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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20221003BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
H01H33/59 B
H01H9/54 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020559673
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046148
(87)【国際公開番号】W WO2020121525
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度~平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業 システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和長
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187275(JP,A)
【文献】特開2015-185477(JP,A)
【文献】特開2012-190704(JP,A)
【文献】特開昭58-144508(JP,A)
【文献】特開2016-127744(JP,A)
【文献】特開昭56-126223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械遮断部、アレスタおよび転流装置を備え、
前記機械遮断部は、
第1単体遮断部および第2単体遮断部を有する少なくとも1つの機械遮断ユニットと、
前記少なくとも1つの機械遮断ユニットを支持する絶縁支柱と、
を備え、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のそれぞれは、
固定接触子および可動接触子を有し、大地から電気的に絶縁された機械接点部と、
前記機械接点部および絶縁性ガスを封入し、大地から電気的に絶縁された密閉容器と、
前記可動接触子に連結され、前記密閉容器の内部から外部に延出した操作ロッドと、
前記操作ロッドに連結され、前記可動接触子を前記固定接触子に対して接離させるとともに、前記可動接触子と同電位に設けられた操作機構と、
を有し
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部は、それぞれの前記操作ロッドが前記操作機構により同一直線上で動作し、かつ前記操作機構による前記操作ロッドの動作方向が互いに逆方向となるように配置され、かつそれぞれの前記操作機構が互いに対向するように配置され、
全ての前記機械遮断ユニットに含まれる全ての前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部は、互いに直列接続されて機械接点モジュールを形成し、
前記機械接点モジュールの両端は、直流送電系統に接続され、
前記アレスタは、前記機械接点モジュールに並列接続され、
前記転流装置は、リアクトル、コンデンサおよび投入器を直列接続して形成された転流回路を有し、
前記転流回路は、前記機械接点モジュールに並列接続され、
前記投入器は、高速投入器である、
直流遮断器。
【請求項2】
前記投入器は、固定された一対の電極間の絶縁性能を下げて絶縁破壊させることで通電開始させる放電式投入器である、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記転流装置は、前記投入器が配置される投入器支持板を備え、
前記投入器は、
前記一対の電極を収容する容器と、
前記容器内に配置されたトリガ電極と、
前記一対の電極の一方と前記トリガ電極との間にパルス電圧を印加するとともに、前記一方と同電位に設けられたパルス電源と、
を備え、
前記投入器支持板は、金属材料により形成され、前記パルス電源と同電位に設けられ、
前記容器の少なくとも一部は、水平方向で前記投入器支持板の外側に配置されている、
請求項2に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記投入器は、互いに離間した一対の接触子を電磁反発力により駆動し、接触させて通電させる機械式投入器である、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記転流装置は、前記投入器が配置される投入器支持板を備え、
前記投入器は、
前記一対の接触子を収容する容器と、
前記一対の接触子を互いに接離させるとともに、前記一対の接触子の一方と同電位に設けられた投入器用操作機構と、
を備え、
前記投入器支持板は、金属材料により形成され、前記投入器用操作機構と同電位に設けられ、
前記容器の少なくとも一部は、水平方向で前記投入器支持板の外側に配置されている、
請求項4に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記転流装置は、前記コンデンサと前記投入器との間と、大地と、を電気的に接続する抵抗器を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記転流装置は、前記コンデンサの両端に電圧を印加する直流電源を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項8】
前記機械遮断部および前記アレスタは、鉛直方向から見て第1方向に並んで配置され、
前記転流装置は、前記機械遮断部および前記アレスタに対して、鉛直方向から見て前記第1方向に直交する第2方向に並んで配置されている、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項9】
前記リアクトル、前記コンデンサおよび前記投入器は、前記第2方向における同じ位置に配置されている、
請求項8に記載の直流遮断器。
【請求項10】
前記機械遮断部は、前記操作機構に電力を供給する絶縁トランスを備え、
前記絶縁トランスは、前記少なくとも1つの機械遮断ユニットと前記転流装置との間に配置されている、
請求項8または請求項9に記載の直流遮断器。
【請求項11】
前記機械遮断部、前記アレスタおよび前記転流装置は、一直線に並んで配置されている、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの機械遮断ユニットは、前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部が配置されるとともに前記絶縁支柱に支持された機械遮断部支持板を備え、
前記機械遮断部支持板は、金属材料により形成され、前記操作機構と同電位に設けられ、
前記第1単体遮断部の前記密閉容器の少なくとも一部は、水平方向で前記機械遮断部支持板の外側に配置され、
前記第2単体遮断部の前記密閉容器の少なくとも一部は、水平方向で前記機械遮断部支持板の外側に配置されている、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項13】
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部それぞれの前記密閉容器は、前記可動接触子に導通したフランジを備え、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部それぞれの前記操作ロッドは、前記可動接触子と前記操作機構との導通を遮断するロッド絶縁部を備え、
前記少なくとも1つの機械遮断ユニットは、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部が配置されるとともに前記絶縁支柱に支持された機械遮断部支持板と、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のそれぞれの前記フランジを互いに電気的に接続する導通部材と、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のうち一方の前記フランジと前記機械遮断部支持板との間に介在し、前記一方の前記フランジと前記機械遮断部支持板との導通を遮断する絶縁部と、
を備え、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のうち他方の前記フランジと前記機械遮断部支持板とは導通している、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【請求項14】
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部それぞれの前記密閉容器は、フランジを備え、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部それぞれの前記操作ロッドは、前記可動接触子と前記操作機構との導通を遮断するロッド絶縁部を備え、
前記少なくとも1つの機械遮断ユニットは、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部が配置されるとともに前記絶縁支柱に支持された機械遮断部支持板と、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のそれぞれの前記フランジを互いに電気的に接続する導通部材と、
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部のうち一方の前記フランジと前記機械遮断部支持板との間に介在し、前記一方の前記フランジと前記機械遮断部支持板との導通を遮断する絶縁部と、
を備え
前記第1単体遮断部および前記第2単体遮断部の前記可動接触子と前記フランジと、前記操作機構と、前記機械遮断部支持板とは同電位である、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流送電は、交流送電に比べて送電効率が高い。対して設備の導入コストは直流送電の方が高コストとなる。しかし長距離送電や海中送電等では、直流送電の送電効率が圧倒的に高いため、設備コストに運用コストを加えて評価すると、直流送電の方が総合的に低コストとなる。このため、直流送電は、例えば海を挟んだ2箇所の拠点間での送電に利用されている。近年、発電電力のうち再生可能エネルギーを用いた発電電力の比率を向上させ、より大きな電力を再生可能エネルギーで賄うために、洋上風力発電や砂漠地帯での太陽光発電等を用いて、主要な電力消費地である都市部から遠く離れた場所で大規模な発電を行い、長距離送電する方法が検討されている。それに伴い、複数の電力の供給地点と需要地点とを接続した直流送電網の構築が計画されている。
【0003】
3箇所以上の拠点間を接続した送電網を構築する際には、送電網で事故が発生した場合に、事故点を健全な系統から迅速に遮断可能な装置が必要となる。一般的に、交流電流系統においては機械接点式遮断器が用いられている。機械接点式遮断器は、交流電流によって発生する電流ゼロ点において接点を開極し、絶縁性媒体を接点間のアーク電流に吹き付けることで事故電流を遮断するものである。これに対して直流送電系統においては、事故電流には電流ゼロ点が発生しないため、従来の機械接点式遮断器では事故電流を迅速に遮断するのは難しいとされている。
【0004】
そこで、単独で直流電流を遮断可能な半導体遮断器として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の、自己消弧能力をもつ複数の自励式半導体素子を用いた半導体遮断器が提案されている。しかし、送電する電力の全てが複数の自励式半導体素子を常時通過するため大きな導通損失が発生し、通常運転時の送電効率の低下を招いてしまう。
【0005】
この問題を解決するために、機械接点式断路器と補助半導体遮断器とを直列に接続した回路に、もう1つの半導体遮断器を並列に接続するハイブリッド遮断器が提案されている。このハイブリッド遮断器において、定常送電時は機械接点式断路器と補助半導体遮断器とが導通状態になっており、上記のもう1つの半導体遮断器が遮断状態になっている。よって送電電流は機械接点式断路器と補助半導体遮断器とを流れる。
【0006】
また、事故発生時においては、補助半導体遮断器を遮断状態にするのと同時に機械接点式断路器には開極指令が与えられる。このように補助半導体遮断器が遮断状態となることで、機械接点式断路器と補助半導体遮断器との経路に流れる事故電流が、上記のもう1つの半導体遮断器へと転流される。そして機械接点式断路器の開極動作が完了し、定常通電経路の耐電圧性能を確保した後に、上記のもう1つの半導体遮断器を遮断することで、事故電流の遮断が完了する。
【0007】
このようなハイブリッド遮断器は、定常送電時における導通損失が補助半導体遮断器の導通損失だけであるため、定常通電経路を、上記のように単独で直流電流を遮断可能な半導体遮断器のみとした構成に比べて導通損失を低減することが出来る。しかしながら補助半導体遮断器の通電損失は未だ発生してしまうため、従来のような、定常通電経路が機械接点のみで構成される機械接点式遮断器に比べると、ハイブリッド遮断器は、導通損失が大きい。
【0008】
そこで、半導体遮断器と、ハーフブリッジ回路で構成される転流回路とを直列に接続した回路に、機械接点式遮断器を並列に接続する直流遮断器が提案されている。この直流遮断器において、定常送電時は機械接点式断路器が導通状態になっており、半導体遮断器および転流回路が遮断状態になっている。よって、定常送電時における送電電流は機械接点式断路器のみを流れる。
【0009】
また、事故発生時においては、機械接点式遮断器に開極指令が与えられ、半導体遮断器が導通状態とされ、転流回路に転流指令が与えられる。すると、転流回路は、機械接点式遮断器に流れる事故電流とは逆の方向に電流を流して機械接点式遮断器の電流にゼロ点を生成し、この機械接点式遮断器が開極することで、事故電流が機械接点式遮断器から半導体遮断器および転流回路へと転流する。事故電流転流後、半導体遮断器が遮断されることで事故電流の遮断が完了する。
【0010】
このような直流遮断器は、定常通電経路が機械接点式遮断器のみで構成されるため、導通損失を大幅に低減することが可能となる。しかしながら、ハイブリッド遮断器は、半導体遮断器が高価であるため、従来の機械接点式遮断器に比べて機器コストが大幅に増加する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2015/166600号
【文献】国際公開第2016/056274号
【文献】国際公開第2017/134825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、電流の遮断時間の短縮、および機器コストの抑制が可能な直流遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の直流遮断器は、機械遮断部、アレスタおよび転流装置を持つ。機械遮断部は、少なくとも1つの機械遮断ユニットと、絶縁支柱と、を持つ。少なくとも1つの機械遮断ユニットは、第1単体遮断部および第2単体遮断部を持つ。絶縁支柱は、少なくとも1つの機械遮断ユニットを支持する。第1単体遮断部および第2単体遮断部のそれぞれは、機械接点部と、密閉容器と、操作ロッドと、操作機構と、を持つ。機械接点部は、固定接触子および可動接触子を持つ。機械接点部は、大地から電気的に絶縁されている。密閉容器は、機械接点部および絶縁性ガスを封入する。密閉容器は、大地から電気的に絶縁されている。操作ロッドは、可動接触子に連結されている。操作ロッドは、密閉容器の内部から外部に延出している。操作機構は、操作ロッドに連結されている。操作機構は、可動接触子を固定接触子に対して接離させる。操作機構は、可動接触子と同電位に設けられている。第1単体遮断部および第2単体遮断部は、それぞれの操作ロッドが操作機構により同一直線上で動作し、かつ操作機構による操作ロッドの動作方向が互いに逆方向となるように配置されている。第1単体遮断部および第2単体遮断部は、それぞれの操作機構が互いに対向するように配置されている。全ての機械遮断ユニットに含まれる全ての第1単体遮断部および第2単体遮断部は、互いに直列接続されて機械接点モジュールを形成している。機械接点モジュールの両端は、直流送電系統に接続されている。アレスタは、機械接点モジュールに並列接続されている。転流装置は、転流回路を持つ。転流回路は、リアクトル、コンデンサおよび投入器を直列接続して形成されている。転流回路は、機械接点モジュールに並列接続されている。投入器は、高速投入器である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の直流遮断器を示す斜視図。
図2】第1の実施形態の直流遮断器を示す回路図。
図3】第1の実施形態の機械遮断部を示す斜視図。
図4】第1の実施形態の機械遮断ユニットを側方から見た部分断面図。
図5】第1の実施形態のガス断路器を示す断面図。
図6】第1の実施形態の機械遮断ユニットにおける通電経路を示す図。
図7】第1の実施形態のアレスタ部を示す斜視図。
図8】第1の実施形態の転流装置を示す斜視図。
図9】第1の実施形態のリアクトルユニットおよび投入器ユニットを示す斜視図。
図10】第1の実施形態のコンデンサユニットを示す斜視図。
図11】第1の実施形態の投入器を示す部分断面図。
図12】第2の実施形態の投入器を示す部分断面図。
図13】第3の実施形態の直流遮断器を示す斜視図。
図14】第4の実施形態の直流遮断器を示す斜視図。
図15】第5の実施形態の直流遮断器を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の直流遮断器を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の直流遮断器を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態の直流遮断器を示す回路図である。
図1および図2に示すように、直流遮断器1は、機械遮断部2と、アレスタ部3と、転流装置4と、を備える。直流遮断器1は、大地上の基礎5に設置されている。基礎5の上面は、水平に形成されている。本実施形態では、水平の一方向を第1方向と定義し、第1方向に直交する水平方向を第2方向と定義する。また、第1方向に符号Xを付し、第2方向に符号Yを付す。機械遮断部2およびアレスタ部3は、第1方向Xに並んで配置されている。第1方向Xに並んで配置されている状態は、第1方向Xから見て複数の対象が互いに重なるように配置されている状態である。転流装置4は、機械遮断部2およびアレスタ部3に対して第2方向Yに並んで配置されている。
【0017】
機械遮断部2について説明する。
図3は、第1の実施形態の機械遮断部を示す斜視図である。
図3に示すように、機械遮断部2は、複数(本実施形態では2個)の機械遮断ユニット10と、機械遮断ユニット10を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱60と、機械遮断ユニット10に電力を供給する給電部70と、を備える。複数の機械遮断ユニット10は、絶縁支柱60に対して鉛直方向に複数段に積み重ねられている。
【0018】
機械遮断ユニット10は、一対の単体遮断部11(第1単体遮断部および第2単体遮断部)と、電源部12と、制御部13と、一対の単体遮断部11、電源部12および制御部13が配置された機械遮断部支持板14と、を備える。
【0019】
単体遮断部11は、固定接触子22および可動接触子23を有する機械接点部21を備える(図4参照)。機械接点部21は、固定接触子22に対して可動接触子23を開離させることで開極する。単体遮断部11は、機械接点部21を開極させることで、機械接点部21を通る通電経路を遮断する。単体遮断部11は、真空遮断器11Aまたはガス断路器11Bを構成している。真空遮断器11Aは、機械接点部21を真空の絶縁筒24内に配置した真空バルブ20を有する(図4参照)。ガス断路器11Bは、機械接点部21を絶縁ガス中に配置したガス接点を有する。真空遮断器11Aの機械接点部21は、電流ゼロ点において電流を機械的に遮断可能な接点である。真空遮断器11Aの電流遮断性能は、ガス断路器11Bよりも高い。ガス断路器11Bの耐電圧性能は、真空遮断器11Aよりも高い、または同等である。
【0020】
それぞれの機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は同じ構成を有することが望ましい。本実施形態では、機械遮断ユニット10は、真空遮断器11Aのみ、またはガス断路器11Bのみを備える。例えば、上段の機械遮断ユニット10は、一対の真空遮断器11Aを備える。また、下段の機械遮断ユニット10は、一対のガス断路器11Bを備える。
【0021】
図4は、第1の実施形態の機械遮断ユニットを側方から見た部分断面図である。なお、図4には、単体遮断部11として真空遮断器11Aを備えた機械遮断ユニット10を示している。
図4に示すように、真空遮断器11Aは、機械接点部21を有する真空バルブ20と、真空バルブ20を封入する密閉容器30と、機械接点部21の固定接触子22に連結された通電軸34と、機械接点部21の可動接触子23に連結された操作ロッド35と、操作ロッド35に連結された操作機構37と、機械接点部21に並列接続されたコンデンサ39(図3参照)と、を備える。
【0022】
真空バルブ20は、上述の機械接点部21と、機械接点部21を封入する絶縁筒24と、絶縁筒24の内側に設けられたベローズ25と、を備える。
【0023】
機械接点部21の固定接触子22および可動接触子23は、互いに接離可能に設けられている。固定接触子22は、絶縁筒24に対して固定的に配置されている。可動接触子23は、絶縁筒24に対して変位可能に設けられている。以下の単体遮断部11に関する説明では、固定接触子22および可動接触子23が接離する方向を接点動作方向と称する。本実施形態では、接点動作方向は、水平の一方向であって、第1方向Xと平行である。
【0024】
絶縁筒24は、接点動作方向に沿って延びる円筒状に形成されている。絶縁筒24は、例えば絶縁材料により形成された碍管である。絶縁筒24の内部は、真空に保たれている。絶縁筒24の第1端部には、通電軸34が気密に挿入される貫通孔が形成されている。絶縁筒24の第2端部には、操作ロッド35が挿入される貫通孔が形成されている。
【0025】
ベローズ25は、絶縁筒24の内部において、操作ロッド35を囲うように配置されている。ベローズ25の一端部は、可動接触子23の外周面に固着されている。ベローズ25の他端部は、絶縁筒24の第2端部に固着されている。ベローズ25は、可動接触子23および操作ロッド35を絶縁筒24に対して変位可能としつつ、真空バルブ20内の真空を保っている。
【0026】
密閉容器30は、絶縁性ガスとして、例えば六フッ化硫黄(SF)ガス等を封入している。密閉容器30は、円筒状の絶縁筒31と、絶縁筒31の両端開口を閉塞する第1フランジ32および第2フランジ33と、を備える。絶縁筒31は、接点動作方向に沿って延びている。絶縁筒31は、例えば絶縁材料により形成された碍管である。第1フランジ32および第2フランジ33は、それぞれ金属材料により形成されている。
【0027】
通電軸34は、密閉容器30の第1フランジ32に固定されている。通電軸34は、真空バルブ20の絶縁筒24を貫くように配置されている。通電軸34は、真空バルブ20を密閉容器30に対して固定的に支持している。通電軸34は、真空バルブ20の絶縁筒24内で固定接触子22を固定的に支持している。通電軸34は、金属等の導電材により形成され、固定接触子22に導通している。通電軸34は、固定接触子22と密閉容器30の第1フランジ32とを導通している。なお、「導通」とは、複数の対象が互いに電気的に接続して同電位となっている状態の意とする。また複数の対象が持つインピーダンスによって電位差が生じている場合でも、機器の定格電圧に比べて十分無視できる程度(例えば、数十V以下)に電位差が小さい場合は同電位として扱う。
【0028】
操作ロッド35は、接点動作方向に沿って延在している。操作ロッド35の第1端部は、真空バルブ20の絶縁筒24内で可動接触子23に結合している。操作ロッド35は、絶縁筒24の第2端部に対して接点動作方向に摺動可能に設けられている。操作ロッド35は、密閉容器30の内部から第2フランジ33に設けられた貫通孔33aを通って密閉容器30の外部に延出している。操作ロッド35は、密閉容器30の内部の気密を保ちつつ、第2フランジ33に対して導通し、かつ摺動可能に設けられている。操作ロッド35のうち第1端部から第2フランジ33との摺動部に亘る部分は、金属等の導電材により形成されている。これにより、操作ロッド35は、可動接触子23と第2フランジ33とを導通している。操作ロッド35のうち、密閉容器30外に位置する部分の少なくとも一部には、操作ロッド35の両端部間を電気的に絶縁するロッド絶縁部35aが設けられている。
【0029】
操作機構37は、電力により動作する応答性の高い電磁アクチュエータである。電磁アクチュエータは、例えば電磁反発式の操作機構である。電磁反発式の操作機構37は、操作ロッド35の第2端部と連結した良導体の金属板と、金属板と対向するように設置したコイルと、を有する。駆動時はコイルに電流を印加し、金属板に逆方向の誘導電流を発生させ、金属板にコイルと逆方向の電磁反発力を与えて操作ロッド35を動作させる。
【0030】
操作機構37は、密閉容器30の外側において、接点動作方向で第2フランジ33と並んで配置されている。操作機構37は、連結部材38によって第2フランジ33に連結されている。連結部材38は、少なくとも一部が絶縁材料により形成されており、連結部材38の両端部間を電気的に絶縁している。操作機構37は、操作ロッド35を接点動作方向に往復動作させる。これにより、操作機構37は、操作ロッド35に対して固定的に設けられた可動接触子23を変位させ、可動接触子23を固定接触子22に対して接離させる。
【0031】
図3に示すように、コンデンサ39は、密閉容器30の外側に配置されている。コンデンサ39は、密閉容器30の第1フランジ32および第2フランジ33に電気的かつ機械的に接続されている。コンデンサ39は、高抵抗の円筒に誘電体を封入し、両端に電極を備え、静電容量と抵抗を持つ。コンデンサ39は、電流遮断時および開極状態の機械接点部21(図4参照)にかかる電圧を調整する。
【0032】
図5は、第1の実施形態のガス断路器を示す断面図である。
図5に示すように、ガス断路器11Bは、機械接点部21が密閉容器30内に直接的に配置された点で、真空遮断器11Aと異なる。つまり、ガス断路器11Bにおいては、機械接点部21の開極状態で、固定接触子22および可動接触子23の間に絶縁性ガスが介在する。
【0033】
図3に示すように、各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、それぞれの操作ロッド35が操作機構37による機械接点部21の開極動作時に同一直線上で動作するように配置されている。具体的に、各機械遮断ユニット10において、各単体遮断部11の操作ロッド35は、同一直線上に延在している。本実施形態では、操作ロッド35は、操作機構37による機械接点部21の開極動作時に第1方向Xに動作する。さらに、各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、操作機構37による機械接点部21の開極動作時の操作ロッド35の動作方向が互いに逆方向になるように配置されている。具体的に、各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11は、それぞれの操作機構37が互いに接触するように配置されている。また、一の機械遮断ユニット10の単体遮断部11、および他の機械遮断ユニット10の単体遮断部11は、鉛直方向から見て同一直線上で動作するように配置されている。
【0034】
電源部12は、一対の単体遮断部11の操作機構37に電力を供給する。電源部12は、基準電位が操作機構37と同電位になるように設けられている。電源部12は、例えば、機械接点部21(図4参照)の開極動作時に操作機構37に電力を供給するコンデンサと、機械接点部21の閉極動作時に操作機構37に電力を供給するコンデンサと、それぞれのコンデンサの充電装置と、それぞれのコンデンサを充電状態に保持し、電力供給時には放電するスイッチング素子と、を備える(いずれも不図示)。
【0035】
制御部13は、電源部12、および一対の単体遮断部11の操作機構37の状態監視を行う。また、制御部13は、電源部12から一対の単体遮断部11の操作機構37への電力供給を制御する。
【0036】
機械遮断部支持板14は、一対の単体遮断部11、電源部12および制御部13を下方から支持する。例えば、機械遮断部支持板14は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。機械遮断部支持板14は、平面視矩形状に形成されている。機械遮断部支持板14は、外縁の2辺が接点動作方向に平行となるように配置されている。本実施形態では、機械遮断部支持板14は、第1方向Xおよび第2方向Yの双方向に延びている。機械遮断部支持板14は、絶縁支柱60に対して鉛直方向に複数段積み重ねられている。
【0037】
各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11の密閉容器30の少なくとも一部は、水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されている。換言すると、一対の単体遮断部11の密閉容器30は、鉛直方向から見て、機械遮断部支持板14から突出するように配置されている。なお、図示の例では、密閉容器30の一部のみが水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されているが、密閉容器30の全体が水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されていてもよい。密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所(例えば第1フランジ32)が水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されていればよい。
【0038】
ここで、水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されていることにつき、図3を参照して、別の表現で説明する。
例えば、上述した接点動作方向を投射線と見立てると、機械遮断部支持板14を構成する4つの辺のうち投射線とねじれの位置関係にある2つの辺を含む2つの垂直投影面を定義することができる。この2つの垂直投影面によって区切られた空間(操作機構37が存在する側の空間)から密閉容器30の少なくとも一部が突出して配置されていればよい。
【0039】
図4に示すように、機械遮断ユニット10は、支持部15と、ユニット内ブスバー16(導通部材)と、をさらに備える。
支持部15は、一対の単体遮断部11それぞれと、機械遮断部支持板14と、の間に介在している。支持部15は、単体遮断部11を機械遮断部支持板14から浮かせた状態で支持している。支持部15は、単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14との間に介在する一対の第1支持部15Aと、単体遮断部11の操作機構37と機械遮断部支持板14との間に介在する一対の第2支持部15Bと、を備える。一方の第1支持部15Aは、第2フランジ33と機械遮断部支持板14との電気的な導通を遮断する絶縁部15aを備える。これにより、一方の第1支持部15Aに支持された単体遮断部11の第2フランジ33は、機械遮断部支持板14から電気的に絶縁されている。他方の第1支持部15Aは、単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14とを導通している。第2支持部15Bは、操作機構37と機械遮断部支持板14とを導通している。
【0040】
ユニット内ブスバー16は、一対の単体遮断部11同士を直列接続する。ユニット内ブスバー16は、一対の単体遮断部11の第2フランジ33それぞれに電気的かつ機械的に接続されている。ユニット内ブスバー16は、一対の単体遮断部11の操作機構37の上方において、一対の操作機構37を跨ぐように延びている。ユニット内ブスバー16は、金属等の導電材により形成されている。これにより、ユニット内ブスバー16は、一対の単体遮断部11の第2フランジ33同士を導通し、一対の単体遮断部11の機械接点部21を直列接続している。
【0041】
図3に示すように、絶縁支柱60は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱60は、基礎5に立設されている。絶縁支柱60は、鉛直方向に沿って延びている。各絶縁支柱60は、複数段に積み重ねらされた各機械遮断部支持板14の角部を支持している。絶縁支柱60は、複数の機械遮断ユニット10を互いに電気的に絶縁するとともに、各機械遮断ユニット10を大地に対して電気的に絶縁しつつ、各機械遮断ユニット10を固定的に支持している。なお、各絶縁支柱60は、下端から上端に亘って連続して延びていてもよいし、各機械遮断部支持板14を挟むように複数に分割されていてもよい。後述する他の絶縁支柱についても同様である。
【0042】
給電部70は、機械遮断ユニット10の側方において、基礎5に設置されている。給電部70は、機械遮断ユニット10と転流装置4との間に配置されている(図1参照)。給電部70は、第2方向Yから見て機械遮断ユニット10に重なる位置に配置されている。給電部70は、地上から機械遮断ユニット10の電源部12に電力を供給する。給電部70は、大地と電源部12とを電気的に絶縁しつつ、かつ複数の機械遮断ユニット10同士を電気的に絶縁しつつ、電力を供給する。本実施形態では、給電部70は、上下に積み重ねられた2段の絶縁トランスを備える。下段の絶縁トランスは、下段の機械遮断ユニット10の電源部12に電力を供給する。上段の絶縁トランスは、下段の機械遮断ユニット10の電源部12と上段の機械遮断ユニット10の電源部12とを電気的に絶縁しつつ、上段の機械遮断ユニット10の電源部12に電力を供給する。なお、給電部70は、レーザー給電装置や、絶縁チューブを介した空気による発電機能を備えた装置等であってもよい。
【0043】
機械遮断ユニット10の通電経路について説明する。
図6は、第1の実施形態の機械遮断ユニットにおける通電経路を示す図である。
図6に示すように、単体遮断部11において、機械接点部21が閉極していると、第1フランジ32および第2フランジ33が導通する。一対の単体遮断部11のうち一方の単体遮断部11の第2フランジ33は、第1支持部15Aの絶縁部15aによって、機械遮断部支持板14との直接的な導通が遮断されている。また、各単体遮断部11において、第2フランジ33は、操作ロッド35のロッド絶縁部35a、および連結部材38によって、操作機構37との直接的な導通が遮断されている。さらに、一対の単体遮断部11の第2フランジ33同士は、ユニット内ブスバー16を介して導通している。よって、一対の単体遮断部11を流れる電流は、一方の単体遮断部11の第1フランジ32から、機械遮断部支持板14および操作機構37を流れず、ユニット内ブスバー16を流れ、他方の単体遮断部11の第1フランジ32に至る(図中矢印A参照)。
【0044】
機械遮断部2の各部の電位について説明する。
各機械遮断ユニット10において、一方の単体遮断部11の第2フランジ33は、第1支持部15Aを介して機械遮断部支持板14に直接導通している。各機械遮断ユニット10において、一対の単体遮断部11の操作機構37は、それぞれ第2支持部15Bを介して機械遮断部支持板14に導通している。一対の単体遮断部11の第2フランジ33は、ユニット内ブスバー16によって互いに導通している。よって、一対の操作機構37は、一対の機械接点部21の可動接触子23、および機械遮断部支持板14と同電位になっている。具体的に、操作機構37は、基準電位が機械接点部21の可動接触子23、および機械遮断部支持板14と同電位になっている。また、各機械遮断ユニット10において、機械遮断部支持板14は大地から絶縁されているので、機械遮断部支持板14に導通する機械接点部21も大地から電気的に絶縁されている。密閉容器30は、一部が機械接点部21に導通しているので、大地から電気的に絶縁されている。
【0045】
機械遮断ユニット10同士の電気的な接続について説明する。
図3に示すように、鉛直方向で隣り合う一対の機械遮断ユニット10において、第1機械遮断ユニット10の第1単体遮断部11の第1フランジ32、および第2機械遮断ユニット10の第2単体遮断部11の第1フランジ32は、互いにユニット間ブスバー80により直列接続されている。上述したように、各機械遮断ユニット10において一対の単体遮断部11の機械接点部21は、ユニット内ブスバー16によって直列接続されているので、機械遮断部2における全ての単体遮断部11は直列接続されている。直列接続された全ての単体遮断部11は、機械接点モジュール90を形成している。
【0046】
機械接点モジュール90の両端は、供給地点と需要地点とを接続した直流送電系統に接続されている。機械接点モジュール90は、直流送電系統に接続される第1接続点A1および第2接続点A2を備える。第1接続点A1および第2接続点A2は、機械接点モジュール90の電気的な端部である。第1接続点A1は、上段の機械遮断ユニット10に設けられている。第1接続点A1は、機械接点モジュール90における直流送電系統の供給地点側(直流電圧源側)の端部を構成する。第2接続点A2は、下段の機械遮断ユニット10に設けられている。第2接続点A2は、機械接点モジュール90における直流送電系統の需要地点側の端部を構成する。
【0047】
アレスタ部3について説明する。
図7は、第1の実施形態のアレスタ部を示す斜視図である。
図7に示すように、アレスタ部3は、アレスタ100と、アレスタ100が配置されるアレスタ支持板110と、アレスタ支持板110を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱120と、を備える。
【0048】
アレスタ100は、一定電圧以上が印加されると導通する複数の非線形素子102により形成されている。アレスタ100は、複数の非線形素子102を並列接続したモジュール101を複数(本実施形態では2個)備える。アレスタ100は、前記モジュール101を直列接続することにより形成されている。
【0049】
アレスタ支持板110は、前記モジュール101を1つずつ支持する。このため、本実施形態では、アレスタ支持板110は2個設けられている。アレスタ支持板110は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。アレスタ支持板110は、平面視矩形状に形成されている。本実施形態では、アレスタ支持板110は、第1方向Xおよび第2方向Yの双方向に延びている。アレスタ支持板110は、絶縁支柱120に対して鉛直方向に複数段積み重ねられている。
【0050】
絶縁支柱120は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱120は、基礎5に立設されている。絶縁支柱120は、鉛直方向に沿って延びている。各絶縁支柱120は、複数段に積み重ねられたアレスタ支持板110の角部を支持している。絶縁支柱120は、複数のアレスタ支持板110を互いに電気的に絶縁するとともに、アレスタ100を大地に対して電気的に絶縁しつつ、アレスタ支持板110およびアレスタ100を固定的に支持している。
【0051】
アレスタ100は、直流送電系統に接続される第1接続点B1および第2接続点B2を備える。第1接続点B1および第2接続点B2は、アレスタ100の電気的な端部である。第1接続点B1は、上段の前記モジュール101に設けられている。第1接続点B1は、アレスタ100における直流送電系統の供給地点側の端部を構成する。第2接続点B2は、下段の前記モジュール101に設けられている。第2接続点B2は、アレスタ100における直流送電系統の需要地点側の端部を構成する。
【0052】
転流装置4について説明する。
図8は、第1の実施形態の転流装置を示す斜視図である。
図2および図8に示すように、転流装置4は、リアクトル211を含むリアクトルユニット210と、コンデンサバンク221を含むコンデンサユニット220と、投入器241を含む投入器ユニット240と、を備える。リアクトル211、コンデンサバンク221および投入器241は、転流回路200を構成している。転流回路200は、コンデンサバンク221の両端にリアクトル211および投入器241を直列接続して形成されている。
【0053】
図1に示すように、リアクトルユニット210は、アレスタ部3と第2方向Yに並んで配置されている。コンデンサユニット220は、リアクトルユニット210と第1方向Xに並んで配置されている。コンデンサユニット220は、機械遮断部2と第2方向Yに並んで配置されている。投入器ユニット240は、リアクトルユニット210の下方に配置されている。リアクトル211、コンデンサバンク221および投入器241は、第2方向Yで同じ位置に配置されている。
【0054】
図9は、第1の実施形態のリアクトルユニットおよび投入器ユニットを示す斜視図である。
図9に示すように、リアクトルユニット210は、リアクトル211と、リアクトル211を支持する一対のステー213と、一対のステー213を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱215と、を備える。
【0055】
リアクトル211は、第2方向Yの両端部を一対のステー213によって支持されている。一対のステー213は、それぞれ第1方向Xに延びている。一対のステー213は、互いに第2方向Yに間隔をあけて配置されている。一対のステー213は、第2方向Yから見て互いに重なるように配置されている。
【0056】
絶縁支柱215は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱215は、基礎5に立設されている。絶縁支柱215は、鉛直方向に沿って延びている。絶縁支柱215は、一対のステー213の端部を支持している。絶縁支柱215は、一対のステー213を互いに電気的に絶縁するとともに、リアクトル211を大地に対して電気的に絶縁しつつ、一対のステー213およびリアクトル211を固定的に支持している。
【0057】
図10は、第1の実施形態のコンデンサユニットを示す斜視図である。
図9に示すように、コンデンサユニット220は、コンデンサバンク221と、コンデンサバンク221が配置されたコンデンサ支持板231と、コンデンサ支持板231を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱233と、コンデンサバンク221を充電する充電部235と、を備える。
【0058】
コンデンサバンク221は、複数(本実施形態では8個)のコンデンサ223を並列接続した複数(本実施形態では3個)のコンデンサモジュール222を備える。コンデンサバンク221は、コンデンサモジュール222を直列接続することにより形成されている。これにより、コンデンサバンク221は、1つのコンデンサと見なすことができる。コンデンサモジュール222は、複数のコンデンサ223と、複数のコンデンサ223の第1端子を互いに導通させる第1ブスバー224と、複数のコンデンサ223の第2端子を互いに導通させる第2ブスバー225と、を備える。コンデンサモジュール221同士は、第3ブスバー226によって電気的に接続されている。
【0059】
コンデンサ支持板231は、コンデンサモジュール222を1つずつ支持する。このため、本実施形態では、コンデンサ支持板231は3個設けられている。コンデンサ支持板231は、繊維強化プラスチック等の絶縁材料や、アルミニウム合金等の金属材料等により形成されている。コンデンサ支持板231は、平面視矩形状に形成されている。本実施形態では、コンデンサ支持板231は、第1方向Xおよび第2方向Yの双方向に延びている。コンデンサ支持板231は、絶縁支柱233に対して鉛直方向に複数段積み重ねられている。
【0060】
絶縁支柱233は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱233は、基礎5に立設されている。絶縁支柱233は、鉛直方向に沿って延びている。各絶縁支柱233は、複数段に積み重ねられたコンデンサ支持板231の角部を支持している。絶縁支柱233は、複数のコンデンサ支持板231を互いに電気的に絶縁するとともに、コンデンサバンク221を大地に対して電気的に絶縁しつつ、コンデンサ支持板231およびコンデンサバンク221を固定的に支持している。
【0061】
充電部235は、コンデンサバンク221およびコンデンサ支持板231の側方において、基礎5に設置されている。充電部235は、コンデンサバンク221と機械遮断部2との間に配置されている(図1参照)。充電部235は、抵抗器である。充電部235は、転流回路200におけるコンデンサバンク221と投入器241との間と、大地と、を電気的に接続している(図8参照)。つまり、充電部235の第1端部は、コンデンサバンク221における投入器241側の端部に導通している。充電部235の第2端部は、接地されている。これにより、系統電位と接地電位との電位差でコンデンサバンク221を充電することができる。
【0062】
図9に示すように、投入器ユニット240は、投入器241と、投入器241が配置された投入器支持板243と、投入器支持板243を支持する複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱245と、投入器241に電力を供給する給電部247と、を備える。
【0063】
投入器241は、直流送電系統の定常送電時に開放されて、転流回路200を遮断する。投入器241は、直流送電系統を遮断する際に投入されて、転流回路200の両端間を導通状態にする。投入器241は、少なくとも1つ設けられている。投入器241が複数設けられる場合、複数の投入器241は互いに直列接続される。本実施形態では、投入器241は、一対設けられている。投入器241は、高速投入器である。高速投入器は、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入可能な投入器である。本実施形態では、投入器241は、固定された一対の電極251,252間の絶縁性能を下げて絶縁破壊させることで通電開始させる放電式投入器(ギャップスイッチ)である(図11参照)。
【0064】
図11は、第1の実施形態の投入器を示す部分断面図である。
図11に示すように、投入器241は、第1電極251および第2電極252と、第1電極251および第2電極252を収容する容器260と、容器260内で第1電極251に近接して配置されたトリガ電極265と、第1電極251とトリガ電極265との間にパルス電圧を印加するパルス電源267と、パルス電源267と容器260とを連結する連結部材269と、を備える。
【0065】
第1電極251および第2電極252は、それぞれ略同径の円柱状に形成されている。第1電極251および第2電極252は、同軸上で間隔をあけて配置されている。第1電極251および第2電極252それぞれにおける互いに対向する面は、半球面状に形成されている。第1電極251には、トリガ電極265が配置される貫通孔251aが形成されている。貫通孔251aは、第1電極251の中心軸線と同軸に形成されている。貫通孔251aは、第1電極251を一定の径で貫通している。
【0066】
容器260には、ドライエアや六フッ化硫黄(SF)ガス等が封入されている。容器260は、両端が開口した円筒状の絶縁筒261と、絶縁筒261の第1端開口を閉塞する第1フランジ262と、絶縁筒261の第2端開口を閉塞する第2フランジ263と、を備える。絶縁筒261は、第1電極251および第2電極252を囲う。絶縁筒261は、第1電極251および第2電極252と同軸に配置されている。第1フランジ262および第2フランジ263は、それぞれ金属材料により形成されている。第1フランジ262には、第1電極251が固定されている。第1フランジ262は、第1電極251に導通している。第1フランジ262には、第1電極251の貫通孔251aと同軸の貫通孔262aが形成されている。第2フランジ263には、第2電極252が固定されている。第2フランジ263は、第2電極252に導通している。
【0067】
トリガ電極265は、金属やカーボン等の導電材により、先端が先細った針状に形成されている。例えば、金属の導電材としては、ステンレス鋼や銅、タングステン等を用いることができる。トリガ電極265は、先端が第2電極252に対向するように、容器260外から第1フランジ262の貫通孔262a、および第1電極251の貫通孔251aに挿入されている。トリガ電極265の外周面には、絶縁支持筒271が気密に挿入されている。絶縁支持筒271は、第1フランジ262の貫通孔262a、および第1電極251の貫通孔251aそれぞれの内周面に気密に挿入されている。つまり、トリガ電極265は、絶縁支持筒271を介して第1電極251および第1フランジ262に支持されている。トリガ電極265の先端は、第1電極251の延在方向において、第1電極251における第2電極252側の端部と同じ位置に配置されている。
【0068】
パルス電源267は、容器260の第1フランジ262に対向するように、容器260に並んで配置されている。パルス電源267は、直方体状に形成されている。パルス電源267は、外郭を形成する筐体の内部に、コンデンサや、コンデンサの充電回路、抵抗、リアクトル、スイッチングデバイス等を有する。パルス電源267からは、第1ケーブル273および第2ケーブル275が延出している。第1ケーブル273は、トリガ電極265の基端に電気的に接続されている。第2ケーブル275は、容器260の第1フランジ262に電気的に接続されている。パルス電源267は、外部から指令信号を入力されると、第1ケーブル273および第2ケーブル275間にパルス電圧を出力する。これにより、第1電極251とトリガ電極265との間で微小放電が発生するので、第1電極251の周囲にプラズマが発生する。その結果、第1電極251と第2電極252との間の絶縁が破壊されてアークが生じ、第1電極251および第2電極252を通る通電経路が形成される。
【0069】
連結部材269は、容器260とパルス電源267との間に配置されている。連結部材269は、金属材料により形成されている。連結部材269は、容器260と略同径の円筒状に形成されている。連結部材269は、容器260と同軸上に配置され、第1ケーブル273および第2ケーブル275を囲っている。連結部材269の第1端開口は、容器260の第1フランジ262に電気的かつ機械的に接続している。連結部材269の第2端開口は、パルス電源267の筐体に電気的かつ機械的に接続している。これにより、パルス電源267の筐体は、第1電極251と同電位になっている。具体的に、パルス電源267は、基準電位が第1電極251と同電位になっている。
【0070】
図9に示すように、一対の投入器241は、水平方向に並んで配置されている。第1の投入器241は、パルス電源267に対して容器260が第1方向Xでコンデンサユニット220側に位置するように配置されている。第2の投入器241は、第1の投入器241のパルス電源267に対してアレスタ部3側に並んで配置されている。第2の投入器241は、パルス電源267に対して容器260が第2方向Yでアレスタ部3側に位置するように配置されている。
【0071】
投入器支持板243は、一対の投入器241をまとめて支持する。投入器支持板243は、アルミニウム合金等の金属材料等により形成されている。投入器支持板243は、平面視矩形状に形成されている。本実施形態では、投入器支持板243は、第1方向Xおよび第2方向Yの双方向に延びている。投入器支持板243は、絶縁支柱245に対して鉛直方向に複数段積み重ねられている。投入器支持板243は、一対の投入器241それぞれのパルス電源267の筐体と同電位になっている。具体的に、投入器支持板243は、一対の投入器241それぞれのパルス電源267の基準電位と同電位になっている。
【0072】
上述したように、投入器241の第1電極251は、連結部材269を介してパルス電源267の筐体に導通している。また、パルス電源267の筐体は、投入器支持板243に導通している。これにより、一対のパルス電源267の筐体同士が導通しているので、一対の投入器241の第1電極251同士も導通している。なお、一対のパルス電源267の筐体は、互いに隣接することにより導通していてもよい。よって、投入器ユニット240には、一対の投入器241を投入することで、一方の投入器241の第2フランジ263から他方の投入器241の第2フランジ263に至る通電経路が形成される。なお、一対の投入器241の第1フランジ262同士を図示しないブスバーで接続し、一方の投入器241の第1フランジ262と連結部材269とを図示しない絶縁材料を介して接続することで、一方の投入器241の第2フランジ263から他方の投入器241の第2フランジ263に至る通電経路を図示しないブスバーに限定しても良い。
【0073】
絶縁支柱245は、例えば碍子や、ポリマー、繊維強化プラスチック等により形成されている。絶縁支柱245は、基礎5に立設されている。絶縁支柱245は、鉛直方向に沿って延びている。各絶縁支柱245は、投入器支持板243の角部を支持している。本実施形態では、絶縁支柱245は、リアクトルユニット210の絶縁支柱215と共用している。絶縁支柱245は、投入器241を大地に対して電気的に絶縁しつつ、投入器支持板243および投入器241を固定的に支持している。
【0074】
給電部247は、投入器241および投入器支持板243の側方において、基礎5に設置されている。給電部247は、投入器支持板243とコンデンサユニット220との間に配置されている(図8参照)。給電部247は、地上からパルス電源267に電力を供給する。給電部247は、大地とパルス電源267とを電気的に絶縁しつつ電力を供給する。給電部247は、例えば絶縁トランスである。
【0075】
一対の投入器241の容器260は、水平方向で投入器支持板243の外側に配置されている。換言すると、一対の投入器241の容器260は、鉛直方向から見て、投入器支持板243から突出するように配置されている。なお、図示の例では、容器260の全体が水平方向で投入器支持板243の外側に配置されているが、容器260の一部のみが水平方向で投入器支持板243の外側に配置されていてもよい。容器260における第2電極252と同電位の箇所(例えば第2フランジ263)が水平方向で投入器支持板243の外側に配置されていればよい。
【0076】
図8に示すように、リアクトル211の電気的な一端は、ブスバー201によって、コンデンサバンク221における直流送電系統の供給地点側の端部に電気的に接続されている。前記第1の投入器241の第2フランジ263は、ブスバー202によって、コンデンサバンク221における直流送電系統の需要地点側の端部に電気的に接続されている。これにより、転流回路200は、コンデンサバンク221の両端にリアクトル211および投入器241を直列接続した構成を有する。
【0077】
なお、転流回路200におけるリアクトル211、コンデンサバンク221および投入器241の配置は上記の例に限定されない。コンデンサユニットの充電部が投入器とコンデンサバンクとの間に接続されていればよい。
【0078】
転流装置4は、直流送電系統に接続される第1接続点C1および第2接続点C2を備える。第1接続点C1および第2接続点C2は、転流回路200の電気的な端部である。第1接続点C1は、リアクトル211に設けられている。第1接続点C1は、転流回路200における直流送電系統の供給地点側の端部を構成する。第2接続点C2は、前記第2の投入器241の第2フランジ263に設けられている。第2接続点C2は、転流回路200における直流送電系統の需要地点側の端部を構成する。
【0079】
図1を参照して、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4の電気的な接続について説明する。
機械遮断部2の第1接続点A1、およびアレスタ部3の第1接続点B1は、ブスバー301により電気的に接続されている。機械遮断部2の第2接続点A2、およびアレスタ部3の第2接続点B2は、ブスバー302により電気的に接続されている。これにより、アレスタ部3のアレスタ100は、機械遮断部2の機械接点モジュール90に並列接続されている。
【0080】
アレスタ部3の第1接続点B1は、ブスバー303により直流送電系統の供給地点側の送電線に電気的に接続されている。アレスタ部3の第2接続点B2は、ブスバー304により直流送電系統の需要地点側の送電線に電気的に接続されている。これにより、機械遮断部2の機械接点モジュール90は、直流送電系統の常時通電経路を構成している。
【0081】
転流装置4の第1接続点C1、およびアレスタ部3の第1接続点B1は、ブスバー305により電気的に接続されている。転流装置4の第2接続点C2、およびアレスタ部3の第2接続点B2は、ブスバー306により電気的に接続されている。これにより、転流装置4の転流回路200は、アレスタ部3のアレスタ100、および機械遮断部2の機械接点モジュール90に並列接続されている。また、転流装置4の投入器241は、転流回路200において直流送電系統の最も需要地点側に配置される。
【0082】
直流遮断器1の動作について説明する。
直流送電系統の定常送電時は、送電電流が機械接点モジュール90に流れる。この状態では、アレスタ100および転流回路200には電流は流れていない。また、転流回路200のコンデンサバンク221は、充電部235により充電される。
【0083】
例えば、直流送電系統に事故電流が発生した際には、図示しない制御装置により事故電流を検出し、直流遮断器1に事故遮断指令を与え、転流回路200を導通状態にする。具体的に、図示しない制御装置により、投入器ユニット240のパルス電源267に投入指令を与え、一対の投入器241を投入する。また、機械接点モジュール90の全ての単体遮断部11の機械接点部21を開極する。具体的に、図示しない制御装置により、機械遮断ユニット10の制御部13に開極動作指令を与え、各単体遮断部11の機械接点部21を開極させる。この際、各機械遮断ユニット10において、一対の操作ロッド35は、同一直線上で互いに逆方向に動作するので、操作機構37に生じる衝撃力および反動が相殺される。
【0084】
転流回路200が導通状態になると、充電されていたコンデンサバンク221の電荷が放電される。コンデンサバンク221の電荷が放電されると、コンデンサバンク221およびリアクトル211によるLC共振によって転流回路200に並列接続された機械接点モジュール90の電流が低下し、機械接点モジュール90に電流ゼロ点が生成される。これにより、各単体遮断部11の機械接点部21においてアークが消弧し、機械接点モジュール90を通る通電経路が遮断される。なお、投入器241を投入するタイミングは、単体遮断部11の機械接点部21を開極するタイミングと同時でもよいし、単体遮断部11の機械接点部21を開極するタイミングよりも後でもよい。一般的には、投入器241のほうが機械接点部21よりも応答が早いため、上記のタイミングで投入器241を投入することで、機械接点部21が完全に開極する前に電流ゼロ点が生成されることを回避できる。
【0085】
機械接点モジュール90を通る通電経路が遮断されると、事故電流は機械接点モジュール90に並列接続されたアレスタ100に転流する。その後、アレスタ100において事故電流のエネルギーが吸収され、直流送電系統の事故電流の遮断が完了する。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態の直流遮断器1は、全ての単体遮断部11を直列接続して形成された機械接点モジュール90と、機械接点モジュール90に並列接続された転流回路200と、を持つ。転流回路200は、リアクトル211、コンデンサバンク221および投入器241を直列接続して形成されている。
この構成によれば、投入器241を投入してコンデンサバンク221の電荷を放電し、転流回路200におけるコンデンサバンク221およびリアクトル211によるLC共振によって、転流回路200に並列接続された機械接点モジュール90に電流ゼロ点を生成できる。このため、従来技術のような機械接点モジュールに並列接続される半導体遮断器が必要ないので、機器コストを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、転流装置4の投入器241を高速投入器とした。この構成によれば、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で転流回路200を導通状態にできる。よって、従来技術のような半導体遮断器を用いた構成と同等の速度で、機械接点モジュール90に流れる電流を遮断できる。
以上により、電流の遮断時間の短縮、および機器コストの抑制が可能な直流遮断器1を提供できる。
【0087】
また、本実施形態の投入器241は、固定された一対の電極251,252間の絶縁性能を下げて絶縁破壊させることで通電開始させる放電式投入器である。
この構成によれば、機械的な駆動部が投入器に設けられない。このため、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入できる高速投入器を構成することができる。
【0088】
また、投入器241は、第1電極251および第2電極252を収容する容器260と、第1電極251と同電位に設けられたパルス電源267と、を持つ。投入器支持板243は、金属材料により形成され、パルス電源267と同電位に設けられている。投入器241の容器260は、水平方向で投入器支持板243の外側に配置されている。
この構成によれば、パルス電源267を投入器支持板243に近付けつつ、容器260における第2電極252と同電位の箇所(第2フランジ263)を投入器支持板243から遠ざけることができる。このため、容器260の全体が水平方向で投入器支持板243に重なる位置に配置された場合と比較して、容器260における第2電極252と同電位の箇所と投入器支持板243とを絶縁しつつ、投入器241と投入器支持板243とを鉛直方向に近付けることができる。したがって、投入器241および投入器支持板243が配置されるスペースが鉛直方向への大型化することを抑制できる。
【0089】
また、転流装置4は、コンデンサバンク221と投入器241との間と、大地と、を電気的に接続する抵抗器(充電部235)を備える。
この構成によれば、直流送電系統の系統電位と接地電位との電位差がコンデンサバンク221にかかるので、コンデンサバンク221を充電することができる。このため、コンデンサバンクを充電する直流電源等を別途設ける場合と比較して、直流遮断器1の構成を簡素化できる。したがって、直流遮断器1の機器コストをより一層抑制できる。
【0090】
また、機械遮断部2およびアレスタ部3(アレスタ100)は、第1方向Xに並んで配置されている。転流装置4は、機械遮断部2およびアレスタ部3に対して、第2方向Yに並んで配置されている。
この構成によれば、機械遮断部、アレスタ部および転流装置が一直線に並んで配置される場合と比較して、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4を集約して配置することができる。したがって、直流遮断器1の設置面積の削減を図ることができる。
【0091】
また、リアクトルユニット210、コンデンサユニット220および投入器ユニット240は、第2方向Yにおける同じ位置に配置されている。
この構成によれば、リアクトルユニット、コンデンサユニットおよび投入器ユニットのいずれかが第1方向Xから見て第2方向Yに並ぶ場合と比較して、転流装置4が第2方向Yに占めるスペースを小さくすることができる。よって、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4をより一層集約して配置することができる。
【0092】
また、機械遮断部2は、単体遮断部11の操作機構37に電力を供給する給電部70を備える。給電部70は、絶縁トランスを備える。絶縁トランスは、機械遮断ユニット10と転流装置4との間に配置されている。
この構成によれば、機械遮断ユニット10と転流装置4との間のスペースを有効活用して、直流遮断器1の設置面積の増大を抑制することができる。
【0093】
また、単体遮断部11は、固定接触子22および可動接触子23を有し大地から電気的に絶縁された機械接点部21と、機械接点部21および絶縁性ガスを封入し大地から電気的に絶縁された密閉容器30と、可動接触子23に連結された操作ロッド35と、操作ロッド35に連結され可動接触子23と同電位に設けられた操作機構37と、を持つ。
この構成によれば、密閉容器30が大地に接地されていないため、密閉容器30と機械接点部21との絶縁を省略できる。よって密閉容器が大地に接地される等により機械接点部に対して電気的に絶縁された場合と比較して、密閉容器30を小型化し、単体遮断部11の大型化を抑制できる。また、高電圧化に伴い、複数の単体遮断部11を直列に接続して遮断性能を向上させる場合においても、直列接続した全ての単体遮断部11の大型化を抑制できる。したがって、高電圧化が容易で、大型化を抑制可能な直流遮断器1を提供できる。
さらに、上記構成によれば、密閉容器30および操作機構37が大地に接地されていないため、機械接点部21と操作機構37とを絶縁する必要がない。このため、操作機構が大地に接地される等により機械接点部に対して電気的に絶縁された場合と比較して、機械接点部21と操作機構37とを近付けて配置することができる。これにより、操作ロッド35の長尺化が抑制されるとともに、操作機構37の可動部の質量の増加が抑制され、機械接点部21の開極速度の低下を抑制できる。したがって、遮断動作の応答性を確保できる直流遮断器1を提供できる。
【0094】
また、各機械遮断ユニット10における一対の単体遮断部11は、それぞれの操作ロッド35が操作機構37により同一直線上で動作し、かつ操作機構37による操作ロッド35の動作方向が逆方向となるように配置されている。
この構成によれば、各機械遮断ユニット10の機械遮断部支持板14上で、操作ロッド35を動作させる際に操作機構37に生じる衝撃力および反動を相殺することができる。これにより、操作機構37の動作時に、機械遮断ユニット10を支持する絶縁支柱60に曲げモーメントが発生することを抑制できる。したがって、機械遮断部2の振動を抑制でき、絶縁支柱60の過剰な大型化や支持構造物の増加、またそれらに伴う重量の増加を抑制できる。
【0095】
また、機械遮断部支持板14に配置された一対の単体遮断部11は、それぞれの操作機構37が互いに接触するように配置されている。
この構成によれば、それぞれの密閉容器30が互いに接触する構成と比較して、操作ロッド35を動作させる際に操作機構37に生じる衝撃力および反動を相殺する状況において、衝撃力および反動を、比較的に強度が低い碍管で構成された密閉容器30を介して相殺せず、比較的に強度が高い金属材料で構成された操作機構37間で直接相殺することができる。よって密閉容器30に大きな力が加わることを防止できる。これにより、単体遮断部11の破損を抑制でき、機械遮断ユニット10の信頼性を向上させることができる。
【0096】
また、複数の機械遮断ユニット10は、絶縁支柱60に対して複数段に積み重ねられているので、機械遮断ユニットが水平方向に並んで配置される場合と比較して、直流遮断器1の設置面積を削減できる。
【0097】
また、機械遮断ユニット10は、一対の単体遮断部11が配置される絶縁支柱60に支持された機械遮断部支持板14を備える。機械遮断部支持板14は、金属材料により形成され、一対の単体遮断部11の操作機構37と同電位に設けられている。一対の単体遮断部11それぞれの密閉容器30の少なくとも一部は、水平方向で機械遮断部支持板14の外側に配置されている。
この構成によれば、操作機構37を機械遮断部支持板14に近付けつつ、密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所(第1フランジ32)を機械遮断部支持板14から遠ざけることができる。このため、密閉容器30の全体が水平方向で機械遮断部支持板14に重なる位置に配置された場合と比較して、密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所と機械遮断部支持板14とを絶縁しつつ、単体遮断部11と機械遮断部支持板14とを鉛直方向に近付けることができる。したがって、機械遮断部2の鉛直方向への大型化を抑制でき、かつ機械遮断ユニット10を支持する絶縁支柱60に発生する曲げモーメントを抑制できる。
【0098】
また、単体遮断部11の操作ロッド35は、可動接触子23と操作機構37との導通を遮断するロッド絶縁部35aを持つ。機械遮断ユニット10は、ユニット内ブスバー16と、絶縁部15aと、を持つ。ユニット内ブスバー16は、一対の単体遮断部11それぞれの第2フランジ33を互いに電気的に接続する。絶縁部15aは、一方の単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14との間に介在する支持部15に設けられている。絶縁部15aは、前記一方の単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14との導通を遮断する。他方の単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14とは第1支持部15Aを通じて導通している。
この構成によれば、単体遮断部11において、第2フランジ33から操作ロッド35を通って操作機構37に至る通電経路は、ロッド絶縁部35aによって遮断される。また、機械遮断ユニット10において、一方の第2フランジ33から機械遮断部支持板14を通って他方の第2フランジ33に至る通電経路は、支持部15の絶縁部15aによって遮断される。よって、機械遮断ユニット10において一対の単体遮断部11を通る通電経路は、ユニット内ブスバー16に形成される。これにより、例えば機械遮断部支持板14または操作機構37の近傍等の意図しない箇所で部分放電や絶縁破壊が生じることを回避できる。したがって、機械遮断ユニット10の信頼性を向上させることができる。
なお、他方の単体遮断部11の第2フランジ33と機械遮断部支持板14とは第1支持部15Aを通じて導通しているので、可動接触子23と操作機構37とを同電位に設けることができる。
【0099】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態の投入器を示す部分断面図である。
図12に示す第2の実施形態は、第1の実施形態の投入器241に代えて、投入器341を備える点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0100】
図12に示すように、投入器341は、高速投入器である。高速投入器は、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入可能な投入器である。本実施形態では、投入器341は、固定された一対の電極351,352間の絶縁性能を下げて絶縁破壊させることで通電開始させる放電式投入器である。
【0101】
投入器341は、第1の実施形態の投入器241における第1電極251、第2電極252、容器260およびトリガ電極265に代えて、第1電極351、第2電極352、容器360、およびトリガ電極365を備える。
【0102】
第1電極351および第2電極352は、第1電極351に貫通孔が形成されていない点を除き、第1の実施形態の第1電極251および第2電極252と同様に形成されている。
【0103】
容器360は、第1電極351および第2電極352を収容する。容器360には、ドライエアや六フッ化硫黄(SF)ガス等が封入されている。容器360は、両端が開口した円筒状の絶縁筒361と、絶縁筒361の第1端開口を閉塞する第1フランジ362と、絶縁筒361の第2端開口を閉塞する第2フランジ363と、を備える。絶縁筒361は、第1電極351および第2電極352を囲う。絶縁筒361は、第1電極351および第2電極352と同軸に配置されている。絶縁筒361は、絶縁筒361の延在方向における中間部において分割され、後述する円環状のトリガ電極365を気密に挟持している。第1フランジ362および第2フランジ363は、第1フランジ362に貫通孔が形成されていない点を除き、第1の実施形態の第1フランジ262および第2フランジ263と同様に形成されている。
【0104】
トリガ電極365は、第1電極351と第2電極352との空隙を囲うように配置されている。トリガ電極365は、金属やカーボン等の導電材により形成されている。例えば、金属の導電材としては、ステンレス鋼や銅、タングステン等を用いることができる。トリガ電極365は、円環状に形成され、第1電極351および第2電極352と同軸に配置されている。トリガ電極365は、容器360の絶縁筒361に固定的に支持されている。トリガ電極365の内周部は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次薄くなるように形成されている。トリガ電極365は、第1電極351および第2電極352から電気的に絶縁されている。トリガ電極365の外周部には、パルス電源267から延びる第1ケーブル273が電気的に接続している。
【0105】
パルス電源267は、外部から指令信号を入力されると、第1ケーブル273および第2ケーブル275間にパルス電圧を出力する。これにより、第1電極351とトリガ電極365との間に電界が集中し、第1電極351と第2電極352との間の電界に歪みが生じる。その結果、第1電極351と第2電極352との間の絶縁が破壊されてアークが生じ、第1電極351および第2電極352を通る通電経路が形成される。
【0106】
以上に説明したように、本実施形態の投入器341は、固定された一対の電極351,352間の絶縁性能を下げて絶縁破壊させることで通電開始させる放電式投入器である。この構成によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0107】
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態の直流遮断器を示す斜視図である。
図13に示す第3の実施形態は、第1の実施形態のコンデンサユニット220における充電部235に代えて、充電部335を備える点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0108】
図13に示すように、充電部335は、コンデンサバンク221およびコンデンサ支持板231の側方において、基礎5に設置されている。充電部335は、直流電源336と、直流電源336に電力を供給する絶縁トランス337と、を備える。
【0109】
直流電源336は、コンデンサバンク221の両端に電気的に接続されている。直流電源336は、コンデンサバンク221の両端に電圧を印加することで、コンデンサバンク221を充電する。直流電源336は、複数(本実施形態では4本)の絶縁支柱338によって支持されている。絶縁支柱338は、直流電源336を大地に対して電気的に絶縁しつつ、直流電源336を固定的に支持している。絶縁トランス337は、直流電源336の下方において、基礎5に設置されている。絶縁トランス337は、鉛直方向から見て複数の絶縁支柱338に囲まれた領域に配置されている。絶縁トランス337は、地上から直流電源336に電力を供給する。絶縁トランス337は、大地と直流電源336とを電気的に絶縁しつつ電力を供給する。
【0110】
以上に説明したように、本実施形態の充電部335は、コンデンサバンク221の両端に電圧を印加する直流電源336を備える。この構成によれば、コンデンサバンク221を充電することができる。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
(第4の実施形態)
図14は、第4の実施形態の直流遮断器を示す斜視図である。
図14に示す第4の実施形態は、第1の実施形態の投入器ユニット240に代えて、投入器ユニット440を備える点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0112】
図14に示すように、投入器ユニット440は、第1の実施形態の投入器241に代えて、投入器441、電源部462および制御部463が投入器支持板243に配置された構成を有する。
【0113】
投入器441は、少なくとも1つ設けられている。投入器441が複数設けられる場合、複数の投入器441は互いに直列接続される。本実施形態では、投入器441は、一対設けられている。投入器441は、高速投入器である。高速投入器は、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入可能な投入器である。本実施形態では、投入器441は、互いに離間した一対の接触子を電磁反発力により駆動し、接触させて通電させる機械式投入器である。
【0114】
投入器441は、図4に示す単体遮断部11と類似の構成を有する。投入器441は、投入器用操作機構437による可動接触子23(図4参照)の動作方向が異なること以外、単体遮断部11と同様に形成されている。投入器441の機械接点部21(図4参照)は、直流送電系統の定常送電時に開極され、転流回路200を遮断している。機械接点部21は、直流送電系統を遮断する際に閉極されて、転流回路200の両端間を導通状態にする。投入器用操作機構437は、電磁反発式の操作機構である。投入器用操作機構437は、操作ロッド35(図4参照)と連結した良導体の金属板と、金属板と対向するように設置したコイルと、を有する。機械接点部21を閉極させる際(すなわち投入器441を投入する際)には、コイルに電流を印加し、金属板に逆方向の誘導電流を発生させ、金属板にコイルと逆方向の電磁反発力を与えて操作ロッド35を動作させる。なお、機械接点部21は、上述した真空バルブ20の接点であってもよいし、ガス接点であってもよい。
【0115】
一対の投入器441は、それぞれの操作ロッド35が投入器用操作機構437による機械接点部21の閉極動作時に同一直線上で動作するように配置されている。具体的に、各投入器441の操作ロッド35は、同一直線上に延在している。本実施形態では、操作ロッド35は、投入器用操作機構437による機械接点部21の閉極動作時に第2方向Yに動作する。さらに、投入器441は、投入器用操作機構437による機械接点部21の閉極動作時の操作ロッド35の動作方向が互いに逆方向になるように配置されている。具体的に、一対の投入器441は、それぞれの投入器用操作機構437が互いに接触するように配置されている。
【0116】
電源部462は、一対の投入器441の投入器用操作機構437に電力を供給する。電源部462は、基準電位が投入器用操作機構437と同電位になるように設けられている。電源部462は、例えば、投入器441の機械接点部21の開極動作時に投入器用操作機構437に電力を供給するコンデンサと、投入器441の機械接点部21の閉極動作時に投入器用操作機構437に電力を供給するコンデンサと、それぞれのコンデンサの充電装置と、それぞれのコンデンサを充電状態に保持し、電力供給時には放電するスイッチング素子と、を備える(いずれも不図示)。電源部462は、給電部247から電力を供給される。
【0117】
制御部463は、電源部462、および一対の投入器441の投入器用操作機構437の状態監視を行う。また、制御部463は、電源部462から一対の投入器441の投入器用操作機構437への電力供給を制御する。
【0118】
一対の投入器441の密閉容器30の少なくとも一部は、水平方向で投入器支持板243の外側に配置されている。換言すると、一対の投入器441の密閉容器30は、鉛直方向から見て、投入器支持板243から突出するように配置されている。なお、図示の例では、密閉容器30の一部のみが水平方向で投入器支持板243の外側に配置されているが、密閉容器30の全体が水平方向で投入器支持板243の外側に配置されていてもよい。密閉容器30おける固定接触子22と同電位の箇所(例えば第1フランジ32)が水平方向で投入器支持板243の外側に配置されていればよい。
【0119】
一対の投入器441と投入器支持板243との間には、支持部465が介在している。支持部465は、機械遮断ユニット10における支持部15と同様に構成されている。また、一対の投入器441同士は、ブスバー466によって直列接続されている。ブスバー466は、機械遮断ユニット10におけるユニット内ブスバー16と同様に構成されている。これらにより、投入器ユニット440における通電経路、および投入器ユニット440の各部の電位は、機械遮断部2と同様になる。
【0120】
以上に説明したように、本実施形態の投入器441は、互いに離間した一対の接触子を電磁反発力により駆動し、接触させて通電させる機械式投入器である。この構成によれば、油圧やばねの復元力、電磁ソレノイドの電磁力により駆動する機械接点よりも高速で投入できる高速投入器を構成することができる。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0121】
また、投入器支持板243は、金属材料により形成され、一対の投入器441の投入器用操作機構437と同電位に設けられている。一対の投入器441それぞれの密閉容器30の少なくとも一部は、水平方向で投入器支持板243の外側に配置されている。
この構成によれば、投入器用操作機構437を投入器支持板243に近付けつつ、密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所(第1フランジ32)を投入器支持板243から遠ざけることができる。このため、密閉容器30の全体が水平方向で投入器支持板243に重なる位置に配置された場合と比較して、密閉容器30における固定接触子22と同電位の箇所と投入器支持板243とを絶縁しつつ、投入器441と投入器支持板243とを鉛直方向に近付けることができる。したがって、投入器441および投入器支持板243が配置されるスペースが鉛直方向への大型化することを抑制できる。
【0122】
(第5の実施形態)
図15は、第5の実施形態の直流遮断器を示す斜視図である。
図15に示す第5の実施形態は、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4が一直線に並んで配置されている点で、第1の実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0123】
図15に示すように、本実施形態では、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4は、第1方向Xに並んで配置されている。機械遮断部2において、各機械遮断ユニット10の一対の単体遮断部11の密閉容器30は、機械遮断部支持板14から第1方向Xに突出するように配置されている。機械遮断部2において、給電部70は、機械遮断ユニット10に対して第2方向Yの一方に配置されている。アレスタ部3は、機械遮断部2に隣り合っている。すなわち、アレスタ部3は、機械遮断部2と転流装置4との間に配置されている。
【0124】
転流装置4は、リアクトルユニット210および投入器ユニット240と、コンデンサユニット220と、が第1方向Xに並ぶように配置されている。リアクトルユニット210および投入器ユニット240は、アレスタ部3とコンデンサユニット220との間に配置されている。リアクトルユニット210において、リアクトル211は、第1方向Xの両端部を一対のステー213によって支持されている。コンデンサユニット220において、充電部235は、コンデンサ支持板231に対して第2方向Yの前記一方に配置されている。投入器ユニット240において、一対の投入器241の容器260は、投入器支持板243から第1方向Xに突出するように配置されている。投入器ユニット240において、給電部247は、投入器支持板243に対して第2方向Yの前記一方に配置されている。
【0125】
以上に説明したように、本実施形態では、機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4は、第1方向Xに並んで配置されている。
この構成によれば、洋上プラットフォーム等のレイアウトが制限されるような場所であって、例えば第1の実施形態のように機械遮断部2、アレスタ部3および転流装置4を集約して配置できない場所であっても、直流遮断器1を配置することができる。
【0126】
なお、上記実施形態では、放電式投入器の例として、微小放電を発生させることにより絶縁破壊を誘発するトリガトロン方式、および電界を歪ませることにより絶縁破壊を誘発する電界歪み方式を説明したが、これに限定されない。例えば放電式投入器として、電極間にレーザーを照射して絶縁媒体を電離させることにより絶縁破壊を誘発するレーザートリガ方式を適用してもよい。ただし、レーザー発振装置が高価であることから、機器コストを抑制するという観点では、トリガトロン方式および電界歪み方式が有利である。また、トリガトロン方式においては微小放電によりトリガ電極が損耗しやすいため、投入器の寿命の観点では、電界歪み方式およびレーザートリガ方式が有利である。
【0127】
また、上記実施形態では、投入器ユニットが一対の投入器を備えているが、これに限定されない。投入器ユニットは、投入器を1つだけ備えてもよいし、3つ以上備えてもよい。また、投入器ユニットは、放電式投入器および機械式投入器の両方を備えてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、機械遮断ユニット10が単体遮断部11を一対備えるが、これに限定されない。機械遮断ユニットは、単体遮断部を1つだけ備えてもよいし、3つ以上備えてもよい。また、機械遮断部は、単体遮断部11として、真空遮断器11Aのみ、またはガス断路器11Bのみを備えてもよい。
【0129】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、機械接点モジュールに並列接続された転流回路をリアクトル、コンデンサバンクおよび投入器を直列接続して形成した。これにより、従来技術のような機械接点モジュールに並列接続される半導体遮断器が必要ないので、機器コストを抑制することができる。さらに、転流装置の投入器を高速投入器としたので、従来技術のような半導体遮断器を用いた構成と同等の速度で、機械接点モジュールに流れる電流を遮断できる。以上により、電流の遮断時間の短縮、および機器コストの抑制が可能な直流遮断器を提供できる。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15