(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】植物細胞または植物全体においてバインダー‐毒素融合タンパク質を産生する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20221003BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221003BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20221003BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20221003BHJP
A01H 1/00 20060101ALN20221003BHJP
A01H 6/82 20180101ALN20221003BHJP
C12N 5/14 20060101ALN20221003BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221003BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K39/395 E
A61P35/00
C07K16/00
C12N15/62 Z
A01H1/00 A
A01H6/82
C12N5/14
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2021548219
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054263
(87)【国際公開番号】W WO2020169620
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-11
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521362324
【氏名又は名称】エーティービー セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】マギー ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ウーリー マックス
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/064815(WO,A1)
【文献】特開2017-043620(JP,A)
【文献】FRANCISCO, J. A. et al.,Expression and characterization of bryodin 1 and a bryodin 1-based single-chain immunotoxin from tobacco cell culture,Bioconjugate Chem. ,1997年,Vol. 8,P. 708-713
【文献】TRAN, M. et al.,Production of unique immunotoxin cancer therapeutics in algal chloroplasts,PNAS,2013年,Vol. 110, No. 1,E15-E22
【文献】WANG, T. et al.,Recombinant Immunoproapoptotic Proteins with Furin Site Can Translocate and Kill HER2-Positive Cancer Cells ,Cancer Res ,2007年,Vol. 67. No. 24,P. 11830-11839
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー‐毒素融合タンパク質の製造方法であって、
バインダー‐毒素融合タンパク質が、少なくとも
a)
・抗体、
・標的結合能力を保持する抗体フラグメントまたは
標的結合能力を保持する抗体誘導体、
および
・抗体ミメティック
からなる群から選択される1つのタンパク質バインダー、
並びに
b1)切断可能なペプチドリンカーおよびタンパク質毒素、または
b2)切断可能なドメインを含むタンパク質プロトキシン
のいずれか
を含み、
前記方法は、
(i)植物細胞または植物宿主全体と、少なくとも
A)タンパク質バインダー
をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、
並びに
B1)切断可能なペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドおよびタンパク質毒素をコードするポリヌクレオチドか、または
B2)タンパク質プロトキシンをコードするポリヌクレオチドであって、このプロトキシンがその活性化のための切断可能なドメインを含む、ポリヌクレオチド
のいずれか
を
植物細胞または植物宿主内で発現させることができるように作動的結合で含む核酸構築物を接触させる工程、
(ii)構築物を植物細胞の核、または植物
宿主全体の1つ以上の細胞
の核に統合させる工程、および
(iii)核酸構築物によってコードされた融合タンパク質を発現させる工程
を含み、
切断可能なペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインが、植物細胞が発現する酵素、または植物宿主が産生する酵素によって切断されない、方法。
【請求項2】
(iv) 工程(iii)で発現される融合タンパク質を回収および/または精製する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物
細胞または
前記植物
宿主がタバコ属に由来する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
切断可能なペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインが、哺乳類細胞により発現される酵素、または哺乳類宿主が産生する酵素によって
切断可能である、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
切断可能な
ペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインが、
a)エンドソームおよび/またはリソソームプロテアーゼ切断部位、
b)サイトゾルプロテアーゼ切断部位、および/または
c)細胞表面プロテアーゼ切断部位
からなる群から選択される少なくとも1つ切断部位を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのタンパク質毒素またはプロトキシンが酵素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質毒素が、
(1)細胞死誘導タンパク質、
(2)タンパク質合成阻害剤、
(3)膜摂動タンパク質、
および
(4)細胞分裂阻害タンパク質
からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのタンパク質毒素が哺乳類毒素であり、好ましくはグランザイムの群から選択され、より好ましくはグランザイムBであり、または前記タンパク質毒素の毒性活性を保持するそのフラグメントである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バインダー‐毒素融合タンパク質であって、前記バインダー‐毒素融合タンパク質が少なくとも
a)
・抗体、
・標的結合能力を保持する抗体フラグメントまたは
標的結合能力を保持する抗体誘導体、
および
・抗体ミメティック、
からなる群から選択される1つのタンパク質バインダー、
並びに
b1)切断可能なペプチドリンカーおよびタンパク質毒素、または
b2)切断可能なドメインを含むタンパク質プロトキシン
のいずれか
を含み、
前記バインダー‐毒素融合タンパク質が、少なくとも
A)タンパク質バインダーをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、
並びに
B1)切断可能なペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドおよびタンパク質毒素をコードするポリヌクレオチドか、または
B2)タンパク質プロトキシンをコードするポリヌクレオチドであって、このプロトキシンがその活性化のための切断可能なドメインを含む、ポリヌクレオチド
のいずれか
を
植物細胞または植物宿主内で発現させることができるように作動的結合で含む核酸構築物によってコードされており、
前記
バインダー‐毒素融合タンパク質が少なくとも1つ植物特異的N-グリカンを含み、
切断可能なペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインが、植物細胞が発現する酵素、または植物宿主が産生する酵素によって切断されないものであり、
前記バインダー‐毒素融合タンパク質が
・(scFv-Fc)-CS-毒素(二量体)、
・2つのHCと2つのLC-CS-毒素の四量体、
・2つのLCと2つのHC-CS-毒素の四量体、
・毒素-CS-(scFv-Fc)(二量体)、
・2つのHCと2つの毒素-CS-LCの四量体、
・2つのLCと2つの毒素-CS-HCの四量体、
・毒素-CS-(-FC-scFv)(二量体)
の構造の1つを有し、ここでCSは切断部位である、
バインダー‐毒素融合タンパク質。
【請求項10】
タンパク質バインダーがヒトCD20に結合する、請求項9に記載のバインダー‐毒素融合タンパク質。
【請求項11】
・配列番号2または配列番号17に記載のアミノ酸配列、
・配列番号4に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8のHC)および配列番号6に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8―FCS―グランザイムBのLC)、
・配列番号7に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8―FCS―グランザイムBのHC)および配列番号5に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8のLC)
の少なくとも1つを含み、
ここでCSは切断部位であり、FCSはフーリン切断部位であり、C2B8はリツキシマブである、請求項9または10に記載のバインダー‐毒素融合タンパク質。
【請求項12】
少なくとも請求項9~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質、および任意に1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項13】
1つ以上のさらなる治療活性化合物と併用投与される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍性疾患を罹患しているか、発症する危険性があるか、および/または診断されているヒトまたは動物対象の治療またはそのような状態の予防に使用するための請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバインダー‐毒素融合タンパク質の製造方法を実施してバインダー‐毒素融合タンパク質を得る工程、および得られたバインダー‐毒素融合タンパク質を用いて医薬品を製造する工程を含む、医薬品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バインダー‐毒素融合タンパク質の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
標的バインダーと毒素を組み合わせたコンジュゲートは40年前に開発され、現在ではがんと闘う大きな希望となっている。これらのコンジュゲートは、主に、リンカーを介して化学的細胞傷害性剤に化学的に結合されたモノクローナル抗体からなる、抗体‐薬物‐コンジュゲート(ADC)のクラスによって代表される。これらの薬物は、がん細胞を標的とするモノクローナル抗体の特異性とペイロードの高い毒性効力を組み合わせ、標的細胞を殺傷する一方、健康な組織を温存する。
【0003】
しかし、この概念を臨床的な成功に結びつけることは困難であることが証明されている。腫瘍細胞に対する特異性にもかかわらず、生成物が有効な治療用量に達することなく有害作用が頻繁に起こり、その結果、治療域が比較的狭くなり、臨床反応が制限される可能性がある。用量制限毒性は、抗体の特異性の問題によるものではなく、主に使用するリンカーの相対的不安定性による毒素の望ましくない放出のため、非標的発現組織で典型的に認められた(オフターゲット作用)(Drake and Rabuka (2015))。
【0004】
オフターゲット毒性に加え、ごく少数の割合(1~2%)のインタクトコンジュゲートしか標的腫瘍に到達しないことが示されている(Peters and Brown (2015))。この悪いターゲティング効率のため、低用量で依然として標的細胞死を誘発するためには、細胞傷害性ペイロードは高い効力を持たなければならない。
【0005】
しかし、上述のリンカーの相対的不安定性のため、高効力の毒素の使用は、早期の毒素放出を避けて治療域を広げるために、血流内で安定でなければならないリンカーを必要する(Parslowら(2016))。
【0006】
化学的に結合した毒性ペイロードは、標的毒性をオフにする化学リンカーからの望ましくない解離のリスクを負う(Alewineら(2014))。この不安定性は、その方法で製造された免疫コンジュゲートの効力を制限する。
【0007】
抗体薬物コンジュゲートの治療域を広げる1つのアプローチは、主に植物および細菌からの、高い細胞傷害性を持つタンパク質またはペプチドに融合された抗体の開発である。このアプローチは1980年代初頭に最初に開発された。このようなコンジュゲートの第一世代は、抗体と化学的に結合した細胞傷害性ペプチドから成っていた。
【0008】
しかしながら、既に議論されている化学的結合の相対的不安定性は、ネイティブの細胞傷害性タンパク質の高い免疫原性と相まって、これらのコンジュゲートの治療上の有用性に対する主要な障害と考えられた。
【0009】
しかしながら、これらのコンジュゲートは、理論的には、治療に使用するための莫大な可能性を有する。ほとんどのタンパク質毒素の作用機序はタンパク質合成阻害に基づいており、一般的に使用される有機細胞毒素(主に、チューブリン阻害剤またはRNAポリメラーゼ阻害剤)とは異なり、これは毒性プロファイルが重複しないことを意味し、標準的な治療法との併用を促した。
【0010】
さらに、細胞傷害性タンパク質は化学療法難治性患者においても効率的であると思われ、有機細胞毒素について観察された腫瘍耐性機序に影響されないことを示唆している。
【0011】
さらに、ほとんどの有機細胞毒素とは異なり、細胞傷害性タンパク質は静止細胞、すなわち非分裂細胞に対しても有効である。
【0012】
さらに、細胞傷害性タンパク質は、抗体とともに、すなわち融合タンパク質の形成で共発現させることができる。このような融合タンパク質の組換え生産は、化学リンカー技術で観察される望ましくないペイロード解離を減少させる。
【0013】
ペプチドリンカーを介してタンパク質バインダー、例えば抗体を細胞傷害性タンパク質に遺伝的に融合させることは、いくつかの利点を提供する。単なる結合するという役割の他に、リンカーは、融合タンパク質の折りたたみ、安定性、薬物動態プロファイルおよび生物学的活性、ならびに宿主細胞におけるその産生収率に影響を与え得る。
【0014】
リンカーには2つのカテゴリーが存在する。すなわち、安定なリンカーと切断可能リンカーである。安定なリンカーは、長い血漿半減期を有し、細胞傷害性タンパク質の意図しない放出を回避し得る安定なペプチド配列からなる。コンジュゲート全体が細胞内に取り込まれた後、タンパク質バインダーの細胞内分解により毒素が放出される。
【0015】
多くの哺乳動物プロテアーゼ感受性配列は、切断可能なバイオコンジュゲートの設計においてリンカーとして使用することができる。特に、がん細胞によって過剰発現された酵素に感受性のある配列を用いて、標的細胞中、または腫瘍環境における細胞傷害性融合タンパク質を活性化することができる。しかし、哺乳動物の酵素感受性配列を用いたこれらの複合融合タンパク質は、主に、バックグラウンド発現が低くても特異的な酵素が存在するため、標準系(哺乳動物細胞(例えば、CHOまたはHEK)、昆虫細胞および酵母)において製造することは困難である。この場合、プロペプチドはその活性ドメインの放出によって活性化され、宿主細胞増殖の阻害を誘導する。したがって、細菌発現系では、哺乳動物のタンパク質分解性切断可能リンカーをもつバインダー-毒素融合タンパク質が産生されなければならない。しかし、細菌は複数のドメインをもつ複雑なタンパク質を適切に折りたたむことができず、ジスルフィド結合を形成する能力を欠いている(Yinら(2007))。これらの制限は、細菌系を一本鎖抗体フラグメント(scFv)およびアグリコシル化細胞傷害性タンパク質ベースのバインダー-毒素融合タンパク質の産生に拘束する。しかし、細菌のscFvベースのバイオコンジュゲートのサイズが小さいため、迅速な腎クリアランスが誘導され、これらの分子の治療域が制限される(Guoら(2016))。
【0016】
WO2009064815は、藻類の葉緑体が、標準系に観察されるような宿主細胞の殺傷を回避する複雑なバインダー-毒素融合タンパク質を折りたたむために必要な装置を含むことを開示している。実際、藻類Chlamydomonas reinhardtii(クラミドモナス・レインハルディ)は、原核生物に見られるものと同様に単一の葉緑体を有するが、複合タンパク質の折りたたみを可能にするタンパク質を含む(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、シャペロン)。WO2009064815は、ヒトIgG1のヒンジ、CH2、CH3ドメインを、2つの反復G4S配列(4つのグリシンとそれに続くセリン)からなる非切断性リンカーによってタンパク質毒素に融合させた可溶性で機能的な一本鎖抗体(CD22)を産生する緑藻葉緑体の適性を実証した。しかし、1つの大きな懸念は、微細藻類葉緑体の翻訳後修飾であり、特にバイオ医薬品の重要な特性であるN‐グリコシル化の酵素機構の欠如である(Mathieu‐Rivetら(2014))。
【0017】
G4S安定リンカを介して、保護されたGranzyme B (Mohamedali et al. [2013])に結合された血管内皮成長因子121(VEG121)からなる非切断性バインダー-毒素融合タンパク質を用いたヒト腎細胞(HEK-293T)に基づくもう1つのアプローチが開発された。プロテアーゼグランザイムBの機能ドメインは、おそらく宿主細胞の殺傷を避けるために、エンテロキナーゼ感受性部位によって連結された余分なヒスチジンタグによって保護されている。製造後、エンテロキナーゼ処理の追加ステップにより保護された部位を除去しなければならない。抗腫瘍効果が観察されたにもかかわらず、この種のバインダー‐毒素融合タンパク質の産生は複雑である。
【0018】
ペプチドリンカーを介して結合された標的化部分のペプチドペイロードへの完全組換えバイオコンジュゲーションを用いることにより、前記制限を克服することができる。このような組換え免疫コンジュゲートは、例えば、改変されたシガ類似毒素に結合されたCD20特異的一本鎖可変フラグメント(scFv)を用いて設計され、原性生物発現系で発現された(WO2014164680A1)。得られた化合物は、NHLにおける第I/Ib相において有望な結果を示し、完全な組換え免疫コンジュゲートがペプチド毒素に化学的に結合した抗体について観察されたオフターゲット毒性を減少させることができることを実証した。
【0019】
しかし、scFv抗体ベースの免疫コンジュゲートは、その効力を制限する腎クリアランスのために非常に限られた血中半減期を有することが示されており、一方、scFvベースの免疫毒素を産生するためにしばしば使用される細菌モデルは、ジスルフィド架橋の形成を可能にすることができないために、全長抗体またはscFv-Fc構造を産生するのに適していない。さらに、このような細菌系は、それとともに産生される抗体または抗体フラグメントをグリコシル化せず、同様に、産生される抗体の半減期の減少につながるか、またはエフェクター機能を低下させる可能性がある。このような理由から、典型的には、CHO (チャイニーズハムスター卵巣細胞)のような哺乳動物発現系を用いて、このような複合抗体や抗体フラグメント、誘導体が作製されている。
【0020】
しかしながら、活性タンパク質毒素ペイロード、または後者を含むコンジュゲートの産生は、特に、哺乳動物プロテアーゼによって認識される切断部位が用いられる場合には、毒性の理由のために、哺乳動物細胞においてほとんど達成できない。しかしながら、免疫コンジュゲートにおいて、哺乳動物プロテアーゼによって認識されるこのような切断部位を有することは非常に興味深い。
【0021】
これは、バインダー-毒素融合タンパク質がその標的、例えば前記標的によって特徴付けられる疾患部位に結合した後に、毒素を活性化することを可能にするであろう。哺乳動物プロテアーゼに対するその感受性のために、切断部位は切断され、こうして活性化された毒素は放出されるであろう。
【0022】
従って、本発明の課題の1つは、新しいバインダー-毒素融合タンパク質の治療可能性を利用するための効率的な生産システムを提供することである。
【0023】
本発明のさらなる課題の1つは、以下のバインダー-毒素融合タンパク質の製造方法を提供することである。
a) バインダータンパク質におけるジスルフィド架橋の形成および/またはバインダータンパク質のグリコシル化を可能にし
b) 哺乳動物細胞に対して毒性を有するタンパク質毒素の使用を可能にし、および/または
c) 哺乳動物のプロテアーゼによって認識される切断部位の取り込みを可能にする。
【0024】
本発明の他の課題は、リンカー切断後に活性化される細胞傷害性タンパク質に組み換えられた標的部分を結合させ、血清半減期を延長させたグリコシル化バインダー-毒素融合タンパク質を産生することを可能にすることである。
【0025】
実際のバインダータンパク質が(a)グリコシル化されていなくても、(b)哺乳動物細胞に毒性のない毒素を用いるか、または(c)バインダータンパク質がそのような切断部位をもたないで、これらの課題のどれかが解決されることが望ましいであろう。なぜなら、このような方法によって3つのどれかが高い柔軟性を与え、大きいアレイのバインダー-毒素融合タンパク質を産生させることができるという単なる事実があるからである。
【0026】
これらおよび他の課題は、本発明の独立した請求項に従った方法および手段によって達成される。従属請求項は、具体的な実施形態に関連する。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、バインダー-毒素融合タンパク質を産生する方法を提供する。本発明及びその特徴の一般的な利点を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】アグロインフィルトレーション後4および6日後(4または6 dpa)のNicotiana benthamiana(ニコチアナ・ベンサミアナ、ベンサミアナタバコ)葉抽出物30μgを、抗ヒトIgG Fc部分抗体を用いたウェスタンブロット法により分析した。p19サイレンシングサプレッサー遺伝子(+)または(-)を含むバイナリー形質転換ベクターを用いた。融合タンパク質の発現には、Agrobacterium tumefaciens (アグロバクテリウム・ツメファシエンス)(A. t.) LBA4404(レーン1~4)またはGV3101(レーン5~8)を用い、菌株を図の上段に示す。A.t. LBA4404(C-)に空のpPZP-ATBバイナリープラスミドを用いた陰性対照、陽性対照(C+)として200ngのヒト血清IgG(Sigma、I5154)を用いた。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。タンパク質サイズは星印で示す。
【0029】
[
図2]アグロインフィルトレーション4日後のNicotiana benthamiana葉抽出物25μgを、
抗ヒトIgG Fc部分および抗ヒト(左パネル)グランザイムB(右パネル)抗体を用いてウエスタンブロット法により分析した。p19サイレンシング抑制遺伝子を持たないAgrobacterium tumefaciens (A. t.) LBA4404を用いて、融合タンパク質を発現させた。陽性対照(C+)として50ngのヒト血清IgG(Sigma、I5154)を用いた。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを還元(+ DTT)または非還元条件(- DTT)下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。単量体の一体の大きさはΔで示す。
【0030】
[
図3]アグロインフィルトレーション4日後のNicotiana benthamiana葉抽出物40μgを、
抗ヒトIgG Fc部分抗体を用いてウエスタンブロット法により分析した。陽性対照(ヒト血清IgG)として50ngのヒト血清IgG(Sigma, I5154)を用いた。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。発現された構築物は対応するレーンの上に示されている。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【0031】
[
図4]in vitro細胞傷害性と結合。A: WST-1アッセイによるin vitro細胞傷害性LINK1
がスブチリシン様プロタンパク質転換酵素ファミリーによって切断可能であり、TOX2がタンパク質合成を阻害し、そしてscFv-FcがB細胞上に発現された細胞表面タンパク質と結合する精製scFv-Fc-LINK1-TOX2の10μlを、Raji細胞上に加える前に40μlの増殖培地に希釈した。インキュベーション後72時間の光学濃度測定により生存率が観察されている。DMSO (5%)またはtriton(2%)を陽性対照とする。scFv-Fc-LINK1-TOX2および陽性対照の効果を標準化するために、緩衝液対照のみが用いられている(増殖培地40μl中に10μl)。
B: ELISAによる結合能分析。抗原は96ウェルマイクロプレート上にコーティングされている。50 μlの精製構築物を1時間インキュベートした。検出にヤギ抗ヒトFc抗体HRPOを添加した。50 μlの特異的な裸のmAbが陽性対照として用いられている(線状の赤色の曲線)。50μlの非特異的な裸のmAbが陰性対照として用いられている(線状の灰色の曲線)。FCS =フーリン切断部位、GB =グランザイムB。
【0032】
[
図5]共培養3日後のNicotiana tabacum植物細胞抽出物25μgを、抗ヒトIgG Fc部分と抗
ヒト(左パネル)グランザイムB(右パネル)抗体を用いてウェスタンブロット法により分析した。p19サイレンシングサプレッサー遺伝子を有するバイナリープラスミドを有するAgrobacterium tumefaciens (A. t.) LBA4404を用いて融合タンパク質を発現させた。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【0033】
[
図6] Nicotiana tabacum (ニコチアナ・タバカム)5日齢安定植物細胞抽出物33μL
を、抗ヒトIgG Fc部分抗体を用いてウェスタンブロット法により分析した。scFv‐Fc‐FCS‐Granzyme Bを安定発現する選択された植物細胞株を細胞抽出物分析に用いた。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【0034】
[
図7]ヒトの細胞(左)とタバコの植物または細胞(右)がつくるN-グリコシル化パターン
。
【0035】
[
図8](左パネル)共培養3日後のNicotiana tabacum植物細胞抽出物33μLを、抗ヒトIgG
Fc抗体を用いたウェスタンブロット法により分析した。p19サイレンシングサプレッサー遺伝子を有するバイナリープラスミドを有するAgrobacterium tumefaciens (A. t.) LBA4404を用いて融合タンパク質を発現させた。(右パネル)アグロインフィルトレーション4日後のNicotiana benthamiana葉抽出物40μgを、抗ヒトIgG Fc部分抗体を用いたウエスタンブロット法により分析した。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。発現された構築物は対応するレーンの上に示されている。TOX2は、本明細書に開示されている毒素クラス2(タンパク質合成阻害剤)由来の毒素を示す。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【0036】
[
図9]本発明によるバインダー-毒素フォーマットの構造。9A-C: 毒素を抗体鎖のC末端
に融合させる。A: (scFv-FC)-(切断部位)-毒素/プロトキシン;B:HCプラスLC-(切断部位)-毒素/プロトキシン、C:LCプラスHC-(切断部位)-毒素/プロトキシン。9D-G 毒素を抗体鎖のN末端に融合させる。scFv-FCは、本明細書中で議論されるように、特異的抗体フォーマットである。LCはIgG抗体の軽鎖である。HCはIgG抗体の重鎖である。CSは切断部位を意味し、Toxは毒素/プロトキシンを意味する。異なる鎖の間のバーはジスルフィド結合を示す。
【0037】
[
図10]ペプチドグリコフォーム解析の結果。本明細書に開示された抗体から採取され、
N-グリコシル化部位を含むペプチドが、哺乳動物で産生されたタンパク質からそれらを分離する特徴的な糖形態を有することを実証するために、Nicotiana benthamianaの異なる株が使用され、そのいくつかは、内因性β-1,2-キシロシルトランスフェラーゼ(XylT)およびα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(FucT)の標的ダウンレギュレーションを得るために、RNA干渉(RNAi)技術(ミュンヘンのNOMAD Bioscience GmbHによって提供される材料)によってグリコエンジニアリングされた。
図10は、異なる株で産生された2つのそのようなペプチドのMSスペクトルを示す。
【0038】
[
図11]切断アッセイの結果。Nicotiana benthamianaからscFv‐Fc‐FCS‐GB (FCS =フ
ーリン切断部位、GB =グランザイムB)が発現されている。タンパク質は、アグロインフィルトレーション後4日後に葉抽出物からタンパク質Aクロマトグラフィーにより精製されている。精製された材料は組換えフーリンに曝露されている。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを還元条件下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。切断後に生じた遊離GBタンパク質は星印で示されている。切断制御として組換えタンパク質Aprilを用いた。Aprilの切断関連バンドはΔで示されている。
【0039】
[
図12]SDS PAGEクーマシーブルーによる精製タンパク質解析。Nicotiana benthamiana
からいくつかの構築物が発現されている。タンパク質は、アグロインフィルトレーション後4日後に葉抽出物からタンパク質Aクロマトグラフィーにより精製した。7μlの精製タンパク質を7μlのローディングバッファー(2x)に加えた。次に、12μlをそれぞれのウェルに装填した。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを非還元条件下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【0040】
[
図13]SDS PAGEクーマシーブルーによる精製タンパク質解析。Nicotiana benthamiana
からいくつかの構築物が発現されている。タンパク質は、アグロインフィルトレーション後4日後に葉抽出物からタンパク質Aクロマトグラフィーにより精製されている。7μlの精製タンパク質を7μlのローディングバッファー(2x)に加えた。次に、12μlをそれぞれのウェルに装填した。4~20%アクリルアミドSDS‐PAGEを還元条件下で行った。Lはタンパク質ラダー(分子量サイズマーカー)を示す。タンパク質サイズは星印で示す。
【発明の詳細な説明】
【0041】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は説明されたデバイスの特定の構成要素部分に限定されず、あるいはそのようなデバイスおよび方法は変化する可能性があるので、説明された方法のプロセス工程に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。明細書および添付の請求項において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は文脈が明確に別途指示しない限り、単数形および/または複数形の参照を含むことに留意されたい。さらに、数値によって区切られるパラメータ範囲が与えられる場合、その範囲は、これらの限界値を含むものとみなされることを理解されたい。
【0042】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、互いに関連しない個々の実施形態として理解されることを意味しないことを理解されたい。一実施形態で議論される特徴は、本明細書に示される他の実施形態に関連しても開示されることを意味する。1つの場合において、特定の特徴が1つの実施形態で開示されず、別の実施形態で開示される場合、当業者は、前記特徴が前記他の実施形態で開示されることを意味しないことを必ずしも意味しないことを理解するのであろう。当業者であれば、他の実施形態についても前記特徴を開示することが本出願の主旨であるが、単に明瞭にするため、及び本明細書を管理可能な量に維持するために、これが行われていないことを理解されよう。
【0043】
さらに、本明細書で参照される先行技術文献の内容は、参照により援用される。これは、特に、標準的または通常方法を開示する先行技術文献を指す。その場合、参照による援用は、十分に実施可能な開示を可能にし、長い反復を避ける目的がある。
【0044】
a)以下からなる群から選択される1つのタンパク質バインダー、
・抗体、
・標的結合能力を保持する抗体フラグメントまたは誘導体、または
・抗体ミメティック、
b)任意で、ペプチドリンカー、
c)少なくとも1つのタンパク質毒素またはタンパク質プロトキシン、
を少なくとも含むバインダー‐毒素融合タンパク質の製造方法であって、
前記方法は、
(i)植物細胞または植物全体と、少なくとも以下を作動的結合で含む核酸構築物を接触させる工程、
A)タンパク質バインダーまたは標的結合鎖もしくはそのドメインをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
B1)切断可能なペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドおよびタンパク質毒素をコードするポリヌクレオチドか、または
B2)タンパク質プロトキシンをコードするポリヌクレオチドであって、このプロトキシンがその活性化のための切断可能なドメインを含む、ポリヌクレオチド
を含む核酸構築物を接触させる工程、
(ii)構築物を植物細胞の核、または植物全体の1つ以上の細胞に統合させる工程、および
(iii)核酸構築物によってコードされた融合タンパク質を発現させる工程
を含む、方法が提供される。
【0045】
本発明者らは、驚くべきことに、このような方法で、組換えバインダー-毒素融合タンパク質を大量かつ高い生産性で生産することができることを見出した。
【0046】
本明細書中で使用される、用語「植物」(そこから誘導される細胞を含む)は、藻類(Chlorophyta(緑藻植物門)およびCharophyta(車軸藻植物門)/Streptophyta(ストレプト植物門)を含む)、ならびにMesostigmatophyceae(メソスティグマ藻綱)、Chlorokybophyceae(クロロギブス藻綱およびSpirotaenia(スピロテニア)、ならびに単子葉植物および双子葉植物を含む裸子植物および被子植物を含む陸上植物(有胚植物)に関する。
【0047】
1つの実施形態において、核酸構築物が接触される植物または植物細胞は、葉緑体ではなく、または藻類の葉緑体ではなく、特にChlamydomonas reinhardtiiの葉緑体ではない。別の実施形態では、核酸構築物が接触される植物または植物細胞における構造は、葉緑体ではなく、または藻類の葉緑体ではなく、特にChlamydomonas reinhardtiiの葉緑体ではない。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質毒素」または「タンパク質プロトキシン」は、細胞傷害性および/または細胞増殖抑制性タンパク質、またはそのプロバリアントを包含することを意味する。
【0049】
本明細書中で使用される「細胞増殖抑制タンパク質」という用語は、細胞を必ずしも死滅させることなく細胞増殖または細胞分裂を阻害することができるタンパク質を意味する。適当に、細胞増殖抑制剤は、腫瘍細胞の増殖を阻害する。
【0050】
本明細書中で使用される、用語「細胞傷害性タンパク質」は、細胞に有害であり、最終的に細胞死を引き起こすタンパク質を意味する。いくつかの実施形態において、細胞傷害性タンパク質は、腫瘍細胞のような急速に分裂する細胞を損傷し、腫瘍細胞死、特に腫瘍細胞死を引き起こす一方で、非腫瘍細胞に対する損傷を引き起こさないか、またはより少ない損傷を引き起こす。
【0051】
用語「タンパク質毒素」または「タンパク質プロトキシン」とは、その化学的性質から、タンパク質(すなわち、≧50アミノ酸残基の長さを有するペプチド)またはポリペプチド(すなわち、≧10~≦50アミノ酸残基の長さを有するペプチド)である毒素をいう。本発明の意味におけるプロトキシンは、潜在毒素とも呼ばれる毒素の前駆体であり、例えば、阻害アミノ酸配列を切り離すことによって、または立体構造変化を受けることによって活性化される必要がある。ここで「プロトキシン」および「タンパク質プロトキシン」という用語は互換的に使用され、同じ対象事項を意味する。
【0052】
植物ベースの組換えタンパク質発現は30年間開発されている。今日では、植物や植物細胞(タバコやタバコの細胞など)で産生されるモノクローナル抗体(mAb)など、いくつかの治療用タンパク質が臨床試験で試験され、商品化されているか、間近である(Yaoら(2015))。抗体を含む植物ベースの組換えタンパク質発現は、藻類でも行うことができる(Hempelら、2011)。
【0053】
植物には、生産コストの低さ、固有の生成物安全性、アップスケーリングの容易さ、複雑なタンパク質を折りたたんで集合させる能力、および複雑な翻訳後修飾を行う能力に関して、原核細胞系および真核細胞系よりもいくつかの利点がある。
【0054】
その上、植物懸濁細胞培養は、生産中の再現性と安全性の増加を提供し(既知の微生物、昆虫または哺乳動物病原体ではない)、現在の良好な製造基準生産要件を満たす。植物懸濁細胞培養は、増殖に単純な規定の栄養素のみを必要とし、哺乳類や微生物系よりもはるかに安価な操作コストを提供する。
【0055】
本明細書中で使用される用語「融合タンパク質」は、少なくとも1つのさらなる構成成分に作動可能に連結されたペプチド成分を有し、かつそのドメインの組成および/または組成物において天然のタンパク質とは異なるタンパク質を意味する。
【0056】
本明細書中で使用される「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチドを参照する場合、異なるポリヌクレオチドが別機能的な関係に置かれる状況を意味する。例えば、プロモーターがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。同様に、シグナルペプチドのコード配列は、そのポリペプチドの細胞外分泌に影響を及ぼす場合、ポリペプチドのコード配列に機能的に連結される。本発明の1つの実施形態によると、それぞれのポリヌクレオチドが異なるペプチドをコードする場合、「作動可能に連結された」とは、それぞれのポリヌクレオチドが隣接しており、2つのタンパク質コード領域を連結するのに必要な場合、オープンリーディングフレームが並んでいることを意味する。
【0057】
本明細書中で使用される用語「切断可能なペプチドリンカー」とは、標的細胞外で毒素タンパク質の毒性効果を発揮できなくするか、または毒素タンパク質の細胞増殖を阻害する能力(細胞分裂停止)もしくは細胞死を引き起こす能力(細胞傷害性)を制限するように、バインダー部分と毒素タンパク質を連結する残基を含む融合タンパク質内の内部アミノ酸配列を指す。このようにして、タンパク質毒素は、標的細胞に到達するまで、血漿中である限り不活性に維持され、そこで、細胞傷害性ペイロードが選択的に放出および/または活性化されるであろう(Grawunder & Stein, 2017)。標的細胞の内部で、切断可能リンカー配列が切断され、毒素タンパク質が活性化または毒性を示すようになる。本発明の融合タンパク質は、特定のプロテアーゼ、非限定的に、特にがん特異的プロテアーゼに対する切断認識部位を有する、および/または、非限定的に、酸および/または還元条件などの特異的条件下で切断可能な、特定のアミノ酸残基またはアミノ酸配列によって連結された細胞特異的バインダー部分およびタンパク質毒素部分から構成される。特異的プロテアーゼの切断認識部位をコードする配列は、公知の遍在性ヒトプロテアーゼの中で同定され得る、および/またはがん関連プロテアーゼの発現を試験することによって同定され得る。また、リンカー配列は、細胞結合およびリソソームへの内在化におけるバインダー部分の役割を妨害すべきではない。
【0058】
プロトキシンの「切断可能なドメイン」という用語は、いったん加水分解または酵素的開裂によって切断されると、プロトキシンの毒素部分を活性化する配列に関するものである。多くのプロトキシンは、酵素によって特異的に切断されるアミノ酸ドメイン、またはpH依存性加水分解(例えば、エンドソームにおけるエンドサイトーシス後)によって、活性毒素部分をサイトゾルに放出するようになっている。このような切断可能なドメインは、「天然に存在する」切断可能なペプチドリンカー(または「固有の切断部位」)として作用する。このような切断可能なドメインは、毒素が活性化のための切断可能なドメインを含まない場合、例えば、プロトキシンとして提供されていない場合に、使用しなければならない切断可能なペプチドリンカーとは逆に、「天然に存在する」切断可能なペプチドリンカー(または「内在的切断部位」)として機能する。
【0059】
用語「選択的活性化/放出」とは、特定の条件下で、プロトキシンまたはタンパク質毒素が細胞増殖を阻害する能力(細胞分裂停止)または細胞死を引き起こす能力(細胞傷害性)を活性化することを意味する。この選択的活性化とは、修飾されると、不活性な毒素(タンパク質プロトキシン)を活性な毒素またはプロトキシンのネイティブの切断可能リンカーに変換する、タンパク質毒素の非天然または天然に見出されない修飾可能な活性化部分を意味する。選択的に修飾可能な活性化部分が毒素融合タンパク質の成分である場合、修飾可能な活性化部分の修飾により、プロトキシンが直接標的細胞に対して毒性を示すようになるか、または標的細胞に対して本来活性化可能な形態を仮定してプロトキシンを生じることができる。天然に活性化可能なプロトキシンは、例えば、標的細胞の内因性成分、または標的細胞を取り巻く環境(例えば、標的細胞特異的プロテアーゼまたは遍在性プロテアーゼ)に感受性であるような修飾可能な活性化部分の修飾、および/または酸および/または還元条件などの特異的条件を含むが、これらに限定されない。天然の活性毒素は、標的細胞の内因性成分、または標的細胞を取り巻く環境、および/または酸および/または還元条件などの特異的条件に感受性であるように、天然または非天然の、および天然に見出されない修飾可能な活性化部分を用いて、毒素融合物中に不活性(プロトキシン)となるように改変することができる。修飾可能な活性化部分は、本発明における切断可能リンカーとして定義される。
【0060】
したがって、切断可能リンカーは、活性プロファイルに関して安定なリンカーよりも明確な利点を提供するが、その使用は、リンカーの切断が生産系の自己中毒を導くので、哺乳動物、昆虫および酵母細胞におけるそれぞれの結合タンパク質-毒素コンジュゲートの生産を複雑にする。しかし、これは、(i)それらがリンカーを切断しない(それぞれのプロテアーゼの欠如または還元/加水分解条件のため)および/または(ii)哺乳動物または哺乳動物細胞に毒性を示すそれぞれのタンパク質毒素が植物または植物細胞に毒性を示さないため、植物ベースの生産システムには当てはまらない。
【0061】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」という用語は、均質な抗体集団、すなわち、全体の免疫グロブリンからなる均質な集団、または抗原結合フラグメントもしくはその誘導体を有する抗体組成物を意味する。特に好ましい、そのような抗体は、IgG、IgD、IgE、IgAおよび/またはIgM、またはそれらのフラグメントまたは誘導体からなる群より選択される。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「フラグメント」は、標的結合能を保持するそのような抗体のフラグメントを指す。例えば、
● CDR (相補性決定領域)、
● 超可変領域、
● 可変ドメイン(Fv)、
● IgG重鎖(VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3領域からなる)、
● IgG軽鎖(VLおよびCL領域からなる)、および/または
● Fabおよび/またはF(ab)2。
【0063】
本明細書中で使用される「誘導体」という言葉は、構造的には異なるが、共通の抗体概念、例えばscFv、scFv-FC、Fabおよび/またはF(ab)2、ならびに二価、三価またはそれ以上の特異的抗体構築物または一価抗体、およびさらに保持する標的結合能と構造的に幾つかの関連性を有するタンパク質構築物を指す。これらの項目はすべて以下に説明する。
【0064】
当業者に知られている他の抗体誘導体は、ダイアボディ、ラクダ抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、scFvsの2つの鎖からなる二価ホモ二量体、IgAs (2つのIgG構造がJ鎖と分泌成分によって連結されている)、サメ抗体、新世界霊長類フレームワークと非新世界霊長類CDRからなる抗体、CH3+VL+VHを含む二量体構築物、および抗体コンジュゲート(例えば、毒素、サイトカイン、放射性同位体または標識に連結された抗体またはフラグメントもしくは誘導体)である。これらのタイプは文献によく記載されており、本開示に基づいて当業者が使用することができ、さらに発明の活性を加える。
【0065】
ハイブリドーマ細胞の製造方法は、以前に記載されている(ケーラーおよびミルシュタイン1975を参照のこと、その内容は本明細書に参照により援用される)。本質的には、例えば、マウスをヒト可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)タンパク質で免疫し、続いて前記マウスからB細胞を単離し、単離されたB細胞を骨髄腫細胞と融合させる。
【0066】
キメラmAbまたはヒト化mAbの製造および/または選択のための方法は、当技術分野で公知である。本質的には、例えば、標的結合に関与しないマウス抗sGC抗体由来のタンパク質配列は、対応するヒト配列によって置換される。例えば、Genentech社によるUS6331415はキメラ抗体の産生を記載し、一方、Medical Research CouncilによるUS6548640はCDR移植技術を記載し、Celltech社によるUS5859205はヒト化抗体の産生を記載している。これらの開示はすべて本明細書に参照により援用される。
【0067】
完全ヒトmAbの製造および/または選択のための方法は、当技術分野で公知である。これらは、ヒトsGCで免疫化されたトランスジェニック動物の使用、または、酵母ディスプレイ、ファージディスプレイ、B細胞ディスプレイまたはリボソームディスプレイのような適切なディスプレイ技術の使用を含み、ここで、ライブラリーからの抗体が定常期にヒトsGCに対してスクリーニングされる。
【0068】
In vitro抗体ライブラリーは、とりわけ、MorphoSysによりUS6300064およびMRC/Scripps/StratageneによりUS6248516で開示される。ファージディスプレイ技術は、例えば、DyaxによりUS5223409に開示されている。TaconicArtemis社によるEP1480515A2では、トランスジェニック型の哺乳動物プラットフォームが例として説明されている。これらの開示はすべて本明細書に参照により援用される。
【0069】
IgG、scFv、scFv-FC、Fabおよび/またはF(ab)2は、当業者に周知の抗体フォーマットである。関連する有効化技術は、それぞれの教科書から入手することができる。
【0070】
本明細書中で使用される、用語「Fab」は、抗原結合領域を含むIgGフラグメントに関するものであり、前記フラグメントは、抗体の各々の重鎖および軽鎖からの1つの定常および1つの可変ドメインで構成される.
【0071】
本明細書中で使用される「F(ab)2」という言葉は、1つ以上のジスルフィド結合によって互いに結合した2つのFabフラグメントからなるIgGフラグメントに関する。
【0072】
本明細書中で使用される、用語「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合物である一本鎖可変フラグメントであり、短いリンカー、通常セリン(S)またはグリシン(G)により結合される。このキメラ分子は、定常領域を除去し、リンカーペプチドを導入するにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。
【0073】
本明細書中で使用される場合、用語「scFv-FC」は、特異的抗体フォーマットに関する。このフォーマットは特に安定であり、植物細胞や植物で高収率で発現できる。scFv-FC構築物は、例えば、Bujakら(2014)に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。scFv-Fc構築物は、例えば1つ以上のジスルフィド結合によって互いに結合した2つの鎖からなる二量体構築物であり、各鎖は以下のような構造(N->C方向)からなる:
VL -リンカー-VH -リンカー-FC、または
VH -リンカー-VL -リンカー-FC
VLは抗体の軽鎖の可変ドメインであり、VHは抗体の重鎖の可変ドメインであり、FCは抗体の定常ドメインである。
【0074】
完全長IgG形抗体またはscFv-Fc結合ドメインの使用は、コンジュゲートにより長い半減期を与える。さらに、CDC (補体依存性細胞傷害)またはADCC (抗体依存性細胞傷害)活性化が必要な場合、抗体のFc部分が最も重要である可能性がある。
【0075】
改変された抗体フォーマットは、例えば、二重または三重特異性抗体構築物、抗体ベースの融合タンパク質、免疫コンジュゲートなどである。これらのタイプは文献によく記載されており、本開示に基づいて当業者が使用することができ、さらに発明の活性を加える。さらに、一価抗体もまた、US 2004/0033561 A1(ここではモノボディとして言及する)またはWO2007048037において以前に記載されており、これらの両方は本明細書に参照により援用される。
【0076】
抗体ミメティックは有機化合物-ほとんどの場合、組換えタンパク質またはペプチド-であり、抗体と同様に抗原と特異的に結合できるが、抗体とは構造的に関連しない。抗体を上回る一般的な利点は、より良好な溶解性、組織への浸透、加熱および酵素に対する安定性、および比較的低い生産コストである。抗体ミメティックは、治療薬および診断薬として開発されており、特に、アフィボディ分子、アフィリン、ユビキチン、アフィマ、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPins、フィノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディおよびナノCLAMPを包含する。抗体ミメティックについては、特にGebauerおよびSkerra (2009)において、非常に詳細に考察されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0077】
一般に、タンパク質バインダーは、一本鎖からなることができる。これは、例えば、タンパク質バインダーがscFv抗体、またはscFv-FCである場合である。この場合、タンパク質バインダー全体が単一のポリヌクレオチド上にコードされていてもよい。
【0078】
別の実施形態では、タンパク質バインダーは、例えばフルサイズのIgGまたはF(ab)2フラグメント中のように2つ以上の鎖を含むことができる。このような場合には、核酸構築物が、タンパク質バインダーのための異なる鎖またはドメインをコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含み得ることが条件とされ得る。
【0079】
タンパク質バインダーが2つ以上の鎖を含む別の実施形態では、2つの核酸構築物が提供され得、第1の核酸構築物は、タンパク質バインダーの第1の鎖、リンカーおよび毒素をコードする3つのポリヌクレオチドを含み、他方、第2の核酸構築物は、タンパク質バインダーの第2の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。
本発明の一実施形態では、本方法は工程(iii)で発現される融合タンパク質を回収する工程および/または精製する工程(iv)を更に含む。
【0080】
本発明の一実施形態では、植物または植物細胞がタバコ属に由来する。
【0081】
1つの実施形態において、植物を用いる場合、融合タンパク質の発現は一過性の発現である。別の実施形態では、植物細胞を用いる場合、融合タンパク質の発現は、一過性または安定な発現のいずれかである。
【0082】
本明細書中で使用される「一過性発現」という用語は、核酸、最も頻繁には発現カセットをコードするプラスミドDNAが宿主細胞または植物に導入された後、短時間発現される遺伝子の一時的発現に関する。
【0083】
本明細書中で使用される、用語「安定な発現」は、核酸、最も頻繁には発現カセットをコードするプラスミドDNAが宿主細胞のゲノム中に導入された後、時間的に連続的に発現される遺伝子の発現に関する(核または色素体の組み込み)。安定にトランスフェクトされた細胞では、外来遺伝子はゲノムの一部となり、したがって複製される。
【0084】
「誘導性プロモーター」により、一過性および安定な発現の両方を誘導することができた。これらのプロモーターは、内因性または外因性の刺激の存在に続いて、または化学的、環境、ホルモン、および/または発生シグナルに応答して、作動可能に連結されたDNA配列を選択的に発現する。これらの調節エレメントは、Abdel-Ghanyら(2015)によってレビューされ、US 10344290 B2において議論されているように、これらに限定されないが、エタノール、加熱、光、ストレス、ジャスモン、サリチル酸、植物ホルモン、塩、洪水または干ばつに感受性であり、これらの両文献は本明細書に参照により援用される。合成成分を含むが、これらに限定されない誘導性プロモーターは、Aliら(2019)において議論されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0085】
Nicotiana属はタバコ植物を包含する。タバコ植物または植物細胞は、安定なリンカー(Francisco et al. (1997)およびUS6140075A)によりタンパク質毒素と結びついた小さなsFvフラグメントから構成される組換え免疫治療用バインダー‐毒素融合タンパク質を生産するために、すでに試験されている。
【0086】
タンパク質融合の別の例は、非切断性リンカーを介してscFv-Fcに組換え融合させたヒト免疫サイトカインIL2のNicotiana benthamianaにおける一過性の産生である(Marusicら(2016))。しかしながら、切断可能リンカーを介して非常に強力なタンパク質毒素に連結された抗体の産生は、植物系において開示されていない。
本発明の1つのさらなる実施形態によると、植物細胞は、以下からなる群より選択される少なくとも1つである:
● Nicotiana tabacum cv. BY2、
● Nicotiana tabacum NT-1,
● Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ),
● Daucus carota(ドーカス・カロタ 、ノラニンジン)および/または
● Oyrza sativa(オリザ・サティバ、イネ)。
【0087】
Nicotiana tabacum cv. BY2 aka Tobacco BY-2細胞およびcv.Nicotiana tabacum 1(NT‐1、BY‐2の同胞)は非緑色で速く成長する植物細胞であり、適切な培養培地と良好な培養条件で1週間以内にその数を100倍まで増殖できる。このタバコの品種は、細胞培養として、より具体的には細胞懸濁培養(液体培地で増殖する特殊な細胞集団、植物細胞の特定の生物学的特性を研究するために科学者によって育てられる)として維持されている。細胞懸濁培養物では、各細胞は独立に、あるいは培養液中ではせいぜい短い鎖でのみ浮遊している。それぞれの細胞は他の細胞と類似の特性をもっている。
【0088】
モデル植物系はヒト研究のためのHeLa細胞に匹敵する。この生物は比較的単純で予測可能であるため、生物学的過程の研究が容易になり、より複雑な生物を理解するための中間段階となりうる。これらは植物生理学者や分子生物学者によってモデル生物として使われ、また比較的高い均一性と高い成長速度のために高等植物のモデル系としても使われ、植物細胞のまだ一般的な挙動を特徴としている。自然に生育した植物(in vivo)のどの部分内でも細胞型が多様であるため、生きている植物細胞の一般的な生化学現象のいくつかを調べ、理解することは非常に困難である。たとえば、溶質の細胞内外への輸送は、多細胞生物の特殊化した細胞の挙動が異なるため、研究が難しい。タバコBY-2のような細胞懸濁培養物は、タバコBY-2細胞が互いに非常に類似して挙動するため、単一細胞およびそのコンパートメントのレベルでこれらの研究のための良好なモデル系を提供する。隣接する細胞の挙動の影響は、懸濁液中では、完全な植物の場合ほど重要ではない。その結果、刺激が与えられた後に観察された変化は、統計的に相関することができ、これらの変化が刺激に対する反応であるか、単に偶発的なものであるかを決定することができる。BY-2およびNT-1細胞は比較的よく理解されており、異種タンパク質、特に抗体の発現を含む研究においてしばしば使用される(Hellwigら(2004))。このような方法は、Hakkinenら(2018)に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0089】
Torres (1989)はニンジン細胞懸濁培養物(Daucus carota)を確立する方法について論じている。Shaaltielら(2007)はニンジン細胞に基づく発現系を用いた酵素の生産について論じている。これらの文献の内容は、本明細書に参照により援用される。Daucus carotaおよびOryza sativaも、Santosら(2016)における適切な植物細胞ベースの発現システムとして考察されており、その内容は本明細書に参照により援用される。Nicotiana tabacum, Arabidopsis thaliana, Oryza sativaにおける組換えタンパク質の生産はPlassonら(2009)に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0090】
一般に、本発明は、外来ポリペプチドの発現に適したDNA構築物で植物の細胞を形質転換し、標準的な植物細胞培養条件下で培養することができる任意の植物品種で実践することができる。カルス培養または他の従来の植物細胞培養法を用いてもよいが、植物細胞懸濁液または植物組織培養が好ましい。
【0091】
本発明の他の一実施形態によると、植物はNicotiana benthamianaである。Nicotiana植物における抗体の産生は、例えば、Daniellら(2001)に開示されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0092】
本発明の文脈で使用できる他の植物または植物細胞には、レタス(Lactuca spp.)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis spp.)が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の1つのさらなる実施形態によれば、植物細胞または植物全体を核酸構築物と接触させる工程(i)は、「発現ベクター」単独またはAgrobacterium tumefaciensによって媒介される「発現ベクター」、それに由来するベクター、または粒子ボンバードメント/バイオリスティックの使用を含む。
【0094】
本明細書中で使用される「発現ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および核酸構築物を植物または植物細胞に導入することを可能にする他のビヒクルのようなベクターに関するものである。本発明の方法で有用な発現ベクターは、当技術分野で周知である。「ベクター」という用語は、調節エレメントおよび核酸構築物を導入するための部位を含む、プラスミドのような核酸分子を意味する。
【0095】
いくつかの実施形態において、ベクターは、完全ウイルス系、解体ウイルス、または非ウイルス元素に基づくことができるが、これらに限定されない。Geneware(U.S. Pat.No. 7,939,318に記載されたプラットフォーム)およびMagnIconは、それぞれAltmanら(2011)に記載されている、最もよく知られている完全ウイルス系および解体ウイルス系であり、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0096】
通常使用されるウイルスベクターは、RNAまたはDNAベースのベクターの両方に分類することができる。例えば、RNAベクターは、限定されるものではないが、トバモウイルス(例えば、タバコモザイクウイルス(TMV))、ササゲモザイクウイルス(CMV)、ポテックスウイルス(例えば、ジャガイモウイルスX (PVX))またはトブラウイルス(例えば、タバコラットルウイルス(TRV))を含むことができる。DNAベクターは、マストレウイルス、クルトウイルス、トポクウイルス、およびベトモウイルスを含む、しばしばCaulimovirusおよびgemini-virusに関連している。例として、Bean Yellow dwarf (BeYDV)およびマストレウイルス由来のタバコ黄萎ウイルスが広く使用されている。
【0097】
代替として、ベクターは、非ウイルスエレメントに基づくことができ、例えば、合成(Peyretら、2019年)または他のタンパク質に由来する(Diamosら、2016年)5'および3'非翻訳領域を含む。これら2つの文書の内容は本明細書に参照により援用される。
【0098】
ここで注意すべきことは、ベクターが複製的であっても複製的でなくてもよいことである。また、ベクターの複製可能性は、Dugdaleら(2013)によって記載されたIn Plant Activation (インパクト)システムのような調節エレメントの一回活性化を誘導することができ、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0099】
アグロバクテリウムトランスフェクションは、例えば、Mayoら(2006)に記載されており、その内容は本明細書に参照により援用される。TMVトランスフェクションは、例えば、Hussain Shahら(2013)に記載されており、その内容は本明細書に参照により援用される。ボンバードメント/バイオリスティックは、例えば、Kikkertら(2005)に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0100】
本発明による方法の利点は、タバコ植物または細胞株を用いる実施形態に限定されないことを強調することが重要である。例えば、切断可能なリンカーまたは切断可能なドメインが植物または植物細胞によってそのまま残されているために、コンジュゲートが植物中で発現され得るという事実は、植物または植物細胞を害することなく、コンジュゲートの発現を可能にする植物に対する普遍的な原理である。したがって、本発明の概念は適用可能であり、組換え発現に用いることができるすべての植物または植物細胞において可能となる。
【0101】
核酸分子は、所定の植物または植物細胞中で発現することができる適切な作動可能に連結されたプロモーターの制御下で、植物または植物細胞中で発現させることができる。植物細胞の形質転換、培養、および再生には、以下の実施例に記載されたものを含むが、これらに限定されない任意の従来の方法を用いることができる。
【0102】
核ゲノムの形質転換には、従来の技術を用いることができる。外来DNAを植物細胞に一時的または安定的に導入するための全ての公知の手段を使用することができ、例えば、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、粒子銃ボンバードメント、または花粉、小胞子、種子および未成熟胚のような細胞へのDNAの侵入である。Geminiウイルスまたはサテライトウイルスのようなウイルスベクターもまた、導入手段として使用され得る。Agrobacterium tumefaciensおよびrhizogenesは、発現ベクターを導入するための好ましい手段を構成する。この場合、本発明の配列は、プロモーター、ターミネーター等の必要なすべての調節配列を有する適切なベクターに導入され、安定な植物世代の場合には、異種配列を組み込んだ形質転換体を選択するのに必要な任意の配列も導入される。特に誘導性発現の場合、本発明の配列を、誘導性可能なプロモーターおよび全ての必要な調節配列を含むベクターに導入する。
【0103】
植物細胞への核酸分子の導入は、核ゲノムの形質転換、または植物細胞の葉緑体ゲノムの形質転換、またはミトコンドリアゲノムの形質転換のいずれかによって、一過性または安定な方法で行うことができる。
【0104】
植物細胞の核ゲノムの形質転換は、上記のターゲティングシグナルを用いて行われることが多く、タンパク質の発現および/または蓄積が起こるであろう細胞内区画を決定する。
【0105】
標的配列は、ペプチドの他に、KDEL、SEKDELまたはHEKDELペプチドからなる小胞体保持シグナルも含むことができる。これらのシグナルは通常、タンパク質のC末端に存在し、成熟したタンパク質上にとどまっている。
【0106】
本発明の1つの実施形態によれば、ペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインは、哺乳動物細胞によって発現される酵素、または哺乳動物宿主によって産生される酵素によって特異的にまたは非特異的に切断可能である。
【0107】
そのような酵素およびそれらの切断部位の例は、下表(Choiら(2012)も参照)に示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。この表では、それぞれの酵素に関する情報をさらに可能にするために、"Merops"データベースを記載する。https://www.ebi.ac.uk/merops/index.shtml.
【0108】
切断部位は、切断部位点(↓で表される)から記述される。xという文字はすべてのアミノ酸を意味する。いくつかの優先的なアミノ酸がある場合には、斜線(/)で隔てられている。
【0109】
このような酵素は、好ましくはプロテアーゼである。1つの実施形態において、前記ペプチドリンカーは植物酵素によって切断可能できない。
【0110】
フーリンは、スブチリシン様プロ蛋白質転換酵素ファミリーに属し、そして蛋白質C末端をカノン塩基性アミノ酸配列モチーフArg‐X‐Arg/Lys‐Arg (RX(R/K)R)を切断する酵素であり、ここでXは任意の天然の蛋白質生成アミノ酸であり得る。前記モチーフはここではフーリン切断部位と呼ぶ。好ましくは、その配列はHRRRKRSLDTSである。
【0111】
カテプシンは他の生物と同様にすべての動物に見られるプロテアーゼである。大部分のメンバーはリソソームに見られる低pHで活性化される。カテプシンBはジペプチドモチーフVal‐Ala (VA)を含むペプチド配列を切断することができる。前記モチーフは、ここではカテプシンB切断部位と呼ばれる。当業者は、Turk el al (2012)におけるカテプシンおよびその切断部位に関する情報を十分に可能にすることを見出し、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0112】
グランザイムBは、独特のテトラペプチド配列を切断するセリンプロテアーゼである。このようなテトラペプチド切断部位は580以上存在する(Weeら(2011))。テトラペプチドIle‐Glu‐Pro‐Asp (IEPD)をin vitroで最適テトラペプチド切断配列として同定した。しかしながら、グランザイムB基質に関する新たなデータは、in vivo切断特異性がはるかに多様であり、多数の基質がテトラペプチド配列を越えて広がる切断特異性を有することを示唆している (VanDammeら(2009))。
【0113】
天然のグランザイムBプロ酵素は、カテプシンC(ジペプチジルペプチダーゼI)による切断によって活性化され、切断部位にはDAGE'IIGGが存在する。このようにして、活性化されたグランザイムB酵素は、IIGGHEで始まり、本明細書に配列番号1として示されるN末端を有する。したがって、これは、本発明の一実施態様に従って使用される活性化酵素のN-切断配列である。
【0114】
カスパーゼ(システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ、システインアスパルターゼまたはシステイン依存性アスパラギン酸指向性プロテアーゼ)は、プログラムされた細胞死において必須の役割を果たすプロテアーゼ酵素のファミリーである。ヒトプロテオームでは1500以上のカスパーゼ基質が発見されている。一般的な切断モチーフはDXXD-A/G/S/Tであり、ここでXは任意の天然のタンパク質生成性アミノ酸であり得る。当業者は、Kumar el al (2014)においてカスパーゼおよびその切断部位に関する情報を十分に可能にすることを見出し、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0115】
マトリキシンとしても知られるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、カルシウム依存性亜鉛含有エンドペプチダーゼである。他のファミリーメンバーは、アダマリシン、セラリシン、アスタシンである。まとめると、これらの酵素はあらゆる種類の細胞外マトリックスタンパク質を分解することができるが、多くの生理活性分子を処理することもできる。当業者は、Eckard el al (2016)において、マトリックスメタロプロテアーゼおよびそれらの切断部位に関する十分な可能性のある情報を見出し、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0116】
一般に、当業者は、タンパク質毒素またはプロトキシンの標的特異的放出を制御するために、通常の考察および文献照会により、それぞれの哺乳動物酵素と一致する特異的切断部位を選択することが可能である。これらの切断部位を見出すための一般的なガイドラインは、例えば、Rawlings (2016)に開示されている。
【0117】
本発明の1つの実施形態によれば、ペプチドリンカーまたはプロトキシン中の切断可能なドメインは、植物細胞によって発現される酵素、または植物宿主によって産生される酵素によっては切断できない。当業者は、この条件が満たされているかどうかをチェックするために、手元に一連のルーティンの方法を持っている。例えば、Wilbersら(2016)を参照のこと。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのタンパク質毒素またはプロトキシンは酵素である。タンパク質毒素は酵素として作用することが最も多いので、1つの毒素分子は多くの基質分子に作用することができる。そのため、標的構造に関しては通常化学量論的にしか作用しない非酵素性毒素とは対照的に、細胞に多重化毒性作用を及ぼす。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、タンパク質毒素は、以下から選択される群の少なくとも1つである。
(1)細胞死誘導タンパク質(「毒素クラス1」)
(2)タンパク質合成阻害剤(「毒素クラス2」)
(3)膜撹乱タンパク質(「毒素クラス3」)
(4)細胞分裂阻害タンパク質(「毒素クラス4」)
【0120】
細胞死誘導タンパク質は、限定されるものではないが、アポトーシス経路に直接的または間接的に作用し、かつ/または核成分に影響を及ぼすタンパク質からなる。タンパク質を誘導する細胞死は、タンパク質分解および/または核酸分解活性フォーマットにおいて、アポトーシス媒介タンパク質、RNAおよびDNAを標的とする。
【0121】
タンパク質合成阻害剤のクラスは、リボソームの適切な機能を妨げるタンパク質からなる。このクラスは、主に、ADP-リボシル化タンパク質のグループによって、限定されることなく表される。これらのタンパク質は、哺乳動物の伸長因子2のADP-リボシル化を触媒し、その不活性化とリボソームの遮断を導いた。
【0122】
膜撹乱タンパク質には、細孔形成タンパク質群が含まれるが、これらに限定されない。このグループのタンパク質は細胞膜に孔を挿入し、電解質や他の小分子を自由に通すことで、細胞溶解につながる膜の完全性を崩壊させる。
【0123】
細胞分裂阻害タンパク質は、細胞骨格の要素(微小管、チューブリン、アクチン)および/または細胞周期の進行を調節するタンパク質に作用することによって、細胞周期を中断するタンパク質群である。微小管の動的阻害とサイクリン依存性タンパク質の変化が有糸分裂停止を誘導し、細胞の除去につながる。
【0124】
本発明の一実施形態によれば、タンパク質毒素またはプロトキシンは天然タンパク質毒素の脱免疫バリアントである。配列改変によりタンパク質毒素を脱免疫する組換え方法が開示されており、例えば、Schmohlら(2015)、またはGrinbergおよびBenhar (2017)に記載されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0125】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つのタンパク質毒素は、好ましくはグランザイムのグループ、より好ましくはグランザイムB、または前記タンパク質毒素の毒性活性を保持するそのフラグメントから選択される哺乳動物毒素である。
【0126】
グランザイムは、細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞内の細胞質顆粒によって放出されるセリンプロテアーゼである。標的細胞にプログラムされた細胞死(アポトーシス)を誘導し、がん化した細胞やウイルスや細菌に感染した細胞を排除する。グランザイムは細菌も殺し、ウイルスの複製を阻害する。NK細胞やT細胞では、グランザイムはパーフォリンとともに細胞傷害性顆粒に詰め込まれている。グランザイムは粗面小胞体、ゴルジ複合体、トランスゴルジ網でも検出できる。細胞傷害性顆粒の含有量は、グランザイムの標的サイトゾルへの侵入を可能にするように機能する。顆粒は標的細胞と形成された免疫シナプスに放出され、パーフォリンは標的細胞内のエンドソームへのグランザイムの送達を媒介し、最終的には標的細胞のサイトゾルへと送達する。グランザイムはセリンエステラーゼファミリーの一部である。
【0127】
グランザイムBは、細胞死誘導作用と細胞分裂抑制作用の両方を有する(Weidleら(2014))。グランザイムB細胞溶解タンパク質は、エンドソームから放出された後にアポトーシスを誘導する。さらに、グランザイムBは、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ、DNA依存性プロテインキナーゼ、細胞骨格の構成成分および核有糸分裂に関与するタンパク質などのさらなるデス基質を切断することができる。
【0128】
グランザイムBは、カスパーゼ(特にカスパーゼ-3)を活性化することによってアポトーシスを活性化し、カスパーゼ活性化DNaseを含む多くの基質を切断して細胞死を実行する。グランザイムBはタンパク質Bidも切断する。Bidはタンパク質BaxとBakを動員してミトコンドリアの膜透過性を変化させ、他のタンパク質のなかで、チトクロームc(アポトソームを介してカスパーゼ-9を活性化するのに必要な部分の1つ)、Smac/DiabloとOmi/HtrA2(アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害因子を抑制する)の放出を引き起こす。グランザイムBはまた、カスパーゼ活性がなくてもアポトーシスを担うタンパク質の多くを切断する。もう1つのグランザイムは、カスパーゼ依存性およびカスパーゼ非依存性機構によって細胞死を活性化する。
【0129】
グランザイムはその標的細胞を殺すだけでなく、細胞内の病原体を標的にして殺すことができる。グランザイムBはウイルスタンパク質を切断してウイルスの活性化と複製を阻害する。グランザイムは核酸分子DNAやRNAに直接結合し、核酸分子結合タンパク質の切断を促進する。
【0130】
1つの実施形態において、前記タンパク質毒素またはプロトキシンは、植物または植物細胞に対して毒性を示さない。当業者は、この条件が満たされているかどうかをチェックするために、手元に一連のルーティンの方法を持っている。概要については、例えば、Klaine and Lewis (1995)を参照のこと。その内容は本明細書に参照により援用される。
【0131】
本発明の別の態様によれば、上記記載による方法で製造されたバインダー-毒素融合タンパク質が提供される。さらなる実施形態において、このようなバインダー-毒素融合タンパク質は、上記の説明に示されるように、すべての構造的または機能的限定を有し得る。これには、特に、タンパク質バインダーのフォーマット、リンカー部位または切断部位、および特異的毒素が含まれる。
本発明の一局面では、
少なくとも
a)選択された1つのタンパク質バインダー、
b)任意にペプチドリンカー、および
c)少なくとも1つのタンパク質毒素またはタンパク質プロトキシン
を含むバインダー‐毒素融合タンパク質であって、
バインダー‐毒素融合タンパク質が、少なくとも
A)タンパク質バインダーまたは標的結合鎖もしくはそのドメインをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、および
B1)切断可能なペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドおよびタンパク質毒素をコードするポリヌクレオチドか、または
B2)タンパク質プロトキシンをコードするポリヌクレオチドであって、このプロトキシンがその活性化のための切断可能なドメインを含む、ポリヌクレオチド
を作動的結合で含む核酸構築物によってコードされている、バインダー‐毒素融合タンパク質が提供される。
【0132】
繰り返しになるが、さらなる実施形態では、このようなバインダー-毒素融合タンパク質は、上述の説明に示されているように、すべての構造的または機能的限定を有し得る。これには、特に、タンパク質バインダーのフォーマット、リンカー部位または切断部位、および特異的毒素が含まれる。
【0133】
本発明の1つの実施形態によると、前記タンパク質は、少なくとも1つの植物特異的N‐グリカンを含む。N-グリカンはタンパク質中のアスパラギン(Asn)残基のアミド基に結合したグリカンであり、大部分はAsn-X-ThrまたはAsn-X-Ser (NXTまたはNXS)モチーフにあり、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸である。典型的な植物特異的N‐グリカンは、Gomordら(2010)に開示されており、哺乳動物のN-グリカンパターンとは著しく異なる。
図7も参照。
【0134】
本発明の1つの実施形態によると、タンパク質バインダーはヒトCD20に結合する。1つの実施形態において、タンパク質バインダーは、抗体、標的結合能を保持する抗体フラグメントまたは誘導体、または抗体ミメティックである。
1つの実施形態において、バインダーは、以下の少なくとも1つを含む。
a)リツキシマブ(C2B8)に含まれる3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRを含むセット、
b)a)の重鎖CDR/軽鎖CDRセットであって、少なくとも1つのCDRが、a)に規定されているそれぞれのCDRに比べて最大3個のアミノ酸置換を有する一方、ヒトCD20に結合する能力を維持しているセット、
c)a)の重鎖CDR/軽鎖CDR組合せであって、少なくとも1つのCDRが、a)で規定されているそれぞれのCDRに対して≧66%の配列同一性を有する一方、ヒトCD20に結合するその能力を維持するセットであり、
CDRがヒトCD20に結合できるように適当なタンパク質フレームワークに埋め込まれている。
【0135】
リツキシマブ(既知およびC2B8)およびその配列を開示する様々な特許はStorz U(2014)に含まれており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0136】
リツキシマブの全長配列は、本明細書中では、配列番号4(重鎖)および5(軽鎖)として示される。リツキシマブの可変ドメインは、例えば、EP2000149B1の請求項1および
図4および
図5に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0137】
リツキシマブのCDRに対応する配列は、例えば、以下に示す配列番号9~14に開示されている。
【0138】
いくつかの実施形態において、CDRの少なくとも1つは、それぞれのCDRに対して、≧67、好ましくは≧68、より好ましくは≧69、≧70、≧71、≧72、≧73、≧74、≧75、≧76、≧77、≧78、≧79、≧80、≧81、≧82、≧83、≧84、≧85、≧86、≧87、≧88、≧89、≧90、≧91、≧92、≧93、≧94、≧95、≧96、≧97、≧98または最も好ましくは≧99%の配列同一性を有する。
【0139】
別の実施形態では、CDRの少なくとも1つは、親和性成熟または他の修飾によって修飾されており、上に開示された配列と比較して配列改変をもたらしている。
【0140】
いくつかの実施形態において、CDRの少なくとも1つは、a)またはb)に明記されるように、それぞれのCDRに対して最大2、好ましくは1アミノ酸置換を有する。
1つの実施形態において、バインダーは、以下の少なくとも1つを含む。
a)リツキシマブ(C2B8)に含まれる重鎖/軽鎖可変ドメイン対、
b)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン対であって、ドメインの少なくとも1つがa)に対して80%以上の配列同一性を有する、重鎖/軽鎖可変ドメイン対、
c)a)の重鎖/軽鎖可変ドメイン配列対であって、ヒトCD20に結合する能力を維持しながら、ドメインの少なくとも1つがそれぞれa)に対して最大10個のアミノ酸置換を有する、重鎖/軽鎖可変ドメイン対。
【0141】
いくつかの実施形態において、ドメインの少なくとも1つは、リツキシマブ(C2B8)の重鎖/軽鎖可変ドメイン対に対して≧81、好ましくは≧82、より好ましくは≧83、≧84、≧85、≧86、≧87、≧88、≧89、≧90、≧91、≧92、≧93、≧94、≧95、≧96、≧97、≧98または最も好ましくは≧99%の配列同一性を有する。
【0142】
いくつかの実施形態において、ドメインの少なくとも1つは、リツキシマブ(C2B8)の重鎖/軽鎖可変ドメイン対に対して、最大9個、好ましくは最大8個、より好ましくは最大7個、6個、5個、4個、3個または2個および最も好ましくは最大1個のアミノ酸置換を有する。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態によれば、一本鎖ダイアボディにおける少なくとも1つのアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
一つの実施形態において、タンパク質バインダーは、
● 上記で定義したタンパク質バインダーの1つと比較して、ヒトCD20に対する標的結合親和性が≧50%である、および/または
● 上述のタンパク質バインダーの1つとヒトCD20との結合について競合する。
【0144】
本明細書中で用いる「標的結合親和性」という言葉は、本発明に係る結合分子の標的に対する親和性を指し、「KD」値を用いて数値的に表現される。一般的に、より高いKD値は弱い結合に相当する。いくつかの実施形態において、「KD」は、放射性標識抗原結合アッセイ(MA)または表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって、例えばBIAcoreTM-2000またはBIAcoreTM-3000を用いて測定される。特定の実施形態では、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて、「オンレート」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」および「オフレート」または「解離の速度」または「解離速度」または「koff」も決定される。追加の実施形態では、「KD」、「kon」、および「koff」は、Octet(登録商標) Systemsを用いて測定される。
【0145】
本明細書中で使用される「結合について競合する」という用語は、上記の配列によって定義される抗体の1つに関して使用され、これは、実際の抗体が、前記配列定義抗体と同様に、同じ標的、または標的エピトープまたはドメインまたはサブドメインに結合する活性として、後者のバリアントであることを意味する。結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、後者の効率と同じか、またはそれより大きいか、またはそれより小さいことができる。例えば、基質への結合のための平衡結合定数は、2つの抗体について異なり得る。
【0146】
本明細書中で使用される用語「所定の標的に結合する能力を維持する」とは、例えば、それぞれのバリアントが非修飾ペプチドのそれと比較して≧50%の標的結合親和性を有することを意味する。
【0147】
この文脈において、本明細書中で使用される「保存的アミノ酸置換」は、非保存的置換よりも抗体機能に対するより小さな効果を有する。アミノ酸の分類にはいろいろな方法があるが、それらの構造とR基の全般的な化学的性質に基づいて、しばしば6つの主要な群に分類される。
【0148】
いくつかの実施形態において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには以下を有するアミノ酸が含まれる。
● 塩基性側鎖(例:リジン、アルギニン、ヒスチジン)、
● 酸性側鎖(例:アスパラギン酸、グルタミン酸)、
● 非荷電極性側鎖(例:グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、
● 非極性側鎖(例:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、
● β分岐側鎖(例:スレオニン、バリン、イソロイシン)および
● 芳香族側鎖(例:チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)
【0149】
他の保存されたアミノ酸置換は、ペプチドの電荷を修飾するためにアスパラギンをアスパラギン酸に置換する場合のように、アミノ酸側鎖ファミリーを横切って起こることもできる。保存的変化には、さらに、化学的に相同な非天然アミノ酸(すなわち、ロイシンの代わりに合成非天然疎水性アミノ酸、トリプトファンの代わりに合成非天然芳香族アミノ酸)の置換を含むことができる。
【0150】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較窓上で2つの最適に並べられた配列を比較することによって決定され、ここで、比較窓におけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、付加または欠失を含まない参照配列(例えば、ポリペプチド)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して一致位置の数を得、一致位置の数を比較窓における位置の総数で除し、結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
さらなる実施形態では、バインダー-毒素融合タンパク質は、以下の構造の1つを有する:
● (scFv-FC)-(切断部位)-毒素/プロトキシン(二量体)
● 二つのHCと二つのLC-(切断部位)-毒素/プロトキシンの四量体
● 二つのLCと二つのHC-(切断部位)-毒素/プロトキシンの四量体
【0151】
このような構造は例えば
図9に示されており、ここでCSは切断部位を意味し、Toxは毒素/プロトキシンを意味する。HCはIgG抗体の重鎖、LCはIgG抗体の軽鎖を表す。scFv-FCはscFv-FC構築物の略である。
さらなる実施形態では、バインダー‐毒素融合タンパク質が、以下の構造の1つを有する(N->C方向):
・(scFv-Fc)-CS-毒素(二量体)(―>Fc領域のC末端に結合した毒素)(
図9A参照)、
・2つのHCと2つのLC-CS-毒素の四量体(―>LCのC末端に結合した毒素)(
図9B参照)、
・2つのLCと2つのHC-CS-毒素の四量体(―>HCのC末端に結合した毒素)(
図9C参照)、
・毒素-CS-(scFv-Fc)(二量体)(―>scFvのN末端に結合した毒素)(
図9D参照)、
・2つのHCと2つの毒素-CS-LCの四量体(―>LCのN末端に結合した毒素)(
図9E参照)、
・2つのLCと2つの毒素-CS-HCの四量体(―>HCのN末端に結合した毒素)(
図9F参照)、
・毒素-CS-(-FC-scFv)(二量体)(―>FcのN末端に結合した毒素)(
図9G参照)。
【0152】
この場合、CSは一実施形態のフーリン切断部位にある"切断部位"の略である。
【0153】
1つの実施形態では、毒素はグランザイムBである。
さらなる実施形態において、バインダー-毒素融合タンパク質は、少なくとも1つを含む。
別の実施形態では、バインダー‐毒素融合タンパク質が、
・配列番号2または配列番号17に記載のアミノ酸配列、
・配列番号4に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8のHC)および 配列番号6に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8ーFCS―グランザイムBのLC)、
・配列番号7に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8―FCS―グランザイムBのHC)および配列番号5に記載の2つのアミノ酸配列(C2B8のLC)
の少なくとも1つを含む。
【0154】
第一の選択肢に関しては、バインダー-毒素融合タンパク質は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに結合した、前記配列のうちの2つを含み得る。
【0155】
第2および第3の選択肢に関して、バインダー-毒素融合タンパク質は、1組のジスルフィド結合により1つに結合された、2つのこのような対を含み得る。
【0156】
本発明の別の態様によれば、少なくとも上記いずれかの記載による融合タンパク質、および任意に1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0157】
本発明の別の態様によると、(i)上記記載による融合タンパク質または上記記載による医薬組成物、および(ii)1以上の治療的活性化合物を含む組合せ物が提供される。
【0158】
本発明のさらなる実施形態では、腫瘍性疾患を罹患しているか、発症する危険性があるか、および/または診断されているヒトまたは動物対象の治療またはそのような状態の予防に使用するため(医薬品の製造に使用するため)の、上記のバインダー‐毒素融合タンパク質、または上記の組成物、または上記の組合せが提供される。
本発明の別の局面では、上記のバインダー‐毒素融合タンパク質、または上記の組成物、または上記の治療的有効量を投与することを含む、腫瘍性疾患に罹患している、発症の危険性がある、および/または診断されているヒトまたは動物対象を治療するための、またはそのような状態を予防するための方法が提供される。
この点で重要なのは、植物がつくるN-グリカンは、たとえば哺乳動物でつくられるN-グリカンとは著しく異なることである。特に、タバコ植物が生産するN-グリカンは、
● (哺乳動物のα6の代わりに)α3グリコシド結合を介して近位N-アセチル-グルコサミン残基に結合したフコース残基
● β2グリコシド結合を介して近位マンノース残基に複合したキシロース残基
● 2つの末端N-アセチルグルコサミン残基を有し、各々はα3グリコシド結合を介してフコース残基、および(哺乳動物のノイラミン酸の代わりに)β3グリコシド結合を介してガラクトース残基を担持する。
【0159】
一方、たとえば藻類で組換え的に発現されたタンパク質は、しばしば任意の種類のグリコシル化を欠いている。しかし、藻類は、1つ以上のジスルフィド架橋を有するIgG形抗体、または抗体フラグメントを発現することができる。
【0160】
したがって、上記のような新規な方法で産生されたバインダー-毒素コンジュゲートは、別の発現系で産生されたバインダー-毒素コンジュゲートを上回る新規な構造的特徴も有している。タバコ植物がつくるN-グリカンの例示については例えば
図7参照ください。
【実施例】
【0161】
本発明は図面および前記の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は例示または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a(1つの)」又は「an(1つの)」は複数形を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを使用して利益を得ることができないことを示すものではない。特許請求の範囲のどの引用符号も、範囲を限定すると解釈するべきではない。
【0162】
本明細書に開示される全てのアミノ酸配列は、N末端からC末端まで示される;本明細書に開示される全ての核酸配列は、5'->3'で示される。
材料及び方法
【0163】
遺伝子構築物
完全長リツキシマブHCおよびLC配列を用いて、mAbベースのバインダー-毒素融合タンパク質を開発した。リツキシマブ配列の重鎖および軽鎖の可変部分配列を、一本鎖scFvに組み立て、ヒトIgG1 Fc部分配列に融合させた。次いで、ヒトフーリン切断配列を用いて、LCのC末端部分におけるヒトグランザイムB配列、または完全長リツキシマブのHC、またはscFv-FcのC末端部分におけるヒトグランザイムB配列を融合させて、HC + LC-FCS-グランザイムB、HC-FCS-グランザイムB + LCおよびscFv-c-FCS-グランザイムB融合タンパク質配列を得た。もう一つのバインダー毒素融合タンパク質は、切断部位なしでグランザイムBに連結したscFv‐Fc部分を用いて実現し、scFv‐Fcグランザイム Bを得た。これらの配列は、XbaIとIsceIに隣接した遺伝子合成により産生された。
【0164】
pPZP200バイナリープラスミドの骨格を用いて、nptIIカナマイシン耐性カセット、1つ(scFv-Fcフォーマット)または2つ(mAbフォーマット)の目的の発現カセットおよびGFP発現カセットを連続的に含む新たなバイナリープラスミドpPZP-ATBを構築した。XbaIおよびIsceIを用いて、リツキシマブHCおよびLC、LC-FCS-GB、HC-FCS-GB、scFv-Fc-FCS-GB、scFv-Fc-GBをコードするORFを、カリフラワーモザイクウイルスp35Sプロモーター(p35S)とAgrobacterium Nopaline Synthaseターミネーター(tNOS)の間の適切なバイナリープラスミドに導入した。目的の遺伝子とGFPカセットとの間のトマト・ブッシュ・スタントウイルスp19遺伝子発現カセットを含むpPZP-ATBバイナリープラスミドのバージョンも作成した。
【0165】
Nicotiana benthamiana 植物葉の一過性発現
16時間明/8時間暗光サイクル、22+/-3℃で生育したNicotiana benthaminana7-8 週齢の植物葉は注射器浸透により一時的に形質転換された。0.8~1.0付近の600nm光学密度(OD600)に達するpPZP‐ATB‐scFv‐Fc‐GBまたはpPZP‐ATB‐scFv‐Fc‐F‐GB‐p19バイナリープラスミドを担持したAgrobacterium tumefaciens LBA4404(pBBR1MCS‐5.virGN54D)またはGV3101(pMP90RK)を、10分間、3500gで遠心分離することにより収集した。最終的に、菌を浸透緩衝液(10mM MgCl2、10mM MES、100μMアセトシリンゴン、pH 5.6)中のOD 600を0.5に調整し、不要な注射器を用いて混合物を浸透させた。浸潤領域は、アグロインフィルトレーションの4日後と6日後に収穫した。アグロインフィルトレーション日後に収穫した葉全体をタンパク質A精製に用いた。
【0166】
N. tabacum 細胞内の発現
Nicotiana tabacum植物懸濁細胞を、Nagataら(1992)(その内容は本明細書に援用される)によって記載されているように、植物培養培地中で130rpm、25℃で5日間増殖させた。0.8~1.0付近で600nmの光学濃度(OD600)に達するpPZP‐ATBバイナリープラスミドを有するAgrobacterium tumefaciens LBA4404(pBBR1MCS‐5.virGN54D)を2000gで5分間遠心分離して集めた。次に植物細胞と細菌細胞を共培養培地で30分間共培養した後、2000g 5分間の遠心分離を行った。上清を取り除いた後、細胞を2日間、固体共培養培地上に平板培養した。その後、一過性の形質転換の場合は、細胞を3回採取・洗浄し、セフォタキシムとカルベニシリンを含む植物培養培地で培養してから、さらに分析を進めた。安定した形質転換の場合、固体共培養の2日後に、選択的カナマイシンとセフォタキシムおよびカルベニシリン抗生物質を含む植物培地上で細胞を洗浄し、平板培養した。4週間後にカルスを選択し、その後の分析のために固体培地または液体懸濁培養で継代培養した。
【0167】
タンパク質解析: ELISA、SDS-PAGEおよびウエスタンブロット
採取した葉組織(120mg)を、400μLの抽出緩衝液(250mMソルビトール、60mMトリス、Na2EDTA、0.6% Polyclar AT、1mM PMSF、pH8.0にプロテアーゼ阻害剤:ロイペプチン、アプロチニン、アンチパイン 、ペプスタチンA、キモスタチンをそれぞれ2μg/mL添加)中で粉砕した。ホモジイズした組織を4℃で40分間18200gで遠心した。その後、上清を回収し、液体窒素中で凍結し、-20℃で保存した。
【0168】
抽出した組織をウェスタンブロット法で分析した。タンパク質を還元または非還元SDSローディングバッファー(80mM Tris‐HCl、pH 6.8、2% SDS、10%グリセロール、1mM PMSFおよび0.005%ブロモフェノールブルーにプロテアーゼ阻害剤カクテル:ロイペプチン、アプロチニン、アンチパイン 、キモスタチンおよびペプスタチンをそれぞれ2μg/mL添加)中で5分間煮沸し、13 000rpmで5分間遠心分離し、SDS‐PAGE (4~20%ポリアクリルアミド)により分離した。ウエスタンブロット法のために、タンパク質を半乾燥電気泳動装置(Biorad Trans-Blot Turbo)を用いてPVDF膜(Biorad)上に電気泳動した;次いで、膜をTBST緩衝液(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、0.5% Tween 20、pH 7.5)中の3% (w/v)非脂肪乳粉末で室温で1時間ブロックし、次いで、抗ヒトIgG Fc特異的領域(A170; Sigma-Aldrich)に対するHRP結合抗体、1 : 10.000の希釈、またはヒトグランザイムB一次抗体(EPR20129-217; Abcam)、1 : 10.000の希釈、に対して室温で1時間インキュベートした(TBS-Tween 0.1% + 0.5%非脂肪乾燥乳)。抗グランザイム B抗体に続いてHRP結合抗ウサギ抗体(545; Sigma)を1 : 10 000の希釈で使用した。タンパク質は、増強化学発光法(アマーサムイメージャー600/GE; GEヘルスケア)により検出した。
【0169】
抗CD20 ELISA
抗CD20コンジュゲート特異性解析のために、植物抽出物を96ウェルマイクロプレート(グレイナー)により37℃で2時間100μL 5μg/mLのCD20(AcroBiosystems)でコーティングし、その後洗浄緩衝液(TBS Tween 0,1%)で5回洗浄した。その後、RTで30分間、TBS pH8.0で200μL BSA 1%を用いてブロックを行い、5回洗浄した。5~0μg/mLの検量線を実現するために、100μLの抗CD20対照抗体を負荷し、同じ96ウェルプレートに100μLの試料をセットし、RTで2時間比較した後、5回洗浄した。100μLの1/150.000希釈検出抗体(ヤギ抗ヒトHRPO、Bethyl)を装填し、RTで1時間インキュベートした。その後、100μLのTMB反応緩衝液(ツェンテック)で30分間リベレーションを行い、最後にH3PO4 1Mで停止した。次に、酵素活性を450nmで分光分析により分析した。
【0170】
更なるELISA
開示されていない抗原に特異的なコンジュゲート(ヒト細胞の表面に発現され、いくつかのがんに過剰発現される構造、本明細書では抗原Xと呼ぶ)の特異性解析のために、Xに対するバインダーを含む精製バインダー-毒素融合タンパク質を96ウェルマイクロプレート(グレイナー)により分析した。ウェルは37℃で1時間、50μlの抗原X(2,5μg/ml)でコートした後、250μLの洗浄緩衝液装置で5回洗浄した(PBS Tween 0,1%)。次に、150μLのハイドロセイン(3.6%)を含むPBSTで30分間ブロッキングし、次にRTで5回洗浄した。5~0μg/mLの検量線を実現するために50μLの抗抗原対照抗体を装填し、同じ96ウェルプレートに50μLの試料を装填し、RTで1時間比較した後、5回洗浄した。50μLの1/200.000希釈検出抗体(ヤギ抗ヒトHRPO、Bethyl)を装填し、RTで1時間インキュベートした。その後、50μLのTMB反応緩衝液(ツェンテック)で15分間リベレーションを行い、最後にH
3PO
4 1Mで停止した。次に、酵素活性を450nmで分光分析により分析した。結果を
図4Bに示す。
【0171】
タンパク質A精製
アグロインフィルトレーションの4日後に、葉を採取し、重さをはかり、新鮮なアグロインフィルトレーション葉1g当たり2mLの抽出緩衝液(250mMソルビトール、60mMトリス、Na2EDTA、0.6% Polyclar AT、1mM PMSF、pH8.0にプロテアーゼ阻害剤:ロイペプチン、アプロチニン、アンチパイン 、ペプスタチンA、キモスタチンをそれぞれ2μg/mL添加)を用いてブレンダーで粉砕した。その後、混合物を二重ミラクロス(Millipore)層を通してろ過した。その後、濾液を20.000gで30分間4℃で遠心した。次いで、上清を、抽出緩衝液であらかじめ平衡化したタンパク質A樹脂に負荷した。次に、10カラム容量の60mM Tris pH8.0で樹脂を洗浄し、10% Tris 1M pH8.0で直接緩衝した100mMグリシンpH3.0を用いて溶出を行った。その後、濃縮タンパク質画分を採取し、液体窒素中で凍結した。
【0172】
in vitro細胞傷害性アッセイ
標的細胞Raji (CD20+)および非標的細胞Loucy (CD20)に対する抗CD20抗体リツキシマブおよびリツキシマブのコンジュゲート効果をin vitro細胞傷害性アッセイ(MTT)により評価する。簡単に述べると、Raji 細胞株とLoucy 細胞株を培養し、FBSフリー培養培地中で1.105細胞/50μLの密度で再懸濁し、細胞懸濁液50μlを96ウェルの平底プレート中に送った。次に、リツキシマブおよびリツキシマブを含むコンジュゲートを、37℃、5% CO2で6、24、および48時間、様々な濃度で細胞とともにインキュベートする。各時点について、MTTキットアッセイ(ロシュ社)を用いて細胞傷害性を評価する。細胞生存率は、550nmにおける吸光度を測定することによって計算される。3回のアッセイについて生存率平均を算出した。
【0173】
更なるin vitro細胞傷害性アッセイ
開示されていない抗原Xに対するバインダーを含む精製されたバインダー-毒素融合タンパク質の細胞株の生存率に対する効果を、細胞増殖試薬WST-1(Merck, 5015944001)を使用して分析した。WST-1 (4-[3-(4-ヨードフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-2H-5-テトラゾリオ]-1,3-ベンゼンジスルホン酸)はミトコンドリア脱水素酵素の基質であり、切断されてホルマザンになる。ホルマザン色素の生成量は、培養液中の代謝活性細胞数と直接的に相関している。
【0174】
細胞を、50mlの増殖培地中で30.000細胞/ウェルの密度で96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。バインダー-毒素融合タンパク質または緩衝液の希釈液を、バインダー-毒素融合タンパク質または緩衝液10mlを増殖培地40mlに加えて調製し、混合液を細胞にインキュベートした。バインダー-毒素融合タンパク質を二重に試験した。緩衝液および陽性対照(2% Tritonおよび5% DMSO)を3回試験した。
【0175】
37℃、5% CO2で72時間インキュベートした後、細胞増殖試薬WST-1(メルク社、5015944001)10mLを各ウェルに加え、37℃、5% CO2でさらに4時間インキュベートした。ホルマザン色素は背景サブトラクションのために450nmと690nmでプレートのODを読むことにより定量した。
【0176】
非処理細胞およびバインダー-毒素融合タンパク質および陽性対照で処理した細胞の生存率の%を測定するために、緩衝液で処理したウェルの平均OD値を計算し(OD
450nm -OD
690nm)、100%の生存率に設定した。結果を
図4Aに示す。
【0177】
ペプチドグリコフォーム分析
本発明による方法で作製されたバインダー-毒素融合タンパク質が、例えば哺乳動物のような他の発現系で作製されたバインダー-毒素融合タンパク質と構造的に異なっていることを実証するために、種々のNicotiana benthamiana株で作製された下記ペプチドのグリコフォームを分析した。
(両方とも太字で示されたN-グリコシル化部位を含む、本明細書で配列番号15および16として開示される、本明細書で開示されるバインダー-毒素融合タンパク質の一部に含まれる)。ATB_3とATB_4は野生型であり、ATB_22とATB_24は内因性β1,2-キシロシルトランスフェラーゼ(XylTまたはXT)とα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(FucTまたはFT)遺伝子(方法はStrasserら(2008)を参照のこと、その内容は本明細書に参照により援用される)についてRNAiによりノックダウンされた。
簡単に言うと、試料は溶液中で消化された。タンパク質をヨードアセトアミドでS‐アルキル化し、トリプシン(PROMEGA社)で消化した。
【0178】
80mMホルム酸アンモニウム緩衝液を水性溶媒として、BioBasic C18カラム(BioBasic-18, 150 x 0.32mm, 5μm, Thermo Scientific)に消化試料を装填した。6μL/分の流速で、45分間5% B (B: 80% ACCN)から40% Bへの勾配を適用し、続いて大きなペプチドの溶出を促進する40% Bから90% Bへの15分勾配を適用した。検出は、ポジティブイオン、DDAモード(=溶出ピークに対するMSMSモードへの切り替え)で標準ESI源を装備したQTOF MS (Bruker maXis 4G)で行った。MS走査を記録し(範囲: 150~2200Da)、3つの最も高いピークを断片化のために選択した。ESI検量混合物(Agilent)を用いて装置検量を行った。3つの可能なグリコペプチドは、HexNAc単位、ヘキソース、デオキシヘキソース及びペントース残基の数が変化するペプチド部分と結合したN‐グリカンからなるピークのセットとして同定した。これらのグリコペプチドの理論上の質量は、アミノ酸と単糖の単同位体質量を用いて表計算で決定した。
【0179】
手動による糖ペプチド検索は、DataAnalysis 4.0(Bruker)を用いて行った。異なるグリコフォームの定量には、最初の4つの同位体ピークのEIC(抽出イオンクロマトグラム)のピーク面積を用いた。
【0180】
切断アッセイ
毒素の放出を可能にする切断性が、精製scFv-Fc-FCS-GB (バインダー‐毒素融合タンパク質)に組換えフーリンを加えた後に、in vitroで証明されている。その反応は、6マイクログラムのバインダー‐毒素融合タンパク質に25ユニット/mlフーリン(NEB P8077S)を35μlの切断緩衝液(20mM Hepes, Triton X‐100 0,1%,1mM CaCl2, pH7.5)に加えた後、25度で一晩で行われた。SDS Page Coomassie blueゲル(4~20%ポリアクリルアミド)により切断が可視化されている。マウス由来の増殖誘導リガンド(APRIL)を、フーリン切断の対照として用いた。APRIL (SRP3189 - Sigma-Aldrich, 20μg lyophilizateタンパク質)を、0.1% BSAを含む水20 μL中に再懸濁した。
【0181】
結果
本研究では、切断可能リンカーにより毒素に融合した結合部分から成るいくつかの組換えバインダー‐毒素融合タンパク質を設計し、植物細胞または植物体全体で発現させることに成功した。リツキシマブ(C2B8)ベースの完全長mAb、scFv‐FcフォーマットおよびscFvフォーマットを結合部分として用いた。リツキシマブとその配列についてはStorz (2014)に記載されている。アミノ酸配列HRRRKRSLDTSを有するフーリン切断配列(FCS)を切断可能リンカーとして用いた。切断配列のない天然グランザイムBに組換え結合したscFv-Fcで構築した別のバインダー-毒素融合タンパク質も、組換え非切断可能リンカーの例として使用した。ペイロード例としてヒトグランザイムBを用いた。ペイロード位置は結合部分で変化する可能性があり、本研究では、完全長mAb重鎖または軽鎖のC末端におけるグランザイムBの融合を例示した。
【0182】
scFv-Fcフォーマットに基づくいくつかの組換えバインダー-毒素融合タンパク質が構築されている: scFv-Fc-FCS-グランザイムB、scFv-FcグランザイムB、scFv-Fc単独も対照として構築された。完全長mAbに基づく2つのバインダー‐毒素融合タンパク質を構築した: HC+LC‐FCS‐グランザイムB、HC‐FCS‐グランザイムB+LC。対照としてコンジュゲートされていないmAb単独も構築した。
以下の表に、本明細書で作製されたコンジュゲートをまとめる:
【0183】
各DNA構築物のDNA配列を植物コドンを最適化し、Cauliflower Mosaic Virus p35Sプロモーター(p35S)とAgrobacterium Nopaline Synthaseターミネーター(tNOS)の間のpPZP‐ATB agrobacteriumバイナリー形質転換ベクターに導入した。タバコ植物におけるコドン最適化のためのアプローチは、Rouwendalら(1997)に開示されており、その内容は本明細書に参照により援用される。
【0184】
サイレンシング抑制遺伝子p19の補足的発現カセットを有するpPZP‐ATB‐p19にも同じ構築物を導入した。この例では、安定なクローン選択のために、追加のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII (nptII)カナマイシン耐性カセットを挿入した。すべての構築物をAgrobacterium tumefaciens LBA4404またはGV3101にエレクトロポレーションした。
【0185】
植物発現系全体
アグロバクテリウム株を最初に用いて、scFv‐Fc‐F‐グランザイムBコンジュゲートをコードする構築物を用いた注射器アグロインフィルトレーションによりNicotiana benthamianaを一時的に形質転換した。次いで、アグロインフィルトレーション(dpa)の4日後および6日後に、抗ヒトIgG Fc部分抗体(
図1)を用いて、ウエスタンブロット法によりアグロインフィルトレーション植物組織抽出物を分析した。Agrobacterium tumefaciens LBA4404またはAgrobacterium GV3101株の使用、ならびに採取日およびp19 共発現が融合タンパク質発現に及ぼす影響を評価した。Agrobacterium tumefaciens LBA4404株を用いて発現させた場合、融合タンパク質は発現し、アグロインフィルトレーション後4日後には主に完全のようである(
図1、レーン1 &2)。GV3101株を用いた場合、アグロインフィルトレーション後6日以降に分解産物が多く現れると思われる。遺伝子サイレンシングのp19サプレッサーの付加は、p19の存在下でのみ発現を示すGV3101株(
図1、レーン6および8)と比較して、LBA4404(
図1、レーン2および4)によって行われた場合、発現に影響を及ぼさないようである。収穫時期については、アグロインフィルトレーション後6日以降に分解フラグメントが多く現れる(
図1、レーン3、4、8)。
【0186】
scFv‐Fc‐FCS‐グランザイムB融合タンパク質は80kDaの2つの単量体型からなり、約160kDaの完全な二量体型を生じる。
図1(左パネル)で用いたAgrobacterium tumefaciens LBA4404感染後のタンパク質抽出物について、ヒトIgG Fc部分(
図2、左)またはヒトグランザイムB(
図2、右)に対する特異的検出mAbを用いて、還元(+DTT)および非還元(-DTT)条件下でそれぞれの単量体成分をウエスタンブロット法により同定した。フルサイズのscFv-Fc-FCS-グランザイム B (
図2)の検出は、抗IgG Fc部分(左パネル、-DTT)を用いて約250kDaのシグナルを検出し、抗グランザイムB抗体を用いて同サイズのシグナル(右パネル、-DTT)を検出することにより確認する。約150kDaのヒト血清IgGも250kDa前後のシグナルをもたらすことに注意する。還元条件下では、単量体型は、抗IgG Fc抗体と抗グランザイムB抗体の両方によっても検出され、そのシグナルは、70~100kDa (左右のパネルのΔで示されている)で、単量体の予想される大きさ80kDa付近である。
【0187】
Agrobacterium tumefaciens LBA4404を用いて、バインダー-毒素融合タンパク質の他のフォーマットがNicotiana benthamianaで一時的に発現されている。植物の葉の抽出物を
図3に示す。scFv-Fc-FCS-グランザイム B、scFv-Fc-グランザイム Bが期待される大きさで検出される。さらに、完全なmAbベースのバインダー-毒素融合タンパク質HC-FCS-グランザイムB + LCも予想される大きさで検出される。
【0188】
植物細胞発現系
また、アグロバクテリウム株を用いてNicotiana tabacum cvを一時的に形質転換した。Bright Yellow 2細胞(BY-2細胞)Nicotiana tabacum cv.1 BY-2.には様々なバインダー‐毒素融合タンパク質が一過性に発現している。次に、細胞内抽出物を、抗Fcヒト IgGを用いたウエスタンブロット法により分析した。
【0189】
図5でscFv-Fc-FCS-グランザイムBの同一性の発現が確認されており、抗ヒトIgG Fc部分と抗グランザイムB抗体によって二量体のフルサイズの融合タンパク質が約250kDaの大きさで検出される。
【0190】
これらのバインダー‐毒素融合タンパク質は、同様に植物懸濁細胞において安定に発現させることができる。一例として、アグロバクテリウム株との共培養によるNicotiana tabacum cv. BY-2植物細胞の安定な形質転換を実施した。この場合、カナマイシン耐性カセットを用いて安定な植物細胞クローンを選択した。
図6は、安定な植物懸濁細胞中でのscFv-FCS-グランザイム B バインダー‐毒素融合タンパク質で、この種の分子が植物細胞系で安定的に発現され得ることを示す、一体の期待される大きさでの存在を示す。
【0191】
scFv-Fc、フーリン切断部位および毒素ファミリー2の毒素からなる新しいバインダー-毒素融合タンパク質(scFv-Fc-FCS-TOX2)も、植物細胞(
図8、左パネル)と植物全体(
図8、右パネル)でうまく発現された。TOX2は、本明細書に開示されているクラス2の毒素である(タンパク質産生抑制)。フルサイズのバインダー-毒素融合タンパク質は、すでに提示したscFv-Fc-FCS-グランザイムBに類似したその予想される大きさで検出される。
【0192】
これらの結果から、ヒト切断可能配列を介して細胞傷害性タンパク質ペイロードに結合したタンパク質バインダーから成るバインダー‐毒素融合タンパク質は、植物全体または植物細胞システムで生産可能であることが確認された。
【0193】
植物細胞で産生されたscFv-Fc-GBコンジュゲートの結合機能は、抗CD20 Elisaによって評価されており、リツキシマブと同等の親和性を有している(データ示さず)。CD20+細胞(RAJI細胞)についてもin vitro細胞傷害性アッセイを実施した。リツキシマブと比較して、同様の、または改善された細胞傷害性が待たれる。scFv‐Fc‐GBのFc部分は機能的であり、標的細胞に対して生物学的細胞傷害性を示すことを示唆した。
【0194】
ペプチドグリコフォーム分析
図10において、グリコサイト(EEQY
NSTYRおよび
NFSNDIMLLQLER)のMSスペクトルを示し(配列番号15および16)、ここに開示されたバインダー毒素融合ペプチドのいくつかに含まれる。
【0195】
同定された主要なグリコフォームは複合型グリカン(GnGn/GnGnXF)であった。他のグリコフォーム(Man5-Man9、GnGnF、GnGnX、MMXF、Man5GnおよびGnM(X)(F))も同様に検出された。表1に構造とその割合を示す。すべての試料は非グリコシル化ペプチドを含んでいた。
【0196】
MSスペクトルのピーク高さはグリコフォームのモル比を大まかに反映している(グリコフォームあたり複数の電荷状態が存在することに注意)。表1および表2に、種々のグリコフォームの定量を示す(最初の4つの同位体ピークのEICの組み込みにより定量化)。種々のグリコフォームの略号の説明については、Strasserら(2008)を参照されたい。その内容は本明細書に参照により援用される。
【0197】
【0198】
【0199】
可能性のある異性体が1つ記載されており、使用した方法ではグリカンの組成しか得られないことに注意してほしい。糖鎖の名称については、プログリカンの命名法を用いた(http://www.proglycan.com/protein-glycosylation-analysis/nomenclature))。参考文献「What's your name, sugar ? - A simple abbreviation system for complex N-glycan structures」についても参照されたい。
この命名法によれば、MGnXは例えば、以下を意味する。
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
本明細書で使用する略語
HC = 抗体重鎖
LC = 抗体軽鎖
TOX = 毒素
CS = 切断部位
FCS = フーリン切断部位
LINK = リンカー/切断部位
LINK2:クラス2のリンカー(=サイトゾルの切断部位)
LINK3:クラス3のリンカー(=細胞表面の切断部位)
GB=グランザイムB
TOX2:クラス2の毒素(=タンパク質合成阻害)
TOX3:クラス3の毒素(=膜摂動タンパク質)
scFv:一本鎖フォーマット
scFv-FC:scFv-FCフォーマット
【0204】
配列
以下の配列は、本出願の開示の一部を構成する。WIPO ST 25互換の電子配列リストも本願に付属している。疑いを避けるために、以下の表の配列と電子配列リストの間に矛盾がある場合、この表の配列が正しいものとみなされる。
【配列表】