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特許7150978毛細管電気泳動における単回曝露からの拡張ダイナミックレンジのための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-13
(54)【発明の名称】毛細管電気泳動における単回曝露からの拡張ダイナミックレンジのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20221003BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
G01N27/447 331K
G01N21/64 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021510706
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 US2019049132
(87)【国際公開番号】W WO2020047455
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】62/726,041
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502221282
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】マークス ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ウー デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ウォレス
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-118760(JP,A)
【文献】特表2004-509326(JP,A)
【文献】特表2008-536421(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151843(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150559(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素標識サンプルを分析するための 毛細管電気泳動機器のカメラによって生成された画像内の測定限界外データを回復させるための方法であって、
電子数が最大カメラ信号よりも大きい信号を生成する前記画像のビンを特定することと、
前記特定されたビンに測定限界外目印を設定することと、
各ビンに設定された前記目印に基づいて、かつ、色素マトリックスを使用して、回復色素信号を得るために前記画像を処理することと、
を含
前記画像を処理することが、
測定限界外として目印が付けられたビンに対応する前記色素マトリックスの任意の係数をゼロに設定することと、
修正疑似逆色素マトリックスを計算することと、
前記修正疑似逆色素マトリックスを使用して、前記回復色素信号を計算することと、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記カメラのビニングパターンを変更することをさらに含み、前記変更が1つ以上のカメラビンのサイズを縮小することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体が、色素標識サンプルを分析するための毛細管電気泳動機器のカメラによって生成された画像内の測定限界外データを回復させるための命令を含み、前記命令がコンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
電子数が最大カメラ信号よりも大きい信号を生成する画像のビンを特定することと、
前記特定されたビンに測定限界外目印を設定することと、
各ビンに設定された前記目印に基づいて、かつ、色素マトリックスを使用して、回復色素信号を得るために前記画像を処理することと、
を行わせ、
前記コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに、
測定限界外として目印が付けられたビンに対応する前記色素マトリックスの任意の係数をゼロに設定することと、
修正疑似逆色素マトリックスを計算することと、
前記修正疑似逆色素マトリックスを使用して、前記回復色素信号を計算することと、
を行わせる命令を、前記コンピュータ可読記憶媒体がさらに含む、 非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項4】
前記コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに前記カメラのビニングパターンを変更させる命令を、前記コンピュータ可読記憶媒体がさらに含み、前記変更が1つ以上のカメラビンのサイズを縮小することを含む、請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項5】
色素標識サンプルを分析するための 毛細管電気泳動を実施するための生物学的分析装置であって、
サンプルからの発光を検出して画像を生成するように構成されたカメラと、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されたときに、
電子数が最大カメラ信号よりも大きい信号を生成する前記画像のビンを特定することと、
前記特定されたビンに測定限界外目印を設定することと、
各ビンに設定された前記目印に基づいて、かつ、色素マトリックスを使用して、回復色素信号を得るために前記画像を処理することと、
を行うように前記装置を構成する命令を記憶しているメモリと、
を含
前記メモリに記憶されている前記命令が、
測定限界外として目印が付けられたビンに対応する前記色素マトリックスの任意の係数をゼロに設定することと、
修正疑似逆色素マトリックスを計算することと、
前記修正疑似逆色素マトリックスを使用して、前記回復色素信号を計算することと、
を行うように前記装置をさらに構成する、 生物学的分析装置。
【請求項6】
前記メモリに記憶されている前記命令が、前記カメラのビニングパターンを変更するように前記装置をさらに構成し、前記変更が1つ以上のカメラビンのサイズを縮小することを含む、請求項に記載の生物学的分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、1つ以上の生物学的サンプルを観察、試験、および/または分析するためのシステム、装置、および方法に関し、より詳細には、色素標識生物学的サンプルの毛細管電気泳動分析における測定限界外データを回復させるためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生物学的分析システムを自動化して効率を上げる必要性が高まっている。たとえば、自動化された生物学的サンプル処理機器の進歩により、サンプルのより迅速で効率的な分析が可能になる。また、設置のしやすさ、使いやすさ、必要最小限のラボスペースなど、ユーザのニーズに応える設計を生物学的分析システムに提供する必要性も高まっている。
【0003】
色素標識サンプルを分析する機器は、一般に、サンプル実行の結果を分析する。しかし、得られるデータを信頼できなくする可能性のある実行条件に伴う問題は、通常は特定されないか、またはあまりにも遅く特定されるので、サンプルおよび時間が浪費されて、その結果、研究プロセスが長くなる。このような機器は、色素マトリックスを使用して、入ってくるスペクトルデータを、機器とともに使用可能な特定の色素と相関させる。この色素マトリックスは、システムとともに使用可能な各色素についての正規化された期待値を特定する。既存の機器は、通常、目的のサンプルが機器において処理されるシステムの通常の実行時操作を、補完および/または中断して、エンドユーザが通常実施する特別な較正プロセスを実行することを要求する。例えば、このようなプロセスは、既知の色素をシステムを通して実行し、得られたスペクトルデータを使用してシステムによって使用される色素マトリックスを較正または再較正する、特別な「較正ラン」を要求する場合がある。
【0004】
加えて、毛細管電気泳動では、オペレータがサンプルの信号レベルを制御するのに余分な時間とお金がかかる。検出器、すなわち、カメラを飽和させることなく、良好な信号対雑音比を有する正確な信号を取得するために、信号レベルを制御しなければならない。従来のデータ分析ワークフローでは、カメラが飽和状態になったとき、測定された色素信号が不正確になる。主ピークは歪み、「プルアップ」と呼ばれる疑似ピークが人為的に作成される。オペレータが信号レベルを制御することができる1つの方法は、入力DNAなどの入力生物学的サンプルを定量化することである。オペレータは、入力DNAの濃度を測定し、濃度が高すぎる場合は当該濃度を希釈することができるが、そのどちらにも余分な時間とコストがかかる。
【0005】
ユーザは、測定限界外データを手動で翻訳することができるが、これには余分な時間がかかる。ユーザのデータ分析ワークフローでは、カメラを飽和させたピークは「測定限界外」と呼ばれ、目印が付けられる。ユーザのデータ分析ワークフローでは、ユーザは、目印を付けたすべてのピークを目視で検査する必要がある。
【0006】
したがって、測定限界外ピークの目視検査および入力DNAの定量化という追加ステップを回避する、測定限界外データの自動回復が必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本教示の実施形態では、生物学的分析システムおよび関連する方法が提供される。本方法は、毛細管電気泳動機器のカメラによって生成された画像内の測定限界外データを回復させるために使用される。本方法は、電子数が最大カメラ信号よりも大きい信号を生成する画像のビンを特定するステップと、特定されたビンに測定限界外目印を設定するステップと、各ビンに設定された目印に基づいて、かつ、色素マトリックスを使用して、回復色素信号を得るために画像を処理するステップと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、本方法は、カメラのビニングパターンを変更することをさらに含み、変更には、所与の色素のピークに対応するビンのサイズを縮小することを含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、本方法は、測定限界外として目印が付けられたビンに対応する色素マトリックスの任意の係数をゼロに設定することと、修正疑似逆色素マトリックスを計算することと、修正疑似逆色素マトリックスを使用して、回復色素信号を計算することと、をさらに含む。
【0010】
本発明の追加の態様、特徴、および利点は、特に、同様の部分が同様の参照番号を付している添付の図面と組み合わせて考慮される場合には、以下の説明および特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本教示の実施形態を実施することができる、例示的な機器システムを示すブロック図である。
図2】本教示の実施形態を実施することができる、コンピュータシステムを示すブロック図である。
図3】本教示の一実施形態による、例示的な機器システムにおける16個の毛細管の、CCDカメラが撮影した生画像の例である。
図4】わずかに測定限界外である色素データの例のグラフ表示である。
図5】著しく測定限界外である色素データの例のグラフ表示である。
図6】以前のデータ分析方法で得られた結果と、本教示の一実施形態による方法との間の比較を示している。
図7】スペクトルビンの関数として各色素からの応答信号としてプロットされた色素マトリックスの例を示している。
図8A】完全な色素マトリックスおよび修正色素マトリックスを使用して得られた、再構成された色素信号の比較を示している。
図8B】完全な色素マトリックスおよび修正色素マトリックスを使用して得られた、再構成された色素信号の比較を示している。
図8C】完全な色素マトリックスおよび修正色素マトリックスを使用して得られた、再構成された色素信号の比較を示している。
図8D】完全な色素マトリックスおよび修正色素マトリックスを使用して得られた、再構成された色素信号の比較を示している。
図9】ビン番号の関数としてプロットされたスキャンの飽和ピーク信号の例を示している。
図10】本教示の一実施形態による、生画像内の測定限界外データを回復させるためのルーチンを示している。
図11】本教示の一実施形態による、生画像内の測定限界外データを回復させるためのルーチンのさらなる態様を示している。
図12】本教示の一実施形態による方法で得られた結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本発明の実施形態を提供するものであり、一般に、生物学的サンプルを準備、観察、試験、および/または分析するためのシステム、装置、および方法を対象とする。そのような説明は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に実施形態の説明を提供するものである。
【0013】
例示的なシステムの概要
図1は、本開示の例示的な実施形態による生物学的分析装置100の概略図を示している。生物学的分析装置100は、毛細管電気泳動を実施するように構成され、生物学的分析装置100のユーザ(例えば、オペレータまたは他の人員)によって容易に交換可能に構成されたカートリッジ102を含む。カートリッジ102は、生物学的分析装置の様々な要素を、多機能で統合された、容易に交換可能なユニット内に組み合わせる。例えば、カートリッジ102は、1つ以上の毛細管104(図1には1つのみを示す)、1つ以上の毛細管104のカソード端に結合された1つ以上のカソード106、および流体工学部110を含む。カートリッジ102はまた、生物学的分析装置100の光学検出システム(図示せず)とインターフェース接続するように構成された様々なコンポーネントを含む検出部112を含む。
【0014】
流体工学部110は、分離媒体(例えば、ポリマーゲル)および緩衝液を含む1つ以上の保管装置(例えば、リザーバ、容器)を含む。図1の例示的な実施形態では、流体工学部110は、緩衝液リザーバ114および分離媒体容器118を含む。流体工学部110は、緩衝液リザーバ114および分離媒体容器118を1つ以上の毛細管104のアノード端と流体的に結合するように構成されたマニホールド120をさらに含む。マニホールド120は、例えば、1つ以上の弁および1つ以上の流体移送装置を含むことができる。
【0015】
生物学的分析装置100は、流体工学部110とインターフェース接続するように構成された作動部122を含む。例えば、作動部122は、流体工学部110の1つ以上の弁および/または流体移送装置などの1つ以上の流体制御装置を作動させるように構成されてもよい。
【0016】
生物学的分析装置100は、緩衝液リザーバ114に含まれる緩衝液と電気的に結合されたカソード106とアノード116との間に電位を生成するように構成された電圧部124を含む。使用中、1つ以上の毛細管にポリマー分離媒体が充填され、1つ以上の毛細管104とアノード116との間に緩衝液を介して導電性流体接続が確立される。同じく緩衝液に浸されているカソード106とアノード116との間に電圧差が印加される。当業者にはよく知られているように、電圧差により、帯電した検体は、分離媒体が充填された1つ以上の毛細管104を通って移動し、検体は、分離し、生物学的分析装置100の光学検出器装置を使用して検出部112で検出される。
【0017】
生物学的分析装置100は、1つ以上の毛細管104の温度を調節する温度調節部126をさらに含む。温度調節部126は、カートリッジ102と嵌合するように構成されており、1つ以上の毛細管104の温度を所望の値に維持するために加熱要素128、温度センサ(例えば、サーミスタ)130、およびカートリッジ102を通る温かい空気の流れ132を生成する空気移動装置(図示せず)を含む。
【0018】
ユーザ交換可能なカートリッジ102に関連付けられたコンポーネントは、カートリッジハウジングに収容されてもよく、カートリッジハウジングは、生物学的分析装置100の特徴とインターフェース接続するように構成された1つ以上の特徴を含んでもよい。例えば、カートリッジ102の様々な特徴は、生物学的分析装置100の特徴とインターフェース接続して、カートリッジ102およびそれに関連付けられたコンポーネントの正しい位置決めおよび位置合わせを確保し、生物学的分析装置100が流体工学部110のコンポーネントを作動させることを可能にすることができる。さらなるインターフェース接続特徴により、カートリッジ102が、温度調節部126および電圧部124とインターフェース接続することが可能になる。
【0019】
カートリッジ102と生物学的分析装置100との間のインターフェース、およびカートリッジ102と生物学的分析装置100との間の機能コンポーネントの具体的な分割は、生物学的分析装置の使用および信頼性ある動作を促進するように構成および選択され得る。例えば、生物学的分析装置100およびカートリッジ102の構成は、ユーザエラーによる故障モードを削除しないとしてもそれを軽減するように選択される。
【0020】
コンピュータ実施システム
本明細書に記載の実施形態による方法は、コンピュータシステムで実施することができる。
【0021】
様々な実施形態の動作は、必要に応じて、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを使用して実施されてもよいことを当業者は認識しよう。たとえば、いくつかのプロセスは、ソフトウェア、ファームウェア、または配線論理の制御下でプロセッサまたは他のデジタル回路を使用して実行することができる。(「論理」という用語は、本明細書においては、記載されている機能を実行するための当該技術分野における当業者によって認識されるように、固定ハードウェア、プログラム可能論理、および/またはそれらの適切な組み合せを指す。)ソフトウェアおよびファームウェアは、非一時的なコンピュータ可読媒体に保管することができる。何らかの他のプロセスは、当業者には既知であるように、アナログ回路を使用して実施することができる。加えて、メモリまたは他のストレージ、および通信コンポーネントが、本発明の実施形態に利用されてもよい。
【0022】
図2は、様々な実施形態による、処理機能を実行するのに利用されてもよいコンピュータシステム200を示すブロック図である。実験を実施するための機器は、例示的なコンピューティングシステム200に接続され得る。様々な実施形態によれば、利用され得る機器は、例えば、図1の生物学的分析装置100を含む。コンピューティングシステム200は、プロセッサ204のような、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサ204は、たとえば、マイクロプロセッサ、コントローラ、または他の制御論理のような汎用あるいは専用処理エンジンを使用して実装することができる。プロセッサ204は、バス202または他の通信媒体に接続することができる。
【0023】
図2を参照すると、コンピュータシステム200は、図1の生物学的分析装置100の機能、ならびにユーザインターフェース機能に制御を提供することができる。加えて、図2のコンピュータシステム200は、データ処理、表示、およびレポート準備機能を提供することができる。このような機器制御機能はすべて、生物学的分析装置に対してローカルに専用にすることができる。したがって、コンピュータシステム200は、生物学的分析装置100に対する制御システムとして機能することができる。また、図2のコンピュータシステム200は、制御、分析、および報告機能の一部またはすべての遠隔制御を提供してもよい。
【0024】
また、図2のコンピューティングシステム200は、ラックマウント式コンピュータ、メインフレーム、スーパーコンピュータ、サーバ、クライアント、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ハンドヘルドコンピューティング装置(たとえば、PDA、携帯電話、スマートフォン、パームトップなど)、クラスタグリッド、ネットブック、埋め込みシステム、あるいは所与の用途または環境にとって望ましいか、または適切であり得るような任意の他のタイプの専用または汎用コンピューティング装置のような、いくつかの形態のいずれかにおいて具現化されてもよい。加えて、コンピューティングシステム200は、クライアント/サーバ環境および1つ以上のデータベースサーバを含む従来のネットワークシステム、またはLIS/LIMSインフラストラクチャとの一体化を含み得る。ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含み、無線および/または有線コンポーネントを含むいくつかの従来のネットワークシステムが当該技術分野において既知である。加えて、クライアント/サーバ環境、データベースサーバ、およびネットワークについては当該技術分野において十分な文献がある。本明細書に記載の様々な実施形態によれば、コンピューティングシステム200は、分散ネットワーク内の1つ以上のサーバに接続するように構成され得る。コンピューティングシステム200は、分散ネットワークから情報または更新を受信することができる。コンピューティングシステム200はまた、分散ネットワークに接続された他のクライアントによってアクセスされ得る、分散ネットワーク内に保管される情報を送信することもできる。
【0025】
図2のコンピューティングシステム200はまた、プロセッサ204によって実行される命令を記憶するための、バス202に結合されている、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的メモリとすることができるメモリ206も含む。メモリ206はまた、プロセッサ204によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するのにも使用されてもよい。
【0026】
コンピューティングシステム200は、プロセッサ204のための静的情報および命令を記憶するための、バス202に結合されている、読み出し専用メモリ(ROM)208または他の静的記憶装置をさらに含む。
【0027】
コンピューティングシステム200はまた、磁気ディスク、光ディスクのような記憶装置210をも含んでもよく、または、情報および命令を記憶するためにソリッドステートドライブ(SSD)が提供されてバス202に結合される。記憶装置210は、メディアドライブおよび取り外し可能記憶インターフェースを含んでもよい。メディアドライブは、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、CDまたはDVDドライブ(RまたはRW)、フラッシュドライブ、または他の取り外し可能または固定メディアドライブのような、固定または取り外し可能記憶可能媒体をサポートするためのドライブまたは他のメカニズムを含んでもよい。これらの例が示すように、記憶媒体は、特定のコンピュータソフトウェア、命令、またはデータを内部に記憶しているコンピュータ可読記憶媒体を含んでもよい。
【0028】
代替的な実施形態では、記憶装置210は、コンピュータプログラムまたは他の命令もしくはデータがコンピューティングシステム200にロードされることを可能にするための他の同様の手段を含んでもよい。このような手段には、たとえば、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース、取り外し可能メモリ(例えば、フラッシュメモリまたは他の取り外し可能メモリモジュール)、ならびにメモリスロットなどの取り外し可能記憶ユニットおよびインターフェース、ならびにソフトウェアおよびデータを記憶装置210からコンピューティングシステム200に転送することを可能にする、他の取り外し可能記憶装置およびインターフェースが挙げられてもよい。
【0029】
図2のコンピューティングシステム200はまた、通信インターフェース218を含むことができる。通信インターフェース218は、ソフトウェアおよびデータをコンピューティングシステム200と外部装置との間で転送することを可能にするために使用することができる。通信インターフェース218の例には、モデム、ネットワークインターフェース(イーサネットまたは他のNICカードなど)、通信ポート(たとえば、USBポート、RS-232Cシリアルポートなど)、PCMCIAスロットおよびカード、ブルートゥース(登録商標)などを含むことができる。通信インターフェース218を介して転送されたソフトウェアおよびデータは、電子信号、電磁信号、光信号、または通信インターフェース218が受信することができる他の信号とすることができる信号の形態である。これらの信号は、無線媒体、ワイヤもしくはケーブル、光ファイバ、または他の通信媒体のようなチャネルを介して通信インターフェース218によって送受信されてもよい。チャネルのいくつかの例は、電話回線、携帯電話リンク、RFリンク、ネットワークインターフェース、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワーク、および他の通信チャネルを含む。
【0030】
コンピューティングシステム200は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス202を介して、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)のようなディスプレイ212に結合されてもよい。英数字および他のキーを含む入力装置214は、たとえば、プロセッサ204に情報およびコマンド選択を通信するためにバス202に結合されている。入力装置はまた、タッチスクリーン入力機能を有して構成されているLCDディスプレイのようなディスプレイであってもよい。別のタイプのユーザ入力装置は、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ204に通信し、ディスプレイ212上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御216である。この入力装置は通常に、装置が平面内の位置を指定することを可能にする、二つの軸、すなわち、第1の軸(例えば「x」)および第2の軸(例えば「y」)における2つの自由度を有する。コンピューティングシステム200は、データ処理を可能にし、そのようなデータの一定の信頼度をもたらす。本教示の実施形態の特定の実施と一致して、データ処理および信頼値は、プロセッサ204がメモリ206に含まれている1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するのに応答して、コンピューティングシステム200によって提供される。このような命令は、記憶装置210のような別のコンピュータ可読媒体からメモリ206に読み込まれてもよい。メモリ206に含まれている命令シーケンスの実行が、プロセッサ204に、本明細書に記載のプロセス状態を実施させる。あるいは、本教示の実施形態を実施するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、配線回路が使用されてもよい。したがって、本教示の実施形態の実施は、ハードウェア回路およびソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されるものではない。
【0031】
「コンピュータ可読媒体」および「コンピュータプログラム製品」という用語は、本明細書において使用される場合、一般に、1つ以上のシーケンスまたは1つ以上の命令を実行するためにプロセッサ204に提供する際に関与する任意の媒体を指す。一般に「コンピュータプログラムコード」と称されるそのような命令(コンピュータプログラムまたは他のグループ分けの形態でグループ化され得る)は、実行されたときに、コンピューティングシステム200が、本発明の実施形態の特徴または機能を実施することを可能にする。これらのおよび他の形態の非一時的なコンピュータ可読媒体は、これらに限定されるものではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および送信媒体を含む多くの形態をとってもよい。不揮発性媒体は、たとえば、記憶装置210のような、ソリッドステート、光ディスク、または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ206のような動的メモリを含む。送信媒体は、バス202を含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
【0032】
一般的な形態のコンピュータ可読媒体は、たとえば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、もしくは任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード、紙テープ、穿孔パターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、ならびに任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、以下に説明するような搬送波、またはコンピュータがそこから読み出すことができる任意の他の媒体を含む。
【0033】
様々な形態のコンピュータ可読媒体は、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ204に搬送して実行する際に関与してもよい。たとえば、命令は、最初は遠隔コンピュータの磁気ディスク上に保持されていてもよい。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリにロードして、モデムを使用して電話回線を介して命令を送信することができる。コンピューティングシステム200に対してローカルなモデムは、電話回線上のデータを受信して、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バス202に結合されている赤外線検出器は、赤外線信号内に保持されているデータを受信して、データをバス202上に置くことができる。バス202は、データをメモリ206に搬送し、プロセッサ204は、そのデータから命令を取り出して実行する。メモリ206が受信した命令は、任意選択的に、プロセッサ204による実行の前または後のいずれかに、記憶装置210に記憶されてもよい。
【0034】
明瞭にする目的で、上記の記載は、種々の機能ユニットおよびプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明してきたことが諒解されよう。しかしながら、本発明から逸脱することなく、種々の機能ユニット、プロセッサまたは領域の間での機能の任意の適切な分散が使用されてもよいことが諒解されよう。たとえば、別個のプロセッサまたはコントローラによって実施されるように示されている機能は、同じプロセッサまたはコントローラによって実施されてもよい。したがって、特定の機能ユニットへの参照は、厳密な論理的または物理的構造または編成を示すのではなく、記載されている機能を提供するための適切な手段に対する参照としてのみ見られるべきである。
【0035】
生データ
図3は、生物学的分析装置のCCDカメラが提供しているフルフレーム生画像の16個の毛細管サブセットの例を示している。この例では、各毛細管は、画素単位で測定された、垂直軸に沿った3列の生画像からのデータを使用する。横軸は、検出された信号の波長に対応し、これも画素単位で測定される。
【0036】
明るいスポット304は、ポリマーのみから来るラマン信号に対応し、一方、左側の暗いスポット302は、生物学的サンプルに対応している。生のスペクトルデータは、通常、分析のためにコンピューティングシステムに送信される前に、CCDで20個のビンにビニングされる。
【0037】
カメラビニング
CCDカメラのフルフレームは、通常、データの列が多すぎて、タイムリーに読み出すことができず、そのため、複数の列は、スペクトルの「ビン」に組み合わされ、各ビンは、1つ以上のカメラ画素からの電子を組み合わせる。ビンは、異なる色素間の信号のバランスをとるために、「可変ビニング」と称される不均一な幅を有することができる。
【0038】
したがって、CCDからの電子は、0~65535のデジタル数字に読み込まれる前に互いに組み合わされる。しかしながら、電子が多すぎて、それらの組み合わせ数が65535の限界を超える信号に変換される場合、得られる測定信号は、正確ではない。このような信号は「飽和」または「測定限界外」と呼ばれる。したがって、ビニングは、ビン内の組み合わせ信号が65535よりも大きいため、画像全体でスケール内にあったデータを取り、それを測定限界外にすることができることが分かる。
【0039】
測定限界外データの発生を減少させるための1つの可能な方法は、狭いビンを使用することであり、これにより、各ビンの元の画素の組み合わせがより少なくなる。しかし、ビンを狭くすると、ビン番号が増加するため、完全な画像を読み取るのに時間がかかる。
【0040】
測定限界外データ
図4は、サンプル濃度が高いとデータが若干測定限界外になる例を示している。測定限界外データには、主色素に歪んだピークがあり、他の色素にも疑似ピークがある。若干の測定限界外データは、目視検査で回復可能であるが、オペレータの介入が必要である。
【0041】
図5は、サンプル濃度が高いとデータが著しく測定限界外になる例を示している。この種の著しい測定限界外データは、回復不可能であり、異なるパラメータを用いて再実行する必要がある。
【0042】
図6は、従来の方法で得られた結果(下のプロット-「元のデータ分析」)と、本教示に従った方法で得られた結果(上のプロット-「拡張ダイナミックレンジ分析が適用された状態」)との間の予備比較を示している。
【0043】
色素マトリックス
「色素マトリックス」は、ビンデータから色素データを回復させるために使用される応答マトリックスである。色素マトリックスの各成分は、各色素の1ユニットに対して各ビンの予想された信号である。図7は、20個のビンにわたる4つの色素に対する色素マトリックスのグラフ表示を示している。各点は、各色素のユニットに対して各ビンで得られた信号を表す。たとえば、左端の色素(ひし形で表されている)は、ビン番号3で最大信号(1)に達し、その次の色素(四角形で表されている)は、ビン番号6で最大信号に達している。また、色素マトリックスは、表1に示すように、その係数で表すこともでき、各列は、異なる色素に対応している。
【表1】
【0044】
ビンデータから色素データを回復させるには、ビンデータベクトルに色素マトリックスの疑似逆行列、すなわち、表2に示すDM+を乗算するだけでよい。
[色素データ]=[ビンデータ]×[DM+
【表2】
【0045】
色素マトリックスの興味深く意外な特性は、マトリックスの適切な成分を使用して信号を計算すれば、どのビンを使用しても、所与の色素に対して同じ再構成された色素信号が得られるということである。これは、図8A図8Dに示され、これらは、完全な色素マトリックス(図8A)および修正色素マトリックス(図8C)をそれぞれ使用することによって得られた再構成された色素信号間の比較を示している。この例では、完全な色素マトリックスは、20個のビンにわたる4つの色素の応答マトリックスに対応している。修正色素マトリックスでは、ビン3、6、9、および12の係数は、ゼロに設定されている。修正色素マトリックス(図8D)を使用して得られた、再構成された色素信号は、完全なマトリックス(図8B)を用いて得られた色素信号と比較しても、有意な差を示さない。
【0046】
測定限界外のピーク回復
この特性により、測定限界外のピークを回復させることができる。図9は、ビン番号の関数としてプロットされた1つのスキャンの飽和ピーク信号の例を示している。この例では、7つのビンに測定限界外データがあり、これは、蓄積された電子の数が、それらを数えるために利用可能な最大数(通常、65535)を超えたことを意味する。
【0047】
一実施形態では、提案された回復方法は、図10および図11に示すように、総数が最大総数を超えるビンの特定(1004)および目印付け(1006)から始まる。次に、これらの目印を考慮して画像が処理される(1008)。
【0048】
プロセスをさらに改善する方法として、画像取得の前にカメラのビニングパターンを変更することができる(1002)。この変更は、カメラのハードウェアを物理的に変更することで行うことができる。また、カメラのファームウェアを修正してカメラを設定することでも実現できるし、また、画像取得ソフトウェアでパラメータを設定することで動的に行うこともできる。
【0049】
本教示の実施形態による画像の処理について、図11にさらに記載されている。第1のステップ1102では、測定限界外として目印が付けられたビンに対応する色素マトリックスの任意の係数は、ゼロに設定され、それにより、修正色素マトリックスが作成される。次に、ステップ1104において、修正疑似逆色素マトリックスは、修正色素マトリックスを使用して計算される。回復色素信号は、修正疑似逆色素マトリックスを使用して、ステップ1106で最終的に計算される。
【0050】
図12は、上記の方法で得られた結果を示している。上のプロットは、測定限界外のピークがプルアップピークおよびプルダウンピークを生成する補正前データを示している。下のプロットは、補正結果を示しており、測定限界外のビンを削除することで、各色素の色素信号が回復する。具体的には、測定限界外のピークは、真の高さを回復し、人工的なプルアップピークおよびプルダウンピークは、削除される。
【0051】
前述の開示は、例示的な態様および/または実施形態を論じているが、添付の特許請求の範囲によって定義される、記載された態様および/または実施形態の範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更および修正を行うことができることに留意されたい。さらに、記載された態様および/または実施形態の要素は、単数形で記載または請求され得るが、単数形への限定が明示的に述べられていない限り、複数形が企図される。加えて、任意の態様および/または実施形態のすべてまたは一部分は、別段の記載がない限り、他の任意の態様および/または実施形態のすべてまたは一部分とともに利用することができる。
【図 】
図2
図3
【図 】
【図 】
図6
【図 】
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12