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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ベーンポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/344 20060101AFI20221003BHJP
   F04C 15/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
F04C2/344 331J
F04C15/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020551729
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039212
(87)【国際公開番号】W WO2020084666
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】西川 歳生
(72)【発明者】
【氏名】多賀 直哉
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-000583(JP,U)
【文献】特開2015-137567(JP,A)
【文献】特開平11-013646(JP,A)
【文献】特開2018-035773(JP,A)
【文献】特開2005-120893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸から回転力を受けて、複数枚のベーンを支持しながら回転するとともに、前記回転軸を中心とする円弧状の曲面部を有し、前記曲面部から回転中心側に凹んだ第1凹部が形成されているロータと、
前記ロータの前記曲面部に対向する内周面を有して前記ロータを囲むように配置されたカムリングと、
前記カムリングにおける前記回転軸の軸方向の一方側の端部に前記カムリングの開口部を覆うように配置されて、前記ロータの前記曲面部よりも前記回転中心側に凹んだ第2凹部が形成された一方側部材と、
を備え
前記一方側部材は、前記ロータの外周面、前記カムリングの内周面及び前記複数枚のベーンの内の隣接する2枚のベーンにて区画されるポンプ室へ作動流体を吸入する吸入ポートの前記回転中心側の部位を構成する内側部を有し、
前記第2凹部は、前記内側部の一部が前記回転中心側に凹んだ部位であり、
前記一方側部材の前記内側部は、前記ロータの前記曲面部の形状に沿い、前記曲面部の形状に沿う部位と前記第2凹部との間は、前記カムリングの内周面の形状に沿う
ベーンポンプ装置。
【請求項2】
回転軸から回転力を受けて、複数枚のベーンを支持しながら回転するとともに、前記回転軸を中心とする円弧状の曲面部を有し、前記曲面部から回転中心側に凹んだ第1凹部が形成されているロータと、
前記ロータの前記曲面部に対向する内周面を有して前記ロータを囲むように配置されたカムリングと、
前記カムリングにおける前記回転軸の軸方向の一方側の端部に前記カムリングの開口部を覆うように配置されて、前記ロータの前記曲面部よりも前記回転中心側に凹んだ第2凹部が形成された一方側部材と、
を備え、
前記一方側部材は、前記ロータの外周面、前記カムリングの内周面及び前記複数枚のベーンの内の隣接する2枚のベーンにて区画されるポンプ室へ作動流体を吸入する吸入ポートの前記回転中心側の部位を構成する内側部を有し、
前記第2凹部は、前記内側部の一部が前記回転中心側に凹んだ部位であり、
前記一方側部材の前記第2凹部は、前記内側部における周方向の下流部に形成されている
ベーンポンプ装置。
【請求項3】
回転軸から回転力を受けて、複数枚のベーンを支持しながら回転するとともに、前記回転軸を中心とする円弧状の曲面部を有し、前記曲面部から回転中心側に凹んだ第1凹部が形成されているロータと、
前記ロータの前記曲面部に対向する内周面を有して前記ロータを囲むように配置されたカムリングと、
前記カムリングにおける前記回転軸の軸方向の一方側の端部に前記カムリングの開口部を覆うように配置されて、前記ロータの前記曲面部よりも前記回転中心側に凹んだ第2凹部が形成された一方側部材と、
を備え、
前記一方側部材は、前記ロータの外周面、前記カムリングの内周面及び前記複数枚のベーンの内の隣接する2枚のベーンにて区画されるポンプ室へ作動流体を吸入する吸入ポートの前記回転中心側の部位を構成する内側部を有し、
前記第2凹部は、前記内側部の一部が前記回転中心側に凹んだ部位であり、
前記一方側部材の前記第2凹部は、前記内側部における周方向の略中央部に形成されている
ベーンポンプ装置。
【請求項4】
前記ロータの外周面、前記カムリングの内周面及び前記複数枚のベーンの内の隣接する2枚のベーンにて区画されるポンプ室へ作動流体を吸入する吸入経路を構成する吸入ポートを構成するように、前記カムリングには、前記一方側部材との合わせ面から前記回転軸の軸方向に凹んだ第3凹部が形成されており、
前記ロータの前記第1凹部は、前記カムリングの前記第3凹部と対向する部位に形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載のベーンポンプ装置。
【請求項5】
前記ロータの前記第1凹部における前記回転軸の軸方向の大きさは、前記カムリングに形成された前記第3凹部における前記回転軸の軸方向の大きさよりも小さい
請求項に記載のベーンポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたベーンポンプは、ハウジングの内部に枢支した回転軸に結合されて回転するロータと、ハウジングの内部でロータを囲むように配設されるカムリングと、ロータの放射方向に複数設けたベーン溝に摺動自在に配設された複数のベーンと、ロータの周囲で相隣るベーンにより区画される複数のポンプ室と、圧縮行程を行なうポンプ室に対応し、ロータの直径方向で対向して設けられる複数の吐出ポートとを有している。そして、特許文献1に記載されたベーンポンプにおいては、ロータに、外周面から回転中心方向に凹んだ凹部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-50067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベーンポンプの作動流体として用いるオイルの低粘度化を図るために、オイルに含まれる気泡(エア)の含有率が増加する傾向にある。気泡の含有率が大きいオイルを吸入すると、例えば、吸入吐出効率の低下、吐出圧力のぶれ、騒音悪化などに至るおそれがある。オイルに含まれる気泡の含有率が増加することに起因して吸入吐出効率の低下等が生じることを抑制するために、ポンプ室の容積を小さくし、ポンプ室に吸入するオイルの絶対量を下げることが考えられる。そのために、ロータの外周面を、ロータの回転中心を中心とする円弧状にすることが考えられる。しかしながら、ポンプ室の容積を小さくするべく、単にロータの外周面を、ロータの回転中心を中心とする円弧状に変更するのでは、吸入効率が低下し、ポンプ性能が低下してしまうおそれがある。
本発明は、作動流体に含まれる気泡を吸入する量を低下しつつ、ポンプ性能の低下を抑制することができるベーンポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、回転軸から回転力を受けて、複数枚のベーンを支持しながら回転するとともに、前記回転軸を中心とする円弧状の曲面部を有し、前記曲面部から回転中心側に凹んだ第1凹部が形成されているロータと、前記ロータの前記曲面部に対向する内周面を有して前記ロータを囲むように配置されたカムリングと、前記カムリングにおける前記回転軸の軸方向の一方側の端部に前記カムリングの開口部を覆うように配置されて、前記ロータの前記曲面部よりも前記回転中心側に凹んだ第2凹部が形成された一方側部材と、を備えるベーンポンプ装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作動流体に含まれる気泡を吸入する量を低下しつつ、ポンプ性能の低下を抑制することができるベーンポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ベーンポンプの構成部品の一部をカバー側から見た斜視図である。
図2】ベーンポンプの構成部品の一部をケース側から見た斜視図である。
図3】ベーンポンプの第1のオイルの流路を示すための断面図である。
図4】ベーンポンプの第2のオイルの流路を示すための断面図である。
図5】ロータ、ベーン及びカムリングを回転軸方向の一方方向に見た図、及び、他方方向に見た図である。
図6】カムリングのカムリング内周面における回転角度毎の回転中心からの距離を示す図である。
図7】インナプレートを回転軸方向の一方方向、及び、他方方向に見た図である。
図8】アウタプレートを回転軸方向の他方方向、及び、一方方向に見た図である。
図9】ケースを回転軸方向の一方方向に見た図である。
図10】カムリング及びインナプレートを一方方向に見た図である。
図11図10のXI-XI部の断面図である。
図12】ロータ、複数のベーン、カムリング及びアウタプレートの斜視図である。
図13】第2の実施形態に係るベーンポンプの吸入内側部の概略構成を示す図である。
図14】第3の実施形態に係るベーンポンプの吸入内側部の概略構成を示す図である。
図15】第4の実施形態に係るベーンポンプの吸入内側部の概略構成を示す図である。
図16】第5の実施形態に係るインナプレートを回転軸方向の一方方向、及び、他方方向に見た図である。
図17】第5の実施形態に係るアウタプレートを回転軸方向の他方方向、及び、一方方向に見た図である。
図18】カムリング及びインナプレートを一方方向に見た図である。
図19】ロータのロータ凹部の変形例を示す図である。
図20】ロータの曲面部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、実施の形態に係るベーンポンプ装置1(以下、「ベーンポンプ1」と称す。)の構成部品の一部をカバー120側から見た斜視図である。
図2は、ベーンポンプ1の構成部品の一部をケース110側から見た斜視図である。
図3は、ベーンポンプ1の第1のオイルの流路を示すための断面図である。図3は、図5のIII-III部の断面図でもある。
図4は、ベーンポンプ1の第2のオイルの流路を示すための断面図である。図4は、図5のIV-IV部の断面図でもある。
ベーンポンプ1は、例えば車両のエンジンからの動力により駆動されて、作動流体の一例としてのオイルを、例えば油圧式無段変速機や油圧式パワーステアリングなどの機器に供給するためのポンプである。
【0009】
また、ベーンポンプ1は、1つの吸入口116から吸入したオイルを、異なる2つの吐出口である第1吐出口117、第2吐出口118から吐出する。第1吐出口117、第2吐出口118から吐出するオイルの圧力は同じであっても良いし、異なっていても良い。より具体的には、ベーンポンプ1は、吸入口116から吸入されて第1吸入ポート2(図3参照)からポンプ室に吸入されたオイルを、ポンプ室にて圧力を高めて第1吐出ポート4(図3参照)から吐出して第1吐出口117から外部に吐出する。加えて、ベーンポンプ1は、吸入口116から吸入されて第2吸入ポート3(図4参照)からポンプ室に吸入されたオイルを、ポンプ室にて圧力を高めて第2吐出ポート5(図4参照)から吐出して第2吐出口118から外部に吐出する。なお、第1吸入ポート2、第2吸入ポート3、第1吐出ポート4及び第2吐出ポート5は、ポンプ室に臨む(面する)部分である。
【0010】
ベーンポンプ1は、車両のエンジンまたはモータなどからの駆動力を受けて回転する回転軸10と、回転軸10とともに回転するロータ20と、ロータ20に形成された溝に組み込まれた複数のベーン30と、ロータ20およびベーン30の外周を囲むカムリング40とを備えている。
また、ベーンポンプ1は、カムリング40よりも回転軸10の一方の端部側に配置された一方側部材の一例としてのインナプレート50と、カムリング40よりも回転軸10の他方の端部側に配置された他方側部材の一例としてのアウタプレート60とを備えている。
また、ベーンポンプ1は、ロータ20、複数のベーン30、カムリング40、インナプレート50およびアウタプレート60を収容するハウジング100を備えている。ハウジング100は、有底筒状のケース110と、ケース110の開口部を覆うカバー120とを有している。
【0011】
<回転軸10の構成>
回転軸10は、ケース110に設けられた後述のケース側軸受け111と、カバー120に設けられた後述のカバー側軸受け121とによって回転可能に支持される。回転軸10には、外周面にスプライン11が形成されており、スプライン11を介してロータ20と連結されている。本実施の形態においては、回転軸10は、例えば車両のエンジンなどのベーンポンプ1の外部に配置された駆動源により動力を受けることによって回転し、スプライン11を介してロータ20を回転駆動する。
なお、第1の実施形態に係るベーンポンプ1では、回転軸10(ロータ20)は、図1で時計回転方向に回転するように構成されている。
【0012】
<ロータ20の構成>
図5は、ロータ20、ベーン30及びカムリング40を回転軸方向の一方方向、及び、他方方向に見た図である。
ロータ20は、概形が円筒状の部材である。ロータ20の内周面には、回転軸10のスプライン11(図1参照)が嵌め込まれるスプライン21が形成されている。ロータ20は、外周部に、回転軸10の回転中心Cを中心とする円弧状の曲面部22を有している。また、ロータ20の外周部には、ロータ20の外周面から回転中心C方向に凹みベーン30を収容するベーン溝23が、周方向に等間隔に(放射状に)複数(本実施の形態においては10個)形成されている。また、ロータ20の外周部には、曲面部22から回転中心C側に凹んだ第1凹部の一例としてのロータ凹部24が形成されている。
【0013】
曲面部22は、隣り合う2つのベーン溝23間に形成されている。
ベーン溝23は、ロータ20の外周面及び回転軸10の回転軸方向の両端面にそれぞれ開口する溝である。ベーン溝23は、回転軸方向に見た場合には、図5に示すように、外周部側が、回転半径方向が長手方向となる長方形であるとともに、回転中心C側が、この長方形の短手方向の長さよりも大きな直径の円形状である。つまり、ベーン溝23は、外周部側に直方体状に形成された直方体状溝231と、回転中心C側に円柱状に形成された中心側空間の一例としての円柱状溝232とを有している。
【0014】
ロータ凹部24は、回転軸方向の両端部それぞれに形成されている。また、ロータ凹部24は、曲面部22における周方向の中央部に形成されている。ロータ凹部24は、回転軸方向の形状としては、回転軸方向の中央部側から端部に行くに従って徐々に回転中心C側に向かう面取り形状である。
【0015】
<ベーン30の構成>
ベーン30は、直方体状の部材であり、ロータ20のベーン溝23それぞれに1枚ずつ組み込まれている。ベーン30は、回転半径方向の長さがベーン溝23の回転半径方向の長さよりも小さく、幅がベーン溝23の幅よりも小さい。そして、ベーン30は、回転半径方向に移動可能にベーン溝23に保持される。
【0016】
<カムリング40の構成>
カムリング40は、概形が筒状の部材であり、カムリング外周面41と、カムリング内周面42と、回転軸方向におけるインナプレート50側の端面であるインナ端面43と、回転軸方向におけるアウタプレート60側の端面であるアウタ端面44とを有している。
カムリング外周面41は、回転軸方向に見た場合に、図5に示すように回転中心Cからの距離が全周(ただし一部を除く)に渡って略等しい略円形状である。
【0017】
図6は、カムリング40のカムリング内周面42における回転角度毎の回転中心Cからの距離Lを示す図である。
カムリング40のカムリング内周面42は、回転軸方向に見た場合に、図6に示すように、回転角度毎の回転中心C(図5参照)からの距離L(言い換えればベーン30のベーン溝23からの突出量)に2つの凸部が存在するように形成されている。つまり、回転中心Cからの距離Lが、図5に示した一方方向に見た図における正の垂直軸を零度とした場合に、反時計回転方向に約20度から約90度にかけて徐々に大きくなるとともに約160度にかけて徐々に小さくなることで1つ目の凸部42aを形成し、約200度から約270度にかけて徐々に大きくなるとともに約340度にかけて徐々に小さくなることで2つ目の凸部42bを形成するように設定されている。本実施の形態に係るカムリング40においては、2つの凸部の大きさは同じである。
【0018】
カムリング40には、図5に示すように、インナ端面43から凹んだ複数の凹部であるインナ凹部430と、アウタ端面44から凹んだ複数の凹部であるアウタ凹部440とが形成されている。
インナ凹部430は、図5に示すように、第1吸入ポート2を構成する第1吸入凹部431と、第2吸入ポート3を構成する第2吸入凹部432と、第1吐出ポート4を構成する第1吐出凹部433と、第2吐出ポート5を構成する第2吐出凹部434とを有している。回転軸方向に見た場合には、第1吸入凹部431と第2吸入凹部432とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されており、第1吐出凹部433と第2吐出凹部434とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。また、第1吸入凹部431及び第2吸入凹部432は、回転半径方向にはインナ端面43の全域に渡って凹んでおり、周方向には所定角度だけインナ端面43から凹んでいる。第1吐出凹部433及び第2吐出凹部434は、回転半径方向には、カムリング内周面42から、カムリング外周面41に至るまでの所定範囲だけインナ端面43から凹んでおり、周方向には所定角度だけインナ端面43から凹んでいる。
【0019】
アウタ凹部440は、図5に示した他方方向に見た図に示すように、第1吸入ポート2を構成する第1吸入凹部441と、第2吸入ポート3を構成する第2吸入凹部442と、第1吐出ポート4を構成する第1吐出凹部443と、第2吐出ポート5を構成する第2吐出凹部444とを有している。回転軸方向に見た場合には、第1吸入凹部441と第2吸入凹部442とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されており、第1吐出凹部443と第2吐出凹部444とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。また、第1吸入凹部441及び第2吸入凹部442は、回転半径方向にはアウタ端面44の全域に渡って凹んでおり、周方向には所定角度だけアウタ端面44から凹んでいる。第1吐出凹部443及び第2吐出凹部444は、回転半径方向には、カムリング内周面42から、カムリング外周面41に至るまでの所定範囲だけアウタ端面44から凹んでおり、周方向には所定角度だけアウタ端面44から凹んでいる。
【0020】
また、回転軸方向に見た場合には、第1吸入凹部431と第1吸入凹部441とは、同じ位置に設けられ、第2吸入凹部432と第2吸入凹部442とは、同じ位置に設けられている。第2吸入凹部432及び第2吸入凹部442は、図5に示した一方方向に見た図における正の垂直軸を零度とした場合に、反時計回転方向に約20度から約90度にかけて設けられており、第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441は、約200度から約270度にかけて設けられている。
また、回転軸方向に見た場合には、第1吐出凹部433と第1吐出凹部443とは、同じ位置に設けられ、第2吐出凹部434と第2吐出凹部444とは、同じ位置に設けられている。第2吐出凹部434及び第2吐出凹部444は、図5に示した一方方向に見た図における正の垂直軸を零度とした場合に、反時計回転方向に約130度から約175度にかけて設けられており、第1吐出凹部433及び第1吐出凹部443は、約310度から約355度にかけて設けられている。
また、カムリング40には、第1吐出凹部433と第1吐出凹部443とを連通するように回転軸方向に貫通する孔である第1吐出貫通孔45が2つ形成されている。また、カムリング40には、第2吐出凹部434と第2吐出凹部444とを連通するように回転軸方向に貫通する孔である第2吐出貫通孔46が2つ形成されている。
【0021】
また、カムリング40には、第1吸入凹部431と第2吐出凹部434との間のインナ端面43と、第1吸入凹部441と第2吐出凹部444との間のアウタ端面44とを連通するように回転軸方向に貫通する孔である第1貫通孔47が形成されている。また、カムリング40には、第2吸入凹部432と第1吐出凹部433との間のインナ端面43と、第2吸入凹部442と第1吐出凹部443との間のアウタ端面44とを連通するように回転軸方向に貫通する孔である第2貫通孔48が形成されている。
【0022】
<インナプレート50の構成>
図7は、インナプレート50を回転軸方向の一方方向、及び、他方方向に見た図である。
インナプレート50は、概形が中央部に貫通孔が形成された円板状の部材であり、インナ外周面51と、インナ内周面52と、回転軸方向におけるカムリング40側の端面であるインナカムリング側端面53と、回転軸方向におけるカムリング40側とは反対側の端面であるインナ非カムリング側端面54とを有している。
インナ外周面51は、回転軸方向に見た場合には、図7に示すように円形状であり、回転中心Cからの距離は、カムリング40のカムリング外周面41における回転中心Cからの距離と略同じである。
インナ内周面52は、回転軸方向に見た場合には、図7に示すように円形状であり、回転中心Cからの距離は、ロータ20の内周面に形成されたスプライン21(図5参照)の溝底までの距離と略同じである。
【0023】
インナプレート50には、インナカムリング側端面53から凹んだ複数の凹部で構成されるインナカムリング側凹部530と、インナ非カムリング側端面54から凹んだ複数の凹部で構成されるインナ非カムリング側凹部540とが形成されている。
【0024】
インナカムリング側凹部530は、カムリング40の第1吸入凹部431に対向する位置に形成されて第1吸入ポート2を構成する第1吸入凹部531と、カムリング40の第2吸入凹部432に対向する位置に形成されて第2吸入ポート3を構成する第2吸入凹部532とを有している。第1吸入凹部531と第2吸入凹部532とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。
第1吸入凹部531は、第1吸入ポート2の回転中心C側の部位を構成する第1吸入内側部538を有している。第2吸入凹部532は、第2吸入ポート3の回転中心C側の部位を構成する第2吸入内側部539を有している。これら第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539については後で詳述する。
【0025】
また、インナカムリング側凹部530は、カムリング40の第2吐出凹部434に対向する位置に形成された第2吐出凹部533を有している。
また、インナカムリング側凹部530は、周方向には第2吸入凹部532から第2吐出凹部533に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置にインナ第2凹部534を有している。
また、インナカムリング側凹部530は、周方向には第1吐出凹部433に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置にインナ第1凹部535を有している。
また、インナカムリング側凹部530は、カムリング40の第1貫通孔47に対向する位置に形成された第1凹部536と、第2貫通孔48に対向する位置に形成された第2凹部537とを有している。
【0026】
インナ非カムリング側凹部540は、外周部に形成されて外周側Oリング57(図3参照)が嵌め込まれる溝である外周側溝541と、内周部に形成されて内周側Oリング58(図3参照)が嵌め込まれる溝である内周側溝542とを有している。外周側Oリング57及び内周側Oリング58は、インナプレート50とケース110との間の隙間をシールする。
【0027】
また、インナプレート50には、カムリング40の第1吐出凹部443に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔である第1吐出貫通孔55が形成されている。第1吐出貫通孔55におけるカムリング40側の開口部と第2吐出凹部533の開口部とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。
また、インナプレート50には、周方向には第1吸入凹部531に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔であるインナ第1貫通孔56が形成されている。
【0028】
<アウタプレート60の構成>
図8は、アウタプレート60を回転軸方向の他方方向、及び、一方方向に見た図である。
アウタプレート60は、概形が中央部に貫通孔が形成された板状の部材であり、アウタ外周面61と、アウタ内周面62と、回転軸方向におけるカムリング40側の端面であるアウタカムリング側端面63と、回転軸方向におけるカムリング40側とは反対側の端面であるアウタ非カムリング側端面64とを有している。
アウタ外周面61は、回転軸方向に見た場合には、図8に示すように、ベースの円形状から2箇所が切り欠かれた形状である。ベースの円形状の回転中心Cからの距離は、カムリング40のカムリング外周面41における回転中心Cからの距離と略同じである。2箇所の切り欠きは、第1吸入凹部441に対向する位置に形成されて第1吸入ポート2を構成する第1吸入切り欠き部611と、第2吸入凹部442に対向する位置に形成されて第2吸入ポート3を構成する第2吸入切り欠き部612とを有している。アウタ外周面61は、回転中心Cに対して点対称となるように形成されており、第1吸入切り欠き部611と第2吸入切り欠き部612とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。
第1吸入切り欠き部611は、第1吸入ポート2の回転中心C側の部位を構成する第1吸入内側部613を有している。第2吸入切り欠き部612は、第2吸入ポート3の回転中心C側の部位を構成する第2吸入内側部614を有している。これら第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614については後で詳述する。
アウタ内周面62は、回転軸方向に見た場合には、図8に示すように円形状であり、回転中心Cからの距離は、ロータ20の内周面に形成されたスプライン21の溝底までの距離と略同じである。
【0029】
アウタプレート60には、アウタカムリング側端面63から凹んだ複数の凹部で構成されるアウタカムリング側凹部630が形成されている。
アウタカムリング側凹部630は、カムリング40の第1吐出凹部443に対向する位置に形成された第1吐出凹部631を有している。
また、アウタカムリング側凹部630は、周方向には第1吸入切り欠き部611から第1吐出凹部631に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置にアウタ第1凹部632を有している。
また、アウタカムリング側凹部630は、周方向にはカムリング40の第2吐出凹部444に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置にアウタ第2凹部633を有している。
また、アウタカムリング側凹部630は、回転軸方向に平行であり、アウタ外周面61に直交する面で切断した断面がV字状であり、回転方向の上流側から下流側に行くに従って凹み深さが大きくなる第1V溝634を有している。第1V溝634における下流側の端部は、第1吐出凹部631における上流側の端部に接続している。
また、アウタカムリング側凹部630は、回転軸方向に平行であり、アウタ外周面61に直交する面で切断した断面がV字状であり、回転方向の上流側から下流側に行くに従って凹み深さが大きくなる第2V溝635を有している。第2V溝635における下流側の端部は、第2吐出貫通孔65における上流側の端部に接続している。
【0030】
また、アウタプレート60には、カムリング40の第2吐出凹部444に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔である第2吐出貫通孔65が形成されている。第2吐出貫通孔65におけるカムリング40側の開口部と第1吐出凹部631の開口部とは、回転中心Cに対して点対称となるように形成されている。
また、アウタプレート60には、周方向には第2吸入切り欠き部612に対応する位置であって、回転半径方向にはロータ20のベーン溝23の円柱状溝232に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔であるアウタ第2貫通孔66が形成されている。
また、アウタプレート60には、カムリング40の第1貫通孔47に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔である第1貫通孔67が、カムリング40の第2貫通孔48に対向する位置に、回転軸方向に貫通する孔である第2貫通孔68が形成されている。
【0031】
<ハウジング100の構成>
ハウジング100は、ロータ20、ベーン30、カムリング40、インナプレート50及びアウタプレート60を収容する。また、ハウジング100は、回転軸10の一方の端部を内部に収容し、他方の端部を突出させる。
ケース110とカバー120とはボルトにて締め付けられている。
【0032】
(ケース110の構成)
図9は、ケース110を回転軸方向の一方方向に見た図である。
ケース110は、有底筒状の部材であり、底部の中央部には回転軸10の一方の端部を回転可能に支持するケース側軸受け111を有している。
また、ケース110は、インナプレート50が嵌め込まれるインナプレート嵌合部112を有している。インナプレート嵌合部112は、回転中心Cから近い位置(内径側)にある内径側嵌合部113と、回転中心Cから遠い位置(外径側)にある外径側嵌合部114とを有している。
【0033】
内径側嵌合部113は、図3に示すように、ケース側軸受け111の外径側に設けられており、インナプレート50のインナ内周面52の一部の周囲を覆う内径側覆い部113aと、インナプレート50が底部側へ移動するのを抑制する内径側抑制部113bとを有している。内径側覆い部113aは、回転軸方向に見た場合に、回転中心Cからの距離が、インナ内周面52における回転中心Cからの距離よりも小さな円形状である。内径側抑制部113bは、回転軸方向に直交するドーナツ状の面であり、内側の円における回転中心Cからの距離は内径側覆い部113aにおける回転中心Cからの距離と同じであり、外側の円における回転中心Cからの距離はインナ内周面52における回転中心Cからの距離よりも小さい。
【0034】
外径側嵌合部114は、図3に示すように、インナプレート50のインナ外周面51の一部の周囲を覆う外径側覆い部114aと、インナプレート50が底部側へ移動するのを抑制する外径側抑制部114bとを有している。外径側覆い部114aは、回転軸方向に見た場合に、回転中心Cからの距離が、インナ外周面51における回転中心Cからの距離よりも大きな円形状である。外径側抑制部114bは、回転軸方向に直交するドーナツ状の面であり、外側の円における回転中心Cからの距離は外径側覆い部114aにおける回転中心Cからの距離と同じであり、内側の円における回転中心Cからの距離はインナ外周面51における回転中心Cからの距離よりも小さい。
【0035】
インナプレート50は、インナプレート50の内周側溝542に嵌め込まれた内周側Oリング58が内径側抑制部113bに突き当たるとともに、外周側溝541に嵌め込まれた外周側Oリング57が外径側抑制部114bに突き当たるまで底部側に挿入されている。そして、内周側Oリング58が、インナプレート50の内周側溝542、ケース110の内径側覆い部113a及び内径側抑制部113bに接触するとともに、外周側Oリング57が、インナプレート50の外周側溝541、ケース110の外径側覆い部114a及び外径側抑制部114bに接触することで、ケース110とインナプレート50とがシールされる。これにより、ケース110におけるインナプレート嵌合部112よりも開口部側の空間S1と、インナプレート嵌合部112よりも底部側の空間S2とが区画される。インナプレート嵌合部112よりも開口部側の空間S1は、第1吸入ポート2及び第2吸入ポート3から吸入されるオイルが流通する吸入流路R1を構成する。インナプレート嵌合部112よりも底部側の空間S2は、第1吐出ポート4から吐出されたオイルが流通する第1吐出流路R2を構成する。
【0036】
また、ケース110には、ロータ20、ベーン30、カムリング40、インナプレート50及びアウタプレート60を収容する収容空間とは別に、この収容空間よりも回転半径方向の外側において開口部側から回転軸方向に凹んだケース外側凹部115が形成されている。ケース外側凹部115は、カバー120に形成された後述するカバー外側凹部123に対向し、第2吐出ポート5から吐出されたオイルが流通するケース第2吐出流路R3を構成する。
【0037】
また、ケース110には、図1に示すように、インナプレート嵌合部112よりも開口部側の空間S1とケース110の外部とを連通する吸入口116が形成されている。吸入口116は、ケース110の側壁に形成された円柱状の孔であって回転軸方向に直交する方向を柱方向とする孔を含んで構成される。吸入口116は、第1吸入ポート2及び第2吸入ポート3から吸入されるオイルが流通する吸入流路R1を構成する。
【0038】
また、ケース110には、図1に示すように、インナプレート嵌合部112よりも底部側の空間S2とケース110の外部とを連通する第1吐出口117が形成されている。第1吐出口117は、ケース110の側壁に形成された円柱状の孔であって回転軸方向に直交する方向を柱方向とする孔を含んで構成される。第1吐出口117は、第1吐出ポート4から吐出されたオイルが流通する第1吐出流路R2を構成する。
【0039】
また、ケース110には、図1に示すように、ケース外側凹部115とケース110の外部とを連通する第2吐出口118が形成されている。第2吐出口118は、ケース110におけるケース外側凹部115の側壁に形成された円柱状の孔であって回転軸方向に直交する方向を柱方向とする孔を含んで構成される。第2吐出口118は、第2吐出ポート5から吐出されたオイルが流通するケース第2吐出流路R3を構成する。
【0040】
(カバー120の構成)
図2に示すように、カバー120は、中央部に回転軸10を回転可能に支持するカバー側軸受け121を有している。
カバー120には、アウタプレート60の第2吐出貫通孔65及びアウタ第2貫通孔66に対向する位置に、ケース110側の端面から回転軸方向に凹んだカバー第2吐出凹部122が形成されている。
【0041】
また、カバー120には、カバー第2吐出凹部122よりも回転半径方向の外側においてケース110側の端面から回転軸方向に凹んだカバー外側凹部123と、カバー第2吐出凹部122とカバー外側凹部123とをケース110側の端面よりも回転軸方向の他方方向において接続するカバー凹部接続部124とが形成されている。カバー外側凹部123は、ケース110に形成された上述した収容空間と対向しない位置で開口するように形成されており、ケース外側凹部115と対向する。カバー第2吐出凹部122、カバー凹部接続部124及びカバー外側凹部123は、第2吐出ポート5から吐出されたオイルが流通するカバー第2吐出流路R4(図4参照)を構成する。第2吐出ポート5から吐出されたオイルは、カバー凹部接続部124を介してケース第2吐出流路R3に流入するとともに、カバー第2吐出凹部122を介してアウタ第2貫通孔66に流入する。
【0042】
また、カバー120には、アウタプレート60の第1吸入切り欠き部611及び第2吸入切り欠き部612に対向する部位、及び、ケース110のインナプレート嵌合部112よりも開口部側の空間S1であってカムリング40のカムリング外周面41よりも回転半径方向の外側の空間に対向する部位に、ケース110側の端面から回転軸方向に凹んだカバー吸入凹部125が形成されている。
カバー吸入凹部125は、吸入口116から吸入され、第1吸入ポート2及び第2吸入ポート3からポンプ室内に吸入されるオイルが流通する吸入流路R1を構成する。
【0043】
また、カバー120には、アウタプレート60の第1貫通孔67、第2貫通孔68それぞれに対向する位置に、ケース110側の端面から回転軸方向に凹んだ第1カバー凹部127、第2カバー凹部128が形成されている。
【0044】
<ベーンポンプ1の作用>
本実施の形態に係るベーンポンプ1は、10枚のベーン30を有し、10枚のベーン30がカムリング40のカムリング内周面42に接触することで、隣接する2枚のベーン30、これら隣接する2枚のベーン30間のロータ20の外周面、これら隣接する2枚のベーン30間のカムリング内周面42、インナプレート50のインナカムリング側端面53及びアウタプレート60のアウタカムリング側端面63とで形成されるポンプ室を10個備えている。1個のポンプ室に着目すると、回転軸10が1回転してロータ20が1回転することにより当該ポンプ室は回転軸10の周囲を1回転する。当該ポンプ室が1回転する過程で、第1吸入ポート2から吸入したオイルを圧縮して圧力を高めて第1吐出ポート4から吐出するとともに、第2吸入ポート3から吸入したオイルを圧縮して圧力を高めて第2吐出ポート5から吐出する。
【0045】
<吸入内側部の形状について>
図10は、カムリング40及びインナプレート50を他方方向に見た図である。ただし、図10においては、インナプレート50の図として第1吸入内側部538を主に示している。
図11は、図10のXI-XI部の断面図である。
図12は、ロータ20、複数のベーン30、カムリング40及びアウタプレート60の斜視図である。
【0046】
インナプレート50の第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539、アウタプレート60の第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614は、略同一形状であるので、以下説明において、これらをまとめて「吸入内側部710」と称する場合がある。また、以下の説明において、第1吸入ポート2と第2吸入ポート3とを区別する必要がない場合には、第1吸入ポート2と第2吸入ポート3とをまとめて「吸入ポート」と称する場合がある。
【0047】
吸入内側部710は、ロータ20の曲面部22の形状に沿う吸入内側本体部711と、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ第2凹部の一例としての吸入内側凹部712とを有している。また、吸入内側部710は、吸入内側本体部711と吸入内側凹部712との間の部位である吸入内側中間部713を有している。
吸入内側本体部711は、回転中心Cを中心とする円弧状であり、回転中心Cからの距離が、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一である。
【0048】
吸入内側凹部712は、吸入ポートの上流側の端部(上流端)に接続するように形成されている。ここで、吸入ポートの上流側の端部(上流端)となる回転角度は、第1吸入ポート2で言えば、第1吸入ポート2を構成するカムリング40に形成された第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441、インナプレート50に形成された第1吸入凹部531、及び、アウタプレート60に形成された第1吸入切り欠き部611の上流端の回転角度が全て同一であるため、これらの部位の上流端の回転角度となる。つまり、第1吸入凹部531における吸入内側凹部712は、インナプレート50に形成された第1吸入凹部531の上流端に接続するように形成されている。
吸入内側凹部712における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離である。
【0049】
吸入内側中間部713は、カムリング40の内周面の形状に沿う形状である。つまり、吸入内側中間部713における、回転角度毎の回転中心Cからの距離は、カムリング40のカムリング内周面42における回転角度毎の回転中心Cからの距離Lから所定距離の分、短い。
吸入内側凹部712と吸入ポートの上流端とは、所定の半径の曲面にて接続され、吸入内側本体部711と吸入内側中間部713とは、所定の半径の曲面にて接続されている。また、吸入内側本体部711と吸入ポートの下流端とは、所定の半径の曲面にて接続されている。
【0050】
以下に、本実施の形態に係るベーンポンプ1の利点について、比較構成と比較しながら説明する。
比較構成に係るベーンポンプとして、本実施の形態に係るベーンポンプ1に対して、回転軸方向の全体に亘って曲面部22から回転中心C側に凹んだ凹部が形成されている構成を考える。
本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、隣り合う2つのベーン溝23間に形成されている曲面部22は、回転中心Cを中心とする円弧状であるので、比較構成に係るベーンポンプと比べてポンプ室の容積は小さい。比較構成に係るベーンポンプは、本実施の形態に係るベーンポンプ1に対して、回転軸方向の全体に亘って曲面部22から回転中心C側に凹んだ凹部の分、ポンプ室の容積が大きい。
【0051】
それゆえ、本実施の形態に係るベーンポンプ1のポンプ室に吸入されるオイル量は、比較構成に係るベーンポンプのポンプ室に吸入されるオイル量よりも少ない。その結果、本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、ポンプ室に吸入するオイルに含まれる気泡(エア)の絶対量が比較構成に係るベーンポンプのポンプ室に吸入する気泡よりも少なくなる。ポンプ室に多くの気泡が吸入されると、その後の行程において気泡が潰される際に音が発生する。また、ポンプ室に吸入された気泡が、分裂する際や、分裂した気泡がカムリング40の内周面等にぶつかる際に、音が発生する。また、ポンプ室に吸入された気泡の分、ポンプ室の容積に比べて、ポンプ室に吸入可能な、気泡以外のオイルの量が減少するので、ポンプ室に多くの気泡が吸入されると、吸入吐出効率の低下してしまったり、吐出圧力がぶれてしまったりしてしまう。本実施の形態に係るベーンポンプ1によれば、比較構成に係るベーンポンプに比べて、ポンプ室に吸入する気泡の絶対量を低減することができるので、吸入吐出効率の低下、吐出圧力のぶれ、騒音の発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、ロータ20における回転軸方向の両端部に、曲面部22から回転中心C側に凹んだロータ凹部24が形成されている。ロータ凹部24が形成されていることにより、ロータ凹部24が形成されていない構成よりも、ポンプ室にオイルを吸入し易くなる。そのため、ロータ凹部24が形成されていない構成よりも、ポンプ室に吸入するオイル量を多くすることができるので、吸入効率を高めることができる。その結果、ロータ20の外周部の形状を、回転中心Cを中心とする円弧状の曲面部22としたことに起因して、ポンプ室に吸入可能なオイル量が減少し過ぎることを抑制することができる。
【0053】
また、ロータ20に形成されたロータ凹部24は、吸入ポートを構成する、カムリング40の第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441と対向する部位、すなわち、第1吸入凹部431、第1吸入凹部441それぞれが形成された、回転軸方向の端部に形成されている。それゆえ、ロータ凹部24が、例えばカムリング40の第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441と対向していない、回転軸方向の中央部に形成されている場合に比べて、ポンプ室に吸入するオイル量が多くなる。
また、ロータ凹部24における回転軸方向の大きさは、カムリング40の第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441における回転軸方向の大きさよりも小さい。これにより、ポンプ室に吸入するエアの絶対量を低減しつつ、ロータ20の外周部の形状を、回転中心Cを中心とする円弧状の曲面部22としたことに起因して吸入効率が低下し過ぎることを抑制することができる。
【0054】
また、本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、ロータ20に形成されたロータ凹部24は、周方向には、ロータ20の曲面部22の中央部に形成されており、ベーン溝23の周囲には形成されていない。それゆえ、ロータ20の、ベーン30を支持する部位の面積は、ベーン溝23の周囲にもロータ凹部24を形成する構成に比べて大きくなる。その結果、たとえ、ベーン溝23の円柱状溝232に流入した高圧オイルによりベーン30が押されたとしても、ベーン30をロータ20にて広範囲に亘って支持するので、ベーン30の倒れを抑制することができる。
【0055】
また、本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、吸入ポートの吸入内側部710(インナプレート50の第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539、アウタプレート60の第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614)には、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吸入内側凹部712が形成されている。この形状により、例えば吸入内側部710の吸入内側本体部711が吸入内側部710の周方向の全体に亘って形成され、吸入内側凹部712が形成されていない構成と比べて、吸入ポートの開口面積が大きくなる。その結果、本実施の形態に係るベーンポンプ1によれば、吸入内側凹部712が形成されていない吸入内側部710を有するベーンポンプと比べて、吸入効率を高めることができる。
【0056】
また、本実施の形態に係るベーンポンプ1においては、吸入内側凹部712は、吸入ポートの上流端に接続するように形成されている。それゆえ、ポンプ室における吸入行程初期の、容積が大きくなり始めたときに吸入ポートの開口面積を大きくすることができる。その結果、本実施の形態に係るベーンポンプ1によれば、オイルの吸入量を多くすることができるので、吸入効率を高めることができる。
また、ロータ20に形成されたベーン溝23からのベーン30の突出量が大きい吸入ポートの下流端においては、回転中心Cからの距離がロータ20の曲面部22までの距離と同一である吸入内側本体部711がベーン30の端部を支持するので、ベーン30の倒れを抑制することができる。
【0057】
<第2の実施形態>
図13は、第2の実施形態に係るベーンポンプ702の吸入内側部720の概略構成を示す図である。
第2の実施形態に係るベーンポンプ702は、第1の実施形態に係るベーンポンプ1に対して、第1の実施形態に係るベーンポンプ1の吸入内側部710に相当する吸入内側部720を有している点が異なる。以下、第1の実施形態に係るベーンポンプ1と異なる点について説明する。第2の実施形態に係るベーンポンプ702と第1の実施形態に係るベーンポンプ1とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
吸入内側部720は、ロータ20の曲面部22の形状に沿う吸入内側本体部721と、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吸入内側凹部722とを有している。また、吸入内側部720は、吸入内側本体部721と吸入内側凹部722との間の部位である吸入内側中間部723を有している。
吸入内側凹部722は、吸入ポートの下流側の端部(下流端)に接続するように形成されている。ここで、吸入ポートの下流側の端部(下流端)となる回転角度は、第1吸入ポート2で言えば、第1吸入ポート2を構成するカムリング40に形成された第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441、インナプレート50に形成された第1吸入凹部531、及び、アウタプレート60に形成された第1吸入切り欠き部611の下流端の回転角度が全て同一であるため、これらの部位の下流端の回転角度となる。つまり、第1吸入凹部531における吸入内側凹部722は、インナプレート50に形成された第1吸入凹部531の下流端に接続するように形成されている。
吸入内側凹部722における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離である。
【0059】
吸入内側中間部723は、吸入内側本体部721における、吸入内側部720の上流端と下流端との間の中央部724と、吸入内側凹部722とを接続するように形成されている。
吸入内側凹部722と吸入ポートの下流端とは、所定の半径の曲面にて接続され、吸入内側本体部721と吸入内側中間部723とは、所定の半径の曲面にて接続されている。また、吸入内側本体部721と吸入ポートの上流端とは、所定の半径の曲面にて接続されている。
【0060】
第2の実施形態に係るベーンポンプ702においては、吸入ポートの吸入内側部720(インナプレート50の第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539、アウタプレート60の第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614)には、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吸入内側凹部722が形成されている。この形状により、例えば吸入内側部720の吸入内側本体部721が吸入内側部720の周方向の全体に亘って形成され、吸入内側凹部722が形成されていない構成と比べて、吸入ポートの開口面積が大きくなる。その結果、第2の実施形態に係るベーンポンプ702によれば、吸入内側凹部722が形成されていないベーンポンプと比べて、吸入効率を高めることができる。
【0061】
また、第2の実施形態に係るベーンポンプ702においては、吸入内側凹部722は、吸入ポートの下流端に接続するように形成されている。それゆえ、ポンプ室の容積が略最大となるときに吸入ポートの開口面積を大きくすることができる。その結果、第2の実施形態に係るベーンポンプ702によれば、オイルの吸入量を多くすることができるので、吸入効率を高めることができる。
【0062】
<第3の実施形態>
図14は、第3の実施形態に係るベーンポンプ703の吸入内側部730の概略構成を示す図である。
第3の実施形態に係るベーンポンプ703は、第1の実施形態に係るベーンポンプ1に対して、第1の実施形態に係るベーンポンプ1の吸入内側部710に相当する吸入内側部730を有している点が異なる。以下、第1の実施形態に係るベーンポンプ1と異なる点について説明する。第3の実施形態に係るベーンポンプ703と第1の実施形態に係るベーンポンプ1とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
第3の実施形態に係る吸入内側部730は、吸入内側部730の上流端と下流端との間の中央部において、最も回転中心C側に凹む吸入内側凹部732が形成されている点が、第1の実施形態に係る吸入内側部710及び第2の実施形態に係る吸入内側部720と異なる。吸入内側凹部732における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離である。
【0064】
また、吸入内側部730は、吸入内側部730の上流端における、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一距離の部位である上流点734と、吸入内側凹部732とを接続する上流側接続部735を有している。また、吸入内側部730は、吸入内側部730の下流端における、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一距離の部位である下流点736と、吸入内側凹部732とを接続する下流側接続部737を有している。
上流側接続部735と吸入ポートの上流端とは、所定の半径の曲面にて接続され、下流側接続部737と吸入ポートの下流端とは、所定の半径の曲面にて接続されている。
【0065】
第3の実施形態に係るベーンポンプ703においては、吸入ポートの吸入内側部730(インナプレート50の第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539、アウタプレート60の第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614)には、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吸入内側凹部732が形成されている。この形状により、例えば吸入内側部730の周方向の全体が、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一距離に形成されている構成と比べて、吸入ポートの開口面積が大きくなる。その結果、第3の実施形態に係るベーンポンプ703によれば、吸入内側凹部732が形成されていないベーンポンプと比べて、吸入効率を高めることができる。
【0066】
また、第3の実施形態に係るベーンポンプ703においては、吸入内側凹部732は、吸入ポートの吸入内側部730における周方向の中央部に形成されている。それゆえ、ポンプ室の容積が大きくなり始めた後、ロータ20が略7度~略45度回転したときの吸入ポートの開口面積を大きくすることができる。これにより、ポンプ室の容積が大きくなり始めた後、例えば略5度、ロータ20が回転した後ではないとオイルを吸入し始めないロータ20の回転速度が大きい領域において、吸入開始直後の吸入ポートの開口面積を大きくすることができるので、吸入効率を高めることができる。
また、ロータ20に形成されたベーン溝23からのベーン30の突出量が大きい吸入ポートの下流端においては、上流端側から下流端にかけて徐々に回転中心Cからの距離が大きくなっているので、ベーン30の端部を支持し易くなり、ベーン30の倒れを抑制することができる。
【0067】
<第4の実施形態>
図15は、第4の実施形態に係るベーンポンプ704の吸入内側部740の概略構成を示す図である。
第4の実施形態に係るベーンポンプ704は、第1の実施形態に係るベーンポンプ1に対して、第1の実施形態に係るベーンポンプ1の吸入内側部710に相当する吸入内側部740を有している点が異なる。以下、第1の実施形態に係るベーンポンプ1と異なる点について説明する。第4の実施形態に係るベーンポンプ704と第1の実施形態に係るベーンポンプ1とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
第4の実施形態に係る吸入内側部740は、第1の実施形態に係る吸入内側部710の吸入内側凹部712に相当する部位が、吸入ポートの回転中心C側の部位を構成する部位の全域に亘って形成されている点が第1の実施形態に係る吸入内側部710と異なる。つまり、第4の実施形態に係る吸入内側部740においては、吸入内側本体部711と吸入内側中間部713とに相当する部位が設けられていない。
【0069】
つまり、第4の実施形態に係る吸入内側部740は、回転中心Cを中心とする円弧状であり、回転中心Cからの距離が、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24の最小径までの距離と同一である吸入内側凹部742を有している。そして、吸入内側凹部742は、吸入ポートの上流端から下流端にかけて周方向の全域に亘って形成されている。
吸入内側凹部742と吸入ポートの上流端とは、所定の半径の曲面にて接続され、吸入内側凹部742と吸入ポートの下流端とは、所定の半径の曲面にて接続されている。
【0070】
第4の実施形態に係るベーンポンプ704においては、吸入ポートの吸入内側部740(インナプレート50の第1吸入内側部538及び第2吸入内側部539、アウタプレート60の第1吸入内側部613及び第2吸入内側部614)には、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吸入内側凹部742が形成されている。この形状により、例えば吸入内側部740の周方向の全体が、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一距離に形成されている構成と比べて、吸入ポートの開口面積が大きくなる。その結果、第4の実施形態に係るベーンポンプ704によれば、吸入内側凹部742が形成されていないベーンポンプと比べて、吸入効率を高めることができる。
【0071】
また、第4の実施形態に係るベーンポンプ704においては、吸入内側凹部742は、吸入ポートの上流端から下流端にかけて周方向の全域に亘って形成されている。それゆえ、例えば、吸入内側凹部742が周方向の一部に形成されている構成と比べて、吸入ポートの開口面積を大きくすることができるので、吸入効率を高めることができる。
【0072】
なお、上述した第1の実施形態~第4の実施形態においては、吸入内側部(例えば吸入内側部710)の吸入内側凹部(例えば吸入内側凹部722)における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離であるが特にかかる態様に限定されない。吸入内側凹部における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24よりも回転中心C側に凹んでいても良い。これにより、吸入ポートの開口面積がより大きくなるので、吸入効率が向上する。
【0073】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係るベーンポンプ705は、上述した第1の実施形態~第4の実施形態に係るベーンポンプに対して、インナプレート50及びアウタプレート60における、第1吐出ポート4又は第2吐出ポート5を構成する部位が、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んでいる点が異なる。以下、第1の実施形態~第4の実施形態に係るベーンポンプと異なる点について説明する。第5の実施形態に係るベーンポンプ705と第1の実施形態~第4の実施形態に係るベーンポンプとで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
図16は、第5の実施形態に係るインナプレート850を回転軸方向の一方方向、及び、他方方向に見た図である。
第5の実施形態に係るインナプレート850の第1吐出貫通孔855は、第1吐出ポート4の回転中心C側の部位を構成する第1吐出内側部858を有している。また、インナプレート850の第2吐出凹部853は、第2吐出ポート5の回転中心C側の部位を構成する第2吐出内側部859を有している。
【0075】
図17は、第5の実施形態に係るアウタプレート860を回転軸方向の他方方向、及び、一方方向に見た図である。
第5の実施形態に係るアウタプレート860の第1吐出凹部863は、第1吐出ポート4の回転中心C側の部位を構成する第1吐出内側部868を有している。また、アウタプレート860の第2吐出貫通孔865は、第2吐出ポート5の回転中心C側の部位を構成する第2吐出内側部869を有している。
【0076】
インナプレート850の第1吐出内側部858及び第2吐出内側部859、アウタプレート860の第1吐出内側部868及び第2吐出内側部869は、略同一形状であるので、以下説明において、これらをまとめて「吐出内側部800」と称する場合がある。また、以下の説明において、第1吐出ポート4と第2吐出ポート5とを区別する必要がない場合には、第1吐出ポート4と第2吐出ポート5とをまとめて「吐出ポート」と称する場合がある。
【0077】
図18は、カムリング40及びインナプレート850を他方方向に見た図である。
吐出内側部800は、ロータ20の曲面部22の形状に沿う吐出内側本体部801と、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ第2凹部の一例としての吐出内側凹部802とを有している。また、吐出内側部800は、吐出内側本体部801と吐出内側凹部802との間の部位である吐出内側中間部803を有している。
吐出内側本体部801は、回転中心Cを中心とする円弧状であり、回転中心Cからの距離が、回転中心Cからロータ20の曲面部22までの距離と同一である。
【0078】
吐出内側凹部802は、吐出ポートの上流側の端部(上流端)に接続するように形成されている。ここで、吐出ポートの上流側の端部(上流端)となる回転角度は、第1吐出ポート4で言えば、第1吐出ポート4を構成するカムリング40に形成された第1吐出凹部433及び第1吐出凹部443、インナプレート850に形成された第1吐出貫通孔855、及び、アウタプレート60に形成された第1吐出凹部863の上流端の回転角度が全て同一であるため、これらの部位の上流端の回転角度となる。つまり、第1吐出内側部858における吐出内側凹部802は、インナプレート50に形成された第1吐出貫通孔855の上流端に接続するように形成されている。
吐出内側凹部802における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離である。
【0079】
吐出内側中間部803は、吐出内側本体部801における、吐出内側部800の上流端と下流端との間の中央部804と、吐出内側凹部802とを接続するように形成されている。
吐出内側凹部802と吐出ポートの上流端とは、所定の半径の曲面にて接続され、吐出内側本体部801と吐出内側中間部803とは、所定の半径の曲面にて接続されている。また、吐出内側本体部801と吐出ポートの下流端とは、所定の半径の曲面にて接続されている。
【0080】
第5の実施形態に係るベーンポンプ705においては、吐出ポートの吐出内側部800(インナプレート850の第1吐出内側部858及び第2吐出内側部859、アウタプレート860の第1吐出内側部868及び第2吐出内側部869)には、ロータ20の曲面部22よりも回転中心C側に凹んだ吐出内側凹部802が形成されている。この形状により、例えば吐出内側部800の吐出内側本体部801が吐出内側部800の周方向の全体に亘って形成され、吐出内側凹部802が形成されていない構成と比べて、吐出ポートの開口面積が大きくなる。その結果、第5の実施形態に係るベーンポンプ705によれば、吐出内側凹部802が形成されていない吐出内側部800を有するベーンポンプと比べて、吐出効率を高めることができる。つまり、吐出行程初期における吐出ポートの開口面積が大きくなるので、吐出行程初期から吐出圧力を小さくすることができる。そのため、吐出ポートからポンプ室へのオイルの逆流を抑制することができ、吐出行程初期からより多くのオイルを吐出することができる。それゆえ、ポンプ室内のオイルに気泡(エア)が含まれているとしても、気泡(エア)を吐出しきることが容易になる。その結果、吐出行程後の吸入行程において、より多くのオイルを吸入することができる。
【0081】
なお、上述した第5の実施形態においては、吐出内側部800の吐出内側凹部802における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部までの距離と同一距離であるが特にかかる態様に限定されない。吐出内側凹部802における、回転中心C側に最も凹んだ部位は、回転中心Cからロータ20のロータ凹部24における回転軸方向の端部よりも回転中心C側に凹んでいても良い。これにより、吐入ポートの開口面積がより大きくなるので、吐出性能が向上する。
【0082】
<ロータ凹部24の変形例>
上述した第1の実施形態~第5の実施形態においては、ロータ凹部24における回転軸方向の大きさは、カムリング40の第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441における回転軸方向の大きさよりも小さいが、特にかかる態様に限定されない。
【0083】
図19は、ロータ20のロータ凹部24の変形例を示す図である。
図19に示すように、ロータ凹部24における回転軸方向の大きさは、カムリング40の第1吸入凹部431及び第1吸入凹部441における回転軸方向の大きさよりも大きくても良い。例えば、第1の実施形態~第5の実施形態に係るロータ凹部24に対して、ロータ20の回転軸方向の端部におけるロータ凹部24の回転中心C方向の大きさは同じで、ロータ凹部24の回転軸方向の大きさを大きくすると良い。これにより、曲面部22から回転中心C側に凹んだ容積が、第1の実施形態~第5の実施形態に係るロータ20と比べて大きくなる。その結果、ポンプ室に吸入するオイル量を多くすることができるので、ロータ20の外周部の形状を、回転中心Cを中心とする円弧状の曲面部22としたことに起因して、ポンプ室に吸入可能なオイル量が減少し過ぎることを抑制することができる。
【0084】
なお、ロータ20における回転軸方向の両端部に形成されたロータ凹部24同士を連続させても良い。つまり、両ロータ凹部24におけるロータ20の外周面(曲面部22)側の端部を同一としても良い。言い換えれば、両ロータ凹部24におけるロータ20の外周面側の端部をロータ20の回転軸方向の中央部としても良い。これにより、曲面部22から回転中心C側に凹んだ容積が最も大きくなる。
【0085】
<曲面部22の変形例>
図20は、ロータ20の曲面部22の変形例を示す図である。
上述した第1の実施形態~第5の実施形態において、ロータ20の曲面部22に、回転軸方向の両端部に形成された2つのロータ凹部24同士を連通するように、曲面部22から回転中心C側に凹んだ連通部222を形成しても良い。連通部222は、回転軸方向に延びるように形成され、曲面部22における周方向の中央部に形成されていることを例示することができる。
2つのロータ凹部24同士を連通する連通部222を設けることで、遠心力により回転中にロータ20側に集まるエアを連通部222の中に導くことができ、吐出区間において吐出ポートへのエア排出性能を向上させることができる。また、ポンプ室内からのエア排出性能を高めることができるので、圧力のぶれ、騒音の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0086】
1,702,703,704,705…ベーンポンプ、2…第1吸入ポート、3…第2吸入ポート、4…第1吐出ポート、5…第2吐出ポート、10…回転軸、20…ロータ、22…曲面部、24…ロータ凹部、30…ベーン、40…カムリング、50…インナプレート、60…アウタプレート、100…ハウジング、110…ケース、120…カバー、710,720,730,740…吸入内側部、712,722,732,742…吸入内側凹部、800…吐出内側部、802…吐出内側凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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