する圧力直径曲線410を提供し、ここで圧力が増加するが、直径は比較的平坦なままで、その膨張範囲全体にわたって伸長曲線420を提供する。ステップ412は、フランジブル層328の塑性変形の前に発生し、これは展開時に中間直径を超える制御された膨張を可能にする。
【0130】
このようにして、フランジブル層328は、図7Eに示されるように、バルーン368内の圧力がフランジブル層328の降伏強度に打ち勝つまで、フランジブル層328の直径に到達するバルーン368のこれらの部分についてバルーン368の膨張を一時停止させる。このようにして、バルーン368およびフランジブル層328(これはカバーでもよい)は、ステントグラフト100の未展開直径と展開された直径との中間直径に到達するまで、バルーン368内の膨張圧力を増加させることにより、ステントグラフト100の自由終端196、198に隣接するフランジブル層328およびバルーン368が膨張される膨張プロファイルを示す。膨張圧力がフランジブル層328の降伏強度(この場合は究極強度)に打ち勝つまで、制限された膨張により中間直径はほぼ維持される。図7E図7Fとの間の移行は、図8のチャート400のステップ412に対応する。フランジブル層328の塑性変形を引き起こすのに必要な圧力の増加は、バルーン368の任意の縦方向部分が完全膨張状態に到達する前に、バルーン368のすべての縦方向部分が部分膨張状態に到達することを確かにし得る。いったんバルーン368のすべての部分がフランジブル層328の直径に到達すると、バルーン内の圧力がフランジブル層328の強度に打ち勝つのに十分になるまでポイント圧力が増加し、フランジブル層328の塑性変形をもたらす。例えばバルーンおよびカバーは、バルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨張し、膨張圧力が少なくとも1気圧、例えば約1気圧~12気圧、約1気圧~4気圧の間、または約1気圧~2気圧との間で増加して、バルーンおよびカバーの少なくとも終端部分においてカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径においてほぼ維持される。いくつかの例において、カバーおよびバルーンおよび任意に内部人工器官を有するものは、比較的低い圧力(例えば、1、2、3、または4気圧)で中間直径まで膨張し、次に中間直径を超えて膨張するために追加の圧力(例えば、1、2、3、または4気圧)が必要とされ、次に膨張して展開されるまでまたは目的の最大直径までまたは完全に膨張した直径まで追加の圧力(例えば、3気圧~18気圧)を必要とする(一例として図8を参照)。
【0131】
いくつかの例において、膨張圧が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、バルーンおよびカバーの一部(例えば中央部分を除く終端またはすべての部分)のみが中間直径に到達する。他の例において、内部人工器官に隣接するバルーンおよびカバーの実質的にすべての部分、例えば複数の環状のステント要素のそれぞれは、膨張圧力が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間の直径に到達する。
【0132】
いずれにしても、バルーン368およびステントグラフト100の完全膨張は、図7Fに示されるように、膨張圧力の上昇に伴って再開し、ステントグラフト100が展開された状態に到達するまで続く(図7G)。図5A図5Eの膨張プロファイル(これは予め伸ばされた層により提供される)と比較して、フランジブル層328は、ある長さのステントグラフト100の周りにより一貫した中間直径を作り出すことができる。しかしながら、予め伸ばされた層およびフランジブル層の両方は、バルーンで膨張可能な内部人工器官の展開中のカテーテル集成体の異なる縦方向部分の間の角度を、35°以下、例えば20°以下、またはさらには10°以下で制限し、従ってステントまたはステントグラフトの縮小を制限するのに適した技術である。
【0133】
種々の例において、カバー320は、ステントグラフト100の完全に展開された直径の近くで、図7Eの中間直径に向かって弾性応答を与えることができる。同じかまたは異なる例において、カバー320は、ステントの長さに沿って中間直径に向かって完全に展開された直径で弾性応答を与える要素を含むことができ、このような要素は中間直径で適用されてもよく、および/またはこのような要素はカバー320内に吸収されてもよい。中間直径に向かって弾性応答を与える要素は中間直径と完全に展開された直径との間で伸ばされ、これは、カテーテルの取り外しを助け、ステントグラフトの解放を助けることができる。1つの例において、Tecothaneの層はフランジブル層328に追加された。
【0134】
いくつかの例において、軸方向に圧縮されたセグメント384および/または386もまた、バルーンショルダー390および392の膨張に対して追加の抵抗を提供するように構成され、このようなセグメント384および386が無かった場合よりはるかに容易にバルーン368の中央部分394の膨張を引き起こし、これが、バルーンショルダーの膨張をバルーン368の中央部分394により密接に一致するように制限する。また軸方向に圧縮されたセグメント384および/または386は、バルーンショルダー390および/または392の膨張を実質的に妨げる場合がある。いくつかの例において、これはこれらの部位におけるバルーン膨張の程度を制御する効果を有し、次にこれがバルーン368および/またはステントグラフト100の膨張プロファイルを制御する。
【0135】
いくつかの例において、バルーン368の膨張はステントグラフト100の望ましくない膨張特性を減少させるような方法で、被覆されたセグメント384および/または386により制御され得る。例えば被覆されたセグメント384および/または386は、膨張中のステントグラフト100の縮小度を低下させることができる。特にセグメント384および/または386は、バルーンを特定の膨張プロファイル(バルーンショルダーを膨張させることに起因する軸方向の力が、例えばバルーンのショルダー部分とバルーンまたはステントグラフトの中央部分との間の角度が小さくなることにより、著しく低減される)に押し込むことができるように構成することができる。さらに被覆されたセグメント384および/または386は、ステントグラフト100の積み重ねを低減または防止(例えば、膨張中の環状のステント要素104の間の間隔の減少)することができる。
【0136】
集成体300に関して記載される技術は、少なくとも10ミリメーター、例えば様々な例において約11ミリメーター~約20ミリメーター、約11ミリメーター~約16ミリメーター、または約12ミリメーター~約13ミリメーターの直径を有するステントグラフトの展開に特に適していることができる。
【0137】
図9A~9Cはステント500を示す。ステント500は内部人工器官の一例であり、環状のステント要素502と、環状のステント要素502を相互接続する縦方向ステント要素504とを含む。
【0138】
ステントグラフト100などのステントは、バルーン上に展開することができる。環状のステント要素502の終端要素は、隣接する要素により拘束されない。したがって環状のステント要素502の終端要素は、ステントの残りの部分よりも低い膨張力で展開する。一貫したプロファイルを有する単純な展開バルーンでは、展開中、環状のステント要素502の終端要素は、環状のステント要素502の他の要素よりも大きく成長する。これにより、環状のステント要素502が終端上のバルーンの最も膨張した部分からバルーンのあまり膨張していない部分へ中央に向かって押されるような膨張させる軸方向の圧縮力を作り出す。軸方向の縮小力は、環状のステント要素502の終端要素における一様でない膨張に起因するバルーンの角度の関数である。角度が大きいほど、軸方向の圧縮力が大きくなり得る。バルーンからの軸方向の力は、ステントとバルーンとの間の摩擦と、縦方向のステント要素504の曲げ強度との組み合わせにより抵抗される。バルーンからの軸方向の力が縦方向のステント要素504の曲げ強度を超えると、軸方向の縮小が発生する。前述のように、11ミリメーターまたはそれ以上のステントのようなより大きなステントの場合、角度は環状のステント要素502の終端要素とバルーンの間の摩擦力に打ち勝つのに充分であり、軸方向縮小につながり得る。
【0139】
本明細書において先に開示したように、一様でない膨張によるバルーンの角度の低減は、展開中のステント500の軸方向の縮小を緩和する。いくつかの例において、バルーン上のカバーは、ステント500の長さにわたって中間的な部分展開直径を作り出して、展開中の最大バルーン角度を減少させることができる。いくつかの例において、バルーンおよびカバーまたはその一部は、未展開直径と展開直径との間の中間直径に到達するまで、バルーン内の膨張圧力を増加させることにより膨張され、膨張圧力が増加してカバーの降伏強度に打ち勝つまで、ほぼ中間直径にほぼ維持される。
【0140】
ステント500の曲げ柔軟性は、一部は縦方向ステント要素504により決定される。縦方向ステント要素504は剛性であってもよく、または圧縮、折り畳み、または曲げられてもよい。曲げ荷重520(図9C)では、カーブの内側の縦方向ステント要素504が短くなり、隣接する環状のステント要素502の間のギャップ524を残し、および/または曲線の外側の要素が長くなり、隣接するリング状要素ステント要素502の間のギャップを残す。
【0141】
曲げ柔軟性に影響を及ぼすことに加えて、縦方向のステント要素504は軸方向の縮小に必要なカラム強度および力に影響を及ぼす。特に、縦方向ステント要素504は縦方向の圧縮510(図9B)に抵抗するが、縦方向ステント要素504の曲げ強度が克服されると、隣接する環状のステント要素502の間の間隔が短くなり、隣接する環状のステント要素502の間にギャップ512を残す。縦方向ステント要素を含まないかまたは限定された曲げ強度を有する縦方向ステント要素を含むステントグラフト100と比較して、縦方向ステント要素504の抵抗は展開中に加えられる軸方向の力を緩和して縮小を低減する。
【0142】
一様でない膨張によりバルーンの角度を制限することに加えて、圧縮された構成と膨張された構成との間で展開中の内部人工器官(例えばステント500)の長さの減少を制限する別の方法は、環状のステント要素502の位置および/または向きを変更することである。特にいくつかの例において、ステント500の1つまたは2つ以上の環状のステント要素502の位置および/または向きは、ステント500の圧縮前に変更され得る。例えば2つまたはそれ以上の隣接する環状のステント要素502の間の距離は、ステント500の圧縮前に縮小され得る。より具体な例において、1つまたは2つ以上の環状のステント要素502は移動されて、これらは互いに約1ミリメーター未満離れていることになるか、またはこれらは互いに接触しているようになる(すなわち、互いに0ミリメーター離れている)。
【0143】
他の例において、環状のステント要素502の位置および/または向きはステント500の圧縮後に変更されてもよい。例えばおよび図9Bについて、ステント500は、2つまたはそれ以上の環状のステント要素502の縦の間隔を縮小することにより変更可能な長さを有する。隣接する環状のステント要素502の間の縦方向の間隔を縮小することは、例えばステント要素502が展開された状態に膨張されたときに回復される格納された縦方向の長さを作り出す。例えば格納された縦方向の長さは、ステント500の膨張および展開の際に回復される(すなわち、軸方向に膨張される)隣接する環状のステント要素502の間で軸方向に圧縮される縦方向ステント要素504の長さまたはセグメントとして定義され得る。ステント500の「未展開長さ」は、一般に送達前の圧縮状態のステント500をいい、ステント500の「展開された長さ」は、一般に膨張状態のステント500をいう。いくつかの例において、環状のステント要素502の間隔を変更することは、未展開長さと呼ばれる新しい長さを作り出す。
【0144】
別の言い方をすれば、隣接するステント要素502の間の間隔を縮小することにより、縦方向ステント要素504を軸方向に圧縮することができる。軸方向圧縮により格納される長さを作り出すことにより、ステント500の外径は増加しない。格納される長さを作り出しながら器具の直径を増加させないことにより、器具の横断面は最小のままであり、したがって血管を通したステントグラフトの送達に悪影響を及ぼさない。同時に、格納された長さの回復は、例えばバルーンを膨張させることに起因する軸方向の圧縮力による、長さの喪失を低減または相殺するステントグラフトの能力を高める。
【0145】
本発明の具体的な例を本明細書に例示し説明してきたが、本発明はそのような例示および説明に限定されるべきではない。以下の特許請求の範囲内で本発明の一部として変更および修正が取り込まれ具体化できることは明らかである。
【0146】
意図された機能を実行するように構成された任意の数の方法および装置により、本開示の様々な態様が実現され得ることを、当業者は容易に理解するであろう。別の言い方をすれば、意図された機能を実行するために、他の方法および装置を本明細書に取り込むことができる。本明細書で言及した添付の図面はすべてが一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されている場合があることに留意すべきであり、その点で図面は限定的であると解釈されるべきではない。最後に、本開示は様々な原理および考え方に関連して説明することができるが、本開示は理論に縛られるものではない。
【0147】
器具の構造および機能および/または方法の詳細と共に様々な代替例を含む多くの特徴および利点が前述の説明に示されている。この開示は例示に過ぎず、包括的なものではない。構造、材料、要素、構成要素、形状、サイズ、および本発明の原理内の組合せを含む部品の配置の問題に関して、様々な変更が可能であることは、添付の特許請求の範囲が表現されている用語の広範な一般的意味により示される全範囲について、当業者には明らかであろう。これらの様々な変更は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱しない限り、本発明に包含されることが意図される。
(態様)
(態様1)
第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官と、
その上に前記内部人工器官が集成されるカテーテル集成体と、
を含む、医療集成体であって、
前記カテーテル集成体は、
バルーンと、
前記バルーンに沿ったカバーと、
を含み、
環状のステント要素は前記第1の終端および前記第2の終端の近傍にあり、前記内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、
前記内部人工器官は前記バルーンおよび前記カバーの周りで同軸上に配置されており、
前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記バルーンおよび前記カバーの前記部分が前記バルーン内の前記膨張圧力を増加させることによって膨らませられおよびほぼ前記中間直径においてほぼ維持される、医療集成体。
(態様2)
前記膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記中間直径に到達する前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記バルーンおよび前記カバーの終端部分を含み、および、
前記膨張圧力が少なくとも1気圧増加する後まで、前記バルーンおよび前記カバーの中央部分は中間直径より小さいままである、態様1に記載の医療集成体。
(態様3)
前記膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記中間直径に到達する前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記内部人工器官に隣接した前記バルーンおよび前記カバーの実質的にすべての部分を含み、前記膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、それぞれの前記複数の環状のステント要素は前記中間直径にほぼ到達するようになっている、態様1に記載の医療集成体。
(態様4)
前記内部人工器官はステントグラフトを含み、
前記柔軟なコネクターはグラフト材料を含み、
複数の環状のステント要素は前記柔軟なコネクターを含む非金属性材料を介してのみ相互に接続されている、態様1に記載の医療集成体。
(態様5)
前記柔軟なコネクターは柔軟な縦方向のコネクターを含む、態様1に記載の医療集成体。
(態様6)
前記未展開状態における前記内部人工器官の周りで測定して前記医療集成体のプロファイルは約5~約10フレンチである、態様1に記載の医療集成体。
(態様7)
前記未展開状態における前記医療集成体上の前記カバーの厚さは約0.025~約0.051ミリメーターである、態様6に記載の医療集成体。
(態様8)
前記カバーの半径方向の強度は、前記バルーンの膨張に対して抵抗を提供しおよび前記バルーンの膨張への前記内部人工器官の可変抵抗に逆らって前記未展開直径から前記展開直径への膨張の間の前記内部人工器官の一様でない膨張を緩和するように構成されている、態様1に記載の医療集成体。
(態様9)
前記カバーは前記バルーンの全長の周りで前記バルーンを同心円状に取り囲む、態様1に記載の医療集成体。
(態様10)
前記カバーは前記バルーンの中央部分における半径方向の強度と比較して前記バルーンの片方の終端または両方の終端においてより大きな半径方向の強度を提供する、態様1に記載の医療集成体。
(態様11)
前記カバーは前記カバーの前記降伏強度に寄与するフランジブル層の究極強度で前記中間直径において破裂して前記中間直径を超える膨張に抵抗するように設計されたフランジブル層を含む、態様1に記載の医療集成体。
(態様12)
前記カバーは前記カバーの前記降伏強度による膨張に増加した抵抗を提供して前記中間直径を超える膨張に抵抗するように構成された予め伸ばされた層を含む、態様1に記載の医療集成体。
(態様13)
前記バルーンは、
コンプライアント材料と、
半コンプライアント材料と
非コンプライアント材料と、からなる群から選択された材料を含む、態様1に記載の医療集成体。
(態様14)
前記展開直径は少なくとも11ミリメーターである、態様1に記載の医療集成体。
(態様15)
前記カバーは展開の間の隣接した環状のステント要素の一様でない膨張を制限して隣接した環状のステント要素の一様でない膨張による縮小力が前記カバーと前記内部人工器官との間の摩擦力を超えることを防止するように構成されており、および、
隣接した環状のステント要素の前記制限された一様でない膨張により、前記内部人工器官は前記未展開直径から前記展開直径への膨張の間に縮小しない、態様1に記載の医療集成体。
(態様16)
患者の血管の中に医療集成体の遠位末端を挿入することと、
バルーンを遠隔的に膨らませて未展開直径から展開直径へ内部人工器官を拡張させることと、
を含む、内部人工器官の移植方法であって、
前記医療集成体は、
第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官と、
その上に前記内部人工器官が集成されるカテーテル集成体と、
を含み、
前記カテーテル集成体は、
バルーンと、
前記バルーンに沿ったカバーと、
を含み、
環状のステント要素は前記第1の終端および前記第2の終端の近傍にあり、前記内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、
前記内部人工器官は前記バルーンおよび前記カバーの周りに同軸上に位置し、
前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記バルーンおよび前記カバーの前記部分が前記バルーン内の前記膨張圧力を増加させることによって膨らませられおよびほぼ前記中間直径においてほぼ維持され、
前記方法は、前記医療集成体と伴に、前記患者の前記血管または前記患者の別の血管内の治療部位に前記バルーンにわたって乗せられた前記内部人工器官を送達することをさらに含む、方法。
(態様17)
第1の終端および第2の終端を有するバルーンで膨張可能な内部人工器官を膨張可能なバルーンおよびカバーを含むカテーテル集成体に組み立てることを含む展開システムの製造方法であって、前記内部人工器官は前記バルーンおよび前記カバーにわたって乗せられており前記内部人工器官は前記バルーンの膨張を介して展開可能であり、前記内部人工器官は未展開直径、および展開直径を提供するようになっており、
前記内部人工器官は少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含み、環状のステント要素は前記第1の終端および前記第2の終端の近傍にあり、前記内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、
前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力が少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで、前記バルーンおよび前記カバーの前記部分が前記バルーン内の前記膨張圧力を増加させることによって膨らませられおよびほぼ前記中間直径においてほぼ維持される、方法。
(態様18)
前記カテーテル集成体への前記内部人工器官の組み立ての前に、前記中間直径に前記バルーンおよび前記カバーを膨らませることによって前記カバーを予め伸ばすことをさらに含む、態様17に記載の方法。
(態様19)
第1の終端および第2の終端を有しおよび少なくとも1つの柔軟なコネクターを介して相互に柔軟に接続された複数の環状のステント要素を含むバルーンで膨張可能な内部人工器官と、
その上に前記内部人工器官が集成されるカテーテル集成体と、
を含む、医療集成体であって、
環状のステント要素は前記第1の終端および前記第2の終端の近傍にあり、前記内部人工器官は未展開直径を有する未展開状態から展開直径を有する展開された状態へ展開可能であり、
前記カテーテル集成体は、
バルーンと、
前記バルーンに連結されたカバーと、
を含み、
前記内部人工器官は前記バルーンおよび前記カバーの周りに同軸上に位置し、
前記展開直径は少なくとも11ミリメーターであり、
前記カバーは展開の間の隣接した環状のステント要素の一様でない膨張を制限して隣接した環状のステント要素の一様でない膨張による縮小力が前記カバーと前記内部人工器官との間の摩擦力を超えることを防止するように構成されており、および、
隣接した環状のステント要素の前記制限された一様でない膨張により、前記内部人工器官は前記未展開直径から前記展開直径への膨張の間に縮小しない、医療集成体。
(態様20)
隣接した環状のステント要素の前記制限された一様でない膨張は前記内部人工器官の縦軸に対して35°以下の角度となる、態様19に記載の医療集成体。
(態様21)
前記バルーンおよび前記カバーの1つまたは2つ以上の部分は前記未展開直径と前記展開直径との間の中間直径に到達し、そこで膨張圧力は少なくとも1気圧増加して前記カバーの降伏強度に打ち勝つまで前記バルーンおよび前記カバーの前記部分が前記バルーン内の前記膨張圧力を増加させることによって膨らませられおよびほぼ前記中間直径においてほぼ維持される、態様19に記載の医療集成体。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9