(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】カチオン性粘液酸ポリマー系デリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20221003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221003BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221003BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221003BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221003BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20221003BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221003BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221003BHJP
【FI】
C08G81/00
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K31/713
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/60
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116707
(22)【出願日】2021-07-14
(62)【分割の表示】P 2017566754の分割
【原出願日】2016-06-13
【審査請求日】2021-08-13
(32)【優先日】2015-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ドロシー パン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G81/00~85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造単位:
-[-(B)-(A)-(B)-]-、-[-(A)-(B)-(A)-]-,-[-(A)-(B)-]-または-[-(B)-(A)-]-
の一以上を含み;
式中、
Aは
ポリエチレングリコールを含む非荷電セグメントであり;
Bは
(a)式(IV)または式(IVA)の構造:
【化1】
を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットと、
(b)式(V)の構造:
【化2】
式中、mは、1ないし10である、
を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットと
が含まれるカチオン性荷電セグメントである、
交互荷電および非荷電セグメントを含むポリマー。
【請求項2】
前記
ポリエチレングリコールは数平均分子量を約500ダルトンから約50,000ダルトンまでの範囲においてもつ、請求項
1のポリマー。
【請求項3】
Bには、式(VI)の構造:
【化3】
式中、
mは、それぞれの存在に無関係に、1ないし10であり;および
nは、それぞれの存在に無関係に、1ないし5である、
が含まれる請求項1のポリマー。
【請求項4】
mは5であり、および、nは1である、請求項
3のポリマー。
【請求項5】
式(X)の構造:
【化4】
式中、
R
Aは電子吸引基であり;
nは
0ないし4であり;
sは20-1200であり、
Lは、連結基であり;および
X
5は、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)-O-アルキル、-C(=O)-O-アリール、-NH
2、-NH(アルキル)、N(アルキル)
2により置換され、またはそれらの塩もしくは保護アナログである、
を有するボロン酸含有ポリマーをさらに含む、請求項1のポリマー。
【請求項6】
R
Aは-N0
2であり;
nは1であり;および
ボロン酸部分が次の構造:
【化5】
の1つを有する、請求項
5のポリマー。
【請求項7】
Lは、-(C
0-2アルキレン-)NH-C(=O)-(C
0-2アルキレン)-、(C
0-2アルキレン)-C(=O)-NH-(C
0-2アルキレン)-、-(C
0-2アルキレン)-O-C(=O)-(C
0-2アルキレン)-、-(C
0-2アルキレン)-C(=O)-O-(C
0-2アルキレン)-、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、および、-C(=O)-O- からなる群から選択される、請求項
5のポリマー。
【請求項8】
請求項
3のポリマーを含むナノ粒子
【請求項9】
生物学的物質がさらに含まれ、該生物学的物質は、前記ナノ粒子中にカプセル化されているか、または、随意に可逆的な接合により、前記ポリマーに共有結合している、請求項
8のナノ粒子。
【請求項10】
前記生物学的物質がポリヌクレオチドである請求項
9のナノ粒子。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、キメラポリヌクレオチド、および、プラスミドからなる群から選択される、請求項
10のナノ粒子。
【請求項12】
前記生物学的物質は、小分子治療薬剤である請求項
9のナノ粒子。
【請求項13】
前記小分子治療薬剤は、抗生物質、ステロイド、および、化学療法剤からなる群から選択される、請求項
12のナノ粒子。
【請求項14】
前記化学療法剤は、エポチロン、カンプトテシン系薬物、および、タキソールからなる群から選択される、請求項
13のナノ粒子。
【請求項15】
前記生物学的物質は、生分解性連結により前記ポリマーに共有結合している、請求項
12のナノ粒子。
【請求項16】
請求項
5のポリマーを含むナノ粒子。
【請求項17】
X
5への縮合連結を通してボロン酸含有ポリマーにコンジュゲートする標的指向性リガンドをさらに含み、
該指向性リガンドは、トランスフェリン、細胞レセプターについてのリガンド、抗体、および、細胞レセプタータンパク質またはそれらの断片、からなる群から選択される、請求項
16のナノ粒子。
【請求項18】
前記標的指向性リガンドの単一の分子を含む、請求項
17のナノ粒子。
【請求項19】
生物学的物質がさらに含まれ、該生物学的物質は、前記ナノ粒子中にカプセル化されているか、または、随意に可逆的な接合により、前記ポリマーに共有結合している、請求項
17のナノ粒子。
【請求項20】
前記生物学的物質がポリヌクレオチドである請求項
19のナノ粒子。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、キメラポリヌクレオチド、および、プラスミドからなる群から選択される、請求項
20のナノ粒子。
【請求項22】
前記生物学的物質は、小分子治療薬剤である請求項
19のナノ粒子。
【請求項23】
前記小分子治療薬剤は、抗生物質、ステロイド、および、化学療法剤からなる群から選択される、請求項
22のナノ粒子。
【請求項24】
前記化学療法剤は、エポチロン、カンプトテシン系薬物、および、タキソールからなる群から選択される、請求項
23のナノ粒子。
【請求項25】
前記生物学的物質は、生分解性連結により前記ポリマーに共有結合している、請求項
22のナノ粒子。
【請求項26】
請求項
9のナノ粒子および薬学的に許容可能なビヒクル、担体または賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項27】
請求項
19のナノ粒子および薬学的に許容可能なビヒクル、担体または賦形剤を含む、薬剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
この出願は、2015年7月1日付出願の米国特許出願第62/187,366号に対する優先権の利益
を主張し、その内容はここに参照することによってあらゆる目的のために組み込まれる。
政府の権利
【0002】
この発明は、米国国立衛生研究所によって付与された助成番号CA151819の下での政府の
支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
技術的分野
【0003】
本開示は、生物学的物質を送るためのポリマーおよびポリマー複合体に基づくナノ粒子
デリバリーシステム、およびこれらの組成物を作成および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
RNA干渉(RNAi)をそれらの作用機序として使用する治療法は、ヒト疾患の処置に大き
な有望性をもつ。例えば、siRNAは、治療用物質として魅力的な特色をもち、次の:(i)
本質的に任意の遺伝子を標的とする能力(したがって、すべての標的は原則的に新薬の開
発につながる(druggable))、(ii)十分に設計されたsiRNAsにおけるmRNA抑制のため
の、強力な一桁のピコモルIC50(50%抑制に必要とされる濃度)(iii)有効性および標
的特異性を損なうことなくオフターゲット効果および免疫刺激を最小限に抑えることがで
きる化学修飾および配列設計、および(iv)作用の触媒的RNAi機構、その結果、mRNA標的
発現の延長されたsiRNA抑制がもたらされることが含まれる。効果的および効率的な治療
用物質へのsiRNAのトランスレーション(移行とも言う)の主要な障害は、標的への核酸
のデリバリーであるが、siRNAベースの実験的治療用物質は臨床実習に達した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
がん治療のために研究された治療用物質は、主として全身的に施与され、およびsiRNA
を送るために、いくらかのタイプの合成化合物(正に荷電した脂質またはポリマー)をそ
れらの調剤物において使用する。これらの調剤物の多数は、目下、ナノ粒子(NPs)と呼
ばれる。CALAA-01は、がんの処置のために臨床診療所に達する最初のsiRNA系の治療用物
質であった。この標的化されたナノ粒子は、ポリマー上の正電荷およびsiRNA骨格上の負
電荷の間の静電相互作用を介してsiRNAにより組み立てられるシクロデキストリンベース
のポリカチオン(CDP)を含む。CALAA-01は、患者においてsiRNAを固形腫瘍に送り、およ
びRNAi機構を用いて標的を抑制する機能的siRNAを放出することができた(ヒトでの第1の
例)。CALAA-01はいくつかの積極的な特質を明らかにするが、その欠点の1つはそれが非
常に限られる循環時間しかもたないことである。動物(マウス、ラット、イヌ、および非
ヒト霊長類)で観察されるCALAA-01の迅速なクリアランスもまた、ヒトにおいて観察され
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概略
siRNA含有ナノ粒子の循環時間を増加させるとともに、および調剤物内での非siRNA成分
の量を減少させるsiRNAデリバリーのためのポリマーシステムの開発は有利であろう。本
開示は、先行技術のいくらかの欠点を克服するデリバリーシステムに指向される。本開示
の態様の中には、インビボでのsiRNAデリバリーのためのジブロックおよびトリブロック
コポリマーを含め、カチオン性粘液酸系ポリマー(cMAP)のファミリー、およびそれらか
ら誘導されるナノ粒子がある。これらの化合物および構造ならびにそれらの作成および使
用の方法を、この明細書内でより一層詳細に説明する。
【0007】
本開示の一定の実施態様は、式(I)または式(II)または式(III)の以下の構造単位
:
【化1】
の1以上を含み;
式中、
Aはポリアルキレングリコールを含む非荷電セグメントであり;
Bは少なくとも1対の隣接ジオールを含む少なくとも1のポリヒドロキシ連結を含むカチ
オン性荷電セグメントである、交互荷電および非荷電セグメントを含むポリマーを提供す
る。
【0008】
一定の態様において、Aは、ポリエチレングリコールおよび適切な連結基であるか、ま
たはそれらが含まれる。他の実施態様では、ポリアルキレングリコール部分はこれらのポ
リマー内で約500ダルトンから約50,000ダルトンまでの範囲での公称数平均分子量を有す
る。
【0009】
重複する態様において、Bは糖連結が含まれる少なくとも1対の隣接ジオールを含む少な
くとも1のポリヒドロキシが含まれるカチオン性荷電セグメントである。いくらかの態様
において、これらのポリヒドロキシ連結には、粘液酸が含まれる。Bには、式(V)の構造
:
【化2】
を含む少なくとも1の繰り返しサブユニットがさらに含まれてよく、
式中、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-6または5である。
【0010】
他の実施態様において、これらのポリマーでは、Bには、cMAPを含む少なくとも1の繰り
返しサブユニットが含まれてよく、そのサブユニット構造は式(VI):
【化3】
として代表され;
式中、
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;および
nは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、または5である。
【0011】
いくらかの特定の実施態様において、ポリマーは、式(VII)の構造:
【化4】
によって記載されてよく、
式中、
鎖Aは
【化5】
であり、
鎖Bは
【化6】
であり;
cMAPは
【化7】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ、
無関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;および
X
1およびX
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C
(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換
され、またはそれらの塩もしくは保護アナログである。
【0012】
本開示の範囲内で考えられる他の構造には、式(VIII)の構造:
【化8】
によって記載されるそれらのポリマーが含まれ、
式中、
cMAPは
【化9】
であり;
鎖Bは
【化10】
であり;
鎖Cは
【化11】
であり;
末端基Dは:
【化12】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(ア
ルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、ま
たはそれらの塩もしくは保護アナログであり;および
X
3は、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-
N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナログである。
【0013】
さらに他のポリマーは、式(IX)の構造:
【化13】
によって記載されることができ、
式中、
末端基Dは:
【化14】
であり;
cMAPは
【化15】
であり;
鎖Cは
【化16】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまで、可能なら約1000Daから約5000Daまでの範囲におい
て提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
3およびX
4は、それぞれの存在に無関係に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O
(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナ
ログである。
【0014】
また、本開示の範囲内で考えられるものは、先行する構造のいずれか一のポリマー、お
よび式(X)の構造
【化17】
が含まれる第二ボロン酸含有ポリマーそれぞれを含む、ポリマー複合体であり、
式中、
ポリマーおよび第二ボロン酸含有ポリマーは、式(X)のボロン酸部分および式(I)、
(II)、(III)、(IV)、(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)のポリヒドロキシ
連結の少なくとも1対の隣接ジオールの間のボラート縮合連結によって互いに可逆的に接
続され、X
5はこの接続の遠位端にあり;
R
Aはニトロ(または他の電子吸引基)であり;
nは0、1、2、3、または4、可能なら1であり;
sは20-1200であり;
Lは、フェニル環およびポリエチレンオキシド連結の間の連結基であり;および
X
5は、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)
、-NH
2により置換され、またはそれらの塩もしくは保護アナログである。
【0015】
本開示にはまた、ここに記載される任意のポリマーまたはポリマー複合体を含むナノ粒
子または複数のナノ粒子が含まれる。可能なら、ナノ粒子は単分散である。ナノ粒子は、
カプセル化生物学的物質、たとえば、siRNAをさらに含んでよく、および/または一または
それよりも多くの標的指向性リガンドにさらに複合体化してよい。ペイシェントに施与す
るとき、生物学的物質のバイオアベイラビリティは、それ自体によって施与されるときに
同じ生物学的物質のバイオアベイラビリティよりも良好である。
【0016】
いくらかの追加の実施態様において、ポリマー、ポリマー複合体、およびナノ粒子は、
随意に、生物学的物質および/または標的指向性リガンドを含み、薬剤組成物中に調剤さ
れる。他の実施態様はこれらの調剤された組成物を、それぞれの生物学的物質を必要とす
るペイシェントに施与することによってペイシェントの処置を提供する。
【0017】
まださらなる実施態様は、創意に富むポリマーを作成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本出願は添付の図面と併せて読むときさらに理解される。主題を例示する目的のために
、主題の模範的な実施形態をこれらの図において示すが;もっとも、ここに開示される主
題は、開示された特定の方法、デバイス、およびシステムに制限されない。加えて、図面
は必ずしも縮尺通りに描かれていない。図面は以下の通りである:
【
図1】カチオン性ムチン酸ポリマー(cationic Mucic Acid Polymer)(cMAP)の合成の略図を示す。
【
図2】cMAP-PEGコポリマーの合成の略図を示す。
【
図3】mPEG-cMAP-PEGmトリブロック.ポリマーの合成の略図を示す。
【
図4】5-ニトロフェニルボロン酸-PEGmの合成の略図を示す。
【
図5】ムチン酸エチレンジアミンの構造を示す(テーブル1参照)。
【
図6】ジメチルスベリミダートの構造を示す(テーブル2参照)。
【
図7】ジメチルエステルに加水分解されたジメチルスベリミダートの構造を示す(テーブル2参照)。
【
図8】片側がカルボキシラートに加水分解されたジメチルスベリミダートの構造を示す(テーブル2参照)。
【
図9】カチオン性ムチン酸ポリマー(cMAP)の構造を示す。
【
図10】cMAPの模範的な末端基を示す。ポリマーは、1つのアミンおよび1つのメトキシ(上段)、両方アミン(中段)、または両方メトキシ(下段)末端基をもつことができる。小量のカルボン酸もまた観察され、およびDMSの一端の加水分解から生成されるであろう。
【
図11】末端基機能性に隣接するメトキシ基およびメチレン基からの共鳴を示すcMAPの
1H NMR(600MHz)スペクトルである。
【
図12】RiboGreen(リボグリーン)アッセイを用いる電荷比を伴うsiRNA(cMAP、cMAP-PEG5kコポリマー、およびmPEG5k-cMAP-PEG5kmトリブロックポリマーによってカプセル化されたもの)の割合の間の関係を示す。
【
図13】3.4kおよび5k PEGブロックについて、3+/-の電荷比によるsiRNAカプセル化を示すcMAP-PEGコポリマーRiboGreenアッセイを示す。
【
図14】2kおよび5k PEGブロックについて3+/-の電荷比によるsiRNAカプセル化を示すmPEG-cMAP-PEGmトリブロックRiboGreenアッセイを示す。
【
図15】7.4前後の生理的pHにてcMAPでの隣接ジオールとボロン酸エステルを形成するが、酸性pHで解離する5-ニトロフェニルボロン酸-PEGmのpH依存性を示す。
【
図16A】
図16Aおよび16Bは、形成されたsiRNAを伴う種々のNPsで、次の:cMAP(I、安定でなく、および注入されない)、cMAP+5-nPBA-PEGm(A)、cMAP-PEGコポリマー(B)、cMAP-PEGコポリマー+5-nPBA-PEGm(C)、mPEG-cMAP-PEGmトリブロック(D)、およびmPEG-cMAP-PEGmトリブロック+5-nPBA-PEGm(E)を示す二つのダイアグラムの略図を示す。(注:イラストは一定の縮尺でも、または化学量論的にも描かれておらず、および粒子がどのように、-例えば、siRNAが添加される前にPEGがポリマーに最初に加えられるPEG化調剤物において、調剤されるかを反映しない)。
【
図17】cMAP siRNA NP塩安定性データを示す。PEGを伴わないと、cMAP-siRNA NPは1×PBSではいつも不安定であったが、NPを安定化させるために5-nPBA-PEGmを用いるとき、2日間安定であった。
【
図18】cMAP-PEG-cMAP純粋トリブロックsiRNA NP塩安定性を示す。5-nPBA-PEGmを添加しないと、1+/-電荷比で調剤されたcMAP-PEG3.4k-cMAP siRNA NPは1×PBSではいつも凝集するが、cMAPでの2つのジオール基当たり少なくとも1つの5-nPBA-PEGmを調剤物に添加するとき(0.5 PEG)、安定である。
【
図19】cMAP-PEG-cMAP純粋トリブロックsiRNA NP塩安定性を示す。5-nPBA-PEGmを添加しないと、3+/-電荷比で調剤されたcMAP-PEG3.4k-cMAP siRNA NPは1×PBSではいつも凝集するが、cMAPでの2つのジオール基当たり少なくとも1つの5-nPBA-PEGmを調剤物に添加するとき(0.5 PEG)、安定である。
【
図20】cMAP-PEG-cMAP純粋トリブロックsiRNA NP塩安定性を示す。5-nPBA-PEGmを添加しないと、1+/-電荷比で調剤されたcMAP-PEG5k-cMAP siRNA NPは1×PBSではいつも凝集するが、cMAPでの2つのジオール基当たり少なくとも1つの5-nPBA-PEGmを調剤物に添加するとき(0.5 PEG)、安定である。
【
図21】NP調剤物で、次の:cMAP+5-nPBA-PEG5km(A)、cMAP-PEG5kコポリマー(B)、cMAP-PEG5k共重合体+5-nPBA-PEG5km(C)、mPEG5k-cMAP-PEG5km(D)、およびmPEG5k-cMAP-PEG5km+5-nPBA-PEG5km(E)のcryoTEMイメージを示す。
【
図22-1】(A-E)は、DLS Nanoparticle Size Distributions(DLSナノ粒子サイズ分布)を示す:DLSによる対数正規サイズ分布(Lognormal size distribution sby DLS)で、cMAP+5-nPBA-PEGm NPについて(
図22(A));CMAP-PEGコポリマーNPについて(
図22(B));cMAP-PEGコポリマー+5-nPBA-PEGm NPについて(
図22(C));mPEG-cMAP-PEGm NPについて(
図22(D));およびmPEG-cMAP-PEGm+5-nPBA-PEGm NPについて(
図22(E))。
【
図23-1】(A-E)は、CryoTEMによるサイズ分布で、cMAP+5-nPBA-PEGm NPについて(
図23(A));cMAP-PEGコポリマーNPについて(
図23(B));cMAP-PEGコポリマー+5-nPBA-PEGm NPについて(
図23(C));mPEG-cMAP-PEGm NPについて(
図23(D));およびmPEG-cMAP-PEGm+5-nPBA-PEGm NPについて(
図23(E))を示す。
【
図24-1】A-Cは、siRNA単独と比較した、調剤されたsiRNA NPsのPKを示す。
図24Aは、CALAA-01を伴うsiRNA単独、安定化のためのAD
2-PEGを有するCDPシステム、およびAD
2-PEGおよびCALAA-01を有するCDPよりも高い安定性を示すcMAP+5-nPBA-PEGmの比較を示す。
図24Bは、コポリマーおよびトリブロック調剤物に対するcMAP+5-nPBA-PEGmの比較を示す。
図24Cは、過剰成分がろ過されて除去されたトリブロック調剤物に対するcMAP+5-nPBA-PEGmの比較を示す。n=3マウス。
【
図25】mPEG-cMAP-PEGmの循環時間についてデータを示し、siRNA NPは、Balb/cおよびヌードマウスにおいて同様である。n=3マウス。血清においてフラクションCy3-siRNAは時間(60分まで)の関数として残存する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的な実施形態の詳細な記載
本開示は、先行技術のいくつかの欠点を克服するデリバリーシステムに指向する。
【0020】
本発明者らは、ここでの他の箇所で言及される短い循環時間の原因を調べ、およびCALA
A-01が腎臓において糸球体基底膜(GBM)で分解されることを示した。本発明者らは、こ
のクリアランス機構が、カチオン性デリバリー成分およびアニオン性核酸の間の静電相互
作用によって主に組み立てられる任意のNP調剤物に影響し得ると推測した。カチオン性ポ
リマーまたは脂質のいずれかを使用する他のsiRNAデリバリーシステムは、同様の短い循
環時間および腎クリアランスを示した。
【0021】
インビボでsiRNAを送るために使用される多数の目下のポリマーおよびリポソームシス
テムは、多量の物質、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)の他に、それらの調
剤物中に過剰のカチオン性成分を含み(正対負の電荷比は通常1より大きく)、形成され
たNPsを立体的に安定化させるために使用される。過剰なカチオン性成分は、インビボで
望ましくない副作用を有することがあり、有害反応、例えば、血小板凝集、補体活性化、
および炎症反応などのようなものを引き起こす可能性がある。
【0022】
siRNA含有ナノ粒子の循環時間を増加させ、および調剤物内の非siRNA成分の量を減少さ
せる双方のsiRNAデリバリーのためのポリマーシステムの開発は有利であろう。インビボ
でのsiRNAデリバリーのためのカチオン性粘液酸ベースのポリマー(cMAP)のファミリー
がここに記載される。このポリマーデリバリーシステムは、CDPシステムに類似したいく
つかの特長を有し、それは後者のシステムが人間において機能したからである。ここで開
発されたカチオン性ポリマーは、より一層単純な糖を使用し、シクロデキストリンよりも
むしろ、粘液酸(粘膜酸、ムチン酸とも言う)として具現され、および表面機能化のため
の代替戦略を可能にする。アダマンタン(AD)との包接複合体(包摂錯体とも言う)形成
(CDP)を介するナノ粒子表面機能化の代わりに、cMAPは、cMAPベースのナノ粒子をPEG化
し、および標的化するために使用できるボロン酸についての結合部位である隣接ジオール
を含む。小分子薬物のデリバリーのためにムチン酸含有ポリマーにより形成されるナノ粒
子は、この組み立て方法を介して標的化剤を組み込んだ。また、基本的なcMAPは、機能化
PEGと線状ブロックコポリマーにまでさらに反応させた。cMAPの末端基での、二活性化さ
れた、カルボン酸-PEG、または活性化された、カルボン酸-PEG-メトキシ(PEGm)のいず
れかとの反応は、2つの可能なコポリマー(共重合体とも言う)で、次の:cMAP-PEGコポ
リマーまたはmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーを導く。cMAP-PEGコポリマーはsiRNA
と組み合わされて表面上にPEGループを形成し、ナノ粒子を安定化することができるが、
その一方で、mPEG-cMAP-PEGmトリブロックは、ナノ粒子表面でPEGブラシ構成を形成する
ことができる。後者のトリブロックアプローチは、CDPおよびプラスミドDNA(pDNA)で以
前に検討されており、およびそのトリブロックポリマーはpDNAをカプセル化する能力を有
しなかった。pDNAをカプセル化するポリマーは、濃縮siRNAにおいて良好でない可能性が
あり、および逆もまた同様であることが示された。ここで、本発明者らは、mPEG-cMAP-PE
Gmトリブロックポリマーが、マウスにおける循環時間の増加を伴うsiRNA含有ナノ粒子(
それはsiRNAである調剤物のca.(約)30重量%を有することができる)を形成しうること
を示す。さらに、ナノ粒子は、NPsを安定化させるために任意の追加の5-nPBA-PEGmを用い
ることなく、リン酸緩衝化生理的塩類溶液(PBS)において直接難なく組み立てることが
できる。
【0023】
本開示は、添付の図および例に関連して以下の説明を参照することにより、より一層容
易に理解することができ、それらのすべてがこの開示の一部分を形成する。この開示が、
ここに説明または示される特定の生成物、方法、条件またはパラメータに制限されず、お
よびここに使用される用語が、特定の実施形態を例としてだけ説明する目的のものであり
、および任意のクレームされた発明を制限することを意図するものではないことが理解さ
れるべきである。同様に、特に明記しない限り、可能なメカニズムまたは作用のモードま
たは改善についての理由に関する任意の説明は、例示的なものに過ぎないことを意味し、
およびここでの開示は、任意のそのような提案されたメカニズムまたは作用のモードまた
は改善についての理由の正確さまたは不正確さによって制約されるものではない。このテ
キストの全体にわたって、説明は組成物および前記組成物を作成および使用する方法に言
及することが認識される。すなわち、本開示が、組成物または組成物を作成または使用す
る方法に関連する特長または実施形態を記載または請求する場合、そのような説明または
請求の範囲は、これらの特長または実施形態を、これらの文脈の各々において実施形態(
すなわち、組成物、作成方法、および使用方法)にまで拡げることが意図されると認めら
れる。
【0024】
本開示では、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の参照を含み、および文脈上
特に明記しない限り、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値が含まれる。した
がって、例えば、「物質」への言及は、そのような物質およびその技術において熟練する
者(当業者とも言う)に知られるその等価物の少なくとも1つに対する言及である。
【0025】
値が、「約」という記述子を使用して近似値として表されるとき、その特定の値が別の
実施形態を形成することが理解されるであろう。包括的に、「約」という用語の使用は、
開示される主題によって得られることが求められる望ましい特性に応じて変動しうる近似
を指し示し、およびその機能性に基づいて、使用される特定の文脈において解釈される。
当業者は、このことを日常的な問題として解釈することが可能であろう。場合によっては
、特定の値について使用される有効数字の数は、単語「約」の程度を決定する非制限的な
方法の1つであってもよい。他のケースでは、一連の値において用いる漸次的変化は、各
値について「約」という用語に使用可能な意図された範囲を定めるために使用することが
できる。存在する場合、すべての範囲は包括的で、かつ組み合わせ可能である。つまり、
範囲内の値への参照には、その範囲内のすべての値が含まれる。
【0026】
明確にするために、ここで別個の実施態様の文脈で記載される本開示の一定の特長はま
た、単一の実施態様において組み合わせて提供されうることを認めるべきである。すなわ
ち、明白に適合性でないか、または明確に排除されない限り、各個々の実施態様は任意の
他の実施態様(群)(「群」は複数も含みうることを示す)と組み合わせることが可能で
あるとみなされ、およびそのような組合せは別の実施態様と考えられる。逆に、簡潔さの
ために、単一の実施態様の文脈で説明される本開示の種々の特長は、別々に、または任意
のサブコンビネーションで提供されてもよい。最後に、ある実施態様は、一連のステップ
の一部分またはより一層一般的な構造の一部分として説明することができる一方、前記各
ステップは、他のものと組み合わせることが可能なそれ自体において無関係な実施態様と
考えてもよい。
【0027】
移行の用語「comprising(含まれる)」、「consisting essentially of(から本質的
になる)」、および「consisting(からなる)」は、特許専門語において一般的に受け入
れられる意味を内包することを意図し、すなわち、(i)「comprising」は、「including
(含む)」、「containing(含有する)」、または「characterized by(によって特徴付
けられる)」と同義語であり、包括的または無制限であり、および追加の、引用されてな
い要素または方法のステップを排除するものではなく;(ii)「consisting of(~から
なる)」は、請求項に特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外し;お
よび(iii)「consisting essentially of」は、特定の物質またはステップに、「および
」特許請求される発明の「基本的、かつ新規な特徴(群)に実質影響を及ぼさないものに
」クレームの範囲を制限する。「comprising」(またはその等価のもの)という語句によ
って記載される実施態様はまた、実施態様として、「consisting of」および「consistin
g essentially of」に関して無関係に記載されるものをも提供する。「consisting essen
tially of」によって提供されるそれらの実施態様について、基本的および新規な特徴(
群)は、創意に富む物質、および物質それら自体を調製および使用するために方法(およ
びそのような方法に使用されるシステムおよびそれから誘導される組成物)の容易な操作
可能性であり、そこでは、方法および物質は、請求の範囲に提供される要素だけを使用し
て強調表示される特性を提供することが可能である。すなわち、他の材料も創意に富む組
成物中に存在し得るが、これらの追加の材料の存在は、それらの組成物の記載された利点
を提供するために必要ではなく(すなわち、効果は相加的であり得)、および/またはこ
れらの追加的な物質は生成物の組成の性能を弱めない。同様に、追加のステップもまた本
方法で使用することができる場合、それらの存在は記載された効果または利点を達成する
ために必要ではなく、および/または述べられた効果または利益を損なわない。
【0028】
リストが提示されるとき、他に記載されていない限り、そのリストの各々個々の要素お
よびそのリストのあらゆる組合せは、別個の実施態様であると理解されるべきである。例
えば、「A、B、またはC」として提示される実施態様のリストは、実施態様、「A」、「B
」、「C」、「AまたはB」、「AまたはC」、「BまたはC」、または「A、B、またはC」を含
むものとして解釈されるべきである。同様に、C1-3アルキルなどのような用語にはまた、
別個の実施態様として、C1アルキル、C2アルキル、C3アルキル、C1-2アルキル、およびC2
-3アルキルをも含まれる。
【0029】
この明細書を通じて、関連する技術における熟練者に理解されるように、単語はそれら
の通常の意味が与えられるべきである。しかし、誤解を避けるために、一定の用語の意味
を明確に定義し、または明確にする。
【0030】
アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸、ケトン、または他の同様に反応性の官
能基への言及にはまた、それらの保護されたアナログ(類似体とも言う)も含まれる。例
えば、ヒドロキシまたはアルコールへの言及には、それらの置換をも含まれ、そこでは、
ヒドロキシは、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn、Bnl)、β-メトキシ
エトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル、[ビス-(4-メトキシフェニル)
フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メト
キシフェニル)ジフェニルメチル、MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチル
チオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロ
フラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル(最も普及して
いるものには、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-
iso-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エー
テル)、エトキシエチルエーテル(EE)によって保護される。アミンへの言及にはまた、
それらの置換が含まれ、そこでは、アミンは、BOCグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz
)、p-メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)、tert-ブチルオキシカルボニル(
BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アセチル(Ac)、ベンゾイル
(Bz)、ベンジル(Bn)、カルバマート、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシ
ベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)基、またはスルホンアミ
ド(Nosyl&Nps)基によって保護される。カルボニル基を含む置換への言及には、それら
の置換が含まれ、そこでは、カルボニルは、アセタールまたはケタール、アシラール、ま
たはジアタン基によって保護される。カルボン酸またはカルボキシラート基を含む置換へ
の言及には、カルボン酸またはカルボキシラート基が、そのメチルエステル、ベンジルエ
ステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換フェノールのエステル(例えば、2,6ジメチル
フェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、シリル
エステル、オルトエステル、またはオキサゾリンによって保護される置換基が含まれる。
【0031】
本開示の実施態様には、式(I)または式(II)または式(III)の以下の構造単位:
【化18】
の一以上を含む、交互荷電および非荷電セグメントを含むポリマーが含まれ、
式中、
Aはポリアルキレングリコールを含む非荷電セグメントであり;
Bは少なくとも一対の隣接ジオールを含む少なくとも一のポリヒドロキシ連結が含まれ
るカチオン性荷電セグメントである。
【0032】
本開示のポリマーにおいて、用語ポリアルキレングリコールは、機能的連結:
【化19】
を含む、任意のポリマーに言及し、式中、xは、1から約6までの範囲であり、それでも、
実際には、および可能なら、2または3のいずれかでも、可能なら2である(xの値が高いほ
ど、ポリアルキレングリコールは低い親水性を示す)。それで、好ましい実施態様では、
Aは、ポリエチレングリコールおよび随意の(ただし好ましくは)適切な連結基であるか
、またはそれらを含み、連結基は、包括的ポリマーの他の成分に結合するのに必要である
。好適には、各存在において、ポリアルキレングリコール、概して、およびポリエチレン
グリコールは、具体的に言うと、約500ダルトンから約50,000ダルトンまでの範囲におい
て公称(名目上のとも言う)数平均分子量(nominal number averaged molecular weight
)(MW
n)をもつ。より一層具体的な実施態様では、ポリアルキレン/ポリエチレングリコ
ールの一部分は、約500Daから約1kDaまで、約1kDaから約5kDaまで、約5kDaから約10kDaま
で、約10kDaから約15kDaまで、約15kDaから約20kDaまで、約20kDaから約30kDaまで、約30
kDaから約40kDaまで、約40kDaから約50kDaまで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組
合せのMW
nの値をもつことができる。
【0033】
これらの実施態様のあるものでは、Bは、少なくとも一対の隣接ジオールを含む少なく
とも一のポリヒドロキシ連結が含まれるカチオン性荷電セグメントである。ポリヒドロキ
シ糖または糖質(炭水化物とも言う)連結がそれらの生物体適合性のために好ましいが、
キラルおよびアキラルな合成ポリヒドロキシ連結も採用できる(例えば、ポリヒドロキシ
(メタ)アクリル酸)。一定の好ましい実施態様では、ポリヒドロキシ連結には、ムチン
酸が含まれ、ここでは、Bは式(IV)、式(IV)または(IVA):
【化20】
のいずれかとして表される構造を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットを含む。これ
らの構造は互いの回転アイオソマー(rotational iosomer)であり、および本目的では機
能的に等価である。ここで使用されるように、これらの構造の一の代表は、これらの構造
のいずれかまたは双方を、それらの使用との関連において内包する。
【0034】
他の実施態様では、Bには、式(V)の構造:
【化21】
を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットがさらに含まれ、式中、mは1、2、3、4、5、
6、7、8、9、または10、可能なら、4-6または5である。そのような連結は、それらのカチ
オン特性のため、およびポリヒドロキシ(例えば、ムチン酸)の一部分をポリアルキレン
グリコールと連結する際のそれらの使用の便宜性のための双方に有用な連結基である。上
記のムチン酸連結と組み合わせるとき、連結(IV)および(V)の組合せは、cMAPを含む
少なくとも一の繰り返しサブユニットを含むサブストラクチャー(基礎構造とも言う)を
提示し、それらのサブユニット構造は式(VI):
【化22】
として代表され;
式中、
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;および
nは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、または5、可能なら1である。mおよびn
が必ずしもこれらの値に制限されないことに注目され、およびこれらの変数についてより
一層大きな値もまた本開示の範囲内で考えられうる。
【0035】
これらのビルディングブロック(基礎単位とも言う)とともに、より一層特異的なトリ
ブロックおよびジブロックポリマーの範囲を説明することが可能である。再度、以下に記
載する構造は、実施例において説明する方法を用い、そこで説明する反応物のホモログ(
同族体とも言う)を用いて調製することができる。例えば、一定の実施態様では、本開示
のポリマーには、式(VII)の構造:
【化23】
によって記載されものが含まれ、
式中、
鎖Aは
【化24】
であり、
鎖Bは
【化25】
であり;
cMAPは
【化26】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ、
無関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10(またはさら
により一層高く)、可能なら4-6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり(またはさら
により一層高く);および
X
1およびX
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C
(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換
され、またはそれらの塩もしくは保護アナログ(保護類似体とも言う)である。
【0036】
ここでも、pおよびqの値は、各存在にて同じでも、または異なってもよく、および互い
に同じでも、または異なってもよい。nおよびrについても同様であり、すなわち、nおよ
びrについての値は、出現ごとに同じでも、または異なってもよく、および互いに同じで
も、または異なってもよい。一定の実施態様では、mが5であり、およびnが1であるとき、
pについての数値は約1から約100まで、可能なら約10から約100までの範囲に対応する。特
定の実施態様には、pが約1から約10まで、約10から約25まで、約25から約50まで、約50か
ら約75まで、約75から約100まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの場合のも
のが含まれる。引用されたMWn範囲に対応するqについての数値には、約12から約1200まで
の範囲のものが含まれる。特定の実施態様には、qが約12から約100まで、約100から約400
まで、約400から約800まで、約800から約1200まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の
組合せの場合のものが含まれる。特定の実施態様では、qはまた、約100から約500までの
範囲内であることができる。この実施態様の他のサブセットでは、X1およびX2は、それぞ
れの存在に無関係に、-(CH2)1-4-COOHおよび/または-(CH2)1-4-NH2である。
【0037】
鎖Aおよび鎖Bの性質を考え、そのような構造はまた、PEG-cMAP-PEGトリブロックポリマ
ーと表すことができる。
【0038】
他の実施態様では、本開示のポリマーには、式(VIII)の構造:
【化27】
によって記載されるものが含まれ、
式中、
cMAPは
【化28】
であり;
鎖Bは
【化29】
であり;
鎖Cは
【化30】
であり;
末端基Dは:
【化31】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(ア
ルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、ま
たはそれらの塩もしくは保護アナログであり;および
X
3は、無関係に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(ア
ルキル)、-N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナログである。
【0039】
再度、pおよびqの値は、各存在にて同じでも異なっていてもよく、互いに同じでも異な
っていてもよい。nとrについても同様であり;すなわち、nおよびrの値は、出現ごとに同
じであっても異なっていてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。一定の実
施態様において、mが5であり、およびnが1であるとき、pについての数値は約1から約100
まで、可能なら約10から約100までの範囲に対応する。特定の実施態様には、pが約1から
約10まで、約10から約25まで、約25から約50まで、約50から約75まで、約75から約100ま
で、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの場合のものが含まれる。引用されたMWn
範囲に対応するqについての数値には、約12から約1200までにおよぶものが含まれる。特
定の実施態様には、qが約12から約100まで、約100から約400まで、約400から約800まで、
約800から約1200まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの場合のものが含まれ
る。特定の実施態様では、qはまた、約100から約500までの範囲にあることができる。こ
の実施態様の他のサブセットでは、X1およびX2は、それぞれの存在に無関係に、-(CH2)1-
4-COOHおよび/または-(CH2) 1-4-NH2である。
【0040】
種々の鎖および末端基元素の性質を考え、そのような構造は、cMAP-PEGジブロックまた
はPEG-cMAPジブロックポリマーと称することもできる。
【0041】
さらに他の実施態様では、本開示のポリマーには、式(IX)の構造:
【化32】
によって記載されるものが含まれ、
式中、
末端基Dは:
【化33】
であり;
cMAPは
【化34】
であり;
鎖Cは
【化35】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまで、可能なら約1000Daから約5000Daまでの範囲におい
て提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(ア
ルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、ま
たはそれらの塩もしくは保護アナログであり;および
X
3およびX
4は、それぞれの存在に無関係に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O
(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナ
ログである。
【0042】
再度、pおよびqの値は、各存在にて同じでも異なっていてもよく、互いに同じでも異な
っていてもよい。nとrについても同様であり;すなわち、nおよびrの値は、出現ごとに同
じであっても異なっていてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。一定の実
施態様において、mが5であり、およびnが1であるとき、pについての数値は約1から約100
まで、可能なら約10から約100までの範囲に対応する。特定の実施態様には、pが約1から
約10まで、約10から約25まで、約25から約50まで、約50から約75まで、約75から約100ま
で、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの場合のものが含まれる。引用されたMWn
範囲に対応するqについての数値には、約12から約1200までにおよぶものが含まれる。特
定の実施態様には、qが約12から約100まで、約100から約400まで、約400から約800まで、
約800から約1200まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの場合のものが含まれ
る。特定の実施態様では、qはまた、約100から約500までの範囲にあることができる。こ
の実施態様の他のサブセットでは、X1およびX2は、それぞれの存在に無関係に、-(CH2)1-
4-COOHおよび/または-(CH2) 1-4-NH2である。
【0043】
種々の鎖および末端基元素の性質を考え、そのような構造は、cMAP-PEG-cMAPトリブロ
ックポリマーと称することもできる。
【0044】
提示された構造のそれぞれにおいて、特定の無関係な実施態様には、mが無関係に4、5
、または6であるものが含まれる。一定の実施態様において、mは各存在で5である。
【0045】
提示された構造のそれぞれにおいて、特定の無関係な実施態様はnが1であるものを含む
。
【0046】
提示された構造のそれぞれにおいて、特定の無関係な実施態様には、rが無関係に2、3
、または4であるものが含まれる。これらの実施態様のいくつかでは、rは各存在で3であ
る。
【0047】
提示された構造のそれぞれにおいて、特定の無関係な実施態様には、pが、約5kDaから
約15kDaまで、約6kDaから約14kDaまで、7kDaないし約13kDa、約8kDaから約12kDaまで、9k
Daないし約11kDa、または約10kDaの範囲においてcMAPを含むサブユニットについての数平
均分子量を提供するのに十分であるものが含まれる。cMAPフラグメント(断片とも言う)
がそれぞれ約420DaのMWを有する場合)、これは、約12ないし約36、約14から約33まで、
約17から約31まで、約19から約29まで、約22から約26まで、または約24の範囲においてp
の数値に相当する。
【0048】
提示された構造のそれぞれにおいて、特定の無関係な実施態様には、qが、約500Daから
約50kDaまで、約1kDaから約40kDaまで、5kDaないし約30kDa、または約5kDaから約20kDaま
での範囲においてPEGを含むサブユニットの数平均分子量を提供するのに十分である場合
のものが含まれる。ポリアルキレングリコール部分がポリエチレングリコールである場合
、およびエチレングリコール断片が約44DaのMWを有するとすれば、これは約11ないし約12
00、約23から約910まで、約110から約680まで、または約110から約450までの範囲におい
てqの数値に対応する。
【0049】
ここに記載されるX1、X2、X3、および/またはX4の任意の適切な規定によるm、n、p、q
、r、またはzについての値の各組合せは、別個の実施態様を代表し、およびこれらの実施
態様の任意の組合せは、別の実施態様の規定を提供する。
【0050】
ここに記載の種々のポリマーを調製するための模範的で、非制限的なスキームを実施例
において提供する。これらの合成経路の各々、ならびに具体的に記載された試薬の同族体
を用いるものは、本開示の範囲内にあると考えられる。ここで使用されるように、同族体
という用語は、一以上のメチレン基によって模範と異なる化合物を指す。一つの方法にお
いて、ポリマーは、ポリアルキレングリコールを含む少なくとも一の非荷電セグメントを
、少なくとも一の連結基の使用を通して、少なくとも一のポリヒドロキシ連結を含む少な
くとも一のカチオン性荷電セグメントと接続することによって調製され得る。カチオン的
な荷電セグメントが上記のムチン酸誘導体の一である場合のケースでは、この方法は、二
のPEGポリマーをムチン酸ポリマーと、二のムチン酸ポリマーを一のPEGポリマーと、また
は一のムチン酸ポリマーを一のPEGポリマーと、化学量論的に反応させることを含み、そ
れぞれが適切な連結基を有して望ましいジブロックまたはトリブロックポリマーを形成す
る。そのようなカップリング反応は、カルボン酸/アミノ縮合反応を用いて影響を及ぼさ
れ、ここに記載のようなアミド結合を形成することができる。
【0051】
本開示のいくつかの実施態様によるナノ粒子の形成は、当業者に知られる技術および手
順により分析することができる。
【0052】
本開示のさらに他の実施態様には、ここに記載のcMAP/PEG含有ポリマーのポリマーコン
ジュゲート(ポリマー複合体とも言う)が含まれる。そのようなポリマーコンジュゲート
には、任意のcMAP/PEG含有ポリマー、および式(X)の構造:
【化36】
が含まれる第二ボロン酸(second boronic acid)含有ポリマーを含み、
式中、
cMAP/PEG含有ポリマーおよび第二ボロン酸含有ポリマーは、式(IX)のボロン酸部分お
よび式(I)、(II)、(III)、(IV)、(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)の
ポリヒドロキシ連結(polyhydroxy linkages)の少なくとも一対の隣接ジオールの間のボ
ラート縮合連結によって互いに可逆的に接続され、X
5はこの接続の遠位端にあり;
R
Aはニトロ(または他の電子吸引基)であり;
nは0、1、2、3、または4、可能なら1であり;
sは20-1200であり;
Lは、フェニル環およびポリエチレンオキシド連結の間の連結基であり;および
X
5は、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)
、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、またはそれらの塩もしくは保護
アナログである。
【0053】
一定のこれらの実施態様において、nは1である。これらの実施態様のうち、模範的な構
造には:
【化37】
が含まれる。
【0054】
ポリマーコンジュゲートのいくつかの実施態様において、sは、20から約120まで、約12
0から約240まで、約240から約480まで、約480から約720まで、約720から約960まで、約96
0から約1200まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの範囲にある。
【0055】
ポリマーコンジュゲートの他の実施態様では、Lは、-(C0-2アルキレン-)NH-C(=O)-(C0-
2アルキレン)-、-(C0-2アルキレン)-C(=O)-NH-(C0-2アルキレン)-、-(C0-2アルキレン)-O
-C(=O)-(C0-2アルキレン)-または-(C0-2アルキレン)-C(=O)-O-(C0-2アルキレン)-である
。これらのサブセットでは、Lは-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-OC(=O)-、または-C(=O)-O-で
ある。Lの単一またはマルチプルリンキング基(多重連結基とも言う)は任意のポリマー
により採用し得る。
【0056】
これまでのところ、本開示はポリマーまたはポリマーコンジュゲートに関して記載され
たが、本開示の重要な要素には、これらのポリマーまたはポリマーコンジュゲートから誘
導されるナノ粒子が含まれ、およびこれらのポリマーおよびポリマーコンジュゲートにつ
いて提供される規定は、関連するナノ粒子の説明において等しく有用である。これらのナ
ノ粒子は、実質的に同様である傾向があり、および種々のcMAPまたはPEGフラグメントの
サイズおよび/またはボロン酸含有ポリマーに関連する鎖の長さに依存して、約20nmから
約300nmまでの範囲において断面寸法(すなわち、直径)を有する。特定の実施態様はま
た、これらのナノ粒子が、約20nmから約40nmまで(以下、約20nm~約40nmと称する)、約
40nm~約80nm、約80nm~約120nm、約120nm~約180nm、約180nm~約240nm、約240nm~約30
0nm、またはこれらの範囲の2以上の組合せの範囲において直径をもつと説明することがで
きる。
【0057】
同様に、単一のナノ粒子への言及は、集団または複数のナノ粒子を包含する別個の実施
態様を含むと考えられるべきである。一定の実施態様では、複数のナノ粒子は、実質的に
単分散であり、無関係な実施態様により、低温透過電子顕微鏡(cryo-transmission elec
tron microscopy)(クライオTEM)によって測定されるように、平均に関して、20%、30
%、40%、50%、または60%未満のナノ粒子間での断面寸法における標準偏差が提供され
る。粒子サイズ(粒径、粒度とも言う)および分布は、低温TEM顕微鏡写真分析を含む様
々な方法によって規定することができる。この方法では、代表的な低温透過電子顕微鏡写
真(典型的には、液体エタン中で凍結した3よりも多いランダムに選定された液体試料に
由来する)において、粒子の平均直径を測定され、予め定めるサイズフラクション勾配(
粒度勾配とも言う)内の粒子を計数し、およびそれらの数を統計的に相関させることによ
って、予め定められる数の粒子(100を超える)が分析される。追加情報については、実
施例およびアペンディクス(付録とも言う)も参照。
【0058】
これらのナノ粒子(任意の一以上の創意に富むポリマーまたはポリマーコンジュゲート
を含む)は、生物学的「カーゴ」を運ぶそれらの能力について特に魅力的であり、および
一定の実施態様では、これらのナノ粒子はカプセル化生物学的物質(カプセル化生物由来
物質とも言う)をさらに含む。これらの生物学的物質は、ナノ粒子内またはナノ粒子によ
って共有結合され、または他の方法で含有されてもよい。一定の実施態様では、生物学的
物質はポリヌクレオチドまたは小分子治療薬剤である。そのような治療薬剤の例には、制
限されないが、小分子調合薬、抗生物質、ステロイド、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノ
ムDNA、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ウイルス
、およびキメラポリヌクレオチド)、プラスミド、ペプチド、ペプチドフラグメント、小
分子(例えば、ドキソルビシン)、キレート剤(例えば、デフェロキサミン(DESFERAL)
、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、自然生成物(例えば、タキソール、アンフォテリ
シン)、および他の生物学的に活性なマクロ分子、例えば、タンパク質および酵素などの
ようなものが含まれる。また、米国特許第6,048,736号を参照し、それには、ここに記載
のナノ粒子と共に治療薬剤として使用することができる活性薬剤(治療薬剤)が列挙され
る。小分子治療薬剤は、複合粒子内の治療薬剤であるだけでなく、さらなる実施態様では
、複合体においてポリマーに共有結合してもよい。いくつかの実施態様では、共有結合は
可逆的であり(例えば、プロドラッグ形態または生分解性連結、例えば、ジスルフィドな
どのようなものを通し)、および治療薬剤を送る別の方法を提供する。いくつかの実施態
様では、ここに記載のナノ粒子と共に送り得る治療薬剤には、化学療法剤、例えば、エポ
チロン、カンプトテシン系薬物、タキソールなどのようなもの、または核酸、例えば、プ
ラスミド、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドアプタマーまたはそ
れらの組合せなどのようなもの、および本開示を読むことにより当業者によって識別可能
な追加の薬物が含まれる。
【0059】
一定の好ましい実施態様において、生物学的物質はRNA分子であるポリヌクレオチドで
ある。これらの実施態様のいくつかにおいて、RNA分子はsiRNA分子である。
【0060】
何らかの特定の理論の正確さによって拘束される意図はないが、水性媒体において分散
されるとき、ナノ粒子は、それらの水性環境に親水性連結を提示し、およびカチオン性種
を内部空洞において維持することによって、それら自体を組織化すると考えられる(例え
ば、
図16Aおよび16B参照)。負に帯電したカーゴは、核酸を含み、cMAP構造での正電荷と
関連し、場合によってはナノ粒子の自己集合が助けられる。
【0061】
ナノ粒子が官能化された(ニトロ)ボロン酸含有ポリマー連結を含む場合、ナノ粒子は
、一以上のターゲティング(標的指向性とも言う)リガンドにさらにコンジュゲートして
もよい。そのような場合、コンジュゲートは、ボロン酸含有ポリマーの遠位端および標的
指向性リガンドの間の縮合連結を通して起こる。いくつかの実施態様において、この標的
指向性リガンドには、抗体、トランスフェリン、細胞レセプターについてのリガンド、ま
たは細胞レセプタータンパク質、アプタマー、または抗体のフラグメント、トランスフェ
リン、細胞レセプターについてのリガンド、または細胞レセプタータンパク質が含まれる
。特定の実施態様では、単一のタイプの標的指向性リガンドは、各ポリマーまたはナノ粒
子、またはナノ粒子の集団にコンジュゲートされる。他の実施態様では、複数のタイプの
標的指向性リガンドは、各ポリマーまたはナノ粒子にか、またはナノ粒子の集団内に、コ
ンジュゲートされる。さらに他の実施態様では、標的指向性リガンドの単一の分子実体が
各個々のナノ粒子にコンジュゲートされる。単一の分子実体を個々のナノ粒子にコンジュ
ゲートさせる能力は、2013年3月1日付け出願の米国特許出願第13/782,458号に記載され、
それはここに参照することによって少なくともこの目的について組み込まれる。他の実施
態様では、標的指向性リガンドの複数の分子が各個々のナノ粒子にコンジュゲートされる
。
【0062】
上記で示唆したように、一定の実施態様では、ポリマー、ポリマーコンジュゲート、お
よび/またはナノ粒子は、水性媒体において分散物として存在してもよく、前記水性媒体
にはまた、緩衝剤、界面活性剤、または他のモディファイヤー(修飾因子、改質剤とも言
う)も随意に含まれる。本開示はまた、一以上の生物学的に活性な薬剤およびここに記載
のポリマーまたはポリマーコンジュゲートまたはナノ粒子または複数のナノ粒子のいずれ
か、および薬学的に許容可能なビヒクル、担体または賦形剤を含む薬剤組成物を企図する
。
【0063】
ここで使用されるように、用語「ビヒクル」は、活性成分として組成物において含まれ
るナノ粒子のための溶媒、担体、結合剤、賦形剤または希釈剤として通常作用する様々な
媒体のいずれかを指し示す。
【0064】
ここで使用されるように、用語「賦形剤」は、薬物治療の有効成分のための担体として
使用される不活性物質を指し示す。ここに開示される薬剤組成物のための適切な賦形剤に
は、個体の本体がナノ粒子を吸収する能力を高める任意の物質が含まれる。適切な賦形剤
にはまた、ナノ粒子と共に調剤物をバルクアップし、簡便で正確な投与量を可能にするた
めに使用することができる任意の物質が含まれる。単回投与量でのそれらの使用に加え、
ナノ粒子の取り扱いを助けるために賦形剤を製造プロセスで使用することができる。施与
の経路、および薬物治療の形態に応じて、異なる賦形剤を使用することができる。模範的
な賦形剤には、制限されないが、抗被着剤(antiadherent、抗癒着剤とも言う)、結合剤
、コーティング崩壊剤(coatings disintegrant)、充填剤、風味剤(例えば、甘味料な
どのようなもの)および着色剤、流動促進剤(glidant、滑沢剤とも言う)、潤滑剤、保
存料(防腐剤とも言う)、吸着剤が含まれる。
【0065】
ここで使用されるように、用語「希釈剤」は、組成物の活性成分を希釈するか、または
有効にするために支給されるダイルーティング剤(diluting agent、賦形剤とも言う)を
示す。適切な希釈剤には、医薬調剤物の粘度を低下させることができる任意の物質が含ま
れる。
【0066】
組成物の適切な担体剤または補助剤の識別、およびキットの包括的な製造およびパッケ
ージングに関するさらなる詳細は、本開示を読むことによって当業者によって確認され得
る。
【0067】
本開示の生物学的に活性な薬剤およびポリマー、ポリマーコンジュゲート、および/ま
たはナノ粒子を含む組成物は、その薬剤組成物を含め、特に創意に富むポリマー、ポリマ
ーコンジュゲート、および/またはナノ粒子によって発生される高められたバイオアベイ
ラビリティ(生物学的利用能とも言う)のため、処置の必要があるペイシェント(患者こ
とを指すことが多い)を処置するために有用である。そのような組成物のバイオアベイラ
ビリティの改善の程度は、それ自体によるか、またはcMAPと共にそれ自体によるかのいず
れも、同じ生物学的に活性な薬剤または薬剤群のデリバリーと比較して、驚くほど高かっ
た。実施例を参照。したがって、重要な実施態様には、本開示の生物学的に活性な薬剤お
よびポリマー、ポリマーコンジュゲート、および/またはナノ粒子を含む組成物が、その
薬剤組成物を含め、生物学的に活性な薬剤を施与されるのを必要とするペイシェントに施
与されるものが含まれる。
【0068】
以下の実施態様のリストは、上記の説明を置き換えるか、または上回るというよりはむ
しろ、補足することを意図する。
【0069】
実施態様1。式(I)または式(II)または式(III)の以下の構造単位:
【化38】
の一以上を含み、
式中、
Aはポリアルキレングリコールを含む非荷電セグメントであり;
Bは少なくとも一対の隣接ジオールを含む少なくとも一のポリヒドロキシ連結が含まれ
るカチオン性荷電セグメントである、交互荷電および非荷電セグメントを含むポリマー。
一定のサブセットの実施態様において、AおよびBは、無関係に、500Daないし約5000Da、5
000daより大きく約10kDaまで、10kDaより大きく約20kDaまで、20kDaより大きく約30kDaま
で、30kDaより大きく約40kDaまで、40kDaより大きく約50kDaまでより大きい、またはそれ
らの任意の組合せの範囲において数平均分子量を有する。他のサブセットでは、AまたはB
のいずれか、またはAおよびBの双方は、5000Daより大きく約50,000Daまでの範囲において
数平均分子量を有する。
【0070】
実施態様2。Aは、ポリエチレングリコールおよび適切な連結基であるか、またはそれら
が含まれる、実施態様1のポリマー。
【0071】
実施態様3。ポリアルキレングリコールは約500ダルトンから約50,000ダルトンまでの範
囲において公称数平均分子量を有する、実施態様1または2のポリマー。この実施態様の一
定のサブセットでは、ポリアルキレングリコールは、約500Daから約1kDaまで、1kDaより
大きく約5kDaまで、5kDaより大きく約10kDaまで、10kDaより大きく約15kDaまで、15kDaよ
り大きく約20kDaまで、20kDaより大きく約30kDaまで、30kDaより大きく約40kDaまで、40k
Daより大きく約50kDaまで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せの範囲において公
称数平均分子量を有する。
【0072】
実施態様4。Bは少なくとも一対の隣接ジオールを含む少なくとも一のポリヒドロキシ糖
連結が含まれるカチオン性荷電セグメントである、実施態様1ないし3のいずれか一のポリ
マー。
【0073】
実施態様5。Bには、式(IV)の構造:
【化39】
を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットが含まれる、実施態様1ないし4のいずれか一
のポリマー。次の
【化40】
として表される構造が式(IV)において示すものと機能的に等価であり、およびこの代表
物が双方に言及することを意図することは注目される。
【0074】
実施態様6。Bには、式(V)の構造:
【化41】
を含む少なくとも一の繰り返しサブユニットがさらに含まれ、
式中、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-6または5である、実施態
様1ないし5いずれか一のポリマー。
【0075】
実施態様7。Bには、cMAPを含む少なくとも一の繰り返しサブユニットが含まれ、そのサ
ブユニット構造は式(VI):
【化42】
として代表され、
式中、
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;および
nは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、または5である、実施態様1ないし6のい
ずれか一のポリマー。他の関連する実施態様において、mおよびnはより一層大きく、例え
ば、約10までであることができる。
【0076】
実施態様8。式(VII)の構造:
【化43】
によって記載され、
式中、
鎖Aは
【化44】
であり、
鎖Bは
【化45】
であり;
cMAPは
【化46】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ、
無関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;および
X
1およびX
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C
(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換
され、またはそれらの塩もしくは保護アナログである、実施態様1ないし7のいずれか一の
ポリマー。
分子量制限を満たすために、pについての数値は約1から約100まで、可能なら約10から
約100までの範囲に対応し、およびqについての数値は約12から約1200までの範囲として対
応することに注目される。これらの実施態様のサブセットにおいて、qはまた、約100から
約500までの範囲にあり得る。この実施態様の一定のサブセットにおいて、pおよびqは、c
MAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無関係に、約500Da
から約1000Daまで、1000Daより大きく約5000Daまで、約5000Daより大きく約10,000Daまで
、10,000より大きく約25,000Daまで、25,000Daより大きく約50,000Daまで、またはこれら
の範囲の2以上の任意の組合せ、ならびにこれらのMW
nの範囲の対応する数値の範囲におい
て提供するのに十分である。この実施態様の他のサブセットでは、X
1およびX
2は、無関係
に、-(CH
2)
1-4-COOHおよび-(CH
2)
1-4-NH
2である。
【0077】
実施態様9。式(VIII)の構造:
【化47】
によって記載され、
式中、
cMAPは
【化48】
であり;
鎖Bは
【化49】
であり;
鎖Cは
【化50】
であり;
末端基Dは:
【化51】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまでの範囲において提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
2は、それぞれの存在に無関係に、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(ア
ルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、ま
たはそれらの塩もしくは保護アナログであり;および
X
3は、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-
N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナログである、実施態様1ないし7のいず
れか一のポリマー。
【0078】
再度、実施態様9においてのように、分子量制限を満たすために、pについての数値は約
1から約100まで、可能なら約10から約100までの範囲に対応し、およびqについての数値は
約12から約1200までの範囲として対応する。これらの実施態様のサブセットにおいて、q
はまた、約100から約500までの範囲にあり得る。この実施態様の一定のサブセットにおい
て、pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ
無関係に、約500Daから約1000Daまで、1000Daより大きく約5000Daまで、約5000Daより大
きく約10,000Daまで、10,000より大きく約25,000Daまで、25,000Daより大きく約50,000Da
まで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せ、ならびにこれらのMWnの範囲の対応す
る数値の範囲において提供するのに十分である。この実施態様の他のサブセットでは、X1
およびX2は、無関係に、-(CH2)1-4-COOHおよび-(CH2)1-4-NH2である。
【0079】
実施態様10。式(IX)の構造:
【化52】
によって記載され、
式中、
末端基Dは:
【化53】
であり;
cMAPは
【化54】
であり;
鎖Cは
【化55】
であり;
pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、それぞれ無
関係に、約500Daから約50,000Daまで、可能なら約1000Daから約5000Daまでの範囲におい
て提供するのに十分であり;
mは、それぞれの存在に無関係に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、可能なら4-
6または5であり;
nおよびrは、それぞれの存在に無関係に、0、1、2、3、4、または5であり;
zは1に等しいか、またはそれよりも大きく(最大約2、4、6、8、または10);および
X
3およびX
4は、それぞれの存在に無関係に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O
(アリール)、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2、またはそれらの塩もしくは保護アナ
ログである、実施態様1ないし7のいずれか一のポリマー。
【0080】
再度、実施態様9および10におけるように、分子量制限を満たすために、pについての数
値は約1から約100まで、可能なら約10から約100までの範囲に対応し、およびqについての
数値は約12から約1200までの範囲として対応する。これらの実施態様のサブセットにおい
て、qはまた、約100から約500までの範囲にあり得る。この実施態様の一定のサブセット
において、pおよびqは、cMAPおよびPEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、そ
れぞれ無関係に、約500Daから約1000Daまで、1000Daより大きく約5000Daまで、約5000Da
より大きく約10,000Daまで、10,000より大きく約25,000Daまで、25,000Daより大きく約50
,000Daまで、またはこれらの範囲の2以上の任意の組合せ、ならびにこれらのMWnの範囲の
対応する数値の範囲において提供するのに十分である。この実施態様の他のサブセットで
は、X1およびX2は、無関係に、-(CH2)1-4-COOHおよび-(CH2)1-4-NH2である。
【0081】
実施態様11。mは4、5、または6、可能なら5である、実施態様6ないし10のいずれか一の
ポリマー。
【0082】
実施態様12。nは1である、実施態様7ないし11のいずれか一のポリマー。
【0083】
実施態様13。rは2、3、または4、可能なら3である、実施態様7ないし12のいずれか一の
ポリマー。
【0084】
実施態様14。pは、cMAPを含むサブユニットについて数平均分子量を、約または5kDaを
超えてから約15kDaまで、約または6kDaを超えてから約14kDaまで、約または7kDaを超えて
から13kDaまで、約または8kDaを超えてから約12kDaまで、約または9kDaから約11kDaまで
、または約10kDaの範囲において提供するのに十分である、実施態様8ないし13のいずれか
一に従うポリマー。いくつかのサブセットの実施態様では、例えば、cMAPフラグメントが
約420DaのMWnを有する場合、これは、約12ないし約36、約14から約33まで、約17から約31
まで、約19から約29まで、約22から約26まで、または約24の範囲において数値を有するp
に対応する。
【0085】
実施態様15。qは、PEGを含むサブユニットについて数平均分子量を、約または500Daを
超えてから約50kDaまで、約または1kDaを超えてから約40kDaまで、約または5kDaを超えて
から約30kDa、または約または5kDaを超えてから約20kDaまでの範囲において提供するのに
十分である、実施態様8ないし13のいずれか一に従うポリマー。これらの実施態様のいく
らかでは、たとえば、エチレングリコールフラグメントが約44DaのMWnを有すると仮定す
ると、これは約11ないし約1200、約23から約910まで、約110から約680まで、または約110
から約450までの範囲において数値を有するqに対応する。
【0086】
実施態様16。実施態様1ないし15のいずれか一のポリマーおよび式(X)の構造
【化56】
が含まれる第二ボロン酸含有ポリマーを含み、
式中、
ポリマーおよび第二ボロン酸含有ポリマーは、式(IX)のボロン酸部分および式(I)
、(II)、(III)、(IV)、(VI)、(VII)、(VIII)、または(IX)のポリヒドロキ
シ連結の少なくとも一対の隣接ジオールの間のボラート縮合連結によって互いに可逆的に
接続され、X
5はこの接続の遠位端にあり;
R
Aはニトロ(または他の電子吸引基)であり;
nは0、1、2、3、または4、可能なら1であり;
sは20-1200であり;
Lは、フェニル環およびポリエチレンオキシド連結の間の連結基であり;および
X
5は、C
1-6アルキルで、随意に、-OH、-COOH、-C(=O)O(アルキル)、-C(=O)O(アリール)
、-NH
2、-NH(アルキル)、-N(アルキル)
2により置換され、またはそれらの塩もしくは保護
アナログである、ポリマー複合体(ポリマーコンジュゲートとも言う)。模範的な構造は
、次の:
【化57】
として提供される。
【0087】
実施態様17。Lは、-(C0-2アルキレン-)NH-C(=O)-(C0-2アルキレン)-、-(C0-2アルキレ
ン)-C(=O)-NH-(C0-2アルキレン)-、-(C0-2アルキレン)-O-C(=O)-(C0-2アルキレン)-また
は-(C0-2アルキレン)-C(=O)-O-(C0-2アルキレン)-である、実施態様16のポリマー複合体
。
【0088】
実施態様18。Lは-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-OC(=O)-、または-C(=O)-O-である、実施態
様17のポリマー複合体。
【0089】
実施態様19。実施態様1ないし15のいずれか一のポリマーを含むナノ粒子。
【0090】
実施態様20。実施態様16ないし18のいずれか一のポリマー複合体を含むナノ粒子。
【0091】
実施態様21。前記ナノ粒子は実質球形であり、および約20nmから約300nmまでの範囲に
おいて断面寸法を有する、出願時請求項10ないし16いずれか一のナノ粒子。
【0092】
実施態様22。各個々のナノ粒子が実施態様19ないし21のいずれか一の組成物によって記
載される複数のナノ粒子。
【0093】
実施態様23。各個々のナノ粒子は、実施態様19ないし22のいずれか一の組成物によって
記載され、複数のナノ粒子は、実質単分散であり、低温透過電子顕微鏡法(cryo-TEM)に
よって測定して20%、30%、40%、50%、または60%未満のナノ粒子間の断面寸法(即ち
、直径)での標準偏差を見せる、複数のナノ粒子。
【0094】
実施態様24。カプセル化生物学的物質(encapsulated biological agent)をさらに含
む、実施態様1ないし15のいずれか一のポリマーまたは出願時請求項16ないし18のポリマ
ー複合体を含むナノ粒子。
【0095】
実施態様25。生物学的物質はポリマーまたはポリマー複合体に共有結合される、実施態
様24のナノ粒子。
【0096】
実施態様26。生物学的物質はポリヌクレオチドまたは小分子治療薬剤(small molecule
therapeutic agent)である、実施態様24または25のナノ粒子。
【0097】
実施態様27。生物学的物質はRNA分子であるポリヌクレオチドである、実施態様24また
は25のナノ粒子。
【0098】
実施態様28。RNA分子はsiRNA分子である、実施態様27のナノ粒子。
【0099】
実施態様29。標的指向性リガンドにさらに複合体化(コンジュゲートとも言う)し、複
合体化はボロン酸含有ポリマーの遠位端および標的指向性リガンドの間の縮合連結を通し
て起こる、実施態様20ないし28のいずれか一のナノ粒子。
【0100】
実施態様30。単一の標的指向性リガンドは各ポリマーに複合体化される、実施態様29の
ナノ粒子。
【0101】
実施態様31。複数の標的指向性リガンドは各ポリマーに複合体化される、実施態様29の
ナノ粒子。
【0102】
実施態様32。生物学的に活性な薬剤および出願時請求項1ないし18のいずれか一のポリ
マーまたはポリマーコンジュゲート、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む
、薬剤組成物。
【0103】
実施態様33。生物学的に活性な薬剤および実施態様19ないし31のいずれか一のナノ粒子
または複数のナノ粒子および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、薬剤組成物。
【0104】
実施態様34。実施態様24ないし28のいずれか一のナノ粒子をペイシェントに施与するこ
とを含み、生物学的物質のバイオアベイラビリティは生物学的物質それ自体による施与と
比較して改善される、方法。
【0105】
実施態様35。ポリアルキレングリコールを含む少なくとも一の非荷電セグメントを、少
なくとも一の連結基の使用により少なくとも一のポリヒドロキシ連結を含む少なくとも一
のカチオン性荷電セグメントと共有結合的に接続させることを含む、実施態様1ないし15
のいずれか一のポリマーの調製方法。模範的な方法は、実施例および付録に提供される。
これらの方法は、引用される特定の反応体の同族体を反応させることを含み、また本開示
の範囲内と考えられる。
【0106】
実施態様36。少なくとも一のポリヒドロキシ連結はムチン酸を含み、および少なくとも
一の連結基はアミドである、実施態様35の方法。
【実施例】
【0107】
例
【0108】
以下の例は、この開示内に記載された概念のいくらかを例示するために提供する。各例
は、組成物、調製方法および使用の特定の個々の実施態様を提供すると考えられる一方、
例のいずれも、ここに記載のより一層包括的な実施態様を制限すると考えるべきではない
。
【0109】
以下の例では、使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にする努
力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に指示がな
い限り、温度は℃であり、圧力は大気圧またはそれに近い。他に言及しない限り、分子量
への言及は、数平均分子量を参照することを意図する。
【0110】
実験結果の概略
【0111】
ムチン酸およびジメチルスベリミデートに基づく繰り返し単位を備える新しいカチオン
性ポリマーを合成し、およびcMAPと表示した。mPEGに隣接するcMAP、mPEG-cMAP-PEGmを有
するトリブロックポリマーへのcMAPのさらなる修飾により、分子量がca.(およそ)20kDa
の明確に規定されたポリマーをもたらした。このトリブロックポリマーは、2+/-以上の電
荷比でsiRNAを十分にカプセル化(封入とも言う)することができた。このトリブロック
ポリマーとsiRNAで構成された安定なNPsは、およそ30nmの直径(DLSとCryoTEMの両方によ
って)、および10mMリン酸緩衝剤pH7.4および1mM KCl pH5.5の両方においておよそ0.4mV
のわずかに正の表面電荷を伴いPBSにおいて直接調剤され得る。マウスへの注射の際、mPE
G-cMAP-PEGmトリブロックポリマーで形成されたこれらのNPsは、cMAPおよびcMAP-PEGコポ
リマーで調剤されたNPsと比較して延長された循環を示し、1時間後に循環中に調剤物の5-
10%が残った。余剰のトリブロックポリマーの一部分を調剤物から除去するとき、循環時
間は同じままであった。何らの過剰のカチオン性ポリマーも存在しないことは、これらの
実体がインビボで引き起こすあらゆる有害作用を最小にするために有利である。
【0112】
例1。材料および方法。
【0113】
ムチン酸および塩化オキサリルは、Sigma-Aldrich(シグマ-アルドリッチ社)から、N-
boc-エチレンジアミンはAK Scientific(AKサイエンティフィック社)から、ジメチルス
ベリミダートはThermo Fisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック
社)またはSigma-Aldrichから、および3-カルボキシル-5-ニトロフェニルボロン酸はAlfa
-Aesar(アルファ・エイサー社)から購入した。ポリエチレングリコール試薬は、Jenkem
Technology USA(ジェンケム・テクノロジーUSA社)またはLaysan Bio, Inc.(ライサン
・バイオ社)のいずれかから購入した。ジメチルスベリミダートは、ムチン酸エチレンジ
アミンを重合させた荷電モノマーであり、Thermo ScientificまたはSigma-Aldrichから購
入して使用した。cMAPのプロトンおよび炭素スペクトルにピークを割り当てるために、ス
ベリミダートジメチルのNMRスペクトルを取得した。DMSのプロトンおよび炭素の双方のNM
Rスペクトルは予想よりも複雑であり、若干の加水分解が新たに開けたボトルに存在した
ことが示唆される。テーブル2を参照。
【0114】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、500MHzまたは600MHzでスピンすることなく、Varian
(バリアン)300MHz、500MHz、または600MHz機器で25のセルシウス度で(25℃とも言う)
で取得した。ほとんどの1Hプロトンスペクトルについて、1-1.5秒の遅延時間を使用し;
ポリマーの定量的集積のために、25秒の遅延を用いた。13Cの炭素スペクトルは、デフォ
ルト設定により500MHzで得られた。1H-13C異種核単一量子コヒーレンス(HSQC)、1H-1H
相関分光法(COSY)、および1H-13C異核多重結合相関分光法(HMBC)スペクトルを、デフ
ォルトVNMRJ3.0 HSQCAD、COSY、およびHMBC設定を用いて取得した。さらに、拡散勾配長4
.0ms、および拡散遅延100.0msを伴うVNMRJ3.0において、両極性パルス対誘導エコー(bip
olar pulse pair stimulated echo)と共に対流補償(Dbppste_cc)法を用いる拡散秩序
分光法(DOSY)スペクトルを、合成したポリマーについて取得した。
【0115】
Finnigan(フィニガン)LCQイオントラップ質量分析計を使用して、小分子のエレクト
ロスプレーイオン化質量を取得した。ポリマーについてマトリクス支援レーザー脱離/イ
オン化-飛行時間型(Matrix-assisted laser desorption/ionization-time of flight)
(MALDI-TOF)質量スペクトルを、10mg/mLのα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸マトリクスを
用いて、Applied Biosystems Voyager(アプライド・バイオシステムズ・ボイジャー)DE
-PROにて取得した。
【0116】
例2:ムチン酸含有ポリマーの合成。
【0117】
例2.1。カチオン性ムチン酸ポリマー(cMAP)の合成(
図1)。撹拌棒を含む500mLの丸
底フラスコにおいてメタノール(360mL)をムチン酸(15g、71mmol、1当量)に添加した
。濃硫酸(1.2mL、22.5mmol、0.3当量)をこの懸濁物に加え、一晩撹拌し、および85℃で
還流した。混合物を室温に冷却し、およびWhatman(ワットマン)#5ろ紙を用い、ブフナ
ー漏斗を通してろ過した。固体を600mLのメタノールで洗浄し、および次いで500mLの丸底
フラスコに戻した。240mLのメタノールおよび1.5mLのトリエチルアミンを添加し、および
固体を85℃の還流で1時間再結晶させた。混合物を室温まで冷却し、ブフナー漏斗を通し
てろ過し、およびメタノールの600mLにより洗浄した。固体を75℃で一晩減圧下に乾燥さ
せ、ムチン酸ジメチルエステル(13.72g、収率80%)、白色固体を与えた。
1H NMR(300M
Hz、DMSO-d6):4.91(d、2H)、4.80(q、2H)、4.29(d、2H)、3.76(q、2H)、3.62(s、6H)。
【0118】
撹拌棒を含む500mLの丸底フラスコにおいて、メタノール(220mL)をムチン酸ジメチル
エステル(13.72g、57.6mmol、1当量)に添加した。トリエチルアミン(20.9mL、150mmol
、2.6当量)を加え、および混合物を撹拌し、および85℃で30分間還流し、その時間の間
に黄色の懸濁物が形成された。メタノール(55mL)におけるN-boc-エチレンジアミン(23
.7mL、150mmol、2.6当量)を懸濁物に添加し、および撹拌し、85℃で還流を一晩再開した
。混合物を室温に冷却し、およびWhatman#5ろ紙を用いてブフナー漏斗を通してろ過した
。固体をメタノール(750mL)により洗浄し、およびメタノール(350mL)により85℃で1.
5時間再結晶させた。混合物を再び室温に冷却し、ブフナー漏斗を通してろ過し、および
メタノール(750mL)で洗浄した。固体を75℃で一晩減圧下に乾燥させ、N-boc保護された
ムチン酸エチレンジアミン(19.27g、収率68%)、白色固体を与えた。1H NMR(300MHz、
DMSO-d6):7.71(t、2H)、6.81(t、2H)、5.13(d、2H)、4.35(q、2H)、4.10(d、
2H)、3.77(q、2H)、3.13(m、4H)、2.97(m、4H)、1.36(s、18H)。ESI 495.1[M+H
]+、517.4[M+Na]+。
【0119】
撹拌棒を含む500mLの丸底フラスコ中のN-boc保護されたムチン酸エチレンジアミン(19
.2g)を水浴中に置いた。メタノール(260mL)を、次いで濃12N塩酸(65mL)をフラスコ
に添加して、メタノール中3N HClを生成した。反応フラスコをセプタム(隔壁とも言う)
でシールし、およびニードルで通気した。水浴を25℃に設定し、および懸濁物を6-8時間
撹拌した。反応は、CH2Cl2中の1%メタノールの移動相を用いる薄層クロマトグラフィー
(TLC)によってモニタし、およびスポットをヨウ素タンクにおいて可視化した。反応の
完了はまたESIによって確認した。スラリーはガラスフリットを通して微細な粒でろ過し
、およびろ液が中性pHに近づくまでメタノール(750mL)で洗浄した。固体を80℃で一晩
減圧下に乾燥させてムチン酸エチレンジアミン(12.96g、収率91%)を白色固体として与
えた。1H NMR(500MHz、DMSO-d6):7.97-7.83(m、8H)、5.30(d、2H)、4.55(d、2H
)、4.16(d、2H)、3.82(m、2H)、2.85(m、4H)。13C NMR(500MHz、DMSO-d¬6):1
74.79、71.39、70.98、39.25、36.76。ESI 295.1[M+H]+、588.93[2M+H]+。
【0120】
ムチン酸エチレンジアミン(100mg、0.3mmol、1当量)を、撹拌棒を有する4mLガラスバ
イアルに添加した。ナノ純水(1mL)中の0.5M炭酸ナトリウム溶液をバイアルに加え、お
よび溶液を5分間撹拌した。次いで、ジメチルスベリミダート(DMS)(74.4mg、0.3mmol
、1当量)を混合物に添加し、および反応物を25℃で一晩16時間撹拌した。反応物をナノ
純水(10mL)で希釈し、および1N HClを滴下してpHを4に調整した。得られる溶液を、ろ
液のpHが中性になるまで、ナノピュア水に対して15mLのAmicon Ultra(アミコン・ウルト
ラ)3kDスピンフィルターで透析した。ポリマーの溶液を3-4mLに濃縮し、0.2umのPVDFシ
リンジフィルターを通して予め秤量した20mLのガラスバイアル中にろ過し、および凍結乾
燥させてカチオン性ムチン酸ポリマーを白色固体として与え(29.2mg、収率16%)、これ
を-20℃のアルゴン下で貯蔵した。1H NMR(600MHz、DMSO-d6):9.59-8.74、7.92、5.40
、4.53、4.16、3.82、3.55、3.26、2.86-2.00、1.60、1.28。13C NMR(125MHz、DMSO-d¬
¬6):174.61、168.12、71.19、70.96、51.67、42.09、36.71、32.48、27.84、26.65。
【0121】
例2.2。cMAP-PEGコポリマーの合成(
図2)。出発物質を-20℃の冷凍庫から取り出した
後、室温に1時間平衡させた。撹拌棒を備えたオーブン乾燥した10mLフラスコにcMAP(50m
g、0.009mmol、2当量)およびジ-SPA-PEG-3.5kD(スクシンイミジルプロピオン酸エステ
ル、15.7mg、0.0046mmol、1当量)を秤量した。フラスコをセプタムでキャップし、2つの
固体を真空下で1時間乾燥し、および次いでフラスコをアルゴンで満たした。ニードルと
シリンジを用いて無水DMSO(2mL)を加えて2つの白色固体を溶解し、および溶液を24時間
撹拌した。ナノピュア水(20mL)を加えてDMSOを希釈し、および溶液を10kD MWCO Amicon
Ultraフィルターを8回より多く使用してナノピュア水に対して透析した。残余分、cMAP-
PEG3.4kコポリマーを0.2umPVDF膜を通してろ過し、および凍結乾燥して白色粉体(29.6mg
、収率45%)にした。
1H NMR(600MHz、DMSO-d6):9.84-8.48、7.90、5.41、4.53、4.15
、3.82、3.55、3.49(PEG)、3.26、2.86-2.00、1.59、1.27。
13C NMR(125MHz、DMSO-d6
):174.66、168.17、71.24、71.00、70.24、67.22、51.69、42.11、36.75、32.58、27.8
9、26.66。同様の手順を、透析のために15kD SpectraPor 7 MWCO膜(Spectrum Labs(ス
ペクトラム・ラボズ社))を用いてcMAP-PEG5kコポリマーを合成するために、5kDジ-SVA-
PEG(スクシンイミジル吉草酸エステル)を用いた。
【0122】
cMAP-PEG-cMAPトリブロックポリマーを、種々のMWCOの遠心スピンフィルターによる分
画によってcMAP-PEGコポリマーから分離した。cMAP-PEG3.4kコポリマー(共重合体とも言
う)を20kD MWCO遠心スピンフィルターを用いて透析し、および次いでろ液を10kD MWCOス
ピンフィルターを通して透析してcMAP-PEG3.4K-cMAPを分離し、それを0.2um PVDF膜を通
してろ過し、および白色粉体にまで凍結乾燥した(10.6mg、収率16%)。cMAP-PEG5k-cMA
Pを同様にして分離した。
【0123】
例2.3。mPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーの合成(
図3)。出発物質を-20℃のフリ
ーザー(冷凍庫とも言う)から取り出した後、室温に1時間平衡にさせた。撹拌棒を備え
たオーブン乾燥した10mLフラスコに、cMAP(40mg、0.006mmol、2当量)およびmPEG 5k-SV
A(85.7mg、0.017mmol、3当量)を秤量した。フラスコをセプタムでキャップし、2つの固
体を真空下で1時間乾燥し、および次いでフラスコをアルゴンで満たした。ニードルとシ
リンジを用いて無水DMSO(4mL)を加えて2つの白色固体を溶解し、および溶液を48時間撹
拌した。ナノピュア水(40mL)を添加しDMSOを希釈し、および溶液を20kD MWCO遠心スピ
ンフィルターを用いて>8回透析した。残余分、mPEG5k-cMAP-PEG5kmを0.2umPVDF膜を通し
てろ過し、および凍結乾燥して白色粉体とした(11.3mg、収率9%)。
1H NMR(600MHz、D
MSO-d6):9.84-8.48、7.90、5.41、4.53、4.15、3.82、3.55、3.49(PEG)、3.26、3.20
、2.86-2.00、1.59、1.27。
【0124】
2kDブロックによりmPEG-cMAP-PEGmを合成するために2kD mPEG-SVAを用いて同様の手順
を続けた。2kD PEGの場合、10kD MWCO遠心スピンフィルターを用いてトリブロックポリマ
ーを分離した。
【0125】
例2.4。5-ニトロフェニルボロン酸-PEGm(5-nPBA-PEGm)の合成(
図4)。
【0126】
ドライスターラーバー(乾燥撹拌棒とも言う)を含むオーブン乾燥した2口の10mL丸底
フラスコに、3-カルボキシル-5-ニトロフェニルボロン酸(200mg、0.95mmol、1当量)を
添加した。フラスコをアルゴンにより排気し、およびゴム製のセプタムで密閉した。BHT
インヒビター(5mL)と共に無水テトラヒドロフラン、続いて無水DMF(14.7uL、0.19mmol
、0.2当量)を加えてボロン酸を溶解した。フラスコを氷水浴中で0℃に冷却した。次いで
、塩化オキサリル(195.4uL、2.28mmol、2.4当量)を反応混合物に滴下した。塩化オキサ
リルの添加が完了した後、氷水浴を除去し、および反応物を室温で2時間撹拌し続け、ア
ルゴン通気口を用いて揮発性物質の逃散を可能にした。溶媒およびDMFは、ロータリーエ
バポレーターを介して除去し、および次いで暗条件下で2日間真空下に除去し、3-アシル
クロライド-5-ニトロフェニルボロン酸(217.5mg、100%収率)を黄色固体として与えた
。
ドライスターラーバーを含むオーブン乾燥25mL丸底フラスコに、3-アシルクロライド-5
-ニトロフェニルボロン酸(27.5mg、0.12mmol、2当量)を加えた。フラスコをゴム製セプ
タムで密閉し、アルゴンによりはけ口を与え、および氷水浴において0℃に冷却した。無
水ジクロロメタン(4mL)を加えてボロン酸を溶解した。アルゴンで通気したオーブン乾
燥した10mL丸底フラスコ中の5kD mPEG-アミン(300mg、0.06mmol、1当量)は、無水ジク
ロロメタン(5mL)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、20.9uL、0.12mmol、2当
量)において溶解され、ボロン酸溶液にゆっくり添加した。反応フラスコを氷水浴中に放
置してゆっくりと室温に温め、および反応物を暗条件下で一晩撹拌した。溶媒およびDIPE
Aは、ロータリーエバポレーターを介して除去し、および次いで暗下で2日間真空下に除去
した。固体残渣を0.5N HCl(5mL)において再構成し、および15分間撹拌した。得られる
懸濁物を0.2μmのSupor syringe filter(スーポア・シリンジ・フィルター)でろ過し、
および得られる透明な溶液を、pHが一定になるまで、15mLのAmicon Ultra 3kDスピンフィ
ルターでナノ純水に対して透析した。ポリマーの溶液を3-4mLに濃縮し、0.2μmのPVDFシ
リンジフィルターを通して予め秤量した20mLガラスバイアル中にろ過し、および凍結乾燥
し乾固して5-ニトロフェニルボロン酸-PEGm(219.2mg、収率70%)をふわふわした白色の
固体として与えた。1H NMR(600MHz、DMSO-d6):8.89(t、1H)、8.72(m、1H)、8.68
(m、1H)、8.64(m、1H)、8.60(s、2H)、3.5(s-PEG、510H)、3.22(s、3H)。11B
NMR(160MHz、10mMリン酸緩衝剤、D2O中のpH7.4):11.26(ブロードs)。MALDI:5825.5
。
【0127】
例3。ポリマー特性
【0128】
例3.1。ゲル浸透クロマトグラフィー。バイナリポンプおよびインジェクタを備えたAgi
lent(アジレント)1100 HPLCを、Wyatt DAWN HELEOS(ワイアット・ドーン・ヘレオス)
光散乱およびWyatt Optilab Rex(ワイアット・オプティラボ・レックス)屈折率検出を
備えたTosoh(トーソー)TSKgel G3000PWXL-CPサイズ排除カラムに接続した。凍結乾燥さ
れたポリマーを0.1MのNaNO3において6つの異なる濃度で溶解し、dn/dc測定のためにシリ
ンジポンプを介して屈折率検出器に直接注入した。光散乱による絶対分子量測定のために
、100μLのポリマー溶液をカラムに対して注入し、および検出されたポリマーピークをAS
TRA(アストラ)Vソフトウェアを用いて分析した。
【0129】
例3.2。第一級アミンについてのcMAPのTNBSAアッセイ。メタノールストック溶液におい
て2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸5%w/vを用いたThermo Scientific(サーモ・サ
イエンティフィック)の指示は、次に記載のような修飾により続いた。簡潔には、cMAPお
よびグリシンをそれぞれ反応緩衝剤において溶解し、および2ないし0.0039mg/mLおよび20
ないし0.00195mg/mLの濃度範囲についてそれぞれ連続希釈した。100μLの各試料濃度およ
び50μLのTNBSAワーキングソリューション(作業溶液、希釈標準溶液とも言う)を96ウェ
ルプレートに三通り加え、および短時間振とうした。吸光度をTecan infinite M200 plat
e reader(テカン・インフィニットM200プレート・リーダー)にて波長335nmで読み取り
、37セルシウス度で2時間インキュベートし、および再度読み取った。グリシンを陽性コ
ントロールとして用いた。
【0130】
例3.3。ポリマーsiRNAカプセル化アッセイ。siRNAをカプセル化(封入とも言う)するc
MAPポリマーの能力を、2つの方法、次の:ゲル遅延度アッセイおよびRiboGreen assay(
リボグリーン・アッセイ)を用いて分析した。ゲル遅延度アッセイのために、0.5mg/mLポ
リマーの増加させる容量を、水中で15μLの合計容量について、0、0.5、1、1.5、2、2.5
、3、および5の(+/-)電荷比で、1μLの1mg/mL siRNAと混合した。混合物を短時間ボル
テックス(かき混ぜとも言う)し、遠心分離にかけてダウン(降下とも言う)させ、およ
び室温で15分間放置した。3μLの6×DNAローディング色素を各混合物に添加し、次いでそ
れを1重量%アガロースゲルに負荷し、および0.5×TBE緩衝剤において1.5時間95Vで作動
させた。ゲルをUVP BioDoc-It Imaging System(UVPバイオドク-イット・イメージングシ
ステム)にて画像化した。
【0131】
RiboGreenアッセイは、ゲル遅延度アッセイと同様の方法で実行したが、96ウェルプレ
ートにおいて合計容量100μLについて水中で0.1mg/mLのポリマーおよび1μLの0.1mg/mL s
iRNAの容量を増加させることの使用は除いた。これらの混合物のそれぞれに対して、100
μLのQuant(クアント)-iT RiboGreen RNA試薬の作業溶液を、キットのプロトコールに
従って調製し、添加した。プレートを短時間振盪し、暗所において室温で5分間インキュ
ベートし、および蛍光強度を、Tecan infinite M200 plate readerにて、励起波長480nm
および発光波長520nmで読み取った。測定は三重に行った。
【0132】
例4。ナノ粒子調剤物および特徴付け。
【0133】
例4.1。ナノ粒子調剤物。cMAP NPsは、最初に、10mMリン酸緩衝剤pH7.4においてcMAP隣
接ジオール対5-nPBA-PEGmの1:1モル比(1mgのcMAP対22mgの5-nPBA-mPEG)に混合し、短
時間ボルテックスし、遠心分離にかけてダウンし、および混合物を室温で15分間放置する
ことによって調剤した。次いで、等量のRNAseフリー水におけるsiRNAを、cMAP対siRNAの3
:1の電荷比で、および最大0.8mg/mLまでのsiRNAの濃度で添加した。cMAP-PEGコポリマー
、cMAP-PEG-cMAPトリブロック、およびmPEG-cMAP-PEGmトリブロック調剤物も同様の方法
で作成したが、電荷比を、ポリマー対siRNAの電荷比の3:1から1:1まで降下させ、およ
び最大1mg/mLの濃度のsiRNAに変動させた。任意の5-nPBA-PEGmを含まない調剤物について
、等しい容量のポリマーとsiRNAを単純に適切な電荷比で混合した。マウスへの注射のた
めに、0.1容量の10×リン酸塩緩衝化生理的塩類溶液(PBS)を添加して、最終濃度0.73mg
/mLのsiRNAと共に、1×PBS溶液を達成した。PBSにおいて調剤されたcMAP-PEGコポリマー
およびmPEG-cMAP-PEGm NPsについて、ポリマーおよびsiRNA溶液の両方がPBS中にあり、お
よび次いで一緒に混合され;これはマウスに直接注射することができた。過剰の成分(す
なわち、ポリマー、PEG)の除去のために、NP調剤物を0.5mLの30kD MWCO Amicon Ultraス
ピンフィルターに入れ、および2000rpmにて10分間5-10回PBSで透析した。
【0134】
例4.2。ナノ粒子のサイズおよびゼータ電位。NPサイズは、2つの異なる方法:動的光散
乱(DLS)および低温透過電子顕微鏡(cryoTEM)を用いて決定した。DLSは、Brookhaven
Instruments Corporation(ブルックヘーヴン・インスツルメンツ・コーポレーション)
(BIC)のZeta(ゼータ)-PALSでBIC Particle Sizing Software(BICパーティクル・サ
イジング・ソフトウェア)と共に行った。粒子は、安定したサイズが10回の1分間の測定
について記録されるまで、調剤物に応じて、0.2mg/mLの濃度のsiRNAに至るまで希釈され
た。少なくとも10回の測定の結果を平均した。
【0135】
2s(2秒)のブロット時間(ブロット力6)および1sのドレン時間を有するFEI Mark(マ
ーク)IV Vitrobot(ビトロボット)を使用して、ろ紙でブロッティングした後、液体エ
タン中のR2/2 Quantifoil(クオンティホイル)グリッド上で凍結した溶液において粒子
についてCryoTEMイメージングを行った。画像は、Gatan 2k x 2k UltraScan CCD(ガタン
・2k×2kウルトラスキャンCCD)カメラおよびSerial EM(シリアルEM)自動化ソフトウェ
アを備えたTecnai 120-keV(テクナイ120-keV)透過型電子顕微鏡で収集した。取得した
画像を、ImageJ(イメージJ)ソフトウェアを使用してNP直径を測定するために分析した
。
【0136】
NPsの表面電荷、またはゼータ電位は、Brookhaven水性電極アセンブリを加えたDLSに使
用したのと同じZeta-PALSを用いて測定した。10μLの粒子調剤物をキュベット中の10mMリ
ン酸緩衝剤(pH7.4)または1mM塩化カリウム(pH5.5)のいずれかの1.5mLと混合した。電
極をキュベット中に挿入し、およびBIC PALS Zeta Potential Analyzer(BIC PALSゼータ
・ポテンシャル・アナライザー)ソフトウェアを使用して標的残留物の0.012と共にゼー
タ電位を測定した。少なくとも10回の測定の結果を平均した。
【0137】
例4.3。ナノ粒子化学量論。
【0138】
例4.3.1。NPに結合した5-nPBA-PEGmの定量。NPsを5-nPBA-PEGmと共に調剤し、および過
剰成分を上記のように除去した。30kD MWCOスピンフィルターからのろ液(過剰成分を含
む)50μLを、Phenomenex Gemini C18(フェノメネクス・ジェミニC18)逆相カラムおよ
び多波長検出器に接続した四次ポンプおよびオートサンプラーを備えたAgilent 1200 HPL
C(アジレント1200 HPLC)に注入した。254nmでの吸光度を記録し、および5-nPBA-PEGmの
検量線と比較した。
【0139】
例4.3.2。NPに結合したカチオン性ポリマーの定量。5-nPBA-PEGmの不存在下でNPsを調
剤した。cMAPについて、上記のようにして凝集したNPsから過剰のカチオン性ポリマーを
除去した。NPに結合したカチオン性ポリマーは、NPsを含む30kD MWCOスピンフィルターか
らの残余分(保持液とも言う)を取り出し、およびBcMagTM(BcMag商品名)SAX(Strong
Anion Exchange(ストロング・アニオン・イクスチェンジ))磁気ビーズ(Bioclone Inc
(バイオクローン社))を用いてsiRNAを分解し、および封鎖することによって直接定量
した。cMAPを含む液体50μLは上記のGPC設定に注入し、およびNPに結合したポリマーの量
は、cMAP検量線と比較し、屈折率信号を用いて直接決定した。cMAP-PEGコポリマーおよび
mPEG-cMAP-PEGmについて、50μLの調剤物を上記のGPC設定に注入した。NPに結合していな
いポリマーに対応する屈折率信号を記録し、および同じカチオン性ポリマーの検量線と比
較した。この量は、NPに結合したポリマーのパーセントを決定するために調剤物について
使用したポリマーの合計量から差し引いた。
【0140】
例5。インビボマウス薬物動態(PK)調査。
【0141】
すべての動物調査は、カルテック(カリフォルニア工科大学)でのInstitutional Anim
al Care and Use Committee(インスティティーショナル・アニマル・ケア・アンド・ユ
ース・コミッティ)(動物実験委員会とも言う)によって承認された。NPsは、siRNAの20
%がCy3-フルオロフォア標識siRNAで置換されたことを除いて、上記のように調剤した。N
P調剤物はマウス尾部静脈を介してマウス1kgあたり5mgのsiRNAの用量で静脈内注射した。
Balst/cマウス(Taconic and Jackson Labs(タコニック・アンド・ジャクソン・ラボズ
))の後肢を、Sarstedt Microvette CB300(サーステッド・マイクロベッテCB300)キャ
ピラリーチューブを含むレッドトップクロットアクチベーター(赤い頂部クロット活性化
剤とも言う)において伏在静脈から採血するために剃毛した。血液は、NP注射の2分後に
開始する様々な時点で、1マウスあたり最大6点で収集した。チューブを14,000xgで15分間
4℃にて遠心分離し、およびチューブ上部の血清を、励起波長530nmおよび発光波長570nm
で、マウス血清においてNP調剤物の標準曲線と比較し、Cy3蛍光の分析に用いた。血清に
おいて残るCy3-siRNAの画分は、マウス重量および注入された調剤物の量に基づいて血清
容量を用いて計算した。データポイントは、1調剤物あたり3匹のマウスからのものである
。
【0142】
例6。結果および考察
【0143】
例6.1。cMAP合成、NMR特徴付け、および末端基の決定。カチオン性ムチン酸ポリマー(
cMAP)を、
図1に概略的に例示する一連の反応を用いることによって合成した。ムチン酸
およびムチン酸エチレンジアミンの調製に至る中間反応生成物を十分に特徴付けた(テー
ブル1)。
【0144】
【表1】
ムチン酸エチレンジアミンおよびジメチルスベリミダート(DMS)の縮合反応によりcMA
P物質が生成された。DMSは重合に使用されるものに似た条件で加水分解することができる
ために、本発明者らはこの反応および形成された生成物について反応経路を研究した(テ
ーブル2)。
【0145】
【表2】
この情報はcMAP生成物の特徴付けにおいて支持された。
【0146】
cMAPのNMR分析(1H-13C HSQC NMR、1H-1H COSY NMR、および1H-13C HMBC NMRデータを
含む)(テーブル3-4)は、ポリマーにおいて様々な炭素および水素環境へのすべての共
鳴の割当てを可能にした。cMAP-PEGコポリマーまたはmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマ
ーを形成するために、官能化PEGを伴うその後の反応にこれらの官能性が利用されるので
、重要なのはcMAPの末端基組成の識別であった。
【0147】
【0148】
【0149】
cMAP末端基には、メトキシエステルのメトキシ、アミン、および小量のカルボン酸が含
まれる(
図10)。cMAPの
1H NMR分析は3.55ppmにて特徴的にシャープなメトキシピークの
存在を示し(
図11)、およびこの割当ては
1H-
13C HSQC NMR測定によって支持される(示
さず)。メトキシ基は、DMSのイミデート基からの加水分解を通したアンモニアの損失に
起因し(テーブル2、
図6-8)、および以前に報告された。メトキシに隣接するメチレン基
は、
1H NMRスペクトルにおいて2.25ppmにてトリプレット(三重項とも言う)として観察
することができる(
図11)。ムチン酸エチレンジアミンに由来するアミン末端基は、
1H N
MRで直接観察することはできない。しかしながら、モノマーのNMRスペクトルおよびcMAP
のHMBC NMRスペクトルの分析により、2.85ppmでのトリプレットのアミン官能基に隣接す
るメチレン基からである割当てが可能にされた。さらに、第一級アミンについてのTNBSA
アッセイは陽性であり、そのようにしてcMAPが末端基として末端第一級アミンを有するこ
とが確認された。最後に、メチルエステルの十分な加水分解または出発DMSにおいて不純
物として生じる末端基として小量のカルボン酸が存在した。カルボン酸に隣接するメチレ
ン基は、
1H NMRスペクトルにおいて2.00ppmにて小さなトリプレットとして観察される(
図11)。cMAPのバッチにおいてこれらの末端基の比は、2.85(アミン)、2.25(メトキシ
)、および2.00(カルボキシラート)のppmでのトリプレットの積分を比較することによ
って決定することができ、およびテーブル5において8バッチについて示される。%アミン
、%メトキシ、および%カルボキシラートについて平均値はそれぞれ49%、42%、および
9%である。
【表5】
【0150】
例6.1。cMAP-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロック。cMAPを、PEG、たとえ
ば、スクシンイミジルプロピオン酸エステル(SPA)またはスクシンイミジル吉草酸エス
テル(SVA)などのようなものでの活性化カルボン酸末端基と反応させた。cMAPは、PEG長
さがそれぞれ2、3.4、または5kDを有するジ-SPA-PEGまたはmPEG-SVA生成コポリマーまた
はトリブロックポリマーと反応した。
【0151】
著しい量のジアミン末端ポリマー鎖がcMAP混合物において存在するので、ジ-SPA-PEG(
図2)との反応により、大きなサイズ分布を有するcMAP-PEGコポリマーがもたらされた(1
0kDよりも少しだけ大きなジブロックcMAP-PEGコポリマーから、cMAPsにてメチルエステル
またはカルボン酸によって終結されたcMAP-PEG-cMAPトリブロックポリマーまで、100kDを
超える長さのポリマーにまでのさまざまなコポリマー;テーブル6-7において報告される
サイズ分布は、連続的に小さい分子量カットオフ遠心スピンフィルターを通して粗ポリマ
ーを分画することによって得られるポリマー収率からのものである)。
【0152】
【0153】
【0154】
そのような大きな分子量を有するポリマーは、生体内で実質的な毒性を課すことがある
ため、適度な長さの明確に定義されたポリマーを合成するために、cMAP-PEG-cMAPトリブ
ロックポリマー種をこの分画法を用いてコポリマーから分離した。PEGまたはPLAポリマー
に隣接するカチオン性ポリマーのこの繰り返し構造の他のトリブロックポリマーは、遺伝
子および酸化鉄-カーボンナノチューブデリバリーのために以前に検討された。
【0155】
cMAPをmPEG-SVAと反応させると、得られる生成物の構造はmPEG-cMAP-PEGmトリブロック
ポリマーに制限された(
図3)。いくらかのcMAP-PEGmジブロックポリマーもまた存在し、
および分画によって望ましいトリブロックから分けられた。
【0156】
例6.2。GPCによるポリマーの分子量。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてcMAPの分子
量を特徴付けた。ポリマーの溶出時間はそのサイズに相関することができるが、新しいカ
チオン性ポリマーでは、キャリブレーションに理想的なサイズ基準が存在しない。したが
って、本発明者らは、マルチアングル光散乱検出器を用いてポリマーの絶対分子量を定め
た。この方法の利点は、ポリマーの散乱能力およびその濃度にのみ依存することであり;
それは比較のための標準を必要としない。cMAPの濃度、dn/dcに関し、示差屈折率を決定
し(テーブル8)、および分子量を測定するために使用した。cMAPの9バッチの平均分子量
は6kD前後であり、1.1未満の多分散指数(PDI)であった(テーブル8)。個々のバッチか
らの結果はテーブル9に見出すことができる。
【0157】
【0158】
【0159】
同様の方法を用いて、5k cMAP-PEGコポリマーは、1.4のPDI、および42kDのMwおよび29k
DのMnを有するより一層大きなサイズ分布を有した(テーブル8)。5k mPEG-cMAP-PEGmト
リブロックは、約21kDであり、PDIは1.1未満であった(テーブル8)。さらに、3.4kD PEG
cMAP-PEGコポリマーおよび2kD PEG mPEG-cMAP-PEGmトリブロック、ならびにcMAP-PEGコ
ポリマーの分画に由来するcMAP-PEG-cMAPトリブロックの結果をすべてテーブル10に報告
する。
【0160】
【0161】
例6.3。cMAP系ポリマーによるsiRNAカプセル化。siRNAをカプセル化するためのcMAP、c
MAP-PEGコポリマー、およびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーの能力を、RiboGreenア
ッセイおよびゲル遅延アッセイの双方を用いて確認した。cMAPは、1+/-の電荷比(+/-)
にてsiRNAをカプセル化することができ、およびcMAP-PEG5kコポリマーおよびmPEG5k-cMAP
-PEG5kmトリブロックは双方とも、3または2の電荷比のそれぞれによって、蛍光RiboGreen
アッセイが用いられ、siRNAを十分にカプセル化することができる(
図12)。同様のsiRNA
カプセル化データが、
図13-14での他のPEG長のコポリマーおよびトリブロックポリマーに
ついて報告される。RiboGreenアッセイの結果はおそらくより一層高感度であるが、ゲル
遅延アッセイのものと同等である。
【0162】
例7。ナノ粒子調剤物および特性。
【0163】
例7.1。調剤物。5-ニトロフェニルボロン酸-PEGm(5-nPBA-PEGm)は、この5kD PEGの一
方の端部が6.8を超えるpHでcMAPのムチン酸上の隣接ジオール基に結合して
図15に示すよ
うなNPsを含むsiRNAの立体安定化をもたらすことを可能にするボロン酸基を含む。追加の
5-nPBA-PEGmを含むか、または含まないcMAP、cMAP-PEGコポリマー、およびmPEG-cMAP-PEG
mトリブロックポリマーを使用する様々なNP調剤物を、
図16(A-B)に示す。5-nPBA-PEGm
の添加なしに3+/-電荷比でcMAPおよびsiRNAを混合することによって調製されるNPは、水
においては安定であるが、PBSにおいて不安定である(調剤物に添加されたジオールあた
り一つの5-nPBA-PEGm、
図17)。
【0164】
cMAP単独とは対照的に、cMAP-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマ
ーは、追加的な5-nPBA-PEGmなしで安定な粒子を形成することができた。しかし、cMAP-PE
Gコポリマーから分離された純粋なcMAP-PEG-cMAPトリブロックポリマーは、おそらく、NP
の十分なシールド(遮蔽とも言う)および立体的安定化に足りるPEGを含有しなかったた
め、5-nPBA-PEGmを添加しないで安定なsiRNA含有NPsを形成することができなかった(テ
ーブル11および
図18-20)。
【0165】
【0166】
cMAP-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーはPBSにおいて安定なN
Psを形成したが、余分なPEGがインビボで試験したときNPsに対してより一層大きな立体安
定性を提供するかどうかを試験するために、追加の5-nPBA-PEGmを有する調剤物もまた調
製した。NPsに結合したPEGの量はおおよそ20%であった(テーブル13)。NPのポリマー成
分を等量のsiRNAと一緒に混合して、0.8-1mgのsiRNA/mLの濃度でNPsを形成させた。さら
に、cMAP-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーは、直接PBSにおい
て安定したNPsを調剤することができ、低い塩の緩衝剤において安定した粒子を最初に調
剤し、次いでPBSの添加(cMAPによって求められる)を続ける必要が排除される。
【0167】
例7.2。ナノ粒子サイズ。調剤されたNPsのサイズは、動的光散乱(DLS)および低温透
過電子顕微鏡(CryoTEM)によって特徴付けられた。これらのNPsの直径はすべてDLSおよ
びCryoTEMの両方によって決定されるようにca.30-40nmである(テーブル12)。NPsは球状
の形態を有した(CryoTEMイメージング、
図21に示す)。追加の画像およびDLSおよびCryo
TEMの双方によるサイズの分布を
図22および23に報告する。
【0168】
【0169】
例7.3。ナノ粒子ゼータ電位。NPsのゼータ電位(NP表面電荷の尺度)は、異なるpHの2
つの溶液において測定した:5-nPBA-PEGmがcMAP上の隣接ジオールに結合するときpH7.4で
緩衝された10mMリン酸塩;および5-nPBA-PEGmがムチン酸のジオールから解離するとき、p
H5.5での1mMのKClである。5-nPBA-mPEGを有するcMAP-siRNA NPsは、5-nPBA-mPEGがNP上に
存在したとき、pH7.4のリン酸塩緩衝剤において-3mVにてわずかに負のゼータ電位を有し
た。しかし、これらのNPsをpH5.5にて1mM KClに配置したとき、ゼータ電位は約+1mVであ
った。これらの結果は、cMAP上の正電荷を遮蔽し、pH7.4での四面体ボロナート錯体を形
成するためにムチン酸でのジオールへのボロン酸結合と、および酸性pH5.5にてNPから解
離するボロン酸と一致していた。同様の効果が、5-nPBA-PEGmを伴う、および伴わないcMA
P-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーにより観察された(テーブ
ル12)。
【0170】
例7.4。ナノ粒子化学量論。NPsに結合したcMAPおよびコポリマーの量をテーブル13に示
す。3つのポリマー(cMAP、cMAP-PEGコポリマー、およびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポ
リマー)のすべてについて、調剤物のために使用された合計ポリマーのおおよそ33%が1+
/-の効果的なNP電荷比用に結合した。安定化のために過剰のPEGを含有するNP調剤物で存
在する5-nPBA-PEGmの量もまたテーブル13に示す。cMAP+5-nPBA-PEGm NPに結合した5-nPBA
-PEGmの量は、約34%、またはジオールあたり1つのPEGであった(テーブル13)。PEGの約
20%が、cMAP-PEGコポリマーおよびmPEG-cMAP-PEGmトリブロックポリマーNP調剤物のため
にNPに結合することが見出された。粒子が3+/-電荷比で調剤されたとき、存在する過剰な
カチオン性ポリマーを考慮し、および有効なNP電荷比が1+/-であるため、このことは、NP
でジオール当たりわずかに1未満のPEGしか存在しないことを意味した。siRNA封入に関す
るデータにおいて上記に示されたように、実質的にすべてのsiRNAがNPsにおいて封入され
た(
図12)。
【0171】
【0172】
例8。マウスにおけるインビボ薬物動態学的研究。
【0173】
Balb/cマウスへの尾静脈注射により、NPsの安定な調剤物をインビボで試験した。注射
された用量では、いかなる調剤物からも毒性は観察されなかった。種々のNPsのPKsを測定
し、およびその結果を
図24(A-C)に例示する。
【0174】
cMAPポリマーおよび3+/-電荷比にて混合され、および5-nPBA-PEGmで安定化されたsiRNA
から構成されるNPを試験したが、このNP調剤物は臨床研究に使用されたCDP調剤物に類似
したからである(CALAA-01)。cMAP系NPは、CALAA-01よりもわずかに長い循環時間を有す
る(
図5A)。CALAA-01はCDPおよびアダマンタン-PEG(AD-PEG)の相互作用に包接錯体を
使用したため、循環中にAD-PEGがNPから離脱してNPが安定性を失う可能性があった。他の
ものはAD
2-PEGを合成し、およびこの化合物が元のCALAA-01調剤物においてAD-PEGよりもC
DP系NPsを安定化する能力が高いことを示した。このことは、1つのPEGあたり2つのアダマ
ンタンの(2つのCDsへの)結合の増強によるものであり、その結果、循環中により一層の
立体的な安定化がもたらされると考えられる(
図24A)。本cMAPボロン酸システムと共に
、PEG化合物およびポリマーの間の相互作用は、NPに結合したPEGのca.30%を伴い、ポリ
マーでのボロン酸およびジオールから形成されるボロン酸エステルを通して首尾よく終わ
る。NPを調剤するために使用されるcMAPの1/3だけしか粒子に結合しなかったので(テー
ブル3)、このことは、ジオールあたりに存在する1つのPEGと大体同等であった。ボロン
酸-ジオール相互作用は、アダマンチンとシクロデキストリンとの間の包接錯体よりも予
想以上に強く、その結果、5-nPBA-PEGmはCDPに対してのAD-PEGよりも長くcMAPに付着した
ままで、より一層高い立体安定性および循環時間において向上をもたらすことが可能であ
った。
【0175】
cMAP-PEGコポリマーを用いて形成されたNPsは、5-nPBA-mPEGを使用することなく、NP中
への3+/-電荷比でのPBSにおいてsiRNAにより安定に調剤することができる(上記参照)。
cMAP-PEGコポリマーにおいてPEGは、NPコアを遮蔽するPEGループを形成すると考えられる
。追加的な5-nPBA-mPEGはNPsのさらなる安定化のために使用することができる。pH7.4で
の陰性からpH5.5での陽性に切り替わるゼータ電位は、粒子に結合した20%PEGに加え、過
剰なPEGのろ過された量を測定することによって5-nPBA-PEGmがNP調剤物においてcMAP-PEG
コポリマーと相互作用することができたことを示した。cMAP-PEGコポリマーにより調剤さ
れたNPsは、5-nPBA-PEGmが添加されたか否かにかかわらず、cMAP:5-nPBA-PEGmベースのN
Psを超えてより一層長い循環時間を提供しなかった(
図24B)。
【0176】
mPEG-cMAP-PEGmトリブロックを使用して形成されたNPsは、PBSにおいて安定なNPsを形
成し(上記参照)、およびNPsの表面でPEGのブラシ様配置を有すると考えられる。
図24B
において提供されるデータによって示されるように、これらのNPsのマウスへの注入は、
他のすべてのcMAP系NPsと比較して改善されたPKプロファイルをもたらし、60分後にNPsの
おおよそ5-10%をマウス循環に残した(他の調剤物は60分によって検出限界より下であっ
た)。同様の結果が、ヌードマウスにおいてこの調剤物により観察される(
図25)。これ
らのより一層長い循環時間は、推定上NPsの表面でのPEGポリマーのブラシ配置に由来する
立体安定性の程度がより大きいNPsと一致する。トリブロックポリマー-siRNA NPへの5-nP
BA-PEGmの添加は、循環時間での改善をもたらさなかった(
図24B)。さらに、3+/-NP調剤
物から66%過剰のトリブロックポリマーのいくらかを除去することによって得られる2+/-
の電荷比を有するsiRNA含有NP調剤物は、配合物を30kD MWCO膜でスピンろ過することによ
って、循環時間での減少をもたらさなかった(
図24C)。この精製の方法を使用して、過
剰なポリマーをすべて除去することは困難であった。これらの結果は、NP内に含まれない
ポリマーがPKを変えなかったことを示唆した。
【0177】
ここで検討したポリマーの変形のうち、mPEG-cMAP-PEGm NPは最も長い循環時間を提供
し、および循環時間は追加の結合5-nPBA-PEGmと共に増加しなかった。5-nPBA-PEGmのcMAP
でのジオールとの相互作用は、アダマンタンとCDPとの間の相互作用よりも強力である可
能性が高いが、NPからいくらかの量のPEGが排出される(some amount of PEG shedding f
rom the NP)可能性が依然としてあった。他方で、トリブロックポリマーは、cMAP単位当
たり2個のPEGsを有し、良好なブラシ層に必要なNP表面でのPEG密度を達成することができ
た可能性がある。しかし、このトリブロックポリマーでの共有結合したPEGの量は、cMAP+
5-nPBA-PEGm NPでのものよりも少なかった。これらのシステムからのPKデータは、循環中
のPEG排出が依然として起こったが、CDP-アダマンタンシステムで起こるものよりも少な
かったことを示唆した。5-nPBA-PEGmの若干は、循環中にNPs上にとどまっていなければな
らない。
【0178】
NPsが循環中に無傷のままであるというさらなる証拠を提供するために、投薬から20分
後にマウスから採取した血清をゲルにて泳動させ、およびエチジウムブロマイドまたはTy
phoon imager(タイフーン・イメージャ)でのフルオロフォア標識siRNAのいずれかによ
ってsiRNAを視覚化した。これらの実験からの結果は、インビボで循環しながら、siRNAお
よび蛍光標識siRNAが無傷のNPsにおいて残ることを示した。
【0179】
以下の参考文献は、本開示の一定の態様を理解する上で有用であり得る:
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rries.(水溶液中の両親媒性カチオン性[樹状ポリ(L-リジン)-ブロック-ポリ(L-ラク
チド)-ブロック-[樹状ポリ(L-リジン)]s:遺伝子送達としての自己凝集およびDNAとの
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hesis, ETH, Zurich, Switzerland(M.S.論文、ETH、チューリッヒ、スイス)、2011。
【0180】
当業者に理解されるであろうように、本開示の多数の修飾および変形がこれらの教示に
照らして可能であり、およびそのすべてがここに考慮される。たとえば、ここに記載され
た実施態様に加えて、本開示は、本開示の特徴を補完する、ここに引用された開示の特徴
と引用された先行技術文献との組合せから生じる発明を企図し、および請求する。同様に
、任意の記載された物質、特長、または物品は、任意の他の物質、特長、または物品と組
み合わせて使用されてもよく、およびそのような組合せは本開示の範囲内と考えられる。
【0181】
この文書において引用または記載された各特許、特許出願、および刊行物の開示は、す
べての目的のために、それぞれがその全体においてここに参照することによりここに組み
込まれる。既に言及した参考文献に加え、本開示は、2009年8月12日付け出願の米国特許
出願第12/540,319号で、目下の米国特許第8,557,292号;第13/782,458号で、2013年3月1
日に出願されたもの;第13/782,486号で、2013年3月1日に出願されたもの;第13/852,303
号で、出願が:2013年3月28日のもの;および国際出願第PCT/US2009/053620号で、2009年
8月12日に出願されたものに関連する主題を含み、それらの内容は、すべての目的のため
に、化学物質、適用、およびそこに記載されるblcok(ブロックか?)コポリマーの作成お
よび使用の方法のそれらの教示を含めて、参照することによって組み込まれる。