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特許7150847銅合金ステンレス配管と、これを含む空気調和機及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】銅合金ステンレス配管と、これを含む空気調和機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/26 20110101AFI20221003BHJP
   F24F 1/32 20110101ALI20221003BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F24F1/26
F24F1/32
F16L9/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020529213
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 KR2019003596
(87)【国際公開番号】W WO2020130232
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0164975
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(72)【発明者】
【氏名】ソクピョ ホン
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-037125(JP,A)
【文献】特表2017-509790(JP,A)
【文献】特開2001-074344(JP,A)
【文献】中国実用新案第206555592(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1568536(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/26
F24F 1/32
F16L 9/02
C21D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金ステンレス配管であって、
ステンレス鋼で構成された配管母材と、
前記配管母材の外面に備えられる銅メッキ層と、
前記配管母材と前記銅メッキ層の間の境界面を形成し、金属間化合物(inter-metallic compound)で構成される再結晶層と、を備えてなり、
前記再結晶層は、前記配管母材に前記銅メッキ層が備えられた状態で熱処理を通じて構成されたものであり、
前記ステンレス鋼は、重量%で表記して、
C:0.03%以下、Si:0以上1.7%以下、Mn:1.5~3.5%、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、Cu:1.0~4.0%、Mo:0.03%以下、P:0.04%以下、S:0.04%以下、N:0.03%以下により構成され、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系基地組織又はフェライト系基地組織を備えてなり、
前記配管母材がオーステナイト系基地組織を有するステンレス鋼で構成された場合、前記熱処理温度は850℃~1083℃の範囲で形成され、
前記配管母材がフェライト系基地組織を有するステンレス鋼で構成された場合、前記熱処理温度は800℃~900℃の範囲で形成され、
前記金属間化合物には、少なくとも、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を備え、
前記再結晶層において、前記クロム(Cr)、前記鉄(Fe)及び前記ニッケル(Ni)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど減少し、
前記再結晶層において、前記銅(Cu)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど増加する、銅合金ステンレス配管。
【請求項2】
前記再結晶層において、
前記クロム(Cr)、前記鉄(Fe)及び前記ニッケル(Ni)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かう方向に線形に減少する、請求項に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項3】
前記再結晶層において、
前記銅(Cu)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かう方向に線形に増加する、請求項に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項4】
前記再結晶層の半径方向の厚さは0.18μm~0.22μmである、請求項1に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項5】
前記銅メッキ層は、シアン化銅メッキ又は硫酸化銅メッキで構成される、請求項1に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項6】
前記銅メッキ層の半径方向への厚さは3μm~30μmである、請求項に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項7】
前記銅メッキ層の半径方向への厚さは3μm~5μmである、請求項に記載の銅合金ステンレス配管。
【請求項8】
空気調和機であって、
圧縮機と、
前記圧縮機の吸入側に連結される吸入配管及び前記圧縮機の吐出側に連結される吐出配管が含まれる室外機と、
前記室外機に連結される室内機と、を備えてなり、
前記吸入配管又は前記吐出配管は、銅配管に溶接される銅合金ステンレス配管を備え、
前記銅合金ステンレス配管には、
ステンレス鋼で構成された配管母材と、
前記配管母材の外面に備えられる銅メッキ層と、
前記配管母材と前記銅メッキ層の間の境界面を形成し、金属間化合物(inter-metallic compound)で構成される再結晶層と、を備え、
前記再結晶層は、前記配管母材に前記銅メッキ層が備えられた状態で熱処理を通じて構成されたものであり、
前記ステンレス鋼は、重量%で表記して、
C:0.03%以下、Si:0以上1.7%以下、Mn:1.5~3.5%、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、Cu:1.0~4.0%、Mo:0.03%以下、P:0.04%以下、S:0.04%以下、N:0.03%以下により構成され、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系基地組織又はフェライト系基地組織を備えてなり、
前記配管母材がオーステナイト系基地組織を有するステンレス鋼で構成された場合、前記熱処理温度は850℃~1083℃の範囲で形成され、
前記配管母材がフェライト系基地組織を有するステンレス鋼で構成された場合、前記熱処理温度は800℃~900℃の範囲で形成され、
前記金属間化合物には、少なくとも、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を備え、
前記再結晶層において、前記クロム(Cr)、前記鉄(Fe)及び前記ニッケル(Ni)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど減少し、
前記再結晶層において、前記銅(Cu)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど増加する、空気調和機。
【請求項9】
前記銅合金ステンレス配管は、前記銅配管の内側面に結合され、
前記銅合金ステンレス配管と前記銅配管の間には、溶接部が形成される、請求項に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記溶接部には、フィラーメタル(filler metal)を備えてなる、請求項に記載の空気調和機。
【請求項11】
銅合金ステンレス配管を含む冷媒配管が備えられる空気調和機を製造する方法であって、
前記銅合金ステンレス配管を製造する方法は、
ステンレス鋼で構成された配管母材の外面に銅メッキを行って銅メッキ層を形成するステップと、
前記配管母材及び銅メッキ層に対する熱処理を行って、前記配管母材と前記銅メッキ層の間に再結晶層を形成することで、前記配管母材と前記銅メッキ層の再結晶工程を行うステップと、を含んでなり、
前記再結晶層は、前記配管母材に前記銅メッキ層が備えられた状態で熱処理を通じて構成されたものであり、
前記ステンレス鋼は、重量%で表記して、
C:0.03%以下、Si:0以上1.7%以下、Mn:1.5~3.5%、Cr:15.0~18.0%、Ni:7.0~9.0%、Cu:1.0~4.0%、Mo:0.03%以下、P:0.04%以下、S:0.04%以下、N:0.03%以下により構成され、
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系基地組織又はフェライト系基地組織を備えてなり、
前記配管母材がオーステナイト系基地組織を有するステンレス鋼で構成される場合、前記熱処理温度は850℃~1083℃の範囲で形成され、
前記配管母材がフェライト系基地組織を有するステンレス鋼で構成される場合、前記熱処理温度は800℃~900℃の範囲で形成され、
前記金属間化合物には、少なくとも、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)を備え、
前記再結晶層において、前記クロム(Cr)、前記鉄(Fe)及び前記ニッケル(Ni)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど減少し、
前記再結晶層において、前記銅(Cu)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かうほど増加する、空気調和機の製造方法。
【請求項12】
前記冷媒配管は、前記銅合金ステンレス配管を銅配管に溶接することで形成される、請求項11に記載の空気調和機の製造方法。
【請求項13】
前記熱処理は10分~20分の間の設定された時間だけ実行される、請求項11に記載の空気調和機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金ステンレス配管と、これを含む空気調和機及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、冷媒の相変化サイクルを利用して、室内に暖かい空気または冷たい空気を供給する装置である。
【0003】
具体的に、前記冷媒の相変化サイクルは、低温低圧の気相冷媒を高温高圧の気相冷媒に圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された高温高圧の気相冷媒を高温高圧の液相冷媒に相変化させる凝縮器と、前記凝縮器を通過した高温高圧の液相冷媒を低温低圧の二相冷媒に膨張させる膨張弁と、前記膨張弁を通過した低温低圧の二相冷媒を低温低圧の気相冷媒に相変化させる蒸発器を含むことができる。
【0004】
前記冷媒の相変化サイクルが冷たい空気を供給する装置として作動する場合、前記凝縮器は室外に配置され、前記蒸発器は室内に配置される。そして、前記圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器は、冷媒配管によって連結されて、冷媒循環閉回路を構成する。
【0005】
前記冷媒配管は、一般的に銅素材の銅(Cu)配管が多く使用されているが、前記銅配管は、いくつかの問題点を抱いている。
【0006】
まず、冷媒として水が使用される全熱交換器に前記銅配管が使用される場合、配管の内周面にスケール(scale)が堆積して、配管の信頼性に悪影響を与えることになる。即ち、前記銅配管の内周面にスケールが堆積すると、管内周面を洗浄する作業が必要とされたり、管交替作業が必要となる。
【0007】
次に、銅配管は、高圧を耐えられる耐圧特性を充分に備えていない欠点がある。特に、圧縮機によって高圧に圧縮される冷媒、例えばR410a、R22、R32のような新たな冷媒が適用される冷媒循環サイクルに前記銅配管が適用される場合、冷媒サイクルの運転時間の累積により高圧を耐えられず破損する恐れがある。
【0008】
また、市場において、銅の価格が相対的に高く、価格変動が激しいので、銅配管の使用に困難がある。
【0009】
このような問題点を改善するために、最近では、ステンレス鋼管が銅配管を代替できる新たな手段として浮び上がっている。
【0010】
ステンレス鋼管は、ステンレス鋼素材からなり、銅配管に比べて強い耐食性を有し、銅配管より安価な長所がある。そして、ステンレス鋼管は、銅配管に比べて強度と硬度が大きいので、振動及び騒音の吸収能力が銅配管に比べて優れる長所がある。
【0011】
また、ステンレス鋼管は、銅配管に比べて耐圧特性が優れるので、高圧にも破損の心配ない。
【0012】
よって、空気調和機に使用される配管のうち一部の配管はステンレス鋼管で構成され、前記ステンレス鋼管は、銅コネクタを通じて残りの銅配管と溶接により接合される。しかし、前記銅コネクタが使用される場合、空気調和機の運転中に発生する振動などによって、前記銅コネクタがステンレス鋼管または銅配管から分離される問題点が発生した。
【0013】
これを解決するために、ステンレス鋼管の表面に銅をメッキする案を考慮したが、単に銅をメッキするのは、銅がステンレス鋼管の表面にイオン結合されるだけであるので、簡単に剥離されるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような問題点を解決するために、ステンレス鋼管で構成された母材の表面に銅メッキが安定的に結合され得る、銅合金ステンレス配管を提供することを目的とする。
【0015】
特に、前記母材の表面に銅メッキを行った後、熱処理を通じてメッキ層と母材の表面の間に再結晶層が形成されて、メッキ層の剥離を防止できる、銅合金ステンレス配管を提供することを目的とする。
【0016】
また、ステンレス鋼管の粒界腐食を防止するための熱処理温度を決定し、決定された熱処理温度環境下で熱処理を行うことができる、銅合金ステンレス配管を提供することを目的とする。
【0017】
また、銅配管レベルのフレキシブル性を確保して加工性が改善されるフレキシブルステンレス鋼管を母材として使用する、銅合金ステンレス配管を提供することを目的とする。
【0018】
また、銅配管以上の強度と硬度を備えるステンレス鋼管を母材として使用する、銅合金ステンレス配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した課題を解決するために、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管には、配管母材と前記銅メッキ層の間の境界面を形成する再結晶層が含まれて、配管母材と銅メッキ層の結合力を増大させる。よって、銅メッキ層の剥離を防止し、配管の耐食性を増加させることができる。
【0020】
前記再結晶層は、金属間化合物(inter-metallic compound)で構成される。
【0021】
前記金属間化合物には、少なくとも銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)が含まれる。
【0022】
前記再結晶層は、前記配管母材から前記銅メッキ層を向かう半径方向に金属成分が拡散される拡散層を構成する。
【0023】
前記再結晶層において、前記クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層に向かうほど線形減少する。
【0024】
前記再結晶層において、前記銅(Cu)の重量比は、前記配管母材から前記銅メッキ層に向かうほど線形増加する。
【0025】
前記再結晶層の半径方向の厚さは0.18~0.22μmの厚さを有することができる。
【0026】
前記銅メッキ層には、シアン化銅メッキ層または硫酸化銅メッキ層が含まれる。
【0027】
前記再結晶層は、前記配管母材に前記銅メッキ層が備えられた状態で、熱処理を通じて構成される。
【0028】
他側面による空気調和機には、吸入配管及び吐出配管が含まれ、前記吸入配管または吐出配管は、銅合金ステンレス配管と銅配管が溶接されて構成され、配管の連結が容易である。
【0029】
前記銅合金ステンレス配管と前記銅配管は、ロウ付け溶接されてもよい。
【0030】
前記銅合金ステンレス配管は、前記銅配管の内側に結合され、前記銅合金ステンレス配管と前記銅配管の間には、溶接部が形成される。
【0031】
さらなる他側面による冷媒配管を含む空気調和機を製造する方法において、ステンレス鋼で構成された配管母材の外面に銅メッキを行って銅メッキ層を形成するステップと、前記配管母材及び銅メッキ層に対する熱処理を行って、前記配管母材と前記銅メッキ層の間に再結晶層を形成して銅合金ステンレス配管を製造するステップとが含まれる。
【0032】
前記銅合金ステンレス配管と銅配管を溶接して、前記冷媒配管を構成するステップがさらに含まれる。
【発明の効果】
【0033】
上記した解決手段によれば、銅合金ステンレス配管は、ステンレス鋼管で構成された母材の表面に銅メッキが安定的に結合されるように構成される。
【0034】
特に、前記母材の表面に銅メッキを行った後、熱処理を通じてメッキ層と母材の表面の間に再結晶層が形成されて、メッキ層の剥離を防止することができる。
【0035】
また、ステンレス鋼管の粒界腐食を防止するための熱処理温度を決定し、決定された熱処理温度環境下で熱処理を行うことができるので、再結晶層の容易な形成が可能である。
【0036】
また、銅配管レベルのフレキシブル性を確保して加工性が改善されるフレキシブルステンレス鋼管を母材として使用できるので、冷媒配管の設置便利性が改善される。
【0037】
また、銅配管以上の強度と硬度を備えるステンレス鋼管を母材として使用して、冷媒配管の高い信頼性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施例に係る空気調和機の構成を示す冷凍サイクルに関するダイアグラムである。
図2】本発明の実施例に係る圧縮機周辺の配管構成を示す図面である。
図3図2のIII‐III’に沿って切開した断面図である。
図4図2のIV‐IV’に沿って切開した断面図である。
図5】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の製造及び銅合金との溶接工程を示すフローチャートである。
図6a】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真である。
図6b】従来の一般銅メッキステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真である。
図7a】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の曲げ試験結果に対する第2様子を示す写真である。
図7b】従来の一般銅メッキステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真である。
図8a】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の断面を500倍拡大した様子を示す写真である。
図8b】従来の一般銅メッキステンレス配管の断面を500倍拡大した様子を示す写真である。
図9a】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の断面をSEM装備を利用して撮影した写真である。
図9b】従来の一般銅メッキステンレス配管の断面をSEM装備を利用して撮影した写真である。
図10】本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の成分分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一部実施例を例示的な図面を参照して詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同じ構成要素に対してはできるだけ同じ符号を付するようにする。また、本発明の実施例の説明において、関連した公知構成または機能に対する具体的な説明が、本発明の実施例に対する理解を妨害すると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0040】
また、本発明の実施例の構成要素の説明において、第1、第2、A、B、(a)、(b)等の用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであるだけで、その用語によって当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されるものではない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接的に連結されたり接続されることができるが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」されることができると理解されたい。
【0041】
図1は、本発明の実施例に係る空気調和機の構成を示す冷凍サイクルに関するダイアグラムである。
【0042】
図1を参照すると、本発明の実施例に係る空気調和機10には、冷媒が循環する冷媒サイクルを運転するために、室外機20及び室内機160が含まれる。
【0043】
前記室外機20には、冷媒を高圧に圧縮する圧縮機100及び前記圧縮機100の出口側に配置されるマフラー105がさらに含まれる。前記マフラー105は、前記圧縮機100から吐出された高圧の冷媒かrあ発生する騒音を低減させることができる。
【0044】
前記室外機20には、前記マフラー105の出口側に配置され、前記圧縮機100で圧縮された冷媒の流動方向を切り替える流動調節弁110がさらに含まれる。一例として、前記流動調節弁110には、四方弁(four-way valve)が含まれる。具体的に、前記流動調節弁110には、前記圧縮機100で圧縮された高圧の冷媒が流入する第1ポート111、前記流動調節弁110から室外熱交換器側に延長される配管に連結される第2ポート112、前記流動調節弁110から室内機160に延長される配管に連結される第3ポート113及び前記流動調節弁110から圧縮機100に延長される配管に連結される第4ポート114が含まれる。
【0045】
前記室外機20には、外気と熱交換する室外熱交換器120がさらに含まれる。前記室外熱交換器120は、前記流動調節弁110の出口側に配置される。そして、前記室外熱交換器120には、熱交換配管121及び前記熱交換配管121を支持するホルダー123が含まれる。前記室外熱交換器120の一側には、前記室外熱交換器120に外気を吹き付ける室外ファン125がさらに含まれる。
【0046】
前記室外機20には、前記流動調節弁110の第2ポート112に連結されるマニホールド130及び前記マニホールド130から前記室外熱交換器120に延長される多数の連結管135が含まれる。
【0047】
前記室外機20には、前記室外熱交換器120の一側に備えられる分配器140及び前記分配器140から前記室外熱交換器120に延長される多数のキャピラリー142がさらに含まれる。各キャピラリー142は、前記室外熱交換器120に結合される分岐管145に連結される。
【0048】
前記室外機20には、前記室内機160で凝縮された冷媒を減圧するメイン膨張装置155及び前記膨張装置155の一側に備えられ、冷媒中の異物を分離させるストレーナー(strainer)156、158がさらに含まれる。
【0049】
前記室外機20には、室内機160と組立てる際に連結配管171、172が接続されるサービスバルブ175、176がさらに含まれる。前記連結配管171、172は、前記室外機20と前記室内機160を連結する配管として理解してもよい。前記サービスバルブ175、176には、前記室外機20の一側に備えられる第1サービスバルブ175及び前記室外機20の他側に備えられる第2サービスバルブ176が含まれる。
【0050】
そして、前記連結配管171、172には、前記第1サービスバルブ175から前記室内機160に延長される第1連結配管171及び前記第2サービスバルブ176から前記室内機160に延長される第2連結配管172が含まれる。
【0051】
前記室外機20には、前記圧力センサー180がさらに含まれる。前記圧力センサー180は、前記流動調節部110の第3ポート113から前記第2サービスバルブ176に延長される冷媒配管に設置される。冷房運転時に、前記圧力センサー180は、前記室内機160に蒸発された冷媒の圧力、即ち低圧を感知することができる。反面、前記圧力センサー180は、前記圧縮機100で圧縮された冷媒の圧力、即ち高圧を感知することもできる。
【0052】
前記室外機20には、前記圧縮機100の吸入側に配置され、蒸発された低圧の冷媒のうち気相冷媒を分離して前記圧縮機100に提供する気液分離器150がさらに含まれる。
【0053】
前記室内機160には、室内熱交換器(図示されない)及び前記室内熱交換器の一側に備えられ、室内に空気を吹き付ける室内ファンが含まれる。そして、前記室内機160には、冷房運転時に凝縮冷媒を減圧する室内膨張装置がさらに含まれる。そして、前記室内膨張装置で減圧された冷媒は、前記室内熱交換器で蒸発される。前記室内機160は、第1、2連結配管171、172を通じて前記室外機20に連結される。
【0054】
前記室外機20には、上記した室外機20の多数の構成を連結する冷媒配管300がさらに含まれる。前記冷媒配管300は、銅合金ステンレス配管で構成される。
【0055】
一例として、前記銅合金ステンレス配管は、圧縮機100周辺の冷媒配管に適用することができる。即ち、前記銅合金ステンレス配管は、前記圧縮機100から発生する振動及び応力によって、既存の銅コネクタの分離が発生しうる位置に適用することができる。
【0056】
具体的に、前記銅合金ステンレス配管は、流動調節弁110の第4ポート114から前記圧縮機100に延長される吸入配管310に適用することができる。そして、前記銅合金ステンレス配管は、前記圧縮機100から前記流動調節弁110の第1ポート111に延長される吐出配管320に適用することができる。
【0057】
前記銅合金ステンレス配管は、前記流動調節弁110の第2ポート112からマニホールド130に延長される配管に適用することができる。そして、前記銅合金ステンレス配管は、前記流動調節弁110の第3ポート113から第2サービスバルブ176に延長される配管に適用することができる。
【0058】
前記銅合金ステンレス配管が適用される冷媒配管の領域に対して、図1ではTstで表記される。
【0059】
図2は本発明の実施例に係る圧縮機周辺の配管構成を示す図面であり、図3図2のIII‐III’に沿って切開した断面図であり、図4図2のIV‐IV’に沿って切
開した断面図である。
【0060】
図2を参照すると、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管360は、圧縮機100の吸入配管310及び吐出配管320に提供することができる。具体的に、前記吸入配管310には、前記気液分離器150に連結される銅配管350及び前記銅配管350に接合される銅合金ステンレス配管360が含まれる。
【0061】
前記銅配管350と前記銅合金ステンレス配管360は、溶接によって接合される。よって、前記銅配管350と前記銅合金ステンレス配管360の間には、溶接部370が形成される。一例として、前記溶接には、ロウ付け溶接を含むことができる。
【0062】
そして、前記吐出配管320には、前記圧縮機100に連結される銅配管350a及び前記銅配管350aに接合される銅合金ステンレス配管360aが含まれる。同様に、前記銅配管350aと前記銅合金ステンレス配管360aの間には、ロウ付け溶接によって形成される溶接部370が備えられる。
【0063】
図3を参照すると、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管360は、フレキシブルステンレス鋼管で構成される配管母材361及び前記配管母材361の表面に形成される銅メッキ層365が含まれる。
【0064】
そして、前記銅合金ステンレス配管360には、前記配管母材361と銅メッキ層365の熱処理を通じて再結晶されて形成される再結晶層363がさらに含まれる。前記再結晶層363は、前記熱処理によって、配管母材361と銅メッキ層365の境界に結晶核が生成され、前記結晶核が成長して新たな境界面を形成する層として理解してもよい。
【0065】
即ち、前記再結晶層363は、配管母材361と銅メッキ層365の熱処理を通じて、金属の拡散による再結晶化される層であり、金属間化合物(inter-metallic compound)として構成される。
【0066】
前記配管母材361の構成、即ちフレキシブルステンレス鋼管に対して説明する。
【0067】
前記フレキシブルステンレス鋼管には、ステンレス素材と、少なくとも銅(Cu)を含む不純物を有する物質で構成される。前記新素材配管は、銅(Cu)配管の強度よりは大きい強度を有し、ステンレス鋼管よりは加工性がよく構成される。
【0068】
前記フレキシブルステンレス鋼は、従来のステンレス鋼に比べて強度と硬度が低い反面、曲げ特性がよい特徴がある。本発明の実施例に係るフレキシブルステンレス鋼管は、強度と硬度において従来の一般的なステンレス鋼より低いが、少なくとも銅管の強度と硬度以上を維持し、銅管の曲げ特性と類似するレベルの曲げ特性を有するので、管の曲げ加工性が非常によいと言える。ここで、曲げ特性とフレキシブル性は同じ意味で使用されることを明示しておく。
【0069】
結局、前記フレキシブルステンレス鋼の強度は、前記銅配管の強度より高いので、配管の破損の恐れが減少する。よって、空気調和機10に選択できる冷媒の種類が増える効果を奏する。
【0070】
以下では、本発明の実施例に係るフレキシブルステンレス鋼の特性を定義する構成要素に対して説明し、以下で説明される各構成要素の構成比は、重量比(weight percent、wt%)であることを明示しておく。
【0071】
1.ステンレス鋼の組成(composition)
【0072】
(1)炭素(C、carbon):0.3%以下
本発明の実施例に係るステンレス鋼は、炭素(C)とクロム(Cr、chromium)を含む。炭素は、クロムと反応してクロム炭化物(chromium carbide)として析出されるが、粒界(grain boundary)またはその周辺にクロムが枯渇して腐食の原因となる。よって、炭素の含有量は、少なく維持されることが好ましい。
【0073】
炭素は、他元素と結合してクリープ強度(creep strength)を高める作用をする元素であり、炭素の含有量が0.03%を超えるとかえってフレキシブル性を低下させる要因となる。よって、本発明では、炭素の含有量を0.03%以下に設定する。
【0074】
(2)ケイ素(Si、silicon):0以上1.7%以下
オーステナイト組織は、フェライト組織またはマルテンサイト組織に比べて低い降伏強度を有する。よって、本発明のフレキシブルステンレス鋼が、銅と類似または等しいレベルの曲げ特性(または曲げ自由度)を有するためには、ステンレス鋼の基地組織がオーステナイトからなることがよい。
【0075】
しかし、ケイ素は、フェライトを形成する元素であるので、ケイ素の含有量が増加するほど基地組織においてフェライトの比率が増加し、フェライトの安定性が高まる。ケイ素の含有量は、できるだけ少なく維持されることが好ましいが、製造過程で、ケイ素が不純物として流入することを完全に遮断することは不可能である。
【0076】
ケイ素の含有量が1.7%を超えるとステンレス鋼が銅素材レベルのフレキシブル性を有することが困難となり、充分な加工性を確保することが難しくなる。よって、本発明の実施例に係るステンレス鋼に含まれるケイ素の含有量を1.7%以下に設定する。
【0077】
(3)マンガン(Mn、manganess):1.5~3.5%
マンガンは、ステンレス鋼の基地組織がマルテンサイト系に相変態することを抑制し、オーステナイト区域を拡大させて安定化させる作用をする。もし、マンガンの含有量が1.5%未満であれば、マンガンによる相変態抑制効果が不充分となる。よって、マンガンによる相変態抑制効果を充分に得るためには、マンガンの含有量の下限を1.5%に設定する。
【0078】
しかし、マンガンの含有量が増加するほどステンレス鋼の降伏強度が上昇して、ステンレス鋼のフレキシブル性を低下させる要因となるので、マンガンの含有量の上限を3.5%に設定する。
【0079】
(4)クロム(Cr、chromium):15~18%
クロムは、ステンレス鋼の腐食開始抵抗性(Corrosion Initiation Resistance)を向上させる元素である。腐食開始とは、腐食されていない母材(base material)に腐食が存在しない状態で最初に腐食が発生することを意味し、腐食開始抵抗性とは、母材に最初に腐食が発生することを抑制する性質を意味する。これは、耐食性と同じ意味で解釈することができる。
【0080】
クロムの含有量が15.0%より低いと、ステンレス鋼が充分な腐食開始抵抗性(または耐食性)を有することができないので、本発明では、クロムの含有量の下限を15.0%に設定する。
【0081】
反面、クロムの含有量が多過ぎると、常温でフェライト組織となってフレキシブル性が減少することになり、特に高温でオーステナイトの安定性がなくなって脆化するので強度の低下を招来する。よって、本発明では、クロムの含有量の上限を18.0%に設定する。
【0082】
(5)ニッケル(Ni、nickel):7.0~9.0%
ニッケルは、ステンレス鋼の腐食成長抵抗性(Corrosion Growth Resistance)を向上させ、オーステナイト組織を安定化させる性質を有している。
【0083】
腐食成長とは、既に母材に発生した腐食が広い範囲に広がりながら成長することを意味し、腐食成長抵抗性とは、腐食の成長を抑制する性質を意味する。
【0084】
ニッケルの含有量が7.0%より低いと、ステンレス鋼が充分な腐食成長抵抗性を有することができないので、本発明のニッケルの含有量の下限を7.0%に設定する。
【0085】
また、ニッケルの含有量が過剰になると、ステンレス鋼の強度と硬度を増加させて、ステンレス鋼の充分な加工性を確保することが難しくなる。それだけではなく、コストの増加を招来して経済的な面でも好ましくない。よって、本発明では、ニッケルの含有量の上限を9.0%に設定する。
【0086】
(6)銅(Cu、Copper):1.0~4.0%
銅は、ステンレス鋼の基地組織がマルテンサイト組織に相変態することを抑制し、ステンレス鋼のフレキシブル性を高める作用をする。銅の含有量が1.0%未満であれば、銅による相変態抑制効果が不充分となる。よって、本発明では、銅による相変態抑制効果を充分に得るために、銅の含有量の下限を1.0%に設定する。
【0087】
特に、ステンレス鋼が銅の曲げ特性と同じまたは類似するレベルの曲げ特性を有するようにするためには、銅の含有量が1.0%以上となる必要がある。
【0088】
銅の含有量が増加するほど基地組織の相変態抑制効果が増加するが、その増加幅は次第に小さくなる。そして、銅の含有量が過剰となって4~4.5%を超えると、その効果は飽和し、マルテンサイトの発生を促進するので好ましくない。そして、銅が高価な元素でありので、経済性にも影響を与えることになる。よって、銅の相変態抑制効果が飽和レベル未満に維持され、経済性が確保されるように、銅の含有量の上限を4.0%に設定する。
【0089】
(7)モリブデン(Mo、molybdenum):0.03%以下
【0090】
(8)リン(P、phosphorus):0.04%以下
【0091】
(9)硫黄(S、sulfer):0.04%以下
【0092】
(10)窒素(N、nitrogen):0.03%以下
モリブデン、リン、硫黄及び窒素は鋼鉄半製品に本来から含まれている元素として、ステンレス鋼を硬化させるので、できるだけ低い含有量に維持することが好ましい。
【0093】
2.ステンレス鋼の基地組織(matrix structure)
前記フレキシブルステンレス鋼の基地組織は、クロム(18%)とニッケル(8%)を主成分とするオーステナイト系(Ostenite type)ステンレス鋼またはクロム(18%)を主成分とするフェライト系(Ferrite type)ステンレス鋼で構成される。
【0094】
前記フレキシブルステンレス鋼の基地組織がオーステナイト系ステンレス鋼で構成される場合、デルタフェライト(δ-Ferrite)がさらに含まれてもよい。一例として、前記フレキシブルステンレス鋼は、粒度面積を基準として90%以上、好ましくは99%以上のオーステナイト基地組織を有し、1%以下のデルタフェライト基地組織を有することができる。
【0095】
前記銅メッキ層365は、シアン化銅メッキ(Copper Cyanide)または硫酸化銅メッキ(Copper Sulfate)からなることができる。前記銅メッキ層365の半径方向の厚さは3μm~30μmの範囲を有することができる。一般的な銅メッキ層の厚さは3μm~5μmを有するが、本実施例に係る銅メッキ層365は、少なくとも5回以上の再溶接が可能な厚さで提案することを特徴とする。
【0096】
即ち、銅合金ステンレス配管を銅配管に接合した後分離し、以後再溶接しても、銅メッキ層365が残る厚さで構成される。
【0097】
前記再結晶層363は、前記配管母材361に銅メッキ層365を形成した後、熱処理を行って構成される。前記配管母材361に前記銅メッキ層365をコーティングすると、単にイオン結合しかなされないので、その結合力が弱く形成される。よって、所定の外力または熱源が配管母材361に加えられると、前記銅メッキ層365の剥離が起きることがある。
【0098】
よって、前記配管母材361に銅メッキ層365を形成した後、熱処理なしに銅配管350に溶接をする場合、前記銅メッキ層365が損傷する可能性が高くなる。
【0099】
これを防止するために、本実施例では、配管母材361と銅メッキ層365の間の境界に再結晶がなされ、所定の境界面を形成する再結晶層363を形成することを特徴とする。
【0100】
前記熱処理条件は、以下のようである。
【0101】
前記配管母材361の基地組織がオーステナイト系で構成される場合、前記熱処理温度は、略850℃~1、083℃の範囲を有することができる。
【0102】
前記オーステナイト系基地組織の場合、粒界腐食を誘発する敏感化温度範囲が550℃~850℃であるので、前記敏感化温度範囲で長時間露出する場合、クロム炭化物が形成されて粒界腐食が発生する問題点が起きる。ここで、前記「粒界腐食」は、合金の結晶粒系に集中的に発生する局部的な腐食現象であると理解することができる。
【0103】
よって、粒界腐食を防止し、配管母材の再結晶のための熱処理温度は、850℃以上の範囲である必要があり、銅(Cu)の融点は1083℃であるので、銅の溶点以下に熱処理温度を形成する必要がある。
【0104】
一方、前記配管母材361の基地組織がフェライト系で構成される場合、粒界腐食を誘発する敏感化温度範囲が略900℃以上となる。そして、熱処理温度が800℃未満である場合、配管母材361の再結晶が困難となる。よって、熱処理温度は、800℃~900℃の範囲を有することができる。
【0105】
もし、フェライト系の配管母材361を900℃以上の温度で熱処理する場合、一定速度以下に徐冷しないと敏感化温度によるクロム炭化物析出を防止することができない。
【0106】
図4を参照すると、銅配管350と銅合金ステンレス配管360は、溶接によって接合される。一例として、前記銅合金ステンレス配管360は、前記銅配管350の内部に挿入され、前記銅合金ステンレス配管360の外周面と前記銅配管350の内周面の間には溶接部370が形成される。
【0107】
一例として、溶接方法としてロウ付け溶接が行われ、前記溶接部370は、溶接過程で溶けて溶接物の一部として構成されるフィラーメタル(filler metal)を含むことができる。
【0108】
前記銅合金ステンレス配管360には、配管母材361と、前記配管母材361の外側にコーティングされる銅メッキ層365及び再結晶によって前記配管母材361と前記銅メッキ層365の間の境界面を形成する再結晶層363が含まれる。
【0109】
図5は、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の製造及び銅合金との溶接工程を示すフローチャートである。
【0110】
図5を参照すると、配管母材361の外周面に銅メッキを行って銅メッキ層365を形成する。前記配管母材361は、上記したように、「フレキシブルステンレス鋼」で構成される(S11)。
【0111】
設定時間の間配管母材361に対する熱処理をして、配管母材361及び銅メッキ層365の再結晶化工程を行い、前記配管母材361と前記銅メッキ層365の間に再結晶層363を形成する。
【0112】
前記再結晶層363は、前記配管母材361及び銅メッキ層365の間の境界面として、「合金層」または「拡散層」であると理解することができる。このような方法によって、銅合金ステンレス配管360を製造することができる。
【0113】
そして、前記設定時間は、10~20分であってもよい。
【0114】
熱処理温度は、オーステナイト系基地組織のステンレス鋼で構成された配管母材361の場合、850℃~1、083℃の範囲を有することができる。反面、フェライト系基地組織のステンレス鋼で構成された配管母材361の場合、熱処理温度は、800℃~900℃の範囲を有することができる。
【0115】
一方、フェライト系基地組織のステンレス鋼で構成された配管母材361に対して900℃以上の温度で熱処理を行う場合、一定速度以下に徐冷することができる(S12)。
【0116】
前記銅合金ステンレス配管360と銅配管350の溶接を行うことができる。その結果、図4に図示されるように、前記銅合金ステンレス配管360と銅配管350の間には溶接部370が形成される(S13)。
【0117】
図6aは、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真であり、図6bは、従来の一般銅メッキステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真である。
【0118】
図6aは、図5の製造方法で構成された銅合金ステンレス配管360に対して、折り曲げて伸ばす作用を繰り返して(曲げ試験)、曲げ部(B)を形成した際の配管360の様子を示す。具体的に、前記配管360を180度に折り曲げて伸ばす作用を行った。
【0119】
図6aの一番目の写真は、折り曲げて伸ばす作用を5回繰り返した場合の様子、2番目の写真は、折り曲げて伸ばす作用に関する試験を10回繰り返した場合の結果を示す。図6aの2つの写真から見られるように、銅メッキ層は、再結晶層によって配管母材に安定的に結合されるので、外部の銅メッキ層が剥離する現象が発生しないことが分かる。
【0120】
図6bは、本発明の実施例とは違って、配管母材に銅メッキ層のみを形成した配管360’の様子を示す。即ち、前記銅メッキ層は、配管母材に相対的に弱いイオン結合しかなされない。図6aの試験方法と同様に、配管360’に対して、折り曲げて伸ばす作用を繰り返して(曲げ試験)、曲げ部(B')を形成した際の配管360’の様子を示す。
【0121】
図6bの一番目の写真は、折り曲げて伸ばす作用を5回繰り返した場合の様子、2番目の写真は、折り曲げて伸ばす作用に関する試験を10回繰り返した場合の結果を示す。図6bの2つの写真から見られるように、前記配管360’には剥離部(P)がある。前記剥離部(P)は、配管母材から剥離した銅メッキ層の部分を意味する。
【0122】
前記剥離部(P)によって、配管母材が外部に露出するので、配管360’と銅配管350との溶接は困難となる問題点が生じる。そして、配管の耐食性が減少する問題点が生じる。
【0123】
図7aは、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の曲げ試験結果に対する第2様子を示す写真であり、図7bは、従来の一般銅メッキステンレス配管の曲げ試験結果に対する第1様子を示す写真である。図7a及び図7bは、それぞれ図6a及び図6bの配管の反対側の様子を示す。
【0124】
図7aを参照すると、銅合金ステンレス配管360に対する曲げ試験を通じて、配管360の切開部(C)が形成された様子が図示される。具体的に、配管360の切開部(C)において、銅メッキ層365が配管母材361の外面に堅固に結合された状態を維持していることが分かる。そして、前記配管母材361と前記銅メッキ層365の間には、再結晶層363が形成される。
【0125】
図7bを参照すると、配管360’に対する曲げ試験を通じて、配管360’に剥離部(P)及び切開部(C')が形成された様子が図示される。具体的に、配管360’の切開部(C')において、銅メッキ層は配管母材から剥離して落ちている状態であることが分かる。同様に、配管360’の剥離部(P)において、銅メッキ層は配管母材から剥離して落ちている状態であることが分かる。
【0126】
図8aは、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の断面を500倍拡大した様子を示す写真であり、図8bは、従来の一般銅メッキステンレス配管の断面を500倍拡大した様子を示す写真である。
【0127】
図8aを参照すると、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管360の断面は、フレキシブルステンレス鋼で構成される配管母材361と、前記配管母材361の外面にコーティングされた銅メッキ層365及び前記配管母材361と銅メッキ層365の境界面を形成する再結晶層363を含む。
【0128】
図8aの写真から分かるように、前記再結晶層363の形成によって、前記銅メッキ層365が配管母材361から浮き上げることなく良好な接合界面を形成することができる。一方、図8aで見られる黒色のリング状の部材は、断面写真を拡大した際に、容易に層を区分できるようにするために配置した基準リング(R)である。
【0129】
反面、図8bを参照すると、配管母材に銅メッキ層を単にコーティングして熱処理をしていない配管360’の断面は、配管母材361’と、配管母材361’の外面にコーティングされた銅メッキ層365’及び前記配管母材361’と銅メッキ層365’の間に境界面を形成する剥離層363’を含む。
【0130】
図8bの写真から分かるように、前記銅メッキ層365’は、配管母材361’の外面を覆っているものの、前記剥離層363’によって浮き上がっており、前記配管母材361’に接合されていない欠陥を有する。よって、図8bのような構成による配管360’の場合、銅メッキ層365’は外力によって簡単に剥離し、耐食性が弱い欠点を有する。
【0131】
図9aは、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の断面をSEM装備を利用して撮影した写真であり、図9bは、従来の一般銅メッキステンレス配管の断面をSEM装備を利用して撮影した写真である。
【0132】
図9a及び図9bは、図8a及び図8bで説明した銅合金ステンレス配管360及び従来の配管360’に対して、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用して断面を拡大した写真を示す。
【0133】
具体的に、図9aを参照すると、銅合金ステンレス配管360には、配管母材361と、配管母材361の表面に備えられる銅メッキ層365及び前記配管母材361と前記銅メッキ層365の間に配置されて両金属の間に良好な接合界面を形成する再結晶層363が含まれる。
【0134】
反面、図9bを参照すると、従来の配管360’には、配管母材361’と、配管母材361’の表面に備えられる銅メッキ層365’及び前記配管母材361と前記銅メッキ層365の間に配置される剥離層363’が含まれる。前記剥離層363’によって、前記銅メッキ層365は、前記配管母材361’から簡単に分離する弱点を有する。
【0135】
図10は、本発明の実施例に係る銅合金ステンレス配管の成分分析結果を示すグラフである。図10は、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して銅合金ステンレス配管360の成分分析(Energy Dispersive Spectrometry、EDS分析)を行った結果を示す。
【0136】
グラフの横軸は、配管の厚さ(μm)を示す。横軸の原点は配管母材361の内周面の一地点を示し、Lsは配管母材361の半径方向の厚さ、Lcは銅メッキ層365の半径方向の厚さを示す。
【0137】
グラフの縦軸は、金属成分の重量比(Wt%)を示す。そして、グラフの4つの線は、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)の重量比を示す。
【0138】
よって、横軸の配管母材361の厚さに該当する部分、即ち、略0~2μmでは銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)が適切な割合で混合された状態を見せている。反面、銅メッキ層365に該当する部分、即ち2.2~4.2μmでは他の金属は殆どなく、銅(Cu)が大部分を占めている状態を見せている。
【0139】
前記配管母材361と銅メッキ層365の間の領域、即ち横軸の2~2.2μmでは4つの金属成分(Cu、Cr、Fe、Ni)が変化する領域を形成する。
【0140】
この領域は、再結晶層363が位置する領域として、3つの金属成分(Cr、Fe、Ni)の重量比は、横軸の値が大きくなるほど、即ち配管母材361から銅メッキ層365に向かうほど線形に減少し、1つの金属成分(Cu)の重量比は、線形に増加する領域であることを見せている。
【0141】
即ち、前記再結晶層363は、略0.2μmの厚さ、詳しくは0.18~0.22μmの厚さを有する拡散層を形成することが分かる。このような拡散層によって、配管母材361と銅メッキ層365の良好な接合が達成される。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る銅合金ステンレス配管は、ステンレス鋼管で構成された母材の表面に銅メッキが安定的に結合されるように構成されるので、産業上の利用可能性が高い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10