(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221004BHJP
【FI】
G05D1/02 J
(21)【出願番号】P 2019005343
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】開田 宏介
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-099518(JP,A)
【文献】特開2013-020345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0027612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を走行経路に沿って自動的に走行させる走行制御装置であって、
前記移動体の位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部により得られた前記移動体の推定位置に基づいて前記移動体を
前記走行経路に沿って走行させるように前記移動体の駆動部を制御する制御部と、
前記移動体の走行を開始させる複数の走行開始場所の位置に関する情報と、前記複数の走行開始場所の位置にそれぞれ関連付けられ、前記走行開始場所を特定するための複数の特定情報とを記憶する記憶部と、
前記特定情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力された前記特定情報に対応する走行開始場所の位置を前記記憶部から取得し、前記走行開始場所の位置を前記移動体の初期位置として設定する設定部とを備え、
前記走行開始場所は、前記走行経路に重なるように予め定められていると共に、前記走行経路の路面に描かれており、
前記走行経路の位置は、2次元座標で表されており、
前記走行開始場所の位置は、前記2次元座標及び向きで表されており、
前記位置推定部は、前記設定部により設定された前記初期位置に基づいて前記移動体の位置を推定する走行制御装置。
【請求項2】
前記設定部により設定された前記初期位置と前記位置推定部により得られた前記移動体の推定位置とに基づいて、前記入力部により入力された前記特定情報が正しいかどうかを判定し、前記特定情報が正しくないと判定したときは、異常発行信号を出力する判定部を更に備える請求項1記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記初期位置と前記推定位置との差分の絶対値が規定値以下であるかどうかを判断し、前記初期位置と前記推定位置との差分の絶対値が前記規定値よりも大きいと判断したときに、前記特定情報が正しくないと判定する請求項2記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記入力部は、ユーザが前記特定情報を手入力する入力機器である請求項1~3の何れか一項記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の走行制御装置は、レーザを発射し、その反射光を検知して物体までの距離を測定するレーザ距離センサと、無人搬送車が走行する走行エリアの番地と走行エリアに設定されている座標との対応情報を格納するデータメモリと、レーザ距離センサからの計測データと地図データとをマッチングさせて無人搬送車の現在位置を推定し、その推定結果に基づいて無人搬送車を経路データに従って走行させる処理部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように移動体の位置推定を行う場合には、位置推定の開始時に移動体の初期位置を設定する必要がある。この場合、ユーザは、移動体の現在位置を把握するために、例えばCAD図等から移動体の位置座標を求める必要がある。しかし、そのような作業は極めて煩雑であるため、移動体の初期位置を間違えて設定する可能性が高くなる。
【0005】
本発明の目的は、移動体の初期位置の設定を簡易的に行うことができる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行制御装置は、移動体の位置を推定する位置推定部と、位置推定部により得られた移動体の推定位置に基づいて移動体を走行させるように移動体の駆動部を制御する制御部と、移動体の走行を開始させる複数の走行開始場所の位置に関する情報と、複数の走行開始場所の位置にそれぞれ関連付けられ、走行開始場所を特定するための複数の特定情報とを記憶する記憶部と、特定情報を入力する入力部と、入力部により入力された特定情報に対応する走行開始場所の位置を記憶部から取得し、走行開始場所の位置を移動体の初期位置として設定する設定部とを備え、位置推定部は、設定部により設定された初期位置に基づいて移動体の位置を推定する。
【0007】
このような走行制御装置において、位置推定部によって移動体の位置推定を開始するときは、入力部により特定情報が入力される。すると、入力された特定情報に対応する走行開始場所の位置が記憶部から取得され、その走行開始場所の位置が移動体の初期位置として設定され、その初期位置に基づいて移動体の位置が推定される。このため、ユーザは、CAD図等から移動体の位置座標を求め、その位置座標を初期位置として設定入力するといった作業が不要となる。これにより、移動体の初期位置の設定を簡易的に行うことができる。
【0008】
走行制御装置は、設定部により設定された初期位置と位置推定部により得られた移動体の推定位置とに基づいて、入力部により入力された特定情報が正しいかどうかを判定し、特定情報が正しくないと判定したときは、異常発行信号を出力する判定部を更に備えてもよい。このような構成では、入力部により入力された特定情報が間違っているときは、異常発行信号が出力されるため、位置推定部により得られた移動体の推定位置が誤った状態で移動体が走行することを防止できる。
【0009】
判定部は、初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値以下であるかどうかを判断し、初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値よりも大きいと判断したときに、特定情報が正しくないと判定してもよい。このような構成では、入力部により入力された特定情報が正しいかどうかの判定を簡単な計算処理で行うことができる。
【0010】
入力部は、ユーザが特定情報を手入力する入力機器であってもよい。このような構成では、特定情報を走行開始場所の床面に設けなくて済むため、移動体の初期位置の設定を低コストで行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体の初期位置の設定を簡易的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行制御装置を備えた走行制御システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示された走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示されたSLAMコントローラにより実行される演算処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】移動体の自動走行を開始させる走行開始場所の一例を示す概念図である。
【
図5】走行開始場所の位置に関する情報及び特定情報を含むファイルの一例を示す表である。
【
図6】
図2に示された初期位置設定部により実行される設定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】
図2に示された初期位置判定部により実行される判定処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】
図2に示された駆動制御部により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】移動体の初期位置が設定される様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る走行制御装置を備えた走行制御システムを示す概略構成図である。
図1において、走行制御システム1は、例えばフォークリフト等の移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまで無人で走行させるシステムである。走行制御システム1は、移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまでの仮想ガイド線3に沿って自動的に走行させる走行制御装置4と、移動体2が走行を行うための走行指示データを関連付けた磁気マーク5とを具備している。
【0015】
仮想ガイド線3は、データ上で仮想的に設定された走行経路である。なお、
図1では、仮想ガイド線3は、直線経路となっているが、曲線経路であってもよい。スタート地点3A及び目的地点3Bを含む仮想ガイド線3の位置は、2次元座標(X,Y)で表されている。ここでは、スタート地点3Aの2次元座標は、(0,0)である。目的地点3Bの2次元座標は、(100,0)である。
【0016】
磁気マーク5は、床面に設置されている。磁気マーク5は、床面における仮想ガイド線3の脇に相当する位置に埋設されている。
【0017】
図2は、走行制御装置4の構成を示すブロック図である。
図2において、本実施形態の走行制御装置4は、移動体2に搭載されている。走行制御装置4は、位置推定ユニット6と、タッチパネル7と、磁気マークセンサ8と、自動走行制御ユニット9とを備えている。
【0018】
位置推定ユニット6は、移動体2の位置を推定する位置推定部である。位置推定ユニット6は、自動走行制御ユニット9により設定された初期位置(後述)に基づいて移動体2の位置を推定する。位置推定ユニット6は、例えばSLAM(simultaneous localization and mapping)手法を用いて、移動体2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。SLAMは、レーザレンジスキャナー等を利用して、自己位置推定と環境地図の作成とを同時に行う。
【0019】
位置推定ユニット6は、レーザセンサ10と、SLAMコントローラ11とを有している。レーザセンサ10は、移動体2の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、移動体2の周囲の物体までの距離を検出する。レーザセンサ10としては、例えばレーザレンジファインダが用いられる。
【0020】
SLAMコントローラ11は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。SLAMコントローラ11は、レーザセンサ10の検出値に基づいて、移動体2の位置の推定演算を行う。移動体2の位置は、2次元座標(X,Y)及び向きθで表される。
【0021】
図3は、SLAMコントローラ11により実行される演算処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動体2の電源がONになると実行される。
【0022】
ここで、移動体2の電源OFF時には、その時の移動体2の位置が自動走行制御ユニット9のバックアップRAM(図示せず)に保存される。その後、移動体2の電源がONになると、バックアップRAMに保存された位置が移動体2の初期位置としてSLAMコントローラ11に送られ、SLAMコントローラ11において移動体2の位置の推定演算が行われる。ただし、例えば移動体2が位置推定不能な場所(地図データが無い場所)を手動運転で走行した後では、バックアップRAMの値が正しくないことがある。この場合には、ユーザが移動体2の初期位置を設定する必要がある。
図3に示される処理は、ユーザによる移動体2の初期位置の設定が必要とされる状況において実行される処理である。
【0023】
図3において、SLAMコントローラ11は、まず自動走行制御ユニット9からの初期位置データが入力されたかどうかを判断する(手順S101)。SLAMコントローラ11は、初期位置データが入力されたと判断したときは、レーザセンサ10の検出値を取得する(手順S102)。
【0024】
そして、SLAMコントローラ11は、移動体2の位置の推定演算を行う(手順S103)。具体的には、SLAMコントローラ11は、レーザセンサ10により検出された移動体2の周囲の物体までの距離と移動体2の周囲環境の地図とをマッチングさせて、移動体2の位置の推定演算を行う。これにより、移動体2の推定位置が得られる。そして、SLAMコントローラ11は、移動体2の推定位置を自動走行制御ユニット9に出力し(手順S104)、手順S102を再び実行する。
【0025】
図2に戻り、タッチパネル7は、ユーザが入力操作を行うための入力機器である。タッチパネル7は、移動体2におけるユーザが操作しやすい箇所に取り付けられている。タッチパネル7は、ユーザが特定情報(後述)を手入力する入力部を構成している。
【0026】
磁気マークセンサ8は、磁気マーク5を検出するセンサである。磁気マークセンサ8は、移動体2の下部に取り付けられている。
【0027】
自動走行制御ユニット9は、位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置に基づいて、所定の処理を行い、移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまで自動的に走行させるように走行モータ12及び操舵モータ13を制御する。
【0028】
走行モータ12は、走行輪(図示せず)を回転させるモータである。操舵モータ13は、操舵輪(図示せず)を転舵させるモータである。走行モータ12及び操舵モータ13は、移動体2の駆動部を構成している。
【0029】
自動走行制御ユニット9は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。自動走行制御ユニット9は、記憶部14と、初期位置設定部15(設定部)と、初期位置判定部16(判定部)と、ずれ量算出部17と、駆動制御部18とを有している。
【0030】
記憶部14は、仮想ガイド線3及び磁気マーク5の位置と走行指示データ等といった移動体2の走行に関する情報を記憶する。仮想ガイド線3及び磁気マーク5の位置は、2次元座標として記憶されている。走行指示データは、上述したように各磁気マーク5に関連付けられている。走行指示データとしては、例えば加速指示、停止指示、右折指示及び左折指示等がある。
【0031】
また、記憶部14は、移動体2の自動走行を開始させる複数の走行開始場所Pの位置に関する情報と、複数の走行開始場所Pの位置にそれぞれ関連付けられ、走行開始場所Pを特定するための複数の特定情報とを記憶する。
【0032】
走行開始場所Pは、
図4に示されるように、仮想ガイド線3に重なるように予め定められている。走行開始場所Pは、例えばペンキにより床面に矩形状に描かれている。ここでは、走行開始場所P1は1番(No.1)の走行開始場所Pであり、走行開始場所P2は2番(No.2)の走行開始場所Pである。
【0033】
走行開始場所Pの位置に関する情報及び特定情報は、
図5に示されるように、ファイルFとして記憶部14に保存されている。走行開始場所Pの位置は、2次元座標(X,Y)及び向きθで表わされている。走行開始場所Pの位置は、走行開始場所P1を原点(基準)とした位置である。特定情報は、走行開始場所Pの位置に関連付けられた番号である。なお、走行開始場所Pの位置に関する情報としては、走行開始場所Pの2次元座標(X,Y)及び向きθだけでなく、他の必要な情報が登録されていてもよい。
【0034】
初期位置設定部15は、タッチパネル7により入力された特定情報である番号に対応する走行開始場所Pの位置を記憶部14から取得し、その走行開始場所Pの位置を移動体2の初期位置として設定する。
【0035】
図6は、初期位置設定部15により実行される設定処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理も、SLAMコントローラ11と同様に、移動体2の電源がONになると実行される。
【0036】
図6において、初期位置設定部15は、まずタッチパネル7により走行開始場所Pの番号が入力されたかどうかを判断する(手順S111)。初期位置設定部15は、走行開始場所Pの番号が入力されたと判断したときは、入力された番号に対応する走行開始場所Pの位置を記憶部14から取得する(手順S112)。そして、初期位置設定部15は、取得した走行開始場所Pの位置を移動体2の初期位置として設定する(手順S113)。そして、初期位置設定部15は、その初期位置データをSLAMコントローラ11に出力する(手順S114)。
【0037】
初期位置判定部16は、初期位置設定部15により設定された移動体2の初期位置と位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置とに基づいて、タッチパネル7により入力された特定情報である番号が正しいかどうかを判定し、番号が正しくないと判定したときは、異常発行信号を警告表示器19に出力する。
【0038】
警告表示器19としては、例えば異常発行信号が入力されると点灯または点滅する表示ランプが用いられる。警告表示器19は、異常発行信号が入力されたときに、警告表示と同時に警告音を発してもよい。
【0039】
図7は、初期位置判定部16により実行される判定処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理も、SLAMコントローラ11と同様に、移動体2の電源がONになると実行される。
【0040】
図7において、初期位置判定部16は、まず初期位置設定部15により設定された移動体2の初期位置と、位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置とを取得する(手順S121)。そして、初期位置判定部16は、初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値以下であるかどうかを判断する(手順S122)。
【0041】
このとき、初期位置判定部16は、初期位置の座標と推定位置の座標との差分の絶対値、及び初期位置の向きと推定位置の向きとの差分の絶対値の何れも、規定値以下であるかどうかを判断してもよいし、或いは初期位置の座標と推定位置の座標との差分の絶対値のみが規定値以下であるかどうかを判断してもよい。
【0042】
初期位置判定部16は、初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値以下であると判断したときは、タッチパネル7により入力された番号が正しいと判定し、本処理を終了する。
【0043】
初期位置判定部16は、初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値以下でない、つまり初期位置と推定位置との差分の絶対値が規定値よりも大きいと判断したときは、タッチパネル7により入力された番号が正しくないと判定し、異常発行信号を警告表示器19に出力する(手順S123)。これにより、警告表示器19が警告表示を行うため、ユーザは入力された番号が間違っていると認識することができる。
【0044】
また、初期位置判定部16は、移動体2を停止させるような制御信号(停止用制御信号)を走行モータ12に出力する(手順S124)。これにより、移動体2は、走行を開始せずに停止したままとなる。
【0045】
ずれ量算出部17は、記憶部14に記憶された仮想ガイド線3の位置と位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置とに基づいて、仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量を算出する。このとき、ずれ量算出部17は、仮想ガイド線3の座標と移動体2の座標とのずれ量と、仮想ガイド線3の向きと移動体2の向きとのずれ量とを算出する。
【0046】
駆動制御部18は、ずれ量算出部17により算出された仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量に基づいて、移動体2を仮想ガイド線3に沿って走行させるように走行モータ12及び操舵モータ13を制御する。また、駆動制御部18は、磁気マークセンサ8により磁気マーク5が検出されたときに、その磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ12及び操舵モータ13を制御する。
【0047】
なお、ずれ量算出部17及び駆動制御部18は、位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置に基づいて、移動体2を仮想ガイド線3に沿って走行させるように走行モータ12及び操舵モータ13を制御する制御部を構成する。
【0048】
図8は、駆動制御部18により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。本処理も、SLAMコントローラ11による演算処理と同様に、移動体2の電源がONになると実行される。
【0049】
図8において、駆動制御部18は、まず磁気マークセンサ8により磁気マーク5が検出されたかどうかを判断する(手順S131)。駆動制御部18は、磁気マーク5が検出されたと判断したときは、その磁気マーク5の番号に対応した走行指示データを記憶部14から取得する(手順S132)。
【0050】
このとき、磁気マークセンサ8によりスタート地点3Aから1つ目(1番)の磁気マーク5が検出された場合は、1番の磁気マーク5に紐づけられた走行指示データが取得される。磁気マークセンサ8によりスタート地点3Aから2つ目(2番)の磁気マーク5が検出された場合は、2番の磁気マーク5に紐付けられた走行指示データが取得される。
【0051】
そして、駆動制御部18は、取得した走行指示データに応じた制御信号を走行モータ12及び操舵モータ13に出力する(手順S133)。駆動制御部18は、例えば取得した走行指示データが加速指示である場合には、走行モータ12の回転速度を高くするような制御信号を走行モータ12に出力する。これにより、移動体2の速度が上昇するようになる。
【0052】
駆動制御部18は、手順S133が実行された後、または手順S131で磁気マーク5が検出されていないと判断したときは、ずれ量算出部17により算出された仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量を取得する(手順S134)。そして、駆動制御部18は、仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量が0となるような制御信号を走行モータ12及び操舵モータ13に出力する(手順S135)。これにより、移動体2の座標及び向きが仮想ガイド線3に近づくようになる。
【0053】
続いて、駆動制御部18は、移動体2が目的地点3Bに達したかどうかを判断する(手順S136)。駆動制御部18は、移動体2が目的地点3Bに達していないと判断したときは、手順S131を再び実行する。駆動制御部18は、移動体2が目的地点3Bに達したと判断したときは、本処理を終了する。
【0054】
以上のように構成された走行制御システム1において、例えば移動体2が仮想ガイド線3上にない場合には、まず
図9(a)に示されるように、ユーザAの手動運転により移動体2を指定の走行開始場所P(ここでは1番の走行開始場所P1)まで移動させる。
【0055】
そして、
図9(b)に示されるように、ユーザAがタッチパネル7により走行開始場所P1の番号(ここでは1番)を手入力する。すると、自動走行制御ユニット9において、入力された番号に対応する走行開始場所P1の位置が移動体2の初期位置として設定され、その初期位置データが位置推定ユニット6に送られる。
【0056】
位置推定ユニット6では、自動走行制御ユニット9からの初期位置データを受け取ると、移動体2の位置推定が開始され、移動体2の推定位置が自動走行制御ユニット9に送られる。すると、自動走行制御ユニット9では、移動体2の初期位置と移動体2の推定位置とが比較され、その比較結果により移動体2の初期位置が正しくないと判定されたときは、警告表示器19による警告表示が行われる。この場合には、ユーザAは、タッチパネル7により走行開始場所Pの番号を入力し直すことになる。
【0057】
移動体2の初期位置が正しいと判定されたときは、位置推定ユニット6による移動体2の位置推定がそのまま継続されることで、移動体2がスタート地点3A(初期位置)から目的地点3Bまで仮想ガイド線3に沿って走行するように制御される。
【0058】
以上のように本実施形態にあっては、位置推定ユニット6によって移動体2の位置推定を開始するときは、タッチパネル7により特定情報である番号が入力される。すると、入力された番号に対応する走行開始場所Pが記憶部14から取得され、その走行開始場所Pの位置が移動体2の初期位置として設定され、その初期位置に基づいて移動体2の位置が推定される。このため、ユーザは、CAD図等から移動体2の位置座標を求め、その位置座標を初期位置として設定入力するといった作業が不要となる。これにより、移動体2の初期位置の設定を簡易的に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、移動体2の初期位置と移動体2の推定位置とに基づいて、タッチパネル7により入力された番号が正しいかどうかが判定され、番号が正しくないと判定されたときは、異常発行信号が出力される。このようにタッチパネル7により入力された番号が間違っているときは、異常発行信号が出力されるため、位置推定ユニット6により得られた移動体2の推定位置が誤った状態で移動体2が走行することを防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、移動体2の初期位置と移動体2の推定位置との差分の絶対値が規定値よりも大きいと判断されたときに、番号が正しくないと判定される。従って、タッチパネル7により入力された番号が正しいかどうかの判定を簡単な計算処理で行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、ユーザがタッチパネル7により番号を手入力することにより、番号を走行開始場所Pの床面に設けなくて済むため、移動体2の初期位置の設定を低コストで行うことができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、走行開始場所Pの位置に関連付けられた特定情報として、番号を使用しているが、特定情報としては特に番号には限られず、英字(A,B…)等であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ユーザがタッチパネル7により特定情報を手入力しているが、特にその形態には限られず、例えば特定情報を登録したRFIDを走行開始場所Pの床面に埋設しておき、RFIDを読み込むRFIDリーダを移動体2の下部に取り付けてもよい。この場合には、移動体2が走行開始場所Pに移動したときに、RFIDリーダによりRFIDが読み込まれることで、RFIDに登録された特定情報が入力される。
【0064】
また、上記実施形態では、走行開始場所Pの位置に関する情報及び特定情報を記憶する記憶部14と初期位置設定部15と初期位置判定部16とが自動走行制御ユニット9に設けられているが、そのような機能は、自動走行制御ユニット9ではなく、位置推定ユニット6に設けられていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、位置推定ユニット6は、自己位置推定技術としてレーザを利用したSLAM手法を用いて、移動体2の位置を推定しているが、自己位置推定技術としては、特にそれには限られず、カメラの撮像画像を利用したSLAM手法または衛星を利用したGNSS(global navigation satellite system)測位法等を用いてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、データ上で仮想的に設定された仮想ガイド線3に沿って移動体2を走行させているが、本発明は、特にその形態には限られず、例えば床面に物理的に検出可能に設置された磁気ガイド線に沿って移動体2を走行させるシステムにも適用可能である。
【0067】
また、上記実施形態の走行制御装置は、移動体2としてフォークリフトを走行させる装置であるが、本発明は、例えば搬送台車等のように位置を推定して走行する移動体であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
2…移動体、4…走行制御装置、6…位置推定ユニット(位置推定部)、7…タッチパネル(入力部)、12…走行モータ(駆動部)、13…操舵モータ(駆動部)、14…記憶部、15…初期位置設定部、16…初期位置判定部、17…ずれ量算出部(制御部)、18…駆動制御部(制御部)、P…走行開始場所。