(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】剛性可変装置および剛性可変装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 23/24 20060101AFI20221003BHJP
A61B 1/005 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
G02B23/24 A
A61B1/005 512
(21)【出願番号】P 2020570255
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004184
(87)【国際公開番号】W WO2020161815
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 龍彦
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-121755(JP,A)
【文献】特開2016-7434(JP,A)
【文献】特開平6-67096(JP,A)
【文献】特開2000-262464(JP,A)
【文献】特開2001-124122(JP,A)
【文献】特開平3-139326(JP,A)
【文献】特開平5-207967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24-23/26
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金製の複数の
第1のSMA素線
と第2のSMA素線を、所定の軸方向に重ねた状態で前記軸周りに第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部
であって、前記
第1のSMA素線は、前記第1ピッチよりも狭い
第2ピッチの螺旋形状を記憶し
、前記第2ピッチの螺旋形状から前記第1ピッチの螺旋形状まで伸ばされており、前記第2のSMA素線は、前記第1ピッチよりも狭い第3ピッチの螺旋形状を記憶し、前記第1ピッチの螺旋形状まで伸ばされた前記第1のSMA素線間の隙間に沿って配置されている所定の温度以上である場合に前記記憶した形状に変形しようとする
前記コイル部を含み、前記第1のSMA素線は、所定の温度以上である場合に前記記憶した第2ピッチの螺旋形状に変形しようとし、前記第2のSMA素線は、所定の温度以上である場合に前記記憶した第3ピッチの螺旋形状に変形しようとする、1つまたは複数のコイルユニットと、
前記コイル部を加熱する加熱部と、
を含むことを特徴とする剛性可変装置。
【請求項2】
前記コイルユニットは、複数の前記コイル部を含み、
さらに、複数の前記コイル部を前記軸方向に連結する1つまたは複数の高剛性部を含むことを特徴とする請求項1に記載の剛性可変装置。
【請求項3】
前記コイルユニットは、1つまたは複数の金属製の金属素線を、
前記第1のSMA素線と前記第2のSMA素線とともに前記軸方向に重ねた状態で前記軸周りに前記第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部を含むことを特徴とする請求項
1記載の剛性可変装置。
【請求項4】
前記コイルユニットは、1つまたは複数の電気絶縁性の材料からなる絶縁素線を、
前記第1のSMA素線と前記第2のSMA素線とともに前記軸方向に重ねた状態で前記軸周りに前記第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部を含むことを特徴とする請求項
1に記載の剛性可変装置。
【請求項5】
前記コイルユニットは、1つまたは複数の電気絶縁性の材料からなる絶縁素線を、
前記第1のSMA素線と前記第2のSMA素線および1つまたは複数の前記金属素線とともに前記軸方向に重ねた状態で前記軸周りに前記第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部を含むことを特徴とする請求項3に記載の剛性可変装置。
【請求項6】
形状記憶合金製の第1のSMA素線に、第2ピッチの螺旋形状を記憶させる工程と、
形状記憶合金製の第2のSMA素線に、第3ピッチの螺旋形状を記憶させる工程と、
前記第1のSMA素線に前記第2ピッチの螺旋形状を記憶させる工程の後に、前記第1のSMA素線を前記第2ピッチよりも広い第1ピッチで巻き回した螺旋形状に伸ばす工程と、
前記第2のSMA素線に前記第3ピッチの螺旋形状を記憶させる工程の後に、前記第1ピッチで巻き回した螺旋形状に伸ばされた前記第1のSMA素線の素線間の隙間に沿って前記第2のSMA素線を配置することで、前記第1のSMA素線と前記第2のSMA素線を所定の軸方向に重ねた状態で前記軸周りに第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部を形成する工程と、
前記コイル部を加熱する加熱部を配置する工程と、
を含むことを特徴とする剛性可変装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を利用した剛性可変装置および剛性可変装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体や構造物等の挿入対象内における観察や処置のために、前記挿入対象内に挿入される可撓性を有する挿入部を備える挿入装置が例えば医療分野や工業分野において利用されている。挿入装置は、内視鏡を含む。
【0003】
例えば国際公開WO2017/094085号公報には、挿入装置の挿入部の曲げ変形のしにくさ(剛性)を変化させる剛性可変装置が開示されている。国際公開WO2017/094085号公報に開示されている剛性可変装置は、挿入部内に配置された形状記憶合金を加熱することで挿入部の剛性を高くすることができる。
【0004】
国際公開WO2017/094085号公報に開示されている剛性可変装置では、細長い形状記憶部材を加熱した状態における剛性を高くするためには、形状記憶部材を太くする必要がある。形状記憶部材を太くした場合、剛性が高まる温度にまで加熱された形状記憶部材を、剛性が低下する温度にまで冷却する時間が長くなってしまう。すなわち、国際公開WO2017/094085号公報に開示されている剛性可変装置では、剛性を高めた状態において高い剛性を得ることと、剛性を高めた状態から剛性を下げた状態への切り替わりを短時間で達成することと、の両立が困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであって、剛性を高めたときに高い剛性を得られることと、短時間で剛性を下げられることとを両立可能な剛性可変装置および挿入装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による剛性可変装置は、形形状記憶合金製の複数の第1のSMA素線と第2のSMA素線を、所定の軸方向に重ねた状態で前記軸周りに第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部であって、前記第1のSMA素線は、前記第1ピッチよりも狭い第2ピッチの螺旋形状を記憶し、前記第2ピッチの螺旋形状から前記第1ピッチの螺旋形状まで伸ばされており、前記第2のSMA素線は、前記第1ピッチよりも狭い第3ピッチの螺旋形状を記憶し、前記第1ピッチの螺旋形状まで伸ばされた前記第1のSMA素線間の隙間に沿って配置されている所定の温度以上である場合に前記記憶した形状に変形しようとする前記コイル部を含み、前記第1のSMA素線は、所定の温度以上である場合に前記記憶した第2ピッチの螺旋形状に変形しようとし、前記第2のSMA素線は、所定の温度以上である場合に前記記憶した第3ピッチの螺旋形状に変形しようとする、1つまたは複数のコイルユニットと、前記コイル部を加熱する加熱部と、を含む。
【0007】
また、本発明の一態様による剛性可変装置の製造方法は、形状記憶合金製の第1のSMA素線に、第2ピッチの螺旋形状を記憶させる工程と、形状記憶合金製の第2のSMA素線に、第3ピッチの螺旋形状を記憶させる工程と、前記第1のSMA素線に前記第2ピッチの螺旋形状を記憶させる工程の後に、前記第1のSMA素線を前記第2ピッチよりも広い第1ピッチで巻き回した螺旋形状に伸ばす工程と、前記第2のSMA素線に前記第3ピッチの螺旋形状を記憶させる工程の後に、前記第1ピッチで巻き回した螺旋形状に伸ばされた前記第1のSMA素線の素線間の隙間に沿って前記第2のSMA素線を配置することで、前記第1のSMA素線と前記第2のSMA素線を所定の軸方向に重ねた状態で前記軸周りに第1ピッチで巻回した螺旋形状のコイル部を形成する工程と、前記コイル部を加熱する加熱部を配置する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の挿入装置の構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の剛性可変装置の構成を示す図である。
【
図3】第2の実施形態の剛性可変装置の構成を示す図である。
【
図4】第3の実施形態の剛性可変装置の構成を示す図である。
【
図5】第4の実施形態の剛性可変装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。
図1に示す挿入装置100は、人体等の挿入対象内に挿入可能な細長の挿入部102を有し、挿入部102に挿入対象内を観察するための構成を有する。すなわち、本実施形態では一例として、挿入装置100は内視鏡である。内視鏡である挿入装置100の挿入部102が挿入される挿入対象は、人体に限らず、他の生体であってもよいし、機械や建造物等の人工物であってもよい。また、挿入装置100は、内視鏡の形態に限られず、人体内において医療的な処置を行う処置具等であってもよい。
【0011】
挿入部102は、細長の形状を有する。以下の説明において、細長な挿入部102の長手方向に沿う軸を長手軸Aと称する。挿入部102は、可撓性を有する可撓管部102cを有する。可撓管部102cは、挿入装置100の使用者の操作に応じて能動的に曲げ変形する、いわゆる湾曲部を含んでいてもよい。なお、
図1においては直線状の長手軸Aが示されているが、長手軸Aは挿入部102の曲げ変形に応じて変形する。
【0012】
また、以下の説明において、挿入部102の挿入対象内に挿入される側の端を先端102aとし、先端102aとは反対の端を基端102bとする。すなわち、挿入部102は、挿入対象内に先端102aから挿入される。また、長手軸Aに沿う方向のことを軸方向と称する。
【0013】
挿入装置100は、剛性可変装置1、操作部110および制御部130を含む。剛性可変装置1は、挿入部102の可撓管部102cの少なくとも一部に配置されている。操作部110および制御部130は、剛性可変装置1の動作を制御するための構成である。
【0014】
操作部110は、例えば押しボタンスイッチであり、挿入装置100の使用者が剛性可変装置1の動作を制御する指示を入力するための構成である。操作部110は、制御部130に電気的に接続されている。
【0015】
制御部130は、使用者による操作部110への指示に入力に応じて、後述する剛性可変装置1の動作を制御する。なお、剛性可変装置1および制御部130を稼働させるための電力は、挿入装置100が接続される外部装置から供給される。外部装置は、例えばビデオプロセッサや光源装置等である。なお、挿入装置100が剛性可変装置1および制御部130を稼働させるための電力を供給する電池を備えていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態では一例として、操作部110および制御部130は、挿入装置100に設けられているが、これらのうちの一部または全部は挿入装置100が接続される外部装置に設けられていてもよい。
【0017】
図2は、剛性可変装置1の構成を示す図である。剛性可変装置1は、1つまたは複数のコイルユニット2および加熱部3を含む。
【0018】
コイルユニット2は、挿入部102の長手軸Aに沿う軸Bに平行な方向に細長な形状である。剛性可変装置1は、コイルユニット2の軸Bを曲げる方向の力の入力に対する剛性を変化させることができる。ここで、剛性とは、細長であるコイルユニット2の曲げ変形のしにくさを示す。剛性は、コイルユニット2の軸Bに沿う方向について所定の長さの区間を、所定の曲率だけ曲げるのに必要となる力で表される。したがって、剛性が高いほど、コイルユニット2の曲げ方向の変形が起こりにくい。
【0019】
コイルユニット2は、1つまたは複数のコイル部10を含む。コイル部10は、形状記憶合金製の複数のSMA素線を、所定の軸B方向に重ねた状態で前記軸B周りに第1ピッチP1で巻回した螺旋形状を有する。
【0020】
形状記憶合金は、公知の技術であるため詳細な説明を省略するが、所定の温度Tを境に相変化を起こし、弾性係数が変化する。所定の温度Tは、室温よりも高い。また、形状記憶合金は、所定の温度T以上である場合に超弾性を示す。
【0021】
コイル部10に含まれる個々の前記SMA素線は、第1ピッチP1よりも狭いピッチの螺旋形状を記憶しており、所定の温度T以上である場合に前記記憶した形状に変形しようとする。なお、個々のSMA素線が記憶している螺旋形状のピッチは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0022】
具体的に、本実施形態のコイル部10は、形状記憶合金製の線状の部材である第1SMA素線11および形状記憶合金製の線状の部材である第2SMA素線12を備える。なお、
図2では、第1SMA素線11および第2SMA素線12を判別しやすくするために、第1素線SMA11にハッチングを施している。すなわち、
図2におけるハッチングは、断面を示すものではない。
【0023】
なお、第1SMA素線11および第2SMA素線12は、異なる形状記憶合金によって構成されていてもよい。また、第1SMA素線11および第2SMA素線12の断面形状は異なっていてもよい。また、第1SMA素線11および第2SMA素線12の一方または両方の表面は電気絶縁性を有する被膜により覆われていてもよい。
【0024】
第1SMA素線11および第2SMA素線12は、所定の軸Bに沿う方向に重なった状態で、軸B周りに第1ピッチP1で螺旋状に巻回されている。ここで、ピッチとは、螺旋状である第1SMA素線11(または第2SMA素線12)の軸Bに平行な方向の中心の間隔のことである。
【0025】
より詳細には、第1SMA素線11および第2SMA素線12は、軸Bに平行な方向に密接している。また、第1ピッチP1は、軸Bに平行な方向に密接させた第1SMA素線11および第2SMA素線12を密巻きにした値である。すなわち、第1ピッチP1は、第1SMA素線11および第2SMA素線12のそれぞれの軸Bに平行な方向の外寸を合計した値と同じである。
【0026】
第1SMA素線11は、第1ピッチP1よりも狭い第2ピッチP2の螺旋形状を記憶している。すなわち、第1SMA素線11は、所定の温度T以上である場合にピッチを狭くするよう変形しようとする。同様に、第2SMA素線12は、第1ピッチP1よりも狭い第3ピッチP3の螺旋形状を記憶している。すなわち、第2SMA素線12は、所定の温度T以上である場合にピッチを狭くするよう変形しようとする。第1SMA素線11が記憶している螺旋形状の第2ピッチP2と、第2SMA素線12が記憶している螺旋形状の第3ピッチP3と、は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0027】
本実施形態では一例として、第1SMA素線11が記憶している螺旋形状は、第1素線11のみを密巻きにした形状である。また、第2SMA素線12が記憶している螺旋形状は、第2素線12のみを密巻きにした形状である。すなわち、コイル部10は、密巻きの螺旋形状である第1SMA素線11および第2SMA素線12を、第1ピッチP1まで伸ばした状態で組み合わせたものである。
なお、コイル部10は、3つ以上の形状記憶合金製のSMA素線を軸Bに平行な方向に密接させた状態で密巻きにした形態であってもよい。
【0028】
加熱部3は、コイル部10を加熱する。加熱部3の構成は特に限定されないが、本実施形態では一例として、加熱部3は電熱ヒータである。本実施形態では一例として、ヒータ3は、軸Bに沿う方向に細長の形状を有し、コイル部10内に挿通されている。加熱部3は、コイルユニット2の曲げ方向の変形に伴い変形する。なお、剛性可変装置1が備える加熱部3は、1つであってもよいし複数であってもよい。また、加熱部3は、コイル部10の周囲に配置されていてもよい。
【0029】
加熱部3は、稼働することにより、コイル部10を、所定の温度T以上にまで加熱することができる。加熱部3は、制御部130に電気的に接続されており、加熱部3の動作は制御部130により制御される。制御部130は、使用者による操作部110の操作に応じて加熱部3を稼働させる。
【0030】
以上に説明した構成を有する剛性可変装置1は、加熱部3が稼働しておらずコイル部10の温度が所定の温度T未満である第1状態では、コイル部10を構成する第1SMA素線11および第2SMA素線12の弾性係数が低い状態となる。したがって、第1状態では、剛性可変装置1のコイルユニット2の剛性が比較的低い状態となる。
【0031】
また、本実施形態の剛性可変装置1は、加熱部3が稼働しコイル部10の温度が所定の温度T以上である第2状態では、コイル部10を構成する第1SMA素線11および第2SMA素線12の弾性係数が高い状態となる。
【0032】
また、第2状態では、第1SMA素線11および第2SMA素線12は、第1ピッチP1よりも狭い第2ピッチP2および第3ピッチP3の螺旋形状に変形しようとする。ここで、第1SMA素線11および第2SMA素線12は、密巻きの状態で軸Bに平行な方向に密接している。したがって、第2状態では、第1SMA素線11および第2SMA素線12が第2ピッチP2および第3ピッチP3の螺旋形状に変形しようとすることにより、コイル部10の軸Bに平行な方向の全長が変化しないまま、コイル部10を軸Bに平行な方向に圧縮する圧縮力が発生する。
【0033】
第2状態では、この圧縮力の発生と、前述した第1SMA素線11および第2SMA素線12の弾性係数の高まりと、により、コイルユニット2の剛性が第1状態よりも高い状態となる。
【0034】
このように、本実施形態の剛性可変装置1は、加熱部3が稼働の有無を切り替えることにより、コイルユニット2の剛性を変化させることができる。特に1つの形状記憶合金製の線状部材を加熱する場合に比して、本実施形態の剛性可変装置1は、第2状態におけるコイルユニット2の剛性をより高くすることができる。
【0035】
また、本実施形態のコイル部10は、線状の第1SMA素線11および第2SMA素線12により構成されていることから、熱容量が小さい。したがって、コイル部10を所定の温度T以上である状態から所定の温度未満に冷却するために必要な時間はわずかである。よって、剛性可変装置1は、コイルユニット2の剛性を高めた状態から剛性を下げた状態への切り替わりを短時間で行うことができる。
【0036】
そして、以上に説明した剛性可変装置1を挿入部102の可撓管部102c内に備える挿入装置100は、使用者による操作部110の操作に応じて、挿入部102の可撓管部102cの剛性を変化させることができる。
【0037】
前述のように、本実施形態の剛性可変装置1は、コイルユニット2の剛性を高めたときに高い剛性を得られることと、短時間で剛性を下げられることとを両立可能であるから、挿入装置100は、挿入部102のの可撓管部102cの剛性の変更幅を大きくすることと、剛性の変更に必要な時間の短縮と、を両立することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0039】
本実施形態の挿入装置100は、剛性可変装置1の構成が第1の実施形態と異なる。
図3は、本実施形態の剛性可変装置1の構成を示す図である。
【0040】
本実施形態の剛性可変装置1のコイルユニット2は、複数のコイル部10と、1つまたは複数の高剛性部13と、加熱部3と、を含む。
【0041】
複数のコイル部10は、第1の実施形態と同様に、形状記憶合金製の複数のSMA素線を、所定の軸B方向に重ねた状態で前記軸B周りに第1ピッチP1で巻回することにより構成されている。すなわち、個々のコイル部10は、第1SMA素線11および第2SMA素線12を、軸Bに平行な方向に密接させた状態で軸B周りに密巻きにした構成を有する。なお、個々のコイル部10は、3つ以上のSMA素線を軸Bに平行な方向に密接させた状態で軸B周りに密巻きにした構成を有していてもよい。
【0042】
高剛性部13は、複数のコイル部10を、軸Bに沿う方向に連結する部材である。高剛性部13は、所定の温度T以上であるコイル部10よりも高い剛性を有する。加熱部3は、複数のコイル部10を所定の温度T以上にまで加熱することができる。
【0043】
本実施形態の剛性可変装置1は、コイル部10よりも高い剛性を有する高剛性部13によって複数のコイル部10を連結することにより、複数のコイル部10を所定の温度T以上にまで加熱する第2状態において、コイルユニット2の剛性を第1の実施形態よりも高くすることができる。
【0044】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0045】
本実施形態の挿入装置100は、剛性可変装置1の構成が第1の実施形態と異なる。
図4は、本実施形態の剛性可変装置1の構成を示す図である。
【0046】
本実施形態の剛性可変装置1のコイルユニット2は、1つまたは複数の金属製の金属素線14を、複数のSMA素線とともに軸B周りに巻回したコイル部10を含む。金属素線14を構成する材料は特に限定されないが、金属素線14を構成する材料は、熱伝導率の高い金属であることが好ましい。本実施形態では一例として金属素線14は、銅合金またはアルミニウム合金からなる。
【0047】
なお、
図4では、第1SMA素線11、第2SMA素線12および金属素線14を判別しやすくするために、金属素線14にハッチングを施している。すなわち、
図4におけるハッチングは、断面を示すものではない。
【0048】
具体的に本実施形態のコイル部10は、第1SMA素線11、第2SMA素線12および金属素線14を、軸Bに平行な方向に重ねた状態で軸B周りに密巻きにすることにより構成されている。本実施形態においては、第1ピッチP1は、第1SMA素線11、第2SMA素線12および金属素線14のそれぞれの軸Bに平行な方向の外寸を合計した値と同じである。
【0049】
本実施形態の剛性可変装置1は、第1の実施形態と同様に、加熱部3の稼働の有無を切り替えることにより、コイルユニット2の剛性を変化させることができる。そして、本実施形態では、金属素線14がSMA素線11、12に接していることから、所定の温度T以上であるSMA素線11、12からの放熱量を高めることができる。よって、本実施形態では、コイル部10を所定の温度T以上である状態から所定の温度未満に冷却するために必要な時間を、第1の実施形態よりも短縮することができる。すなわち、本実施形態の剛性可変装置1は、コイルユニット2の剛性を高めた状態から剛性を下げた状態への切り替わりを第1の実施形態よりも短時間で行うことができる。
【0050】
なお、本実施形態の剛性可変装置1は、第2の実施形態と同様に、複数のコイル部10と、当該複数のコイル部10を連結する1つまたは複数の高剛性部13を含んでいてもよい。
【0051】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
【0052】
本実施形態の挿入装置100は、剛性可変装置1の構成が第1の実施形態と異なる。
図5は、本実施形態の剛性可変装置1の構成を示す図である。
【0053】
本実施形態の剛性可変装置1のコイルユニット2は、1つまたは複数の電気絶縁性の材料からなる絶縁素線15を、複数のSMA素線とともに軸B周りに巻回したコイル部10を含む。絶縁素線15を構成する材料は特に限定されないが、本実施形態では一例として絶縁素線15は、合成樹脂またはセラミックからなる。
【0054】
なお、
図5では、第1SMA素線11、第2SMA素線12および絶縁素線15を判別しやすくするために、絶縁素線15にハッチングを施している。すなわち、
図5におけるハッチングは、断面を示すものではない。
【0055】
具体的に本実施形態のコイル部10は、第1SMA素線11、第2SMA素線12および絶縁素線15を、軸Bに平行な方向に重ねた状態で軸B周りに密巻きにすることにより構成されている。本実施形態では一例として、コイル部10は、2つの絶縁素線15を備える。2つの絶縁素線15は、第1SMA素線11を軸Bに平行な方向について間に挟むように配置されている。したがって、本実施形態のコイル部10においては、第1SMA素線11と第2SMA素線12とが電気的に絶縁されている。本実施形態においては、第1ピッチP1は、第1SMA素線11、第2SMA素線12および2つの絶縁素線15のそれぞれの軸Bに平行な方向の外寸を合計した値と同じである。
【0056】
また、本実施形態の加熱部3は、第1SMA素線11および第2SMA素線12のうちの一部または全部に通電することでコイル部10を加熱する。本実施形態では、密巻きで巻回される第1SMA素線11および第2SMA素線12の間に絶縁素線15が介装されていることから、線状部材である第1SMA素線11および第2SMA素線12うちの一部または全部に通電することで、これらを発熱させることができる。
【0057】
加熱部3は、通電制御装置3bを含む。通電制御部3bは、稼働時に、第1SMA素線11および第2SMA素線12のうちの一部または全部に通電する。第1SMA素線11および第2SMA素線12のうちの一部または全部に供給される電力は、挿入装置100が接続される外部装置から供給される。なお、挿入装置100が第1SMA素線11および第2SMA素線12のうちの一部または全部に電力を供給する電池を備えていてもよい。
【0058】
本実施形態の剛性可変装置1は、第1SMA素線11および第2SMA素線12のうちの一部または全部がヒータとして動作する。このため、本実施形態の剛性可変装置1は、第1の実施形態のようにコイル部10とは別のヒータを備える必要が無いため、小型化が可能である。また本実施形態では、剛性可変装置1を小型化することにより、挿入装置100の挿入部102を小型化することができる。
【0059】
なお、本実施形態の剛性可変装置1は、第2の実施形態と同様に、複数のコイル部10と、当該複数のコイル部10を連結する1つまたは複数の高剛性部13を含んでいてもよい。また、本実施形態の剛性可変装置1は、第3の実施形態と同様に、コイル部10が金属素線14を含んでいてもよい。
【0060】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う剛性可変装置および挿入装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。