IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】清掃ユニット取付装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20221003BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
B66B31/02 A
B66B23/22 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021027643
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129084
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久下 敬輔
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222465(JP,A)
【文献】実開昭50-118689(JP,U)
【文献】実開昭51-053691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの移動路を移動する移動体と連動して移動する手摺ベルトを支持する支持体を前記手摺ベルトの幅方向に挟持可能で、前記手摺ベルトの表面から離間する方向に突出した突出部を備えた一対の支持アームと、
前記手摺ベルトの表面に対向した第一の姿勢と、前記手摺ベルトの幅方向の一端を中心に回動して前記手摺ベルトの表面から離間した第二の姿勢との間を移動可能で、前記第一の姿勢で前記手摺ベルトの少なくとも表面の清掃を実行する清掃ユニットと、
前記一対の支持アームの少なくとも一方に対して前記清掃ユニットを接離可能に吸着させる吸着部材と、
を備える、清掃ユニット取付装置。
【請求項2】
前記清掃ユニットは、
前記一対のうち一方の支持アームに対して吸着可能な第一の吸着部材と、
前記吸着部材を当該吸着部材が吸着している前記支持アームから離間させる方向に突出するように付勢された突出部を備える第一の摺動部材と、
前記第一の摺動部材に対して略直交する方向に摺動可能で、前記突出部が非突出姿勢となる第一の位置で係合する係合位置と、前記突出部が突出姿勢となる第二の位置に摺動することを許容する非係合位置とを移動可能な第二の摺動部材と、
を備え、
前記一対の支持アームのうち他方の支持アームは、
先端に形成された回動軸と、
一端に前記回動軸に軸支されて前記清掃ユニットを前記第一の姿勢と前記第二の姿勢との間を回動可能に支持する支持部を備え、他端に前記第二の摺動部材を前記係合位置と前記非係合位置との間を移動するように誘導する誘導部を備える、前記第一の摺動部材と略平行に摺動可能な第三の摺動部材と、
を備え、
前記第三の摺動部材は、前記手摺ベルトと前記清掃ユニットとの間に異物が挿入された場合に、前記第二の摺動部材を前記係合位置に誘導するように前記清掃ユニットに対して摺動する、請求項1に記載の清掃ユニット取付装置。
【請求項3】
前記清掃ユニットは、
前記一対の支持アームのうち一方の支持アームに対して吸着可能な第一の吸着部材と、
他方の支持アームに対して吸着可能な第二の吸着部材と、
前記第二の吸着部材が前記支持アームに対して非吸着になる際に前記清掃ユニットを前記第二の姿勢に移行させる第一の回動軸と、
前記第一の吸着部材が前記支持アームに対して非吸着になる際に前記清掃ユニットを前記第二の姿勢に移行させる第二の回動軸と、
を備える、請求項1に記載の清掃ユニット取付装置。
【請求項4】
前記清掃ユニットは、
前記一対のうち一方の支持アームに対して吸着可能な第一の吸着部材と、
前記第一の吸着部材を当該第一の吸着部材が吸着している前記支持アームから離間させる方向に突出するように付勢された突出部を備える第一の摺動部材と、
前記第一の摺動部材に対して略直交する方向に摺動可能で、前記突出部が非突出姿勢となる第一の位置で係合する係合位置と、前記突出部が突出姿勢となる第二の位置に摺動することを許容する非係合位置とを移動可能な係合部材と、
前記手摺ベルトの前記表面と前記清掃ユニットとで形成される隙間に前記手摺ベルトの幅方向に延設され、前記隙間に侵入した異物により動作し、前記係合部材を前記非係合位置に移動させるリンク機構と、
を備え、
前記一対の支持アームのうち他方の支持アームは、
前記第一の吸着部材が前記支持アームに対して非吸着になる際に前記清掃ユニットを前記第二の姿勢に移行させる第一の回動軸と、
を備える、請求項1に記載の清掃ユニット取付装置。
【請求項5】
前記一対の支持アームは、前記支持体に固定部材で着脱可能に装着される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の清掃ユニット取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、清掃ユニット取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの一例であるエスカレータは、複数連結された踏段(ステップ)が無段状態と有段状態とが遷移しながら移動する。乗客コンベアを利用する場合、利用者は踏段と連動して移動する手摺ベルトに手を載せたり把持したりすることで、姿勢を支え走行時の安全を図ることが望ましい。しかしながら、不特定多数の利用者が手摺ベルトに触れるため、衛生上清掃や除菌を頻繁に行うことが望ましい。そこで、手摺ベルトに対して清掃や除菌を可能にする清掃装置が種々提案されている。これらの清掃装置は、例えば、走行する手摺ベルトに消毒液を付着させたローラを接触させたり、消毒液を噴霧したり、除菌効果のある光を照射したりして消毒を行っていた。これらの清掃装置は、乗客コンベアの手摺ベルトを把持したり手を載せたりしている利用者の手指等が当該清掃装置に巻き込まれないようにするため、利用者の手指が届かない位置、例えば、トラス内部等に設置されていた。また、このように清掃装置は、乗客コンベアの制御盤と電気的に接続された安全装置等を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3482193号公報
【文献】特許第4231505号公報
【文献】実用新案登録第3215321号公報
【文献】特開2000-355481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術で示すような清掃装置の場合、予めを乗客コンベアの構造の一部として設置する必要があり構造が煩雑になったり、安全装置を乗客コンベアの制御盤へ接続したり制御回路の改造等が必要であったりする。つまり、乗客コンベアの設置時に取り付け工事が必要であり、既存の乗客コンベアに設置することが難しいという問題があった。したがって、簡易な構造で、既存の乗客コンベアにも設置可能であり、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる清掃ユニット取付装置が提供できれば、安全性の向上及び導入の容易性の向上が図れて有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の清掃ユニット取付装置は、支持アームと、清掃ユニットと、吸着部材と、を備える。支持アームは、乗客コンベアの移動路を移動する移動体と連動して移動する手摺ベルトを支持する支持体を前記手摺ベルトの幅方向に挟持可能で、前記手摺ベルトの表面から離間する方向に突出した突出部を備える。清掃ユニットは、前記手摺ベルトの表面に対向した第一の姿勢と、前記手摺ベルトの幅方向の一端を中心に回動して前記手摺ベルトの表面から離間した第二の姿勢との間を移動可能で、前記第一の姿勢で前記手摺ベルトの少なくとも表面の清掃を実行する。吸着部材は、前記一対の支持アームの少なくとも一方に対して前記清掃ユニットを接離可能に吸着させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置を取り付けた状態を示す乗客コンベアの一例としてのエスカレータの乗降位置付近の例示的かつ模式的な側面図である。
図2図2は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置を取り付けた状態を示すエスカレータの手摺ベルトを上方から見た場合の例示的かつ模式的な上面図である。
図3図3は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全機構の詳細構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図4A図4Aは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全機構の安全動作開始前の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図4B図4Bは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作中の第1状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図4C図4Cは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作中の第2状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図4D図4Dは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作完了(開動作完了)の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図5A図5Aは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置を欄干パネルに固定する構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。
図5B図5Bは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置を欄干パネルに固定する構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図6A図6Aは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作完了後の復帰動作時の第1状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図6B図6Bは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の完全動作完了後の復帰動作時の第2状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図6C図6Cは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置において、異物が回動軸から遠い位置で挿入された場合の挙動と、安全動作終了後の復帰動作時の第3状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図7図7は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作機能を説明するモデル化した比較図である。
図8図8は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作機能を説明するモデル化した他の比較図である。
図9A図9Aは、第2実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作開始前の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図9B図9Bは、第2実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作が機能した状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図9C図9Cは、第2実施形態の清掃ユニット取付装置の安全動作が機能した他の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図10図10は、第3実施形態の清掃ユニット取付装置の詳細構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図11A図11Aは、第3実施形態の清掃ユニット取付装置のリンク構造を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図11B図11Bは、第3実施形態の清掃ユニット取付装置のリンク構造の動作状態を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態に係る清掃ユニット取付装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10を取り付けた状態を示す乗客コンベアの一例としてのエスカレータ12の乗降位置14付近の例示的かつ模式的な側面図である。また、図2は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10を取り付けた状態を示すエスカレータ12の手摺ベルト18を上方から見た場合の例示的かつ模式的な上面図である。
【0009】
エスカレータ12は、無端状に連結された複数の踏段16(移動体)を周回(循環)移動させて作動することで利用者や荷物等の物体を例えば上階フロアと下階フロアとの間を搬送する移動路16aを構成する。なお、エスカレータ12は同一階で入口側と出口側を移動して利用者や荷物等を運ぶ構成でもよい。
【0010】
エスカレータ12の乗降位置14(乗降板)の床下には、踏段16を周回駆動するための駆動機構が収容されている。エスカレータ12の駆動機構は、主として、駆動源としてのモータと、減速機と、駆動チェーンと、駆動スプロケットと、従動スプロケットと、踏段チェーンとを備えている。モータと減速機とは、駆動装置を構成する。モータは、例えば、上階側に設けられている。モータの出力軸には、減速機が取り付けられている。減速機は、モータの回転を減速させ、モータの回転トルクを増幅させる。減速スプロケットは、減速機の出力軸に設けられ、複数の歯を有する。駆動チェーンは、無端状に形成され、減速スプロケットと駆動スプロケットとに亘って掛けられている。駆動チェーンは、減速機を介して伝達されたモータの駆動力によって、駆動スプロケットと減速スプロケットとの周りを循環走行することで、駆動スプロケットを回転させる。すなわち、駆動チェーンは、減速機を介して伝達されたモータの駆動力を駆動スプロケットに伝達する。駆動スプロケットは、踏段チェーンに噛み合う複数の歯を有し、制御盤により制御される駆動装置からの駆動力により回転する。エスカレータ12は、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に掛け渡された踏段チェーンを駆動させることで、無端状に連結された複数の踏段16を周回移動させて、複数の踏段16を走行させる。
【0011】
エスカレータ12は、複数の踏段16の進行方向における両脇(移動路16aの両側)に、欄干を備える。この欄干は、利用者等が踏段16の移動中に把持したり、手を載せたりして姿勢を安定させる等に利用可能な手摺ベルト18を含む。具体的には、欄干は、主として、スカートガードパネルと、内デッキと、欄干パネル20と、欄干パネル20の外縁部に設けられた欄干デッキに設けられた手摺レール上を走行する手摺ベルト18と、から構成されている。スカートガードパネルは、複数の踏段16の走行方向(エスカレータ12が稼働する例えば下降方向および上昇方向)に対して直交する方向(幅方向)の両側において近接して、かつ、上階側乗降口と下階側乗降口との間に亘って設けられている。スカートガードパネルの上側には、内デッキが取り付けられている。内デッキの上側には、例えば、ガラス板等の透明または半透明の部材やステンレス等の金属板で構成される欄干パネル20が取り付けられている。欄干パネル20の外周に取り付けられた手摺レールには、手摺ベルト18が移動可能に嵌め込まれている。手摺ベルト18は、踏段チェーンと同期して周回駆動する手摺ベルト駆動チェーンによって周回移動し、例えば下階側のインレット22から進出し、上階側のインレット22に進入する。踏段16と手摺ベルト18とは同方向に同期(連動)した状態で周回移動する。
【0012】
このように構成されるエスカレータ12は、上述したように、不特定多数の利用者が利用するとともに、利用者は手摺ベルト18に触れる場合が多い。そのため、エスカレータ12を安心して利用してもらうためには、手摺ベルト18のベルト表面18sを定期的にまたは頻繁に清掃したり除菌処理したりすることが望ましい。そこで、本実施形態の清掃ユニット取付装置10は、走行する手摺ベルト18に常設可能かつ容易に着脱可能な構成を備える。また、清掃ユニット取付装置10は、利用者が手摺ベルト18を把持していたり、手摺ベルト18の上に手指を載せていたりした場合、手摺ベルト18と共に手指が清掃ユニット取付装置10の内部に挟み込まれてしまった場合に強く圧迫されるリスクを軽減することができるリスク軽減構造を備える。つまり、安全機構を備える。
【0013】
清掃ユニット取付装置10は、当該清掃ユニット取付装置10をエスカレータ12の手摺ベルト18の支持部の一例である欄干パネル20に装着する一対の支持アーム24を含む。支持アーム24は、手摺ベルト18の幅W方向に挟持可能で、手摺ベルト18のベルト表面18sから離間する方向に突出した突出部24aを備えた一対のアームである。また、一対の支持アーム24の先端(手摺ベルト18のベルト表面18sから多い側)には、清掃ユニット26が設けられている。図2に示す清掃ユニット取付装置10の場合、清掃ユニット26は、手摺ベルト18のベルト表面18sに当該清掃ユニット26が対向した第一の姿勢を取ることができる。また、清掃ユニット26は、一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24の先端、つまり、手摺ベルト18の幅方向の一端を中心に回動して手摺ベルト18のベルト表面18sから離間した第二の姿勢を取ることができる。つまり、清掃ユニット26は、第一の姿勢と第二の姿勢との間を旋回して移動することができる。そして、清掃ユニット26は、第一の姿勢で手摺ベルト18の少なくともベルト表面18sの清掃(主として除菌処理)を実行することができる。
【0014】
一対の支持アーム24は、例えば、手摺ベルト18を支持する欄干パネル20(支持体)のうちエスカレータ12の乗降位置14(乗降部)における欄干湾曲部20a(ベルト湾曲部18a)の一部に装着することができる。上述したように、清掃ユニット26は、第一の姿勢から第二の姿勢に回動により移動するため、支持アーム24(清掃ユニット取付装置10)は、手摺ベルト18を支持する欄干パネル20(支持体)のうちエスカレータ12の乗降位置14(乗降部)における欄干湾曲部20a(ベルト湾曲部18a)の湾曲中心sより下方(図1において水平ラインrより下方)の位置または略水平の位置に装着される。
【0015】
図2に示されるように、清掃ユニット26は、一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24の突出部24aに回動可能に支持されている。また、一対の支持アーム24のうち他方の支持アーム24の突出部24aは、清掃ユニット26に設けられた吸着部材28(例えば、磁石)が吸着可能になっている。つまり、清掃ユニット26が手摺ベルト18のベルト表面18sに接近(対面)した場合には、吸着部材28が突出部24aに吸着する。その結果、清掃ユニット26が一対の支持アーム24に対して固定された状態(清掃除菌処理が可能な状態)になる。また、ベルト表面18sと清掃ユニット26との間に異物(例えば、利用者の手指等)が挿入された場合、吸着部材28が支持アーム24から離れることによって、ベルト表面18sと清掃ユニット26との間の空間が広がる。その結果、手指等がベルト表面18sと清掃ユニット26とにより圧迫されることが回避しやすくなる。清掃ユニット26が回動して、安全動作を実現可能な清掃ユニット取付装置10の詳細構造を説明する。
【0016】
図3は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10の安全機構の詳細構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0017】
前述したように、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10は、手摺ベルト18のベルト表面18sに対向した第一の姿勢と、ベルト表面18sから離間した第二の姿勢との間を移動可能である。この第一の姿勢と第二の姿勢を実現するために、清掃ユニット26は、ベース部材26A上に、清掃ユニット本体26M、第一の吸着部材28A、第一の摺動部材30、第二の摺動部材36等を備える。また、一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24B(第二の支持アーム)は、突出部24aの先端に形成された回動軸40と、当該回動軸40に接続された第三の摺動部材42を備える。
【0018】
ベース部材26Aは、平面部を備えた例えば樹脂製や金属製の基台であり、平面部に清掃ユニット本体26M、第一の吸着部材28A、第一の摺動部材30、第二の摺動部材36等を備える。また、第三の摺動部材42は、ベース部材26Aの平面部上で摺動可能である。
【0019】
清掃ユニット本体26Mは、例えば、殺菌効果を有する紫外線光を照射する周知の紫外線発生装置とすることができる。紫外線光は、例えば、手摺ベルト18に対面する位置に配置された紫外線LEDから照射され、照射領域を通過するベルト表面18sの除菌を行う。清掃ユニット本体26Mは、内蔵するバッテリで駆動したり、エスカレータ12側から電力の供給を受けたりして駆動してもよい。また、手摺ベルト18に接触し従動回転するローラを備え、ローラの回転により発電した電力により清掃ユニット本体26Mを駆動してもよい。なお、清掃ユニット本体26Mは、紫外線光をベルト表面18sに照射できれば、ベース部材26Aの平面部以外の位置、例えば、ベース部材26Aの内部(図3の紙面奥行き方向にずれた位置等)に配置されてもよい。
【0020】
第一の吸着部材28Aは、例えば、磁石であり、一対の支持アーム24のうち支持アーム24A(第一の支持アーム)に対面する位置(図3におけるベース部材26Aの側面の一部)に固定されている。第一の吸着部材28Aは、内部に第一の摺動部材30の先端に設けられたリリースピン32(突出部)を挿通可能な挿通穴28hを備える。第一の吸着部材28Aの吸着力は、後述するが、例えば、ベルト表面18sと清掃ユニット26との間に異物(例えば、エスカレータ12の利用者の手指等)が挿入された場合に容易に支持アーム24Aの突出部24aから離脱できる程度に設定される。第一の吸着部材28Aの吸着力(磁力)は、予め試験等により決定することができる。
【0021】
第一の摺動部材30は、一方の先端に第一の吸着部材28Aの挿通穴28hを進退可能なリリースピン32を備え、当該リリースピン32の基部にフランジ部30aを備える。また、第一の摺動部材30の他端側には、第二の摺動部材36の一方の先端に設けられた係合ピン38が進入可能な係合溝30bを備える。第一の摺動部材30は、例えば、円柱や角柱等の棒状部材で、ベース部材26Aの平面部上に固定された支持部材26tによって、矢印A1,A2方向に摺動可能に支持されている。また、フランジ部30aと支持部材26tとの間には、付勢部材34として、例えば圧縮バネが配置されている。したがって、第一の摺動部材30は、付勢部材34によって、矢印A2方向に付勢され、リリースピン32が第一の吸着部材28Aの挿通穴28hを通過し、第一の吸着部材28Aから突出可能に構成されている。つまり、第一の吸着部材28Aを当該第一の吸着部材28Aが吸着している支持アーム24A(突出部24a)から離間させる方向に突出するように付勢されている。その結果、清掃ユニット26がベルト表面18sから離間した第二の姿勢に移行することができる。なお、清掃ユニット取付装置10による清掃除菌処理中は、第一の摺動部材30は、付勢部材34の付勢力に逆らい矢印A1方向に押し込められて、係合溝30bに係合ピン38が係合している。つまり、リリースピン32が第一の吸着部材28Aの表面から非突出状態となり、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aの突出部24aに吸着し、清掃ユニット26がベルト表面18sに対面した第一の姿勢を維持するように構成されている。
【0022】
また、第二の摺動部材36は、例えば、円柱や角柱等の棒状部材で、ベース部材26Aの平面部上に固定された支持部材26tによって、第一の摺動部材30に対して略直交する方向(矢印B1,B2方向)に摺動可能である。第二の摺動部材36は、上述したように第一の摺動部材30の他端側に形成された係合溝30bに係合可能な係合ピン38を一端側に備える。また、第二の摺動部材36の他端側には、第三の摺動部材42に形成された例えば溝形状の誘導部42bに挿入可能な誘導ピン36aを備える。誘導ピン36aは例えば円柱状のピンであり、誘導部42bは、誘導ピン36aの直径より僅かに広い幅の例えば長穴形状の溝である。そして、第二の摺動部材36は、誘導ピン36aが誘導部42bによって誘導されながら移動することにより、支持部材26tに支持(ガイド)されながら矢印B1,B2方向に摺動する。その結果、第二の摺動部材36は、第一の摺動部材30の先端のリリースピン32の先端部32aが第一の吸着部材28Aの挿通穴28hから突出姿勢となる第一の位置で係合する係合位置と、リリースピン32が挿通穴28hから非突出姿勢となる第二の位置に摺動することを許容する非係合位置とを移動可能となる。
【0023】
一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24Bは、上述したように、突出部24aの先端に形成された回動軸40を備える。この回動軸40には、第三の摺動部材42の一方の端部に固定された支持部44を軸支する。支持部44は、回動軸40を包囲するボールベアリングやドライベアリング等を備えてもよい。支持部44と第三の摺動部材42とは、一体形成されてもよいし、溶接等の接合手段を用いて接合されてもよい。回動軸40に軸支された支持部44及び支持部44に接合された第三の摺動部材42とは、ベース部材26Aの平面部上を矢印A1,A2方向に摺動可能である。前述したように、支持アーム24は、欄干パネル20に固定されているため、支持アーム24Bに対して清掃ユニット26(ベース部材26A)が矢印A1,A2方向に相対的に移動可能に構成されている。後述するが、支持アーム24Bに対して相対的に清掃ユニット26(ベース部材26A)が移動するのは、異物がベルト表面18sと清掃ユニット26との間に挿入された場合等である。
【0024】
第三の摺動部材42は、例えば、円柱や角柱等の棒状部材で、ベース部材26Aの平面部上に固定された支持部材26tによって、矢印A1,A2方向に摺動可能にガイドされている。また、第三の摺動部材42の軸方向の略中間領域には、フランジ部42aが形成され、さらにその先の端部(支持部44とは逆側の端部)には、第二の摺動部材36の誘導ピン36aが挿入される溝形状の誘導部42bが形成されている。誘導部42bは、支持部44から矢印A1方向に遠ざかるのに連れて係合ピン38から遠ざかるように、斜め姿勢で形成されている。また、フランジ部42aと支持部材26tとの間には、付勢部材46として、例えば圧縮バネが配置されている。したがって、第三の摺動部材42は定常時に矢印A1方向に付勢されている。第三の摺動部材42が矢印A1方向に付勢(移動)されている場合、誘導部42bにおいて、第二の摺動部材36の誘導ピン36aは、支持部44に近い側(図3の位置)に誘導される。その結果、第二の摺動部材36は、矢印B1方向に誘導され、係合ピン38が第一の摺動部材30の係合溝30bに係合可能な状態となる。
【0025】
一方、支持アーム24Bに対して相対的に清掃ユニット26(ベース部材26A)が矢印A1方向に移動した場合、ベース部材26Aに対して第三の摺動部材42が矢印A2方向に移動することになる。その結果、ベース部材26Aの平面部上で支持された第二の摺動部材36の誘導ピン36aは、誘導部42b内を移動し、支持部44から遠い側の第三の摺動部材42端部に移動する。つまり、第二の摺動部材36が矢印B2方向に移動する。その結果、第二の摺動部材36の係合ピン38が第一の摺動部材30の係合溝30bから引き抜かれる。この場合、付勢部材34によって矢印A2方向に付勢されている第一の摺動部材30は、係合ピン38と係合溝30bとの係合が解消されたことにより、矢印A2方向に摺動(移動)する。そして、リリースピン32を第一の吸着部材28Aから突出させ、第一の吸着部材28Aの吸着力による支持アーム24Aとの接続を解除する。その結果、清掃ユニット26は、回動軸40を中心として回動可能となる。つまり、手摺ベルト18のベルト表面18sから離間した第二の姿勢に移行することが許容される。つまり、清掃ユニット取付装置10の安全機構が動作する。
【0026】
このように構成される第1実施形態の清掃ユニット取付装置10の安全機構の動作の詳細を、図4A図4Dを用いて説明する。なお、図4B図4Dは、異物Fmが回動軸40に近い位置で挿入された場合の動作である。図4Aは、清掃ユニット取付装置10の安全機構の安全動作開始前の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。図4Bは、安全動作中の第1状態(係合ピン38の抜け状態)を示す例示的かつ模式的な上面図である。図4Cは、安全動作中の第2状態(第一の摺動部材30の摺動状態)を示す例示的かつ模式的な上面図である。そして、図4Dは、安全動作完了(開動作完了)の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0027】
図4Aの安全機構の安全動作開始前の状態は、図3に示す状態と同じであり、第三の摺動部材42に装着された付勢部材46の付勢力によって、第三の摺動部材42は、ベース部材26Aに対して、相対的に矢印A1方向に移動した位置に存在する。つまり、第三の摺動部材42の誘導部42bは、第二の摺動部材36の誘導ピン36aを支持部44側(係合ピン38に近い側)に誘導する。その結果、第二の摺動部材36の係合ピン38は、第一の摺動部材30の係合溝30bに係合可能な位置に移動し、付勢部材34の付勢力に逆らい第一の摺動部材30が矢印A2方向に移動すること妨げる。つまり、第一の摺動部材30のリリースピン32は、第一の吸着部材28Aから突出しない。その結果、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aの突出部24aに吸着可能となり、清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)を手摺ベルト18のベルト表面18sに対向(対面)した第一の姿勢に維持する。この状態で、清掃ユニット本体26Mによるベルト表面18sの清掃除菌処理が可能になる。
【0028】
次に、図4Bに示されるように、清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)とベルト表面18sとの間に異物Fm(例えば、利用者の手指等)が挿入されてしまった場合を考える。この場合、異物Fmにより清掃ユニット26(ベース部材26A)が付勢部材46の付勢力に逆らい矢印A0方向に移動する。その結果、欄干パネル20に固定された支持アーム24Bに設けられた回動軸40に軸支された支持部44及び第三の摺動部材42は、ベース部材26Aに対して相対的に矢印A2方向に移動することになる。つまり、第三の摺動部材42の誘導部42bは、第二の摺動部材36の誘導ピン36aを支持部44から遠い側(係合ピン38から遠い側)に誘導する。その結果、第二の摺動部材36が矢印B2方向に移動して、係合ピン38が第一の摺動部材30の係合溝30bから抜き取られる。
【0029】
この場合、図4C図4Dに示されるように、第一の摺動部材30は、付勢部材34に付勢力によって矢印A2方向に移動し、第一の吸着部材28Aの挿通穴28hからリリースピン32の先端部32aが突出する。その結果、清掃ユニット26(ベース部材26A)は、第一の吸着部材28Aの吸着力に逆らい、支持アーム24Aの突出部24aから強制的に離脱させられ、図4D中の矢印C方向に回動可能となる。つまり、手摺ベルト18のベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間が拡大され、挿入された異物Fmに対する圧迫が解消される。
【0030】
このように、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10によれば、異物Fmが回動軸40に近い位置で挿入されても、磁石等で構成される第一の吸着部材28Aの吸着力を異物Fmの挿入により動作するリリースピン32により強制的に解除することができる。したがって、清掃ユニット取付装置10は、簡易な構造で、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0031】
図5Aは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10を欄干パネル20に固定する構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。また、図5Bは、清掃ユニット取付装置10を欄干パネル20に固定する構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0032】
前述したように、支持アーム24A,24Bは、手摺ベルト18を支持する欄干パネル20(支持体)のうちエスカレータ12の乗降位置14(乗降部)における欄干湾曲部20a(ベルト湾曲部18a)の湾曲中心Sより下方(図1において水平ラインrより下方)の位置または略水平の位置に装着される。支持アーム24(清掃ユニット取付装置10)を乗降位置14と略平行な位置より下方の位置に配置することで、清掃ユニット26の自重により当該清掃ユニット26を第二の姿勢への移行をよりスムーズに行うことができる。また、略水平な位置に配置することで、余分な付加を伴うことなく清掃ユニット26を第二の姿勢に移行させることができる。
【0033】
支持アーム24A,24Bの欄干パネル20への固定は、例えば、固定部材としてのボルト24b及びナット24cを用いて行うことができる。この場合、欄干パネル20にボルト24bを挿通するための穴を開ける必要がある。また、図5Bに示すように、欄干パネル20の厚みは、手摺ベルト18の幅に対して薄い場合が多い。そのため、支持アーム24A,24Bは、固定用の凹部24dを備える。凹部24dは、例えば有底円筒形状であり、欄干パネル20の表面に支持アーム24A,24Bの固定部となる円筒底部を接近させ、ボルト24b、ナット24cを用いて強固に固定している。欄干パネル20に支持アーム24A,24Bを強固に固定することにより、仮にベルト表面18sと清掃ユニット26との間に異物Fmが挿入された場合でも清掃ユニット取付装置10が欄干パネル20から脱落する等の不具合を回避することができる。なお、欄干パネル20に支持アーム24A,24Bを強固に固定する場合でも、異物Fmが挿入された場合、上述のように第一の吸着部材28Aが支持アーム24A側から離脱するため、異物Fmを過度に圧迫することは回避できる。
【0034】
欄干パネル20に対する支持アーム24A,24Bの固定は、ボルト24b、ナット24cを用いた固定の他、接着剤、吸盤、磁石等により固定することが可能であり、同様の効果を得ることができる。欄干パネル20に支持アーム24A,24Bを固定する場合に、吸盤や磁石等を用いる場合は、装着状態を維持するロック機構を設けてもよい。このように、着脱容易な構造を用いることで、清掃ユニット取付装置10の着脱、装着位置の移動等が容易になり、清掃ユニット取付装置10の使い勝手の向上に寄与することができる。また、既設のエスカレータ12にも容易に清掃ユニット取付装置10を設置することが可能であり、清掃ユニット取付装置10の導入が容易になる。
【0035】
図6Aは、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10の安全動作完了後の復帰動作時の第1状態(リリースピン32が突出したままの状態)を示す例示的かつ模式的な上面図である。また、図6Bは、清掃ユニット取付装置10の完全動作完了後の復帰動作時の第2状態(リリースピン32が非突出状態に移行した状態)を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0036】
図6Aは、清掃ユニット取付装置10の安全動作が完了した図4Dの状態から清掃ユニット取付装置10による清掃除菌処理を復帰させるために、清掃ユニット26を逆矢印C方向に回動させ、第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aに接近させた状態である。この場合、第一の摺動部材30は、矢印A2方向に摺動(付勢)された状態のままである。そのため、第二の摺動部材36の係合ピン38は、第一の摺動部材30の係合溝30bの外側に当接し、係合できない状態のままである。つまり、第二の摺動部材36が矢印B2方向に移動(摺動)したままであり、第三の摺動部材42もまた矢印A2方向に相対移動したままの状態である。つまり、異物Fmが取り除かれた状態でも、リリースピン32の先端部32aが第一の吸着部材28Aから突出したままであり、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着することを妨げている。したがって、清掃ユニット本体26Mもベルト表面18sに対して傾いた状態のままであり、除菌清掃処理が正常にできない状態である。
【0037】
そこで、清掃ユニット取付装置10またはエスカレータ12の管理者は、ベルト表面18sと清掃ユニット26との間に挿入されていた異物(例えば、エスカレータ12の利用者の手指等)が取り除かれたことを確認した後、清掃ユニット取付装置10の復帰動作行う。この場合、管理者は、図6Bに示されるように、第一の吸着部材28Aの挿通穴28hから突出しているリリースピン32を付勢部材34の付勢力に逆らい矢印A1方向に押し込む。この場合、リリースピン32を挿通穴28hに押し込むために、挿通穴28hの大きさより細い凸部を備える復帰工具を用いて行うようにしてもよい。この場合、第三者が勝手に清掃ユニット取付装置10を復帰させてしまうことを防止することができる。
【0038】
リリースピン32が挿通穴28hに押し込まれることにより、第一の摺動部材30は矢印A1方向に移動する。このとき、異物Fmは取り除かれているので、第三の摺動部材42は、付勢部材46の付勢力により矢印A1方向に移動しようとする。その結果、第三の摺動部材42の誘導部42bと係合している第二の摺動部材36の誘導ピン36aは、支持部材に接近する方向に移動する。つまり、第二の摺動部材36は、矢印B1方向に移動し、図6Bに示されるように、係合ピン38は、係合溝30bと係合し、図4Aの状態に復帰する。その結果、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着可能となり、清掃ユニット本体26Mがベルト表面18sに対して対面(正対)した状態に復帰し、除菌清掃処理が正常にできる状態に復帰する。
【0039】
このように、清掃ユニット取付装置10の安全機構は、安全動作終了後に容易に復帰可能であり、清掃ユニット取付装置10の使い勝手の向上に寄与することができる。
【0040】
図6Cは、異物Fmが回動軸40から遠い位置で挿入された場合の清掃ユニット取付装置10の挙動と、清掃ユニット取付装置10の安全動作終了後の復帰動作時の第3状態(リリースピン32が非突出のままの状態)を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0041】
清掃ユニット取付装置10において、異物Fmが回動軸40から遠い位置で挿入された場合(第一の吸着部材28Aの近くで異物が挿入された場合)、後述するが、異物Fmが回動軸40に近い位置で挿入された場合に比べて、小さな力で容易に第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱できる。また、このとき、ベース部材26Aに対して支持部44及び第三の摺動部材42の相対移動(矢印A2方向への移動)が生じ難い。つまり、第二の摺動部材36の矢印B2方向への摺動が生じ難い。その結果、図6Cに示されるように、係合ピン38が係合溝30bから離脱しない状態で、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱し、清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)は、ベルト表面18sから離間し、第二の姿勢に移行可能となる。つまり、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間が拡大され、挿入された異物Fmに対する圧迫が解消される。したがって、図4A図4Dで説明したようなリリースピン32による強制的に第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから離脱させることなく、清掃ユニット取付装置10の安全動作(第二の姿勢への移行)が実現できる。
【0042】
上述したように、リリースピン32は、第一の吸着部材28Aの挿通穴28hから突出しない状態のまま、清掃ユニット26が第二の姿勢へ移行する。そのため、異物Fmが取り除かれた後は、第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aに接近させるように回動させることにより、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着可能となる。その結果、清掃ユニット本体26Mがベルト表面18sに対して対面(正対)した状態に復帰し、除菌清掃処理が正常にできる状態に復帰する。
【0043】
なお、異物Fmが、エスカレータ12の利用者の手指等であれば、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間に巻き込まれ、清掃ユニット26が第二の姿勢に移行するという顕著な動作によって危険を察知し易い。その結果、手指等をベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間から抜き取る。このような場合、清掃ユニット26が一旦第二の姿勢に移行した後であれば、自動的に第一の姿勢に復帰しても、問題を生じにくい。そこで、回動軸40の部分に、清掃ユニット26を第一の姿勢側に付勢するリターンスプリング等の付勢部材を設けてもよい。この場合、リターンスプリングの付勢力は、第一の吸着部材28Aの吸着力より小さく、清掃ユニット26が第一の姿勢の方向に回動を開始するきっかけとなる程度の付勢力でよい。
【0044】
上述したように、清掃ユニット取付装置10は、回動軸40(支持アーム24B)に対して第三の摺動部材42等のスライド機構により、清掃ユニット26との間で相対移動する。その結果、リリースピン32を用いて強制的に第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから離脱させる安全機構を備える。簡略化された別の構造としては、回動軸40と清掃ユニット26とが相対移動しない構造であって、異物Fmの挿入によって第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから離脱させる安全機構としてもよい。この場合、異物Fmが挿入される位置によって異物Fmに与えられる圧迫力が変化するものの、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0045】
例えば、図7は、一方の支持アーム24に固定された回動軸40に対して清掃ユニット26が相対移動しない構造で、他方の支持アーム24に対して第一の吸着部材28Aが吸着されている状態を示すモデルであり、安全動作機能を説明するための比較図である。
【0046】
例えば、回動軸40と第一の吸着部材28Aとの離間距離を距離Lとした場合で、第一の吸着部材28Aの支持アーム24Aに対する吸着力をFとした場合、異物Fmaが回動軸40から例えば1/5Lの距離で挿入されると、異物Fmaに付加される力Faとの間に以下の関係が成り立つ。
Fa×1L/5=F×L
Fa=5F
したがって、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmaに第一の吸着部材28Aの吸着力の5倍の力が付与される。
【0047】
一方、例えば、異物Fmbが回動軸40から例えば4/5Lの距離で挿入されると、異物Fmbに付加される力Fbとの間に以下の関係が成り立つ。
Fa×4L/5=F×L
Fa=5F/4=1.25F
したがって、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmbに第一の吸着部材28Aの吸着力の1.25倍の力が付与される。
このように、異物Fma,Fmbの挿入によって第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから容易に離脱させる安全機構が実現できる一方、異物Fma、異物Fmbの挿入される位置によって、第一の吸着部材28Aを離脱させるために必要な力にばらつきが生じる。
【0048】
一方、清掃ユニット取付装置10のように回動軸40と清掃ユニット26とが、異物Fmの挿入によって相対移動するとともに、その相対移動によってリリースピン32が第一の吸着部材28Aを強制的に離脱させる場合、図8に示すモデル比較図のようになる。
【0049】
例えば、回動軸40と第一の吸着部材28Aとの離間距離を距離Lとし、回動軸40清掃ユニット26とが相対移動する際のスライド力をFxとした場合で、異物Fmaが回動軸40から例えば1/5Lの距離で挿入された場合を考える。なお、スライド力Fxは、第一の吸着部材28Aの支持アーム24Aに対する吸着力をFと等しいとする。この場合、回動軸40と清掃ユニット26とが、相対移動するため、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmaに付加される力Faとの間に以下の関係が成り立つ。
Fa×4L/5=Fx×L
Fa=5Fx/4=1.25Fx=1.25F
したがって、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmaに第一の吸着部材28Aの吸着力の1.25倍の力が付与される。
【0050】
一方、例えば、異物Fmbが回動軸40から例えば4/5Lの距離で挿入されると、異物Fmbに付加される力Fbとの間に以下の関係が成り立つ。
Fa×4L/5=F×L
Fa=5F/4=1.25F
したがって、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmbに第一の吸着部材28Aの吸着力の1.25倍の力が付与される。
【0051】
また、例えば、異物Fmcが回動軸40から例えば1/2Lの距離で挿入されると、異物Fmcに付加される力Fcとの間に以下の関係が成り立つ。
Fc×1L/2=F×L
Fc=2F
したがって、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するまでに異物Fmcに第一の吸着部材28Aの吸着力の2倍の力が付与される。
【0052】
このように、スライド機構を用いてリリースピン32を用いて強制的に第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから離脱させる場合、その構成を供えない場合に比べて、第一の吸着部材28Aを離脱させるために必要な力の増大を回避しつつ、さらにばらつきを軽減することができる。つまり、異物Fmの挿入によって第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから離脱させる構造によって、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することに加え、スライド機構と共生離脱機構を設けることによって、より低リスクで容易に手指等の挟み込みを回避する安全機構を実現することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図9A図9Cは、第2実施形態の清掃ユニット取付装置10Aの構成を説明する例示的かつ模式的な上面図である。図9Aは、清掃ユニット取付装置10Aの安全動作開始前の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。図9Bは、清掃ユニット取付装置10Aの安全動作が機能した状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。図9Cは、清掃ユニット取付装置10Aの安全動作が機能した他の状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0054】
清掃ユニット取付装置10Aの清掃ユニット26は、第一の吸着部材28Aと第二の吸着部材28Bとを備える。つまり、一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24Aに対して吸着可能な第一の吸着部材28Aと、他方の支持アーム24Bに対して吸着可能な第二の吸着部材28Bと、を備える。また、清掃ユニット26は、第二の吸着部材28Bが支持アーム24Bに対して非吸着になる際に、清掃ユニット26を第二の姿勢に移行させる第一の回動軸40Aを有する。同様に、清掃ユニット26は、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに対して非吸着になる際に、清掃ユニット26を第二の姿勢に移行させる第二の回動軸40Bを有する。
【0055】
つまり、図9Aに示されるように、清掃ユニット取付装置10Aは、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着した状態でかつ、第二の吸着部材28Bが支持アーム24Bに吸着した状態の際に、清掃ユニット26を手摺ベルト18のベルト表面18sに対面させて清掃除菌処理を実現する第一の姿勢を実現する。
【0056】
ここで、図9Bに示されるように、第二の吸着部材28Bに近い位置で異物Fmaが挿入された場合、異物Fmaの挿入により、第二の吸着部材28Bが支持アーム24Bから離脱し、清掃ユニット26は、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着した状態のまま、第一の回動軸40Aを中心として回動し、清掃ユニット26を手摺ベルト18のベルト表面18sから離間させる第二の姿勢を実現する。つまり、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間が拡大され、挿入された異物Fmaに対する圧迫を解消し、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0057】
同様に、図9Cに示されるように、清掃ユニット取付装置10Aは、第一の吸着部材28Aに近い位置で異物Fmbが挿入された場合、異物Fmbの挿入により、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱し、清掃ユニット26は、第二の吸着部材28Bが支持アーム24Bに吸着した状態のまま、第二の回動軸40Bを中心として回動し、清掃ユニット26を手摺ベルト18のベルト表面18sから離間させる第二の姿勢を実現する。つまり、この場合も、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間が拡大され、挿入された異物Fmbに対する圧迫を解消し、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0058】
なお、清掃ユニット取付装置10Aの場合、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aから離脱するとともに、第二の吸着部材28Bが支持アーム24Bから離脱する場合がある。その場合、清掃ユニット26の落下を防止するために、例えば、ワイヤ等の連結部材を用いて、清掃ユニット26を支持アーム24の一部や欄干パネル20の一部に連結させておくことが望ましい。
【0059】
このように、第2実施形態の清掃ユニット取付装置10Aによれば、異物Fmがベルト表面18sと清掃ユニット26との間のいずれの位置で挿入されても、磁石等で構成される第一の吸着部材28Aまたは第二の吸着部材28Bを支持アーム24から離脱させることができる。したがって、清掃ユニット取付装置10Aは、簡易な構造で、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0060】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の清掃ユニット取付装置10Bの詳細構造を示す例示的かつ模式的な上面図である。また、図11Aは、図10のK-K断面図であり、清掃ユニット取付装置10Bのリンク構造を示す例示的かつ模式的な断面図であり、図11Bは、図10のK-K断面図であり、清掃ユニット取付装置10Bのリンク構造の動作状態を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【0061】
第3実施形態の清掃ユニット取付装置10Bは、リンク機構48を備えて、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10の第一の摺動部材30を摺動させる構造である。つまり、リンク機構48を用いて、ワイヤケース50にガイドされながら摺動するワイヤ50aによって、第一の摺動部材30の摺動を許容する係合ピン52を動作させる。なお、フランジ部30a及び係合溝30bを備える第一の摺動部材30の構成及び第一の摺動部材30に接続されているリリースピン32、リリースピン32の突出動作により第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから強制的に離脱させる構造は、上述した第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0062】
第3実施形態の清掃ユニット取付装置10Bの場合、一対の支持アーム24のうち第一の吸着部材28Aが吸着しない側の支持アーム24Bに設けられた回動軸40(第一の回動軸)は、清掃ユニット26の支持部材44aを軸支する。つまり、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10のように回動軸40と清掃ユニット26との相対移動を許容することなく、清掃ユニット26を第一の姿勢と第二の姿勢との間を旋回させる。
【0063】
図10及び図11A図11Bを用いて、清掃ユニット取付装置10Bの詳細構造を説明する。
【0064】
清掃ユニット26は、一対の支持アーム24のうち一方の支持アーム24Aに対して吸着可能な第一の吸着部材28Aを備える。また、清掃ユニット26は、第一の吸着部材28Aを吸着している支持アーム24Aから離間させる方向に突出するように付勢されたリリースピン32(突出部)を備える第一の摺動部材30を備える。この構成は、第1実施形態の清掃ユニット取付装置10と同じである。
【0065】
また、清掃ユニット26は、係合ピン52(係合部材)とリンク機構48を備える。係合ピン52は、第一の摺動部材30に対して略直交する方向に摺動可能で、リリースピン32が非突出姿勢となる第一の位置で係合する係合位置と、リリースピン32が突出姿勢となる第二の位置に摺動することを許容する非係合位置とを移動可能な部材であり、リンク機構48によって動作する。係合ピン52は、円柱や角柱等の棒状部材で、ベース部材26Aの平面部上に固定された支持部材26tによって、矢印B1,B2方向に摺動可能に支持されている。また、係合ピン52の中間領域には、フランジ部52aが形成されている。そして、支持部材26tとフランジ部52aとの間に付勢部材54として、例えば圧縮バネが配置されている。したがって、係合ピン52は、付勢部材54によって、矢印B1方向に付勢され、係合ピン52が第一の摺動部材30の係合溝30bに係合するように構成されている。この状態で、第一の摺動部材30は、リリースピン32が非突出状態に維持される。また,リンク機構48の動作により係合ピン52が付勢部材54の付勢力に逆らい矢印B2方向に移動した場合、第一の摺動部材30が付勢部材34の付勢力により矢印A2方向に摺動し、リリースピン32が突出状態に移行する。つまり、第一の吸着部材28Aを支持アーム24Aから強制的に離脱させる。
【0066】
清掃ユニット26は、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに対して非吸着になる際に清掃ユニット26を第二の姿勢に移行させる回動軸40(第一の回動軸)を備える。
【0067】
リンク機構48は、手摺ベルト18のベルト表面18sと清掃ユニット26とで形成される隙間Mに手摺ベルト18の幅方向に延設され、隙間Mに侵入した異物により動作し、係合ピン52を非係合位置に移動させる。図11Aに示されるように、リンク機構48は、複数のリンクによって構成されている。リンク機構48は、第一の動作レバー48a、第二の動作レバー48b、第1リンクバー56、第2リンクバー58、第3リンクバー60を備える。
【0068】
第一の動作レバー48aは、図10に示されるように、ベルト表面18sと清掃ユニット26とで形成される隙間Mに手摺ベルト18の幅方向に延設される幅広部48tを備える部材で、清掃ユニット26のベース部材26Aの支持部材26t等に支持された固定軸48paを中心に回動可能である。また、第一の動作レバー48aは、隙間Mに露出した幅広部48tとは逆側の端部が、第1リンクバー56の一端側に回動可能に接続されている。第1リンクバー56の他端側には、ベース部材26Aの支持部材26t等に支持された固定軸60pを中心に回動可能に設けられた第3リンクバー60の一端側に回転可能に接続されている。
【0069】
一方、第二の動作レバー48bもまた、図10に示されるように、ベルト表面18sと清掃ユニット26とで形成される隙間Mに手摺ベルト18の幅方向に延設される幅広部48tを備える部材で、清掃ユニット26のベース部材26Aの支持部材26t等に支持された固定軸48pbを中心に回動可能である。また、第二の動作レバー48bは、隙間Mに露出した幅広部48tとは逆側の端部が、第2リンクバー58の一端側に回動可能に接続されている。第2リンクバー58の他端側には、第3リンクバー60の他端側に回転可能に接続されている。
【0070】
また、第3リンクバー60の例えば第2リンクバー58が接続された端部には、係合ピン52に接続されたワイヤ50aが固定されている。ワイヤ50aは、支持部材26t等に支持されたワイヤケース50の内部に摺動可能に収められている。
【0071】
このように構成されるリンク機構48を備える清掃ユニット取付装置10Bのリンク動作について、図11Bを用いて説明する。
【0072】
例えば、清掃ユニット取付装置10B(清掃ユニット26)の下方側から手摺ベルト18と清掃ユニット26との間の隙間Mに異物Fm(例えば、利用者の手指等)が挿入された場合を考える。この場合、手摺ベルト18と清掃ユニット26との間の隙間Mに異物Fmが挿入されると、異物Fmが第二の動作レバー48bの幅広部48tと接触し、第二の動作レバー48bが固定軸48pbを回転中心として矢印N2方向に回動する。その結果、第2リンクバー58が引き下げられる。第2リンクバー58の他端には、第3リンクバー60が接続されている。第2リンクバー58が引き下げられることにより、第3リンクバー60が固定軸60pを回転中心として矢印N2方向に回動する。
【0073】
前述したように、第3リンクバー60の端部には、ワイヤ50aが固定されているので、第3リンクバー60の矢印N2方向への回動によりワイヤ50aが矢印J方向に引かれる。図10に示されるように、ワイヤ50aの他端には付勢部材54により矢印B1方向に付勢された状態の係合ピン52が固定されている。したがって、ワイヤ50aが矢印J方向に引かれることにより、係合ピン52が付勢部材54の付勢力に逆らい第一の摺動部材30の係合溝30bから抜け、付勢部材34によって付勢された状態の第一の摺動部材30が矢印A2方向に摺動する。そして、リリースピン32が第一の吸着部材28Aの挿通穴28hから突出し、支持アーム24Aから第一の吸着部材28A、すなわち清掃ユニット26を離間させる。その結果、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間が拡大され、挿入された異物Fmに対する圧迫を解消し、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0074】
同様に、例えば、清掃ユニット取付装置10B(清掃ユニット26)の上方側から手摺ベルト18と清掃ユニット26との間の隙間Mに異物Fm(例えば、利用者の手指等)が挿入された場合を考える。この場合、手摺ベルト18と清掃ユニット26との間の隙間Mに異物Fmが挿入されると異物Fmが第一の動作レバー48aの幅広部48tと接触し、第一の動作レバー48aが固定軸48paを回転中心として矢印N1方向に回動する。その結果、第1リンクバー56が引き上げられる。第1リンクバー56の他端には、第3リンクバー60が接続されている。第2リンクバー58が引き上げられることにより、第3リンクバー60が固定軸60pを回転中心として矢印N2方向に回動する。
【0075】
第3リンクバー60の端部には、ワイヤ50aが固定されているので、第3リンクバー60の矢印N2方向への回動によりワイヤ50aが矢印J方向に引かれる。その結果、第二の動作レバー48bが回動した場合と同様に、ワイヤ50aが矢印J方向に引かれることにより、係合ピン52が付勢部材54の付勢力に逆らい第一の摺動部材30の係合溝30bから抜け、付勢部材34によって付勢された状態の第一の摺動部材30が矢印A2方向に摺動する。そして、リリースピン32が第一の吸着部材28Aの挿通穴28hから突出し、支持アーム24Aから第一の吸着部材28A、すなわち清掃ユニット26を離間させる。その結果、ベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間Mが拡大され、挿入された異物Fmに対する圧迫を解消し、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0076】
このように、第3実施形態の清掃ユニット取付装置10Bによれば、異物Fmがベルト表面18sと清掃ユニット26(清掃ユニット本体26M)との間の隙間Mのいずれの位置に挿入された場合でも第一の動作レバー48aまたは第二の動作レバー48bが動作して、磁石等で構成される第一の吸着部材28Aの吸着力をリリースピン32により強制的に解除する。したがって、簡易な構造で、容易に手指等の挟み込みリスクを回避することができる。
【0077】
なお、清掃ユニット取付装置10Bを、第二の姿勢に移行した状態から第一の姿勢に復帰させる場合に、異物Fmが取り除かれていれば、リンク機構48は、自動的に復帰する。例えば、第一の吸着部材28Aから突出したリリースピン32を付勢部材34の付勢力に逆らい矢印A1方向に押込むことで第一の摺動部材30を初期状態に復帰させる。この状態で、第一の吸着部材28Aが支持アーム24Aに吸着可能となり、清掃ユニット26は第一の姿勢に復帰し、清掃殺菌処理が可能になる。また、第一の摺動部材30が矢印A1方向に移動することにより、係合ピン52と係合溝30bとが係合可能となる。係合ピン52は、付勢部材54に付勢されているため、ワイヤ50aが図11Bの逆矢印J方向に移動し、第3リンクバー60が矢印逆N2方向に回動する。その結果、第一の動作レバー48aが逆矢印N1方向に回動し、第二の動作レバー48bが矢印逆N2方向に回動し、各幅広部48tが初期位置に復帰する。つまり、リンク機構48が初期状態に復帰する。
【0078】
<変形例>
なお、上述したように、各実施形態の清掃ユニット取付装置10,10A,10Bを適用する乗客コンベアは、一例として、上階側階床と下階側階床とを接続した傾斜する移動路16aを備え、段差を有する状態で踏段16が移動する一般的なエスカレータ12を示した。清掃ユニット取付装置10、10A,10Bは、他の形式の乗客コンベアに適用しても同様の効果を得ることができる。例えば、移動路16aの途中で踏段16が一旦水平状態に遷移した後、再び段差状態に遷移するようなエスカレータに清掃ユニット取付装置10,10A,10Bを適用してもよい。この場合も、上述した各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上階側階床と下階側階床とを結ぶ移動路16aや同一階床の入口側と出口側を結ぶ移動路16aを、各踏段16が段差を形成することなく平面状態で移動する、いわゆる「動く歩道」に清掃ユニット取付装置10、10A,10Bを適用してもよい。この場合も、上述した各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、上述した実施形態では、清掃ユニット本体26Mとして、紫外線光を用いて除菌するタイプを示したが、清掃除菌方式は適宜変更可能である。例えば、除菌効果のある除菌液やアルコール等を噴霧するタイプでもよいし、熱によって除菌するタイプでもよい。また、清掃ユニット本体26Mは、除菌処理によって、利用者が手摺ベルト18を触った場合に違和感を与えないように、噴霧した液体等を拭き取る装置や加熱した手摺ベルト18を常温に戻す冷却装置等を備えてもよい。
【0080】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
10,10A,10B…清掃ユニット取付装置、12…エスカレータ(乗客コンベア)、16…踏段(移動体)、18…手摺ベルト、18s…ベルト表面、20…欄干パネル(支持体)、24,24A,24B…支持アーム、28…吸着部材、28A…第一の吸着部材、28B…第二の吸着部材、30…第一の摺動部材、30b…係合溝、32:リリースピン(突出部)、36…第二の摺動部材、36a…誘導ピン、38,52…係合ピン、40…回動軸、40A…第一の回動軸、40B…第二の回動軸、42…第三の摺動部材、42b…誘導部、44…支持部、48…リンク機構、48a…第一の動作レバー、48b…第二の動作レバー、50a…ワイヤ、56…第1リンクバー、58…第2リンクバー、60…第3リンクバー。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B