(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】車両の位置を特定する方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20221003BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20221003BHJP
G01S 11/06 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
G01C21/28
G08G1/09 F
G01S11/06
(21)【出願番号】P 2021501009
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2019068952
(87)【国際公開番号】W WO2020016150
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-11
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ムーザン, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ミテット, マリー-アン
(72)【発明者】
【氏名】サール, マリアマ
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-121179(JP,A)
【文献】特開2013-246038(JP,A)
【文献】特開2013-073338(JP,A)
【文献】特開2011-259028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/28
G08G 1/09
G01S 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を特定するための方法であって、第1の情報源として使用される路側ユニット(9)に対する前記車両(5)の相対位置を決定すること(E40)に基づいて、前記車両の位置の第1の推定値を決定するステップを含み、前記車両の前記位置の前記第1の推定値が、少なくとも第2の情報源によって与えられる前記車両の前記位置の少なくとも第2の推定値を確証するために使用され
、
前記車両の前記位置の前記第1の推定値を決定する前記ステップは、前記車両(5)が基準位置に到達するために必要とされる時間(t
ref
)を決定するステップ(E10)を含み、
前記車両(5)が基準位置に到達するために必要とされる前記時間(t
ref
)を決定する前記ステップ(E10)は、
- 前記車両(5)が前記路側ユニット(9)から可能な最も短い距離離れて位置する位置に対応する基準位置を決定するサブステップ(E101)と、
- 現在位置、リアルタイムでの速度、および前記車両の方向を決定するサブステップ(E102)と、
- 前記現在位置、リアルタイムでの前記速度、および前記車両の前記方向を考慮することによって、前記基準位置に基づいて、前記車両(5)が前記基準位置に到達するために必要とされる前記時間(t
ref
)を計算するサブステップ(E103)と
を含み、
前記現在位置、リアルタイムでの前記速度、および前記車両の前記方向を決定する前記サブステップ(E102)が、
- 前記路側ユニット(9)によって送信されたメッセージの前記受信(E1)に基づいて、第1の現在位置および/またはリアルタイムでの第1の速度および/または前記車両の第1の方向を含む第1のデータを取得することと、
- 第
2の現在位置および/またはリアルタイムでの第2の速度および/または前記車両の第2の方向を含む第2のデータを取得することを可能にする、少なくとも第2の情報源(UBMOD)によって送信されたメッセージを受信すること(E2)と、
- 前記路側ユニット(9)から取得された前記第1のデータと前記少なくとも第2の情報源(UBMOD)から取得された前記第2のデータとを比較することであって、前記車両の前記現在位置および/または前記車両のリアルタイムでの前記速度および/または前記車両の前記方向を決定することを可能にするか、あるいは前記第1および第2のデータに従って前記車両の前記現在位置および/または前記車両のリアルタイムでの前記速度および/または前記車両の前記方向を構築することを可能にする、前記第1のデータと前記第2のデータとを比較することと
を含むことを特徴とする、車両の位置を特定するための方法。
【請求項2】
前記車両の前記位置の前記第1の推定値を決定する前記ステップが、前記路側ユニット(9)によって送信される少なくとも1つのメッセージの前記車両(5)による受信(E1)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信(E1)が、
- 生データを取得することと、
- 前記生データをフォーマットすることと
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記受信(E1)が、路側ユニット(9)によって送信された前記メッセージのみをとり入れるようなフィルタ処理をさらに含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両の前記位置の前記第1の推定値を決定する前記ステップが、
- 前記メッセージを搬送する信号の電力を測定すること(E20)と、
- 前記信号が最大電力に達したことの検出に基づいて、前記路側ユニット(9)に対する前記車両(5)の前記相対位置を決定するステップ(E40)と
をさらに含むことを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記路側ユニット(9)に対する前記車両(5)の前記相対位置を決定する前記ステップ(E40)が、前記信号が前記最大電力に達したとき、前記車両は、道路上の前記路側ユニット(9)が設置されていることが知られている側の、該道路上の前記
路側ユニットに最も近いポイントに位置することを考慮することを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記メッセージを搬送する前記信号の前記電力が、前記路側ユニット(9)に対する前記車両(5)からの最小距離(d
min)を決定するように測定される(E20)ことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号のRSSIが前記車両(5)のための位置データとして使用されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両の前記位置の前記第1の推定値を決定する前記ステップが、特にマップ(MAP)に対するフィルタ処理のステップ(E30)を含むことを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の情報源によって与えられる情報が802.11p Wi-Fi規格に準拠することを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
車両(5)において使用されるように構成された通信ボックス(7)であって、前記通信ボックス(7)は、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素(71、72、73、74、75、78、79)、特に請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するように設計されたハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素(71、72、73、74、75、78、79)を備え、ならびに/または前記通信ボックス(7)は、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するための手段を備える、通信ボックス。
【請求項12】
コンピュータによって可読なデータ記憶媒体(75)であって、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記憶されている、コンピュータによって可読なデータ記憶媒体(75)、あるいは、命令がコンピュータによって実行されたとき、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するように該コンピュータを導く前記命令を含むコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項13】
請求項
11に記載のボックスおよび/または請求項
12に記載の媒体を備える車両(5)。
【請求項14】
プログラムがコンピュータ上で動作しているときに、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法のステップを実装するためのコンピュータ可読媒体上に記憶されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品、あるいは、通信ネットワークからダウンロード可能であり、ならびに/またはコンピュータ(74)によって可読なおよび/もしくはコンピュータによって実行可能なデータ媒体上に記憶されたコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータによって実行されたとき、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法を実装するように該コンピュータを導く命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車の位置を特定するための方法に関する。本発明はまた、自動車において使用されるように構成され、そのような方法を実装するための手段を備える、通信ボックスに関する。本発明はさらに、そのようなボックスを備える自動車に関する。本発明はまた、そのような方法を実装するコンピュータプログラムに関する。本発明はさらに、そのようなプログラムが記録されている記憶媒体に関する。最後に、本発明は、そのようなプログラムを担持する、データ媒体からの信号に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業における自律運転の出現により、車両の位置を特定することに関する要件はますます厳しくなりつつある。
【0003】
車両の位置を特定するために、GNSS(Global Navigation Satellite System:グローバルナビゲーション衛星システム)システム、RFID(Radio-frequency Identification:無線周波数識別)ビーコン、RTK(Real-time Kinematic:リアルタイム運動学的)システム、トラッカーなどのソリューションがある。しかしながら、通常個々に使用されるこれらのシステムでは、車両の位置を十分に高い精度で決定することは可能ではない。特に、車両の周囲の環境は、車両の位置の決定に干渉し得る。たとえば、送信機、通常は1つまたは複数の衛星と受信車両との間に障害が存在し得る。これにより、車両の位置の決定における精度に差が生じる。RTKシステムでは、車両の位置を高い精度で決定することが可能である。しかしながら、そのようなRTKシステムの欠点は、それらの実装および保守のコストが高いことである。
【0004】
車両がマニュアルモードで使用されるとき、ドライバは「ホイールの制御」を保つので、車両のロケーションはより低い精度で決定され得る。
【0005】
しかしながら、車両が自律モードで使用されるとき、運転は部分的にまたは完全に車両に委ねられる。車両のロケーションにおける精度の差は、次いで、車両の意思決定に影響を及ぼし得る。さらに、車両のロケーションに関する情報は、他のシステムによって、特にマッピングシステムによって使用される。車両のロケーションにおける不正確さは、次いでその場合、多分これらのシステムに反映され得る。これは、潜在的に、道路安全と自律運転の信頼性とに深刻な影響を及ぼし得る。
【0006】
自律モードは、車両の車線に対する、および車両がそこを通って移動している道路環境に対する車両の正確なロケーションを必要とする。自律モードにおいて、車両を位置決めするために必要とされる精度は、たとえば縦方向において約0.5mと約1mとの間であり、たとえば横方向において約10cmと約15cmとの間である。「縦方向」とは、車両がそこにおいて進んでいる車線の主方向を意味する。「横方向」とは、車線の主方向に直角な方向を意味する。
【0007】
車両の位置を特定するための1つの方法は、文書「A roadside unit-based localization scheme for vehicular ad hoc networks」(Chia-Ho Ou、Department of Computer Science & Information Engineering, National Pingtung Institute of Commerce, Pingtung, Taiwan)から知られている。
【0008】
この方法の目的は、路側ユニット(RSU:roadside unit)によって送信された信号の特性、主に信号の到着の時間、および信号の到着の時間の差を活用することによって、路側ユニットに基づいて車両の位置を特定することである。この文書では、車両の位置を推定するために、車両の走行距離測定(odometriques)データを考慮に入れながら、車道の両側に位置する2つのRSUから来る情報が使用される。これにより、車両の2つの可能な位置を推定し、次いでアルゴリズムを適用することによって車両の位置を決定することが可能になる。
【0009】
しかしながら、このソリューションは欠点を有する。特に、そのような方法は、車道の両側に位置するRSUのペアの使用を必要とする。しかしながら、現在のインフラストラクチャには、まれにしか、車道の両側に位置するRSUのペアが装備されていない。現在のインフラストラクチャには、一般に、車道のただ一方の側に配置されたRSUが装備される。そのような方法の実装は、したがって、既存の道路インフラストラクチャまたは現在設計されている道路インフラストラクチャに対する多くの変更を必要とするであろう。さらに、そのような方法は多数のRSUの使用を必要とする。これにより、そのような方法の実装のコストが高くなる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上記の欠点を克服し、従来技術から知られている、車両の位置を特定するための方法を改善する、車両の位置を特定するための方法を提供することである。特に、本発明は、コストを制限しながら、改善された精度および信頼性で車両の位置を特定することを可能にする方法を提供することを目的とする。
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、車両の位置を特定するための方法に関し、本方法は、第1の情報源として使用される路側ユニットに対する車両の相対位置を決定することに基づいて、車両の位置の第1の推定値を決定するステップを含み、車両の位置の前記第1の推定値は、少なくとも第2の情報源によって与えられる車両の位置の少なくとも第2の推定値を確証するために使用される。
【0012】
車両の位置の第1の推定値を決定するステップは、前記路側ユニットによって送信される少なくとも1つのメッセージの車両による受信を含み得る。
【0013】
前記路側ユニットによって送信される少なくとも1つのメッセージの車両による受信は、生データを取得すること、および/または生データをフォーマットすることを含み得る。
【0014】
前記路側ユニットによって送信される少なくとも1つのメッセージの車両による受信は、路側ユニットによって送信されたメッセージのみをとり入れるようなフィルタ処理をさらに含み得る。
【0015】
車両の位置の第1の推定値を決定するステップは、メッセージを搬送する信号の電力を測定すること、および/または前記信号が最大電力に達したことの検出に基づいて、前記路側ユニットに対する車両の相対位置を決定するステップをさらに含み得る。
【0016】
前記路側ユニットに対する車両の相対位置を決定するステップは、信号が最大電力に達したとき、車両が、道路上の、路側ユニットが設置されることが知られている側の、この道路上の前記ユニットに最も近いポイントに位置することを考慮することを含み得る。
【0017】
有利には、メッセージを搬送する信号の電力は、路側ユニットに対する車両からの最小距離dminを決定するように測定される。
【0018】
信号のRSSIは、車両のための位置データとして使用され得る。
【0019】
車両の位置の第1の推定値を決定するステップは、車両が基準位置に到達するために必要とされる時間trefを決定するステップを含み得る。
【0020】
車両が基準位置に到達するために必要とされる時間trefを決定するステップは、
- 車両が路側ユニットから可能な最も短い距離離れて位置する位置に対応する基準位置を決定するサブステップと、
- 現在位置、リアルタイムでの速度、および車両の方向を決定するサブステップと、
- 現在位置、リアルタイムでの速度、および車両の方向を考慮することによって、前記基準位置に基づいて、車両が前記基準位置に到達するために必要とされる時間trefを計算するサブステップと
を含み得る。
【0021】
現在位置、リアルタイムでの速度、および車両の方向を決定するサブステップは、
- 前記路側ユニットによって送信されたメッセージの受信に基づいて、第1の現在位置および/またはリアルタイムでの第1の速度および/または車両の第1の方向を含む第1のデータを取得することと、
- 第2の現在位置および/またはリアルタイムでの第2の速度および/または車両の第2の方向を含む第2のデータを取得することを可能にする、少なくとも第2の情報源によって送信されたメッセージを受信することと、
- 前記路側ユニットから取得された第1のデータと、少なくとも第2の情報源から取得された第2のデータとを比較することであって、車両の現在位置および/または車両のリアルタイムでの速度および/または車両の方向を決定することを可能にするか、あるいは第1および第2のデータに従って車両の現在位置および/または車両のリアルタイムでの速度および/または車両の方向を構築することを可能にする、第1のデータと第2のデータとを比較することと
を含み得る。
【0022】
車両の位置の第1の推定値を決定するステップは、特にマップに対するフィルタ処理のステップを含み得る。
【0023】
第1の情報源によって与えられた情報は802.11p Wi-Fi規格に準拠し得る。
【0024】
本発明はまた、車両において使用されるように構成された通信ボックスに関し、通信ボックスは、上記で説明したタイプの方法を実装するハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素、特に上記で説明したタイプの方法を実装するように設計されたハードウェアおよび/もしくはソフトウェア要素を備え、ならびに/または通信ボックスは、上記で説明したタイプの方法を実装するための手段を備える。
【0025】
本発明はさらに、上記で説明したタイプの方法を実装するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムが記憶されている、コンピュータによって可読なデータ記憶媒体、または命令がコンピュータによって実行されたとき、上記で説明したタイプの方法を実装するようにこのコンピュータを導く命令を含むコンピュータ可読データ記憶媒体に関する。
【0026】
本発明はまた、上記で説明したタイプのボックスおよび/または上記で説明したタイプの媒体を備える車両に関する。
【0027】
本発明はさらに、プログラムがコンピュータ上で動作しているときに、上記で説明したタイプの方法のステップを実装するためのコンピュータ可読媒体に記憶されたプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品、あるいは、通信ネットワークからダウンロード可能であり、ならびに/またはコンピュータによって可読なおよび/もしくはコンピュータによって実行可能なデータ媒体上に記憶されたコンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されたとき、上記で説明したタイプの方法を実装するようにこのコンピュータを導く命令を含む、コンピュータプログラム製品に関する。
【0028】
最後に、本発明は、上記で説明したタイプのコンピュータプログラム製品を担持する、データ媒体からの信号に関する。
【0029】
添付の図面は、例として、本発明による車両の位置を特定するための方法の一実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】路側ユニット(RSU)が装備された道路インフラストラクチャを概略的に示す図である。
【
図2】車両の位置を特定するための方法の一実施形態のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
車両、特に自律車両の位置を正確に特定するには、複数の情報源の組み合わされた使用が必要になる。本発明は、既存の道路インフラストラクチャまたは現在構築されている道路インフラストラクチャを活用することを目的とする。路側ユニット(RSU)と呼ばれるデバイスまたはユニットがある。これらのRSUは、通常、V2I(vehicle-to-infrastructure:車両対インフラストラクチャ)通信と呼ばれる、車両とインフラストラクチャとの間の通信のためにのみ使用される。これらのRSUにより、イベント情報を車両に中継すること、または車両とインフラストラクチャとの間で中継することが可能になる。本発明は、車両の位置の決定を改善するために、特に車両のロケーションの精度および/または信頼性を改善するために、追加の情報源として路側ユニットを使用して車両の位置を特定するための方法を提案する。既存の道路インフラストラクチャまたは現在構築されている道路インフラストラクチャの使用により、車両の位置を特定するためのそのような方法の実装のコストを制限することが可能になる。
【0032】
以下で、
図1を参照しながら、道路インフラストラクチャ1または道路交通ネットワークの一例について説明する。
【0033】
道路インフラストラクチャ1は、道路の少なくとも1つのセクション、または少なくとも1つの車両5がその上を移動し得る車道3を備える。車両5は、たとえばOBU(on-board unit:車載ユニット)タイプの通信ボックス7を備える。
【0034】
道路3のセクションは、たとえば、2つの車線31、33を備える道路のセクションである。道路3のセクションはまた、3つ以上の車線を備え得る。
【0035】
道路インフラストラクチャ1は、少なくとも1つの接続されたボックスまたは路側ユニット(RSU)9を備える。RSU9は、車道3の側、たとえば側3a上に位置する。RSU9は、知られている固定の位置を有する。
【0036】
複数のRSU9は、好ましくは一定の様式で車道3の側、好ましくは車道3の同じ側に構成され得る。
【0037】
有利には、道路3のセクションには、500m~1kmごとに構成された複数のRSU9が装備され得る。これは、RSUの大規模な展開を伴う道路インフラストラクチャ1のケースに対応する。
【0038】
RSU9の考慮される範囲、言い換えれば、RSUによって送信されたメッセージがブロードキャストされ得る距離は、理論上は、たとえば1000メートルのオーダーである。
【0039】
随意に、道路インフラストラクチャ1はリモートプラットフォーム11をさらに備え得る。リモートプラットフォーム11は、たとえば、コンストラクタおよび/または交通情報プロバイダおよび/または道路インフラストラクチャマネージャおよび/またはコンテンツプロバイダに関係するサーバを備える。このリモートプラットフォーム11により、車両から受信されたデータおよび/または車両に送られるデータを処理することが可能になる。
【0040】
データを含むメッセージ20は、各車両5の通信ボックス7と各RSU9との間で交換され得る。
【0041】
メッセージ22は各RSU9とリモートプラットフォーム11との間で交換され得る。
【0042】
以下で説明する方法で処理されたまたは処理されるべき信号、特にRSU9と車両5の通信ボックス7との間で交換されるメッセージ20は、たとえば、802.11p Wi-Fi規格に準拠する。
【0043】
以下で、
図2を参照しながら、車両の位置を特定するための方法の一実施形態について説明する。
【0044】
車両の位置を特定するための方法は、第1の情報源として使用される路側ユニット9に対する車両5の相対位置を決定することに基づいて、車両の位置の第1の推定値を決定するステップを含む。
【0045】
ステップE1(FORM)において、路側ユニット9によって、たとえば周期的に、送信されたメッセージが受信される。路側ユニット9によって送信されたメッセージ20は車両5の通信ボックス7によって受信される。路側ユニット9は第1の情報源に対応する。
【0046】
メッセージ20の受信により、生データが取得されることが可能になる。生データは、次いで、それらが方法の後続のステップにおいて使用され得るようにフォーマットされる。
【0047】
このステップE1では、RSUによって送信されたメッセージからのデータのみが考慮に入れられる。このために、RSUから来るものではない、または単一のRSUから来るものではない情報を考慮に入れることを回避するために、送信局のタイプに応じたフィルタ処理が実行され得る。フィルタ処理はまた、モバイルRSUを考慮に入れることを回避するために、速度に応じて実行され得る。
【0048】
第1のステップE10において、車両5が基準位置に到達するために必要とされる時間trefが決定される。
【0049】
第1のステップE10の第1のサブステップE101(REF)において、前記基準位置が決定される。基準位置は、たとえば、その位置がたとえば経度および緯度に関して知られている路側ユニット9の近傍に位置する基準点の位置に対応する。基準位置は、選定された路側ユニット9の知られている固定の位置に基づいて計算される。前記基準位置は、当該の車両5が路側ユニット9から可能な最も短い距離離れて位置する位置に対応する。
【0050】
第1のステップE10の第2のサブステップE102(COMP)において、車両の現在位置および/または車両のリアルタイムでの速度および/または車両の移動方向が決定される。
【0051】
ステップE1において第1の情報源もしくは路側ユニット9から取得された情報またはデータが、このために使用され得る。前記路側ユニット9によって送信されたメッセージの通信ボックス7による受信に基づいて、車両の第1の現在位置および/または車両のリアルタイムでの第1の速度および/または車両の第1の移動方向を与える第1のデータを取得することが可能である。
【0052】
また、ステップE2において、少なくとも第2の情報源(UBMOD)から取得された情報またはデータを使用することが可能である。前記少なくとも第2の情報源によって送信されたメッセージの受信に基づいて、車両の第2の現在位置および/または車両のリアルタイムでの第2の速度および/または車両の第2の移動方向を含む第2のデータを取得することが可能である。この第2の情報源は、たとえば、GNSSタイプの位置特定システムであり得る。
【0053】
通信ボックス7によって第1の情報源またはRSU9から取得された第1のデータは、少なくとも第2の情報源から取得された第2のデータと比較される。これらの第1および第2のデータは処理される。第1および第2のデータは第1および第2の情報源によってリアルタイムで送信される。これらの第1および第2のデータは、たとえば、特にROS(Robot Operating System:ロボット動作システム)タイプのソフトウェアを使用することによって、データ構造の形態で取り出される。車両の第1および第2の現在位置は、特に、経度および緯度に関して(度で)表される座標として、それぞれ第1および第2の情報源によって与えられる。第1の位置と第2の位置との間の差を簡単な様式で観測することによって車両の第1の現在位置と第2の現在位置とを比較することを可能にするために、経度および緯度に関して表された座標は、特に、UTM(Universal Transverse Mercator:ユニバーサル横メルカトル)座標系においてデカルト座標(メートル単位)に変換される。第1および第2のデータを処理する最終ステップは、それの旅行履歴が最も一貫しているように見える情報源を選択することを含み得る。車両の現在位置、車両のリアルタイムでの速度および車両の移動方向が取得される。
【0054】
第1のステップE10の第3のサブステップE103(CALC)において、車両5が前記基準位置に到達するために必要とされる時間trefが決定される。
【0055】
このために、第1のサブステップE101においてあらかじめ決定された前記基準位置、ならびにサブステップE102において取得された現在位置、リアルタイムでの速度および車両の方向が使用される。車両5が前記基準位置に到達するために必要とされる時間trefが次いで計算される。
【0056】
車両5が前記基準位置に到達するために必要とされる時間trefは、ステップE40において、路側ユニットの位置に対する車両の位置を推定するためのアルゴリズムのための第1の入力データに対応する。
【0057】
第2のステップE20(PROC)において、車両5と路側ユニット9との間の最小距離dminが決定される。
【0058】
このために、上記で説明したステップE1において、前記路側ユニットによって送信されたメッセージの車両5の通信ユニット7による受信が使用される。路側ユニット9に対応する第1の情報源から取得されたデータの少なくとも1つのタイプが使用され、このタイプのデータは「位置データ」という用語によって参照される。
【0059】
好ましくは、ステップE20において、使用される位置データは、頭字語RSSI(Radio Signal Strength Indicator:無線信号強度インジケータ)によって参照される、受信された無線信号の電力のインジケータである。
【0060】
RSU9と車両5との間の通信は、通常、スマートトランスポートシステムのために使用される802.11p Wi-Fi規格に従って実行され得る。これにより、Wi-Fi信号のRSSIを位置データとして取得することが可能になる。
【0061】
ステップE1において、路側ユニット9によって送信された信号の電力が通信ボックス7によって測定される。
【0062】
複数のメッセージ20は、たとえば毎秒10個のメッセージの頻度で、路側ユニット9によって、たとえば周期的に、時間とともに送信される。ステップE20において、前記車両5と路側ユニット9との間の最小距離dminを計算するために、時間の関数としてのRSSIにおける変動が使用される。
【0063】
RSSIは、車両5が前記路側ユニット9に近づくにつれて増加し、車両5が前記路側ユニット9から遠ざかるにつれて減少する。RSSIの値は、前記車両5が路側ユニット9から最小距離dminにあるときに最大である。
【0064】
ステップE20において、路側ユニット9に対する車両5からの最小距離dminは、したがって、RSSIの変動に基づいて決定され、最小距離dminは、RSSIの値が最大である、前記車両と路側ユニットとの間の距離である。
【0065】
好ましくは、RSSIの最大値に基づいて最小距離dminを計算するために、メッセージを搬送する信号の電力が測定され得る。前記路側ユニットに対する車両の最小位置dminは、前記信号が最大電力に達したことの検出から推論される。
【0066】
有利には、データ記録は、自由空間条件下で、または干渉がほとんどない空間中で実行される。変形態として、たとえば、ビルの谷間および/または大きい建築物の存在による干渉がある空間では、伝搬モデルは、十分に多数の収集に基づいて推定され得る。
【0067】
距離d
minは、FRIIS公式(電気通信式)
に基づいて計算され得る。ここで、Prは信号の受信電力であり、Ptは信号の送信電力であり、GtおよびGrは、それぞれ送信利得および受信利得であり、λは信号の波長であり、Rは送信機と受信機との間の距離である。送信機はRSU9に対応し、受信機は車両5の通信ボックス7に対応する。距離Rは、RSU9と車両5との間の距離に対応する。
【0068】
この式に見られ得るように、信号の受信電力は、送信機と受信機とが互いに近くなるほど高くなる。前記路側ユニット9に対する車両5の最小位置dminは、したがって、前記信号が最大電力に達したことの検出から推論される。
【0069】
車両5と路側ユニット9との間の距離が最小であり、dminに等しい時間において、前記車両5は、それの半径が前記車両と路側ユニットとの間の最小距離dminであり、それの中心が路側ユニット9の位置である、円の中に位置し得る。そのような円を以下で「不確定の円(circle d’incertitude)」と呼ぶ。
【0070】
前記路側ユニットに対する車両の相対位置を推定するステップE20において、信号が最大電力に達したとき、車両は、道路上の、RSUが設置されることが知られている側の、この道路上の前記RSUに最も近いポイントに位置すると考えられる。
【0071】
最小距離dminは、ステップE40において、路側ユニットの位置に対する車両の位置を推定するためのアルゴリズムのための第2の入力データに対応する。
【0072】
第3のステップE30では、フィルタ処理が、特にマップ(MAP)に対して実行される。マップ上のRSU9の位置と道路のトポロジーとを知っていると、車両が道路のどの部分に位置するかを決定し、それにより第2のステップE20において取得された不確定の円の一部をフィルタ処理することが可能になる。
【0073】
第3のステップE30により、それの半径が前記車両と路側ユニットとの間の最小距離dminであり、それの中心が路側ユニット9の位置である、ステップE20において取得された前記円の中の車両のロケーションの推定値を、たとえば、この円に対する道路の相対位置に関するマップによって与えられた情報によって、改良することが可能になる。
【0074】
マップからの情報は、ステップE40において、路側ユニットの位置に対する車両の位置を推定するためのアルゴリズムのための第3の入力データに対応する。
【0075】
変形態として、フィルタ処理ステップE30は、マップを使用せずに実行され得る。この変形態では、不確定の円の各ポイントは、第1のステップE10の第1のサブステップE101(REF)において決定された前記基準位置と比較され、次いで、この基準位置に最も近い1つまたは複数のポイントが選択される。
【0076】
第4のステップE40(ESTIM)では、路側ユニット9の位置に対する車両5の相対位置が決定される。これのために、ステップE10、E20およびE30の結果が、そこから車両の位置を推論するために組み合わされる。車両の位置は、ステップE10において取得された時間trefに基づいて、ステップE20において取得された距離dminに基づいて、およびステップE30の結果に基づいて決定される。
【0077】
ステップE40により、車両の位置の第1の推定値を決定することが可能になる。第1の推定値は、たとえば、緯度に関して基準位置に対する偏差の0.01度のオーダーの、経度に関して基準位置に対する偏差の10-7度のオーダーの精度で決定される。
【0078】
ステップE40において取得された第1の推定値により、前記車両5が実際に前記RSU9を通ったことを確認または反証(infirmer)することが可能になる。
【0079】
ステップE40において取得された第1の推定値により、少なくとも第2の情報源によって与えられた車両の位置の少なくとも第2の推定値を確証または無効化することが可能になる。
【0080】
少なくとも第2の情報源は、車両の位置を特定するためのモジュールのすべてに対応するので、車両の位置の少なくとも第2の推定値を与えることが可能になり得る。
【0081】
ステップE40において取得された車両の位置の第1の推定値により、情報源のいずれかまたは両方によって与えられた推定値、特に少なくとも第2の情報源によって与えられた車両の位置の少なくとも第2の推定値を強化(consolider)すること、言い換えれば確証、検証(verifier)、確認または承認することが可能になる。
【0082】
確証失敗の場合、1つまたは複数の他の情報源によって与えられたデータを補正するステップが実装され得る。
【0083】
図2を参照しながら説明したタイプの方法の1つの利点は、それが、既存の道路インフラストラクチャである路側ユニットを使用し、それにより、実装のコストを減少させることが可能になることにある。
【0084】
図2を参照しながら説明したタイプの方法の別の利点は、それにより、車両の位置を特定するための通常のシステムに対する追加の情報源の使用によって、車両のロケーションの精度を改善することが可能になることにある。
【0085】
図2を参照しながら説明したタイプの方法の別の利点は、車両の位置を特定するための通常のシステムによって与えられた車両の位置の少なくとも第2の推定値を確証することを可能にする、車両の位置の第1の推定値を与えることによって、車両のロケーションの信頼性を改善することが可能になることにある。結果として、それは、自律車両の循環における安全性の向上を実現するために使用され得る。
【0086】
車両の位置を特定するための方法について
図2を参照しながら説明したが、第2のステップE20において、RSSIは、路側ユニットに対応する第1の情報源によって与えられる位置データとして使用される。変形態として、車両とRSUとの間の最小距離d
min、たとえば、信号の到着時間、または信号の到着時間の差を決定するために、他の位置データが使用され得る。
【0087】
車両の位置を特定するための方法について
図2を参照しながら説明したが、第1のステップE10の第2のサブステップE102において、車両の現在位置および/または車両のリアルタイムでの速度および/または車両の移動方向は、第1の情報源に対応する路側ユニットから取得された第1のデータと、少なくとも第2の情報源から取得された第2のデータとを比較することに基づいて決定される。変形態として、第1のステップE10の第2のサブステップE102において、車両の現在位置、車両のリアルタイムでの速度、および車両の移動方向は、ステップE1において、路側ユニットからの通信ボックスによって取得されたデータのみに基づいて決定され得る。別の変形態によれば、第1のステップE10の第2のサブステップE102において、車両の現在位置、車両のリアルタイムでの速度、および車両移動方向は、ステップE2において、少なくとも第2の情報源から取得されたデータのみに基づいて決定され得る。
【0088】
以下で、
図3を参照しながら、通信ボックス7の一実施形態を含む車両5の一例について説明する。
【0089】
通信ボックス7は、
図2を参照しながら上記で説明したような、車両の位置を特定するための方法のステップを実装することを可能にするハードウェアおよび/またはソフトウェア要素を備える。これらの様々な要素はソフトウェアモジュールを備え得る。
【0090】
たとえば、ハードウェアおよび/またはソフトウェア要素は、以下の要素、すなわち、
- 路側ユニット9によって送信されたメッセージを受信するように構成されたアンテナ71、
- 受信機72、
- メッセージを搬送する信号のための電力センサー73、
- コンピュータ74、
- メモリ75
の全部または一部を備え得る。
【0091】
車両5は、有利には、第2の情報源78、特にGPS位置特定システム、およびマップデータベース79を備える。
【0092】
変形態として、第2の情報源78およびマップデータベース79のいずれかまたは両方が通信ボックス7中に含まれ得る。