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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器、及び電子鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
G10H1/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018189462
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020060604
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178641
【弁理士】
【氏名又は名称】増渕 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】高田 征英
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018055(JP,A)
【文献】特開2008-083284(JP,A)
【文献】特開2004-205766(JP,A)
【文献】特開2008-003209(JP,A)
【文献】特開2018-112705(JP,A)
【文献】特開2007-052410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10B 1/00-3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端と後端とをそれぞれ有する、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含んで配列された複数の鍵と、
前記複数の鍵の下方に配置されると共に前記複数の鍵を回動可能に支持するシャーシと、
前記複数の鍵の後端部分の上方に配置されるパネルと、
前記パネルを支持する少なくとも一つのパネル支持部材と、を含み、
前記少なくとも一つのパネル支持部材は、前記シャーシの上面に形成された空間に設けられており、
前記空間は、前記複数の黒鍵の後端が前記複数の白鍵の後端よりも後方に位置するように前記複数の鍵を配列することによって、隣り合う二つの黒鍵間に挟まれた白鍵の後端の後方に生じた空間である、
電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記パネル支持部材は、前記空間に形成された取付部を用いて前記シャーシの上面に取り付けられている、
請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記パネル支持部材は、前記シャーシと一体に成形されて前記空間に設けられている、請求項1又は2に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記複数の黒鍵の回動軸が前記複数の白鍵の回動軸よりも後方に位置するように前記複数の鍵が配列されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前端と後端とをそれぞれ備える、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含んで配列した複数の鍵と、
前記複数の鍵の下方に配置されると共に前記複数の鍵を回動可能に支持するシャーシと、
前記シャーシの上面に形成され、前記複数の鍵の後端を覆うパネルを支持する少なくとも一つのパネル支持部材を配置する少なくとも一つの空間と、を含み、
前記少なくとも一つの空間は、前記複数の黒鍵の後端が前記複数の白鍵の後端よりも後方に位置するように前記複数の鍵を配列することによって、隣り合う二つの黒鍵間に挟まれた白鍵の後端の後方に生じた空間である、
電子鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子鍵盤楽器、及び電子鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アコースティックピアノの音色、操作性及び外観などを疑似的に再現した電子ピアノ等の電子鍵盤楽器が広く普及している。この種の電子鍵盤楽器に使用される鍵盤装置として、鍵の上方に配置されて鍵の後端側を上方から覆うパネルを、シャーシ上壁から鍵を挿通してパネル側に延びる後方ガイドによって支持する鍵盤楽器がある(例えば、特許文献1)。このような鍵盤装置によると、鍵のがたつきを抑制する機能とパネルを支持する機能とを後方ガイドに付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-18055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電子鍵盤楽器では、パネルを支持するためのパネル支持部材をシャーシの後方に配置する構成が広く採用されている。このような構成とした場合、シャーシの後方にパネル支持部材を取り付けるためのスペースが必要となり、電子鍵盤楽器の奥行きサイズの大型化を招く虞があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、奥行きサイズを小さくすることが可能な電子鍵盤楽器、及び電子鍵盤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。即ち、本発明の第1の態様は、電子鍵盤楽器である。この電子鍵盤楽器は、前端と後端とをそれぞれ有する、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含んで配列された複数の鍵と、前記複数の鍵の下方に配置されると共に前記複数の鍵を回動可能に支持するシャーシと、前記複数の鍵の後端部分の上方に配置されるパネルと、前記パネルを支持する少なくとも一つのパネル支持部材と、を含み、前記少なくとも一つのパネル支持部材は、前記シャーシの上面に形成された空間に設けられており、前記空間は、前記複数の黒鍵の後端が前記複数の白鍵の後端よりも後方に位置するように前記複数の鍵を配列することによって、隣り合う二つの黒鍵間に挟まれた白鍵の後端の後方に生じた空間であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電子鍵盤楽器によると、パネルを支持するためのパネル支持部材をシャーシの上面に設けることができる。したがって、パネル支持部材をシャーシの後方に配置することを回避できるので、電子鍵盤楽器の奥行きサイズを小さくすることができる。
【0008】
本発明に係る電子鍵盤楽器において、前記パネル支持部材は、前記空間に形成された取付部を用いて前記シャーシの上面に取り付けられてもよい。これにより、パネル支持部材をシャーシに対して着脱可能とすることができる。また、パネル支持部材が支える荷重や、パネル支持部材が備えるべき剛性に鑑み、シャーシと異なる材質を、パネル支持部材について適用することができる。
【0009】
もっとも、パネルを適切に支持できる限りにおいて、前記パネル支持部材は、前記シャ
ーシと一体に成形されて前記空間に配置されてもよい。前記パネル支持部材を前記シャーシと一体とすることで、電子鍵盤楽器の部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0010】
また、本発明に係る電子鍵盤楽器において、前記黒鍵の回動軸が前記白鍵の回動軸よりも後方に位置するように前記複数の鍵が配列されてもよい。これによると、黒鍵と白鍵の回動軸の前後位置を同一とする場合よりも、白鍵と黒鍵の押鍵時におけるストローク及びタッチ重さを揃え易くすることができる。その結果、アコースティックピアノにより近い操作感を得ることができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、電子鍵盤楽器の構成要素である電子鍵盤装置である。即ち、本発明に係る電子鍵盤装置は、前端と後端とをそれぞれ備える、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含んで配列した複数の鍵と、前記複数の鍵の下方に配置されると共に前記複数の鍵を回動可能に支持するシャーシと、前記シャーシの上面に形成され、前記複数の鍵の後端を覆うパネルを支持する少なくとも一つのパネル支持部材を配置する少なくとも一つの空間と、を含み、前記少なくとも一つの空間は、前記複数の黒鍵の後端が前記複数の白鍵の後端よりも後方に位置するように前記複数の鍵を配列することによって、隣り合う二つの黒鍵間に挟まれた白鍵の後端の後方に生じた空間であることを特徴とする。本発明の電子鍵盤装置によれば、シャーシの上面にパネル支持部材を配置する空間を有するため、シャーシの後方にパネル支持部材を配置することによって、電子鍵盤楽器の奥行きサイズが大きくなるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器の斜視図である。
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器の平面図である。
図3】実施形態に係る鍵盤装置の平面図である。
図4図3に示すIV-IV断面線における電子鍵盤装置の断面図である。
図5図3に示すV-V断面線における電子鍵盤装置の断面図である。
図6図3に示すVI-VI断面線における電子鍵盤装置の断面図である。
図7図2に示すVII-VII断面線における電子鍵盤楽器の断面図である。
図8図8Aは、パネル支持部材の上面図であり、図8Bは、パネル支持部材の側面図である。
図9】実施形態に係る電子鍵盤楽器における白謙と黒鍵の位置関係を示す平面図である。
図10図7に対応する図であって、比較例に係る電子鍵盤楽器を示す断面図である。
図11図9に対応する図であって、比較例に係る電子鍵盤楽器における白謙と黒鍵の位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る電子鍵盤楽器100について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る電子鍵盤楽器100の斜視図である。図2は、実施形態に係る電子鍵盤楽器100の平面図である。図3は、実施形態に係る電子鍵盤装置1の平面図である。図1図2及び図3では、一部の構成を省略して図示している。図4は、図3に示すIV-IV断面線における電子鍵盤装置1の断面図であり、図5は、図3に示すV-V断面線における電子鍵盤装置1の断面図であり、図6は、図3に示すVI-VI断面線における電子鍵盤装置1の断面図である。図7は、図2に示すVII-VII断面線における電子鍵盤楽器100の断面図である。図7では、便宜上、手前(R側)の白鍵3Wが押鍵された状態を示している。また、図7中に示す符号9は電子鍵盤装置1が設置される筐体を示す。
【0014】
<構成>
図1及び図2に示すように、電子鍵盤楽器100には、白鍵3Wと黒鍵3Bとを含む複数の鍵3が配列している。以下の説明において、複数(本例では、88)の鍵3の配列方向を幅方向(左右方向)と称し、鍵3の長手方向を奥行き方向(前後方向)と称す。図中の矢印U-D,L-R,F-Bは、電子鍵盤楽器100の上下、左右、前後を、それぞれ示している。また、以下の説明において、鍵3について白鍵3Wと黒鍵3Bの何れかを区別せずに説明するときは、単に鍵3と記載する。また、説明の便宜のため、白鍵3Wを音名(C,D,E,・・・)に応じて個別に特定する場合には、符号(即ち「3W」)の最後に対応する音名(例えば「C」)を付して、白鍵3WCのように記載する。
【0015】
電子鍵盤楽器100は、鍵3の操作に応じて図示しない電子回路から出力される信号で楽音を発生するものである。電子鍵盤楽器100としては、例えば、電子ピアノ、電子オルガン、電子キーボード、シンセサイザなどが例示される。
【0016】
図1及び図2に示すように、電子鍵盤楽器100は、電子鍵盤装置1を備える。電子鍵盤装置1は、シャーシ2と、シャーシ2に回動自在に軸支される鍵3と、シャーシ2に収容されると共に鍵3の押鍵及び離鍵に連動して回動するハンマ4とを有する。また、電子鍵盤楽器100は、更に、鍵3の上方に配置されるパネル5と、パネル5を支持するパネル支持部材6と、を備える。
【0017】
シャーシ2は、鍵3の下方に配置されると共に鍵3を回動可能に支持するものであり、鋼板等や樹脂材料によって所定の幅単位のブロックで形成されている。図4に示すように、シャーシ2は、シャーシ本体20と、シャーシ上壁21a,21bと、シャーシ底壁22a,22b,22cと、を有する。
【0018】
シャーシ本体20は、幅方向に対して直交する板形状を有しており、図2に示すように、鍵3の下方において隣り合う鍵3(隣り合うハンマ4)同士の間に設けられている。また、図4に示すように、シャーシ本体20の奥行方向における中央部には、ハンマ4を軸支するためのハンマ回動軸23が突設されている。
【0019】
図4に示すシャーシ上壁21aは、隣り合うシャーシ本体20の上縁同士を前端部付近で接続する。シャーシ上壁21aには、金属製の金物10が固定されている。金物10は、前側に延びる前フランジ101と後側に延びる後フランジ102を有しており、前フランジ101の前端には、前方ガイド11が設けられている。前方ガイド11は、鍵3毎に設けられており、上方に延びるように立設されている。また、前フランジ101の上面には、クッション材12aが貼り付けられており、後フランジ102の上下面には、クッション材12b、12cが貼り付けられている。これらクッション材12a,12b,12cは、押鍵時及び離鍵時に緩衝材又は消音材として機能するものであり、フェルトや発泡ウレタンなどから構成されている。
【0020】
図5に示すシャーシ上壁21bは、隣り合うシャーシ本体20の上縁同士を後端部付近で接続する。シャーシ上壁21bには、鍵回動軸部24が設けられている。鍵回動軸部24は、鍵3毎に設けられており、各鍵3を軸支する。鍵回動軸部24は、中心軸が幅方向と平行な円柱形状を有している。図5中の符号A1,A2は、白鍵3W及び黒鍵3Bの回動軸を示す。ここで、図5に示すように、実施形態に係る電子鍵盤楽器100では、黒鍵3Bを軸支する鍵回動軸部24Bの方が白鍵3Wを軸支する鍵回動軸部24Wよりも奥行き方向において後方に配置されている。即ち、回動軸A2の方が回動軸A1よりも後方に配置されている。また、図4に示すように、シャーシ上壁21bには、鍵3の幅方向のガタつきを抑制するための後方ガイド25が設けられている。後方ガイド25は、鍵3毎に設けられており、鍵回動軸部24よりも前方の位置において上方に延びるように立設され
ている。また、図6に示すように、パネル支持部材6を取り付けるための取付部26が設けられている。取付部26の詳細については後述する。
【0021】
図4に示すシャーシ底壁22a,22b,22cは、隣り合うシャーシ本体20の下縁同士を、前端部付近、中央部付近、後端部付近でそれぞれ接続する。シャーシ底壁22a,
22b,22cの下面には、断面視コの字型に形成された金属製のベース部材7a,7b,
7cが固定されている。シャーシ2は、これらベース部材7a,7b,7cを介して電子鍵盤楽器100の筐体9の底面9aに固定される(図7参照)。
【0022】
図3に示すように、白鍵3Wと黒鍵3Bとを含む複数の鍵3は、前端と後端とを有し、幅方向に並んでシャーシ上壁21aの上面に配設されている。鍵3は前端部分と後端部分とからなり、前端部分はパネル5より前方にあって演奏者が視認できる部分であり、後端部分は、パネル5より後方の部分である。なお、鍵3の基本構造、鍵3を回動可能に軸支(支持)する構造、及び、鍵3の押鍵又は離鍵に連動してハンマ4を回動させる構造は、白鍵3W及び黒鍵3Bの両者で実質的に同一である。そのため、以下、図4に示す白鍵3Wの構造を例として鍵3の構造について説明し、黒鍵3Bの構造についての説明は省略する。
【0023】
鍵3は、樹脂材料で構成されている。鍵3は、下方が開放された断面略コ字状に形成されている。鍵3は、奥行方向に延びる上壁32と、上壁32の幅方向における両側縁から垂下する一対の側壁33と、上壁32の前縁から垂下する前壁34とを有する。一対の側壁33の間には、シャーシ2に設けられた前方ガイド11が受け入れられる。また、鍵3の上壁32には、シャーシ上壁21bに形成された後方ガイド25が受け入れられる貫通穴32aが貫通している。これにより、前方ガイド11及び後方ガイド25によって、鍵3が幅方向にがたつくことが抑制されている。
【0024】
側壁33の後端部付近には、軸受孔35が形成されている。軸受孔35には、シャーシ上壁21bに形成された鍵回動軸部24が挿通される。これにより、鍵3は、軸受孔35を介して鍵回動軸部24に軸支され、鍵回動軸部24回りに回動可能となっている。また、側壁33の前端部側の下縁には、側面視略L字状のストッパ部37が形成されている。また、側壁33の奥行き方向における軸受孔35とストッパ部37との間の下縁には、略尖形形状の係合突起36が下方に向けて突設されている。鍵3が押鍵されると、鍵3の前端部及び係合突起36が下がるようにして鍵3が鍵回動軸部24回りに回動する。このとき、鍵3が押鍵されると、鍵3の側壁33がクッション材12b、12cに衝突し、鍵3が離鍵されると、鍵3のストッパ部37がクッション材12aに衝突する。これにより、鍵3との衝撃が吸収される共に衝突した際の発生音が抑制されている。
【0025】
ハンマ4は、鍵3の押鍵又は離鍵に連動して回動することによってアコースティックピアノと同様のタッチ重さを付与するためのものであり、各鍵3の下方において、隣り合うシャーシ本体20同士の間に収容されている。ハンマ4は、樹脂材料内に金属部材をインサート成形することで形成される。図4に示すように、ハンマ4は、ハンマ本体40と軸受41と錘部42と係合溝43とスイッチ突起44とを有する。
【0026】
ハンマ本体40は、軸受41を挟んで奥行き方向の両側に延在した形状を有している。軸受41は、断面視C型を有してハンマ本体40に設けられており、シャーシ本体20に突設されたハンマ回動軸23に軸支される。軸受41がハンマ回動軸23に嵌め込まれることで、ハンマ4はハンマ回動軸23を中心に回動可能となっている。錘部42は、ハンマ本体40の後端部に連設されると共に後方へ延在した形状を有している。係合溝43は、前端部側の上面に形成されており、鍵3の押鍵時において鍵3に設けられた係合突起36と係合する。ハンマ4は、鍵3の押鍵時において係合突起36と係合溝43とが係合す
ることで、ハンマ本体40の前端部が下がるように回動する。これにより、鍵3の押鍵時においては錘部42の重量に応じた所定のタッチ重さが付与され、離鍵時においては錘部42の重量により鍵3が上方に持ち上げられる。ここで、鍵3の押鍵時においては、錘部42が持ち上がることで、錘部42がシャーシ本体20よりも上方に突出する(図7参照)。
【0027】
図4に示すように、シャーシ2の下方には、鍵3の押鍵情報を検出するためのスイッチ13が、ハンマ本体40の前端部側の下面に臨む姿勢で設けられている。ハンマ本体40の前端部側の下面には、スイッチ突起44がスイッチ13に向けて突設されている。そのため、鍵3の押鍵に連動してハンマ4がハンマ回動軸23を中心に回動すると、スイッチ突起44によりスイッチ13がONされ、鍵3の離鍵に連動して、スイッチ13がOFFされる。これにより、鍵3の押鍵、離鍵などを検出することができる。
【0028】
パネル5は、鍵3の上方に設けられると共に鍵3の後部を上方から覆う板状の部材である。パネル5は、シャーシ2を跨ぐように幅方向に延在して設けられている。図7に示すように、パネル5は、パネル本体51と第1カバー部52と第2カバー部53とを有する。パネル本体51は、演奏者に臨むように前方に向かって下がるように傾斜している。第1カバー部52は、パネル本体51の前縁から鍵3の上面付近まで垂下している。第2カバー部53は、パネル本体51の後縁から後方に向かって下がるように傾斜している。
【0029】
図2に示すように、パネル本体51の上面には、各種の状態を表示するための各種の表示装置や、演奏者による操作を受け付けてボリューム調整やモード変更などを行うための各種の操作子などが配設される。また、図7に示すように、パネル本体51の裏面に設けられた基板8には、パネル本体51に設けられた表示装置や操作子と接続される電子回路5aが設けられている。第1カバー部52及び第2カバー部53により、パネル本体51の裏面に設けられた基板8等が覆い隠されている。
【0030】
図2に示すように、第2カバー部53の後縁の幅方向における中途部には、一対のパネル側接続部54,54が、幅方向に所定の間隔を空けて設けられている。一対のパネル側
接続部54,54のそれぞれには、パネル支持部材6と接続するための貫通孔が形成され
ている。
【0031】
図1に示すように、パネル5は、シャーシ2を挟む位置に設置されたパネル固定部材50に固定されている。また、パネル5は、幅方向における中途部において、一対のパネル側接続部54,54に接続された一対のパネル支持部材6に支持されている。
【0032】
上述のように、黒鍵3Bの回動軸A2の方が白鍵3Wの回動軸A1よりも奥行き方向において後方に配置されている。また、回動軸A1から白鍵3Wの後端までの距離と回動軸A2から黒鍵3Bの後端までの距離は、互いに等しい。そのため、図2及び図3に示すように、黒鍵3Bの後端の方が白鍵3Wの後端よりも前方に位置するように複数の鍵3が配列している。これにより、シャーシ上壁21bの上面には、パネル支持部材6を配置するための空間である配置空間S1が形成されている。配置空間S1は、即ち、隣り合う二つの黒鍵3B,3B間に挟まれた白鍵3Wの後方に生じた空間である。図3中に、配置空間S1を斜めハッチングで示す。配置空間S1は、幅方向に沿って配列しており、幅方向に隣り合う配置空間S1は黒鍵3Bによって区画されている。配置空間S1は、二つの白鍵3WB,3WCを挟む二つの黒鍵3B,3B間と、二つの白鍵3WE,3WFを挟む二つ
の黒鍵3B,3B間において、他の配置空間S1と比較して幅が広く形成されている。こ
の、相対的に幅が広い配置空間S1を配置空間S11と称し、その他の相対的に幅が狭い配置空間S1を配置空間S12と称する。
【0033】
図3に示すように、配置空間S1が形成されていることで、シャーシ上壁21bの上面は、配置空間S1において鍵3に覆われていない状態となる。ここで、図3に示すように、シャーシ上壁21bの上面には、各配置空間S11内に配置するように取付部26が形成されている。取付部26は、パネル支持部材6を取り付け可能とする部位である。図6に示すように、取付部26は、シャーシ上壁21bの上面から上方に向かって突設されたボス26aとボス26aの上端面に形成されたネジ穴26bとを有する。ネジ穴26bは、パネル支持部材6を取付部26に接続するためのネジを受け入れ可能であり、ボス26aの上端面から下向きに形成されている。
【0034】
次に、パネル支持部材6について説明する。図8Aは、パネル支持部材6の上面図であり、図8Bは、パネル支持部材6の側面図である。パネル支持部材6は、板金を折り曲げて形成されており、上面視略L字状に形成されている。パネル支持部材6は、図8Aに示すように、幅方向に対して直交する姿勢で奥行き方向に延びる第1延在部61と、奥行き方向に直交する姿勢で第1延在部61の後縁から幅方向右側に延びる第2延在部62とを有する。第1延在部61の前端部付近の上縁には、パネル5のパネル側接続部54に接続される第1接続部63が延設されている。第1接続部63には、パネル側接続部54と接続されるための貫通孔が形成されている。第2延在部62の下縁には、取付部26に接続される一対の第2接続部64,64が幅方向に所定の間隔を空けて延設されている。第2
接続部64は、第2延在部62の下縁から前方に延びている。
【0035】
このようなパネル支持部材6は、電子鍵盤装置1に設けられた複数の取付部26のうちの何れか二つの取付部26を利用して、シャーシ2に取り付けられる。より具体的には、第2接続部64と取付部26とをネジ(図示なし)を用いて接続することで、パネル支持部材6がシャーシ2に取り付けられる。そして、第1接続部63とパネル側接続部54とをネジ等の締結部材を用いて接続することで、パネル5がパネル支持部材6に支持される。なお、図7に示すように、第1延在部61の下縁は、鍵3に干渉しないように湾曲に切り欠かれている。このようにして、パネル支持部材6によって、パネル5の幅方向における中途部が下方から支持される。これにより、パネル5の剛性が高められ、演奏者がパネル5上の操作子を操作したとき等の押圧によってパネル5が撓むことが抑制される。
【0036】
図9は、実施形態に係る電子鍵盤楽器100における白鍵3Wと黒鍵3Bの位置関係を示す平面図である。図9では、便宜上、鍵3を簡略化して図示している。また、図9中の符号L1,L2は、電子鍵盤楽器100における白鍵3Wの回動軸A1から白鍵3Wの前端までの長さ及び黒鍵3Bの回動軸A2から黒鍵3Bの前端までの長さを示す。以下、L1及びL2を長尺とする場合における、電子鍵盤楽器100の利点について説明する。
【0037】
L1及びL2を長尺とする場合、鍵3の長尺化に伴ってシャーシ2(即ち電子鍵盤装置1)の奥行きサイズ(前後幅)も長尺となる。このとき、電子鍵盤楽器100では、パネル支持部材6をシャーシ2の上面(上方)に取り付ける構成としているため、電子鍵盤装置1の後方にパネル支持部材6の設置スペースを必要としない。そのため、筐体内の限定されたスペースにおいて、パネル支持部材6の設置スペースに制約されることなくL1及びL2を長尺とすることが可能である。ここで、アコースティックピアノにおける白鍵及び黒鍵の回動軸から前端までの長さを、それぞれL3,L4とする。電子鍵盤楽器におい
ては、白鍵及び黒鍵の回動軸から前端までの長さをL3及びL4に近づけることで、アコースティックピアノに近い操作感を得られる傾向がある。電子鍵盤楽器100では、パネル支持部材6の設置スペースに制約されることなくL1及びL2を長尺とし、L3,L4
にそれぞれ近づけることができる。その結果、アコースティックピアノに近い操作感を得ることができる。但し、L1及びL2の長さはこれに限定されない。
【0038】
<作用・効果>
次に、比較例に係る電子鍵盤楽器200との対比において、実施形態に係る電子鍵盤楽器100が奏する作用及び効果について説明する。図10は、図7に対応する図であって、比較例に係る電子鍵盤楽器200を示す断面図である。また、図11は、図9に対応する図であって、比較例に係る電子鍵盤楽器200における白鍵3Wと黒鍵3Bの位置関係を示す平面図である。また、図11中の符号L1A,L2Aは、電子鍵盤楽器200における白鍵3Wの回動軸A1から白鍵3Wの前端までの長さ及び黒鍵3Bの回動軸A2から黒鍵3Bの前端までの長さを示す。図10に示すように、比較例に係る電子鍵盤楽器200は、電子鍵盤楽器100と異なり、パネル支持部材206を筐体9の底面9aであって電子鍵盤装置201(シャーシ202)の後方に取り付けている。また、図11に示すように、電子鍵盤楽器200は、電子鍵盤楽器100と異なり、白鍵3Wと黒鍵3Bの後端及び回動軸の前後位置が一致している。
【0039】
図10に示すように、比較例に係る電子鍵盤楽器200では、パネル支持部材206をシャーシ202の後方に配置しているため、シャーシ202(電子鍵盤装置201)の後方にパネル支持部材206を取り付けるためのスペースが必要となる。
【0040】
これに対して、電子鍵盤楽器100は、複数の黒鍵3Bの後端が複数の白鍵3Wの後端よりも後方に位置するように複数の鍵3を配列させることによって、隣り合う二つの黒鍵3B,3B間に挟まれた白鍵3Wの後端の後方に配置空間S1を生じさせている。そして
、電子鍵盤楽器100は、パネル支持部材6をシャーシ2の上面に形成された配置空間S1に設けている。これによると、パネル5を支持するためのパネル支持部材6をシャーシ2の上面に設けることができる。即ち、電子鍵盤装置1の後方にパネル支持部材6を取り付けるためのスペースを必要としない。そのため、パネル支持部材206をシャーシ202の後方に配置する比較例に係る電子鍵盤楽器200よりも、電子鍵盤楽器の奥行きサイズを小さくすることができる。奥行きサイズを小さくすることにより、電子鍵盤楽器を設置する部屋を少しでも広く見せたいユーザに訴求することができる。
【0041】
また、比較例に係る電子鍵盤楽器200では、パネル支持部材206をシャーシ202の後方に配置することから、パネル支持部材206をシャーシ202の後方から鍵3の上方まで延びる形状とする必要がある。より詳細には、パネル支持部材206の高さをシャーシ202よりも高くし、奥行きをシャーシ202の後端とパネル5との距離よりも長くする必要がある。これに対して、電子鍵盤楽器100は、パネル支持部材6をシャーシ2の上面に配置することで、パネル支持部材6の高さ及び奥行きを比較例に係るパネル支持部材206よりも小さくすることができる。その結果、パネル支持部材の剛性を高めると共に材料コストを低減することができる。
【0042】
また、配置空間S1は、隣り合う二つの黒鍵3B,3B間に挟まれた白鍵3Wの後端の
後方に生じた空間であることから、パネル支持部材6を配置するための空間として、少なくとも白鍵3W一つ分の幅を有する空間を確保することができる。また、電子鍵盤楽器100は、パネル5を支持するパネル支持部材6をシャーシ2(電子鍵盤装置1)に設ける構成を採用しているため、パネル5がパネル支持部材6を介して電子鍵盤装置1に連結されている。そのため、パネル支持部材6を筐体9に取り付ける場合よりも、電子鍵盤装置1とパネル5の相対位置の精度を向上させることができるという利点もある。
【0043】
なお、電子鍵盤楽器100は、少なくとも一つの配置空間S1が形成されていればよい。但し、実施形態に係る電子鍵盤楽器100では、複数(本例では2)の配置空間S1を利用してパネル支持部材6を設ける構成としている。そのため、パネル支持部材6をより強固にシャーシ2に設けることができる。更に、電子鍵盤楽器100は、複数のパネル支持部材6によって、パネル5を支持する構成としている。これによると、単一のパネル支持部材6によってパネル5を支持する場合よりも確りとパネル5を支持することができる
。その結果、パネル5の剛性を更に高めることができる。但し、電子鍵盤楽器100は、パネル支持部材6を少なくとも一つ備えればよい。
【0044】
ここで、図9に示すL1とL2との差をδLとし、図11に示すL1AとL2Aとの差をδLAとする。電子鍵盤楽器100では、黒鍵3Bの回動軸A2を白鍵3Wの回動軸A1よりも後方に位置するように鍵3を配列しており、電子鍵盤楽器200では、白鍵3Wの回動軸A1と黒鍵3Bの回動軸A2の前後位置を一致させている。そのため、δLの方がδLAよりも小さくなっている。ここで、白鍵3Wの回動軸A1から前端までの長さと黒鍵3Bの回動軸A2から前端までの長さとの差が大きければ大きいほど、白鍵3Wと黒鍵3Bとで押鍵時のストローク及びタッチ重さが揃え難くなる傾向がある。電子鍵盤楽器100によると、黒鍵3Bの回動軸A2を白鍵3Wの回動軸A1よりも後方に位置するように鍵3を配列することで、δL<δLAとすることができる。これにより、白鍵3Wと黒鍵3Bの押鍵時におけるストローク及びタッチ重さを電子鍵盤楽器200よりも揃え易くすることができる。その結果、アコースティックピアノにより近い操作感を得ることができる。
【0045】
また、パネル支持部材6は、配置空間S1に形成された取付部26を用いてシャーシ2の上面に取り付けられている。これにより、パネル支持部材6をシャーシ2に対して着脱可能とすることができる。また、パネル支持部材6とシャーシ2とを別部材とすることで、パネル支持部材6が支える荷重や、パネル支持部材6が備えるべき剛性に鑑み、シャーシ2と異なる材質を、パネル支持部材6について適用することができる。取付部26は、パネル支持部材6を取付部26に接続するためのネジを受け入れるネジ穴26bを有している。これによると、簡単な構成でパネル支持部材6を取り付けることができる。なお、パネル支持部材6は、複数設けられた取付部26のうち、一つの取付部26のみを利用して取り付けてもよい。その場合、例えば、取付部26に複数のボス26a及びネジ穴26bを設ける構成としてもよい。
【0046】
もっとも、パネル5を適切に支持できる限りにおいて、パネル支持部材6は、シャーシ2と一体に成形されて配置空間S1に設けられてもよい。パネル支持部材6をシャーシ2と一体とすることで、電子鍵盤楽器100の部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0047】
また、電子鍵盤楽器100は、二つの白鍵3Wを挟む二つの黒鍵3B,3B間に形成さ
れた配置空間S11にパネル支持部材6を設けている。これによると、パネル支持部材6を配置するための空間として、白鍵3Wの二つ分の幅を有する空間を確保することができる。その結果、一つの白鍵3Wを挟んで隣り合う二つ黒鍵3B,3B間に形成された配置
空間S12にパネル支持部材6を設ける場合よりも、幅の広い空間にパネル支持部材6を設けることができる。
【0048】
なお、取付部26に対するパネル支持部材6の接続手段としては、ネジやネジ穴等の締結部材に限定されず、種々の手段を採用することができる。例えば、取付部26をシャーシ上壁21bに形成されたスリットとし、パネル支持部材6の第2接続部64を当該スリットに差込可能な差込片とし、差込片をスリットに差し込むことで取付部26にパネル支持部材6を接続してもよい。
【0049】
上記実施形態で説明した構成は、目的を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。上記実施形態では、電子鍵盤楽器100の鍵3の数量が88である場合を説明したが、鍵3の数量はこれに限定されず、鍵3の数量を89以上又は87以下としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 電子鍵盤装置
2 シャーシ
26 取付部
3 鍵
4 ハンマ
5 パネル
6 パネル支持部材
100 電子鍵盤楽器
S1 配置空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11