(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】路面監視システム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20221003BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20221003BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
E01C23/01
G01C7/04
G08G1/00 J
(21)【出願番号】P 2022050494
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國貞 祐貴
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-111089(JP,A)
【文献】特開2021-189470(JP,A)
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】特開2020-086965(JP,A)
【文献】国際公開第2019/050014(WO,A1)
【文献】特開2005-115687(JP,A)
【文献】特開2021-025242(JP,A)
【文献】特開2021-036455(JP,A)
【文献】特開2022-014432(JP,A)
【文献】特開2021-152255(JP,A)
【文献】特開2021-169705(JP,A)
【文献】特開2017-101416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G08G 1/00
G01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を前記車両から取得する車両情報取得部と、
前記車両情報に基づいて前記道路の劣化度合を算出する劣化度合算出部と、
前記劣化度合算出部により算出された前記劣化度合に基づいて前記道路の補修の要否を判定する補修判定部と、
前記補修判定部により要補修と判定された前記道路の要補修箇所についての補修計画を作成する補修計画作成部と、を備え、
前記補修計画作成部は、複数の前記要補修箇所における前記道路の現在の路面状態に応じた渋滞度をそれぞれ取得し、取得した前記渋滞度に基づいて、複数の前記要補修箇所に対して補修の優先順位をそれぞれ決定し、前記優先順位に基づいて前記補修計画を作成する路面監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の路面監視システムにおいて、
前記車両情報取得部は、前記車両または前記車両に設置された情報機器に内蔵された加速度センサにより検出された加速度情報に基づいて、前記車両情報を取得する路面監視システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の路面監視システムにおいて、
前記車両情報取得部は、前記道路を走行した複数の前記車両から前記車両情報をそれぞれ取得し、
前記劣化度合算出部は、複数の前記車両からそれぞれ取得した前記車両情報に基づいて、前記道路の劣化度合を算出する路面監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の路面監視システムにおいて、
前記車両情報は、前記車両の走行地点を表す位置情報と、前記走行地点における前記車両の傾きおよび振動の少なくとも一方を表す傾斜/振動情報と、前記車両の車種を表す車種情報と、を含み、
前記劣化度合算出部は、前記車種情報に基づいて前記車両の車種ごとに異なる補正係数を用いて前記傾斜/振動情報を補正し、前記位置情報および補正後の前記傾斜/振動情報に基づいて前記道路の劣化度合を算出する路面監視システム。
【請求項5】
請求項
1または2に記載の路面監視システムにおいて、
前記補修計画作成部は、複数の前記要補修箇所同士の地理的関係性と、
取得した前記渋滞度と、に基づいて、前記優先順位を決定する路面監視システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の路面監視システムにおいて、
前記補修計画作成部により作成された前記補修計画を、前記道路の補修工事を行う作業車両へ送信する補修計画送信部、をさらに備える路面監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路面を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般道路や高速道路の路面を監視し、その劣化度合を検出する技術が知られている。例えば特許文献1には、車両に横断方向高さ計測部を取り付け、この横断方向高さ計測部に含まれるスリットレーザ発振器からスリットレーザを照射することで路面の横断方向に平行な線状のマーカを形成し、このマーカをエリアカメラにより撮影することで、路面の凹凸を検出して劣化度合を判定する路面管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の路面管理システムでは、スリットレーザ発振器やエリアカメラを含んで構成される横断方向高さ計測部を搭載した路面計測用の車両を、システムの一要素として準備する必要がある。また、この路面計測用の車両に管理対象とする道路を実際に走行させることで、路面の計測を実施する必要がある。したがって、システムの導入や運用において多くのコストがかかるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明では、路面の劣化度合を低コストで効率的に検出可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による路面監視システムは、車両が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を前記車両から取得する車両情報取得部と、前記車両情報に基づいて前記道路の劣化度合を算出する劣化度合算出部と、前記劣化度合算出部により算出された前記劣化度合に基づいて前記道路の補修の要否を判定する補修判定部と、前記補修判定部により要補修と判定された前記道路の要補修箇所についての補修計画を作成する補修計画作成部と、を備え、前記補修計画作成部は、複数の前記要補修箇所における前記道路の現在の路面状態に応じた渋滞度をそれぞれ取得し、取得した前記渋滞度に基づいて、複数の前記要補修箇所に対して補修の優先順位をそれぞれ決定し、前記優先順位に基づいて前記補修計画を作成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、路面の劣化度合を低コストで効率的に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る路面監視システムの概要を示すシステム概要図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る路面監視システムの構成を示すブロック図。
【
図3】ヘッドユニットにおいて実行される車両情報収集処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るサーバにおいて実行される補修判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図5】サーバにおいて実行される補修計画処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るサーバにおいて実行される補修判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る路面監視システムの概要を示すシステム概要図である。
図1に示す路面監視システム100は、車両1に搭載されたヘッドユニット10と、サーバ20により構成される。
【0011】
ヘッドユニット10は、例えば車両1の運転席付近に設置される情報機器であり、車両1が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を収集する。ヘッドユニット10は、例えば車両1に搭載された不図示のECU(Electronic Control Unit)と接続されており、このECUが備える3軸加速度センサによって検出された車両1の各軸方向(前後、左右、上下)の加速度情報を、道路走行時の路面状態に応じた車両1の傾きや揺れを表す情報(以下、「傾斜/振動情報」と称する)として、一定時間ごとに収集する。そして、収集した傾斜/振動情報(加速度情報)と、これを収集したときの車両1の走行地点を表す位置情報とを組み合わせ、路面状態に応じた車両情報として、例えば携帯電話回線等の無線通信を介してサーバ20へ送信する。
【0012】
なお、ヘッドユニット10は上記の車両情報収集機能に加えて、車両1の運転者に対する様々な情報提供機能を有することが好ましい。例えば、車両1の目的地を設定して当該目的地まで車両1を案内するナビゲーション機能や、車両1の走行状態や周辺環境に関する各種情報の表示機能などを、ヘッドユニット10に搭載することができる。
【0013】
また、ヘッドユニット10に加速度センサを内蔵し、この加速度センサにより検出された加速度情報を、車両1の傾斜/振動情報として収集してもよい。あるいは、スマートフォンやタブレットPC等の情報機器を車両1に取り付けることで、これをヘッドユニット10として使用してもよい。
【0014】
サーバ20は、ヘッドユニット10から送信された車両情報を取得し、この車両情報に基づいて、車両1が道路上の各地点を走行したときの車両1の傾きや揺れを求める。そして、求められた各地点での傾きや揺れの状況から、道路の劣化度合を判断する。これにより、車両1において車両1から道路の路面までの距離を計測せずに検出された車両情報に基づいて、道路の劣化度合を算出するようにしている。なお、サーバ20による道路劣化度合の判断方法の詳細は後述する。
【0015】
ここで、サーバ20は、ヘッドユニット10をそれぞれ搭載した多数の車両1から車両情報を取得可能であり、各車両1の車両情報を利用して道路の劣化度合を判断する。これにより、様々な場所における道路の劣化度合を効率的に判断できるようにしている。
【0016】
さらにサーバ20は、上記の道路劣化度合の判断結果に基づき、道路上で補修が必要な箇所(以下、「要補修箇所」と称する)を判断し、道路の補修計画を作成する。そして、作成した補修計画の情報を作業車両2へ送信し、作業車両2が行う道路補修工事に対する支援を行う。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る路面監視システムの構成を示すブロック図である。
【0018】
ヘッドユニット10は、データ取得部11および外部通信部12を備える。データ取得部11は、車両1またはヘッドユニット10に内蔵された加速度センサから、道路走行時の路面状態に応じた車両1の傾きや揺れを表す傾斜/振動情報としての加速度情報を取得する。外部通信部12は、外部との通信機能を有しており、データ取得部11により取得された傾斜/振動情報(加速度情報)と、車両1の位置情報とを、車両情報としてサーバ20に送信する。
【0019】
サーバ20は、制御部30および記憶部40を備える。
【0020】
制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、路面監視システム100におけるサーバ20の動作に必要な様々な処理や演算を行う。制御部30は、記憶部40に格納されたプログラムを実行することで、車両情報取得部31、劣化度合算出部32、補修判定部33、補修計画作成部34、補修計画送信部35の各機能ブロックを実現する。これらの機能ブロックの詳細については後述する。なお、制御部30の機能の一部または全部を、CPU以外のデバイス、例えばGPU(Graphic Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いて実現してもよい。
【0021】
記憶部40は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量かつ不揮発性の記憶装置を用いて構成され、制御部30が実行するプログラムや、制御部30の処理で利用される各種情報が格納される。記憶部40に格納される情報には、車両情報データベース41、路面情報データベース42の各データベースが含まれる。これらのデータベースの詳細については後述する。
【0022】
なお、
図2に示したサーバ20の構成は、物理的に一つの計算機上に構築されてもよいし、複数の計算機上に分散して構築されてもよい。また、クラウド上に設置されたクラウドコンピュータや、仮想環境上で動作する仮想マシン等により、サーバ20を実現してもよい。
【0023】
次に、制御部30における車両情報取得部31、劣化度合算出部32、補修判定部33、補修計画作成部34、補修計画送信部35の各機能ブロックについて説明する。
【0024】
車両情報取得部31は、複数の車両にそれぞれ搭載されたヘッドユニット10から送信される車両情報を受信することで、各車両が道路走行時に収集した車両情報を取得する。車両情報取得部31により取得された各車両の車両情報は、車両情報データベース41として記憶部40に格納される。
【0025】
劣化度合算出部32は、記憶部40に格納された車両情報データベース41から、劣化度合の算出対象とする道路を走行した各車両の車両情報を読み出す。そして、読み出した各車両の車両情報に基づいて、当該道路の劣化度合を算出する。
【0026】
補修判定部33は、劣化度合算出部32により算出された道路の劣化度合に基づいて、道路の補修の要否を判定する。例えば、劣化度合が所定値以上である地点が道路上に存在する場合、その地点に対して補修が必要と判定する。補修判定部33による補修要否の判定結果は、路面の状態に関する路面情報を表す路面情報データベース42として記憶部40に格納される。
【0027】
補修計画作成部34は、記憶部40に格納された路面情報データベース42から、道路補修を行う対象地域における各道路に対する補修要否を表す路面情報を読み出す。そして、読み出した路面情報に基づいて要補修箇所を特定し、道路の補修計画を作成する。
【0028】
補修計画送信部35は、補修計画作成部34により作成された補修計画を作業車両2に送信する。補修計画送信部35によってサーバ20から送信された補修計画は、作業車両2において受信され、作業車両2が備える不図示のヘッドユニット等に表示される。これにより、作業車両2を運転する作業者は、補修計画に従って要補修箇所を効率的に回り、補修作業を行うことができる。
【0029】
次に、本実施形態の路面監視システム100におけるヘッドユニット10およびサーバ20の処理手順について、以下に
図3~
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
図3は、ヘッドユニット10において実行される車両情報収集処理の処理手順を示すフローチャートである。ヘッドユニット10は、車両1のイグニッションがオンになると、
図3のフローチャートに示す車両情報収集処理を開始する。
【0031】
ステップS110において、ヘッドユニット10は、車両1が現在走行している地点の位置情報を取得する。ここでは、例えばGPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した周知の手法により、車両1の位置情報を取得することができる。
【0032】
ステップS120において、ヘッドユニット10は、ステップS110で取得した位置情報に基づいて、車両1が前回の車両情報の取得時から一定距離を走行したか否かを判定する。一定距離を走行していなければ、ステップS110に戻って位置情報の取得を続け、一定距離を走行していれば、次のステップS130に処理を進める。なお、このステップS120の判定で用いられる一定距離には、任意の距離を設定可能であり、短い距離を設定するほど、車両1が道路を走行したときの車両情報をより細かく取得することができる。
【0033】
ステップS130において、ヘッドユニット10は、データ取得部11により、車両1の傾きや揺れを表す傾斜/振動情報を取得する。ここでは前述のように、例えば車両1またはヘッドユニット10に内蔵された加速度センサが検出した加速度情報を、傾斜/振動情報として取得する。
【0034】
ステップS140において、ヘッドユニット10は、外部通信部12により、ステップS110で取得した位置情報と、ステップS130で取得した傾斜/振動情報とを、車両1の車両情報としてサーバ20に送信する。ここで送信された車両情報は、サーバ20において車両情報取得部31により受信され、車両情報データベース41の一部として記憶部40に格納される。
【0035】
ステップS150において、ヘッドユニット10は、車両1のイグニッションがオフされたことを検知したか否かを判定する。イグニッションオフを検知していなければ、ステップS110に戻って位置情報の取得を続け、イグニッションオフを検知した場合は、
図3のフローチャートに示す車両情報収集処理を終了する。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るサーバ20において実行される補修判定処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態のサーバ20において、制御部30は、例えば前回の処理から一定時間を経過したときや、サーバ20の操作を行うユーザからの指示が行われたときなどの所定のタイミングで、
図4のフローチャートに示す補修判定処理を開始する。
【0037】
ステップS210において、制御部30は、補修判定を行う道路の対象区間を特定する。ここでは、例えば予め設定された道路区間や、サーバ20の操作を行うユーザが不図示のキーボードやマウス等を用いて地図上で指定した道路区間を、補修判定の対象区間として特定することができる。
【0038】
ステップS220において、制御部30は、ステップS210で特定した対象区間の車両情報が車両情報データベース41に存在するか否かを判定する。ここでは、車両情報に含まれる位置情報に基づいて、対象区間内で取得された車両情報を車両情報データベース41において検索する。その結果、対象区間内の車両情報を少なくとも一つ検索できた場合は、対象区間の車両情報ありと判定して、ステップS230に処理を進める。一方、対象区間内の車両情報を一つも検索できなかった場合は、対象区間の車両情報なしと判定して、ステップS260に処理を進める。
【0039】
ステップS230において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS210で特定した対象区間の車両情報を車両情報データベース41から読み出して取得する。ここでは、ステップS220の判定時に検索された各車両情報を車両情報データベース41から抽出することにより、対象区間の車両情報を取得することができる。
【0040】
ステップS240において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS230で読み出した各車両情報に基づいて、車両1が対象区間を走行したときの車両1の揺れや傾きの具合を一定距離ごとに算出する。ここでは、各車両情報に含まれる傾斜/振動情報に基づき、車両1が一定距離を走行したときに車両1において生じた傾きや揺れの大きさを算出する。これにより、路面状態に応じた車両1の姿勢変化の度合を求めて、対象区間の路面状態を推定することができる。
【0041】
ステップS250において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS240で一定距離ごとに算出した車両1の揺れや傾き具合に基づいて、対象区間における道路の劣化度合を算出する。ここでは、例えば算出した揺れや傾きの大きさに所定の係数を乗算することで、対象区間における道路の劣化度合を一定距離ごとに算出することができる。あるいは、予め定められた揺れや傾きの大きさと劣化度合との対応関係に基づいて、対象区間における道路の劣化度合を一定距離ごとに算出してもよい。これ以外にも任意の方法により、車両1の揺れや傾き具合に応じて、対象区間における道路の劣化度合を算出することができる。
【0042】
ステップS260において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS210で特定した対象区間に対して過去にステップS250で算出された劣化度合のうち、最新のものを取得する。なお、ステップS250の処理による劣化度合の算出結果は、後述するステップS280の処理を実施することで、路面情報の一部として路面情報データベース42に記録される。ステップS260では、過去に実施されたステップS280の処理によって記録された路面情報を路面情報データベース42から読み出すことで、最近の劣化度合を取得することができる。
【0043】
ステップS250またはS260の処理によって対象区間における道路の劣化度合を求められたら、続くステップS270において、制御部30は、その劣化度合に基づいて、補修判定部33により、対象区間内で道路の補修が必要か否かを判定する。ここでは例えば、対象区間における一定距離ごとの劣化度合を所定の閾値とそれぞれ比較し、劣化度合が閾値よりも大きい場所が対象区間内に存在した場合は、その場所を要補修箇所と判断して、道路の補修が必要であると判定する。一方、劣化度合が閾値よりも大きい場所が対象区間内に存在しない場合は、道路の補修が不要であると判定する。これにより、対象区間における道路の補修の要否を、劣化度合算出部32により算出された劣化度合から判定することができる。なお、劣化度合に基づいて対象区間における道路の補修の要否を適切に判定できれば、補修判定部33は、他の方法によりステップS270の処理を行ってもよい。
【0044】
ステップS280において、制御部30は、ステップS250で算出した道路の劣化度合と、ステップS270で判定した道路の補修の要否とを、日時情報や位置情報と対応付けて路面情報を作成し、路面情報データベース42を更新する。これにより、対象区間に対する今回の補修判定処理の結果が路面情報データベース42に記録される。
【0045】
ステップS280の処理を実行したら、
図4のフローチャートに示す補修判定処理を終了する。
【0046】
図5は、サーバ20において実行される補修計画処理の処理手順を示すフローチャートである。サーバ20において、制御部30は、例えば作業車両2から補修計画のリクエストを受けたときや、サーバ20の操作を行うユーザからの指示が行われたときなどの所定のタイミングで、
図5のフローチャートに示す補修計画処理を開始する。
【0047】
ステップS310において、制御部30は、補修計画を作成する対象地域を特定する。ここでは、例えば不図示のキーボードやマウス等を用いて作業者またはサーバ20の操作を行うユーザが地図上で指定した地域を、補修計画の対象地域として特定することができる。
【0048】
ステップS320において、制御部30は、補修計画作成部34により、ステップS310で特定した対象地域の路面情報を路面情報データベース42から読み出して取得する。ここでは、対象地域内の各地点について記録された最新の路面情報を路面情報データベース42から抽出することにより、対象地域の路面情報を取得することができる。
【0049】
ステップS330において、制御部30は、ステップS320で読み出した対象地域の路面情報に基づいて、対象地域内に要補修箇所が存在するか否かを判定する。ここでは、ステップS320で取得した各地点の路面情報の中に、
図4のステップS270において要補修と判定されたことを示す路面情報が含まれている場合は、要補修箇所ありと判定してステップS340に処理を進める。一方、取得した各地点の路面情報の中に要補修と判定されたことを示す路面情報が一つも存在しない場合は、要補修箇所なしと判定し、
図5のフローチャートに示す補修計画処理を終了する。
【0050】
ステップS340において、制御部30は、補修計画作成部34により、ステップS320で読み出した対象地域の路面情報のうち、要補修箇所の路面状態を表す路面情報に基づいて、要補修箇所同士の地理的関係性を取得する。ここでは例えば、要補修箇所の路面情報に含まれる位置情報同士を比較し、その比較結果に基づいて、要補修箇所同士の地理的な関係度合を取得する。具体的には、例えば、各要補修箇所間の距離を位置情報に基づいて算出し、その距離が近いほど地理的な関係度合の値が高くなり、反対に遠いほど地理的な関係度合の値が低くるように、要補修箇所の組み合わせごとに地理的な関係度合の値を設定する。このとき、当該要補修箇所同士が同一の道路上に存在するか否かに応じて、地理的な関係度合の値を変化させてもよい。これ以外にも任意の方法により、要補修箇所同士の地理的関係性を取得することが可能である。
【0051】
ステップS350において、制御部30は、補修計画作成部34により、対象地域内の要補修箇所の渋滞度を取得する。ここでは例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)情報として提供される各道路の渋滞情報から、要補修箇所を含む道路区間の渋滞情報を抽出することで、要補修箇所の渋滞度を取得することができる。あるいは、VICS情報以外の渋滞情報を要補修箇所の渋滞情報として利用してもよい。
【0052】
ステップS360において、制御部30は、補修計画作成部34により、ステップS340で取得した地理的関係性と、ステップS350で取得した渋滞度とに基づいて、各要補修箇所に対する補修の優先順位を決定する。ここでは例えば、地理的な関係度合が高い要補修箇所の組み合わせや、渋滞度が高い要補修箇所ほど、そうではない要補修箇所よりも高い優先順位を設定する。このとき、いずれか一方の条件のみを考慮し、他方の条件については考慮しなくてもよい。これにより、複数の要補修箇所同士の地理的関係性と、複数の要補修箇所における道路の渋滞度と、の少なくともいずれかに基づいて、各要補修箇所の優先順位を決定することができる。
【0053】
ステップS370において、制御部30は、補修計画作成部34により、ステップS360で決定した各要補修箇所の優先順位に基づいて、ステップS310で特定した対象地域に対する道路の補修計画を作成する。ここでは例えば、優先順位が高い要補修箇所を優先して補修作業を行いつつ、補修作業中の移動距離がなるべく短くなるように、対象地域内で補修作業を行う地点とその順序を決定する。
【0054】
ステップS380において、制御部30は、補修計画送信部35により、ステップS370で作成した道路の補修計画を作業車両2に送信する。ここで送信された補修計画は、作業車両2において不図示のヘッドユニット等により受信され、作業車両2を運転する作業者に提示される。
【0055】
ステップS380の処理を実行したら、
図5のフローチャートに示す補修判定処理を終了する。
【0056】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0057】
(1)路面監視システム100は、車両1が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を車両1から取得する車両情報取得部31と、車両情報に基づいて道路の劣化度合を算出する劣化度合算出部32とを備える。車両情報は、車両1において車両1から道路の路面までの距離を計測せずに検出された情報である。このようにしたので、路面の劣化度合を低コストで効率的に検出することができる。
【0058】
(2)車両情報取得部31は、車両1または車両1に設置された情報機器であるヘッドユニット10に内蔵された加速度センサにより検出された加速度情報に基づいて、車両情報を取得する。このようにしたので、車両1から道路の路面までの距離を計測することなく、車両1が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を確実に取得することができる。
【0059】
(3)車両情報取得部31は、道路を走行した複数の車両1から車両情報をそれぞれ取得する。劣化度合算出部32は、複数の車両1からそれぞれ取得した車両情報に基づいて、道路の劣化度合を算出する(ステップS230~S250)。このようにしたので、様々な場所における道路の劣化度合を効率的に求めることができる。
【0060】
(4)路面監視システム100は、劣化度合算出部32により算出された劣化度合に基づいて道路の補修の要否を判定する補修判定部33と、補修判定部33により要補修と判定された道路の要補修箇所についての補修計画を作成する補修計画作成部34とを備える。このようにしたので、道路の劣化度合に応じた道路の補修計画を容易に作成することができる。
【0061】
(5)補修計画作成部34は、複数の要補修箇所に対して補修の優先順位をそれぞれ決定し(ステップS360)、この優先順位に基づいて補修計画を作成する(ステップS370)。このようにしたので、複数の要補修箇所を効率的に回って補修作業を実施可能な補修計画を作成することができる。
【0062】
(6)補修計画作成部34は、複数の要補修箇所同士の地理的関係性と、複数の要補修箇所における道路の渋滞度と、の少なくともいずれかに基づいて、優先順位を決定する(ステップS340~S360)。このようにしたので、複数の要補修箇所に対する優先順位を適切に設定することができる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、車両情報に基づいて道路の劣化度合を算出する際に、その車両情報を検出した車両1の車種を考慮する例を説明する。
【0064】
なお、本実施形態に係る路面監視システムは、第1の実施形態で説明した
図2と同様の構成を有している。したがって以下では、
図2に示した路面監視システム100の構成を用いて、本実施形態の路面監視システムについて説明する。
【0065】
本実施形態において、車両1に搭載されたヘッドユニット10は、車両1が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報として、一定時間ごとに収集した前述の傾斜/振動情報(加速度情報)および位置情報に加えて、さらに車両1の車種を表す車種情報をサーバ20に送信する。車種情報が表す車種とは、車両1がどのような種類の車両(乗用車、トラック、バス等)であるかを区別したものであり、路面状態に応じて生じる傾きや揺れの挙動の違いを反映して、任意の車種を設定可能である。
【0066】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るサーバ20において実行される補修判定処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態のサーバ20において、制御部30は、例えば前回の処理から一定時間を経過したときや、サーバ20の操作を行うユーザからの指示が行われたときなどの所定のタイミングで、
図6のフローチャートに示す補修判定処理を開始する。
【0067】
なお、
図6のフローチャートでは、第1の実施形態で説明した
図4のフローチャートと同様の処理を行う部分については、
図4と共通のステップ番号としている。したがって以下では、
図4とは異なるステップ番号の処理内容を中心に説明し、共通の処理については特に必要のない限り説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、制御部30は、ステップS230で対象区間の車両情報を車両情報データベース41から読み出した後、ステップS231の処理を実行する。ステップS231において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS230で読み出した車両情報を補正する。ここでは、車両情報に含まれる前述の車種情報に基づいて、車両情報における傾斜/振動情報を補正する。
【0069】
具体的には、例えば、車種ごとに異なる補正係数を予め設定しておき、ステップS230で取得した各車両情報において、車種情報が表す車種に対応する補正係数を傾斜/振動情報が表す傾きや揺れの大きさに乗算する。これにより、各車両情報を検出した車両の車種を考慮して、対象区間における各車両情報を補正することができる。その結果、各車両情報が表す傾きや揺れの大きさから車種の影響を排除して、道路の劣化度合をより正確に算出することができるようにしている。
【0070】
ステップS231で車両情報の補正を実施したら、続くステップS240において、制御部30は、劣化度合算出部32により、ステップS231で補正した各車両情報に基づいて、車両1が対象区間を走行したときの車両1の揺れや傾きの具合を一定距離ごとに算出する。ここでは、補正後の各車両情報に含まれる傾斜/振動情報に基づき、第1の実施形態と同様に、車両1が一定距離を走行したときに車両1において生じた傾きや揺れの大きさを算出する。
【0071】
なお、ステップS240以降では、第1の実施形態で説明した
図4のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。
【0072】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、車両情報は、車両1の走行地点を表す位置情報と、走行地点における車両1の傾きおよび振動の少なくとも一方を表す傾斜/振動情報と、車両1の車種を表す車種情報とを含む。劣化度合算出部32は、車種情報に基づいて車両1の車種ごとに異なる補正係数を用いて傾斜/振動情報を補正し(ステップS231)、位置情報および補正後の傾斜/振動情報に基づいて道路の劣化度合を算出する(ステップS240~S250)。このようにしたので、車両情報において傾斜/振動情報が表す傾きや揺れの大きさから車種の影響を排除し、道路の劣化度合をより正確に算出することができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。また、各実施形態や変形例は任意に組み合わせて実施することも可能である。
【0074】
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1:車両、2:作業車両、10:ヘッドユニット、11:データ取得部、12:外部通信部、20:サーバ、30:制御部、31:車両情報取得部、32:劣化度合算出部、33:補修判定部、34:補修計画作成部、35:補修計画送信部、40:記憶部、41:車両情報データベース、42:路面情報データベース、100:路面監視システム
【要約】
【課題】路面の劣化度合を低コストで効率的に検出する。
【解決手段】路面監視システム100は、車両が道路を走行したときの路面状態に応じた車両情報を車両から取得する車両情報取得部31と、車両情報に基づいて道路の劣化度合を算出する劣化度合算出部32とを備える。車両情報は、車両において車両から道路の路面までの距離を計測せずに検出された情報である。車両情報取得部31は、車両または車両に設置された情報機器であるヘッドユニット10に内蔵された加速度センサにより検出された加速度情報に基づいて、車両情報を取得する。
【選択図】
図2