(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-30
(45)【発行日】2022-10-11
(54)【発明の名称】薬液注入データ管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221003BHJP
【FI】
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2022082772
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304045170
【氏名又は名称】一般社団法人日本グラウト協会
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】遊田 兼也
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023496(JP,A)
【文献】特開2022-071420(JP,A)
【文献】特開2021-075861(JP,A)
【文献】特開2000-220132(JP,A)
【文献】特開平06-272237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に孔を穿設し、土壌を固化する薬液を注入するボーリングマシンと、
上記ボーリングマシンに対して供給された薬液の分量を計測する流量計と、
上記流量計から出力された薬液注入データを受信するデータ収集装置と、
通信ネットワーク経由で上記データ収集装置から送信された薬液注入データをネットワーク上の記憶装置内に格納するデータ受付装置とを備え、
上記流量計から出力される薬液注入データは、当該流量計の識別情報と、薬液注入の施工箇所を特定する情報と、施工時期を特定する情報と、薬液注入量を特定する情報を少なくとも有しており、
上記データ収集装置は、薬液注入データ中の識別情報に基づいて当該流量計が認定流量計であるか否かを判定する処理と、
認定流量計である場合には、薬液注入量を所定のルールに従って符号化したデータを今回暗号データとして薬液注入データに付加する処理と、
先行薬液注入データの今回暗号データを、前回暗号データとして当該薬液注入データに付加する処理と、
この暗号付の薬液注入データを上記データ受付装置に送信する処理を実行し、
上記データ受付装置は、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致するか否かを判定する処理と、
一致する場合には、当該薬液注入データが適正である旨のフラグを当該薬液注入データに設定し、上記記憶装置に格納する処理を実行することを特徴とする薬液注入データ管理システム。
【請求項2】
上記データ収集装置は、上記流量計から出力された薬液注入データの中から必要なデータ項目の値を抽出すると共に、各データ項目の値を所定の順番で整列させ、所定のデータ形式に変換する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の薬液注入データ管理システム。
【請求項3】
上記データ収集装置は、上記流量計が認定流量計ではないと判定した場合、当該流量計から出力された薬液注入データにその旨のフラグを設定してローカルの記憶装置に格納すると共に、上記データ受付装置への送信をスキップすることを特徴とする請求項1または2に記載の薬液注入データ管理システム。
【請求項4】
上記データ受付装置は、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致しない場合に、当該薬液注入データにその旨のフラグを設定して上記ネットワーク上の記憶装置に格納することを特徴とする
請求項1または2に記載の薬液注入データ管理システム。
【請求項5】
サーバを備え、
このサーバは、ユーザの操作するクライアント端末から特定の薬液注入データに係る電子帳票の発行リクエストが送信された場合に、ユーザIDに基づいて当該ユーザの閲覧権限を確認する処理と、
当該ユーザが目的の薬液注入データの閲覧権限を有している場合には、上記ネットワーク上の記憶装置から対応の薬液注入データを読み出し、電子帳票を生成する処理と、
この電子帳票を上記クライアント端末に送信する処理を実行することを特徴とする
請求項1または2に記載の薬液注入データ管理システム。
【請求項6】
上記データ受付装置には、通信ネットワークを介して複数のデータ収集装置が接続されており、各データ収集装置は施工現場毎に設置されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の薬液注入データ管理システム。
【請求項7】
上記データ収集装置は、上記認定流量計から複数件の薬液注入データが同時に出力された場合に、各薬液注入データの薬液注入量の合計値を所定のルールに従って符号化したデータを、共通の今回暗号データとして各薬液注入データに付加すると共に、先行薬液注入データの今回暗号データを、共通の前回暗号データとして各薬液注入データに付加する処理を実行し、
上記データ受付装置は、今回受信した各薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致するか否かを判定する処理を実行することを特徴とする
請求項1または2に記載の薬液注入データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液注入データ管理システムに係り、特に、施工現場に設置された認定流量計が出力する薬液注入データを、改竄防止対策を施した上でクラウド上に保存する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液注入工法とは、凝固する性質をもった薬液を地盤中の注入管に注入し、地盤の強度や止水性を増大させる工法であり、地下工事などで工事の安全性を確保する補助工法として行われている。
この工法においては、薬液を混合するグラウトミキサーや、薬液を圧送するグラウトポンプ、注入時に流量を管理する流量計、地盤を削孔するボーリングマシン等が用いられる。
【0003】
この薬液注入工法の施工に際し、計画よりも少ない薬液の注入量で施工を終了させる「手抜き」が行われると、後続工事の安全性が著しく損なわれるため、上記の流量計として一般社団法人日本グラウト協会(以下「協会」)が認定した流量計(以下「認定流量計」)を設置することが、各施工業者に義務付けられている。
【0004】
この認定流量計は、グラウトポンプとボーリングマシンとの間に介装され、ボーリングマシンに送出された薬液量を協会認定のチャート紙に忠実にプロットする機能を備えており、途中で注入量の改竄ができない構造であることが協会によって事前に確認されたものを指す。
【文献】薬液注入用流量計 (一般社団法人 日本グラウト協会 認定品)HRC-120K/インターネットURL:https://toyoshoji.com/hrc-120k/検索日:2022年4月28日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、薬液注入工法の施工時に記録された認定流量計のチャート紙を保管しておくことで、当該施工に手抜きや不正が行われなかったことを施工業者は立証することが可能となる。
【0006】
しかしながら、チャート紙は文字通り紙製であり、その保管に場所を取るのはもちろんのこと、経年劣化や紛失の危険性もあるため、これまでのように記録内容の信頼性(耐改竄性)を担保した上で、薬液注入データを電子的に保存する仕組みへの移行が待望されていた。
【0007】
因みに、既存の認定流量計も薬液注入量を電子データとして出力する機能を備えているため、これをパソコン等の管理装置に保存したり、目的に応じて加工したりすることはこれまでも可能であったが、施工業者による改竄の可能性があるため、適正な施工が実施されたことを対外的に示すデータとしては利用できなかった。
【0008】
この発明は、このような現状に鑑みて案出されたものであり、認定流量計から出力された薬液注入データを、改竄される危険性を排除しつつ、ネットワーク上に設置された記憶装置に保存する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した薬液注入データ管理システムは、地盤に孔を穿設し、土壌を固化する薬液を注入するボーリングマシンと、上記ボーリングマシンに対して供給された薬液の分量を計測する流量計と、上記流量計から出力された薬液注入データを受信するデータ収集装置と、通信ネットワーク経由で上記データ収集装置から送信された薬液注入データをネットワーク上の記憶装置内に格納するデータ受付装置とを備え、上記流量計から出力される薬液注入データは、当該流量計の識別情報と、薬液注入の施工箇所を特定する情報と、施工時期を特定する情報と、薬液注入量を特定する情報を少なくとも有しており、上記データ収集装置は、薬液注入データ中の識別情報に基づいて当該流量計が認定流量計であるか否かを判定する処理と、認定流量計である場合には、薬液注入量を所定のルールに従って符号化したデータを今回暗号データとして薬液注入データに付加する処理と、先行薬液注入データの今回暗号データを、前回暗号データとして当該薬液注入データに付加する処理と、この暗号付の薬液注入データを上記データ受付装置に送信する処理を実行し、上記データ受付装置は、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致するか否かを判定する処理と、一致する場合には、当該薬液注入データが適正である旨のフラグを当該薬液注入データに設定し、上記記憶装置に格納する処理を実行することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1に記載のシステムであって、上記データ収集装置が、上記流量計から出力された薬液注入データの中から必要なデータ項目の値を抽出すると共に、各データ項目の値を所定の順番で整列させ、所定のデータ形式に変換する処理を実行することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1または2に記載のシステムであって、上記データ収集装置が、上記流量計が認定流量計ではないと判定した場合、当該流量計から出力された薬液注入データにその旨のフラグを設定してローカルの記憶装置に格納すると共に、上記データ受付装置への送信をスキップすることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1~3のシステムであって、上記データ受付装置が、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致しない場合に、当該薬液注入データにその旨のフラグを設定して上記ネットワーク上の記憶装置に格納することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1~4のシステムであって、サーバを備え、このサーバは、ユーザの操作するクライアント端末から特定の薬液注入データに係る電子帳票の発行リクエストが送信された場合に、ユーザIDに基づいて当該ユーザの閲覧権限を確認する処理と、当該ユーザが目的の薬液注入データの閲覧権限を有している場合には、上記ネットワーク上の記憶装置から対応の薬液注入データを読み出し、電子帳票を生成する処理と、この電子帳票を上記クライアント端末に送信する処理を実行することを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1~5のシステムであって、上記データ受付装置には通信ネットワークを介して複数のデータ収集装置が接続されており、各データ収集装置は施工現場毎に設置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載した薬液注入データ管理システムは、請求項1~6のシステムであって、上記データ収集装置が、上記認定流量計から複数件の薬液注入データが同時に出力された場合に、各薬液注入データの薬液注入量の合計値を所定のルールに従って符号化したデータを、共通の今回暗号データとして各薬液注入データに付加すると共に、先行薬液注入データの今回暗号データを、共通の前回暗号データとして各薬液注入データに付加する処理を実行し、上記データ受付装置は、今回受信した各薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致するか否かを判定する処理を実行することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の薬液注入データ管理システムの場合、認定流量計から出力された薬液注入データに対し、当該薬液注入データ中の薬液注入量を符号化したデータが今回暗号データとして付加されると共に、先行する薬液注入データの今回暗号データが前回暗号データとして付加されるため、何れかの薬液注入データの薬液注入量を改竄すると、後続の薬液注入データの前回暗号データと不整合となる。この結果、薬液注入データをネットワーク上の記憶装置に格納しても、その改竄を有効に防止することが可能となる。
このように、ネットワーク上に設置された記憶装置内に、認定流量計から出力された薬液注入データが改竄できない状態で保存される仕組みが確立されることにより、施工業者は従来のように認定流量計によって記録されたチャート紙を保管する責務から解放される。
【0017】
請求項2に記載の薬液注入データ管理システムによれば、出力される薬液注入データの仕様が認定流量計毎に異なっていたとしても、データ収集装置によって整理統合されるため、異なるメーカーの認定流量計が混在する施工現場に対しても適用可能となる。
【0018】
請求項3に記載の薬液注入データ管理システムによれば、認定流量計以外の流量計から薬液注入データが出力された場合であっても、そのデータがデータ収集装置の記憶装置内に履歴情報として蓄積されるため、後の原因究明等が可能となる。
【0019】
請求項4に記載の薬液注入データ管理システムによれば、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、当該データ収集装置から送信された先行薬液注入データの今回暗号データと一致しない場合であっても、そのデータがネットワーク上の記憶装置内に履歴情報として蓄積されるため、後の原因究明等が可能となる。
【0020】
請求項5に記載の薬液注入データ管理システムの場合、ネットワーク上の記憶装置に格納された薬液注入データ等が記載された電子帳票が、権限を有するユーザに対して発行される仕組みであるため、施工業者は自身による施工が適正であったことを何時でも第三者に証明可能となる。
【0021】
請求項6に記載の薬液注入データ管理システムの場合、データ収集装置が施工現場毎に設置され、当該施工現場で稼働中の複数の認定流量計から出力される薬液注入データをまとめてデータ受付装置に送信する仕組みであるため、システムの構成の簡素化が図れる。
【0022】
請求項7に記載の薬液注入データ管理システムの場合、上記認定流量計から同時に出力された複数件の薬液注入データに対して、共通の今回暗号データ及び前回暗号データを付加する仕組みであるため、システムの処理工程の簡素化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明に係る薬液注入データ管理システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】認定流量計から薬液注入データが出力された際の、データ収集装置による処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】データ収集装置からデータ受付装置に送信される際の薬液注入データの状態を示す図である。
【
図5】データ収集装置の記憶装置内に格納された薬液注入データを示す図である。
【
図6】データ収集装置から薬液注入データが送信された際の、データ受付装置による処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】データ受付装置の記憶装置内に格納された薬液注入データを示す図である。
【
図8】クライアント端末に電子帳票を発行する際の、サーバによる処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付の図面に従い、この発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、この発明に係る薬液注入データ管理システム10は、施工現場に設置された複数のボーリングマシン12と、複数の認定流量計14と、現場に設置されたデータ収集装置16と、クラウド上に設置されたデータ受付装置18と、サーバ20を備えている。
【0025】
データ収集装置16は、CPU及び記憶装置を内蔵したコンピュータよりなり、CPUがOS及び専用のアプリケーションプログラムに従って動作することにより、後述の各種処理を実行する。
図においては1台のデータ収集装置16のみが描かれているが、データ収集装置16は施工現場毎に設置されており、それぞれがインターネット22を介してデータ受付装置18と接続されている。
各データ収集装置16は、協会による認定を受けた専用装置であり、それぞれにユニークな識別符号としての「装置ID」が割り振られている。
【0026】
データ受付装置18は、CPU及び記憶装置を内蔵したコンピュータよりなり、CPUがOS及び専用のアプリケーションプログラムに従って動作することにより、後述の各種処理を実行する。
このデータ受付装置18は、協会によって設置・管理されており、LAN等のネットワークを介してサーバ20と接続されている。
【0027】
サーバ20は、Webサーバ機能、AP(Application)サーバ機能、DB(Database)サーバ機能等を備えており、協会によって設置・管理されている。
サーバ20は、ネットワークを介して接続された複数台のコンピュータによって構成することもできる。
サーバ20には、インターネット22を介してPC等よりなる複数のクライアント端末24が接続される。
【0028】
ボーリングマシン12と認定流量計14は、パイプ26を介して一対一で接続されており、グラウトポンプ28から供給された薬液が、認定流量計14を経由してボーリングマシン12に供給される。
ボーリングマシン12は、地盤にケーシングを建て込んで削孔した後、注入パイプを孔に挿入し、認定流量計14経由で供給された薬液30を注入する。
【0029】
認定流量計14は、ボーリングマシン12に供給された薬液注入量に係るデータ(以下「薬液注入データ」)を、ケーブル32を介してデータ収集装置16に所定のタイミングで送信する。
各認定流量計14は、協会による認定を受けた装置であり、それぞれにユニークな識別符号としての「記録計機番」が割り振られている。
【0030】
以下、
図2のフローチャートに従い、データ収集装置16による処理の手順を説明する。
まず、データ収集装置16は、何れかの認定流量計14から出力された薬液注入データを受信すると(S10)、その中から必要なデータ項目を抽出し(S12)、所定のフォーマットに統一する(S14)。
【0031】
すなわち、各認定流量計14は事前に協会の認定を受けているとはいえ、製造メーカー毎に出力されるデータのフォーマット(データ項目の種類や並び順、データ長、データ型等)がまちまちであるため、データ収集装置16は、必要なデータ項目の値を抽出すると共に、所定の順番に整列させ、データ長やデータ型を揃える処理を実行する。
【0032】
図3(a)は、ある認定流量計14から一度に送信された3件分の薬液注入データに対して上記の処理を施した結果を示すものであり、各薬液注入データ(1)~(3)はそれぞれ「工事No.」、「施工箇所」、「記録計機番」、「照合フラグ」、「孔番」、「ステップ数」、「瞬結注入量」、「中結注入量」、「合計注入量」、「開始時間」、「終了時間」、「施工完了日」のデータ項目を備えている。
【0033】
つぎにデータ収集装置16は、上記薬液注入データを出力した装置が認定流量計14であるか否かを確認し(S16)、
図3(b)に示すように、認定流量計14である場合には(S16/Y)、薬液注入データの「照合フラグ」に「OK(適正)」を記録する(S18)。
認定流量計14であるか否かは、各薬液注入データに含まれる「記録計機番」が、データ収集装置16の記憶装置内に格納された記録計機番リスト内に存在するか否かで判定される。このデータ収集装置16内の記録計機番リストは、随時更新される。
【0034】
つぎにデータ収集装置16は、3件分の薬液注入データ(1)~(3)に共通の暗号データを付与した上で(S20)、データ受付装置18に送信する(S22)。
図4(a)は、この3件の薬液注入データ(1)~(3)を示すものであり、末尾に「今回暗号データ」として「F43E576E」が付加されている。
この「今回暗号データ」は、例えば薬液注入データ(1)~(3)の「合計注入量」の合計値を16進数に変換したものよりなる。
ただし、暗号データはこれに限定されるものではなく、例えば上記合計注入量の合計値を特殊なアルゴリズムに投入することによって得られた数値を暗号データとして用いることもできる。
図示は省略したが、各薬液注入データ(1)~(3)には、データ収集装置16の装置IDも付加されている。
【0035】
つぎに、データ受付装置18から受信確認の電文が送信されると(S24/Y)、データ収集装置16は今回送信した薬液注入データを自身の記憶装置内に保存する(S26)。
図5(a)は、今回送信した薬液注入データ(1)~(3)のレコードを示しており、それぞれの「転送結果」のデータ項目に「OK(適正)」のフラグが記録されている。図示は省略したが、各薬液注入データには、転送日時を示すタイムスタンプが刻印されている。
【0036】
なお、データ収集装置16が上記(S16)のステップにおいて認定流量計14でないものと判定した場合(S16/N)、当該薬液注入データについては「照合フラグ」に「NG(不適)」が記録され(S28)、データ受付装置18に送信されることなくローカルの記憶装置内に格納される(S26)。
【0037】
図5(e)は、この送信対象外とされた薬液注入データ(12)を示しており、上記の通り「照合フラグ」に「NG」が記録されると共に、「記録計機番」には「不明」が、「ステップ数」、「瞬結注入量」、「中結注入量」、「合計注入量」には「err(エラー)」がそれぞれ充填されている。
【0038】
因みに、
図5(d)の4回目送信分に含まれる薬液注入データ(10)は、「照合フラグ」に「OK」が格納されているにもかかわらず、「ステップ数」、「瞬結注入量」、「中結注入量」、「合計注入量」には「err(エラー)」がそれぞれ充填されている。これは、マシントラブル等によって正しいデータが取得できなかったことを意味している。
これに対し、薬液注入データ(11)は薬液注入データ(10)と同じ「工事No.」、「施工箇所」、「記録計機番」、「孔番」を備え、「ステップ数」、「瞬結注入量」、「中結注入量」、「合計注入量」に値が充填されている。
これにより、薬液注入データ(10)が後続の薬液注入データ(11)によってリカバーされたことが履歴として残されることとなる。
【0039】
上記(S24)のステップにおいてデータ受付装置18から受信確認の電文が返信されない場合(S24/N)、データ収集装置16は薬液注入データの送信を繰り返す。
【0040】
薬液注入データ(1)~(3)は、データ収集装置16にとって当該施工箇所における最初の送信データであったため、(S20)のステップにおいては「今回暗号データ」のみが末尾に付与されたが、2回目以降の送信に際しては、同ステップにおいてそれぞれの先頭に前回送信した薬液注入データの暗号データが付与される。
【0041】
例えば、
図4(b)に示す2回目の送信データの場合、各薬液注入データの先頭に1回目送信データの「今回暗号データ」である「F43E576E」が「前回暗号データ」として付加されると共に、それぞれの末尾には2回目の送信データ固有の暗号データである「8E5763CE」が「今回暗号データ」として付加されている。
また、
図4(c)に示す3回目の送信データの場合、各薬液注入データの先頭に2回目送信データの「今回暗号データ」である「8E5763CE」が「前回暗号データ」として付加されると共に、それぞれの末尾には3回目の送信データ固有の暗号データである「78C6D4CC」が「今回暗号データ」として付加されている。
これにより、各送信データ相互間の順序性が表現されることとなる。
【0042】
つぎに、
図6のフローチャートに従い、データ受付装置18における処理手順を説明する。
まず、データ受付装置18は、何れかの施工箇所に設置されたデータ収集装置16から送信されたデータを受信すると(S30)、当該送信データに付加された装置IDに基づいて、協会認定のデータ収集装置16からの送信データであるか否かを判定する(S32)。
【0043】
ここで、協会認定のデータ収集装置16からの送信データである場合(S32/Y)、データ受付装置18は、データ間の整合性をチェックする(S34)。
具体的には、受け取った送信データに付加された前回暗号データが、当該データ収集装置16から一つ前に受信した薬液注入データに付加された今回暗号データと一致するか否かをデータ受付装置18が確認し、一致する場合には(S34/Y)、各薬液注入データに「受信結果:OK(適正)」のフラグを付加して自身記憶装置に保存する(S36、S38)。
図7は、データ受付装置18の記憶装置内に格納された薬液注入データの一例を示している。図示は省略したが、各薬液注入データには、受信日時を示すタイムスタンプが刻印されている。
【0044】
つぎにデータ受付装置18は、薬液注入データをサーバ20に転送する(S40)。これを受けたサーバ20は、
図7に示されたものと同様の薬液注入データを、自身の記憶装置(データベース)内に格納する。
【0045】
送信されたデータが、協会認定のデータ収集装置16からのものではない場合(S32/N)や、データ間の整合性が確認できない場合(S34/N)、データ受付装置18は、「受信結果」に対応のエラー符号を付与して自身の記憶装置に格納すると共に(S42、S38)、サーバ20に転送する(S40)。
サーバ20は、受信したエラー符号付きの薬液注入データを、履歴情報としてデータベースに保存する。
【0046】
つぎに、
図8のフローチャートに従い、サーバ20による電子帳票発行の処理手順を説明する。
まず、何れかのクライアント端末24から工事No.、施工箇所、孔番等を指定した帳票発行のリクエストが送信されると(S50)、サーバ20はユーザID及びパスワードに基づいて権限を判定し、当該ユーザが指定された施工に係る薬液注入データの閲覧権限を有している場合には(S52/Y)、ユーザが指定した薬液注入データをデータベースから読み込む(S54)。
【0047】
つぎにサーバ20は、薬液注入データを所定のテンプレートに充填すると共に、協会の電子スタンプを付加し、PDFファイル等に変換することで電子帳票を作成し(S56)、クライアント端末24に送信する(S58)。
この電子帳票には、施工業者名、工事NO.、施工箇所、記録計機番、孔番、施工開始時間、施工終了時間、施工完了日、瞬結注入量、中結注入量、合計注入量等が記載されており、これをプリントアウトすることにより、ユーザ(受注者)は、該当の施工箇所において適切な薬液注入が実施されたことを内外に示すことが可能となる。
もちろん工事の発注者(管理者)としてのユーザも、クライアント端末24を介してサーバ20にアクセスし、自社が発注した工事に係る電子帳票をダウンロードし、計画通りの薬液注入が実行されたか否かを確認することができる。
【0048】
ユーザが指定された施工に関する薬液注入データの閲覧権限を有していない場合には(S52/N)、その旨のエラーメッセージがクライアント端末24に送信されれ(S54)、電子帳票の発行は拒否される。
【0049】
サーバ20に蓄積された各薬液注入データは、一つ前に送信された薬液注入データの合計注入量に基づいて算出された暗号データを有しており、万一、ハッキング等によって特定の薬液注入データの注入量に変更が加えられると、後続の薬液注入データの「前回暗号データ」の値と合わなくなるため、注入量データの改竄を実質的に防止することができる。
【0050】
上記においては、データ収集装置16からデータ受付装置18に同時に送信される薬液注入データ単位で共通の「今回暗号データ」が付与される例を示したが、この発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、個々の薬液注入データに固有の「今回暗号データ」を付与すると共に、これに先行する薬液注入データの「今回暗号データ」を「前回暗号データ」として付与することもできる。
【0051】
上記のようにデータ受付装置18とサーバ20を別個の装置とする代わりに、サーバ20がデータ受付装置18の機能を兼ね備えることもできる。
この場合、データ受付装置18からサーバ20に転送する工程(
図8のS40)が省略され、薬液注入データは(S38)において直ちにサーバ20のデータベース内に格納される。
【0052】
上記インターネット22は、例えば「トンネリング」、「暗号化」、「相互承認」プロセスを介することで、特定のユーザ以外はアクセスできないように設定された高セキュリティのもの(VPN)とするのが望ましい。あるいは、インターネット22の代わりに専用回線を利用することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 薬液注入データ管理システム
12 ボーリングマシン
14 認定流量計
16 データ収集装置
18 データ受付装置
20 サーバ
22 インターネット
24 クライアント端末
28 グラウトポンプ
30 薬液
【要約】
【課題】認定流量計から出力された薬液注入データを、改竄の危険性を排除しつつ、ネットワーク上に設置された記憶装置に保存する。
【解決手段】ボーリングマシン12に供給された薬液の分量を計測する認定流量計14と、認定流量計14から出力された薬液注入データを受信するデータ収集装置16と、通信ネットワーク経由でデータ収集装置16から送信された薬液注入データをネットワーク上の記憶装置内に格納するデータ受付装置18を備えた薬液注入データ管理システム10。データ収集装置16は、認定流量計14から出力される薬液注入データに対し、その薬液注入量に対応する暗号データを今回暗号データとして、また一つ前の薬液注入データの今回暗号データを前回暗号データとして付加し、データ受付装置18は、今回受信した薬液注入データの前回暗号データが、一つ前の薬液注入データの今回暗号データと一致する場合にOKのフラグを薬液注入データに設定して記憶装置に格納する。
【選択図】
図1