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特許7150886形状記憶ヒーターを備えるエアロゾル発生装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】形状記憶ヒーターを備えるエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20221003BHJP
【FI】
A24F40/46
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020568680
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019065474
(87)【国際公開番号】W WO2019238814
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】18177749.1
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン ランケル ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】ファンクレイネスト ルイ-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デスナーク シモン
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/036950(WO,A2)
【文献】特開2004-245155(JP,A)
【文献】特開平11-145659(JP,A)
【文献】特表2011-503486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344690(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置であって、前記装置が、
エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、
前記加熱チャンバー中に配設された発熱体と、を備え、
前記発熱体の材料が前記エアロゾル発生物品の中に貫通するように構成され、前記発熱体の前記材料が、形状記憶合金、形状記憶ポリマーおよび形状記憶セラミックのうちの一つ以上を含む、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記発熱体が加熱動作中にその形状を変化させるように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記発熱体が加熱動作の持続時間の間その形状を変化させるように構成されている、請求項1または2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記発熱体が加熱動作の持続時間の間その形状を連続的に変化させるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記発熱体が、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミック、またはバイメタルから成る、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記発熱体が形状変化部分および加熱部分を備え、前記加熱部分が弾性であることが好ましい、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記装置が電源およびコントローラをさらに備え、前記コントローラが前記形状変化部分への電力供給を制御するように構成された形状変化コントローラを備え、前記コントローラが前記加熱部分への電力供給を制御するように構成された加熱コントローラを備え、前記形状変化部分および前記加熱部分の供給回路が別個の電力供給回路として構成されている、請求項6に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記発熱体が加熱用ピンまたはブレードとして構成され、前記形状変化部分および前記加熱部分が前記発熱体の長軸方向の長さに沿って配設されている、請求項6または7に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記形状変化部分が前記発熱体中の中央に整列され、前記加熱部分が前記形状変化部分を囲んで配設されている、または前記加熱部分が前記発熱体中の中央に整列され、前記形状変化部分が前記加熱部分を囲んで配設されている、請求項8に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
前記発熱体が加熱動作中にその形状を変化させるように構成され、前記発熱体の形状の前記変化が、特定の温度範囲、特定の波長の光、電気の適用、電磁場の適用、その他の物理的トリガーまたは化学的トリガーによって誘発される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項11】
前記発熱体が加熱用ピンまたはブレードとして構成され、前記発熱体が加熱動作中に外向きに、好ましくは複数のセグメントの中に拡張するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
前記発熱体が加熱動作中に外向きに拡張するように構成された形状記憶材料の折り畳まれた細片から作製されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項13】
前記発熱体がその表面の周りのコイルまたは前記表面上に配設されたスケールを備え、前記コイルまたはスケールが加熱動作中に外向きに拡張するように配設されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項14】
前記装置が前記発熱体に接続された引込機構を備え、前記引込機構が、前記発熱体を前記加熱チャンバーから引き込み、前記発熱体を前記加熱チャンバーの中に押し込むためにその形状を変化させるように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項15】
エアロゾル発生装置で吸入可能なエアロゾルを発生するための方法であって、前記方法が、
i)エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、前記加熱チャンバー中に配設された発熱体とを備えるエアロゾル発生装置を提供する工程であって、前記発熱体が、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミックおよびバイメタルのうちの一つ以上を含む工程と、
ii)エアロゾル発生物品を前記加熱チャンバーに挿入する工程と、
iii)前記エアロゾル発生物品を前記発熱体で貫通する工程と、
iv)前記発熱体を加熱する工程であって、前記発熱体が加熱動作中にその形状を変化させる工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置に関する。たばこなどのエアロゾル発生基体を加熱するが燃焼しないエアロゾル発生装置が知られている。これらの装置は、ユーザーによる吸入のためのエアロゾルを生成するために十分に高い温度までエアロゾル発生基体を加熱する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル発生装置は典型的に加熱チャンバーを備え、発熱体が加熱チャンバー内に配設されている。エアロゾル発生基体を含むエアロゾル発生物品は、加熱チャンバーに挿入され、発熱体によって加熱されうる。発熱体は典型的に加熱用ピンとして構成され、物品が加熱チャンバーに挿入された時、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体の中に貫通する。発熱体は主に、発熱体を直接囲む基体を加熱する。発熱体から離れて物品の外周の近くに配設されている基体は、加熱される程度がより少ない。基体の不均一な加熱がその結果となりうる。
【0003】
その結果として、エアロゾル発生装置の加熱、よってエアロゾル発生を最適化するためのニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
これを解決し、さらなる目的のために、本発明は、吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置を提案する。装置は、エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品を受容するように構成された加熱チャンバーと、加熱チャンバー中に配設された発熱体とを備える。発熱体は、エアロゾル発生物品の中に貫通するように構成されている。発熱体は、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミック、およびバイメタルのうちの一つ以上を含む。
【0005】
発熱体の材料によって、発熱体の形状は、加熱動作中、発熱体とエアロゾル発生基体の間の表面積が増加するように変化することが好ましい。よって、発熱体は、加熱動作中にその形状を変化させるように構成されていることが好ましい。エアロゾル発生は、発熱体の形状の変化のため、加熱動作中に最適化されうる。発熱体の初期形状は、加熱チャンバーに挿入されたエアロゾル発生物品が加熱チャンバーに容易に挿入できるように提供されることが好ましい。例えば、発熱体は、初期位置において加熱用ピンまたは加熱用ブレードの形状を有してもよい。エアロゾル発生物品が加熱チャンバーに挿入され、発熱体が物品に含有されたエアロゾル発生基体の中に貫通した後、発熱体の形状が変化する。発熱体は、エアロゾル発生基体との接触面が増加するように、直線ではなく、曲げられたまたはねじられた形状に変化することが好ましい。形状の変化後、発熱体はコイルまたは巻き取り形状を有しうる。
【0006】
発熱体の形状の変化は、エアロゾル発生物品を加熱チャンバー内に固定するために利用されうる。これに関して、エアロゾル発生物品は、発熱体の形状の変化のために、加熱チャンバーの内側に締め付けられうる。コルクの内側にコルク栓抜きが配設されるのと類似した発熱体の形状の変化によって、物品の望ましくない除去または位置変化が防止されうる。
【0007】
加熱動作はまた加熱サイクルとして示されうる。加熱動作は、発熱体の作動によって開始される。発熱体は、ボタンによって作動されうる。発熱体は、エアロゾル発生物品の挿入を検出するセンサーによって作動されうる。発熱体は、スマートフォンまたはスマートウォッチなどの外部装置と通信する通信インターフェースによって作動されうる。加熱動作は発熱体の作動で始まり、発熱体の作動停止で終了しうる。
【0008】
加熱動作が終了した後、発熱体はその初期形状に戻ることが好ましい。これは、加熱チャンバーからのエアロゾル発生物品の取り外しを容易にすることが好ましい。
【0009】
加熱チャンバーは、従来の紙巻たばこに似た円筒形状を有するエアロゾル発生物品を挿入するための中空の管状形状を有してもよい。物品を挿入するための加熱チャンバーの開口部は円形であってもよい。発熱体は、加熱チャンバーの中央に配設された加熱用ブレードとして構成されうる。
【0010】
発熱体は、加熱動作の持続時間の間その形状を変化させるように構成されうる。
【0011】
エアロゾル発生基体の異なる部分が加熱動作の間に加熱されるため、この実施形態ではエアロゾル発生が強化されうる。加熱動作の開始時に、エアロゾル発生基体の第一の部分が主に加熱されうる。加熱動作の間、発熱体の形状変化の進行により、エアロゾル発生基体のさらなる部分が主に加熱される。よって、より均一なエアロゾル発生が達成される。発熱体は、加熱動作の開始時に第一の形状に配設されるように構成されうる。発熱体は、加熱動作の終了近くに第一の形状とは異なる第二の形状を有するように構成されうる。発熱体は、加熱動作の終了後、第二の形状から第一の形状に戻るように構成されうる。発熱体は、加熱動作の間に、第一の形状と第二の形状の間にある複数の明確に異なる形状を有するように構成されうる。
【0012】
発熱体は、加熱動作の持続時間の間、その形状を連続的に変化させるように構成されうる。発熱体の連続的な形状変化は、より均一なエアロゾル発生をもたらす。
【0013】
発熱体は、エアロゾル発生基体の特定の望ましい部分を加熱するための、特定の好ましくは予め定義された時間の間に、その形状を変化させるように構成されうる。
【0014】
発熱体に使用される形状記憶合金には、以下が含まれる(網羅的ではない):Ag-Cd 44/49原子% Cd、Au 46.5/50原子% Cd、Cu-Ni 14/14.5重量% Alおよび3/4.5重量% Ni、Cu-Snおよそ15原子% Sn、Cu-Zn 38.5/41.5重量% Zn、Cu-Zn-X(X = Si、Al、Sn)、Fe-Ptおよそ25原子% Pt、Mn-Cu 5/35原子% Cu、Fe-Mn-Si、Co-Ni-Al、Co-Ni-Ga、Ni-Fe-Ga、Ti-Nb、Ni-Tiおよそ55~60重量% Ni、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Pd、Ni-Mn-Ga。
発熱体に使用される適切な形状記憶ポリマーには、次が含まれる(網羅的ではない):ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルイミド、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリイソプレン、スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエンブロック共重合体、シアン酸エステル、アクリル酸ステアリルおよびアクリル酸またはアクリル酸メチルの共重合体、ノルボネンまたはジメタンオクタヒドロナフタレンのホモポリマーまたは共重合体、マレミド、シリコン、天然ゴム、合成ゴム、ならびにそれらの混合物および組成物。さらに、形状記憶ポリマーは、強化または非強化形状記憶ポリマー材料であってもよい。
【0015】
発熱体に使用される形状記憶セラミックには、次が含まれる(網羅的ではない):マイカ-ガラスセラミック、ベータ-スポジュメンガラスセラミック、2ZnO-B23ガラス-セラミック、マイカ(KMg3AlSi3102)、窒化ケイ素(Si34)、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)およびアルミナ(Al23)を含む、ガラス相をほとんど含有しない様々な焼結セラミック、ZrO2含有セラミック、マルテンサイト形状記憶セラミック。形状記憶効果は、ペロブスカイト型酸化物(Pb、La)(Zr、Ti)O3(PZST)、Pb(Zr、Sn、Sn、Ti)O3(PZST)、(Pb、La)(Zr、Sn、Ti)O3(PLSnZT)および(Pb、Nb)(Zr、Sn、Ti)O3、(Sr、Ba)Nb26ならびに六方晶マンガナイトRMnO3(R''Ho、Y)で観察されている。
【0016】
加熱動作中の形状の変化を促進するために、発熱体は形状記憶材料、すなわち、形状記憶合金、形状記憶ポリマーまたは形状記憶セラミックを含むことが好ましい。
発熱体は、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミックまたはバイメタルから成りうる。
【0017】
発熱体を動作するための温度が、形状変化材料の形状変化を誘発するために最適な温度と類似または同一である場合、形状変化材料は、発熱体の唯一の材料として有利に使用されうる。
【0018】
発熱体は、形状変化部分および加熱部分を備えてもよく、加熱部分は弾性であることが好ましい。加熱部分は、周知の抵抗材料から作製されてもよく、一方で形状変化部分は、上述のように形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミックまたはバイメタルを備えてもよい。
【0019】
形状変化部分は、加熱動作中に発熱体の形状変化を促進するために使用されうる。発熱体の加熱部分は、加熱動作中にエアロゾル発生基体の加熱を促進するために使用されうる。エアロゾル発生基体は、たばこを含んでもよく、また形状変化部分の形状変化に必要な温度とは異なる温度でエアロゾルを最適に発生しうる。それ故に、発熱体が形状変化部分および加熱部分に分割された場合、装置が最適に動作しうる。形状変化部分の形状の変化が、加熱部分が形状を変化する効果も持つように、形状変化部分は加熱部分に取り付けられるかまたはその近くに配設されうる。
【0020】
加熱部分に弾性を提供することで、加熱動作が終了した後、加熱部分がその初期形状に戻ることが可能になる。形状変化部分は、加熱動作の開始時に第一の形状から、加熱動作の終了近くで第二の形状に、そして加熱動作が終了した後にまた第一の形状へとその形状を変化させるように構成されてもよい。加熱部分は、形状変化部分の形状変化に従ってもよい。
【0021】
発熱体全体または加熱部分または形状変化部分は、挿入されたエアロゾル発生物品の外側に配設されて、エアロゾル発生基体を外側から加熱しうる。
【0022】
装置の動作中、加熱チャンバー内にエアロゾル発生物品をしっかりと保持するための締付手段が提供されうる。締付手段は、ニードルまたはブレーキシューと類似した要素として構成されてもよい。締付手段は、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミック、またはバイメタルを含む形状変化要素として提供されることが好ましい。締付手段は、形状変化のための発熱体と共に作動されうる。締付手段は、エアロゾル発生物品を発熱体に対して圧縮するように構成されうる。
【0023】
装置は、電源およびコントローラをさらに備えてもよく、コントローラは、形状変化部分への電力供給を制御するように構成された形状変化コントローラを備えてもよい。コントローラは、加熱部分への電力供給を制御するように構成された加熱コントローラを備えてもよい。形状変化部分および加熱部分の供給回路は、別個の電力供給回路として構成されうる。
【0024】
加熱部分は、エアロゾル発生基体を加熱するための電力供給によって送達されるより大量の電力を必要としうる。形状変化部分は、形状変化を促進するためのより低い量の電力を必要としうる。形状変化部分は、形状変化を促進するために、加熱動作の開始時に比較的大量の電力を必要とする場合があり、加熱動作の間には全く電力を必要としないまたはより少ない電力を必要としうる。コントローラは、エアロゾル発生基体の加熱および形状変化部分による発熱体の形状変化を最適に促進するために、加熱部分および形状変化部分への電力供給を別々に制御するように構成されうる。コントローラの加熱コントローラは、加熱部分への電力供給を制御するように構成されている。加熱部分への電力供給は、エアロゾル発生を最適化するように構成されうる。形状変化部分に供給される電力は、発熱体の形状変化を最適化するように構成されうる。加熱部分と形状変化部分の間の別個の電力供給回路を容易にするために、電気絶縁層は形状変化部分と加熱部分の間に配設されうる。
【0025】
発熱体は、加熱用ピンまたはブレードまたはニードルとして構成されうる。形状変化部分および加熱部分は、発熱体の長軸方向の長さに沿って配設されうる。
【0026】
形状変化部分は、加熱部分の隣りに配設されうる。形状変化部分を加熱部分と共に発熱体の長軸方向の長さに沿って提供することは、発熱体の形状変化特性を最適化しうる。この点について、形状変化部分の形状変化は、加熱部分の形状変化を最適にもたらしうる。
【0027】
形状変化部分は発熱体中で中央に整列されて、加熱部分は形状変化部分を囲んで配設されてもよい、または加熱部分は発熱体中で中央に整列されて、形状変化部分は加熱部分を囲んで配設されてもよい。
【0028】
形状変化部分を中央に配設し、形状変化部分を囲んで加熱部分を配設することは、加熱部分からエアロゾル発生基体への熱伝達を最適化しうる。発熱体は、コイル、スリーブ、または抵抗被覆として構成されうる。加熱部分を中央に、および加熱部分を囲んで形状変化部分を配設することは、形状変化部分から加熱部分に向かう力の伝達を最適化することができ、それによって形状変化部分の形状変化の結果としての加熱部分の形状変化を促進しうる。発熱体は弾性に構成されていることが好ましい。
【0029】
発熱体の形状の変化は、特定の温度範囲、特定の波長の光、電気の適用、磁場の適用、その他の物理的トリガーまたは化学的トリガーによって誘発されうる。
【0030】
形状変化は、形状変化部分に電圧をかけることによって誘発されることが好ましい。この点に関して、装置のコントローラは、電力が電池から形状変化部分の中に流れ、それによって発熱体の形状変化を促進するように、電池から形状変化部分に向かって流れる電力供給を制御するように構成されうる。
【0031】
発熱体は加熱用ピンまたはブレードとして構成されてもよく、発熱体は、加熱動作中に外向きに、好ましくは複数のセグメントの中に拡張するように構成されてもよい。発熱体のこの構成はまた、発熱体が外向きに延びること、または外向きに変形するのを可能にするものとして示されうる。
【0032】
「外向きに拡張する」という用語は、加熱チャンバーの中央長軸方向軸と同一である発熱体の中央長軸方向軸から、外向きに加熱チャンバーの壁に向かう発熱体の移動を指す。この移動はまた、半径方向外向きの移動として示されうる。複数のセグメントを有する発熱体を提供することは、発熱体からエアロゾル発生基体に向かう熱分布が最適化されうるという利点を有する。また、加熱チャンバー中にエアロゾル発生物品を保持する保持力は、発熱体の拡張中に増加しうる。
【0033】
発熱体は、加熱動作中に外向きに拡張するように構成された形状記憶材料の折り畳まれた細片から作製されうる。
【0034】
形状記憶材料の折り畳まれた細片は、二つの折り畳まれた層が一緒に発熱体の形状変化部分を構成するような形状を有しうる。加熱動作中、二つの層は外向きに湾曲し始め、それによってエアロゾル発生基体を押し付けうる。
【0035】
発熱体は、その表面の周りのコイルまたは表面上に配設されたスケールを備えてもよく、コイルまたはスケールは、加熱動作中に外向きに拡張するように配置されてもよい。
【0036】
コイルは、発熱体の表面の周りの複数のコイルとして提供される。加熱動作中、コイルの端部は外向きに延びうる。この実施形態の最終形状は、有刺鉄線のように見えうる。加熱動作の終了後、コイルは元の形状に戻る。その後、エアロゾル発生物品を発熱体から簡単に取り外すことができる。発熱体がスケールを備える時、これらのスケールは加熱動作中に外向きに曲がりうる。よって、発熱体とエアロゾル発生基体の間の接触面が増加しうる。再び、加熱動作の終了後、スケールは発熱体に向かって後ろ向きに曲がり、それによって滑らかな発熱体を促進しうる。くさび、プレートまたは類似の要素などのその他の要素が、類似の効果を達成するために発熱体の外表面上に提供されうる。
【0037】
装置は、発熱体に接続された引込機構を備えてもよく、引込機構は、発熱体を加熱チャンバーから引き込み、発熱体を加熱チャンバーの中に押し込むためにその形状を変化させるように構成されうる。
【0038】
引込機構は、加熱チャンバーの外側に配設されうる。引込機構は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込みを容易にするために提供されうる。このようにして、エアロゾル発生物品の挿入および取り外しをより簡単にしうる。引込機構は、発熱体および形状変化部分を参照して上述したような形状変化材料を含むことが好ましい。引込機構の形状変化は、コントローラによって同様に制御されうる。この点に関して、コントローラは、引込機構による加熱チャンバーからの発熱体の引き込みを別々に制御するための引込コントローラを備えることが好ましい。
【0039】
引込機構はまた、発熱体を加熱チャンバーから引き込んだ後、発熱体を加熱チャンバーの中に押し戻すように構成されうる。引込機構は、エアロゾル発生物品が加熱チャンバーに挿入されていない時に、加熱チャンバーから発熱体を引き込むため、および物品の挿入を容易にするために利用されうる。エアロゾル発生物品が加熱チャンバーに挿入されている時、引込機構は、発熱体がエアロゾル発生物品の中に貫通するように、発熱体を加熱チャンバーの中に押し戻すように構成されていることが好ましい。物品の枯渇後、発熱体は加熱チャンバーから再び引き込まれて、物品の取り外しを容易にしうる。
【0040】
引込機構と発熱体との間に、支持要素が配設されうる。支持要素は、発熱体をしっかりと保持するように配設されうる。支持要素は、発熱体および引込機構が別々に制御できるように電気的に絶縁されて構成されてもよい。別個の電力供給回路は、コントローラと発熱体の間、および引込機構とコントローラの間に提供されることが好ましい。
【0041】
加熱チャンバーは、発熱体の引き込みおよび押し出しを容易にするために、加熱チャンバーの基部に開口部を備えうる。掃除要素は、加熱チャンバーからの発熱体の引き込み中に発熱体から望ましくない残留物を掻き落とすために、開口部の近くに配設されてもよい。掃除要素は、ビーズまたはリングまたは発熱体と接触する類似の構造として提供されうる。発熱体の形状変化が発熱体の表面から望ましくない破片を自動的に除去するように、掃除要素は加熱チャンバーの内側の位置に配設されてもよい。
【0042】
複数の発熱体が提供されてもよい。複数の発熱体はそれぞれ、加熱動作中に形状を変化させるために提供されうる。また、加熱動作中に形状を変化させるために一つのみまたは複数の発熱体が提供されてもよく、一方で、加熱動作中に形状を変化させないために、その他の発熱体または単一の他の発熱体を提供してもよい。
【0043】
本発明はさらに、エアロゾル発生装置で吸入可能なエアロゾルを発生するための方法に関する。方法は、
i) エアロゾル発生基体を含有するエアロゾル発生物品および加熱チャンバー中に配設された発熱体を受容するように構成された加熱チャンバーを備えるエアロゾル発生装置を提供する工程であって、発熱体が、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、形状記憶セラミックおよびバイメタルのうちの一つ以上を含む工程と、
ii) エアロゾル発生物品を加熱チャンバーに挿入する工程と、
iii) エアロゾル発生物品を発熱体で貫通する工程と、
iv) 発熱体を加熱する工程であって、発熱体が加熱動作中にその形状を変化させる工程と、を含む。
【0044】
以下に本発明の実施例を、添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】加熱動作中にその形状を変化させるように構成された発熱体を有する、本発明によるエアロゾル発生装置。
図2】発熱体の実施形態。
図3】発熱体のさらなる実施形態。
図4】発熱体のさらなる実施形態。
図5】その形状を変化させるように構成された引き込み機構を有する、エアロゾル発生装置の実施形態。
【0046】
図1は、本発明によるエアロゾル発生装置を示す。装置は、その中にエアロゾル発生物品12を挿入できる加熱チャンバー10を備える。エアロゾル発生物品12は、たばこを含有するエアロゾル発生基体を含む。加熱チャンバー10中に、発熱体14が配設されている。発熱体14は、加熱チャンバー10の長軸方向軸に沿って中央に整列された加熱用ブレードとして提供される。
【0047】
装置はハウジング16をさらに備える。ハウジング16の内側には、電池の形態での電源18およびコントローラ20が配設されている。
【0048】
図1の左側部分の図1Aは、加熱動作前の発熱体14を示す。発熱体14は直線の加熱用ブレードとして構成され、エアロゾル発生物品12は加熱チャンバー10に挿入される。よって、発熱体14の直線形状のために、発熱体14は容易にエアロゾル発生物品12の中に貫通する。図1の右側部分の図1Bでは、発熱体14は、加熱動作中に達成される構成で示されている。この点に関して、コントローラ20は電源18から発熱体14に向かうエネルギーの供給を制御する。よって、発熱体14が加熱される。発熱体14の加熱は、発熱体14の形状変化を誘発する。加熱動作中、発熱体14の形状が変化して、発熱体14とエアロゾル発生基体と間の接触面を最適化するだけでなく、加熱チャンバー10内にエアロゾル発生物品12を保持する。
【0049】
図2は、発熱体14の異なる実施形態を示す。図2Aにおいて、発熱体14は加熱部分22および形状変化部分24を備える。加熱部分22および形状変化部分24は、発熱体14の長軸方向の長さに沿って中央に一緒に整列されている。発熱体14の動作中、形状変化部分24は形状が変化し、それによって加熱部分22の形状変化を誘発する。図2Bにおいて、発熱体14はまた、形状変化部分24および加熱部分22を備える。しかし、加熱部分22からエアロゾル発生基体に向かう熱伝達が増加するように、加熱部分22は形状変化部分24を囲むように配設されている。その他の実施形態において、形状変化部分24および加熱部分22の位置付けは逆であってもよい。図2Cでは、形状変化の間に形状変化部分24から加熱部分22に向かって伝達される力が最適化されるように、形状変化部分24は加熱部分22を取り囲んで配設されている。加熱部分22ならびに形状変化部分24が加熱動作の終了後に初期位置に戻るように、加熱部分22は弾性に構成されていることが好ましい。
【0050】
図3は、発熱体14のさらなる二つの実施形態を示す。図3Aでは、発熱体14は、加熱動作中に外向きに広がる複数のセグメントから成る。図3Bは、発熱体14または発熱体14の少なくとも形状変化部分24が、加熱動作中にこれも外向きに拡張する折り畳まれた細片から成る実施形態を示す。
【0051】
図4は、発熱体14のさらなる二つの実施形態を示す。図4Aは、複数のスケール26が発熱体14の外表面上に提供されている実施形態を示す。これらのスケール26は、加熱動作の間に一度外向きに曲がる。図4Bは、複数の小さなコイル28が発熱体14の外表面の周りに巻かれている実施形態を示す。発熱体14の動作中、これらのコイル28は、発熱体14が有刺鉄線のように見えるように外向きに拡張する。すべての実施形態について、エアロゾル発生物品12が加熱チャンバー10から簡単に取り外せるように、発熱体14は、加熱動作の終了後に初期位置に戻ることが好ましい。
【0052】
図5は、引込機構30が提供されている実施形態を示す。発熱体14を加熱チャンバー10から引き込み、後で発熱体14を加熱チャンバー10に押し戻すための引込機構30が提供されている。引込機構30はまた、その形状を変化させることができる要素として提供されている。引込機構30は、形状記憶合金などの形状記憶材料として配設されることが好ましい。図5では、引込機構30を発熱体14と共に制御する一つのコントローラ20のみが図示されている。しかし、コントローラ20は、発熱体14の加熱部分を制御するための加熱部分コントローラ、発熱体14の形状変化を制御するための形状変化部分、および発熱体14の引き込みおよび押し込みを制御するための引込コントローラなどの複数のコントローラを備えうる。コントローラは別々に制御されうる。また、図5には示されていないが、支持要素は、発熱体14から引込機構30を電気的に絶縁するために、引込機構30と発熱体14の間に配設されうる。動作中、発熱体14が加熱チャンバー10から引き込まれる間、エアロゾル発生物品12は加熱チャンバー10に挿入されることが好ましい。次に、引込機構30は、発熱体14を加熱チャンバー10の中に押し込むように作動され、それによってエアロゾル発生物品12を貫通する。次に、発熱体14は、発熱体14とエアロゾル発生物品12中のエアロゾル発生基体の間の接触面が増加するように変形するように作動される。加熱動作が終了した後、エアロゾル発生物品12を加熱チャンバー10から簡単に取り外すことができ、新鮮なエアロゾル発生物品12を加熱チャンバー10の中に導入できるように、発熱体14はその初期状態に戻り、引込機構30によって加熱チャンバー10から引き込まれることが好ましい。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A-5C】