(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ロータリーアトマイザーベルカップ
(51)【国際特許分類】
B05B 5/04 20060101AFI20221003BHJP
B05B 3/10 20060101ALI20221003BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20221003BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221003BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221003BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20221003BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B05B5/04 A
B05B3/10 B
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F3/105
B22F3/16
(21)【出願番号】P 2020516964
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 GB2018051420
(87)【国際公開番号】W WO2018220348
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519426678
【氏名又は名称】ノバンタ テクノロジーズ ユーケイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラットン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ビーズリー、クリストファー
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-222731(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105709954(CN,A)
【文献】特開2003-080123(JP,A)
【文献】特開2015-107489(JP,A)
【文献】特開2005-288284(JP,A)
【文献】特開2002-166199(JP,A)
【文献】特開昭57-147464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0221100(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0193602(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016006177(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/04
B05B 3/10
B29C 64/153
B33Y 10/00
B33Y 80/00
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用の際に媒体を噴霧するためのベル部(5)と、
使用の際に前記ベル部(5)の回転駆動に介在するハブ部(6)と、を備え、
前記ハブ部(6)は機械加工された金属部分であり、
前記ベル部(5)は付加製造プロセスを用いて前記ハブ(6)上に構築されたものであ
り、前
記ベル部(5)が中空状であり、少なくとも1つの内部空隙(V)を画定し、前記ベル部(5)は、前記内部空隙(V)に設けられた少なくとも1つの支持リブ(54)を備える、ロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項2】
使用の際に媒体を噴霧するためのベル部(5)と、
使用の際に前記ベル部(5)の回転駆動に介在するハブ部(6)と、を備え、
前記ハブ部(6)は機械加工された金属部分であり、
前
記ベル部(5)は付加製造プロセスを用いて前記ハブ(6)上に構築されたものであり、前
記ベル部(5)が中空状であり、少なくとも1つの内部空隙(V)を画定し、前記ベル部(5)は、前記内部空隙(V)に設けられた内部格子構造を備える、ロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項3】
前記ベル部(5)は、前記内部空隙(V)と前記ベル部(5)の外部との間の流体連通路をもたらす少なくとも1つの開口部を画定する、
請求項1又は2に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項4】
使用の際に媒体を噴霧するためのベル部(5)と、
使用の際に前記ベル部(5)の回転駆動に介在するハブ部(6)と、を備え、
前記ハブ部(6)は機械加工された金属部分であり、
前記ベル部(5)は付加製造プロセスを用いて前記ハブ(6)上に構築されたものであり、前記ベル部(5)が中空状であり、少なくとも1つの内部空隙(V)を画定し、前記
ベル部(5)は、前記内部空隙(V)と前記ベル部(5)の外部との間の流体連通路をもたらす少なくとも1つの開口部を画定する、ロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項5】
前記ベル部(5)は、前記内部空隙(V)に設けられた少なくとも1つの支持リブ(54)を備える、
請求項2、請求項2に従属する請求項3、及び請求項4のいずれか一項に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項6】
前記ベル部(5)は、前記内部空隙(V)に設けられた内部格子構造を備える、
請求項1、請求項1に従属する請求項3、請求項4、及び請求項4に従属する請求項5のいずれか一項に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項7】
前記ベルカップ(2)は、前記付加製造プロセスの後に機械加工されたものである、
請求項1
~6のいずれか一項に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項8】
前記ベル部(5)は、第1の外側円錐壁部(51)と第2の内側円錐壁部(52)とを備え、
前記内部空隙(V)がこれら円錐壁部(51、52)の間に設けられ、
少なくとも1つの支持要素が前記内側および外側円錐壁部(51、52)の間に設けられる、
請求項
1~
7のいずれか一項に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項9】
前記ハブ部(6)は、前記ベルカップ(2)回転駆動用のスピンドル(1)への取り付けのためのインターフェイス部(61)を有する、
請求項1~
8のいずれか一項に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項10】
前記インターフェイス部(61)は、前記付加製造プロセスの前と後に機械加工を施す際の基準となるデータムを有する、
請求項
9に記載のロータリーアトマイザーベルカップ(2)。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載のベルカップ(2)を備えるロータリーアトマイザースピンドル(1)において、
前記ベルカップは、回転駆動用スピンドル(1)の残部に取り付けられ、
前記ハブ部(6)は、前記スピンドル(1)への取り付けのためのインターフェイス部(61)を有し、
前記インターフェイス部(61)はデータムを有し、
前記ベルカップ(2)は付加製造プロセスの後に前記データムを基準にして機械加工されたものである、
ロータリーアトマイザースピンドル(1)。
【請求項12】
使用の際に媒体を噴霧するためのベル部(5)と、使用の際に前記ベル部(5)の回転駆動に介在するハブ部(6)とを備えるロータリーアトマイザーベルカップ(2)の製造方法であって、
機械加工を用いて前記ハブ部(6)を形成する工程と、
付加製造プロセスを用いて前記ベル部(5)を前記ハブ(6)上に構築する工程と、
を含
み、前記ベル部(5)が中空状であり、少なくとも1つの内部空隙(V)を画定する方法。
【請求項13】
前記ベル部(5)を前記付加製造プロセスの後に機械加工することを含む、
請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記付加製造プロセスの後の前記機械加工は、前記ベル部(5)と前記ハブ部(6)の材料を除去することを含む、
請求項1
3に記載の方法。
【請求項15】
前記ベル部(5)の構築を容易にするように構成されるプラットフォーム部(62)を、前記ハブ部(6)の最初の機械加工の際に前記ハブ部(6)の一部として形成し、前記付加製造プロセスの後の機械加工の際に前記プラットフォーム部(62)の少なくとも一部を除去する工程を含む、
請求項1
2~1
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記付加製造プロセスの副産物を前記ベル部(5)の少なくとも1つの開口部を介して排出する工程を含む、
請求項1
2~1
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記付加製造プロセスの前に前記ハブ(6)上のデータムを基準にして前記ハブを機械加工し、前記付加製造プロセスの後に前記データムを基準にして前記ベルカップを機械加工することを含む、
請求項1
2~1
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ロータリーアトマイザースピンドル(1)を製造する方法であって、前記スピンドル(1)は、使用の際に媒体を噴霧するためのベル部(5)と、使用の際に前記スピンドル(1)による前記ベル部(5)の回転駆動に介在するハブ部(6)とを備えるベルカップ(2)を備えており、
データムを有する、前記スピンドル(1)への取り付けのためのインターフェイス部(61)を備える前記ハブ部(6)を機械加工を用いて形成する工程と、
付加製造プロセスを用いて前記ベル部(5)を前記ハブ(6)上に構築する工程と
前記付加製造プロセスの後に前記データムを基準として前記ベルカップ(2)を機械加工する工程と、
前記ベルカップ(2)を前記回転駆動用のスピンドル(1)の残部に取り付ける工程と、を含
み、前記ベル部(5)が中空状であり、少なくとも1つの内部空隙(V)を画定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーアトマイザーおよびロータリーアトマイザーベルカップに関する。
【0002】
ロータリーアトマイザーは、表面を塗装するための様々な状況において使用されている。ロータリーアトマイザーの特定の用途の1つは塗料噴霧の分野におけるものである。これは、例えば、自動車産業の車両への塗料噴霧に広く用いられている。そのような場合、車両に塗料噴霧を行うために、ロータリーアトマイザーのスピンドルはロボットアームに装着され、ロボットアームが空間内を移動されて複数の異なる向きに配置されることがある。その他の場合、異なる支持構造が設けられることもある。
【0003】
より一般的には、ロータリーアトマイザーは、大量生産環境における塗料アプリケーターとして使用される。ロータリーアトマイザーは、「ペイントベル」または「ベルアプリケーター」とも呼ばれ、ペイントスプレーガンと比較して、転写効率に優れ、噴霧パターンに一貫性があり、且つ、圧縮空気の消費が少ないため、大量の塗料の塗布に好ましいものである。
【0004】
ベルカップは、例えばタービンで駆動可能な駆動スピンドルのシャフトに固定された円錐形状または湾曲形状のディスクを備える。塗料は、ディスクの背面の中央に噴射され、遠心力によりカップの縁に向かって飛ばされて霧化される。塗料がカップ上を流れて、その縁から飛び出すと、塗料の流れは霧状の液滴に分解される。
【0005】
使用される場合、タービンは高速・高精度のエアモーターであり、ベルカップをカップの直径、所望の噴霧化および塗料の物理的特性に応じて10,000rpmから70,000rpmの範囲の速度で回転させる。この用途の代表的なタービンはエアベアリングを用いており、このベアリングにおいて、回転するシャフトは流通する圧縮空気をクッションにして実施的に摩擦抵抗がない状態で浮遊されている。
【0006】
通常、ワークの効率的な塗装を確保するために静電システムが設けられる。静電システムは、内部もしくは外部(または直接充電もしくは間接充電)のものでよく、高電圧(たとえば、直流30,000~100,000ボルト)の電荷をアプリケーターまたはその周囲の空気に供給する。これは、塗料を負に帯電させる一方で、ワーク上に正電荷の領域を形成させ、塗料とワークとの間に静電引力をもたらす効果を有する。
【0007】
また、成形エアシュラウドまたは成形エアリングが備えられていてもよい。これは、生成された噴霧パターンのサイズ管理を目的としてカップ直径の外側でアトマイザーの前面から空気を吹き出すための複数の流路を備える単なるリングである。シュラウドを介してより多くの空気が吹き出されると、霧化した塗料はより小さなパターン内に押し込められる。
【0008】
上記したように、使用の際に、ロータリーアトマイザーのベルカップは、高速で回転される。したがって、ジャイロ効果が関与することとなり、スピンドル、ロボットアーム、またはその他の支持構造全体の動作、精度、または寿命に悪影響を与える可能性がある。
【0009】
それゆえ、このようなジャイロ効果の規模および/または影響を可能な限り最小化することが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、この問題に対処することである。
【0011】
本発明の一側面によると、使用の際に媒体を噴霧するためのベル部と、使用の際に前記ベル部の回転駆動に介在するハブ部とを備え、前記ハブ部は機械加工された金属部分であり、前記ベル部は付加製造プロセスを用いて前記ハブ上に構築されたものであるロータリーアトマイザーベルカップが提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、使用の際に媒体を噴霧するためのベル部と、使用の際に前記ベル部の回転駆動に介在するハブ部とを備えるロータリーアトマイザーベルカップの製造方法であって、機械加工を用いて前記ハブ部を形成する工程と、付加製造プロセスを用いて前記ベル部を前記ハブ上に構築する工程とを含む方法が提供される。
【0013】
これにより、ベルカップの高精度且つ効率的な製造を可能とし、従来の機械加工により形成されたハブを用いることでもたらされる全体設計における良い精度を可能とし、使用の際のジャイロ効果を最小化するより軽量のベル部の形成を可能とし、且つ、ベル部の製造を簡素化する。
【0014】
ベルカップは、付加製造プロセスの後に機械加工されてもよい。これにより、最終的な寸法がもたらされてもよい。本方法は、付加製造プロセスの後にベルカップを機械加工することを含んでいてもよい。これにより、最終的な寸法がもたらされてもよい。
【0015】
付加製造プロセスの後の機械加工は、ベル部および/またはハブ部の材料を除去することを含んでいてもよい。
【0016】
本方法は、ベル部の構築を容易にするように構成されるプラットフォーム部を、ハブ部の最初の機械加工においてハブ部の一部として形成する工程を含んでいてもよい。本方法は、付加製造プロセスの後の機械加工においてプラットフォーム部の少なくとも一部を除去する工程を含んでいてもよい。
【0017】
これは、ハブ部とベル部との間に効果的且つ十分な接合を確保するのに役立つ。
【0018】
ベル部は、少なくとも1つの内部空隙を画定するように中空状であってもよい。
【0019】
ベル部は、前記内部空隙に設けられた少なくとも1つの支持リブを備えていてもよい。
【0020】
ベル部は、前記内部空隙に設けられた内部格子構造を備えていてもよい。
【0021】
ベル部は、第1の外側円錐壁部と第2の内側円錐壁部とを備え、内部空隙がこれら円錐壁部の間に設けられ、少なくとも1つの支持要素が内側および外側円錐壁部の間に設けられていてもよい。前記少なくとも1つの支持要素は、例えば、内部格子構造および/または少なくとも1つの支持リブを備えていてもよい。
【0022】
ベル部は、内部空隙とベル部の外部との間の流体連通路をもたらす少なくとも1つの開口部を画定してもよい。この連通路は、内部空隙からベル部の外部への排出路として作用してもよい。これにより、付加製造プロセスの副産物、例えば、未溶融粉末の排出が可能となる。
【0023】
付加製造プロセスは、金属粉末のレーザー焼結を含んでいてもよい。そのような場合には、前記少なくとも1つの開口部は未焼結の金属粉末の空隙からの排出を可能とする。
【0024】
内部空隙には閉鎖区画がなく、未溶融粉末の排出が確保される。
【0025】
空隙により、ロータリーアトマイザーの一部として稼動する際に用いられるベル部の内部を通る流体連通路がもたらされてもよい。これにより、流体、例えば洗浄流体を所望の位置へ送達可能としてもよい。ベル部は、内部空隙からベル部の外部への流体の流出を可能とする少なくとも1つの流体送出開口部を画定してもよい。
【0026】
ベル部は、内部空隙とベル部の外部との間の流体連通路をもたらす少なくとも2つの開口部を備えていてもよい。ロータリーアトマイザーの一部としてベルカップが稼動する際に、これらの開口部のうち第1の開口部は流体入口として作用し、第2の開口部は流体出口として作用してもよい。
【0027】
ハブ部は、ベルカップ回転駆動用スピンドルへの取り付けのためのインターフェイス部を有していてもよい。ハブは、スピンドルのシャフトに取り付けられるように構成されてもよい。
【0028】
インターフェイス部は、また、付加製造プロセスの前および/または後の機械加工用の工具のシャフト上にハブ/ベルカップを取り付けるために用いられてもよい。
【0029】
インターフェイス部は、付加製造プロセスの前および/または後の機械加工を施す際の基準となるデータムを有していてもよい。
【0030】
本発明の更に別の側面によると、ロータリーアトマイザースピンドルの製造方法が提供される。スピンドルは、使用の際に媒体を噴霧するためのベル部と、使用の際にスピンドルによるベル部の回転駆動に介在するハブ部とを備えるベルカップを備えるものである。本方法は、データムを有する、スピンドルへの取り付けのためのインターフェイス部を備えるハブ部を機械加工を用いて形成する工程と、付加製造プロセスを用いてベル部をハブ上に構築する工程と、付加製造プロセスの後にデータムを基準としてベルカップを機械加工する工程と、ベルカップを回転駆動用のスピンドルの残部に取り付ける工程とを含む。
【0031】
本発明の更に別の側面によると、上記に定義したベルカップを備えるロータリーアトマイザースピンドルが提供される。ベルカップは、回転駆動用のスピンドルの残部に取り付けられ、ハブ部は、スピンドルへの取り付けのためのインターフェイス部を備え、インターフェイス部はデータムを有する。ベルカップは、付加製造プロセスの後にデータムを基準として機械加工されたものである。
【0032】
スピンドルは本体を備えていてもよく、本体の内部で、本体に対して相対回転するシャフトが軸支される。ベルカップは、ハブを介してシャフトに取り付けられてもよい。
【0033】
スピンドルは、シャフトを軸支する1つまたは複数のラジアルエアベアリングを有していてもよい。スピンドルは、シャフトを、ひいてはベルカップを回転駆動するためにシャフトに取り付けられるタービンを備えていてもよい。本体は、駆動ガスをタービンに供給するように構成されてもよい。
【0034】
本発明の更に別の側面によると、ロータリーアトマイザーベルカップを修理または改変する方法が提供される。本方法は、付加製造を用いて、ベルカップ上に材料からなる部位を構築する工程を含む。
【0035】
これは、初期のベルカップが上記のように形成されているか、従来の方法で形成されているかに関係なく実行できる。ベルカップの摩耗領域を付加製造により構築し直し、必要に応じて最終機械加工がなされてもよい。あるいは、(摩耗または未摩耗状態の)ベルカップの動作形状を、異なる性能を実現するように付加製造によって改変して、必要に応じて最終機械加工がなされてもよい。
【0036】
なお、一般に、本発明の各側面に続いて述べた省略可能な特徴のそれぞれは、本発明の他の各側面に関する省略可能な特徴として同等に適用可能であり、文言に必要な変更を行うことで各側面の後に書き直すことも可能である。各側面の後にこのような省略可能な特徴の全てを書き直しをしなかったのは、単に簡潔にするためである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、塗料噴霧器の形態のロータリーアトマイザーを概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1に示すロータリーアトマイザーのロータリーアトマイザーベルカップをより詳細に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すベルカップのベル部の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すベルカップのハブ部の断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のハブ部がベースプレート内に配置され、ハブ部上にベル部を構築する準備が整った状態のハブ部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を一例として説明する。
【0039】
図1は、塗料噴霧ベルカップ2を回転駆動するように構成されたロータリーアトマイザースピンドル1を含む、塗料噴霧器の形態のロータリーアトマイザーを概略的に示す。スピンドル1は、少なくとも1つのラジアルエアベアリング(図示せず)に軸支されるシャフト1aを備え、駆動ガスの作用下でシャフト1aを回転駆動するためのタービンホイール(図示せず)を担持する。
図1に示される塗料噴霧器はまた、材料、この場合は塗料がベルカップ2によって霧化され、塗料が塗られる表面に向けて発射されるように、塗料をリザーバ4からベルカップ2に供給するための供給装置3を備える。このような塗料噴霧器において一般的であるように、スピンドル1と被塗装面の間に印加される高電圧によって生じる静電気力により塗料が被塗装面に向かって発射される。
【0040】
なお、別の方法では、タービン駆動以外の駆動の他の形態が使用されてもよく、例えば、シャフトが電気的に駆動されてもよい。
【0041】
このレベルの塗料噴霧器の構造および動作は従来のものであり、そのような塗料噴霧器は当技術分野で広く使用されており、よく理解されている。本発明において重要なのは、スピンドル1の特徴、特にベルカップ2の特徴である。これらについては、以下で詳しく説明する。
【0042】
図2は、ロータリーアトマイザーのベルカップ2を断面図にてより詳細に示す。
図2において、ベルカップ2はスピンドル1のシャフト1aに取り付ける準備ができた完成状態で示されている。
【0043】
ベルカップ2はベル部5とハブ部6とを備える。ベル部5は
図3および
図4に単独で示され、ハブ部6は
図5に単独で示される。
【0044】
ハブ部は一般的に円筒形で、ベル部は一般的に円錐形である。ハブ部6は機械加工された金属部分である一方、ベル部5は付加製造プロセス、特に金属粉末のレーザー焼結により形成される。
【0045】
製造において、ハブ部6は、
図5に示すように個別部品として最初に機械加工される。スタブ部は、データム(基準)として作用するインターフェイス部61を含む。この場合、インターフェイス部はテーパ部61である。別の方法として、インターフェイス部は異なる形状のものを使用してもよい。ハブ部6単体の加工およびベルカップ2全体の加工は、このデータムを基準にして実行される。完成したベルカップ2がシャフト1aに取り付けられると、このテーパ61は、シャフト1aの対応するテーパ(図示せず)と嵌合する。
【0046】
ハブ部6が最初に機械加工され、
図5に示すように個別部品である場合には、ハブ部6は、付加製造プロセスによりベル部5をその上に構築可能なプラットフォーム部62を有しており、プラットフォーム部62は付加製造プロセスで使用される材料(すなわち、金属粉末)とハブ部6の材料との間の融着に適した領域をもたらす。
【0047】
図6は、ベースプレートに取り付けた、付加製造プロセスによりベル部5を付加する準備ができた状態のハブ部6を示す。ハブ部6は、ここでも、データムであるテーパ部61を基準にしてベースプレート内に位置づけられている。
【0048】
本実施形態において、ハブ部6はチタン製であり、付加製造プロセスにおいてベル部5を形成するために使用される金属粉末はチタンである。他の適切な材料を用いてもよいことはもちろんである。
【0049】
図2と
図5との比較から分かるように、プラットフォーム部62の全てが完成したベルカップ2内に残るわけではない。これは付加製造プロセスを用いてベル部5をハブ部6上に構築した後に、テーパ部61により規定されるデータムを基準にして更なる機械加工が行われ、ハブ6の材料と付加製造において当初形成された状態のベル部5の材料とを除去して、最終形状とするためである。これにより、付加製造プロセスに使用される材料とハブ部6の材料との間の融着が良好なものとなると同時に、正確に仕上げられたベルカップ2の提供が可能となる。
【0050】
付加製造のみを用いて、あるいは、特にハブ部6とベル部5の全体を先ず付加製造プロセスを用いて形成し、その後に機械加工を施した場合には、正確に仕上げられたこのようなベルカップを生産することは不可能もしくは難しいものである。
【0051】
更に、付加製造プロセスをベル部5の形成に使用すると、ベル部5を可能な限り軽くすることができ、ベル部5およびその内部の特徴の比較的複雑な形状をより容易に製造できるという利点がもたらされる。
【0052】
図2、
図3および
図4から分かるように、ベル部5は外側円錐壁51と内側円錐壁52とを有する。これらの間に空隙Vが形成され、ベル部5は中空状である。
図3および
図4を一方とし、
図2を他方として比較すると明白なように、円錐壁部51、52は、
図2に示す最終的なベルカップを製造する最終機械加工を行う前には、より大きな厚さを有する。つまり、
図3および
図4は、付加製造プロセスを使用して構築された状態の最終機械加工の前のベル部5を示す。このように、ハブ部6と同様に、ベル部5の材料は最終機械加工プロセスにおいて除去される。なお、該プロセスは、所望の寸法および要求精度を有するベルカップ2の完成品の製造を可能にするために、ここでもテーパ61により規定されるデータムを基準として実行されるものである。
【0053】
したがって、例えば、
図4に示すように、付加製造プロセスにより形成された状態のベル部5には、
図2に示すベルカップ2の完成品における形状と同じ形状ではない肩部53があるが、これはハブ6のプラットフォーム部62の一部が最終機械加工において除去される際に肩部53の少なくとも一部も除去されるからである。
【0054】
本実施形態においては、複数の支持リブ54が外側円錐壁51と内側円錐壁52との間の空隙Vに設けられている。本実施形態では、ベルカップ5の周りに8本の支持リブが等間隔で設けられている。異なる数のリブを用いてもよいのはもちろんである。
【0055】
別の方法として、空隙Vには、間隔を空けた複数の支持リブ54ではなく支持格子構造が設けられていてもよい。
【0056】
2つの円錐壁51、52の間に設けられる内部支持が如何なるものであるにせよ、完成したベル部5の重量を最小化するために付加製造後に空隙Vから未溶融粉末を排出できるように、閉鎖区画を形成しないことが重要である。なお、付加製造プロセスと、内部支持54と、付加製造プロセスの後に行われる側壁51、52およびハブ6の最終機械加工の利用は、全て、ベルカップ2の重量、ひいては高速回転下で生じるジャイロ力の最小化に貢献し得るものである。
【0057】
ベル部5は、完成したベルカップ2においてハブ部6に対向する後端面55を有する。後端面55は2つの部分、つまり、外側円錐壁51の一端に位置する外側部55aと、内側円錐壁52の一端に位置する内側部55bとを有する。
【0058】
図2に示すように完成後のベルカップ2において、外側端面部55aはハブ6のプラットフォーム部62の対応する対向部に融着している。一方、内側端面部55bの一部もハブ6のプラットフォーム部62に融着しているが、内側端面部55bの他の一部はプラットフォーム部62からハブ部6の孔内へ突き出している。複数のスロット55cが内側端面部55bに設けられており、ベルカップ2の内部の空隙Vと外部との間の流体連通路をもたらす複数の開口部を形成している。これらの流体連通路は付加製造プロセスの後に空隙V内に残存する未溶融粉末の排出路として作用することができる。
【0059】
また、これらのスロット55cおよび結果として生じる開口部は、ロータリーアトマイザーとして稼動中にベルカップ2の内部に流体、例えば洗浄流体を導入するために使用することができる。さらに別の方法として、ベルカップに放出開口部を設けて、空隙Vから所望の位置で流体の排出を可能とすることもできる。したがって、例えば、そのような流体を排出するように外側円錐壁51にスロットを設けてもよい。このような別の方法では、流体はスロット55cを介して空隙Vに供給され、外側円錐壁51に設けられた開口部を介して排出されてもよい。
【0060】
必要に応じて異なる位置に開口を設けてもよいことが理解されよう。さらに、必要であれば、空隙Vから未溶融粉末の排出を可能にするために当初設けられた開口部はこの機能を実行した後に密封されてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、外側端面部55aと内側端面部55bとの間に環状の空間が存在する。この環状の空間の存在は必須ではないが、ベルカップ2の質量削減と、空隙Vと外部との間の流体連通路の最大化に役立つものである。
【0062】
なお、最終機械加工において、上述した円錐壁51、52とハブ部6のプラットフォーム部62領域の外側壁の機械加工に加えて、ハブ部6の中央孔とベル部5の(内側端面部55bの領域において形成される)中央孔の機械加工を行ってもよい。
【0063】
別の方法として、付加製造は、ロータリーアトマイザーベルカップの修理または改変において用いられてもよい。これは、初期のベルカップが上記のように形成されているか、従来の方法で形成されているかに関係なく実行できる。ベルカップの摩耗領域を付加製造により構築し直し、必要に応じて最終機械加工がなされてもよい。あるいは、(摩耗または未摩耗状態の)ベルカップの動作形状を、異なる性能を実現するように付加製造によって改変してもよい。