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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】不均一触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/52 20060101AFI20221003BHJP
   C07C 69/54 20060101ALN20221003BHJP
   C07C 67/39 20060101ALN20221003BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
B01J23/52 Z
C07C69/54 Z
C07C67/39
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020503255
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 US2018039233
(87)【国際公開番号】W WO2019022887
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】62/538,234
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、ヴィクター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ、カーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】フリック、クリストファー ディー.
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/026867(WO,A1)
【文献】特開2010-221083(JP,A)
【文献】特表2018-535825(JP,A)
【文献】特表2018-503512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 69/54
C07C 67/39
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体およびを含む不均一触媒であって、前記触媒が、少なくとも200ミクロンの平均直径を有し、前記の少なくとも90重量%が、触媒体積の外側50%にある、不均一触媒。
【請求項2】
前記触媒が、400ミクロン~10mmの平均直径を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記の少なくとも90重量%が、触媒体積の外側35%にある、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体が、γ-、δ-、またはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、バナジア、セリア、酸化ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒が、3:1以下のアスペクト比を有する、請求項に記載の触媒。
【請求項6】
(i)不均一触媒であって、前記触媒が、担体およびを含み、前記触媒が、少なくとも200ミクロンの平均直径を有し、前記の少なくとも90重量%が、触媒体積の外側50%にある、不均一触媒と、(ii)メタクロレイン、メタノール、およびメタクリル酸メチルを含む液相と、を含む、触媒床。
【請求項7】
前記触媒が、400ミクロン~10mmの平均直径を有し、前記触媒床が、酸素を含む気相をさらに含む、請求項に記載の触媒床。
【請求項8】
前記の少なくとも90重量%が、触媒体積の外側40%にある、請求項に記載の触媒床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一触媒に関する。触媒は、メタクロレインおよびメタノールからメタクリル酸メチルを調製するためのプロセスで特に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
触媒の外側領域内で濃縮された貴金属を有する不均一触媒が知られている(例えば、米国特許第6,228,800号を参照されたい)。しかしながら、貴金属が表面近くでより高濃度であるより大きな触媒粒子に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、担体および貴金属を含む不均一触媒であって、触媒が、少なくとも200ミクロンの平均直径を有し、貴金属の少なくとも90重量%が、触媒体積の外側50%にある、不均一触媒を対象とする。
【0004】
本発明はさらに、触媒を含む触媒床を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0005】
別途記載のない限り、すべての百分率組成物は重量百分率(重量%)であり、全すべての温度は℃である。貴金属は、金、プラチナ、イリジウム、オスミウム、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウムのいずれかである。2つ以上の貴金属が触媒に存在し得、その場合、制限がすべての貴金属の合計に適用される。「触媒中心」は、触媒粒子の重心、つまり、すべての座標方向のすべての点の平均位置である。直径は、触媒の中心を通過する任意の直線寸法であり、平均直径は、すべての可能な直径の算術平均である。アスペクト比は、最長の直径と最短の直径との比率である。
【0006】
好ましくは、担体は、耐火性酸化物の粒子であり、好ましくは、γ-、δ-、または、θ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ハフニア、バナジア、酸化ニオブ、酸化タンタル、セリア、イットリア、酸化ランタン、またはこれらの組み合わせ、好ましくは、γ-、δ-、またはθ-アルミナである。好ましくは、貴金属を含む触媒の部分に、担体は、10m/g超、好ましくは30m/g超、好ましくは50m/g超、好ましくは100m/g超、好ましくは120m/g超の表面積を有する。貴金属をほとんどまたはまったく含まない触媒の部分において、担体は、50m/g未満、好ましくは20m/g未満の表面積を有し得る。
【0007】
好ましくは、触媒粒子のアスペクト比は、10:1以下、好ましくは5:1以下、好ましくは3:1以下、好ましくは2:1以下、好ましくは1.5:1以下、好ましくは1.1:1以下である。粒子の好ましい形状としては、球、円柱、直方体、輪、多葉形状(例えば、クローバー断面)、複数の穴および「ワゴンホイール」を有する形状、好ましくは球が挙げられる。不規則な形状も使用され得る。
【0008】
好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%は、触媒体積(すなわち、平均触媒粒子の体積)の外側40%、好ましくは外側35%、好ましくは外側30%、好ましくは外側の25%である。好ましくは、任意の粒子形状の外部体積は、外部表面に垂直な線に沿って測定された、その内部表面から外部表面(粒子の表面)まで一定の距離を有する体積に対して計算される。例えば、球形粒子の場合、体積の外側x%は球形シェルであり、その外部表面は粒子の表面であり、その体積は球全体の体積のx%である。好ましくは、貴金属の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%は、触媒の外部体積にある。好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%)は、触媒直径の15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは6%以下の表面からの距離内にある。表面からの距離は、表面に垂直な線に沿って測定される。
【0009】
好ましくは、貴金属は、金またはパラジウム、好ましくは金である。
【0010】
好ましくは、触媒粒子の平均直径は、少なくとも300ミクロン、好ましくは少なくとも400ミクロン、好ましくは少なくとも500ミクロン、好ましくは少なくとも600ミクロン、好ましくは少なくとも700ミクロン、好ましくは少なくとも800ミクロン、好ましくは30mm以下、好ましくは20mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは4mm以下である。担体の平均直径および最終触媒粒子の平均直径は、有意に異なっていない。
【0011】
好ましくは、貴金属および担体の百分率としての貴金属の量は、0.2~5重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.2重量%、好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。
【0012】
本発明の触媒は、触媒床を含有する酸化的エステル化反応器(OER)内でメタクロレインをメタノールで処理することを含むメタクリル酸メチル(MMA)を製造するためのプロセスに有用である。触媒床は、触媒粒子を含み、OER内に位置し、液体の流れが触媒床を通過し得る。触媒床内の触媒粒子は、典型的には、固体壁およびスクリーンによって適所に保持される。いくつかの構成では、スクリーンは、触媒床の両端にあり、固体壁は、側面(複数可)にあるが、いくつかの構成では、触媒床は、完全にスクリーンで囲まれ得る。触媒床の好ましい形状は、円柱、直方体、および円柱シェル、好ましくは円柱を含む。OERは、メタクロレイン、メタノール、およびMMAを含む液相と、酸素を含む気相と、をさらに含む。液相は、副生成物、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(MDA)およびイソ酪酸メチル(MIB)をさらに含み得る。好ましくは、液相は、40~120℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下の温度である。好ましくは、触媒床は、0~2000psig(101kPa~14MPa)、好ましくは2000kPa以下、好ましくは1500kPa以下の圧力である。好ましくは、触媒床のpHは、4~10、好ましくは少なくとも4.5、好ましくは少なくとも5、好ましくは9以下、好ましくは8以下、好ましくは7.5以下、好ましくは7以下、好ましくは6.5以下である。好ましくは、触媒床は、管状連続反応器または連続攪拌タンク反応器内にある。
【0013】
好ましくは、触媒は、担体の存在下で金属塩の水溶液から貴金属を沈殿させることにより製造される。好ましい貴金属塩としては、テトラクロロ金酸、金チオ硫酸ナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、水酸化金、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、および酢酸パラジウムが挙げられる。好ましい一実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩の水溶液を多孔性無機酸化物に添加して細孔を溶液で充填し、次いで水を乾燥により除去する初期湿潤技法によって製造される。次いで、得られた材料は、貴金属塩を金属または金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、または他の処理によって完成触媒に変換される。好ましくは、少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含むC~C18チオールが、溶液中に存在する。好ましくは、少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含むC~C18チオールは、2~12個、好ましくは2~8個、好ましくは3~6個の炭素原子を有する。好ましくは、チオール化合物は、合計で4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヒドロキシル基およびカルボン酸基を含む。好ましくは、チオール化合物は、2個以下、好ましくは1個以下のチオール基を有する。チオール化合物がカルボン酸置換基を含む場合、それらは酸形態、共役塩基形態、またはこれらの混合物で存在し得る。チオール成分はまた、そのチオール(酸)形態またはその共役塩基(チオレート)形態のいずれかで存在し得る。特に好ましいチオール化合物としては、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、および1-チオグリセロール(それらの共役塩基も含まれる)が挙げられる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩を含有する水溶液に多孔性無機酸化物を浸漬し、次いで、溶液のpHを調整することにより、塩を無機酸化物の表面と相互作用させる析出沈殿により生成される。次いで、得られた処理済み固体を(例えば濾過により)回収し、次いで、貴金属塩を金属または金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、または他の処理によって完成触媒に変換される。
【実施例
【0015】
触媒778:「エッグシェル」金触媒
0.3088gの金チオリンゴ酸ナトリウムを、撹拌しながら8.908gのDI水に溶解した。次に、120℃の乾燥オーブン内に事前に保管しておいた10.0243gのアルミナ(3.2mmの球、Norpro SA6275、ロット番号2016910048)をセラミックるつぼに入れた。水性金塩を、担体の初期湿潤点に達するまで、スパチュラを使用して定期的に攪拌しながら滴下した。
【0016】
得られた材料を120℃で1時間乾燥させ、次いで、マッフル炉内で300℃(5℃/分のランプ)で4時間焼成した。次いで、得られた紫色の触媒球を、使用準備が整うまで琥珀色の小瓶内に保管した。NAAを介した元素分析により、以下の元素組成が明らかになった。
【表1】
【0017】
触媒780:均一金触媒(比較)
0.3918gの金チオ硫酸ナトリウム水和物を9.0567gのDI水に溶解した。120°Cの乾燥オーブン内に事前に保管しておいた10.0368gの試料のアルミナ(3.2mmの球、Norpro SA6275、ロット番号2016910048)をセラミックるつぼに入れた。水性金塩を、担体の初期湿潤点に達するまで、スパチュラを使用して定期的に攪拌しながら滴下した。
【0018】
得られた材料を120℃で1時間乾燥させ、次いで、マッフル炉内で300℃(5℃/分のランプ)で4時間焼成した。次いで、得られた紫色の触媒球を、使用準備が整うまで琥珀色の小瓶内に保管した。NAAを介した元素分析により、以下の元素組成が明らかになった。
【表2】
【0019】
触媒のEDS走査は、以下の結果を用いて行った。
【表3】
【0020】
触媒780用のデータは、金の90重量%が、触媒体積の外側81%に相当する外縁の680ミクロン以内であり、95重量%が、750ミクロン以内、つまり外側85%であることを示している。
【表4】
【0021】
触媒778(「エッグシェル」)用のデータは、金の90重量%が、触媒体積の外側12.6%に相当する外縁の70ミクロン以内であり、95重量%が、75ミクロン以内、つまり外側13.4%であることを示している。
【0022】
触媒試験
触媒は、トリクルフローモードで動作する連続固定床反応器内で評価された。いずれの場合も、均一な湿潤を確保するために、約0.5gの触媒を炭化ケイ素グリットと混合した。触媒床をガラスビーズの層の間に挟んだ。反応器は、6の入口酸素組成(20sccmの空気および50sccmのHeで達成した)、または70sccmのガス流量で21モル%Oで、60℃および160psig(1200kPa)で動作した。液体供給(メタノール中の10重量%のメタクロレイン)を0.07mL/分の流量で導入した。経時性能、空時収率としてのMMA率、およびMIB含有量(100%MMAに基づくppm)を以下の表に示す。
【表5】
【0023】
データは、高い酸素レベルで、副産物MIBの形成が低いことを示している。しかしながら、酸素が枯渇する触媒床の端部に向かって存在するような低酸素レベルでは、本発明の「エッグシェル」触媒は、大幅に低下したMIBのレベルを提供する。本発明の触媒の空時収率は、両方の酸素レベルで優れているが、特に低酸素レベルで優れている。