(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ブランクを作製するための方法、ブランク、および歯科修復物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/488 20060101AFI20221003BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20221003BHJP
A61C 5/70 20170101ALN20221003BHJP
【FI】
C04B35/488
A61C13/00 Z
A61C5/70
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021023386
(22)【出願日】2021-02-17
(62)【分割の表示】P 2018534146の分割
【原出願日】2016-12-23
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】102015122861.0
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】504013395
【氏名又は名称】デグデント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ローター、フォルクル
(72)【発明者】
【氏名】ステファン、フェチャー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、クッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ、エーフナー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0175801(US,A1)
【文献】国際公開第2014/062375(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0224454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/488
A61C 13/00
A61C 5/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料のブランク(28、48)の調製のための方法であって、ここにおいて、第1のセラミック材料(14)の層が注ぎ込み可能な状態でモールド(10)内に充填されることと、前記層内に第1の開放空洞(18)が形成されることと、第2のセラミック材料(20)が注ぎ込み可能な状態で前記第1の開放空洞内に充填されることと、前記材料が一緒に加圧され、次いで熱処理されることと、ここにおいて、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)は、室温において存在する安定化された結晶形態の色および割合に関して前記第2のセラミック材料(20)の材料と異なり、
前記第1のセラミック材料(14)中では7.0wt%から9.5wt%の間にあり、前記第2のセラミック材料(20)中の酸化イットリウムのパーセンテージが4.5wt%から7.0wt%の間にあり、ここにおいて、前記第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの前記パーセンテージは、前記第2のセラミック材料中の前記パーセンテージより高く、
歯科修復物を前記ブランク(28、48)から導出した後、前記歯科修復物の象牙質領域は少なくとも一部で、前記第2のセラミック材料(20)から形成され、切縁領域は、前記第1のセラミック材料(14)から形成される、方法。
【請求項2】
前記ブランクは、歯科修復物(42)の調製に使用されるブランクであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のセラミック材料(20)の充填後に、第2の開放空洞(26、36)がその中に作られることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第3のセラミック材料(38)が第2の開放空洞(36)内に充填され、前記第1および/または第2のセラミック材料の組成と異なる組成を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の第1の開放空洞(18)が前記第1のセラミック材料(14)の前記層内に形成されることと、セラミック材料(18)、特に前記第2のセラミック材料がそれらの空洞内に充填されることとを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の第1の開放空洞(18)のうちの少なくともいくつかは、異なる内部幾何学的形状を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のセラミック材料(20)は、完全焼結後に前記第1のセラミック材料(14)の係数より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど高い熱膨脹係数を有する材料であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の開放空洞(18)の内部幾何学的形状は、修復物を備えるべき顎領域から出て来る歯の残根に形成される支台歯またはアバットメントなどの、口腔内に露出している領域の形状と相似的な形状に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記第2のセラミック材料は、Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mnからなる群の要素の少なくとも色付けする酸化物で着色されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化物は、Fe
2O
3、Er
2O
3、またはCo
3O
4であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
使用される前記セラミック材料は、≧1である事前焼結後の前記材料(14、20)における二酸化ジルコニウム内の正方結晶相と立方結晶相との商を有することを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、セラミック材料のブランクを、特に歯科修復物の調製に使用されるべきブランクを調製するための方法に関するものであり、ここにおいて、第1のセラミック材料および次いで異なる組成の第2のセラミック材料がダイ内に充填され、ここにおいて、材料は、加圧され、加圧後に焼結される。
【0002】
本発明は、特に二酸化ジルコニウムを含有し、異なる組成の領域を有する、セラミック材料を備える、歯科フレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、アバットメント、ピン構造などの歯科修復物、特にクラウンまたは部分的クラウンの調製に使用されるべき事前焼結または完全焼結されたブランクに関するものでもある。
【0003】
米国特許第8,936,848B2号では、歯牙交換品の調製のために使用され、異なる化学組成の多数の層を備える二酸化ジルコニウムのブランクを開示している。それによって、個別の層は、異なるパーセンテージの酸化イットリウムを有する。
【0004】
二酸化ジルコニウムの本体部は、L*a*b*色空間内の直線に沿って色度の減少または増大を示す(米国特許出願公開第2014/0328746A1号)。
【0005】
国際公開第2014/062375A1号による歯科対象物の調製のための二酸化ジルコニウムのブランクは、異なるパーセンテージの正方結晶相および立方結晶相を有する少なくとも2つの材料領域を有し、ここにおいて、これらの領域の1つの領域ではその商は1より大きく、他の領域ではその商は1より小さい。
【0006】
欧州特許第2,371,344A1号は、表面から所望の深さのところまで安定化剤で富化されたセラミック本体部に関するものである。
【0007】
二酸化ジルコニウムは、歯科修復物を作製するためのセラミック材料として使用される。フレームワークは、たとえば、二酸化ジルコニウムのブランクからミリングされ得、次いで、焼結され得る。次の処理段階において、ベニアが手作業でフレームワークに施され、ここにおいて、少なくとも1つの切歯材料が施され、融合される。これらの処理方策はすべて、時間がかかり、さらに、歯科修復物が要求条件を満たすことを確実にしない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、従来技術の不利点が回避されるように、および特に美観上の要求条件を満たし、さらに大きな負荷のかかる領域内で高い強度を有する、歯科修復物が骨の折れる仕上げのなしでセラミック材料から作製され得るような前述のタイプの方法を開発することである。
【0009】
この目的を達成するために、特に、第1のセラミック材料の層がダイ内に充填されること、第1の開放空洞が層内に形成され、第2のセラミック材料が第1の開放空洞内に充填されること、および材料は一緒に加圧され、次いで熱処理されることが提案される。
【0010】
本発明によれば、注ぎ込み可能な材料の層がダイ内に最初に充填される。この材料は、たとえば、1g/cm3から1.4g/cm3の間、特に1.15g/cm3から1.35g/cm3の間の領域の、かさ密度を有する、無色の二酸化ジルコニウム粒状材料であるものとしてよい。40μmから70μmの間の粒径D50を有する、粒状材料の充填に続いて、たとえばプレスプランジャを用いて開放空洞が形成される。これは、たとえば、第1のセラミック材料の一部を追い出すことによって、および/または軽く突き固めることによって、実行される。したがって、特に実質的に円錐状の幾何学的形状を有する、このように形成された陥凹部もしくは空洞において、第2のセラミック材料が、クラウンまたは部分的クラウンがブランクから作製されるべきである場合に充填され、円錐状の形状の陥凹部または空洞は、歯の残根もしくはアバットメントの幾何学的形状と揃えられ、それにより、材料は一緒に加圧される。
【0011】
第1の開放空洞を充填する、第2のセラミック材料においてさらなる第2の開放空洞を形成することも可能である。このステップは、すべての材料の同時に生じる加圧が随伴するものとしてよい。
【0012】
材料の突き固めは、これと無関係に行われる。
【0013】
圧縮は、好ましくは1000バールから2000バールの間にある圧力で好ましくは実行される。約3g/cm3の密度が得られる。次いで、700℃から1100℃の間、特に800℃から1000℃の範囲内の温度で、100分から150分の間の時間にわたって、脱脂および事前焼結が実行される。
【0014】
脱脂および事前焼結は、DIN-ISO6872に従って測定された、10MPaから60MPaの間、特に10MPaから40MPaの間の破壊強さが達成されるような仕方で実行されるべきである。
【0015】
第2のセラミック材料内に第2の開放空洞が形成され、第3のセラミック材料がその中に充填される場合、この組成は、第2のセラミック材料の組成と異なるべきであり、特に第2/第1の材料より低い半透明性および/または高い曲げ強度を有するという点で異なるべきである。
【0016】
特に本発明によれば、多数の第1の開放空洞が第1のセラミック材料の層内にもたらされ、第2のセラミック材料がこれらの中に充填される。これは、多数の異なる分離されたブランク部分、いわゆるネストを生じさせ、それにより、事前焼結の後に、多数の歯科修復物がそのようなブランクの部分から、特にミリングおよび/または研磨を通じて導出され得る。それによって、ブランク部分の寸法が、それぞれの根側/象牙質側の材料領域の幾何学的配置構成も異なり得る、異なる幾何学的形状の修復物を導出するために互いに異なることも可能である。したがって、ネスト/ブランク部分の数およびその幾何学的形状に従って1つのブランクから異なる形状の歯を得ることが可能である。すでに述べたように、第2の領域から象牙質芯が形成され、第1の領域から切歯が形成される。
【0017】
特に、本発明では、第2のセラミック材料の熱膨脹係数が第1のセラミック材料の熱膨脹係数よりも0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど高いと規定している。材料の熱膨脹係数が異なる結果、ブランクから導出された歯科修復物の強度の増大を引き起こす、圧縮応力が第1の材料中に、すなわち、切歯材料中に発生させられる。
【0018】
さらに、セラミック材料を所望の程度まで、特に、第1の領域について第2のセラミック材料と比較して半透明性が高くおよび色が薄い切歯材料が使用されるように着色する可能性があり得る。
【0019】
歯科修復物または他の成形本体部が好ましくは事前焼結されたブランクから導出される場合、当然のことながら、ブランクが最初に完全焼結され、次いで成形本体部を、特にミリングもしくは研磨により作製するという可能性もある。
【0020】
ブランクがいつ最後まで焼結されるかに関係なく、特に、完全焼結が10分から250分の間の期間にわたって、1300℃から1600℃の範囲内の温度で実行されることが規定されている。焼結は、少し高い温度でも実行され得る。
【0021】
たとえば出発物質の製造業者によって与えられている温度より100℃高い温度で、および完全焼結のために製造業者によって推奨されている時間より長く、焼結が実行される場合、これは、過焼結と称される。
【0022】
本値は、特に出発物質が実質的に、特に80wt%を超える二酸化ジルコニウムを含有するときに適用される。
【0023】
酸化イットリウムが特に二酸化ジルコニウムに添加されるが、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および/または酸化セリウムが添加されてもよい。
【0024】
セラミック材料が着色される場合、特に、群Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、好ましくはFe2O3、Er2O3、またはCo3O4の要素からの色付けする酸化物が使用される。
【0025】
したがって、本発明は、使用されるセラミック材料が、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO2)が加えられるが、特に、酸化イットリウムが加えられた二酸化ジルコニウムを含有するという事実も特徴とし、ここにおいて、第1のセラミック材料は第2のセラミック材料の材料と、室温において安定化される色および/または結晶形態に関して異なる。
【0026】
さらに、第1および/または第2のセラミック材料が、第2の材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが4.5w%から7.0wt%の範囲内であり、および/または第1の材料中のパーセンテージが7.0wt%から9.5wt%の範囲内であるようなものであると規定され、ここにおいて、第1のセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージは、第2の材料中のパーセンテージよりも高い。
【0027】
第1、およびさらに第2の領域の材料は、それによって、事前焼結後に両方の領域の二酸化ジルコニウムの正方結晶相と立方結晶相との商が≧1となるように選択されるべきである。
【0028】
wt%の次の組成は、第1および第2のセラミック材料に対する基本材料として好ましい。
HfO2 <3.0
Al2O3 <0.3
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(たとえば、SiO2、Fe2O3、Na2O)
第1の層:Y2O3 7.0から9.5
第2の層:Y2O3 4.5から7.0
着色酸化物:0~1.5
ZrO2=100-(Y2O3+Al2O3+HfO2+不可避な成分+色付けする酸化物) 追加の結合剤が加えられる可能性もある。これは、重量パーセントの上記の記述において考慮されていない。
【0029】
本発明の教示によれば、完全焼結後に、原理上ベニアを張り付けなくてよい、モノリシック構造の歯科修復物が得られるが、そうした場合でも、本発明からの逸脱はない。
【0030】
特に二酸化ジルコニウムおよび異なる組成の領域を含む、セラミック材料からなる、歯科フレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、アバットメント、ピン構造などの歯科修復物、特にクラウンまたは部分的クラウンを作製する際に使用するための事前焼結または完全焼結されたブランクは、ここにおいて第1の領域は第1のセラミック材料であり、少なくとも1つの第2の領域は第2のセラミック材料であり、これらの領域は互いに隣接する、少なくとも1つの第2領域は第1の領域内に延在し、基部領域からのテーパーを有する外側幾何学的形状を有するという事実を特徴とする。それによって、基部領域は、第1の領域の外面の領域内に貫入し、好ましくはそれと合併すべきである。
【0031】
基部領域から延在する第2の領域は空洞を有することも可能である。
【0032】
これとは無関係に、外側幾何学的形状における第2の領域は、円錐状に延在する幾何学的形状を有する。
【0033】
第3の領域が第2の領域内に延在し、前記第3の領域は第2のセラミック材料のものから逸脱する組成の第3のセラミック材料からなる可能性もある。
【0034】
本発明により、多数の第2の領域が第1の領域によって囲まれ、特に、複数の第2の領域のうちのいくつかがその外部幾何学的形状に関して異なることが重視されるべきである。
【0035】
したがって、たとえば、切縁領域よりも象牙質において高い強度を有する、異なる幾何学的形状のクラウンまたは入れ歯が作製され得る。この目的のために、ブランクから歯科修復物を導出した後、象牙質は、第2の領域の部分の領域内に形成され、切縁領域は、ブランクの第1の領域の部分から形成される。
【0036】
本発明は、さらに、ブランクが酸化イットリウムが加えられた二酸化ジルコニウムを含むこと、第2または第3のセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが4.5wt%から7.0wt%の間にあり、第1のセラミック材料中では7.0wt%から9.5wt%の間にあること、ここにおいて、第1のセラミック材料中の酸化イットリウムのパーセンテージは、第2のセラミック材料中のパーセンテージより高い、を特徴とする。
【0037】
第2の領域の材料中のイットリウム含有率が低ければ低いほどその結果、第1の領域の材料と比較して強度が高くなる。
【0038】
さらに、第2の領域のセラミック材料が着色され、第1の領域の材料が薄く着色されるか、または全く着色されず、それにより、結果として第2の領域内よりも高い半透明性が生じるという可能性もある。
【0039】
歯科修復物、特に歯、クラウン、または部分的クラウンは、切歯側に延在する第1の材料の第1の層と第2のセラミック材料からなる根元側に延在する第2の層とを備えることによって、第1の層は第2の層に比べて高い半透明性および/または低い強度を有することと、第1の層は第2の層の係数に比べて約0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど低い熱膨脹係数を有することとを特徴とする。
【0040】
本発明のさらなる詳細、利点、および特徴は、結果として、請求項および、本明細書で開示されている特徴単独でおよび/または組み合わせてだけでなく、図面に示されている例示的な実施形態の次の説明からも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1a-1cは、デバイスおよびデバイスを使用して実行されるプロセスステップの概略図。
【
図3】異なる材料特性の領域を有するブランクの図。
【
図4】異なる材料特性の領域を有するさらなるブランクの図。
【
図5】歯がそこから導出されるべきブランクの概略図。
【
図6】異なる材料特性の複数の領域を有するブランクの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の教示は、同じ要素は基本的に同じ参照記号を与えられる、図を参照することによって示され、ここにおいて、特に、歯科修復物は、完全焼結後に、すぐに使用できるモノリシックな歯牙交換品が利用可能なようなモノリシック構造を有するセラミック材料から作製される。
【0043】
この目的のために、本発明では、異なる組成、したがって特性を備えるセラミック材料の領域を有し、作製されるべき修復物に従って所望の光学的および機械的特性を有し、述べたように、たとえば切歯材料を手で施さなくても完全焼結後にモノリシックに加工された歯牙交換品をすぐに使用する可能性をもたらす、ブランクの調製を規定している。
【0044】
さらに、特に望ましい強度値が、高負荷が発生する範囲内で達成可能である。所望の光学的特性が達成され得る。
【0045】
図1から
図3を参照しつつ、歯科修復物、例示的な実施形態では歯、が作製され得るブランクの製造が説明される。
【0046】
したがって、wt%による次の組成を有し得る、特に酸化イットリウムで安定化された二酸化ジルコニウムである、第1のセラミック材料14の形態の注ぎ込み可能な粒状物が、加圧ツール12のダイ10内に充填される。
HfO2 <3.0
Al2O3 <0.3
Y2O3 7.0から9.5
色付けする酸化物:0~0.5
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO2、Fe2O3、Na2Oなど)
ZrO2 100-(Y2O3+Al2O3+HfO2+色付けする酸化物+技術的に引き起こされる不可避な成分)
結合剤も加えられてよいが、上記の重量パーセント値では考慮されない。
【0047】
しかしながら、特に、第1のセラミック材料14は切歯材料として使用され、高い半透明性が望ましいので、組成物は色付けする酸化物をごく少量のみ含むか、または全く含まないこと、たとえば、≦0.5wt%だけ含むことが規定される。酸化イットリウムのパーセンテージが比較的高い結果として、正方結晶相は、作製されたモールド部分の切縁領域、すなわち、歯科修復物において50から60%のみであり、残り部分は、立方および単斜晶相である。
【0048】
次いで、プレスプランジャ16を用いて、材料14またはこの材料から形成された層に開放空洞18が形成される。プレスプランジャを用いることで、材料14は変位させられるか、またはわずかに突き固められる。空洞18が形成された後(
図1b)、プレスプランジャ16が取り出され、wt%の次の組成のうちの1つを有し得る、第2のセラミック材料20が空洞18内に充填される。
HfO
2 <3.0
Al
2O
3 <0.3
Y
2O
3 4.5から7.0
色付けする酸化物:0~1.5
技術的に引き起こされる不可避な成分≦0.2(SiO
2、Fe
2O
3、Na
2Oなど)
ZrO
2 100-(Y
2O
3+Al
2O
3+HfO
2+色付けする酸化物+技術的に引き起こされる不可避な成分)
それによって、1つまたは複数の着色酸化物は、作り出されるべき歯の象牙質が第2のセラミック材料20から形成されるので、所望の歯の色が結果として生じる量だけ存在すべきである。Y
2O
3の比較的低いパーセンテージは、完全焼結された歯牙交換品の象牙質は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%と高い正方相含有率を有し、それにより高い強度を実現することをさらに確実にする。
【0049】
第2のセラミック材料20を空洞18(
図1c)内に充填した後、材料14、20、それぞれ、これらから形成される層もしくは領域は、結果として突き固めがなされる際に使用される下側もしくは上側パンチ22、24を用いてダイ10内で加圧される。加圧後、ブランク28は、約3g/cm
3の密度を有する。加圧は、1000バールから2000バールの間にある圧力で、好ましくは実行される。
【0050】
セラミック材料14、20に関して、これらは、1g/cm3から1.4g/cm3の間のかさ密度を有することが留意されるべきである。加圧後、密度は約3g/cm3である。
【0051】
図2は、
図1bのより詳細な内容を示す。空洞18は、第1のセラミック材料14内に/それぞれその材料を備える層内にプレスプランジャ16を通じて形成されることがわかる。基部側では、ダイ10はプレスプランジャ22によって境界を画定される。
【0052】
図3からわかるように、第2の空洞26は、プレスプランジャ22、24による圧縮または、任意選択で,たとえばミリングによって、事前焼結の後に第2の材料20内に形成され得る。
【0053】
しかしながら、
図1c)によれば、図示されていないプレスプランジャを用いて、底側の開放空洞18を完全に埋める、材料20で対応する第2の空洞26を形成することも可能である。
【0054】
第2の空洞26が存在しているかいないかに関係なく、ブランク28の事前焼結が、加圧後に、特に800℃から1000℃の範囲内の温度で、100分から150分の間の時間期間にわたって実行される。最初に、脱脂を行い、次いで事前焼結する。事前焼結後のブランク28の密度は、約3g/cm3である。事前焼結されたブランク28の破壊強さは、10MPaから60MPaの間であるべきである。
【0055】
ブランク28はホルダー30を備え、それにより、
図5を参照しつつ説明されているように、歯などの歯科修復物をブランク28から導出するために、ブランク28が、たとえばフライス盤または研削盤で加工され得る。それによって、作製されるべき歯は、
切縁領域が第1のセラミック材料14によって形成される領域32内に突入し、それらの部分内の象牙質領域が第2のセラミック材料20によって形成される第2の領域34内に突入するようにブランク28内に少なくとも実質的に横たえられる。次いで、ブランク28は、このデータを考慮して加工される。
【0056】
図4は、第1のセラミック材料14内の第1の空洞18の充填および空洞18内への第2のセラミック材料20の充填の後に、第2の空洞36は、
図1b)の手順に従って任意選択で充填され、それにより、第3のセラミック材料が、特により高い強度が達成され得るように組成に関して第2のセラミック材料と異なる、そのように形成された空洞36内に充填されることを例示している。空洞40は、同様に、
図3を参照しつつ説明されているように、第3のセラミック材料38内に形成され得る。
【0057】
図5が例示しているように、歯科修復物、例示的な実施形態では歯42がブランク28から導出される。この目的のために、ブランク28内の第1のセラミック材料14からの第1の領域32および第2のセラミック材料20からの第2の領域34のコースを知ることで、作製されるべき歯42は、切歯が第1の領域32内に貫入し、象牙質46が第2の領域34内に貫入するように領域32、34内に実質的に横たえられる。
【0058】
ブランク28からそのように実質的に位置決めされた歯42を取り出した後、原理上直接使用され得る、特にベニアを必要としない、歯牙交換品が利用可能である。モノリシックの歯42が、本発明の教示に基づき調製される。この場合、ブランク28からの調製は、
図3を参照しつつ説明されているように、また
図5から明白なように、第2の領域34がすでに開放空洞26を有しているという点で容易にされる。
【0059】
本発明による教示は、第2および任意選択で第3のセラミック材料から作られ、異なる幾何学的形状(
図6)を有し得る、複数の領域52、54、56を有するブランク48を形成する可能性を導入し、それにより異なる幾何学的形状の対応する歯が形成され得る。第2のセラミック材料20から形成されたいわゆる第2の領域50、52、54は、第1のセラミック材料48内に埋め込まれる、すなわち、特に図からもわかるように、これによって囲まれる。第2の領域50、52、54は、基部側において覆われていない。
【0060】
特に
図2~
図4からわかるように、第2の領域は、底から、すなわち、基部領域から始まるテーパーを有する外部幾何学的形状を有する。これは、円錐状幾何学的形状と称されてよく、ここにおいて、外側輪郭は自由曲面を表す。
【0061】
基部領域35/これを下側で制限する基部表面は、第1の領域32の基部表面33の下側と合併する。
【0062】
ネストとも称される、ブランク部分52、54、56を調製するために、
図1を参照しつつ説明されているように、第1の材料14から作られ、第1の領域50として指定される層内に対応する開放空洞を有することが必要であり、それにより、注ぎ込み可能な第2のセラミック材料20は、上で説明されている方式で空洞内に充填されるものとしてよく、次いで、材料14、20は一緒に加圧される、すなわち、突き固められ得る。
【0063】
材料14、20の物理的特性に関して、半透明性および強度の違いに加えて、これらは異なる熱膨脹係数も有するべきであることに留意されたい。特に、本発明は、完全焼結後に第1のセラミック材料14が第2のセラミック材料20から形成された第2の領域38、52、54、56より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど低い熱膨脹係数を有することを規定する。この結果として、第1の領域50内に、すなわち、切歯材料内に、強度の増加をもたらす、圧縮応力が生じる。
【0064】
ブランク28、48に関して、たとえば寸法18×15×25mmの立方形形状、またはたとえば直径100mmの円盤形状を、それによって本発明の教示に影響を及ぼすことなく、有することができることに留意されたい。これは、特に
図6を参照することによって説明されているように、たとえば、複数の第2の領域52、54、56、いわゆる象牙質芯が円盤形状のブランク内に、異なる幾何学的形状の修復物を生み出すために、ただし、半透明性および強度に関して有利な層コースを有して、形成され得るという利点をもたらす。
【0065】
任意選択で異なる幾何学的形状を備える、1つまたは複数の第2の領域52、56、すなわちネストの位置は知られているので、これらはデータレコード内に記憶され得る。次いで、CADデータセットとして利用可能である、作製されるべき修復物は、歯牙交換品がミリングおよび/または研磨によってブランクから導出されるようにブランク部分に関して、ブランク部分内に位置決めされる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] セラミック材料のブランク(28、48)、特に歯科修復物(42)の調製に使用されるべきブランクの調製のための方法であって、ここにおいて、第1のセラミック材料(14)および次いで異なる組成の第2のセラミック材料(20)がモールド(10)内に充填され、ここにおいて、前記材料は、加圧され、加圧後に焼結され、
前記第1のセラミック材料(14)の層が注ぎ込み可能な状態で前記モールド(10)内に充填されることと、前記層内に第1の開放空洞(18)が形成されることと、前記第2のセラミック材料(20)が注ぎ込み可能な状態で前記第1の開放空洞内に充填されることと、前記材料が一緒に加圧され、次いで熱処理されることと、ここにおいて、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2
O
3
)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2
)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)は、室温において存在する安定化された結晶形態の色および割合に関して前記第2のセラミック材料(20)の材料と異なる、を特徴とする方法。
[2] 前記第2のセラミック材料(20)の充填後に、第2の開放空洞(26、36)がその中に作られることを特徴とする[1]に記載の方法。
[3] 第3のセラミック材料(38)が第2の開放空洞(36)内に充填され、前記第1および/または第2のセラミック材料の組成と異なる組成を有することを特徴とする[1]または[2]に記載の方法。
[4] 複数の第1の開放空洞(18)が前記第1のセラミック材料(14)の前記層内に形成されることと、セラミック材料(18)、特に前記第2のセラミック材料がそれらの空洞内に充填されることとを特徴とする[1]から[3]の少なくとも一項に記載の方法。
[5] 複数の第1の開放空洞(18)のうちの少なくともいくつかは、異なる内部幾何学的形状を有することを特徴とする[1]から[4]の少なくとも一項に記載の方法。 [6] 前記第2のセラミック材料(20)は、完全焼結後に前記第1のセラミック材料(14)の係数より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど高い熱膨脹係数を有する材料であることを特徴とする[1]から[5]の少なくとも一項に記載の方法。 [7] 前記第1の開放空洞(18)の内部幾何学的形状は、修復物を備えるべき顎領域から出て来る歯の残根またはアバットメントなどの、歯顎領域のコースと幾何学的に揃えられることを特徴とする[1]から[6]の少なくとも一項に記載の方法。
[8] 前記歯科修復物を前記ブランク(28、48)から導出した後、前記歯科修復物の象牙質領域は少なくとも一部で、前記第2のセラミック材料(20)から形成され、切歯領域は、前記第1のセラミック材料(14)から形成されることを特徴とする[1]から[7]の少なくとも一項に記載の方法。
[9] 少なくとも前記第2のセラミック材料は、群Pr、Er、Tb、Fe、Co、Ni、Ti、V、Cr、Cu、Mn、好ましくはFe
2
O
3
、Er
2
O
3
、またはCo
3
O
4
の要素の少なくとも1つの色付けする酸化物で着色されることを特徴とする[1]から[8]の少なくとも一項に記載の方法。
[10] 前記第1および/もしくは第2のセラミック材料(14、20)は、前記第1の材料中の酸化イットリウムのパーセンテージが7.0wt%から9.5wt%の範囲であり、ならびに/または第2および/もしくは第3の材料中のパーセンテージは、4.5wt%から7.0wt%であるような材料であること、ここにおいて、前記第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの前記パーセンテージは、前記第2または第3の材料中の前記パーセンテージより高い、を特徴とする[1]から[9]の少なくとも一項に記載の方法。
[11] 使用される前記セラミック材料は、≧1である事前焼結後の前記材料(14、20)における二酸化ジルコニウム内の正方結晶相と立方結晶相との商を有することを特徴とする[1]から[10]の少なくとも一項に記載の方法。
[12] 異なる組成の領域を有する、歯科フレームワーク、クラウン、部分的クラウン、ブリッジ、キャップ、ベニア、アバットメント、ピン構造などの歯科修復物(42)、特にクラウンまたは部分的クラウンの調製に使用するための事前焼結または完全焼結されたブランク(28、48)であって、ここにおいて第1のセラミック材料(14)の1つの第1の領域(28)および第2のセラミック材料(20)の少なくとも1つの第2の領域(34)は、異なる組成のものであり、前記領域は互いに隣り合って配置され、ここにおいて、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2
O
3
)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2
)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)は、室温において存在する安定化された結晶形態の色および割合に関して前記第2のセラミック材料(20)の前記材料と異なり、ここにおいて、前記第2の領域(34、52、54、56)は、前記第1の領域(32)内に延在し、基部領域(35)または基部表面からのテーパーを有する外部幾何学的形状を有する、事前焼結または完全焼結されたブランク(28、48)。
[13] 前記基部領域(35)または前記第2の領域(34)の前記基部表面は、前記第1の領域(32)の外面(33)の前記領域内に貫入し、好ましくはこれの中に合併することを特徴とする[12]に記載のブランク。
[14] その基部領域(35)または基部表面から始まる前記第2の領域(34)は、空洞(26)を有することを特徴とする[12]または[13]に記載のブランク。 [15] 前記第2の領域(34)は、その外側に円錐状の幾何学的形状を有することを特徴とする[12]から[14]の少なくとも一項に記載のブランク。
[16] 前記第2の領域(34)内に、前記第1および/または第2のセラミック材料(14、20)の組成と異なる組成を有する第3のセラミック材料からなる第3の領域(38)が延在することを特徴とする[12]から[15]の少なくとも一項に記載のブランク。
[17] 複数の第2の領域(52、54、56)は、前記第1の領域(32、50)によって囲まれることを特徴とする[12]から[16]の少なくとも一項に記載のブランク。
[18] 複数の第2の領域(52、54、56)のうちの少なくともいくつかは、その外部幾何学的形状に関して互いに異なることを特徴とする[12]から[17]の少なくとも一項に記載のブランク。
[19] 前記ブランク(28、48)は、酸化イットリウムが加えられた二酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする[12]から[18]の少なくとも一項に記載のブランク。
[20] 前記第2または第3のセラミック材料(20)中の酸化イットリウムのパーセンテージが4.5wt%から7.0wt%の間にあり、前記第1のセラミック材料(14)中では7.0wt%から9.5wt%の間にあること、ここにおいて、前記第1のセラミック材料中の酸化イットリウムの前記パーセンテージは、前記第2のセラミック材料中の前記パーセンテージより高い、を特徴とする[12]から[19]の少なくとも一項に記載のブランク。
[21] 前記第2のセラミック材料(20)は、着色される前記第1のセラミック材料(14)と異なることを特徴とする[12]から[20]の少なくとも一項に記載のブランク。
[22] 完全焼結後に、前記ブランク(28)から作製された前記修復物(42)は、切歯側より象牙質側で高い強度を有し、および/または前記切歯側では、前記象牙質側より高い半透明性を有することを特徴とする[12]から[21]の少なくとも一項に記載のブランク。
[23] 前記第1の領域(32、50)の熱膨脹係数は、前記第2および/または第3の領域(34、38)の前記熱膨脹係数より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど低いことを特徴とする[12]から[22]の少なくとも一項に記載のブランク。 [24] 特に少なくとも[12]に従って調製された歯科修復物(42)、特にクラウンまたは部分的クラウンであって、
前記修復物(42)は、モノリシックに形成され、第1のセラミック材料(14)の切歯側上に延在する少なくとも1つの第1の層(32)と、第2のセラミック材料(20)の象牙質側上に延在する第2の層(34)とを備え、ここにおいて、前記第1の層は、前記第2の層より高い半透明性および/または低い強度を有し、およびここにおいて、前記セラミック材料は、酸化イットリウム(Y
2
O
3
)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および/または酸化セリウム(CeO
2
)を添加された二酸化ジルコニウムを含有し、ここにおいて、前記第1のセラミック材料(14)は、室温において存在する安定化された結晶形態の色および割合に関して前記第2のセラミック材料(20)の前記材料と異なる、を特徴とする歯科修復物(42)、特にクラウンまたは部分的クラウン。
[25] 前記第1の層(32)の熱膨脹係数は、前記第2の層(34)の熱膨脹係数より0.2μm/m*Kから0.8μm/m*Kほど低いことを特徴とする少なくとも[24]に記載の歯科修復物。