(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】調節可能な幾何構造を有するアンカー部材を有するステントグラフト装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20221003BHJP
【FI】
A61F2/07
(21)【出願番号】P 2021035169
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2019113718の分割
【原出願日】2016-05-24
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2015-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エス.ミシャラク
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0277560(US,A1)
【文献】国際公開第2000/018322(WO,A1)
【文献】国際公開第2000/078250(WO,A1)
【文献】特表2007-537842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカー部材を含む、拡張可能な支持フレームであって、前記アンカー部材は、前記拡張可能な支持フレームが拡張形態にあるときにステントグラフト装置を内腔内に固定する形状をとり、前記形状が除去経路を画定するよう構成されている、拡張可能な支持フレームと;
前記拡張可能な支持フレームの上に延在するカバーと
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記アンカー部材は、前記除去経路に沿って除去可能であり、
前記アンカー部材は、前記アンカー部材の幾何構造が、前記アンカー部材上に成長した組織からの前記アンカー部材の除去を促進するよう変化するように構成され
、前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は移植状態において互いに係合し、前記第一の部材及び前記第二の部材は、前記内腔から前記ステントグラフト装置を除去するために分離する、ステントグラフト装置。
【請求項2】
前記アンカー部材は、移植状態において前記拡張可能な支持フレームから外向きに延在するコイル状ワイヤであり、前記アンカー部材は、前記ステントグラフト装置を前記内腔から除去するために、非コイル状の形態をとる、請求項1に記載のステントグラフト装置。
【請求項3】
成長した前記組織が前記ステント
グラフト装置を内腔内に固定する、請求項1に記載のステントグラフト装置。
【請求項4】
前記アンカー部材は第一の端部及び第二の端部を含み、前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームが拡張形態にあるときに前記除去経路に沿って除去されるよう構成され、前記第一の端部及び前記第二の端部の一方が前記除去経路をたどる、請求項1に記載のステントグラフト装置。
【請求項5】
前記アンカー部材は第一の端部及び第二の端部を含み、前記アンカー部材は、前記アンカー部材の前記第一の端部及び前記第二の端部の一方に長手方向の力を適用すると、前記長手方向の力の方向に、前記除去経路に沿って除去されるよう構成されている、請求項1に記載のステントグラフト装置。
【請求項6】
折り畳まれた形態から拡張形態へと移行するよう構成された、拡張可能フレームと;
前記拡張可能フレームの上に延在するカバーと;
前記拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材によって前記拡張可能フレームに結合し、折り畳まれた形態から拡張形態の両方において前記拡張可能フレームの長さに沿って延在するよう構成されたアンカー部材であって、前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームが拡張形態にあるときに除去経路を画定する形状をとるよう構成されている、アンカー部材と
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記拡張可能フレームが拡張形態にあるとき
、前記アンカー部材が前記除去経路に沿って、前記アンカー部材上に成長した組織に対して最小限の外傷で除去される
ときに、前記アンカー部材のとる形状が、前記アンカー部材上に成長した組織からの前記アンカー部材の除去を促進するよう変化するように構成されており、前記アンカー部材及び前記除去経路は、完全に前記カバーの外側に位置
し、前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は移植状態において互いに係合し、前記第一の部材及び前記第二の部材は、前記内腔から前記ステントグラフト装置を除去するために分離する、ステントグラフト装置。
【請求項7】
前記アンカー部材上に成長した前記組織が前記ステントグラフト装置を内腔内に固定する、請求項
6に記載のステントグラフト装置。
【請求項8】
前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームが拡張形態にあるときに前記拡張可能フレームから除去されるよう構成された、請求項
6に記載のステントグラフト装置。
【請求項9】
前記アンカー部材は、ワイヤである、請求項
6に記載のステントグラフト装置。
【請求項10】
前記アンカー部材は、前記アンカー部材に長手方向の力を適用すると除去されるよう構成された、請求項
6に記載のステントグラフト装置。
【請求項11】
前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームの外面から間隔を置いて離れている、
蛇行した又は螺旋状の構造によって形成される隆起部分を含む、請求項
6に記載のステントグラフト装置。
【請求項12】
拡張可能フレームと;
前記拡張可能フレームの上に延在するカバーと;
前記拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材によって前記拡張可能フレームに結合し、前記拡張可能フレームが移植状態にあるときに、前記拡張可能フレームの長さに沿って延在するよう構成された、アンカー部材と
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームが前記移植状態にあるときに前記アンカー部材のとる形状が前記アンカー部材
上に成長した組織からの除去経路を画定するよう構成され、
前記アンカー部材のとる形状は、前記アンカー部材が、前記除去経路に沿って前記拡張可能フレームから除去されるのに適しており、前記アンカー部材及び前記除去経路は、完全に前記カバーの外側に位置
し、前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は前記移植状態において互いに係合し、前記第一の部材及び前記第二の部材は、前記内腔から前記ステントグラフト装置を除去するために分離する、ステントグラフト装置。
【請求項13】
前記アンカー部材上に成長した組織が前記ステント
グラフト装置を内腔内に固定する、請求項
12に記載のステントグラフト装置。
【請求項14】
前記アンカー部材の除去は非外傷性である、請求項
12に記載のステントグラフト装置。
【請求項15】
前記アンカー部材は、ワイヤである、請求項
12に記載のステントグラフト装置。
【請求項16】
アンカー部材をその中に取り入れた、拡張可能な支持フレームであって、前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材によって前記拡張可能フレームに結合し、前記拡張可能な支持フレームが拡張形態にあるときにステントグラフト装置を内腔内に固定する形状をとり、前記形状が
前記アンカー部材上に成長した組織からの除去経路を画定するよう構成されている、拡張可能な支持フレームと;
前記拡張可能な支持フレームの上に延在するカバーと
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記アンカー部材は、前記除去経路に沿って除去可能であり、前記アンカー部材及び前記除去経路は、完全に前記カバーの外側に位置
し、前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は移植状態において互いに係合し、前記第一の部材及び前記第二の部材は、前記内腔から前記ステントグラフト装置を除去するために分離する、ステントグラフト装置。
【請求項17】
前記アンカー部材上に成長した前記組織が前記ステント
グラフト装置を内腔内に固定する、請求項
16に記載のステントグラフト装置。
【請求項18】
前記アンカー部材は、ワイヤである、請求項
16に記載のステントグラフト装置。
【請求項19】
前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームが拡張形態にあるときに前記拡張可能フレームから除去されるよう構成された、請求項
16に記載のステントグラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に移植可能な医療装置に関し、より詳細には、ステントグラフト装置の非外傷性除去を可能にする、調節可能な幾何構造を有するアンカー部材を有するステントグラフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な公知の医療装置は、患者の体内に移植して、介入又は治療処置を提供することができる。ステントグラフト装置は、患者に移植して、様々な病状を処理し、又は患者の脈管構造内の動脈瘤として知られる弱点を処理することができる。例えば、ステントグラフト装置は、患者内に移植され、血管内の動脈瘤を処理する。他の例において、ステントグラフト装置は、患者内に移植され、体管腔(例えば消化管(GI tract))、又は臓器の壁内の開口部を封止する。更なる例において、ステントグラフト装置は患者内に移植され、装置が体管腔を通る流体の流れ経路を開き又は拡張するように、狭窄部を有する体管腔を処理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一旦患者内の所望の位置に展開されると、多くの場合、移植可能装置の継続的有効性は、周囲組織に対してほぼ固定された位置に残存するそれらの能力に依存することができる。例えば、開口を閉塞又は閉じるよう植設された閉塞装置は、開口を囲む組織に対してその適切な位置を維持すべきであり、そうでなければ開口を閉じることに失敗することがある。同様に、狭窄の場所に展開されたステントグラフト装置は、ルーメン狭窄の場所に残存して、流体の流れのための開いた通路を作り、又は拡張すべきである。
【0004】
更に、一旦意図された治療又は処理が完了したら、医療装置が除去されることが望ましいことがある。そのような装置の除去は、医療装置内及びその周辺への組織の成長によって困難であることがある。したがって、本技術分野において、意図された全治療期間について管内又は経腔的用途に使用することができ、一旦治療が終了したら、周囲組織及び患者に対する最小限の外傷で除去することができる、医療装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例は、(1)拡張可能フレームと、(2)拡張可能フレーム上に延在するカバーと、(3)拡張可能フレームに結合し、拡張可能フレームの長さに沿って延在するアンカー部材とを含む、ステントグラフト装置に関する。アンカー部材は、拡張可能フレームからアンカー部材を除去するため、アンカー部材周辺に成長した組織の最小限の移動を伴い、軸方向に移動する。少なくとも一つの実施形態において、アンカー部材は、一般に蛇行した、又は「螺旋状の(cork-screw)」形態を有する。アンカー部材は、拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材(例えば、ループ)によって、拡張可能フレームに結合してもよい。アンカー部材の一端に機械力を適用して、過成長した組織からアンカー部材を分離し、組織への最小限の外傷で、又は外傷を伴わずに、アンカー部材によってステントの長さに沿って画定される除去経路に沿って、アンカー部材を移動してもよい。除去経路に沿って、成長した組織からアンカー部材を除去するため、アンカー部材の幾何構造は変化する。
【0006】
本発明の第二の実施形態は、(1)拡張可能フレームと、(2)拡張可能フレームの上に延在するカバーと、(3)拡張可能フレームの外側に結合した少なくとも一つのアンカー部材とを含む、ステントグラフト装置に関する。アンカー部材は、個別の間隔を置いて離れた場所で、ステントに結合していてもよい。結合部材は、フレームから離れて延在し、かつ一般に「u」字型又は曲がった形態を有することのある隆起部分を形成する。アンカー部材の幾何構造は、アンカー部材のための除去経路を画定する。それぞれのアンカー部材は、移植状態の拡張可能フレームに沿ってある距離にわたって延在する。アンカー部材は、アンカー部材の除去経路に沿って過成長した組織から除去するのに適している。アンカー部材の上及び/又はその周辺に過成長した組織は、ステントグラフト装置を内腔内に固定する。過成長した組織からアンカー部材を除去することは、非外傷性である。アンカー部材は、拡張可能フレームの外面に位置する取付け領域で拡張可能フレームに結合してもよい。
【0007】
本発明の第三の実施形態は、(1)ステントグラフト装置を内腔内に固定するためのアンカー部材をその中に取り入れた、拡張可能な支持フレームと、(2)拡張可能な支持フレームの上に延在するカバーとを含む、ステントグラフト装置に関する。一実施形態において、アンカー部材は、拡張可能な支持フレームから外向きに延在するコイル状ワイヤである。アンカー部材周辺に成長した組織からアンカー部材を除去するため、アンカー部材の幾何構造は変化する。例えば、アンカー部材は、過成長した組織からアンカー部材を除去し、かつその後に内腔からステントグラフト装置を除去するために、非コイル状の形態をとる。他の実施形態において、アンカー部材は、第一の部材及び対向する第二の部材を含み、第一の部材及び第二の部材は移植状態において互いに係合する。第一及び第二の部材は、内腔からステントグラフト装置を除去するために分離する。係合した第一及び第二の部材の幾何構造は分離形態へと変化して、過成長した組織からアンカー部材を除去する。アンカー部材は、アンカー部材の幾何構造によって画定される除去経路に沿って過成長した組織から除去される。アンカー部材の上に過成長した組織は、ステントグラフト装置を内腔内に固定する。
【0008】
本発明の第四の実施形態は、内腔からステントグラフト装置を除去する方法に関し、方法は、(1)拡張可能フレーム及びそれに結合したアンカー部材を有するステントグラフト装置を提供することと、(2)機械力をアンカー部材に適用して、除去経路に沿ってステントグラフト装置からアンカー部材を除去することとを含む。アンカー部材は拡張可能フレームの長さに沿って延在し、アンカー部材の除去経路を画定する。拡張可能フレームは、拡張可能フレーム上に延在するカバーを有する。アンカー部材は、結合部材によって、例えば、拡張可能フレームの外面に位置するループを介して、フレームに結合されている。一旦アンカー部材が切り離され、ステントグラフト装置から除去されると、ステントグラフト装置は内腔から除去されてもよい。
【0009】
本発明の第五の実施形態は、内腔からステントグラフト装置を除去する方法に関し、方法は、(1)ステントグラフト装置から外向きに延在し、そこに取り入れられたアンカー部材を有する、ステントグラフト装置を提供することと、(2)機械力を適用してアンカー部材の幾何構造を変え、アンカー部材によって画定される除去経路に沿ってアンカー部材を除去することとを含む。ステントグラフト装置は、そこに取り入れられたアンカー部材を有する拡張可能な支持フレームと、拡張可能な支持フレーム上に延在するカバーとを含む。一実施形態において、アンカー部材はコイル状の形態を有し、幾何構造を変えることはアンカー部材のコイルを解くこと(uncoiling)を含む。更なる実施形態において、アンカー部材は、第一の部材及び対向する第二の部材を含み、第一の部材及び第二の部材は互いに係合する。この実施形態において、幾何構造を変えることは、第一の部材及び第二の部材を分離することを含む。一旦アンカー部材が分離され、及び/又は過成長した組織から除去されると、ステントグラフト装置を内腔から除去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれ、この明細書に取り入れられてその一部を構成し、実施形態を例示し、記載と合わせて本開示の原則を説明するのに役立つ。
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の少なくとも一つの実施形態による、ステントグラフト装置の模式図である。
【0012】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による、ステントグラフト装置の長さに沿って延在するアンカー部材を有するステントグラフト装置の模式図である。
【0013】
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態による、
図2のアンカー部材の隆起部分を内腔壁に埋め込んでいる過成長した組織の模式図である。
【0014】
【
図3B】
図3Bは、本発明の少なくとも一つの実施形態による、
図3Aのアンカー部材を、除去経路に沿って過成長した組織から除去する模式図である。
【0015】
【
図4A】
図4Aは、本発明の少なくとも一つの実施形態による、個別の間隔を置いて離れた場所でステントフレームにその一端で取り付けられた複数のアンカー部材を有する、ステントグラフト装置の模式図である。
【0016】
【
図4B】
図4Bは、本発明の少なくとも一つの実施形態による、
図4Aのアンカー部材を除去経路に沿って除去する模式図である。
【0017】
【
図5】
図5は、本発明の少なくとも一つの実施形態による、ステントフレームに一体化された対向するフィンの形態のアンカー部材の模式図である。
【0018】
【0019】
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態による、
図5のアンカー部材の隆起部分を内腔壁に埋め込んでいる過成長した組織の模式図である。
【0020】
【
図5C】
図5Cは、本発明の一つの例示的な実施形態による、係合形態の
図5のアンカー部材の模式図である。
【0021】
【
図5D】
図5Dは、本発明の少なくとも一つの実施形態による、
図5のアンカー部材のフィンを除去経路に沿って除去する模式図である。
【0022】
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による、可撓性のコイル状ワイヤの形態のステントグラフト装置を含むアンカー部材の模式図である。
【0023】
【
図6A】
図6Aは、過成長した組織に埋め込まれたアンカー部材を有する、
図6のステントグラフト装置の模式図である。
【0024】
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態による、過成長した組織に埋められた
図6のアンカー部材の拡大模式図である。
【0025】
【
図6C】
図6Cは、本発明の少なくとも一つの実施形態による、
図6Bのアンカー部材を除去経路に沿って除去する拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
用語
本明細書で用いる用語「組織の成長」及び「組織の過成長」は、医療装置を内腔の任意の部分に若しくは経腔的に固定するアンカー部材に付着した若しくは接着した、中に配置された、周辺に位置する、触れている、又はそうでなくとも接触している、任意の組織を含むことを意味する。
【0027】
本明細書で用いる用語「調節可能な幾何構造」は、ステントに対するアンカー部材の形状又はアンカー部材の位置が変化して、過成長した組織からアンカー部材を除去することを可能にすることを意味する。
【0028】
本明細書で用いる用語「マクロスコピック」は、過成長した組織が細胞レベルであることを意味する。
【0029】
本明細書で用いる用語「非外傷性」は、過成長組織からアンカー部材を除去した結果、組織傷害がほとんど又は全くないことを意味する。
【0030】
本明細書で用いられる用語「最小限の外傷」は、患者に負の結果を誘起しない程度を意味する。
【0031】
本明細書で用いる用語「内腔」は、管状構造、例えば動脈、腸、導管、又は管の内部を意味する。
【0032】
当業者であれば、本開示の様々な側面は、意図された機能を発揮するよう構成されたあらゆる方法及び装置によって実現することができることを容易に認識するだろう。本明細書において参照する添付の図面は必ずしも一定比率で描いたものではなく、本開示の様々な側面を例示するために強調されていることがあり、この点において図面は限定的に解釈すべきでないことにも注意すべきである。用語「ステントグラフト装置」及び「ステント」は、本明細書において区別せずに用いられることを理解すべきである。用語「フレーム」及び「ステントフレーム」は、本明細書において区別せずに用いられることもまた理解すべきである。
【0033】
本発明は、フレームと、フレームを覆うカバー材料と、フレームに結合し又はそれに一体化した少なくとも一つのアンカー部材とを含む、ステントグラフト装置に向けられる。アンカー部材の上及び/又はその周辺に成長した組織は、ステントグラフト装置を内腔内に固定する。アンカー部材の幾何構造は変化して、最小限の外傷でアンカー部材を成長した組織から除去することを可能にする。ステント及びアンカー部材を、多種多様な異なる組織、インプラント部位、例えば、体管腔、臓器及びキャビティ、並びに実施の種類に使用することができるように、本明細書に記載されているステントグラフト装置及びアンカー部材は、幅広い範囲のサイズ及び幾何構造に計測可能であることが認められる。
【0034】
本明細書において、本発明はステントグラフト装置に関して記載されているが、しかしながら、内腔からのステントの非外傷的除去のために幾何学的に変えることができ、本発明の範囲内であるとみなされる、カバー材料及びアンカー部材を含む任意の医療装置を使用してもよいことが認められる点に留意されたい。
【0035】
図1を参照すれば、例示的なステントグラフト装置の模式図が示されている。ステントグラフト装置10は、腔内又は経腔的用途に使用してもよい。ステントグラフト装置10は、ステントフレーム20及びカバー材料30を含む。ステントグラフト装置10は、一般に円筒状であり、長軸25を画定する。いくつかの実施形態において、ステントグラフト装置10の末端は波形であるか、又はステントフレームの形状に沿っていてもよい。更に、ステントグラフト装置10は、一つ又は複数の開窓及び/又は側枝を含んでもよい。ステントグラフト装置10は、以降詳細に記載するアンカー部材が体管腔の組織と接触して、アンカー部材の上及び/又はその周辺に組織が成長することを可能にするように、内腔に圧着力を提供する。
【0036】
フレーム20は、管形状へと螺旋状に巻回された、一つ又は複数の長尺部材(例えば、ワイヤ)で成形されていてもよい。例示的な実施形態において、ステントフレーム20は、単一の螺旋状に巻かれた長尺部材で成形されている。
図1に示される実施形態において、フレーム20内のそれぞれのステント環45が一般に蛇行した形状(例えば、正弦波の形状、又はジグザクの形状)を有するように、長尺部材が管状部材の周りに巻回されている。しかしながら、示されるステントフレーム20は、本発明の範囲内で想定される唯一のステントフレームの形態ではないことを理解すべきである。例えば、限定されないが、ステント環の数、ステント環の形状、ステント環の直径、ステント環の幾何構造、ステント環のピッチ、ワイヤの数、及び/又はワイヤ(例えば、長尺部材)の直径など多くの方法で、ステントフレーム20は、
図1に示される実施形態と異なることができる。例えば、長尺部材は他の幾何構造を形成するよう巻回されていてもよく、そのような他の幾何構造は本発明の範囲内であるとみなされる。他の実施形態において、ステントフレーム20の一部又は全ては、相互接続素子を有するステント環で成形されている。さらに、ステントフレーム20は、編まれた又は混交した長尺部材で成形されていてもよい。
【0037】
代替の実施形態において、フレーム20は、パターンに従って切られ、次に延伸された(そして、いくつかの実施形態において熱セットされた)材料の管又はシートから形成される。例えば、フレーム20は管状材料から作られ、環及び/又はセル状/格子構造を形成してもよい。いくつかの実施形態において、フレームは、材料のシートから切られ、次いで環又は管状セル状構造へと形成される。そのような切削は、レーザー切削、化学的エッチング、機械加工、又はウォータージェット切削によって行ってもよい。少なくとも一つの実施形態において、ステントフレーム20の一部又は全部は、セル状構造体を有する。
【0038】
ステントフレーム20は、様々な材料及び/又は材料の組合せで成形してもよい。例示的な実施形態において、ステントフレーム20の材料としてニチノール(NiTi)が用いられる。他の材料、例えばステンレス鋼、ポリマー材料、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、生体吸収可能なポリマー、コバルト、クロム、ニッケル合金、又は任意の他の適切な生体適合性材料、及びこれらの組み合わせを、ステントフレーム20の材料として使用してもよい。ステントグラフト装置10が内腔において展開されたときにステントフレーム20が周囲組織のトポグラフィーに適合することができるように、ステントフレーム20は、一般に適合性、耐疲労性、弾性、及び伸展性である。
【0039】
ステントフレーム20は、ステントグラフト装置10に構造及び形状を提供する。
図1に示す実施形態において、カバー材料30はステントフレーム20に取り付けられ、管状流体導管を作製している。これによって、ステントフレーム20は、そうでなければ比較的弛緩したフレキシブルなカバー材料30に、支えとなる構造的骨組みを提供する。カバー材料30は、ステントフレーム20の少なくとも一部の外面に取り付けられる。本明細書で用いる「外側部分」は、内腔の壁に面し、任意に接触しているカバー材料30の表面を意味する。いくつかの実施形態において、カバー材料30は、接着剤、例えば、シリコーン、ポリウレタン、又はフッ化エチレンプロピレン(FEP)で、フレーム20に取り付けられる。例えば、シリコーンは、ステントフレーム20にカバー材料30を接着する接着剤として機能する。接着剤は、ステントフレーム20の部分に、又はステントフレーム20の全体に適用してもよい。
【0040】
一つ又は複数の実施形態において、カバー材料30の一部又は全部は、ステントフレーム20の内側部分及び外側部分の両方に配置され、かつ、ステントフレーム20の部分又はその全部を封入するよう、カバー材料30の部分は互いに接着される。縫合、固縛、結束及び/又はクリップを代替的に用いて、カバー材料30をステントフレーム20に取り付けてもよい。いくつかの実施形態において、技術の組合せを用いて、カバー材料30をステントフレーム20に取り付ける。
【0041】
カバー材料30は、カバー材料30を通した血液、胆汁、並びに他の体液及び物質の通過を抑制又は低減する膜材料で成形されていてもよい。例示的な実施形態において、カバー材料30は、ポリマー材料、例えば、フルオロポリマー材料である。少なくとも一つの実施形態において、カバー材料30は、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜である。カバー材料30は、他の材料、例えば限定されないが、シリコーン、ウレタン、ポリエステル(例えば、DACRON(登録商標))、及びこれらの組み合わせで成形されていてもよいことが認められる。
【0042】
ステントグラフト装置10は、様々な低侵襲性経カテーテル展開技術を使用して生体内展開サイトに供給し、そこで展開してもよい。そのような実施形態において、ステント10は、送達形態、及び展開形態を有してもよい。例えば、ステントが送達シース内で展開サイトへと供給される間、ステントは、送達シース内で折り畳まれた、小輪郭な送達形態を構成してもよい。送達シースからステントが現れた後、ステントは、拡張又は展開形態をとってもよい。いくつかの実施形態において、ステントは、拡張又は展開形態へと自己拡張してもよい。他の実施形態において、ステントは、他の装置(例えば、膨張バルーン)からの補足的な力の適用に応答して拡張してもよい。いくつかの実施形態において、自己拡張及び強制的拡張の組合せを用いて、ステントをその展開形態へと拡張してもよい。ステントは、例えば、患者内の内腔狭窄の場所に移植して、流体の流れのための開いた通路を作り、又は拡張してもよい。いくつかの実施形態において、ステントは、治療のためのその公称直径を越えて、外部力によって膨張してもよい。一旦治療が完了すると、外部力の除去によってステントはその公称直径に戻る。
【0043】
ステントグラフト装置は、装置が患者内に移植されたとき、周囲組織のトポグラフィーに適合して拡張してもよいことを理解すべきである。その結果、ステントグラフト装置のインサイチュでの展開形態は、装置の完全な拡張形態であってもよく、又はそうでなくてもよい。すなわち、ステントグラフト装置が展開されるとき、ステントは、一つ又は複数の部分的に拡張した又は部分的に展開した形態をとって、少なくともステントグラフト装置のアンカー部材が体組織と接触することを可能にしてもよい。
【0044】
上記のように、ステントグラフト装置10はまた、フレーム20の一部として取り入れられた、又はフレーム20に結合した、少なくとも一つのアンカー部材を含む。アンカー部材が、組織の過成長を許容し、かつその後過成長した組織から最小限の外傷で除去できるようにする調節可能な幾何構造を有する限り、アンカー部材の設計及び/又は形状は特に制限されない。本明細書で用いる組織の過成長及び組織の成長は、ステントグラフト装置を内腔の任意の部分若しくは経腔的に固定するアンカー部材に、付着若しくは接着した、中に配置された、周辺に位置する、触れている、又はそうでなくとも接触している、任意の組織を含んでもよいことが認められる。アンカー部材は、曲げることができ、直線にすることができ、又はそうでなくとも形状を変えることができるような引張強度を有する材料で成形されていてもよい。アンカー部材として適切な材料の非限定的な例としては、限定されないが、ニチノールワイヤ、Platinol(商標)、コバルトクロム、様々なステンレス鋼合金、ポリプロピレン、ポリアミド、及び/又は他の移植可能な金属又はポリマー材料が挙げられる。
【0045】
図2は、ステントグラフト装置10の長さに沿って延在する、例示的なアンカー部材50の模式図である。アンカー部材50は、長さ全体に沿って延在してもよく、又はステントグラフト装置10の一部に沿って延在してもよい。ステントグラフト装置10は、フレーム20に一体化された、又はフレーム20に結合された、結合部材40(例えば、ループ)を有してもよく、結合部材40を通してアンカー部材50が通される。
図2に示す結合部材40は、実際は例示的であり、アンカー部材50をそれに通すことができる限り、利用してもよい任意の形状又は設計を有してもよいことが認められる。アンカー部材50は、連続する結合部材40の間に隆起部分55を形成する形態(例えば、蛇行する、又は螺旋状の形態)を有してもよい。例示的な実施形態において、隆起部分55は、体管腔70の内面と接触している。
図3Aに示すように、組織は、特に隆起部分55で、アンカー部材50の上及び/又はその周辺に成長して、アンカー部材50を内腔壁70内に埋め込んでもよい。アンカー部材50上の過成長した組織は、ステントグラフト装置10を内腔内に固定し、及び/又は固定を助ける。
【0046】
過成長した組織からアンカー部材50を除去するために、機械(例えば、長手方向の)力をアンカー部材50の一端に適用して、アンカー部材50を過成長した組織から分離し、組織への最小限の外傷で、又は外傷を伴わずに、ステント10の長さに沿ってアンカー部材の幾何構造によって画定される除去経路に沿って、アンカー部材50を移動してもよい。例えば、アンカー部材50の一端を掴んで引いて、アンカー部材50を組織から分離するだけでなく、除去経路に沿ってアンカー部材50を引いてもよい。アンカー部材50のないステントグラフト装置10を、次に任意の従来の方法によって除去してもよい。
【0047】
アンカー部材50の除去を、
図3A及び3Bに図示する。
図3Aに示すように、過成長した組織は、アンカー部材50の隆起部分55を内腔壁70内に埋め込んでもよい。アンカー部材50を除去するために、アンカー部材50を矢印65の方向に引いてもよい。引かれると、
図3Bに模式的に示すように、アンカー部材50は、アンカー部材50によって形成される除去経路85に沿って、封入された組織内で最小限の移動を伴い軸方向に移動して、拡張可能フレーム20からアンカー部材が除去される。除去の間、アンカー部材50が周囲組織の最小限の組織外傷で除去経路55を辿ることができるように、アンカー部材50の幾何構造(すなわち、形状)が変化する。
【0048】
図4Aに一般に示される他の例示的な実施形態において、ステントグラフト装置10は、個別の間隔を置いて離れた場所でステントフレーム20に結合する複数のアンカー部材80を有する。アンカー部材80のステントフレーム20への接続領域は、符号100によって識別される。それぞれのアンカー部材は、移植状態の拡張可能フレームの長さに沿って延在する。アンカー部材80は、フレーム20のその一端に取り付けられ、フレーム20から延在する隆起部分95を形成する。
図4Aに示すアンカー部材80の隆起部分95は、実際は例示的であり、アンカー部材80の少なくとも一部の上に組織の過成長が起こり、少なくとも一時的に内腔70の壁内にアンカー部材80が埋め込まれる限り、アンカー部材80は代替の形状、長さ、及び/又は寸法を有してもよいことが認められる。例えば、アンカー部材80は、あまり曲線的でない形態を有してもよく、又は一つ以上の隆起領域(図示せず)を含んでもよい。
図2に示す実施形態と同様に、隆起部分95のアンカー部材80の上及び/又はその周辺で組織の成長が起こり、ステントグラフト装置10を内腔70内に固定する。
【0049】
図4Bを参照すれば、長手方向の力をステントグラフト装置10に適用することによって(例えば、矢印85の方向)、アンカー部材80を非外傷的に除去してもよい。力がステントグラフト装置10に適用されると、アンカー部材80は、過成長した組織の最小限の移動、及び過成長した組織への最小限の外傷で、アンカー部材80によって画定される除去経路90に沿って組織の成長を通って引かれる。ステントグラフト装置10が除去されるとき、アンカー部材80が周囲組織の最小限の外傷で除去経路90を辿ることができるように、アンカー部材80は幾何構造(すなわち、形状)が変化する。
【0050】
例示的なアンカー部材の更なる実施形態を
図5に示す。この実施形態において、アンカー部材110は、ステントグラフト装置10のフレーム20に一体化された、対向するフィン120(a)及び120(b)の形態をとる。別の実施形態において、アンカー部材110は、結合部材(図示せず)を介してフレーム20に結合してもよい。更に、フィン120(a)及び120(b)は、互いに実質的に鏡像であるように成形されていてもよい。フィン120(a)及び120(b)は、フレーム20から離れて延在し、移植状態において互いに係合する。例えば、フィン120(a)及びフィン120(b)は、係合した移植状態において、それらがフレーム20から外向きに角度をつけて延在する隆起部分を形成するよう形成されていてもよい。フィン120(a)及び120(b)がフレーム20から延在する角度は、90°程度の大きさであってよく、また、約10°~約90°、約20°~約80°、又は約30°~約70°の範囲であってもよい。フィン120(a)及び120(b)の周辺及び/又はその上に組織が成長して、ステントグラフト装置10を内腔内に固定することができる限り、ステントグラフト装置10に対するフィン120(a)及び120(b)の角度は、特に制限されないことが認められる。アンカー部材110の位置を示す上面図を
図5Aに図示する。
図5Bに一般的に示されるフィン120(a)及び120(b)の上及び/又はその周辺に組織が成長する。
図5Cは、係合形態における、過成長した組織140と共にフィン120(a)及び120(b)を示すアンカー部材110の拡大図を示す。フィン120(a)及び120(b)は、実際は例示的であり、アンカー部材80の少なくとも一部の上に組織の過成長が起こり、除去経路に沿った非外傷的除去のためにアンカー部材の幾何構造が変化することがある限り、代替の形状、長さ、及び/又は寸法を有してもよいことが認められる。
【0051】
過成長した組織140からステントグラフト装置10を除去するために、機械(例えば、長手方向の)力を、例えば矢印130の方向に、ステントグラフト装置10に適用してもよい。ステントグラフト装置10を引く、又はそうでなくとも移動することは、アンカー部材110の対向するフィン120(a)及び120(b)を分離し、
図5Dに一般的に示すように、それらは、組織140の最小限の移動を伴い、それぞれフィン120(a)及び120(b)の幾何構造によって画定される除去経路145(a)及び145(b)に沿って、過成長した組織140を通って移動する。一旦フィン120(a)及び120(b)が過成長した組織140から分離されると、次にステントグラフト装置10を任意の従来の方法によって除去してもよい。
【0052】
図6は、更に他の例示的なアンカー部材を示す模式図である。
図6に示すように、ステントグラフト装置10は、フレーム20から離れて延在する、可撓性でコイル状ワイヤの形態の複数のアンカー部材140を含む。アンカー部材140は、ステントグラフト装置10の少なくとも一つの末端に配置されていてもよい。
図6Aに一般的に示される移植形態において、アンカー部材150は内腔壁70を係合しており、アンカー部材140のコイル150の上及び/又はその周辺で組織の成長が起こり、ステントグラフト装置10が除去される時まで、ステントグラフト装置10を内腔70内に固定する。矢印160の方向に長手方向の力がステントグラフト装置10に適用されると、アンカー部材140のコイルが解け、過成長した組織の最小限の移動を伴い、アンカー部材140の幾何構造によって画定される除去経路に沿って過成長した組織を通って引かれる。過成長した組織170に埋め込まれたアンカー部材10の拡大模式図を
図6Bに示す。アンカー部材140が矢印160の方向に移動すると、アンカー部材140は幾何構造を変化させ(例えば、コイルが解け、又はそうでなくとも直線になり)、ステントグラフト装置10が除去される。
図6Cに図示するように、アンカー部材140は除去経路175を辿り、周囲組織170から分離する。次にステントグラフト装置10を任意の従来の方法によって除去してもよい。
【0053】
ステントグラフト装置の展開に応じてステントグラフト装置の移動が発生しないように、ステントフレームによって提供される半径方向の力は、ステントグラフト装置を内腔内の適所に一時的に固定し、及び/又は保持する。少なくとも一つの実施形態において、ステントグラフト装置の展開に応じてステントグラフト装置の移動が発生しないように、ステントグラフト装置は生体吸収性固定部材(例えば、フック、棘、縫合、又はクリップ)を含み、ステントグラフト装置を内腔内の適所に一時的に固定し及び/又は保持する。
一旦アンカー部材の上及び/又はその周辺に充分な組織の成長が起こると、成長した組織は、それが除去されるべき時までステントグラフト装置を内腔内に固定し、及び/又は固定を助ける。
【0054】
いくつかの実施形態において、一旦過成長した組織が一つ又は複数のアンカー部材から分離されると、ステントグラフト装置10は、回収シース(図示せず)の中へと引くことができる。把持装置が更に格納されると、ステントグラフト装置10の全体を回収シースの内腔に引くことができる。次に、ステントグラフト装置10を含む回収シースを、患者から除去することができる。
【0055】
以上、本出願の本発明を、一般的及び特定の実施形態の両方について記載した。本開示の範囲を逸脱しない範囲内で実施形態において様々な変更及び変形をすることができることは、当業者にとって明らかである。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲及び均等の範囲内である限りにおいて、本発明の変更及び変形を包含することが意図されている。以下の項目[1]~[21]に、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
拡張可能フレームと;
前記拡張可能フレームの上に延在するカバーと;
前記拡張可能フレームに結合し、前記拡張可能フレームの長さに沿って延在するアンカー部材と
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記アンカー部材は、前記拡張可能フレームから前記アンカー部材を除去するため、前記アンカー部材上に成長した組織の最小限の移動を伴い、軸方向に移動する、ステントグラフト装置。
[2]
前記アンカー部材上に成長した前記組織が前記ステントを内腔内に固定する、項目1に記載のステントグラフト装置。
[3]
前記アンカー部材は蛇行した又は螺旋状の形態を有する、項目1に記載のステントグラフト装置。
[4]
前記拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材によって、前記ワイヤが前記拡張可能フレームに結合している、項目3に記載のステントグラフト装置。
[5]
拡張可能フレームと;
前記拡張可能フレームの上に延在するカバーと;
前記拡張可能フレームに結合し、移植状態において前記拡張可能フレームの長さに沿って延在するアンカー部材と
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記長さは前記アンカー部材の除去経路を画定し、前記アンカー部材は、前記アンカー部材の前記除去経路に沿って前記拡張可能フレームから除去されるのに適している、ステントグラフト装置。
[6]
前記アンカー部材上に過成長した組織が前記ステントを内腔内に固定する、項目5に記載のステントグラフト装置。
[7]
前記アンカー部材の除去は非外傷性である、項目6に記載のステントグラフト装置。
[8]
前記アンカー部材は蛇行した又は螺旋状の形態を有する、項目5に記載のステントグラフト装置。
[9]
前記拡張可能フレームの外面に配置された複数の結合部材によって、前記アンカー部材が前記拡張可能フレームに結合されている、項目8に記載のステントグラフト装置。
[10]
ステントグラフト装置を内腔内に固定するアンカー部材をその中に取り入れた、拡張可能な支持フレームと;
前記拡張可能な支持フレームの上に延在するカバーと
を含む、ステントグラフト装置であって、
前記アンカー部材上に成長した組織から前記アンカー部材を除去するために、前記アンカー部材の幾何構造が変化する、ステントグラフト装置。
[11]
前記アンカー部材は、移植状態において前記拡張可能な支持フレームから外向きに延在するコイル状ワイヤであり、前記アンカー部材は、前記ステントグラフト装置を前記内腔から除去するために、非コイル状の形態をとる、項目10に記載のステントグラフト装置。
[12]
前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は移植状態において互いに係合し、前記第一の部材及び前記第二の部材は、前記内腔から前記ステントグラフト装置を除去するために分離する、項目10に記載のステントグラフト装置。
[13]
成長した前記組織が前記ステントを内腔内に固定する、項目10に記載のステントグラフト装置。
[14]
内腔からステントグラフト装置を除去する方法であって、前記方法は:
それに結合したアンカー部材を有するステントグラフト装置を提供することであって、前記アンカー部材は前記拡張可能フレームの長さに沿って延在し、前記長さは前記アンカー部材の除去経路を画定する、ことと;
機械力を前記アンカー部材に適用して、前記ステントグラフト装置から前記アンカー部材を前記除去経路に沿って除去することと
を含む、方法。
[15]
前記ステントグラフト装置を前記内腔から除去することを更に含む、項目14に記載の方法。
[16]
前記ステントグラフト装置は、
拡張可能フレームと;
前記拡張可能フレーム上に延在するカバーと
を含み、
前記アンカー部材は前記拡張可能フレームに結合している、項目14に記載の方法。
[17]
内腔からステントグラフト装置を除去する方法であって、前記方法は:
ステントグラフト装置から外向きに延在するアンカー部材をその中に取り入れたステントグラフト装置を提供することと、
機械力を適用して前記アンカー部材の幾何構造を変化させ、前記アンカー部材によって画定される除去経路に沿って前記アンカー部材を除去することと
を含む、方法。
[18]
前記ステントグラフト装置を前記内腔から除去することを更に含む、項目17に記載の方法。
[19]
前記ステントグラフト装置は、
前記アンカー部材をその中に取り入れた拡張可能な支持フレームと;
前記拡張可能な支持フレームの上に延在するカバーと
を含む、項目17に記載の方法。
[20]
前記アンカー部材はコイル状ワイヤであり、前記幾何構を変化させることは前記アンカー部材のコイルを解くことを含む、項目17に記載の方法。
[21]
前記アンカー部材は第一の部材及び対向する第二の部材を含み、前記第一の部材及び前記第二の部材は互いに係合し、前記幾何構造を変化させることは、前記第一の部材及び前記第二の部材を分離することを含む、項目17に記載の方法。