IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ ヘルスケア コーポレイションの特許一覧

特許7150976抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物
<>
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図1
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図2
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図3
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図4
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図5
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図6
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図7
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図8
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図9
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図10
  • 特許-抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】抗血小板剤と胃酸分泌阻害剤を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20221003BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20221003BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20221003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221003BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/4365
A61P7/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/12
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021510330
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2019010891
(87)【国際公開番号】W WO2020045940
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0101047
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チョ,テギュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンデ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ミョンジン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056697(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0177504(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0043382(US,A1)
【文献】特表2009-520017(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056720(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/009745(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271816(US,A1)
【文献】鏡 卓馬,Comparative study of effects of vonoprazan and esomeprazole on anti-platelet function of clopidogrel or prasugrel in relation to CYP2C19 genotype,学位論文,2018年03月13日,http://hdl.handle.net/10271/3356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 45/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、血栓形成関連疾患を予防または治療するための医薬組成物。
[式1]
【請求項2】
クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の含有量が、10~300 mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の含有量が、10~200 mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、組み合わせ製剤または複合製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物が、経口投与用の製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記経口投与用の製剤が、顆粒製剤、ペレット製剤、錠剤、またはカプセル製剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物が、薬学的に許容される添加物をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、希釈剤、崩壊剤、結合剤、pH調整剤、流動促進剤、およびコーティング剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記希釈剤が、微結晶セルロース、デンプン、デキストリン、ラクトース、スクロース、マンニトール、キシリトール、イソマルト、およびソルビトールからなる群から1つ以上選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記崩壊剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、またはアルファ化デンプンからなる群から1つ以上選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記結合剤およびコーティング剤が、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびゼラチンからなる群から選択される、1つまたは2つ以上の組み合わせである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記pH調整剤が、有機酸である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記有機酸が、クエン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リン酸、およびリンゴ酸からなる群から1つ以上選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記カプセル製剤が、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットで満たされている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記カプセル製剤が、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットで充填されている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記カプセル製剤が、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;または式1の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つを内層に有する多層コーティングされたペレットで充填されている、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記複合製剤が、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩が互いに直接接触することのない、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組み合わせ製剤が、キット型である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物が、抗血小板療法用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
血栓形成関連疾患を予防または治療するための薬剤の調製における、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
[式1]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロピドグレルおよび式1の化合物を含む医薬組成物、より具体的には、クロピドグレルが式1の化合物と組み合わせて使用される方法で、クロピドグレル関連の胃腸障害を予防または軽減すると同時に、クロピドグレルの薬効を維持するのに十分に安定である医薬組成物に関する。
[式1]
【背景技術】
【0002】
クロピドグレルは、脳卒中、血栓症、塞栓症、心筋梗塞などの末梢または冠状動脈疾患の治療に有効な血小板凝集阻害剤であり、その化学名は(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチルである。
【0003】
クロピドグレルは、血栓形成に重要な役割を果たすことが知られているADP受容体へのADPの結合を直接阻害し、次いで後続の糖タンパク質GPIIb/IIa複合体のADPを介した活性化を直接阻害することによってアデノシン二リン酸(以下「ADP」と言う)が誘発する血小板凝集を特異的に阻害する。クロピドグレルはまた、放出されたADPによって血小板活性化の増幅を遮断することにより、ADP以外のアゴニストによって引き起こされる血小板凝集をも阻害する。クロピドグレルは血小板に作用すると、その血小板の寿命が尽きる約7日までその凝集を阻害する効果を示す。
【0004】
クロピドグレルのそのような効果は、クロピドグレルの活性代謝物によってもたらされる作用である。言い換えれば、肝臓でクロピドグレルを代謝する酵素は、クロピドグレルの有効性の重要な要因となる。当初クロピドグレルは、CYP1Aによってのみ代謝されると予想されていたが、最新の研究ではさらにCYP2C19がクロピドグレルの活性代謝物への変換に関与する酵素としても機能することが判明している。
【0005】
一方、クロピドグレルは、潰瘍や胃腸出血などの胃腸障害を引き起こすという点で副作用の問題がある。抗血小板薬治療を長期間必要とする患者は、胃腸障害のためにその治療を中断したり、その治療を受けられなくなったりすることもよくある。そのような患者は、結果として有益な治療効果を期待できないこととなる。
【0006】
胃腸障害などの副作用を克服するために、稀なケースであるが、クロピドグレルとプロトンポンプ阻害剤(以下「PPI」と言う)を組み合わせて適応外処方されることがある。しかし、一連の研究結果では、CYP2C19の活性を阻害するPPIに分類される薬剤(例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾールなど)とクロピドグレルを組み合わせて投与すると、クロピドグレルの活性代謝物の薬剤濃度が低くなり、その薬効が半減することが報告されている。この理由は、クロピドグレルが、CYP2C19を介して活性代謝物に変換され薬効を発揮するメカニズムを持つことに特徴があるからである。
【0007】
したがって、米国FDAは2011年に、クロピドグレルをオメプラゾールと併用しないことを推奨した。この措置は、いくつかのPPIとの併用摂取がクロピドグレルの作用を妨げ、急性心筋梗塞などの心臓イベントのリスクを高めるという臨床結果を反映して採られたものである。
【0008】
これらの背景に対して、本発明者らは、クロピドグレルの本来の薬効を確保しながら胃腸障害を克服する方法を見つけるべく努力した結果、驚くべきことに、式1の化合物と組み合わせたクロピドグレルの使用が、阻害されたクロピドグレルの薬効を回復できる、すなわちクロピドグレルに起因する胃腸障害を予防および治療しながら、既存の胃酸分泌阻害剤の問題を解決できることを確認し、これにより本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許公開番号10-2008-0112361「抗血小板剤および酸阻害剤を含む経口剤形」
【文献】韓国特許公開No.10-2015-0105419「抗血小板剤および酸阻害剤を含む経口剤形」
【文献】韓国特許登録番号10-1088247「クロマン置換ベンズイミダゾールおよび酸ポンプ阻害剤としてのその使用」
【文献】米国特許公開番号2015/0079169「胃酸阻害療法によるクロピドグレルの制御された投与」
【非特許文献】
【0010】
【文献】「シトクロムP450 2C19の機能喪失多型は、健康な被験者におけるクロピドグレルの反応性の主要な決定要因である“Cytochrome P450 2C19 loss-of-function polymorphism is a major determinant of clopidogrel responsiveness in healthy subjects.”」、Jean-Sebasteinら、The American Society of Hematology,Blood,1 October 2006. Vol 108,Number 7.
【文献】抗血小板薬を含む薬物相互作用に対するプロトンポンプ阻害剤の効果(Effect of proton pump inhibitors on drug interactions including antiplatelet agents):safe perspective by the Korean Journal of Internal Medicine: Vol. 81, First Issue, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物を提供する。
【0012】
[式1]
【0013】
本発明は、血栓形成関連疾患を予防または治療するための方法であって、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物を必要とする対象へ投与する工程を含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、血栓形成関連疾患を予防または治療するための、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0015】
本発明は、血栓形成関連疾患を予防または治療するための薬剤の調製において、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これについて次の通り詳細に説明する。なお、本発明に開示された各々の説明および実施態様は各々の他の説明および実施態様にも適用できる。すなわち、本発明に開示された様々な要素の全ての組み合わせが本発明の範囲に属する。また、下記に記述した具体的な記載によって本発明の範囲が制限されるものではない。
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の一局面によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物を提供する。
【0018】
[式1]
【0019】
該医薬組成物は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩をそれぞれ別個の製剤として含むか、またはそれらのすべてを複合製剤の形態で含むものものであってもよい。すなわち、該医薬組成物は、別個の製剤、または複合製剤を組み合わせた物であってもよい。クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩、および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を組み合わせて使用する場合、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の薬効を維持し、それから生じる胃腸障害を予防または治療することができる。したがって、該医薬組成物は、従来のクロピドグレルによって予防または治療されることが知られているすべての疾患に対して優れた効果を有する。該医薬組成物は、例えば、抗血小板療法のための組成物として高い価値を持って使用できる。また、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む該医薬組成物は、抗血小板療法に関連する胃腸障害、例えば、クロピドグレルの投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療する目的で高い価値を持って使用できる。
【0020】
本発明の一の実施態様によれば、本発明の医薬組成物は、経口投与のための製剤であってもよい。経口投与用の製剤は、(ソフトカプセル製剤とハードカプセル製剤を含む)カプセル製剤;(単層錠剤、多層錠剤、および胃崩壊性、発泡性および放出調節剤形を含む)錠剤;顆粒製剤;ペレット製剤;溶液剤;懸濁剤;粉末;ゲル;経口投与用フィルム;または当技術分野で知られている他の剤形に製剤化してもよい。
【0021】
本発明の別の一実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、本発明の医薬組成物において10~300 mgとすることができる。
【0022】
本発明の別の一実施態様によれば、式1の化合物の含有量は、本発明の医薬組成物において10~200 mgとすることができる。
【0023】
本発明の医薬組成物は、以下のようにより詳細に記載できる。
【0024】
(1)有効成分
本明細書で使用される場合、「クロピドグレル」という用語は、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチルであり、具体的には以下の式Xで表される。クロピドグレルは、脳卒中、血栓症、塞栓症、心筋梗塞などの末梢または冠状動脈疾患の治療における抗血小板薬として効果的に使用される。
【0025】
[式X]
【0026】
クロピドグレルは、血栓形成に重要な役割を果たすことが知られているADP受容体へのアデノシン二リン酸(以下「ADP」と言う)の結合を直接阻害する。クロピドグレルはまた、後続の糖タンパク質GPIIb/IIa複合体のADPを介した活性化を直接阻害することにより、ADPが誘導する血小板凝集を特異的に阻害する。さらに、クロピドグレルは、放出されたADPによって血小板活性化の増幅を遮断することにより、ADP以外のアゴニストによって引き起こされる血小板凝集を阻害する。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、クロピドグレルの薬学的に許容される塩は、クロピドグレル硫酸水素塩、樹脂酸塩、カムシル酸塩、ベシル酸塩、ナパジシル酸一水和物、塩酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の医薬組成物において、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、10~300 mg、好ましくは75~300 mgとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「式1の化合物」という用語は、((S)-4-[(5,7-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-4-イル)オキシ]-N,N,2-トリメチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミド)であり、具体的には以下の式1で表され、テゴプラザンと呼ばれる。
【0030】
[式1]
【0031】
上記の式1の化合物の場合、該化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびにそれに等しい効力を示す光学異性体およびラセミ体はすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
上記の式1の化合物は、胃腸疾患、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID誘発性潰瘍、胃炎、ヘリコバクターピロリ菌感染症、消化不良、機能性消化不良、ゾリンガーエリソン症候群、非びらん性逆流症(NERD)、内臓参照痛、紫斑病、悪心、食道炎、食欲不振、唾液分泌、気道病変または喘息などの酸ポンプ拮抗作用によって媒介される疾患を治療する際の胃酸分泌阻害剤として効果的に使用されるが、ここで適用される疾患は、上記の疾患に限定されるものではない。本発明による式1の化合物は、カリウム競合性酸遮断薬(P-CAB)である。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、上記式1の化合物の薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩(二塩基性を含む)を含むことができる。酸付加塩は、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素、ピログルタミン酸、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、またはキシナホ酸塩であってもよいが、これらに限定されるものではない。塩基付加塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩;例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;または、例えば、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩などの有機塩基性塩であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
(2)剤形と投与
本発明の医薬組成物は、その組成物が、粉末、顆粒製剤、ペレット製剤、錠剤、カプセル製剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、エアロゾルなどの経口投与用製剤;無菌注射液の注射用製剤;など使用目的に応じて従来の方法により様々な形態で調製でき、使用できる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、本発明の医薬組成物は、経口投与のための製剤である。また、本発明の好ましい実施態様によれば、経口投与用の製剤は、顆粒製剤、ペレット製剤、錠剤、またはカプセル製剤からなる群から選択される。
【0036】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、カプセル製剤は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットで充填されたものであってもよい。また、本発明の1つの好ましい実施態様によれば、カプセル製剤は、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットで充填されたものであってもよい。本発明の別の1つの好ましい実施態様によれば、カプセル製剤は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;または式1の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つを内層に有する多層コーティングされたペレットで充填されたものであってもよい。
【0037】
本発明の1つの具体的な実施態様によれば、カプセル製剤は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含むペレット;および、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む顆粒が充填されている。
【0038】
本発明の別の具体的な実施態様によれば、カプセル製剤は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含むペレットが充填されている。当該ペレットは、1つの粒子中にクロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩のすべてを含んでいてもよいし、1つの粒子中にクロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;または式1の化合物またはその薬学的に許容される塩のうちの1つのみをそれぞれ含んでいてもよい。
【0039】
本発明の1つの具体的な実施態様によれば、錠剤は、単層錠剤または多層錠剤とすることができる。多層錠剤は、例えば、二層錠剤または三層錠剤であってよく、有効成分を含まない層がその中に存在していてもよい。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩、および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩は、互いに直接物理的に接触することのない形態に調製することができる。このような物理的接触の遮断は、例えば、物理化学的反応や薬物間の相互作用を制御することで関連物質の産生を最小限に抑えるようになり安定性の担保をより有利にできる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせ物は、キット型となっていてもよい。当該キットは、それぞれ有効成分を含む別個の製剤を含み、任意に他の要素、例えば、追加の試薬、取扱説明書などを含むことができる。
【0042】
本発明の医薬組成物は、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩に加えて、有効成分として他の抗血小板薬をさらに含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は、従来の治療薬と逐次または同時に投与することができ、単一または複数の方法で投与することもできる。
【0043】
本発明において、「投与」とは、任意の適切な方法で対象に有効成分を提供することを意味し、本発明の医薬組成物は、その組成物が標的組織に到達できる限り、すべての一般的な経路を介して投与することもできる。また、本発明の組成物は、標的器官に活性成分を送達することができる任意のデバイスと共に投与することもできる。
【0044】
本発明において、「対象」は、ヒト、モルモット、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラットまたはウサギなどの哺乳動物を含むが、これらに限定されるものではなく、好ましくはヒトである。
【0045】
(3)製薬上許容される添加物
本発明の医薬組成物は、本発明による有効成分の効果を損なうことのない範囲内で薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、各剤形で従来から使用されている任意の薬学的に許容されるもの、例えば、充填剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、流動促進剤、(防湿性または腸溶性のための)コーティング剤、pH調整剤、希釈剤、潤滑剤、防腐剤、緩衝剤、甘味剤、保湿剤、懸濁剤、着色剤、香味剤、賦形剤などが使用できる。
【0046】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットは、薬学的に許容される、充填剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、流動促進剤、コーティング剤、およびpH調整剤を含む。
【0047】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットは、薬学的に許容される結合剤、崩壊剤および流動促進剤を含む。
【0048】
顆粒またはペレットは、それぞれ、顆粒製剤またはペレット製剤の剤形で投与することができ、顆粒またはペレットをカプセルに充填するか、または顆粒またはペレットを錠剤に圧縮形成した形で投与することもできる。
【0049】
本発明では、充填剤として、以下のもの:微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ラクトース、白糖、グルコース、フルクトース、デキストリン、マンニトール、アルギン酸ナトリウム塩、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、沈殿炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、カオリン、尿素、コロイド状シリカゲル、カゼイン、プリモジェル、またはそれらの混合物などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の好ましい実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、充填剤は、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ラクトース、デキストリン、マンニトール、白糖、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン、沈降炭酸カルシウム、およびリン酸水素カルシウム、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0051】
本発明では、崩壊剤として、以下のもの:グアーガム、キサンタンガム、デンプングリコレートナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ゼラチン化デンプン、デキストラン、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム、重炭酸ナトリウム、クエン酸、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、それらの混合物などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、またはアルファ化デンプンからなる群から選択できる。
【0053】
本発明の好ましい実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、崩壊剤は、グアーガム、キサンタンガム、デンプングリコレートナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、糊化デンプン、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよび無水ケイ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0054】
本発明の好ましい実施態様によれば、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、崩壊剤は、デンプングリコレートナトリウム、トウモロコシデンプン、ベントナイト、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、マンニトール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、クロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(R))、架橋ポリビニルピロリドン、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0055】
本発明において、結合剤として、以下のもの:アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボマー、コポビドン(copovidone)、デンプン、アルファ化デンプン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンコポリマー、ポリビニル誘導体、微結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ゼラチン、アラビアゴム、カゼインナトリウム、デキストリン、マンニトール、ラクトース、キサンタンガム、コロイド状二酸化ケイ素、それらの混合物などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、結合剤は、アルギン酸、カルボマー、コポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、ポリビニル誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ゼラチン、アラビアゴムおよびカゼインナトリウム、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0057】
本発明の好ましい実施態様によれば、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、結合剤は、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム、デキストリン、デンプン、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0058】
本発明において、流動促進剤として、以下のもの:タルク、ステアリン酸およびその塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸亜鉛)、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、パラフィン、それらの混合物などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の好ましい実施態様によれば、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、流動促進剤は、タルク、ステアリン酸およびその塩、ステアリルフマル酸ナトリウム、二酸化ケイ素、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0060】
本発明の好ましい実施態様によれば、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、顆粒またはペレットにおいて、流動促進剤として、以下のもの:ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸亜鉛、パラフィンなどを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明において、可塑剤は、グリコール、エステル、アセチルシリコーンオイル、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0062】
本発明において、コーティング剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、それらの塩およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0063】
本発明において、pH調整剤は有機酸を含み、該有機酸は、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0064】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、pH調整剤は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リン酸、およびリンゴ酸からなる群から1つ以上選択できる。
【0065】
本発明において、希釈剤は、デンプン、乳酸、白糖、デキストリン、デキストロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト(isomalt)、スクロース、リン酸水素カルシウム、コロイド状シリコン二酸化物、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0066】
本発明の好ましい実施態様によれば、希釈剤は、微結晶セルロース、デンプン、デキストリン、ラクトース、スクロース、マンニトール、キシリトール、イソマルト、ソルビトール、またはそれらの混合物からなる群から選択できる。
【0067】
本発明の好ましい実施態様によれば、結合剤およびコーティング剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびゼラチンからなる群から選択される、1つまたは2つ以上の組み合わせとすることができる。
【0068】
本発明の範囲は、当該添加剤の使用に限定されず、添加剤を当技術分野の当業者の選択により、従来の用量範囲で含むことができる。
【0069】
(4)治療法
本発明はまた、対象由来の血栓形成関連疾患を予防または治療するための方法であって、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物を必要とする対象へ投与する工程を含む方法を提供する。本発明の医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与される。
【0070】
本発明において、「血栓形成関連疾患」とは、血栓が引き起こす血管の閉塞によって起きうる疾患を意味し、脳卒中、血栓症、塞栓症、心筋梗塞などを指すことができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本発明において、「薬学的有効量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効量のレベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排泄率、治療期間および同時に使用される薬物、ならびに医療分野でよく知られている他の要因に応じて決定することができる。上記のすべての要因を考慮すると、副作用なしに最小量で最大効果が達成できる量で投与を行うことが重要であり、そのような量は当業者が容易に決定することができる。
【0072】
本発明の医薬組成物は、経口投与、または静脈内、腹腔内、皮下、直腸、局所投与などを含む様々な経路を介して投与することができ、ヒト、ラット、マウス、家畜などの哺乳動物に投与することができる。
【0073】
具体的には、本発明の組成物において、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩の1日投与量は、成人では10~300 mg、好ましくは75~300 mgである。また、本発明の組成物において、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の1日投与量は、成人では10~200 mgである。ただし、本発明の範囲は、当該投与量に限定されるものではない。
【0074】
本発明において、「予防」とは、本発明の組成物の投与により、疾患の発生、拡大または再発を阻害または遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物の投与により、疾患の症状が改善するか、または好転するすべての行為を意味する。
【0075】
(5)治療上の使用
本発明は、血栓形成関連疾患を予防または治療するための、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。血栓形成関連疾患を予防または治療するために、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩は、許容されるアジュバント、希釈剤、担体などと組み合わせることができ、また他の活性剤と一緒に複合製剤に調製されることができ、したがって、有効成分の相乗作用を有する。
【0076】
(6)医薬品の製剤のための使用
本発明は、血栓形成関連疾患を予防または治療するための医薬の調製において、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。血栓形成関連疾患を予防または治療するための医薬の調製において、クロピドグレルまたはその薬学的に許容される塩;および式1の化合物またはその薬学的に許容される塩は、許容されるアジュバント、希釈剤、担体などと組み合わせることができ、また他の活性物質と一緒に複合製剤を調製することができ、したがって、活性成分の相乗作用を有する。
【0077】
本発明の組成、治療方法および使用において述べられた事項は、互いに矛盾しない限り、同じように適用される。
【発明の効果】
【0078】
本発明は、式1の化合物、すなわち胃酸分泌阻害剤をクロピドグレルと組み合わせて使用することにより、クロピドグレルの薬効を維持しながら、クロピドグレルに起因する胃腸障害を予防および治療する効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1図1は、クロピドグレルとエソメプラゾールの併用投与時の血中クロピドグレル濃度を示すグラフである。
図2図2は、クロピドグレルと式1の化合物との併用投与時の血中クロピドグレル濃度を示すグラフである。
図3図3は、クロピドグレル関連物質Aとの配合適合性を試験した結果である。
図4図4は、クロピドグレル関連物質Cとの配合適合性を試験した結果である。
図5図5は、クロピドグレルおよび式1の化合物の含有量に関して配合適合性を試験した結果である。
図6図6は、クロピドグレルの血中濃度を示すグラフである。
図7図7は、式1の化合物の血中濃度を示すグラフである。
図8図8は、pH4.0でのクロピドグレルの溶出を示すグラフである。
図9図9は、水中でのクロピドグレルの溶出を示すグラフである。
図10図10は、pH4.0での式1の化合物の溶出を示すグラフである。
図11図11は、水中での式1の化合物の溶出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明を例示的な実施態様を通じてより詳細に説明する。ただし、これらの例示的な実施態様は、本発明を説明する目的でのみ提供されており、したがって、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0081】
実施例1:クロピドグレルのペレットおよび式1の化合物の顆粒をすべて一緒に含むカプセル
A.クロピドグレルペレットの調製
クロピドグレルのペレットは、次の表1に示す成分と含有量に従って調製した。
【0082】
酒石酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ジメチコン、およびタルクがエタノールに溶解するように混合物を調製した。その後、混合物を流動床造粒機(GPCG-1、Glatt GmbH、ドイツ)を用いて白糖球(white sugar spheres)に噴射し、ペレットを調製した。クロピドグレル硫酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸トリエチル、およびタルクをイソプロピルアルコールに溶解した混合物を同じ装置により上記で調製したペレットに噴射し、クロピドグレルのペレットを調製した。
【0083】
コーティング条件は以下のとおり:60±5℃の流入空気の温度、45±5℃の排出空気の温度、40±20%の気流の量、1.5±0.5バールの噴射圧力、および10±5 gの噴射速度である。
【0084】
【表1】
【0085】
B.式1の化合物の顆粒の調製
式1の化合物の顆粒は、以下の表2に示す成分と含有量に従って調製した。
【0086】
式1の化合物、マンニトール、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムを一緒に混合した後、ヒドロキシプロピルセルロースおよび精製水を含む結合剤溶液を得られた混合物に添加し、混練および乾燥工程を実施した。乾燥の最後に、整粒を行い、その後コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを一緒に混合し、式1の化合物の顆粒を完成した。
【0087】
【表2】
【0088】
上記で調製した233 mgのクロピドグレルのペレットおよび200 mgの式1の化合物の顆粒を硬質カプセルに入れ、本発明の医薬組成物のカプセル製剤を調製した。
【0089】
実施例2-1:クロピドグレルと式1の化合物を一緒に含む複合ペレットの調製
クロピドグレル硫酸水素塩と式1の化合物を含む複合ペレットは、次の表3に示す成分と含有量に従って調製した。
【0090】
酒石酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ジメチコン、およびタルクをエタノールに溶解するように混合物を調製した後、得られた混合物を流動床造粒機(GPCG-1、Glatt GmbH、ドイツ)を用いて白糖球に噴射し、ペレットを調製した。式1の化合物、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸トリエチル、およびタルクをイソプロピルアルコールおよびエタノールに溶解した混合物を同じ装置により上記で調製したペレットに噴射し、式1の化合物のペレットを調製した。クロピドグレル硫酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸トリエチル、およびタルクをイソプロピルアルコールに溶解し、コーティング溶液を調製した。上記で調製した式1の化合物のペレットを流動床造粒機を使用してコーティング溶液でコーティングし、クロピドグレルと式1の化合物を一緒に含む複合ペレットを調製した。
【0091】
コーティングは、実施例1に示したものと同じ条件で実施した。
【0092】
【表3】
【0093】
実施例2-2:クロピドグレルと式1の化合物を一緒に含む複合ペレットの調製
クロピドグレル硫酸水素塩と式1の化合物を含む複合ペレットは、次の表4に示す成分と含有量に従って調製した。
【0094】
式1の化合物、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸トリエチル、およびタルクを溶媒、すなわちイソプロピルアルコールおよびエタノールに溶解し、コーティング溶液を調製した。流動床造粒機(GPCG-1、Glatt GmbH、ドイツ)を使用して上記で調製したコーティング溶液を白糖球に噴射し、式1の化合物のペレットを調製した。酒石酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ジメチコン、およびタルクをエタノールに溶解した混合物をコーティング実施のために調製した式1の化合物のペレットに噴射した。クロピドグレル硫酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸トリエチル、およびタルクをイソプロピルアルコールに溶解してコーティング溶液を調製した後、上記で調製したペレットをさらにコーティング溶液でコーティングし、クロピドグレルと式1の化合物を一緒に含む複合ペレットを調製した。
【0095】
コーティングは、実施例2-1に示したものと同じ条件で実施した。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例3~実施例5:クロピドグレルの顆粒および式1の化合物を含む、単層および二層錠剤
本発明による剤形を調製するために、クロピドグレルを含む顆粒は以下のように調製した。
【0098】
【表5】
【0099】
クロピドグレル硫酸水素塩、微結晶セルロース、マンニトール、およびクロスカルメロースナトリウムを表5に示す成分および含有量に従って一緒に混合した後、得られた混合物にヒドロキシプロピルメチルセルロースをアセトン/水混合溶液に溶解した結合溶液を加え、顆粒のコーティングおよび乾燥工程を実施した。乾燥の最後に、整粒を行った後、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、およびフマル酸ステアリルナトリウムを一緒に混合し、クロピドグレルの顆粒を完成した。
【0100】
上記で調製したクロピドグレル顆粒および実施例1のBで調製した式1の化合物の顆粒を圧縮し、以下のように錠剤に調製した。
1)実施例3:クロピドグレル顆粒および式1の化合物の顆粒を一緒に混合した後の錠剤圧縮。
2)実施例4~5:クロピドグレル顆粒(第一層)および式1の化合物の顆粒(第二層)を形成することによる二層錠剤への錠剤圧縮。
【0101】
実施例6:クロピドグレル顆粒および式1の化合物の顆粒をすべて一緒に含む多層錠剤
クロピドグレルを含む顆粒の組成特性は表6に示す通りであり、その調整方法は実施例3~実施例5に示すものと同じように実施した。
【0102】
【表6】
【0103】
上記で調製したクロピドグレル顆粒、実施例1のBで調製した式1の化合物の顆粒、および医薬品添加物の中間層を圧縮し、多層錠剤に調製した。医薬品添加物の中間層としては、次のような従来から使用されているすべての添加物:微結晶セルロース、乳糖、マンニトール、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用でき、これらは、2つの薬剤との配合適合性を試験した結果、満足できるものであることが証明された。
【0104】
実験例1:非臨床モデルによる薬物相互作用の評価試験
クロピドグレルの薬効に対するエソメプラゾール(PPI薬)と式1の化合物の効果を決定するために、20 mgのクロピドグレルと、20 mgのエソメプラゾールまたは50 mgの式1の化合物を組み合わせてビーグル犬に1回または繰り返し(7日間)投与し、薬物相互作用の試験を実施した。
【0105】
具体的には、クロピドグレルをビーグル犬10頭に7日間繰り返し投与した後、エソメプラゾールと式1の化合物を組み合わせて、ビーグル犬に定常状態で7日間投与し、5日、8日、および14日目に投与前後の薬物動態分析を行った。
【0106】
その結果を図1図2に示す。図1および図2は、それぞれエソメプラゾールおよび式1の化合物を組み合わせて投与した後に測定された、クロピドグレル活性代謝物の血中濃度を示すグラフである。エソメプラゾールとの併用投与でクロピドグレル活性代謝物のAUCは85%であり、式1の化合物との併用投与でクロピドグレル活性代謝物のAUCは120%であることが示された。したがって、クロピドグレルと式1の化合物との間の薬物相互作用のリスクが低いことが確認された。
【0107】
実験例2:配合適合性試験
クロピドグレルを単独で、および式1の化合物と混合した状態で、添加剤との配合適合性試験を行った。
【0108】
添加剤と主成分の比率を調整した後、加速試験条件(40℃/RH 75%)で4週間、含有量と関連物質の変化を評価し、その結果を図3図5に示す。
【0109】
上記の図3図5に示した結果を考慮した結果、クロピドグレルの安定性を確保できる添加剤を選択したにもかかわらず、クロピドグレルを式1の化合物と直接接触させると、2成分間の共晶現象により薬物の安定性が低下することがわかる。
【0110】
実験例3:ビーグル犬におけるクロピドグレルと式1の化合物の複合製剤の薬物動態学的評価
薬物動態評価は、本発明における異なる複合製剤の形である、実施例1(クロピドグレルのペレットおよび式1の化合物の顆粒を含むカプセル)および実施例5(クロピドグレルの顆粒および式1の化合物の顆粒を含む多層錠剤)について実施した。比較例として、プラビックス錠剤(比較例1)および式1の化合物の50 mg錠剤(比較例2)を使用した。
【0111】
具体的には、単回投与、絶食、3x3、交差法の条件下で12匹のビーグル犬を対象とした試験を実施し、比較例と実施例でクロピドグレル代謝物と式1の化合物の血中濃度を評価した結果を図6および図7に示す。
【0112】
比較例1のAUCに基づいて、実施例1のAUCは96%、実施例5のAUCは101%であることが示された。したがって、クロピドグレルおよび式1の化合物を含む複合医薬組成物の様々な剤形は、クロピドグレルの薬効低下の問題を解決して実装されていることが確認され、これにより本発明の目的が達成されていることがわかる。
【0113】
実験例4:比較溶出試験
韓国薬局方(KP)の一般的な試験方法のうち、溶出試験方法の方法II(パドル法)を用いて比較溶出試験を行った。分析は、溶出液の量が900 mL;パドルの回転速度は50 rpm;温度は37±0.5℃;および検出波長は240、262 nmの条件下、HPLC法で行った。比較溶出試験では、比較群としてプラビックス錠剤(比較例1)および式1の化合物の50 mg錠剤(比較例2)を使用した。
【0114】
溶出開始後、比較評価は、60分間の累積溶出率で行い、pH4.0での溶出率を図8および図10に、水中での溶出速度を図9および図11に示す。
【0115】
実験例5:安定性試験
上記の例の1か月間の安定性評価は、加速条件(40℃)で行い、その結果を表7に示す。調整したすべての例は、必要な安定性の基準を満たしていた。
【0116】
【表7】
【0117】
実験例6:安定性試験
上記の実施例1および実施例6の6か月間の安定性評価は、実際の保管条件下で行い、安定性のすべての基準を満たしていた。
【0118】
【表8】
【0119】
上記の説明から、本発明が関係する当業者は、本発明が、その技術的精神または本質的な特徴を変更することなく、他の特定の形態で実施できることを理解するであろう。これに関して、上記の例示的な実施態様は、すべての面で例示的であり、本発明の範囲を限定するように考えられてはいないことを理解されたい。本発明の範囲は、上記の詳細な説明ではなく、以下に説明する特許請求項の意味および範囲に由来するすべての修正または変更された形式、ならびにそれらと同等のものを含むことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、クロピドグレルが、式1の化合物すなわち胃酸分泌阻害剤と組み合わせて使用され、クロピドグレルの薬効を維持しながら、クロピドグレルに起因する胃腸障害を予防および治療する効果を示すことを特徴とする。したがって、本発明は、関連する医薬品産業において高い価値を持って使用できることが期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11